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特許7423674半固体表面から微生物増殖物を採取するデバイス及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】半固体表面から微生物増殖物を採取するデバイス及び装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20240122BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C12M1/26
G01N1/04 V
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022041255
(22)【出願日】2022-03-16
(62)【分割の表示】P 2017553179の分割
【原出願日】2016-04-08
(65)【公開番号】P2022079517
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】62/144,574
(32)【優先日】2015-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】ワイルズ,ティモシー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】リヴィングストン,デュワイト
(72)【発明者】
【氏名】シンゲリン,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,ウィリアム,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ラングホフ,ブリアン,ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】パテール,ヴィクラム
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,シーン
(72)【発明者】
【氏名】イェー,ミン-ヒシング
(72)【発明者】
【氏名】ブラッシュ,マイケル,エー.
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/147610(WO,A1)
【文献】特表2014-530358(JP,A)
【文献】特表2010-540971(JP,A)
【文献】特表2002-532684(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01502649(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/26
G01N 1/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半固体表面から生体サンプルを採取する自動方法であって、
ピペットチップを受けるようになっているロボットピペッターを準備することと、
前記ピペットチップを、対象のコロニーが配置されている半固体表面に接触するまで下降させて、前記ピペットチップが前記対象のコロニーと接触するようにすることと、
前記ピペットチップを、前記対象のコロニーを支持する前記半固体表面と接触するまで更に前進させ、それにより、前記半固体表面とのシールを形成することと、
エアアシストを用いて前記半固体表面上に配置された前記対象のコロニーから生体サンプルの一部を採取することと、
前記半固体表面及び前記対象のコロニーと接触する状態から前記ピペットチップを後退させることと、
前記ピペットチップをベッセル内に配置された流体と接触させることと、
前記ピペットチップから前記ベッセル内に配置された前記流体中に内容物の一部を分注し、次いで、前記生体サンプルの少なくとも一部を前記ピペットチップ内に引き戻し、それにより、前記ピペットチップによって採取される前記生体サンプルの一部に剪断力をもたらすことと、
前記ピペットチップから前記ベッセル内に配置された前記流体中に前記生体サンプルの少なくとも一部をエアアシストを用いて分注することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記半固体表面は、栄養培地の表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ピペットチップの静電容量を監視することを更に含み、監視される静電容量の変化は、前記ピペットチップと前記対象のコロニーとの間の接触を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
静電容量の変化によって前記ピペットチップと前記生体サンプルとの間の接触が示されるまで、前記ピペットチップの静電容量の監視を続けることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ピペットチップは、前記生体サンプルを採取する開口を有し、該開口は、約0.2mm~約0.7mmの内径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記内径は、約0.2mm~約0.5mmであり、外径は、約1.2mmまでである、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2015年4月8日に出願された米国仮特許出願第62/144,574号の出願日の利益を主張し、この米国仮特許出願の開示は、本明細書に引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、微生物を溶液に入れた懸濁液を調製するため、半固体表面上で増殖した微生物のコロニーから微生物を含む1つ以上のサンプルを採取するデバイス及び装置が開示される。
【0003】
