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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240122BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240122BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/22 A
E02F9/24 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021537414
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2020030525
(87)【国際公開番号】W WO2021025172
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019146179
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三崎 陽二
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-132795(JP,A)
【文献】特開2018-204252(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141500(WO,A1)
【文献】特開2019-44333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20 - 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロット圧に基づいて、アクチュエータに供給される作動油を制御するコントロールバルブと、
操作信号を出力する電気式操作装置と、
ゲートロック装置と、
前記コントロールバルブにパイロット圧を供給するパイロットラインに設けられ、前記ゲートロック装置の状態に応じて開閉し、ロック状態と解除状態とを切り替えるゲートロック弁と、
前記パイロットラインに設けられる比例弁と、
前記操作信号が入力され、前記比例弁を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ゲートロック装置により前記ゲートロック弁が前記ロック状態であって、前記電気式操作装置が操作されている場合、誤操作と判定する、ショベル。
【請求項2】
誤操作と判定された場合、その旨を報知する報知部を更に備える、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記制御部は、
誤操作と判定された場合、前記操作信号を無効とする、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電気式操作装置が中立状態であって、前記ゲートロック装置により前記ゲートロック弁が前記ロック状態から前記解除状態に切り替わると、前記操作信号を有効とし、
前記操作信号に基づいて前記比例弁を制御する、
請求項1に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、操作部材の操作に応じたパイロット圧を出力するパイロット弁と、パイロット圧に応じて油圧アクチュエータを制御するアクチュエータ制御弁と、アクチュエータ制御弁へのパイロット圧の供給を遮断するロック弁と、を備え、ロック弁を解除してから所定時間未満にパイロット圧が所定圧力以上となると、ロック弁をロック状態に切り替える、作業車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/179517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、パイロット圧を検出して、操作部材の操作/誤操作を検出する。このため、パイロット圧が所定圧力以上に立ち上がるまでの間は若干アクチュエータが動いてしまうという課題がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、操作者の意図しないアクチュエータの動作を防止するショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態では、パイロット圧に基づいて、アクチュエータに供給される作動油を制御するコントロールバルブと、操作信号を出力する電気式操作装置と、ゲートロック装置と、前記コントロールバルブにパイロット圧を供給するパイロットラインに設けられ、前記ゲートロック装置の状態に応じて開閉し、ロック状態と解除状態とを切り替えるゲートロック弁と、前記パイロットラインに設けられる比例弁と、前記操作信号が入力され、前記比例弁を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ゲートロック装置により前記ゲートロック弁が前記ロック状態であって、前記電気式操作装置が操作されている場合、誤操作と判定する、ショベルが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上述の実施形態によれば、操作者の意図しないアクチュエータの動作を防止するショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るショベルの側面図である。
図2図1のショベルの基本システムの構成例を示す図である。
図3図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
図4】コントローラにおける自動制御の実行に関する機能要素の関係の一例を示すブロック図である。
図5】各種指令値を算出する機能要素の構成例を示すブロック図である。
図6】本実施形態に係るショベルの電気式操作システムの構成の一例を概略的に示す図。
図7】コントローラの制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100の側面図である。ショベル100の下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。
【0010】
ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例としての掘削アタッチメントを構成している。そして、ブーム4はブームシリンダ7により駆動され、アーム5はアームシリンダ8により駆動され、バケット6はバケットシリンダ9により駆動される。
【0011】
具体的には、ブーム操作レバーの傾倒に応じてブームシリンダ7が駆動され、アーム操作レバーの傾倒に応じてアームシリンダ8が駆動され、バケット操作レバーの傾倒に応じてバケットシリンダ9が駆動される。同様に、右走行レバーの傾倒に応じて右側走行用油圧モータ1R(図2参照。)が駆動され、左走行レバーの傾倒に応じて左側走行用油圧モータ1L(図2参照。)が駆動され、旋回操作レバーの傾倒に応じて旋回用油圧モータ2A(図2参照。)が駆動される。このように、各レバーの操作に応じて対応するアクチュエータが駆動されることで、操作者の手動操作によるショベル100の制御(以下、「手動制御」とする。)が実行される。
【0012】
また、ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。
【0013】
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度(以下、「ブーム角度」とする。)を検出できる。ブーム角度は、例えば、ブーム4を最も下げたときに最小角度となり、ブーム4を上げるにつれて大きくなる。
【0014】
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度(以下、「アーム角度」とする。)を検出できる。アーム角度は、例えば、アーム5を最も閉じたときに最小角度となり、アーム5を開くにつれて大きくなる。
【0015】
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度(以下、「バケット角度」とする。)を検出できる。バケット角度は、例えば、バケット6を最も閉じたときに最小角度となり、バケット6を開くにつれて大きくなる。
【0016】
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3はそれぞれ、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、慣性計測ユニット、ジャイロセンサ、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせ等であってもよい。
【0017】
上部旋回体3には運転室であるキャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。上部旋回体3には、コントローラ30、表示装置40、入力装置42、音出力装置43、記憶装置47、緊急停止スイッチ48、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、撮像装置S6、通信装置T1及び測位装置P1が取り付けられている。
【0018】
