(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】車両用シートフレーム及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20240122BHJP
B60N 2/30 20060101ALI20240122BHJP
B60N 2/12 20060101ALI20240122BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240122BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/30
B60N2/12
B60N2/90
B60N2/20
(21)【出願番号】P 2022103589
(22)【出願日】2022-06-28
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓司
(72)【発明者】
【氏名】李 鎬▲必▼
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-066248(JP,A)
【文献】特開2004-306923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/30
B60N 2/12
B60N 2/90
B60N 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体床部に取り付けられる床取付部と、
車両用シートのシートクッションの骨格を構成するクッションフレームと、
前記車両用シートのシートバックの骨格を構成するバックフレームと、
前記クッションフレームをチルトダウン可能に前記床取付部に連結したクッション連結機構と、
前記床取付部と、前記バックフレームとの間に介在したリクライナを有し、前記バックフレームを前倒し及び後倒し可能に前記床取付部に連結したリクライニング機構と、
前記クッションフレームと前記バックフレームとにそれぞれ回転可能に連結され、前記バックフレームの前倒しに連動させて前記クッションフレームをチルトダウンさせる一方、前記クッションフレームが通常使用位置に位置する状態のままでの前記バックフレームの後倒しを許容するヒンジリンクと、
を備え、
前記クッション連結機構は、
前記クッションフレームの前部と前記床取付部とにそれぞれ回転可能に連結されたフロントリンクと、
前記クッションフレームの後部と前記床取付部とをチルトダウン可能に連結したリヤ連結部と、
を有する車両用シートフレーム。
【請求項2】
前記リヤ連結部は、前記クッションフレームの後部と前記床取付部とにそれぞれ回転可能に連結されたリヤリンクである請求項1に記載の車両用シートフレーム。
【請求項3】
前記リヤ連結部は、
前記クッションフレームの後部に設けられたガイドピンと、
前記床取付部に設けられ、前記ガイドピンが摺動可能に挿入されたガイド溝と、
を有する請求項1に記載の車両用シートフレーム。
【請求項4】
前記クッションフレームは、前記バックフレームの前倒し時に前記ヒンジリンクと係合する係合部を有し、前記係合によって前記クッションフレームがチルトダウン方向に変位する請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シートフレーム。
【請求項5】
前記クッションフレームを前記通
常使用位置へ付勢する付勢部材を有する請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シートフレーム。
【請求項6】
前記クッションフレームに対する前記ヒンジリンクの回転を規制する規制位置と、当該規制を解除する解除位置との間で回転可能に前記クッションフレームに取り付けられたロックを有する請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シートフレーム。
【請求項7】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シートフレームを有し、当該車両用シートフレームが備える前記クッションフレーム及び前記バックフレームによってシートクッション及びシートバックの各骨格が構成された車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及びそのフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1にはチルドダウン可能な車両用シートが開示されている。この車両用シートでは、シートクッションの前部が前側のリンクを介して車体床部に連結されており、シートクッションの後部がロアリンク及びアッパリンクを介してシートバックに連結されている。この車両用シートでは、シートバックを前方へ倒し込む格納操作に連動してシートクッションが前方へ移動しながら下降するとともに、シートバックがシートクッション上に重畳された格納状態となる。一方、シートバックを通常の起立位置から後方へ倒す後倒し時には、シートクッションがシートバックの動きに連動せず、シートクッションが通常使用位置に保持される。これにより、チルトダウンシートであっても、シートバックの後倒し時におけるシートクッションの変位を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、シートクッションの前部が前側のリンクを介して車体床部に連結される一方、シートクッションの後部がロアリンク、アッパリンク及びシートバックを介して車体床部に連結されている。このため、例えば車両の前面衝突時にシートクッションに対して車両前方への過大な荷重が加わると、ロアリンク及びアッパリンクが不用意に上方側へ回転し、シートクッションの後部が上方側(すなわち車体床部から離れる方向)へ不用意に浮き上がる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、チルトダウン可能な構成において、シートバックの後倒し時におけるシートクッションの変位を防止し且つシートクッション後部の不用意な浮き上りを防止することができる車両用シートフレーム及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートフレームは、車体床部に取り付けられる床取付部と、車両用シートのシートクッションの骨格を構成するクッションフレームと、前記車両用シートのシートバックの骨格を構成するバックフレームと、前記クッションフレームをチルトダウン可能に前記床取付部に連結したクッション連結機構と、前記バックフレームを前倒し及び後倒し可能に前記床取付部に連結したリクライニング機構と、前記クッションフレームと前記バックフレームとにそれぞれ回転可能に連結され、前記バックフレームの前倒しに連動させて前記クッションフレームをチルトダウンさせる一方、前記クッションフレームが通常使用位置に位置する状態のままでの前記バックフレームの後倒しを許容するヒンジリンクと、を備え、前記クッション連結機構は、前記クッションフレームの前部と前記床取付部とにそれぞれ回転可能に連結されたフロントリンクと、前記クッションフレームの後部と前記床取付部とをチルトダウン可能に連結したリヤ連結部と、を有している。
