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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】免疫細胞を操作するための抗原提示足場
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240122BHJP
   C07K 17/04 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240122BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
C07K17/04
C12N5/0783
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022078456
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2019534382の分割
【原出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2022106981
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】16205918.2
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507023887
【氏名又は名称】ダンマークス テクニスク ユニバーシテット
【氏名又は名称原語表記】DANMARKS TEKNISKE UNIVERSITET
【住所又は居所原語表記】Anker Engelunds Vej 101,DK-2800 Kongens Lyngby,Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ハドルップ,シネ,レッカー
(72)【発明者】
【氏名】ラファ,ビベーケ,ミンダル
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブセン,ソーレン,ニューボ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特許第7078937(JP,B2)
【文献】特表2005-500257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C07K 17/04
C12N 5/0783
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工抗原提示細胞(aAPC)足場であって、
以下の鋳型分子:
i.IL-21、IL-2、IL-15、IL-4、IL-9およびIL-7からなる群から選択される少なくとも2種であって、少なくともIL-21を含むγ鎖受容体サイトカイン、ならびに
ii.少なくとも1種の抗原
が結合したポリマー主鎖を含み、
前記少なくとも1種の抗原が、MHCによって提示されない分子であり、前記MHCによって提示されない分子が、CD19、CD20、CD22、CD269、ハプテン、BCMA、上皮成長因子受容体(EGFR)、メソテリン(MSLN)、上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、癌胎児抗原(CEA)および前立腺特異的膜抗原(PSMA)からなる群から選択される、aAPC足場。
【請求項2】
前記MHCによって提示されない分子がハプテンである、請求項に記載のaAPC足場。
【請求項3】
前記ハプテンが、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール、コチニン、ヒドララジンおよびウルシオールからなる群から選択される、請求項に記載のaAPC足場。
【請求項4】
前記MHCによって提示されない分子がCD19、CD20、CD22およびCD269からなる群から選択されるCDタンパク質である、請求項に記載のaAPC足場。
【請求項5】
前記aAPC足場が、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を刺激して、増殖を促す、請求項1~のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【請求項6】
前記γ鎖受容体サイトカインが、
i.少なくともIL-2およびIL-21、または
ii.少なくともIL-15およびIL-21
を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【請求項7】
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、かつ
ii.前記γ鎖受容体サイトカインがIL-2およびIL-21であ
請求項1~のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【請求項8】
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、かつ
ii.前記γ鎖受容体サイトカインがIL-15およびIL-21であ
請求項1~のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【請求項9】
前記ポリマー主鎖上に存在するカップリング剤と前記鋳型分子上のアフィニティータグの間の非共有結合性相互作用を介して、該鋳型分子が該ポリマー主鎖に結合されている、請求項1~のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【請求項10】
インビトロにおいてキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の刺激と増殖を同時に行う方法であって、
i.(CAR)T細胞を含む試料を提供する工程、
ii.請求項1~のいずれか1項に記載のaAPC足場を含む溶液に前記試料を接触させる工程、
iii.前記aAPC足場に対して特異性を有する(CAR)T細胞の刺激と増殖を培養物中で行う工程、および
iv.前記培養物から工程iiiの(CAR)T細胞を回収することにより、増殖した抗原特異的(CAR)T細胞集団を得る工程
を含む方法。
【請求項11】
異なる抗原特異性を有する少なくとも2種の(CAR)T細胞を、同じ試料中で同時に刺激し、増殖させる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍退縮またはウイルス排除を促すのに理想的な表現型特性および機能特性を細胞に付与するために、細胞に特定の機能刺激を与える人工抗原提示細胞(aAPC)足場に関する。より具体的には、本発明の足場は、ペプチド-MHC(pMHC)クラスI分子などの抗原と、特定のT細胞を効果的に増殖させ、かつ機能刺激するための、サイトカインおよび共刺激分子の特定の組み合わせとを含む。
【背景技術】
【0002】
免疫療法のアプローチの一つである養子細胞移入(ACT)は、末梢血リンパ球(PBMC)または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)由来の腫瘍反応性T細胞を患者から抽出し、エクスビボで活性化し増殖させた後、患者に戻すという治療法であるが、この治療法を用いた悪性黒色腫の研究では、患者の50%超において臨床的に持続可能な反応が示された。しかし、PBMCまたはTILに由来する腫瘍反応性T細胞の増殖には、大規模なエクスビボ培養が必要とされ、T細胞の分化能および機能的能力が犠牲となることが多い。その結果、移入されたT細胞製剤は、腫瘍退縮を促すのに適切な表現型および機能的特徴を有する十分な頻度の腫瘍反応性CD8 T細胞を含んでいない場合がある。また、このような腫瘍浸潤性T細胞の大部分は、腫瘍特異的ではなく、末梢からの傍観的なT細胞の浸潤に留まり、T細胞受容体(TCR)の認識も腫瘍抗原と一致しない場合がある。さらに、腫瘍反応性T細胞の画分は、腫瘍部位に存在する抑制的環境のために増殖能が低下する場合がある。
【0003】
増殖させたT細胞の分化および機能的能力が不十分であるという問題を克服するため、人工抗原提示細胞(aAPC)を利用する試みが行われてきた。aAPCは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によって提示される特定のペプチド抗原とTCRの間の自然な相互作用を模倣するという単純な概念に基づく。この相互作用は、効率的な免疫応答を誘導することができるT細胞の活性化、増殖および分化を介した免疫の発生において中心的な段階となる。自然なT細胞応答の発生は、サイトカインおよび共刺激分子による補助をさらに受け、これによってT細胞の活性化および機能が誘導される。したがって、必要とされるすべての分子を単一のaAPC足場に組み込むことによって、T細胞の増殖に関する課題のいくつかを克服できる有望なツールを提供できる。このようなaAPCは、T細胞を活性化および分化させるための理想的な免疫学的シナプスとなる。しかし、重大な課題の一つは、抽出されたTILの機能的表現型を維持しながら、aAPCによって効率的に増殖させることが可能となる分子の組み合わせを見出すことである。
【0004】
WO 2002072631には、MHCプラットフォームを利用した概念が数多く開示されており、そのうちの1つが、1個以上のMHC分子が結合した担体分子を含むMHC構築物である。この構築物は、共刺激分子や細胞調節分子などの、生物学的に活性な分子をさらに含んでいてもよい。MHC構築物は、特に、この構築物を認識する細胞の増殖に使用すること、およびがんなどの疾患の治療における使用のための治療用組成物を製造するために使用することが想定されている。このWO2002072631には、T細胞の増殖に適していると考えられる数多くの共刺激分子およびサイトカインが開示されているが、T細胞の増殖に特に好適かつ効果的な具体的な組み合わせは特定されていない。
【0005】
米国特許公開第2011/318380号明細書には、前述のWO 2002072631に記載のMHC構築物を、がんワクチンおよび免疫モニタリングに使用することが開示されている。しかし、この米国特許公開第2011/318380号明細書には、T細胞の増殖に特に好適かつ効果的な、共刺激分子およびサイトカインの具体的な組み合わせは例示されていない。
【0006】
WO2009003492は、抗原特異的T細胞を検出することに主に注目しているが、抗原特異的T細胞の増殖についても開示している。本文献には、複合体化ペプチドを含んでいてもよいMHC多量体、これらの調製方法、ならびに分析および治療において該MHC多量体を使用する方法が記載されており、この使用方法には、望ましくない標的T細胞の不活性化または排除が可能な抗原特異的T細胞の単離が含まれる。このWO2009003492に記載のMHC多量体は、デキストラン足場と共刺激分子と細胞調節分子とを含んでいてもよい。しかし、この文献では、T細胞の増殖に特に効果的な分子の具体的な組み合わせは特定されていない。
【0007】
WO2009094273には、抗原特異的T細胞の増殖に使用するための、ナノ粒子、サイトカイン、カップリング剤、T細胞受容体活性化因子および共刺激分子を含むaAPC組成物が開示されている。このT細胞受容体活性化因子は、ペプチド抗原に結合させたMHC分子であってもよい。さらに、養子免疫療法における、増殖させたT細胞の使用が記載されている。しかし、aAPC上のサイトカインとして、単一のサイトカイン(すなわちIL-2)の適合性しか評価されておらず、外因性サイトカインとの比較しかされていない。
【0008】
したがって、aAPC足場に関する過去の開示の共通点として、非常に一般的な方法でしか概念を説明していないということが挙げられる。T細胞増殖の成功基準、すなわち、活性T細胞が高い割合で存在すること、T細胞の抗原特異性が高いこと、およびT細胞の機能性が高いことは、刺激分子が特定の組み合わせで使用される場合にのみ満たされるため、明確に組成が定義された効果的なaAPC足場を求めるニーズは大きい。T細胞の増殖に関する前記3つの成功基準すべてが満たされた場合にのみ、得られたT細胞の集団が、抗腫瘍能または抗ウイルス能を発揮するように最適に調製されていると言える。
【0009】
したがって、改善されたaAPC足場は有利だと言える。特に、活性T細胞の割合、T細胞の抗原特異性およびT細胞の機能性を高めることができ、より効率的なaAPC足場を提供することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、末梢血リンパ球(PBMC)または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から抽出された腫瘍反応性T細胞を増殖させる能力が向上した人工抗原提示細胞(aAPC)足場を提供することに関する。
【0011】
より具体的は、本発明は、増殖させたT細胞集団のT細胞分化能および機能的能力が不十分であるという先行技術の前記問題を解決することができるaAPC足場を提供することを目的とする。また、本発明は、最適化された表現型特性および機能的特性を有する増殖されたT細胞集団を、腫瘍退縮またはウイルス排除を促すために使用することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の一態様は、人工抗原提示細胞(aAPC)足場であって、
以下の鋳型分子:
i.抗原性ペプチドを含む少なくとも1種の主要組織適合遺伝子複合体分子(pMHC)、
ii.IL-21、IL-2、IL-15、IL-1、IL-6、IL-10およびIL-7からなる群から選択される少なくとも1種のサイトカイン、
iii.任意で含まれ、B7.2(CD86)、B7.1(CD80)、CD40、ICOSおよびPD-L1からなる群から選択される少なくとも1種の共刺激分子、ならびに
iv.任意で含まれる少なくとも1個のCD47分子
が結合したポリマー主鎖を含むaAPC足場に関する。
【0013】
本発明の好ましい一態様は、人工抗原提示細胞(aAPC)足場であって、
以下の鋳型分子:
i.IL-21、IL-2、IL-15、IL-4、IL-9およびIL-7からなる群から選択される少なくとも2種のγ鎖受容体サイトカインなどの、少なくとも2種のγ鎖受容体サイトカイン、
ii.少なくとも1種の抗原、
iii.任意で含まれ、B7.2(CD86)、B7.1(CD80)、CD40、ICOSおよびPD-L1からなる群から選択される少なくとも1種の共刺激分子、ならびに
iv.任意で含まれる少なくとも1個のCD47分子
が結合したポリマー主鎖を含むaAPC足場に関する。
【0014】
本発明の別の一態様は、インビトロにおいてT細胞の刺激と増殖を同時に行う方法であって、
i.T細胞を含む試料を提供する工程、
ii.本発明のaAPC足場を含む溶液に前記試料を接触させる工程、
iii.前記aAPC足場に対して特異性を有するT細胞の刺激と増殖を培養物中で行う工程、および
iv.前記培養物から工程iii)のT細胞を回収することにより、増殖した抗原特異的T細胞集団を得る工程
を含む方法に関する。
【0015】
本発明のさらなる一態様において、本発明の方法により得られる増殖したT細胞集団を提供する。
【0016】
本発明のさらに別の一態様は、医薬品として使用するための、本発明の方法により得られる増殖したT細胞集団に関する。
【0017】
本発明のさらに別の一態様において、がんまたはウイルス疾患の治療において使用するための、本発明の方法により得られる増殖したT細胞集団を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)人工抗原提示細胞(aAPC)足場の一例の概略図を示す。このaAPC足場は、ペプチド-MHC(pMHC)分子、サイトカインおよび任意で含まれる共刺激分子などの鋳型分子が結合した主鎖から構成される。さらに、CD47分子をaAPC足場に結合させてもよい。また、様々な比率の主鎖と鋳型分子からaAPC足場を構築したaAPC足場の例を示す。(B)厳選された鋳型分子をどのように組み合わせてaAPC足場を構築することができるのか、および患者から抽出された特定のT細胞集団を増殖させるために、この鋳型分子の組み合わせをどのように使用することができるのかを示した図である。
【0019】
図2】(A)足場とpMHCを1:1の比率、1:5の比率、1:10の比率、1:20の比率または1:30の比率として様々な抗原提示足場を構築し、CMV pp65 YSEペプチドに対して応答性を示す健常ドナー由来PBMCの染色に使用した場合のT細胞の平均蛍光強度(MFI)値を示す。(B)足場とpMHCを1:10の比率または1:20の比率とし、共刺激分子としてB7-2およびIL-15を5:5の比率で共結合させて構築した様々な抗原提示足場を使用して染色したT細胞試料のMFI値を示し、(C)そのSI値を示す。
【0020】
図3】足場と(A)B7-2または(B)IL-15とを1:30の比率で使用して抗原提示足場を構築し、健常ドナーPBMCの染色に使用した結果を示す。Y軸の蛍光色素はPE-Cy7であり、X軸の蛍光色素はFITCである。
【0021】
図4】(A)PE(X軸)で標識したテトラマーおよびAPC(Y軸)で標識したテトラマーを用いてエクスビボで直接検出した健常ドナー由来のHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度を示す。(B)1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の抗原提示足場、(C)遊離のFLU BP-VSDペプチド、IL-15およびIL-21、または(D)無関係なペプチド特異性を有する1:10:5:5:5の組成比率の抗原提示足場を使用し、さらにすべての培地に20IU/ml IL-2を添加して2週間培養したHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度を示す。(E)ベースライン、増殖の1週間後および2週間後にテトラマー染色で検出したHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度に基づく増殖速度を示す。(F)2週間増殖したHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の絶対数を示す。
【0022】
図5】(A)PE(X軸)で標識したテトラマーおよびAPC(Y軸)で標識したテトラマーを用いてエクスビボで直接検出した健常ドナー由来のHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度を示す。(B)培地に1:15:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15)の組成比率の濾過した抗原提示足場もしくは濾過していない抗原提示足場または遊離のFLU BP-VSDペプチドを添加し、さらにすべての培養物に20IU/ml IL-2を添加して2週間培養したHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度を示す。この特異的CD8 T細胞の頻度はAPC標識テトラマーおよびPE標識テトラマーを用いて検出した。(C)ベースライン、増殖の1週間後および2週間後にテトラマー染色で検出したHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度に基づく増殖速度を示す。(D)1:15:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15)の組成比率の濾過した抗原提示足場もしくは濾過していない抗原提示足場または遊離のFLU BP-VSDペプチドを添加して2週間増殖した後の、テトラマー陽性CD3/CD8 T細胞のMFI値を示す。
【0023】
図6】(A)1:15:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15)の組成比率の濾過していない抗原提示足場または濾過した抗原提示足場を添加して2週間増殖した健常ドナー由来のHLA-A3 FLU NP LIR特異的CD8 T細胞の頻度を示す。ドットプロットは抗原特異的CD8 T細胞の2つの集団を示し、一方の集団はPE-Cy7標識テトラマーに対して(X軸)高親和性で結合し(黒色で示した集団)、もう一方はこれよりも低い親和性で結合したが(濃灰色で示した集団)、PerCP標識CD8抗体では同程度の染色強度が得られた(Y軸)。(B)1:15:5:5の組成比率の濾過していない抗原提示足場または濾過した抗原提示足場を添加して2週間増殖した、テトラマー高結合親和性HLA-A3 FLU NP LIR特異的CD8 T細胞およびテトラマー低結合親和性HLA-A3 FLU NP LIR特異的CD8 T細胞におけるCD28の発現を示す棒グラフである。
