(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】水交換及び飼育条件が改善された魚ケージ
(51)【国際特許分類】
A01K 61/60 20170101AFI20240122BHJP
【FI】
A01K61/60 321
(21)【出願番号】P 2021553324
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 NO2020050068
(87)【国際公開番号】W WO2020190146
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-05-17
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】521402284
【氏名又は名称】スプリング イノベーション エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンドスタッド アルフ レイダー
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/155414(WO,A1)
【文献】スウェーデン国特許発明第00464217(SE,C2)
【文献】国際公開第2019/045573(WO,A1)
【文献】特開昭56-005033(JP,A)
【文献】特開平01-228419(JP,A)
【文献】特開2016-077269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00 - 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養魚用ケージ(1)であり、上部(10)及び下部(19)を形成し且つ
ウォーターカラム(99)内に浮くケージ(1)であって、
上記ケージ(1)の上部(10)にあり水面(90)に浮くよう配列されている包囲浮体(11)と、
上記ケージ(1)の上部(10)・下部(19)間にあり
上記ケージ(1)の下部(19)にて閉止される囲い(2)であり、内側面(21)及び外側面(23)を形成する囲い(2)と
、
上記ケージ(1)の上部(10)に
ある液密壁(5)
であって、
当該液密壁(5)が上記浮体(11)に取り付けられていて水面(90)から下方に向
けて上記ウォーターカラム(99)内に延びており、
当該液密壁(5)が下側縁部分(59)を形成
している、
液密壁(5)と、
を備えるゲージ(1)において、
上記ケージ(1)の上部(10)に、上記液密壁(5)より内側に円形水流(40)を発生させる少なくとも1個のフローブースタ(4)が設けられており、そのフローブースタ(4)が、
上記ケージ(1)の上部(10)にて上記内側面(21)より内側の部分から給水を受けることと、
上記ケージ(1)は、上向きの水流(49)が当該ケージ(1)の下部(19)の中央で当該ケージ(1)内に入るように適合されていること、
を特徴とするケージ。
【請求項2】
請求項1に
記載のケージ(1)であって、上記囲い(2)が網(3)を備え、その網(3)が上記下側縁部分(59)に取り付けられているケージ。
【請求項3】
請求項1に
記載のケージ(1)であって、上記囲い(2)が網(3)を備え、その網(3)が上記包囲浮体(11)及び上記液密壁(5)に取り付けられており、その液密壁(5)がその網(3)より内側に配置されているケージ。
【請求項4】
請求項1に
記載のケージ(1)であって、上記囲い(2)が網(3)を備え、その網(3)が上記包囲浮体(11)に取り付けられており、上記液密壁(5)がその網(3)より外側に配置されているケージ。
【請求項5】
請求項3に
記載のケージ(1)であって、上記下側縁部分(59)が上記網(3)に取り付けられているケージ。
【請求項6】
請求項2~5のうち何れか一項に
記載のケージ(1)であって、上記液密壁
(5
)が
上記ケージ(1)の上部(10)・下部(19)間にて円筒部を構成しており、
上記網(3)の底部を形成する底部網(39)が上記下側縁部分(59)から下方に向けて上記
ウォーターカラム(99)内に延びているケージ。
【請求項7】
請求項1~6のうち何れか一項に
