(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】動力伝達機構
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20240122BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20240122BHJP
B60K 6/405 20071001ALI20240122BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20240122BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20240122BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20240122BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20240122BHJP
B60K 17/06 20060101ALI20240122BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B60K6/40 ZHV
B60K6/36
B60K6/405
B60K6/485
B60K6/54
H02K7/18 B
B60K17/04 G
B60K17/06 L
B60K17/12
(21)【出願番号】P 2021571167
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2021000427
(87)【国際公開番号】W WO2021145275
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2020003765
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】柳生 壽美夫
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-126703(JP,A)
【文献】特開2013-023000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0231105(US,A1)
【文献】特開2010-247786(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194419(WO,A1)
【文献】特開2005-059788(JP,A)
【文献】特開2002-087080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60K 17/00 - 17/26
H02K 7/00 - 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸を有するエンジンと、
前記クランク軸に連結されたフライホイールと、
回転軸と共に回転するロータを有する電動機と、
前記回転軸及び前記フライホイールに連結されたダンパーと、
前記エンジン及び/又は前記電動機の動力が入力される被動機と、
を備え、
前記被動機は、前記エンジンの動力を車輪に伝達するトランスミッションであって、
前記ダンパーは、前記回転軸の軸心方向において前記エンジンと前記電動機との間に配置されており、
前記回転軸は前記トランスミッションの入力軸を兼ねていて、前記回転軸と前記入力軸とが1本の共通する軸から構成されており、
前記1本の共通する軸を介して前記ダンパーと前記ロータと前記トランスミッションとが接続されている動力伝達機構。
【請求項2】
前記トランスミッションを収容するミッションケースと、
前記ロータの回転位相を検出する回転検出器と、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、
前記ミッションケースに固定され且つ前記軸受の外周面を支持する支持筒と、
を備え、
前記回転検出器は、前記支持筒の内部空間に配置されている請求項1に記載の動力伝達機構。
【請求項3】
前記ロータの回転位相を検出する回転検出器を備え、
前記エンジンは、前記ダンパーに対して前記軸心方向の一方側に配置され、
前記電動機及び前記回転検出器は、前記ダンパーに対して前記軸心方向の他方側に配置されている請求項1に記載の動力伝達機構。
【請求項4】
前記回転軸を回転可能に支持する軸受を備え、
前記回転軸は、当該回転軸の外周側に前記ロータに回転トルクを伝達するトルク伝達部を有し、
前記トルク伝達部は、キー又はスプラインから構成されている請求項1又は3に記載の動力伝達機構。
【請求項5】
前記フライホイールを収容するフライホイールハウジングと、
前記フライホイールハウジングと接続されたモータケースと、
前記モータケースと接続され且つ前記トランスミッションを収容するミッションケースと、
を備え、
前記電動機は、前記モータケースの内部と前記ミッションケースの内部に亘って収容され、
