(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】分子事象の感知および定量のための表面固定化された双安定ポリヌクレオチド装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6825 20180101AFI20240122BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240122BHJP
C12Q 1/00 20060101ALI20240122BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20240122BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240122BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240122BHJP
【FI】
C12Q1/6825
C12M1/00 A
C12Q1/00 Z
G01N27/00 J
G01N21/64 F
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2021544432
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 US2019024444
(87)【国際公開番号】W WO2020197554
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】アシュウィン ゴピナート
(72)【発明者】
【氏名】ポール ダブリュー ケイ ロザムンド
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/089588(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/147398(WO,A1)
【文献】MRS Bulletin,2017年,Vol.42,p.943-950
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面上の外部刺激の光学的または電子的検出のための双安定分子センサを含む構造
体であって、該双安定分子センサが、核酸構造
体を含み、以下:
第1のポリヌクレオチド形状および第2のポリヌクレオチド形状の間に柔軟性ヒンジまたは柔軟性リンカーを有する第1のポリヌクレオチド形状および第2のポリヌクレオチド形状であって、該第1のポリヌクレオチド形状が、該柔軟性ヒンジを介して該第2のポリヌクレオチド形状に係留され、該第2のポリヌクレオチド形状が、前記
基材の表面上に固定化されて、係留された第1のポリヌクレオチド形状および固定化された第2のポリヌクレオチド形状を与える、第1のポリヌクレオチド形状および第2のポリヌクレオチド形状であって、前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、第1の形状の内側表面および第1の形状の外側表面を含み、かつ、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、第2の形状の内側表面および第2の形状の外側表面を含み、
前記第2の形状の内側表面が、前記
基材の表面に付着し、
前記第1の形状の内側表面が、前記第2の形状の内側表面に面することができる、
第1のポリヌクレオチド形状および第2のポリヌクレオチド形状;および
前記第1のポリヌクレオチド形状および前記第2のポリヌクレオチド形状のうちの少なくとも1つに結合した1つ以上の機能分子、
を含む、構造
体であって、
前記双安定分子センサが、2つの状態のうちの一方を有し、該2つの状態が、閉
鎖状態および開
放状態であり:
前記開放状態では、前記係留された第1のポリヌクレオチド形状は、前記柔軟性ヒンジまたは柔軟性リンカーによって拘束されるように、前記第2のポリヌクレオチド形状に関して自由に移動し;かつ、
前記閉鎖状態では、前記係留された第1のポリヌクレオチド形状は、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状の近位に位置付けされ、
前記1つ以上の機能分子が、以下:
第1の駆動分子;および
第2の駆動分子
をさらに含み、
前記双安定分子センサの駆動機構が、前記第1および第2の駆動分子に関する分子イベントが前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉
鎖状態に向かってシフトさせるように構成される、
構造
体。
【請求項2】
前記1つ以上の機能分子の前記第1および第2の駆動分子が、第1の捕捉分子および第2の捕捉分子を含み、該第1の捕
捉分子が、該第2の捕捉分子とは異なる標的分子の領域に結合することができ、該第1の捕捉分子および該第2の捕捉分子が、第1の抗体および第2の抗体、第1のナノボディおよび第2のナノボディ、または第1のアプタマーおよび第2のアプタマーから選択され、
前記第1の捕捉分子の1つ以上のコピーが、前記第1のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記第2の捕捉分子の1つ以上のコピーが、前記第2のポリヌクレオチド形状に付着し、かつ、
前記標的分子の存在下で、前記第1の捕捉分子および前記第2の捕捉分子が、前記標的分子に結合し、それによって、前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉鎖状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項3】
前記1つ以上の機能性分子が、前記第1の形状の内側表面および/または前記第2の形状の内側表面に結合される、請求項1に記載の構造
体。
【請求項4】
前記1つ以上の機能分子の前記第1および第2の駆動分子が、第1の一本鎖核酸および第2の一本鎖核酸を含み、該第1の一本鎖核酸および該第2の一本鎖核酸が、互いに異なりかつ
標的一本鎖核酸に相補的であり、
前記第1の一本鎖核酸の1つ以上のコピーが、前記第1のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記第2の一本鎖核酸の1つ以上のコピーが、前記第2のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記標的一本鎖核酸の存在下で、前記第1の一本鎖核酸および前記第2の一本鎖核酸が、前記標的一本鎖核酸に結合し、それによって、双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉鎖状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項5】
前記1つ以上の機能性分子の前記第1および第2の駆動分子が、第1のCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体および第2のCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体を含み、該第1のCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体および該第2のCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体が、互いに異なりかつ
標的二本鎖核酸に相補的であり、
前記第1のCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体の1つ以上のコピーが、前記第1のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記第2のCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体の1つ以上のコピーが、前記第2のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記標的二本鎖核酸の存在下で、前記第1のCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体および前記第2のCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体が、前記標的二本鎖核酸に結合し、それによって、双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉鎖状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項6】
前記1つ以上の機能性分子の前記第1および第2の駆動分子が、アロステリックCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体および相補的アロステリック核酸配列を含み、該アロステリックCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体が、条件付きで隠されたアロステリック核酸配列を有し、
前記アロステリックCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体が、標的二本鎖核酸に結合することができ、それによって条件付きで隠されたアロステリック核酸配列を露出し、
前記アロステリックCRISPR不活性酵素ガイドRNA
複合体の一つ以上のコピーが、前記第一ポリヌクレオチド形状に付着し、
前記相補的アロステリック核酸配列の一つ以上のコピーが、前記第二ポリヌクレオチド配列に付着し、かつ
前記標的二本鎖核酸の存在下で、前記アロステリックCRISPR不活性酵素ガイドRNA複合体が、前記標的二本鎖核酸に結合し、かつ、前記相補的アロステリック核酸配列が、前記露出した条件付きで隠されたアロステリック核酸配列に結合し、それによって、前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉鎖状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項7】
前記1つ以上の機能性分子の前記第1および第2の駆動分子が、標的分子に結合することができる捕捉分子と、前記標的分子の非存在下で前記捕捉分子に結合することができる競合分子とを含み、該捕捉分子が、抗体、ナノボディ、またはアプタマーから選択され、
前記競合分子の1つ以上のコピーが、前記第1のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記捕捉分子の1つ以上のコピーが、前記第2のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記標的分子が存在しない場合、前記競合分子が、前記捕捉分子に結合し、それによって前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉鎖状態に向かってシフトさせ、
標的分子の存在下では、前記競合分子が、前記標的分子によって置き換えられ、それによって前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記開放状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項8】
前記1つ以上の機能分子の前記第1および第2の駆動分子が、化学的または酵素的薬剤によって化学的または酵素的に修飾されて、修飾された第1のタンパク質と、修飾された第1のタンパク質に結合することができる第2のタンパク質とをもたらすことができる第1のタンパク質を含み、
前記第1のタンパク質の1つ以上のコピーが、前記第1のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記第2のタンパク質の1つ以上のコピーが、前記第2のポリヌクレオチド形状に付着し、かつ
前記分子イベントが、前記第1のタンパク質を化学的または酵素的に修飾し、前記第1と第2のタンパク質との間の親和性を増加させて、前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションが前記閉鎖状態に向かってシフトするようになる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項9】
前記第1のタンパク質が、リン酸化、アセチル化、ユビキチン化、プレニル化、アデニル化、またはグリコシル化のうちの少なくとも1つによって修飾され得る、請求項8に記載の構造
体。
【請求項10】
前記第2のタンパク質が、前記修飾された第1のタンパク質に結合することができる天然に存在するタンパク質である、請求項9に記載の構造
体。
【請求項11】
前記第2のタンパク質が、リン酸化、アセチル化、ユビキチン化、プレニル化、アデニル化、またはグリコシル化に結合することができる抗体である、請求項9に記載の構造
体。
【請求項12】
前記1つ以上の機能分子の前記第1および第2の駆動分子が、捕捉核酸および捕捉分子を含み、捕捉核酸が化学的または酵素的に化学的または酵素的に修飾されて修飾された捕捉核酸を生じ、捕捉分子が修飾された捕捉核酸を結合することができ、
前記捕捉核酸の1つ以上のコピーが、前記第1のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記捕捉分子の1つ以上のコピーが、前記第2のポリヌクレオチド形状に付着し、かつ
前記化学的または酵素的薬剤の存在下で、前記捕捉核酸が、修飾され、前記修飾された捕捉核酸をもたらし、前記捕捉分子が、該修飾された捕捉核酸に結合され、それによって、前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉鎖状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項13】
前記捕捉核酸が、シトシンメチル化、シトシンヒドロキシメチル化、シトシンホルミル化、シトシンカルボキシル化、アデノシンメチル化、アルキル化、またはチミン二量化のうちの少なくとも1つによって修飾され得る、請求項12に記載の構造
体。
【請求項14】
前記捕捉分子が、捕捉核酸に結合することができる天然に存在する分子である、請求項13に記載の構造
体。
【請求項15】
前記捕捉分子が、前記修飾された捕捉核酸に結合することができる抗体である、請求項12に記載の構造
体。
【請求項16】
捕捉分子が、シトシンメチル化、シトシンヒドロキシメチル化、シトシンホルミル化、シトシンカルボキシル化、アデノシンメチル化、アルキル化、またはチミン二量体化に結合することができる抗体である、請求項12に記載の構造
体。
【請求項17】
前記1つ以上の機能性分子の前記第1および第2の駆動分子が、第1のタンパク質および第2のタンパク質を含み、
前記第1のタンパク質が、少なくとも1つのタイプのリガンドに結合することができる膜貫通受容体タンパク質であり、かつ
前記膜貫通受容体タンパク質が前記少なくとも1つのタイプのリガンドによって結合される場合、前記第2のタンパク質が、前記第1のタンパク質に結合することができ、
前記第1のタンパク質の1つ以上のコピーが、第1のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記第2のタンパク質の1つ以上のコピーが、第2のポリヌクレオチド形状に付着し、かつ
前記少なくとも1つのタイプのリガンドの存在下で、前記第2のタンパク質が、前記第1のタンパク質に結合され、それによって、前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉鎖状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項18】
前記第1のポリヌクレオチド形状に付着した前記第1のタンパク質の1つ以上のコピーが、以下:
前記第1のタンパク質と前記第1のポリヌクレオチド形状との間の直接リンカー分子、
前記第1のポリヌクレオチド形状に付着することができるタンパク質-脂質ナノディスクへの前記第1のタンパク質の挿入、
前記第1のポリヌクレオチド形状に付着することができるDNA-脂質ナノディスクへの前記第1のタンパク質の挿入、または
前記第1のポリヌクレオチド形状の一部として形成されるDNA-脂質ナノディスクへの前記第1のタンパク質の挿入
によって付着している、請求項17に記載の構造
体。
【請求項19】
前記双安定分子センサが、Gタンパク質受容体キナーゼ(GRK)をさらに含み、
前記GRKが、溶液中にあるか、または前記核酸構造
体に付着しており、
前記第1のタンパク質が、Gタンパク質共役受容体(GPCR)を含み、かつ前記第2のタンパク質が、リン酸化されたGPCRに結合することができるβアレスチンまたは抗体を含み、
前記GPCRに対する前記少なくとも1つのタイプの受容体リガンドの存在下で、前記GPCRが、前記GRKによってリン酸化され、したがって、βアレスチンまたは前記抗体が、リン酸化されたGPCRに結合し、それによって、前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉鎖状態に向かってシフトさせる、
請求項17に記載の構造
体。
【請求項20】
請求項17記載の構造体であって、
前記第1のタンパク質が、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)を含み、
前記第2のタンパク質が、抗体、ナノボディ、またはアプタマーであり、かつ
前記GPCRリガンドの存在下で、前記第2のタンパク質が、前記第1のタンパク質に結合し、それによって、前記双安定分子センサを前記閉鎖状態にする、
請求項17に記載の構造
体。
【請求項21】
膜貫通受容体に結合する受容体リガンドをアッセイする方法であって、該方法は、以下:
請求項17に記載の構造
体への候補受容体リガンドを提供すること、
を含み、
表面が、チップ(chip)である、
方法。
【請求項22】
前記膜貫通受容体が、Gタンパク質共役受容体(GPCR)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の機能性分子の前記第1および第2の駆動分子が、第1の分子および第2の分子を含み、
前記第1の分子が、リボスイッチリガンドによって結合することができるDNAリボスイッチまたはRNAリボスイッチを含み、
前記リボスイッチリガンドの結合が、ヌクレオチド配列またはアプタマーの
露出を誘導し、
前記第2の分子が、DNAリボスイッチまたはRNAリボスイッチ上の前記露出したヌクレオチド配列またはアプタマーに結合することができるDNA配列、RNA配列、またはタンパク質を含み、
前記第1の分子の1つ以上のコピーが、前記第1のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記第2の分子の1つ以上のコピーが、前記第2のポリヌクレオチド形状に付着し、かつ