記載のケージ(1)であって、上記液密壁(5)の下側縁部分(59)に包囲縁取り(6)が設けられており、その包囲縁取り(6)が
上記ケージ(1)の中央に向かい内方に張り出しているケージ。
【請求項8】
請求項7に
記載のケージ(1)であって、上記包囲縁取り(6)が、
上記ケージ(1)の上部(10)により与えられるところの
上記ケージ(1)の半径の1/4に亘り内方に延びているケージ。
【請求項9】
請求項1~8のうち何れか一項に
記載のケージ(1)であって、上記液密壁(5)の上部(50)に、
上記ケージ(1)の上部(10)からの水流出用に少なくとも1個の可閉止開口(53)が設けられており、その開口(53)に魚留置手段(55)が設けられているケージ。
【請求項10】
請求項1~9のうち何れか一項に記載のケージ(1)であって、上記ケージ(1)に少なくとも2個の上記フローブースタ(4)が設けられている、ケージ。
【請求項11】
養魚用ケージ(1)の囲い(2)より内側に
新しい水の上向き中央水流(49)を発生させる方法であって、
上記ケージ(1)が上部(10)及び下部(19)を形成し、
上記ケージ(1)が
ウォーターカラム(99)内に浮き、
上記ケージ(1)が、
上記ケージ(1)の上部(10)にあり水面(90)に浮くよう配列されている包囲浮体(11)と、
上記ケージ(1)の上部(10)・下部(19)間にあり自身の下部(29)にて閉止される囲い(2)であり、内側面(21)及び外側面(23)を形成する囲い(2)と
、
上記ケージ(1)の上部(10)に
ある液密壁(5)
であって、
当該液密壁(5)が上記浮体(11)に取り付けられ水面(90)から下方に向
けて上記ウォーターカラム(99)内に延びており、
当該液密壁(5)が下側縁部分(59)を形成
している、液密壁(5)と、
を備える、
方法において、
上記ケージ(1)の上部(10)に、
上記ケージ(1)の上部(10)にて内側面(21)より内側
の部分から給水を受け
、上記液密壁(5)より内側に円形水流(40)を発生させる少なくとも1個のフローブースタ(4)が設けられていること
と、
上記円形水流(40)が、周囲圧より低い流体動圧を有する部分を上記ケージ(1)の下部(19)にて
上記ケージ(1)の中央に発生させ、ひいては水が上記縁部分(59)より下方
の上記ケージ(1)の中央にて上記ケージ(1)の下部(19)
へと流入しそのケージ(1)内で上向き水流(49)となり上方に向かい流れること、
を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項
11に
記載の方法であって、上記円形水流(40)が、周囲圧より高い流体動圧を上記ケージ(1)の周縁部にて発生させ、ひいては水が上記液密壁(5)の開口(53)を介しそのケージ(1)から流出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は養魚用ケージに関する。より具体的には、本発明は、部分的に閉止されていてケージの少なくとも上部に液密壁が設けられているケージに関する。本発明に係るケージの上部には少なくとも1個のフローブースタを設ける。このフローブースタはその液密壁に沿い過剰圧を発生させる円形流を引き起こし、その寄与によりその液密壁を伸長状態に保ち、また恐らくはその液密壁より外側にある囲いにその液密壁を押し付ける。本発明によれば、その円形流により、周囲の流体動圧より低い流体圧力を有する部分がケージ中央に生成され、それによりケージ中央に上向き水流が生成されることとなる。ケージの上側周縁部分では、周囲の流体動圧に比べ高い圧力が生じ、その水がその部分にある開口を介しケージから流出することとなる。本発明では、更に、内方に張り出す縁取りをその液密壁に設けることで、ケージのアウトレットを規制する。ケージを介しポンピングされる水の量を制限することで、ケージ内円形流を維持するのに必要なエネルギ消費が低減され、ひいてはエネルギ消費が低減される。更に、その縁取りの助力により、ケージ容積のより多くの部分により良好な循環が達成される。縁取りが下部にて用いられている場合、その循環水流がその縁取りまで下方に向かいずっと延びることとなる。円形水流であるため、またケージ中央にてケージ下方から多量の新しい水が採取されるため、ケージ内の魚の健康状態が改善されることとなる。