医療診断における通常の診療として、血液等の生体サンプルが患者から採取され、病気の診断及び治療のため分析される。適応症に応じて、サンプルを分析して、微生物がサンプル中に存在するか否かを、例えば、血液培養(Becton, Dickinson and Company社のBACTEC(商標)FX及びBACTEC(商標)9000シリーズ等)によって、又は寒天プレート上での画線培養(手動、又はBecton, Dickinson and Company社によって販売されているInnova(商標)等の自動器具を用いる)によって判断することができる。微生物が存在すると判断された場合、存在する特定の微生物を同定することと、治療を円滑にするために微生物の抗生物質耐性/感受性を特定することとの双方に対し、医学的にも経済学的にも正当性がある。
【0004】
多くの種類の微生物(以下、微小生物とも称する)、特に、細菌及び単細胞真菌は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(「Maldi」)等の質量分析(「マススペック(mass spec)」)プロセスによって同定することができる。また、臨床検体からの微生物単離株の増殖を阻止することにおいて抗菌薬の有効性を分析することも望ましい。このような分析は、抗菌薬感受性試験(「AST」)として知られている。MALDI分析及びAST分析の双方の準備において、微生物コロニーは、半固体培地から採取され、重懸濁液(heavy suspension)サンプルの作製に用いられる。
【0005】
一般的に、サンプル調製のためのコロニーからのサンプルピッキングのプロセスは、手動プロセスである。自動システムは進歩してきているが、現在の自動プロセス及び自動デバイスは、単一のコロニーから少量のサンプルしか取り出せない。これらのデバイスは、複数のコロニー内に含まれるバイオマスを取り出して、後続の試験(例えば、MALDI又はAST)に必要とされる十分なサンプルを得るために、多数回のピッキングを必要とする。さらに、これらのシステムは、微小生物をMaldiプレパレーションプレートに直接塗布する直接塗抹法を用いる。懸濁液サンプルに使用される微生物増殖物(microbial growth:微生物増殖株)を効率的に採取する、改良されたデバイスが模索されている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示されるデバイスは、半固体表面上で増殖した微生物を採取し、更なる同定(MALDI又は他の技法を用いる)及び/又はAST試験に用いることができる、微生物を溶液に入れた懸濁液を調製するための「単回ピッキングツール(one pick tool)」である。
【0007】
本発明の1つの実施形態は、シャフトとチップとのアセンブリを含む。シャフトは、近位端部及び遠位端部を有し、チップは、シャフトに取り付けられ、シャフトから延出する。チップは、チップを微生物のコロニーと接触させるとそこに微生物が採取される適合面を有する。適合面は、グリッドパターンとするか又は直径を変化させることができる。適合面は、ブレード、突起、スパイク、又はリッジを含むこともできる。適合面は、微生物の放出にも役立つことができる。
【0008】
別の実施形態において、アセンブリは、シャフトの近位端部に又はその近くに位置するキャビティ及び1つの通気チャネル又は複数の通気チャネルを有し、それにより、微生物の採取のための適合面がもたらされる。キャビティは、グリッドによって覆うことができるか、又は1つ以上のブレードを有することができる。ブレードは、螺旋状若しくは直線状とすることができるか、又はキャビティから延出することができる。
【0009】
更に別の実施形態において、アセンブリは、取外し可能なチップを有することができる。取外し可能なチップは、磁力、圧入、又は螺合によってアセンブリの近位端部に取り付けられるシースとすることができる。シースは、微生物採取を更に円滑にするために、スクープを有することができる。
【0010】
別の実施形態において、ピッキングツールは、ロッドとスリーブから延出するブレードとのアセンブリを備えることができる。ロッドは、近位端部及び遠位端部を有し、遠位端部は、ツールの取扱いを円滑にする普通の(neutral:特徴のない)延長部である。ロッドの近位端部は、径方向に延在する単数又は複数のブレードを有する。ピッキングツールが、選択された微生物サンプルの位置を特定し、その範囲を定めると、ロッドとブレードとのアセンブリは、ロッドの遠位端部を操作することによってスリーブの下方に前進し、微生物の採取を円滑に行うことが可能である。ロッドとブレードとのアセンブリは、遠位端部を操作することによって後退し、微生物の放出を円滑に行うことも可能である。
【0011】
更に別の実施形態において、ピッキングツールは、非磁性ロッドと磁性バーとのアセンブリを備える。非磁性ロッドは、遠位端部及び近位端部を有し、遠位端部は、ツールの取扱いを円滑にする普通の延長部である。磁性バーは、非磁性ロッドの近位端部から径方向に延在する。アセンブリは、磁性バーの自由な回転を可能にする、少なくとも頂部開口を有するチューブ内に収容される。チューブは、アセンブリを越えて延在し、凹部を形成する底部を有する。この実施形態は、スクレーパーの頂部に取り付けられてスクレーパーアセンブリを形成する強磁性ワイヤを更に備える。スクレーパーアセンブリは、チューブの凹部内で磁力によって磁性バーに取り付けられる。ピッキングツールが、選択された微生物の位置を特定すると、非磁性ロッドの遠位端部が操作され、スクレーパーアセンブリによってチューブの凹部内に微生物を採取する。非磁性ロッドの遠位端部は、チューブの凹部からの微生物の放出を円滑にするように操作することもできる。遠位端部は、手動で操作しても自動で操作してもよい。
【0012】
以下、本発明を更に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本明細書に記載のピッキングツールの端部の実施形態を示す図である。
図2図1の端部のチップの実施形態の詳細図である。