前記リボスイッチリガンドの存在下で、前記第2の分子が、前記第1の分子に結合し、それによって、双安定分子センサの平衡コンフォメーションを閉鎖状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項24】
前記1つ以上の機能性分子の前記第1および第2の駆動分子が、修飾された捕捉分子を形成するために、化学的または酵素的薬剤によって修飾することができる捕捉分子を含み、
前記捕捉分子が、前記第1のポリヌクレオチド形状および前記第2のポリヌクレオチド形状に結合することができ、
前記修飾捕捉分子が、前記第1のポリヌクレオチド形状および前記第2のポリヌクレオチド形状に結合することができず、
前記捕捉分子が、タンパク質または核酸から選択され、かつ
前記捕捉分子の1つ以上のコピーが、第1のポリヌクレオチド形状および第2のポリヌクレオチド形状に付着し、かつ
前記化学的または酵素的薬剤の存在下で、前記捕捉分子が、修飾され、それによって、前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記開
放状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項25】
前記1つ以上の機能性分子の前記第1および第2の駆動分子が、第1の分子および第2の分子を含み、
前記第1の分子および第2の分子のうちの少なくとも1つが、化学的または酵素的薬剤によって修飾されて、前記第2の分子に結合することができ、
前記第1の分子および前記第2の分子が、核酸またはタンパク質から選択され、
前記第1の分子の1つ以上のコピーが、前記第1のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記第2の分子の1つ以上のコピーが、前記第2のポリヌクレオチド形状に付着し、かつ
前記化学
的または酵素
的薬剤の存在下で、前記第1の分子および第2の分子が、一緒に結合し、それによって、前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉鎖状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項26】
前記1つ以上の機能性分子の前記第1および第2の駆動分子が、捕捉分子およびプローブ分子を含み、
前記捕捉分子が、温度、光、pH、またはイオン条件のうちの1つによって修飾されて修飾された捕捉分子を生じることができ、
前記プローブ分子が、前記修飾捕捉分子に結合することができ、
前記捕捉分子および前記プローブ分子が、それぞれ独立して、核酸またはタンパク質であり、
前記捕捉分子の1つ以上のコピーは、第1のポリヌクレオチド形状に付着し、
前記プローブ分子の1つ以上のコピーが、第2のポリヌクレオチド形状に付着し、かつ
前記温度、光、pH、またはイオン条件の存在下で、前記捕捉分子が、修飾され、該プローブ分子が、前記修飾された捕捉分子に結合し、それによって、前記双安定分子センサの平衡コンフォメーションを前記閉鎖状態に向かってシフトさせる、
請求項1に記載の構造
体。
【請求項27】
前記表面が、金またはグラフェンであり、
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、有機フルオロフォア、量子ドット、蛍光ビーズ、または発光ランタニド化合物から選択される発光部を含み、
前記開放状態が、前記閉鎖状態よりも多くの光を生成する、
光学的検出のための、請求項1に記載の構造
体。
【請求項28】
以下:
請求項1に記載の構造
体を使用して外部刺激をアッセイすることを含む、:
外部刺激を光学的に検出する方法であって、
前記表面が、金またはグラフェンであり、
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、有機フルオロフォア、量子ドット、蛍光ビーズ、または発光ランタニド化合物から選択される発光部を含み、
前記構造
体が、発光部によって生成される光を増強することができる微細加工デバイス内にある、
方法。
【請求項29】
前記微細加工されたデバイスが、フォトニック結晶キャビティ、リング共振器、または光学ボウタイから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記表面が、透明であり、
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、蛍光標識、発光標識、または光散乱粒子で標識される、
全反射(TIRF)顕微鏡法を用いた光学的検出のための、請求項1に記載の構造
体。
【請求項31】
前記表面が、金であり、
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、標識されていないか、または光学活性粒子で標識されている、
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた光学的検出のための、請求項1に記載の構造
体。
【請求項32】
前記表面が、表面は透明または不透明であり、
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、標識されていないか、または光学活性粒子で標識されている、
表面反射干渉法(RI)を用いた光学的検出のための、請求項1に記載の構造
体。
【請求項33】
双安定分子センサのうちの1つ以上を含む
基材をさらに含み、前記
基材が、前記1つ以上の双安定分子センサのそれぞれのための表面である、請求項1に記載の構造
体。
【請求項34】
前記1つ以上の双安定分子センサが、指向性自己集合またはリソグラフィによって前記基材上に
位置付けされる、請求項33に記載の構造
体。
【請求項35】
前記1つ以上の双安定分子センサが前記基材上にリソグラフィで
位置付けされる場合、前記基材が、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状のための接着剤であって前記係留された第1のポリヌクレオチド形状のための接着剤ではないリソグラフィでパターン化された結合部位を含む、請求項34に記載の構造
体。
【請求項36】
前記表面が、金、白金、グラフェン、酸化インジウム、または酸化インジウムスズを含む作用電極であり、前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、1つ以上のレドックス活性分子で標識され、前記状態の変化が、1つ以上のレドックス活性分子と作用電極との間の電子移動をもたらす、
電気的検出のための請求項1に記載の構造
体。
【請求項37】
前記1つ以上のレドックス活性分子が、メチレンブルー、フェロセン、1,3-ジアザ-2-オキソフェノチアジン、または三環式シトシンアナログから選択される、請求項36に記載の構造
体。
【請求項38】
前記構造
体が、銀/塩化銀参照電極と、前記表面の上に
位置付けされた白金ワイヤ対向電極とをさらに含み、
前記作用電極の表面が、金表面であり、金が、eビーム蒸着またはテンプレートストリップされた金であり、1つ以上の酸化還元活性分子が、メチレンブルーであり、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が付着する表面上の位置が、アルカンチオール自己集合単分子層でコーティングされる、
矩形波ボルタンメトリーによる電気的検出のための、請求項36に記載の構造
体。
【請求項39】
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、前記金表面への付着のためのチオール修飾を含む、請求項38に記載の構造
体。
【請求項40】
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、前記金表面への付着のための一本鎖ポリアデノシン鎖を含む、請求項38に記載の構造
体。
【請求項41】
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、前記金表面への付着のためのホスホロチオエート修飾を含む、請求項38に記載の構造
体。
【請求項42】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、前記金表面への付着を阻害するためのポリエチレングリコール修飾を含む、請求項38に記載の構造
体。
【請求項43】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、前記金表面への付着を阻害するためのデキストラン修飾を含む、請求項38に記載の構造
体。
【請求項44】
前記金表面が、チオール化ポリエチレングリコール分子を含む、請求項38に記載の構造
体。
【請求項45】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、剛性の2次元(2D)板を形成し、
1つ以上のレドックス活性分子は前記係留された第1のポリヌクレオチド形状上に分配され、
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、表面と1つ以上のレドックス活性分子のうちの1つとの間に選択的に
位置付けされる、
請求項36に記載の構造
体。
【請求項46】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、剛性の2Dプレートを形成し、
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、表面への直接的なアクセスを提供する窓または穴を有するプレートを形成し、
前記閉鎖状態において、その上に1つ以上のレドックス活性分子を有する前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、窓または穴の上に
位置付けされる、
請求項36に記載の構造
体。
【請求項47】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、剛性アームと剛性三次元(3D)形状を形成し、1つ以上の酸化還元活性分子が剛性アームの端部に付着している、
請求項36に記載の構造
体。
【請求項48】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、剛性半球または剛性ドームを形成し、1つ以上のレドックス活性分子は剛性半球または剛性ドームの周囲縁部に沿って付着し、
前記閉鎖状態では、周囲縁部上のレドックス活性分子が、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状の近位に
位置付けされる、
請求項36に記載の構造
体。
【請求項49】
前記表面上の溶液および作用溶液電極をさらに含み、
前記表面が、トランジスタとして機能し、前記表面が、カーボンナノチューブ、シリコンナノワイヤ、グラフェン、二硫化モリブデン、酸化インジウムから選ばれるゲート材料であり、
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、前記表面に直接付着し、
前記表面上の溶液が、前記トランジスタのゲート電極として機能する、
電界効果感知のための、請求項1に記載の構造
体。
【請求項50】
前記表面がグラフェンであり、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、一本鎖DNA延によって前記グラフェンに付着する、請求項49に記載の構造
体。
【請求項51】
マグネシウムイオンをさらに含み、
前記表面が、ピレンカルボン酸でコーティングされたグラフェンであり、
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、前記マグネシウムイオンと前記ピレンカルボン酸との間の静電的な相互作用によって、前記コーティングされたグラフェン表面に付着している、
請求項49に記載の構造
体。
【請求項52】
前記表面が、ポリリジンでコーティングされたグラフェンであり、
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、静電的な相互作用によって前記表面に付着している、
請求項49に記載の構造
体。
【請求項53】
前記表面が、グラフェンであり、
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、ポリエチレングリコールを含む、
請求項49に記載の構造
体。
【請求項54】
前記表面が、グラフェンであり、
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、ポリリジン-グラフト-ポリエチレングリコールポリマーを含む、
請求項49に記載の構造
体。
【請求項55】
マグネシウムイオンをさらに含み、
前記表面が、酸素プラズマで処理された、またはカルボキシシランで被覆された酸化インジウムであり、前記マグネシウムイオンは、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状を表面に架橋する、
請求項49に記載の構造
体。
【請求項56】
前記表面が、酸化インジウムであり、
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、トリメチルシリル基および/またはポリテチレングリコール(PEG)シランを含む、
請求項49に記載の構造
体。
【請求項57】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、前記閉鎖状態で位置を維持することができる剛性の2Dプレートを形成する、
請求項49に記載の構造
体。
【請求項58】
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、窓または穴を有するプレートであり、
前記閉鎖状態では、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状の前記窓または穴が
、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状のいずれも
が前記表面と前記係留された第1の形状との間に存在しない状態で、前記表面と前記係留された第1の形状との間の空間をレンダリングする、
請求項57に記載の構造
体。
【請求項59】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、剛体アームを有する剛体三次元(3D)形状を形成し、
前記閉鎖状態では、前記剛体アームが
、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状のいずれも
が前記剛体アームと前記表面との間に存在しない状態で、
前記表面の上方に
位置付けされる、
請求項49に記載の構造
体。
【請求項60】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、周囲縁部を有する剛性半球または剛性ドームを形成し、
前記閉鎖状態では、
前記周囲縁部が
、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状のいずれも
が前記周囲縁部と前記表面との間に存在しない状態で、
前記表面
の近位にかつ前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状の周囲に
位置付けされる、
請求項49に記載の構造
体。
【請求項61】
前記表面上の溶液および作用溶液電極をさらに含み、
前記表面が、トランジスタとして機能し、
前記表面
が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、または窒化珪素から選択されるキャッピング層の下にある半導体ゲートを含み、
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状
が、前記キャッピング層に取り付けられ、
前記表面上の
前記溶液
が、前記トランジスタのゲート電極として機能する、
電界効果感知のための請求項1に記載の構造
体。
【請求項62】
マグネシウムイオンをさらに含み、
前記キャッピング層が、酸素プラズマによって処理されるか、またはカルボキシルシランでコーティングされ、
前記マグネシウムイオンは、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状をキャッピング層に架橋する、
請求項61に記載の構造
体。
【請求項63】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、トリメチルシリル基および/またはポリテチレングリコール(PEG)シランを含む、請求項61に記載の構造
体。
【請求項64】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、前記閉鎖状態において位置を維持することができる剛性2Dプレートを形成する、請求項61に記載の構造
体。
【請求項65】
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状が、窓または穴を有するプレートであり、
前記閉鎖状態では、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状における前記窓または穴が、
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状のいずれもが前記キャッピング層と前記係留された第1のポリヌクレオチド形状との間に
存在しない状態で、
前記キャッピング層と前記係留された第1のポリヌクレオチド形状との間の空間をレンダリングする、
請求項61に記載の構造
体。
【請求項66】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、剛性アームを有する剛性三次元(3D)形状を形成し、
前記閉鎖状態では、前記剛性アームが
、前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状のいずれも
が前記剛性アームと前記キャッピング層の間に存在しない状態で、前記キャッピング層の上方に
位置付けされる、
請求項61に記載の構造
体。
【請求項67】
前記係留された第1のポリヌクレオチド形状が、周囲縁部を有する剛性半球または剛性ドームを形成し、
前記閉鎖状態では、前記周囲縁部が、
前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状のいずれもが前記周囲縁部と前記キャッピング層との間に存在しない状態で、前記キャッピング層の近位にかつ前記固定化された第2のポリヌクレオチド形状の周辺
に位置付けされる、
請求項61に記載の構造
体。
【請求項68】
光学的検出のための検出システムであって、該検出システムは、
請求項1に記載の複数の構造
体であって、それぞれが外部刺激と相互作用する異なる外部刺激または検体を検出することができる1,000個までの別個の双安定分子センサを含み、複数の構造
体のそれぞれが、インクジェット印刷またはマイクロアレイ印刷を使用して、
基材表面上の1,000個までの対応する別個の領域のうちの1つに