【背景技術】
【0002】
魚の飼育・養殖をいわゆるオープンケージ内で行うことができる。オープンケージは、包囲浮体により浮遊状態に保たれる閉止囲いを備えている。その閉止囲いは、魚がその囲い内に閉じ込められるよう、且つ酸素が溶解している水がその囲いを通じ流れうるよう、網又は曳網を備えるものとすることができる。その囲いは、水面下部分で閉止される一方、その囲いから魚が逃げ出すことを防ぐためのいわゆるジャンプ網の分だけ、水面より上方に張り出している。その囲いは空気に向け開放されているが、いわゆる防鳥網により囲いが覆われていることもる。このケージには係留システム及び給餌システムが設けられる。
【0003】
飼育・養殖をいわゆるクローズドケージ内で行ってもよい。クローズドケージは液密壁及び液密底を備えている。それら壁及び底の液密素材を布形態素材や堅固素材としてもよい。その堅固素材を、繊維ガラス、多層素材、コンクリート又は金属、例えば銅を含むものとしてもよい。周囲からクローズドケージ内へと水をポンピングすることで、閉システムに水が供給される。クローズドケージの底部又は壁にアウトレットを設けてもよい。
【0004】
オープンケージの短所は、魚の疾病を引き起こしかねない微生物が水と共にそのケージ内へと浮動することである。これは、寄生性サケジラミ(鮭虱)の幼虫がいるならなおさらである。オープンケージにいわゆるシラミスカートを設けることが知られている。その例は浮体の外側からケージをくるむ目の細かい布であり、サケジラミ幼虫の個体数が少ないかサケジラミ幼虫が全くいない深さまで、下方に向かいウォーターカラム内にそれを延ばすようにする。液密素材例えばターポリンからなるシラミスカートを用いることも知られている。
【0005】
ケージ内の魚のいわゆる槽内処置との関連では、外側からケージを取り巻くターポリンをそのケージより下方に至る全行程に亘り又は部分的に延ばすことで、極力小さな容積を発生させて、そこに槽内処置剤を散布することが知られている。
【0006】
特許文献1には、浸水される箱状の養魚装置が開示されている。この箱は、水密素材製の上部と、アウトレット部分を有する下部とを備えている。新しい水をその箱の上部に入れることで、比較的ゆっくりな下向き水流をその箱内に発生させることができる。特許文献2には、網で形成された囲いを有するケージが開示されている。スカートがその網の外側からケージをくるみ、下部環より上方にあるエリアまでそのスカートが延びている。ケージ内のフローブースタがそのスカートより下方から吸水し、その水をケージ内で上側水塊内に分配する。そのフローブースタのアウトレットは横向きであり、それによりその上側水塊が回転状態に設定される。特許文献3には、養魚用ケージの網状壁の内側に取り付けられた水密スクリーンが開示されている。特許文献4には、半クローズドケージ形成用のシラミスカートによりその上部がくるまれたケージが開示されている。その下部環の周辺にありケージ中央から離れているエリアに、給気部材が配置されている。加圧空気がその給気部材に供給され、上向きに上っていく気泡によりケージ内に上向き水流が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】ノルウェー特許第165901号明細書
【文献】ノルウェー特許第341377号明細書
【文献】ノルウェー特許第343600号明細書
【文献】ノルウェー特許第343181号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の短所のうち少なくとも一つを治癒又は軽減することにあり、また少なくとも従来技術に対する有用な代替物を提供することにある。
【0009】
この目的は、以下の記述及び後掲の特許請求の範囲にて特定される諸特徴を通じ達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は独立形式請求項により定義される。従属形式請求項では本発明の上首尾な諸実施形態が定義される。
【0011】
本発明の第1態様は、より具体的には、養魚用ケージであり上部及び下部を形成し且つウォーターカラム内に浮くケージであって、
ケージ上部にあり水面に浮くよう配列されている包囲浮体と、
