(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】エマルジョン組成物、ポリスチレンナノファイバー、ポリスチレンナノファイバー製品及び製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
C08L 25/06 20060101AFI20240122BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240122BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240122BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240122BHJP
C02F 1/40 20230101ALI20240122BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240122BHJP
D01F 6/22 20060101ALI20240122BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20240122BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240122BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20240122BHJP
【FI】
C08L25/06
B01J20/26 J
B01J20/26 A
B01J20/28 Z
B01J20/30
C02F1/40 E
C02F1/28 N
D01F6/22
C08L25/18
B82Y40/00
B82Y30/00
(21)【出願番号】P 2021575313
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2019091895
(87)【国際公開番号】W WO2020252694
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】521551515
【氏名又は名称】江蘇国望高科繊維有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 涛
(72)【発明者】
【氏名】桂 豪冠
(72)【発明者】
【氏名】高 国洪
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/061629(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/114826(WO,A1)
【文献】国際公開第00/067899(WO,A1)
【文献】特開平02-053909(JP,A)
【文献】AUBERT J. H. et al.,Isotactic Polystyrene Phase Diagrams and Physical Gelation,Macromolecules,1988年,vo.21,pp.3468-3473
【文献】GUI, H. et al.,Nanofibrous, Emulsion-Templated Syndiotactic Polystyrenes with Superhydrophobicity for Oil Spill Cleanup,ACS Appl. Mater. Interfaces,2019年,vol.11,pp.36063-36072
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
B01J 20/26
B01J 20/28
B01J 20/30
C02F 1/40
C02F 1/28
D01F 6/22
B82Y 40/00
B82Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散相及び連続相を含む、ポリスチレンナノファイバーを製造するエマルジョン組成物であって、前記分散相は、可溶性塩及び第1溶媒を含み、前記連続相は、ポリスチレン、第2溶媒及びスルホン化ポリスチレンを含み、前記ポリスチレンは、シンジオタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン又は両者の組み合わせであり、
前記第1溶媒は、水、グリセリン、プロピレングリコール及びエチレングリコールから選択される1つ又は複数の組み合わせであり、
前記第2溶媒は1,2,4-トリクロロベンゼンであり、
前記可溶性塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム及び硝酸カルシウムから選択される1つ又は複数の組み合わせである
ことを特徴とするポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物。
【請求項2】
前記エマルジョン組成物は、前記分散相と前記連続相とが混合して構成され、前記分散相の投入体積は前記連続相の投入体積以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物。
【請求項3】
前記エマルジョン組成物は前記分散相と前記連続相とが混合して構成され、前記分散相の投入体積は、前記連続相の体積の1.5倍以上であることを特徴とする請求項2に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物。
