(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】変異カプシドを有するアデノ随伴ウイルスビリオン及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20240122BHJP
C12N 15/35 20060101ALI20240122BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240122BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240122BHJP
C07K 14/015 20060101ALI20240122BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240122BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240122BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/35 ZNA
C12N7/01
C07K19/00
C07K14/015
A61P27/02
A61K35/76
(21)【出願番号】P 2022076635
(22)【出願日】2022-05-06
(62)【分割の表示】P 2019504750の分割
【原出願日】2017-07-27
【審査請求日】2022-06-03
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(73)【特許権者】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】シャファー,デイビッド,ヴイ.
(72)【発明者】
【氏名】フラネリー,ジョン,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン,ウィリアム,エー.
(72)【発明者】
【氏名】バーン,リア,シー.
(72)【発明者】
【氏名】バイセル,メイケ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518614(JP,A)
【文献】国際公開第2014/200910(WO,A2)
【文献】EMBO molecular medicine,Vol.6, No.9,2014年,pp.1175-1190
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって、
a)
対応する親AAVカプシドタンパク質と比較してカプシドタンパク質GHループに異種ペプチドの挿入断片を含むAAV2カプシドタンパク質VP1であって、前記異種ペプチドは,アミノ酸配列PDSTTRSと、アミノ酸Pの前のN末端における2アミノ酸長リンカー及びアミノ酸Sの後のC末端における1アミノ酸長リンカーとを含み、対応する親AAVカプシドタンパク質を含む対照AAVビリオンによる網膜細胞に対する感染力と比較して、前記網膜細胞に対する感染力を増加させる、AAV2カプシドタンパク質VP1と、
b)異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸と
を含む、rAAVビリオン。
【請求項2】
前記rAAVビリオンは、対応する親AAV2カプシドタンパク質VP1を含む対照AAVビリオンによる網膜細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍増加した感染力を前記網膜細胞に対して示す、ならびに/または、
内顆粒層、外顆粒層、光受容体層、神経節細胞層、及び網膜色素上皮のうちの1つまたは複数に対して前記rAAVビリオンが示す局在性は、内顆粒層、外顆粒層、光受容体層、神経節細胞層、または網膜色素上皮に対する対応する親AAV2カプシドタンパク質VP1を含むAAVビリオンによる局在性度合と比較して、少なくとも5倍増加している、
請求項1に記載のrAAVビリオン。
【請求項3】
前記挿入断片は、AAV2のVP1のアミノ酸570及びアミノ酸611に対応するアミノ酸の間に存する、請求項1または2に記載のrAAVビリオン。
【請求項4】
前記挿入断片は、AAV2のVP1のアミノ酸587及びアミノ酸588の間に存する、請求項3に記載のrAAVビリオン。
【請求項5】
前記異種遺伝子産物は、
a)干渉RNAまたはアプタマーである、
b)ポリペプチド、任意には、神経保護ポリペプチド、抗血管新生ポリペプチド、抗アポトーシスポリペプチド、もしくは網膜細胞の機能を増進するポリペプチド、または、RNAガイド型エンドヌクレアーゼである、または、
c)RNAガイド型エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAである、
請求項1~4のいずれか1項に記載のrAAVビリオン。
【請求項6】
前記異種遺伝子産物は、グリア
細胞由来神経栄養因子、線維芽細胞増殖因子2、ニュールツリン、毛様体神経栄養因子、神経成長因子、脳由来神経栄養因子、上皮増殖因子、ロドプシン、X連鎖アポトーシス抑制物質、レチノスキシン、RPE65、網膜色素変性症GTPase相互作用タンパク質-1、ペリフェリン、ペリフェリン-2、ロドプシン、RdCVF、網膜色素変性症GTPase調節因子(RPGR)、またはソニックヘッジホッグである、請求項1~4のいずれか1項に記載のrAAVビリオン。
【請求項7】
前記異種ペプチドは、約12個~20個のアミノ酸の長さを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のrAAVビリオン。
【請求項8】
a)請求項1~7のいずれか1項に記載のrAAVビリオンと、
b)医薬的に許容可能な賦形剤と
を含む、医薬組成物。
【請求項9】
個体の網膜細胞へ遺伝子産物を送達する方法に使用のための請求項1~7のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオン。
【請求項10】
眼疾患を治療する方法に使用のための請求項1~7のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオン。
【請求項11】
前記眼疾患は、緑内障、網膜色素変性症、黄斑変性、網膜分離症、レーバー先天黒内障、糖尿病性網膜症、色覚異常(achromotopsia)、または色覚異常(color blindness)である、請求項10に記載のrAAVビリオン。
【請求項12】
対応する親AAVカプシドタンパク質と比較してカプシドタンパク質GHループに異種ペプチドの挿入断片を含むアデノ随伴ウイルス2(AAV2)カプシドタンパク質VP1をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、
前記異種ペプチドは,ア
ミノ酸配列PDSTTRSと、アミノ酸Pの前のN末端における2アミノ酸長リンカー及びアミノ酸Sの後のC末端における1アミノ酸長リンカーとを含んでおり、
前記カプシドタンパク質は、AAVビリオンに存在するとき、網膜細胞に対する前記AAVビリオンの感染力を増加させる、
単離された核酸。
【請求項13】
前記挿入断片は、AAV2のVP1のアミノ酸570及びアミノ酸611に対応するアミノ酸の間に存する、請求項12に記載の単離された核酸。
【請求項14】
前記挿入断片は、AAV2のVP1のアミノ酸587及びアミノ酸588の間に存する、請求項13に記載の単離された核酸。
【請求項15】
前記異種ペプチドは、約12個~20個のアミノ酸の長さを有する、請求項12~14のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか1項に記載の単離された核酸を含む、単離された遺伝子改変宿主細胞。
【請求項17】
アデノ随伴ウイルス2(AAV2)カプシドタンパク質VP1であって、
前記AAV2カプシドタンパク質VP1は、異種ペプチドの挿入断片をGHループに含んでおり、
前記異種ペプチドは、
アミノ酸配列PDSTTRSと、アミノ酸Pの前のN末端における2アミノ酸長リンカー及びアミノ酸Sの後のC末端における1アミノ酸長リンカーとを含んでおり、
前記カプシドタンパク質は、AAVビリオンに存在するとき、網膜細胞に対する前記AAVビリオンの感染力を増加させる、
AAV2カプシドタンパク質。
【請求項18】
前記挿入断片は、AAV2のVP1のアミノ酸570及びアミノ酸611に対応するアミノ酸の間に存する、請求項17に記載のAAV2カプシドタンパク質。
【請求項19】
前記挿入断片は、AAV2のVP1のアミノ酸587及びアミノ酸588の間に存する、請求項18に記載のAAV2カプシドタンパク質。
【請求項20】
前記異種ペプチドは、約12個~20個のアミノ酸の長さを有する、請求項17~19のいずれか1項に記載のAAV2カプシドタンパク質。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光受容体は、網膜において視覚情報の受容及び処理を最初に行うニューロンであり、光情報伝達を介して可視電磁放射線を過分極応答に変換する。遺伝性網膜疾患の圧倒的大多数においてこうした細胞が失われる結果となり、この喪失は、直接的(ロドプシンタンパク質のフォールディングに影響する優性変異など)または間接的(網膜色素上皮(RPE)におけるレチナールリサイクリング経路に影響する劣性変異など)に生じる。
【0002】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、Parvoviridaeファミリー及びDependovirus属に属しており、そのメンバーの複製を促進するには、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスを同時感染させる必要があり、ヘルパーが存在しない場合、AAVは、潜伏感染を確立する。ビリオンは、rep及びcapという2つのオープンリーディングフレームを有する4.9kbの一本鎖DNAゲノムを包含する25nmの正二十面体カプシドから構成される。非構造遺伝子であるrepは、ウイルスの複製に必須の4つの制御タンパク質をコードし、一方、capは、60量体のカプシドシェルへと会合する3つの構造タンパク質(VP1-3)をコードする。このウイルスカプシドによって、細胞表面受容体結合、エンドサイトーシス、細胞内移動、及び核におけるアンパッケージングを含めて、ウイルス形質導入の生物学的障壁の多くを克服するAAVベクターの能力が媒介される。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、改変カプシドタンパク質を有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンを提供し、組換えAAV(rAAV)ビリオンは、野生型AAVと比較して、網膜細胞に対して高い感染力を示し、rAAVビリオンは、異種核酸を含む。本開示は、個体の網膜細胞への遺伝子産物の送達方法、及び眼疾患の治療方法をさらに提供する。本開示は、rAAVビリオンを提供し、内顆粒層、外顆粒層、光受容体層、神経節細胞層、及び網膜色素上皮のうちの1つまたは複数に対してrAAVビリオンが示す局在性は、内顆粒層、外顆粒層、光受容体層、神経節細胞層、または網膜色素上皮に対する対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる局在性度合と比較して、少なくとも5倍増加している。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】親AAVと比較して眼球細胞(例えば、網膜細胞)に対する感染力が増加したAAV変異体の開発に使用した指向性進化法を示す模式図である。
【
図2】緑色蛍光タンパク質(GFP)-バーコードコンストラクトを含むAAV変異体のディープシークエンシングを示す模式図である。
【
図3】18のメンバーを含むAAV変異体ライブラリーによる、神経節細胞層、内顆粒層、光受容体層、及び網膜色素上皮(RPE)層における細胞の感染を示す。
【
図4】AAV2カプシドタンパク質VP1のアミノ酸配列を示す。アミノ酸587及びアミノ酸588(NP)は、下線付きの太字で示される。
【
図5】さまざまなAAV血清型のAAVカプシドタンパク質VP1のアミノ酸570~610に対応するアミノ酸配列を示す。
【
図6A】AAVカプシドタンパク質ループIV(GHループ)領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。挿入部位は、下線付きの太字で示される。AAV1:配列番号35、AAV6:配列番号36、AAV3:配列番号37、AAV2:配列番号38、AAV8:配列番号39、AAV8.1:配列番号40、AAV8rh8:配列番号41、AAV10:配列番号42、AAV7:配列番号43、AAV9:配列番号44、AAV9.1:配列番号45、AAV5:配列番号46である。
【
図6B】AAVカプシドタンパク質ループIV(GHループ)領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。挿入部位は、下線付きの太字で示される。AAV1:配列番号35、AAV6:配列番号36、AAV3:配列番号37、AAV2:配列番号38、AAV8:配列番号39、AAV8.1:配列番号40、AAV8rh8:配列番号41、AAV10:配列番号42、AAV7:配列番号43、AAV9:配列番号44、AAV9.1:配列番号45、AAV5:配列番号46である。
【
図6C】AAVカプシドタンパク質ループIV(GHループ)領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。挿入部位は、下線付きの太字で示される。AAV1:配列番号35、AAV6:配列番号36、AAV3:配列番号37、AAV2:配列番号38、AAV8:配列番号39、AAV8.1:配列番号40、AAV8rh8:配列番号41、AAV10:配列番号42、AAV7:配列番号43、AAV9:配列番号44、AAV9.1:配列番号45、AAV5:配列番号46である。
【
図7-1】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-2】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-3】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-4】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-5】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-6】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-7】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-8】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-9】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-10】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-11】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-12】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-13】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-14】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-15】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図7-16】例示の異種遺伝子産物のアミノ酸配列を示す。
【
図8A】例示のガイドRNA依存性エンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【
図8B】例示のガイドRNA依存性エンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【
図8C】例示のガイドRNA依存性エンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
定義
「網膜細胞」という用語は、網膜を構成する任意の細胞型(網膜神経節細胞、アマクリン細胞、水平細胞、双極細胞、光受容体細胞(杆体及び錐体を含む)、ミュラーグリア細胞、アストロサイト(例えば、網膜アストロサイト)、ならびに網膜色素上皮など)を本明細書で指し得る。
【0006】
「AAV」は、アデノ随伴ウイルスの略称であり、ウイルス自体またはその派生体を指すために使用され得る。この用語は、別に必要な場合を除き、すべてのサブタイプ、ならびに天然起源の形態と組換え形態との両方を包含する。「rAAV」という略称は、組換えアデノ随伴ウイルスを指すと共に、組換えAAVベクター(または「rAAVベクター」)も指す。「AAV」という用語は、AAV1型(AAV-1)、AAV2型(AAV-2)、AAV3型(AAV-3)、AAV4型(AAV-4)、AAV5型(AAV-5)、AAV6型(AAV-6)、AAV7型(AAV-7)、AAV8型(AAV-8)、AAV9型(AAV-9)、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、及びヒツジAAVを含む。「霊長類AAV」は、霊長類から単離されたAAVを指し、「非霊長類AAV」は、非霊長類の哺乳類から単離されたAAVを指し、「ウシAAV」は、ウシ哺乳類(例えば、雌ウシ)から単離されたAAVを指すなどである。
【0007】
本明細書で使用される「rAAVベクター」は、AAV起源ではないポリヌクレオチド配列(すなわち、AAVに対して異種のポリヌクレオチド)、典型的には、細胞の遺伝子形質転換のための目的配列を含むAAVベクターを指す。一般に、異種ポリヌクレオチドは、少なくとも1つ、一般には2つのAAV末端逆位反復配列(ITR)と隣接する。rAAVベクターという用語は、rAAVベクター粒子とrAAVベクタープラスミドとの両方を包含する。
【0008】
「AAVウイルス」または「AAVウイルス粒子」または「rAAVベクター粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質から構成されるウイルス粒子(典型的には、野生型AAVのカプシドタンパク質のすべてによるもの)、及びカプシドを形成したポリヌクレオチドrAAVベクターを指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド(哺乳類細胞に送達されるべき導入遺伝子など))を含むのであれば、その粒子は、典型的には、「rAAVベクター粒子」または単に「rAAVベクター」と称される。したがって、rAAV粒子の産生は、必然的にrAAVベクターの産生を伴い、したがって、ベクターは、rAAV粒子に内包される。
【0009】
「パッケージング」は、AAV粒子の構築及びカプシド形成が生じる一連の細胞内事象を指す。
【0010】
AAVの「rep」遺伝子及び「cap」遺伝子は、アデノ随伴ウイルスの複製タンパク質及びカプシド形成タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を指す。AAVのrep及びcapは、本明細書ではAAV「パッケージング遺伝子」と称される。
【0011】
AAVのための「ヘルパーウイルス」は、哺乳類細胞によるAAV(例えば、野生型AAV)の複製及びパッケージングを可能にするウイルスを指す。AAVのためのそのようなヘルパーウイルスは、当該技術分野においてさまざまなものが知られており、こうしたヘルパーウイルスには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、及びポックスウイルス(ワクシニアなど)が含まれる。アデノウイルスは、多くの異なる亜群を含むが、亜群Cのアデノウイルス5型が最も一般に使用される。ヒト、非ヒト哺乳類、及び鳥を起源とするアデノウイルスが多く知られており、ATCCなどの寄託機関から利用可能である。ヘルペスファミリーのウイルスには、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)及び仮性狂犬病ウイルス(PRV)が含まれ、これらもまた、ATCCなどの寄託機関から利用可能である。
【0012】
「ヘルパーウイルス機能(複数可)」は、ヘルパーウイルスゲノムにコードされ、AAVの複製及びパッケージングを(本明細書に記載の複製及びパッケージングのための他の要件と併せて)可能にする機能(複数可)を指す。本明細書で使用される「ヘルパーウイルス機能」は、多くの方法で提供され得るものであり、こうした方法には、ヘルパーウイルスを提供することによるもの、または例えば、必要な機能(複数可)をコードするポリヌクレオチド配列を産生細胞にトランスで提供することによるものが含まれる。
【0013】
「感染性」のウイルスまたはウイルス粒子は、そのウイルス種が指向する細胞への送達能力を有するポリヌクレオチド要素を含むものである。この用語は、ウイルスが何らかの複製能力を有することを必ずしも暗示するものではない。本明細書で使用される「感染性」のウイルスまたはウイルス粒子は、標的細胞に接近することができ、標的細胞に感染することができ、かつ標的細胞において異種核酸を発現することができるものである。したがって、「感染力」は、ウイルス粒子が標的細胞に接近し、標的細胞に感染し、かつ標的細胞において異種核酸を発現する能力を指す。感染力は、インビトロの感染力またはインビボの感染力を指し得る。感染性ウイルス粒子の数を数えるためのアッセイは、本開示の他の箇所及び当該技術分野において説明されている。ウイルスの感染力は、総ウイルス粒子に対する感染性ウイルス粒子の比率として示すことができる。総ウイルス粒子は、ウイルスゲノム(vg)のコピー数として示すことができる。細胞においてウイルス粒子が異種核酸を発現する能力は、「形質導入」と称すことができる。細胞においてウイルス粒子が異種核酸を発現する能力は、多くの手法を使用してアッセイすることができ、こうした手法には、マーカー遺伝子の評価(緑色蛍光タンパク質(GFP)アッセイ(例えば、ウイルスは、GFPをコードするヌクレオチド配列を含む)などであり、GFPアッセイでは、ウイルス粒子が感染した細胞においてGFPが産生し、検出及び/または測定される)、あるいは産生タンパク質の測定(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によるもの)が含まれる。ウイルスの感染力は、総ウイルス粒子に対する感染性ウイルス粒子の比率として示すことができる。総ウイルス粒子に対する感染性ウイルス粒子の比率の決定方法は、当該技術分野において知られている。例えば、Grainger et al.(2005)Mol.Ther.11:S337(TCID50感染力価アッセイについて記載される)、及びZolotukhin et al.(1999)Gene Ther.6:973を参照のこと。
【0014】
「複製能力を有する」ウイルス(例えば、複製能力を有するAAV)は、感染性であり、それに加えて、感染細胞において複製される能力も有する(すなわち、ヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス機能が存在する場合)、表現型的に野生型のウイルスを指す。AAVの場合、複製能力を有するには、一般に、機能性のAAVパッケージング遺伝子が存在することが必要である。一般に、本明細書に記載のrAAVベクターは、1つまたは複数のAAVパッケージング遺伝子を欠いていることから、哺乳類細胞(特に、ヒト細胞)における複製能力を有さない。典型的には、そのようなrAAVベクターは、AAVパッケージング遺伝子と新たなrAAVベクターとの間の組換えによって複製能力を有するAAVが生じる可能性を最小化するために、いずれのAAVパッケージング遺伝子配列も欠いている。多くの実施形態では、本明細書に記載のrAAVベクター調製物は、複製能力を有する何らかのAAV(rcAAV(RCAとも称される))が存在するとしても、ほとんど含まないものである(例えば、102 個のrAAV粒子当たりrcAAVが約1個未満であるか、104 個のrAAV粒子当たりrcAAVが約1個未満であるか、108 個のrAAV粒子当たりrcAAVが約1個未満であるか、1012個のrAAV粒子当たりrcAAVが約1個未満であるか、またはrcAAVが存在しない)。
【0015】
「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体を含めて、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体などの改変ヌクレオチドを含み得、非ヌクレオチド要素が割り込んで存在し得る。ヌクレオチド構造に対する改変は、存在するのであれば、ポリマーが構築される前または後に施され得る。本明細書で使用されるポリヌクレオチドという用語は、二本鎖分子及び一本鎖分子を互換的に指す。別段の記載または必要がない限り、本明細書に記載の発明の実施形態でポリヌクレオチドであるものはいずれも、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが知られるか、または二本鎖形態を構成すると予想される2つの相補一本鎖形態のそれぞれとの両方を包含する。
【0016】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、別のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対してある特定の「配列同一性」パーセントを有し、このことは、アライメントをとって2つの配列を比較すると、その割合の塩基またはアミノ酸が同一であることを意味する。配列類似性は、多くの異なる様式で決定することができる。配列同一性を決定するために、ワールドワイドウェブを介してncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で利用可能なBLASTを含めて、方法及びコンピュータープログラムを使用して配列のアライメントをとることができる。別のアライメントアルゴリズムはFASTAであり、FASTAは、Madison,Wisconsin,USA(Oxford Molecular Group,Incの完全所有子会社)から提供されるGenetics Computing Group(GCG)パッケージにおいて利用可能である。他のアライメント手法は、Methods in Enzymology,vol.266:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996),ed.Doolittle,Academic Press,Inc.,a division of Harcourt Brace & Co.,San Diego,California,USAに記載されている。配列中にギャップを許容するアライメントプログラムが特に目的とするものである。Smith-Watermanは、配列アライメントにおいてギャップを許容するアルゴリズムの1つの型である。Meth.Mol.Biol.70:173-187(1997)を参照のこと。また、Needleman及びWunschのアライメント方法を使用するGAPプログラムも配列のアライメントに利用することができる。J.Mol.Biol.48:443-453(1970)を参照のこと。
【0017】
配列同一性の決定にSmith Watermanの局所的相同性アルゴリズムを使用するBestFitプログラム(Advances in Applied Mathematics 2:482-489(1981))は目的とするものである。ギャップ生成ペナルティは、一般には、1~5の範囲となり、通常は、2~4の範囲となり、多くの実施形態では、3となる。ギャップ延長ペナルティは、一般には、約0.01~0.20の範囲となり、多くの場合、0.10となる。プログラムは、比較すべき入力配列によって決定されるデフォルトのパラメーターを有する。好ましくは、配列同一性は、プログラムによって決定されるデフォルトのパラメーターを使用して決定される。このプログラムは、Madison,Wisconsin,USAから提供されるGenetics Computing Group(GCG)パッケージからも利用可能である。
【0018】
別の目的プログラムは、FastDBアルゴリズムである。FastDBは、Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp.127-149,1988,Alan R.Liss,Incにおいて説明されている。配列同一性パーセントは、下記のパラメーターに基づいてFastDBによって計算される.