ケージ上部・下部間にありケージ下部にて閉止されていて且つ内側面及び外側面を形成する囲いと、
を備えるケージに関する。このケージは、上記浮体に取り付けられていて水面から下方に向かいウォーターカラム内に延びる液密壁を備え、その液密壁が下側縁部分を形成し、
ケージ上部に少なくとも1個のフローブースタが設けられていて、そのフローブースタが液密壁より内側に円形水流を発生させるものである。そのフローブースタは、ケージ上部の内側面より内側の部分から給水を受ける。
【0012】
そのフローブースタを、ウォータジェットを備えるものとしてもよい。そのウォータジェットにより囲い内から吸水してもよい。フローブースタを、イジェクタを備えるものとしてもよい。そのイジェクタの駆動流体を囲い内から採取してもよい。フローブースタを、プロペラを備えるものとしてもよい。フローブースタを、スラスタを備えるものとしてもよい。
【0013】
本発明によれば、ケージ内円形流により、周囲の流体動圧より低い流体動圧を有する部分がケージ中央に生じることとなる。これによりケージ中央に上向き水流が生じることとなる。その上向き水流がケージ下部にてケージ中央に進入する。水は囲い内にて上方に流れ液密壁の開口、即ち液密壁より内側での流体動圧がケージ外でのそれよりも高いところから流出することとなろう。水はケージ上部にて液密壁の開口から流出することとなろう。
【0014】
その囲いを網が備わるものとし、その網を上記下側縁部分に取り付けてもよい。これに代わる実施形態に従い、その囲いを網が備わるものとし、液密壁がその網より内側に位置する態にてその網を包囲浮体に取り付けてもよい。ケージ上部にてその液密壁により囲いの内側面を形成してもよい。本実施形態にて、その下側縁部分をその網に取り付けてもよい。これには、魚が液密壁・網間を泳げないようにすることができる、という長所がある。液密壁を網より外側に配置してもよい。
【0015】
その液密壁によりケージ上部・下部間に円筒部を形成し、網の底部を形成する底部網をその下側縁部分から下方に向けてウォーターカラム内に延ばしてもよい。
【0016】
その液密壁の下側縁部分に包囲縁取りを設け、その包囲縁取りをケージ中央に向かい内方に張り出させてもよい。その包囲縁取りを、ケージ上部により与えられるケージ半径の1/4に亘り内方に延ばしてもよい。その包囲縁取りを、ケージ上部により与えられるケージ半径の1/3に亘り内方に延ばしてもよい。その包囲縁取りを、ケージ上部により与えられるケージ半径の1/2に亘り内方に延ばしてもよい。その包囲縁取りを、ケージ上部により与えられるケージ半径の1/2を超え、例えば2/3、3/4、4/5或いはそれ以上に亘り内方に延ばしてもよい。包囲縁取りは、ケージ中央の上向き水流に水を供給するのに十分な開口となるところよりも、内側には延ばさない。その縁取りを、ケージ中央に向かい下降傾斜させてもよい。その縁取りを、ケージ中央に向かい上昇傾斜させてもよい。その縁縁取りを水平に向けてもよい。
【0017】
その液密壁の上側壁部分に、ケージ上部からの水流出用に少なくとも1個の可閉止開口を設けてもよく、その開口に魚留置手段を設けてもよい。その開口の開口面積を調整可能としてもよい。この手段を、目が細かな網又は格子を備えるものとしてもよい。その液密壁の下部に、ケージからの水流出用に少なくとも1個の開口を設けてもよい。その開口に魚留置手段を設けてもよい。その開口の開口面積を調整可能としてもよい。その開口を閉止可能としてもよい。
【0018】
本発明の第2態様は、養魚用ケージの囲いより内側に新しい水の上向き中央水流を発生させる方法であって、そのケージが上部及び下部を形成し且つウォーターカラム内に浮くケージであり、そのケージが、
ケージ上部にあり水面に浮くよう配列されている包囲浮体と、
ケージ上部・下部間にあり自身の下部にて閉止されていて内側面及び外側面を形成する囲いと、
を備える方法に関する。本方法の特徴は、
ケージに液密壁が設けられており、その液密壁が上記浮体に取り付けられ水面から下方に向かいウォーターカラム内に延びており、その液密壁が下側縁部分を形成すること、
ケージ上部に、囲いより内側から給水を受け液密壁より内側に円形水流を発生させる少なくとも1個のフローブースタが設けられていること、