前記回転軸は、前記フライホイールハウジングの内部、前記モータケースの内部、及び前記ミッションケースの内部に亘って延びている請求項1に記載の動力伝達機構。
【請求項6】
前記フライホイールの前記ダンパー側の端面には、当該端面と反対側に向けて凹んだ凹み部が設けられており、
前記ダンパーは、前記凹み部に入り込んで配置されている請求項1~5のいずれか1項に記載の動力伝達機構。
【請求項7】
前記ダンパーは、前記回転軸に取り付けられる内側部位と、前記フライホイールに取り付けられる外側部位と、を有し、
前記フライホイールには、当該フライホイールの前記端面から円柱状に凹んだ第1凹み部と、前記第1凹み部の前記端面から円柱状に凹んだ第2凹み部と、が設けられており、
前記外側部位は、前記第1凹み部に入り込んで配置されており、
前記内側部位は、前記第2凹み部に入り込んで配置されている請求項6に記載の動力伝達機構。
【請求項8】
前記ダンパーは、前記軸心方向において、前記フライホイールハウジング及び前記モータケースとオーバーラップしている請求項5に記載の動力伝達機構。
【請求項9】
前記ロータが装着された外周面と、前記回転軸に固定された内周面とを有するロータボスを備え、
前記回転検出器は、前記支持筒の内周面と前記ロータボスの外周面との間に配置されている請求項
2に記載の動力伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を含む動力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機を含む動力伝達機構として、特許文献1及び2の開示技術が知られている。特許文献1及び2の開示技術では、エンジンと被動機の間に電動機を配置している。より詳しくは、特許文献1の開示技術では、電動機をエンジン及び被動機(トランスミッション)と接続している。特許文献2の開示技術では、エンジンの動力を電動機へと伝達する動力伝達系にダンパー装置を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許公開公報「特開2008-290594号公報」
【文献】日本国特許公開公報「特開2012-71731号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の開示技術の場合、電動機のロータがエンジンのトルク変動の影響を受けやすいという問題がある。一方、特許文献2の開示技術によれば、ダンパー装置によってエンジンのトルク変動を吸収することができるが、電動機のロータの内周側にダンパー装置を配置しているため、電動機の外径が大きくなり車両等への搭載性が悪化するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたものであって、エンジンのトルク変動を吸収することができるとともに車両等への搭載性に優れた動力伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
本発明の一態様に係る動力伝達機構は、クランク軸を有するエンジンと、前記クランク軸に連結されたフライホイールと、回転軸と共に回転するロータを有する電動機と、前記回転軸及び前記フライホイールに連結されたダンパーと、前記エンジン及び/又は前記電動機の動力が入力される被動機と、を備え、前記被動機は、前記エンジンの動力を車輪に伝達するトランスミッションであって、前記ダンパーは、前記回転軸の軸心方向において前記エンジンと前記電動機との間に配置されており、前記回転軸は前記トランスミッションの入力軸を兼ねていて、前記回転軸と前記入力軸とが1本の共通する軸から構成されており、前記1本の共通する軸を介して前記ダンパーと前記ロータと前記トランスミッションとが接続されている。
【0007】
好ましくは、動力伝達機構は、前記トランスミッションを収容するミッションケースと、前記ロータの回転位相を検出する回転検出器と、前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、前記ミッションケースに固定され且つ前記軸受の外周面を支持する支持筒と、を備え、前記回転検出器は、前記支持筒の内部空間に配置されている。
好ましくは、動力伝達機構は、前記ロータの回転位相を検出する回転検出器を備え、前記エンジンは、前記ダンパーに対して前記軸心方向の一方側に配置され、前記電動機及び前記回転検出器は、前記ダンパーに対して前記軸心方向の他方側に配置されている。
【0008】
好ましくは、前記回転軸を回転可能に支持する軸受を備え、前記回転軸は、当該回転軸の外周側に前記ロータに回転トルクを伝達するトルク伝達部を有し、前記トルク伝達部は、キー又はスプラインから構成されている。
好ましくは、動力伝達機構は、前記フライホイールを収容するフライホイールハウジングと、前記フライホイールハウジングと接続されたモータケースと、前記モータケースと接続され且つ前記トランスミッションを収容するミッションケースと、を備え、前記電動機は、前記モータケースの内部と前記ミッションケースの内部に亘って収容され、前記回転軸は、前記フライホイールハウジングの内部、前記モータケースの内部、及び前記ミッションケースの内部に亘って延びている。