【0019】
不一致ペナルティ:1.00、ギャップペナルティ:1.00、ギャップサイズペナルティ:0.33、及び連結ペナルティ:30.0。
【0020】
「遺伝子」は、少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含み、転写及び翻訳された後の特定のタンパク質をコードする能力を有するポリヌクレオチドを指す。
【0021】
本明細書で使用される「ガイドRNA」という用語は、i)ガイドRNA依存性エンドヌクレアーゼ(例えば、クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(II型、V型、またはVI型のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼなど))に結合し、RNA依存性エンドヌクレアーゼを活性化する「アクチベーター」ヌクレオチド配列と、ii)標的核酸とハイブリッド形成するヌクレオチド配列を含む「ターゲッター」ヌクレオチド配列とを含むRNAを指す。「アクチベーター」ヌクレオチド配列と「ターゲッター」ヌクレオチド配列とは、別々のRNA分子(例えば、「デュアルガイドRNA」)に存在し得るか、または同一のRNA分子(シングルガイドRNA)に存在し得る。
【0022】
「低分子干渉(small interfering)RNA」または「短分子干渉(short interfering)RNA」またはsiRNAは、目的遺伝子(「標的遺伝子」)に標的化されたRNA二重鎖のヌクレオチドである。「RNA二重鎖」は、1つのRNA分子の2つの領域の間で相補的な対ができることよって形成される構造を指す。siRNAは、そのsiRNAの二重鎖部分のヌクレオチド配列が、標的とする遺伝子のヌクレオチド配列に相補的であるという点において、遺伝子に「標的化」されている。いくつかの実施形態では、siRNAの二重鎖は、30個未満のヌクレオチドの長さを有する。いくつかの実施形態では、二重鎖は、29個のヌクレオチド、28個のヌクレオチド、27個のヌクレオチド、26個のヌクレオチド、25個のヌクレオチド、24個のヌクレオチド、23個のヌクレオチド、22個のヌクレオチド、21個のヌクレオチド、20個のヌクレオチド、19個のヌクレオチド、18個のヌクレオチド、17個のヌクレオチド、16個のヌクレオチド、15個のヌクレオチド、14個のヌクレオチド、13個のヌクレオチド、12個のヌクレオチド、11個のヌクレオチド、または10個のヌクレオチドの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、二重鎖は、19~25個のヌクレオチドの長さを有する。siRNAのRNA二重鎖部分は、ヘアピン構造の一部であり得る。ヘアピン構造は、二重鎖部分に加えて、二重鎖を形成する2つの配列の間に位置するループ部分を含み得る。ループの長さは異なり得る。いくつかの実施形態では、ループは、5つのヌクレオチド、6つのヌクレオチド、7つのヌクレオチド、8つのヌクレオチド、9つのヌクレオチド、10個のヌクレオチド、11個のヌクレオチド、12個のヌクレオチド、または13個のヌクレオチドの長さを有する。ヘアピン構造は、3’または5’にオーバーハング部分も含み得る。いくつかの実施形態では、オーバーハングは、3’または5’のオーバーハングであり、0個のヌクレオチド、1つのヌクレオチド、2つのヌクレオチド、3つのヌクレオチド、4つのヌクレオチド、または5つのヌクレオチドの長さを有する。
【0023】
本明細書で使用される「マイクロRNA」という用語は、任意の型の干渉RNAを指し、こうした干渉RNAには、限定はされないが、内在性のマイクロRNA及び人工的なマイクロRNA(例えば、合成miRNA)が含まれる。内在性のマイクロRNAは、ゲノムに天然にコードされ、mRNAの生産的な利用を調節する能力を有する低分子RNAである。人工的なマイクロRNAは、内在性のマイクロRNA以外の任意の型のRNA配列であって、mRNAの活性を調節する能力を有するRNA配列であり得る。マイクロRNA配列は、こうした配列のいずれか1つまたは複数から構成されるRNA分子であり得る。マイクロRNA(または「miRNA」)配列は、Lim,et al.,2003,Genes & Development,17,991-1008、Lim et al.,2003,Science,299,1540,Lee and Ambrose,2001,Science,294,862、Lau et al.,2001,Science 294,858-861、Lagos-Quintana et al.,2002,Current Biology,12,735-739、Lagos-Quintana et al.,2001,Science,294,853-857、及びLagos-Quintana et al.,2003,RNA,9,175-179などの刊行物において説明されている。マイクロRNAの例には、より大きなRNAの断片である任意のRNA、またはmiRNA、siRNA、stRNA、sncRNA、tncRNA、snoRNA、smRNA、shRNA、snRNAもしくは他の非コード低分子RNAである任意のRNAが含まれる。例えば、米国特許出願第20050272923号、第20050266552号、第20050142581号、及び第20050075492号を参照のこと。「マイクロRNA前駆体」(または「プレmiRNA」)は、そこに組み込まれたマイクロRNA配列を有するステムループ構造を有する核酸を指す。「成熟マイクロRNA」(または「成熟miRNA」)には、マイクロRNA前駆体(「プレmiRNA」)から切断されたマイクロRNA、または合成されたマイクロRNA(例えば、無細胞系によって実験室で合成されたもの)が含まれ、こうしたマイクロRNAの長さは、約19個のヌクレオチド~約27個のヌクレオチドであり、例えば、成熟マイクロRNAの長さは、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、25nt、26nt、または27ntであり得る。成熟マイクロRNAは、標的mRNAに結合し、その標的mRNAの翻訳を阻害することができる。
【0024】
ポリヌクレオチドに適用される「組換え」は、そのポリヌクレオチドが、クローニング、制限段階または核酸連結段階、及び天然に見られるポリヌクレオチドとは異なるコンストラクトが得られる他の手順のさまざまな組み合わせの産物であることを意味する。組換えウイルスは、組換えポリヌクレオチドを含むウイルス粒子である。これらの用語は、それぞれ元のポリヌクレオチドコンストラクトの複製物、及び元のウイルスコンストラクトの子孫を含む。
【0025】
「制御要素」または「制御配列」は、ポリヌクレオチドの複製、二重化、転写、スプライシング、翻訳、または分解を含めて、ポリヌクレオチドの機能的な調節に寄与する分子の相互作用に関与するヌクレオチド配列である。こうした調節は、プロセスの頻度、速度、または特異性に影響し得るものであり、本質的に増進または抑制であり得る。当該技術分野において知られる制御要素には、例えば、転写調節配列(プロモーター及びエンハンサーなど)が含まれる。プロモーターは、ある特定の条件下で、RNAポリメラーゼと結合し、通常はそのプロモーターの下流(3’方向)に位置するコード領域の転写を開始する能力を有するDNA領域である。
【0026】
「動作的に連結された(operatively linked)」または「機能可能なように連結された(operably linked)」は、遺伝要素の並置を指し、こうした要素は、予測される様式でそれらが機能することが可能になる関係性にある。例えば、プロモーターは、そのプロモーターがコード配列の転写開始に役立つのであれば、そのコード領域に動作的に連結されている。この機能関係が維持される限り、プロモーターとコード領域との間に介在残基が存在してもよい。
【0027】
「発現ベクター」は、目的ポリペプチドをコードする領域を含むベクターであり、意図される標的細胞におけるタンパク質の発現を生じさせるために使用される。標的におけるタンパク質の発現を促進するために、発現ベクターもまた、コード領域に動作的に連結された制御要素を含む。制御要素と、発現のために制御要素が機能可能なように連結される1つまたは複数の遺伝子との組み合わせは、「発現カセット」と称されることがあり、その多くが知られており、当該技術分野において利用可能であるか、または当該技術分野において利用可能な要素から容易に構築することができる。
【0028】
「異種」は、それが比較される実体のその他の部分のものとは遺伝子型が異なる実体に由来することを意味する。例えば、異なる種に由来するプラスミドまたはベクターに遺伝子工学手法によって導入されたポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである。その天然のコード配列から取り出され、それが天然に連結状態で見られないコード配列に動作的に連結されたプロモーターは、異種プロモーターである。したがって、例えば、異種遺伝子産物をコードする異種核酸を含むrAAVは、天然起源の野生型AAVには通常は含まれない核酸を含むrAAVであり、コードされる異種遺伝子産物は、天然起源の野生型AAVによって通常はコードされない遺伝子産物である。別の例として、カプシドタンパク質のGHループに挿入された異種ペプチドを含む変異AAVカプシドタンパク質は、天然起源の野生型AAVには通常は含まれないペプチド挿入断片を含む変異AAVカプシドタンパク質である。
【0029】
「遺伝子改変(genetic alteration)」及び「遺伝子改変(genetic modification)」という用語(ならびにそれらの文法的異形)は、遺伝要素(例えば、ポリヌクレオチド)が有糸分裂または減数分裂以外によって細胞に導入されるプロセスを指すために本明細書で互換的に使用される。こうした要素は、細胞に対して異種であり得るか、または細胞に既に存在する要素の追加コピーもしくは改善バージョンであり得る。遺伝子改変は、例えば、当該技術分野において知られる任意のプロセスを介して組換えプラスミドまたは他のポリヌクレオチドで細胞に遺伝子導入することによって生じ得、こうしたプロセスは、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、またはポリヌクレオチド-リポソーム複合体との接触などである。遺伝子改変は、例えば、DNAウイルスもしくはRNAウイルスまたはウイルスベクターでの形質導入または感染によっても生じ得る。遺伝要素は、細胞の染色体またはミニ染色体に導入されることが一般的であるが、細胞及びその子孫の表現型及び/または遺伝子型が変わる改変はいずれも、この用語に含まれる。
【0030】
細胞をインビトロで長期培養する間、遺伝子配列がその機能の発揮に利用可能であるならば、その細胞は、その配列で「安定的に」改変、形質導入、遺伝子改変、または形質転換されていると言われる。一般に、そのような細胞は、その改変細胞の子孫にも遺伝可能な遺伝子改変が導入されているという点において、「遺伝的」に改変(遺伝子改変)されている。
【0031】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、改変されたアミノ酸ポリマーも包含し、こうした改変は、例えば、ジスルフィド結合形成、糖鎖付加、脂質付加、リン酸化、または標識要素との複合化である。抗血管新生ポリペプチド、神経保護ポリペプチド、及び同様のものなどのポリペプチドは、哺乳類対象への遺伝子産物の送達という文脈、及びその組成物において述べられるとき、それぞれのインタクトなポリペプチド、またはインタクトなタンパク質の所望の生化学的機能を保持するその任意の断片もしくは遺伝子操作された誘導体を指す。同様に、抗血管新生ポリペプチドをコードする核酸、神経保護ポリペプチドをコードする核酸、及び哺乳類対象への遺伝子産物の送達において使用するための他のそのような核酸(レシピエント細胞に送達されるべき「導入遺伝子」と称され得る)に対する参照は、インタクトなポリペプチドまたは所望の生化学的機能を有する任意の断片もしくは遺伝子操作された誘導体をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0032】
「単離された」プラスミド、核酸、ベクター、ウイルス、ビリオン、宿主細胞、または他の物質は、その物質もしくは類似の物質が天然に生じる場所、またはその最初の調製起源の場所にも存在し得る他の成分の少なくともいくつかが含まれないようにした、その物質の調製物を指す。したがって、例えば、単離された物質は、供給源の混合物からそれを濃縮するための精製手法を使用して調製され得る。濃縮は、溶液の体積当たりの重量などの絶対的基準に基づいて測定することができるか、または供給源の混合物に存在し、干渉する可能性を有する第2の物質と関連付けて測定することができる。本発明の実施形態の濃縮が進むと、単離がより一層進む。単離されたプラスミド、核酸、ベクター、ウイルス、宿主細胞、または他の物質は、精製された実施形態のいくつかでは、例えば、純度が約80%~約90%、純度が少なくとも約90%、純度が少なくとも約95%、純度が少なくとも約98%、または純度が少なくとも約99%以上である。
【0033】
本明細書で使用される「治療(treatment)」、「治療(treating)」という用語、及び同様のものは、所望の薬理的及び/または生理学的作用を得ることを指す。こうした作用は、疾患もしくはその症状を完全もしくは部分的に予防するという観点から予防的であり得、及び/または疾患及び/または疾患に起因する有害作用を部分的もしくは完全に治癒させるという観点から治療的であり得る。本明細書で使用される「治療(Treatment)」は、哺乳類、具体的にはヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患に罹り易くあるか、または疾患を患うリスクがあり得るが、疾患を有するとはまだ診断されていない対象における疾患の発症予防と、(b)疾患の抑制、すなわちその発症の抑止と、(c)疾患の軽減、すなわち疾患の退縮誘起とを含む。
【0034】
「個体」、「宿主」、「対象」、及び「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、哺乳類を指し、こうした哺乳類には、限定はされないが、ヒト及び非ヒト霊長類(サル及びヒトを含む)、哺乳類の運動競技動物(例えば、ウマ、ラクダなど)、哺乳類の家畜(例えば、ヒツジ、ヤギ、雌ウシなど)、哺乳類のペット(イヌ、ネコなど)、ならびにげっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)が含まれる。場合によっては、個体は、ヒトである。
【0035】
本発明の追加説明の前に、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、したがって、こうした実施形態は、当然異なり得ると理解されることになる。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用される専門用語による限定は意図されないとも理解されることになる。
【0036】
値の範囲が与えられる場合、文脈上明確に示されない限り、その範囲の上限値と下限値との間に存在する、下限値の10分の1の単位までの各介在値と、その記載範囲の任意の他の記載値または介在値と、が本発明に包含されると理解される。こうしたより小さな範囲の上限値及び下限値は、そのより小さな範囲に独立して含まれ得るものであり、こうした上限値及び下限値もまた、本発明に包含され、記載範囲において具体的に除外される任意の限界値の対象になる。記載範囲が限界値の1つまたは両方を含む場合、そうした含まれる限界値のどちらか一方または両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれる。
【0037】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本発明の実施または試験においては、本明細書に記載のものと同様または同等の任意の方法及び材料を使用することもできるが、ここでは、好ましい方法及び材料が記載される。本明細書で言及される刊行物はすべて、その刊行物が関連付けて引用される方法及び/または材料を開示及び説明するために、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0038】
文脈上明確に示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される「a」、「an」、及び「the」という単数形は、複数の参照対象を含むことに留意されなくてはならない。したがって、例えば、「AAVカプシド」に対する参照は、複数のそのようなカプシドを含み、「AAVビリオン」に対する参照は、1つまたは複数のAAVビリオン、及び当業者に知られるその同等形態に対する参照を含むなどである。特許請求の範囲は、任意選択の要素はいずれも除外して起草され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記載は、請求要素の記載と関連する「単に」、「のみ」、及び同様のものなどの排他的用語の使用、または「負の」限定の使用のための先行的根拠として働くことが意図される。
【0039】
本発明のある特定の特徴は、明確化するために別々の実施形態と関連して記載されるが、単一の実施形態において組み合わせても提供され得ると理解される。逆に、本発明のさまざまな特徴は、簡略化するために単一の実施形態と関連して記載されるが、別々に提供されるか、または任意の適切な部分的な組み合わせにおいても提供され得る。本発明に関する実施形態の組み合わせはすべて、本発明によって明確に包含され、それぞれ及びあらゆる組み合わせが個別かつ明示的に開示される場合と同様に本明細書に開示される。さらに、さまざまな実施形態及びそれらの要素の部分的な組み合わせもすべて、本発明によって明確に包含され、それぞれ及びあらゆるそのような部分的な組み合わせが個別かつ明示的に本明細書に開示される場合と同様に本明細書に開示される。
【0040】
本明細書で議論される刊行物は、単に、本出願の出願日より前にその開示内容が提供されているにすぎない。先行発明であるという理由によって本発明がそのような刊行物に先行する権利を有さないことを承認するものとして本明細書の記載内容が解釈されることには全くならない。さらに、提供される刊行物の日付は実際の刊行日とは異なり得るものであり、実際の刊行日は個別に確認する必要があり得る。
【0041】
本開示は、改変カプシドタンパク質を有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンを提供し、組換えAAV(rAAV)ビリオンは、野生型AAVと比較して、網膜細胞に対して高い感染力を示し、rAAVビリオンは、異種核酸を含む。rAAVビリオンは、網膜細胞に対する対応する野生型AAVの感染力と比較して、網膜細胞に対して高い感染力を示す。網膜細胞は、光受容体(例えば、杆体、錐体)、網膜神経節細胞(RGC)、ミュラー細胞(ミュラーグリア細胞)、アストロサイト(例えば、網膜アストロサイト)、双極細胞、アマクリン細胞、水平細胞、または網膜色素上皮(RPE)細胞であり得る。本開示は、個体の網膜細胞への遺伝子産物の送達方法、及び眼疾患の治療方法をさらに提供する。本開示は、改変カプシドタンパク質を有するrAAVビリオンを提供し、内顆粒層、外顆粒層、光受容体層、神経節細胞層、及び網膜色素上皮のうちの1つまたは複数に対してrAAVビリオンが示す局在性は、内顆粒層、外顆粒層、光受容体層、神経節細胞層、または網膜色素上皮に対する対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる局在性度合と比較して、少なくとも5倍増加しており、rAAVビリオンは、異種核酸を含む。
【0042】
変異AAVカプシドポリペプチド
本開示は、変異AAVカプシドタンパク質を提供する。本開示の変異AAVカプシドタンパク質は、親AAVカプシドタンパク質の表面露出(例えば、溶媒露出)部分における挿入部位に5つのアミノ酸~20個のアミノ酸の長さの異種ペプチド挿入断片を含み、その結果、変異カプシドタンパク質は、AAVビリオンに存在するとき、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜細胞に対する感染力と比較して、網膜細胞に対する感染力を増加させる。他の場合では、網膜細胞は、ミュラー細胞である。他の網膜細胞には、アマクリン細胞、双極細胞、及び水平細胞が含まれる。「約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片」は、本明細書ではペプチド挿入断片(例えば、異種ペプチド挿入断片)とも称される。「対応する親AAVカプシドタンパク質」は、ペプチド挿入断片を含まない同一のAAV血清型のAAVカプシドタンパク質を指す。多くの場合、変異AAVカプシドは、5つのアミノ酸~20個のアミノ酸(例えば、5つ~7つ、7つ~10個、10個~12個、12個~15個、または15個~20個のアミノ酸)の長さの単一の異種ペプチド挿入断片を含む。
【0043】
挿入部位は、AAVカプシドタンパク質のGHループまたはループIVに位置し、例えば、AAVカプシドタンパク質のGHループまたはループIVの溶媒露出部分に位置する。AAVカプシドのGHループ/ループIVについては、例えば、van Vliet et al.(2006)Mol.Ther.14:809、Padron et al.(2005)J.Virol.79:5047、及びShen et al.(2007)Mol.Ther.15:1955を参照のこと。例えば、挿入部位は、
図6A~6Cに示されるAAVカプシドタンパク質のアミノ酸411~650の間であり得る。例えば、挿入部位は、
図5に示される、AAV2のアミノ酸570~611の間、AAV1のアミノ酸571~612の間、AAV5のアミノ酸560~601の間、AAV6のアミノ酸571~612の間、AAV7のアミノ酸572~613の間、AAV8のアミノ酸573~614の間、AAV9のアミノ酸571~612の間、またはAAV10のアミノ酸573~614の間であり得る。場合によっては、挿入部位は、AAV2のカプシドタンパク質のアミノ酸588とアミノ酸589との間であるか、または異なる血清型のAAVにおける対応する挿入部位である。場合によっては、挿入部位は、AAV2のカプシドタンパク質のアミノ酸587とアミノ酸588との間であるか、または異なる血清型のAAVにおける対応する挿入部位である。
【0044】
