IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ティロッツ、ファーマ、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許-結腸ドラッグデリバリー製剤 図1
  • 特許-結腸ドラッグデリバリー製剤 図2
  • 特許-結腸ドラッグデリバリー製剤 図3
  • 特許-結腸ドラッグデリバリー製剤 図4
  • 特許-結腸ドラッグデリバリー製剤 図5
  • 特許-結腸ドラッグデリバリー製剤 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】結腸ドラッグデリバリー製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20240122BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/04
A61K9/36
A61P1/00
A61P29/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021532823
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2019083909
(87)【国際公開番号】W WO2020115254
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】18211154.2
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521246183
【氏名又は名称】ティロッツ、ファーマ、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TILLOTTS PHARMA AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】フェリペ、バルム
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト、カルロス、ブラボ、ゴンサレス
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/005606(WO,A1)
【文献】特開2017-145267(JP,A)
【文献】特表2016-535030(JP,A)
【文献】米国特許第05422121(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の結腸に抗炎症剤を送達するための経口投与用の遅延放出製剤であって、
前記遅延放出製剤は、錠剤と、前記錠剤のためのコーティングと、前記錠剤と前記コーティングとの間に存在する仕切り層とを備え、
前記錠剤は、抗炎症剤を含んでなり、
前記コーティングは、外層および内層を備え、
前記仕切り層は、HPMCまたはポリビニルアルコール(PVA)を含んでなり、
前記外層は、結腸の酵素によって分解される酵素分解性デンプンと、約1:2の酸:エステル比および約pHのpH閾値を有するフィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーとの混合物を含んでなり、
前記混合物における前記酵素分解性デンプンの前記フィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーに対する比率は、25:75~60:40であり、
前記内層は、(i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と、(ii)前記内層のHPMCの乾燥重量を基準として、約30重量%以上約60重量%以下の量のリン酸塩緩衝剤と、(iii)水酸化物塩基とを含んでなる、前記遅延放出製剤。
【請求項2】
前記内層のHPMCが、前記内層のHPMCの乾燥重量を基準として、約2mg/cm以上約5mg/cm以下、好ましくは約3mg/cmの量で前記内層に存在する、請求項1に記載の遅延放出製剤。
【請求項3】
前記リン酸塩緩衝剤が、前記内層のHPMCの乾燥重量を基準として、約30重量%以上約50重量%以下の量で前記内層に存在する、請求項1または2に記載の遅延放出製剤。
【請求項4】
前記リン酸塩緩衝剤がリン酸二水素カリウムである、請求項1~のいずれか一項に記載の遅延放出製剤。
【請求項5】
前記水酸化物塩基が水酸化ナトリウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の遅延放出製剤。
【請求項6】
前記酵素分解性デンプンおよび前記フィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーが、前記外層コーティング中に約25:75~約35:65の比率で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の遅延放出製剤。
【請求項7】
前記酵素分解性デンプンおよび前記フィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーが、前記外層コーティング中に約40:60~約60:40の比率で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の遅延放出製剤。
【請求項8】
前記フィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーが、前記フィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーの乾燥重量を基準として、約3mg/cm以上約10mg/cm以下、好ましくは約5mg/cmの量で前記外層内に存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の遅延放出製剤。
【請求項9】
前記仕切り層が、HPMCを含んでなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の遅延放出製剤。
【請求項10】
請求項1に記載の結腸に抗炎症剤を送達するための経口投与用の遅延放出製剤を製造する方法であって、
以下の工程:
抗炎症剤を含んでなる錠剤を形成させる工程;
溶媒中にHPMCまたはPVAを含んでなる仕切り層コーティング調製物により、前記錠剤を最初にコーティングして、仕切り層でコーティングされた錠剤を形成させる工程;
HPMCを、そのHPMCの乾燥重量を基準として、約30重量%以上約60重量%以下の量のリン酸塩緩衝剤を含む水性溶媒中に溶解させ、水酸化物塩基を添加して、pH7より高いpHを有する内層コーティング調製物を形成させる工程;
前記内層コーティング調製物を使用して前記仕切り層でコーティングされた錠剤をコーティングして、内層でコーティングされた錠剤を形成させる工程;および
溶媒系中に、結腸の酵素によって分解される酵素分解性デンプンと、1:2の酸:エステル比および約pHのpH閾値を有するフィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーとの混合物を含んでなる外層コーティング調製物であって、前記混合物における前記酵素分解性デンプンの前記フィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーに対する比率が25:75~60:40である前記外層コーティング調製物により、前記内層でコーティングされた錠剤をコーティングして、請求項1に記載の外層でコーティングされた錠剤を形成させる工程
を含んでなる、前記方法。
【請求項11】
記内層コーティング調製物のpHが、約pH7.5以上約pH10以下の範囲、好ましくは約pH7.5以上約pH8.5以下の範囲、より好ましくは約pH8である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水酸化物塩基が水酸化ナトリウムである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記内層コーティング調製物のHPMCが、前記内層コーティング調製物のHPMCの乾燥重量を基準として、約2mg/cm以上約5mg/cm以下、好ましくは約3mg/cmの量で前記仕切り層でコーティングされた錠剤にコーティングされるまで、前記仕切り層でコーティングされた錠剤が前記内層コーティング調製物によりコーティングされる、請求項1012のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記リン酸塩緩衝剤が、前記内層コーティング調製物のHPMCの乾燥重量を基準として、約30重量%以上約50重量%以下の量で前記内層コーティング調製物中に存在する、請求項1013のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記リン酸塩緩衝剤がリン酸二水素カリウムである、請求項1014のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記酵素分解性デンプンおよび前記フィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーが、前記外層コーティング調製物中に約25:75~約35:65の比率で存在する、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記酵素分解性デンプンおよび前記フィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーが、前記外層コーティング調製物中に約40:60~約60:40の比率で存在する、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記フィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーが、前記フィルム形成性腸溶性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーの乾燥重量を基準として、約3mg/cm以上約10mg/cm以下、好ましくは約5mg/cmの量で、前記内層でコーティングされた錠剤にコーティングされるまで、前記内層でコーティングされたコアが前記外層コーティング調製物によりコーティングされる、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記仕切り層コーティング調製物が、HPMCを含んでなる、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物を含んでなるコアと遅延放出コーティングとを有する遅延放出製剤に関する。具体的には、結腸に薬物を送達するための遅延放出製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物の腸への標的指向化はよく知られており、100年以上の間、知られている。一般的に、薬物の標的は小腸であるが、局所療法または全身治療を達成する手段として結腸を利用することができる。薬剤コーティングの必要条件は、標的部位によって異なる。結腸に到達するためには、薬物が小腸を通過する必要があるため、結腸で薬物を放出することを目的とした遅延放出コーティングが小腸で薬物を放出しないことが必要条件である。
【0003】
小腸で放出するためのコーティング製品は、一般に、pHに依存して溶解または崩壊するポリマーコーティングを使用する。胃の低pH環境において、ポリマーコーティングは不溶性である。しかしながら、小腸に到達すると、pHが5以上に上昇し、ポリマーコーティングが溶解または崩壊する。一般的に使用されるコーティングは、イオン化可能なカルボキシル基を含むコーティングである。高いpHにおいて、カルボキシル基がイオン化し、ポリマーコーティングを崩壊または溶解させる。使用されるこのタイプの一般的なポリマーには、オイドラギット(登録商標)Lおよびオイドラギット(登録商標)Sがある。
【0004】
薬物の早期放出を確実にすることによって小腸での放出を改善する様々な方法が知られている。US2008/0200482は、崩壊が起こるpHを低下させるためにカルボキシル基を部分的に中和することを開示している多くの参考文献のうちの1つである。WO2008/135090は、部分的に中和された材料の内側コーティングと、中和が減少しているまたは全くされていない外側コーティングとを備えた錠剤を開示している。これは、胃から送達されたとき、より早い時点で崩壊すると言われている。
【0005】