【0024】
図7】(A)1:15:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15)の組成比率の濾過していない抗原提示足場または濾過した抗原提示足場で2週間刺激後、テトラマー染色で検出した、健常ドナー由来のHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度を示す。CD8抗体はPerCPで標識されており(Y軸)、テトラマーはPE-Cy7で標識されている(X軸)。1:15:5:5の組成比率の濾過していない抗原提示足場または濾過した抗原提示足場を添加して2週間増殖したHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞における、(B)CD45RAおよびCD28の発現頻度、(C)CD45RAおよびCCR7の発現頻度および(D)CD45RAおよびCD57の発現頻度を示すドットプロットである。
【0025】
図8】(A)1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場を添加して2週間増殖したHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞におけるCD28、CD57およびCCR7の発現を、遊離ペプチド、遊離IL-15および遊離IL-21を添加した培養と比較した結果を示す。これらの培養のすべてにおいて、培地に20IU/mL IL-2を添加した。(B)1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場を、遊離IL-2および遊離IL-21を添加した1:8(足場:pMHC)の組成比率の抗原提示足場と比較した結果を示す。(C)1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場もしくは濾過していない抗原提示足場を添加するか、または遊離ペプチド、遊離IL-15および遊離IL-21を添加して2週間増殖したHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞におけるCD28の発現のMFI値を示す。(D)1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場もしくは濾過していない抗原提示足場を添加するか、または1:8(足場:pMHC)の組成比率の抗原提示足場と遊離IL-2および遊離IL-21とを添加して2週間増殖したHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞におけるCD28の発現のMFI値を示す。
【0026】
図9】(A)1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場を添加して2週間増殖したHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞におけるPD-1、Tim-3およびLAG-3の発現を、遊離ペプチド、遊離IL-15および遊離IL-21を添加した培養と比較した結果を示す。これらの培養のすべてにおいて、培地に20IU/mL IL-2を添加した。(B)1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場を、遊離IL-2および遊離IL-21を添加した1:8(足場:pMHC)の組成比率の抗原提示足場と比較した結果を示す。(C)1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場もしくは濾過していない抗原提示足場を添加するか、または遊離ペプチド、遊離IL-15および遊離IL-21を添加して2週間増殖したPD-1陰性HLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度を示す。(D)1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場もしくは濾過していない抗原提示足場を添加するか、または1:8(足場:pMHC)の組成比率の抗原提示足場と遊離IL-2および遊離IL-21とを添加して2週間増殖したPD-1陰性HLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度を示す。
【0027】
図10】HLA-A1 FLU BP-VSDペプチドを用いてインビトロでペプチド刺激した後のTNF-α、IFN-γおよびCD107aの発現の頻度を示す。ペプチド応答性CD8 T細胞におけるサイトカインの分泌は、細胞内サイトカイン染色によって測定した。(A)1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場で刺激して2週間増殖した試験細胞培養物を、遊離ペプチド、遊離IL-15および遊離IL-21で刺激した細胞培養物と比較した結果を示す。(B)1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場で刺激し、培地中にIL-2を添加せずに2週間増殖した試験細胞培養物を、遊離IL-2および遊離IL-21を添加した1:8(足場:pMHC)の組成比率の抗原提示足場と比較した結果を示す。グラフは、トリプルポジティブ、ダブルポジティブまたはシングルポジティブのHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度を示す。各グラフにおいて、トリプルポジティブ画分を(切り出して)強調している。
【0028】
図11】HLA-A1 FLU BP-VSDペプチドで刺激したCD8 T細胞における(A)CD107aおよびIFN-γの発現と、(B)TNF-αおよびIFN-γの発現とを示すドットプロットを示す。関係のあるペプチド特異性(左のプロット)または無関係なペプチド特異性(右のプロット)をMHC複合体中に有する1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の抗原提示足場で培養物を2週間刺激した。(A)において、CD107a抗体はPEで標識されており(Y軸)、IFN-γ抗体はAPCで標識されている(X軸)。(B)では、TNF-α抗体はPE-Cy7で標識されており(Y軸)、IFN-γ抗体はAPCで標識されている(X軸)。これらの染色は二連で行い、このうちの一方のみを示す。
【0029】
図12】1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の抗原提示足場を添加して2週間増殖した健常ドナー由来細胞の4種のウイルスに対する応答性の増大倍率を示す。培養物として、1~4)4種のウイルスに対する応答性を別々の培養において増大させた培養物(1つの培養物あたり1種)と、5)4種のウイルスに対する応答性を同時に増大させた培養物(1つの培養物あたり4種)の計5種の培養物を樹立した。評価した4種のペプチド-MHCに対する応答として、HLA-A2 FLU MP 58-66 GILに対する特異性、HLA-A2 EBV LMP2 FLYに対する特異性、HLA-A2 CMV pp65 NLVに対する特異性およびHLA-A2 EBV BRLF1 YVLに対する特異性を評価した。
【0030】
図13】(A)各抗原提示足場で2週間刺激した後、特異的ペプチド(HLA-A2 EBV LMP2 CLG)に4時間曝露したT細胞培養物におけるTNF-α、IFN-γおよびCD107aの発現を示す。1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:分子1:分子2)の組成比率の21種の抗原提示足場を使用した。最も外側の黒色の円は、テトラマー染色で検出された抗原特異的CD8 T細胞の絶対数(イベント)を表し、丸印1は3種のマーカー(TNF-α、IFN-γおよびCD107a)のうち1種の発現を示し、丸印2は、3種のマーカーのうち2種の発現を示し、丸印3は、3種のマーカーすべての発現を示す。(B)1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の基準としての抗原提示足場を示す。
【0031】
図14】(A)各抗原提示足場で2週間刺激した後、特異的ペプチド(HLA-A2 EBV LMP2 CLG)に4時間曝露したT細胞培養物におけるTNF-α、IFN-γおよびCD107aの発現を示す。1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:分子1)の組成比率の7種の抗原提示足場を使用した。分子1は、PD-L1、ICOS、OX40L、CD5、IL-1、IL-6、IL-10のいずれかを使用した。最も外側の黒色の円は、テトラマー染色で検出された抗原特異的CD8 T細胞の絶対数(イベント)を表し、丸印1は3種のマーカー(TNF-α、IFN-γおよびCD107a)のうち1種の発現を示し、丸印2は、3種のマーカーのうち2種の発現を示し、丸印3は、3種のマーカーすべての発現を示す。(B)1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率の基準としての抗原提示足場を示す。
【0032】
図15】(A)1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:分子1:分子2)の組成比率の19種の抗原提示足場もしくは基準としての抗原提示足場(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)を使用するか、または(B)IL-2を含まない培地中において、1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:分子1)の組成比率の7種の抗原提示足場もしくは基準としての抗原提示足場(足場:pMHC:IL-2:IL-21)を使用して、2週間増殖したHLA-A2 EBV LMP2 CLG特異的CD8 T細胞におけるCD28およびPD-1の発現を示す。黒色の円はテトラマー染色で検出された抗原特異的CD8 T細胞の絶対数(イベント)を示し、x軸およびy軸の相対分布は2種の分子、すなわちPD-1およびCD28の発現を示す。PD-1抗体およびCD28抗体はいずれもBV-421で標識した。
【0033】
図16】Immudex社から入手した270kDaの長さの足場、およびFina Biosolutions社から入手した250kDa、750kDaまたは2000kDaの長さの様々な足場を使用して抗原提示足場を構築し、これらの抗原提示足場を使用して2週間刺激後にテトラマー染色によって検出された健常ドナー由来HLA-A2 EBV LMP2 CLG特異的CD8 T細胞の頻度を示す。これらの足場は、1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の比率で構築した。CD8抗体はBV510で標識されており(Y軸)、テトラマーはPEで標識されている(X軸)。HLA-A2 EBV LMP2 CLG特異的CD8 T細胞のベースライン応答は0.01%であった。
【0034】
図17】1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率のaAPC足場を用いた5種の公知のウイルスに対して応答性を示す健常ドナー由来抗原特異的CD8 T細胞の同時増殖を示す。(A)5種のウイルス応答のうちの2種(HLA-A2 EBV LMP2 FLY特異的CD8 T細胞およびHLA-A2 CMV pp65 NLV特異的CD8 T細胞)をそれぞれ別々に増殖させるか、または1/10の濃度の特異的aAPC足場と9/10の濃度の無関係なHLA非適合aAPC足場とを混合して増殖させた。(B)各ウイルスに対して特異性を有する1/10の濃度の通常のaAPC足場に、5/10の濃度のHLA非適合aAPC足場を加えたものを用いて、5種すべてのウイルス応答を同じ培養物中で同時に増大させた。5種のウイルスに対する応答の特異性として、HLA-A2 FLU MP 58-66 GILに対する特異性、HLA-A2 EBV LMP2 FLYに対する特異性、HLA-A2 CMV pp65 NLVに対する特異性、HLA-A2 EBV BRLF1 YVLに対する特異性およびHLA-A2 CMV IE1 VLEに対する特異性をそれぞれ評価した。
【0035】
図18】250KDaのaAPC足場、750KDaのaAPC足場または2000KDaのaAPC足場を添加して2週間増殖した健常ドナー由来抗原特異的CD8 T細胞の頻度を示す。これら3種の足場のいずれにおいても、足場と分子の比率を以下の2種、すなわち、(A)aAPC足場1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)および(B)aAPC足場1:24:24:24(足場:pMHC:IL-2:IL-21)とした。
【0036】
図19】C57BL/6マウスにおいてaAPC足場を使用したOVA特異的CD8 T細胞のインビボ増殖を示す。ワクチン接種前、OVA+ポリICによる腹腔内ワクチン接種後7日目および19日目、ならびにブースター免疫後7日目に、OVA特異的CD8 T細胞の頻度を測定した。ワクチン接種後21日目に、4種のブースター免疫を行った。マウス1にはPBSを静脈内投与した。マウス2にはOVAを腹腔内投与した。マウス3にはaAPC足場1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)とH2-Kb/SIINFEKLとを静脈内投与した。マウス4には、aAPC足場1:8:8:8の構築に使用したのと同じ濃度でH2-Kb/SIINFEKLを静脈内投与した(すなわちマウス3に対するブースター免疫と同様とした)。すなわち、マウス4において、pMHC複合体の一部として抗原性ペプチドを投与したが、aAPC足場は投与しなかった。
【0037】
図20】aAPC足場を用いた抗原特異的T細胞の増殖と、単球由来樹状細胞(moDC)を用いた抗原特異的T細胞の増殖の比較を示す。健常ドナー由来細胞から抗原特異的T細胞の増殖を開始した。増殖開始時の抗原特異的T細胞の密度は0.01%であった。4つの条件下、すなわち、(A)遊離pMHC複合体、遊離IL-2および遊離IL-21の存在下(すなわちaAPC足場を使用せず)、(B)1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率のaAPC足場の存在下、(C)同じドナー由来の非パルスmoDCの存在下、または(D)同じドナー由来のペプチドパルスmoDCの存在下で同時に増殖を行った。4つの条件のいずれでも抗原特異的T細胞を2週間培養し、前述のように週2回刺激した。2週間後、抗原特異的T細胞の増殖をMHCテトラマー染色によって追跡した。代表的なドットプロットを図20に示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0039】
用語の定義
本発明をさらに詳細に説明する前に、以下の用語および慣用語を最初に定義する。
【0040】
人工抗原提示細胞(aAPC)足場
本明細書において、「人工抗原提示細胞(aAPC)足場」は、本明細書で定義されるような、抗原提示細胞と同様の機能を発揮するために必要な分子のアセンブリを意味する。
【0041】
ポリマー主鎖
本明細書において、「ポリマー主鎖」は、個々の鋳型分子が固定されるaAPC足場の一部を意味する。各鋳型分子は、ポリマー主鎖上に存在するかあるいはその一部として組み込まれたカップリング剤と、鋳型分子上に存在するアフィニティータグとの間の相互作用によって結合する。あるいは、カップリング剤は鋳型分子上に存在していてもよく、これに対応するアフィニティータグはポリマー主鎖上に存在してもよい。
【0042】
ポリマー主鎖は、多糖類、ビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、strep-tactin、ポリストレプトアビジン、ビオチン結合タンパク質およびポリヒスチジン結合ポリマーから選択される材料で構成されていてもよい。
【0043】
鋳型分子
本明細書において、「鋳型分子」は、aAPC足場のポリマー主鎖上に結合しているあらゆる分子を指す。鋳型分子は、pMHC分子、サイトカイン、共刺激分子およびCD47から選択してもよい。鋳型分子はアフィニティータグを含む。
【0044】
非共有結合性相互作用
本明細書において、「非共有結合性相互作用」は、共有結合以外の相互作用を介したあらゆる結合を意味する。非共有結合は、たとえば、疎水性相互作用、親水性相互作用、イオン性相互作用、ファンデルワールス力、水素結合およびこれらの組み合わせによって形成されてもよい。
【0045】
カップリング剤
本明細書において、「カップリング剤」は、aAPCのポリマー主鎖上に存在する分子種を指す。カップリング剤は、アフィニティータグに非共有結合することができる。カップリング剤としては、ストレプトアビジン、アビジン、strep-tactin、抗体、ポリHisタグ、金属イオンキレート剤などが挙げられる。
【0046】
あるいは、カップリング剤は鋳型分子上に存在していてもよく、これに対応するアフィニティータグはポリマー主鎖上に存在してもよい。
【0047】
アフィニティータグ
本明細書において、「アフィニティータグ」は、鋳型分子上に存在する分子種を指す。アフィニティータグは、非共有結合性相互作用によってカップリング剤に非常に特異的に結合する。カップリング剤としては、ビオチン、抗体エピトープ、Hisタグ、ストレプトアビジン、strep-tactin、ポリヒスチジン、ペプチド、金属イオンキレート剤などが挙げられる。
【0048】
あるいは、アフィニティータグは、ポリマー主鎖上に存在していてもよく、これに対応するカップリング剤は鋳型分子上に存在していてもよい。
【0049】
抗原
本明細書において、「抗原」は、それ自体で、または別の分子と協働して、免疫応答を誘導することができる分子を指す。
【0050】
本明細書で定義されるaAPCは、少なくとも1種の抗原を含む。1種以上の抗原は、i)独立した分子としてaAPCの一部を構成するか、またはii)分子複合体の一部としてaAPCの一部を構成する。i)の場合、前記抗原は、細胞膜分化抗原(CD)タンパク質などのタンパク質であってもよい。ii)の場合、前記抗原は、タンパク質であってもよく、抗原性ペプチドの形態であってもよい。このような抗原性ペプチドは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を含む複合体(すなわちpMHC複合体)の一部であってもよい。
【0051】
前記抗原は、MHCによって提示される抗原性ペプチドであってもよく、MHC複合体に結合することなく認識される抗原(すなわちMHCによって提示されない分子)であってもよい。MHC複合体として提示されない抗原としては、CD19、CD20、CD22などのCDタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
ハプテン
本明細書において、「ハプテン」は、タンパク質や足場などの大きな担体に結合した場合にのみ、免疫応答を誘導することができる小分子を指す。したがって、ハプテンは、抗体が結合可能であるが、それ自体では免疫応答を誘導しない低分子量かつ非免疫原性の化合物である。ハプテンは、疾患を標的とする抗体に結合させてもよい。
【0053】
ハプテンとしては、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール、コチニン、ヒドララジンおよびウルシオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
MHCおよびpMHC
本明細書において、「MHC」および「pMHC」という用語は同じ意味で使用され、抗原性ペプチドと複合体化された主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子を指す。
【0055】
MHC複合体は、ヒトではヒト白血球抗原(HLA)遺伝子複合体によってコードされる。したがって、本明細書において、「MHC」は「HLA」も包含する。
【0056】
サイトカイン
本明細書において、「サイトカイン」は、刺激されたT細胞の増殖、生存およびエフェクター機能に影響を与える免疫制御分子を意味する。サイトカインとしては、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカインおよび腫瘍壊死因子が挙げられる。
【0057】
γ鎖受容体サイトカイン