位置付けされ、別個の双安定分子センサのそれぞれの複数のコピーが、
基材上の対応する別個の領域のそれぞれに
位置付けされる、複数の構造
体
を含む、検出システム。
【請求項69】
前記1,000までの対応する別個の領域が、核酸オリガミ配置のための複数の単一分子結合部位を有する各対応する別個の領域でリソグラフィ的にパターン化される、請求項68に記載の検出システム。
【請求項70】
前記複数の単一分子結合部位の各々が、1つ以下の双安定センサを含む、請求項69に記載の検出システム。
【請求項71】
前記外部刺激を、以下:
透明基材上での全内部反射分光法、
金表面上での蛍光の焼入れ、
グラフェン
基材上での蛍光の焼入れ、または
光学ボウタイを用いた蛍光の向上
から選択された1つによって検出することができる、請求項68に記載の検出システム。
【請求項72】
電気的検出のための検出システムであって、該検出システムが、以下:
請求項1に記載の複数の構造
体であって、それぞれが外部刺激と相互作用する異なる外部刺激または分析物を検出することができる4,000個までの別個の双安定分子センサを含み、複数の構造
体のそれぞれが、インクジェット印刷またはマイクロアレイ印刷を使用して、
基材表面上の4,000個までの対応する別個の領域のうちの1つに
位置付けされ、別個の双安定分子センサのそれぞれの複数のコピーが、
基材上の対応する別個の領域のそれぞれに
位置付けされる、複数の構造
体
を含む、検出システム。
【請求項73】
前記表面が、金、グラフェン、白金、グラフェン、酸化インジウム、二硫化モリブデン、カーボンナノチューブ、シリコンナノワイヤ、またはシリコンから選択される、請求項72に記載の検出システム。
【請求項74】
DNAオリガミ配置が、100ナノメートル未満の間隔を置いて
位置付けされた電極間の位置に前記双安定分子センサを
位置付けするために使用され、かつ
単一分子測定値が、酸化還元サイクルによって得られる、
請求項36に記載の構造
体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は「Bistable Polynucleotide Devices for the Sensing and Quantification of Molecular Events」と題する、2018年9月25日に出願された米国特許出願第16/350,115号の一部継続出願であり、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
本発明は、National Science Foundationによって授与された付与番号CMMI1636364、およびOffice of Naval Researchによって授与された付与番号N00014-14-1-0702の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、発明について一定の権利を有する。
【0003】
(分野)
本発明は例えば、そのような分子事象の定量化が単一の分析物の濃度の測定、または分析物のセットの多重検出および定量化を可能にし得る場合(分析物は、液試料中の分子または粒子のタイプである)、関心のある分子に起こり得る、結合事象、コンホメーション変化、化学修飾、または酵素修飾などの分子事象の感知および定量化のための構造に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
種々の分子実体は互いに選択的親和性を示し、その結果、レセプター-配位子、抗体-抗原、ナノボディ-抗原、またはアプタマー-標的複合体などの多分子複合体が形成される。ある分子の他の分子に対するこのような選択的親和性は、このような親和性から生じる結合事象が所与のサンプル溶液中の分析物の存在を決定するために、および特定の設定において、分析物の濃度も決定するために使用され得るので、特に興味深い。
【0005】
過去数十年にわたり、信号が光学的(分光的、比色的または蛍光的)または電磁(インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンスまたは電流)であり得る、一次または二次結合事象に関連する信号を検出および/または増幅する直接的または間接的方策を含む、特異的複合体形成の同定に基づいて、種々の検出方法が開発されてきた。これらの方法(および関連するシステム)の特異性、速度、および感度のために、これらは、現代の分析測定の基礎となり、そして学術的ならびに工業的研究において有用性を見出す。このようなプラットフォームの特定用途面積のいくつかには、環境評価、食品安全性、医療診断、および化学、生体情報および/または放射線兵器の検出が含まれる。
【0006】
しかしながら、既存の高感度アッセイは、複数の分析物について多重化することを非常に困難にする技術的詳細を有する。さらに、定量のためにこのようなアッセイを使用するアプローチはしばしば、大量のサンプルを導く一連の希釈工程を含む。したがって、少量の試料体積中の分析物の存在を定量的に測定するための、同時に高感度で、モジュール式で、多重化可能な方法が大いに必要とされている。
【0007】
より一般的には、コンホメーション変化および酵素修飾のような分子事象の検出が生物学的活性についての強力なアッセイを作製するために使用され得る。例えば、膜貫通型タンパク質受容体はその本来の機能の過程で内在性リガンドと結合するが、そのような受容体に対する人造リガンドは最も重要なクラスの医薬品の一つを構成する。細胞外側のリガンドによる膜貫通型受容体の活性化はしばしばコンホメーション変化、あるいは細胞質側の受容体のリン酸化を伴い、受容体活性化の直接的な表示となり、おそらく生物学的活性を示す。現在、潜在的な薬物について分子の大きなライブラリーをスクリーニングすることは、細胞上で最もよく行われている。従って、任意の分子事象のインビトロセンサが必要であり、これは、分析物の単純な結合を超えて、いくつかの機能的分子事象(例えば、リン酸化またはコンホメーション変化)についてのアッセイを提供し得る。同様に、熱、光、pH、または他の環境刺激に基づいて変化する活性のような、あらゆる種類の機能特性について分子をスクリーニングすることは、任意の分子事象のための高感度、モジュラー、および多重化可能なプラットフォームから利益を得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(要旨)
本発明の実施形態の態様は、関心分子に起こり得る結合事象、コンホメーション変化、化学修飾、または酵素修飾などの分子事象を検出するための一般的なプラットフォームに関する。いくつかの実施形態では、結合などの分子事象の検出を使用して、液試料中の分子または粒子の濃度を決定することができる。いくつかの実施形態では、コンホメーション変化または酵素修飾などの分子事象の検出を使用して、医学的関心のある膜受容体に対する活性について薬物候補のライブラリーをスクリーニングすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では構造が表面上の外部刺激の光学的または電子的検出のための双安定分子センサを含み、双安定分子センサはポリヌクレオチドプラットフォームを有し、柔軟性ヒンジまたは柔軟性リンカーを間に有する第1のポリヌクレオチド形状および第2のポリヌクレオチド形状を有し、第1のポリヌクレオチド形状または第2のポリヌクレオチド形状のうちの1つは固定化ポリヌクレオチド形状およびテザードポリヌクレオチド形状を与える表面上に固定化され、双安定分子センサは第1のポリヌクレオチド形状および第2のポリヌクレオチド形状のうちの少なくとも1つに結合された1つまたは複数の機能分子を含み、2つの状態のうちの1つは閉鎖状態および開放状態であり、テザードポリヌクレオチド形状は開放状態では柔軟性ヒンジまたは柔軟性リンカーによって拘束されるように第2のポリヌクレオチド形状に対して自由に移動し、閉鎖状態ではテザードポリヌクレオチド形状が固定化ポリヌクレオチド形状に近位に配置される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドプラットフォームがスキャフォールドデオキシリボ核酸(DNA)オリガミ、スキャフォールドリボ核酸(RNA)オリガミ、スキャフォールドハイブリッドDNA:RNAオリガミ、一本鎖DNAタイル、多本鎖DNAタイル、一本鎖RNAオリガミ、多本鎖RNAオリガミ、または複数のスキャフォールドを有する階層的に構成されたDNAもしくはRNAオリガミから選択される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、表面が金またはグラフェンであり、係留された形状が有機フルオロフォア、量子ドット、蛍光ビーズ、または発光ランタニド化合物から選択される発光部を含み、開放状態が閉鎖状態よりも多くの光を生成する、光学検出のための上記の構造。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では電気的検出のための上記の構造であり、表面は金、白金、グラフェン、酸化インジウム、または酸化インジウムスズを含む作用電極であり、係留された形状は1つ以上のレドックス活性分子で標識され、状態の変化は1つ以上のレドックス活性分子と作用電極との間の電子移動をもたらす。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では上述の構造が表面上の溶液および作用溶液電極をさらに含み、表面はトランジスタとして機能し、表面はカーボンナノチューブ、シリコンナノワイヤ、グラフェン、二硫化モリブデン、または酸化インジウムから選択されるゲート材料であり、固定化された形状は表面に直接付着し、表面上の溶液はトランジスタのゲート電極として機能する。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では上述の構造が電界効果感知のために使用され、この構造は表面上の溶液および作用溶液電極をさらに含み、この表面はトランジスタとして機能し、この表面は二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、または窒化珪素から選択されるキャッピング層の下に半導体ゲートを含み、この固定化された形状はこのキャッピング層に付着し、そしてこの表面上の溶液はこのトランジスタのためのゲート電極として機能する。
【0014】
この特許又は出願書類は,色彩を付して作成された少なくとも1の図面を含んでいる。彩色図面を伴っているこの特許又は特許出願公開の写しは,請求及び必要な手数料の納付によって,特許商標庁が提供する。
【0015】
添付の図面は明細書と共に、本発明の例示的な実施形態を示し、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、アフィニティータグおよびDNAバーコードの両方を含む、溶液中で働くように設計された双安定分子センサの概略図である。
【
図1B】
図1Bは2つのポリヌクレオチド形状から構成される双安定分子センサの概略図であり、そのうちの1つは、表面上に固定され、光学的または電子的検出に適した、柔軟性リンカーによって繋がれている。
【
図2A】
図2Aはサンドイッチ作動機構を介して作動する、溶液中の双安定センサの動作の概略図であり、分析物の結合時のアフィニティータグの隠蔽を示す。
【
図2B】
図2Bは、アフィニティービーズを用いて開いたセンサを除去することによる、閉じた双安定センサからのDNAバーコードの抽出を説明する概略図である。
【
図3A】
図3A~Cは、表面上での光学的または電子的検出に適合された、サンドイッチ作動を使用して一本鎖核酸を感知するのに適した双安定センサを示す。
【
図3B】
図3A~Cは、表面上での光学的または電子的検出に適合された、サンドイッチ作動を使用して一本鎖核酸を感知するのに適した双安定センサを示す。
【
図3C】
図3A~Cは、表面上での光学的または電子的検出に適合された、サンドイッチ作動を使用して一本鎖核酸を感知するのに適した双安定センサを示す。
【
図3D】
図3Dは、2つのCRISPR/dCas9錯体を使用して、サンドイッチ作動を使用して二本鎖DNAを感知するのに適した双安定センサを示す。
【
図3E】
図3Eは一本鎖アロステリックCRISPR/dCas9錯体を使用して、サンドイッチ作動を使用して二本鎖DNAを感知するのに適した双安定センサを描写し、これは、二本鎖分析物を結合すると、隠れた配列を明らかにする。
【
図4】
図4A~Fは、協同性を用いてMAPKのリン酸化、またはリガンドの膜貫通Gタンパク質共役受容体への結合を検出するこれらの機構の例を含む、作動、サンドイッチ、競合的、および機能的の3つの主要な機構を描いている。
【
図5】
図5A~Dは、リボスイッチ、開裂反応、および連結反応に基づく双安定センサの機能的作動を示す。
【
図6】
図6A~Cは、表面上に固定化された双安定センサの作動の電子的検出に対する3つの異なるアプローチを示す。
【
図7】
図7A~Eは、サインオン及びシグナルオフ実施体の両方のためのシグナルトレースのカートスケッチを含む、表面上に固定化された2安定センサのアクチュエーションの光学検出に対する3つの異なるアプローチを示している。
【
図8】
図8A~Dは双安定センサのための4つの異なる幾何学的形状を示し、双安定センサがその閉鎖状態にあるとき、それぞれが、下にある検出器表面に信号分子またはポリヌクレオチド材料の異なる構成を提示する。
【
図9】
図9A~Cは、光学または電子表面上に双安定センサを表面配置するための問題および解決策を示す。
【
図10】
図10は双安定センサの複数のアレイの使用による複数の分析物の多重化検出を示し、各サブアレイは、関心のある別個の検体に感受性である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
以下の詳細な説明では、例示として、本発明の特定の例示的な実施形態のみが示され、説明される。当業者が認識するように、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0018】
本発明の実施形態の態様はポリヌクレオチドプラットフォーム(例えば、ポリヌクレオチドから明確な寸法または三次元形状を生成するための一般的なアーキテクチャ)を使用して基板上に作製される双安定分子センサに関する。ポリヌクレオチドプラットフォームとしては、以下が挙げられルがこれらに限定されない。足場付きデオキシリボ核酸(DNA)オリガミ(Rothemund, Paul WK. ”Folding DNA to create nanoscale shapes and patterns”, Nature 440.7082 (2006): 297)、足場付きリボ核酸(RNA)オリガミ(Torelli, Emanuela et al, ”Isothermal folding of a light-up bio-orthogonal RNA origami nanoribbon”, Scientific Reports 8 (2018): 6989)、足場付きハイブリッドDNA:RNAオリガミ(Wang, Pengfei, et al. ”RNA-DNA hybrid origami: folding of a long RNA single strand into complex nanostructures using short DNA helper strands”, Chemical Communications 49 (2013) 5462-5464)、スカフォールドフリーDNA一本鎖タイル(DNAブリック)システム(Wei, Bryan, et al., ”Complex shapes self-assembled from single-stranded DNA tiles”, Nature 485 (2012):623-626およびKe, Yonggang, et al., ”Three-Dimensional Structures Self-Assembled from DNA Bricks”, Science 338 (2012):1177-1183)、スカフォールドフリー多鎖DNAタイルシステム(Winfree, Erik, et al., ”Design and self-assembly of two-dimensional DNA crystals”, Nature 394 (1998) 539-44)またはRNAタイルシステム(Chworos, Arkadiusz, et al., ”Building programmable jigsaw puzzles with RNA.” Science 306 (2004):2068-72)、分子内に折り畳まれた一本鎖RNA(Geary, Cody, et al., ”A single-stranded architecture for cotranscriptional folding of RNA nanostructures”, Science 345 (2014) 799-804)または一本鎖DNAオリガミ(Han, Dongran, et al., ”Single-stranded DNA and RNA origami”, Science 358 (2017): eaao2648)、これらはすべて、参照によりその全体が組み込まれる。明確にするために、本発明の実施形態の態様は主に「分子」の特定の例としての足場DNAオリガミの文脈で本明細書に記載される。形状」 しかし、本発明の実施形態は、足場DNAオリガミに限定されない。代わりに、本発明の実施形態は他のポリヌクレオチドプラットフォーム(例えば、上記に列挙されるプラットフォーム)を使用して作製される分子形状を含み、ここで、他のポリヌクレオチドプラットフォームへの本発明の実施形態の適用のいくつかの例は、以下により詳細に記載される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態は2つの部分を有する:第1に、外部刺激(例えば、分析物分子の溶液)の適用の際にその状態を変化させるように設計される双安定ポリヌクレオチドセンサ、および第2に、装置の状態変化が、DNA配列、光信号、または電子シグナルのいずれかとして記録されることを可能にするプロトコルおよび方法のセット。
【0020】
溶液中で(
図1A)または表面上で(
図1B)機能することができる双安定ポリヌクレオチドセンサを本明細書に記載する。双安定ポリヌクレオチドセンサを導入する目的のために、最初に、溶液型および表面型の両方に共通の特徴を記載する。一実施形態では、双安定ポリヌクレオチドセンサが1つ以上の柔軟性リンカーによって一緒に繋がれた2つのポリヌクレオチド形状から構成される。明確にするために、単一のリンカーのみを
図1に示す。
【0021】
双安定ポリヌクレオチドセンサは、分子事象を検出するための一般的なプラットフォームを表す。明確にするために、これらのセンサが結合事象の検出に適合した
図1A~1Bに示されるようなセンサは、分析物分子の濃度を測定するために一般に使用される能力である。さらに、