【請求項4】
前記可溶性塩と前記第1溶媒との投入質量比は0.004~0.080:1であり、好ましくは0.006~0.070:1であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物。
【請求項5】
前記スルホン化ポリスチレンのスルホン化度は0.5~3.5mol%であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物。
【請求項6】
前記スルホン化ポリスチレン、前記ポリスチレン及び前記第2溶媒の投入質量比は、0.005~0.025:0.03~0.08:1であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物。
【請求項7】
質量百分率で、前記エマルジョン組成物において、可溶性塩が0.1~6%、第1溶媒が60~85%、ポリスチレンが0.5~10%、第2溶媒が14~30%、スルホン化ポリスチレンが0.05~3%を占めることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物。
【請求項8】
前記ポリスチレンの平均分子量は、1万~200万であり、好ましくは5万~50万であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物。
【請求項9】
前記エマルジョン組成物は、前記分散相と前記連続相とが混合して構成され、前記分散相の投入体積は、前記連続相の体積の1.5倍以上であり、前記可溶性塩と前記第1溶媒との投入質量比は、0.004~0.080:1であり、前記スルホン化ポリスチレンのスルホン化度は、0.5~3.5mol%であり、前記スルホン化ポリスチレン、前記ポリスチレン及び前記第2溶媒の投入質量比は、0.005~0.025:0.03~0.08:1であり、質量百分率で、前記エマルジョン組成物において、可溶性塩が0.1~6%、第1溶媒が60~85%、ポリスチレンが0.5~10%、第2溶媒が14~30%、スルホン化ポリスチレンが0.05~3%を占め、前記ポリスチレンの平均分子量は1~200万であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物。
【請求項10】
加熱及び撹拌の条件で、前記分散相を前記連続相に滴下し、前記エマルジョン組成物を製造するステップを含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物で製造されたポリスチレンナノファイバー又はポリスチレンナノファイバー製品。
【請求項12】
前記製品は複数レベル及び/又は互いに連通する細孔構造を有することを特徴とする請求項11に記載のポリスチレンナノファイバー製品。
【請求項13】
前記複数レベルの細孔構造は第1細孔、第2細孔及び第3細孔を含み、前記第2細孔の細孔径は、前記第1細孔の細孔径より大きく、かつ前記第3細孔の細孔径より小さく、
前記第1細孔の細孔径は0.1~5nmであり、好ましくは0.2~4nmであり、より好ましくは0.3~2nmであり、
前記第2細孔の細孔径は6~800nmであり、好ましくは10~600nmであり、より好ましくは15~300nmであり、
前記第3細孔の細孔径は
800nmより大きく、且つ200μm以
下であることを特徴とする請求項12に記載のポリスチレンナノファイバー製品。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物を金型に加えて結晶化を行うことを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載のポリスチレンナノファイバー製品の製造方法。
【請求項15】
前記製造方法は、さらに
加熱及び撹拌の条件で、前記分散相を前記連続相に滴下し、前記ポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物を製造することと、
そして、取得された前記エマルジョン組成物を設定時間内に金型に入れて、静置して結晶化し、分離、洗浄、凍結乾燥させ、前記ポリスチレンナノファイバー製品を取得することとを含むことを特徴とする請求項14に記載のポリスチレンナノファイバー製品の製造方法。
【請求項16】
前記設定時間は、0より大きく10分以下であり、好ましくは0より大きく5分以下であることを特徴とする請求項15に記載のポリスチレンナノファイバー製品の製造方法。
【請求項17】
前記結晶化時間は、1時間より大きく、好ましくは3時間より大きいことを特徴とする請求項14又は15に記載のポリスチレンナノファイバー製品の製造方法。
【請求項18】
前記結晶化温度は5~90℃であり、好ましくは10~80℃であり、より好ましくは15~45℃であることを特徴とする請求項14又は15に記載のポリスチレンナノファイバー製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノファイバーの技術分野に属し、具体的には、ポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物、ポリスチレンナノファイバー、ポリスチレンナノファイバー製品及び製造方法並びに応用に関し、その製造されたポリスチレンナノファイバーは、細孔構造を有し、製造されたポリスチレンナノファイバー製品は安定して制御可能な三次元構造、複数レベル及び/又は互いに連通する細孔構造を有する。