本明細書において、「γ鎖受容体サイトカイン」は、共通のγ鎖サブユニットを含むサイトカイン受容体に結合するサイトカイン群を指す。共通のγ鎖(γ)受容体は、CD132またはインターロイキン-2受容体サブユニットγ(IL-2RG)としても知られている。γ鎖受容体サイトカインの共通点の一つとして、共通のγ鎖受容体を介して細胞内シグナルを送達し、T細胞の活性化および分化に影響を与えることが挙げられる。
【0058】
γ糖タンパク質は膜貫通タンパク質であり、これは細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含み、通常、リンパ球上に発現される。γサブユニットは、少なくとも6種のサイトカイン受容体、すなわちIL-2受容体、IL-4受容体、IL-7受容体、IL-9受容体、IL-15受容体およびIL-21受容体の受容体複合体の一部を構成する。したがって、γ鎖受容体サイトカイン群は、少なくともIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21を含む。
【0059】
共刺激分子
本明細書において、「共刺激分子」は、T細胞と相互作用することにより、共刺激分子と接触していないT細胞と比較して、T細胞の応答、増殖および産生ならびに/もしくはサイトカインの分泌を増強するか、T細胞の分化およびエフェクター機能を刺激するか、またはT細胞の生存を促進する分子を意味する。共刺激分子としては、B7.1、B7.2、ICOS、PD-L1、α-ガラクトシルセラミドなどが挙げられる。
【0060】
エピトープ
本明細書において、「エピトープ」は、T細胞上のTCRによって認識される抗原決定基を意味する。pMHCによって提示されるエピトープは、特定の外来物質に対して非常に特異的であり、TCRと相互作用することによって、ペプチド-MHCの制御下で特定のT細胞を効果的に増殖させ、かつ機能刺激することができる。
【0061】
医薬組成物
本明細書において、「医薬組成物」は、本発明に従って増殖され、適切な量の薬学的に許容可能な希釈剤もしくは添加剤および/または薬学的に許容可能な担体中に懸濁されたT細胞集団を含む組成物を指す。
【0062】
薬学的に許容可能
本明細書において、「薬学的に許容可能」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与した場合に、胃の不快感やめまいなどの有害反応またはアレルギー反応を通常起こさない分子種および組成物を指す。本明細書において、「薬学的に許容可能」とは、動物における使用、より具体的にはヒトにおける使用のために、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または米国薬局方もしくはその他の一般に知られている薬局方に記載されていることを意味することが好ましい。
【0063】
アジュバント
本明細書において、「アジュバント」は、抗原に対する免疫応答を増強する化合物または混合物を指す。アジュバントは、抗原を徐放する組織デポー剤として使用することができ、免疫応答を非特異的に増強するリンパ系活性化剤として使用することもできる。アジュバントの非存在下における抗原のみを使用した初回の免疫チャレンジでは、液性免疫応答または細胞性免疫応答を惹起できないことが多い。アジュバントとしては、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン、鉱物ゲル(水酸化アルミニウムなど)、界面活性物質(リゾレシチンなど)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油型エマルションまたは炭化水素エマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および有用である可能性があるヒトアジュバント(BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)など)が挙げられるが、これらに限定されない。アジュバントは薬学的に許容可能であることが好ましい。
【0064】
添加剤
本明細書において、「添加剤」は、本発明の組成物とともに投与される、希釈剤、アジュバント、担体または溶媒を指す。このような医薬担体は、滅菌された液体、たとえば滅菌された水および油であってもよく、鉱物油、動物油、植物油または合成油などの油が挙げられ、たとえばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる。水、または水溶液、食塩水、デキストロース水溶液およびグリセロール水溶液は、担体として、特に注射剤用の担体として使用することが好ましい。適切な医薬担体は、E.W.Martin著の「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0065】
人工抗原提示細胞(aAPC)足場
T細胞は、MHC分子と複合体化した外来物質の抗原性ペプチド(pMHC)を提示する抗原提示細胞(APC)と相互作用することによって、外来物質を認識してこれに応答するという、免疫応答において非常に重要な役割を果たしている。T細胞は特異性が非常に高く、単一の特異性のみを有するT細胞受容体(TCR)を発現し、これによってT細胞が特定の単一のpMHC分子のみを認識して応答することが可能になる。T細胞が初めて刺激を受けて、抗原およびMHC分子の特定の組み合わせに対する受容体を構築すると、その他の特異性を認識することができなくなる。このようなT細胞の専門化はMHC制限と呼ばれ、増殖したT細胞集団を「汚染する」無関係な特異性が存在しない単一特異性のT細胞の増殖に利用することができる。
【0066】
CAR T細胞などのいくつかの遺伝子組換え免疫細胞は、MHC分子によって提示されない抗原を認識する。本発明は、特定の種類の抗原を認識する細胞の増殖に利用することができる。
【0067】
したがって、aAPCは、それ自体で、または別の分子と協働して、免疫応答を誘導可能な抗原を含んでいてもよい。このような抗原は、細胞膜分化抗原(CD)タンパク質などのタンパク質であってもよい。
【0068】
MHC分子にはいくつかのバリアントが存在し、そのうちMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子が最も重要であると見なすことができる。MHCクラスI分子はCD8陽性細胞傷害性T細胞(CD8+T細胞)と相互作用し、MHCクラスII分子はCD4陽性ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)と相互作用する。通常、CD8+T細胞が活性化されると、がん細胞、感染細胞(特にウイルス感染細胞)またはその他の方法で損傷を受けた細胞を死滅しようとする。一方、CD4+T細胞は、サイトカインの放出などによって主に免疫系を補助することによって、CD8 T細胞を増強する。本発明の使用は単一の種類のT細胞に限定されないが、本発明は主としてCD8+T細胞の活性化、刺激および増殖に関する。これは特に、aAPC足場を利用することによってCD4+T細胞の役割をある程度満たすことができることから、妥当と言える。しかし、本明細書に記載のaAPC足場は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方を増殖させるために利用してもよい。
【0069】
TCRとpMHCの相互作用は、T細胞を活性化させる主な促進因子であるが、効果的な免疫応答を発揮するT細胞を作製するためには、その他の刺激がいくつか必要とされる。CD8+T細胞の活性化には概して2つのシグナルが必要とされ、すなわち、1)TCRとpMHCクラスI分子の間の相互作用、および2)T細胞上の膜受容体であるCD28と、APC上に存在するCD28リガンド(たとえばB7.1(CD80)またはB7.2(CD86)など)との間の共刺激性相互作用が必要とされる。この第2のシグナルは、増殖、サイトカインの産生および細胞の生存を促進する。
【0070】
T細胞応答は、刺激シグナルに加えて、阻害シグナルによっても制御される。阻害シグナルのメディエーターとして、Tim-3、LAG-3およびPD-1が挙げられる。これらのメディエーターは、過剰なT細胞の活性化を回避し、免疫系が生体全体で暴走するのを防ぐ自然なメカニズムとして機能する。
【0071】
第2のシグナルは、CD4+T細胞から放出されるサイトカインによるCD8+T細胞刺激の補助を受けてもよく、場合によっては、このCD8+T細胞刺激によって置き換えられてもよい。したがって、サイトカインは、免疫応答の調整に関与する別の重要な分子群を構成する。サイトカインとして、一般に、インターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、リンホカインおよび腫瘍壊死因子が挙げられる。これらは受容体を介して作用し、特に、T細胞集団の成熟、成長および応答性を制御する。したがって、インターロイキン-2(IL-2)および共刺激シグナルは、連続した細胞分裂の継続にとって最も重要な因子である。共刺激分子とサイトカインの間の相互作用は繊細かつ複雑であり、効率的かつ特異的なT細胞増殖の重要な因子の1つである。
【0072】
アポトーシス、増殖、接着、遊走などの細胞プロセスおよび免疫応答において重要な役割を果たす別の分子の一つとしてCD47が挙げられる。この膜貫通タンパク質は、ヒト細胞において遍在的に発現されるが、様々な腫瘍細胞の多くでも過剰発現され、CD47が高発現すると、がん細胞が食作用を回避することが可能になる。しかし、CD47は免疫細胞でも広範に発現されており、免疫細胞の循環時間を延長させる「don’t eat me」シグナルとして機能する。CD47を発現するT細胞は、治療用途に使用した場合に半減期が延長されると予測されるため、CD47発現T細胞の増殖は好ましい場合がある。
【0073】
したがって、本発明の一実施形態は、前記鋳型分子が、T細胞集団においてCD47の発現を刺激することが可能なリガンドを含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0074】
さらに、CD47は、たとえば、培養または循環においてaAPC足場の半減期を延長させる「don’t eat me」シグナルとして、aAPC自体に有利な特性を付与する場合がある。
【0075】
したがって、本発明の一実施形態は、前記鋳型分子が少なくとも1個のCD47分子を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0076】
前述の説明で例示したように、T細胞の活性化および増殖には多くの因子が関与している。しかし、免疫療法および/または特定のT細胞集団の増殖を目的とする場合、これらの目的に適した高い活性および機能性をT細胞集団に提供するために満たされることが望ましい条件をいくつか設定することができる。したがって、増殖したT細胞の好ましい特徴として、
a.活性化因子(CD28など)の高発現、
b.阻害因子(PD1など)の低発現、および
c.多機能性サイトカインの応答
が挙げられる。
【0077】
効率的な活性化および刺激に必要とされる様々な分子群は、T細胞の機能および増殖に対して最適な能力を発揮できるように同時に存在している必要がある。aAPC足場を使用することによって、規定の距離で互いに近接させて必要な分子の組み合わせを寄せ集めることができることから、特定のT細胞を効率的に増殖させるための適切なプラットフォームを構成することができる。
【0078】
したがって、本発明は、腫瘍退縮またはウイルス排除を促すのに理想的な表現型特性および機能特性を細胞に付与するために細胞に特定の機能刺激を与えるMHC担持aAPC足場を使用することによって、腫瘍反応性T細胞の増殖に必要とされる特定の条件を実証するものである。このようなaAPC足場は、特定のT細胞との特異的相互作用を制御するように、アフィニティータグ付加ペプチド-MHC(pMHC)分子と結合したカップリング剤が結合したポリマー主鎖から構成され、同様にアフィニティータグが付加されたサイトカインおよび共刺激分子の組み合わせが、特定のT細胞を刺激して機能的特性が向上するように、さらに共結合されている。aAPC足場は、pMHC分子による認識に基づいてT細胞と特異的に相互作用し、この特異的相互作用を介して、ペプチド-MHCの制御により特定のT細胞を効果的に増殖させ、機能的に刺激することができる。
【0079】
aAPC足場は、非常に多様な異なる鋳型分子(すなわちpMHC分子、サイトカインおよび共刺激分子)の組み合わせによって構築することができる。本明細書に記載のaAPC足場は、1種以上の共刺激分子を含んでいてもよく、該共刺激分子として、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD9、CD27、CD28、CD30、CD40、CD48、CD58、CD69、CD70、CD72、B7.1(CD80)、CD83、B7.2(CD86)、Fas(CD95)、OX40(CD134)、CD137(4-1BB)、CD147、SLAM(CDw150)、CTLA-4(CD152)、CD153(CD30L)、CD40L(CD154)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS、CD278)、CD134L、CD137L、OX4OL、NKG2D、HVEM、PD-1、B7RP-1、PD-L1、PD-L2、細胞間接着分子(ICAM)およびICOSLが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
さらに、本明細書に記載のaAPC足場は、1種以上のサイトカインを含んでいてもよく、該サイトカインとして、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-21(IL-21)、インターフェロンα(IFN-α)、インターフェロンβ(IFN-β)、インターフェロンγ(IFN-γ)、IGIF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、腫瘍壊死因子β(TNF-β)およびマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)ならびにこれらのバリアントおよび断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書において、T細胞の増殖に適していることから、活性T細胞の割合、T細胞の抗原特異性およびT細胞の機能性を確実に高めることができるaAPC足場について述べる。
したがって、本発明の第1の態様は、人工抗原提示細胞(aAPC)足場であって、以下の鋳型分子:
i.抗原性ペプチドを含む少なくとも1種の主要組織適合遺伝子複合体分子(pMHC)、
ii.IL-21、IL-2、IL-15、IL-1、IL-6、IL-10およびIL-7からなる群から選択される少なくとも1種のサイトカイン、
iii.任意で含まれ、B7.2(CD86)、B7.1(CD80)、CD40、ICOSおよびPD-L1からなる群から選択される少なくとも1種の共刺激分子、ならびに
iv.任意で含まれる少なくとも1個のCD47分子
が結合したポリマー主鎖を含むaAPC足場に関する。
【0082】
いくつか種類のサイトカインが同時に存在する場合、いくつかの種類のT細胞の増殖を促進することができる。したがって、本発明の一実施形態は、前記鋳型分子が、IL-21、IL-2、IL-15、IL-1、IL-6、IL-10およびIL-7からなる群から選択される少なくとも2種のサイトカインを含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0083】
本発明のaAPCは、MHC複合体に結合することなく認識される抗原を含んでいてもよい。このような抗原は、細胞膜分化抗原(CD)に属するタンパク質であってもよいが、これらに限定されない。
【0084】
特に有利なaAPC足場を作製することが可能な、様々な群のサイトカインが特定された。特定の理論に拘束されるものではないが、効率的なサイトカイン群の一つとして、共通のγ鎖受容体を介して細胞内シグナルを送達し、T細胞の活性化および分化に影響を与えるサイトカイン群が挙げられる。本明細書において、これらのサイトカインを「γ鎖受容体サイトカイン」と呼ぶ。
したがって、本発明の好ましい一態様は、人工抗原提示細胞(aAPC)足場であって、以下の鋳型分子:
i.IL-21、IL-2、IL-15、IL-4、IL-9およびIL-7からなる群から選択される少なくとも2種のγ鎖受容体サイトカインなどの、少なくとも2種のγ鎖受容体サイトカイン、
ii.少なくとも1種の抗原、
iii.任意で含まれ、B7.2(CD86)、B7.1(CD80)、CD40、ICOSおよびPD-L1からなる群から選択される少なくとも1種の共刺激分子、ならびに
iv.任意で含まれる少なくとも1個のCD47分子
が結合したポリマー主鎖を含むaAPC足場に関する。
【0085】
本発明の別の一実施形態は、前記γ鎖受容体サイトカイン群が、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21からなる、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0086】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記γ鎖受容体サイトカインが、IL-21、IL-2、IL-15、IL-4、IL-9およびIL-7からなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0087】
本発明者らは、γ鎖受容体サイトカインファミリーの中から刺激分子の好ましい組み合わせを特定した。
【0088】
したがって、本発明の一実施形態は、前記γ鎖受容体サイトカインが、IL-21、IL-2およびIL-15からなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0089】
本発明の別の一実施形態は、前記γ鎖受容体サイトカインが少なくともIL-21を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0090】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記γ鎖受容体サイトカインが、
i.少なくともIL-2およびIL-21、または
ii.少なくともIL-15およびIL-21
を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0091】
本発明のさらなる一実施形態は、前記γ鎖受容体サイトカインが、
i.少なくともIL-2およびIL-21、または
ii.少なくともIL-15およびIL-21
である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0092】
本発明の別の一実施形態は、前記γ鎖受容体サイトカインが、
i.少なくともIL-4およびIL-21、
ii.少なくともIL-7およびIL-21、または
iii.少なくともIL-9およびIL-21
を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0093】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記γ鎖受容体サイトカインが、
i.IL-4およびIL-21、
ii.IL-7およびIL-21、または
iii.IL-9およびIL-21
である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0094】
前記抗原は、MHCによって提示される抗原性ペプチドであってもよく、MHC複合体に結合することなく認識される抗原(すなわちMHCによって提示されない分子)であってもよい。MHC複合体に結合しない抗原は、免疫応答を誘導可能なものであれば、どのような種類のタンパク質であってもよい。
【0095】
したがって、本発明の一実施形態は、前記少なくとも1種の抗原が、MHCによって提示されない分子である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0096】
MHCによって提示されない抗原の一群として、細胞膜分化抗原(CD)タンパク質が挙げられる。CDタンパク質は、細胞の免疫表現型解析の標的として一般に知られている細胞表面分子の一群であり、細胞シグナル伝達に重要なシグナルカスケードにおいて受容体またはリガンドとして機能することができる。CDタンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を刺激して、増殖を促すように特別に設計されたaAPCに含まれていてもよい。このような用途におけるCDタンパク質としては、CD19、CD20、CD22およびCD269が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