その円形水流が、周囲圧より低い流体動圧を有する部分をケージ下部にてそのケージの中央に発生させ、ひいてはその水が上記縁部分より下方にてそのケージ下部の内側に流入しそのケージ内で上方に流れ上向き水流の態をなすこと、並びに
その円形水流が、周囲圧より高い流体動圧をケージ周縁部に発生させ、ひいてはその水が液密壁の開口を介しケージから流出することにある。
【0019】
その液密壁の上部によってその囲いの内側面を形成してもよい。
【0020】
水を、ケージ上部にて液密壁の開口を通じケージから流出させてもよい。水を、液密壁の下側縁部分に位置する開口を通じケージから流出させてもよい。水を、液密壁の下側縁部分と浮環との間に位置する開口を通じケージから流出させてもよい。
【0021】
養魚用ケージであり、上部及び下部を形成し且つウォーターカラム内に浮くケージであって、
ケージ上部にあり水面に浮くよう配列されている包囲浮体と、
ケージ上部・下部間にありケージ下部にて閉止されていて且つ内側面及び外側面を形成する囲いと、
が備わりうるケージも記述される。このケージは、上記浮体に取り付けられ水面から下方に向かいウォーターカラム内に延びる液密壁を備え、その液密壁が下側縁部分を形成しており、
ケージ上部に、その液密壁より内側に円形水流を発生させる少なくとも1個のフローブースタが設けられており、
その液密壁の下側縁部分に、ケージ中央に向かい内方に張り出す包囲縁取りが設けられたものとすることができる。そのフローブースタはケージ上部の内側面より内側の部分から給水を受ける。
【0022】
その液密壁の上部によりその囲いの内側面を形成してもよい。
【0023】
そのフローブースタを、ウォータジェットを備えるものとしてもよい。そのウォータジェットにより囲い内から吸水してもよい。フローブースタを、イジェクタを備えるものとしてもよい。そのイジェクタの駆動流体を囲い内から採り入れてもよい。フローブースタを、プロペラを備えるものとしてもよい。フローブースタを、スラスタを備えるものとしてもよい。
【0024】
その囲いを網が備わるものとし、その網を上記下側縁部分に取り付けてもよい。これに代わる実施形態に従い、その囲いを網が備わるものとし、液密壁がその網より内側に位置するようその網を包囲浮体に取り付けてもよい。その実施形態にて、その下側縁部分をその網に取り付けてもよい。これには、魚が液密壁・網間で泳げないようにすることができる、という長所がある。
【0025】
その液密壁によりこのケージ上部・下部間に円筒部を形成し、網の底部を形成する底部網を上記下側縁部分から下方に向けてウォーターカラム内に延ばしてもよい。
【0026】
その液密壁の下側縁部分に包囲縁取りを設け、その包囲縁取りをケージ中央に向かい内方に張り出させてもよい。その包囲縁取りを、ケージ上部により与えられるケージ半径の1/4に亘り内方に延ばしてもよい。その包囲縁取りを、ケージ上部により与えられるケージ半径の1/3に亘り内方に延ばしてもよい。その包囲縁取りを、ケージ上部により与えられるケージ半径の1/2に亘り内方に延ばしてもよい。その包囲縁取りを、ケージ上部により与えられるケージ半径の1/2を超え、例えば2/3、3/4、4/5或いはそれ以上に亘り内方に延ばしてもよい。
【0027】
その液密壁の上側壁部分に、ケージ上部からの水流出用に少なくとも1個の可閉止開口を設けてもよく、その開口に魚留置手段を設けてもよい。この手段を、目が細かな網又は格子を備えるものとしてもよい。その液密壁のうち下部環にある部分に、ケージ上部からの水流出用に少なくとも1個の開口を設けてもよく、その開口に魚留置手段を設けてもよい。
【0028】
養魚用ケージであり、上部及び下部を形成し且つウォーターカラム内に浮くケージであって、
ケージ上部にあり水面に浮くよう配列されている包囲浮体と、
ケージ上部・下部間にある液密壁と、
を備え、上記下部が液密で切頭錐(錐台)様の形状であり、
その液密壁より内側に円形水流を発生させる少なくとも1個のフローブースタを備えるケージも記述される。このケージのインレットを、その切頭錐の自由縁部分なる形態でその切頭錐の先端に設け、そのインレットに第1魚留置手段を設けてもよい。
【0029】
その切頭錐の先端がウォーターカラム内で下を向くようにし、そのインレットに、上方に張り出しその自由縁部分を囲むエッジを設けることで、そのインレットの周りに包囲型汚物トラフを形成してもよい。
