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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】地空管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/08 20060101AFI20240122BHJP
   G08B 21/16 20060101ALI20240122BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240122BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20240122BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20240122BHJP
   G01C 21/20 20060101ALI20240122BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240122BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G08B25/08 E
G08B21/16
G08B25/00 510M
G08G5/00 A
G08G1/123 A
G01C21/20
G01C21/34
G08G1/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022019812
(22)【出願日】2022-02-10
(65)【公開番号】P2023117218
(43)【公開日】2023-08-23
【審査請求日】2023-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】片山 千聖
(72)【発明者】
【氏名】三浦 悟
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 雅嗣
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-048258(JP,A)
【文献】特開2020-180786(JP,A)
【文献】特開2019-202682(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008675(WO,A1)
【文献】特開2019-213132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B1/00-1/70
B64C1/00-99/00
B64D1/00-47/08
B64F1/00-5/60
B64G1/00-99/00
G01C21/00-21/36
23/00-25/00
G08B19/00-31/00
G08G1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設の監視を行う飛行体及び地上移動体を管理する地空管理システムであって、
前記飛行体の経時的位置を含む飛行情報を管理する飛行情報管理部と、
前記地上移動体の経時的位置を含む地上移動情報を管理する地上移動情報管理部と、
前記飛行体及び前記地上移動体に搭載された監視機器によって生成された前記施設の監視データを取得する監視データ取得部と、
前記監視データに基づいて前記施設に生じた異常事象を決定する異常事象決定部と、
前記異常事象の種類と前記異常事象の発生場所と前記飛行情報とに基づいて、異常事態発生時の前記飛行体の特殊飛行ルートを生成する特殊飛行ルート生成部と、
前記異常事象の種類と前記異常事象の発生場所と前記地上移動情報とに基づいて、異常事態発生時の前記地上移動体の特殊移動ルートを生成する特殊移動ルート生成部と、
を備える地空管理システム。
【請求項2】
前記地上移動体には道路走行可能な走行車両が含まれており、前記走行車両以外の前記地上移動体及び前記飛行体は前記走行車両によって運搬される請求項1に記載の地空管理システム。
【請求項3】
前記異常事象決定部によって決定された前記異常事象の経時挙動を推定する経時挙動推定部が備えられ、
前記特殊飛行ルート生成部は、前記特殊飛行ルートを生成する際に前記経時挙動を参照し、
前記特殊移動ルート生成部は、前記特殊移動ルートを生成する際に前記経時挙動を参照する請求項1または2に記載の地空管理システム。
【請求項4】
前記施設周辺の気象情報を取得する気象情報取得部が備えられ、前記経時挙動推定部は前記経時挙動の推定時に前記気象情報を参照し、
前記特殊飛行ルート生成部は、前記特殊飛行ルートを生成する際に前記気象情報を参照し、
前記特殊移動ルート生成部は、前記特殊移動ルートを生成する際に前記気象情報を参照する請求項に記載の地空管理システム。
【請求項5】
前記飛行体に搭載された飛行体自位置算出部によって算出された飛行体自位置を取得する飛行体自位置取得部と、前記地上移動体に搭載された移動体自位置算出部によって算出された移動体自位置を取得する移動体自位置取得部とが備えられ、
前記飛行情報管理部は、前記飛行体の前記飛行体自位置に基づいて前記飛行体の前記経時的位置を算出し、
前記地上移動情報管理部は、前記地上移動体の前記移動体自位置に基づいて前記地上移動体の前記経時的位置を算出する請求項1から4のいずれか一項に記載の地空管理システム。
【請求項6】
前記異常事象の種類と前記異常事象の発生場所とによって規定されている異常事象発生時の前記飛行体の飛行パターン及び前記地上移動体の移動パターンを抽出可能に記録している異常事象時パターン記録部が備えられ、
前記特殊飛行ルート生成部は、前記異常事象の種類と前記異常事象の発生場所とに基づいて抽出された前記飛行パターンを参照して前記飛行体の特殊飛行ルートを生成し、
前記特殊移動ルート生成部は、前記異常事象の種類と前記異常事象の発生場所とに基づいて抽出された前記移動パターンを参照して前記地上移動体の特殊移動ルートを生成する請求項1から5のいずれか一項に記載の地空管理システム。
【請求項7】
前記飛行パターンには、前記飛行体によって前記異常事象を監視するための異常事象監視飛行パターンと、前記飛行体が前記異常事象から避難するための緊急避難飛行パターンとが含まれており、
前記移動パターンには、前記地上移動体によって前記異常事象を監視するための異常事象監視移動パターンと、前記飛行体が前記異常事象から避難するための緊急避難移動パターンとが含まれている請求項に記載の地空管理システム。