前記用途における別の種類の抗原としては、ハプテンまたは有機低分子が挙げられ、たとえばビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール、コチニン、ヒドララジンおよびウルシオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。ハプテンは、疾患を標的とする抗体に結合させることができる。ハプテン結合抗がん抗体を組み合わせた抗ハプテンCAR T細胞を使用したCAR Tプラットフォームは、単一のCAR T細胞を使用して複数種のがん抗原を標的とするための新規な方法として提案されている。
【0098】
本発明の一実施形態は、前記抗原が、CD19、CD20、CD22、CD269、ハプテン、BCMA、上皮成長因子受容体(EGFR)、メソテリン(MSLN)、上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、癌胎児抗原(CEA)および前立腺特異的膜抗原(PSMA)からなる群から選択される、MHCによって提示されない分子である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0099】
本発明のさらなる一実施形態は、前記MHCによって提示されない分子がCDタンパク質である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0100】
CDタンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を刺激して、増殖を促すように特別に設計されたaAPCに含まれていてもよい。このような用途におけるCDタンパク質としては、CD19、CD20、CD22およびCD269が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
したがって、本発明の一実施形態は、前記CDタンパク質が、CD19、CD20、CD22およびCD269からなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0102】
本発明の別の一実施形態は、前記MHCによって提示されない分子がハプテンである、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0103】
本発明のさらなる一実施形態は、前記ハプテンが抗体に結合されている、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0104】
本発明の別の一実施形態は、前記抗原が、抗原性ペプチドを含む主要組織適合遺伝子複合体分子(pMHC)である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0105】
前記鋳型分子は、カップリング剤とアフィニティータグの間の相互作用を介してポリマー主鎖に結合することができる。カップリング剤は、aAPC足場のポリマー主鎖上に存在し、疎水性相互作用、静電相互作用または共有結合によって(ただしこれらに限定されない)、主鎖に結合することができる。カップリング剤がポリマー主鎖上に存在する場合、カップリング剤は、モジュール方式でアフィニティータグ付加鋳型分子を固定することができる柔軟な鋳型として機能する。アフィニティータグは、非共有結合性相互作用によって(ただしこれに限定されない)、カップリング剤に特異的に結合する分子種である。したがって、アフィニティータグを各鋳型分子に結合させることによって、カスタムメイドのaAPC足場を容易に構築することができる。
【0106】
したがって、本発明の一実施形態は、前記ポリマー主鎖上に存在するカップリング剤と前記鋳型分子上のアフィニティータグとの間の非共有結合性相互作用を介して、該鋳型分子が該ポリマー主鎖に結合されている、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0107】
様々な公知のアフィニティータグとカップリング剤の適合する組み合わせを本発明において使用してもよく、このようなアフィニティータグとカップリング剤の組み合わせとして、ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/アビジン、ビオチン/ニュートラアビジン、ビオチン/strep-tactin、ポリHis/金属イオンキレート剤、ペプチド/抗体、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/グルタチオン、エピトープ/抗体、マルトース結合タンパク質/アミラーゼ、およびマルトース結合タンパク質/マルトースが挙げられるが、これらに限定されない。その他の公知のアフィニティータグとカップリング剤の適合する組み合わせも本発明において使用してもよい。
【0108】
したがって、本発明の一実施形態は、前記カップリング剤/アフィニティータグが、ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/アビジン、ビオチン/ニュートラアビジン、ビオチン/strep-tactin、ポリHis/金属イオンキレート剤、ペプチド/抗体、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/グルタチオン、エピトープ/抗体、マルトース結合タンパク質/アミラーゼ、およびマルトース結合タンパク質/マルトースからなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0109】
本発明の別の好ましい一実施形態は、前記カップリング剤がストレプトアビジンであり、前記アフィニティータグがビオチンである、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0110】
鋳型分子が結合するaAPC足場のポリマー主鎖は、様々な材料から構成されていてもよい。したがって、いくつかの種類の主鎖を本発明において使用することができ、このような主鎖として、多糖類、合成多糖類、ビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、誘導体化セルロース系化合物、strep-tactinおよびポリストレプトアビジンが挙げられるが、これらに限定されない。多糖類は、デキストランまたはデキストランの様々なバリアントであってもよく、たとえば、カルボキシメチルデキストラン、デキストランポリアルデヒド、シクロデキストリンなどが挙げられる。合成多糖類としては、たとえばフィコールが挙げられる。ビニルポリマーとしては、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸)およびポリ(ビニルアルコール)が挙げられるが、これらに限定されない。誘導体化セルロース系化合物からなるポリマー主鎖としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロース化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
さらに、本発明による自己組織化aAPC足場を形成するベースとして使用できる市販のポリマー主鎖が入手可能である。このようなポリマー主鎖としては、IBA GmbHおよびベックマン・コールター社から市販されているStreptamerが挙げられるが、これに限定されない。StreptamerはStrep-tactinタンパク質で構成されており、オリゴマー化することによって、ビオチン化pMHC複合体、ビオチン化サイトカインおよびビオチン化共刺激分子などのいくつかのビオチン化分子を結合可能な多量体を形成することができる。
【0112】
したがって、本発明の一実施形態は、前記ポリマー主鎖が、多糖類、ビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、strep-tactinおよびポリストレプトアビジンからなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0113】
本発明の別の一実施形態は、前記ポリマー主鎖が多糖類である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0114】
本発明のさらに別の好ましい一実施形態は、前記多糖類がデキストランである、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0115】
ポリマー主鎖の大きさによって、各aAPC足場に何個の鋳型分子を結合させることができるのかという物理的限界が設定される。ポリマー主鎖の大きさは、その分子量によって決まる。
【0116】
したがって、本発明の一実施形態は、前記デキストランの分子量が、50~3000kDa、たとえば100~2500kDa、たとえば250~2500kDaである、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0117】
本発明の別の一実施形態は、前記デキストランの分子量が、250kDa、270kDa、750kDaおよび2000kDaからなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0118】
各aAPC足場に結合させることができる分子の数に加えて、別の重要なパラメータの一つとして、ポリマー主鎖上における鋳型分子の分布密度が挙げられる。分布密度は、aAPC足場に含まれるすべての分子間の比率を調整することによって変動してもよい。したがって、本発明の一実施形態は、ポリマー主鎖:pMHC分子:共刺激分子:サイトカインの比率が、1:1:1:1の比率、1:2:1:1の比率、1:4:1:1の比率、1:4:2:1の比率、1:4:2:2の比率、1:10:5:5の比率、1:4:4:4の比率、1:8:8:8の比率、1:10:10:10の比率、1:20:20:20の比率、1:30:30:30の比率、1:40:40:40の比率、1:50:50:50の比率、1:50:10:10の比率および1:50:20:20の比率からなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。本発明の別の一実施形態は、ポリマー主鎖:pMHC分子:サイトカイン1:サイトカイン2の比率が、1:1:1:1の比率、1:2:1:1の比率、1:4:1:1の比率、1:4:2:1の比率、1:4:2:2の比率、1:10:5:5の比率、1:4:4:4の比率、1:8:8:8の比率、1:10:10:10の比率、1:20:20:20の比率、1:30:30:30の比率、1:40:40:40の比率、1:50:50:50の比率、1:50:10:10の比率および1:50:20:20の比率からなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0119】
本発明のさらに別の一実施形態は、ポリマー主鎖:pMHC分子:共刺激分子:サイトカイン1:サイトカイン2の比率が、1:1:1:1:1の比率、1:2:1:1:1の比率、1:4:1:1:1の比率、1:4:2:1:1の比率、1:4:2:2:2の比率、1:10:5:5:5の比率、1:4:4:4:4の比率、1:8:8:8:8の比率、1:10:10:10:10の比率、1:20:20:20:20の比率、1:30:30:30:30の比率、1:40:40:40:40の比率、1:50:50:50:50の比率、1:50:10:10:10の比率および1:50:20:20:20の比率からなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0120】
本発明は、様々な対象由来のT細胞の増殖に適したものであってもよい。したがって、本発明の一実施形態は、前記少なくとも1種のpMHC分子が、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシまたはトリの分子などの、脊椎動物のMHC分子である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0121】
本発明の別の好ましい一実施形態は、前記脊椎動物のMHC分子がヒトの分子である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0122】
前述したように、MHC分子はいくつかのバリアントとして存在する。MHC分子としては、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、MHCクラスIII分子、MHCクラスI様分子およびMHCクラスII様分子が挙げられるが、これらに限定されない。MHCクラスI様分子としては、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、MICA、MICB、MR1、ULBP-1、ULBP-2およびULBP-3が挙げられるが、これらに限定されない。MHCクラスII様分子としては、HLA-DM、HLA-DO、I-Aβ2およびI-Eβ2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
したがって、本発明の一実施形態は、前記少なくとも1種のpMHC分子が、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、MHCクラスIII分子、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびMR1からなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0124】
本発明の別の好ましい一実施形態は、前記少なくとも1種のpMHC分子がMHCクラスI分子である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0125】
本発明のさらに好ましい一実施形態は、前記少なくとも1種のpMHC分子がヒトMHCクラスI分子である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。ヒトにおいて、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)は、ヒト白血球抗原(HLA)複合体と呼ばれる遺伝子複合体によってコードされる。MHCクラスIに対応するHLAは、HLA-A、HLA-BおよびHLA-Cと呼ばれる。
【0126】
pMHC分子によって提示される抗原性ペプチドは、最終的にどの種類のT細胞がaAPC足場によって増殖されるのかを決定する。この概念は、以前はMHC制限と呼ばれていた。本発明において使用される抗原は、実質的にあらゆる供給源に由来するものであってもよい。該抗原の供給源としては、ヒト、ウイルス、細菌、寄生虫、植物、真菌または腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本発明の一実施形態は、前記pMHCに含まれる前記抗原性ペプチドが、ヒト、ウイルス、細菌、寄生虫、植物、真菌および腫瘍からなる群から選択される供給源に由来するものである、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0127】
本発明のaAPC足場の使用の一つとして、養子細胞移入(ACT)に使用される腫瘍反応性T細胞の増殖における使用が挙げられる。ACT戦略の強みは、局所的な腫瘍環境とは対照的に、抗原特異的T細胞集団の効率的な増殖に最適なエクスビボ環境中にT細胞が存在することである。
【0128】
本発明のaAPC足場の別の使用として、移植の結果として起こることが多い特定の感染症との戦いに特化したT細胞集団の増殖のための使用が考えられる。移植を受けた患者には、通常、移植片拒絶反応を回避するために免疫抑制療法が行われる。多くの場合、このような治療によって、患者は攻撃的なウイルス株に対して無防備な状態となり、既に衰弱している患者において重度感染症が起こる。本発明のaAPC足場は、何らかの重度感染症をACT戦略により治療することを目的として、移植患者から抽出されたT細胞の効率的な増殖に完全に適している。
【0129】
したがって、本発明の一実施形態は、前記pMHCに含まれる前記抗原性ペプチドが、がん関連エピトープまたはウイルスエピトープである、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0130】
本発明の別の一実施形態は、前記抗原が、がん関連エピトープまたはウイルスエピトープを含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0131】
本発明の別の一実施形態は、前記pMHCに含まれる前記抗原性ペプチドが、がんのネオエピトープなどのネオエピトープである、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0132】
本発明の別の一実施形態は、前記がん関連エピトープが、ウイルス誘発がんに関連するウイルスエピトープである、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0133】
本発明のaAPC足場は、ポリマー主鎖に結合したpMHC分子によって提示されてもよい特定の抗原性ペプチドとともに機能する。本発明はいくつかの適応症に対して好ましく使用される。
【0134】
したがって、本発明の好ましい一実施形態は、前記ウイルスエピトープが、ヒトパピローマウイルス(HPV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびインフルエンザウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来するものである、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0135】
aAPC足場が単一のT細胞特異性を増大させる精度に関して各aAPC足場の効率を最適化するため、本発明の一態様では、各aAPC足場はpMHC分子の単一バリアントのみを有しており、すなわち、各種類のaAPC足場につき1つのペプチド抗原のみが提示される。
【0136】
したがって、本発明の一実施形態は、前記pMHC分子がすべて同一のものであり、抗原性ペプチドの単一バリアントのみを提示する、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0137】
各aAPC足場につき単一の抗原性ペプチドのみを提示させることによって、異なる特異性を持つT細胞間での競合が最小限に抑えられる。所望であれば、異なるペプチドを提示する数種類の異なる足場を一緒にプールして同時に増殖を行ってもよい。aAPC足場においてはすべての鋳型分子(すなわちpMHC、共刺激分子およびサイトカイン)が互いに近接してクラスター化されているため、T細胞間の競合が最小限に抑えられており、様々な異なる特異性を有する各T細胞の同時増殖が可能である。その結果、本発明のaAPC足場を使用して増殖させたT細胞集団は特異性を保持しており、異なる特異性をプールすることによって、対象に再導入された際に一定範囲の免疫応答を確実に起こすことができる。この特徴は、免疫回避バリアントを避けるために臨床的に重要である。応答範囲は、1回の増殖において、何種類の異なるaAPC足場を一緒にプールするのかを決定することによって調整することができる。
【0138】
前記ポリマー主鎖は、ポリマー主鎖の大きさに応じて適切な任意の数のpMHC分子を含んでいてもよい。したがって、本発明の一実施形態は、各ポリマー主鎖が、少なくとも5個のpMHC分子、たとえば少なくとも8個のpMHC分子、たとえば少なくとも10個のpMHC分子、たとえば少なくとも20個のpMHC分子、たとえば少なくとも30個のpMHC分子、たとえば少なくとも40個のpMHC分子、たとえば少なくとも50個のpMHC分子、またはたとえば少なくとも100個のpMHC分子を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0139】
本発明の別の一実施形態は、各ポリマー主鎖が少なくとも2個のpMHC分子、たとえば少なくとも3個のpMHC分子、またはたとえば少なくとも4個のpMHC分子を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0140】
いくつかの用途において、たとえば特定の種類の分析法を行うため、または増殖したT細胞集団からaAPC足場を分離するために、aAPC足場を固体担体上に固相化すると実用的である場合がある。したがって、本発明の一実施形態は、固体担体上に固相化された本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0141】