【0009】
好ましくは、前記フライホイールの前記ダンパー側の端面には、当該端面と反対側に向けて凹んだ凹み部が設けられており、前記ダンパーは、前記凹み部に入り込んで配置されている。
好ましくは、前記ダンパーは、前記回転軸に取り付けられる内側部位と、前記フライホイールに取り付けられる外側部位と、を有し、前記フライホイールには、当該フライホイールの前記端面から円柱状に凹んだ第1凹み部と、前記第1凹み部の前記端面から円柱状に凹んだ第2凹み部と、が設けられており、前記外側部位は、前記第1凹み部に入り込んで配置されており、前記内側部位は、前記第2凹み部に入り込んで配置されている。
【0010】
好ましくは、前記ダンパーは、前記軸心方向において、前記フライホイールハウジング及び前記モータケースとオーバーラップしている。
好ましくは、前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、前記軸受の外周面を支持する支持筒と、を備え、前記回転検出器は、前記支持筒の内部空間に配置されている。
好ましくは、前記ロータが装着された外周面と、前記回転軸に固定された内周面とを有するロータボスを備え、前記回転検出器は、前記支持筒の内周面と前記ロータボスの外周面との間に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動機のロータと共に回転する回転軸の軸心方向においてエンジンと電動機との間に配置されたタンパーを備えているため、エンジンのトルク変動を吸収することができるとともに電動機の外径を小さくすることが可能で車両等への搭載性に優れた動力伝達機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】動力伝達機構の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】動力伝達機構の主要構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る動力伝達機構の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る動力伝達機構は、例えば、農業機械(トラクタ、モア等)、建設機械、ユーティリティビークル、エンジン発電機等の産業機械に使用される。
図1は、本発明に係る動力伝達機構1の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、動力伝達機構1は、エンジン2、フライホイール3、電動機4、被動機5、ダンパー6を備えている。
【0014】
エンジン2は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等である。エンジン2はクランク軸2aを有する。クランク軸2aは、被動機5側に向けて突出している。クランク軸2aには、フライホイール3が連結されている。
フライホイール3は、略円板状であって、質量が大きい材料(例えば鋳鉄等の金属)から構成されている。フライホイール3の中心には、エンジン2のクランク軸2aが連結されている。フライホイール3は、クランク軸2aの回転に伴って回転する。フライホイール3は、フライホイールハウジング7に収容されている。
【0015】
電動機4は、フライホイール3の被動機5側に配置されている。電動機4は、ロータ41とステータ42とを有している。電動機4としては、例えば、永久磁石埋込式の三相交流同期モータが使用されるが、他の種類の同期モータであってもよい。例えば、ロータ41にコイルを巻いた積層鋼板を篏着した同期モータ等であってもよい。また、電動機4は、交流電動機であってもよいし、直流電動機であってもよい。本実施形態の場合、電動機4は、発電機としても機能するモータ・ジェネレータである。
【0016】
ロータ41は、永久磁石を埋設した鉄心(積層鋼板等)を有している。ロータ41は、円筒状であって、内周側がロータボス13を介して回転軸8に固定されている。
図2及び
図3に示すように、ロータボス13は、外周面13aと内周面13bとを有する筒状体である。
ロータボス13の外周面13aには、ロータ41が装着されている。ロータボス13の内周面13bは、回転軸8に固定されている。これにより、ロータ41は、回転軸8と共に、回転軸8の軸心C1回りに回転する。
【0017】
図2、
図3に示すように、ロータボス13の被動機5側の端部には、フランジ13cが形成されている。フランジ13cの外径は、ロータ41の内径よりも大きい。ロータボス13の被動機5側の端面には、一端側に向けて凹んだ凹部13dが形成されている。
図2に示すように、ロータ41のエンジン2側の端面には第1プレート18が当接している。ロータ41の被動機5側の端面には第2プレート19が当接している。第1プレート18及び第2プレート19は、それぞれ円環状であって、ロータボス13の外周面に篏合されている。さらに、ロータボス13の外周面には、円環状のカラー20が篏合されている。カラー20は、第1プレート18よりもエンジン2側に配置されている。第1プレート18は、カラー20とロータ41との間に配置されている。第2プレート19は、フランジ13cとロータ41との間に配置されている。