【背景技術】
【0002】
ナノファイバーは比表面積が大きく、直径が制御可能であるなどの利点を有することにより、吸収、吸着、油水分離、特殊な濡れ性の表面を有する構造などの点で重要な用途を有する。特に、そのうちのポリスチレンナノファイバーは実際の応用においてますます広く使用されるようになる。現在のポリスチレンナノファイバーの製造方法は、主に電界紡糸法であり、例えば中国発明特許CN107675360Aであり、ポリスチレンナノファイバーの製造方法を開示し、ポリスチレンをジメチルホルムアミドとパラキシリレンで形成された混合溶媒に溶解し、第1溶液を取得するステップと、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンのうちの少なくとも1つを脱イオン水に溶解し、第2溶液を取得するステップと、前記第1溶液と第2溶液をそれぞれダブルノズルを有する電界紡糸用注射器に吸入し、前記第1溶液の押出速度0.3~0.6mL/min、前記第2溶液の押出速度1.5~2.5mL/minで、前記第1溶液、第2溶液を紡糸し、ミクロンスケールのファイバーとナノスケールのポリスチレンファイバーが交互に構成されたファイバー膜を取得するステップと、前記ファイバー膜を脱イオン水に入れてすすぎ処理を行って、前記ミクロンスケールのファイバーを除去するステップと、前記すすぎ処理を行ったファイバー膜を凍結乾燥させるステップと、を含む。
【0003】
しかしながら、このような電界紡糸によるナノファイバーの製造方法は、以下のいくつかの欠陥が存在する:1)ポリスチレンナノファイバーの製造効率が低い:電界紡糸法の特性に基づいて、常に少量のナノファイバーを製造するには、長時間を要しなければならない。2)外部形態を制御しにくい:電界紡糸によって取得されたナノファイバーで形成された製品は常に二次元形態のファイバー膜で呈し、三次元構造を取得しにくく、同時に無機溶剤及び/又は有機溶剤で容易に分解又は分散し、安定して制御可能な三次元構造を更に形成しにくい。3)製造されたナノファイバー同士の間に常に単一の気泡構造のみを有し、これは物質とエネルギーの交換を大幅に制約し、ナノファイバーの効果に影響を与える。上記欠陥の存在により、ポリスチレンナノファイバーの大規模な応用を大幅に制限する。
【発明の概要】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的問題は、従来技術の欠陥を解消し、ポリスチレンナノファイバーを製造するための新型のエマルジョン組成物を提供することであり、このエマルジョン組成物を採用して製造されたポリスチレンナノファイバーは、細孔構造を有し、且つ製造されたポリスチレンナノファイバー製品は、安定して制御可能な三次元構造、複数レベル及び/又は互いに連通する細孔構造を有するとともに、製造効率が高い。
【0005】
本発明は、同時に上記ポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物の製造方法を提供する。
【0006】
本発明は、同時にポリスチレンナノファイバー又はポリスチレンナノファイバー製品を更に提供する。
【0007】
本発明は、同時に上記ポリスチレンナノファイバー製品の製造方法を更に提供し、その製造効率が高く、且つ製造された三次元形態の製品は、無機溶剤及び/又は有機溶剤で安定して存在することができるとともに、三次元形態が制御可能であり、同時に複数レベル及び/又は互いに連通する細孔構造を有する。
【0008】
本発明は、同時に上記ポリスチレンナノファイバー製品又はポリスチレンナノファイバーの吸収、吸着、油水分離、濡れ性の表面を有する構造の点の応用を提供する。
【0009】
以上の技術的問題を解決するために、本発明の採用する技術的解決手段は以下のとおりである。
【0010】
ポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物であって、前記エマルジョン組成物は、分散相及び連続相を含み、前記分散相は、可溶性塩及び第1溶媒を含み、前記連続相は、ポリスチレン、第2溶媒及びスルホン化ポリスチレンを含み、前記ポリスチレンは、シンジオタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン又は両者の組み合わせである。
【0011】
本発明のいくつかの好ましい且つ具体的な態様によれば、前記エマルジョン組成物は、前記分散相と前記連続相とが混合して構成され、前記分散相の投入体積は前記連続相の投入体積以上である。
【0012】
本発明のいくつかのさらなる好ましい態様によれば、前記エマルジョン組成物は前記分散相と前記連続相とが混合して構成され、前記分散相の投入体積は、前記連続相の体積の1.5倍以上である。
【0013】
本発明のいくつかの好ましい態様によれば、前記エマルジョン組成物は、前記分散相を前記連続相に滴下して製造される。
【0014】
本発明のいくつかの好ましい態様によれば、前記エマルジョン組成物は、前記分散相と前記連続相とが混合して構成され、前記分散相と前記連続相との混合温度は100~140℃であり、好ましくは105~130℃である。
【0015】
本発明によれば、前記第1溶剤は前記第2溶剤で不溶、わずか可溶又は難溶である。