場合によっては、対応する親AAVカプシドタンパク質と比較して、約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸(例えば、5つ~7つ、7つ~10個、10個~12個、12個~15個、または15個~20個のアミノ酸)の長さの異種ペプチドが、カプシドタンパク質のGHループまたはループIVの挿入部位に挿入される。例えば、挿入部位は、AAV2のアミノ酸587とアミノ酸588との間であるか、または別のAAV血清型のカプシドサブユニットの対応位置であり得る。挿入部位587/588は、AAV2のカプシドタンパク質に基づくものであることに留意されるべきである。5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸(例えば、5つ~7つ、7つ~10個、10個~12個、12個~15個、または15個~20個のアミノ酸)の長さの異種ペプチドが、AAV2以外のAAV血清型(例えば、AAV8、AAV9など)の対応部位に挿入され得る。さまざまなAAV血清型のカプシドタンパク質のアミノ酸配列の比較に基づけば、「AAV2のアミノ酸587~588に対応する」挿入部位が任意の所与のAAV血清型のカプシドタンパク質のどこに位置することになるのかを当業者であれば分かるであろう。さまざまなAAV血清型における、AAV2のカプシドタンパク質VP1のアミノ酸570~611(
図4を参照のこと)に対応する配列が
図5に示される。例えば、AAV1についてはGenBank受入番号NP_049542、AAV5についてはGenBank受入番号AAD13756、AAV6についてはGenBank受入番号AAB95459、AAV7についてはGenBank受入番号YP_077178、AAV8についてはGenBank受入番号YP_077180、AAV9についてはGenBank受入番号AAS99264、及びAAV10についてはGenBank受入番号AAT46337を参照のこと。
【0045】
例えば、挿入部位は、AAV2のアミノ酸587とアミノ酸588との間、AAV1のアミノ酸590とアミノ酸591との間、AAV5のアミノ酸575とアミノ酸576との間、AAV6のアミノ酸590とアミノ酸591との間、AAV7のアミノ酸589とアミノ酸590との間、AAV8のアミノ酸590とアミノ酸591との間、AAV9のアミノ酸588とアミノ酸589との間、またはAAV10のアミノ酸588とアミノ酸589との間であり得る。挿入部位は、
図5において下線付きで示され、アミノ酸の番号付けは、
図5に示される番号付けに基づく。
【0046】
いくつかの実施形態では、対象カプシドタンパク質は、
図6A~6Cに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、5つ~20個のアミノ酸(例えば、5つ~7つ、7つ~10個、10個~12個、12個~15個、または15個~20個のアミノ酸)の長さの異種ペプチド挿入断片を有するGHループを含む。
【0047】
挿入ペプチド
上記のように、約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の長さの異種ペプチドが、AAVカプシドのGHループに挿入される。場合によっては、挿入ペプチドは、5つのアミノ酸~20個のアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、7つのアミノ酸~15個のアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、9つのアミノ酸~15個のアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、9つのアミノ酸~12個のアミノ酸の長さを有する。挿入ペプチドは、5つのアミノ酸、6つのアミノ酸、7つのアミノ酸、8つのアミノ酸、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、16個のアミノ酸、17個のアミノ酸、18個のアミノ酸、19個のアミノ酸、または20個のアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、7つのアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、8つのアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、9つのアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、10個のアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、11個のアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、12個のアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、13個のアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、14個のアミノ酸の長さを有する。場合によっては、挿入ペプチドは、15個のアミノ酸の長さを有する。
【0048】
ペプチド挿入断片は、場合によっては、式I:X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10のペプチドであって、式中、X1 が、Leu、Ile、Pro、またはGlnであり、X2 が、Ala、Pro、Ser、Asp、Gly、Thr、またはValであり、X3 が、Lys、His、Thr、Ile、Pro、Val、Arg、Ala、Asp、Glu、Asn、Gln、またはTyrであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、Gly、Thr、Ile、Asn、Glu、Lys、またはArgであり、X5 が、Asp、Ser、Gln、Val、Thr、Gly、Ala、Asn、Lys、またはTyrであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、Ser、Glu、Pro、またはIleであり、X7 が、Thr、Ser、Asn、Pro、Leu、Gln、Lys、Ala、またはCysであり、X8 が、Lys、Ser、Arg、Thr、Ala、Glu、Ile、またはAsnであり、X9 が、Asn、Pro、Ser、Lys、His、Ile、Thr、またはAlaであり、X10が、Ala、Phe、Asp、Thr、Val、またはMetである。
【0049】
式Iのペプチド挿入断片には、限定はされないが、(1)LAKDATKNA(配列番号47)、(2)PAHQDTTKNA(配列番号48)、(3)LAHQDTTKNA(配列番号49)、(4)LATTSQNKPA(配列番号50)、(5)LAISDQTKHA(配列番号51)、(6)IARGVAPSSA(配列番号52)、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)、(8)LAKGTELKPA(配列番号54)、(9)LAIIDATKNA(配列番号55)、(10)LAVDGAQRSA(配列番号56)、(11)PAPQDTTKKA(配列番号57)、(12)LPHQDTTKNA(配列番号58)、(13)LAKDATKTIA(配列番号59)、(14)LAKQQSASTA(配列番号60)、(15)LAKSDQSKPA(配列番号61)、(16)LSHQDTTKNA(配列番号62)、(17)LAANQPSKPA(配列番号63)、(18)LAVSDSTKAA(配列番号64)、(19)LAAQGTAKKPA(配列番号65)、(20)LAPDQTTRNA(配列番号66)、(21)LAASDSTKAA(配列番号67)、(22)LAPQDTTKNA(配列番号68)、(23)LAKADETRPA(配列番号69)、(24)LAHQDTAKNA(配列番号70)、(25)LAHQDTKKNA(配列番号71)、(26)LAHQDTTKHA(配列番号72)、(27)LAHQDTTKKA(配列番号73)、(28)LAHQDTTRNA(配列番号74)、(29)LAHQDTTNA(配列番号75)、(30)LAHQGTTKNA(配列番号76)、(31)LAHQVTTKNA(配列番号77)、(32)LAISDQSKPA(配列番号78)、(33)LADATKTA(配列番号79)、(34)LAKDTTKNA(配列番号80)、(35)LAKSDQSRPA(配列番号81)、(36)LAPQDTKKNA(配列番号82)、(37)LATSDSTKAA(配列番号83)、(38)LAVDGSQRSA(配列番号84)、(39)LPISDQTKHA(配列番号85)、(40)LPKDATKTIA(配列番号86)、(41)LPPQDTTKNA(配列番号87)、(42)PAPQDTTKNA(配列番号88)、(43)QAHQDTTKNA(配列番号89)、(44)LAHETSPRPA(配列番号90)、(45)LAKSTSTAPA(配列番号91)、(46)LADQDTTKNA(配列番号92)、(47)LAESDQSKPA(配列番号93)、(48)LAHKDTTKNA(配列番号94)、(49)LAHKTQQKM(配列番号95)、(50)LAHQDTTENA(配列番号96)、(51)LAHQDTTINA(配列番号97)、(52)LAHQDTTKKT(配列番号98)、(53)LAHQDTTKND(配列番号99)、(54)LAHQDTTKNT(配列番号100)、(55)LAHQDTTKNV(配列番号101)、(56)LAHQDTTKTM(配列番号102)、(57)LAHQNTTKNA(配列番号103)、(58)LAHRDTTKNA(配列番号104)、(59)LAISDQTNHA(配列番号105)、(60)LAKQKSASTA(配列番号106)、(61)LAKSDQCKPA(配列番号107)、(62)LAKSDQSKPD(配列番号108)、(63)LAKSDQSNPA(配列番号109)、(64)LAKSYQSKPA(配列番号110)、(65)LANQDTTKNA(配列番号111)、(66)LAPQNTTKNA(配列番号112)、(67)LAPSSIQKPA(配列番号113)、(68)LAQQDTTKNA(配列番号114)、(69)LAYQDTTKNA(配列番号115)、(70)LDHQDTTKNA(配列番号116)、(71)LDHQDTTKSA(配列番号117)、(72)LGHQDTTKNA(配列番号118)、(73)LPHQDTTKND(配列番号119)、(74)LPHQDTTKNT(配列番号120)、(75)LPHQDTTNNA(配列番号121)、(76)LTHQDTTKNA(配列番号122)、(77)LTKDATKTIA(配列番号123)、(78)LTPQDTTKNA(配列番号124)、及び(79)LVHQDTTKNA(配列番号125)が含まれる。
【0050】
ペプチド挿入断片は、場合によっては、式II:X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10のペプチドであって、式中、X1 が、Leu、Ile、またはProであり、X2 が、Ala、Pro、またはSerであり、X3 が、Lys、His、Thr、Ile、Pro、Val、Arg、またはAlaであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、Gly、Thr、Ile、またはAsnであり、X5 が、Asp、Ser、Gln、Val、Thr、Gly、またはAlaであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、Ser、Glu、またはProであり、X7 が、Thr、Ser、Asn、Pro、Leu、Gln、Lys、またはAlaであり、X8 が、Lys、Ser、Arg、またはThrであり、X9 が、Asn、Pro、Ser、Lys、His、Ile、Thr、またはAlaであり、X10が、Alaである。
【0051】
式IIのペプチド挿入断片には、限定はされないが、(1)LAKDATKNA(配列番号47)、(2)PAHQDTTKNA(配列番号48)、(3)LAHQDTTKNA(配列番号49)、(4)LATTSQNKPA(配列番号50)、(5)LAISDQTKHA(配列番号51)、(6)IARGVAPSSA(配列番号52)、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)、(8)LAKGTELKPA(配列番号54)、(9)LAIIDATKNA(配列番号55)、(10)LAVDGAQRSA(配列番号56)、(11)PAPQDTTKKA(配列番号57)、(12)LPHQDTTKNA(配列番号58)、(13)LAKDATKTIA(配列番号59)、(14)LAKQQSASTA(配列番号60)、(15)LAKSDQSKPA(配列番号61)、(16)LSHQDTTKNA(配列番号62)、(17)LAANQPSKPA(配列番号63)、(18)LAVSDSTKAA(配列番号64)、(19)LAAQGTAKKPA(配列番号65)、(20)LAPDQTTRNA(配列番号66)、(21)LAASDSTKAA(配列番号67)、(22)LAPQDTTKNA(配列番号68)、(23)LAKADETRPA(配列番号69)、(24)LAHQDTAKNA(配列番号70)、(25)LAHQDTKKNA(配列番号71)、(26)LAHQDTTKHA(配列番号72)、(27)LAHQDTTKKA(配列番号73)、(28)LAHQDTTRNA(配列番号74)、(29)LAHQDTTNA(配列番号75)、(30)LAHQGTTKNA(配列番号76)、(31)LAHQVTTKNA(配列番号77)、(32)LAISDQSKPA(配列番号78)、(33)LADATKTA(配列番号79)、(34)LAKDTTKNA(配列番号80)、(35)LAKSDQSRPA(配列番号81)、(36)LAPQDTKKNA(配列番号82)、(37)LATSDSTKAA(配列番号83)、(38)LAVDGSQRSA(配列番号84)、(39)LPISDQTKHA(配列番号85)、(40)LPKDATKTIA(配列番号86)、(41)LPPQDTTKNA(配列番号87)、及び(42)PAPQDTTKNA(配列番号88)が含まれる。
【0052】
式IIのペプチドには、限定はされないが、(1)LAKDATKNA(配列番号47)、(2)PAHQDTTKNA(配列番号48)、(3)LAHQDTTKNA(配列番号49)、(4)LATTSQNKPA(配列番号50)、(5)LAISDQTKHA(配列番号51)、(6)IARGVAPSSA(配列番号52)、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)、(8)LAKGTELKPA(配列番号54)、(9)LAIIDATKNA(配列番号55)、(10)LAVDGAQRSA(配列番号56)、(11)PAPQDTTKKA(配列番号57)、(12)LPHQDTTKNA(配列番号58)、(13)LAKDATKTIA(配列番号59)、(14)LAKQQSASTA(配列番号60)、(15)LAKSDQSKPA(配列番号61)、(16)LSHQDTTKNA(配列番号62)、(17)LAANQPSKPA(配列番号63)、及び(18)LAVSDSTKAA(配列番号64)が含まれる。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(1)LAKDATKNA(配列番号47)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(2)PAHQDTTKNA(配列番号48)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(3)LAHQDTTKNA(配列番号49)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(4)LATTSQNKPA(配列番号50)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(5)LAISDQTKHA(配列番号51)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(6)IARGVAPSSA(配列番号52)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(8)LAKGTELKPA(配列番号54)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(9)LAIIDATKNA(配列番号55)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(10)LAVDGAQRSA(配列番号56)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(11)PAPQDTTKKA(配列番号57)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(12)LPHQDTTKNA(配列番号58)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(13)LAKDATKTIA(配列番号59)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(14)LAKQQSASTA(配列番号60)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(15)LAKSDQSKPA(配列番号61)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(16)LSHQDTTKNA(配列番号62)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(17)LAANQPSKPA(配列番号63)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(18)LAVSDSTKAA(配列番号64)である。
【0053】
ペプチド挿入断片は、場合によっては、式III:X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10のペプチドであって、式中、X1 が、Leu、Ile、またはProであり、X2 が、Ala、Pro、またはSerであり、X3 が、Lys、His、Thr、Ile、Pro、Val、Arg、またはAlaであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、Gly、Thr、Ile、またはAsnであり、X5 が、Asp、Ser、Gln、Val、Thr、Gly、またはAlaであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、Ser、Glu、またはProであり、X7 が、Thr、Ser、Asn、Pro、Leu、Gln、Lys、またはAlaであり、X8 が、Lys、Ser、Arg、またはThrであり、X9 が、Asn、Pro、Ser、Lys、His、Ile、Thr、またはAlaであり、X10が、Ala、Thr、Asp、Val、またはMetである。
【0054】
式IIIのペプチド挿入断片には、限定はされないが、(1)LAKDATKNA(配列番号47)、(2)PAHQDTTKNA(配列番号48)、(3)LAHQDTTKNA(配列番号49)、(6)IARGVAPSSA(配列番号52)、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)、(8)LAKGTELKPA(配列番号54)、(9)LAIIDATKNA(配列番号55)、(10)LAVDGAQRSA(配列番号56)、(11)PAPQDTTKKA(配列番号57)、(12)LPHQDTTKNA(配列番号58)、(13)LAKDATKTIA(配列番号59)、(14)LAKQQSASTA(配列番号60)、(16)LSHQDTTKNA(配列番号62)、(17)LAANQPSKPA(配列番号63)、(18)LAVSDSTKAA(配列番号64)、(19)LAAQGTAKPA(配列番号65)、(20)LAPDQTTRNA(配列番号66)、(24)LAHQDTAKNA(配列番号70)、(25)LAHQDTKKNA(配列番号71)、(26)LAHQDTTKHA(配列番号72)、(27)LAHQDTTKKA(配列番号73)、(28)LAHQDTTRNA(配列番号74)、(29)LAHQDTTTNA(配列番号75)、(30)LAHQGTTKNA(配列番号76)、(21)LAASDSTKAA(配列番号67)、(22)LAPQDTTKNA(配列番号68)、(31)LAHQVTTKNA(配列番号77)、(33)LAKDATKTA(配列番号79)、(34)LAKDTTKNA(配列番号80)、(36)LAPQDTKKNA(配列番号82)、(37)LATSDSTKAA(配列番号83)、(38)LAVDGSQRSA(配列番号84)、(41)LPPQDTTKNA(配列番号87)、(42)PAPQDTTKNA(配列番号88)、(52)LAHQDTTKKT(配列番号98)、(53)LAHQDTTKND(配列番号99)、(54)LAHQDTTKNT(配列番号100)、(55)LAHQDTTKNV(配列番号101)、(56)LAHQDTTKTM(配列番号102)、(73)LPHQDTTKND(配列番号119)、及び(74)LPHQDTTKNT(配列番号120)が含まれる。
【0055】
ペプチド挿入断片は、場合によっては、式IV:X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10のペプチドであって、式中、X1 が、Leuであり、X2 が、Alaであり、X3 が、Lys、His、Thr、Ile、Pro、またはValであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、またはGlyであり、X5 が、Asp、Ser、またはGlnであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、またはSerであり、X7 が、ThrまたはSerであり、X8 が、Lys、Ser、またはArgであり、X9 が、Asn、Pro、またはSerであり、X10が、Alaである。
【0056】
式IVのペプチド挿入断片には、限定はされないが、(1)LAKDATKNA(配列番号47)、(3)LAHQDTTKNA(配列番号49)、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)、(15)LAKSDQSKPA(配列番号61)、(20)LAPDQTTRNA(配列番号66)、(22)LAPQDTTKNA(配列番号68)、(28)LAHQDTTRNA(配列番号74)、(32)LAISDQSKPA(配列番号78)、(34)LAKDTTKNA(配列番号80)、及び(35)LAKSDQSRPA(配列番号81)が含まれる。
【0057】