コントローラ30は、ショベル100の駆動制御を行う制御装置として機能するように構成されている。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM及びROM等を含むコンピュータで構成されている。コントローラ30によって提供される各機能は、例えば、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。各機能は、例えば、操作者によるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、操作者によるショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能を含む。コントローラ30に含まれるマシンガイダンス装置50(図2参照。)は、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能を実行できるように構成されている。
【0019】
表示装置40は様々な情報を表示するように構成されている。表示装置40は、CAN等の通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよく、専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
【0020】
入力装置42は、操作者が各種情報をコントローラ30に入力できるように構成されている。入力装置42は、例えば、キャビン10内に設置されたタッチパネル、ノブスイッチ及びメンブレンスイッチ等の少なくとも1つを含む。
【0021】
音出力装置43は、音情報を出力するように構成されている。音出力装置43は、例えば、コントローラ30に接続される車載スピーカであってもよく、ブザー等の警報器であってもよい。本実施形態では、音出力装置43は、コントローラ30からの指令に応じて様々な音情報を出力する。
【0022】
記憶装置47は、様々な情報を記憶するように構成されている。記憶装置47は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶装置47は、ショベル100の動作中に様々な機器が出力する情報を記憶してもよく、ショベル100の動作が開始される前に様々な機器を介して取得される情報を記憶してもよい。記憶装置47は、例えば、通信装置T1等を介して取得される目標施工面に関するデータを記憶してもよい。目標施工面は、ショベル100の操作者が設定したものであってもよく、施工管理者等が設定したものであってもよい。
【0023】
緊急停止スイッチ48は、ショベル100の動きを停止させるためのスイッチとして機能するように構成されている。緊急停止スイッチ48は、例えば、キャビン10内で運転席に着座する操作者が操作できる位置に設置されたスイッチである。本実施形態では、緊急停止スイッチ48は、キャビン10内で操作者の足下に設置されている足踏みスイッチである。緊急停止スイッチ48は、操作者によって操作されると、エンジン制御ユニットに対して指令を出力し、エンジン11を停止させる。なお、緊急停止スイッチ48は、運転席の周囲に設置されている手押しスイッチであってもよい。
【0024】
機体傾斜センサS4は上部旋回体3の傾斜を検出するように構成されている。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、仮想水平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出する加速度センサである。機体傾斜センサS4は、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせであってもよく、慣性計測ユニット等であってもよい。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角(ロール角)及び左右軸回りの傾斜角(ピッチ角)を検出する。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、ショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点で互いに直交する。
【0025】
撮像装置S6はショベル100の周辺の画像を取得するように構成されている。本実施形態では、撮像装置S6は、ショベル100の前方の空間を撮像する前カメラS6F、ショベル100の左方の空間を撮像する左カメラS6L、ショベル100の右方の空間を撮像する右カメラS6R、及び、ショベル100の後方の空間を撮像する後カメラS6Bを含む。
【0026】
撮像装置S6は、例えば、CCD又はCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮影した画像を表示装置40に出力する。撮像装置S6は、空間認識装置S7(図2参照。)として機能するように構成されていてもよい。空間認識装置S7は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を検知できるように構成される。物体は、例えば、人、動物、ショベル、機械又は建屋等の少なくとも1つである。空間認識装置S7は、空間認識装置S7又はショベル100と空間認識装置S7が検知した物体との間の距離を算出できるように構成されていてもよい。空間認識装置S7は、超音波センサ、ミリ波レーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ、LIDAR、距離画像センサ又は赤外線センサ等であってもよい。
【0027】
前カメラS6Fは、例えば、キャビン10の天井、すなわちキャビン10の内部に取り付けられている。但し、前カメラS6Fは、キャビン10の屋根、すなわちキャビン10の外部に取り付けられていてもよい。左カメラS6Lは、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、右カメラS6Rは、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、後カメラS6Bは、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
【0028】
通信装置T1は、ショベル100の外部にある外部機器との通信を制御するように構成されている。本実施形態では、通信装置T1は、衛星通信網、携帯電話通信網、近距離無線通信網及びインターネット網等の少なくとも1つを介した外部機器との通信を制御する。
【0029】
測位装置P1は、上部旋回体3の位置を測定するように構成されている。測位装置P1は、上部旋回体3の向きを測定できるように構成されていてもよい。測位装置P1は、例えばGNSSコンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、検出値をコントローラ30に対して出力する。そのため、測位装置P1は、上部旋回体3の向きを検出する向き検出装置としても機能し得る。向き検出装置は、上部旋回体3に取り付けられた方位センサであってもよい。また、上部旋回体3の位置及び向きは、旋回角速度センサS5によって測定されるように構成されていてもよい。
【0030】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出するように構成されている。旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角度を検出或いは算出できるように構成されていてもよい。本実施形態では、旋回角速度センサS5は、ジャイロセンサである。旋回角速度センサS5は、レゾルバ、ロータリエンコーダ又は慣性計測ユニット等であってもよい。
【0031】
図2は、ショベル100の基本システムの構成例を示すブロック図であり、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御ラインをそれぞれ二重線、実線、破線及び点線で示している。
【0032】
ショベル100の基本システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、コントローラ30及び比例弁31等を含む。
【0033】
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0034】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給するように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0035】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御するように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。コントローラ30は、例えば、操作装置26及び吐出圧センサ28等の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
【0036】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して比例弁31を含む油圧制御機器に作動油を供給するように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。この場合、パイロットポンプ15が担っていた機能は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、コントロールバルブ17に作動油を供給する機能とは別に、絞り等により作動油の圧力を低下させた後で比例弁31等に作動油を供給する機能を備えていてもよい。
