(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】シート供給装置およびプリント装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/182 20060101AFI20240122BHJP
B65H 19/10 20060101ALI20240122BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B65H23/182
B65H19/10 A
B65H7/02
(21)【出願番号】P 2022026598
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2021098698の分割
【原出願日】2017-03-10
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 正登
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】根岸 将史
(72)【発明者】
【氏名】新庄 亮哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 涼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智洋
(72)【発明者】
【氏名】小幡 力
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-098059(JP,A)
【文献】特開2011-037557(JP,A)
【文献】特開2016-104554(JP,A)
【文献】特開2016-104665(JP,A)
【文献】特開2005-060017(JP,A)
【文献】特開平08-133534(JP,A)
【文献】特開2015-218016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/182-23/185
B65H 19/10
B65H 7/02- 7/14
B41J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが巻かれて形成されたロールを回転可能に保持する保持部と、
前記保持部で保持されたロールからシートを送り出すための第1方向と、当該第1方向と逆の第2方向とにロールを回転させる駆動手段と、
ロールのシート先端を検出するための検出手段と、
ロールが前記保持部に保持されたことを検出するためのロールセンサと、
ロールから送り出されるシートの上方でロールに当接する当接部材と、
を備え、ロールからシートを送り出すシート供給装置であって、
前記ロールセンサでロールが保持されたことを検出したことを条件に、前記駆動手段によってロールを前記第2方向に回転させて前記検出手段によって前記シート先端が
ロールの表面から分離する回転位置が特定された場合、さらに前記駆動手段は前記第2方向にロールを回転させて前記シート先端が前記当接部材を抜けた後に、ロールの回転を前記第2方向から前記第1方向に変えることを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記ロールセンサは、ロールに挿入された軸部材を検出することを特徴とする請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
ロールから送り出されたシートを下方から支持する下側ガイドと、
前記下側ガイドに保持されロールに接触する接触部材と、を備え、前記駆動手段は前記接触部材をロールに接触させながらロールを前記第2方向に回転させることを特徴とする請求項1または2に記載のシート供給装置。
【請求項4】
ロールからシートが送り出される前にロールが前記保持部で保持されると、ロールは前記接触部材に接触することを特徴とする請求項3に記載のシート供給装置。
【請求項5】
前記検出手段は前記下側ガイドに設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載のシート供給装置。
【請求項6】
前記下側ガイドよりも上方に設けられ、ロールから送り出されるシートの上方でシートを規制する上側ガイドを備え、
前記当接部材は前記上側ガイドに保持され、
ロールから送り出されるシートは、前記上側ガイドと前記下側ガイドとの間を通ることを特徴とする請求項3ないし5の何れか1項に記載のシート供給装置。
【請求項7】
前記第2方向に回転するロールの前記シート先端が、前記当接部材が接触する位置を抜けると、前記シート先端がロールから離れてシートが前記検出手段に近づくことを特徴とする請求項6に記載のシート供給装置。
【請求項8】
前記接触部材によるロールを押圧する押圧力を切り換える切換手段を備えることを特徴とする請求項3ないし7の何れか1項に記載のシート供給装置。
【請求項9】
前記切換手段は、前記ロールセンサによってロールが検出された後に、前記押圧力を大きくすることを特徴とする請求項8に記載のシート供給装置。
【請求項10】
ロールの回転量を検出するための回転量センサを備えることを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載のシート供給装置。
【請求項11】
前記回転量センサによって検出されたロールの前記第2方向への回転量に同期して、前記検出手段による出力が取得されることを特徴とする請求項10に記載のシート供給装置。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか1項に記載のシート供給装置と、
前記シート供給装置から送り出されたシートに画像をプリントするプリント手段と、を備えることを特徴とするプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続シートが巻かれたロールからシートを引き出して供給するシート供給装置およびプリント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、装着されたロールのシート先端を検出して自動給送することができるプリント装置が開示されている。この装置では、ロールを供給方向とは反対の巻取り方向に回転させ、そのシート先端が自重によってロールからシート剥離して分離したことを、ロールの近傍に配置した光学センサによって検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光学センサは、ロールから剥離したシートの先端が、ロールの接線に平行なセンサ光軸を通過した瞬間の反射光によりオン出力が得られたことをもってシートの剥離を検出する。このときのセンサ出力の信号強度は、剥離したシート先端がセンサ光軸に達するまではほぼゼロであり、シート先端がセンサ光軸を通過する瞬間にシート先端のエッジでの反射光によりパルス状の信号が生じる。そして、センサ光軸を通過後は、剥離したシートの内面にセンサ光が当たるが、センサ光軸とシート内面はほぼ平行であり且つ急激に距離が遠くなるので反射強度は弱く、通過後の信号レベルは急激に落ちる。つまり、特許文献の光学センサは、基本的には剥離の途中過程においてシート先端がセンサ光軸を通過した瞬間しか判別できない。
【0005】
ところが実際の装置では、ロールからのシート剥離の挙動は、使用するシートの剛性(撓んだシートが元に戻ろうとする戻り力)や静電気の帯電など種々の状況によって剥離速度(シート先端が移動する速度)が変わる。そのため、特許文献1のように剥離途中の一瞬の信号パルスでシート先端を検出する形態では、状況によって信号パルスの発生タイミングが変わり、高精度にシート剥離を検出することが難しい場合がある。そしてこのタイミングずれは、その後のシート送り出し動作に支障を及ぼす可能性がある。特許文献1にはこのような課題に対してなんら解決手段を開示していない。
【0006】
本発明の目的は、ロールからのシート剥離を正確に検出して自動給送を行うことができるシート供給装置およびプリント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシート供給装置は、シートが巻かれて形成されたロールを回転可能に保持する保持部と、前記保持部で保持されたロールからシートを送り出すための第1方向と、当該第1方向と逆の第2方向とにロールを回転させる駆動手段と、ロールのシート先端を検出するための検出手段と、ロールが前記保持部に保持されたことを検出するためのロールセンサと、ロールから送り出されるシートの上方でロールに当接する当接部材と、を備え、ロールからシートを送り出すシート供給装置であって、前記ロールセンサでロールが保持されたことを検出したことを条件に、前記駆動手段によってロールを前記第2方向に回転させて前記検出手段によって前記シート先端がロールの表面から分離する回転位置が特定された場合、さらに前記駆動手段は前記第2方向にロールを回転させて前記シート先端が前記当接部材を抜けた後に、ロールの回転を前記第2方向から前記第1方向に変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロールからのシート剥離を正確に検出して自動給送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態におけるプリント装置の斜視図である。