【請求項8】
前記監視機器にはガス検知器が含まれており、前記異常事象にガス漏れが含まれている場合、前記経時挙動推定部は前記経時挙動を推定する際に前記施設周辺の風向き及び風速を参照する請求項に記載の地空管理システム。
【請求項9】
前記特殊飛行ルート生成部は、前記特殊飛行ルートを生成する際に前記施設周辺の風向き及び風速を参照する請求項1から8のいずれか一項に記載の地空管理システム。
【請求項10】
前記地上移動体には、前記飛行体の離着陸用ポートが備えられている請求項1からのいずれか一項に記載の地空管理システム。
【請求項11】
前記飛行体の前記施設の監視活動は、風速を含む気象情報に基づいて制限される請求項1から10のいずれか一項に記載の地空管理システム。
【請求項12】
前記異常事象にガス漏れが含まれている場合、前記ガス漏れに対する着火の可能性を有する前記飛行体又は地上移動体による監視活動を禁止し、風速及び風向きに基づいて推定される前記ガス漏れが及ぶ範囲からの避難を命じる請求項1から11のいずれか一項に記載の地空管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設の監視を行う飛行体及び地上移動体を管理する地空管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス製造プラントや発電プラントなどのインフラ施設の健全性を維持する上で、これらの施設に設けられた各種設備の監視が必要不可欠である。近年、インフラ施設などの大規模施設の点検を行う際に、無人移動車や無人飛行体を利用する試みがなされている。
【0003】
特許文献1には、監視エリアに設けられた設備を点検して当該監視エリアを監視する無人飛行体及びその飛行制御方法が提案されている。この飛行制御方法は、設備を点検するために予め設定された飛行ルートに従って無人飛行体を飛行させるステップや、設備から漏洩した漏洩対象を無人飛行体に設けられたセンサにより検知するステップ、漏洩対象が漏洩したと判断された場合に無人飛行体の飛行が危険な危険エリアを決定するステップ、決定された危険エリアを回避する新たな飛行ルートを設定するステップ、設定された新たな飛行ルートに従って無人飛行体を飛行させるステップなどを行うようになっている。
【0004】
特許文献2には、飛行体によって取得される情報を用いて、地上移動体の障害のない走行を支援する情報処理システムが提案されている。この情報処理システムは、飛行体によって取得された地形情報と予め定めた移動許可条件とに基づき、現在地と前記目的地との間の地形を、移動許可条件を満たす移動許可領域と移動許可条件を満たさない移動禁止領域とに分け、移動禁止領域を回避するように地上移動体の移動ルートを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-202682号公報
【文献】特開2020-180786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エネルギー製造施設や化学プラント施設などの大規模施設における設備の監視を行う場合、単独の飛行体や地上移動体では、迅速かつ正確な監視は困難である。特に、監視対象の施設において、ガス漏れ、液漏れ、火災、部材崩壊などの異常事象、あるいは地震、津波、台風などの天災による異常事象が発生した場合、その発生個所の監視は、複数の監視点からの監視が要求されるので、複数の飛行体や地上移動体による監視が必要となる。また、複数の飛行体や地上移動体による施設監視では、飛行体同士の協調、地上移動体同士の協調、飛行体と地上と移動体の間での協調が不可欠となる。しかしながら、特許文献1や特許文献2によるシステムでは、異常事象に対して陸空から互いに協調して動くための方策は提案されていない。
【0007】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、飛行体及び地上移動体が協調して、適切なルートで監視飛行または監視移動することを支援できる地空管理システムの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
施設の監視を行う飛行体及び地上移動体を管理する、本発明による地空管理システムは、前記飛行体の経時的位置を含む飛行情報を管理する飛行情報管理部と、前記地上移動体の経時的位置を含む地上移動情報を管理する地上移動情報管理部と、前記飛行体及び前記地上移動体に搭載された監視機器によって生成された前記施設の監視データを取得する監視データ取得部と、前記監視データに基づいて前記施設に生じた異常事象を決定する異常事象決定部と、前記異常事象の種類と前記異常事象の発生場所と前記飛行情報とに基づいて異常事態発生時の前記飛行体の特殊飛行ルートを生成する特殊飛行ルート生成部と、前記異常事象の種類と前記異常事象の発生場所と前記地上移動情報とに基づいて異常事態発生時の前記地上移動体の特殊移動ルートを生成する特殊移動ルート生成部とを備える。
【0009】
この構成によれば、飛行体及び地上移動体の協調した監視活動が可能となり、飛行体及び地上移動体の監視機器(カメラユニットやレーダ機器や気体検出器など)によって生成された監視データを通じて、地上及び空中からの監視対象施設の様子を知ることできる。
監視データは、飛行体の経時的位置を含む飛行情報、または地上移動体の経時的位置を含む地上移動情報とリンクされることにより、三次元空間の経時的な監視状況を示すことが可能である。
また、飛行体や地上移動体の監視機器による監視データから、迅速に、施設に発生した異常事象が見つけ出され、見つけ出された異常事象に応じて、飛行体の適切な飛行ルートや地上移動体の適切な移動ルートが設定されると好都合である。このため、この構成によれば、飛行体及び地上移動体から送られてきた監視データに基づいて、異常事象決定部は、監視対象施設に異常事象が発生しているかどうかを判断することができる。異常事象が発生している場合、異常事象の種類と異常事象の発生場所、及び飛行体の経時的位置を含む飛行情報と地上移動体の経時的位置を含む地上移動情報とに基づいて、飛行体の特殊飛行ルート及び地上移動体の特殊移動ルートが生成される。これにより、種々の異常事象の種類と異常事象の発生場所とに適した、飛行体及び地上移動体の協調した監視活動が可能となる。
【0010】