【0016】
本発明のいくつかの好ましい態様によれば、前記第1溶媒は極性溶媒であり、前記第2溶媒は非極性溶媒である。
【0017】
本発明のいくつかの好ましい且つ具体的な態様によれば、前記第1溶媒は水、グリセリン、プロピレングリコール及びエチレングリコールから選択される1つ又は複数の組み合わせであり、前記第2溶媒は1,2,4-トリクロロベンゼンである。
【0018】
本発明のいくつかの具体的且つ好ましい態様によれば、前記可溶性塩と前記第1溶媒との投入質量比は0.004~0.080:1であり、好ましくは0.006~0.070:1である。
【0019】
本発明のいくつかの具体的な態様によれば、前記可溶性塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム及び硝酸カルシウムから選択される1つ又は複数の組み合わせである。
【0020】
本発明のいくつかの好ましい態様によれば、前記スルホン化ポリスチレンのスルホン化度は0.5~3.5であり、より好ましくは1~2.5mol%であり、他の乳化剤に比べると、スルホン化ポリスチレンは、本発明の体系においてエマルジョン組成物が長時間の乳化安定状態を保持することができるとともに、上記特定のスルホン化度は、各成分が混合された後に優れた乳化状態をより確実に保持することができる。
【0021】
本発明のいくつかの具体的且つ好ましい態様によれば、前記スルホン化ポリスチレン、前記ポリスチレン及び前記第2溶媒の投入質量比は、0.005~0.025:0.03~0.08:1である。
【0022】
本発明のいくつかの好ましい態様によれば、質量百分率で、前記エマルジョン組成物において、可溶性塩が0.1~6%、第1溶媒が60~85%、ポリスチレンが0.5~10%、第2溶媒が14~30%、スルホン化ポリスチレンが0.05~3%を占める。
【0023】
本発明によれば、前記ポリスチレンの平均分子量は、1~200万であり、好ましくは5~50万である。
【0024】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記エマルジョン組成物は、分散相及び連続相を含み、前記分散相は、可溶性塩及び第1溶剤を含み、前記連続相は、ポリスチレン、第2溶剤及びスルホン化ポリスチレンを含み、前記ポリスチレンは、シンジオタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン又は両者の組み合わせであり、温度100~140℃、及び撹拌の条件で、前記分散相を前記連続相に滴下して前記エマルジョン組成物を製造し、前記分散相の投入体積は、前記連続相の体積の1.5倍以上であり、前記第1溶剤は、水、グリセリン、プロピレングリコール及びエチレングリコールから選択される1つ又は複数の組み合わせであり、前記第2溶剤は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、前記可溶性塩と前記第1溶剤との投入質量比は、0.004~0.080:1であり、前記可溶性塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム及び硝酸カルシウムから選択される1つ又は複数の組み合わせであり、前記スルホン化ポリスチレンのスルホン化度は、0.5~3.5mol%であり、前記スルホン化ポリスチレン、前記ポリスチレンと前記第2溶剤との投入質量比は、0.005~0.025:0.03~0.08:1であり、質量百分率で、前記エマルジョン組成物において、可溶性塩が0.1~6%、第1溶剤が60~85%、ポリスチレンが0.5~10%、第2溶剤が14~30%、スルホン化ポリスチレンが0.05~3%を占め、前記ポリスチレンの平均分子量は1~200万である。
【0025】
本発明の提供する別の技術的解決手段:上記に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物の製造方法であって、加熱及び撹拌の条件で、前記分散相を前記連続相に滴下し、前記エマルジョン組成物を製造するステップを含む。
【0026】
本発明の提供する別の技術的解決手段:上記に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物で製造されたポリスチレンナノファイバー又はポリスチレンナノファイバー製品である。
【0027】
本発明によれば、前記製品は複数レベル及び/又は互いに連通する細孔構造を有する。
【0028】
本発明のいくつかの好ましい且つ具体的な態様によれば、前記複数レベルの細孔構造は第1細孔、第2細孔及び第3細孔を含み、
前記第1細孔の細孔径は0.1~5nmであり、好ましくは0.2~4nmであり、より好ましくは0.3~2nmであり、
前記第2細孔の細孔径は6~800nmであり、好ましくは10~600nmであり、より好ましくは15~300nmであり、
前記第3細孔の細孔径は0.1~200μmであり、好ましくは0.5~100μmであり、より好ましくは0.5~50μmであり、さらに好ましくは0.5~20μmである。
【0029】
本発明のいくつかの具体的な態様によれば、前記第2細孔の細孔径は前記第1細孔の細孔径より大きく、且つ前記第3細孔の細孔径より小さい。
【0030】