結腸での薬物の放出は、代替手段を必要とする。結腸は、多くの病態、例えば、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、便秘、下痢、感染症および癌腫に罹患しやすい。そのような状態において、結腸を標的とする薬物は、治療の治療効果を最大限に発揮するであろう。結腸はまた、薬物が全身循環に入るための入口(portal)として利用可能である。結腸薬物送達のために、プロドラッグおよび製剤化された剤形を含む様々な製剤が開発されているが、既に証明された概念がその他の薬物に適用できるため、後者がより一般的である。
【0006】
結腸内の高密度の細菌集団はまた、消化可能な担体材料として、天然に存在する多糖類であって、常在結腸細菌により産生される多数の酵素の基質を構成する多糖類の利用を通じて、結腸薬物送達用の剤形を開発する際に利用されてきた。これらの材料は通常、上部消化管領域を完全なままで通過することができるが、結腸に入ると消化される。例としては、デンプン、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、キトサン、ガラクトマンナンおよびグアーガムが挙げられる。
【0007】
結腸薬物送達へのこの細菌酵素アプローチにおいて多糖類を使用することの主要な魅力の1つは、使用される材料が食品グレードであり、したがって、ヒトでの使用に安全であることである。それらは通常、コーティングとして適用されて、またはマトリックス担体としてコア材料に組み込まれて、結腸へ入る際の結腸の細菌酵素による消化により、充填薬物の放出をもたらす。アミロースコーティングを使用するそのような製剤の例は、EP0343993A(BTG International Limited)に開示されている。
【0008】
しかしながら、これら天然に存在する材料に関する主な制限は、それらが水性媒体中で過度に膨潤し、上部消化管領域での充填薬物の浸出につながることである。この問題を回避するために、天然に存在する材料が様々な不浸透性材料との混合物において使用されてきた。
【0009】
EP0502032A(British Technology Group Ltd)は、フィルム形成性セルロース材料またはフィルム形成性アクリレートポリマー材料と、アモルファスアミロースとを含んでなる外層コーティングの、有効化合物を含んでなる錠剤のための使用を教示している。使用されるポリマー材料は、pHに依存しない放出性ポリマー材料である。
【0010】
Journal of Controlled Releaseの論文(Milojevic et al;38;(1996);75-84)は、アミロースの膨潤を制御するためにアミロースコーティングに様々な不溶性ポリマーを組み込むことに関する調査結果を報告している。様々なセルロース系およびアクリレート系共重合体が評価され、市販のエチルセルロース(エトセル(登録商標))が膨潤を最も効果的に制御することが見出されている。pH依存性可溶性コーティングであるオイドラギット(登録商標)L100が使用されるが、アミロースの内層コーティングおよびオイドラギット(登録商標)L100の外層コーティングによる生物活性コーティングを備える多層システムにおいてのみ使用される。
【0011】
さらなるアミロース系のコーティング組成物は、WO99/21536A(BTG International Limited)に開示されている。コーティング組成物は、アミロースと、水不溶性のセルロースまたはアクリレートポリマー材料から形成される水不溶性pH非依存性のフィルム形成性ポリマーとの混合物を含んでなる。
【0012】
WO99/25325A(BTG International Limited)はまた、アミロースおよび(好ましくは)エチルセルロース、あるいは不溶性のアクリレートポリマーを含んでなる遅延放出コーティングを開示している。コーティング組成物はまた、可塑剤を含み、この方法は、組成物は60℃よりも低い温度で形成されるため、60℃を超える温度において不安定である有効物質を含んでなる剤形の調製において特別な用途を見出す。
【0013】
WO03/068196A(Alizyme Therapeutics Ltd)は、ガラス状アミロース、エチルセルロースおよびジブチルセバケートを含んでなる生物活性プレドニゾロンメタスルホ安息香酸ナトリウム用の特定の遅延放出コーティングを開示している。
【0014】
遅延放出コーティングにおけるアモルファスアミロース以外の多糖類の使用は、GB2367002(British Sugar PLC)に開示されている。例としては、グアーガム、カラヤゴム、トラガカントガムおよびキサンタンガムが挙げられる。これらの多糖類の微粒子は、例えば、セルロース誘導体、アクリルポリマーまたはリグニンから形成された水不溶性のフィルム形成性ポリマーマトリックス中に分散されている。
【0015】
WO01/76562A(Tampereen Patenttitoimisto Oy)は、薬物とその放出を制御するためのキトサン(キチンから得られる多糖類)とを含む経口製剤を開示している。薬物およびキトサンは、均一な機械的粉末混合物に混合され、粒状化され、次いで、場合により錠剤化される。粒状化は、腸溶性ポリマー(例えば、メタクリル酸のコポリマー)により実施してもよいし、あるいは、顆粒は多孔性の腸溶性コーティングにより提供されてもよい。
【0016】
WO2004/052339A(Salvona LLC)は、pH感受性ミクロスフェアのカプセルに包まれた薬物を含んでなる固体疎水性ナノスフェアの自由流動性の粉末である、pH依存性薬物放出システムを開示している。ナノスフェアは、ワックス材料と組み合わせて薬物から形成され、pH感受性ミクロスフェアは水感受性材料(例えば、多糖類)と組み合わせてpH感受性ポリマー(例えば、オイドラギット(登録商標)ポリマー)から形成される。
【0017】
European Journal of Pharmaceutical Sciencesの論文(Akhgari et al;28;March 2006;307-314)は、とりわけイヌリンの膨潤を制御するための特定のポリメタクリレートポリマーの使用に関する検討結果を報告している。試験したポリメタクリレートポリマーは、オイドラギット(登録商標)RS;オイドラギット(登録商標)RL;オイドラギット(登録商標)RSおよびオイドラギット(登録商標)RLの1:1混合物;オイドラギット(登録商標)FS;ならびにオイドラギット(登録商標)RSおよびオイドラギット(登録商標)Sの1:1混合物であった。
【0018】
US5422121(Rohm GmbH)は、フィルム形成性ポリマーと混合して結腸内で分解する多糖類を含んでなるシェル材料内に封入された少なくとも1種の有効成分を含むコアを有する経口剤形を開示している。フィルム形成性ポリマーに対する多糖類の重量比は、1:2~5:1、好ましくは1:1~4:1である。コアからの有効成分の早期拡散は、胃抵抗性の仕切り層を使用して抑制可能である。この参考文献は、とりわけオイドラギット(登録商標)L30Dの内側仕切り層を有し、オイドラギット(登録商標)L30Dおよびグアーガムを含んでなる外層を備える錠剤を例示している(実施例2)。
【0019】
WO96/36321Aは、ビサコジルを含むコアと、コア用の腸溶性ポリマーコーティングとを含んでなる経口剤形であって、コーティングは、少なくとも1つの内層コーティングと外層コーティングとを備える、経口剤形を開示している。その1つの内層コーティングまたは複数の内層コーティングのそれぞれは、約5~約6.3のpHにおいて水性媒体に溶解し始める腸溶性ポリマーであり、外層コーティングは、約6.8~約7.2のpHにおいて水性媒体に溶解し始める腸溶性ポリマーである。内層の腸溶性ポリマーコーティング材料は、酢酸フタル酸セルロース、トリメリト酸酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリ(メタクリル酸、メタクリル酸メチル)1:1、ポリ(メタクリル酸、アクリル酸エチル)1:1およびそれらの適合性のある混合物からなる群から選択される。
【0020】
WO2007/122374Aは、pH依存性のフィルム形成ポリマー材料と多糖類(例えば、デンプン)との混合物が使用される結腸薬物送達製剤を開示している。この製剤は、薬物の放出遅延に続く急速な放出を示すことが知られているが、薬物の放出が結腸においてより速ければ好ましいであろう。
【0021】
WO2013/164315AおよびWO2013/164316Aの両方は、pH依存性フィルム形成性ポリマー材料と多糖類(例えば、デンプン)との混合物が外層として使用される結腸薬物送達製剤を開示している。腸液または胃腸液に可溶性であり、部分的に中和されたポリカルボン酸ポリマーおよび非イオン性ポリマーから選択される内層が使用される。非イオン性ポリマーを含んでなる内層は、緩衝剤および/または塩基をさらに含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、(a)FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合および(b)FeSSGFに4時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、比較例1によるコーティングされた5-ASA錠剤からの薬物放出を時間の関数として比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
図2図2は、FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、比較例2および3ならびに実施例1~3によるコーティングされた5-ASA錠剤からの薬物放出を時間の関数として比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
図3図3は、(a)FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合および(b)FeSSGFに4時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、比較例3によるコーティングされた5-ASA錠剤からの薬物放出を時間の関数として比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
図4図4は、(a)FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合および(b)FeSSGFに4時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、実施例1によるコーティングされた5-ASA錠剤からの薬物放出を時間の関数として比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
図5図5は、(a)FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合および(b)FeSSGFに4時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、実施例2によるコーティングされた5-ASA錠剤からの時間の関数としての薬物放出を比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
図6図6は、(a)FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合および(b)FeSSGFに4時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、実施例3によるコーティングされた5-ASA錠剤からの薬物放出を時間の関数として比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の態様によれば、対象の結腸に薬物を送達するための経口投与用の遅延放出製剤であって、
前記遅延放出製剤は、コアと前記コアのためのコーティングとを備え、
前記コアは、薬物を含んでなり、
前記コーティングは、外層および内層を備え、
前記外層は、約pH6以上のpH閾値を有するフィルム形成性腸溶性ポリマーを含んでなり、
前記内層は、腸液または胃腸液に可溶性であるフィルム形成性非イオン性ポリマーと、前記非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約20重量%より多く約60重量%以下の量の緩衝剤とを含んでなる、前記遅延放出製剤が提供される。
【0024】
驚くことに、本発明の遅延放出製剤は、製剤が空腹時人工胃液(FaSSGF)に事前曝露された場合だけでなく、製剤が摂食時人工胃液(FSSGF)に曝露された場合にも、クレブス緩衝液(pH7.4)において変わらない放出プロファイルを有利に示すことが見出された。本発明の製剤を使用する薬物の放出は、使用者の製剤服用または食事のタイミングに関係なく比較的一定であるため、これは有利である。さらに、薬物の放出加速メカニズムは、胃の状態、すなわち胃が「摂食」状態にあるか「空腹」状態にあるかとは無関係である。
【0025】