階段や床下などを移動する小型地上移動体は、道路を高速で移動することは困難である。また、飛行体の航続時間も通常の道路走行車両の走行時間に比べて短い。このため、本発明では、前記地上移動体には道路走行可能な走行車両が含まれており、前記走行車両以外の前記地上移動体及び前記飛行体は前記走行車両によって運搬される。この構成により、道路走行が苦手な小型地上移動体や飛行体は、監視活動を行う地域まで、走行車両で走行されるので、好都合である。
【0012】
火災やガス漏れのような異常事象の場合、時間経過とともに異常現象の範囲、異常現象が及ぼす悪影響の範囲が変化する。このため、異常事象の種類によっては、当該異常事象の経時挙動を考慮して、飛行体の特殊飛行ルート及び地上移動体の特殊移動ルートを生成する必要がある。このことから、本発明では、前記異常事象決定部によって決定された前記異常事象の経時挙動を推定する経時挙動推定部が備えられ、前記特殊飛行ルート生成部は、前記特殊飛行ルートを生成する際に前記経時挙動を参照し、前記特殊移動ルート生成部は、前記特殊移動ルートを生成する際に前記経時挙動を参照する。
【0013】
火災やガス漏れのような異常事象の場合、気候条件、特に風向きや風速によって、異常現象の範囲や異常現象が及ぼす悪影響の範囲(ガス漏れの濃度分布など)が変化する。このため、本発明では、前記施設周辺の気象情報を取得する気象情報取得部が備えられ、前記経時挙動推定部は前記経時挙動の推定時に前記気象情報を参照し、前記特殊飛行ルート生成部は、前記特殊飛行ルートを生成する際に前記気象情報を参照し、前記特殊移動ルート生成部は、前記特殊移動ルートを生成する際に前記気象情報を参照することも提案されている。
【0014】
異常事態の発生時に、適正な特殊飛行ルート及び特殊移動ルートを生成する場合、特殊飛行ルート及び特殊移動ルートの出発点を地上移動体や飛行体の現在位置に近い位置とすると、地上移動体や飛行体は特殊飛行ルートや特殊移動ルートに迅速に移行できるので、好都合である。このため、本発明では、前記飛行体に搭載された飛行体自位置算出部によって算出された飛行体自位置を取得する飛行体自位置取得部と、前記地上移動体に搭載された移動体自位置算出部によって算出された移動体自位置を取得する移動体自位置取得部とが備えられ、前記飛行情報管理部は、前記飛行体の前記飛行体自位置に基づいて前記飛行体の前記経時的位置を算出し、前記地上移動情報管理部は、前記地上移動体の前記移動体自位置に基づいて前記地上移動体の前記経時的位置を算出する。これにより、現状の地上移動体や飛行体の位置が時々刻々と把握される。
【0015】
適正な特殊飛行ルートや特殊移動ルートは、多数の条件を設定して、シミュレーションすることで、生成することは可能である。しかしながら、大規模な施設では、異常事象の種類と異常事象の発生場所は、千差万別であり、それに適応する特殊飛行ルートや特殊移動ルートの種類も膨大となるので、そのようなシミュレーションのための高速な演算装置が必要となる。この問題を解決するためには、予め、異常事象の種類と異常事象の発生場所との組み合わせで、基本となる飛行体の飛行パターンと地上移動体の移動パターンとを求め、抽出可能に記録し、必要時には、適正に抽出した飛行パターンと移動パターンに基づいて、実際に用いる飛行体の特殊飛行ルートと地上移動体の特殊移動ルートとを生成することが好ましい。このことから、本発明では、前記異常事象の種類と前記異常事象の発生場所とによって規定されている異常事象発生時の前記飛行体の飛行パターン及び前記地上移動体の移動パターンを抽出可能に記録している異常事象時パターン記録部が備えられ、前記特殊飛行ルート生成部は、前記異常事象の種類と前記異常事象の発生場所とに基づいて抽出された前記飛行パターンを参照して前記飛行体の特殊飛行ルートを生成し、前記特殊移動ルート生成部は、前記異常事象の種類と前記異常事象の発生場所とに基づいて抽出された前記移動パターンを参照して前記地上移動体の特殊移動ルートを生成する。
【0016】
異常事象の種類と規模によっては、異常事象の現場の近くまたは遠くから異常事象の監視を続ける必要がある。逆に、異常事象の種類と規模によっては、地上移動体や飛行体は、監視活動を中止して緊急避難する必要がある。そのような監視活動の続行や緊急避難は、異常事象の発生にともなう混乱を避けるために、前もって規定されたルートで行われることが重要である。このことから、本発明では、前記飛行パターンには、前記飛行体によって前記異常事象を監視するための異常事象監視飛行パターンと、前記飛行体が前記異常事象から避難するための緊急避難飛行パターンとが含まれており、前記移動パターンには、前記地上移動体によって前記異常事象を監視するための異常事象監視移動パターンと、前記飛行体が前記異常事象から避難するための緊急避難移動パターンとが含まれている。
【0017】
火災など異常事象では、ガス漏れは二次災害を引き起こす可能性が高いので、ガス漏れの監視は重要である。しかも、ガス漏れ被害が及ぶ範囲(ガス濃度段階に基づく範囲)は、風向き及び風速に大きく影響される。このことから、本発明では、前記監視機器にはガス検知器が含まれており、前記異常事象にガス漏れが含まれている場合、前記経時挙動推定部は前記経時挙動を推定する際に前記施設周辺の風向き及び風速を参照することが提案される。
【0018】
飛行体は強風等の天候の影響を受け易く、それにより飛行性能が悪化し、最悪の場合、墜落の可能性もある。飛行体の墜落は、二次災害を引き起こすので、回避しなければならない。このため、本発明では、前記特殊飛行ルート生成部は、前記特殊飛行ルートを生成する際に前記施設周辺の風向き及び風速を参照する。これにより、強風の場合、その影響が最小限となる飛行ルートが採用される。また、地上移動体においても、超小型移動体や歩行型移動体の場合、強風の影響を受け易いので、そのような地上移動体のための特殊移動ルートの生成では、風向き及び風速が参照されることが好ましい。
【0019】
飛行体は、地上移動体に比べて航続時間が短く、頻繁に燃料補給または充電が必要となる。この燃料補給または充電のための時間を節約するため、地上移動体に飛行体の離着陸用ポートが備えられると好都合である。地上移動体が飛行体の母港となれば、飛行体を順次送り出すことができる。また、飛行体の母港となる地上移動体が燃料補給機能や充電機能を有すると、さらに好都合である。空中からの監視が必要な場所への飛行体の移動に地上移動体が用いられると、飛行体の航続時間が有効に利用できる。
【0020】