固体担体には様々な種類が存在し、aAPC足場の用途に応じて選択してもよい。様々な種類の固体担体としては、ビーズ、ウェルプレート、粒子、マイクロアレイ、膜、フィルター、ゲルおよびチップが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本発明の一実施形態は、前記固体担体が、ビーズ、ウェルプレート、粒子、マイクロアレイおよび膜からなる群から選択される、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0142】
本発明のaAPC足場は、リンカーや抗体などの従来の任意の手段によって前記固体担体に結合することができる。
【0143】
様々な種類の鋳型分子が存在し、したがって、様々なaAPC足場を多数構築することができる。本発明者らは、鋳型分子の特定の組み合わせによって、特に効率的な好ましいaAPC足場を得ることができることを見出した。
【0144】
したがって、本発明の一実施形態は、前記鋳型分子が少なくともIL-21を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0145】
本発明の別の一実施形態は、前記鋳型分子が少なくともIL-15およびIL-21を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0146】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記鋳型分子が少なくともB7.2(CD86)を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0147】
本発明のさらに別の一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記共刺激分子がB7.2(CD86)であり、かつ
iii.前記サイトカインがIL-15およびIL-21である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0148】
本発明のさらなる一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記γ鎖受容体サイトカインがIL-15およびIL-21であり、かつ
iii.前記共刺激分子がB7.2(CD86)である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0149】
本発明のさらに別の一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記γ鎖受容体サイトカインがIL-15およびIL-21であり、
iii.前記抗原が、抗原性ペプチドを含む主要組織適合遺伝子複合体分子(pMHC)であり、かつ
iv.前記共刺激分子がB7.2(CD86)である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0150】
本発明の別の一実施形態は、前記デキストラン主鎖上のpMHCとIL-15とIL-21とB7.2(CD86)の比率が2:1:1:1である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0151】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記デキストラン主鎖とpMHCとIL-15とIL-21とB7.2(CD86)の比率が1:10:5:5:5である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0152】
本発明のさらなる一実施形態は、前記γ鎖受容体サイトカインが、IL-2、IL-15およびIL-21である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0153】
本発明のさらに別の一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記γ鎖受容体サイトカインがIL-2、IL-15およびIL-21であり、かつ
iii.前記抗原が、抗原性ペプチドを含む主要組織適合遺伝子複合体分子(pMHC)である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0154】
本発明の一実施形態は、前記デキストラン主鎖とpMHCとIL-2とIL-15とIL-21の比率が1:10:5:5:5である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0155】
本発明のさらに別の一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記γ鎖受容体サイトカインがIL-2、IL-15およびIL-21であり、
iii.前記抗原が、抗原性ペプチドを含む主要組織適合遺伝子複合体分子(pMHC)であり、かつ
iv.前記共刺激分子がB7.2(CD86)である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0156】
本発明の別の一実施形態は、前記デキストラン主鎖とpMHCとIL-2とIL-15とIL-21とB7.2(CD86)の比率が1:10:5:5:5:5である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0157】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記鋳型分子が、少なくともIL-6およびIL-10を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0158】
本発明のさらなる一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記共刺激分子がB7.2(CD86)であり、かつ
iii.前記サイトカインがIL-6およびIL-10である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0159】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記デキストラン主鎖上のpMHCとIL-6とIL-10とB7.2(CD86)の比率が2:1:1:1である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0160】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記デキストラン主鎖とpMHCとIL-6とIL-10とB7.2(CD86)の比率が1:10:5:5:5である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0161】
本発明の一実施形態は、前記γ鎖受容体サイトカインが、少なくともIL-2およびIL-21を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0162】
本発明の別の一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、かつ
ii.前記サイトカインがIL-2およびIL-21である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0163】
本発明のさらなる一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、かつ
ii.前記γ鎖受容体サイトカインがIL-2およびIL-21である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0164】
本発明のさらに別の一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記γ鎖受容体サイトカインがIL-2およびIL-21であり、かつ
iii.前記抗原が、抗原性ペプチドを含む主要組織適合遺伝子複合体分子(pMHC)である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0165】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記デキストラン主鎖上のpMHCとIL-2とIL-21の比率が1:1:1である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0166】
本発明の別の一実施形態は、前記共刺激分子が少なくともB7.2(CD86)を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0167】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記デキストラン主鎖とpMHCとIL-2とIL-21の比率が1:8:8:8である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0168】
本発明のさらなる一実施形態は、前記ポリマー主鎖が少なくともIL-1およびPD-L1を含む、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0169】
本発明のさらに別の一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記共刺激分子がB7.2(CD86)およびPD-L1であり、かつ
iii.前記サイトカインがIL-1である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0170】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記デキストラン主鎖上のpMHCとIL-1とB7.2(CD86)とPD-L1の比率が2:1:1:1である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0171】
本発明の別の一実施形態は、前記デキストラン主鎖とpMHCとIL-1とB7.2(CD86)とPD-L1の比率が1:10:5:5:5である、本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0172】
本発明のさらに別の一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記共刺激分子がB7.2(CD86)およびICOSであり、かつ
iii.前記サイトカインがIL-10である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0173】
本発明のさらに別の一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、かつ
ii.前記サイトカインがIL-1およびIL-2である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0174】
本発明のさらなる一実施形態は、
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、かつ
ii.前記サイトカインがIL-2およびIL-15である、
本明細書に記載のaAPC足場に関する。
【0175】
本発明のさらなる一実施形態は、人工抗原提示細胞(aAPC)足場であって、
以下の鋳型分子:
i.抗原性ペプチドを含む少なくとも1種の主要組織適合遺伝子複合体分子(pMHC)、ならびに
ii.B7.2(CD86)、ICOSおよびPD-L1
が結合したポリマー主鎖を含むaAPC足場に関する。
【0176】
本発明のaAPC足場は、病院および研究室における使用に適したキットの一部を構成してもよい。このようなキットは、異なる特異性を有する複数種のT細胞の増殖に適した1種以上のaAPC足場と、試料から抽出されたT細胞の増殖に適した培地とを含んでいてもよい。前記キットは、T細胞含有試料の増殖に必要な他の化合物または分子を含んでいてもよい。
【0177】
本発明のaAPC足場は、対象の免疫系を補助するために、該対象に直接投与するための免疫療法として使用してもよい。本発明のaAPCは、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、皮下経路、経皮経路、経口経路などの任意の経路を介して局所投与または全身投与してもよい。
【0178】
T細胞の増殖方法
健常でない対象から免疫反応性T細胞を抽出し、エクスビボで該T細胞を増殖させ、増殖したT細胞集団を前記対象に再導入することによって、免疫系を無効化してしまう免疫抑制性疾患による障害の一部を克服することができる。しかし、成分分離操作による末梢血などからのT細胞の抽出、およびその後の患者への再導入に困難性はないものの、特定の特異性を持つT細胞の活性化および増殖は依然として非常に難しく、得られるT細胞集団は十分な分化能や機能的能力を欠いていることが多い。
【0179】
本発明のaAPC足場は、インビトロにおいてT細胞の刺激と増殖を同時に行うことに適しており、活性T細胞の割合が高く、T細胞の抗原特異性が高く、かつT細胞の機能性が高いT細胞集団を得ることができる。
したがって、本発明の第2の態様は、インビトロにおいてT細胞の刺激と増殖を同時に行う方法であって、
i.T細胞を含む試料を提供する工程、
ii.本明細書に記載のaAPC足場を含む溶液に前記試料を接触させる工程、
iii.前記aAPC足場に対して特異性を有するT細胞の刺激と増殖を培養物中で行う工程、および
iv.前記培養物から工程iii)のT細胞を回収することにより、増殖した抗原特異的T細胞集団を得る工程
を含む方法に関する。
【0180】
T細胞を含む試料を対象から抽出し、次いでT細胞の増殖が可能な条件下において、aAPC足場を含む培養物中に該試料を加える。したがって、T細胞の増殖は、aAPC足場に加えて、細胞増殖に必要な化合物および因子をすべて含む溶液または培地中で行われる。したがって、T細胞増殖を行う培養物は、無関係な細胞の増殖を阻害する化合物またはT細胞の増殖を促進する化合物(たとえばIL-2)を含んでいてもよい。
【0181】
増殖したT細胞集団の品質を高めるため、aAPCと試料を混合する前に、結合していないpMHC分子を完全に除去するために、分子量カットオフフィルターを使用してaAPC足場を遠心濾過してもよい。これによって、足場に結合していないpMHC分子からの刺激を回避するとともに、過剰なペプチド、サイトカインおよび共刺激分子を除去して無関係なT細胞サブセットへの刺激を制限することができる。MHC分子と複合体化されなかった抗原に対しても同じことが言え、このような抗原も分子量カットオフフィルターを使用した遠心分離によって除去することができる。
【0182】
したがって、本発明の一実施形態は、工程ii)のaAPC足場を含む前記溶液が、前記試料と接触させる前に濾過されたものである、本明細書に記載の方法に関する。
【0183】
本発明の別の一実施形態は、aAPC足場を含む前記溶液が、分子量カットオフフィルターを通して遠心濾過されたものである、本明細書に記載の方法に関する。
【0184】
本発明のaAPC足場は、上述したように、複数種のaAPC足場を使用した場合の交差反応性が最小限に抑えられていることから、本発明のaAPC足場の利点の一つとして、様々なT細胞特異性を同時に増大できることが挙げられる。したがって、本発明の方法は、異なる特異性を有する様々なT細胞を含む試料に対しても効果的に使用できる。
【0185】
したがって、本発明の一実施形態は、工程i)の前記試料が、異なる特異性を有する少なくとも2種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも5種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも10種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも15種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも20種のT細胞、またはたとえば異なる特異性を有する少なくとも50種のT細胞を含む、本明細書に記載の方法に関する。
【0186】
本発明の別の一実施形態は、aAPC足場を含む前記溶液が、少なくとも2種のaAPC足場、たとえば少なくとも5種のaAPC足場、たとえば少なくとも10種のaAPC足場、たとえば少なくとも15種のaAPC足場、たとえば少なくとも20種のaAPC足場、またはたとえば少なくとも20種のaAPC足場を含む、本明細書に記載の方法に関する。
【0187】
本発明のさらに別の一実施形態は、異なる特異性を有する少なくとも2種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも5種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも10種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも15種のT細胞、またはたとえば異なる特異性を有する少なくとも20種のT細胞を、同じ試料中で同時に刺激し、増殖させる、本明細書に記載の方法に関する。
【0188】
本発明のさらなる一実施形態は、
i.異なる特異性を有する少なくとも5種のT細胞を含む試料を提供する工程、
ii.少なくとも5種のaAPC足場を含む溶液に前記試料を接触させる工程、
iii.前記少なくとも5種のaAPC足場のそれぞれに対して特異性を有する前記少なくとも5種のT細胞の刺激と増殖を培養物中で同時に行う工程、および
iv.前記培養物から工程iii)のT細胞を回収することにより、異なる特異性を有する少なくとも5種のT細胞を含む増殖した抗原特異的T細胞集団を得る工程
を含む、本明細書に記載の方法に関する。
【0189】
増殖対象のT細胞を含む試料は、どのような供給源に由来するものであってもよいが、通常、血液、組織または体液から抽出される。したがって、本発明の一実施形態は、前記試料が、末梢血単核細胞、腫瘍、組織、骨髄、生検試料、血清、血液、血漿、唾液、リンパ液、胸膜液、脳脊髄液および滑液からなる群から選択される、本明細書に記載の方法に関する。
【0190】
本明細書に記載の方法に従って増殖されるT細胞を含む試料は、幹細胞、TCR修飾/遺伝子移入細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞から選択することもできる。
【0191】
したがって、本発明の一実施形態は、前記試料が、CAR T細胞を含み、前記少なくとも1種の抗原がMHC分子によって提示されない、本明細書に記載の方法に関する。
【0192】
したがって、本発明の一実施形態は、前記試料が、CAR T細胞を含み、前記aAPC足場の前記少なくとも1種の抗原がCDタンパク質である、本明細書に記載の方法に関する。
【0193】
本発明の別の一実施形態は、前記試料が、CAR T細胞を含み、前記少なくとも1種の抗原がCD19、CD20およびCD22からなる群から選択される、本明細書に記載の方法に関する。
【0194】
本発明の方法は、aAPC足場上のpMHC分子との相互作用に必要なTCRを発現する特定のT細胞を増殖させるために使用することができる。したがって、本発明の方法による増殖に適したT細胞として、CD8 T細胞、CD4 T細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、αβT細胞、γδT細胞、自然免疫型粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞およびリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
したがって、本発明の一実施形態は、前記T細胞が、CD8 T細胞、CD4 T細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、γδT細胞および自然免疫型粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞からなる群から選択される、本明細書に記載の方法に関する。
【0196】
本発明の別の一実施形態は、前記T細胞が、CAR T細胞、CD8 T細胞、CD4 T細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、γδT細胞および自然免疫型粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞からなる群から選択される、本明細書に記載の方法に関する。