【0018】
回転軸8は、軸受9によって回転可能に支持されている。軸受9は、回転軸8の軸心C1が延びる方向(以下、「軸心方向C1」という)において、ロータ41と並んで配置されている。軸受9は、ロータ41よりも被動機5側に配置されている。また、軸受9は、ロータボス13よりも被動機5側に配置されている。
以下の説明において、軸心方向C1のエンジン2側(
図1の左側)を「一方側」、軸心方向C1の被動機5側(
図1の右側)を「他方側」という。また、軸心方向C1と直交する方向であって且つ軸心C1から離れる方向を「径外方向」、軸心方向C1と直交する方向であって且つ軸心C1に近づく方向を「径内方向」という。
【0019】
回転軸8は、一端部がエンジン2側(一方側)に配置され、他端部が被動機5側(他方側)に配置されている。回転軸8の一端側は、軸心方向C1において、フライホイール3とオーバーラップしている。回転軸8は、当該回転軸8の外周側にロータ41に回転トルクを伝達するトルク伝達部10を有している。本実施形態の場合、トルク伝達部10は、回転軸8の外周面に篏合されたキー14から構成されている。キー14は、回転軸8の外周面に形成された凹部8a(
図3参照)に篏合されている。キー14は、回転軸8の周方向の異なる位置に複数箇所(本実施形態の場合、2箇所)設けられている。
図3に示すように、ロータボス13の内周面には、キー14と係合可能な溝(キー溝)13eが形成されている。尚、トルク伝達部10は、キーには限定されず、例えばスプラインから構成されていてもよい。この場合、ロータボス13の内周面には、スプラインが挿入される溝(スプライン溝)が形成される。
【0020】
軸受9は、第1軸受91と第2軸受92とを含む。第1軸受91と第2軸受92とは、軸心方向C1に間隔をあけて配置されている。軸受9(第1軸受91、第2軸受92)は、内輪が回転軸8の外周面に装着され、外輪が支持筒21に支持されている。
支持筒21は、他方側(被動機5側)が後述するミッションケース11に固定されている。支持筒21の一方側(エンジン2側)の端部は、後述するモータケース16の内部空間に位置している。また、支持筒21の一方側の端部は、ロータボス13の凹部13d内に位置している。支持筒21は、モータケース16の内部とミッションケース11の内部に亘って配置されている。支持筒21は、モータケース16の内部において軸受9を支持している。
【0021】
動力伝達機構1は、上記したような軸受9及びトルク伝達部10を備えることによって、回転軸8の回転を安定させることができるとともに、回転軸8からロータ41へと高い回転トルクを確実に伝達することができる。
ステータ42は、例えば積層鋼板製であってコイルが巻かれている。詳しくは、ステータ42は、環状のヨークの内周側にティースが突出した構造を有し、当該ティースにコイルが巻かれている。ステータ42は、ロータ41の外周側に配置されており、ロータ41と対向している。
【0022】
ステータ42の周囲には、電動機4を冷却する冷却筒15が配置されている。本実施形態の場合、冷却筒15はウォータジャケット15である。ウォータジャケット15は、円筒状であって、ステータ42の外周側に装着されている。ウォータジャケット15は、内部に冷却液が通る通路(図示略)を有している。
電動機4(ロータ41、ステータ42)及びウォータジャケット15は、モータケース16に収容されている。モータケース16は、ウォータジャケット15の外周側に装着されている。モータケース16は、フライホイールハウジング7と接続されている。モータケース16の内部空間とフライホイールハウジング7の内部空間とは連通している。
【0023】
図2に示すように、モータケース16の一方側の端面には、円環状のカバー部材17がボルト等により固定されている。モータケース16の他方側には、当該モータケース16の内周面から径内方向に向けて突出する突出部16aが設けられている。カバー部材17と突出部16aとの間には、ウォータジャケット15が挟まれて支持されている。
被動機5は、エンジン2及び/又は電動機4の動力が入力され、当該動力を受けて駆動する。本実施形態の場合、被動機5は、エンジン2の動力を車輪に伝達するトランスミッションである。より具体的には、被動機5は、静油圧式トランスミッションの油圧ポンプである。当該油圧ポンプは、回転軸8の他方側の端部に連結される。以下の説明において、被動機5をトランスミッション5と言い換えて説明する。
【0024】
図1に示すように、トランスミッション5は、ミッションケース11に収容されている。ミッションケース11は、モータケース16と接続されている。ミッションケース11は、モータケース16を介してフライホイールハウジング7と接続されている。これにより、ミッションケース11の内部空間とモータケース16の内部空間とフライホイールハウジング7の内部空間とは連通している。
【0025】
図1及び