【0037】
コントロールバルブ17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、制御弁171~176を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁171~176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R及び旋回用油圧モータ2Aを含む。旋回用油圧モータ2Aは、電動アクチュエータとしての旋回用電動発電機であってもよい。
【0038】
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも一方を含む。本実施形態では、操作装置26は、アクチュエータ(ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R、旋回用油圧モータ2A)にそれぞれ対応するレバー(ブーム操作レバー、アーム操作レバー、バケット操作レバー、左走行レバー、右走行レバー、旋回操作レバー)を有している。操作装置26は、各レバーの操作方向及び操作量を検出し、検出した操作方向及び操作量を操作データ(電気信号)としてコントローラ30に対して出力する。
【0039】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出するように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0040】
比例弁31(電磁比例弁)は、パイロットポンプ15とコントロールバルブ17(制御弁171~176)とを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する指令に応じて動作する電磁弁である。例えば、手動制御時において、コントローラ30は、操作装置26の操作方向及び操作量に応じて、比例弁31の開度を制御する。これにより、操作者による操作装置26の操作に応じて、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁171~176のパイロットポートに供給できる。また、比例弁31は、マシンコントロール用制御弁として機能する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁171~176のパイロットポートに供給できる。この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。
【0041】
次に、コントローラ30に含まれているマシンガイダンス装置50について説明する。マシンガイダンス装置50は、例えば、マシンガイダンス機能を実行するように構成されている。本実施形態では、マシンガイダンス装置50は、例えば、目標施工面とアタッチメントの作業部位との間の距離等の作業情報を操作者に伝える。目標施工面に関するデータは、例えば、記憶装置47に予め記憶されている。そして、目標施工面に関するデータは、例えば、基準座標系で表現されている。基準座標系は、例えば、世界測地系である。操作者は、施工現場の任意の点を基準点として定め、目標施工面上の各点と基準点との相対的な位置関係により目標施工面を設定してもよい。アタッチメントの作業部位は、例えば、バケット6の爪先又はバケット6の背面等である。マシンガイダンス装置50は、表示装置40及び音出力装置43等の少なくとも1つを介して作業情報を操作者に伝えることでショベル100の操作をガイドする。
【0042】
マシンガイダンス装置50は、操作者によるショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能を実行してもよい。例えば、マシンガイダンス装置50は、操作者が手動で掘削操作を行っているときに、目標施工面とバケット6の先端位置との間の距離が所定値で維持されるようにブーム4、アーム5及びバケット6の少なくとも1つを自動的に動作させてもよい。
【0043】
本実施形態では、マシンガイダンス装置50は、コントローラ30に組み込まれているが、コントローラ30とは別に設けられた制御装置であってもよい。この場合、マシンガイダンス装置50は、例えば、コントローラ30と同様、CPU、RAM及びROM等を含むコンピュータで構成される。そして、マシンガイダンス装置50によって提供される各機能は、ROM等に格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。また、マシンガイダンス装置50とコントローラ30とはCAN等の通信ネットワークを通じて互いに通信可能に接続される。
【0044】
具体的には、マシンガイダンス装置50は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、撮像装置S6、測位装置P1、通信装置T1及び入力装置42等の少なくとも1つから情報を取得する。そして、マシンガイダンス装置50は、例えば、取得した情報に基づいてバケット6と目標施工面との間の距離を算出し、音及び光(画像表示)の少なくとも一方により、バケット6と目標施工面との間の距離の大きさをショベル100の操作者に伝えるようにする。
【0045】
また、マシンガイダンス装置50は、手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能を実行可能とするため、位置算出部51、距離算出部52、情報伝達部53及び自動制御部54を有する。
【0046】
位置算出部51は、対象の位置を算出するように構成されている。本実施形態では、位置算出部51は、アタッチメントの作業部位の基準座標系における座標点を算出する。具体的には、位置算出部51は、ブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれの回動角度からバケット6の爪先の座標点を算出する。位置算出部51は、バケット6の爪先の中央の座標点だけでなく、バケット6の爪先の左端の座標点、及び、バケット6の爪先の右端の座標点を算出してもよい。この場合、機体傾斜センサS4の出力が利用されてもよい。
【0047】
距離算出部52は、2つの対象間の距離を算出するように構成されている。本実施形態では、距離算出部52は、バケット6の爪先と目標施工面との間の鉛直距離を算出する。距離算出部52は、ショベル100が目標施工面に正対しているか否かをマシンガイダンス装置50が判定できるよう、バケット6の爪先の左端及び右端のそれぞれの座標点と目標施工面との間の距離(例えば鉛直距離)を算出してもよい。
【0048】
情報伝達部53は、様々な情報をショベル100の操作者に伝えるように構成されている。本実施形態では、情報伝達部53は、距離算出部52が算出した距離の大きさをショベル100の操作者に伝える。具体的には、情報伝達部53は、視覚情報及び聴覚情報を用いて、バケット6の爪先と目標施工面との間の鉛直距離の大きさをショベル100の操作者に伝える。
【0049】
例えば、情報伝達部53は、音出力装置43による断続音を用いて、バケット6の爪先と目標施工面との間の鉛直距離の大きさを操作者に伝えてもよい。この場合、情報伝達部53は、鉛直距離が小さくなるほど、断続音の間隔を短くしてもよい。情報伝達部53は、連続音を用いてもよく、音の高低又は強弱等を変化させて鉛直距離の大きさの違いを表すようにしてもよい。また、情報伝達部53は、バケット6の爪先が目標施工面よりも低い位置になった場合には警報を発してもよい。警報は、例えば、断続音より顕著に大きい連続音である。
【0050】
情報伝達部53は、バケット6の爪先と目標施工面との間の鉛直距離の大きさを作業情報として表示装置40に表示させてもよい。表示装置40は、例えば、撮像装置S6から受信した画像データと共に、情報伝達部53から受信した作業情報を画面に表示する。情報伝達部53は、例えば、アナログメータの画像又はバーグラフインジケータの画像等を用いて鉛直距離の大きさを操作者に伝えるようにしてもよい。
【0051】
自動制御部54は、アクチュエータを自動的に動作させることで操作者によるショベル100の手動操作を自動的に支援するように構成されている。例えば、自動制御部54は、操作者が手動でアーム閉じ操作を行っている場合に、目標施工面とバケット6の爪先との間の距離が所定値で維持されるようにブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自動的に伸縮させてもよい。この場合、操作者は、例えば、アーム操作レバーを閉じ方向に操作するだけで、目標施工面とバケット6の爪先との間の距離を維持しながら、アーム5を閉じることができる。このような自動制御は、入力装置42の1つである所定のスイッチが押されたときに実行されるように構成されていてもよい。すなわち、自動制御部54は、所定のスイッチが押されたときに、ショベル100の動作モードを手動制御モードから自動制御モードに切り換えてもよい。手動制御モードは、手動制御が実行される動作モードを意味し、自動制御モードは、自動制御が実行される動作モードを意味する。所定のスイッチは、例えば、マシンコントロールスイッチ(以下、「MCスイッチ42A」とする。)であり、押しボタンスイッチとして操作レバーの把持部に配置されていてもよい。この場合、操作者は、MCスイッチ42Aをもう一度押すことで、ショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードに切り換えてもよく、MCスイッチ42Aとは別のスイッチであるマシンコントロール停止スイッチ(以下、「MC停止スイッチ42B」とする。)を押すことでショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードに切り換えてもよい。MC停止スイッチ42Bは、MCスイッチ42Aに隣接して配置されていてもよく、別の操作レバーの把持部に配置されていてもよい。或いは、MC停止スイッチ42Bは省略されてもよい。