ペプチド挿入断片は、場合によっては、式V:X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10のペプチドであって、式中、X1 が、Leuであり、X2 が、Alaであり、X3 が、LysまたはHisであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、またはGlyであり、X5 が、Asp、Ser、またはGlnであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、またはSerであり、X7 が、ThrまたはSerであり、X8 が、Lys、Ser、またはArgであり、X9 が、Asn、Pro、またはSerであり、X10が、Alaである。
【0058】
式Vのペプチド挿入断片には、限定はされないが、(1)LAKDATKNA(配列番号47)、(15)LAKSDQSKPA(配列番号51)、(34)LAKDTTKNA(配列番号80)、及び(35)LAKSDQSRPA(配列番号81)が含まれる。
【0059】
ペプチド挿入断片は、場合によっては、式VI:X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10のペプチドであって、式中、X1 が、Leuであり、X2 が、Alaであり、X3 が、Asn、Lys、Thr、Gln、Ser、Ile、またはLeuであり、X4 が、Ser、Ala、Thr、Glu、Gln、Gly、Lys、またはProであり、X5 が、Asp、Pro、Glu、Thr、Asn、またはArgであり、X6 が、Ile、His、Thr、Gln、Asn、Tyr、Asp、またはGluであり、X7 が、X7は、Gln、Thr、Asn、Ala、またはLysであり、X8 が、Lys、Thr、Arg、またはAspであり、X9 が、Pro、Asn、Thr、Arg、Lys、またはSerであり、X10が、Alaである。
【0060】
式VIのペプチドには、限定はされないが、(80)LAKANQNTPA(配列番号126)、(81)LATTPITKPA(配列番号127)、(82)LATTPIAKPA(配列番号128)、(83)LAIEDHTKSA(配列番号129)、(84)LAQSEHQRPA(配列番号130)、(85)LAKSPNKDNA(配列番号131)、(86)LANQDYTKTA(配列番号132)、(87)LANSTDQTRA(配列番号133)、(88)LALGETTRPA(配列番号134)、(89)LANSTEQTRA(配列番号135)、(90)LAQADTTKNA(配列番号136)、(91)LASKDITKTA(配列番号137)、及び(92)LASPRHNKKC(配列番号138)が含まれる。
【0061】
場合によっては、ペプチド挿入断片は、式VII:LAHQDTTKX1 X2 X3 (配列番号148)のペプチドであって、式中、X1 が、Lys、Thr、Asn、またはHisであり、X2 が、Ala、Thr、Val、Ile、Met、またはAspであり、X3 が、存在するのであれば、Alaである。式VIIのペプチドには、限定はされないが、(26)LAHQDTTKHA(配列番号72)、(27)LAHQDTTKKA(配列番号73)、(52)LAHQDTTKKT(配列番号98)、(53)LAHQDTTKND(配列番号99)、(54)LAHQDTTKNT(配列番号100)、(55)LAHQDTTKNV(配列番号101)、(56)LAHQDTTKTM(配列番号102)、及び(93)LAHQDTTKTIA(配列番号139)が含まれる。
【0062】
場合によっては、ペプチド挿入断片は、式VIII:LAX1 QX2 TX3 X4 X5 X6 (配列番号149)のペプチドであって、式中、X1 が、Ala、Pro、Asp、またはHisであり、X2 が、GlyまたはAspであり、X3 が、Ala、Thr、またはLysであり、X4 が、Asn、Glu、Lys、Arg、またはThrであり、X5 が、Leu、Asn、Lys、またはThrであり、X6 が、存在するのであれば、Ala、Thr、Asp、Val、またはMetである。式VIIIのペプチドには、限定はされないが、(94)LAAQGTANL(配列番号140)、(22)LAPQDTTKNA(配列番号68)、(46)LADQDTTKNA(配列番号92)、(24)LAHQDTAKNA(配列番号70)、(25)LAHQDTKKNA(配列番号71)、(26)LAHQDTTKHA(配列番号72)、(27)LAHQDTTKKA(配列番号73)、(28)LAHQDTTRNA(配列番号74)、(29)LAHQDTTTNA(配列番号75)、(50)LAHQDTTENA(配列番号96)、(51)LAHQDTTINA(配列番号97)、(52)LAHQDTTKKT(配列番号98)、(53)LAHQDTTKND(配列番号99)、(54)LAHQDTTKNT(配列番号100)、(55)LAHQDTTKNV(配列番号101)、及び(56)LAHQDTTKTM(配列番号102)が含まれる。
【0063】
場合によっては、ペプチド挿入断片は、式IX:X1 AX2 X3 DX4 TKX5 A(配列番号150)のペプチドであって、式中、X1 が、ValまたはLeuであり、X2 が、Ile、Val、His、またはAspであり、X3 が、Glu、Ser、Lys、またはGlnであり、X4 が、His、Ser、またはThrであり、X5 が、Ser、Ala、Asn、His、またはLysである。式IXのペプチドには、限定はされないが、(95)VAIEDHTKSA(配列番号141)、(18)LAVSDSTKAA(配列番号64)、(46)LADQDTTKNA(配列番号92)、(48)LAHKDTTKNA(配列番号94)、(26)LAHQDTTKHA(配列番号72)、及び(27)LAHQDTTKKA(配列番号73)が含まれる。
【0064】
場合によっては、ペプチド挿入断片は、式X:X1 X2 X3 AX4 QX5 TX6 KNA(配列番号151)のペプチドであって、式中、X1 が、存在するのであれば、Leuであり、X2 が、存在するのであれば、Alaであり、X3 が、Lys、Leu、またはProであり、X4 が、Asn、His、Pro、またはTyrであり、X5 が、Asn、Gly、Val、またはAspであり、X6 が、ProまたはThrである。式Xのペプチドには、限定はされないが、(96)LAKANQNTPKNA(配列番号142)、(57)LAHQNTTKNA(配列番号103)、(66)LAPQNTTKNA(配列番号112)、(69)LAYQDTTKNA(配列番号115)、(30)LAHQGTTKNA(配列番号76)、(31)LAHQVTTKNA(配列番号77)、及び(42)PAPQDTTKNA(配列番号88)が含まれる。
【0065】
場合によっては、ペプチド挿入断片は、LAHQDTTKKX(配列番号143)であり、式中、Xは、任意のアミノ酸である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、LAHQDTTKKX(配列番号143)であり、式中、Xは、Ala、Thr、Asp、Val、またはMetである。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(27)LAHQDTTKKA(配列番号73)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(52)LAHQDTTKKT(配列番号98)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、LAHQDTTKKD(配列番号144)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、LAHQDTTKKV(配列番号145)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、LAHQDTTKKM(配列番号146)である。
【0066】
場合によっては、ペプチド挿入断片は、(88)LALGETTRPA(配列番号134)ではない。場合によっては、ペプチド挿入断片は、LGETTRP(配列番号147)ではない。
【0067】
適切なペプチド挿入断片には、限定はされないが、(1)LAKDATKNA(配列番号47)、(2)PAHQDTTKNA(配列番号48)、(3)LAHQDTTKNA(配列番号49)、(4)LATTSQNKPA(配列番号50)、(5)LAISDQTKHA(配列番号51)、(6)IARGVAPSSA(配列番号52)、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)、(8)LAKGTELKPA(配列番号54)、(9)LAIIDATKNA(配列番号55)、(10)LAVDGAQRSA(配列番号56)、(11)PAPQDTTKKA(配列番号57)、(12)LPHQDTTKNA(配列番号58)、(13)LAKDATKTIA(配列番号59)、(14)LAKQQSASTA(配列番号60)、(15)LAKSDQSKPA(配列番号61)、(16)LSHQDTTKNA(配列番号62)、(17)LAANQPSKPA(配列番号63)、(18)LAVSDSTKAA(配列番号64)、(19)LAAQGTAKKPA(配列番号65)、(20)LAPDQTTRNA(配列番号66)、(21)LAASDSTKAA(配列番号67)、(22)LAPQDTTKNA(配列番号68)、(23)LAKADETRPA(配列番号69)、(24)LAHQDTAKNA(配列番号70)、(25)LAHQDTKKNA(配列番号71)、(26)LAHQDTTKHA(配列番号72)、(27)LAHQDTTKKA(配列番号73)、(28)LAHQDTTRNA(配列番号74)、(29)LAHQDTTNA(配列番号75)、(30)LAHQGTTKNA(配列番号76)、(31)LAHQVTTKNA(配列番号77)、(32)LAISDQSKPA(配列番号78)、(33)LADATKTA(配列番号79)、(34)LAKDTTKNA(配列番号80)、(35)LAKSDQSRPA(配列番号81)、(36)LAPQDTKKNA(配列番号82)、(37)LATSDSTKAA(配列番号83)、(38)LAVDGSQRSA(配列番号84)、(39)LPISDQTKHA(配列番号85)、(40)LPKDATKTIA(配列番号86)、(41)LPPQDTTKNA(配列番号87)、(42)PAPQDTTKNA(配列番号88)、(43)QAHQDTTKNA(配列番号89)、(44)LAHETSPRPA(配列番号90)、(45)LAKSTSTAPA(配列番号91)、(46)LADQDTTKNA(配列番号92)、(47)LAESDQSKPA(配列番号93)、(48)LAHKDTTKNA(配列番号94)、(49)LAHKTQQKM(配列番号95)、(50)LAHQDTTENA(配列番号96)、(51)LAHQDTTINA(配列番号97)、(52)LAHQDTTKKT(配列番号98)、(53)LAHQDTTKND(配列番号99)、(54)LAHQDTTKNT(配列番号100)、(55)LAHQDTTKNV(配列番号101)、(56)LAHQDTTKTM(配列番号102)、(57)LAHQNTTKNA(配列番号103)、(58)LAHRDTTKNA(配列番号104)、(59)LAISDQTNHA(配列番号105)、(60)LAKQKSASTA(配列番号106)、(61)LAKSDQCKPA(配列番号107)、(62)LAKSDQSKPD(配列番号108)、(63)LAKSDQSNPA(配列番号109)、(64)LAKSYQSKPA(配列番号110)、(65)LANQDTTKNA(配列番号111)、(66)LAPQNTTKNA(配列番号112)、(67)LAPSSIQKPA(配列番号113)、(68)LAQQDTTKNA(配列番号114)、(69)LAYQDTTKNA(配列番号115)、(70)LDHQDTTKNA(配列番号116)、(71)LDHQDTTKSA(配列番号117)、(72)LGHQDTTKNA(配列番号118)、(73)LPHQDTTKND(配列番号119)、(74)LPHQDTTKNT(配列番号120)、(75)LPHQDTTNNA(配列番号121)、(76)LTHQDTTKNA(配列番号122)、(77)LTKDATKTIA(配列番号123)、(78)LTPQDTTKNA(配列番号124)、(79)LVHQDTTKNA(配列番号125)、(80)LAKANQNTPA(配列番号126)、(81)LATTPITKPA(配列番号127)、(82)LATTPIAKPA(配列番号128)、(83)LAIEDHTKSA(配列番号129)、(84)LAQSEHQRPA(配列番号130)、(85)LAKSPNKDNA(配列番号131)、(86)LANQDYTKTA(配列番号132)、(87)LANSTDQTRA(配列番号133)、(88)LALGETTRPA(配列番号134)、(89)LANSTEQTRA(配列番号135)、(90)LAQADTTKNA(配列番号136)、(91)LASKDITKTA(配列番号137)、(92)LASPRHNKKC(配列番号138)、(93)LAHQDTTKTIA(配列番号139)、(94)LAAQGTANL(配列番号140)、(95)VAIEDHTKSA(配列番号141)、及び(96)LAKANQNTPKNA(配列番号142)が含まれる。
【0068】
場合によっては、ペプチド挿入断片は、(11)PAPQDTTKKA(配列番号57)である。場合によっては、ペプチド挿入断片は、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)である。
【0069】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンカプシドは、対応する親AAVカプシドタンパク質と比較して、約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片(例えば、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸(例えば、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、または12個のアミノ酸))がGHループまたはループIVに存在する以外は、他のアミノ酸置換、アミノ酸挿入、またはアミノ酸欠失のいずれも含まない。他の実施形態では、対象rAAVビリオンカプシドは、対応する親AAVカプシドタンパク質と比較して約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片(例えば、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸(例えば、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、または12個のアミノ酸))がGHループまたはループIVに存在することに加えて、親AAVカプシドタンパク質と比較して1つ~約25個のアミノ酸挿入、アミノ酸欠失、またはアミノ酸置換を含む。例えば、いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンカプシドは、対応する親AAVカプシドタンパク質と比較して約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片(例えば、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸(例えば、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、または12個のアミノ酸))がGHループまたはループIVに存在することに加えて、親AAVカプシドタンパク質と比較して1つ~約5つ、約5つ~約10個、約10個~約15個、約15個~約20個、または約20個~約25個のアミノ酸挿入、アミノ酸欠失、またはアミノ酸置換を含む。
【0070】
場合によっては、対象rAAVビリオンカプシドは、Y273F、Y444F、Y500F、及びY730Fのアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含まない。
【0071】
場合によっては、対象変異カプシドポリペプチドは、上記の挿入ペプチドに加えて、Y273F、Y444F、Y500F、及びY730Fのアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含む。
【0072】
場合によっては、対象rAAVビリオンカプシドは、キメラカプシドであり、例えば、カプシドは、第1のAAV血清型のAAVカプシドの一部と、第2血清型のAAVカプシドの一部とを含み、対応する親AAVカプシドタンパク質と比較して、約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片(例えば、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸(例えば、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、または12個のアミノ酸))をGHループまたはループIVに含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、
図4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むカプシドタンパク質を含み、対応する親AAVカプシドタンパク質と比較して、約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片(例えば、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸(例えば、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、または12個のアミノ酸))をGHループまたはループIVに含む。いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、
図4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むカプシドタンパク質を含み、
図4に示されるアミノ酸配列と比較したときのアミノ酸587とアミノ酸588との間、または対応する親AAVカプシドタンパク質と比較したときの対応部位に、約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片(例えば、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸(例えば、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、または12個のアミノ酸))を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、
図5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片(例えば、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸(例えば、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、または12個のアミノ酸))を太字の下線付きアミノ酸の間に含むGHループを含むカプシドタンパク質を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、
図6A~6Cに示されるアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、AAV2のアミノ酸587とアミノ酸588との間、または別のAAV遺伝子型と比較したときの対応部位に約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片(例えば、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸(例えば、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、または12個のアミノ酸))を含むカプシドタンパク質を含む。場合によっては、対応する挿入部位は、
図6Bに太字の下線付き文字で示される部位である。
【0076】
対象rAAVビリオンは、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を網膜細胞に対して示す。
【0077】
場合によっては、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を網膜細胞に対して示す。
【0078】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる光受容体(杆体または錐体)細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を光受容体細胞に対して示す。
【0079】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる光受容体(杆体または錐体)細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を光受容体細胞に対して示す。
【0080】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるRGCに対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力をRGCに対して示す。
【0081】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるRGCに対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力をRGCに対して示す。
【0082】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるRPE細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力をRPE細胞に対して示す。
【0083】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるRPE細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力をRPE細胞に対して示す。
【0084】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるミュラー細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力をミュラー細胞に対して示す。
【0085】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるミュラー細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力をミュラー細胞に対して示す。