図1A~1Bは、タンパク質の検出のための「サンドイッチ作動モード」(ELISAのようなサンドイッチイムノアッセイにおいて一般に使用される能力)において、抗体の一対と共に使用するために特に適合されるようなセンサを示す。後に、
図3は、核酸の検出のためのサンドイッチ作動モードを示す。さらに後に、
図4および5は、プラットフォームを使用して検出および定量化され得る他の分子事象の数、ならびに含まれる種々の分子実体に関する詳細を強調する、数の実施形態を描写する。
【0022】
したがって、サンドイッチ作動機構の2つの例示的な例(
図1A、「溶液バージョン」、および
図1B、「表面バージョン」)ではそれぞれのポリヌクレオチド形状が分析物分子または粒子の独特の非重複領域に結合する「結合分子」(例えば、アプタマー、抗体、またはナノボディ)を保有する。標的分析物が存在しない場合、2つのオリガミは柔軟性リンカーを介して互いに対して移動し、「開放」と呼ばれる状態であるが、分析物を捕捉すると、2つのオリガミは結合して、単一の半剛性ユニットを形成し、「閉鎖」と呼ばれる状態である。いくつかの実施形態において、オリガミの少なくとも1つは、開から閉への状態変化を検出するために使用され得る、ユニークなDNAバーコードまたは発光または電子的に活性なシグナル伝達分子を保有する。明確にするために、
図1Aの溶液バージョンの一実施形態の説明ではポリヌクレオチド形状の一方または両方が発光分子を保持する可能性は省略されているが、いくつかの実施形態ではシグナル検出のために溶液バージョンが発光分子を保持することは以下に記載されるとおりである。
【0023】
以下の用語は、本開示全体を通して交換可能に使用される:双安定分子センサ、双安定センサ、双安定検出器、双安定装置、双安定ポリヌクレオチドナノ構造、双安定ポリヌクレオチド装置、双安定ポリヌクレオチドセンサ、双安定ポリヌクレオチドセンサ、フライトラップセンサ、フライトラップ検出器、またはフライトラップ。
【0024】
本開示では双安定センサの2つの少なくとも半剛性のポリヌクレオチド形状を「蓋」と呼び、図中のこれらの蓋の方位に関して、または表面上の双安定センサの方位に関して、「上蓋」および「下蓋」と呼ぶことができ、これらの蓋は上述のような任意のポリヌクレオチドプラットフォームを使用して実施することができる場合、「DNAオリガミ」である。
【0025】
本開示では、蓋の間の柔軟な接続が「リンカー」または「ヒンジ」としてである。いくつかの実施形態では蓋の間に複数のリンカーが存在してもよく、いくつかの実施形態では1つのリンカーが一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、二本鎖DNAヘリックスの束、二本鎖RNAヘリックスの束、ポリヌクレオチド類似体、またはポリエチレングリコール(PEG)などの非ポリヌクレオチドポリマーから構成されてもよい。実施形態に依存して、リンカーは、単一共有結合(~2オングストローム)から10,000ヌクレオチドの二本鎖リンカー(~3.5ミクロン)までの長さで変化し得る。溶液ベースの検出(例えば、LRETまたはPCR増幅可能なDNA信号)を使用する実施形態は典型的にはより短いリンカー(1nm~10nm)を使用するが、表面ベースの光学的検出または電子的検出を使用する実施形態は典型的にはより長いリンカー(10nm~4ミクロン)を使用する。
【0026】
双安定ポリヌクレオチドセンサのいくつかの実施形態は独立して合成されたリンカーと自己集合した2つの独立して折り畳まれたDNAオリガミ形状を含むが、他の実施形態は単一のDNAオリガミを含み、ここで、ポリヌクレオチド形状およびリンカーの両方はすべて、単一の長いDNA足場ストランドから折り畳まれる。バイ安定性センサの他の実施形態は一本鎖DNAタイルから、一本鎖RNAまたはDNAオリガミ、または他の適当なポリ核酸プラットフォームから、多層ストランドDNAタイルから作製される。
【0027】
実施形態に応じて、分子事象(分析物分子の結合など)によって誘発される状態変化は(1)分析が溶液中で行われる場合、状態変化(開対閉)は定量される分析物のアイデンティティをコードするユニークなDNAバーコードを介して、またはルミネセンス共鳴エネルギー移動を介してのいずれかで検出されてもよく、または(2)分析が表面上で行われる場合、状態変化は光学シグナルまたは電気信号のいずれかの変化として記録されてもよく、表面上の双安定オリガミデバイスの空間位置は記録される分子事象の性質(例えば、定量される分析物のアイデンティティ)をコードする。
【0028】
DNAバーコード信号の出力を介して検出を提供するいくつかの「溶液バージョン」の実施形態について、装置の双安定性は、標的分析物に結合していない装置を優先的に除去することを可能にする(
図2)。オープンであるデバイスはアフィニティーカラム(例えば、ストレプトアビジンビーズを含む)に結合し得る、利用可能な精製タグ(
図2A、例えば、ビオチン)を有する。結合した分析物を有する残りの閉じた装置は隠されたアフィニティータグを有し、したがって、それらは、アフィニティータグに結合するビーズと共に親和性カラムを通過し(
図2B)、分析のために収集され得る。
【0029】
アフィニティーカラムから溶出されると、閉鎖された分析物結合装置は、標準的なPCRを介して検出され得るか、または定量的PCR、液滴デジタルPCR、または付着したDNAバーコードに基づく次世代DNA配列決定または深部DNA配列決定への種々のアプローチを介して定量され得る。DNAバーコードを検出および定量するために使用される正確なアプローチに依存して、装置はさらなる処理および精製なしに使用され得るか、またはDNAバーコードは双安定装置から放出され得、そして読み取られる前に精製され得る。いくつかの実施形態では、DNAバーコードがセンサからバーコード分子を切断する制限酵素の使用によって双安定センサから放出され得る。いくつかの実施形態において、DNAバーコードはZhang et al, ”Dynamic DNA nanotechnology using strand-displacement reactions”, Nature Chemistry 3 (2011): 103-113に記載されるような鎖置換反応を介して双安定センサから放出され得、その全内容は、本明細書中に参考として援用される。いくつかの実施形態では、DNAバーコードが双安定センサから解放されず、直接読み取られる。
【0030】
出力としてDNAバーコード信号を使用するいくつかの溶液ベースの実施形態の利点は(1)既存の試薬と共に使用され得る(標準的なサンドイッチ免疫アッセイのための抗体が双安定デバイスに結合され得る)、(2)それらはDNA増幅(例えば、PCR)に必要とされるものを超える機器なしで使用され得る、(3)それらは高度の多重化、蛍光ベースのqPCRの場合には少なくとも8つの分析物、および次世代配列決定の場合には少なくとも1000の分析物を可能にする、ならびに(4)それらは双安定センサのDNAバーコード出力を取り、それを液滴デジタルPCR(ddPCR)への入力として使用することによって、高度に定量的にされ得る、ことを含む。従って、核酸の計数のための標準的な技術(ddPCR)は、双安定センサの使用を介してタンパク質分子を計数するために使用され得る。
【0031】
任意の特定の溶液ベースの実施形態の感度、偽陰性および偽陽性率は、(1)装置内の結合分子に対する分析物の結合親和性、および結合した分析物が装置を完全に閉じる程度、(2)精製タグが結合状態で「隠されている」程度、および(3)「隠されていない」精製タグが溶液からの分析物を結合していない装置の完全な除去を可能にする程度によって設定される。例えば、閉鎖されたデバイスがビオチンのような低分子精製タグが依然として、オリガミ表面の穴からわずかに突出することを可能にする場合、いくつかの分析物分子は、アフィニティーカラム上で失われ得、偽陰性、またはタンパク質濃度の過小評価を生じる。同様に、双安定装置への分析物の結合が比較的弱く、装置が持続的に閉じられず、依然として動的に開閉する場合、カラム上で失われる可能性がある。
【0032】
したがって、いくつかの実施形態では分析物が結合するときに活性化する1一対の短い相補的一本鎖DNAを含む、追加の「弱いロック」は偽陰性を減少させ得る。弱いロックは、分析物を含まない装置の平衡を閉じた構成にシフトさせる傾向がある。このようなデバイスが閉鎖構成において十分な時間、具体的には、デバイスがカラムを通過するのに要する平均時間を費やす場合、カラムを結合することを回避し、偽陽性を生成することができる。
【0033】
したがって、弱いロックを有する実施形態では、弱いロックの強度が結合された分析物を有さない双安定デバイスの変動(開放と近閉鎖との間の)が親和性カラムに結合するのに十分な機会を作り出し、その結果、高い確率で結合するように調整されなければならない。
【0034】
分析物が結合していないデバイスがカラムに結合しなければならない機会が多ければ多いほど、デバイスが通過し、偽陽性を生じる機会は低くなる。したがって、いくつかの実施形態では、複数の逐次アフィニティーカラム分離を使用して、偽陽性を減少させることができる。
【0035】
図1Aにおける弱いロックおよびアフィニティータグの出現に関して、アフィニティータグは明確にするために、一本鎖の弱いロックの末端に位置するように描かれている。いくつかの実施形態は、弱いロックおよびアフィニティータグのこの構成を有する。他の実施形態では、弱いロックおよびアフィニティータグが双安定センサの内面上の別個のリンカー上にある。他の実施形態では弱いロックはなく、アフィニティータグは双安定センサの内面上のリンカー上にある。
【0036】
弱い分析物結合の場合、結合した分析物を有する双安定デバイスはしばしば、(分析物が2つの蓋のうちの1つに依然として結合している)開いた構成に変動するが、追加の結合部位が利用可能である場合、分析物の追加のコピーの結合は開いた構成の周波数を減少させる役割を果たすことができる。したがって、溶液ベースの双安定センサのいくつかの実施形態では、
図4Bの表面上のDNA検出について示したもの(「協同サンドイッチ機構」と標識される)と類似の様式で、センサの上蓋および下蓋上に各結合パートナーの複数のコピーを含めることによる協同性の使用もまた、偽陰性を減少させ得る。
【0037】
溶液ベースの双安定センサのいくつかの実施形態では、時間分解光出力の使用が長寿命発光の時間分解ルミネッセンスを測定することができる市販のプレートリーダーの広く設置されたベースにおける双安定センサの使用を可能にする。このような実施形態では、溶液ベースのセンサがDNAバーコード、またはアフィニティータグ、または弱いロックを必要としない。読み出しは、短寿命(ナノ秒~マイクロ秒)エミッタ(例えば、有機フルオロフォアまたは量子ドット)と長寿命エミッタ(ミリ秒)ルミネセンス化合物(例えば、ユウロピウムおよびテルビウムキレート)との間のルミネセンス共鳴エネルギー移動に基づく。そのような実施形態では、双安定センサの1つの蓋が有機フルオロフォアで標識される。いくつかの実施形態では、1つの蓋上の有機フルオロフォアが有機クエンチャーで置き換えることができる。そのような実施形態では、双安定センサの第2の蓋がユウロピウムおよびテルビウムキレートなどの長寿命発光でラベル付けされる。
【0038】
短寿命および長寿命発光に使用される特定の波長に応じて、(ドナーからアクセプタへの)エネルギー移動は、短寿命発光から長寿命発光へ、またはその逆であってもよい。いずれの場合もパルス励起光を用い、寿命の短いエミッタの減衰寿命が経過した後に時間分解測定を行う。このようにして、すべての散乱された励起光が散逸し、唯一の測定されるシグナルは、短寿命発光と長寿命発光との間で伝達され、信号対雑音を大幅に増大させ、その結果、アッセイの感度を増大させたものである。そのような測定の背後にある一般原理、ルミネセンス共鳴エネルギー移動(LRET)はSelvin et al, ”Luminescence Resonance Energy Transfer” Journal of the American Chemical Society, 116(1994):6029-6030に以前に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
一方、双安定センサが表面上に固定化されている場合(
図1B)、分析物の結合は、電子的に(
図6)または光学的に(
図7)測定される状態変化として認識され得る。双安定デバイスの状態変化を検出するための表面ベースのアプローチの各実施形態は解アプローチとは別の組の偽陽性および偽陰性誤差のメカニズムを有し、したがって、いくつかの実施形態では、検出が他の実施形態よりも定量的であり得る。例えば、いくつかの実施形態について後述されるように、偽陽性は、分析物の非存在下で、上部オリガミ形状が表面に非特異的に結合する場合に生じ得る(
図9A)。
【0040】
いくつかの液の実施形態と同様に、いくつかの表面ベースの実施形態は、高感度測定を達成する。いくつかの表面ベースの実施形態はTIRF顕微鏡(Gietl et al ”DNA origami as biocompatible surface to match single-molecule and ensemble experiments” Nucleic Acids Res. 40 (2012): e110およびTsukanov et al, ”Detailed study of DNA hairpin dynamics using single-molecule fluorescence assisted by DNA origami”, Phys. Chem. B 117 (2013):11932-11942)または電気化学的検出(Lai, ”Chapter Eight: Folding- and Dynamics-Based Electrochemical DNA Sensors”, Methods in Enzymology, 589 (2017):221-252; Immoos et al, ”DNA-PEG-DNA triblock macromolecules for reagentless DNA detection”, Journal of the American Chemical Society 126 (2004):10814-10815; Wu et al, ”Development of a ”signal-on” electrochemical DNA sensor with an oligo-thymine spacer for point mutation detection”, Chemical Communications, 49 (2013): 3422-3424;およびWu, et al, ”Effects of DNA probe and target flexibility on the performance of a ”signal-on” electrochemical DNA sensor” Analytical Chemistry 86 (2014) 8888-8895における小核酸の再構成のために記載されている)(これらのすべての内容物は参照により本明細書に組み込まれる)であって、表面上の核酸への分析物核酸の結合が、電気化学的に活性な官能基(フェロセンまたはメチレンブルー)を、それが電子的に検出され得る表面に近接させる、方法。
【0041】
いくつかの実施形態では、表面ベースの光学的および電子的測定値がDNAオリガミ位置決め技術を使用することによって、アナログ測定値からデジタル測定値に変換することができる。個々のDNA折り紙は、以下の文献で説明されているように、それらを配置するためのリソグラフィー技術を使用して、表面上のグリッドにほぼ決定論的に(> 95%のサイトに単一の折り紙があります)間隔を空けることができるため、デジタル測定はDNA折り紙を使用して実現できる。Kershner et al, ”Placement and orientation of individual DNA shapes on lithographically patterned surfaces”, Nature Nanotechnology 4 (2009):557-561; Hung et al, ”Large-area spatially ordered arrays of gold nanoparticles directed by lithographically confined DNA origami”, Nature Nanotechnology 5 (2010): 121-126; Gopinath et al, ”Optimized Assembly and Covalent Coupling of Single-Molecule DNA Origami Nanoarrays”, ACS Nano 8 (2014):12030-12040;およびGopinath et al, ”Engineering and mapping nanocavity emission via precision placement of DNA origami”, Nature 535 (2016): 401-405、これらすべての内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。このような以前に記載された「DNAオリガミ配置」技術は、個々の双安定センサが個々の光学デバイスまたは電子デバイス上に配置されることを可能にする。95%を超える確率で、したがって95%を超えるセンサが標的分子を感知するために利用可能である。これは、液滴に個々の分析物核酸を投入するためにポアソン統計に依拠する液滴デジタルPCRとは対照的であり、液滴の37%以下で単一の核酸を達成する。したがって、双安定センサを読み取るための表面ベースのアプローチのいくつかの実施形態は、読み取りのために液滴デジタルPCRに依存するいくつかの溶液ベースの方法よりも、より定量的な結果を与えることができる。
【0042】
いくつかの表面ベースの実施形態は、広く利用可能な技術を使用して、異なる分析物に対する特異性を有する表面固定化装置のスポットを印刷することによって、高度の多重化を達成する。
図10は各スポットが結合分子の同じ一対を有する数千のデバイスを有するが、異なるスポットは結合分子の異なる一対を有することを示す。いくつかの実施形態はインクジェット印刷を用いてこの空間多重化を達成し、他の実施形態は、マイクロアレイスポットを用いて多重化を達成する。
【0043】