【0197】
本発明の好ましい一実施形態は、前記T細胞がCD8 T細胞である、本明細書に記載の方法に関する。
【0198】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記T細胞がCAR T細胞である、本明細書に記載の方法に関する。
【0199】
治療的観点から有意義となるように、増殖したT細胞集団を患者に再導入するため、抽出したT細胞を臨床的に意義のある数にまで増殖させる必要がある。本発明の方法によってT細胞は、100~3000倍に増殖する。患者への再導入が実施可能となる細胞数は、1回の投与あたり10~1011個の範囲である。細胞は、投与経路に応じて20mL~1Lの量で投与される。
【0200】
したがって、本発明の一実施形態は、T細胞を臨床的意義のある数にまで増殖させる、本明細書に記載の方法に関する。
【0201】
本発明のaAPC足場について上述したように、pMHC分子によって様々な抗原性ペプチドが提示されてもよい。本発明の方法に使用される抗原性ペプチドの選択に関しても同じことが言える。したがって、本発明の一実施形態は、前記pMHCに含まれる抗原性ペプチドが、がん関連エピトープまたはウイルスエピトープである、本明細書に記載の方法に関する。
【0202】
本発明の別の一実施形態は、前記抗原が、がん関連エピトープまたはウイルスエピトープを含む、本明細書に記載の方法に関する。
【0203】
本発明の別の一実施形態は、前記がん関連エピトープが、ウイルス誘発がんに関連するウイルスエピトープである、本明細書に記載の方法に関する。
【0204】
本発明のさらに別の一実施形態は、前記ウイルスエピトープが、ヒトパピローマウイルス(HPV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびインフルエンザウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来するものである、本明細書に記載の方法に関する。
【0205】
増殖したT細胞集団の使用
本発明の方法によって得られる増殖したT細胞集団は、養子免疫療法(または養子細胞移入)に焦点を当てた治療計画において効果的に使用することができると想定される。このような治療計画において、治療を必要とする対象から免疫反応性T細胞が抽出される。前記対象はどのような哺乳動物であってもよく、たとえば、ヒト、ウシ、ブタ、トリ、イヌ、ネコ、マウス、ラットなどが挙げられる。T細胞の供給源は、たとえば、末梢血単核細胞、腫瘍、組織、骨髄、生検試料、血清、血液、血漿、唾液、リンパ液、胸膜液、脳脊髄液、滑液のいずれであってもよい。
【0206】
対象から試料を抽出した後、該対象および治療を行う状態または疾患に対してカスタマイズされたaAPC足場を用いて、該試料中の所望の1つ以上の特異性を有するT細胞を増殖させる。この増殖は、上述したように本発明の方法に従って行われる。T細胞集団が臨床的意義のある数まで増殖されたら、前記対象に投与して免疫応答を誘導して疾患を治療する。
【0207】
したがって、本発明の第3の態様は、本明細書に記載の方法によって得られる増殖したT細胞集団に関する。
【0208】
本発明の第4の態様は、医薬品として使用するための、本明細書に記載の方法によって得られる増殖したT細胞集団に関する。
【0209】
より具体的には、本発明の一実施形態は、疾患または障害の養子免疫療法を行う方法であって、
i.対象からのT細胞を含む試料を抽出する工程、
ii.本明細書に記載のaAPC足場を含む溶液に前記試料を接触させる工程、
iii.前記aAPC足場に対して特異性を有するT細胞の刺激と増殖を培養物中で行う工程、
iv.前記培養物から工程iii)のT細胞を回収することにより、増殖した抗原特異的T細胞集団を得る工程および
v.有効量の前記増殖した抗原特異的T細胞の集団を前記対象に投与することによって免疫応答を誘導する工程
を含む方法に関する。
【0210】
本発明のaAPC足場について上述したように、pMHC分子は様々な抗原性ペプチドを提示してもよい。抗原性ペプチドの選択と同様に、本発明の方法によって得られる増殖したT細胞集団の使用においても同じことが言える。
【0211】
したがって、本発明の第5の態様は、がんまたはウイルス疾患の治療において使用するための、本明細書に記載の方法により得られる増殖したT細胞集団に関する。
【0212】
本発明の一実施形態は、前記がんがウイルス疾患に関連する、本明細書に記載の使用のための増殖したT細胞集団に関する。
【0213】
本発明の別の一実施形態は、本明細書に記載の使用のための増殖したT細胞集団であって、前記ウイルス疾患が、ヒトパピローマウイルス(HPV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびインフルエンザウイルスからなる群から選択されるウイルスに関連したものである、増殖したT細胞集団に関する。
【0214】
本明細書に記載の方法によって得られる増殖したT細胞集団は、1種以上のアジュバントおよび/または添加剤および/または薬学的に許容可能な担体をさらに含む医薬組成物に製剤化することができる。添加剤としては、緩衝剤、懸濁剤、分散剤、可溶化剤、pH調整剤および/または保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
前記医薬組成物は、たとえば静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、皮下経路、経皮経路、経口経路などの任意の経路を介した局所的投与用または全身投与用の養子免疫療法(または養子細胞移入)において使用することができる。
【0216】
本発明の一態様において述べた実施形態および特徴は、本発明のその他の態様にも適用できることに留意されたい。
【0217】
本願において引用されたすべての特許文献および非特許文献は、参照によりその全体が本明細書中に援用される。
【0218】
以下の実施例において本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例
【0219】
実施例1:人工抗原提示(aAPC)足場の構築およびaAPCを用いた特異的T細胞増殖(図1
ストレプトアビジンとビオチンの相互作用を介して、pMHC複合体、サイトカインおよび刺激分子をデキストランに結合させることによって、aAPC足場がどのようにして作製されるのかを述べる。原則として、ビオチンとストレプトアビジンの組み合わせは、どのような二量体化ドメインで置き換えてもよく、このような二量体化ドメインの一方が、pMHC複合体、サイトカインまたは共刺激分子に結合し、もう一方はデキストランまたは類似の足場主鎖に結合する(図1A参照)。
【0220】
ストレプトアビジン修飾デキストランは、250KDa、750KDa、2000KDaなどの分子量の様々な大きさのデキストランとしてFina Biosolutions社から市販されており、約270kDaのデキストランとしてImmudex社からも市販されている。pMHCモノマーは、古典的な大腸菌発現法によって作製することができ、あるいはBioLegend社などの供給業者から市販品を購入することができる。pMHC、サイトカインおよび共刺激分子は、標準的な化学的プロトコルおよび酵素的プロトコルによってビオチン化することができる。たとえば、BirA酵素および遊離ビオチンを使用してMHCの重鎖中のコンセンサスペプチド配列をビオチン化することによる部位特異的ビオチン化によって、pMHCを酵素的にビオチン化することができる。サイトカインおよび共刺激分子は、BioLegend社およびPreProtech社などの供給業者から市販されている。サイトカインおよび共刺激分子は、供給業者のプロトコルに従って、サーモフィッシャーサイエンティフィック社のEZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotinなどの市販のビオチン化試薬を反応させることによって容易にビオチン化することができる。
【0221】
前記成分すべてを使用して、ストレプトアビジンとビオチンの相互作用によりaAPC足場を構築した。簡単に説明すると、以下の実施例の記載に従って、水性緩衝液中(PBSなど)で各分子を相対的化学量論量で混合し、最終濃度60nMのaAPC足場を構築した。aAPC足場は4℃で1時間かけて構築させ、細胞培養物に添加するまで4℃で保存した。構築した足場は4℃で少なくとも1ヶ月間にわたって保存することができる。構築したaAPC足場は、アミコンウルトラ遠心式フィルターユニットUltra-4(MWCO:100kDa)などの分子量カットオフフィルターを使用した遠心分離により未結合分子を分離することによって、結合しなかったペプチド、pMHC、サイトカインおよび共刺激分子から精製および分離することができる。
【0222】
T細胞培養物は、ヒトPBMCまたはヒト腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から樹立し、48ウェル平底培養プレート中で2×10個/mlの密度で培養を開始し、5%CO、37℃で2週間培養した。5%熱不活性化ヒト血清および20IU/ml組換えヒトIL-2を添加した新鮮なX-VIVO 15培地1mL中で、最終濃度0.2nMのaAPC足場を添加することによって、細胞を週2回刺激した。1週間培養した後、24ウェル平底培養プレートに細胞を移し、培養物から試料を週に1回採取し、MHCをテトラマー染色してフローサイトメトリーで分析することによって抗原特異的CD8 T細胞の増殖を追跡した。
【0223】
構築したaAPCを使用して、患者から抽出された特定のT細胞集団を増殖させることができる(図1B参照)。T細胞は、たとえば、臨床的意義のある数に増殖させて、疾患の治療のために患者に再導入することが可能な、CD8 T細胞、CD4 T細胞、制御性T細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞であってもよい。T細胞の増殖にaAPC足場を使用することによって、活性T細胞の割合、T細胞の抗原特異性およびT細胞の機能性を確実に高めることができる。単一の試料中でいくつかの種類のaAPC足場を使用することによって、複数の特異性の間で競合を起こすことなく、様々な抗原特異的T細胞を同時に増殖させることが可能となり、その結果、T細胞の特異性を保持しつつ、様々な特異性のT細胞がプールされていることによって、広範な免疫応答を確実に起こすことができる。
【0224】
実施例2:足場と分子の比率の決定(図2および図3
あらゆるT細胞は、サイトカイン、共刺激分子およびpMHC分子に結合する受容体を有していることから、図面の凡例においてMHC足場と呼ぶ抗原提示足場とT細胞受容体(TCR)の間の相互作用が、サイトカインや共刺激分子によっては制御されず、pMHC分子によって制御されるということは重要である。したがって、pMHCとTCRの間の特異的相互作用によって、抗原提示足場とT細胞受容体(TCR)の間の相互作用が確実に制御されるように、抗原提示足場に結合するpMHC分子の数および密度を最適化する必要がある。抗原提示足場の最適な組成およびTCR-pMHCによって制御される相互作用に必要なpMHC分子の数を決定するため、pMHC、サイトカインおよび共刺激分子を様々な比率で足場主鎖に結合させ、健常ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)の染色に使用し、フローサイトメトリーで分析した。
【0225】
足場とpMHCの比率を様々に変えて、ウイルスペプチドHLA-A1 CMV pp65 YSEを担持する抗原提示足場を構築し、共刺激分子を共結合させ、CMV pp65 YSEペプチドに対して応答性を示す1名の健常ドナー由来のPBMCの染色に使用した。各染色の平均蛍光強度(MFI)を使用して、足場に結合するpMHCの最適な数を決定し、染色指数(SI)を使用して陽性イベントと陰性イベントとを区別した。各染色において検出された抗原特異的CD8 T細胞のMFI値およびSI値を図2に示す。
【0226】
結論:(図2A)最大MFI値が示されたことから、1:10の比率および1:20の比率(足場:pMHC)が最適であることが分かったが、1:5の比率においても、TCRとpMHCの相互作用が保持されていた。(図2B~C)染色の結果、抗原提示足場の組成が1:10:10:10の比率(足場:pMHC:B7-2:IL-15)である場合と比較して、1:10:5:5の比率および1:20:5:5の比率においてMFI値とSI値が最大となったことから、これらの比率が最適であると結論付けられた。
【0227】
1:15:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15)の組成比率の抗原提示足場、1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の抗原提示足場および1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率の抗原提示足場を、健常ドナーのPBMC由来のウイルス特異的CD8 T細胞を用いたさらなる増殖実験において使用した。
【0228】
pMHC分子を全く担持していない足場とB7-2を1:30(足場:B7-2)の比率で使用するか、またはpMHC分子を全く担持していない足場とIL-15を1:30(足場:IL-15)の比率で使用して、2種のコントロール染色を行った。このコントロール染色は、B7-2および/またはIL-15を介した、T細胞に対する抗原提示足場の結合の程度を調べるために行った。2種のコントロール染色の代表的なドットプロットを図3に示す。
【0229】
結論:(図3A~B)2種のコントロール染色において、これら2種の足場のいずれでも有意な結合は観察されなかったことから、足場と非特異的T細胞集団の間の相互作用は非常に限定的にしか起こらないことが示された。
【0230】
実施例3:抗原提示足場を用いた抗原特異的CD8 T細胞の増殖(図4
健常ドナー由来のHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞を、1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の抗原提示足場の存在下、または遊離FLU BP-VSDペプチド、遊離IL-15および遊離IL-21サイトカインの存在下、または無関係なペプチド特異性を有するMHC複合体を担持する1:10:5:5:5の組成比率の抗原提示足場の存在下において同時に増殖させた。いずれの培養物にも20IU/mLのIL-2を添加し、2週間培養した。HLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の増殖を、テトラマー染色によって週に1回追跡した。代表的なドットプロットを図4に示す。
【0231】
結論:(図4A~D)この実験の結果、ベースラインの応答において低頻度でしか見られない抗原特異的CD8 T細胞を、抗原提示足場を使用したpMHCの制御によって増殖可能であることが示された。遊離ペプチド、遊離IL-15および遊離IL-21を培地中に添加して刺激した細胞の増殖と、抗原提示足場で刺激した細胞の増殖とを比較したところ、抗原提示足場で刺激した細胞において、特異的CD8 T細胞の頻度および絶対数が最も高くなったことが明確に示された(図4E~F参照)。さらに、無関係なペプチド特異性を有するMHCを担持する抗原提示足場は、A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の増殖を刺激できず、このことから、pMHCの制御による相互作用が起こらず、共結合されたサイトカインおよび共刺激分子の有効性が細胞に対して発揮されないことが示された。
【0232】
実施例4:抗原特異的CD8 T細胞の増殖に使用する前の抗原提示足場の濾過(図5~7)
抗原提示足場を構築した後、足場に結合しなかったpMHCによる刺激を防ぐために非結合pMHC分子を完全に除去し、かつ無関係なT細胞サブセットへの刺激を制限するために過剰量のペプチド、サイトカインおよび共刺激分子を除去することを目的として、分子量カットオフフィルターを使用した遠心分離により抗原提示足場を濾過した。いくつかの実験を並行して行い、抗原特異的CD8 T細胞の刺激に使用する前に抗原提示足場を濾過した場合と濾過しなかった場合とを調査し、その効果を比較した。増殖させたCD8 T細胞の様々な分化マーカーの増加量を調べ、CD8 T細胞の表現型を決定した。これらの実験では、1:15:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15)の比率で構築した抗原提示足場を使用した。図5~7を参照されたい。
【0233】
結論:(図5A~D)濾過した抗原提示足場で刺激した細胞は、濾過していない抗原提示足場で刺激した細胞や遊離ペプチドで刺激した細胞と比較してMFI値が最大となり、このことから、濾過した抗原提示足場は、TCRに対して高い親和性を発揮してT細胞を選択的に刺激するか、または増殖したT細胞集団のTCR発現のアップレギュレーションを開始させることが示された。しかし、濾過したMHC足場を使用した場合の増殖速度は、濾過していないMHC足場を使用した場合と比較して僅かに低下した。濾過した試薬を使用することによって、最適化された機能的特徴が得られる(これについは後述する)。濾過した足場と濾過していない足場を使用することによって、遊離のペプチドと遊離のサイトカインで刺激した場合よりも良好なT細胞の増殖と優れた機能的特徴が得られる。
【0234】
図6A~B)濾過していない抗原提示足場による刺激(濃灰色で示した集団)と比較して、濾過した抗原提示足場で刺激した高親和性結合集団(黒色で示した集団)においてCD28の発現が最大となった。
【0235】
図7A~D)濾過した抗原提示足場で刺激した細胞では、濾過していない抗原提示足場で刺激した細胞と比較して、CD28の発現が高いことが明確に示されたが、これは、T細胞刺激培養を行う前に抗原提示足場を濾過することによって、養子移入を目的とした表現型がよりロバストに発現され、インビボにおけるT細胞の生存および増殖が増強されたことに伴ってCD28が高発現されたことを意味する。濾過した抗原提示足場と濾過していない抗原提示足場の間でCCR7およびCD57の発現に有意差はなかった。
【0236】
実施例5:抗原提示足場を用いて増殖させた抗原特異的CD8 T細胞上の分化マーカーおよび共抑制マーカーの発現(図8および図9
T細胞は、自体の分化状態および機能的状態を決定する様々な表面分子によって特徴付けられる。分化状態はT細胞の表現型によって定義することができる。T細胞は、特定の抗原に曝露されることによって時間の経過とともに動的に分化するが、ナイーブT細胞、エフェクターT細胞(TEM)、後期エフェクターT細胞(TEMRA)およびセントラルメモリーT細胞の4つの群に大きく分類することができる。ナイーブT細胞プールは、過去に経験したことがない病原体に対するT細胞応答の惹起に寄与する。これに対して、再感染した病原体は、TEMの特定の群またはT CMによって惹起される強力かつ迅速なT細胞応答によって排除されることが多い。TEMの特定の群またはT CMは増殖力が高く、抗原刺激に対して非常に高い応答性を示す。養子移入を目的とする場合、このような表現型が好ましい。したがって、本発明では、CD28の高発現とCD57の低発現を達成することを目的とする。CCR7がある程度発現されていると、ホーミング能が発揮されることから、CCR7がある程度発現されていることが好ましい。
【0237】
Tim-3、LAG-3およびPD-1は、T細胞上の疲弊/活性化マーカーである。これらの分子は、T細胞が活性化された後の免疫応答を制御する。これらの分子は、過剰なT細胞の活性化を回避するための自然なメカニズムとして働くが、免疫療法においては、インビボにおいてT細胞の機能および増殖能が最適化されるように、T細胞におけるこれらの分子の発現は最小限に抑えられることが理想的である。これらの分子の中でも、PD-1は最も重要かつ動的なマーカーであると考えられる。PD-1のシグナル伝達を遮断すると、T細胞が劇的に活性化され、その結果、患者においてがん拒絶が起こることが示されている。
【0238】
1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場を添加して増殖を行った培養物において、増殖したCD8 T細胞の分化マーカーおよび共抑制マーカーの発現を調べ、遊離ペプチドおよび遊離サイトカインを用いて増殖させたCD8 T細胞と比較した。同様に、1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場を添加して増殖させた培養物を、1:8(足場:pMHC)の組成比率の抗原提示足場と遊離サイトカインとを培地中に添加した培養物と比較した。図8~9を参照されたい。