【0086】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる双極細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を双極細胞に対して示す。
【0087】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる双極細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を双極細胞に対して示す。
【0088】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるアマクリン細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力をアマクリン細胞に対して示す。
【0089】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるアマクリン細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力をアマクリン細胞に対して示す。
【0090】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる水平細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を水平細胞に対して示す。
【0091】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる水平細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を水平細胞に対して示す。
【0092】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜アストロサイトに対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を網膜アストロサイトに対して示す。
【0093】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜アストロサイトに対する感染力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を網膜アストロサイトに対して示す。
【0094】
場合によっては、対象rAAVビリオンは、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンが内境界膜(ILM)を通過する能力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加したILM通過能力を示す。
【0095】
場合によっては、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンのILM通過能力と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加したILM通過能力を示す。
【0096】
対象rAAVビリオンは、ILMを通過することができると共に、ミュラー細胞、アマクリン細胞などを含めて、細胞層を通過することで光受容体細胞及びまたはRPE細胞に到達することもできる。例えば、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、ILMを通過することができると共に、ミュラー細胞、アマクリン細胞などを含めて、細胞層を通過することで光受容体細胞及びまたはRPE細胞に到達することもできる。
【0097】
場合によっては、対象rAAVビリオンは、硝子体内に注射されると、硝子体内に注射されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含む対照AAVビリオンによるILMを通過した局在性度合と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加したILM通過局在性を示す。例えば、場合によっては、対象rAAVビリオンは、硝子体内に注射されると、硝子体内に注射されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含む対照AAVビリオンによる網膜色素上皮(RPE)層への局在性度合と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加したRPE局在性を示す。別の例として、場合によっては、対象rAAVビリオンは、硝子体内に注射されると、硝子体内に注射されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含む対照AAVビリオンによる光受容体(PR)層への局在性度合と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加したPR層局在性を示す。別の例として、場合によっては、対象rAAVビリオンは、硝子体内に注射されると、硝子体内に注射されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含む対照AAVビリオンによる内顆粒層への局在性度合と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した内顆粒層局在性を示す。別の例として、場合によっては、対象rAAVビリオンは、硝子体内に注射されると、硝子体内に注射されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含む対照AAVビリオンによる外顆粒層への局在性度合と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した外顆粒層局在性を示す。別の例として、場合によっては、対象rAAVビリオンは、硝子体内に注射されると、硝子体内に注射されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含む対照AAVビリオンによる神経節細胞層への局在性度合と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した神経節細胞層局在性を示す。
【0098】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、網膜細胞に選択的に感染し、例えば、対象rAAVビリオンは、非網膜細胞(例えば、眼の外側の細胞)と比較して、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、または50倍超の特異性を伴って網膜細胞に感染する。例えば、いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、網膜細胞に選択的に感染し、例えば、対象rAAVビリオンは、非網膜細胞(例えば、眼の外側の細胞)と比較して、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、または50倍超の特異性を伴って網膜細胞に感染する。
【0099】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、光受容体細胞に選択的に感染し、例えば、対象rAAVビリオンは、眼に存在する非光受容体細胞(例えば、網膜神経節細胞、ミュラー細胞など)と比較して、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、または50倍超の特異性を伴って光受容体細胞に感染する。
【0100】
いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、硝子体内注射を介して投与されると、硝子体内注射を介して投与されたときの対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる光受容体細胞に対する感染力と比較して、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍超増加した感染力を光受容体細胞に対して示す。
【0101】
遺伝子産物
対象rAAVビリオンは、遺伝子産物(異種遺伝子産物)をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。場合によっては、遺伝子産物は、ポリペプチドである。場合によっては、遺伝子産物は、RNAである。遺伝子産物がRNAである場合、場合によっては、RNA遺伝子産物は、ポリペプチドをコードする。場合によっては、本開示のrAAVビリオンは、単一の異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む単一の異種核酸を含む。場合によっては、本開示のrAAVビリオンは、2つの異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む単一の異種核酸を含む。場合によっては、本開示のrAAVビリオンは、2つの異種核酸を含み、それぞれが、異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、干渉RNAである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、アプタマーである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、遺伝子機能を部位特異的にノックダウンする部位特異的ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、標的核酸を改変するRNAガイド型エンドヌクレアーゼである。
【0103】
干渉RNA
遺伝子産物が干渉RNA(RNAi)である場合、適切なRNAiには、細胞におけるアポトーシス因子または血管新生因子のレベルを低減するRNAiが含まれる。例えば、RNAiは、細胞におけるアポトーシスを誘導または促進する遺伝子産物のレベルを低減するshRNAまたはsiRNAであり得る。その遺伝子産物がアポトーシスを誘導または促進する遺伝子は、本明細書で「アポトーシス促進遺伝子」と称され、そうした遺伝子の産物(mRNA、タンパク質)は、「アポトーシス促進遺伝子産物」と称される。アポトーシス促進遺伝子産物には、例えば、Bax遺伝子産物、Bid遺伝子産物、Bak遺伝子産物、及びBad遺伝子産物が含まれる。例えば、米国特許第7,846,730号を参照のこと。
【0104】
干渉RNAは、血管新生産物を標的とするものでもあり得、こうした血管新生産物は、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)(例えば、Cand5であり、例えば、米国特許公開第2011/0143400号、米国特許公開第2008/0188437号、及びReich et al.(2003)Mol.Vis.9:210を参照のこと)、VEGF受容体-1(VEGFR1)(例えば、Sirna-027であり、例えば、Kaiser et al.(2010)Am.J.Ophthalmol.150:33、及びShen et al.(2006)Gene Ther.13:225を参照のこと)、またはVEGF受容体-2(VEGFR2)(Kou et al.(2005)Biochem.44:15064)である。米国特許第6,649,596号、第6,399,586号、第5,661,135号、第5,639,872号、及び第5,639,736号、ならびに米国特許第7,947,659号及び第7,919,473号も参照のこと。
【0105】
アプタマー
遺伝子産物がアプタマーである場合、目的アプタマーの例には、VEGFを標的とするアプタマーが含まれる。例えば、Ng et al.(2006)Nat.Rev.Drug Discovery 5:123、及びLee et al.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:18902を参照のこと。例えば、VEGFアプタマーは、5’-cgcaaucagugaaugcuuauacauccg-3’というヌクレオチド配列(配列番号//)を含み得る。血小板由来増殖因子(PDGF)特異的アプタマー(例えば、E10030)もまた使用に適しており、例えば、Ni and Hui(2009)Ophthalmologica 223:401、及びAkiyama et al.(2006)J.Cell Physiol.207:407)を参照のこと。
【0106】
ポリペプチド
遺伝子産物がポリペプチドである場合、ポリペプチドは、一般に、網膜細胞の機能を増進するポリペプチドであり、例えば、杆体光受容体細胞もしくは錐体光受容体細胞、網膜神経節細胞、ミュラー細胞、双極細胞、アマクリン細胞、水平細胞、または網膜色素上皮細胞の機能を増進するポリペプチドである。ポリペプチドの例には、神経保護ポリペプチド(例えば、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、ニューロトロフィン-4(NT4)、神経成長因子(NGF)、及びニュールツリン(NTN))、抗血管新生ポリペプチド(例えば、可溶性VEGF受容体、VEGF結合抗体、VEGF結合抗体断片(例えば、単鎖抗VEGF抗体)、エンドスタチン、タムスタチン、アンジオスタチン、可溶性Fltポリペプチド(Lai et al.(2005)Mol.Ther.12:659)、可溶性Fltポリペプチドを含むFc融合タンパク質(例えば、Pechan et al.(2009)Gene Ther.16:10を参照のこと)、色素上皮由来因子(PEDF)、可溶性Tie-2受容体など)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質-3(TIMP-3)、光応答性オプシン(例えば、ロドプシン)、抗アポトーシスポリペプチド(例えば、Bcl-2、Bcl-Xl、XIAP)、ならびに同様のものが含まれる。適切なポリペプチドには、限定はされないが、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子2、ニュールツリン(NTN)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-4(NT4)、脳由来神経栄養因子(BDNF、例えば、
図7Bに示されるアミノ酸配列(配列番号11)の約200個のアミノ酸~247個のアミノ酸の連続区間に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)、上皮増殖因子、ロドプシン、X連鎖アポトーシス抑制物質、及びソニックヘッジホッグが含まれる。
【0107】
適切な光応答性オプシンには、例えば、米国特許公開第2007/0261127号(例えば、チャネルロドプシン-2、ChR2、Chop2)、米国特許公開第2001/0086421号、米国特許公開第2010/0015095号、米国特許公開第2016/0002302号、米国特許公開第2013/0347137号、米国特許公開第2013/0019325号、及びDiester et al.(2011)Nat.Neurosci.14:387に記載の光応答性オプシンが含まれる。Thyagarajan et al.(2010)J Neurosci.30(26):8745-8758、Lagali et al.(2008)Nat Neurosci.11(6):667-675、Doroudchi et al.(2011)Mol Ther.19(7):1220-1229、Henriksen et al.(2014)J.Ophthalmic Vis.Res.9:374、Tomita et al.(2014)Mol.Ther.22:1434を参照のこと。
【0108】
適切なポリペプチドには、光開口型イオンチャネルポリペプチドが含まれる。例えば、Gaub et al.(2014)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 111:E5574を参照のこと。例えば、適切なポリペプチドは、光開口型イオンチャネル型グルタミン酸受容体(LiGluR)である。光異性化可能な化合物の存在下で網膜神経節細胞及びオン型双極細胞においてLiGluRが発現すると、細胞が光応答性となる。LiGluRは、L439C置換を含む。Caporale et al.(2011)Mol Ther.19:1212-1219、Volgraf et al.(2006)Nat Chem Biol.2:47-52、及びGorostiza et al.(2007)Proc Natl Acad Sci USA.104:10865-10870を参照のこと。光異性化可能な化合物には、例えば、460nmで効率が最大となるマレイミド-アゾベンゼン-グルタミン酸0(MAG0460 )が含まれる。MAG0460 は、下記の構造を有する。
【0109】
【0110】
適切なポリペプチドには、レチノスキシン(例えば、
図7Aに示されるアミノ酸配列(配列番号10)の約200個のアミノ酸~224個のアミノ酸の連続区間に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)も含まれる。適切なポリペプチドには、例えば、網膜色素変性症GTPase調節因子(RPGR)相互作用タンパク質-1(例えば、GenBank受入番号Q96KN7、Q9EPQ2、及びQ9GLM3を参照のこと)(例えば、
図7Fに示されるアミノ酸配列(配列番号15)の、約1150個のアミノ酸~約1200個のアミノ酸の連続区間または約1200個のアミノ酸~1286個のアミノ酸の連続区間に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)、ペリフェリン-2(Prph2)(例えば、GenBank受入番号NP_000313(例えば、
図7Dに示されるアミノ酸配列(配列番号13)の約300個のアミノ酸~346個のアミノ酸の連続区間に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)、及びTravis et al.(1991)Genomics 10:733を参照のこと)、ペリフェリン(例えば、
図7Eに示されるアミノ酸配列(配列番号14)の約400個のアミノ酸~約470個のアミノ酸の連続区間に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)、網膜色素上皮特異的タンパク質(RPE65)(例えば、
図7Cに示されるアミノ酸配列(配列番号12)の約200個のアミノ酸~247個のアミノ酸の連続区間に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)(例えば、GenBank AAC39660、及びMorimura et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:3088を参照のこと)、杆体由来錐体生存因子(rod-derived cone viability factor)(RdCVF)(例えば、
図7H、
図7I、及び
図7Jのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)、全脈絡膜萎縮(例えば、
図7Gに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)、網膜色素変性症GTPase調節因子(RPGR)(例えば、
図7S~7Vのうちの1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)、ならびに同様のものが含まれる。例えば、場合によっては、適切なRPGRポリペプチドは、
図7Sに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の例として、場合によっては、適切なRPGRポリペプチドは、
図7Tに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、場合によっては、適切なRPGRポリペプチドは、
図7Uに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、場合によっては、適切なRPGRポリペプチドは、
図7Vに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0111】
適切なポリペプチドには、CHM(全脈絡膜萎縮(Rabエスコートタンパク質1(REP1)))(欠損または欠失すると全脈絡膜萎縮が生じるポリペプチド)(例えば、Donnelly et al.(1994)Hum.Mol.Genet.3:1017、及びvan Bokhoven et al.(1994)Hum.Mol.Genet.3:1041を参照のこと)、ならびにクランブス(Crumbs)相同体1(CRB1)(欠損または欠失すると、レーバー先天黒内障及び網膜色素変性症が生じるポリペプチド)(例えば、den Hollander et al.(1999)Nat.Genet.23:217、及びGenBank受入番号CAM23328を参照のこと)も含まれる。例えば、適切なREP1ポリペプチドは、
図7Gに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸を含み得る。
【0112】
適切なポリペプチドには、杆体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットアルファ(PDE6α)、杆体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットベータアイソフォーム1(PDE6βアイソフォーム1)、杆体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットベータアイソフォーム2(PDE6βアイソフォーム2)、杆体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットベータアイソフォーム3(PDE6βアイソフォーム3)が含まれる。例えば、適切なPDE6αポリペプチドは、
図7Kに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸を含み得る。別の例として、適切なPDE6β6アイソフォーム1ポリペプチドは、
図7Lに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸を含み得る。別の例として、適切なPDE6β6アイソフォーム2ポリペプチドは、
図7Mに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸を含み得る。別の例として、適切なPDE6β6アイソフォーム3ポリペプチドは、