本発明の提供する別の技術的解決手段:上記に記載のポリスチレンナノファイバー製品の製造方法であって、上記に記載のポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物を金型に入れて結晶化を行うステップを含む。
【0031】
さらに、前記製造方法は、更に、加熱及び撹拌の条件で、前記分散相を前記連続相に滴下し、前記ポリスチレンナノファイバーを製造するためのエマルジョン組成物を製造することと、
【0032】
そして、取得された前記エマルジョン組成物を設定時間内に金型に入れて、静置して結晶化し、分離、洗浄、凍結乾燥させ、前記ポリスチレンナノファイバー製品を取得することとを含む。
【0033】
本発明のいくつかの好ましい且つ具体的な態様によれば、前記設定時間は、0より大きく10分以下であり、好ましくは0より大きく5分以下である。
【0034】
本発明のいくつかの好ましい且つ具体的な態様によれば、前記結晶化時間は、1時間より大きく、好ましくは3時間より大きく、より好ましくは5時間より大きい。
【0035】
本発明のいくつかの好ましい且つ具体的な態様によれば、前記結晶化温度は5~90℃であり、好ましくは10~80℃であり、より好ましくは15~45℃である。
【0036】
本発明の提供する別の技術的解決手段:上記に記載のポリスチレンナノファイバー製品又はポリスチレンナノファイバーの吸収、吸着、油水分離、濡れ性の表面を有する構造の点の応用である。
【0037】
以上の技術的解決手段の採用のため、本発明は従来技術に比べて、下記の利点を有する。
【0038】
本発明はエマルジョン組成物を新たに提案し、この特定のエマルジョン組成物を用いてポリスチレンナノファイバー又はポリスチレンナノファイバー製品を製造するのは、製造効率が高い(必要に応じて必要な量を任意に添加することができ、次に本発明に従って製造し、電界紡糸法に比べると、電界紡糸の原理及び電界紡糸の原理に基づいて設計された電界紡糸装置に制限され、一定時間内に少量のナノファイバーのみを製造することができる)だけでなく、製造されたポリスチレンナノファイバーに細孔構造を有し、同時に金型を追加することにより本発明の特定のエマルジョン組成物が結晶化の過程において、溶媒に制御可能で安定して分散/分解しにくい三次元構造のポリスチレンナノファイバー製品を直接形成することができ、さらに製造されたポリスチレンナノファイバー製品が、ポリスチレンナノファイバー自体が有する細孔構造、ファイバー間に形成された細孔構造、及び溶媒での結晶化過程において応力が不均一であるためファイバーフォレストとファイバーフォレストとの間に形成された大細孔構造を同時に兼ね備えることができ、さらに複数レベルの細孔構造を有する製品を取得し、前記細孔構造の間は互いに連通することもでき、物質とエネルギーの交換を顕著に向上させ、かつ比表面積が十分に大きく、それによって本発明の提供するポリスチレンナノファイバー及びポリスチレンナノファイバー製品は、吸収、吸着、油水分離、特殊な濡れ性の表面を有する構造などの点で非常に優れた利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施例1で製造されたポリスチレンナノファイバー製品の四つの例示的な三次元構造である。
【
図2】本発明の実施例1で製造されたポリスチレンナノファイバー製品の走査型電子顕微鏡図であり、左から右へそれぞれ異なる倍率に対応する。
【
図3】本発明の実施例1~3で製造されたポリスチレンナノファイバー製品の窒素ガスに対する吸着性能図である。
【
図4】本発明の実施例1で製造されたポリスチレンナノファイバー製品の密度検出及び疎水性検出図である。
【
図5】本発明の実施例1で製造されたポリスチレンナノファイバー製品、3A分子篩及び活性炭の16ppmのジクロロエタンを含有する汚染空気に対する浄化性能図である。
【
図6】本発明の実施例1~3で製造されたポリスチレンナノファイバー製品の有機溶剤に対する吸収性能図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に具体的な実施例に合わせて上記解決的手段をさらに説明する。これらの実施例は本発明の基本原理、主要な特徴及び利点を説明するためのもので、本発明は以下の実施例の範囲に制限されるものではないことが理解されるべきである。実施例に採用された実施条件は、具体的な要求に応じてさらに調整されることができ、明示されていない実施条件は、一般的には、通常実験における条件である。下記において、特別な説明がなければ、全ての原料は基本的に市販され、又は当該分野における従来方法で製造されたものである。
【0041】
下記において、スルホン化ポリスチレンは、そのスルホン化度が1.8mol%であり、シンジオタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレンはそれぞれ日本出光興産株式会社から購入され、分子量が約30万である。
【0042】
実施例1~3
【0043】
本実施例1~3はポリスチレンナノファイバー製品の製造方法及びそれによって製造されたポリスチレンナノファイバー製品を提供し、具体的には以下のステップを含む。
【0044】
(a)120±5℃、撹拌(回転数:400rpm)の条件で、分散相を連続相に滴下し、均一なエマルジョン組成物を製造し、前記分散相は、塩化ナトリウムをグリセリンに分散して混合することにより製造され、前記連続相は、スルホン化ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンを1,2,4-トリクロロベンゼンに加えて混合することにより製造される。