【0239】
結論:(図8A~D)前記細胞を染色したところ、1:10:5:5:5の組成比率の濾過した抗原提示足場または1:8:8:8の組成比率の濾過した抗原提示足場で刺激したA1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞は、その他の刺激よりもCD28の発現が高かったことが示された。また、1:10:5:5:5の組成比率または1:8:8:8の組成比率の2種の抗原提示足場で刺激した細胞におけるCCR7の発現およびCD57の発現では特に差異は観察されなかった。
【0240】
図9A~D)また、前記細胞を染色したところ、1:10:5:5:5の組成比率または1:8:8:8の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場で刺激した細胞におけるPD-1の陽性発現は、遊離ペプチドと遊離サイトカインで刺激した細胞や、1:8の組成比率の抗原提示足場と遊離サイトカインで刺激した細胞と比較して最も低かったことが示された。どの刺激でも、Tim-3の発現またはLAG-3の発現において特に差異は観察されなかった。さらに、濾過した抗原提示足場による刺激では、濾過していない抗原提示足場や、遊離ペプチドおよび遊離サイトカインによる刺激と比較して、PD-1陰性A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞の頻度が最大となった。
【0241】
実施例6:増殖した抗原特異的CD8 T細胞の機能性(図10
抗原提示足場で刺激した後の増殖した抗原特異的CD8 T細胞の機能的能力を特性評価するため、細胞に抗原でチャレンジし、細胞内サイトカイン抗体で染色して、TNF-αおよびIFN-γの産生、ならびに脱顆粒マーカーCD107aの表面発現を検出した。CD107aの発現は、標的細胞における細胞傷害活性およびアポトーシス誘導能に関連する。また、抗原認識に応答したTNF-αおよびIFN-γの産生は、間接的な細胞傷害殺傷にとって重要である。3種すべてのマーカーを同時に発現するCD8 T細胞は、高い殺傷能を有すると解釈される。
【0242】
1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場を添加した培養物中で増殖させたT細胞の機能性を、遊離ペプチドおよび遊離サイトカインを用いて増殖させたT細胞と比較した結果を図10に示す。同様に、1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率の濾過した抗原提示足場または濾過していない抗原提示足場を添加して増殖させた培養物を、1:8(足場:pMHC)の組成比率の抗原提示足場と遊離サイトカインとを培地中に添加して増殖させた細胞と比較した。さらに、培地に添加物として添加したIL-2が、CD8 T細胞の増殖の刺激に必須であったのかどうか、またはIL-2を培地から取り除き、1:8:8:8の組成比率の足場に結合させることができるのかどうかを調べた。
【0243】
結論:(図10A)トリプルポジティブCD8 T細胞の頻度は、遊離ペプチドおよび遊離サイトカインで刺激した細胞よりも、濾過した抗原提示足場で刺激した培養物および濾過していない抗原提示足場で刺激した培養物において高かった。この結果は、足場による相互作用が、効率的なT細胞刺激および多機能性T細胞の活性化の達成に必要であることを意味する。
【0244】
図10B)これらの結果から、培地からIL-2を取り除き、その代わりにIL-2を抗原提示足場に結合させても、多機能性CD8 T細胞(トリプルポジティブ)を得ることが可能であることが示された。さらに、濾過した抗原提示足場で刺激した細胞では、濾過していない抗原提示足場で刺激した細胞と比較して、多機能性(トリプルポジティブ)CD8 T細胞の頻度が最大となる。
【0245】
実施例7:pMHCの制御による刺激(図11
抗原提示足場が、pMHC依存的に刺激シグナルを制御するのかどうか、あるいは、MHC分子が関係のあるペプチド特異性を有していなくても、抗原特異的CD8 T細胞が、抗原提示足場に共結合されているサイトカインおよび共刺激分子の相互作用のみに基づく刺激による有効性を享受できるのかどうかを調べた。これを調査するため、無関係なペプチド特異性としてHLA-A3 LTA ASFをMHC複合体中に有する1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の抗原提示足場、または関係のあるペプチド特異性としてHLA-A1 FLU BP-VSDをMHC複合体中に有する1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の抗原提示足場を使用して、健常ドナーから得たHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8 T細胞を2週間にわたって刺激した。次いで、HLA-A1 FLU BP-VSDペプチドでチャレンジした場合の、CD8 T細胞のCD107a発現能、TNF-α産生能およびIFN-γ産生能を比較した。実験は二連で行った。代表的なドットプロットを図11に示す。
【0246】
結論:(図11A~B)これらの分析の結果、抗原提示足場による刺激は、自体に結合されたpMHC分子の特異性のみによって制御され、pMHC分子による特異的な認識および相互作用が存在しない場合、細胞は、共結合されたサイトカインおよび共刺激分子の刺激による有効性を享受することができないことが明らかとなった。
【0247】
実施例8:複数種の抗原特異的CD8 T細胞を同時に増殖させるための抗原提示足場の使用(図12
本発明の抗原提示足場系は、ペプチドの競合を起こすことなく、複数のCD8 T細胞特異性を同時に刺激できるという潜在的な利点を有する。広範にT細胞応答を誘導できると、標的の喪失による免疫回避を防ぐことができるため、臨床適用に好ましい。しかし、ペプチドを使用した従来の刺激方法を使用すると、T細胞に提示されるMHCクラスI分子への結合に対してペプチド間で競合が起こる。結合親和性および安定性が最も高いペプチドが、提示されたMHCクラスI分子に結合する。このため、遊離ペプチドを用いて、複数のT細胞応答を等しく十分に刺激することは困難となる。抗原提示足場を使用して複数のCD8 T細胞特異性を同時に刺激する場合、ペプチドがMHC分子内に既に挿入されており、足場に組み込まれているため、ペプチドの競合は回避される。
【0248】
本発明の抗原提示足場が、このような特性を有していることを実証するため、4種のウイルス(HLA-A2 EBV BRLF1 YVL、HLA-A2 CMV pp65 NLV、HLA-A2 EBV LMP2 FLYおよびHLA-A2 FLU MP 58-66 GIL)に対して応答性を示す健常ドナー由来PMBCを使用して実験を行い、抗原提示足場を用いた同じ培養物中で同時に何種類の特異性を刺激することができるかを調べた。
【0249】
前記ドナー由来の5つの培養物を樹立した。このうちの4つの培養物を使用して、4種の応答性を別々に増大させた。また、1つの培養物を使用して、4種の応答性すべてを同時に増大させた。したがって、前記4種のウイルス特異性のうち1種を備える4種の抗原提示足場を構築し、これらを培養物1~4に別々に加え、培養物1つあたり1つの特異性を増大させた。次いで、4種すべての抗原提示足場を培養物5に同時に加え、4種のウイルスに対する応答性を同じ培養物中で同時に増大させた。簡単に説明すると、5%熱不活性化ヒト血清および20IU/ml組換えヒトIL-2を添加した新鮮なX-VIVO 15培地1mL中において、最終濃度0.2nMのaAPC足場を各特異性に対して添加することによって、細胞を週2回刺激した。1週間培養した後、24ウェル平底培養プレートに細胞を移し、培養物から試料を週に1回採取し、MHCをテトラマー染色してフローサイトメトリーで分析することによって抗原特異的CD8 T細胞の増殖を追跡した。2週間増殖後、4種のウイルスに対する応答性に相当するpMHC特異的T細胞の数をテトラマー染色によって評価した。次いで、2週間の増殖後に得られた特異的CD8 T細胞の絶対数を、ベースラインの特異的CD8 T細胞の絶対数で除することによって、各特異性の増大倍率を算出した。増大倍率の結果を図12に示す。
【0250】
aAPC足場を使用して別々に増大させた応答性と、aAPC足場を使用して同時に増大させた応答性はいずれも、aAPC足場に含まれるものと同じ鋳型分子を遊離状態で含む溶液中よりも効率的に応答性が増大すると考えられる。したがって、aAPC足場に含まれるものと同じ鋳型分子が溶液中に含まれている場合、(無関係な特異性も含む)特異性間の競合が存在すると推測され、したがって、このような溶液中で増殖したT細胞集団は、aAPC足場を用いて増殖させたT細胞集団よりも抗原特異性および機能性が低くなる。このようなシナリオは、いくつかの特異性を同時に増大させようとする場合に特に当てはまる。
【0251】
結論:(図12)この実験の結果、1つの培養物あたり1つの特異性のみを刺激した場合に、抗原特異的CD8 T細胞の増殖倍率が最大となることが明らかとなった(黒色の棒グラフ)。様々な抗原提示足場を混合して4種の特異性を同時に増大させると、増大倍率は低下する。このような欠点があるものの、抗原提示足場を使用して同時に複数の特異性を増大可能であることが実証された。臨床では、出発材料は最小限量しかないことが多く、1つの試料において数多くの様々な特異性を刺激できると有利である。
【0252】
実施例9:抗原提示足場上の刺激分子の組み合わせにより効果が決まる(図13~15)
本実験では、分子、サイトカインおよび共刺激分子の組み合わせが、抗原提示足場を使用したT細胞増殖の結果にとって重要であることを実証する。高い殺傷機能の獲得および若い表現型の維持は、腫瘍退縮の増強と相関するため、これらの特性は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を使用した養子細胞移入(ACT)においてT細胞を使用する場合に重要である。特定の組み合わせを使用してT細胞に十分な刺激を与えることによって、高い殺傷機能を獲得させ、若い表現型を維持することができる。
【0253】
異なる免疫学的効果をもたらすことが知られている様々な分子の組み合わせを担持する様々な抗原提示足場で抗原特異的CD8 T細胞を刺激した後、この抗原特異的CD8 T細胞の機能性ならびにCD28マーカーおよびPD-1マーカーの発現を調べるために、2つの実験を行った。これらの刺激を、CD8 T細胞に正の刺激を与えることが知られており、先の実験で検証した(図4~12参照)分子の組み合わせを担持する基準としての抗原提示足場と比較した。
【0254】
1:10:5:5:5の組成比率の抗原提示足場および1:8:8:8の組成比率の抗原提示足場をこれらの実験で使用して、健常ドナー由来のHLA-A2 EBV LMP2 CLG特異的CD8 T細胞を2週間増殖させた。
【0255】
1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:分子1:分子2)の組成比率の抗原提示足場を使用した実験において、21種の足場を作製した。これらはいずれも、同じpMHC分子とB7-2分子を1:10:5(足場:pMHC:B7-2)の比率で有し、さらにPD-L1、ICOS、OX40L、CD5、IL-1、IL-6およびIL-10の様々な組み合わせが5:5(分子1:分子2)の比率で結合されていた。これら21種の抗原提示足場を使用して増殖したHLA-A2 EBV LMP2 CLG特異的CD8 T細胞の機能性を図13に示す。1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の組成比率の基準足場を二連で示す。
【0256】
同様に、1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:分子1)の組成比率で別の足場を構築した。計7種の抗原提示足場を構築した。これらの抗原提示足場は、同じpMHC特異性とIL-2を1:8:8(足場:pMHC:IL-2)の比率で有し、さらにPD-L1、ICOS、OX40L、CD5、IL-1、IL-6およびIL-10の様々な組み合わせが8の比率(分子1)で結合されていた。7種の抗原提示足場をそれぞれ使用して増殖した特異的T細胞の数およびHLA-A2 EBV LMP2 CLG特異的CD8 T細胞の機能性を図14に示す。1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率の基準足場を二連で示す。
【0257】
結論:(図13および図14)これらの実験では、抗原提示足場上の様々な分子が、T細胞に適切な刺激を提供する相対的能力を有することから、T細胞が増殖し、PD1の低発現およびCD28の高発現と抗原認識時の多機能性サイトカイン応答(TNF-α、IFN-γおよびCD107a)とを特徴とする好適な機能的特性および表現型特性を獲得できることを実証する。3種すべての機能性マーカーを同時発現した場合(丸印3)、多機能性として解釈され、細胞が最も高い殺傷能を有することが示される。足場:pMHC:B7-2:IL-1:PD-L1の組み合わせを有する抗原提示足場および足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21(1:10:5:5:5)の組み合わせを有する抗原提示足場(図13A~B参照)、ならびに足場:pMHC:IL-2:IL-1の組み合わせを有する抗原提示足場および足場:pMHC:IL-2:IL-21(1:8:8:8)の組み合わせを有する抗原提示足場(図14A~B参照)を使用した場合、3種すべてのマーカーを同時に発現する抗原特異的CD8 T細胞の数が最大となる。
【0258】
結論:(図15)前記分析から、CD28およびPD1の相対的発現を測定した。足場:pMHC:B7-2:IL-10:IL-6(1:10:5:5:5)の組み合わせを有する抗原提示足場および足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21(1:10:5:5:5)の組み合わせを有する抗原提示足場(図15A参照)、ならびに足場:pMHC:IL-2:ICOS(1:8:8:8)の組み合わせを有する抗原提示足場および足場:pMHC:IL-2:IL-21(1:8:8:8)の組み合わせを有する抗原提示足場(図15B参照)を使用した場合、抗原特異的CD8 T細胞においてCD28の発現が最大となる。さらに、足場:pMHC:B7-2:ICOS:IL-10(1:10:5:5:5)の組み合わせを有する抗原提示足場および足場:pMHC:B7-2:PD-L1:IL-6(1:10:5:5:5)の組み合わせを有する抗原提示足場(図15A参照)、ならびに足場:pMHC:IL-2:IL-21(1:8:8:8)の組み合わせを有する抗原提示足場および足場:pMHC:IL-2:IL-1(1:8:8:8)の組み合わせを有する抗原提示足場(図15B参照)を使用した場合、抗原特異的CD8 T細胞においてPD-1の発現が最小となる。CD28の高発現およびPD1の低発現は、養子細胞療法用の細胞集団の特性として理想的である。
【0259】
T細胞の刺激に最適な足場とは、多機能特性が高く、増殖が良好で(特定の細胞の絶対数が多く)、CD28の発現が高く、かつPD1の発現が低い抗原特異的T細胞が得られる足場であると考えられる。これらの特徴を組み合わせた最も有望な足場は、IL-2、IL-15、IL-21、B7-2、ICOSおよび/またはIL-1とpMHCとの組み合わせを有する。
【0260】
実施例10:抗原特異的CD8 T細胞の刺激における様々な長さの足場(図16
抗原提示足場において主鎖としての様々な長さの足場の使用を調べた。250kDa、750kDaまたは2000kDaの足場を1:10:5:5:5(足場:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の比率で抗原提示足場の主鎖として使用し、健常ドナー由来のHLA-A2 EBV LMP2 CLG特異的CD8 T細胞を2週間刺激した。3種の足場の増殖能を比較するため、テトラマー染色によって特異的増殖の頻度を検出した。
【0261】
その他の実験では、いずれも250kDaの足場を使用した。使用する足場の長さが長いほど、より多くの分子を結合させることができ、その結果、TCRとpMHCの相互作用および刺激を増強できると考えられ、これによって、T細胞の表現型および機能性を増強することができると考えられる。あるいは、分子間により多くの空間があることから、足場が長いほどより良好に分子が分布することができ、T細胞の刺激を向上することができると考えられる。
【0262】
結論:(図16)この実験の結果、すべての抗原提示足場において、pMHC担持足場の制御によって抗原特異的T細胞が特異的に増殖されたことから、試験したデキストランの長さはいずれも、抗原提示足場において足場として使用できることが示された。750kDAの足場を使用した場合、特異的CD8 T細胞の頻度が最大となる。
【0263】
実施例11:単一の培養物における1つのドナー試料からの複数の抗原特異性の同時増大(図17A~B)
複数のT細胞特異性を同時に増大させたこと以外は、実施例1と実質的に同様にして、5種のウイルスに対して応答性を示す健常ドナー由来抗原特異的CD8 T細胞を同時に増殖させ、0日目(ベースライン)およびaAPC足場1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)を用いて14日間増殖した後の、抗原特異的T細胞の頻度を、MHCテトラマーを用いて測定した。
【0264】
図17Aでは、HLA-A2 EBV LMP2 FLY特異的CD8 T細胞およびHLA-A2 CMV pp65 NLV特異的CD8 T細胞を別々に増殖させるため、実施例1と実質的に同様にして、2つの培養物を樹立した。また、1/10の濃度の通常のaAPC足場と9/10の濃度のHLA非適合aAPCを使用してHLA-A2 EBV LMP2 FLY特異的CD8 T細胞およびHLA-A2 CMV pp65 NLV特異的CD8 T細胞を別々に増殖させた2つの培養物を調製し、前記2つの培養物と比較した。
【0265】
図17Bでは、5種の公知のウイルスに応答性を示す1名の健常ドナー由来の材料を出発材料として使用して、単一の培養物において5種すべての抗原特異性を同時に増大させた。この実験は、実施例1で使用した1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率を有し、異なる抗原特異性を有する5種のaAPC足場を1/10の濃度で使用し、これにHLA非適合aAPC足場を5/10の濃度で加えて、実施例1と実質的に同様にして行った。増殖の0日目(ベースライン)および14日目に、5種の特異性それぞれについて抗原特異的T細胞の頻度を、MHCテトラマーを用いて測定した。5種のウイルスに対する応答の特異性として、HLA-A2 FLU MP 58-66 GILに対する特異性、HLA-A2 EBV LMP2 FLYに対する特異性、HLA-A2 CMV pp65 NLVに対する特異性、HLA-A2 EBV BRLF1 YVLに対する特異性およびHLA-A2 CMV IE1 VLEに対する特異性をそれぞれ評価した。
【0266】
結論:(図17A~B)実施例11の結果から、抗原特異的T細胞(HLA-A2 EBV LMP2 FLY特異的CD8 T細胞およびHLA-A2 CMV pp65 NLV特異的CD8 T細胞)は、実施例1で使用したaAPC足場を1/10の濃度で使用し、かつ無関係なHLA非適合aAPC足場を9/10の濃度で加えた場合に、効率的に増殖させることができると結論付けられた(図17A)。また、単一のドナー材料由来の5種のウイルス応答は、複数のaAPC足場特異性を同時に使用することによって単一の培養物中で同時に効率的に増大させることができると結論付けられた(図17B)。
【0267】
実施例12:様々な大きさのaAPC足場ならびに様々な化学量論的量の足場、pMHCおよびサイトカインを用いた抗原特異的T細胞の増殖(図18A~B)
健常ドナー由来の抗原特異的CD8 T細胞を、実施例1と実質的に同様にして6つの培養物において同時に増殖させ、MHC多量体を使用して2週間増殖させた後に、特定の抗原特異性を有するT細胞の頻度を測定した。分子量が250KDaの足場、750KDaの足場および2000KDaの足場を使用し、2種類の足場:分子の比率でそれぞれ試験した。(A)1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率のaAPC足場、および(B)1:24:24:24(足場:pMHC:IL-2:IL-21)の組成比率のaAPC足場を使用した。