いくつかの溶液ベースの実施形態と同様に、いくつかの表面ベースの実施形態は標的分子を結合するために既存のサンドイッチELISA試薬を使用し得るが、このような実施形態はさらなる材料(電子チップまたは光学チップ)および計装(電子リーダーまたはTIRF/他の光学リーダーまたは顕微鏡)を必要とし得る。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の特性:(1)精製タグを隠す(装置の状態を開から閉に変化させる)原理に基づいて、分析物結合シグナルを固有かつ増幅可能なDNAシグナルに変換する双安定DNAナノ構造装置のうちの1つ以上を有するアッセイの第1の例を示す。(2)単一の検体分子の結合時に、大型で柔軟性双安定DNA装置の小型でコンパクトな剛性装置への変換を高感度に測定するための、複数の表面ベースの方法を有するアッセイ。(3)PCR/配列決定による溶液中、または光学シグナルもしくは電子シグナルの空間的位置による表面上のいずれかで、記載される双安定DNAナノ構造デバイスに基づいて、複数の分析物の定量的測定を多重化する能力を有するアッセイ。(4)デジタル液滴PCRと同じスケールで、タンパク質分子のデジタル定量を提供することができるアッセイ。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態は、既存の電気化学アッセイを超える著しい改善を提供する。記載されている折り畳みベースのアッセイ(Lai, ”Chapter Eight: Folding- and Dynamics-Based Electrochemical DNA Sensors”, Methods in Enzymology, 589 (2017):221-252; Immoos et al, ”DNA-PEG-DNA triblock macromolecules for reagentless DNA detection”, Journal of the American Chemical Society 126 (2004):10814-10815; Wu et al, ”Development of a ”signal-on” electrochemical DNA sensor with an oligo-thymine spacer for point mutation detection”, Chemical Communications, 49 (2013): 3422-3424;およびWu, et al, ”Effects of DNA probe and target flexibility on the performance of a ”signal-on” electrochemical DNA sensor” Analytical Chemistry 86 (2014) 8888-8895)は、電気化学的センシング(フェロセンまたはメチレンブルーシグナル伝達分子を使用する)を介して、表面上の検出器への核酸の結合によるコンホメーション変化を検出するために使用されてきている。この設定において、単一の核酸は分析物核酸が結合し、シグナル伝達分子が表面に近くなるように全体構造を折り畳むときに、単一のシグナル分子を表面に近づける。
【0046】
本開示の実施形態は重要な点で異なる:(i)開示された研究が以前の研究がDNAまたはRNAに限定される場合に、タンパク質または任意の分析物が試験されることを可能にする。(ii)以前の研究は、結合事象当たり単一のシグナル分子を使用する。現在開示されているDNAオリガミまたは別の大きなDNAナノ構造の使用は現在開示されている信号がはるかに強力であり得ることを手段し、少なくとも200個の信号分子がオリガミの1つに組み込まれ得、増幅を提供し、その結果、本アッセイは、原則的に200倍より感受性である。(iii)以前の研究は、わずか数ナノメートルの検出分子を折り畳んでいる。この手段は、シグナル分子が不活性(分析物なし)から活性(分析物結合)へとあまり遠く移動しないことである。次に、この手段は不活性状態および活性状態がそれらが可能な限り強く区別されず、そしてこのアッセイは可能な限り潜在的に感受性ではないことである。現在開示されている研究では、テザーが数ミクロンまでの長さ(数ナノメートルまでずっと調整可能)とすることができる。これは、シグナル伝達分子を運ぶオリガミが不活性状態におけるシグナルを最小化するために、表面上の最適な高さに配置されることを可能にし、それによって、分析物結合状態に対する感度を最大化する。以前の研究において、短いリンカーは、検出方法を電気化学的センシングに限定した。現在開示されている研究ではリンカーが不活性状態でTIRF基板のエバネッセント場からシグナル伝達分子を有意に移動させるのに十分な長さ(例えば、200ナノメートル)であり得るので、TIRF顕微鏡法ははるかに高い感度を達成することができる。
【0047】
本発明の実施形態は、既存のTIRFベースのアッセイを超える著しい改善を提供する。TIRFは以前に、分子結合またはコンホメーション変化の検出のために表面結合オリガミ上で使用されている(Gietl et al ”DNA origami as biocompatible surface to match single-molecule and ensemble experiments” Nucleic Acids Res. 40 (2012): e110およびTsukanov et al, ”Detailed study of DNA hairpin dynamics using single-molecule fluorescence assisted by DNA origami”, Phys. Chem. B 117 (2013):11932-11942.)。これらの研究は、本開示の方法が低容量/低濃度/単一分子レジームにおけるタンパク質の定量のために使用され得ることを支持する。しかしながら、これらの以前の研究は:(i)タンパク質よりもむしろ核酸を研究し、(サンドイッチアッセイにおけるように)分析物を同時に係合するために2つの結合分子を使用するための施設を与えない。(i)単一のシグナル伝達分子を用いて、非常に単純なヘアピンまたはホリデイジャンクションのコンホメーション変化を研究した。本明細書に開示されるはるかに大きな装置は、分子事象のより大きな増幅および感度のために200を超えるシグナル伝達分子を有するのであろう。(ii)短いリンカー/小さなコンホメーション変化を使用した。再び、ここに開示される研究は非常に大きなコンホメーション変化を使用し、これは、同数のシグナル伝達分子に対してより高い感度を可能にする。
【0048】
双安定オリガミ検出器は、他の潜在的な方法に対していくつかの利点を有する。イムノアッセイ(DNAおよびRNA検出にも適用されるが、一般に核酸検出には使用されない)の言語では双安定検出器が「均質アッセイ」の基礎として役立ち得、ここで、分析されるべき試料は検出システムの成分が一緒に混合される必要なしに、そして重要なことに、余分な試料が洗い流される必要なしに、または二次検出システムが添加される必要なしに、検出器に単に添加され得る。この手段は、検出実験を直接的かつ迅速に進めることができることである。第2に、オリガミドメインは典型的には非常に大きい(数メガダルトン)ので、典型的には検出される分子(キロダルトン~数十キロダルトン)よりも100~1000倍大きい。オリガミが多数のシグナル伝達分子を運ぶことができるというこの手段は、二次増幅系を使用せずに200倍の増幅を与えることができる。
【0049】
図1および
図2において、タンパク質の検出のための抗体を使用するサンドイッチ作動機構を使用する実施形態が描写される。
図3は、核酸の検出のためにサンドイッチ作動を使用する異なる実施形態を描写する。
図3Aは、表面上のフライトラップ装置の基本的な幾何形状を示す。それは、2つの直径100ナノメートルのDNAオリガミディスクまたは「蓋」、およびそれらの間の10ナノメートル~4,000ナノメートルの二本鎖DNAリンカーを含む。一本鎖標的核酸配列XYの検出は、一対のプローブX’およびY’によって媒介され、これらのプローブはそれぞれ標的配列の半分に相補的であり、そしてそれぞれ、上蓋および下蓋の内側に結合される。
【0050】
XYがない場合、フライトラップの蓋は独立して拡散し、テザーによって制限され、本開示では「開」状態と呼ばれる。ドメインXとYの両方がフライトラップ上の相補的プローブに結合すると、本開示では「閉」状態と呼ばれる場合、装置の2つの蓋は、選択された特定のプローブ-標的/装置の幾何学的形状によって設定された距離で、共局在化される。例えば、プローブがプローブ-標的二重鎖の端部にある位置で蓋に繋がれるように選択される場合、蓋は、単一のプローブ-標的二重鎖の長さの2倍にほぼ等しい距離に保持される(一対の10マープローブについては~7nm、一対の20マープローブについては~14nm)。他方、プローブがプローブ-標的二重鎖の中間に隣接してリンカーを置く幾何学的形状で蓋に繋がれるように選択される場合、蓋は、標的配列の長さとは独立して、およそ2~4ナノメートル(多くとも2つのDNAヘリックスの幅)の距離に保持され得る。
【0051】
図3Cに記載されるフライトラップは、一本鎖DNA、一本鎖RNA、または他の一本鎖ポリヌクレオチドアナログを検出するために最も効率的である。DNAトリプルヘリックスの形成が遅いが、特別なDNA二鎖DNA、すなわちDNAトリプルヘリックスの形成が可能なものについては
図3Cのフライトラップが二鎖DNADNAを検出するために使用される可能性があり、標的解析はポリ尿:ポリイミジントリプレックス形成シークエンスに制約されるのであろう。
【0052】
一方、dCas9/CRISPR錯体の使用により、2つの異なる方法を介して二本鎖DNAを効率的に検出することができるフライトラップを作製することが可能である。CRISPRシステムでは、dCas9タンパク質はgRNAと錯体を形成し、それぞれに20ヌクレオチドのRNA「ガイド」配列がある。dCas9の助剤を借りて、ガイド配列は適宜二本鎖DNAに鎖-置換することができ、基本的には相補的な標的と不可逆的に結合することができる。
【0053】
従って、いくつかの実施形態(
図3D)において、各蓋は2つの異なるガイド配列のうちの1つを有する付着gRNAを有し、これらは、関心のDNA配列中の20ヌクレオチド標的の隣接する一対に結合するように選択される。分析物DNAを導入する前に、dCas9タンパク質を導入し、gRNA上に集合させる。結果として、2つのCRISPR/dCas9錯体の一本鎖分析物DNAへの同時結合は、フライトラップを閉じる。
【0054】
このような実施形態では、注意点が標的配列が特定のコンセンサス配列、例えばNGGを有するいわゆるPAM部位に隣接していなければならないことである。従って、天然DNAの場合、従来のdCas9による検出は、2つの適切に間隔を置いたPAM部位(約50ヌクレオチド内)を同時に有するDNA配列に限定される。最近分析されたGFP構築物はCRISPRに基づく遺伝子調節実験における制御として使用され、そしていくつかのDNAストレッチは
図3Dに描写される二重標的検出スキームに適切な距離でPAM部位の二重発生を有することが見出された。さらに、いくつかの実施形態において、S化膿以外の生物由来のCasタンパク質(または任意の適切なエンドヌクレアーゼ)、およびそれらのPAM部位に対して異なる配列特異性を有する操作されたエンドヌクレアーゼタンパク質(例えば、Cas9)は、より広い範囲の配列が検出されることを可能にする。標的分析物がバーコードスキームまたはDNA貯蔵に使用される人造DNAである場合、PAM部位の一対の付加は、必要な場合はいつでも困難を示さない。
【0055】
このような二重標的スキームを用いた実施形態の利点は、それらが標準的なgRNA配列で作用することである。さらに、原子間力顕微鏡(AFM)データ(
図3F)は、人工ガイド配列を有するdCas9がオリガミの縁に沿って短い人工標的に容易に結合することを示す。従って、CRISPR/dCas9錯体は、所望の位置でDNAオリガミと十分に組み込まれる。二重標的スキームは、CRISPR/dCas9のDNA結合部分が
図3Fのように、オリガミに結合するのではなく、遊離であることを必要とする。従って、いくつかの実施形態において、gRNAの3’延は、CRISPR/dCas9錯体をフライトラップに固定するために使用される。
【0056】
このような二重標的スキームの制限的配列制約は、DNA分析物が2つの標的/PAM部位、および少なくとも46ヌクレオチドの長さを有することを必要とすることである。他の実施形態は、より少ない配列制約で二本鎖DNAの検出を可能にする。動的DNAおよびRNAナノテクノロジーは非平衡DNA反応を利用して秩序ある事象のカスケードを作り出す(Zhang et al, ”Dynamic DNA nanotechnology using strand-displacement reactions”, Nature Chemistry 3 (2011): 103-113に記載されているように)古典的な例はいわゆるヘアピン連鎖反応である。この型の反応がトリガー配列が結合するまで、ヘアピンを形成する別の保護配列を介して配列を「隠す」ことを可能にする。
【0057】
従って、いわゆる「アロステリック」CRISPR/Cas9錯体を作製するために配列を隠す原理は、二本鎖DNAセンサを達成するために使用され得る(
図3E)。フライトラップの下蓋に配置されたアロステリックCRISPR/Cas9はその標的二本鎖配列Xに結合すると、フライトラップの蓋上の配列hY’に相補的な新しい配列hYを明らかにし、フライトラップを閉じさせる。これを行うために、gRNAの5’末端を、ガイド配列と共にヘアピンを形成する新しい配列で伸長させることができる。したがって、ガイド配列は関心の二本鎖DNA(X)がアロステリックCRISPR/Cas9に結合するまで、配列hYをhY’から隠し、保護する役割を果たす。
【0058】
ここで、用語「アロステリック」の使用は文献におけるアロステリックの標準的な使用と一致するが、いくらか珍しい。アロステリーはエフェクターAである1つの分子が第3の分子Cに向かって錯体または活性を変化させることを単純に含む。ここで与えられるアロステリックスキームでは関心の二本鎖DNAがエフェクターAの役割を果たし、フライトラップの蓋上の配列がCの役割を果たす。
図3Eのスキームはアロステリーが通常、タンパク質の「正常である」活性を超えて定義される点で異常である。ここで、タンパク質の「正常である」活性はフライトラップ蓋に錯体する新たな機能をオンまたはオフに切り替えるためのアロステリックトリガーとして使用される。この種のスキームがCRISPR/Cas9の文献には報告されていないと考えられているが、標準的なアロステリーでは小分子(4-ヒドロキシタモキシフェン)がCRISPR/Cas9の活性を切り替えている(Oakes et al ”Profiling of engineering hotspots identifies an allosteric CRISPR-Cas9 switch”, Nature Biotechnology 34 (2016):646-651)。
【0059】
二本鎖DNAを検出するための
図3Eのアロステリックスキームの利点は、それが単一の20ヌクレオチド標的およびその3ヌクレオチドPAM部位のみを必要とすることである。XRN-1 5’-to-3’エキソヌクレアーゼまたは他の活性は、酵母および哺乳動物細胞においてin vivoでgRNAの5’端部への機能的配列の有用な付加を阻害するようであったことが注目される(このような付加がCas9のタンパク質包絡線によって保護されていない)。ここでは、インビトロDNA検出が行われているので、このような伸長は分解されない。いくつかの実施形態では、小さな(<10 ntステム)ヘアピンを使用して、ガイドの重要な最初の10ヌクレオチド(PAM部位に近い)でのCRISPR/Cas9 DNA複合体の開始の妨害を回避し、センサの感度を最大にすることができる。
【0060】
関心のいくつかの天然配列は必然的にNGGを欠失するが、これらの場合、異なるPAM部位を有する異なる天然または変異CRISPRシステム(例えば、PrevotellaおよびFrancisella細菌由来のCasタンパク質Cpf1、そのTTN PAM部位)の使用はいくつかの実施形態において、使用可能な標的配列を見出す機会を大いに増加させる。さらに、Cpf1はdCas9とは全く異なるgRNA構造および3’端部ガイド配列を有し、これは、いくつかの標的配列に対してより両立であることが証明され得る。従って、いくつかの実施形態において、CRISPR/Cpf1は、CRISPR/dCas9の代わりに使用される。
【0061】
図1~3では、タンパク質および核酸などの分析物の定量化に向けて、分子結合事象を検出および定量化するためのサンドイッチ作動機構を使用する実施形態が示されている。
図4および
図5は、さらなる状況における双安定分子センサを説明する。基本的な双安定センサ設計はいくつかの「作動メカニズム」を有し、これらの役割は分子事象の検出に対して異なる役割を有し、これらの役割は分子事象が結合事象であるか、コンホメーション変化であるか、または他の分子事象であるかに基づいて異なる。
図4A、4C、および4Dに示されるように、感知メカニズムが「サンドイッチメカニズム」(結合事象については
図4A)、「競合メカニズム」(結合事象については
図4C)、または「機能メカニズム」(分子または物理的環境、酵素的または化学的切断、または酵素的または化学的修飾によって誘導されるかどうかにかかわらず、コンホメーション変化については
図4D)であるかどうかが区別される。さらに、サンドイッチ機構、競合的機構、または機能機構で動作するものとして説明されるセンサは非協調機構または協調機構のいずれかで動作するものとしてさらに説明することができる(例えば、
図4B)。
【0062】
サンドイッチ作動機構(
図4A)は、標的分析物のための一対の結合パートナー(抗体、RNAまたはDNAアプタマー、天然結合タンパク質など)がそれぞれセンサの上蓋および下蓋に配置される「サンドイッチ」設計について記載されている。サンドイッチ機構は分析物の有無を検出したり、濃度を測定したりするのに適している。抗体が結合パートナーとして使用される場合、サンドイッチアッセイは、サンドイッチイムノアッセイ、例えばサンドイッチELISAに匹敵する。
【0063】
関心のある特定の分子分析物について、結合パートナーの適切な対が見出され得る場合、サンドイッチ機構(
図4A)がその検出に適切である。これは、典型的には2つの異なるエピトープが見出され、1つの結合パートナーが各エピトープに対して親和性を有する、タンパク質などのより大きな標的分析物についての場合である。標的分析物が一本鎖DNAまたは一本鎖RNAである場合、2つの結合パートナーは一本鎖であり得、ここで、各結合パートナーは、それ自体、標的分析物の別領域またはサブ配列に相補的なDNAまたはRNAの一本鎖である。標的分析物がDNA、RNA:DNAハイブリッド、または二本鎖RNAの二本鎖である場合、結合パートナーは(1)標的分析物の2つの異なる領域またはサブ配列での一本鎖DNAまたはRNA(この場合、センサは三重鎖の形成時に閉じる)、または(2)結合パートナーは標的を2つの位置で配列特異的に結合することができる核酸/タンパク質複合体(CRISPR/dCas9など)(
図3Dに示すように)、(3)結合パートナーはアロステリックCRISPR/dCas9複合体(
図3Eに示すように)であってもよく、または(3)結合パートナーは亜鉛フィンガータンパク質、または2つの領域またはサブ配列で標的に配列特異的に結合することができるペプチド分子、または(4)2つの異なる領域で標的に配列特異的に結合することができる任意の対の分子であってもよい。
【0064】
競合的作動メカニズム(