図3図1に示されているピッキングツールの端部の代替的なチップの幾何学的構成の詳細図である。
図4図1に示されているピッキングツールの端部の代替的なチップの幾何学的構成の詳細図である。
図5A図1に示されているピッキングツールの端部のチップの幾何学的構成の更なる特徴部の詳細図である。
図5B図1に示されているピッキングツールの端部のチップの幾何学的構成の更なる特徴部の詳細図である。
図5C図1に示されているピッキングツールの端部のチップの幾何学的構成の更なる特徴部の詳細図である。
図5D図1に示されているピッキングツールの端部のチップの幾何学的構成の更なる特徴部の詳細図である。
図5E図1に示されているピッキングツールの端部のチップの幾何学的構成の更なる特徴部の詳細図である。
図5F図1に示されているピッキングツールの端部のチップの幾何学的構成の更なる特徴部の詳細図である。
図5G図1に示されているピッキングツールの端部のチップの幾何学的構成の更なる特徴部の詳細図である。
図5H図1に示されているピッキングツールの端部のチップの幾何学的構成の更なる特徴部の詳細図である。
図5I図1に示されているピッキングツールの端部のチップの幾何学的構成の更なる特徴部の詳細図である。
図6】ピッキングツールがスクープ部分又はスパチュラ部分を有する、本発明の実施形態を示す図である。
図7図1に示されているピッキングツールの端部が、プラスチックシースを備える金属プローブである、チップの別の実施形態を示す図である。
図8】本発明の1つの実施形態に係る、微小生物を採取するための取外し可能なシース及び押し機構を備える、図1の端部に対するチップの別の実施形態を示す図である。
図9】ピッキングツールの1つの実施形態並びにサンプルを採取及び放出する単回ピッキングプロセスの斜視図である。
図10】マグネチックスターラーアセンブリを使用する本発明の1つの実施形態の分解部分を示す図である。
図11】本発明の1つの実施形態のマグネチックスターラーアセンブリを示す図である。
図12図11A図11B、及び図11Cのアセンブリの斜視図である。
図13図11Dに示されているツールを用いる本発明の1つの実施形態に係る、マグネチックスターラーアセンブリを用いるピッキングプロセスを示す図である。
図14】本発明の1つの実施形態としてのピペットシステムを示す図である。
図15】本発明の1つの実施形態であるマイクロ特徴パターンを示す図である。
図16図15のマイクロ特徴パターンを有するピッキングツールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に開示のピッキングツールの実施形態は、或る表面から所望の量の生体サンプルをピッキングすることが可能である。上述したように、ピッキングツールは、栄養培地(寒天、培養培地等を指す)の表面に形成されたコロニーの形態のサンプル(例えば、細菌、真菌等のような微小生物)を採取するのに用いられる。本明細書に記載のピッキングツールによって採取されるサンプルの量は、微生物を溶液に入れた重懸濁液(約1×10CFU/ml~約1×1010CFU/ml)を調製するのに十分であることが好ましい。目標は、約3×10CFU/mlである。好ましい実施形態において、ツールは、単回ピッキングで十分な量のサンプルを得ることが可能である。「単回ピッキング」ツールは、後続のMaldi同定に用いる重懸濁液を調製するのに十分なサンプルを、1回のピッキングで得られるように適合されたサンプル採取面を有するように構成されている。好ましい実施形態において、同じ懸濁液が、抗菌薬感受性試験(AST)のためのサンプル源としても用いられる。
【0015】
ピッキングツールは、シャフトとチップとのアセンブリを備える。シャフトは、ツールの取扱いを円滑にする普通の延長部である。シャフトは、遠位端部及び近位端部の双方を有する。シャフトの遠位端部は、ピッキング及び放出のプロセスを円滑に行うように自動又は手動で操作することができる。ピッキングツールの近位端部は、微生物の採取又は取出しのための適合面を有するチップを備える。チップは、シャフトとは別個の部品とすることができるか、又は、シャフト及びチップは、一体的に統合することができる。
【0016】
ツールは、自動ピッキングシステムの一部であるように意図され、そのため、ツールは、ロボットデバイス又は本明細書に記載のツールに好適な他の機械的キャリアに収容される。本明細書に記載のツールの保持及び操作に用いるのに好適なロボットデバイス及び他の機械的デバイスは、当業者には十分既知であり、本明細書において詳細には記載しない。本明細書に記載のツールは、手動で取り扱うこともできるが、ツールの自動動作が好ましい。
【0017】
ツールは、多様な方法でキャリアに取り付けることができる。例えば、ツールは、磁力によるか、吸引力を用いるか、又は機械的な取付けによって(例えば、キャリアの雌ねじ部によって雄ねじ部を受けるか又は摩擦嵌めによって)取り付けることができる。ツールをキャリアに取り付けることができる種々の方法は、当業者には十分既知であり、本明細書において詳細には記載しない。ツールは、ツールがキャリアに「スナップ留め」され、押出し又は引出しによってキャリアから取り外されるように、圧入によって取り付けることもできる。ツールは、通常、採取されたサンプルが更なる処理のためにツールから放出されると、キャリアから取り外される。
【0018】
ピッキングツールは、目標のサンプルが配置されている表面に運ばれる。通常、この表面は、サンプルのコロニーが形成されている培養培地表面である。ピッキングツールがロボットデバイスによって運ばれる実施形態において、デバイスは、ピッキングツールと培地との相対位置を感知し、目標のコロニーが位置する培地の表面上の位置にピッキングツールを前進させる。ピッキングツールがサンプルを取得した後、ピッキングツールは、培地表面から引き戻され、それにより、培養プレート(例えば、培養皿又はペトリ皿)に配置された寒天の表面からサンプルが取り出される。デバイスは、コロニー間のクロスコンタミネーションを考慮しない場合、ピッキングの合間の洗浄を行わずに複数のコロニーからサンプルを取り出すことができる。