飛行体による監視飛行は、気候条件、特に風速の影響を受けるため、監視対象地域の風速情報によって、制限される。例えば、風速により飛行体を飛ばすかどうかが判定される。このため、本願発明では、前記飛行体の前記施設の監視活動は、風速を含む気象情報に基づいて制限される。さらに、ガス漏れを伴うような異常事象が発生すれば、地上移動体や飛行体はガス漏れの着火源になる可能性がある。このため、ガス漏れの発生場所だけでなく、風速と風向きによって推定されるガス漏れの拡がりも考慮して、地上移動体や飛行体を発生した異常事象の監視のために活動させるかどうか判定しなければならない。場合によっては、地上移動体や飛行体も異常事象の現場から避難させる。このため、本発明では、前記異常事象にガス漏れが含まれている場合、前記ガス漏れに対する着火の可能性を有する前記飛行体又は地上移動体による監視活動を禁止し、風速及び風向きに基づいて推定される前記ガス漏れが及ぶ範囲からの避難を命じる。
【0021】
本発明のその他の特徴、作用及び効果は、以下の図面を用いた本発明の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】施設の監視を行う飛行体及び地上移動体の1つの形態を示す図である。
図2】施設の監視を行う飛行体及び地上移動体の他の1つの形態を示す図である。
図3】地上移動体によって運ばれる飛行体を説明する図である。
図4】地空管理システムの実施形態の概略構成を示す機能ブロック図である。
図5】地空管理システムの機能ブロック間のデータや情報の流れを示す情報流れ図である。
図6】地空管理システムにおける監視基本ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図7】地上移動体の監視基本ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図8】飛行体の監視基本ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図9】地空管理部の基本ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図10】異常事象発生時処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る地空管理システムについて説明する。
【0024】
〔地空管理システムの概要〕
この実施形態に係る地空管理システムは、図1図2とに示すように、監視対象となる施設に対する地上移動体1と飛行体3との監視活動を管理する。地上移動体1には、一般の道路の走行が可能な走行車両と、大型車両が近づけない場所や階段や床下などで移動が可能な特殊な地上移動体1が含まれている。
【0025】
この実施形態では、図1及び図3に示すように、複数の飛行体3は、走行車両として機能する地上移動体1に設けられた離着陸用ポート20に駐機しており、当該地上移動体1によって監視対象領域に運ばれる。少なくとも一部の地上移動体1は飛行体基地(母港)としても機能する。地上移動体1は、車輪式の走行車であり、道路等を高速で移動することができる。なお、図示されていないが、同様に、道路走行が苦手な地上移動体1(例えば、地上ロボットして知られている犬型ロボットやムカデ型ロボットなどの小型地上移動体)も走行車両として機能する地上移動体1に積み込むことができる。もちろん、走行車両以外の地上移動体1に、飛行体3を積み込んでもよい。少なくとも一部の地上移動体1は、小型地上移動体の基地(母港)として機能することができる。この実施形態では、飛行体3は、高低差が大きい設備の監視を行い、地上ロボットは、高低差の比較的小さな歩廊や階段がある設備の監視を行う。小型車両である地上移動体1は、比較的走行が容易な道路や空き地に設けられている設備を監視する。以下の記載では、走行車両、小型車両、地上ロボットは、地上移動体1として総称される。
【0026】
図2に示すように、地上移動体1が飛行体3の監視対象領域に到着すると、各飛行体3は離着陸用ポート20を離陸し、それぞれに設定されている飛行ルートに沿って、施設の設備群を監視する監視飛行を行う。監視飛行が終了した飛行体3は、再び地上移動体1の離着陸用ポート20に着陸する。飛行体3の離陸地点と着陸地点は異なっていてもよい。その間、地上移動体1は、地上から施設を監視する。
【0027】
通常の監視活動では、地上移動体1は予め設定された通常の移動ルートで移動し、飛行体3も予め設定された通常の飛行ルートで飛行する。施設の設備に異常事象が発生した場合には、異常事象に応じて設定される特殊移動ルートに基づいて地上移動体1は移動し、飛行体3も異常事象に応じて設定される特殊飛行ルートに基づいて飛行する。
【0028】
なお、この実施形態において、監視対象は、ガスタンクなどを備えたガス関連プラントであるが、これに限られるものではなく、化学コンビナートや発電プラントなどのインフラ施設といった大規模施設が広く監視対象施設となり得る。また、地震、津波、台風などの天災による種々の施設(民家も含む)の被害も監視対象となる。
【0029】
〔地空管理システムの構成〕
図4図5とに示すように、本実施形態における地空管理システムは、地上移動体1と、飛行体3と、地空管理コンピュータ5とを備えている。地上移動体1と、飛行体3と、地空管理コンピュータ5との間では、各種データや情報、各種指令が、無線通信で送受信可能である。また、少なくとも地空管理コンピュータ5は、インターネット等のデータ回線を通じて、施設内の情報提供サーバや遠隔地の情報提供サーバとデータ交換可能に接続可能である。
【0030】
飛行体3は、通信部30、飛行体自位置算出部31、飛行制御部32、監視機器33を備えている。通信部30は、他の飛行体3、地上移動体1、地空管理コンピュータ5などと、通信を行う。飛行体自位置算出部31は、飛行体3に搭載されている衛星測位デバイスや慣性航法デバイスからの測位信号を用いて、自身の現在位置である飛行体自位置を算出する。飛行体自位置は、自らの飛行制御のために用いられるとともに、通信部30を通じて、他の飛行体3、地上移動体1、地空管理コンピュータ5に送られる。飛行制御部32は、自らが備える飛行制御プログラム、地上移動体1や地空管理コンピュータ5から送られてくる飛行指令に基づいて、飛行体3の飛行を制御する。
【0031】
本実施形態では、飛行体3に搭載された監視機器33として、ガス検知器331とカメラユニット332とが備えられている。カメラユニット332は、カメラ本体、カメラ本体を姿勢変更可能に支持するカメラマウント、撮影画像を画像処理し、カメラ姿勢と飛行体自位置とを属性値とする撮影画像データを生成する。撮影画像データには、静止画像及び動画が含まれる。ガス検知器331によるガス検知結果と撮影画像データとは、空中監視データとして、通信部30を通じて、地上移動体1や地空管理コンピュータ5に送られる。カメラユニット332は、飛行障害物の検出にも利用することができる。また、レーザ等の専用の飛行障害物検出機器を備えてもよい。検出された飛行障害物(他の飛行体3も含まれる)の情報は、障害物回避のために飛行制御部32に与えられる。