図4C)は、センサの下蓋が標的分析物のための単一の結合パートナー(抗体、RNAまたはDNAアプタマー、天然結合タンパク質など)を保持し、センサの上蓋が標的分析物と同様の様式で下蓋上の結合パートナーに結合することができる競合的分子を保持する状況について記載される。競合メカニズムは、分析物の有無を検出するため、または濃度を測定するために良好である。結合パートナーが抗体である場合、競合的メカニズムは競合的免疫測定に類似している。競合メカニズムは、標的分析物が小さすぎるか、または見出される標的のための2つの異なる結合パートナーに対して対称すぎるか、または化学的に分化されていない表面を有する場合に有用である。これは、典型的な薬物や多くのホルモンのような低分子の場合にしばしば当てはまるのであろう。競合的作動機構が特定の標的分析物に対して単一の抗体または単一のアプタマーのみを必要とするという事実は競合的作動機構に利用可能な電位分析物の数を、サンドイッチ作動機構に利用可能な電位分析物の数よりも大幅に大きくし、これは、関心の標的に対する2つの抗体または2つのアプタマーが見出されることを必要とする。
【0065】
競合的作動機構では上蓋および下蓋の役割が結合および競合的物質がセンサに隣接する基材表面に非特異的に結合する電位(これは典型的には偽陰性信号を引き起こす)に応じて、交換されてもよく、バックグラウンド表面に対するより低い非特異的親和性を有する分子は典型的には蓋上に配置されるように選択される。
【0066】
競合分子は、標的分子の例、結合パートナーに結合し得る標的分子に関連する分子、または標的が通常結合する部位で結合パートナーに結合し得る任意の他の分子であり得る。これは、競合体が結合パートナーと結合すると、標的の正常な結合を遮断するか、さもなければ阻害するためである。同様に、標的分析物は結合パートナーに結合し、競合物質の結合を阻害する能力を有する。標的が存在しない場合、競合物質は結合パートナーにしばしば結合し、センサの上蓋は下蓋および表面の近くでより多くの時間を費やし、信号を生成する。存在する標的において、標的分子はいくつかのセンサの底蓋上の結合パートナーに結合し、そして競合体が結合パートナーに結合される時間の量を減少させ、従って、信号を変化させる。標的濃度が増加することにつれて、標的は結合パートナー上でより高い占有率を有し、そしてセンサは、より頻繁に開放され、そして上蓋は表面からより多くの時間を費やし、シグナル変化を増強する。
【0067】
検体の存在が開状態の確率を増加させるという事実は、競合的作動機構の全ての実施形態が「シグナルオフ」検出器でなければならないことを意味するものではない。したがって、競合的作動機構における信号変化は、信号を生成および測定するために使用される特定の感知モダリティに応じて、正または負であってもよい。競合アッセイは例えば、蓋が第1のフルオロフォアで標識される光学感知様式で使用され得る。底蓋が第2の蛍光アクセプタで標識されている状況では標的の添加が第1のフルオロフォアと第2のフルオロフォアとの間のFRETの減少をもたらし、第2のフルオロフォアからのシグナルを減少させ、したがって「シグナルオフ」検出器を実施する。底蓋が蛍光消光剤で標識されている状況では標的の添加が第1のフルオロフォアと消光剤との間の消光を減少させ、したがって「シグナルオン」検出器を実施する。したがって、他の作動メカニズムの場合と同様に、競合メカニズムは、必要に応じて、信号オンセンサと信号オフセンサの両方をもたらすことができる。
【0068】
機能的作動機構(
図4D)は、単一の標的分析物よりむしろ分子のクラスの結合、切断またはライゲーションを含む酵素または化学活性、または酵素または化学修飾、例えばリン酸化、メチル化またはアセチル化を含む分子事象のより一般的な検出を可能にする。機能的機構において、上蓋および下蓋はそれぞれ機能的パートナー(それぞれ機能的パートナー1および機能的パートナー2)を担持し、これらは互いに結合するか、または小分子またはタンパク質酵素であり得るが、温度、光、pH、またはイオン強度の変化などの物理的条件であり得る外部刺激の存在下で放出する。
【0069】
一般に、上蓋と下蓋の役割は入れ替えることができ、すなわち、機能的パートナー1は上蓋にあり、機能的パートナー2は下蓋にあり得る、あるいはその逆であり得る。従って、どの機能的パートナーが上蓋に行くかの選択は、典型的にはどの機能的パートナーがバックグラウンド基材への最低の非特異的結合を有するかに依存する。しかしながら、いくつかの実施形態において、例えば、機能的パートナーの1つが膜貫通タンパク質である場合、膜貫通タンパク質が上蓋に付着し、他の機能的パートナーが下蓋に付着している場合、センサの性能は増加され得る。多くの実施形態では、外部刺激が機能的パートナー2に対するその親和性を変化させる機能的パートナー1のコンホメーション変化を引き起こす。このような実施形態において、機能的パートナー2は機能的パートナー1に対して産生される抗体であり、その結果、機能的パートナー2は特定のコンホメーション状態で機能的パートナー1に結合するが、別のコンホメーション状態では結合しない。多くの実施形態において、外部刺激は機能的パートナー2に対するその親和性を変化させる機能的パートナー1の化学修飾(例えば、リン酸化)を引き起こす。このような実施形態において、機能的パートナー2は機能的パートナー1に対して産生される抗体であり、その結果、機能的パートナー1は特定の修飾状態(例えば、リン酸化されている)で機能的パートナー1に結合するが、別のコンホメーション状態(例えば、リン酸化されていない)には結合しない。
【0070】
したがって、機能的作動機構の1つの実施形態において(
図4E)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MAPKK)、またはMAPKをリン酸化する任意の他の薬剤によるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK、例えばP42またはP44)のリン酸化の検出を可能にする。この実施形態では、機能的パートナー1はMAPK(下蓋)であり、機能的パートナー2はMAPKのリン酸化型(抗ホスホ-MAPK)のみに結合する抗体である。MAPKがリン酸化されていない場合、センサは開いており、リン酸化されている場合、センサは閉じている。類似の実施形態は機能的パートナー1を(メチル化、リン酸化、またはアセチル化を介して)修飾することができる任意のタンパク質で置換し、機能的パートナー2を、パートナー1の修飾バージョンのみに結合する結合パートナーで置換することによって構築することができる。
【0071】
したがって、機能的作動機構の一実施形態では、任意のGタンパク質共役受容体(GPCR)などのタンパク質受容体に対するリガンド、アゴニストまたはアンタゴニストの検出を可能にする。この実施形態(
図4F)において、機能性パートナー1はタンパク質ベースの脂質ナノディスク(Bayburt et al, ”Membrane Protein Assembly into Nanodiscs” FEBS Letters 584 (2010):1721-1727に記載されているような)、またはZhao et al, ”DNA-Corralled Nanodiscs for the Structural and Functional Characterization of Membrane Proteins and Viral Entry, Journal of the American Chemical Society, 140 (2018): 10639-10643およびIric et al ”DNA-Encircled Lipid Bilayers” Nanoscale(2018) DOI:10.1039/C8NR06505E)に記載されているようなDNAベースの脂質ナノディスクのいずれかであるナノディスクの脂質部分にロードされたmu-opiodレセプター(プロトタイプGPCR)などの膜貫通レセプタータンパク質を有し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。膜タンパク質を可溶化する目的のためのタンパク質ベースの脂質ナノディスクは十分に研究されており、それらは、Zhao et al(前出)に教示されるように、DNA鎖に連結され得、したがって、機能的パートナー1を上蓋に付着させるための方法を提供する。同様に、Zhao et al.およびIric et al.(前出)に開示されるようなDNAベースの脂質ナノディスクは、膜タンパク質を装填され得、そしてセンサの上蓋に付着し得るか、またはセンサの上蓋として直接的に役立ち得る。機能的パートナー2はB-アレスチンのようなタンパク質であり、受容体タンパク質が配位子と結合すると膜貫通タンパク質に対する親和性が変化する。機能的パートナー2としてβ-アレスチンを用いる特定の場合には、上蓋のGPCRのリガンド結合および活性化により、溶液中に存在するGタンパク質共役受容体キナーゼ(GRK)がGPCRをリン酸化し、これによりβ-アレスチンがGPCRと結合してセンサを閉じることになる。この実施形態は、in vitro無細胞環境におけるGPCRのための薬物のスクリーニングのための一般的な方法を提供する。この設定では、センサが特定の標的分析物に単に結合して感知するのではなく、むしろ、研究されているレセプターの正常な生物学的機能に影響を及ぼす任意の分子に応答する。この場合、機能センサは「クラス検出器」と呼ばれる。
【0072】
上記の検出器は、GPCRのリガンド結合を検出するための天然β-アレスチン経路の最も忠実な模倣物である。βアレスチン1(aka「アレスチン-2」)からβアレスチン2(aka「アレスチン3」)へとβアレスチンのアイデンティを変えることにより、GPCRの異なるリガンドが微妙に異なる作用を有し、異なる下流経路を刺激する、いわゆるバイアスアゴニズムの異なる側面を検出し、検討することができる。また、Oakleyらが教えたβアレスチン1とβアレスチン2に対して異なる親和性を有する、いわゆる教室Aと教室BのGPCRの相違を検討することができる。「Gタンパク質共役受容体に対する表示停止、アレスチン1、アレスチン2の異なる親和性は、2つの主要な教室の受容体を示す」
【0073】
The Journal of Biological Chemistry 275 (2000) 17201-17210(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)。同様に、異なったGRK(GRK2からGRK6)は異なったGPCRと異なった相互作用を持ち、それらは、Yang et al, ”Phosphorylation of G Protein-Coupled Receptors: From the Barcode Hypothesis to the Flute Model” Molecular Pharmacology 92 (2017) 201-210(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)で教えられたように、異なった残留物をもつGPCRの種類と特定のリガンドの機能としてGPCRをリン酸化した。したがって、いくつかの実施形態では、2つのタイプのβアレスチンと5つの異なるGRKとの異なる組み合わせが組み合わされる。
【0074】
いくつかの実施形態では、溶液中のGRKの使用を必要としないセンサを作製するために、所望のGRK型をDNAに結合させ、βアレスチンと共にフライトラップの底蓋に置く。このようにして、シグナル伝達経路の全ての必要な成分は単一の双安定検出器に組み合わされ、感知のために、配位子のみが添加される必要がある。このような実施形態では、リガンドが結合され、GPCRが活性化されると、フライトラップの上蓋が最初に下蓋上のGRKと一時的に相互作用し、GPCRがリン酸化されて放出される。次いで、上蓋中のリン酸化GPCRはベータアレスチンへの結合を介して、2回目に下蓋と相互作用し、持続的信号が検出される。
【0075】
本発明の他の実施形態はβアレスチンを要件とせずに、GPCRのリガンド結合を検出するために抗体を使用する。一実施形態では上蓋が取り付けられたGPCR(例えば、上記のようなミューオピオッド)を有するが、下蓋はベータアレスチンを有さない。その代わりに、Mouledous et al, ”GRK2 Protein-mediated Transphosphorylation Contributes to Loss of Function of mu-Opioid Receptors Induced by Neuropeptide FF (NPFF2) Receptors” The Journal of Biological Chemistry, 287 (2012) 12736-12749, and Just et al, ”Differentiation of Opioid Drug Effects by Hierarchical Multi-Site Phosphorylation” Molecular Pharmacology 83 (2013) 633-639(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に教示されているように、GPCRのリン酸化状態に対して生じた抗体を有する。したがって、リガンドが結合し、GRKがレセプターをリン酸化すると、抗ホスホ抗体がGPCRと結合し、flytrapを閉じ、信号を誘導する。このような実施形態はGPCRとのベータ-アレスチン相互作用の特定の特徴なしに、リガンド結合を研究することを可能にし、そして異なるリン酸化パターンに対する抗体の使用はGPCRのリン酸化コードを研究することを可能にする(Yang et al、前出)。
【0076】
本発明のさらに他の実施形態はβアレスチンまたはGRKのいずれかを要件とせずに、GPCRのリガンド結合を検出するためにナノボディを使用する。一実施形態では上蓋が取り付けられたGPCR(例えば、上記のようなミューオピオッド)を有するが、下蓋はベータアレスチンを有さず、GRKは溶液中に発明せず、下蓋にも取り付けられない。その代わりに、GPCRの活性リガンド結合状態に対して隆起したナノボディが、底蓋に付着している。このようなナノボディの作製はHuang et al, ”Structural insights into mu-opioid receptor activation” Nature 524 (2015) 315-321に教示されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。リガンドが存在するとGPCRは活性化され、ナノボディはGPCRと結合してflytrapを閉じ、GPCRがリン酸化されているか非リン酸化かに独立しない信号を誘導する。上述のベータアレスチン経路の模倣よりもはるかにより単純であるこのような実施形態では、検出器が長期間の保管および輸送のためにはるかに安定であり得、製造するのにより安価であり得、したがって、診断設定においてより有用であり得る。特に、ミューオピオッドレセプターを有する実施形態の場合、フライトラップ検出器はオピオッドクラス薬物が未知のサンプル中に存在するか、または汚染された建物中に存在するかを検出するために、法執行において使用され得る。
【0077】
したがって、機能的作動機構の一実施形態では、「リボスイッチ」のコンホメーションの変化を介して低分子標的の検出および濃度測定を可能にする。RNAおよびDNAアプタマーは、人工分子進化(SELEX)によって、関心の低分子標的に結合するように選択され得る。しかし、(A)このような標的は、典型的にはサンドイッチ作動機構によって検出するには小さすぎ、そして(B)標的およびアプタマーの結合特性に依存して、感受性の競合的作動機構を構築することは困難であり得る。このような場合、リボスイッチを有する機能的作動機構の使用は、競合なしに小分子の直接検出を可能にし得る。このような実施形態では、アプタマーが低分子標的の結合時に、DNAまたはRNA配列(
図5A)、またはRNA-タンパク質(
図5B)またはDNA-タンパク質結合ドメインのいずれかを露出するためにコンホメーション変化を受けるように、リボスイッチになるように修飾される。従って、リボスイッチは1つの機能的パートナーとして使用され得、そしてタンパク質、DNA、またはRNA分子は第2の機能的パートナーとして使用され得る。特に、いくつかの実施形態は標的低分子に結合すると、一般的に使用されるMS2アプタマーを露出させるRNAリボスイッチを使用し得、ここで、MS2アプタマーは続いて、他方の蓋に付着したMS2ウイルス主要コートタンパク質(MCP)に結合する(
図5B)
【0078】
したがって、機能的作動機構の一実施形態では、2つのタンパク質、2つの核酸またはそれらのハイブリッドの化学的または酵素的ライゲーション(結合またはカップリング)が検出される(
図5C)。このような実施形態では、機能的パートナー1および機能的パートナー2がライゲーションが測定される2つの分子である。化学的または酵素的ライゲーション剤の導入は、機能的パートナー1および2を一緒に共有結合させ、その結果、センサを閉じさせ、信号を生成させる。このような実施形態では、測定されるのはライゲーション剤の有無、活性の強さ、または濃度である。
【0079】
機能的作動機構の関連する実施形態において、タンパク質またはDNAの化学的または酵素的切断(切断)が検出される(
図5D)。このような実施形態は、ライゲーションを含む実施形態の状況とは逆の状況を提示する。このような実施形態では、機能的パートナー1および機能的パートナー2がそれらが単一の結合エンティティとして存在するか、または測定前に予め連結されるような状態で調製される。化学的または酵素的切断剤の導入は機能的パートナー1および機能的パートナー2を互いに分離し、したがって、センサを開かせ、信号を生成する。このような実施形態において、測定されるのは、切断剤の有無、活性の強度、または濃度である。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態は、協調性を使用することによって強化することができる。センサの上蓋および下蓋に存在する結合パートナー、競合相手、または機能的パートナーの数を増加させることによって、サンドイッチ(
図4D)、競合、または機能的に作動されるセンサに協働性を追加することができる。
【0081】
双安定分子センサが表面上に固定化されている実施形態は、いくつかの広く知られている検出様式のうちの1つを使用して、電子的にまたは光学的に読み取ることができる。
図6は、双安定分子センサを電子的に読み出す表面上の実施形態に使用することができる3つの異なるデバイスアーキテクチャを示す。
【0082】
図6Aでは、双安定分子センサが標準的な平面半導体トランジスタのゲート領域の上に固定化されている。ここで、「開」または「閉」状態にあるセンサはトランジスタ特性から定量化可能な方法で、トランジスタのゲートの周りの局所的なイオン環境に影響を及ぼし、例えば、「開」または「閉」状態にあるセンサがトランジスタが「オン」または「オフ」に切り替えられることに直接つながるように、トランジスタにバイアスをかけることができる。
【0083】