本発明の製剤が腸溶性材料を含む中間層を備えないことは、さらなる利点である。腸溶性材料は比較的高価であり、したがって、性能を維持しながらも、そのような材料を含む中間層が存在しないことは、遅延放出製剤を製造するコストを削減する。さらに、中和された場合に水性コーティング組成物の形成を可能にする腸溶性ポリマーは、良好なフィルム形成を可能とし、脆性を回避するために大量の可塑剤を必要とする。
【0026】
本発明のさらなる技術的利点は(例えば、WO01/76562Aに開示された製剤と比較して)、薬物が長期間(すなわち、コーティングが溶解している間)実質的に放出されず、次いで、薬物が比較的速く放出されることである。これは、WO01/76562Aに記載されている徐放性マトリックス錠とは対照的であり、その薬物放出プロファイルは、遅延してからパルス放出するのではなく、最初から徐放的である。
【0027】
外層
外層は、約pH6以上のpH閾値を有するフィルム形成性腸溶性ポリマーを含んでなる。好ましい実施形態において、外層は、腸溶性ポリマーと、結腸の酵素によって分解される酵素分解性ポリマーとの混合物を含んでなる。
【0028】
2種の好適なポリマーの適切な比率の混合物は、フィルムコーティングとしてコアに適用され、胃および小腸における薬物放出を少なくとも最小限に抑え、実質的に排除することができることが見出された。次いで、結腸における薬物放出は、組み合わされた能動的な生理学的トリガーによって、すなわち、第2の材料、特にオイドラギット(登録商標)Sの溶解と、第1の材料、例えばデンプンまたはアミロースの消化とによって起こると考えられる。
【0029】
フィルム形成性腸溶性ポリマーに対する酵素分解性ポリマーの比率は、典型的には少なくとも1:99、例えば少なくとも10:90、好ましくは少なくとも25:75である。比率は通常、99:1以下、例えば、75:25以下、好ましくは60:40以下である。いくつかの実施形態において、比率は、35:65以下であってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、比率は10:90~75:25、例えば10:90~60:40、好ましくは25:75~60:40である。いくつかの特に好ましい実施形態において、比率は15:85~35:65、例えば25:75~35:65、好ましくは約30:70である。その他の特に好ましい実施形態において、比率は40:60~約60:40、例えば約50:50である。
【0030】
コアの外層コーティングの厚みは通常、約10μm以上約300μm以下である。しかしながら、具体的なコーティングの厚みは、コーティングの組成およびコアのサイズに依存する。例えば、コーティングの厚みは、コーティング中の多糖類の量に正比例する。
【0031】
したがって、外層コーティングが約30:70の比率において高アミロースデンプンおよびオイドラギット(登録商標)Sを含んでなる実施形態において、コーティングの厚みは、約70μm以上約300μm以下、好ましくは約150μm以上約250μm以下であり得る。所与のコーティング組成物の厚み(μm)は、コアサイズに依存する。
【0032】
外層中の腸溶性ポリマーの量は、コアのサイズとは関連しない。外層コーティングは通常、約2mg/cm以上約10mg/cm以下、例えば、約2mg/cm以上約8mg/cm以下、または約3mg/cm以上約8mg/cm以下、または約4mg/cm以上約8mg/cm以下、または約5mg/cm以上約8mg/cm以下、または約6mg/cm以上約8mg/cm以下、または約7mg/cm以上約8mg/cm以下、例えば約7.5mg/cmの腸溶性ポリマーのコーティング量を有する。これは、外層コーティングがフィルム形成性腸溶性ポリマーのみを含んでなる場合、および外層がフィルム形成性腸溶性ポリマーおよび酵素分解性ポリマーの混合物を含んでなる場合に当てはまる。典型的なコアの直径は約5×10-4m以上約25mm以下である。
【0033】
外層コーティングが多糖類および腸溶性ポリマーの混合物を含んでなると述べることにより、活性コアが最初にアミロースの内層コーティング、次いでオイドラギット(登録商標)L100の外層コーティングによりコーティングされている既知の多層剤形(例えば、上記のMilojevicらに開示されている)を除外することを意図している。本発明の文脈において、そのような多層剤形は、デンプンおよびオイドラギット(登録商標)L100の混合物を含まない。
【0034】
外層コーティングは、好ましくは、多糖類および腸溶性ポリマーの混合物、好ましくは均質な混合物の単層である。
【0035】
外層は、場合により、ポリマーフィルムのための1種または2種以上の従来の賦形剤、例えば、フィルム形成用可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル(TEC))、界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)、粘着防止剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン)および顔料(例えば、赤色酸化鉄または黄色酸化鉄)を含み得る。これらのオプションの賦形剤は、ポリマーコーティング調製物の最終組成物の30重量%以下の量で含まれ得る。
【0036】
フィルム形成性腸溶性ポリマー
外層は、約pH6以上のpH閾値を有するフィルム形成性腸溶性ポリマーを含んでなる。フィルム形成性腸溶性ポリマーは、pH感受性であり、約pH6以上のpH閾値を有する。「pH閾値」は、そのpH未満では不溶性であり、そのpH以上では可溶性であるpHである。したがって、周囲媒体のpHがポリマー材料の溶解を引き起こす。したがって、pH閾値未満において溶解する腸溶性ポリマーはない(または実質的にない)。周囲媒体のpHがpH閾値に達する(または超える)と、第2の材料は可溶性になる。
【0037】
「不溶性」は、第2の材料1gが所与のpHにおいて溶解するために10,000mLより多い溶媒(周囲媒体)を必要とすることを意味する。
【0038】
「可溶性」は、第2の材料1gが所与のpHにおいて溶解するために10,000mL未満、好ましくは5000mL未満、より好ましくは1000mL未満、さらにより好ましくは100mL未満または10mL未満の溶媒を必要とすることを意味する。
【0039】
「周囲媒体」は、好ましくは、胃腸管内の媒体、例えば、胃液または腸液を意味する。あるいは、周囲媒体は、胃腸管内の媒体のin vitro同等物であってもよい。
【0040】
胃液の正常なpHは、通常、1~3の範囲である。腸溶性ポリマーは、pH6未満において不溶性であり、約pH6以上において可溶性であるため、通常、胃液には不溶性である。
【0041】
腸液のpHは、十二指腸における約6から遠位小腸における約7~8まで徐々に上昇する。腸溶性ポリマーは、好ましくはpH6.5未満において不溶性(および約pH6.5以上において可溶性)であり、より好ましくはpH7未満において不溶性(および約pH7以上において可溶性)である。
【0042】
材料が可溶性になるpH閾値は、当業者に共通の一般知識の一部である単純な滴定技術によって決定可能である。
【0043】
好適なフィルム形成性腸溶性ポリマーの例には、アクリレートポリマー、セルロースポリマーまたはポリビニル系ポリマーが含まれる。好適なセルロースポリマーの例には、酢酸フタル酸セルロース(CAP)およびヒドロプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートが含まれる。
【0044】
フィルム形成性腸溶性ポリマーは、好ましくは(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸C1-4アルキルエステルのコポリマー、例えばメタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルのコポリマーである。このようなポリマーは、ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーとして知られている。そのようなコポリマーの好適な例として、通常、アニオン性であり、徐放性ではないポリメタクリレートがある。これらのコポリマー中のメチルエステル基に対するカルボン酸基の比(「酸:エステル比」)によって、コポリマーが可溶性であるpHが決定される。酸:エステル比は、約2:1~約1:3、例えば約1:1、または好ましくは約1:2であり得る。好ましいアニオン性コポリマーの分子量(MW)は、通常、約120,000以上150,000以下、好ましくは約135,000である。
【0045】
好ましいアニオン性ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマーには、オイドラギット(登録商標)L(酸:エステル比 約1:1;MW 約135,000;pH閾値 約6)、オイドラギット(登録商標)S100(酸:エステル比 約1:2;MW 約135,000;pH閾値 約7)およびオイドラギット(登録商標)FS(ポリ(アクリル酸メチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸);酸:エステル比 約1:10;MW 約220,000;pH閾値 約7)が含まれる。
【0046】
フィルム形成性腸溶性ポリマーは、メタクリル酸およびアクリル酸エチルのコポリマーであり得る。例えば、オイドラギット(登録商標)L100-55ポリ(メタクリル酸/アクリル酸エチル);酸:エステル比 約1:1;MW 約250,000;pH閾値 約6である。オイドラギット(登録商標)コポリマーはEvonik(Darmstadt、ドイツ)によって製造および/または販売されている。
【0047】
フィルム形成性腸溶性ポリマーの混合物を必要に応じて使用することができる。好適な混合物の例には、オイドラギット(登録商標)Lおよびオイドラギット(登録商標)S100の混合物、例えば1:1混合物が含まれる。しかしながら、特定のフィルム形成ポリマー材料、例えば、ポリ(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)コポリマー単独の使用が好ましい。
【0048】
フィルム形成性腸溶性ポリマーとしてオイドラギット(登録商標)S100単独の使用が特に好ましい。
【0049】
好ましくは、例示的なポリマーは、少なくとも部分的に中和された形態においてフィルム形成性腸溶性ポリマーとして使用される。すなわち、カルボン酸基の少なくとも一部、例えば10%以上、好ましくは15%以上20%以下(モル基準で)、より好ましくは50%以上、最も好ましくは90%以上は、カルボン酸アニオンの形態である。
【0050】
酵素分解性ポリマー
上記のように、外層は、フィルム形成性腸溶性ポリマーと、結腸の酵素によって分解される酵素分解性ポリマーとの混合物を含み得る。酵素分解性ポリマーは、対象の結腸に見られる1種または2種以上の細菌酵素(結腸の細菌酵素)によって分解される。このような酵素は、結腸の細菌によって産生され、アミラーゼ、例えば、α-アミラーゼ、β-アミラーゼおよびイソ-アミラーゼ;アミロプルルナーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、マルトジェニック-アミラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼおよびアミロマルターゼを含む。
【0051】
当業者は、共通の一般知識の一部を包含する技術を使用して、材料が結腸の細菌酵素による分解を受けやすいか否かを決定することができる。例えば、所定の量の所与の材料を、結腸に見られる細菌からの酵素を含むアッセイにさらすことができ、経時的な材料の重量変化を測定することができる。あるいは、結腸の細菌酵素の作用の結果として生成される分解産物の量を測定することができる。
【0052】
酵素分解性ポリマーは、好ましくは多糖類である。好適な多糖類は、デンプン、アミロース、アミロペクチン、キトサン、コンドロイチン硫酸、シクロデキストリン、デキストラン、プルラン、カラギーナン、スクレログルカン、キチン、カードランおよびレバンからなる群から選択される。多糖類は、好ましくはデンプンである。デンプンは通常、天然物、例えば、穀物、豆類および塊茎から抽出される。本発明における使用に適したデンプンは、通常、食品グレードのデンプンであり、米デンプン、小麦デンプン、コーン(またはトウモロコシ)デンプン、エンドウ豆デンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、タピオカデンプン、ソルガムデンプン、サゴデンプンおよびクズウコンデンプンを含む。トウモロコシデンプンの使用を以下に例示する。
【0053】
デンプンは通常、2種の異なる多糖類、すなわちアミロースおよびアミロペクチンの混合物である。異なるデンプンは、これら2種の多糖類を異なる比率で有しているといえる。ほとんどの天然(未修飾)トウモロコシデンプンは、約20重量%以上約30重量%以下のアミロースを有し、残りは少なくとも実質的にアミロペクチンで構成されている。