図2に示すように、電動機4は、モータケース16の内部とミッションケース11の内部に亘って収容されている。回転軸8は、フライホイールハウジング7の内部、ミッションケース11の内部、ミッションケース11の内部に亘って延びている。回転軸8は、トランスミッション5の入力軸を兼ねている。つまり、ロータ41の回転軸とトランスミッション5の入力軸とが1本の共通する軸から構成されている。本実施形態の場合、トランスミッション5の入力軸は、静油圧式トランスミッションの油圧ポンプに接続される軸である。
【0026】
ダンパー6は、回転軸8及びフライホイール3に連結されている。ダンパー6は、全部又は一部がゴムや樹脂等の弾性又は可撓性を有する素材から形成されている。
図2及び
図3に示すように、ダンパー6は、内側部位61と外側部位62とを有している。
内側部位61は、回転軸8に取り付けられる。詳しくは、内側部位61は、円筒状であって、内周面が回転軸8の外周面に篏合される。
【0027】
外側部位62は、フライホイール3に取り付けられる。外側部位62は、内側部位61よりも厚みが薄い(軸心方向C1の長さが短い)板状の部位である。外側部位62は、内側部位61の外周面から径外方向に向けて延びている。
図3に示すように、外側部位62は、第1部位621、第2部位622、第3部位623を含む。第1部位621、第2部位622、第3部位623は、内側部位61の外周面の周方向に等間隔をあけて配置されている。外側部位62(第1部位621、第2部位622、第3部位623)には貫通孔62aが設けられている。外側部位62の貫通孔62aにはボルト(図示略)が挿通され、当該ボルトはフライホイール3の他方側の端面に設けられたねじ孔3aに螺合される。これにより、ダンパー6がフライホイール3の他方側に取り付けられる。
【0028】
図2及び
図3に示すように、フライホイール3の他方側の端面には、一方側に向けて凹んだ凹み部3bが設けられている。凹み部3bは、第1凹み部3b1と第2凹み部3b2と第3凹み部3b3とを含む。第1凹み部3b1は、フライホイール3の他方側の端面から円柱状に凹んでいる。第2凹み部3b2は、第1凹み部3b1の他方側の端面から円柱状に凹んでいる。第3凹み部3b3は、第2凹み部3b2の他方側の端面から円柱状に凹んでいる。第1凹み部3b1、第2凹み部3b2、第3凹み部3b3は、同心円状に配置されている。第2凹み部3b2の直径は、第1凹み部3b1の直径よりも小さい。第3凹み部3b3の直径は、第2凹み部3b2の直径よりも小さい。第1凹み部3b1には、ねじ孔3aが形成されている。
【0029】
図2に示すように、ダンパー6は、フライホイール3の凹み部3bに入り込んで配置されている。具体的には、ダンパー6の外側部位62は、第1凹み部3b1に入り込んで配置されている。ダンパー6の内側部位61は、第2凹み部3b2に入り込んで配置されている。これにより、フライホイール3とダンパー6の組み立て体の軸方向C1の長さを小さくすることができる。
【0030】
図2に示すように、ダンパー6は、フライホイールハウジング7とモータケース16との境界部に跨って配置されている。つまり、ダンパー6は、フライホイールハウジング7の内部とモータケース16の内部に亘って収容されている。さらに言い換えれば、ダンパー6は、軸心方向C1において、フライホイールハウジング7及びモータケース16とオーバーラップしている。
【0031】
上述したように、ダンパー6の内側部位61が回転軸8に取り付けられ、外側部位62がフライホイール3に取り付けられることにより、フライホイール3と回転軸8とがダンパー6を介して連結される。ここで、フライホイール3と回転軸8とは、直接的には連結されずにダンパー6を介して連結される。そのため、エンジン2の回転動力は、フライホイール3からダンパー6を介して回転軸8に伝達される。これにより、エンジン2のトルク変動は、フライホイール3を介してダンパー6に伝達され、ダンパー6により吸収されるため、回転軸8には伝達されない。
【0032】
エンジン2は、ダンパー6に対して回転軸8の軸心方向C1の一方側(エンジン2側)に配置されている。電動機4は、ダンパー6に対して回転軸8の軸心方向C1の他方側(被動機5側)に配置されている。つまり、エンジン2、ダンパー6、電動機4は、この順番で回転軸8の軸心方向C1に並んで配置されている。言い換えれば、回転軸8の軸心方向C1において、エンジン2と電動機4との間にダンパー6が配置されている。ダンパー6は、電動機4のロータ41と軸心方向C1に並んで配置されている。これにより、ダンパー6をロータ41の内周側に配置した場合に比べて、ロータ41の内径を小さくすることができる。
【0033】
上記した動力伝達機構1によれば、エンジン2を駆動すると、エンジン2の回転動力がクランク軸2aを介してフライホイール3に伝達され、フライホイール3を回転させる。フライホイール3の回転動力は、ダンパー6を介して回転軸8に伝達され、回転軸8を回転させる。回転軸8の回転によって、被動機5が駆動される。また、回転軸8の回転によって、ロータ41が回転し、電動機4が発電を行う。この動力伝達において、エンジン2のトルク変動は、ダンパー6により吸収されるため、被動機5に伝達されない。