古典的な半導体材料から構築されたバイオセンシングFETは以前に記載されている(Veigas et al, ”Field Effect Sensors for Nucleic Acid Detection: Recent Advances and Future Perspectives” Sensors 15 (2015):10380-10398)。
【0084】
図6Bでは、双安定分子センサが寸法(1D)材料(カーボンナノチューブまたはシリコンナノワイヤ)または二次元(2D)材料(グラフェン、二硫化モリブデン[MoS
2]、または酸化インジウムの薄層)などの低次元材料から構成された電界効果トランジスタ(FET)のチャンネル領域上に固定される。ここで、FETはチャネルの電子応答を変調するために、(溶液中の)ゲート接点を有する2つの電極の間の、1Dまたは2D材料から作られたチャネルから構成される。センサが「開」または「閉」状態にあると、トランジスタ特性から定量化可能なトランジスタのゲート周辺の局所的なイオン環境に影響を及ぼし、例えば、センサが「開」または「閉」状態にあると、直接トランジスタが「オン」または「オフ」に切り替わるように、トランジスタにバイアスをかけることができる。
【0085】
低次元材料から構築されたバイオセンシングFETについては、これまでに以下のことが報告されている。カーボンナノチューブ(Allen et al, ”Carbon Nanotube Field‐Effect‐Transistor‐Based Biosensors” Advanced Materials 19 (2007) 1439-1451);シリコンナノワイヤ(Chen et al, ”Silicon nanowire field-effect transistor-based biosensors for biomedical diagnosis and cellular recording investigation” Nanotoday 6 (2011) 131-154);グラフェン(Afsahi et al, ”Towards Novel Graphene-Enabled Diagnostic Assays with Improved Signal-to-Noise Ratio” MRS Advances 60 (2017) 3733-3739);二硫化モリブデン(Sarkar et al, ”MoS2 Field-Effect Transistor for Next-Generation Label-Free Biosensors”, ACS Nano 8 (2014) 3992-4003)および酸化インジウム(Nakatsuka, et al, ”Aptamer-field-effect transistors overcome Debye length limitations for small-molecule sensing”, Science 6 (2018) eaao6750)。
【0086】
図6Cでは、双安定分子センサが金属(例えば、金または白金)、グラフェン、酸化インジウムスズ、または酸化インジウムなどの適切な導電率の材料から構成される平面電極の上に固定される。ここで、双安定分子センサの蓋は、「開」または「閉」状態において、電極に近接して、金属電極内の電流の流れとして検出可能な電子の移動をもたらす酸化還元活性分子を担持する。双安定センサ作動の電気化学的検出は矩形波ボルタンメトリー、サイクリックボルタンメトリー、電気化学インピーダンス分光法、またはクロノアンペロメトリーを含むが、これらに限定されないいくつかの広く知られている方法のうちの1つを用いて行われる。
【0087】
一実施形態において、電気化学的検出は金電極上で行われ、ここで、金表面は電子ビーム堆積、または雲母もしくはシリコンウェハなどの超平坦テンプレートからのテンプレートストリッピングによって調製され、双安定センサの上蓋上の酸化還元活性分子はメチレンブルーレポーター分子であり、双安定センサの下蓋はチオール修飾、ポリヌクレオチド骨格へのホスホロチオエート修飾、またはポリアデノシン延を介して金表面上に固定化され、そして金電極はそわなければ、メルカプトヘキサノール(または類似のアルカンチオール)の自己集合単分子層によって覆われ、これは望ましくない電気化学反応がメチレンブルー分子からの所望のシグナルを不明瞭にすることを防止する。このような実施形態では、双安定センサの閉鎖がメチレンブルーから表面への電子移動速度の増加をもたらし、システムに対する「シグナルオン」挙動を生成するのであろう。一部の実施形態では、電子移動速度の変化が矩形波ボルタンメトリーによって測定される。
【0088】
金電極、メチレンブルーレドックスレポーター、および矩形波ボルタンメトリーによって読み出されるアルカンチオールパッシベーション層の組み合わせは、以前に記載されるように、文献において一般的である(Ricci et al, ”Linear, redox modified DNA probes as electrochemical DNA sensors” Chemical Communications 36(2007): 3768-3770)。
【0089】
図7は、双安定分子センサを光学的に読み出す表面上の実施形態に使用することができる3つの異なるデバイスアーキテクチャを示す。
【0090】
図7Aにおいて、双安定分子センサは、透明な光学基板(ガラス、石英、二酸化ケイ素)上に固定化され、全内部反射照明(臨界角以下の光が基板内を伝搬するように閉じ込められるTIRF照明)が表面においてエバネッセント場を生成するために使用される。そのような実施形態では、発光体(例えば、有機フルオロフォアまたは量子ドット)または光散乱体(例えば、25~50ナノメートルのプラズモン粒子、または500nm~1ミクロンの誘電体粒子)などの光学レポーターが上蓋に付着している。開いた状態では、光学レポーターが小さな蛍光または散乱シグナルが観察されるほど、表面から十分に遠く離れるのであろう。いくつかの実施形態では、プラズモンナノ粒子が金または銀ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、誘電体粒子がシリカまたはポリスチレンナノスフェアである。閉状態では、光学レポーターはエバネセント場の強い部分にあり、その結果、大きな蛍光または散乱シグナルが観測される。エバネッセント場の距離依存減衰は発光によって生成されるか、または粒子によって散乱される光の波長λに関連し、強い信号の臨界距離は、典型的にはλ/10である。TIRF光計測のための単一オリガミの使用は以前に記載されている(Gietl et al ”DNA origami as biocompatible surface to match single-molecule and ensemble experiments” Nucleic Acids Res. 40 (2012): e110およびTsukanov et al, ”Detailed study of DNA hairpin dynamics using single-molecule fluorescence assisted by DNA origami”, Phys. Chem. B 117 (2013):11932-11942)。
【0091】
図7Cにおいて、双安定センサは金(Dulkeith et al, ”Gold Nanoparticles Quench Fluorescence by Phase Induced Radiative Rate Suppression” Nano Letters 5 (2005):585-589)およびグラフェン(Kasry et al, ”Highly Efficient Fluorescence Quenching with Graphene” J. Phys. Chem. C 116 (2012):2858-2862)について記載されているように、発光部の蛍光を強く消光する基材(金またはグラフェン)上に固定される。従って、開状態では双安定センサの上蓋からの光信号は大きく、閉状態では双安定センサの上蓋からの光信号はずっと小さくなる。そのような実施形態ではエミッタが表面の数ナノメートル以内にあるときに最も強い消光効果が観察され、したがって、そのような実施形態は上蓋上の信号分子が表面からしっかりと密接に(数ナノメートル未満で)配置される双安定デバイス形状を使用することができる。そのような可能性のある幾何学的形状の1つは、
図7Cに図示されており、特に、下蓋の領域を越えて延びる剛性アームを備えた上蓋である。
【0092】
図7Dにおいて、双安定センサは広く知られたDNAオリガミ配置技術を用いて、微細加工されたリング共振器(Sarkaleh et al, ”Optical Ring Resonators: A Platform for Biological Sensing Applications” J. Med. Signals. Sens. 7 (2017):185-191に記載されているように)上に固定化され、ここで、微細加工されたリング共振器は、光導波路に強く結合される。このような実施形態では、発光部または光散乱体が双安定センサの状態変化の互換性のある光学レポーターの両方である。導波路の一端に入力された励起光はリング共振器に入り、双安定素子の蓋上のレポーターによって蛍光として発光されても、散乱されても発光されなくてもよい。双安定素子が開いていれば、リング内を循環する光は単に導波路に戻り、出力で送信信号として観測される。一方、双安定素子が閉じていれば、リング共振器内を循環する光は、より長波長の発光光(レポーターが発光体の場合)に変換されるか、離れて散乱される(レポーターが光散乱の場合)。したがって、デバイスが閉じられると、減少した光量が環から導波路に戻され、信号の減少した透過が導波路出力で測定される。このような実施形態では、閉状態の蓋の位置がリング共振器の表面から最大50ナノメートル離れていてもよい。
【0093】
図7Aに図示されているような実施形態の場合、測定された光信号は双安定センサが閉じると増加し、いわゆる「シグナルオン」検出モダリティをもたらす(
図7B)
図7Cおよび7Dに図示されているような実施形態の場合、測定された光信号は双安定センサが閉じると減少し、いわゆる「シグナルオフ」検出をもたらす(
図7E)。
【0094】
光学表面読み出しの他の実施形態では、双安定センサが広く知られているDNAオリガミ配置技術を使用して、他のタイプの微細加工された光学デバイス上に固定される。いくつかの実施形態では、発光部を有する双安定センサが金属(例えば金)光学ボウティアンテナの中心に配置される。このようなボウティアンテナの中心での強い電界は発光部の蛍光を増強することが知られている(Kinkhabwala, et al. ”Large single-molecule fluorescence enhancements produced by a bowtie nanoantenna”, Nature Photonics 3 (2009):654-657に記載されているように)したがって、このような実施形態では、双安定センサの閉状態が「シグナルオン」挙動を有するシステムをもたらす増強された発光を示そう。そのような実施形態の場合、閉状態における蓋の位置は最大光信号のために、湾曲部の中心から数ナノメートル以内でなければならないであろう。
【0095】
光学表面読み出しの他の実施形態では、双安定センサが広く知られているDNAオリガミ配置技術を使用してフォトニック結晶キャビティ(PCC)内に固定化される。以前に記載されたように(Gopinath et al, ”Engineering and mapping nanocavity emission via precision placement of DNA origami”, Nature 535 (2016): 401-405)、PCCとのDNAオリガミ上の相互作用発光は、PCCの共鳴モード内のノードに対するナノメートルスケールの位置決めに強く依存する。ある位置では、有限差分時間領域(FDTD)分析によって正確に予測できるように、エミッタとキャビティ間の結合は弱く、他の位置では強くなり得る。PCCの光共振モード内のピークに適切に配置された双安定装置では、双安定装置が閉じると光信号が増強され、「シグナルオン」挙動を有するシステムが得られる。
【0096】
表面ベースの光学的検出のいくつかの実施形態では、双安定センサの読み出しはエピ蛍光顕微鏡で偏光を測定することによって達成される。このような実施形態では、異方性金棒がオリガミの上蓋上の光学レポーターとして使用される。従って、双安定センサが閉じ、上蓋が結合されると、金棒は自由に回転する条件から、特定の方位で固定される条件に切り替わる。この金ロッドの回転拡散の変化は2つの異なる偏光でロッドから散乱された光を調べ、両者の比を計算することにより、エピ蛍光顕微鏡で容易に検出される。1に近い比率は開状態の双安定センサを示し、1から遠い比率は閉状態の双安定センサを示す。直線偏光を使用する実施形態は、オリガミの上蓋上に単一の異方性ナノロッドを含む。円偏光を使用する実施形態は一対のナノロッドを含み、一方は上蓋上にあり、他方はオリガミの下蓋上にある。円偏光を使用する2ナノロッドシステムが記載されている(Zhou et al. ”A plasmonic nanorod that walks on DNA origami” Nature Communications 6 (2015):8102)。
【0097】
いくつかの実施形態において、検出機構は、表面プラズモン共鳴(SPR)、又は反射率干渉法(RI)のような、潜在的に標識不使用の光学技術であり得る。SPRの一般原理は先にTiang et al, ”Surface Plasmon Resonance: An Introduction to a Surface Spectroscopy Technique” Journal of Chemicalfiled Education 87 (2010) 742-746に記載されている。その内容全体は参照により本明細書に組み込まれている。RIの背後にある一般原理はKussrow et al, ”Interferometric Methods for Label-Free Molecular Interaction Studies” Analytical Chemistry 84 (2012): 779-792に記載されており、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0098】
検出方法がSPRまたはRIであるいくつかの実施形態では双安定検出器の上蓋はラベルなしであり、それは検出器の上蓋の質量の、開状態で自由に拡散することから、閉状態で束縛される表面への移動であり、これは表面近傍の屈折率変化を引き起こすことになる。ここで、双安定検出器によって可能にされる結合事象当たりの増幅は、ポリヌクレオチド蓋に対して測定される分析物の分子量に依存する。分子量500対5メガダルトンの蓋の小分子分析物については、増幅率は10,000までである。50kDのタンパク質分析物または150kDの抗体について、結合事象当たりの増幅因子は、30~100倍の範囲である。
【0099】
検出方法がSPRまたはRIである他の実施形態では、金粒子またはシリカ粒子などの光学活性粒子を、オリガミの上蓋に付着させることができる。そのような実施形態では、光学活性粒子がより大きな屈折率変化を提供し、完全にDNAから構築された上蓋で達成され得るよりも大きな増幅を提供する。
【0100】
本発明の実施形態は、従来の双安定分子検出器に勝る利点を提供する。本明細書に開示される構造の1つの利点は本明細書に開示されるように、この構造が、光学的および電子的表面ベースの検出方法において感度の増加を付与する明確な形状を含むことである。完全に可撓性の双安定検出器は作動の検出方法がゲル電気泳動であり、開状態と閉状態との間で大きなゲルシフトが観察される場合に、良好に機能する。しかしながら、完全に柔軟性双安定検出器は、ポリヌクレオチド形状の幾何因子形状を制御する能力が高い信号増幅、典型的には結合事象当たり200倍の増幅を可能にする、本明細書に記載される光因子または電子的検出方法には適していない。
【0101】
電子検出方法では、作動時に溶液から表面に移動するつながれた形状が表面に近い形状質量の十分な割合(例えば、5メガダルトンまで)(標識のない電界効果バイオセンシングにおいて)をもたらすか、または表面のほんの数ナノメートル内に十分な数(例えば、少なくとも200メチレンブルー標識まで)の電気活性分子(電気化学センシングにおいて)をもたらすかのいずれかの幾何学的形状を有することが重要である。現在開示されている双安定検出器は、十分な質量または十分な数の電気活性分子を2nmの表面層に閉じ込めることができない。2nmの表面層に到達する能力は、ポリヌクレオチド形状の剛性、および
図8Cのアームとして、または固定化された形状の領域を越えて延在することができる
図8Dのドームとして、
図8Bのように固定化された形状に形成された窓に整列するような特定の幾何学的形状をとる能力によって可能になる。これは検出のために使用される機能性分子の組み合わせが高さ2nmを超える状況において必要とされ、例えば、2つの12ナノメートル抗体とタンパク質抗原(例えば、直径1~6ナノメートル)との組み合わせが、高さ24~30ナノメートルの積層を生成する。
【0102】
同様に、TIRF、SPR、またはRIなどの光学的検出方法では、完全に可撓性の双安定検出器の使用が高い信号増幅を達成するために、技術の臨界距離内のフルオロフォアの数または材料の量を最大化しない。フルオロフォアまたは他の発光(例えば、TIRF)に依存する技術の場合、本明細書に記載される双安定検出器は表面からの臨界距離に少なくとも200の発光標識をもたらすことができ、ここで、完全に柔軟性検出器は、高々数個の発光をもたらすことができる。屈折率変化(SPRまたは反射干渉法)を作り出すために表面に未標識分子の塊を運ぶことに頼る光学技術では、本明細書に記載の双安定検出器が表面に少なくとも5メガダルトンを運ぶことができ、完全に可撓性の検出器は表面にせいぜい数百キロダルトンを運ぶことができる(例えば、抗体の分子量は150キロダルトンである)。
【0103】
双安定センサの表面ベースの読み出しの実施形態は、アナログまたはデジタル信号の両方を生成することができる。いくつかの実施形態では光学的または電子的測定が多数のバイオセンサを含むより大きな面積にわたって行われ、そのため、そのような測定は多数のセンサのための信号の和を提供する。そのような実施形態では、単一のバイオセンサ挙動が平均化され、読み出しは本質的にアナログである。
【0104】
しかし、いくつかの実施形態では双安定センサの個別の性質、および大きなポリヌクレオチド蓋および多数のシグナル伝達分子によって潜在的に提供されるシグナル増幅は個別の単一分子事象の測定を可能にする。いくつかの実施形態では、このような単一分子測定がDNAオリガミ配置を使用して、個々の双安定センサをグリッドに配置する能力によってさらに可能になる。そのような実施形態では、読み出しは
図7B、
図7E、および