【0019】
ピッキングツールは、サンプルのピッキング及び/又は放出を円滑にするように、特徴部又は改質部(例えば、植毛加工、多孔質、粗面、成形、テクスチャ加工、孔、又は海綿状の特徴部)を伴う適合されたピッキング表面を有することができる。ピッキング表面の全体的な寸法は、約1ミリメートル~約2ミリメートルである。ピッキング表面の寸法は、ピッキングツールのサイズ及びピッキングされるコロニーのサイズによって制限される。適合面の改質部は、設計選択上の問題であり、適合面の選択に影響する要因は、ピッキングツールのサイズ、コロニー及びテクスチャ加工のサイズ、並びにコロニーの他の性質である。或る特定の実施形態において、これらの表面適合部又は改質部は、約1000μm以下の特徴部サイズを有することから、マイクロ特徴部とみなすことができる。或る特定の実施形態において、マイクロ特徴部は、約100μm~約500μmのオーダーの1つ以上の寸法を有する。本明細書において用いられる場合、マイクロ特徴部は、約1000μmまでのナノメートルスケールの寸法を有する特徴部を含む。マイクロ特徴部は、広範な規則パターン及び不規則構成で配向することができる。本明細書において、多くの例が例示目的で提供される。ツールの適合面は、ベント又は毛細管型ギャップ等の特徴部を有することもでき、それにより、コロニーがピッキングされる際、ツールのキャビティ内に微生物を受け入れることが可能である。これらの特徴部又は他の特徴部(例えば、ベント、穴等)は、微生物を溶液中に放出するためにピッキングツールを溶液内に入れるとき、液体がツールを通って流れることが可能であることで、ツールからの微生物の除去も円滑にすることができる。
【0020】
ピッキングツールは、半固体培地表面からバイオマスを取得するために、回転、垂直上下動、又は別様に操作することができる。溶液内に入れる際、ツールは、微生物の放出を円滑にするために揺り動かすことができる。例えば、ツールを、回転、振動、又は上下動させ、更なる処理のために、ツールから溶液中へのサンプルの放出を行うことができる。ツールは、ピッキングツールからのサンプルの放出、又はその後の懸濁液中におけるピッキングされたサンプルの均質化を更に円滑にする撹拌機構に組み込むか、又は撹拌機構と連動することもできる。
【0021】
単回ピッキングツールの多様な実施形態が以下の図において記載されている。
【0022】
図1は、本明細書に記載の本発明の複数の実施形態の斜視図である。図1は、ピッキングツールの端部(すなわち、シャフト100及び頂部)を示している。シャフト100は、ピッキングツールの柄部に収容されるか又は別様に柄部に取り付けられる。本明細書におけるピッキングツールは、手動で又は自動システムにおいて使用することができる。手動システムでは、ピッキングツールのシャフトは、ツールの遠位部分に、ツールの手動操作用の柄部を有する。自動システムでは、ピッキングツールのシャフト100は、ロボット機構によって収容される。上述したように、ピッキングツールは、任意の従来の取付け機構(例えば、圧入、吸引、螺合等)によってロボット機構に取り付けられ、ロボットは、ピッキングツールを位置決めし、サンプルを採取し、更なる処理のためにサンプルを移植する(deposit)ように操作される。シャフト100の近位端部におけるチップは、サンプルを採取するのに適合された表面を有する。チップは、平坦面101を有するか、又は捕集するコロニーにチップを接触させるだけでバイオマスの捕集を円滑に行う格子面若しくはグリッド面102等の特徴部を有することができる。チップは、チップから溶液中にサンプルを放出するのを円滑にするように、湾曲ブレード103、直線形ブレード104、小突起105、リッジ106、又は他の構成を有することもできる。
【0023】
図2は、ツールの種々の実施形態を示している。図2A図2Dは、ピッキングツールの直径に関する変形形態を示している。ツールは、十分に分離されていない非常に小さいコロニーをピッキングするために、非常に小さい直径(0.5mm)を有することができる。代替的には、ツールは、大きいコロニーをピッキングするために、より大きい直径(10mm)を有することができる。図2E及び図2Fは、ピッキングツールの種々の異なる表面の変形形態を示している。当業者は、コロニーのピッキングに要求される精度と、1つ以上の隣接するコロニーからのピッキングを回避する必要があることとを理解している。さらに、寒天表面を変更することができる(例えば、チョコレート寒天は、サブローデキストロース寒天とは異なる表面及びコンシステンシーを有する)。異なる寒天表面からの微生物採取の正確さは、寒天に対するピッキングツールの圧力に影響される(ピッキングツールの表面積がより小さいと、寒天に対してより大きい力を及ぼす)。ツールの重量もまた、より重いツールの方がより軽いツールよりも寒天をより深く掘り進むことによって、コロニーピッキングの正確さに影響を与えることができる。ツールの重量が一定であると仮定すると、より大きい表面積を有するチップは、より柔らかい寒天表面に使用することができ、一方、より小さい表面積を有するチップは、より固い寒天表面に使用することができ、それにより、ピッキング中の寒天に対するピッキングツールの圧力を増大させることができる。
【0024】