【0054】
好適なデンプンには、「高アミロース」および「低アミロース」デンプンがある。高アミロースデンプンが特に好ましい。
【0055】
「高アミロース」デンプンは、50重量%以上のアミロースを有するデンプンである。特に好適なデンプンは、約50重量%以上約75重量%以下、好ましくは約50重量%以上約70重量%以下、より好ましくは約50重量%以上約65重量%以下、最も好ましくは約50重量%以上約60重量%以下、例えば約55重量%のアミロースを有する。
【0056】
「低アミロース」デンプンは、50重量%未満のアミロースおよび50重量%以上のアミロペクチン、例えば、75重量%以下のアミロペクチン、さらには99重量%以下のアミロペクチンを有するデンプンである。
【0057】
本発明における使用に好適なデンプンは通常は、0.1重量%以上、例えば、10重量%以上または15重量%以上、好ましくは35重量%以上のアミロースを有する。そのようなデンプンは、99.9重量%以下、例えば、90重量%以下または85重量%以下、好ましくは65重量%以下のアミロペクチンを有する。そのようなデンプンは、約99重量%以下のアミロースおよび1重量%以上のアミロペクチンを有し得る。
【0058】
本発明における使用に好適なデンプンは、100%以下のアミロペクチン、より一般的には約0.1重量%以上約99.9重量%以下のアミロペクチンを有し得る。デンプンは、例えば、未修飾のワキシーコーンデンプンであり得る。これは通常、約100%のアミロペクチンを含んでなる。
【0059】
好ましいデンプンは、50重量%以下のアミロペクチンを有する。特に好適なデンプンは、約25重量%以上約35重量%以下のアミロペクチン、例えば約30重量%のアミロペクチンを有する。
【0060】
当業者は、任意の所与のデンプン中のアミロースおよびアミロペクチンの相対的比率を決定することができる。例えば、近赤外(NIR)分光法を使用して、実験室で生成されたこれら2種の成分の既知量の混合物を使用したNIRによって得られた検量線を使用して、デンプンのアミロースおよびアミロペクチンの含有量を決定することができる。さらに、デンプンは、アミログルコシダーゼを使用してグルコースに加水分解することができる。酵素によって触媒される一連のリン酸化および酸化反応により、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)が形成される。形成されるNADPHの量は、元のグルコース含有量の定比である。この手順に好適なテストキットが利用可能である(例えば、R-Biopharm GmbH、ドイツ)。使用可能な別の方法は、コーティングを細菌酵素、例えばα-アミラーゼによる消化に供して、キャピラリーカラムを使用した気液クロマトグラフィーによって定量することができる短鎖脂肪酸(SCFA)を生成することを含む。
【0061】
好ましいデンプンは、「市販の」デンプン、すなわち、本発明の文脈において使用する前に処理を必要としないデンプンである。特に好適な「高アミロース」デンプンの例としては、Eurylon(登録商標)6(またはVI)およびAmyloN-400デンプン(Roquette、Lestrem、フランス)またはアミロジェル03003(Cargill、Minneapolis、米国)が挙げられ、これらすべては約50~70重量%のアミロースを有するトウモロコシデンプンである。
【0062】
内層
内層は、胃腸液(胃液および腸液の両方)に可溶性であるフィルム形成性非イオン性ポリマーと、非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として約20重量%より多く約60重量%以下の量の緩衝剤とを含む。
【0063】
外層と同様に、内層におけるポリマーの量はコアのサイズとは関連しない。内層は通常、非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約2mg/cm以上約5mg/cm以下、例えば約3mg/cmの非イオン性ポリマーのコーティング量を有する。
【0064】
内層は、場合により、ポリマーフィルムのための1種または2種以上の従来の賦形剤、例えば、フィルム形成用の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)および粘着防止剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン)を含み得る。
【0065】
フィルム形成性非イオン性ポリマー
内層のフィルム形成性非イオン性ポリマーは、腸液または胃腸液(胃液および腸液の両方)に可溶性である。
【0066】
「胃液」とは、本発明者らは、哺乳動物、特にヒトの胃内の水性液体であるとする。この液体には、最大約0.1Nの塩酸と、かなりの量の塩化カリウムおよび塩化ナトリウムとが含まれており、この液体は、消化酵素を活性化し、摂取したタンパク質を変性させることにより、消化に重要な役割を果たす。胃酸は胃の内側を覆う細胞によって生成され、その他の細胞は重炭酸塩を生成する。重炭酸塩は、胃液が過剰に酸性になるのを防止するための緩衝剤として機能する。
【0067】
「腸液」とは、本発明者らは、哺乳動物、特にヒトの腸の内腔内の液体であるとする。腸液は、腸壁の内側を覆う腺から分泌される淡黄色の水性液体である。腸液には、小腸において見られる液体、すなわち十二指腸において見られる液体(または「十二指腸液」)、空腸において見られる液体(または「空腸液」)および回腸において見られる液体(または「回腸液」)、ならびに大腸において見られる液体、例えば「結腸液」が含まれる。
【0068】
当業者は、ポリマーが胃液および/または腸液に可溶性であるか否かを容易に判断することができる。ポリマーが1~3のpHにおいて水(または水溶液、例えば緩衝液)に可溶性である場合、そのポリマーは通常、胃液に可溶性である。同様に、ポリマーが5~8のpHにおいて水(または水溶液、例えば緩衝液)に可溶性である場合、そのポリマーは通常、腸液に可溶性である。あるいは、胃液および腸液の組成は既知であり、in vitroにおいて再現することができる。ポリマーがin vitroにおいて人工の胃液または腸液に可溶性である場合、それは通常、in vivoにおいてそれぞれ胃液または腸液に可溶性である。
【0069】
フィルム形成性非イオン性ポリマーは、胃液、十二指腸液、空腸液および回腸液から選択される少なくとも1種の液体に可溶性であり得る。しかしながら、好ましい実施形態において、フィルム形成性非イオン性ポリマーの水への溶解度は、pHに依存せず、少なくとも腸において見られるpHの範囲内ではpHに依存しない。好ましい実施形態において、フィルム形成性非イオン性ポリマーは、胃および腸の任意の地点における液体に、すなわち、胃腸液に可溶性である。
【0070】
内層の非イオン性ポリマーは、非イオン性セルロース系ポリマーであることが好ましい。好適な非イオン性セルロース系ポリマーの例には、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が含まれる。特に好ましい非イオン性セルロース系ポリマーはHPMCである。非セルロース系ポリマー、例えば、ポリ(エチレンオキシド)グラフトポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジノン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、PVPグラフト化PEGおよびポリビニルアルコール(PVA)もまた好ましい。非イオン性ポリマーの混合物を使用することができる。特に好ましい混合物は、HPMCおよびPEGである。
【0071】
塩基
好ましい実施形態において、内層は少なくとも1種の塩基を含んでなる。塩基の目的は、腸液が外層に浸透し始めた時点で、外層の下側にアルカリ性環境を提供することである。特定の理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、アルカリ性環境のpHが第2のポリマー材料のpH閾値より高いため、アルカリ性環境が外層の溶解と、それによる崩壊とを促進し、それにより、一度外層コーティングが溶解および/または崩壊すると、製剤からの薬物の放出が加速されると考える。
【0072】
原則として、薬理学的に許容可能な任意の塩基を使用することができる。塩基は通常、非ポリマー化合物である。好適な塩基には、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウム、ならびに有機塩基、例えば、トリエタノールアミン、重曹、炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウムまたは生理学的に許容可能なアミン(例えば、トリエチルアミン)が含まれる。
【0073】
塩基は、好ましくは、水酸化物塩基、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属クエン酸塩または生理学的に許容可能なアミンからなる群から選択される。より好ましくは、塩基は水酸化物塩基であり、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0074】
内層に存在する塩基の量は、所与のバッチのコアをコーティングする前の内層コーティング調製物の最終pH、そのバッチにおいてコーティング対象のコアの数、およびバッチのコーティングプロセスにおいて使用される内層コーティング調製物の量に少なくとも部分的に依存する。
【0075】
緩衝剤
内層は、少なくとも1種の緩衝剤を含んでなる。緩衝剤の目的は、腸液が外層に浸透し始めた時点で、外層の下側に緩衝容量を提供することまたは増加させることである。特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、緩衝剤が、溶解する内層における緩衝容量を増加させ、外層におけるポリマーのイオン化および溶解を助けると考える。所与のpHでは、緩衝容量が大きいほどポリマーの溶解速度が速くなる。内層に塩基が存在する実施形態では、腸液が外層に浸透すると、緩衝剤は外層の下側にアルカリ性環境を維持するのに役立つ。
【0076】
緩衝剤は、20重量%より多く約60重量%以下の量で内層に存在する。好ましくは、緩衝剤は、内層における非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約20重量%より多く約50重量%以下、または約25重量%以上約40重量%以下、例えば約30重量%の量で内層に存在する。
【0077】
緩衝剤は、当業者に知られている任意の好適な緩衝剤であり得る。緩衝剤は、有機酸、例えば、薬理学的に許容可能な非ポリマーカルボン酸、例えば、1~16個、好ましくは1~3個の炭素原子を有するカルボン酸であり得る。好適なカルボン酸は、WO2008/135090Aに開示されている。クエン酸はそのようなカルボン酸の例である。カルボン酸は、カルボン酸塩の形態において使用可能であり、カルボン酸、カルボン酸塩またはその両方の混合物もまた使用可能である。
【0078】
緩衝剤はまた、無機塩、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩および可溶性金属塩であり得る。可溶性金属塩の金属としては、マンガン、鉄、銅、亜鉛およびモリブデンが挙げられる。さらに好ましくは、無機塩は、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩およびホウ酸塩から選択される。リン酸塩、例えば、リン酸二水素カリウムは、コーティング溶液のpH、例えばpH8におけるそれらのより大きな緩衝容量のために、その他の無機緩衝塩および有機酸緩衝剤よりも好ましい。
【0079】
別の好ましい実施形態において、緩衝剤は、塩錯体の形態において塩基と組み合わされる。塩基は、好ましくは、水酸化物塩基、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属クエン酸塩または生理学的に許容可能なアミンからなる群から選択される。より好ましくは、塩基は水酸化物塩基であり、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0080】
オプションの追加の層
内層はコアの表面と直接接触している。すなわち、内層は、薬物自体もしくはコーティングされていないコアを形成する薬物と、1種もしくは2種以上の賦形剤との混合物、または仕切られているコア(すなわち仕切り層(isolation layer)でコーティングされているコア)の表面と直接接触している。したがって、本発明の製剤は、コアの一部として、すなわち、活性コアの表面と内層との間に、追加の仕切り層を有し得る。
【0081】