【0034】
また、エンジン2の駆動に加えて電動機4を駆動すると、ロータ41が回転する。ロータ41の回転に伴って回転軸8が回転し、被動機5が駆動される。これにより、エンジン2の回転動力が電動機4の回転動力によりアシストされる。
図1及び
図2に示すように、動力伝達機構1は、回転検出器12を備えている。
回転検出器12は、ロータ41の回転位相を検出する。回転検出器12としては、例えばレゾルバやエンコーダ等を使用することができるが、耐環境性に優れており且つ角度検出精度が良好なレゾルバが好適に使用される。回転検出器12は、支持筒21の内部空間に配置されている。詳しくは、回転検出器12は、支持筒21の内周面とロータボス13の外周面との間に配置されている。
【0035】
図1に示すように、回転検出器12は、コントローラ22に接続されている。コントローラ22は、電動機4をベクトル制御するインバータを備えている。コントローラ22は、エンジン2、電動機4、被動機5等にも接続されている。コントローラ22は、CPUや記憶部等を備えている。コントローラ22は、記憶部に記憶された制御プログラム等に基づいて、エンジン2、電動機4、被動機5等の駆動、停止、回転数等を制御する。
【0036】
回転検出器12は、電動機4と同様に、ダンパー6に対して回転軸8の軸心方向C1の他方側(被動機5側)に配置されている。これにより、エンジン2のトルク変動がダンパー6により吸収された後のロータ41の回転の位相を回転検出器12で検出することができる。そのため、回転検出器12による検出値の変動が抑制され、検出値に基づいた電動機4の制御を高精度で行うことができ、電動機4の効率が向上する。
【0037】
上述した電動機4の動力伝達機構1によれば、以下の効果を奏する。
電動機4の動力伝達機構1は、クランク軸2aを有するエンジン2と、クランク軸2aに連結されたフライホイール3と、回転軸8と共に回転するロータ41を有する電動機4と、回転軸8及びフライホイール3に連結されたダンパー6と、エンジン2及び/又は電動機4の動力が入力される被動機5と、を備え、ダンパー6は、回転軸8の軸心方向C1においてエンジン2と電動機4との間に配置されている。
【0038】
この構成によれば、ダンパー6が、ロータ41と共に回転する回転軸8の軸心方向C1においてエンジン2と電動機4との間に配置され、且つ回転軸8及びフライホイール3に連結されているため、エンジン2のトルク変動を吸収することができるとともに電動機4の外径を小さくすることが可能である。また、ダンパー6がフライホイール3に連結されているため、パワートレインの長さ(軸心方向C1の長さ)を短くすることができる。
【0039】
また、被動機5は、エンジン2の動力を車輪に伝達するトランスミッション5であって、回転軸8はトランスミッション5の入力軸を兼ねている。
この構成によれば、ロータ41の回転軸とトランスミッション5の入力軸とを別々に設ける必要がないため、部品点数を削減することができるとともに、動力伝達機構1を小型化することができる。
【0040】
また、電動機4の動力伝達機構1は、ロータ41の回転位相を検出する回転検出器12を備え、エンジン2は、ダンパー6に対して軸心方向C1の一方側に配置され、電動機4及び回転検出器12は、ダンパー6に対して軸心方向C1の他方側に配置されている。
この構成によれば、エンジン2のトルク変動がダンパー6により吸収され、トルク変動が吸収された後の電動機4のロータ41の回転の位相を回転検出器12で検出することができる。そのため、回転検出器12による検出値の変動が抑制され、検出値に基づいた電動機4の制御を高精度で行うことができ、電動機4の効率が向上する。
【0041】
また、電動機4の動力伝達機構1は、回転軸8を回転可能に支持する軸受9を備え、回転軸8は、当該回転軸8の外周側にロータ41に回転トルクを伝達するトルク伝達部10を有し、トルク伝達部10は、キー又はスプラインから構成されている。
この構成によれば、回転軸8を安定して回転させることができるとともに、回転軸8からロータ41へと高い回転トルクを確実に伝達することができる。
【0042】
また、フライホイール3を収容するフライホイールハウジング7と、フライホイールハウジング7と接続され且つトランスミッション5を収容するミッションケース11と、を備え、電動機4は、ミッションケース11に収容され、回転軸8は、フライホイールハウジング7の内部からミッションケース11の内部に亘って延びている。
この構成によれば、フライホイール3からトランスミッション5に亘るパワートレインの長さを短くすることができる。
【0043】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1 動力伝達機構
2 エンジン
2a クランク軸
3 フライホイール
3b 凹み部
3b1 第1凹み部
3b2 第2凹み部
4 電動機
41 ロータ
5 被動機(トランスミッション)
6 ダンパー
61 内側部位
62 外側部位
8 回転軸
9 軸受
10 トルク伝達部
11 ミッションケース
12 回転検出器
13 ロータボス
21 支持筒