【0052】
或いは、このような自動制御は、MCスイッチ42Aが押されているときに実行されるように構成されていてもよい。この場合、操作者は、例えば、アーム操作レバーの把持部にあるMCスイッチ42Aを押しながらアーム操作レバーをアーム閉じ方向に操作するだけで、目標施工面とバケット6の爪先との間の距離を維持しながらアーム5を閉じることができる。アームシリンダ8によるアーム閉じ動作に対応してブームシリンダ7及びバケットシリンダ9が自動的に追従して動くためである。また、操作者は、MCスイッチ42Aから指を離すだけで自動制御を中止させることができる。以下では、目標施工面とバケット6の爪先との間の距離を維持しながら掘削アタッチメントを自動的に動作させる制御を自動制御(マシンコントロール機能)の一つである「自動掘削制御」と称する。
【0053】
自動制御部54は、MCスイッチ42A等の所定のスイッチが押されたときに、上部旋回体3を目標施工面に正対させるべく旋回用油圧モータ2Aを自動的に回転させてもよい。この場合、操作者は、所定のスイッチを押すだけで、若しくは、所定のスイッチを押した状態で旋回操作レバーを操作するだけで、上部旋回体3を目標施工面に正対させることができる。或いは、操作者は、所定のスイッチを押すだけで、上部旋回体3を目標施工面に正対させ、且つ、マシンコントロール機能を開始させること、すなわち、ショベル100の状態を、自動制御を実行可能な状態にすることができる。以下では、上部旋回体3を目標施工面に正対させる制御を自動制御(マシンコントロール機能)の一つである「自動正対制御」と称する。
【0054】
自動制御部54は、MCスイッチ42A等の所定のスイッチが押されたときに、ブーム上げ旋回又はブーム下げ旋回を自動的に実行するように構成されていてもよい。この場合、操作者は、所定のスイッチを押すだけで、若しくは、所定のスイッチを押した状態で旋回操作レバーを操作するだけで、ブーム上げ旋回又はブーム下げ旋回を開始させることができる。以下では、ブーム上げ旋回又はブーム下げ旋回を自動的に開始させる制御を自動制御(マシンコントロール機能)の一つである「自動複合旋回制御」と称する。
【0055】
本実施形態では、自動制御部54は、各アクチュエータに対応する制御弁に作用するパイロット圧を個別に且つ自動的に調節することで各アクチュエータを個別に且つ自動的に動作させることができる。
【0056】
自動制御部54は、所定条件が満たされた場合に自動制御を停止させるように構成されていてもよい。「所定条件が満たされた場合」は、例えば、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示す場合」を含んでいてもよい。以下では、所定条件が満たされた場合に自動制御を停止させる機能を「非常停止機能」と称する。
【0057】
「ショベル100の動きに関する情報」は、例えば、「操作装置26に対する操作に関する情報」である。自動制御部54は、例えば、操作装置26が急激に操作された場合に、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示している」と判定するように構成されていてもよい。或いは、「ショベル100の動きに関する情報」は、「上部旋回体3に搭載される旋回操作レバーに対する操作に関する情報」であってもよい。この場合、自動制御部54は、例えば、自動制御としての自動正対制御又は自動複合旋回制御によって実行される旋回とは逆の方向に上部旋回体3を旋回させる操作が行われた場合に、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示している」と判定するように構成されていてもよい。そして、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示している」と判定した場合、自動制御部54は、自動制御を停止させるように構成されていてもよい。
【0058】
「所定条件が満たされた場合」は、例えば、「上部旋回体3の傾斜が所定の状態となった場合」等、「ショベル100の不安定さが増大した場合」を含んでいてもよい。「上部旋回体3の傾斜が所定の状態となった場合」は、例えば、「上部旋回体3のピッチ角が所定角度となった場合」、「ピッチ角の変化速度(変化率)の絶対値が所定値以上となった場合」、及び、「ピッチ角の変化量が所定値以上となった場合」等を含む。ロール角についても同様である。この場合、自動制御部54は、機体傾斜センサS4の出力に基づいて自動制御を停止させるように構成されていてもよい。具体的には、自動制御部54は、機体傾斜センサS4の出力に基づいて上部旋回体3のピッチ角が所定角度となったことを検出した場合に、自動制御を停止させ、ショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードへ切り換えてもよい。
【0059】
また、「所定条件が満たされた場合」は、例えば、「操作者の足下に設置された足踏みスイッチである緊急停止スイッチ48が踏み込まれた場合」を含んでいてもよい。
【0060】
次に図3を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。図3は、図1のショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す。図3は、図2と同様に、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御ラインを、それぞれ二重線、実線、破線及び点線で示している。
【0061】
油圧システムは、エンジン11によって駆動される左メインポンプ14Lから、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、且つ、エンジン11によって駆動される右メインポンプ14Rから右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させている。左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rは、図2のメインポンプ14に対応する。
【0062】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。制御弁175L及び175Rは、図2の制御弁175に対応する。制御弁176L及び176Rは、図2の制御弁176に対応する。
【0063】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左側走行用油圧モータ1Lへ供給し、且つ、左側走行用油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0064】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右側走行用油圧モータ1Rへ供給し、且つ、右側走行用油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0065】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0066】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0067】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0068】
制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0069】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0070】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0071】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0072】
左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。右レギュレータ13Rは、右メインポンプ14Rの吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、右レギュレータ13Rは、例えば、右メインポンプ14Rの吐出圧に応じて右メインポンプ14Rの斜板傾転角を調節することによって、右メインポンプ14Rの吐出量を制御する。左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rは、図2のレギュレータ13に対応する。左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
【0073】
左吐出圧センサ28Lは、吐出圧センサ28の一例であり、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。右吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0074】