【
図2】プリント装置におけるシートの搬送経路の説明図である。
【
図4】ロール外径が小さいときのシート供給装置の説明図である。
【
図5】プリント装置の制御系を説明するためのブロック図である。
【
図6】シートの供給準備処理のフローチャートである。
【
図7】本発明の第1の実施形態におけるセンサユニットの説明図である。
【
図8】シート先端セット処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本発明の第2の実施形態におけるセンサユニットのセンサ出力の変化の説明図である。
【
図10】センサユニットのセンサ出力の説明図である。
【
図11】シート先端セット処理を説明するためのフローチャートである。
【
図12】本発明の第3の実施形態におけるプリント装置の制御系のブロック図である。
【
図13】センサユニットのセンサ出力の説明図である。
【
図14】センサの増幅率調整処理を説明するためのフローチャートである。
【
図15】本発明の第4の実施形態におけるセンサユニットの配備位置の説明図である。
【
図16】センサユニットの光軸とロールの外周面との関係の説明図である。
【
図18】本発明の第5の実施形態におけるセンサユニットの配備位置の説明図である。
【
図19】本発明の第6の実施形態におけるセンサユニットのセンサ出力の説明図である。
【
図21】シート先端セット処理を説明するためのフローチャートである。
【
図22】本発明の第7の実施形態におけるシートの先端部の停止位置の説明図である。
【
図23】シート先端セット処理を説明するためのフローチャートである。
【
図24】シート供給装置の他の構成例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まずは、本発明の基本的な構成について説明する。
【0011】
<基本的構成>
図1から
図5は、本発明の実施例としてのプリント装置の基本的な構成の説明図である。本例のプリント装置は、プリント媒体としてのシートを供給するためのシート供給装置と、そのシートに画像をプリントするプリント部と、を含むインクジェットプリント装置である。尚、説明のために図中に示すように座標軸を設定する。すなわち、ロールRのシート幅方向をX軸方向、後述するプリント部400においてシートが搬送される方向をY軸方向、重力方向をZ軸方向とする。
【0012】
図1に示すように、本例のプリント装置100には、長尺の連続シート(ウェブと呼ぶこともある)であるシート1をロール状に巻回したロールR(ロールシート)を上段と下段の2カ所のロール保持部にそれぞれセットすることが可能である。それらのロールRから選択的に引き出されたシート1に画像がプリントされる。ユーザは、操作パネル28に備わる各種のスイッチなどを用いて、シート1のサイズ指定、オンライン/オフラインの切り換えなど、プリント装置100に対する各種コマンドなどを入力することができる。
【0013】
図2は、プリント装置100の要部の概略断面図である。2本のロールRに対応する2つの供給装置200が上下に配備されている。供給装置200によってロールRから引き出されたシート1は、シート搬送部(搬送機構)300によって、シート搬送経路に沿って画像をプリント可能なプリント部400に搬送される。プリント部400は、インクジェット式のプリントヘッド18からインクを吐出することによって、シート1に画像をプリントする。プリントヘッド18は、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いて、吐出口からインクを吐出する。プリントヘッド18はインクジェット方式のみに限定されず、またプリント部400のプリント方式も限定されず、例えば、シリアルスキャン方式あるいはフルライン方式などであってもよい。シリアルスキャン方式の場合には、シート1の搬送動作と、シート1の搬送方向と交差する方向におけるプリントヘッド18の走査と、を伴って画像をプリントする。フルライン方式の場合には、シート1の搬送方向と交差する方向に延在する長尺なプリントヘッド18を用い、シート1を連続的に搬送しつつ画像をプリントする。
【0014】
ロールRは、その中空穴部にスプール部材2が挿入された状態で供給装置200のロール保持部にセットされ、そのスプール部材2がロール駆動用のモータ33(
図5参照)によって正転および逆転駆動される。供給装置200には、後述するように、駆動部3、アーム部材(移動体)4、アーム回転軸5、センサユニット6、揺動部材7、従動回転体(接触体)8,9、分離フラッパー(上側ガイド体)10、およびフラッパー回転軸11が備えられている。
【0015】
搬送ガイド12は、供給装置200から引き出されるシート1の表裏面をガイドしつつ、そのシート1をプリント部400へ導く。搬送ローラ14は、後述する搬送ローラ駆動用のモータ35(
図5参照)によって、矢印D1,D2方向に正転および逆転される。ニップローラ15は、搬送ローラ14の回転に応じて従動回転可能であり、ニップ力調整用のモータ37(
図5参照)によって、搬送ローラ14に対して接離可能、かつニップ力の調整が可能である。搬送ローラ14によるシート1の搬送速度は、ロールRの回転によるシート1の引き出し速度よりも高く設定されており、これによりシート1にバックテンションを与えて、それを張った状態のまま搬送することができる。
【0016】
プリント部400のプラテン17はシート1の位置を規制し、カッタ20は、画像がプリントされたシート1を切断する。ロールRのカバー42は、画像がプリントされたシート1が供給装置200に戻ることを防止する。このようなプリント装置100における動作は、後述するCPU201(
図5参照)によって制御される。なお、プラテン17は負圧または静電力の吸着手段を備えておりプラテンであり、プラテン上にシートを吸着して安定した支持を行うことができる。
【0017】
図3は供給装置200の説明図であり、
図3(a)におけるロールRは、その外径が比較的大きい状態にある。搬送ガイド12には、アーム回転軸5によって、アーム部材(移動体)4が矢印A1,A2方向に回転可能に取り付けられている。アーム部材4の上部には、ロールRから引き出されるシート1の下面をガイドするガイド部4b(下側ガイド体)が形成されている。アーム部材4と駆動部3の回転カム3aとの間には、アーム部材4を矢印A1方向に押圧するねじりコイルばね3cが介在されている。回転カム3aは、後述する押圧力調整用のモータ34(
図5参照)によって回転され、その回転位置に応じて、ねじりコイルばね3cがアーム部材4を矢印A1方向に押圧する力が変化する。シート1の先端部(先端を含むシート1の一部)を、アーム部材4と分離フラッパー10との間を通してシート供給パス内にセットするときには、回転カム3aの回転位置に応じて、ねじりコイルばね3cによるアーム部材4の押圧力が3段階に切り換えられる。すなわち、比較的小さな力(弱ニップの押圧力)による押圧状態と、比較的大きな力(強ニップの押圧力)による押圧状態と、押圧力の解除状態と、に切り換えられる。
【0018】
アーム部材4には揺動部材7が揺動自在に取り付けられ、その揺動部材7には、ロールRの周方向にずれて位置する第1および第2の従動回転体(回転体)8,9が回転可能に取り付けられている。これらの従動回転体8,9は、ロールRの外形に応じて移動し、アーム部材4に対する矢印A1方向の押圧力によって、重力方向の下方からロールRの外周部を圧接する。すなわち、従動回転体8,9は、ロールRの水平方向の中心軸よりも重力方向の下方から、ロールRの外周部に圧接する。その圧接力は、アーム部材4を矢印A1方向に押圧する押圧力に応じて変更される。
【0019】
それぞれが揺動部材7を持った複数のアーム部材4が、X軸方向における位置が異なるように設けられている。揺動部材7には、
図3(b)に示すように軸受け部7aと軸留め部7bとが設けられており、これらによって、アーム部材4の回転軸4aが所定のガタ付きをもって受け入れられる。
【0020】
軸受け部7aは、揺動部材7の重心位置に設けられており、揺動部材7がX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向のそれぞれにおいて安定した姿勢となるように回転軸4aに支持される。また、回転軸4aがガタ付きをもって受け入れられているため、X軸方向におけるどの位置の揺動部材7も、アーム部材4に対する矢印A1方向の押圧力によって、ロールRの外周部に沿うように変位する。このような構成(イコライズ機構)により、ロールRの外周部に対する第1および第2の従動回転体8,9の圧接姿勢の変化が許容される。この結果、シート1と第1および第2の従動回転体8,9との接触領域が常に最大となるように保たれ、かつシート1に対する押圧力が均等化されて、シート1の搬送力のバラツキを抑えることができる。従動回転体8,9がロールRの外周部に圧接することにより、シート1の弛みの発生が抑制されて、その搬送力が増強される。