或る特定の実施形態において、ピッキングツールは、マイクロサイズ又はナノサイズのパターン、特徴部、又は表面改質部を有し、これらは、本明細書においてマイクロ特徴部と称される。マイクロ特徴部は、約1000μm以下の寸法を有する。いくつかの実施形態において、マイクロ特徴部のサイズは、約100μm~約500μmの範囲である。図15を参照すると、マイクロ特徴パターンの2つの例が示されている。このような特徴部は、1401、1402で示されている。これらの特徴部は、表面張力、摩擦等を制御する表面をもたらす。これらは多様な材料で設けられる。図示のパターンは、このようなパターンをもたらす従来のプロセスを用いて形成することができる。例えば、このようなパターンは、エラストマー材料の成形、型押し加工、エッチング加工等とすることができる。このようなパターンは、ピッキングツールのチップ上のマイクロ特徴部として機能することができ、これらのチップは、図2A図2F又は本明細書内の他の箇所に示されているチップと同様である。このようなパターンは、図16において、約30mmの直径を有するピッキングツールのチップ上に示されている。図16に示されているマイクロ特徴部1501は、約100μm~約500μmの寸法である。
【0025】
図3は、サンプル採取用の接触面の上方に空間を有する適合されたチップの幾何学的構成を示している。チップは、図3Aに示されているように凹状の部分を有する平坦面とすることができ、この凹状の部分に、採取中、サンプリングされるバイオマスが保持される。別の実施形態において、チップは、図3Bにおいて骨組部として示されている孔のあいた捕集面を有する。他の実施形態において、チップは、図3Cに示されているようにシャフトから延びるリップ状延長部301を有する。リップ状延長部301には、斜面が付けられ、それにより、サンプルバイオマスが、シャフトの回転につれて、延長部の斜面上を前進して上るようにする。斜面は、隆起した延長部縁を有し、サンプルが斜面を上がって前進する際、サンプルを延長部の上に維持する。リップ状延長部301は、溶液内でピッキングツールを動かすことによって生じる剪断力により、溶液がツールからサンプルを強制的に落とすため、バイオマスサンプルの放出にも役立つ。
【0026】
図4は、サンプルバイオマスを捕集することが可能なチップの他の実施形態を更に示している。チップは、周縁部にあるカラー401と、チップの中央を通る二分割バー又はスクレーパー402、404とを有することができる。カラー401は、バイオマスを保持するリザーバーをもたらすことでサンプルバイオマスの採取に役立ち、一方、二分割スクレーパー402、404は、回転の際、バイオマスをカラーのリザーバー内にすくい取る。図4A及び図4Bは、直線的な二分割スクレーパー402を示し、一方、図4C及び図4Dは、螺旋形の二分割スクレーパー404を示している。
【0027】
チップは、チップを貫通する1つ以上の通気チャネル403を有することもできる。通気チャネルにより、チップがサンプリングされるバイオマスと接触して回転する際に、チップの隙間にバイオマスサンプルが押し込まれることによって、サンプルバイオマスの採取が円滑になる。通気チャネル403により、チップから溶液中にサンプルバイオマスを吐出することも可能である。放出時、サンプルが放出される溶液(例えば、ブロス、水等)は、チャネル403を通って流れ、チップのキャビティからサンプルを押し出す。図4B及び図4Dは、通気チャネルを有するピッキングツールの実施形態を示している。
【0028】
図5A図5Iは、本発明に係るピッキングツールのチップの更なる実施形態を示している。チップは、「ブレード」(プロペラブレードの形態)が取り巻いている中央穴501を有することができる。ブレードは、チューリップ型503又はパドル型504又はプロペラ505等の多様な形態を有することができ、多様な構成で配置することができる(例えば、螺旋状502、直線状503又は504)。そのような「ブレード」は、サンプルバイオマスのより良好な採取及び保持を円滑に行う、より深い凹部を提供する。ブレードは、502、503、及び505のようにチップから延出するか、又は505のようにチップに埋設することができる。
【0029】
図5Eを参照すると、中央表面特徴部504がチップ上にあり、中央表面特徴部504は、接触時にコロニーを二分して、その物質を凹ポケット501内に押し上げ始める。この特徴部は、ツールが回転するとき、表面スクレーパーとしても機能し、コロニー物質の寒天表面からの除去を完了する。この実施形態では、中央表面特徴部504のいずれの側にも凹ポケットがある。
【0030】
図5Eに示されているツールの周囲の更なるスクレーパー511は、回転時に凹ポケット501内にピッキングされたコロニー物質を保持する。
【0031】
4つのスライドスロット512は、ピッキングツールから溶液中へサンプルを放出する間、希釈液に沈められた場合、回転時に希釈水の流れが凹ポケット501にアクセスすることを可能にする。凹部501を通る希釈液の流れは、凹部501内に採取したピッキングされたコロニー物質を取り除ける。
【0032】
本明細書において想定されるピッキングツールアセンブリの或る特定の実施形態は、中央ピン又はチューブ522において、ピッキングモジュールからピッキングツールを排出することが可能なショルダー特徴部(図示せず)を有する。
【0033】
図4Aを再び参照すると、別の実施形態は、中央穴又は孔410を有するが二分割スクレーパー402を有しないピッキングツールである。この実施形態では、中空コアピッキングツールが取り付けられるピッキングモジュールが、空気式機能又は流体式機能を有する場合、この中空コア又は通路は、「ストロー特徴部」として機能し、物質を引っ張る又は吸い上げるのに役立ち、また、物質を取り除けるのを補助する必要に応じて、希釈液が双方向に流れることを可能にする。この実施形態では、中空コアピッキングツールの取付け部は、ストローを通して正及び負の空気流を供給することができるように、器具の制御下にある空気通路(air lead)を有する。これにより、以下が可能になる。すなわち、i)プレートからコロニーを引き出す、更なる分析のためにコロニーが吐出される希釈液中にコロニーを押し入れる、iii)安価な解決策である、iv)ピッキングツールのチップの表面濡れ性に対するコロニー移送の感受性の問題を回避する、異なるコロニータイプに適した条件を与えるように調整可能な押引圧力又は体積をもたらす(すなわち、異なる密度及びコンシステンシーを有するコロニーは、採取及び吐出に関して異なる要件を有する)、v)コロニーを表面から「バキューム」することによって、より小さい直径範囲からより多くのコロニーを採取する、vi)ピッキングツールに溶液を事前充填し、吐出及び混合を補助することができる、採取及び吐出のために空気アシストを伴って低エアロゾルの混合を可能にする。