図7Nに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸を含み得る。
【0113】
適切なポリペプチドには、欠損または欠失すると色覚異常が生じるポリペプチドも含まれ、そのようなポリペプチドには、例えば、錐体光受容体cGMP開口型チャネルサブユニットアルファ(CNGA3)(例えば、GenBank受入番号NP_001289、及びBooij et al.(2011)Ophthalmology 118:160-167を参照のこと)、錐体光受容体cGMP開口型陽イオンチャネルベータサブユニット(CNGB3)(例えば、Kohl et al.(2005)Eur J Hum Genet.13(3):302を参照のこと)、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)、アルファ形質導入活性ポリペプチド2(GNAT2)(ACHM4)、ならびにACHM5、ならびに欠損または欠失するとさまざまな形態の色覚異常が生じるポリペプチド(例えば、L-オプシン、M-オプシン、及びS-オプシン)が含まれる。Mancuso et al.(2009)Nature 461(7265):784-787を参照のこと。
【0114】
例えば、適切なCNGA3(ACHM2としても知られる)アイソフォーム1ポリペプチドは、
図7Oに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸を含み得る。別の例として、適切なCNGA3(ACHM2としても知られる)アイソフォーム2ポリペプチドは、
図7Pに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸を含み得る。
【0115】
別の例として、適切なCNGB3(ACHM3としても知られる)ポリペプチドは、
図7Qに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸を含み得る。別の例として、GNAT2(ACHM4としても知られる)は、
図7Rに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸を含み得る。
【0116】
部位特異的エンドヌクレアーゼ
場合によっては、目的の遺伝子産物は、遺伝子機能を部位特異的にノックダウンする部位特異的エンドヌクレアーゼであり、例えば、エンドヌクレアーゼは、網膜疾患と関連する対立遺伝子をノックアウトする。例えば、野生型であるときに網膜の構造タンパク質であり、及び/または正常な網膜機能を提供する遺伝子の欠陥コピーを優性対立遺伝子がコードする場合、部位特異的エンドヌクレアーゼは、その欠陥対立遺伝子を標的とし、その欠陥対立遺伝子をノックアウトすることができる。場合によっては、部位特異的エンドヌクレアーゼは、RNAガイド型エンドヌクレアーゼである。
【0117】
欠陥対立遺伝子のノックアウトに加えて、部位特異的ヌクレアーゼは、欠陥対立遺伝子によってコードされるタンパク質の機能性コピーをコードするドナーDNAを用いた相同組換えを促進するためにも使用することができる。したがって、例えば、対象rAAVビリオンは、欠陥対立遺伝子をノックアウトする部位特異的エンドヌクレアーゼの送達にも使用することができると共に、欠陥対立遺伝子の機能性コピーを送達することで欠陥対立遺伝子を修復し、それによって機能性の網膜タンパク質(例えば、機能性レチノスキシン、機能性RPE65、機能性ペリフェリンなど)を産生させるためにも使用することができる。例えば、Li et al.(2011)Nature 475:217を参照のこと。いくつかの実施形態では、対象rAAVビリオンは、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする異種ヌクレオチド配列と、欠陥対立遺伝子の機能性コピーをコードする異種ヌクレオチド配列とを含み、機能性コピーは、機能性の網膜タンパク質をコードする。機能性の網膜タンパク質には、例えば、レチノスキシン、RPE65、網膜色素変性症GTPase調節因子(RGPR)相互作用タンパク質-1、ペリフェリン、ペリフェリン-2、RdCVF、及び同様のものが含まれる。
【0118】
使用に適した部位特異的エンドヌクレアーゼには、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、及び転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が含まれ、そのような部位特異的エンドヌクレアーゼは、非天然起源のものであり、特定の遺伝子を標的とするように改変される。そのような部位特異的ヌクレアーゼは、ゲノム内の特定の位置を切断するように操作することができ、その後、非相同末端結合によって切断が修復され、これと同時に、いくつかのヌクレオチドの挿入または欠失が生じ得る。そのとき、そのような部位特異的エンドヌクレアーゼ(「INDEL」とも称される)によって、タンパク質がフレームから外れ、遺伝子が効率的にノックアウトされる。例えば、米国特許公開第2011/0301073号を参照のこと。適切な部位特異的エンドヌクレアーゼには、操作メガヌクレアーゼ再操作ホーミングエンドヌクレアーゼが含まれる。適切なエンドヌクレアーゼには、I-Tevlヌクレアーゼが含まれる。適切なメガヌクレアーゼには、I-Sce1(例えば、Bellaiche et al.(1999)Genetics 152:1037を参照のこと)、及びI-Cre1(例えば、Heath et al.(1997)Nature Sructural Biology 4:468を参照のこと)が含まれる。
【0119】
RNAガイド型エンドヌクレアーゼ
場合によっては、遺伝子産物は、RNAガイド型エンドヌクレアーゼである。場合によっては、遺伝子産物は、RNAガイド型エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含むRNAである。場合によっては、遺伝子産物は、ガイドRNAであり、例えば、シングルガイドRNAである。場合によっては、遺伝子産物は、1)ガイドRNA、及び2)RNAガイド型エンドヌクレアーゼである。ガイドRNAは、a)RNAガイド型エンドヌクレアーゼに結合するタンパク質結合領域と、b)標的核酸に結合する領域とを含み得る。RNAガイド型エンドヌクレアーゼは、本明細書で「ゲノム編集ヌクレアーゼ」とも称される。
【0120】
適切なゲノム編集ヌクレアーゼの例は、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(II型、V型、またはVI型のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼなど))である。したがって、ゲノム標的化組成物は、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(II型、V型、またはVI型のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼなど))を含み得る。場合によっては、ゲノム標的化組成物は、クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼを含む。場合によっては、ゲノム標的化組成物は、クラス2のII型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9タンパク質)を含む。場合によっては、ゲノム標的化組成物は、クラス2のV型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cpf1タンパク質、C2c1タンパク質、またはC2c3タンパク質)を含む。場合によっては、ゲノム標的化組成物は、クラス2のVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、C2c2タンパク質)を含む。
【0121】
場合によっては、ゲノム編集ヌクレアーゼは、異種ポリペプチド(「融合パートナー」とも称される)に融合した融合タンパク質である。場合によっては、ゲノム編集ヌクレアーゼは、細胞内局在化を生じさせるアミノ酸配列(融合パートナー)に融合され、すなわち、融合パートナーは、細胞内局在化配列(例えば、核へと標的指向化するための1つまたは複数の核局在化シグナル(NLS)、2つ以上のNLS、3つ以上のNLSなど)である。
【0122】
場合によっては、ゲノム編集エンドヌクレアーゼは、II型のCRISPR/Caseエンドヌクレアーゼである。場合によっては、ゲノム編集エンドヌクレアーゼは、Cas9ポリペプチドである。Cas9タンパク質は、Cas9ガイドRNAのタンパク質結合セグメントとそれが結合することによって標的核酸配列(例えば、染色体配列または染色体外配列(例えば、エピソーム配列、ミニサークル配列、ミトコンドリア配列、葉緑体配列など))内の標的部位へと導かれる(例えば、標的部位で安定化する)。場合によっては、Cas9ポリペプチドは、
図8Aに示されるStreptococcus pyogenesのCas9に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または99%超のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。場合によっては、本開示の組成物または方法において使用されるCas9ポリペプチドは、Staphylococcus aureusのCas9(saCas9)ポリペプチドである。場合によっては、saCas9ポリペプチドは、
図8Bに示されるsaCas9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0123】
場合によっては、適切なCas9ポリペプチドは、高忠実度(HF)のCas9ポリペプチドである。Kleinstiver et al.(2016)Nature 529:490を参照のこと。例えば、
図8Aに示されるアミノ酸配列のアミノ酸N497、アミノ酸R661、アミノ酸Q695、及びアミノ酸Q926は、例えば、アラニンで置換される。例えば、HFCas9ポリペプチドは、
図8Aに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、アミノ酸N497、アミノ酸R661、アミノ酸Q695、及びアミノ酸Q926は、例えば、アラニンで置換される。
【0124】
場合によっては、適切なCas9ポリペプチドは、改変されたPAM特異性を示す。例えば、Kleinstiver et al.(2015)Nature 523:481を参照のこと。
【0125】
場合によっては、ゲノム編集エンドヌクレアーゼは、V型のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼである。場合によっては、V型のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、Cpf1タンパク質である。場合によっては、Cpf1タンパク質は、
図8Cに示されるCpf1のアミノ酸配列に対して少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0126】
クラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9タンパク質、V型またはVI型のCRISPR/Casタンパク質、Cpf1タンパク質など)に結合し、標的核酸内の特定の位置へと複合体を標的指向化する核酸は、本明細書で「ガイドRNA」または「CRISPR/Casガイド核酸」または「CRISPR/CasガイドRNA」と称される。ガイドRNAは、標的指向性セグメントを含むことによって複合体(RNP複合体)に標的特異性を付与し、標的指向性セグメントは、ガイド配列(本明細書で標的指向性配列とも称される)を含み、ガイド配列は、標的核酸の配列に相補的なヌクレオチド配列である。
【0127】
場合によっては、ガイドRNAは、「アクチベーター」及び「ターゲッター」という2つの別々の核酸分子を含み、本明細書で「デュアルガイドRNA」、「二重分子ガイドRNA」、「二分子ガイドRNA」、または「dgRNA」と称される。場合によっては、ガイドRNAは、1つの分子(例えば、クラス2のいくつかのCRISPR/Casタンパク質については、対応するガイドRNAは、単一の分子であり、場合によっては、アクチベーターとターゲッターとは、例えば介在ヌクレオチドを介して、互いに共有結合で連結される)であり、ガイドRNAは、「シングルガイドRNA」、「単一分子ガイドRNA」、「一分子ガイドRNA」、または単に「sgRNA」と称される。
【0128】
遺伝子産物がRNAガイド型エンドヌクレアーゼであるか、またはRNAガイド型エンドヌクレアーゼとガイドRNAとの両方である場合、遺伝子産物は、標的核酸を改変することができる。場合によっては、例えば、標的核酸が欠陥対立遺伝子に有害な変異(例えば、網膜細胞の標的核酸における有害な変異)を含む場合、RNAガイド型エンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体は、有害な変異を修正するヌクレオチド配列を含むドナー核酸(例えば、欠陥対立遺伝子によってコードされるタンパク質の機能性コピーをコードするヌクレオチド配列を含むドナー核酸)と共に、有害な変異の修正(例えば、相同組換え修復(HDR)を介するもの)に使用することができる。
【0129】
場合によっては、遺伝子産物は、RNAガイド型エンドヌクレアーゼ及び2つの別々のsgRNAであり、2つの別々のsgRNAは、非相同末端結合(NHEJ)を介して標的核酸を欠失させる。
【0130】
本開示は、個体の網膜細胞における標的核酸の改変方法を提供し、標的核酸は、有害な変異を含み、方法は、本開示のrAAVビリオンを(例えば、眼内投与、硝子体内投与などによって)個体に投与することを含み、rAAVビリオンは、i)RNAガイド型エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列と、ii)標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を含むsgRNAをコードするヌクレオチド配列と、iii)有害な変異を修正するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型DNAをコードするヌクレオチド配列とを含む異種核酸を含む。rAAVビリオンが投与されると、HDRによって標的核酸における有害な変異が修正される。
【0131】
本開示は、個体の網膜細胞における標的核酸の改変方法を提供し、標的核酸は、有害な変異を含み、方法は、本開示のrAAVビリオンを(例えば、眼内投与、硝子体内投与などによって)個体に投与することを含み、rAAVビリオンは、i)RNAガイド型エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列と、ii)標的核酸における第1の配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のsgRNAをコードするヌクレオチド配列と、iii)標的核酸における第2の配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第2のsgRNAをコードするヌクレオチド配列とを含む異種核酸を含む。rAAVビリオンが投与されると、NHEJによって標的核酸における有害な変異が除去される。
【0132】
調節配列
場合によっては、目的の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、転写制御要素に機能可能なように連結される。例えば、場合によっては、目的の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに機能可能なように連結される。他の場合では、目的の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、誘導性プロモーターに機能可能なように連結される。場合によっては、目的の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、組織特異的または細胞型特異的な調節要素に機能可能なように連結される。例えば、場合によっては、目的の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、網膜細胞特異的プロモーターに機能可能なように連結される。例えば、場合によっては、目的の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、光受容体特異的調節要素(例えば、光受容体特異的プロモーター)に機能可能なように連結され、例えば、光受容体細胞において機能可能なように連結された遺伝子を選択的に発現させる調節要素に機能可能なように連結される。適切な光受容体特異的調節要素には、例えば、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター(Young et al.(2003)Ophthalmol.Vis.Sci.44:4076)、ベータホスホジエステラーゼ遺伝子プロモーター(Nicoud et al.(2007)J.Gene Med.9:1015)、網膜色素変性症遺伝子プロモーター(前出のNicoud et al.(2007))、受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子エンハンサー(前出のNicoud et al.(2007))、IRBP遺伝子プロモーター(Yokoyama et al.(1992)Exp Eye Res.55:225)が含まれる。
【0133】
医薬組成物
本開示は、a)上記の対象rAAVビリオンと、b)医薬的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤、または緩衝剤とを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤、または緩衝剤は、ヒトにおける使用に適したものである。
【0134】
そのような賦形剤、担体、希釈剤、及び緩衝剤には、過度の毒性を伴うことなく投与することができる任意の医薬物質が含まれる。医薬的に許容可能な賦形剤には、限定はされないが、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノールなどの液体が含まれる。医薬的に許容可能な塩をそこに含めることができ、こうした医薬的に許容可能な塩は、例えば、鉱酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、及び同様のものなど)、ならびに有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩、及び同様のものなど)である。さらに、そのような媒体には、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、及び同様のものなどの補助物質が存在し得る。医薬的に許容可能な賦形剤は、当該技術分野においてさまざまなものが知られており、それらを本明細書で詳細に述べる必要はない。医薬的に許容可能な賦形剤は、さまざまな刊行物において十分に記載されており、こうした刊行物には、例えば、A.Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20th edition,Lippincott,Williams,& Wilkins、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Ansel et al.,eds.,7th ed.,Lippincott,Williams,& Wilkins、及びHandbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H.Kibbe et al.,eds.,3rd ed.Amer.Pharmaceutical Assocが含まれる。
【0135】
網膜細胞への遺伝子産物の送達方法、及び治療方法
本開示は、個体の網膜細胞への遺伝子産物の送達方法を提供し、方法は、上記の対象rAAVビリオンを個体に投与することを含む。遺伝子産物は、上記のポリペプチドもしくは干渉RNA(例えば、shRNA、siRNA、及び同様のもの)、アプタマー、または部位特異的エンドヌクレアーゼ(例えば、RNAガイド型エンドヌクレアーゼ)であり得る。網膜細胞への遺伝子産物の送達によって、網膜疾患が治療され得る。網膜細胞は、光受容体、網膜神経節細胞、ミュラー細胞、双極細胞、アマクリン細胞、水平細胞、または網膜色素上皮細胞であり得る。場合によっては、網膜細胞は、光受容体細胞(例えば、杆体細胞または錐体細胞)である。
【0136】
本開示は、網膜細胞における標的核酸の改変方法を提供し、方法は、網膜細胞を、1)ガイドRNAに結合するRNAガイド型エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む本開示のrAAVビリオン、及び2)ガイドRNAと接触させることを含む。本開示は、網膜細胞における標的核酸の改変方法を提供し、方法は、網膜細胞を本開示のrAAVビリオンと接触させることを含み、rAAVビリオンは、i)ガイドRNAに結合するRNAガイド型エンドヌクレアーゼと、ii)ガイドRNAとをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。場合によっては、方法は、網膜細胞をドナー鋳型DNAと接触させることを含む。場合によっては、RNAガイド型エンドヌクレアーゼは、Cas9ポリペプチドである。場合によっては、ガイドRNAは、シングルガイドRNAである。
【0137】
本開示は、眼疾患(例えば、網膜疾患)の治療方法を提供し、方法は、それを必要とする個体に対して上記の対象rAAVビリオンを有効量で投与することを含む。対象rAAVビリオンは、眼内注射、硝子体内注射、または任意の他の簡便な投与様式もしくは投与経路によって投与することができる。他の簡便な投与様式または投与経路には、例えば、静脈内のもの、鼻腔内のものなどが含まれる。
【0138】
「治療的に有効な量」は、実験及び/または臨床試験を介して決定することができる比較的広い範囲に含まれることになる。例えば、インビボの注射、すなわち、眼への直接注射については、治療的に有効な用量は、約106 ~約1015個のオーダーのrAAVビリオンとなり、例えば、約108 ~1012個のオーダーのrAAVビリオンとなる。インビトロの形質導入については、細胞に送達されるべき有効量のrAAVビリオンは、約108 ~約1013個のオーダーのrAAVビリオンとなる。他の有効な投与量は、用量反応曲線を確立する日常的な試験を介して当業者が容易に確立することができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、所望のレベルの遺伝子発現を達成するために複数回の投与(例えば、2回、3回、4回、またはそれを超える回数の投与)が用いられ得る。場合によっては、複数回の投与は、さまざまな間隔(例えば、毎日、毎週、1ヶ月に2回、毎月、3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、毎年など)で実施される。場合によっては、複数回の投与は、1ヶ月~2ヶ月、2ヶ月~4ヶ月、4ヶ月~8ヶ月、8ヶ月~12ヶ月、1年~2年、2年~5年、または5年超の期間にわたって実施される。