ここで、図3の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御について説明する。
【0075】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。右センターバイパス管路40Rには、最も下流にある制御弁176Rと作動油タンクとの間に右絞り18Rが配置されている。右メインポンプ14Rが吐出した作動油の流れは、右絞り18Rで制限される。そして、右絞り18Rは、右レギュレータ13Rを制御するための制御圧を発生させる。右制御圧センサ19Rは、制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0076】
コントローラ30は、制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0077】
具体的には、図3で示されるように、ショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。右メインポンプ14Rが吐出する作動油についても同様である。
【0078】
上述のような構成により、図3の油圧システムは、待機状態においては、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rのそれぞれにおける無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油が左センターバイパス管路40Lで発生させるポンピングロス、及び、右メインポンプ14Rが吐出する作動油が右センターバイパス管路40Rで発生させるポンピングロスを含む。また、図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rのそれぞれから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに供給できる。
【0079】
次に、アクチュエータを自動的に動作させる構成について説明する。ブーム操作レバー26Aは、操作装置26の一例であり、ブーム4を操作するために用いられる。ブーム操作レバー26Aは、操作方向及び操作量を検出し、検出した操作方向及び操作量を操作データ(電気信号)としてコントローラ30に対して出力する。手動制御時において、ブーム上げ方向にブーム操作レバー26Aが操作された場合、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作量に応じて比例弁31ALの開度を制御する。これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、ブーム操作レバー26Aの操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、手動制御時において、ブーム下げ方向にブーム操作レバー26Aが操作された場合、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作量に応じて比例弁31ARの開度を制御する。これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、ブーム操作レバー26Aの操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0080】
比例弁31AL、31ARは、比例弁31の一例であるブーム比例弁31Aを構成する。比例弁31ALは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31ALを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁31ARは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31ARを介して制御弁175Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁31AL、31ARは、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0081】
この構成により、コントローラ30は、自動掘削制御の際には、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31ALを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、ブーム4を自動的に上げることができる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31ARを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、ブーム4を自動的に下げることができる。
【0082】
アーム操作レバー26Bは、操作装置26の一例であり、アーム5を操作するために用いられる。アーム操作レバー26Bは、操作方向及び操作量を検出し、検出した操作方向及び操作量を操作データ(電気信号)としてコントローラ30に対して出力する。手動制御時において、アーム開き方向にアーム操作レバー26Bが操作された場合、コントローラ30は、アーム操作レバー26Bの操作量に応じて比例弁31BRの開度を制御する。これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、アーム操作レバー26Bの操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートに作用させる。また、手動制御時において、アーム閉じ方向にアーム操作レバー26Bが操作された場合、コントローラ30は、アーム操作レバー26Bの操作量に応じて比例弁31BLの開度を制御する。これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、アーム操作レバー26Bの操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートとに作用させる。
【0083】
比例弁31BL、31BRは、比例弁31の一例であるアーム比例弁31Bを構成する。比例弁31BLは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31BLを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁31BRは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31BRを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁31BL、31BRは、制御弁176L、176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0084】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BLを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、アーム5を自動的に閉じることができる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BRを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、アーム5を自動的に開くことができる。
【0085】
これにより、自動掘削制御においては、アーム操作レバー26Bの操作量に応じて、アームシリンダ8及びブームシリンダ7が自動で動作することにより、作業部位の速度制御、若しくは、位置制御が実行される。
【0086】
ショベル100は、上部旋回体3を自動的に左旋回・右旋回させるための構成、バケット6を自動的に開閉させるための構成、及び、下部走行体1を自動的に前進・後進させるための構成を備えていてもよい。この場合、旋回用油圧モータ2Aに関する油圧システム部分、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分、左側走行用油圧モータ1Lの操作に関する油圧システム部分、及び、右側走行用油圧モータ1Rの操作に関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
【0087】
次に、図4を参照し、コントローラ30による自動制御の詳細について説明する。図4は、コントローラ30における自動制御の実行に関する機能要素F2~F6の関係の一例を示すブロック図である。
【0088】
コントローラ30は、図4に示すように、自動制御の実行に関する機能要素F2~F6を有する。機能要素は、ソフトウェアで構成されていてもよく、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成されていてもよい。
【0089】
機能要素F2は、目標軌道を生成するように構成されている。本実施形態では、機能要素F2は、記憶装置47に記憶されている設計データを参照し、法面仕上げ作業の際にバケット6の爪先が辿るべき軌道を生成する。
【0090】
機能要素F3は、ショベル100の動作モードを切り換えできるように構成されている。本実施形態では、機能要素F3は、MCスイッチ42AからのON指令を受けたときに、ショベル100の動作モードを手動制御モードから自動制御モードに切り換え、MC停止スイッチ42BからのOFF指令を受けたときに、ショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードに切り換える。