【0021】
プリント装置100の本体(プリンタ本体)には、アーム部材4の上方に位置する分離フラッパー10がフラッパー回転軸11を中心として矢印B1,B2方向に回転可能に取り付けられている。分離フラッパー10は、その自重によってロールRの外周面に当接して軽く押圧する構成となっている。ロールRをさらに強く押圧する必要がある場合には、ばねなどの付勢部材による付勢力を用いてもよい。分離フラッパー10におけるロールRとの接触部分には、押圧力がシート1に及ぼす影響を抑えるために、従動コロ10aが回転自在に備えられている。また、分離フラッパー10の先端の分離部10bは、ロールRからシートの先端部を分離しやすくするために、ロールRの表面に極力近い位置まで延在するように形成されている。
【0022】
シート1は、従動回転体8,9の上を通ってロールRから引き出され、その下面がアーム部材4の上部のガイド部4bによってガイドされてから、分離フラッパー10とアーム部材4との間に形成される供給パスを通して供給される。このように、ロールRの外周部に対して下方から従動回転体8,9を圧接させ、それらの従動回転体8,9の上を通って引き出されるシート1の下面をガイド部4bによってガイドする。これにより、シート1の自重を利用して、シート1をスムーズに供給することができる。また、ロールRの外径に応じて、従動回転体8,9とガイド部4bが移動することにより、ロールRの外径に拘らず、ロールRからシート1を確実に引き出して搬送することができる。
【0023】
本実施形態における装置の特徴の一つは、シートの自動ローディング機能(自動給紙機能)である。自動ローディングにおいては、ユーザが未使用のロールRを装置にセットすると、装置がロールRをシート供給時(給紙時)とは逆の方向(逆方向または第2方向と称する、
図3(a)の矢印C2の方向)に回転させながらシートの先端を検出する。次いで、装置がシート供給時の回転方向(順方向または第1方向と称する、
図3(a)の矢印C1の方向)にロールRを回転させて、ロールRから分かれたシートの先端部を自動的に送り出す。センサユニット6は、ロールRの外周面からシート1の先端部が剥がれてシート剥離(シート分離)したことを検出する先端検出センサを含むユニットである。センサユニット6により検出されたシート1の先端部分は、アーム部材4と分離フラッパー10との間のシート供給パス内に自動的に挿入されて送り出される。この自動ローディング機能の、より詳細な手順については後述する。
【0024】
また、本例のプリント装置100は、上下2つの供給装置200を備えており、一方の供給装置200からシート1を供給している状態から、他方の供給装置200からシート1を供給する状態に切り換えることができる。このような場合、一方の供給装置200は、それまで供給していたシート1をロールRに巻き戻す。そのシート1の先端は、それがセンサユニット6もしくはセンサユニット6の近傍に設けた別のシート端部センサによって検出される位置まで退避される。
【0025】
図4は、ロールRの外径が比較的小さいときにおける供給装置200の説明図である。アーム部材4は、ねじりコイルばね3cによって常に矢印A1方向に押圧されているため、ロールRの外径の減少に応じて矢印A1方向に回転する。また、ロールRの外径の変化に応じて回転カム3aを回転させることにより、ロールRの外径の変化に拘らず、ねじりコイルばね3cによるアーム部材4の押圧力を所定の範囲に維持することができる。また、分離フラッパー10も常に矢印B1方向に押圧されているため、ロールRの外径の減少に応じて矢印B1方向に回転する。これにより分離フラッパー10は、ロールRの外径が小さくなった場合にも搬送ガイド12との間に供給パスを形成して、下面10cによってシート1の上面をガイドする。このように、ロールRの外径の変化に応じて、アーム部材4と分離フラッパー10が回転することにより、ロールRの外径の如何に拘らず、それらの間にほぼ一定の大きさの供給パスが形成される。
【0026】
図5は、プリント装置100における制御系の構成例を説明するためのブロック図である。プリント装置100のCPU201は、ROM204に記憶された制御プラグラムに従って、供給装置200、シート搬送部300、およびプリント部400を含むプリント装置100の各部を制御する。CPU201には、操作パネル28から、シート1の種類、幅、および種々の設定情報などが入出力インターフェイス202を介して入力される。またCPU201は、外部インターフェイス205を介して、パーソナルコンピュータなどのホスト装置を含む種々の外部装置29に接続されており、外部装置29との間において、プリントデータなどの種々の情報の授受を行う。またCPU201は、RAM203に対して、シート1に関する情報などの書き込みおよび読み出しをする。モータ33は、スプール部材2を介してロールRを正転および逆転させるためのロール駆動用のモータであり、ロールRを回転駆動可能な駆動機構(回転機構)を構成する。押圧力調整用のモータ34は、アーム部材4に対する押圧力を調整するために回転カム3aを回転させるモータであり、搬送ローラ駆動用のモータ35は、搬送ローラ14を正転および逆転させるためのモータである。ロールセンサ32は、ロールRが供給装置200にセットされたときに、ロールRのスプール部材2を検出するためのセンサである。ロール回転量センサ36は、スプール部材2、つまりロールRの回転量を検出するためのセンサ(回転角度検出センサ)であり、例えば、ロールRの回転量に応じた数のパルスを出力するロータリーエンコーダである。
【0027】
<シートの供給準備処理>
図6は、ロールRのセットから始まるシート1の供給準備処理を説明するためのフローチャートである。
【0028】
プリント装置100のCPU201は、アーム部材4を「弱ニップの押圧力」によって矢印A1方向に押圧する状態(弱ニップ状態)で待機しており、まずは、ロールRがセットされたか否かを判定する(ステップS1)。本例においては、ロールセンサ32がロールRのスプール部材2を検出したときに、ロールRがセットされたと判定する。CPU201は、ロールRがセットされた後に、アーム部材4を「強ニップの押圧力」によって矢印A1方向に押圧する状態(強ニップ状態)に切り換える(ステップS2)。次いで、CPU201は、シート1の先端部を、アーム部材4と分離フラッパー10との間を通してシート供給パス内にセットするシート先端セット処理を実行する(ステップS3)。このシート先端セット処理(自動ローディング)によって、シート1の先端部がシート供給パス内にセット(挿入)される。シート先端セット処理の詳細については後述する。
【0029】
その後、CPU201は、ロール駆動用のモータ33によりロールRを矢印C1方向に回転させて、シート1の供給を開始する(ステップS4)。シート1の先端がシートセンサ16によって検出されたときに(ステップS5)、CPU201は、搬送ローラ14を矢印D1方向に正転させて、シート1の先端をピックアップした後に、モータ33およびモータ35を停止する(ステップS6)。その後、CPU201は、アーム部材4を矢印A1方向に押圧する押圧力を解除して、第1および第2の従動回転体8,9をロールRから離間(ニップ解除状態)させる(ステップS7)。
【0030】
その後、CPU201は、シート搬送部300内においてシートが斜めに傾いたまま搬送(斜行)されたか否かを判定する。具体的には、シート搬送部300内においてシート1を所定量搬送させて、そのときに生じる斜行量を、プリントヘッド18を搭載するキャリッジもしくはシート搬送部300に備わるセンサによって検出する。その斜行量が所定の許容量よりも大きい場合には、シート1にバックテンションを与えながら、搬送ローラ14およびロールRの正転および逆転を伴ってシート1のフィードとバックフィードとを繰り返す。このような動作により、シート1の斜行を補正する(ステップS8)。このように、シート1の斜行の補正時、およびシート1に対する画像のプリント動作時に、供給装置200をニップ解除状態とすることにより、従動回転体8,9が、シート1の斜行の補正精度および画像のプリント精度に及ぼす影響を回避することができる。その後、CPU201は、シート搬送部300によって、シート1の先端をプリント部400におけるプリント開始前の待機位置(定位置)まで移動させる(ステップS9)。これにより、シート1の供給準備が完了する。その後、シート1は、ロールRの回転を伴ってロールRから引き出され、シート搬送部300によってプリント部400に搬送される。
【0031】
以下、本発明の実施形態として、このようなプリント装置100の基本的構成における