【0032】
地上移動体1は、通信部10、移動体自位置算出部11、移動制御部12、監視機器13を備えている。通信部10は、他の地上移動体1、飛行体3、地空管理コンピュータ5、などと通信を行う。地上移動体1は、自動走行可能な車両に備えられてるナビゲーションユニットと同様な測位ユニットを備えており、自車の現在位置である移動体自位置を算出することができる。したがって、この測位ユニットは移動体自位置算出部11を含んでいる。移動体自位置は、自らの移動制御のために用いられるとともに、通信部10を通じて、他の地上移動体1や飛行体3や地空管理コンピュータ5に送られる。移動制御部12は、自動走行可能な車両に備えられてる自動走行制御部と同等な機能を有し、自らが備える自動走行制御プログラム、地空管理コンピュータ5から送られてくる移動指令に基づいて、地上移動体1の移動(走行)を制御する。なお、地上移動体1には、手動走行制御部も備えられており、運転者による操縦によって走行制御することも可能である。なお、地上移動体1のカメラユニット132も、移動障害物の検出にも利用することができる。また、レーザや超音波等の専用の移動障害物検出機器を備えてもよい。検出された移動障害物の情報は、障害物回避のために移動制御部12に与えられる。
【0033】
地上移動体1に搭載された監視機器13として、ガス検知器131とカメラユニット132とを備えている。カメラユニット132は、カメラ本体、カメラ本体を姿勢変更可能に支持するカメラマウント、撮影画像を画像処理し、カメラ姿勢と地上移動体自位置とを属性値とする撮影画像データを生成する。撮影画像データには、静止画像及び動画が含まれる。但し、地上移動体1に搭載されているカメラユニット132は、飛行体3に搭載されているカメラユニット332とは、異なる大型であり、解像度の高い大画面の画像を取得することができる。ガス検知器131によるガス検知結果と撮影画像データとは、移動体監視データとして、通信部10を通じて、他の地上移動体1や地空管理コンピュータ5に送られる。
【0034】
地空管理コンピュータ5は、通信部50、気象情報取得部51、飛行体自位置取得部52、移動体自位置取得部53、地空情報管理部6を備えている。さらに、地空管理コンピュータ5は、飛行体3から送られてきた空中監視データ及び地上移動体1から送られてきた地上監視データ、さらに監視対象施設に配置された監視機器から得られた監視データ、監視サービスセンタ100から与えられた監視データに基づいて異常事象を決定する機能、異常事態発生時の飛行体3の特殊飛行ルート及び地上移動体1の特殊移動ルートを生成する機能を有する。
【0035】
通信部50は、飛行体3や地上移動体1との通信、施設内の情報提供サーバや遠隔地の情報提供サーバとの通信を行う。気象情報取得部51は、気象サービスサーバや施設内の気象情報検出装置から送られてくる気象情報を取得する。飛行体自位置取得部52は、飛行体3から送られてくる飛行体自位置を取得し、移動体自位置取得部53から送られてくる移動体自位置を取得する。
【0036】
地空情報管理部6は、飛行情報管理部6Aと地上移動情報管理部6Bとを備えている。飛行情報管理部6Aは飛行体3の経時的位置や飛行可能時間(残燃料や残バッテリ容量などに基づく)を含む飛行情報を取得して飛行体3の監視飛行を管理する。地上移動情報管理部6Bは、地上移動体1(小型地上移動体も含む)の経時的位置や移動可能時間(残燃料や残バッテリ容量などに基づく)を含む移動情報を取得して地上移動体1の監視移動を管理する。小型地上移動体の移動情報は、小型地上移動体の基地(母港)となっている地上移動体1においても管理されている。飛行情報は、飛行体3の発進基地(母港)となっている地上移動体1にも与えられる。さらに、飛行情報管理部6Aは、飛行体位置追跡部61と飛行指令生成部62とを備えている。さらに、飛行情報管理部6Aは、飛行計画データベース63を利用する。飛行計画データベース63は、地空管理コンピュータ5内に構築されてもよいし、他の外部のコンピュータに構築されてもよい。飛行体位置追跡部61は、各飛行体3のために設定されている飛行計画を飛行計画データベース63から読み出し、当該飛行計画に記述されている時刻と飛行位置とに基づいて、各飛行体3の経時的位置(現在位置)を推定して記録する。さらに、この経時的位置は、飛行体自位置取得部52によって取得された飛行体自位置によって修正される。飛行指令生成部62は、飛行体自位置が飛行計画における時刻と飛行位置とに一致するように、飛行体3に飛行指令を与える。さらに、飛行指令生成部62は、異常事態発生時に、各飛行体3に割り当てられる特殊飛行ルートに沿って飛行するように、飛行体3に飛行指令を与える。
【0037】
地上移動情報管理部6Bは、移動体位置追跡部64と移動指令生成部65とを備えている。さらに、地上移動情報管理部6Bは、地上移動計画データベース66を利用する。地上移動計画データベース66も、地空管理コンピュータ5内に構築されてもよいし、他の外部のコンピュータに構築されてもよい。移動体位置追跡部64は、各地上移動体1のために設定されている地上移動計画を地上移動計画データベース66から読み出し、当該地上移動計画に記述されている時刻と地上移動位置とに基づいて、各地上移動体1の経時的位置(現在位置)を推定して記録する。さらに、この経時的位置は、移動体自位置取得部53によって取得された移動体自位置によって修正される。移動指令生成部65は、移動体自位置が地上移動計画における時刻と地上移動位置とに一致するように、地上移動体1に飛行指令を与える。さらに、移動指令生成部65は、異常事態発生時に、各地上移動体1に割り当てられる特殊移動ルートに沿って移動するように、地上移動体1に移動指令を与える。
【0038】