【0091】
自動制御モードに切り換えられると、操作装置26の出力である操作データは、機能要素F5に供給される。手動制御モードに切り換えられると、操作装置26の出力である操作データは、機能要素F6に供給される。
【0092】
機能要素F4は、現在の爪先位置を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F4は、ブーム角度センサS1が検出したブーム角度αと、アーム角度センサS2が検出したアーム角度βと、バケット角度センサS3が検出したバケット角度γとに基づき、バケット6の爪先の座標点を現在の爪先位置として算出する。機能要素F4は、現在の爪先位置を算出する際に、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。
【0093】
機能要素F5は、自動制御モードが選択されているときに、次の爪先位置を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F5は、自動制御モードが選択されているときに、操作装置26が出力する操作データと、機能要素F2が生成した目標軌道と、機能要素F4が算出した現在の爪先位置とに基づき、所定時間後の爪先位置を目標爪先位置として算出する。
【0094】
機能要素F6は、アクチュエータを動作させるための指令値を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F6は、自動制御モードが選択されているときには、現在の爪先位置を目標爪先位置に移動させるために、機能要素F5が算出した目標爪先位置に基づき、ブーム指令値α、アーム指令値β、及びバケット指令値γのうちの少なくとも1つを算出する。
【0095】
また、機能要素F6は、手動制御モードが選択されているときには、操作データに応じたアクチュエータの動きを実現させるために、操作データに基づき、ブーム指令値α、アーム指令値β、及びバケット指令値γのうちの少なくとも1つを算出する。
【0096】
機能要素F6は、自動制御モードが選択されている場合には、ブーム操作レバー26Aが操作されていないときであっても、必要に応じてブーム指令値αを算出する。ブーム4を自動的に動作させるためである。アーム5及びバケット6についても同様である。
【0097】
一方、機能要素F6は、手動制御モードが選択されている場合には、ブーム操作レバー26Aが操作されていないときにブーム指令値αを算出することはない。手動制御モードでは、ブーム操作レバー26Aが操作されない限り、ブーム4を動作させることはないためである。アーム5及びバケット6についても同様である。
【0098】
次に、図5を参照し、機能要素F6の詳細について説明する。図5は、各種指令値を算出する機能要素F6の構成例を示すブロック図である。
【0099】
コントローラ30は、図5に示すように、指令値の生成に関する機能要素F11~F13、F21~F23及びF31~F33を更に有する。機能要素は、ソフトウェアで構成されていてもよく、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成されていてもよい。
【0100】
機能要素F11~F13は、ブーム指令値αに関する機能要素であり、機能要素F21~F23は、アーム指令値βに関する機能要素であり、機能要素F31~F33は、バケット指令値γに関する機能要素である。
【0101】
機能要素F11、F21及びF31は、比例弁31に対して出力される電流指令を生成するように構成されている。本実施形態では、機能要素F11は、ブーム比例弁31A(図3参照。)に対してブーム電流指令を出力し、機能要素F21は、アーム比例弁31B(図3参照。)に対してアーム電流指令を出力し、機能要素F31は、バケット比例弁31Cに対してバケット電流指令を出力する。
【0102】
機能要素F12、F22及びF32は、スプール弁を構成するスプールの変位量を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F12は、ブームスプール変位センサS11の出力に基づき、ブームシリンダ7に関する制御弁175を構成するブームスプールの変位量を算出する。機能要素F22は、アームスプール変位センサS12の出力に基づき、アームシリンダ8に関する制御弁176を構成するアームスプールの変位量を算出する。機能要素F23は、バケットスプール変位センサS13の出力に基づき、バケットシリンダ9に関する制御弁174を構成するバケットスプールの変位量を算出する。
【0103】
機能要素F13、F23及びF33は、作業体の回動角度を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F13は、ブーム角度センサS1の出力に基づき、ブーム角度αを算出する。機能要素F23は、アーム角度センサS2の出力に基づき、アーム角度βを算出する。機能要素F33は、バケット角度センサS3の出力に基づき、バケット角度γを算出する。
【0104】
具体的には、機能要素F11は、基本的に、機能要素F6が生成したブーム指令値αと機能要素F13が算出したブーム角度αとの差がゼロになるように、ブーム比例弁31Aに対するブーム電流指令を生成する。その際に、機能要素F11は、ブーム電流指令から導き出される目標ブームスプール変位量と機能要素F12が算出したブームスプール変位量との差がゼロになるように、ブーム電流指令を調節する。そして、機能要素F11は、その調節後のブーム電流指令をブーム比例弁31Aに対して出力する。
【0105】
ブーム比例弁31Aは、ブーム電流指令に応じて開口面積を変化させ、ブーム指令電流の大きさに対応するパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。制御弁175は、パイロット圧に応じてブームスプールを移動させ、ブームシリンダ7に作動油を流入させる。ブームスプール変位センサS11は、ブームスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F12にフィードバックする。ブームシリンダ7は、作動油の流入に応じて伸縮し、ブーム4を上下動させる。ブーム角度センサS1は、上下動するブーム4の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F13にフィードバックする。機能要素F13は、算出したブーム角度αを機能要素F4にフィードバックする。
【0106】
機能要素F21は、基本的に、機能要素F6が生成したアーム指令値βと機能要素F23が算出したアーム角度βとの差がゼロになるように、アーム比例弁31Bに対するアーム電流指令を生成する。その際に、機能要素F21は、アーム電流指令から導き出される目標アームスプール変位量と機能要素F22が算出したアームスプール変位量との差がゼロになるように、アーム電流指令を調節する。そして、機能要素F21は、その調節後のアーム電流指令をアーム比例弁31Bに対して出力する。
【0107】
アーム比例弁31Bは、アーム電流指令に応じて開口面積を変化させ、アーム指令電流の大きさに対応するパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。制御弁176は、パイロット圧に応じてアームスプールを移動させ、アームシリンダ8に作動油を流入させる。アームスプール変位センサS12は、アームスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F22にフィードバックする。アームシリンダ8は、作動油の流入に応じて伸縮し、アーム5を開閉させる。アーム角度センサS2は、開閉するアーム5の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F23にフィードバックする。機能要素F23は、算出したアーム角度βを機能要素F4にフィードバックする。
【0108】
同様に、機能要素F31は、基本的に、機能要素F6が生成したバケット指令値γと機能要素F33が算出したバケット角度γとの差がゼロになるように、バケット比例弁31Cに対するバケット電流指令を生成する。その際に、機能要素F31は、バケット電流指令から導き出される目標バケットスプール変位量と機能要素F32が算出したバケットスプール変位量との差がゼロになるように、バケット電流指令を調節する。そして、機能要素F31は、その調節後のバケット電流指令をバケット比例弁31Cに対して出力する。
【0109】
バケット比例弁31Cは、バケット電流指令に応じて開口面積を変化させ、バケット指令電流の大きさに対応するパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。制御弁174は、パイロット圧に応じてバケットスプールを移動させ、バケットシリンダ9に作動油を流入させる。バケットスプール変位センサS13は、バケットスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F32にフィードバックする。バケットシリンダ9は、作動油の流入に応じて伸縮し、バケット6を開閉させる。バケット角度センサS3は、開閉するバケット6の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F33にフィードバックする。機能要素F33は、算出したバケット角度γを機能要素F4にフィードバックする。
【0110】