図5のシート先端セット処理(ステップS20)について説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
本実施形態においては、センサユニット6として、シート1の表面(外面)との対向間隔に応じて出力が変化する光学センサを用いる。そして、ロールRの逆方向(矢印C2方向)の回転中におけるセンサユニット6の出力の変化に基づいて、シート1の先端部がロールRの外周面から剥がれて分離したことを検出した後に、ロールRを矢印C1の順方向に回転させてシート1を供給する。
【0033】
本例のセンサユニット6には、
図7のように、LEDなどの発光部6cと、フォトダイオードなどの受光部6dと、が内蔵されている。発光部6cからロールRへ向けて照射された光は、ロールRにおけるシート1の表面にて反射されてから、受光部6dによって検知される。発光部6cから照射されて受光部6dによって検出される光は、ロールRにおけるシート1の表面から反射される正反射光を含む。受光部6bの出力値は、センサユニット6とシート1の下向きの表面(ロールにおいて外周面となっていたシート外面であり且つプリント部でプリントされる面)との対向間隔に応じて変化する。つまり、受光部6bの出力値は、センサユニット6とシート1の表面との間の距離(間隔)が小さいほど大きくなり、その距離(間隔)が大きいほぼ小さくなる。センサユニット6は、センサユニット6とシート1の表面との間の距離に応じて検出信号の出力値が変化する構成であればよく、発光部6cおよび受光部6dは、LEDおよびフォトダイオードのみに限定されない。また、受光部6dによって検出される光は、正反射光のみに限定されない。センサユニット6はCPU201(
図5参照)に接続されており、CPU201は、任意のタイミングでセンサユニット6の検出結果を取得する。
【0034】
図8および
図9は、センサユニット6を用いるシート先端セット処理(
図6中のステップS3)の説明図である。前述したように、シート先端セット処理(自動ローディング)は、ロールRがセットされた後に、そのロールRのシート1の先端部をアーム部材4と分離フラッパー10との間のシート供給パス内に自動的に挿入して送り出す処理である。アーム部材4は、シート1の表面(シート外面)と対向し、分離フラッパー10はシート1の裏面(シート内面)と対向する。
【0035】
CPU201は、シート先端セット処理に開始に先立ち、まずは、ロールRがセットされたか否かを判定する(
図6中のステップS1)。本例においては、ロールセンサ32がロールRのスプール部材2を検出したときに、ロールRがセットされたと判定する。CPU201は、ロールRがセットされた後に、アーム部材4を「強ニップの押圧力」によって矢印A1方向に押圧する状態(強ニップ状態)に切り換える(
図6中のステップS2)。
【0036】
その後のシート先端セット処理(
図6中のステップS3)において、CPU201は、まず、ロールRを矢印C2の逆方向に回転(逆回転)させる(ステップS11)。そして、ロールRの逆回転中に、センサユニット6の検出信号の出力(センサ信号レベル)がHレベルの範囲内(第1レベル範囲内)からLレベルの範囲内(第2レベル範囲内)に下降するよう変化したか否かを判定する(ステップS12)。
【0037】
図9(a)は、センサ出力の波形の一例の説明図であり、ロールRの逆回転の開始時におけるロールRの回転角度を0度とする。通常はセンサ出力はLレベルである。ロールRが170度逆回転したときに、
図9(b)のように、シート1の先端部のシート外面がセンサユニット6の検出位置に近づく動きに従って、
図9(a)のように、センサ出力がLレベルからHレベルに上昇(増大)する。
【0038】
より具体的には、ロールRが170度逆回転すると、シート1の先端部が分離フラッパー10の従動コロ10aの当接位置を通過する。すると、シート1の先端部が当接位置から外れてロール外周面から剥離を開始して、アーム部材4の上に自重および撓んだシートの戻り力により落下する。このとき、
図9(b)のように、シート1の先端部のシート外面が、センサユニット6の検出位置に徐々に近づくようなシートの動きとなる。さらにロールRが200度逆回転すると、
図9(c)のように、シート1の先端部のシート外面がセンサユニット6の上の検出位置を過ぎ去る。すると、シート外面での強い反射光は無くなり、遠く離れたロールRの表面からの弱い反射光を受光して、センサ出力がHレベルからLレベルに急激に下降(減少)する。その後、さらにロールRが角度θ逆回転したときに、シート1の先端部が従動回転体8の当接位置に達する。HレベルとLレベルは、センサユニット6の出力強度を2レベルに分割したものであり、センサユニット6とロールRのシート1との対向間隔が小さいときにHレベルとなり、それが大きいときにLレベルとなる。これらのレベルを分割する境界としての閾値THは、予め設定されて、プリンタ本体あるいはセンサユニット6内部の不揮発性メモリに保存されている。閾値THは、センサ出力L0,H0に基づいて設定される。すなわち、ロールRを1回転以上(例えば、複数回)回転させたときのセンサ出力の最小レベルと最大レベルとの中間の値を基準として設定される。例えば、最小レベルのセンサ出力をL0とし、最大レベルのセンサ出力をH0とした場合、閾値THは、これらのセンサ出力L0,H0の中間値(TH=(H0+L0)/2)として設定することができる。センサユニット6のばら付きなどにより閾値THが変動するため、個々のセンサユニット6毎にセンサ出力L0,H0を測定し、その測定値に基づいて閾値THを設定することが望ましい。
【0039】
以上のように、ロールRから剥離したシート外面がセンサの検出位置に近づく動きに対応してセンサ出力が上昇する。そして、その後のロールの第2方向の回転によりシート外面がセンサの検出位置から離れる動きに対応して、センサ出力が下降する。このようなセンサ出力の変化(所定の変化)を捉えることで、ロールから剥離したシートがガイド面に到達してシート剥離が完了したタイミングを正確に得ることができる。
【0040】
図9(b)のように、シート1の先端部1がセンサユニット6を通過したときには、センサ出力がHレベルからLレベルへ変化し、その後、センサ出力のLレベルが一定期間継続した場合には、ロールRの回転を停止させる(ステップS13,S14)。具体的には、センサ出力がHレベルからLレベルへ変化してから、さらに一定角度AだけロールRが逆回転する一定期間において、センサ出力がLレベルを継続したか否かを判定し、それが継続したときにロールRの回転を停止させる。一定角度Aは、角度θよりも小さい角度であり、本例の場合は、角度θの半分の角度(A=θ/2)である。ステップS14においてロールRの回転が停止されたときには、センサユニット6と従動回転体8との間のアーム部材4上に、シート1の先端部が位置する。したがって、その後にロールRを矢印C1に正回転させることによって(ステップS15)、アーム部材4と分離フラッパー10との間のシート供給パス内に、シート1の先端部を自動的に挿入して送り出すことができる(自動ローディング)。
【0041】
ロールRが1周以上(360度以上の所定量)逆回転してもセンサ出力がHレベルからLレベルへ変化しなかった場合には、ステップS16からステップS17に移行する。さらにロールRが1周以上の所定量だけ逆回転してもセンサ出力のLレベルを一定期間継続しなかった場合にも、ステップS16からステップS17に移行する。ロールRが1回転する間にシート1の先端部がロールRの外周面から分離しなかった場合は、ロールRの外周面からの剥離不良と考えられる。またロールRが1回転する間にロールRの外周面から分離したシート1の先端がセンサユニット6の上から離れなかった場合は、剥離したシートがセンサ上で紙詰まり(ジャム)を起こしていると考えられる。いずれの場合も自動給紙が行えない。ステップS17において、ロールRの回転を停止し、自動ローディング(自動給紙)が実行できなかったことをユーザに通知して、ユーザに対して、シート1の先端部をシート供給パス内に挿入するための手動操作(手動給紙)を促す。ユーザはシート先端部を挿入したら装置に対して給紙の指示を行う。この指示に基づいてロールRが正方向に回転を始めて、挿入されたシートを装置内に送り出す。以上のように、本実施形態においては、ロールRがセットされた後に、自動的にシート1の先端部をシート供給パス内に挿入して送り出すことができる。したがってユーザは、ロールRをセットした後に、手動によってシート1の先端部をシート供給パス内に挿入する必要がなく、ロールRのセット時の作業負担が軽減される。
【0042】
(第2の実施形態)
図10および
図11は、本発明の第2の実施形態の説明図である。センサユニット6の出力は、前述した実施形態と同様に、シート1の表面との対向間隔に応じて出力が変化する。例えば、つぼ量が大きいシート1および剛度の高いシート1の場合には、ロールRを矢印C2方向に逆回転させた際に、シート1の先端部1が従動回転体9を通過してから従動コロ10aを通過するまでの期間において、センサ出力が変化するおそれがある。すなわち、その期間において、センサユニット6の出力がLレベルからHレベルに一時的に上昇してから、Lレベルに戻るおそれがある。