【0045】
(b)ステップ(a)で製造されたエマルジョン組成物を金型に直接加え、室温で10時間静置して結晶化し、結晶物を取り出し、結晶物を順次にエタノール及び水で溶媒置換を3回行い、凍結乾燥させ、前記ポリスチレンナノファイバー製品を製造する。
【0046】
上記実施例が採用する原料及びその使用量は下記の表1を参照する。
【0047】
【0048】
実施例1~3で取得されたポリスチレンナノファイバー製品はサンプル1、サンプル2及びサンプル3にそれぞれ対応する。
【0049】
図1は実施例1で製造されたポリスチレンナノファイバー製品の四つの例示的な三次元形態構造であり、本発明の方法で製造されたポリスチレンナノファイバー製品は所要の安定して制御可能なマクロ三次元構造を形成することができることを説明する。
【0050】
図2は実施例1で製造されたポリスチレンナノファイバー製品の走査型電子顕微鏡図であり、左から右へ異なる倍率にそれぞれ対応し、倍率が低い最も左側の図から、ポリスチレンナノファイバー製品において溶媒の存在のため多くの細孔を有することが分かるようになり、中間図から溶媒での結晶化過程において応力の不均一により形成されたファイバーフォレスト間の細孔が示され、右側の図から、ファイバーとファイバーとの間に細孔隙間構造が形成されることが分かるようになる。
【0051】
図3は実施例1~3で製造されたポリスチレンナノファイバー製品の窒素ガスに対する吸着性能図であり、図面から本発明の方法で製造されたポリスチレンナノファイバー製品が非常に高い比表面積を有することが分析されることができ、ポリスチレンナノファイバーに微孔構造を有し、微孔構造の孔径が基本的に2nm以下であることが実証される。
【0052】
図4は実施例1で製造されたポリスチレンナノファイバー製品の密度検出及び疎水性検出図であり、図面から分かるように、その密度が小さく、全体が超軽量の質量感を呈し、疎水性能が超疎水性レベルであり、156°に達することができる。
【0053】
実施例4~6
【0054】
本実施例4~6は、ポリスチレンナノファイバー製品の製造方法及びそれを用いて製造されたポリスチレンナノファイバー製品を提供し、具体的には以下のステップを含む。
【0055】
(a)120±5℃、撹拌(回転数:400rpm)の条件で、分散相を連続相に滴下し、均一なエマルジョン組成物を製造し、前記分散相は、硫酸ナトリウムをエチレングリコールに分散して混合することにより製造され、前記連続相は、スルホン化ポリスチレン、アイソタクチックポリスチレンを1,2,4-トリクロロベンゼンに加えて混合することにより製造される。
【0056】
(b)ステップ(a)で製造されたエマルジョン組成物を金型に直接加え、室温で10時間静置して結晶化し、結晶物を取り出し、結晶物を順次にエタノール及び水で溶媒置換を3回行い、凍結乾燥させ、前記ポリスチレンナノファイバー製品を製造する。
【0057】
上記実施例が採用する原料及びその使用量は下記の表2を参照する。
【0058】
【0059】
応用実施例1
【0060】
有毒揮発性ガスの吸着:
実施例1で製造された同じ質量のサンプル1、3A分子篩及び活性炭の16ppmのジクロロエタンを含有する汚染空気に対する浄化能力についてそれぞれ比較し、熱重量分析で吸着量を分析すると、サンプル1の吸着量がそれぞれ分子篩及び活性炭より高いことが見出され、且つ低い温度で基本的な脱着を実現することができ、エネルギーの節約に役立ち、具体的には、
図5を参照することができ、本発明のポリスチレンナノファイバー製品の複数レベルの細孔構造及び大きな比表面積により吸着能力及び脱着速度を大幅に向上させることが示される。
【0061】
応用実施例2
【0062】
有機液体吸収:
実施例1~3で製造されたサンプル1~3に対応して取得したポリスチレンナノファイバー製品をそれぞれ異なる有機溶剤及び油料に浸漬し、秤量法によりサンプルの吸油量を取得し、ポリスチレンナノファイバー製品のある有機溶剤に対する吸油量が50倍の自身重量に達することができることが見出され、具体的には、
図6を参照することができ、本発明のポリスチレンナノファイバー製品が様々な有機溶剤に対して高い吸収能力を有することが示される。
【0063】
応用実施例3
【0064】
油水分離:
前述から分かるように、本発明のポリスチレンナノファイバー及びポリスチレンナノファイバー製品は、超疎水性及び親油性を有し、油性液体をよく通過させることができ、同時に水の通過を阻止し、それによって油水分離に用いることができる。
【0065】
応用実施例4
【0066】
ガス濾過:
前述から分かるように、本発明のポリスチレンナノファイバー製品の内部構造は複数レベルで、連通するものであり、物質の輸送を大幅に加速することができる。同時に、各ファイバー間の距離及び細孔はナノレベルに過ぎず、大きいサイズの固体粒子をよく保持することができるため、PM 2.5及びPM10の濾過に用いることができる。
【0067】
上記実施例は、本発明の技術的思想及び特徴を説明するためのものに過ぎず、その目的は、当業者が本発明の内容を理解して実施することであり、これにより本発明の保護範囲を限定するものではなく、本発明の趣旨に基づいて行われたすべての等価的な変化又は修飾は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。