上述のように、コントローラ30は、作業体毎に、3段のフィードバックループを構成している。すなわち、コントローラ30は、スプール変位量に関するフィードバックループ、作業体の回動角度に関するフィードバックループ、及び、爪先位置に関するフィードバックループを構成している。そのため、コントローラ30は、自動制御の際に、バケット6の爪先の動きを高精度に制御できる。
【0111】
[電気式操作システム]
次に、図6を参照して、本実施形態に係るショベル100の電気式操作システムについて更に説明する。図6は、本実施形態に係るショベル100の電気式操作システムの構成の一例を概略的に示す図である。なお、図6では、電気式操作システムの一例として、ブーム4を上下させるブーム操作システムを例に説明する。なお、電気式操作システムは、下部走行体1を前進・後進させるための走行操作システム、上部旋回体3を旋回させるための旋回操作システム、アーム5を開閉させるためのアーム操作システム、及び、バケット6を開閉させるためのバケット操作システム等にも同様に適用され得る。
【0112】
図6に示す電気式操作システムは、電気式操作レバーとしてのブーム操作レバー26Aと、パイロットポンプ15と、パイロット圧作動型のコントロールバルブ17と、ブーム上げ操作用の比例弁31ALと、ブーム下げ操作用の比例弁31ARと、コントローラ30と、ゲートロックレバー60と、ゲートロック弁62と、を備えている。
【0113】
操作装置の一例であるブーム操作レバー26A(操作信号生成部)には、操作量(傾倒量)や傾倒方向を検出可能なエンコーダやポテンショメータ等のセンサが設けられている。ブーム操作レバー26Aのセンサで検出されたブーム操作レバー26Aの操作に対応する操作信号(電気信号)は、コントローラ30に取り込まれる。
【0114】
比例弁31ALは、パイロットポンプ15からコントロールバルブ17(図3に示す制御弁175L,175R参照)のブーム上げ側パイロットポートに作動油を供給するパイロットラインに設けられている。比例弁31ALは、開度調整が可能な電磁弁であり、コントローラ30からの制御信号であるブーム上げ操作信号(電気信号)に応じて比例弁31ALの開度が制御される。比例弁31ALの開度を制御することにより、ブーム上げ側パイロットポートに作用する、ブーム上げ操作信号(圧力信号)としてのパイロット圧を制御する。同様に、比例弁31ARは、パイロットポンプ15からコントロールバルブ17(図2に示す制御弁175L,175R参照)のブーム下げ側パイロットポートに作動油を供給するパイロットラインに設けられている。比例弁31ARは、開度調整が可能な電磁弁であり、コントローラ30からの制御信号であるブーム下げ操作信号(電気信号)に応じて比例弁31ARの開度が制御される。比例弁31ARの開度を制御することにより、ブーム下げ側パイロットポートに作用する、ブーム下げ操作信号(圧力信号)としてのパイロット圧を制御する。
【0115】
コントローラ30は、比例弁31AL,31ARの開度を制御するブーム上げ操作信号(電気信号)、ブーム下げ操作信号(電気信号)を出力する。これにより、コントローラ30は、比例弁31AL,31AR、コントロールバルブ17(制御弁175L,175R)を介して、メインポンプ14L,14Rからブームシリンダ7に供給される作動油の流量及び流れる方向を制御して、ブーム4の動作を制御することができる。
【0116】
例えば、ショベル100の手動操作が行われる場合、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作信号(電気信号)に応じてブーム上げ操作信号(電気信号)又はブーム下げ操作信号(電気信号)を生成し出力する。また、例えば、ショベル100の自動制御が行われる場合、コントローラ30は、設定されたプログラム等に基づいて、ブーム上げ操作信号(電気信号)又はブーム下げ操作信号(電気信号)を生成し出力する。
【0117】
ゲートロックレバー60は、キャビン10内の乗降口付近に設けられている。ゲートロックレバー60は、揺動可能に設けられている。操作者は、ゲートロックレバー60を引き上げてほぼ水平にすることによりゲートロック弁62を解除状態とし、ゲートロックレバー60を押し下げることによりゲートロック弁62をロック状態とする。ゲートロックレバー60を引き上げた状態において、ゲートロックレバー60は、キャビン10の乗降口を遮って操作者がキャビン10から退出するのを規制する。一方、ゲートロックレバー60を押し下げた状態において、ゲートロックレバー60は、キャビン10の乗降口を開放して操作者がキャビン10から退出するのを許容する。
【0118】
リミットスイッチ61は、ゲートロックレバー60を引き上げた状態においてON(通電)となり、ゲートロックレバー60を押し下げた状態においてOFF(遮断)となるスイッチである。
【0119】
ゲートロック弁62は、パイロットポンプ15と比例弁31(31AL,31AR)との間のパイロットラインに設けられている開閉弁である。ゲートロック弁62は、例えば、通電時に開き、非通電時に閉じる電磁弁である。ゲートロック弁62の電源回路には、リミットスイッチ61が配置されている。これにより、リミットスイッチ61がONの際、ゲートロック弁62は開弁する。リミットスイッチ61がOFFの際、ゲートロック弁62は閉弁する。即ち、ゲートロック弁62が解除状態において、ゲートロック弁62は開弁する。一方、ゲートロック弁62がロック状態において、ゲートロック弁62は閉弁する。
【0120】
ロック状態検出センサ63は、ゲートロック弁62が解除状態であるかロック状態であるかを検出する。例えば、ロック状態検出センサ63は、ゲートロック弁62とリミットスイッチ61とを接続する電気回路に設けられた電圧センサ(または、電流センサ)であって、リミットスイッチ61のON/OFFを検出することにより、ゲートロック弁62の解除状態/ロック状態を検出する。検出結果は、コントローラ30に出力される。なお、ロック状態検出センサ63は、レバーの位置を直接検出することにより、ゲートロック弁62の解除状態/ロック状態を検出する構成であってもよい。
【0121】
図7は、コントローラ30の制御の一例を示すフローチャートである。なお、制御フローの開始時において、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62がロック状態であるものとして説明する。
【0122】
ステップS101において、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの傾倒を検知したか否かを判定する。なお、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作信号(電気信号)に基づいて、ブーム操作レバー26Aの傾倒を検知する。ブーム操作レバー26Aの傾倒を検知した場合(S101・Yes)、コントローラ30の処理はステップS102に進む。ブーム操作レバー26Aの傾倒を検知していない場合(S101・No)、コントローラ30の処理はステップS107に進む。
【0123】
ステップS102において、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの誤操作と判定する。なお、コントローラ30は、誤操作と判定した場合、ブーム操作レバー26Aの操作信号(電気信号)を無効として、比例弁31AL,31ARにブーム上げ操作信号(電気信号)及びブーム下げ操作信号(電気信号)を出力しない。また、ステップS102においては、ゲートロック弁62は閉弁しており、パイロットポンプ15からの作動油は比例弁31AL,31ARに供給されていない。このため、ブームシリンダ7は駆動しない。また、上記では、コントローラ30が比例弁31AL,31ARへ操作信号(電気信号)を出力しないものとして説明したが、これに限られるものではない。コントローラ30は、誤操作と判定した場合、リミットスイッチへの電気信号の出力によりゲートロック弁62を閉弁させることで、操作レバーの操作を無効にしてもよい。この場合、リミットスイッチはリミットスイッチ61と別のリミットスイッチを設けてもよい。
【0124】
ステップS103において、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aが傾倒していることを示す表示を表示装置40に表示させる。例えば、表示装置40にレバーの傾倒を示すアイコンを表示させる。これにより、操作者にブーム操作レバー26Aが傾倒していることを報知する。
【0125】
ステップS104において、コントローラ30は、ロック状態検出センサ63の検出信号に基づいて、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62が解除状態であるか否かを判定する。解除状態である場合(S104・Yes)、コントローラ30の処理はステップS105に進む。解除状態でない場合(S104・No)、コントローラ30の処理はステップS101に戻る。
【0126】
ステップS105において、コントローラ30は、比例弁31の制御を無効とする。即ち、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作信号(電気信号)を無効として、比例弁31AL,31ARにブーム上げ操作信号(電気信号)及びブーム下げ操作信号(電気信号)を出力しない。なお、ステップS105においては、ゲートロック弁62は開弁しており、パイロットポンプ15からの作動油が比例弁31AL,31ARに供給される。しかしながら、比例弁31の制御を無効とするため、コントロールバルブ17へは作動油は供給されていない。このため、ブームシリンダ7は駆動しない。