【0043】
図10は、つぼ量が大きいシート1のロールRを逆回転させたときのセンサユニット6の出力波形、および、そのシート1の先端部の挙動の説明図である。シート1の先端部が従動コロ10aの付近にある状態から、ロールRが矢印C2方向の逆回転を開始し、その回転開始位置から45度程度回転したときに、前述した
図9(b)のように、シート1の先端部1が従動コロ10aを抜けてアーム部材4上に落下する。その結果、
図10(a)のように、ロールRの回転角度が45度付近において、センサユニット6の出力がLレベルからHレベルに上昇する。その後、ロールRが回転開始位置から90度程度回転したときに、前述した
図9(c)のように、シート1の先端部1がセンサユニット6の上部を通過する。その結果、
図10(a)のように、ロールRの回転角度が90度付近において、センサユニット6の出力がHレベルからLレベルに下降する。
【0044】
さらにロールRが逆回転を継続して回転開始位置から270度程度回転したときに、シート1の先端部がロールRの上方部に位置し、先端部1の自重によって
図10(b)のようにシート1に撓みが生じる場合がある。このような撓みが生じた場合には、
図10(b)のようにシート1のシート外面がセンサユニット6に接近する。この結果、
図10(a)のように、ロールRの回転角度が270度付近において、センサユニット6の出力がLレベルからHレベルに上昇する。その後、ロールRがさらに逆回転することによって、
図10(c)のように、シート1の撓み部分がロールRに巻き取られて、シート1がセンサユニット6から離れる。この結果、
図10(a)のように、ロールRの回転角度が350度付近において、センサユニット6の出力がHレベルからLレベルに戻る。
【0045】
ロールRの逆回転を継続させた場合には、このようなセンサユニット6の出力の変化が繰り返される。本実施形態においては、このようにセンサ出力が変化する場合にもシート1の先端部の位置を特定して、その先端部分をアーム部材4と分離フラッパー10との間のシート供給パス内に自動的に挿入して送り出すことができる(シート先端セット処理)。
【0046】
図11は、本実施形態におけるシート先端セット処理(自動ローディング)を説明するためのフローチャートである。
【0047】
CPU201は、シート先端セット処理に開始に先立ち、まずは、ロールRがセットされたか否かを判定する(
図6中のステップS1)。CPU201は、ロールRがセットされた後に、アーム部材4を「強ニップの押圧力」によって矢印A1方向に押圧する状態(強ニップ状態)に切り換える(
図6中のステップS2)。
【0048】
シート先端セット処理(
図6中のステップS3)において、CPU201は、ロールRを矢印C2の逆方向に回転(逆回転)させて(ステップS21)、センサ出力を保存する(ステップS22)。CPU201は、例えば、ロールRを一定速度で回転させて、センサ出力を一定の時間間隔毎に保存してもよい。また、より正確にシート1の先端部の位置を特定するために、ロールRの回転量に応じて出力されるロール回転量センサ36(
図5参照)のパルスに同期させて、センサ出力を保存してもよい。この場合、ロールRの回転側では一定である必要はない。センサ出力としては、ロールRが1回転する間のデータが収集できればよい。しかし、ロールRがセットされた際のシーと1の弛みを考慮して、ロールRを1回転以上(本例の場合は、1回転半(540度)以上)回転させて、データを収集する(ステップS23)。
【0049】
CPU201は、データの収集の終了後にロールRの回転を停止させ(ステップS24)、RAM203に保存されているセンサ出力のデータから、センサ出力の最大値Hdと最小値Ldを抽出する(ステップS25)。その後、それらの最大値Hdと最小値Ldとの差(Hd-Ld)がシート1の先端部の位置を特定するために必要な値(THa)を超えているか否かを判定する(ステップS26)。閾値THaは、固定値であってもよく、またはシート1の種類毎に設定しても良い。また、シート1が膨潤する高湿度環境、またはシート1のコシが強くなる低温低湿度環境などに応じて、値THaを変化させてもよい。
【0050】
差(Hd-Ld)が値(THa)を超えている場合には、CPU201は、最大値Hdと最小値Ldに基づいて、センサ出力のHレベルとLレベルを判定するための閾値THd1およびTHd2を算出する(ステップS26,S27)。閾値THd1およびTHd2は、信号の外乱などによるノイズ変動分wnを考慮して、ヒステリシスをもつ独立した閾値として設定される。センサ出力のHレベルからLレベルへの変化は閾値THd1を用い判定し、LレベルからHレベルへの変化は閾値THd2を用いて判定する。このように、ロールRを回転させたときのセンサ出力のデータに基づいて閾値THd1およびTHd2を設定する理由は、シートの種類によって光の反射特性が異なり、そのためセンサユニット6のセンサ出力の値が変動するおそれがあるからである。既知のシートの先端部の位置を特定する場合には、予めROM204(
図5参照)に保存された値を閾値THd1およびTHd2として設定してもよい。取得した最大値Hdおよび最小値LdのSN比が充分に大きい場合には、センサ出力のHレベルからLレベルへの変化およびLレベルからHレベルへの変化を判定するための閾値として、最大値Hdと最小値LdHdとの間の中間の単一の値を設定してもよい。
【0051】
その後、CPU201は、RAM203に保存されているセンサ出力のデータを分析し、ロールRの1周分のデータに基づいて、HレベルからLレベルへ変化した後におけるLレベルの継続期間PLを求める(ステップS28)。このLレベルの継続期間PLとして、ロール回転量センサ36(
図5参照)の出力パルス、または一定時間毎に得られるデータに基づいて、その継続期間PLに対応するロールRの回転角を算出してもよい。Lレベルの継続期間PLとして、ロールRの回転角A以上に対応する継続期間PLAが複数存在するように、センサ出力が複数回変化した場合、CPU201は、それらの中の最大の継続期間PLAmaxを選定する(ステップS29,S30)。その後、CPU201は、前述した
図9(b)のように、シート1の先端部がロールRの表面から剥がれて分離する分離位置を特定する(ステップS31)。具体的には、
図10(a)のように、最大の継続期間PLAmaxの直前におけるセンサ出力の変化点Paを特定する。その変化点Paは、前述した
図9(b)のように、シート1の先端部1がロールRの表面から剥がれて分離するときの回転位置(分離位置)に対応する。回転角A以上に対応する継続期間PLAが1つだけ存在する場合には、その継続期間PLA直前におけるセンサ出力の変化点Paから、シート1の先端部の分離位置を特定する(ステップS32,S33)。
【0052】
ステップS31またはS33においてシート1の先端部の分離位置が特定された後、CPU201は、その分離位置までロールRを矢印C2方向に逆転させる(ステップS34)。これにより、シート1の先端部1は、前述した
図9(b)のようにロールRの表面から剥がれて分離し、センサユニット6と従動回転体8との間におけるアーム部材4上に位置する。したがって、その後にロールRを矢印C1に正回転させることによって(ステップS35)、アーム部材4と分離フラッパー10との間のシート供給パス内に、シート1の先端部を自動的に挿入して送り出すことができる(自動ローディング)。
【0053】
先のステップS26において、差(Hd-Ld)が閾値THaを超えてないと判定された場合、および先のステップS22において、回転角A以上に対応する継続期間PLAが存在しないと判定された場合には、ステップS36に移行する。ステップS36においては、ロールRの回転を停止し、自動ローディングが実行できなかったことをユーザに報知すると共に、ユーザに対して、シート1の先端部をシート供給パス内に挿入するための手動操作を促す。
【0054】
このように本実施形態においては、センサユニット6の出力に一時的な変動が生じる場合にも、ロールRを逆回転させたときのセンサ出力に基づいて、シート1の先端部がロールRから分離するときのロールRの回転位置(分離位置)を特定することができる。その後、その分離位置までロールRを逆回転させてから、そのロールRを正転させることによって、シート1の先端部を自動的にシート供給パス内に挿入して送り出すことができる。
【0055】
(第3の実施形態)