コアの組成が遅延放出コーティングと不適合である場合、仕切り層が望ましい場合がある。例えば、内層が、外層の溶解および分解を補助すると考えられるアルカリ性環境を提供する実施形態を、本発明は包含する。しかしながら、コアが酸性基を有する薬物を含む場合には、内層はコアと不適合である可能性がある。酸性基を有する薬物の例は、5-ASAである。このような場合、通常、仕切り層を有することが適切である。
【0082】
当業者に知られている任意の好適な仕切り層を使用することができる。好ましい一実施形態において、仕切り層は非イオン性ポリマーを含んでなる。好適な非イオン性ポリマーには、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(エチレンオキシド)-グラフト-ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリビニルアルコール(PVA)が含まれる。HPMCまたはPVAが好ましい。非イオン性ポリマーの混合物を使用することもできる。特に好ましい混合物は、HPMCおよびPEGである。仕切り層はさらに、可塑剤を含むことができる。好適な可塑剤には、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル(TEC)、トリアセチンおよびクエン酸アセチルトリエチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
中間層が製剤の放出特性に悪影響を及ぼさないという条件で、外層と内層との間に中間層を有することも可能である。しかしながら、外層は通常、内層と接触した状態において提供される。すなわち、外層は通常、内層の上に直接設けられ、すなわち、通常、内層と外層とを分離する中間層は存在しない。
【0084】
製剤は、場合により、本発明の遅延放出組成物層をコーティングする外層を有することができる。例えば、遅延放出組成物層がオイドラギット(登録商標)Lおよびデンプンの混合物を含む場合、約7のpH閾値を有するpH依存性放出コーティング材料、例えば、オイドラギット(登録商標)Sの外層を追加することは、好ましい可能性がある。本発明の遅延放出コーティングは、好ましくは、製剤の外層コーティングである。有利なことに、組成物が遅延放出組成物であることを確実にするために外層を追加する必要はないことが見出された。
【0085】
コア
「コア」は、その上にコーティングが施される固体である。コアは、任意の好適な剤形、例えば、錠剤、ペレット、顆粒、微粒子、硬質もしくは軟質カプセル、またはマイクロカプセルであり得る。好ましい実施形において、コアは錠剤またはカプセルである。
【0086】
コアは薬物を含んでなる。薬物は、コアの本体内(例えば、錠剤もしくはペレットのマトリックス内)またはカプセル内に包まれた内容物内に含まれ得る。あるいは、例えば、コアが食用材料、例えば、砂糖のビーズである場合、例えば、コアがノンパレイユビーズまたは糖衣錠の形態である場合、薬物は、コアに施されたコーティングの中に存在し得る。
【0087】
コアは、薬物のみからなっていてもよく、またはより一般的には、薬物および少なくとも1種の薬理学的に許容可能な賦形剤からなっていてもよい。これに関連して、コアは通常、錠剤またはペレットである。錠剤の場合、コアは通常、薬物および1種または2種以上の賦形剤の混合物からなる。該1種または2種以上の賦形剤は、充填または希釈材料、例えば、ラクトースまたはセルロース材料(例えば、微結晶セルロース);結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);崩壊剤、例えばクロスカルメロースナトリウム(例えば、Ac-Di-Sol(登録商標))およびデンプングリコール酸ナトリウム(例えば、エキスプロタブ(登録商標));かつ/あるいは、滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよびタルクから選択される。コアは、これらの材料の少なくともいくつかを含んでなる圧縮された顆粒であり得る。
【0088】
コアはコーティングされていなくてもよく、あるいは、上記のように、コア自体が、その上に内層コーティングおよび次いで外層コーティングが施される仕切り層のようなコーティング層を備え得る。
【0089】
各コアの最小直径は、一般的に少なくとも約10-4m、通常は約5×10-4m以上、好ましくは約10-3m以上である。最大直径は通常、30mm以下、典型的には25mm以下、好ましくは20mm以下である。好ましい実施形態において、コアの直径は、約0.2mm以上約25mm以下、好ましくは約0.2mm以上約4mm以下(例えば、ペレットまたはミニ錠剤の場合)または約5mm以上約25mm以下(例えば、ある種の錠剤またはカプセルの場合)である。「直径」という用語は、中心を通る最大の直線寸法を指す。
【0090】
特にコアが「小さい」、例えば直径が5mm未満である実施形態において、薬物の単回投与を提供するために、製剤は、複数個のコーティングされたコアを含み得る。直径が3mm未満の粒子を含んでなるマルチユニット剤形が好ましい。
【0091】
本発明は、同じ剤形、例えばカプセル中に、少なくとも2種の複数個の粒子、例えばコーティングされたペレットを含んでなる多相薬物放出製剤において適用され、ここで、1種の複数個の粒子は、もう一方の複数個の粒子、またはそれぞれのその他の複数個の粒子からコーティングによって区別される。コーティングは、コーティングの厚みまたは組成、例えば、成分の比率および/または種類(identity)に関して、1種の複数個の粒子ごとに異なる場合がある。多相薬物放出製剤は、腸に沿った様々な領域を侵すクローン病の患者に特に適している。
【0092】
本発明による製剤からの放出は、腸、好ましくは結腸まで遅延される。特定の製剤からの放出は持続する可能性もある。しかしながら、好ましい製剤において、放出はパルス放出である。
【0093】
薬物放出に適した条件への最初の曝露から薬物放出の開始までの時間は「遅延時間」として知られている。「遅延時間」は、様々な要因、例えば、コーティングの厚みおよび組成に依存する。本発明による製剤は、通常、結腸条件において少なくとも30分の遅延時間を示す。本発明のほとんどの実施形態において、遅延時間は、約30分~約3時間であり、好ましい製剤において、遅延時間は、好ましくは約45分~約2時間である。
【0094】
製剤は通常、2時間後に酸性媒体における薬物放出が10重量%未満である場合に、胃抵抗性と定義される。本発明による製剤は、通常は、酸性媒体において10重量%よりきわめて少ない薬物放出を示し、胃抵抗性であると見なされ得る。製剤は通常、酸性媒体において1重量%未満の薬物放出を示し、通常、酸性媒体において実質的に薬物放出を示さない。デンプンをアクリレートフィルム形成材料と組み合わせてコアのコーティングを形成させる場合、胃および小腸の模擬条件において、通常、6時間で5%未満の薬物放出が起こる。デンプンとコアのコーティング用のセルロースフィルム形成材料との組み合わせでは、通常、胃および小腸の模擬条件において、5時間で10%未満の薬物放出が起こる。
【0095】
薬物放出に適した条件への最初の曝露から完全な薬物放出までの時間もまた、様々な要因、例えば、コーティング組成および薬物の性質に依存する。本発明のほとんどの実施形態において、この時間は通常5時間以内である。好ましい実施形態において、この時間は通常4時間以内である。
【0096】
方法
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による遅延放出製剤を製造する方法であって、
以下の工程:
薬物を含んでなるコアを形成させる工程;
腸液または胃腸液に可溶性であるフィルム形成性非イオン性ポリマーを、前記非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約20重量%より多く約60重量%以下の量の緩衝剤を含む水性溶媒中に溶解させて、pH7より高いpHを有する内層コーティング調製物を形成させる工程;
前記内層コーティング調製物を使用して前記コアをコーティングして、内層でコーティングされたコアを形成させる工程;および
溶媒系中に約pH6以上のpH閾値を有するフィルム形成性腸溶性ポリマーを含んでなる外層コーティング調製物により、前記内層でコーティングされたコアをコーティングして、外層でコーティングされたコアを形成させる工程
を含んでなる、前記方法が提供される。
【0097】
この方法は、好ましくは、溶媒中にフィルム形成性非イオン性ポリマーを含んでなる仕切り層コーティング調製物により、コアを最初にコーティングし、内層コーティング調製物によりコーティングするための仕切り層でコーティングされたコアを形成させることを含んでなる。仕切り層コーティング調製物の非イオン性ポリマーの種類は、内層コーティング調製物の非イオン性ポリマーの種類と同一であることがさらに好ましい。好ましいフィルム形成性非イオン性ポリマーは、上記のとおりである。
【0098】
いくつかの実施形態において、水性溶媒中に存在する緩衝剤の量は、内層コーティング調製物の目的pHを達成するのに十分ではない。それらの実施形態において、塩基はpHを必要なレベルに上昇させるのに十分な量で内層コーティング調製物に添加される。内層コーティング調製物に添加される塩基の量は、内層コーティング調製物のpHを約pH7.5以上約pH10以下の範囲、より好ましくは約pH7.5以上約pH8.5以下の範囲、最も好ましくは約pH8に上昇させるのに十分であることがさらに好ましい。
【0099】
好ましい塩基は上記のとおりである。
【0100】
非イオン性ポリマーが、非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約2mg/cm以上約5mg/cm以下、例えば約3mg/cmの量でコアにコーティングされるまで、コアを内層コーティング調製物によりコーティングすることが好ましい。
【0101】
緩衝剤は、好ましくは、非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約20重量%より多く約50重量%以下、約25重量%以上約40重量%以下、例えば約30重量%の量で内層コーティング調製物中に存在する。好ましい緩衝剤は上記のとおりである。
【0102】
外層コーティング調製物は、腸溶性ポリマーと、結腸の酵素による分解を受けやすい酵素分解性ポリマーとの混合物を含んでなることが好ましい。酵素分解性ポリマーおよび腸溶性ポリマーが外層コーティング調製物中に存在する場合、それらは10:90より大きく80:20以下の比率、例えば10:90~60:40、好ましくは25:75~60:40の比率において存在することがさらに好ましい。いくつかの特に好ましい実施形態において、比率は15:85~35:65、例えば25:75~35:65、好ましくは約30:70である。その他の特に好ましい実施形態において、比率は40:60~約60:40、例えば約50:50である。
【0103】
外層における使用に適した好ましい酵素分解性ポリマーおよび腸溶性ポリマーは、上記のとおりである。
【0104】
腸溶性ポリマーが約2mg/cm以上約10mg/cm以下、例えば約2mg/cm以上約8mg/cm以下、または約4mg/cm以上約8mg/cm以下、または約5mg/cm以上約8mg/cm以下、または約6mg/cm以上約8mg/cm以下、または約7mg/cm以上約8mg/cm以下、例えば、約7.5mg/cmの量で、内層でコーティングされたコアにコーティングされるまで、内層でコーティングされたコアを外層コーティング調製物によりコーティングすることが好ましい。
【0105】
外層コーティング調製物が腸溶性ポリマーおよび酵素分解性ポリマーの混合物を含んでなる実施形態において、外層コーティング調製物を調製する方法は、典型的には、以下の工程:
腸溶性ポリマーを含んでなる有機溶液または水性分散液を形成させる工程;
酵素分解性ポリマーを含んでなるアルコール溶液または水溶液を形成させる工程;および
腸溶性ポリマーを含んでなる有機溶液または水性分散液に、酵素分解性ポリマーを含んでなるアルコール溶液または水溶液の少なくとも一部を添加し、好ましくは滴状に添加し、外層コーティング調製物を形成させる工程
を含んでなる。
【0106】
酵素分解性ポリマーがデンプンである実施形態において、好ましくは、それは少なくとも1種のアルコール、好ましくはC-Cアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、プロパン-2-オール、ブタン-1-オール、ブタン-2-オールおよびそれらの混合物、特にブタン-1-オール単独に分散させ、次いで、通常よく撹拌しながら水を添加する。得られた水性分散液を通常、沸騰するまで加熱し、次いで、一晩撹拌しながら冷却する。アルコールの目的は、第1の材料を溶媒和させ、水性分散液を形成させる準備をすることである。あるいは、材料を水に直接分散させることもできる。
【0107】