【0127】
また、コントローラ30は、警報を発報する。例えば、コントローラ30は、表示装置40への表示に加えて、音出力装置43からブーム操作レバー26Aが傾倒していることを示す音を出力させる。これにより、操作者にブーム操作レバー26Aが傾倒していることを確実に報知することができる。
【0128】
ステップS106において、コントローラ30は、ロック状態検出センサ63の検出信号に基づいて、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62がロック状態であるか否かを判定する。ロック状態である場合(S106・Yes)、コントローラ30の処理はステップS101に戻る。ロック状態でない場合(S106・No)、コントローラ30の処理はステップS105からステップS106を繰り返す。
【0129】
ステップS107において、コントローラ30は、ロック状態検出センサ63の検出信号に基づいて、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62が解除状態であるか否かを判定する。解除状態である場合(S107・Yes)、コントローラ30の処理はステップS108に進む。解除状態でない場合(S107・No)、コントローラ30の処理はステップS101に戻る。
【0130】
ステップS108において、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの傾倒を検知したか否かを判定する。なお、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作信号(電気信号)に基づいて、ブーム操作レバー26Aの傾倒を検知する。ブーム操作レバー26Aの傾倒を検知した場合(S108・Yes)、コントローラ30の処理はステップS109に進む。ブーム操作レバー26Aの傾倒を検知していない場合(S108・No)、コントローラ30の処理はステップS108を繰り返す。
【0131】
ステップS109において、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作量及び操作方向に基づいて、比例弁31AL,31ARを制御する。即ち、ステップS109においては、ゲートロック弁62は開弁しており、パイロットポンプ15からの作動油が比例弁31AL,31ARに供給される。また、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作信号(電気信号)を有効として、ブーム操作レバー26Aの操作信号(電気信号)に基づいて、比例弁31AL,31ARにブーム上げ操作信号(電気信号)及びブーム下げ操作信号(電気信号)を出力する。これにより、コントロールバルブ17のパイロットポートにパイロット圧が供給され、ブームシリンダ7に作動油が供給される。よって、ブーム操作レバー26Aの操作に応じて、ブーム4が上下する。
【0132】
ここで、ショベルにおいて、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62をロック状態から解除状態とする際、操作者の服等が操作装置26のレバーに引っ掛かる等によって、操作者が意図しないレバーの傾倒が生じていることがある。この場合、従来のショベルにおいては、操作者の意図しないアクチュエータの誤動作が生じるおそれがある。
【0133】
これに対し、本実施形態に係るショベル100によれば、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62がロック状態において操作装置26が操作された場合(S101・Yes)、誤操作として検知することができる(S102)。また、操作装置26として電気式の操作装置を用いることにより、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62がロック状態の場合であっても、誤操作(レバーの傾倒)を検知することができる。また、操作者に操作装置26のレバーの傾倒を報知することにより、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62を解除状態とする前に操作装置26のレバーを中立状態へと戻すことを促すことができる(S103)。
【0134】
また、操作装置26のレバーが中立状態で、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62を解除状態とすることにより(S101・No、S107・Yes)、操作装置26の操作信号(電気信号)が有効となる(S108、S109)。操作装置26のレバーが中立状態となっているので、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62を解除状態とした直後に、操作者の意図しないアクチュエータの誤動作の発生を防止することができる。
【0135】
一方、操作装置26のレバーが傾倒したまま、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62を解除状態としてゲートロック弁62を開弁したとしても(S101・Yes、S104・Yes)、操作装置26の操作信号(電気信号)を無効とすることにより、操作者の意図しないアクチュエータの誤動作を防止することができる(S105)。また、警報を発報することにより、アクチュエータの動作が無効となっていることを操作者に確実に報知することができる(S105)。
【0136】
また、比例弁31の制御を無効とした場合、ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62をロック状態とし(S106・Yes)、に操作装置26のレバーを中立状態へと戻した後に(S101・No)、再度ゲートロックレバー60によりゲートロック弁62を解除状態とすることで(S107・Yes)、比例弁31の制御が有効となる(S108,S109)。これにより、操作者の意図しないアクチュエータの誤動作の発生を確実に防止することができる。
【0137】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説された。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形及び置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【0138】
コントローラ30は、空間認識装置S7によりショベル100の所定範囲内に物体が進入したことを検知した場合、物体の種類と物体までの距離を判断してもよい。また、侵入した物体が人の場合、ステップS107において解除状態と判定されても、コントローラ30は、操作装置26の比例弁への操作信号(電気信号)を無効にする。これにより、作業現場の安全性が向上することができる。
【0139】
また、ショベル100の所定範囲内に人が進入した場合、コントローラ30は、リミットスイッチへの電気信号の出力によりゲートロック弁62を閉弁を維持させることで、操作装置26の操作を無効にしてもよい。これにより、作業現場の安全性が向上することができる。
【0140】
また、コントローラ30は、通信装置T1を介して、誤操作の判定記録を管理装置(図示せず)へ送信してもよい。なお、管理装置への送信情報には、誤操作の判定記録と、ショベル100の機番、操作者情報、日時などが含まれる。
【0141】
また、上述の実施形態では、コントローラ30は、旋回用油圧モータ2Aを自動的に動作させることで上部旋回体3を目標施工面に正対させるようにしている。但し、コントローラ30は、旋回用電動発電機を自動的に動作させることで上部旋回体3を目標施工面に正対させるようにしてもよい。
【0142】
また、上述の実施形態では、操作データは、操作装置又は遠隔操作用の操作装置に応じて生成されるが、所定の動作プログラムにより自動的に生成されてもよい。
【0143】
また、コントローラ30は、他のアクチュエータを動作させることで上部旋回体3を目標施工面に正対させるようにしてもよい。例えば、コントローラ30は、左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rを自動的に動作させることで上部旋回体3を目標施工面に正対させるようにしてもよい。
【0144】
本願は、2019年8月8日に出願した日本国特許出願2019-146179号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0145】
100 ショベル
1R 右側走行用油圧モータ(アクチュエータ)
1L 左側走行用油圧モータ(アクチュエータ)
2A 旋回用油圧モータ(アクチュエータ)
7 ブームシリンダ(アクチュエータ)
8 アームシリンダ(アクチュエータ)
9 バケットシリンダ(アクチュエータ)
17 コントロールバルブ
171~176 制御弁
26 操作装置
26A ブーム操作レバー(操作装置)
26B アーム操作レバー(操作装置)
30 コントローラ(制御部)
31 比例弁
31A ブーム比例弁
40 表示装置(報知部)
43 音出力装置(報知部)
60 ゲートロックレバー(ゲートロック装置)
62 ゲートロック弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7