図12は、本発明の第3の実施形態における制御系のブロック図である。センサユニット6は、前述した第1の実施形態と同様に、ロールRの表面との対向間隔に応じて出力が変化するセンサである。本実施形態においては、LEDの発光部6cに、CPU201の制御下にある調光機能付きのLEDドライバ6eが接続されており、発光部6cに流す電流を調整することにより、発光部6cの発光強度の増幅率を変更することができる。フォトダイオードの受光部6dには電流電圧変換回路6hおよび増幅回路6iが接続されており、CPU201の制御下にあるデジタルポテンシャルメータ6fの抵抗値を調整することにより、受光部6dの受光感度の増幅率を変更することができる。また、センサユニット6には、センサユニット6の増幅率(発光部6cの発光強度の増幅率、および受光部6dの受光感度の増幅率)などを記憶するために、不揮発性メモリのEEPROM6gが備えられている。
【0056】
図13は、ロールRを逆回転させたときのセンサユニット6の出力波形の説明図である。センサユニット6のセンサ出力の最大値Hdが上限判定値THmaxよりも大きくなったときには、センサ出力が飽和した可能性がある。センサユニット6のセンサ出力の最小値Ldが下限判定値THminより小さくなったときには、センサユニット6の感度が充分ではない可能性がある。また、最大値Hdと最小値Ldとの差が所定値未満の場合には、センサ出力が定常的なノイズの影響を受けて、シート1の先端部の位置の検出が難しくなるおそれがある。そのため、最大値Hdと最小値Ldとの差分が充分であるか否かを判定するための判定値も設定する。
【0057】
本実施形態は、前述した実施形態と同様のシート先端セット処理(自動ローディング)の初期段階において、ロールRを逆回転させて、そのときのセンサユニット6の検出信号の出力(センサ出力)に基づいてセンサユニット6の増幅率を調整する。
【0058】
図14は、センサユニット6の増幅率(センサ増幅率)を調整するための増幅率調整処理を説明するためのフローチャートである。
【0059】
まず、CPU201は、データ処理領域を初期化して、センサユニット6の出力データを処理するための領域を確保し(ステップS41)、その後、センサの増幅率の初期値を設定する(ステップS42)。前回の増幅率調整処理により調整されたセンサの増幅率はEEPROM6gに保存されており、その保存されている増幅率を初期値として設定する。増幅率が保存されていない場合には、所定の増幅率を初期値として設定する。その場合、増幅率の初期値は、操作パネル28によって予め入力されたロールRの種類、巻径、幅などに応じて、設定してもよい。ロールRの巻径および幅は、プリント装置本体において設定してもよく、または、プリント装置に対して有線もしくは無線によって接続されたパーソナルコンピュータなどの端末において、ドライバによって設定してもよい。さらに、温湿度センサを備えて、ロールRがセットされたときの環境温度および環境湿度に応じて、増幅率の初期値を設定してもよい。
【0060】
次に、CPU201は、ロールRを矢印C2方向に1回転以上回転させて、そのときのセンサ出力を取得し(ステップS43)、そのセンサ出力から、ロールRの所定回転角度毎に移動平均を求める(ステップS44)。本例の場合は、ロールRの2回転分のセンサ出力を取得して、ロールRの所定回転角度毎に移動平均を求める。その移動平均したデータの最大値Hdと最小値Ldを抽出し(ステップS45)、最大値Hdが
図13中の上限判定値THmax以上であるか否かを判定する(ステップS46)。CPU201は、最大値Hdが上限判定値THmax以上の場合には、発光部6cの発光強度の増幅率が所定範囲内(第1許容範囲内)にあるか否かを判定する(ステップS47)。そしてCPU201は、発光部6cの発光強度の増幅率が所定範囲内のときは、その発光強度の増幅率を低下させ(ステップS48)、それが所定範囲外のときには、受光部6dの受光強度の増幅率を低下させる(ステップS49)。これによって、センサ出力が飽和する事態を回避することができる。
【0061】
一方、CPU201は、最大値Hdが上限判定値THmax未満の場合には、最小値Ldが下限判定値THmin未満であるか否かを判定する(ステップS50)。CPU201は、最小値Ldが下限値判定値THmin未満の場合には、発光部6cの発光強度の増幅率が所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS51)。そしてCPU201は、発光部6cの発光強度の増幅率が所定範囲内のときには、その発光強度の増幅率を増加させ(ステップS52)、それが所定範囲外のときには、受光部6dの受光強度の増幅率を増加させる(ステップS53)。これにより、センサユニット6の検出感度を高めることができる。
【0062】
また、CPU201は、最小値Ldが下限値判定値THmin以上の場合には、最大値Hdと最小値Ldとの差(Hd-Ld)が所定の判定値未満であるか否かを判定する(ステップS51)。差(Hd-Ld)が所定の判定値未満である場合には、センサ出力が定常的なノイズの影響を受けて、シート1の先端部の位置の検出が難しくなるおそれがある。この場合には、センサユニット6の発光強度または受光強度の増幅率を増加させるために、ステップS4からステップS51に移行する。差(Hd-Ld)が所定の判定値以上の場合には、センサユニット6の発光強度および受光強度の増幅率が適切に調整されたと判断して、増幅率の調整処理を終了する。
【0063】
CPU201は、先のステップ48,S49,S52,S53において発光強度または受光強度の増幅率を調整した後は、それらの増幅率が所定範囲内の増幅率であるか否かを判定する(ステップS55)。つまり、発光強度が所定範囲内(第1許容範囲内)にあり、かつ受光強度が所定範囲内(第2許容範囲内)にあるか否かを判定する。発光強度および受光強度の増幅率が所定範囲内である場合には、それらの増幅率が適当か否かを再度確認するために先のステップS41に戻る。発光強度および受光強度の増幅率が所定範囲内の増幅率ではない場合には、増幅率が調整限度を越えたと判定して、エラー表示を出力する等のエラー処理を実行する。発光強度および受光強度の増幅率が所定範囲内の増幅率である場合に、ステップ48,S49,S52,S53において、それらの増幅率を増加および減少させた回数をカウントし、そのカウント値が一定数以上のときにエラー処理を実行してもよい。
【0064】
このように本実施形態においては、ロールRを1回転以上逆回転させたときにセンサ出力に基づいて、センサユニット6の発光強度および受光強度の増幅率を調整することにより、センサユニット6の出力の適正化を図ることができる。したがって、反射率などが異なる種々のシート1の先端部の位置を確実に特定することができる。
【0065】
(第4の実施形態)
図15から
図17は、本発明の第4の実施形態を説明するための図である。
【0066】
図15は、シート供給装置200のアーム部材に配置されるセンサユニット6の位置を説明するための図であり、
図15(a)においては巻径が大きいロールRがセットされ、
図15(b)においては巻径が小さいロールRがセットされている。本実施形態においては、
図15(a),(b)のようなロールRの巻径の如何に拘わらず、下式(1)の位置関係を満たすようにセンサユニット6が配備されている。また、紙管などの管にシート1が巻回されることによってロールRが構成されている場合には、その紙管などの管のみがセットされて、ロールRが最小の巻径となったときにも、下式(1)の位置関係は成立する。
α>β(α1>β1、α2>β2) ・・・ (1)
【0067】
図15(a)において、ロールRと分離フラッパー10aとが接する位置P1(ロールRに対する上側ガイドの当接位置)と、ロールRと回転従動体8とが接する位置P2(ロールに対する下側ガイドの当接位置)と、の間の距離をα1とする。また、
図15(b)における位置P1と位置P2との間の距離をα2とする。これらの距離α1とα1とをまとめて距離αという。また
図15(a)において、センサユニット6の検出位置と位置P2との間の距離をβ1とし、
図15(b)においては、センサユニット6の検出位置と位置P2との間の距離をβ2とする。これらの距離β1とβ1とをまとめて距離βという。センサユニット6の検出位置は、先端部の位置を検出可能なセンサユニット6の検出部の位置であり、例えば、発光部6cおよび受光部6dの位置に対応する。
【0068】
このようにセンサユニット6は、
図15(a)のように距離α1よりも距離β1が小さくなり、かつ
図15(b)のように距離α2よりも距離β2が小さくなる条件を満たすように、アーム部材上の位置に配備される。つまり、ロールRの巻径の如何に拘わらず、α>βの関係を満たすようにセンサユニット6の配備位置が設定されている。
【0069】
図16は、センサユニット6における発光部6cの発光光軸の説明図であり、
図16(a)においては巻径が大きいロールRがセットされ、
図16(b)においては巻径が小さいロールRがセットされている。
図16(a)における発光部6cの発光光軸I1とベクトルQ1との角度γ1、および
図16(b)における発光部6cの発光光軸I2とベクトルQ2との角度γ2は、いずれも下式(2)の関係を満たす。
0°<γ(γ1、γ2)<90° ・・・ (2)
【0070】