【0034】
図5Cの実施形態は、チューリップ型設計と称される。このチップ形態は、マイクロタイタートレイのマイクロタイターウェルから一連の希釈液を作製する液体である液体(1つの実施形態では25μlのオーダーであるが、個々のチップによって取得される流体の量は、主に設計選択上の問題である)を引き上げて保持する。この設計は、目標の流体内での回転中に「チューリップ花弁」503スロット513内に流体を保持するのに毛細管特性を用い、次いで、スロットが、保持している流体を、移送及び回転の後、次の希釈液チューブと混合することを可能にした。スロット513は、花弁503間に流体の流れを引き起こし、採取したサンプルをそこから取り除ける。
【0035】
図5Cのチップは、上述の中空チューブと一体化して、双方の設計の利点の組合せをもたらすことができる。図5Cの実施形態は、図5D及び図5Hに示されている実施形態と同様、表面に採取された検体(例えば細菌)を取り除ける傾斜した「花弁」又は「カッター」503をもたらす。図5Dの実施形態に示されているような中央キャビティ501が存在する。中央キャビティ501は、図5Dに示されている実施形態と同様、採取した細菌を保持する。
【0036】
図5Iを参照すると、ピッキングツールのチップの頂部における凹部特徴部520により、ツール521を、中央ピン又はチューブ522によってピッキングモジュール(図示せず)上に取り上げることが可能である。図5Iの実施形態における特徴部521は、ブラシのような構造をもたらすエラストマー製の毛材である。1つの実施形態において、エラストマー製の毛材は、上述したようなマイクロ特徴部として構成することができる。
【0037】
上述したように、特定のピッキングツール設計は、ピッキング対象であるコロニーの性質に基づいて選択される。細菌コロニーは、親水性、アニオン性、導電性等であり得ることに留意されたい。親水性細菌を採取する場合、チップも親水性である場合が有利である。このような実施形態では、特徴部(すなわちカッター503)の表面張力により、表面に採取された親水性サンプルが保持される。
【0038】
親水性特徴部は、ポリカチオン(例えば、PDDA、PAH等)又はポリアニオン(PSS)を用いて、自己組織化単分子膜でチップをコーティングすることによってもたらすことができる。
【0039】
また、チップがアニオン性である場合、細菌を希釈液中に放出するのに更に役立つことができる。このようなチップの場合、そうしたアニオン性表面をもたらす物質の例として、最終的な自己組織化単分子膜であるPSS(ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム))が挙げられる。
【0040】
チップが導電性である場合、静電容量検出を用いて、寒天表面に対するチップの位置を検出することが可能である。
【0041】
別の実施形態において、チップ表面は、上述した骨組特徴部と同様の開いたグリッド506又はメッシュであり、サイドチャネル507があることにより、サンプルの取得時に空気が容易に押し退けられる。別の実施形態において、チップは、スクープ表面509を有するループ型の突出部508を有する。他の実施形態において、チップは、中空又は凹状であり、サンプルの採取を円滑にする通気チャネルを有する。
【0042】
図6Aは、スクーパーチップ601を備えるピッキングツールの別の実施形態を示している。チップ601は、シャフト602の端部を覆って嵌まるプラスチックシースによってシャフト602に取り付けられる。スクーパーチップ601は、ピッキングの合間に取り外すことができる、及び/又は使い捨てとすることができる。
【0043】
図6Bは、サンプルを孔611内に集めるスパチュラ610を備えるピッキングツールの別の実施形態を示している。サンプルを採取するためのグリッド構成610の利点は、詳細に上述されている。
【0044】
図7は、シース701がシャフト702の端部に取外し可能に係合する、ピッキングツールの一実施形態を示している。サンプルバイオマスを採取するスクープ又は他の表面が延在するシース701は、把持力(例えば、圧入、磁気作用)によってシャフト702に取り付けられる。シャフト702には、使用後にシャフト702からシース701を押し出す解放機構703が設けられている。
【0045】
図8は、シース801がシャフト802の端部に螺合する別の実施形態である。シース601、701、801は、多くの機能を有するピッキングツールを提供することができる。シース601、701、801により、シャフト602、702、802自体は再利用することができ、シース部分601、701、801のみが使用の都度変更される点で、消費をより少なくすることができる。シース601、701、801は、サンプル採取及び溶液中へのサンプルの移植の双方のためのピッキングツールのスマート配置を可能にするセンサー及び圧力変換器の使用に適応していることから、スマート自動ピッキングツール設計に適応している。
【0046】
ピッキングツールの近位端部におけるチップの表面は、植毛加工面、開いたメッシュ、焼結ビーズ、又は他の多孔質面若しくは粗面とすることができる。チップは、サンプルバイオマスの捕集を円滑にする成形設計とすることもできる。ピッキングツールは、多様な材料で作製することができ、この材料には、微細特徴部を成形又は機械加工することができる金属又はポリマーが挙げられる。しかし、この材料は、後続の試験に干渉しないように、生物学的に不活性であるべきである。チップは、鋼若しくはアルミニウムで作製することができるか、又はポリマー材料(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル)から成形することもできる。さらに、ピッキングツールは、ツールが培地(例えば寒天)表面を損なうことなくサンプルをピッキングすることが可能な可撓性又はエラストマー製の材料から作製することができる。チップは、使用される材料に応じて、使い捨てとすることも再使用可能とすることもできる。チップは、上述したような特定の性質(例えば、親水性又は導電性)を有するように配合又は改質された材料から作製することもできる。