地空管理コンピュータ5は、空中監視データ及び地上監視データに基づいて異常事象を決定する機能を実現するために、監視データ取得部54と、異常事象決定部55と、経時挙動推定部58とを備えている。監視データ取得部54は、取得した空中監視データ及び地上監視データ、さらに監視対象施設に配置された監視機器から得られた監視データ、監視サービスセンタ100から与えられた監視データを監視時刻と監視位置とで処理して、時系列で整理された監視データを生成して、異常事象決定部55に与える。異常事象決定部55は、監視データ取得部54から与えられた監視データ、及び当該監視データから生成された特徴データに基づいて、監視対象の施設において、何らかの異常事象が発生しているかどうかを、決定する。さらに、経時挙動推定部58は、異常事象決定部55によって決定された異常事象の経時挙動、例えば、異常事象の拡がりを推定する。その際、異常事象が風の影響を受ける火災やガス漏れのような場合、気象情報に基づく異常事象の発生場所周辺の風向き及び風速が参照される。
【0039】
地空情報管理部6は、異常事態発生時の飛行体3の特殊飛行ルート及び地上移動体1の特殊移動ルートを生成する機能を実現するために、特殊飛行ルート生成部70と特殊移動ルート生成部80と異常事象時パターン記録部78(図5参照)とを備えている。異常事象時パターン記録部78は、異常事象時飛行パターンを抽出可能に記録している異常事象時飛行パターン記録部71と、異常事象時移動パターンを抽出可能に記録している異常事象時移動パターン記録部81とからなる。
【0040】
異常事象時飛行パターン記録部71には、異常事象の種類と異常事象の発生場所とによって規定されている異常事象発生時の飛行体3の多数の飛行パターンが記録されている。この飛行パターンは、異常事象の状況を空中から監視するために適切である飛行体3の三次元空間におけるフォーメーションを示している。同様に、異常事象時移動パターン記録部81には、異常事象の種類と異常事象の発生場所とによって規定されている異常事象発生時の地上移動体1の多数の移動パターンが記録されている。この移動パターンも、異常事象の状況を地上から監視するために適切である地上移動体1の平面的なフォーメーションを示している。
【0041】
特殊飛行ルート生成部70は、まず、異常事象の種類、異常事象の発生場所、異常事象の広がり、異常事象の危険度、利用可能な飛行体3の数量、利用可能な飛行体3に搭載されている監視機器33の種類などを抽出条件として、最適な飛行パターンを抽出する。さらに、特殊飛行ルート生成部70は、抽出された飛行パターンをベースとして、飛行体3の特殊飛行ルートを生成し、飛行情報管理部6Aの飛行指令生成部62に与える。飛行体3は、風の影響を受けるので、強風が発生している場合には、異常事象が発生している施設周辺の風向き及び風速が特殊飛行ルートの生成の際に考慮される。飛行指令生成部62は、特殊飛行ルートと利用可能な飛行体3の現在位置とに基づいて、各飛行体3に対する飛行指令を生成して、各飛行体3に与える。つまり、異常事象が発生した場合、当該異常事象の経時的な挙動も考慮して、異常事象が飛行体3の監視活動に影響を与えるかどうかが判定され、影響がないと判定された場合、飛行体3の監視活動が継続され、影響があると判定された場合、飛行体3の監視活動が中止される。
【0042】
同様に、特殊移動ルート生成部80は、異常事象の種類、異常事象の発生場所、異常事象の広がり、異常事象の危険度、利用可能な地上移動体1の数量、利用可能な地上移動体1に搭載されている監視機器13の種類などを抽出条件として、最適な移動パターンを抽出する。さらに、特殊移動ルート生成部80は、抽出された移動パターンをベースとして、地上移動体1の特殊移動ルートを生成し、地上移動情報管理部6Bの移動指令生成部65に与える。移動指令生成部65は、特殊移動ルートと利用可能な地上移動体1の現在位置とに基づいて、各地上移動体1に対する移動指令を生成して、各地上移動体1に与える。つまり、異常事象が発生した場合、当該異常事象の経時的な挙動も考慮して、異常事象が地上移動体1の監視活動に影響を与えるかどうかが判定され、影響がないと判定された場合、地上移動体1の監視活動が継続され、影響があると判定された場合、地上移動体1の監視活動が中止される。
【0043】
異常事象の種類と規模によっては、地上移動体1や飛行体3は、監視活動を中止して緊急避難する必要がある。このような緊急避難も、現場の混乱を回避するために、異常事象の種類と規模に応じた適切なフォーメーションをとる必要がある。このため、特殊飛行ルート生成部70が特殊飛行ルートの作成のために用いる飛行パターンには、飛行体3が異常事象を監視するための異常事象監視飛行パターンだけでなく、飛行体3が異常事象から避難するための緊急避難飛行パターンも含まれている。同様に、特殊移動ルート生成部80が特殊移動ルートの作成のために用いる移動パターンには、飛行体3が異常事象を監視するための異常事象監視移動パターンだけでなく、地上移動体1が異常事象から避難するための緊急避難移動パターンも含まれている。
【0044】
次に、図6のフローチャートを用いて、本実施形態の地空管理システムによる施設監視活動の基本的なルーチンを説明する。まず、本地空管理システムの駐屯所において、地上移動体1の離着陸用ポート20に所定台数の飛行体3を積み込んで、監視対象の施設に向けて出発する(#01)。
【0045】
少なくとも1台の地上移動体1が、監視対象の施設に到着すると、通常の地上監視計画に基づく地上移動体1の通常監視移動が開始される(#02)。さらに、地上移動体1が飛行体3による監視活動が予定されているエリアに達すると(#03のYes分岐)、飛行体3が地上移動体1の離着陸用ポート20から離陸し(#04)、空中監視が行われる(#05)。通常の飛行監視計画に基づく飛行体3の空中監視が終了すると、飛行体3は、地上移動体1の離着陸用ポート20に着陸する(#06)。ステップ#02からステップ#06に示す、地上移動体1と飛行体3とによる監視活動が続けられる。この監視活動が終了すれば(#07のYes分岐)、地上移動体1と飛行体3とは、駐屯所に帰還する(#08)。
【0046】
次に、図7のフローチャートを用いて、地上移動体1の通常監視活動を規定する基本的な監視ルーチンを説明する。まず、地上移動体1は、地空管理コンピュータ5から、地上監視のための移動計画を取得する(#11)。取得した移動計画に基づいて、監視対象へ移動する(#12)。この移動には、運転者によって運転されるか、あるいは自動操縦される大型の走行車両としての地上移動体1が用いられる。小型走行車や移動ロボット(犬型ロボット、ムカデ型ロボットなど)は、母移動体としての大型走行車に積み込まれ、監視現場で降ろされ、その後はリモコンまたは自動で移動する。地上移動体1による地上監視が開始されると(#13)、地上移動体1に搭載されている監視機器13からの監視信号に基づいて、地上監視データが生成され(#14)、生成された地上監視データは地空管理コンピュータ5に送られる(#15)。移動計画に基づく通常移動ルートでの監視が終了すると(#16のYes分岐)、小型走行車や移動ロボットは、母移動体であるの大型走行車に戻り、大型走行車に積み込まれて、駐屯所に帰還する(#17)。なお、ここでは、大型走行車、小型走行車、移動ロボットの少なくとも1つが地上移動体1である。