ベクトルQ1は、光軸I1とロールRとの交点P3における接線に沿って、ロールRの正転方向(矢印C1方向)を向くベクトルである。同様に、ベクトルQ2は、光軸I2とロールRとの交点P3における接線に沿って、ロールRの正転方向を向くベクトルである。光軸I1,I2をまとめて光軸Iともいい、ベクトルQ1,Q2をまとめてベクトルQともいい、角度γ1,γ2をまとめて角度γともいう。
【0071】
このようにセンサユニット6は、光軸I(I1,I2)をロールRの内部に延長した仮想線と、ベクトルQ(Q1,Q2)と、の成す角度γ(γ1,γ2)が鋭角となるように配置されている。
【0072】
図17は、センサユニット6における発光部6cと受光部6dとの配置関係の説明図である。
図17(a)は、シート供給装置200の要部をX軸方向から見た図であり、
図17(b)は、それをZ軸方向から見た図である。
【0073】
本実施形態においては、発光部6cと受光部6dはロールRの軸方向(X軸方向)に並んで配置されている。発光部6cと受光部6dをロールRの軸方向において隣り合わせすることにより、発光部6cの発光光軸と受光部6dの受光光軸がロールRの軸方向においてほぼ対向する。このように、発光部6cと受光部6dを配置することにより、ロールRの巻径の如何に拘わらず、シート1の先端部とセンサユニット6との対向間隔を検出することができる。すなわち、ロールRの逆回転によって、シート1の先端部が分離フラッパーの従動コロ10aを通過してアーム部材4上に自重落下したときに、そのシート1の先端部の位置を検出することができる。
【0074】
また、角度γを鋭角とすることにより、ロールRの逆回転によって、シート1の先端部1がアーム部材4上に自重落下してからセンサユニット6の上を通過するまでの間に、発光光軸Iとシート1の先端部の表面とが直角となる状態が存在することになる。すなわち、シート1の先端部が分離フラッパーの従動コロ10aを通過してから、アーム部材4上に自重落下するまでの間において、少なくとも一時的には、発光光軸Iとシート1の先端部の表面とが直角となる。このように直角となる状態においては、発光部6cから照射されてシート1の先端部の表面にて反射された反射光は、最も強い正反射光として受光部6dにより検知される。また、シート1の先端部が落下するアーム部材4の表面と、発光光軸Iと、のなす角度を90度に設定することにより、シート1の先端部がアーム部材4の表面に沿う形態となったときには、発光光軸Iとシート1の先端部の表面とが直角となる。
【0075】
このように、シート1の先端部1がアーム部材4上に自重落下してからセンサユニット6上を通過するまでの間に、受光部6dが最も強い正反射光を受光する状態が存在する。したがって、シート1の先端部1がアーム部材4上に自重落下したときに、センサユニット6のセンサ出力がより確実にHレベルとなり、シート1の先端部の位置を特定するため必要なセンサ出力をより確実に取得することができる。
【0076】
また、発光部6cと受光部6dをロールRの軸方向に並ぶように配置して、発光光軸と受光光軸とをほぼ対向させている。これにより、シート1の種類、ロールRの巻径の変化、シート1の先端部の挙動の変化などがセンサ出力に及ぼす影響を小さく抑えることができる。また、一連のセンサ出力において、受光部6dが正反射光を受けたときのセンサ出力の割合を大きくして、外光との影響によるノイズを小さく抑えることができる。仮に、上式(1),(2)の関係を満たさずに、α<β,γ>90°である場合には、センサユニット6の光軸が常に分離フラッパー10に向いて、シート1の先端部との対向間隔に応じたセンサ出力が取得できなくなる。
【0077】
センサユニット6の配備位置はアーム部材のみに特定されず、センサユニット6の光学的な特性などを考慮して、アーム部材以外の位置に配備してもよい。
【0078】
(第5の実施形態)
図18は、本発明の第5の実施形態におけるシート供給装置200の構成の説明図であり、
図18(a)においては巻径が大きいロールRがセットされ、
図18(b)においては巻径が小さいロールRがセットされている。
【0079】
本実施形態においては、ロールRと回転従動体8との接点における接線に沿ってロールRの正転方向を向くベクトルW(W1、W2)と、アーム部材4と、の関係が特定されている。すなわち、ロールRの巻径の如何に拘わらず、ベクトルW(W1、W2)とアーム部材4の表面との交点P4が存在するように、供給装置200が構成されている。また、この交点P4は、センサユニット6の発光光軸Iと、アーム部材4の表面と、の交点P5よりもシート1の搬送方向の上流側(
図18中の左方側)に位置する。
【0080】
このように供給装置200を構成することにより、ロールRを矢印C1方向に正転させてシート1を搬送する際に、シート1の先端部はベクトルWに沿ってアーム部材4に向かって移動する。したがって、シート1の先端部は、ロールRの巻径の如何に拘わらず、アーム部材4に接触しながら搬送されることになる。また、交点P4が交点P5よりも搬送方向の上流側に位置するため、ロールRの巻径の如何に拘わらず、シート1の先端部の搬送過程において、そのシート1の先端部がセンサユニット6上を通過する。よって、センサユニット6は、ロールRの巻径の如何に拘わらず、シート1の先端部との対向間隔をより確実に検出することができる。
【0081】
(第6の実施形態)
図19および
図21は、本発明の第6の実施形態の説明図である。
図19(a)は、センサユニット6の出力波形の説明図である。
図19(b)は、シート1の先端部がロールRの表面から正常に剥離した状態の説明図であり、
図19(c)は、静電気等の影響によって、ロールRの表面からのシート1の先端部の剥離量が正常時よりも小さい状態の説明図である。
図20(a),(b),(c)は、
図19(c)の状態から、ロールR矢印C1方向に正回転させたときの説明図である。
図21は、本実施形態におけるシート先端セット処理(自動ローディング)を説明するためのフローチャートである。
【0082】
図19(b)のように、シート1の先端部がロールRの表面から正常に剥離した場合には、センサユニット6のセンサ出力が
図19(a)中の波形W1のように変化する。すなわち、シート1の先端部が従動コロ10aの付近にある状態からロールRの矢印C2方向の逆転を開始し、ロールRが45度程度回転したときに、シート1の先端部が従動コロ10aを抜けて落下する。これにより、センサ出力がLレベルからH2レベルに変化する。さらに、ロールRが回転を開始してから90度程度回転したときに、
図19(b)のように、シート1の先端部がセンサユニット6の上部を通過することにより、センサ出力がHレベルからLレベルに変化する。その後、ロールRを矢印C1方向に正転させることにより、シート1の先端部を自動的にシート供給パス内に挿入して送り出すことができる。
【0083】
一方、
図19(c)のように、シート1の先端部の剥離量が正常時よりも小さい場合には、センサユニット6のセンサ出力が
図19(a)中の波形W2のように変化する。すなわち、シート1の先端部が従動コロ10aの付近にある状態からロールRの矢印C2方向の逆転を開始し、ロールRが45度程度回転したときに、シート1の先端部が従動コロ10aを抜けて落下する。さらに、ロールRが回転を開始してから90度程度回転したときに、
図19(c)のように、シート1の先端部がセンサユニット6の上部を通過することにより、センサ出力がHレベルからLレベルに変化する。その後、ロールRを矢印C1方向に正転させたときには、
図20(a)のようにシート1の先端部の剥離量が小さため、
図20(b)のようにシート1の先端部が従動コロ10aに衝突して、
図20(c)のようにシート1のジャムが発生するおそれがある。
【0084】
本実施形態における
図21のシート先端セット処理(自動ローディング)は、このようなジャムの発生を抑制する。前述した実施形態の
図8のフローチャートと同様の処理については、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0085】
CPU201は、シート先端セット処理に開始に先立ち、まずは、ロールRがセットされたか否かを判定する(
図6中のステップS1)。CPU201は、ロールRがセットされた後に、アーム部材4を「強ニップの押圧力」によって矢印A1方向に押圧する状態(強ニップ状態)に切り換える(
図6中のステップS2)。
【0086】
シート先端セット処理において、CPU201は、ロールRを矢印C2の逆方向に1回転以上回転(逆回転)させる(ステップS11)。
【0087】
CPU201は、ロールRの逆回転時に、センサユニット6のセンサ出力がHレベルからLレベルに変化したときの変化量(レベル変化量)を求め、そのレベル変化量が所定の閾値ΔH1(=H1-L)よりも大きいか否かを判定する(ステップS61)。ロールRが1回転以上逆回転してもレベル変化量が所定の閾値ΔH1(=H1-L)よりも大きくならないときは、シート1の先端部がロールRの表面から剥離していないと判定して、ステップS17に移行する。ステップS17においては、前述したように、ユーザに対して、シート1の先端部をシート供給パス内に挿入するための手動操作を促す。したがって閾値ΔH1は、シート1の先端部がロールRの表面から剥離しているか否かの判定基準となる。Lは、センサ出力の最低レベルである。