【0030】
その切頭錐の先端がウォーターカラム内で上を向くようにすることで、その液密壁に包囲型汚物トラフを形成してもよい。
【0031】
その液密壁の上側壁部分に、ケージ上部からの水流出用に少なくとも1個の可調開口を設けてもよく、その開口に第2魚留置手段を設けてもよい。その開口を閉止可能としてもよい。
【0032】
これら様々な例示的実施形態にて、液密壁を布形態素材で構成してもよい。それら様々な例示的実施形態にて、液密壁を堅固素材で構成してもよい。その堅固素材を、繊維ガラス、多層素材、コンクリート又は金属、例えば銅を含むものとしてもよい。それら様々な例示的実施形態にて、上記縁取りを布形態素材で構成してもよい。それら様々な例示的実施形態にて、その縁取りを堅固素材で構成してもよい。その堅固素材を、繊維ガラス、多層素材、コンクリート又は金属、例えば銅を含むものとしてもよい。
【0033】
以下、好適諸実施形態の諸例について記述し、それらを以下の添付図面にて視覚的に表現することとする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】従来技術の養魚用ケージの側面を示す図である。
【
図2】本発明に係るケージの上面を
図1と同スケールで示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るケージの縦断面を示す図である。
【
図4】
図3に示した実施形態の変形例を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係るケージの縦断面を示す図である。
【
図6】
図5に示した実施形態の変形例を示す図である。
【
図7】第3実施形態に係るケージの縦断面を示す図である。
【
図8】
図7と同じものの上面を同スケールで示す図であり、水平水流が示されている。
【
図9】
図7に示した実施形態の変形例を示す図である。
【
図10】
図7に示した実施形態の更なる変形例を示す図である。
【
図11】第4実施形態に係るケージの縦断面を示す図である。
【
図12】
図10と同じものの上面を同スケールで示す図である。
【
図13】
図7に示したケージの縦断面を、垂直水流の模式的図示と共に示す図である。
【
図14】
図11に示したケージの縦断面を、垂直進入水流並びに糞及び食べ残し餌の沈降の模式的図示と共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図中、参照符号1は魚(図示せず)を養殖するためのケージを示している。従来技術に係るケージ1を
図1及び
図2に示す。このケージ1は上部10及び下部19を形成している。ケージ1には水面90上に浮く包囲浮体11が設けられており、それによりケージ1が
ウォーターカラム99内に浮いた状態に保たれている。その包囲浮体11から上方に向かい柵13が張り出している。
【0036】
ケージ1は魚にとり障壁となる閉止型の囲い2を備えており、それにより魚をケージ1から逃さないようにしている。その囲い2は上部20及び下部29を形成しており、且つ内側面21及び外側面23を形成している。囲い2は網3で形成することができる。囲い2は、浮体11への直接取付、柵13への直接取付又は浮体11及び柵13への直接取付により、浮体11に取り付けられている。網3は、下方に向かいウォーターカラム99内に延び、網3の底部を形成する底部網39を備えており、囲い2の下部29をそれにより形成することができる。
【0037】
ケージ1は包囲型の下部環15を有している。囲い2はその下部環15に取り付けられ、それによって展開状態に保たれている。
【0038】
本発明に係るケージ1を
図3~
図14に示す。このケージ1には、円形で略水平な水流40(
図8参照)をケージ1内に発生させるフローブースタ4が設けられている。図示のフローブースタ4はホルダ41を有している。フローブースタ4はアウトレット43を有している。フローブースタ4を、囲い2内から吸水するウォータジェットを備えるものとしてもよい。フローブースタ4を、囲い2内から駆動媒体の供給を受けるイジェクタを備えていてもよい。他の諸実施形態ではそのフローブースタ4にプロペラやスラスタが備わることもある。