【0047】
次に、図8のフローチャートを用いて、飛行体3の通常監視活動を規定する基本的な監視ルーチンを説明する。まず、飛行体3は、地空管理コンピュータ5から、空中監視のための飛行計画を取得する(#21)。取得した飛行計画に基づく監視対象が存在する場所に地上移動体1が到着すると、離着陸用ポート20から離陸する(#22)。なお、地上移動体1の離着陸用ポート20に駐機する全ての飛行体3が同じ場所で離陸するとは限らない。各飛行体3が別の場所で離陸し、別の場所で着陸してもよい。飛行体3が監視飛行を行い、飛行体3による空中監視が開始されると(#23)、飛行体3に搭載されている監視機器13からの監視信号に基づいて、空中監視データが生成され(#24)、生成された空中監視データは地空管理コンピュータ5に送られる(#25)。この通常飛行ルートでの空中監視が終了すると、飛行体3は、離着陸用ポート20に着陸して、次の監視対象が存在する場所に移動し、ステップ#22からステップ#25の監視飛行を繰り返す。飛行計画に基づく通常飛行ルートでの全て監視が終了すると(#26のYes分岐)、地上移動体1の離着陸用ポート20に着陸し、格納される(#27)。
【0048】
次に、図9のフローチャートを用いて、地空管理コンピュータ5における通常監視動作を示す基本的な監視ルーチンを説明する。まず、地空管理コンピュータ5は、施設の定期的な通常監視のために、地上移動計画データベース66から移動計画を取得し、該当する地上移動体1に送出し(#31)、飛行計画データベース63から飛行計画を取得し、飛行体3に送出する(#32)。飛行体3への飛行計画の送出は、飛行体3を積み込む地上移動体1を経由で行われてもよい。いずれにしても、飛行体3の母港としての地上移動体1は、積み込む飛行体3の飛行計画を把握しておく必要がある。
【0049】
監視活動が開始されると、監視データ取得部54は、移動計画に基づいて監視移動を行う地上移動体1から地上監視データを取得し(#33)、飛行計画に基づいて監視飛行を行う飛行体3から空中監視データを取得する(#34)。異常事象決定部55は、取得した地上監視データ及び空中監視データに基づいて、さらに監視対象施設から得られた監視情報を参照して、異常事象が発生しているかどうか判定する(#35)。異常事象の発生が認められない場合(#36のNo分岐)、全ての移動計画及び飛行計画に基づく監視活動が終了したどうかチェックされる(#37)。全ての監視活動が終了するまで、ステップ#33からステップ#36の処理が行われる。ステップ#36の異常事象発生の判定において、異常事象が発生していると決定された場合(#36のYes分岐)、異常事象発生時処理が行われる(#50)。
【0050】
異常事象発生時処理がスタートすると(#50)、経時挙動推定部58が異常事象の経時的な挙動を推定する(#51)。この異常事象の経時的挙動は、異常事象の種類、この異常事象に関する経時的な監視データ群、気象情報に基づく異常事象の発生場所周辺の風向き及び風速などを入力パラメータとして、推定される。例えば、ガス漏れのような場合、現時点及びその後の濃度分布が推定される。次に、このように推定された異常事象の経時的挙動に適合する飛行パターンが、異常事象時飛行パターン記録部71から抽出され(#52)、この経時的挙動に適合する移動パターンが異常事象時移動パターン記録部81から抽出される(#53)。同時に、飛行体3と地上移動体1との現在位置が、それぞれ、飛行体位置追跡部61と移動体位置追跡部64とから取得される(#54)。
【0051】
特殊移動ルート生成部80は、得られた移動パターンと地上移動体1の現在位置とに基づいて、当該移動パターンで地上移動体1が移動できるように、特殊移動ルートを生成する(#55)。同時に、特殊飛行ルート生成部70は、得られた飛行パターンと飛行体3の現在位置とに基づいて、当該飛行パターンで飛行体3が飛行できるように特殊飛行ルートを生成する(#56)。
【0052】
特殊移動ルートに基づく特殊移動指令が地上移動体1に送られると、地上移動体1は特殊移動指令に基づいて移動する(#57)。ここで、地上移動体1に適用されている移動パターンが異常事象を監視する異常事象監視移動パターンであっても、あるいは異常事象避難移動パターンであっても、移動中に地上監視が続行されるので(#58)、監視データ取得部54は、引き続き、地上監視データを取得することができる(#59)。
【0053】
特殊飛行ルートに基づく特殊移動指令が飛行体3に送られると、飛行体3は特殊飛行指令に基づいて飛行する(#60)。ここで、飛行体3に適用されている飛行パターンが異常事象を監視する異常事象監視移動パターンであっても、あるいは異常事象避難移動パターンであっても、飛行中に空中監視が続行されるので(#61)、監視データ取得部54は、引き続き、空中監視データを取得することができる(#62)。
【0054】
地上移動体1及び飛行体3による異常事象発生時の監視が続行しておれば(#63のNo分岐)、ステップ#51からステップ#62までの処理が繰り返される。地上移動体1及び飛行体3による異常事象発生時の監視が不要または不可能になれば(#63のYes分岐)、この異常事象発生時処理が終了する。
【0055】
地上移動体1に搭載されたカメラユニット132や飛行体3に搭載されたカメラユニット332で取得される撮影画像は、画像処理を施すことにより、異常事象の検知にとって優れたデータとなるが、監視活動では、太陽との位置関係で逆光や暗がりなど撮影条件が不利となることが少なくない。このため、この実施形態では、カメラ本体の姿勢変更だけでは、撮影条件が改善されない場合には、地上移動体1や飛行体3の姿勢変更、移動ルートや飛行ルートの変更により、撮影条件を改善する制御機能も備えられている。
【0056】