【0140】
対象の方法を使用して治療することができる眼疾患には、限定はされないが、急性斑状視神経網膜症、ベーチェット病、脈絡膜血管新生、糖尿病性ぶどう膜炎、ヒストプラスマ症、黄斑変性(急性黄斑変性、非滲出性加齢黄斑変性、及び滲出性加齢黄斑変性など)、浮腫(黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫、及び糖尿病性黄斑浮腫など)、多巣性脈絡膜炎、後眼部または後眼部位に影響する眼外傷、眼腫瘍、網膜障害(網膜中心静脈閉塞症、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞性疾患、網膜剥離、ぶどう膜網膜疾患、交感性眼炎など)、フォークト・小柳・原田(VKH)症候群、ぶどう膜滲出、眼のレーザー治療によって生じるか、または影響を受ける後眼の病状、光線力学的治療によって生じるか、または影響を受ける後眼の病状、光凝固、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、網膜分離症、網膜色素変性症、緑内障、アッシャー症候群、錐体-杆体ジストロフィー、シュタルガルト病(黄色斑眼底)、遺伝性黄斑変性、脈絡網膜変性、レーバー先天黒内障、先天性停止性夜盲症、全脈絡膜萎縮、バルデ・ビードル症候群、斑状毛細血管拡張症、レーベル遺伝性視神経症、未熟児網膜症、色覚の障害(色覚異常、1型2色覚、2型2色覚、及び3型2色覚を含む)、ならびにビエッティ(Bietti)結晶状ジストロフィーが含まれる。
【0141】
核酸及び宿主細胞
本開示は、上記の対象変異アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供し、変異AAVカプシドタンパク質は、対応する親AAVカプシドタンパク質と比較して約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片をGHループまたはループIVに含み、変異カプシドタンパク質は、AAVビリオンに存在するとき、対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜細胞に対する感染力と比較して、網膜細胞に対する感染力を増加させる。対象の単離された核酸は、AAVベクターであり得、例えば、組換えAAVベクターであり得る。
【0142】
挿入ペプチド
対象核酸によってコードされる変異AAVカプシドタンパク質は、AAVカプシドのGHループに挿入された約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の長さの挿入ペプチドを有する。挿入ペプチドは、5つのアミノ酸、6つのアミノ酸、7つのアミノ酸、8つのアミノ酸、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、16個のアミノ酸、17個のアミノ酸、18個のアミノ酸、19個のアミノ酸、または20個のアミノ酸の長さを有する。適切な挿入ペプチドは、上記のものである。適切な挿入ペプチドには、上記の式I~Xのいずれか1つのペプチドが含まれる。
【0143】
対象組換えAAVベクターは、上記の対象組換えAAVビリオンを生成するために使用することができる。したがって、本開示は、適切な細胞に導入されると対象組換えAAVビリオンを産生することができる組換えAAVベクターを提供する。
【0144】
本発明は、宿主細胞をさらに提供し、こうした宿主細胞は、例えば、対象核酸を含む単離された(遺伝子改変)宿主細胞である。対象宿主細胞は、単離された細胞であり得、例えば、インビトロで培養された細胞である。対象宿主細胞は、以下の対象rAAVビリオンの産生に有用である。対象宿主細胞が対象rAAVビリオンの産生に使用される場合、対象宿主細胞は、「パッケージング細胞」と称される。いくつかの実施形態では、対象宿主細胞は、対象核酸で安定的に遺伝子改変される。他の実施形態では、対象宿主細胞は、対象核酸で一過性に遺伝子改変される。
【0145】
対象核酸は、確立された手法を使用して安定的または一過性に宿主細胞に導入され、こうした手法には、限定はされないが、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム介在型遺伝子導入、及び同様のものが含まれる。安定な形質転換を行うために、対象核酸は、一般に、選択可能マーカーをさらに含むことになり、こうした選択可能マーカーは、例えば、いくつかのよく知られた選択可能マーカー(ネオマイシン耐性及び同様のものなど)のいずれかである。
【0146】
対象宿主細胞は、さまざまな細胞のいずれかに対象核酸を導入することによって生成され、対象核酸が導入されるこうした細胞は、例えば、哺乳類細胞(例えば、マウス細胞及び霊長類細胞(例えば、ヒト細胞)を含む)である。適切な哺乳類細胞には、限定はされないが、初代細胞及び細胞株が含まれ、適切な細胞株には、限定はされないが、293細胞、COS細胞、HeLa細胞、Vero細胞、3T3マウス線維芽細胞、C3H10T1/2線維芽細胞、CHO細胞、及び同様のものが含まれる。適切な宿主細胞の例には、限定はされないが、例えば、HeLa細胞(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)番号CCL-2)、CHO細胞(例えば、ATCC番号CRL9618、CCL61、CRL9096)、293細胞(例えば、ATCC番号CRL-1573)、Vero細胞、NIH3T3細胞(例えば、ATCC番号CRL-1658)、Huh-7細胞、BHK細胞(例えば、ATCC番号CCL10)、PC12細胞(ATCC番号CRL1721)、COS細胞、COS-7細胞(ATCC番号CRL1651)、RAT1細胞、マウスL細胞(ATCC番号CCLI.3)、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞(ATCC番号CRL1573)、HLHepG2細胞、及び同様のものが含まれる。対象宿主細胞は、Sf9細胞などの昆虫細胞(AAVを産生する)に感染させるためにバキュロウイルスを使用して調製することもできる(例えば、米国特許第7,271,002号、米国特許出願第12/297,958号を参照のこと)。
【0147】
いくつかの実施形態では、対象の遺伝子改変宿主細胞は、上記の変異AAVカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に加えて、1つまたは複数のAAVrepタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む。他の実施形態では、対象宿主細胞は、rAAVベクターをさらに含む。rAAVビリオンは、対象宿主細胞を使用して生成することができる。rAAVビリオンの生成方法は、例えば、米国特許公開第2005/0053922号及び米国特許公開第2009/0202490号に記載されている。
【0148】
本開示の非限定的な態様の例
上述した本発明の対象の態様は、実施形態を含めて、単独で有利であるか、または1つもしくは複数の他の態様もしくは実施形態と組み合わせることで有利であり得る。前述した説明を限定するものではないが、本開示のある特定の非限定的な態様が1~34の番号を付けて以下に提供される。本開示を読めば当業者には明らかであろうが、個別に番号付けされた態様はそれぞれ、先行または後続の個別に番号付けされた態様のいずれかと共に使用または組み合わせることができる。これは、態様のすべてのそのような組み合わせを支援することを意図するものであり、以下に明示的に提供される態様の組み合わせに限定されるものではない。
【0149】
1.組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって、a)対応する親AAVカプシドタンパク質と比較して約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の長さを有する異種ペプチドの挿入断片をカプシドタンパク質GHループに含み、前記対応する親AAVカプシドタンパク質を含む対照AAVビリオンによる網膜細胞に対する感染力と比較して、前記網膜細胞に対する感染力を増加させる、変異AAVカプシドタンパク質と、b)異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸とを含む、rAAVビリオン。
2.前記対応する親AAVカプシドタンパク質を含む対照AAVビリオンによる網膜細胞に対する感染力と比較して、少なくとも5倍増加した感染力を前記網膜細胞に対して示す、態様1に記載のrAAVビリオン。
3.前記対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜細胞に対する感染力と比較して、少なくとも10倍増加した感染力を前記網膜細胞に対して示す、態様1に記載のrAAVビリオン。
4.内顆粒層、外顆粒層、光受容体層、神経節細胞層、及び網膜色素上皮のうちの1つまたは複数に対して前記rAAVビリオンが示す局在性は、内顆粒層、外顆粒層、光受容体層、神経節細胞層、または網膜色素上皮に対する前記対応する親AAVカプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる局在性度合と比較して、少なくとも5倍増加している、態様1~3のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
5.前記挿入部位が、AAV2のVP1のアミノ酸570及びアミノ酸611に対応するアミノ酸の間であるか、または別のAAV血清型のカプシドタンパク質の対応位置である、態様1~4のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
【0150】
6.前記挿入部位が、AAV2のVP1のアミノ酸587及びアミノ酸588に対応するアミノ酸の間に位置するか、または別のAAV血清型のカプシドタンパク質の対応位置に位置する、態様1~5のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
7.遺伝子産物は、干渉RNAまたはアプタマーである、態様1~6のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
8.前記遺伝子産物は、ポリペプチドである、態様1~6のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
9.前記ポリペプチドは、神経保護ポリペプチド、抗血管新生ポリペプチド、または網膜細胞の機能を増進するポリペプチドである、態様8に記載のrAAVビリオン。
10.前記ポリペプチドは、RNAガイド型エンドヌクレアーゼである、態様8に記載のrAAVビリオン。
【0151】
11.前記RNAガイド型エンドヌクレアーゼは、Cas9ポリペプチドである、態様10に記載のrAAVビリオン。
12.前記遺伝子産物は、RNAガイド型エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAである、態様10に記載のrAAVビリオン。
13.GHループに挿入される前記異種ペプチドは、式I~Xのいずれか1つのものである、態様1~12のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
14.前記異種ペプチドは、式I:X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10のペプチドであって、式中、X1 が、Leu、Ile、Pro、またはGlnであり、X2 が、Ala、Pro、Ser、Asp、Gly、Thr、またはValであり、X3 が、Lys、His、Thr、Ile、Pro、Val、Arg、Ala、Asp、Glu、Asn、Gln、またはTyrであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、Gly、Thr、Ile、Asn、Glu、Lys、またはArgであり、X5 が、Asp、Ser、Gln、Val、Thr、Gly、Ala、Asn、Lys、またはTyrであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、Ser、Glu、Pro、またはIleであり、X7 が、Thr、Ser、Asn、Pro、Leu、Gln、Lys、Ala、またはCysであり、X8 が、Lys、Ser、Arg、Thr、Ala、Glu、Ile、またはAsnであり、X9 が、Asn、Pro、Ser、Lys、His、Ile、Thr、またはAlaであり、X10が、Ala、Phe、Asp、Thr、Val、またはMetである、態様1~12のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
15.前記異種ペプチドは、下記のアミノ酸配列のうちの1つを含む、態様14に記載のrAAVビリオン。
(1)LAKDATKNA(配列番号47)、(2)PAHQDTTKNA(配列番号48)、(3)LAHQDTTKNA(配列番号49)、(4)LATTSQNKPA(配列番号50)、(5)LAISDQTKHA(配列番号51)、(6)IARGVAPSSA(配列番号52)、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)、(8)LAKGTELKPA(配列番号54)、(9)LAIIDATKNA(配列番号55)、(10)LAVDGAQRSA(配列番号56)、(11)PAPQDTTKKA(配列番号57)、(12)LPHQDTTKNA(配列番号58)、(13)LAKDATKTIA(配列番号59)、(14)LAKQQSASTA(配列番号60)、(15)LAKSDQSKPA(配列番号61)、(16)LSHQDTTKNA(配列番号62)、(17)LAANQPSKPA(配列番号63)、(18)LAVSDSTKAA(配列番号64)、(19)LAAQGTAKKPA(配列番号65)、(20)LAPDQTTRNA(配列番号66)、(21)LAASDSTKAA(配列番号67)、(22)LAPQDTTKNA(配列番号68)、(23)LAKADETRPA(配列番号69)、(24)LAHQDTAKNA(配列番号70)、(25)LAHQDTKKNA(配列番号71)、(26)LAHQDTTKHA(配列番号72)、(27)LAHQDTTKKA(配列番号73)、(28)LAHQDTTRNA(配列番号74)、(29)LAHQDTTNA(配列番号75)、(30)LAHQGTTKNA(配列番号76)、(31)LAHQVTTKNA(配列番号77)、(32)LAISDQSKPA(配列番号78)、(33)LADATKTA(配列番号79)、(34)LAKDTTKNA(配列番号80)、(35)LAKSDQSRPA(配列番号81)、(36)LAPQDTKKNA(配列番号82)、(37)LATSDSTKAA(配列番号83)、(38)LAVDGSQRSA(配列番号84)、(39)LPISDQTKHA(配列番号85)、(40)LPKDATKTIA(配列番号86)、(41)LPPQDTTKNA(配列番号87)、(42)PAPQDTTKNA(配列番号88)、(43)QAHQDTTKNA(配列番号89)、(44)LAHETSPRPA(配列番号90)、(45)LAKSTSTAPA(配列番号91)、(46)LADQDTTKNA(配列番号92)、(47)LAESDQSKPA(配列番号93)、(48)LAHKDTTKNA(配列番号94)、(49)LAHKTQQKM(配列番号95)、(50)LAHQDTTENA(配列番号96)、(51)LAHQDTTINA(配列番号97)、(52)LAHQDTTKKT(配列番号98)、(53)LAHQDTTKND(配列番号99)、(54)LAHQDTTKNT(配列番号100)、(55)LAHQDTTKNV(配列番号101)、(56)LAHQDTTKTM(配列番号102)、(57)LAHQNTTKNA(配列番号103)、(58)LAHRDTTKNA(配列番号104)、(59)LAISDQTNHA(配列番号105)、(60)LAKQKSASTA(配列番号106)、(61)LAKSDQCKPA(配列番号107)、(62)LAKSDQSKPD(配列番号108)、(63)LAKSDQSNPA(配列番号109)、(64)LAKSYQSKPA(配列番号110)、(65)LANQDTTKNA(配列番号111)、(66)LAPQNTTKNA(配列番号112)、(67)LAPSSIQKPA(配列番号113)、(68)LAQQDTTKNA(配列番号114)、(69)LAYQDTTKNA(配列番号115)、(70)LDHQDTTKNA(配列番号116)、(71)LDHQDTTKSA(配列番号117)、(72)LGHQDTTKNA(配列番号118)、(73)LPHQDTTKND(配列番号119)、(74)LPHQDTTKNT(配列番号120)、(75)LPHQDTTNNA(配列番号121)、(76)LTHQDTTKNA(配列番号122)、(77)LTKDATKTIA(配列番号123)、(78)LTPQDTTKNA(配列番号124)、及び(79)LVHQDTTKNA(配列番号125)。
【0152】
16.前記異種ペプチドは、式II:X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10のペプチドであって、式中、X1 が、Leu、Ile、またはProであり、X2 が、Ala、Pro、またはSerであり、X3 が、Lys、His、Thr、Ile、Pro、Val、Arg、またはAlaであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、Gly、Thr、Ile、またはAsnであり、X5 が、Asp、Ser、Gln、Val、Thr、Gly、またはAlaであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、Ser、Glu、またはProであり、X7 が、Thr、Ser、Asn、Pro、Leu、Gln、Lys、またはAlaであり、X8 が、Lys、Ser、Arg、またはThrであり、X9 が、Asn、Pro、Ser、Lys、His、Ile、Thr、またはAlaであり、X10が、Alaである、態様1~12のいずれか1つに記載のrAAVビリオン。
17.前記ペプチドは、下記のアミノ酸配列のうちの1つを含む、態様16に記載のrAAVビリオン。
(1)LAKDATKNA(配列番号47)、(2)PAHQDTTKNA(配列番号48)、(3)LAHQDTTKNA(配列番号49)、(4)LATTSQNKPA(配列番号50)、(5)LAISDQTKHA(配列番号51)、(6)IARGVAPSSA(配列番号52)、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)、(8)LAKGTELKPA(配列番号54)、(9)LAIIDATKNA(配列番号55)、(10)LAVDGAQRSA(配列番号56)、(11)PAPQDTTKKA(配列番号57)、(12)LPHQDTTKNA(配列番号58)、(13)LAKDATKTIA(配列番号59)、(14)LAKQQSASTA(配列番号60)、(15)LAKSDQSKPA(配列番号61)、(16)LSHQDTTKNA(配列番号62)、(17)LAANQPSKPA(配列番号63)、(18)LAVSDSTKAA(配列番号64)、(19)LAAQGTAKKPA(配列番号65)、(20)LAPDQTTRNA(配列番号66)、(21)LAASDSTKAA(配列番号67)、(22)LAPQDTTKNA(配列番号68)、(23)LAKADETRPA(配列番号69)、(24)LAHQDTAKNA(配列番号70)、(25)LAHQDTKKNA(配列番号71)、(26)LAHQDTTKHA(配列番号72)、(27)LAHQDTTKKA(配列番号73)、(28)LAHQDTTRNA(配列番号74)、(29)LAHQDTTNA(配列番号75)、(30)LAHQGTTKNA(配列番号76)、(31)LAHQVTTKNA(配列番号77)、(32)LAISDQSKPA(配列番号78)、(33)LADATKTA(配列番号79)、(34)LAKDTTKNA(配列番号80)、(35)LAKSDQSRPA(配列番号81)、(36)LAPQDTKKNA(配列番号82)、(37)LATSDSTKAA(配列番号83)、(38)LAVDGSQRSA(配列番号84)、(39)LPISDQTKHA(配列番号85)、(40)LPKDATKTIA(配列番号86)、(41)LPPQDTTKNA(配列番号87)、及び(42)PAPQDTTKNA(配列番号88)。
18.前記ペプチドは、下記のアミノ酸配列のうちの1つを含む、態様16に記載のrAAVビリオン。
(1)LAKDATKNA(配列番号47)、(2)PAHQDTTKNA(配列番号48)、(3)LAHQDTTKNA(配列番号49)、(4)LATTSQNKPA(配列番号50)、(5)LAISDQTKHA(配列番号51)、(6)IARGVAPSSA(配列番号52)、(7)LAPDSTTRSA(配列番号53)、(8)LAKGTELKPA(配列番号54)、(9)LAIIDATKNA(配列番号55)、(10)LAVDGAQRSA(配列番号56)、(11)PAPQDTTKKA(配列番号57)、(12)LPHQDTTKNA(配列番号58)、(13)LAKDATKTIA(配列番号59)、(14)LAKQQSASTA(配列番号60)、(15)LAKSDQSKPA(配列番号61)、(16)LSHQDTTKNA(配列番号62)、(17)LAANQPSKPA(配列番号63)、及び(18)LAVSDSTKAA(配列番号64)。
19.a)態様1~18のいずれか1つに記載の組換えアデノ随伴ウイルスビリオンと、b)医薬的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物。
20.個体の網膜細胞へ遺伝子産物を送達する方法であって、態様1~18のいずれか1つに記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを前記個体に投与することを含む、方法。
【0153】
21.前記遺伝子産物は、ポリペプチドである、態様20に記載の方法。
22.前記遺伝子産物は、低分子干渉RNAまたはアプタマーである、態様20に記載の方法。