【0039】
第1実施形態に係るケージ1は
、ケージ1の上部10にある浮体11から下方に向か
いケージ1内に延びる液密壁5を備えている。液密壁5は、
図3に示す通り、囲い2の上部20の内側に位置している。液密壁5を布形態素材で構成してもよい。液密壁5を堅固素材で構成してもよい。液密壁5は上部50にある柵13に上首尾に取り付けられており、ひいてはその壁5の上部50が水面90より上に張り出している。
【0040】
図3では、液密壁5が上部20の内側に配置されていることを示すため、網3・液密壁5間距離が誇張されている。液密壁5の下側縁部分59は、ケージ1内の魚が網3・液密壁5間を泳げない要領にて囲い2に取り付けられている。
【0041】
図4に第1実施形態の変形例を示す。液密壁5が囲い2の内側に配置されている。液密壁5が下方に向かい下部環15まで延びており、従ってその液密壁5によりケージ1の円筒部の大部分が形成されている。液密壁5の下側縁部分59は、ケージ1内の魚が網3・液密壁5間を泳げない要領にて囲い2に取り付けられている。
【0042】
第2実施形態に係るケージ1は
、ケージ1の上部10にある浮体11から下方に向か
いケージ1内に延びる液密壁5を備えている。液密壁5は、
図5に示す通り、囲い2の上部20の一部分を構成している。液密壁5を布形態素材で構成してもよい。液密壁5を堅固素材で構成してもよい。液密壁5は上部50にある柵13に上首尾に取り付けられており、ひいてはその壁5の上部50が水面90より上方に張り出している。その壁5の下側縁部分59には網3が取り付けられている。この網3はその縁部分59から下方に向かい
ウォーターカラム99内に延びており、その網3により囲い2の下部29が形成されている。
【0043】
図6に第2実施形態の変形例を示す。液密壁5が下方に向かい下部環15まで延びており、従ってその液密壁5によりケージ1の円筒部の大部分が構成されている。
【0044】
第3実施形態に係るケージ1は
、ケージ1の上部10にある浮体11から下方に向か
いケージ1内に延びる液密壁5を備えている。その液密壁5を布形態素材で構成してもよい。液密壁5を堅固素材で構成してもよい。その堅固素材を、繊維ガラス、多層素材、コンクリート又は金属、例えば銅を含むものとしてもよい。その液密壁5の下側縁部分59には、
図7及び
図8に示す通り内向きの包囲縁取り6が設けられている。この縁取り6は、
図7に示す通り壁5の下側縁部分59に取り付けられている。
【0045】
液密壁5の上部50は浮環51に取り付けられている。浮環51は浮体11の内側に配置されている。浮環51は、浮体11のそれより大きな正の浮力を呈するよう寸法設定されている。これについては後に説明する。
【0046】
液密壁5には少なくとも1個の開口53が設けられている。図では複数個の開口53が示されている。その開口53に、ケージ1内に魚を留置する第1手段55を設けることで、魚がその開口53を通り逃げないようにしている。手段55を、目が細かな網又は格子を備えるものとしてもよい。開口53は、ハッチ(図示せず)その他、何らかの密障壁を開口53上で変位させることにより、調整、閉止又は開放することができる。そのハッチ又は障壁により、開口53を通り流れうる水の量が制御されることとなる。図では開口53が下側縁部分59に配置されている。これに代え、開口53を縁部分59・浮環51間に配置してもよい。開口53は、壁5の周縁に沿い様々な高さに配置することができる。
【0047】
図7及び
図8にはフローブースタ4が示されていないが、この第3実施形態のケージ1にも少なくとも1個のフローブースタ4が設けられている。
【0048】
液密壁5は囲い2の一部分を構成している。
図7に示すものでは壁5により囲い2の上部20の一部分が構成されている。その下側縁部分59には網3が取り付けられている。
【0049】
第3実施形態の変形例では、
図9に示す通り壁5が下方に向かい下部環15まで延びており、従ってその液密壁5によりケージ1の円筒部の大部分が構成されている。縁取り6は内方に向かい囲い2の下部29内に張り出している。壁5の下側縁部分59には網3が取り付けられている。
図9に示すものでは可閉止開口53が本変形例の下部環15に配置されている。