発生した異常事象が大規模であり、また異常事象の広がりが広範囲に及ぶと推定される場合、異常事象の発生現場近くを走行している地上移動体1や異常事象の発生現場近くを飛行している飛行体3だけでは、十分な監視を行うことができない。そのようなケースでは、地上移動体1または監視サービスセンタ100が管理している他の地上移動体1や飛行体3に直接応援要請をするか、あるいは別の監視サービスセンタ100に登録されている地上移動体1や飛行体3に対する応援派遣を別の監視サービスセンタ100を通じて求めることができる。その際、応援部隊に含まれる地上移動体1や飛行体3との共同監視のための走行ルートや飛行ルートが、適用される。このため、異常事象時飛行パターン記録部71には、共同監視のための飛行ルートを作成するためのベースとなる異常事象監視飛行パターンが記録され、異常事象時移動パターン記録部81には、共同監視のための移動ルートを作成するためのベースとなる異常事象監視移動パターンが記録されている。特殊飛行ルート生成部70は、異常事象の種類や範囲から抽出された最適な異常事象監視飛行パターンと、応援派遣される飛行体数を参照して、共同異常事象監視飛行ルートを作成し、特殊移動ルート生成部80は、異常事象の種類や範囲から抽出された最適な異常事象監視移動パターンと、応援派遣される移動体数を参照して、共同異常事象監視移動ルートを作成する。各飛行体3には、共同異常事象監視飛行ルートに基づく飛行指令が与えられ、各地上移動体1には、共同異常事象監視移動ルートに基づく移動指令が与えられる。
【0057】
上述した地空管理システムによる施設の監視は、次の特徴を有する。
(a)地上移動体1に飛行体3を搭載した状態で、地上移動体1は施設・設備の監視(点検)を行う。高所監視等が必要な場所及び地上移動体1では入り込めない場所では飛行体3が地上移動体1の離着陸用ポート2から自動離陸して監視を開始し、監視終了後は地上移動体1の離着陸用ポート20に着陸して自動充電を行う。次の高所監視場所に到達後は、再び自動飛行監視を行うように、地上移動体1との飛行体3との連係で施設・設備の監視が行われる。
(b)地上移動体1には風向風速計が設置されているか、あるいは、監視対象区域の風向風速データがデータ通信によって取得できる場合、地上移動体1に搭載されている飛行体3が監視を開始のために離陸する前に、その区域の風向風速が飛行体3の動作保証値を超えていると、飛行体3の離陸が中止される。
【0058】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、飛行体3は自動制御飛行体として構成したが、少なくとも部分的にはリモコン操縦されるリモコン制御飛行体として構成されてもよい。リモコン制御飛行体の場合、リモコン操縦時には、飛行指令などの情報は操縦支援情報としてモニタ等を通じてリモコン操作者に報知される。
【0059】
(2)上述した実施形態では、地上移動体1の離着陸用ポート20に積み込まれる飛行体3は複数台であり、その監視飛行は編隊飛行であったが、離着陸用ポート20の積み込まれる飛行体3が1台であり、その監視飛行が単独飛行でもよい。
【0060】
(3)上述した実施形態では、地上移動体1に搭載される監視機器13及び飛行体3に搭載される監視機器33は、ガス検知器131、331とカメラユニット132、332であったが、その他の機器、例えば気圧センサ、超音波センサ、レーダなどが用いられてもよい。カメラユニット132、332のカメラ本体として、可視光カメラや赤外線カメラなど種々のカメラの利用が可能である。また、複数の種類の監視機器33が、それぞれ複数搭載されてもよいし、一種類の監視機器33だけが搭載されてもよい。さらには、ガス検知器131として、地上移動体1にカメラ型のガス検知器が搭載されてもよい。このカメラ型のガス検知器によって、飛行体3の離陸方向にガス漏れが及んでいないかどうかの確認が可能である。また、ガス検知器331として、飛行体3にレーザ式ガス検知器が搭載されてもよい。このレーザ式ガス検知器により飛行体3の飛行方向にガス漏れが及んでいないかどうかの確認が可能である。
【0061】
(4)上述した実施形態では、経時挙動推定部58は、異常事象決定部55によって決定された異常事象の経時挙動、つまり異常事象の未来予測を行っていたが、さらに、異常事象の過去の推定、つまり異常事象の原因推定、例えば、ガス漏れであれば、ガス漏れ源を推定するように構成されてもよい。また、同一場所の設置されたガス漏れ検知器と風向風速計とからの測定データが取得できる場合、ガス漏れ検知器の濃度値と風向風速計の数値とからガス漏れ箇所とガス漏れ濃度とを推定することも可能である。
【0062】
(5)上述した実施形態では、地空管理コンピュータ5は、地上移動体1や飛行体3から独立して、別な場所、例えば管理サービス会社などに設置されている。これに代えて、地空管理コンピュータ5は、地上移動体1に設置されてもよい。また、地空管理コンピュータ5は、ポータブルなコンピュータとして構成され、自由に移動可能としてもよい。さらには、地空管理コンピュータ5に構築された各機能部は、複数のコンピュータに分散されてもよいし、その一部が、地上移動体1や飛行体3に備えられてもよい。
【0063】
(6)上述した実施形態では、飛行体3が駐機する離着陸用ポート20が地上移動体1に設けられていた。これに代えて、離着陸用ポート20が専用の離着陸用ポート車両に設けられてもよい。また、地上に設置された固定式の離着陸用ポート20が用いられてもよい。
【0064】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、施設の監視を行う飛行体及び地上移動体を管理する地空管理システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 :地上移動体
3 :飛行体
5 :地空管理コンピュータ
6 :地空情報管理部
6A :飛行情報管理部
6B :地上移動情報管理部
11 :移動体自位置算出部
12 :移動制御部
13 :監視機器
20 :離着陸用ポート
30 :通信部
31 :飛行体自位置算出部
32 :飛行制御部
33 :監視機器
51 :気象情報取得部
52 :飛行体自位置取得部
53 :移動体自位置取得部
54 :監視データ取得部
55 :異常事象決定部
58 :経時挙動推定部
61 :飛行体位置追跡部
62 :飛行指令生成部
63 :飛行計画データベース(飛行計画DB)
64 :移動体位置追跡部
65 :移動指令生成部
66 :地上移動計画データベース(地上移動計画DB)
70 :特殊飛行ルート生成部
71 :異常事象時飛行パターン記録部
78 :異常事象時パターン記録部
80 :特殊移動ルート生成部
81 :異常事象時移動パターン記録部
100 :監視サービスセンタ
131 :ガス検知器
132 :カメラユニット
331 :ガス検知器
332 :カメラユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10