腸溶性ポリマーは通常少なくとも1種の溶媒、例えば、水または有機溶媒に溶解する。有機溶媒は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパン-2-オール、メチルグリコール、ブチルグリコール、アセトン、酢酸メチルグリコールおよびそれらの混合物(例えば、アセトンおよびイソプロピルアルコール混合物(例えば、約2:3の比率))であり得る。腸溶性ポリマーは、高速撹拌下において好ましくはエタノール(好ましくは85~98%)に溶解する。
【0108】
外層コーティング調製物は好ましくは、酵素分解性ポリマーを含んでなる適切な量のアルコール溶液または水溶液またはアルコール分散液または水性分散液を、腸溶性ポリマーを含んでなる有機溶液または水性分散液に急速撹拌下において滴状に添加することにより形成される。さらなる賦形剤、例えば、可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル(TEC))および/または滑沢剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン)が、通常撹拌しながら調製物に添加される。
【0109】
異なる態様
さらなる態様において、療法によるヒトまたは動物の身体の医学的治療方法における使用のための第1の態様による製剤が提供される。
【0110】
コアは少なくとも1種の薬剤を含んでなる。製剤は通常、唯一の治療有効成分として単剤を投与するために使用される。しかしながら、2種以上の薬物を単剤において投与することができる。
【0111】
本発明の製剤は、任意のサイズのコアを含んでなることができる。いくつかの実施形態において、薬物は、約50mg以上約1650mg以下、または約100mg以上約1550mg以下、または約150mg以上約1500mg以下、または約200mg以上約1450mg以下、または約250mg以上約1400mg以下、または約300mg以上約1350mg以下、または約350mg以上約1300mg以下、または約400mg以上約1250mg以下、または約450mg以上約1200mg以下、または約500mg以上約1150mg以下、または約550mg以上約1100mg以下、または約600mg以上約1050mg以下、または約650mg以上約1000mg以下、または約700mg以上約950mg以下、または約800mg以上約1600mg以下、または約850mg以上約1600mg以下、または約900mg以上約1500mg以下、または約950mg以上約1400mg以下、または約1000以上約1300mg以下、または約1150以上約1200mg以下の量で製剤のコア中に存在する。好ましくは、薬物は、約400mg、約800mg、約1200mg、約1500mgまたは約1600mgから選択される量でコア中に存在する。
【0112】
本発明の製剤は、広範囲の薬物を投与するように設計されている。好適な薬物として、既知の遅延放出経口製剤を使用する腸内投与用に知られている薬物がある。本発明は、局所的または全身的効果を有する薬物を投与するために使用され得る。
【0113】
本発明の製剤は、少なくとも1つの酸性基(例えば、カルボン酸基)を含む薬物の腸内投与において特に適用される。そのような薬物は、酸性薬物または双性イオン性薬物であり得る。そのような薬物の例は、5-アミノサリチル酸(5-ASA)である。
【0114】
製剤中の薬物の種類は、治療される状態に明確に依存する。これに関連して、この製剤は、IBD(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)、IBS、便秘、下痢、感染症および癌腫(特に結腸癌または結腸直腸癌)の治療に特に適用される。
【0115】
IBDの治療または予防のために、製剤は、抗炎症剤(例えば、5-ASA、4-ASA、スルファサラジンおよびバルサラジド)、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェンおよびジクロフェナク)、ステロイド(例えば、プレドニゾロン、ブデソニドまたはフルチカゾン)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロスポリンおよびメトトレキサート)、抗生物質ならびに生物製剤(例えば、ペプチド、タンパク質および抗体フラグメント)からなる群から選択される少なくとも1種の薬物を含んでなり得る。生物製剤の好適な例には、アルカリホスファターゼおよび抗TNF抗体(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブおよびウステキヌマブ)が含まれる。
【0116】
癌の治療または予防のために、製剤は少なくとも1種の抗腫瘍剤を含んでなり得る。好適な抗腫瘍剤には、フルオロウラシル、メトトレキサート、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、エトポシド、タキソール、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ダウノルビシン、VP-16、ラルチトレキセド、オキサリプラチンならびにその薬理学的に許容可能な誘導体および塩が含まれる。結腸癌または結腸直腸癌、主に大腸炎を患っている患者における結腸癌または結腸直腸癌の予防のために、製剤は、抗炎症剤である5-ASA、スリンダク、セレコキシブおよび/またはエフロルニチン(DFMO)を含んでなり得る。
【0117】
IBS、便秘、下痢または感染症の治療または予防のために、製剤はこれらの状態の治療または予防に適した少なくとも1種の有効薬剤を含んでなり得る。
【0118】
薬物の薬理学的に許容可能な誘導体および/または塩もまた、製剤に使用され得る。プレドニゾロンの好適な塩の例は、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムである。さらなる例は、プロピオン酸フルチカゾンである。
【0119】
本発明は、IBD(特に潰瘍性大腸炎)の治療または結腸癌もしくは結腸直腸癌(主に大腸炎患者)の予防において特に適用され、両方に5-ASAを使用する。また、結腸を介した全身循環への薬物の入る入口としても適用される。これは、上部消化管で不安定なペプチドおよびタンパク質の薬物にとって特に有利である。本発明はまた、時間療法(chronotherapy)の目的のために利用され得る。
【0120】
本発明の第3の態様において、上記で定義された製剤を患者に投与することを含んでなる、薬物を結腸に標的化する方法が提供される。
【0121】
本発明の第4の態様において、IBD(特に潰瘍性大腸炎)、IBS、便秘、下痢、感染症および癌の治療または予防のための薬剤の製造における、上記で定義された製剤の使用が提供される。
【0122】
IBDの治療に使用するための上記で定義された製剤を含んでなる医薬の製造における、抗炎症剤およびステロイドから選択される少なくとも1種の薬剤の使用も提供される。さらに、癌腫の治療に使用するための上記で定義された製剤を含んでなる医薬の製造における少なくとも1種の抗腫瘍剤の使用も提供される。さらに、結腸癌または結腸直腸癌の予防における使用のための上記で定義された製剤を含んでなる医薬の製造における5-ASAの使用も提供される。
【0123】
本発明の第5の態様によれば、上記で定義された治療量の製剤を患者に投与することを含んでなる、IBDまたは癌腫の医学的治療または予防の方法が提供される。
【0124】
製剤は、通常は、製剤の総重量を基準として、約0.01重量%以上約99重量%以下の治療有効量のその薬物または各薬物を含んでなる。実際の投与量は、当業者が一般的な知識を使用して決定する。しかしながら、例として、「低」用量製剤は、通常は約20重量%以下の薬物を含んでなり、好ましくは、約1重量%以上約10重量%以下、例えば、約5重量%の薬物を含んでなる。「高」用量製剤は、通常は40重量%以上、好ましくは約45重量%以上約85重量%以下、例えば約50重量%または約80重量%の薬物を含んでなる。
【0125】
食物効果
従来の遅延放出剤形からの薬物放出プロファイルは、胃の状態、すなわち、胃が「摂食」状態にあるか「空腹」状態にあるかに依存することが多い。簡単に言えば、「摂食状態」は、tlag(すなわち剤形からの薬物の放出開始までの時間)に影響を及ぼし得る胃滞留時間の延長につながる。さらに、胃を出発した後の迅速なin vivo溶解は、Cmaxまたは薬物のピーク血漿濃度の増加につながり得る。
【0126】
薬物放出の胃の状態への依存性は、「食物効果(food effect)」という言葉として知られており、従来の剤形が空腹時に、または食物と一緒に、または食物の直後に投与されることが多い理由である。明らかに、早期の薬物放出により患者の安全性および有効性に悪影響を及ぼし得る経口剤形が投与され得る際に指示されているように、顕著な食物効果は望ましくない。
【0127】
剤形を最初に0.1N HClに2時間(空腹状態)または摂食時人工胃液(FeSSGF)に、例えば、pH5で4時間曝露することにより、空腹状態および摂食状態をin vitroにおいて模擬化することができる。模擬化された空腹状態または摂食状態の後、錠剤はさらに、回腸結腸領域の状態を模擬化するために、pH7.4のクレブス緩衝液に少なくとも4時間曝露される。以下に説明する例のように、錠剤を4時間以上、例えば、pH6.8のハンクス緩衝液に10時間曝露すると、模擬化された上部小腸条件における錠剤の「ロバストネス(robustness)」の指標を提供することができる。
【0128】
FeSSGFの例は、Jantratid et al(2008)“Dissolution media simulating conditions in the proximal human gastrointestinal tract:An update.”(Pharm.Res.25(7):1663-1676)に記載されている。簡単に言えば、このFeSSGFの例は、ミルクと酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液との混合物(50:50)および塩化ナトリウムで構成されている。
【0129】
例として、本発明者らは、コーティングした800mgの5-ASA錠剤(オイドラギット(登録商標)Sの単一コーティングによりコーティングした)が、模擬化された空腹状態の条件と比較して、この模擬化された摂食状態の条件にin vitroにおいて曝露された場合、より短いtlagを示すことを見出した。5-ASAの早期の放出開始は、小腸における薬物の吸収をもたらす可能性があり、全身性の副作用の増加につながる可能性がある。同様の作用が、5-ASAの部位特異的な結腸での放出を意図したリアルダ(登録商標)/メザバント(登録商標)(Cosmo Pharmaceuticals製/Shire製の1200mgの5-ASA錠剤製剤)においてin vitroおよびin vivoの両方で見られる。
【実施例
【0130】
以下、本発明のいくつかの好ましい実施形態を、図面を参考にして説明する。
【0131】
図1は、(a)FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合、および(b)FeSSGFに4時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、比較例1によるコーティングされた5-ASA錠剤からの薬物放出を時間の関数として比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
【0132】
図2は、FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、比較例2および3ならびに実施例1~3によるコーティングされた5-ASA錠剤からの薬物放出を時間の関数として比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
【0133】
図3は、(a)FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合、および(b)FeSSGFに4時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、比較例3によるコーティングされた5-ASA錠剤からの薬物放出を時間の関数として比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
【0134】
図4は、(a)FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合、および(b)FeSSGFに4時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、実施例1によるコーティングされた5-ASA錠剤からの薬物放出を時間の関数として比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