23.前記ポリペプチドは、神経保護因子、抗血管新生ポリペプチド、抗アポトーシス因子、または網膜細胞の機能を増進するポリペプチドである、態様21に記載の方法。
24.前記ポリペプチドは、グリア細胞由来神経栄養因子、線維芽細胞増殖因子2、ニュールツリン、毛様体神経栄養因子、神経成長因子、脳由来神経栄養因子、上皮増殖因子、ロドプシン、X連鎖アポトーシス抑制物質、レチノスキシン、RPE65、網膜色素変性症GTPase相互作用タンパク質-1、ペリフェリン、ペリフェリン-2、ロドプシン、RdCVF、網膜色素変性症GTPase調節因子(RPGR)、またはソニックヘッジホッグである、態様21に記載の方法。
25.前記ポリペプチドは、RNAガイド型エンドヌクレアーゼである、態様21に記載の方法。
【0154】
26.眼疾患を治療する方法であって、治療を必要とする個体に対して態様1~18のいずれか1つに記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを有効量で投与することを含む、方法。
27.前記投与は、眼内注射によるものである、態様26に記載の方法。
28.前記投与は、硝子体内注射によるものである、態様26に記載の方法。
29.前記眼疾患は、緑内障、網膜色素変性症、黄斑変性、網膜分離症、レーバー先天黒内障、糖尿病性網膜症、色覚異常(achromotopsia)、または色覚異常(color blindness)である、態様26に記載の方法。
30.変異アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、前記変異AAVカプシドタンパク質が、対応する親AAVカプシドタンパク質と比較して約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片をカプシドタンパク質GHループに含み、前記変異カプシドタンパク質が、AAVビリオンに存在するとき、網膜細胞に対する前記AAVビリオンの感染力を増加させ、前記アミノ酸挿入断片が、天然のAAVカプシドのGHループに存在し、前記挿入断片が、式I~Xのいずれか1つのペプチドである、核酸。
【0155】
31.前記挿入部位が、AAV2のアミノ酸587とアミノ酸588との間、AAV1のアミノ酸590とアミノ酸591との間、AAV5のアミノ酸575とアミノ酸576との間、AAV6のアミノ酸590とアミノ酸591との間、AAV7のアミノ酸589とアミノ酸590との間、AAV8のアミノ酸590とアミノ酸591との間、AAV9のアミノ酸588とアミノ酸589との間、またはAAV10のアミノ酸588とアミノ酸589との間である、態様30に記載の核酸。
32.態様30または態様31に記載の核酸を含む、単離された遺伝子改変宿主細胞。
33.約5つのアミノ酸~約20個のアミノ酸の挿入断片を含む変異アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質であって、前記アミノ酸挿入断片が、天然のAAVカプシドのGHループに存在し、前記挿入断片が、式I~Xのいずれか1つのペプチドである、変異AAVカプシドタンパク質。
34.態様1~33のいずれかでは、GHループに挿入される前記異種ペプチドは、式I~Xのうちの1つであり得、
式Iは、X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10であって、式中、X1 が、Leu、Ile、Pro、またはGlnであり、X2 が、Ala、Pro、Ser、Asp、Gly、Thr、またはValであり、X3 が、Lys、His、Thr、Ile、Pro、Val、Arg、Ala、Asp、Glu、Asn、Gln、またはTyrであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、Gly、Thr、Ile、Asn、Glu、Lys、またはArgであり、X5 が、Asp、Ser、Gln、Val、Thr、Gly、Ala、Asn、Lys、またはTyrであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、Ser、Glu、Pro、またはIleであり、X7 が、Thr、Ser、Asn、Pro、Leu、Gln、Lys、Ala、またはCysであり、X8 が、Lys、Ser、Arg、Thr、Ala、Glu、Ile、またはAsnであり、X9 が、Asn、Pro、Ser、Lys、His、Ile、Thr、またはAlaであり、X10が、Ala、Phe、Asp、Thr、Val、またはMetであり、
式IIは、X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10であって、式中、X1 が、Leu、Ile、またはProであり、X2 が、Ala、Pro、またはSerであり、X3 が、Lys、His、Thr、Ile、Pro、Val、Arg、またはAlaであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、Gly、Thr、Ile、またはAsnであり、X5 が、Asp、Ser、Gln、Val、Thr、Gly、またはAlaであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、Ser、Glu、またはProであり、X7 が、Thr、Ser、Asn、Pro、Leu、Gln、Lys、またはAlaであり、X8 が、Lys、Ser、Arg、またはThrであり、X9 が、Asn、Pro、Ser、Lys、His、Ile、Thr、またはAlaであり、X10が、Alaであり、
式IIIは、X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10であって、式中、X1 が、Leu、Ile、またはProであり、X2 が、Ala、Pro、またはSerであり、X3 が、Lys、His、Thr、Ile、Pro、Val、Arg、またはAlaであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、Gly、Thr、Ile、またはAsnであり、X5 が、Asp、Ser、Gln、Val、Thr、Gly、またはAlaであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、Ser、Glu、またはProであり、X7 が、Thr、Ser、Asn、Pro、Leu、Gln、Lys、またはAlaであり、X8 が、Lys、Ser、Arg、またはThrであり、X9 が、Asn、Pro、Ser、Lys、His、Ile、Thr、またはAlaであり、X10が、Ala、Thr、Asp、Val、またはMetであり、
式IVは、X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10であって、式中、X1 が、Leuであり、X2 が、Alaであり、X3 が、Lys、His、Thr、Ile、Pro、またはValであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、またはGlyであり、X5 が、Asp、Ser、またはGlnであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、またはSerであり、X7 が、ThrまたはSerであり、X8 が、Lys、Ser、またはArgであり、X9 が、Asn、Pro、またはSerであり、X10が、Alaであり、
式Vは、X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10であって、式中、X1 が、Leuであり、X2 が、Alaであり、X3 が、LysまたはHisであり、X4 が、存在するのであれば、Gln、Asp、Ser、またはGlyであり、X5 が、Asp、Ser、またはGlnであり、X6 が、Thr、Ala、Gln、またはSerであり、X7 が、ThrまたはSerであり、X8 が、Lys、Ser、またはArgであり、X9 が、Asn、Pro、またはSerであり、X10が、Alaであり、
式VIは、X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7 X8 X9 X10であって、式中、X1 が、Leuであり、X2 が、Alaであり、X3 が、Asn、Lys、Thr、Gln、Ser、Ile、またはLeuであり、X4 が、Ser、Ala、Thr、Glu、Gln、Gly、Lys、またはProであり、X5 が、Asp、Pro、Glu、Thr、Asn、またはArgであり、X6 が、Ile、His、Thr、Gln、Asn、Tyr、Asp、またはGluであり、X7 が、X7は、Gln、Thr、Asn、Ala、またはLysであり、X8 が、Lys、Thr、Arg、またはAspであり、X9 が、Pro、Asn、Thr、Arg、Lys、またはSerであり、X10が、Alaであり、
式VIIは、LAHQDTTKX1 X2 X3 (配列番号148)であって、式中、X1 が、Lys、Thr、Asn、またはHisであり、X2 が、Ala、Thr、Val、Ile、Met、またはAspであり、X3 が、存在するのであれば、Alaであり、
式VIIIは、LAX1 QX2 TX3 X4 X5 X6 (配列番号149)であって、式中、X1 が、Ala、Pro、Asp、またはHisであり、X2 が、GlyまたはAspであり、X3 が、Ala、Thr、またはLysであり、X4 が、Asn、Glu、Lys、Arg、またはThrであり、X5 が、Leu、Asn、Lys、またはThrであり、X6 が、存在するのであれば、Ala、Thr、Asp、Val、またはMetであり、
式IXは、X1 AX2 X3 DX4 TKX5 A(配列番号150)であって、式中、X1 が、ValまたはLeuであり、X2 が、Ile、Val、His、またはAspであり、X3 が、Glu、Ser、Lys、またはGlnであり、X4 が、His、Ser、またはThrであり、X5 が、Ser、Ala、Asn、His、またはLysであり、
式Xは、X1 X2 X3 AX4 QX5 TX6 KNA(配列番号151)であって、式中、X1 が、存在するのであれば、Leuであり、X2 が、存在するのであれば、Alaであり、X3 が、Lys、Leu、またはProであり、X4 が、Asn、His、Pro、またはTyrであり、X5 が、Asn、Gly、Val、またはAspであり、X6 が、ProまたはThrである。
【実施例】
【0156】
以下の実施例は、本発明の実施方法及び使用方法が当業者に完全に開示及び説明されるように示され、本発明者らが自身の発明であると見なすものの範囲の限定は意図されず、また、以下の実験が、実施実験のすべてであるか、または唯一の実施実験であると示すことも意図されない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力はなされているが、いくらかの実験上の誤差及び偏差は考慮されるべきである。別段の記載がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。標準的な省略形を使用することができ、例えば、bp(塩基対(複数可))、kb(キロベース(複数可))、pl(ピコリットル(複数可))、sまたはsec(秒(複数可))、min(分(複数可))、hまたはhr(時間(複数可))aa(アミノ酸(複数可))、kb(キロベース(複数可))、bp(塩基対(複数可))、nt(ヌクレオチド(複数可))、i.m.(筋肉内の(筋肉内に))、i.p.(腹腔内の(腹腔内に))、s.c.(皮下の(皮下に))、及び同様のものを使用することができる。
【0157】
実施例1:AAVカプシド変異体を有するAAVビリオンの生成及び特徴付け
大型動物の眼では、強力かつ複雑な障壁によってAAVによる汎網膜感染が阻止されるが、インビボの反復スクリーニング法を使用することで、この障壁を克服することができるカプシド変異体を有するAAVを創出した。イヌは、網膜変性疾患の重要な前臨床モデルであり、その眼のサイズ及び構造はヒトと類似しており、多くの型の網膜疾患がさまざまなイヌの種で天然に生じる。このスクリーニング法を使用することで、イヌの網膜において汎網膜感染を生じさせる能力を有する96個のAAV変異体を同定した。ディープシークエンシングを使用することで、イヌ網膜において、スクリーニングしたAAV変異体のプールに由来するこうした変異体のうちの18個の変異体の能力を定量化した。硝子体内注射の後に網膜細胞におけるウイルスのDNA及びmRNAのレベルに基づいて感染力を定量化した。こうした変異体は、大型動物及びヒトの眼における多種多様な遺伝子送達方針に使用することができるものである。
【0158】
AAVカプシド上の表面露出位置に無作為の21ヌクレオチドの挿入断片(5’側の6ヌクレオチドのリンカーと3’側の3ヌクレオチドのリンカーとに挟まれた状態のもの)を含むペプチドディスプレイライブラリーを創出した。それぞれのウイルスゲノムが、そのゲノムがコードするカプシドタンパク質シェルの中に封入されるようにウイルスのパッケージングを生じさせた。したがって、選択を介して同定された機能的な改善を、ウイルスカプシドに内含されるゲノム配列と結び付けることができる。このライブラリーから、インビボの反復スクリーニング選択プロセスを使用することで、硝子体からイヌ網膜に感染する能力を有する変異体を同定した(
図1)。力価が10
13~10
14ウイルスゲノム/mL(vg/mL)のウイルスを含む約250μLをラウンドごとにイヌの眼に注射した。注射から三週間後、眼球を摘出し、網膜の中央領域及び周辺領域から網膜のパンチ試料を採取した。網膜組織からRPE細胞を分離し、組織は凍結させた。その後、網膜細胞からDNAを採取し、単離した試料からポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でcap遺伝子を増幅させた。cap遺伝子は、次のAAVパッケージングに使用した。
【0159】
図1は、イヌ網膜AAV変異体の開発に使用した指向性進化法を示す。ペプチドディスプレイライブラリーを創出し、AAVベクターへのパッケージングの後、硝子体内注射を介してイヌの眼に注射した。反復ラウンドの選択を実施することで、ベクターのプールからAAV変異体を陽性に選択した。3ラウンドの選択の後、1ラウンドのエラープローンPCRを実施し、その後、複数ラウンドの選択を追加実施した。
【0160】
5ラウンドの選択の後、Illuminaディープシークエンシングを使用することで、AAV変異体のライブラリーにおける変異体の相対量を示し、この相対量がラウンドを経るごとに増加した変異体を同定した。ウイルスライブラリー内で示したものが増加するということは、陽性選択が生じており、硝子体からイヌ網膜に感染する能力が存在することを示している。インビボのスクリーニングに向けて、約107 個の変異体のライブラリーから上位96個の変異体を選択した。これら上位96個の変異体は、表1に示される。
【0161】
表1
ペプチド番号 配列番号
LAKDATKNA 1 47
PAHQDTTKNA 2 48
LAHQDTTKNA 3 49
LATTSQNKPA 4 50
LAISDQTKHA 5 51
IARGVAPSSA 6 52
LAPDSTTRSA 7 53
LAKGTELKPA 8 54
LAIIDATKNA 9 55
LAVDGAQRSA 10 56
PAPQDTTKKA 11 57
LPHQDTTKNA 12 58
LAKDATKTIA 13 59
LAKQQSASTA 14 60
LAKSDQSKPA 15 61
LSHQDTTKNA 16 62
LAANQPSKPA 17 63
LAVSDSTKAA 18 64
LAAQGTAKPA 19 65
LAPDQTTRNA 20 66
LAASDSTKAA 21 67
LAPQDTTKNA 22 68
LAKADETRPA 23 69
LAHQDTAKNA 24 70
LAHQDTKKNA 25 71
LAHQDTTKHA 26 72
LAHQDTTKKA 27 73
LAHQDTTRNA 28 74
LAHQDTTTNA 29 75
LAHQGTTKNA 30 76
LAHQVTTKNA 31 77
LAISDQSKPA 32 78
LAKDATKTA 33 79
LAKDTTKNA 34 80
LAKSDQSRPA 35 81
LAPQDTKKNA 36 82
LATSDSTKAA 37 83
LAVDGSQRSA 38 84
LPISDQTKHA 39 85
LPKDATKTIA 40 86
LPPQDTTKNA 41 87
PAPQDTTKNA 42 88
QAHQDTTKNA 43 89
LAHETSPRPA 44 90
LAKSTSTAPA 45 91
LADQDTTKNA 46 92
LAESDQSKPA 47 93
LAHKDTTKNA 48 94
LAHKTQQKM 49 95
LAHQDTTENA 50 96
LAHQDTTINA 51 97
LAHQDTTKKT 52 98
LAHQDTTKND 53 99
LAHQDTTKNT 54 100
LAHQDTTKNV 55 101
LAHQDTTKTM 56 102
LAHQNTTKNA 57 103
LAHRDTTKNA 58 104
LAISDQTNHA 59 105
LAKQKSASTA 60 106
LAKSDQCKPA 61 107
LAKSDQSKPD 62 108
LAKSDQSNPA 63 109
LAKSYQSKPA 64 110
LANQDTTKNA 65 111
LAPQNTTKNA 66 112
LAPSSIQKPA 67 113
LAQQDTTKNA 68 114
LAYQDTTKNA 69 115
LDHQDTTKNA 70 116
LDHQDTTKSA 71 117
LGHQDTTKNA 72 118
LPHQDTTKND 73 119
LPHQDTTKNT 74 120
LPHQDTTNNA 75 121
LTHQDTTKNA 76 122
LTKDATKTIA 77 123
LTPQDTTKNA 78 124
LVHQDTTKNA 79 125
LAKANQNTPA 80 126
LATTPITKPA 81 127
LATTPIAKPA 82 128
LAIEDHTKSA 83 129
LAQSEHQRPA 84 130
LAKSPNKDNA 85 131
LANQDYTKTA 86 132
LANSTDQTRA 87 133
LALGETTRPA 88 134
LANSTEQTRA 89 135
LAQADTTKNA 90 136
LASKDITKTA 91 137
LASPRHNKKC 92 138
LAHQDTTKTIA 93 139
LAAQGTANL 94 140
VAIEDHTKSA 95 141
LAKANQNTPKNA 96 142
【0162】
ハイスループットシークエンシングを使用し、表1に示される96個の変異体のうちの上位18個の変異体について、イヌ網膜に対する感染能力をさらに定量化した。表2は、さらなる定量化に向けて選択した上位18個の変異体を示す。
【0163】
表2
LAKDATKNA (配列番号47) LAPDSTTRSA (配列番号53) LAKDATKTIA (配列番号59)
PAHQDTTKNA (配列番号48) LAKGTELKPA (配列番号54) LAKQQSASTA (配列番号60)
LAHQDTTKNA (配列番号49) LAIIDATKNA (配列番号55) LAKSDQSKPA (配列番号61)
LATTSQNKPA (配列番号50) LAVDGAQRSA (配列番号56) LSHQDTTKNA (配列番号62)
LAISDQTKHA (配列番号51) PAPQDTTKKA (配列番号57) LAANQPSKPA (配列番号63)
IARGVAPSSA (配列番号52) LPHQDTTKNA (配列番号58) LAVSDSTKAA (配列番号64)
【0164】
18個の変異体は、GFPの発現を誘導する遍在性CAGプロモーターと共にパッケージングした。GFPのcDNAを特有の25塩基対のバーコード識別子に融合させた。18個の変異体はそれぞれ、特有のGFPバーコードと共にパッケージングした。パッケージングされた変異体を等しい比で混合し、網膜に注射した。その際、AAV2ベースの対照ベクター(天然起源の親血清型に相当する負の対照)の注射も併せて実施した。注射の後、光受容体及びRPE細胞からDNA及びmRNAを採取した。DNA及びmRNAのレベルを定量化することで、イヌ由来のベクターが網膜にDNAを送達し、導入遺伝子発現を引き起こす能力を決定した(
図2)。
【0165】
図2は、GFP-バーコードコンストラクトを含む変異体のディープシークエンシングを示す。タグ付きGFPのcDNA及びmRNAをディープシークエンシングすることによってイヌ由来の変異体によるイヌ網膜の感染を定量化した。
【0166】
凍結網膜切片を用いて共焦点顕微鏡を使用し、18のメンバーを含むライブラリーの発現を画像化した。網膜内の網膜細胞及び網膜外の光受容体が、18のメンバーを含むライブラリーの標的となったことがGFPの発現によって示された(
図3)。
【0167】
図3は、18のメンバーを含むイヌ由来のAAV変異体ライブラリーが神経節細胞層、内顆粒層、光受容体層、及びRPE層における細胞に感染することを示す。
【0168】
試験した上位18個の変異体の中で、2個の変異体では、DNA及びmRNAが最高レベルで回収された。DNAが最高レベルで回収された変異体は、約588-PAPQDTTKKAという挿入配列(配列番号57)を有するものであった。最高レベルのmRNA発現が得られた変異体は、約588-LAPDSTTRSAという挿入配列(配列番号53)を有するものであった。
【0169】
本発明をその特定の実施形態に関して説明してきたが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を実施でき、同等形態での置き換えを実施できることを当業者は理解されたい。さらに、特定の状況、材料、物質の組成物、プロセス、1つまたは複数のプロセス段階が本発明の目的、趣旨、及び範囲に適合するように、多くの改変を実施することができる。そのような改変はすべて、本明細書に添付される特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0170】
相互参照
本出願は、2016年7月29日出願の米国仮特許出願第62/368,929号の利益を主張し、当該出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0171】
連邦による支援を受けた研究に関する記載
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって付与された契約/助成金第EY022975号、第EY018241号、及び第EY06855号の下、政府の支援を得てなされたものである。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【配列表】