【0088】
CPU201は、センサ出力のレベル変化量が閾値ΔH1よりも大きい場合には、
図19(b)あるいは(c)のように、シート1の先端部がロールRの表面から剥離したと判定する。そして、センサ出力のLレベルが一定期間継続したことを条件として、ロールRの回転を停止させる(ステップS13,S14)。その後、CPU201は、センサ出力のレベル変化量が所定の閾値ΔH2(=H2-L)よりも大きいか否かを判定する(ステップS62)。レベル変化量が閾値ΔH2よりも大きい場合には、
図19(b)のように、先端部がロールRの表面から正常に剥離したと判定して自動ローディングを実行する(ステップS15)。一方、レベル変化量が閾値ΔH2よりも大きくない場合には、
図19(c)のように、ロールRの表面からのシート1の先端部の剥離量が正常時よりも小さいと判定する。このように、シート1の先端部の剥離量が正常時よりも小さい場合には、そのシート1の剛度によっては、そのシート1の自動ローディングが可能であるため、そのシート1の剛度が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS63)。シート1の剛度は、例えば、ユーザによって入力されたシート1の種類に関する情報に基づいて判定する。シート1の剛度を判定するための判定基準は、シート1の種類に関する情報の他、シート1の幅サイズ、シート1の使用状態、プリント装置の使用環境などに応じて設定してもよい。シート1の剛度が所定値以上の場合には、ステップS15に移行して自動ローディングを実行し、シート1の剛度が所定値未満の場合には、ステップS17に移行して、ユーザに対して、シート1の先端部をシート供給パス内に挿入するための手動操作を促す。
【0089】
このように、センサユニット6のセンサ出力に応じてシート1の先端部の剥離量を検出し、その剥離量とシート1の剛度が所定の条件を満たすことを前提として、自動ローディングを実行する。これにより、プリント装置内におけるシート1のジャムの発生を回避することができる。
【0090】
(第7の実施形態)
図22および
図23は、本発明の第7の実施形態の説明図である。本実施形態においては、シート1の先端部を自動的にシート供給パス内に送り出せない場合、つまり自動ローディングが実行できい場合に、手動給紙のためにシート1の先端部を所定の範囲内に位置させる。
図22は、シート1の先端部の停止位置の説明図であり、
図23は、本実施形態におけるシート先端セット処理(自動ローディング)を説明するためのフローチャートである。
【0091】
シート1の先端部を自動的にシート供給パス内に送り出せない場合には、
図22のように、従動コロ10aと従動回転体9との間の範囲θ1内(視認可能範囲内)にシート1の先端部を位置させるように、ロールRを矢印C2方向に逆回転させる。その範囲θ1は、プリント装置に対してロールRが脱着される際に、ユーザによって目視可能なロールRの周面の範囲を含む。このような範囲θ1内にシート1の先端部を位置させることにより、ユーザにシート1の先端部を目視により認識させて、シート1の先端部をシート供給パス内に挿入する手動操作の作業性を向上させる。
【0092】
本実施形態のシート先端セット処理においては、
図23のように、前述した第6の実施形態における
図21のシート先端セット処理に対して、シート1の先端部を所定の範囲θ1内の位置に停止させための動作(ステップS71)が追加されている。CPU201は、ステップS61,S13,S16の処理情報に基づいてシート1の先端部の位置を特定し、その後、ロールRの回転を停止させてから(ステップS14)、センサ出力のレベル変化量と閾値ΔH2とを比較する(ステップS62)。レベル変化量が閾値ΔH2よりも大きい場合には、前述したように、シート1の先端部がロールRの表面から正常に剥離したと判定して自動ローディングを実行する(ステップS15)。レベル変化量が閾値ΔH2よりも大きくない場合には、前述したように、シート1の剛度が所定値以上であることを条件として自動ローディングを実行する(ステップS63,S15)。シート1の剛度が所定値未満の場合には、シート1の剛度が低くてジャムが発生するおそれがあるため、先のステップS61,S13,S16において位置が特定されたシート1の先端部を範囲θ1内の位置させるように、ロールRを矢印C2方向に逆回転させる。その後、ステップS17に移行し、ユーザに対して、シート1の先端部をシート供給パス内に挿入する手動操作を促す。
【0093】
このように、シート1の先端部をユーザの視認が可能な所定の範囲内に位置させることにより、ユーザによるシート1の先端部の視認性を向上させることができる。また、パネル等の表示による注意喚起と合わせることにより、ユーザは、シート1の先端部をシート供給パス内にスムーズに挿入することができる。これによりユーザは手動給紙を容易に行うことができる。
【0094】
本例において、ユーザによるシート1の先端部の視認性の観点から、
図22のように、従動コロ10aと従動回転体9との間の範囲θ1内をシート1の先端部の停止位置とした。しかし、ロールRの回転量を減らして、手動によるシート1の先端部の挿入操作に要する時間の短縮等を図る場合ために、範囲θ1とは異なる、従動コロ10aと従動回転体9との間の範囲内に、シート1の先端部を停止させてもよい。
【0095】
(変形例)
センサユニット6として光学センサに限らず、検出対象であるシート外面までの距離に応じてその出力値が変化するセンサであれば、光学センサ以外の距離センサを用いることができる。例えば、対象物までの距離を非接触で検出する超音波センサや静電センサなどの距離センサを用いることもできる。
【0096】
プリント装置は、2本のロールシートのそれぞれに対応する2つのシート供給装置を備える構成のみに限定されず、1つあるいは3つ以上のシート供給装置を備える構成であってもよい。また、プリント装置は、シート供給装置から供給されるシートに対して画像をプリントする構成であればよく、インクジェットプリント装置のみに限定されない。また、プリント装置のプリント方式および構成も任意である。例えば、プリントヘッドの走査と、シートの搬送動作と、を繰り返して画像をプリントするシリアルスキャン方式、あるいは長尺なプリントヘッドと対向する位置に対してシートを連続的に搬送して画像をプリントするフルライン方式のいずれであってもよい。
【0097】
また本発明は、プリント媒体としてのシートをプリント装置に供給するシート供給装置の他、種々のシート供給装置に対して適用可能である。例えば、スキャナやコピー機などの読取装置に読み取り対象のシートを供給する装置、およびシート状の加工材料を切断装置などの加工装置に供給する装置などに対しても適用することができる。このようなシート供給装置は、プリント装置、読取装置、加工装置などの装置とは別に構成することができ、またシート供給装置用の制御部(CPU)を備えてもよい。
【0098】
シート供給装置は、前述したように、ロールRに対して、アーム部材4に連結された従動回転体8,9をロールRの下方側から圧接させ、アーム部材4に搭載されたセンサユニット6を用いて、ロールRの先端部の位置を検出する構成に限定されない。例えば、
図24のように、ロールRの下側に設けられた固定構造体40に従動回転体8,9およびセンサユニット6を配置し、ロールRの巻径の如何に拘わらず、ロールRの自重によって、ロールRが従動回転体8,9に圧接する構成であってもよい。また、不図示の駆動機構を用いて、ロールRを従動回転体8,9に圧接させてもよい。
【0099】
本発明は、紙、フィルム、および布などを含む種々のシートの供給装置、および、その供給装置を含むプリント装置および画像の読取り装置などの種々のシート処理装置として広く適用することができる。画像の読取り装置は、供給装置から供給されたシートの記録画像を読取りヘッドによって読取る。また、シート処理装置は、プリント装置および画像の読取り装置のみに限定されず、供給装置から供給されたシートに対して種々の処理(加工、塗布、照射、検査など)を施す装置であればよい。シートの供給装置を独立した装置として構成する場合には、その装置にCPUを含む制御部を備えることができる。また、シートの供給装置をシート処理装置に備える場合には、それらの供給装置およびシート処理装置の少なくとも一方にCPUを含む制御部を備えることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 シート
6 センサユニット(センサ)
6c 発光部
6d 受光部
4b ガイド部(下側ガイド)
10 分離フラッパー(上側ガイド)
100 プリント装置
200 シート供給装置
400 プリント部
R ロール