【0135】
図5は、(a)FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合、および(b)FeSSGFに4時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、実施例2によるコーティングされた5-ASA錠剤からの時間の関数としての薬物放出を比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
【0136】
図6は、(a)FaSSGFに2時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合、および(b)FeSSGFに4時間曝露し、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)に10時間曝露した場合の、実施例3によるコーティングされた5-ASA錠剤からの薬物放出を時間の関数として比較するグラフである。pH7.4クレブス緩衝液におけるデータのみが示されている。
【0137】
材料
オイドラギット(登録商標)S100は、Evonik GmbH(Darmstadt、ドイツ)から購入した。トウモロコシデンプン(Eurylon(登録商標)6)はRoquette(Lestrem、フランス)から購入した。ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)、ブタン-1-オール、クエン酸トリエチル(TEC)、エタノール95%、ブタノール、リン酸二水素カリウム(KHPO)、リン酸水素ナトリウム・二塩基二水和物(NaHPO・2HO)および水酸化ナトリウムはすべて、Sigma-Aldrich(Buchs、スイス)から購入した。HPMC(ファーマコート(登録商標)603)は、信越から購入した。オパドライ(登録商標)AMBはColorconから購入した。モノステアリン酸グリセリン(GMS)はCognisから購入した。ポリエチレングリコール(PEG6000)はAldrichから購入した。赤色酸化鉄および黄色酸化鉄(Sicovit)はBASFから購入した。
【0138】
錠剤コア
800mgの5-ASA(実施例1~3ならびに比較例2および3)および1200mgの5-ASA(比較例1)を含む錠剤コアを準備した。
【0139】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の仕切り層により、比較例1~3および実施例1の錠剤コアをコーティングし、一方、ポリビニルアルコール(PVA)系のコーティング材料であるオパドライ(登録商標)AMBの仕切り層により、実施例2および3の錠剤コアをコーティングした。
【0140】
コーティングされた錠剤コアの調製
比較例1および2(HPMC仕切り層によりコーティングされた5-ASA錠剤コア/緩衝剤および塩基により中和されたオイドラギット(登録商標)S100の内層/オイドラギット(登録商標)S100および高アミロースデンプンの50:50(比較例1)または70:30(比較例2)混合物の外層)
仕切り層
以下の量におけるHPMCおよび20%のPEG6000の水性混合物を仕切り層に適用した。
【0141】
【表1】
【0142】
磁気撹拌下においてHPMCを水に溶解させ、次いで、PEG6000を添加して仕切り層コーティング調製物を形成させた。
【0143】
HPMCのコーティング量が3mgポリマー/cmになるまで、400gのバッチサイズに対して0.8Lのドラムを有するパンコーターを使用して、仕切り層コーティング調整物を5-ASAのコア上に噴霧し、仕切り層でコーティングされたコアを形成させた。噴霧コーティングのパラメータは以下のとおりである。
【0144】
【表2】
【0145】
内層
pHを8に調整したオイドラギット(登録商標)S100の水性調製物を内層に適用した。内層の組成物はまた、70%TEC(乾燥ポリマー重量を基準として)、1%KHPO(乾燥ポリマー重量を基準として)、10%GMS(乾燥ポリマー重量を基準として)および40%ポリソルベート80(GMSの重量を基準として)も含んでいた。pH8になるまで、1M NaOHを使用してpHを調整した。
【0146】
【表3】
【0147】
必要量のKHPOおよびTECを蒸留水に溶解させ、次いで、機械撹拌下においてオイドラギット(登録商標)S100を分散させて、内層コーティング調製物を調製した。次いで、1M NaOHによりpHをpH8に調整し、1時間混合し、中和されたオイドラギット(登録商標)S溶液を形成させた。
【0148】
GMSエマルジョンを10%w/wの濃度で調製した。ポリソルベート80(GMS重量を基準として40%)を蒸留水に溶解させ、次いで、GMSを分散させた。次いで、強力な磁気撹拌下において、この調製物を75℃に15分間加熱し、エマルジョンを形成させた。エマルジョンを撹拌しながら室温に冷却した。
【0149】
GMSエマルジョンを中和されたオイドラギット(登録商標)S溶液に添加し、オイドラギット(登録商標)S100のコーティング量が5mgポリマー/cmに達するまで、穿孔パンコーターを使用して、最終の内層コーティングを仕切り層でコーティングされた錠剤に噴霧し、内層でコーティングされたコアを形成させた。噴霧コーティングのパラメータは以下のとおりである。
【0150】
【表4】
【0151】
外層
50%のオイドラギット(登録商標)S100および50%の高アミロースデンプンから形成された外層コーティング(比較例1)または70%のオイドラギット(登録商標)S100および30%の高アミロースデンプンから形成された外層(比較例2)により、内層でコーティングされた錠剤コアをコーティングした。
【0152】
以下の量(オイドラギット(登録商標)S100の乾燥ポリマー重量を基準とする)のデンプン水性分散液およびオイドラギット(登録商標)S100エタノール溶液の混合物を外層コーティングに適用した。
【0153】
【表5】
【0154】
磁気撹拌下において、高アミローストウモロコシデンプン(Eurylon(登録商標)6、AmyloN-400としても知られる)をブタン-1-オール中に分散させ、次いで、水中に分散させてデンプン水性分散液を調製した。得られた分散液を沸騰するまで加熱し、次いで、一晩撹拌しながら冷却した。
【0155】
高速撹拌下において96%エタノール中にオイドラギット(登録商標)S100を分散させることによって、オイドラギット(登録商標)S100溶液を調製した。
【0156】
撹拌下においてオイドラギット(登録商標)S100溶液にデンプン水性分散液を滴状に添加し、オイドラギット(登録商標)S100:デンプンの比50:50(比較例1)または70:30(比較例2)を得た。混合物を1時間撹拌し、クエン酸トリエチルおよびGMSエマルジョン(事前にポリソルベート80により調製された)を添加し、さらに30分間混合した。赤色酸化鉄および黄色酸化鉄の懸濁液を添加し、混合物をさらに10分間撹拌した。
【0157】
GMSエマルジョンを5%w/wの濃度で調製した。ポリソルベート80(Tween(登録商標)、GMS重量を基準として40%)を蒸留水に溶解させ、次いで、GMSを分散させた。強力な磁気撹拌下において分散液を75℃に15分間加熱して、エマルジョンを形成させた。エマルジョンを撹拌しながら室温に冷却した。
【0158】
ホモジナイズ下において(under homogenization)赤色酸化鉄顔料および黄色酸化鉄顔料を96%エタノールに10分間懸濁することによって、顔料懸濁液を形成させた。
【0159】
オイドラギット(登録商標)S100のコーティング量が5mgポリマー/cmになるまで、仕切り層をコーティングするために使用したのと同じ、400gのバッチサイズに対して0.8Lのドラムを有するパンコーターを使用して、最終外層コーティング調製物を内層でコーティングされたコア上に噴霧した。噴霧コーティングのパラメータは以下のとおりである。
【0160】
【表6】
【0161】
比較例3および実施例1(HPMC仕切り層によりコーティングされた5-ASA錠剤コア/10重量%の緩衝塩(比較例3)または30重量%の緩衝塩(実施例1)と、塩基とを含むHPMCの内層/オイドラギット(登録商標)S100および高アミロースデンプンの70:30混合物の外層)
比較例1および2について記載したように仕切り層をコーティングした。
【0162】
以下の量におけるHPMC、20%のPEG6000(HPMCの乾燥重量を基準とする)およびKHPO緩衝剤の混合物を内層に適用した。
【0163】
【表7】
【0164】
磁気撹拌下において必要量のKHPOおよびPEG6000を水に溶解することによって、内層コーティング調製物を調製した。HPMCをゆっくりと添加し、完全な溶解が観察されるまで撹拌した。一定分量の1M NaOHを添加することにより、溶液のpHをpH8に調整した。
【0165】
HPMCのコーティング量が3mgポリマー/cmになるまで、仕切り層に使用したのと同じパンコーターを使用して、内層コーティング調整物を仕切り層でコーティングされたコア上に噴霧し、内層でコーティングされたコアを形成させた。噴霧コーティングのパラメータは以下のとおりである。
【0166】
【表8】
【0167】
外層
30%のオイドラギット(登録商標)S100および70%の高アミロースデンプンから形成された外層コーティングにより、内層でコーティングされた錠剤コアをコーティングした。
【0168】
以下の量(オイドラギット(登録商標)S100の乾燥ポリマー重量を基準とする)におけるデンプン水性分散液およびオイドラギット(登録商標)S100エタノール溶液の混合物を外層コーティングに適用した。
【0169】
【表9】
【0170】
磁気撹拌下において、高アミローストウモロコシデンプン(Eurylon(登録商標)6、AmyloN-400としても知られる)をブタン-1-オール中に分散させ、次いで、水中に分散させてデンプン水性分散液を調製した。得られた分散液を沸騰するまで加熱し、次いで、一晩撹拌しながら冷却した。
【0171】
高速撹拌下において96%エタノール中にオイドラギット(登録商標)S100を分散させることによって、オイドラギット(登録商標)S100溶液を調製した。
【0172】
撹拌下においてオイドラギット(登録商標)S100溶液にデンプン水性分散液を滴状に添加し、オイドラギット(登録商標)S100:デンプンの比30:70(実施例1および2)または50:50(実施例3)を得た。混合物を1時間撹拌し、クエン酸トリエチルおよびGMSエマルジョン(事前にポリソルベート80により調製された)を添加し、さらに30分間混合した。赤色酸化鉄および黄色酸化鉄の懸濁液を添加し、混合物をさらに10分間撹拌した。
【0173】
GMSエマルジョンを5%w/wの濃度で調製した。ポリソルベート80(Tween(登録商標)、GMS重量比で40%)を蒸留水に溶解させ、次いで、GMSを分散させた。分散液を強力な磁気撹拌下において75℃に15分間加熱して、エマルジョンを形成させた。エマルジョンを撹拌しながら室温に冷却した。
【0174】
ホモジナイズ下において赤色酸化鉄顔料および黄色酸化鉄顔料を96%エタノールに10分間懸濁することによって、顔料懸濁液を形成させた。
【0175】
オイドラギット(登録商標)S100のコーティング量が5mgポリマー/cmになるまで、仕切り層をコーティングするために使用したのと同じ、400gのバッチサイズに対して0.8Lのドラムを有するパンコーターを使用して、最終外層コーティング調製物を内層でコーティングされたコア上に噴霧した。噴霧コーティングのパラメータは以下のとおりである。
【0176】
【表10】
【0177】
実施例2および実施例3(PVA系の仕切り層によりコーティングされた5-ASA錠剤コア/緩衝剤および塩基を含むHPMCの内層/オイドラギット(登録商標)S100および高アミロースデンプンの30:70混合物の外層)
仕切り層
3.1mg/cm(総固形分)におけるオパドライ(登録商標)AMBの水性分散液を仕切り層に適用した。
【0178】
オパドライ(登録商標)AMBは、ポリビニルアルコール(PVA)系の完全に調合されたコーティングシステムである。オパドライ(登録商標)AMBを、30分間磁気撹拌しながら精製水で希釈して、仕切り層コーティング調製物を調製した。
【0179】
オパドライ(登録商標)AMBのコーティング量が目的の量に達するまで、400gのバッチサイズに0.8Lのドラムを有するパンコーターを使用して、仕切り層コーティング調整物を5-ASAのコア上に噴霧して、仕切り層でコーティングされたコアを形成させた。噴霧コーティングのパラメータは、比較例3および実施例1の場合と同じであった。
【0180】
内層
以下の量におけるHPMC、20%のPEG6000(HPMCの乾燥重量を基準として)およびKHPO緩衝剤の混合物を内層に適用した。
【0181】
【表11】
【0182】