図10に示すものでは可閉止開口53が本変形例の浮環51に配置されている。
【0050】
第4実施形態(図示せず)に係るケージ1は
、ケージ1の上部10にある浮体11から下方に向か
いケージ1内に延びる液密壁5を備える。囲い2の上部20の内側には、
図3に示したものと同じ要領で液密壁5が配置される。囲い2は、
図3に示したものと同じ要領で浮体11及び/又は柵13に取り付けられる。液密壁5を布形態素材で構成してもよい。液密壁5を堅固素材で構成してもよい。液密壁5の下側縁部分59には、
図7に示したものと同じ要領で内向きの包囲縁取り6が設けられる。この縁取り6は、
図7に示したものと同じ要領で壁5の下側縁部分59に取り付けられる。液密壁5の下側縁部分59は、ケージ1内の魚が網3・液密壁5間を泳げない要領にて囲い2に取り付けられる。
【0051】
第4実施形態のある変形例(図示せず)では、液密壁5が囲い2の内側に配置される。液密壁5が下方に向かい下部環15まで延び、従ってその液密壁5によりケージ1の円筒部の大部分が構成される。液密壁5の下側縁部分59は、ケージ1内の魚が網3・液密壁5間を泳げない要領にて囲い2に取り付けられる。縁取り6は、
図9及び
図10に示す通り、内方に向かい囲い2の下部29内に張り出す。
【0052】
第4実施形態では、液密壁5が下方に向かい下部環15まで延びており、縁取り6が内方に向かいその囲いの下部29内に延びている。その縁取り6により中央開口61が形成されている。その中央開口61には、
図11に示す通り、上方に向かい張り出す包囲枠63が設けられている。この枠63により、水が流れうるチャネル64が形成されている。そのチャネル64に、ケージ1内に魚を留置する第2手段65を設けることで、魚がチャネル64を通り逃げないようにしている。その第2手段65を、目が細かな網又は格子を備えるものとしてもよい。
【0053】
上方に向かい張り出す枠63により、枠63・縁取り6間に汚物トラフ7が形成されている。本実施形態のケージ1には、汚物収集器(図示せず)と、汚物トラフ7・汚物収集器間をつなぐ汚物ホース71とが設けられている。
図14には、糞73及び食べ残し餌75がその汚物トラフ7に向かいどのように沈んでいくかが示されている。
【0054】
本発明によれば、円形流40により、周囲の流体動圧よりも低い流体動圧を有する部分が、ケージ1の中央に形成されることとなる。これにより、
図13及び
図14に示す通り、ケージ1の中央に上向き水流49が生じることとなる。
新しい水からなるこの上向き水流49は、
図13に示す通り
底部網39を通り、或いは
図14に示す通り第2手段65を通り、下部19にてケージ1の中央に進入し、ケージ1の上部10にある開口53、即ち壁5の内側面21上での流体動圧が外側面23でのそれより高いところから、その水が流出する。
【0055】
内向き張出縁取り6には、ケージ周縁沿い円形水流40を低めのエネルギ消費で以て発生させることができる、という長所がある。その水流40によりケージ1内の広範囲が占められること、即ち縁取り6がないケージ1にてフローブースタ4が用いられた場合に比べそのケージ1の容積の多くがその水流40により構成されることとなる。魚が抗って泳ぐ必要がない円形水流40であるため、並びに円形水流40により形成される上向き中央水流49によりケージ1の下部19にて周囲からケージ1に新しい水が供給されるため、ケージ1内の魚の健康状態が改善されることとなる。
【0056】
注記すべきことに、上述の何れの実施形態にも本発明が描かれているがそれに限定されるものではなく、本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)であれば、別項の特許請求の範囲の技術範囲から離隔することなく、それらに代わる実施形態を構築できる。特許請求の範囲中、カッコで括られている参照符号を、限定として解すべきではない。
【0057】
動詞「備える」及びその変化形態の使用は、その請求項にて言及されていない要素又はステップの存在を排すものではない。要素に先行する不定冠詞「a」や「an」は、そうした要素が何個か存在することを排すものではない。
【0058】
ある種の特徴が相異なる従属形式請求項に示されている事実は、それらの特徴の組合せを上首尾に使用できないことを示すものではない。