【0047】
ピッキングツールは、サンプルに接触してサンプルを採取するようにループ動作又は回転動作等を用いてサンプルを採取する、多様な方法とともに使用することができる。ピッキングツールは、ピペット又はボルテックスとして機能し、サンプルをチップ上に引き上げることができる。これには、生物のピッキングを円滑にする流体流又は真空を伴うことができる。これは、ピッキングツールが中空コアを有する実施形態において上述されている。他の実施形態において、ピッキングツールは、チップをサンプルに接触させるだけでサンプルを採取する。
【0048】
さらに、本明細書に記載のピッキングツールのチップは、多様な材料から作製することができ、多様な表面処理(例えば、粗面化、化学処理、又は他の改質)を行うことができる。これに関して、ピッキングツールは、ピッキング及び放出を円滑にする既製の材料又は特別な材料で作製することができる。材料は、ピッキング及び放出を円滑にするように、表面に添加剤又はコーティング又は処理を施すことができる。上記処理の例として、プラズマ処理若しくはコロナ処理を単独で、又はその後にドデシル硫酸ナトリウム、トリトン、自己組織化単分子膜、若しくは他の溶液を添加して、表面濡れ性又はチップの他の性質を変更することが挙げられる。
【0049】
図9は、サンプルを採取及び放出するピッキングツール及び単回ピッキングプロセスの1つの実施形態を示している。図9Aには、2つの部品、すなわち、フィン902アセンブリを備える成形可能なピッキングロッド901と、スリーブ903部品とがある。図9Bは、組み付けられた図9Aの構成要素を示している。図9Bにおいて、成形可能なピッキングロッド901とフィン902とのアセンブリが、スリーブ903内の上昇位置905に挿入される。上昇位置905になると、ピッキングツールは、位置特定されたコロニー904上に配置される。図9Cは、特定のコロニーの範囲を定めるとともに、サンプル取得の前にスリーブ903の位置を調整するプロセスを示している。
【0050】
図9Dは、コロニーピッキングのプロセスを示している。ピッキングツールが上昇位置905にあり、サンプル904と連通している間、成形可能なピッキングロッド901は、フィン902が、フィン902とスリーブ903との間のキャビティ906内にサンプル904を取得するように、回転動作しながら僅かに下方に押される。所望のサンプルが得られると、上昇位置905にあるピッキングツールは、図9Eの放出プロセスに移る。サンプル904を伴うピッキングツールの端部は、採取チューブ907によって被包される。次に、チューブは、押出し位置908に向かう捕集動作とは反対の回転動作において、機械的に下方に押される。放出の下方回転動作は、フィン902をスリーブ903の底部から露出させ、キャビティ906内に収容されたサンプル904は、更なる後続の処理のために採取チューブ907内に放出される。
【0051】
更なる処理のためにツールから溶液中にサンプルを放出するのを補助するように、ピッキングツールを更に改変してもよい。いくつかの実施形態において、磁気作用又は導電性材料を用いて、生物の取得が更に向上される。サンプルバイオマスの取得に磁気作用を用いるピッキングツールを示す1つの実施形態が、図10に示されている。図10は、マグネチックスターラー1003である。マグネチックスターラーは、試験のためにその上にサンプルが培養される表面(例えば寒天)からサンプルバイオマスを採取するスクレーパーパドル1008を展開している。
【0052】
図10は、マグネチックスターラーアセンブリを利用する本発明の1つの実施形態の分解部分を示している。図10Aは、磁性バー1002に非磁性ロッド1001が取り付けられているアセンブリの側面断面図である。マグネチックスターラーアセンブリ1003は、コントローラー1004によって制御される。コントローラー1004は、スターラー機構1003を起動させる。起動されると、スターラーは、時計回り又は反時計回りの方向に回転する。また、コントローラーは、使い捨てチューブ1005内でマグネチックスターラーアセンブリ1003を延出又は後退させるように構成されている(図11B)。図10Bは、使い捨てチューブ1005内における磁性バー1002の自由な回転を可能にする内径を有する頂部開口1006を有する使い捨てチューブ1005の側面断面図を示している。チューブ1005は、磁性バーを越えて延在し、スクレーパー1008が嵌まる凹部1007を形成する。図10Cは、頂部に使い捨ての強磁性ワイヤ1010が取り付けられる、使い捨ての非磁性スクレーパー1008の側面断面図及び斜視図を示している。組み立てられた使い捨ての強磁性スクレーパー1009は、図10Bにおけるチューブ1005の底部の窪み1007に略等しい高さを有する。
【0053】
図11は、ピッキングプロセスの前の磁性ピッキングツールの構成を示している。図11Aは、マグネチックスターラー1003が頂部開口1006を通してチューブ1005に挿入される様子を示している。強磁性スクレーパー1008は、待機位置に配置されている。図11Bは、マグネチックスターラー1003がチューブ1005の更に下方に前進する様子を示している。スターラーは、手動又は自動で前進する。アセンブリ内でマグネチックスターラーを前進させるのに適した自動機構は、十分既知であり、本明細書において詳細には記載しない。強磁性スクレーパー1008は、待機位置に配置されている。図11Bは、チューブ1005が、マグネチックスターラー1003とともに、強磁性スクレーパー1008の上方に位置決めされ、チューブ1005の底部においてマグネチックスターラー1003の下方で、強磁性スクレーパー1008を凹部1007内に引き付ける様子を示している。図11Cを参照すると、コロニー1101は、生体接種面1102の上に位置している。図11Dは、マグネチックスターラー1003とともに、強磁性スクレーパー1008を保持するチューブ1005を、コロニー1101の上に配置する様子を示している。