比較例3および実施例1に従って、内層を調製し、仕切り層でコーティングされたコアに適用した。
【0183】
外層
比較例3および実施例1に従って、外層コーティングを調製および適用した。
【0184】
結果
薬物放出試験#1:模擬化された空腹状態、次いで、pH7.4のクレブス緩衝液
50rpmのパドル速度および37℃±0.5℃の媒体温度の条件下、USPタイプII装置により、in vitro溶解試験を実施した。
【0185】
「空腹」状態を模擬化するために、錠剤を最初に0.1M HCl中で2時間(FaSSGF)、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)中で10時間試験した。
【0186】
薬物放出試験#2:模擬化された摂食状態、次いで、pH7.4のクレブス緩衝液
50rpmのパドル速度および37℃±0.5℃の媒体温度の条件下、USPタイプII装置により、in vitro溶解試験を実施した。
【0187】
「摂食」状態を模擬化するために、錠剤を最初に摂食時人工胃液(FeSSGF)pH5.0中で4時間、次いで、クレブス緩衝液(pH7.4)中で10時間試験した。FeSSGFは、上記のJantrid et al (2008)に記載されているとおりであった。
【0188】
結果を図1~6に示す。
【0189】
比較例1による錠剤は、模擬化された空腹時の胃の状態と比較して、模擬化された摂食時の胃の状態において放出の遅延を示した(図1)。
【0190】
実施例1~3による錠剤は、0.1N HClに2時間曝露された後、比較例2の錠剤と同様の特性を示した。特に、模擬化された胃の状態に錠剤を曝露した2時間内において、試験された錠剤のいずれからも5-ASAの放出はなかった。しかしながら、錠剤がpH7.4に曝露されると(薬物放出試験#2)、5-ASAの急速な放出が見られたことに留意されたい(図2)。10重量%の緩衝塩のみを含む内層が、模擬化された空腹時の胃の状態において最も長い遅延時間を示したことにも留意されたい(比較例3、図2)。図2のデータにより、比較例2の中和されたオイドラギット(登録商標)S100の内層を10重量%より多い緩衝塩を含むHPMCの内層(実施例1~3)に置き換えることが、迅速な薬物放出を促進するのに等しく効果的であったということも示される。
【0191】
HPMCおよび30重量%以上50重量%以下のKHPO緩衝塩(乾燥ポリマー重量を基準とする)の内層を有する実施例1~3による錠剤では、空腹時を模擬化した胃液への曝露後の放出と比較して、摂食時を模擬化した胃液への曝露後のpH7.4クレブス緩衝液中における5-ASAの放出の遅延を示さなかった(図4図6)。
【0192】
10重量%の緩衝塩(乾燥ポリマー重量を基準とする)を含むHPMCの中間層を有する比較例3による錠剤は、内層に30重量%以上50重量%以下の緩衝塩を有する実施例1~3による錠剤(図4図6)と比較して、摂食時を模擬化した胃液への事前曝露後のpH7.4クレブス緩衝液中において、より遅い溶解速度を示した(図3)。
【0193】
理論に束縛されることはないが、製剤の外層が、胃液(例えば、摂食時人工胃液(FeSSGF))に対して透過性があり、それによって内層へのアクセスを可能にする場合、薬物放出に影響を与え得る内層の変更は可能であると考えられる。中性ポリマー、例えば、HPMCから作られた内層中に含まれる緩衝塩は、コーティング層と錠剤コアとの間の界面において高い緩衝容量を維持するのに寄与し、遠位小腸の管腔電解質組成に似たpH7.4クレブス緩衝液における薬物放出の遅延の際に、摂食時の胃液の影響を低減または回避することができる。
【0194】
本発明は、好ましい実施形態に関する上記の詳細に限定されず、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多数の変更および変形を行うことができることが理解されよう。
本発明は、以下の発明を包含する。
[1]対象の結腸に薬物を送達するための経口投与用の遅延放出製剤であって、
前記遅延放出製剤は、コアと前記コアのためのコーティングとを備え、
前記コアは、薬物を含んでなり、
前記コーティングは、外層および内層を備え、
前記外層は、約pH6以上のpH閾値を有するフィルム形成性腸溶性ポリマーを含んでなり、
前記内層は、腸液または胃腸液に可溶性であるフィルム形成性非イオン性ポリマーと、前記非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約20重量%より多く約60重量%以下の量の緩衝剤とを含んでなる、前記遅延放出製剤。
[2]前記非イオン性ポリマーが、非イオン性セルロース系ポリマーであり、好ましくは前記非イオン性ポリマーが、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から選択される、[1]に記載の遅延放出製剤。
[3]前記非イオン性ポリマーがHPMCである、[1]または[2]に記載の遅延放出製剤。
[4]前記非イオン性ポリマーが、非イオン性アクリレートポリマーまたはポリビニル系ポリマーである、[1]に記載の遅延放出製剤。
[5]前記非イオン性ポリマーが、前記非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約2mg/cm 以上約5mg/cm 以下、好ましくは約3mg/cm の量で前記内層に存在する、[1]~[4]のいずれかに記載の遅延放出製剤。
[6]前記緩衝剤が、前記内層における前記非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、20重量%より多く約50重量%以下、好ましくは約25重量%以上約40重量%以下、より好ましくは約30重量%の量で前記内層に存在する、[1]~[5]のいずれかに記載の遅延放出製剤。
[7]前記緩衝剤が、1~16個の炭素原子を有するカルボン酸、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩および可溶性金属塩からなる群から選択される、[1]~[6]のいずれかに記載の遅延放出製剤。
[8]前記緩衝剤がリン酸塩であり、好ましくは前記緩衝剤がリン酸二水素カリウムである、[1]~[7]のいずれかに記載の遅延放出製剤。
[9]前記緩衝剤が塩基と組み合わされる、[1]~[8]のいずれかに記載の遅延放出製剤。
[10]前記塩基が、水酸化物塩基、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属クエン酸塩または生理学的に許容可能なアミンからなる群から選択される、[9]に記載の遅延放出製剤。
[11]前記塩基が水酸化物塩基であり、好ましくは前記塩基が水酸化ナトリウムである、[9]または[10]に記載の遅延放出製剤。
[12]前記外層が、前記腸溶性ポリマーと、結腸の酵素によって分解される酵素分解性ポリマーとの混合物を含んでなる、[1]~[11]のいずれかに記載の遅延放出製剤。
[13]前記酵素分解性ポリマーおよび前記腸溶性ポリマーが、前記外層コーティング中に10:90より大きい、場合により60:40より大きい、または約60:40~約80:20、または約70:30~約80:20、または約75:25、または約50:50の比率で存在する、[12]に記載の遅延放出製剤。
[14]前記腸溶性ポリマーが、前記腸溶性ポリマーの乾燥重量を基準として、約3mg/cm 以上約10mg/cm 以下、好ましくは約5mg/cm の量で前記外層内に存在する、[12]または[13]に記載の遅延放出製剤。
[15]前記コアと前記コーティングとの間に仕切り層を備える、[1]~[14]のいずれかに記載の遅延放出製剤。
[16]前記仕切り層が、フィルム形成性非イオン性ポリマー、好ましくは前記内層に存在するものと同一のフィルム形成性非イオン性ポリマーを含んでなる、[15]に記載の遅延放出製剤。
[17][1]に記載の結腸に薬物を送達するための経口投与用の遅延放出製剤を製造する方法であって、
以下の工程:
薬物を含んでなるコアを形成させる工程;
腸液または胃腸液に可溶性であるフィルム形成性非イオン性ポリマーを、前記非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約20重量%より多く約60重量%以下の量の緩衝剤を含む水性溶媒中に溶解させて、pH7より高いpHを有する内層コーティング調製物を形成させる工程;
前記内層コーティング調製物を使用して前記コアをコーティングして、内層でコーティングされたコアを形成させる工程;および
溶媒系において約pH6以上のpH閾値を有するフィルム形成性腸溶性ポリマーを含んでなる外層コーティング調製物により、前記内層でコーティングされたコアをコーティングして、外層でコーティングされたコアを形成させる工程
を含んでなる、前記方法。
[18]pHを必要なレベルに上昇させるのに十分な量の塩基を、前記内層コーティング調製物に添加することを含んでなる、[17]に記載の方法。
[19]前記内層コーティング調製物に添加される塩基の量が、前記内層コーティング調製物のpHを約pH7.5以上約pH10以下の範囲、好ましくは約pH7.5以上約pH8.5以下の範囲、より好ましくは約pH8に上昇させるのに十分である、[18]に記載の方法。
[20]前記塩基が、水酸化物塩基、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属クエン酸塩または生理学的に許容可能なアミンからなる群から選択される、[18]または[19]に記載の方法。
[21]前記塩基が水酸化物塩基であり、好ましくは前記塩基が水酸化ナトリウムである、[18]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22]前記非イオン性ポリマーが、非イオン性セルロース系ポリマーであり、好ましくは前記非イオン性ポリマーが、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から選択される、[17]~[21]のいずれかに記載の方法。
[23]前記非イオン性ポリマーがHPMCである、[22]に記載の方法。
[24]前記非イオン性ポリマーが、前記非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約2mg/cm 以上約5mg/cm 以下、好ましくは約3mg/cm の量で前記コアにコーティングされるまで、前記コアが前記内層コーティング調製物によりコーティングされる、[17]~[23]のいずれかに記載の方法。
[25]前記緩衝剤が、前記非イオン性ポリマーの乾燥重量を基準として、約20重量%より多く約50重量%以下、場合により約25重量%以上約40重量%以下、または約30重量%の量で前記内層コーティング調製物中に存在する、[17]~[24]のいずれかに記載の方法。
[26]前記緩衝剤が、1~16個の炭素原子を有するカルボン酸、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩および可溶性金属塩からなる群から選択される、[17]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27]前記緩衝剤がリン酸塩であり、好ましくは前記緩衝剤がリン酸二水素カリウムである、[17]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28]前記外層コーティング調製物が、前記腸溶性ポリマーと、結腸の酵素による分解を受けやすい酵素分解性ポリマーとの混合物を含んでなる、[17]~[27]のいずれかに記載の方法。
[29]前記酵素分解性ポリマーおよび前記腸溶性ポリマーが、前記外層コーティング調製物中に10:90より大きい、場合により60:40より大きい、または約60:40~約80:20、または約70:30~約80:20、または約75:25、または約50:50の比率で存在する、[28]に記載の方法。
[30]前記腸溶性ポリマーが、前記腸溶性ポリマーの乾燥重量を基準として、約3mg/cm 以上約10mg/cm 以下、好ましくは約5mg/cm の量で、前記内層でコーティングされたコアにコーティングされるまで、前記内層でコーティングされたコアが前記外層コーティング調製物によりコーティングされる、[28]または[29]に記載の方法。
[31]溶媒中にフィルム形成性非イオン性ポリマーを含んでなる仕切り層コーティング調製物により、前記コアを最初にコーティングして、前記内層コーティング調製物によりコーティングするための仕切り層でコーティングされたコアを形成させることを含んでなる、[17]~[30]のいずれかに記載の方法。
[32]前記仕切り層コーティング調製物の前記非イオン性ポリマーの種類が、前記内層コーティング調製物の前記非イオン性ポリマーの種類と同一である、[31]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6