図10の時間/信号トレースに示されるように、本質的にデジタルであり、いくつかの光学的実施形態は例えば、単一分子生物物理学で一般に実施されるようなTIRF顕微鏡法の文脈において、顕微鏡視野全体にわたって、何千もの双安定センサの同時デジタル測定を可能にする。いくつかの電子的実施形態は例えば、DNAオリガミ配置が単一分子酸化還元サイクルを利用するために2つの電極間に双安定センサを配置するために使用される場合に、デジタル単一分子電子測定を達成し得る(Lemay et al, ”Single-Molecule Electrochemistry: Present Status and Outlook” Acc. Chem. Res. 46 (2013): 369-377に記載されるように)。
【0105】
双安定センサの単一分子デジタル測定を達成する実施形態は
図7B、
図7E及び
図10の時間/信号トレースにおける初期の時間について描かれているように、双安定センサの状態における変動を観察することができるのであろう。開状態における双安定センサは、上蓋が表面から遠く離れている状況と、上蓋が表面近くにある状況との間で変動するのであろう。リンカーの長さ、およびトップリッドの拡散定数に依存して、このゆらぎは、シグナルトレースにおける「オン」状態と「オフ」状態との間の切り替えを指示する特徴的な時定数T
1を有する。分子事象を検知すると、それが結合事象であろうと、または改変のような他の事象であろうと、双安定センサの上蓋および下蓋は少なくとも互いにより大きな親和性を有し、その結果、双安定センサの変動はT
2 がT
1よりも大きい、異なった特徴的な時定数T
2を有する。
【0106】
T
2とT
1の差が大きいほど、分子事象を検出しやすくなる。分子事象によって上蓋が無視できる速度を有するようになる上限(下蓋に対するその親和性が極めて高いため)では、閉鎖状態は安定であり、不可逆的である。この限界では結合事象または他の分子が
図7B、
図7E、および
図10に後の時間で示されるように、単一分子測定の時間/シグナルトレースに持続的な変化を引き起こす。この双安定センサに対する強い結合および不可逆的変化の限界は明確にするために図示されたが、多くの実施形態に当てはまる。多くの実施形態において、標的分子の結合、またはセンサ内の機能性分子の修飾は不可逆的な変化をもたらさず、時間/シグナルトレースはその変動速度を変化させ、そして分子事象の検出はこの速度変化から推測されなければならない。
【0107】
双安定センサの異なる実施形態は特定の表面ベースの読み出し機構の性能、および使用される機能性分子(例えば、抗体、アプタマー)の特性(例えば、サイズ、形状)を最大化するための要件によって指示されるように、異なる形状を有する蓋を使用する(
図8A~8D)。多くの可能な幾何学的形状の中で、4つが
図8Aに示されている:底蓋と上蓋の両方が同一形状である単純なバージョン(
図8B)上蓋上のシグナル伝達分子が表面と接触することができ、それによって安定した「閉」状態の形成時に最大のシグナルを確実にするウィンドウを有するバージョン;そのようなウィンドウを有するオリガミが以前に記載されている(Rothemund, Paul WK. ”Folding DNA to create nanoscale shapes and patterns”, Nature 440.7082 (2006): 297および特許出願161284 / CIT-7845);(
図8C)上蓋が非対称であり、上蓋とそれが担持する任意のシグナル分子との密接で安定した接触を確実にする剛性アームを有するバージョン;(
図8D)上蓋が3D半球またはドームであるように設計され、そのエッジが下蓋の半径を超えて延在し、上蓋とシグナルとの密接な接触を確実にするバージョンさらに、表面を有する分子は、双安定センサが大きなサイズの結合分子(例えば、大きな抗原を有する2つの抗体の対)を収容することを可能にする。このような半球またはドーム形状を有するDNAは以前に記載されている(Han et al, ”DNA origami with complex curvatures in three-dimensional space”, Science 332 (2011): 342-346)。
【0108】
双安定素子の幾何学的形状の機能としての性能は、特定の実施形態に依存する。
図8Aに示される幾何学的形状は、発光または散乱信号分子が大きな信号を生成するために表面に非常に近づく必要がないTIRF顕微鏡法(
図7A)を利用する実施形態に適している。そのような実施形態では、ラムダが使用される光の波長である場合、ラムダ/10の上蓋から表面までの距離について、強い信号が観察され得る。したがって、532nmに等しいラムダを有する緑色光の場合、上蓋がエバネッセント場の強い部分内にある表面の50nm内で強い信号が達成される。双安定素子の蓋上の発光部と微細加工された光キャビティ(
図7D)とのカップリングは、ラムダ/10の上蓋と表面との距離に対しても強力であろう。従って、散乱または蛍光による光検出を高めるために微細加工されたキャビティを使用する実施形態は、
図8Aに図示された単純な幾何学的形状を使用して、高性能を達成し得る。
【0109】
金属上の最大焼入れ(
図7C)、ゲートの静電容量に対する最大外乱(
図6Aおよび
図6B)、および電気化学的設定における最大電子移動速度(
図6C)は、通常、表面から2ナノメートル以内に観察される。したがって、クエンチング(
図7C)に基づく光学感知を使用する実施形態、ならびに電界効果感知(
図6Aおよび
図6B)を使用する実施形態、ならびに電気化学感知(
図6C)を使用する実施形態はすべて、上蓋と、それが運ぶことができる表面とのより密接な接触を可能にする装置形状、例えば、
図8B、
図8C、および
図8Dに示される双安定装置形状から利益を得ることができる。
【0110】
表面上のフライトラップの性能は、溶液中には存在しない多くの潜在的な問題にさらされ、これらの問題は異なる実施形態では
図9に示すように、基板の表面化学および双安定センサの異なる構成要素を調整することによって解決される。
【0111】
例えば、フライトラップの一方の蓋は表面(底部蓋)上に固定されなければならず、他方(頂部蓋)は溶液中で自由に浮遊しなければならない。上蓋が表面に対して高い親和性を有する場合、上蓋は下蓋の隣に付着し、フライトラップが結合し、標的分子を検出した(偽陽性)ように見えることがある。このような問題は、パターン化されていない表面、ならびにDNAオリガミ結合部位でパターン化された表面で生じる(
図9A)。空部位、二重結合、および閉じたままのセンサは、すべて、双安定センサの表面への不適切な接着によって引き起こされ得る問題である。
【0112】
表面に対するオリガミの接着を制御する能力は窒化珪素および二酸化ケイ素基板上で最も良く開発されている(Kershner et al, ”Placement and orientation of individual DNA shapes on lithographically patterned surfaces”, Nature Nanotechnology 4 (2009):557-561; Hung et al, ”Large-area spatially ordered arrays of gold nanoparticles directed by lithographically confined DNA origami”, Nature Nanotechnology 5 (2010): 121-126; Gopinath et al, ”Optimized Assembly and Covalent Coupling of Single-Molecule DNA Origami Nanoarrays”, ACS Nano 8 (2014):12030-12040;およびGopinath et al, ”Engineering and mapping nanocavity emission via precision placement of DNA origami”, Nature 535 (2016): 401-405に記載されている)。
図9Cは、二酸化ケイ素、石英、および窒化珪素などの適切な表面酸化物を有するフライトラップ基材を適切に結合させるための一実施形態の図である。側面図では適宜粘着性、または適切に配向されるべきフライトラップの表面に対する非粘着性を有さなければならないフライトラップに対する5つの別個の領域が存在する:上蓋の両方の表面は負に帯電したシラノール/カルボキシシラン結合部位または周囲のトリメチルシリル背景技術(ヘキサメチルジシラザン[HMDS]蒸着によって生成される)に付着してはならず、蓋の間のリンカーは結合部位または背景技術に付着してはならず、下蓋の一方の表面は付着部位に付着してはならず、下蓋の一方の表面は結合部位に付着してはならない。Mg
2+イオンの層は負に帯電した表面部位と負に帯電したオリガミ表面との間に架橋を提供するので、一般に使用される実験条件下(10mMのMg
2+イオンを有する)では、平坦な円盤状のオリガミは結合部位に強く付着する。一方、リンカーのいくつかの実施形態のような線状二本鎖DNAは原子間力顕微鏡下でのそれらの移動によって実験的に示されるように、そうではない。他の研究(特許出願161284/CIT-7845に記載されるように)は、20量体ポリ-T一本鎖DNA毛髪の層を添加することによって、DNAオリガミの片側を負に荷電した結合部位に対して非粘着性にする方法を教示する。この改質は二酸化ケイ素に対して非常に有効であり、一方の平坦な面と一方の毛状の面とを有するオリガミが堆積される場合、オリガミの98%を超える部分が、表面に面する平坦な面と結合する。したがって、いくつかの実施形態では、フライトラップハードディスクの3つの面をDNA髪で機能化して、適切な配向を提供することができる。
【0113】
DNAオリガミ配置を使用するいくつかの実施形態では、Gopinath et al ACS Nano 8(前出)およびGopinath et al Nature 535(前出)に教示されているように、特定の表面処理および特定の溶液条件を使用して、フライトラップの底蓋を表面に接着させる。石英、天然または熱酸化物のキャッピング層を有する二酸化ケイ素、窒化珪素、酸化インジウム、または負に帯電した基を酸素プラズマ処理によって表面に導入することができる任意の表面の場合、正に帯電した二価マグネシウムイオンを使用して、負に帯電した表面基とフライトラップ検出器の負に帯電した底蓋との間に接着ブリッジを形成することができる。負の表面基がイオン化シラノールである実施形態では、30~40ミリモルマグネシウムのマグネシウム濃度を使用することができる。いくつかの実施形態では、表面が負に荷電したカルボン酸を導入するカルボキシシラン処理によってシラン化される。この場合も、マグネシウムイオンを使用して、負に帯電した表面基とフライトラップ検出器の負に帯電した底蓋との間に接着ブリッジを形成することができる。負の表面基がカルボン酸であるこのような実施形態では、5ミリモル未満のマグネシウム濃度を使用することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、異なる基板材料上で、上蓋が背景に付着するのを防止するという問題に対する他の解決策が必要とされ得る。下蓋は、上蓋がリンカーを介して表面に永久的に隣接するように拘束する。これは上蓋に高い局所濃度を与え、これは弱い相互作用のための平衡をシフトさせ、および/または代替的な結合機構が起こるのに十分な時間を可能にし得る。フライトラップの頂部蓋が表面に付着するいくつかの実施形態では、頂部蓋が例えば
図9Bのように6つのらせん束としてそれらを実装することによって、それらの形状を変化させ、それらの表面積を減少させることによって、粘着性をより低くすることができる。このアプローチはマイカに明確な効果を持ち、6ヘリックス束および他の3Dオリガミは、より高い表面積の平坦なオリガミよりも表面への付着性がはるかに低い。電子センシングが使用されるいくつかの実施形態では、この解決策がセンサ表面に近いオリガミの質量および/またはシグナル伝達分子の数を減少させるので、感度を低下させるというコストを払ってもよい。
【0115】
金電極を使用するいくつかの実施形態(
図9D)では、二酸化ケイ素系を密接に模倣することができ、接着はMg
2+濃度によって調整することができる。3.6オングストロームのRMS粗さ(二酸化ケイ素ウエハと同等)を有する超平坦テンプレート剥離金を基材として使用してもよい。二酸化ケイ素上で利用可能なものに類似した負に荷電した結合部位を作製するために、11-メルカプトウンデカン酸などのカルボキシル化チオールを使用して、自己集合単分子層を作製する。このような単分子層は以前に記載されたように、Mg
2+イオンの存在下でオリガミを金に接着するために使用されている(Gerdon et al, ”Controlled Delivery of DNA Origami on Patterned Surfaces”, Small 5 (2009): 1942-1946).。非付着性背景技術は、二酸化ケイ素上のHMDSによって生成されるものと同様の接触角を有する自己集合単分子層を与えるように選択されたアルカンチオールを使用して実施することができる。
【0116】
金電極を使用する他の実施形態は、ポリアデノシン(polyA)鎖延長部、チオール標識、またはホスホロチオエート骨格をDNAオリガミ上で使用して、フライトラップの底蓋を金に接着させる。チオール、ホスホロチオエート、およびポリアデノシンストランドに基づくDNA接着は以前に記載されている(Zhou et al, ”Tandem phosphorothioate modifications for DNA adsorption strength and polarity control on gold nanoparticles.” ACS Applied Materials Interfaces 6 (2014):14795-147800)。上蓋と背景技術表面との間の接着防止は、上蓋に対するポリエチレングリコールまたはデキストラン修飾、ならびに金基材上の背景技術に対するポリエチレングリコール-チオール修飾の使用によって提供され得る。
【0117】
グラフェンFET表面を使用するいくつかの実施形態では、二酸化ケイ素系がグラフェンに強く結合するピレン-カルボン酸分子の使用を介してMg
2+駆動接着を提供するように模倣することができる(
図9E)。いくつかのそのような実施形態ではカルボン酸修飾グラフェンがorigamiに非特異的に結合することができ、PEGは非付着性フライトラップ表面に添加することができる。
【0118】
しかしながら、二本鎖DNAはグラフェン表面に強く付着せず、一本鎖DNAの露出した疎水性塩基はグラフェンに強く付着するので、グラフェン上の付着を管理するための他の選択肢が開かれる。したがって、いくつかの実施形態では、パターン化されていない未変性のグラフェンを使用することができる。そのような実施形態では一本鎖DNA(例えば、ポリチミン[polyT])を、底蓋上の被着材フライトラップ表面に添加することができ(
図9F)、そのような実施形態ではフライトラップの他の表面が未修飾グラフェンに対する非常に低い被着材を有する。同様の一本鎖リンカー方策を用いて、カーボンナノチューブをDNAオリガミに付着させて(Maune et al, ”Self-assembly of carbon nanotubes into two-dimensional geometries using DNA origami templates” Nature Nanotechnology (2010) 61-66)、電界効果トランジスタを形成する。
【0119】
表面ベースの実施形態では、別個の双安定センサの多重化が異なる標的分子に対する特異性、または別個の試験管の異なる機能に対する感度を有するセンサを独立して合成し、光学的または電子的検出に適した表面上に別個のセンサをアレイに空間的に配置することによって達成することができる。空間的位置決めはインクジェット印刷およびマイクロアレイ印刷を含む様々な技術(Barbulovic-Nad et al ”Bio-microarray fabrication techniques--a review.” Critical Reviews in Biotechnology. 26 (2006):237-59.に記載されているように)を用いてマイクロスケールで達成することができる。したがって、表面ベースの実施形態についてはマイクロスケールスポットが合計された双安定装置挙動のアナログ測定に適したアレイを作成し、各スポットは多数のランダムに配置された双安定装置を含有し、いくつかの実施形態では各スポットが少なくとも10個の双安定装置を含有する。
【0120】
表面ベースの実施形態では、単一分子の光学的または電子的検出に適した単一分子アレイが上記の参考文献に記載されるように、DNAオリガミ配置の技術を使用して、リソグラフィ的に構築され得る。65,536の光学デバイス(Gopinath et al, ”Engineering and mapping nanocavity emission via precision placement of DNA origami”, Nature 535 (2016): 401-405)の建設では各デバイスがフォトニック結晶キャビティを含む5ミクロン×5ミクロンの領域であり、各デバイスはその中に配置された決定論的に規定された数の個々のDNAオリガミを有し、ここで、数はプログラム的にゼロから7までの範囲である。したがって、いくつかの実施形態(
図10)ではマイクロスケールスポットをDNAオリガミ配置と組み合わせて、単一分子単一双安定センサアレイの完全に規則的なアレイを達成することができ、N個のアレイの各々は特定の検体に特異的であり、N個のアレイの各々の中には95%を超える確率で正確に1つの双安定センサで満たされた単一双安定装置のためのM個の結合部位がある。作製された個々の結合部位の数に基づいて、いくつかの実施形態は、100,000までに等しいN×Mのスポットの総数を含むアレイを有する。いくつかの実施形態は、それぞれが双安定デバイスのための少なくとも10個の結合部位を有する、1000個までのアレイを有する。
【0121】
多重電子検出は、4000を超えるCMOS電気化学センサに関して達成されている(Sun et al ”A scalable high-density electrochemical biosensor array for parallelized point-of-care diagnostics”, 2015 IEEE Biomedical Circuits and Systems Conference, IEEE Journal of Solid-State Circuits 53 (2018) 2054-2064に記載されている)。したがって、いくつかの実施形態はマイクロアレイスポッティングを電子機器と組み合わせて、最大4000までの異なるタイプの双安定デバイスの多重化アレイを達成し、各スポットはマイクロスケール電子機器上に印刷され、各スポットは多数のランダムに配置された双安定センサを含み、各マイクロスケール電子機器からの読み出しは双安定センサの多重性の合計応答であり、いくつかの実施形態では各スポットが少なくとも10個の双安定デバイスを含む。