【0054】
図12は、図11A図11Cの斜視図を示している。図12は、非磁性スクレーパー1008の頂部に取り付けられたワイヤ1010を示している。また、図12は、チューブ1005が下方に前進しているアセンブリ1003を示している。また、図12は、磁性バー1002と磁気係合するワイヤ1010を示している。
【0055】
図13は、サンプルからサンプルバイオマスを採取し、バイオマスを液体試薬ベッセル1303内に移植する際の、磁性単回ピッキングツールの一実施形態を示している。図13Aは、反時計回り方向にスピンしてサンプルを採取するマグネチックスターラー1003を示している。それによれば、磁性スクレーパー1008は、フィン又はパドルを備え、フィン又はパドルは、磁性スクレーパーの回転につれてサンプルをフィン又はパドル上に採取するように構成されている。ここでも、マグネチックスターラー1003は、手動で又は自動機構(例えばロボット機構)によって回転させることができる。スターラーアセンブリ1003の回転は、電気機械機構又は電磁気機構によって達成することができる。そのような機構は、当該技術分野において十分既知であり、本明細書において詳細には記載しない。
【0056】
図13Bは、マグネチックスターラー1003と、強磁性スクレーパー1008と、採取されたサンプルバイオマス1101とを伴って、培地表面1102から引き戻されているチューブ1005を示している。図13Cは、強磁性スクレーパー1008及び採取されたコロニー1101を伴って、液体試薬ベッセル1303内に浸漬されているチューブ1005を示している。マグネチックスターラー1003は、(ここでも手動で又は機械的手段によって)好ましくは図13Aとは反対方向(例えば時計回り)にスピンし、採取されたサンプルバイオマス1101を液体試薬ベッセル1303内に放出する。スクレーパー1008は、多孔質又はメッシュ状であり、それにより、スクレーパー1008が溶液内で回転するときに、サンプルを溶液中に放出することが容易になる。図13Dは、チューブ1005を、強磁性スクレーパー1008とともに、液体試薬ベッセル1303から取り出す様子を示している。使い捨てのスクレーパー1008は、マグネチックスターラー1003から解放される。スクレーパー1008は、廃棄されるが、チューブ1005及びスターラーアセンブリ1003は、洗浄して再使用することができる。代替的には、強磁性スクレーパー1008は、液体試薬ベッセル1303内に解放し、外部からの磁界の印加に応じてスピンすることでサンプルを放出する磁性「撹拌バー」として用いることができる。
【0057】
別の実施形態において、図14は、自動ピペットシステムを示している。この実施形態では、ピッキングツールは、約0.2mm~約0.7mmの小さい内径を有し、培地表面からのサンプルのピッキングを円滑に行うように動作可能なピペットである。他の実施形態において、内径の範囲は、約0.2mm~約0.5mmである。いくつかの実施形態において、外径は、約1.2mmにのぼるか又は更に大きくすることができる。外径は、内径とピペット材料の厚さとに応じて決まる。ピペットシステムは、静電容量検出システムを用いて、ピペットのチップがサンプルを含む寒天表面に接触するまでピペットを下降させることが可能なように、自動化及び設計されている。次いで、自動ピペットシステムは、ピペットをコロニー内に更に約0mm~1mm下降させることができる。ピペットのチップのこの下降では、ピペットは、寒天を突き破ることなく寒天表面に係合し、寒天表面とのシールを形成することが可能である。シールが形成されると、ピペットは、或る体積のサンプルをピペットの本体内に引き込む。これにより、ピペットチップ内に真空が生成され、より大きい体積のサンプルが採取される。採取されるサンプルの体積は、約1mL以上とすることができる。
【0058】
上記サンプル体積が採取されると、ピペットは、寒天表面からゆっくりと後退させられる。ピペットをゆっくり後退させることで、チップ内及びチップ周囲に吸引力が生じ、これにより、寒天表面から生物が効率的にバキュームされる。寒天表面からより多くのサンプルをバキュームし、より高密度の微生物(すなわち、体積あたりのより多くのCFUS数)をもたらすことができる。図14に示されているように、チップを対象のコロニー内に降下させることによって、最初にチップ内に捕集されたコロニーの部分に加えて、チップの外側近くの微生物がピペット内に引き込まれる。
【0059】
サンプルを取得した後、更に別の実施形態において、ピペットシステムは、一連の急速な引き込みと、懸濁液中へのピペットチップでの分注とを行うことができる。例えば、ピペットシステムは、一連の20秒間に約24回にのぼる引き込みと、300μLのサンプルのうちの約250μLの分注とを繰り返すことができる。この繰返し動作により、ピペットのチップにおいて高い剪断力がもたらされる。この高い剪断力により、微生物を含むサンプルの塊又はムコイド群落(mucoid stands)の分散が可能になり、より均一な懸濁液が生成される。
【0060】
本発明は、本明細書において特定の実施形態を参照して記載してきたが、これらの実施形態は単に本発明の原理及び応用を例示するものであることを理解されたい。したがって、例示の実施形態に対して数多くの変更を行うことができることと、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の構成を考案することができることとを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16