【0268】
結論:(図18A~B)実施例12の結果から、250KDa、750KDa、2000KDaなどの様々な分子量の足場を使用し、それぞれの分子量の足場の組成比率を、足場:pMHC:IL-2:IL-21=1:8:8:8(図18A)または足場:pMHC:IL-2:IL-21=1:24:24:24(図18B)とした場合、抗原特異的CD8 T細胞を効率的に増殖させることができると結論付けられた。
【0269】
実施例13:aAPC足場を用いたC57BL/6マウスにおけるOVA特異的CD8 T細胞のインビボ増殖(図19
4匹のC57BL/6マウスにオボアルブミン(OVA)およびポリICをワクチン接種して、OVA由来ペプチドSIINFEKL(配列番号1)を提示するC57BL/6由来H2-Kbアレルに特異性が制限された抗原特異的T細胞応答を樹立した。ワクチン接種前、OVA+ポリICによる腹腔内ワクチン接種後7日目および19日目、ならびにH2-Kb/SIINFEKLテトラマーを用いたブースター免疫後7日目(28日目)に、OVA特異的CD8 T細胞の頻度を測定した。ワクチン接種後21日目に、4種のブースター免疫を行った。マウス1にはPBSを静脈内投与した。マウス2にはOVAを腹腔内投与した。マウス3にはaAPC足場1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)とH2-Kb/SIINFEKLとを静脈内投与した。マウス4には、aAPC足場1:8:8:8の構築に使用したのと同じ濃度でH2-Kb/SIINFEKLを静脈内投与した(すなわちマウス3に対するブースター免疫と同様とした)。すなわち、マウス4において、pMHC複合体の一部として抗原性ペプチドを投与したが、aAPC足場は投与しなかった。
【0270】
結論:(図19)実施例13において、aAPC足場をインビボで使用できることが示され、このようなインビボでの使用は安全であり(毒性は観察されず)、aAPCがインビボにおいて抗原特異的T細胞応答を効率的に増大できることが示された(図19)。
【0271】
実施例14:aAPC足場を用いた抗原特異的CD8 T細胞の増殖とペプチドパルス単球由来樹状細胞の増殖の比較(図20A~D)
PromoCell社の樹状細胞分化プロトコルおよび樹状細胞分化培地を使用して、ヒト単球(hMo)からCD83+成熟単球由来樹状細胞(moDC)への成熟をインビトロで促進させて、HLA-A0201 CMV陽性ドナー由来の自己PBMCから樹状細胞を作製した。PromoCell社の単球接着培地(C-28051)およびPromoCell社の樹状細胞分化培地(C-28050)を併用して、単球をmoDCに分化させた。簡単に説明すると、PromoCell社の単球接着培地中に懸濁したPBMCを200万~300万個/cm2の密度で組織培養プレートに播種し、5%CO、37℃で1時間培養した。非接着細胞を除去して単球を回収した。未成熟moDCへの分化(0日目)は、Cytokine Pack moDCの1×成分A(100×で販売提供)を添加したPromoCell社の樹状細胞分化培地を加えて、5%CO、37℃で3日間インキュベートすることによって開始した。3日目に、細胞から培地を吸引除去し、Cytokine Pack moDCの1×成分Aを添加したPromoCell社の新鮮な樹状細胞分化培地を細胞に加えて培地交換を行った。6日目に、Cytokine Pack moDCの1×成分B(100×で販売提供)全量を添加し、5%CO、37℃でさらに40時間インキュベートすることによって、moDCの成熟プロセスを完了した。moDCはトリパンブルー染色で計数した。
【0272】
50μg/mlのペプチド(CMV pp65 NLVPMVATV(配列番号2))を含むX-VIVO培地中に細胞を37,500個/mLの密度で懸濁し、37℃で4時間培養することによってペプチドパルスmoDCを作製した。インキュベーション終了後、X-VIVO培地中で細胞を1回洗浄し、50μLのX-VIVO+5%中に懸濁した。
【0273】
健常ドナー由来のPBMC100,000個からHLA-A201/CMV pp65 NLVPMVATVペプチド特異的T細胞の増殖を開始した。増殖開始時のHLA-A201/CMV pp65 NLVPMVATV陽性T細胞の密度は0.01%であった。4つの条件下、すなわち、(A)遊離MHC複合体(HLA-A201/NLVPMVATV)、遊離IL-2および遊離IL-21の存在下、(B)1:8:8:8(足場:pMHC:IL-2:IL-21)(HLA-A201/NLVPMVATV)の組成比率のaAPC足場の存在下、(C)最終濃度120U/mlのIL-7(1日目)および最終濃度120U/mlのIL-12(2日目)を添加した同じドナー由来の37,500個の非パルスmoDCの存在下、または(D)最終濃度120U/mlのIL-7(1日目)および最終濃度120U/mlのIL-12(2日目)を添加し、NLVPMVATVペプチドでパルスした同じドナー由来の37,500個のmoDCの存在下で同時に増殖を行った。いずれの条件においても、5%ヒト血清を添加したX-VIVO培地中で2週間培養を行った。2週間後、HLA-A201/CMV pp65 NLVPMVATVペプチド特異的T細胞の増殖をMHCテトラマー染色によって追跡した。代表的なドットプロットを図20に示す。
【0274】
結論:(図20)実施例14において、aAPC足場を用いた抗原特異的CD8 T細胞の増殖は、ペプチドパルスmoDCを使用した場合(図20D、2.8%、280倍の増殖)と比較して、有意(約2倍)かつより効率的に抗原特異的T細胞を増殖できる(図20B、5.5%、550倍の増殖)ことが実証された。
【0275】
引用文献
・WO2002072631
・WO2009003492
・WO2009094273
【0276】
項目
以下の項目において本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの項目に限定されない。
【0277】
項1.人工抗原提示細胞(aAPC)足場であって、以下の鋳型分子:
i.抗原性ペプチドを含む少なくとも1種の主要組織適合遺伝子複合体分子(pMHC)、
ii.IL-21、IL-2、IL-15、IL-1、IL-6、IL-10およびIL-7からなる群から選択される少なくとも1種のサイトカイン、
iii.任意で含まれ、B7.2(CD86)、B7.1(CD80)、CD40、ICOSおよびPD-L1からなる群から選択される少なくとも1種の共刺激分子、ならびに
iv.任意で含まれる少なくとも1個のCD47分子
が結合したポリマー主鎖を含むaAPC足場。
【0278】
項2.前記鋳型分子が、IL-21、IL-2、IL-15、IL-1、IL-6、IL-10およびIL-7からなる群から選択される少なくとも2種のサイトカインを含む、項1に記載のaAPC足場。
【0279】
項3.前記ポリマー主鎖上に存在するカップリング剤と前記鋳型分子上のアフィニティータグの間の非共有結合性相互作用を介して、該鋳型分子が該ポリマー主鎖に結合されている、項1または2に記載のaAPC足場。
【0280】
項4.前記カップリング剤がストレプトアビジンであり、前記アフィニティータグがビオチンである、項3に記載のaAPC足場。
【0281】
項5.前記ポリマー主鎖が、多糖類、ビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、strep-tactinおよびポリストレプトアビジンからなる群から選択される、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0282】
項6.前記ポリマー主鎖が多糖類である、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0283】
項7.前記多糖類がデキストランである、項5または6に記載のaAPC足場。
【0284】
項8.前記デキストランの分子量が、50~3000kDa、たとえば100~2500kDa、たとえば250~2500kDaである、項7に記載のaAPC足場。
【0285】
項9.前記デキストランの分子量が、250kDa、270kDa、750kDaおよび2000kDaからなる群から選択される、項7または8に記載のaAPC足場。
【0286】
項10.前記少なくとも1種のpMHC分子が、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシまたはトリの分子などの、脊椎動物のMHC分子である、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0287】
項11.前記脊椎動物のMHC分子がヒトの分子である、項10に記載のaAPC足場。
【0288】
項12.前記少なくとも1種のpMHC分子が、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、MHCクラスIII分子、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびMR1からなる群から選択される、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0289】
項13.前記少なくとも1種のpMHC分子がMHCクラスI分子である、項12に記載のaAPC足場。
【0290】
項14.前記pMHCに含まれる前記抗原性ペプチドが、がん関連エピトープまたはウイルスエピトープである、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0291】
項15.前記がん関連エピトープが、ウイルス誘発がんに関連するウイルスエピトープである、項14に記載のaAPC足場。
【0292】
項16.前記ウイルスエピトープが、ヒトパピローマウイルス(HPV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびインフルエンザウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来するものである、項14または15に記載のaAPC足場。
【0293】
項17.前記pMHC分子がすべて同一のものであり、抗原性ペプチドの単一バリアントのみを提示する、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0294】
項18.各ポリマー主鎖が、少なくとも5個のpMHC分子、たとえば少なくとも8個のpMHC分子、たとえば少なくとも10個のpMHC分子、たとえば少なくとも20個のpMHC分子、たとえば少なくとも30個のpMHC分子、たとえば少なくとも40個のpMHC分子、たとえば少なくとも50個のpMHC分子、またはたとえば少なくとも100個のpMHC分子を含む、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0295】
項19.固体担体上に固相化されている、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0296】
項20.前記固体担体が、ビーズ、ウェルプレート、粒子、マイクロアレイおよび膜からなる群から選択される、項19に記載のaAPC足場。
【0297】
項21.前記鋳型分子が少なくともIL-21を含む、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0298】
項22.前記鋳型分子が、少なくともIL-15およびIL-21を含む、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0299】
項23.前記鋳型分子が少なくともB7.2(CD86)を含む、先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0300】
項24.
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記共刺激分子がB7.2(CD86)であり、かつ
iii.前記サイトカインがIL-15およびIL-21である、
先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0301】
項25.前記デキストラン主鎖上のpMHCとIL-15とIL-21とB7.2(CD86)の比率が2:1:1:1である、項24に記載のaAPC足場。
【0302】
項26.前記デキストラン主鎖とpMHCとIL-15とIL-21とB7.2(CD86)の比率が1:10:5:5:5である、項24または25に記載のaAPC足場。
【0303】
項27.前記鋳型分子が、少なくともIL-6およびIL-10を含む、項1~20のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0304】
項28.
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記共刺激分子がB7.2(CD86)であり、かつ
iii.前記サイトカインがIL-6およびIL-10である、
項27に記載のaAPC足場。
【0305】
項29.前記デキストラン主鎖上のpMHCとIL-6とIL-10とB7.2(CD86)の比率が2:1:1:1である、項28に記載のaAPC足場。
【0306】
項30.前記デキストラン主鎖とpMHCとIL-6とIL-10とB7.2(CD86)の比率が1:10:5:5:5である、項28または29に記載のaAPC足場。
【0307】
項31.
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、かつ
ii.前記サイトカインがIL-2およびIL-21である、
項1~21のいずれか1項に記載のaAPC足場。
【0308】
項32.前記デキストラン主鎖上のpMHCとIL-2とIL-21の比率が1:1:1である、
項31に記載のaAPC足場。
【0309】
項33.前記デキストラン主鎖とpMHCとIL-2とIL-21の比率が1:8:8:8である、項31または32に記載のaAPC足場。
【0310】
項34.前記ポリマー主鎖が少なくともIL-1およびPD-L1を含む、項1に記載のaAPC足場。
【0311】
項35.
i.前記ポリマー主鎖がデキストランであり、
ii.前記共刺激分子がB7.2(CD86)およびPD-L1であり、かつ
iii.前記サイトカインがIL-1である、
項34に記載のaAPC足場。
【0312】
項36.前記デキストラン主鎖上のpMHCとIL-1とB7.2(CD86)とPD-L1の比率が2:1:1:1である、項35に記載のaAPC足場。
【0313】
項37.前記デキストラン主鎖とpMHCとIL-1とB7.2(CD86)とPD-L1の比率が1:10:5:5:5である、項35または36に記載のaAPC足場。
【0314】
項38.インビトロにおいてT細胞の刺激と増殖を同時に行う方法であって、
i.T細胞を含む試料を提供する工程、
ii.先行する項のいずれか1項に記載のaAPC足場を含む溶液に前記試料を接触させる工程、
iii.前記aAPC足場に対して特異性を有するT細胞の刺激と増殖を培養物中で行う工程、および
iv.前記培養物から工程iii)のT細胞を回収することにより、増殖した抗原特異的T細胞集団を得る工程
を含む方法。
【0315】
項39.工程ii)のaAPC足場を含む前記溶液が、前記試料と接触させる前に濾過されたものである、項38に記載の方法。
【0316】
項40.aAPC足場を含む前記溶液が、分子量カットオフフィルターを通して遠心濾過されたものである、項39に記載の方法。
【0317】
項41.工程i)の前記試料が、異なる特異性を有する少なくとも2種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも5種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも10種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも15種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも20種のT細胞、またはたとえば異なる特異性を有する少なくとも50種のT細胞を含む、項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【0318】
項42.aAPC足場を含む前記溶液が、少なくとも2種のaAPC足場、たとえば少なくとも5種のaAPC足場、たとえば少なくとも10種のaAPC足場、たとえば少なくとも15種のaAPC足場、たとえば少なくとも20種のaAPC足場、またはたとえば少なくとも20種のaAPC足場を含む、項38~41のいずれか1項に記載の方法。
【0319】
項43.異なる特異性を有する少なくとも2種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも5種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも10種のT細胞、たとえば異なる特異性を有する少なくとも15種のT細胞、またはたとえば異なる特異性を有する少なくとも20種のT細胞を、同じ試料中で同時に刺激し、増殖させる、項38~42のいずれか1項に記載の方法。
【0320】
項44.
i.異なる特異性を有する少なくとも5種のT細胞を含む試料を提供する工程、
ii.少なくとも5種のaAPC足場を含む溶液に前記試料を接触させる工程、
iii.前記少なくとも5種のaAPC足場のそれぞれに対して特異性を有する前記少なくとも5種のT細胞の刺激と増殖を培養物中で同時に行う工程、および
iv.前記培養物から工程iii)のT細胞を回収することにより、異なる特異性を有する少なくとも5種のT細胞を含む増殖した抗原特異的T細胞集団を得る工程
を含む、項38~43のいずれか1項に記載の方法。
【0321】
項45.前記試料が、末梢血単核細胞、腫瘍、組織、骨髄、生検試料、血清、血液、血漿、唾液、リンパ液、胸膜液、脳脊髄液および滑液からなる群から選択される、項38~44のいずれか1項に記載の方法。
【0322】
項46.前記T細胞が、CD8 T細胞、CD4 T細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、γδT細胞および自然免疫型粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞からなる群から選択される、項38~47のいずれか1項に記載の方法。
【0323】
項47.前記T細胞がCD8 T細胞である、項38~46のいずれか1項に記載の方法。
【0324】
項48.前記T細胞を、臨床的意義のある数にまで増殖させる、項38~47のいずれか1項に記載の方法。
【0325】
項49.前記pMHCに含まれる前記抗原性ペプチドが、がん関連エピトープまたはウイルスエピトープである、項38~48のいずれか1項に記載の方法。
【0326】
項50.前記がん関連エピトープが、ウイルス誘発がんに関連するウイルスエピトープである、項49に記載の方法。
【0327】
項51.前記ウイルスエピトープが、ヒトパピローマウイルス(HPV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびインフルエンザウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来するものである、項49または50に記載の方法。
【0328】
項52.項38~51のいずれか1項に記載の方法により得られる増殖したT細胞集団。
【0329】
項53.医薬品として使用するための、項38~51のいずれか1項に記載の方法により得られる増殖したT細胞集団。
【0330】
項54.がんまたはウイルス疾患の治療において使用するための、項38~51のいずれか1項に記載の方法により得られる増殖したT細胞集団。
【0331】
項55.前記がんがウイルス疾患に関連したものである、項54に記載の増殖したT細胞集団。
【0332】
項56.前記ウイルス疾患が、ヒトパピローマウイルス(HPV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびインフルエンザウイルスからなる群から選択されるウイルスに関連したものである、項54または55に記載の増殖したT細胞集団。
図1A
図1B
図2
図3
図4A-D】
図4E-F】
図5A-B】
図5C-D】
図6
図7A
図7B-D】
図8A-B】
図8C-D】
図9A-B】
図9C-D】
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
【配列表】
0007423684000001.app