【0007】
第1の態様の車両用シートフレームでは、床取付部が車体床部に取り付けられる。車両用シートのシートクッションの骨格を構成するクッションフレームは、クッション連結機構によってチルトダウン可能に床取付部に連結されている。同車両用シートのシートバックの骨格を構成するバックフレームは、リクライニング機構によって前倒し及び後倒し可能に床取付部に連結されている。クッションフレームとバックフレームとにそれぞれ回転可能に連結されたヒンジリンクは、バックフレームの前倒しに連動させてクッションフレームをチルトダウンさせる一方、クッションフレームが通常使用位置に位置する状態のままでのバックフレームの後倒しを許容する。よって、シートバックの後倒し時におけるシートクッションの変位を防止することができる。しかも、上記のクッション連結機構は、クッションフレームの前部と床取付部とにそれぞれ回転可能に連結されたフロントリンクと、クッションフレームの後部と床取付部とをチルトダウン可能に連結したリヤ連結部とを有している。このリヤ連結部によってクッションフレームの後部と床取付部とが繋がれるので、シートクッション後部の不用意な浮き上りを防止することができる。
【0008】
第2の態様の車両用シートフレームは、第1の態様において、前記リヤ連結部は、前記クッションフレームの後部と前記床取付部とにそれぞれ回転可能に連結されたリヤリンクである。
【0009】
第2の態様の車両用シートフレームでは、クッションフレームの後部と床取付部とにそれぞれ回転可能に連結されたリヤリンクによって、クッションフレームの後部と床取付部とが繋がれる。これにより、簡素な構成でシートクッション後部の不用意な浮き上りを防止することができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートフレームは、第1の態様において、前記リヤ連結部は、前記クッションフレームの後部に設けられたガイドピンと、前記床取付部に設けられ、前記ガイドピンが摺動可能に挿入されたガイド溝と、を有する。
【0011】
第3の態様の車両用シートフレームでは、クッションフレームの後部に設けられたガイドピンが、床取付部に設けられたガイド溝に摺動可能に挿入されることで、クッションフレームの後部と床取付部とが繋がれる。これにより、簡素な構成でシートクッション後部の不用意な浮き上りを防止することができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートフレームは、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様において、前記クッションフレームは、前記バックフレームの前倒し時に前記ヒンジリンクと係合する係合部を有し、前記係合によって前記クッションフレームがチルトダウン方向に変位する。
【0013】
第4の態様の車両用シートフレームによれば、バックフレームの前倒し時には、クッションフレームに設けられた係合部とヒンジリンクが係合することによって、クッションフレームがチルトダウン方向に変位する。これにより、簡素な構成でバックフレームとクッションフレームとを連動させることができる。
【0014】
第5の態様の車両用シートフレームは、第1の態様~第4の態様の何れか1つの態様において、前記クッションフレームを前記通常使用位置へ付勢する付勢部材を有する。
【0015】
第5の態様の車両用シートフレームによれば、付勢部材によってクッションフレームが通常使用位置へ付勢されるので、チルトダウン状態のクッションフレームを通常使用位置へ復帰させるのが容易になる。
【0016】
第6の態様の車両用シートフレームは、第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様において、前記クッションフレームに対する前記ヒンジリンクの回転を規制する規制位置と、当該規制を解除する解除位置との間で回転可能に前記クッションフレームに取り付けられたロックを有する。
【0017】
第6の態様の車両用シートフレームでは、クッションフレームに回転可能に取り付けられたロックを解除位置から規制位置へと回転させると、クッションフレームに対するヒンジリンクの回転が規制される。これにより、ヒンジリンクの不用意な回転を防止することができる。
【0018】
第7の態様の車両用シートは、第1の態様~第6の態様の何れか1つの態様の車両用シートフレームを有し、当該車両用シートフレームが備える前記クッションフレーム及び前記バックフレームによってシートクッション及びシートバックの各骨格が構成されている。
【0019】
第7の態様の車両用シートでは、車両用シートフレームが備えるクッションフレーム及びバックフレームによってシートクッション及びシートバックの各骨格が構成されている。この車両用シートフレームは、第1の態様~第6の態様の何れか1つの態様のものであるため、前述した作用及び効果が得られる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートフレーム及び車両用シートでは、チルトダウン可能な構成において、シートバックの後倒し時におけるシートクッションの変位を防止し且つシートクッション後部の不用意な浮き上りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る車両用シートの一部を示す側面図であり、リクライニング機構の初段ロック状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用シートの格納途中の状態を示す
図1に対応した側面図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用シートの格納状態を示す
図1に対応した側面図である。
【
図4】第1実施形態に係る車両用シートのフルリクライニング状態を示す
図1に対応した側面図である。
【
図5】第1実施形態に係る車両用シートフレームの一部を示す斜視図であり、リクライニング機構の初段ロック状態を示す図である。
【
図6】
図5の一部を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図7】第1実施形態の第1変形例に係る車両用シートフレームの一部を示す側面図であり、リクライニング機構の初段ロック状態を示す図である。
【
図8】第1変形例に係る車両用シートフレームの格納状態を示す
図7に対応した側面図である。
【
図9】第1変形例に係る車両用シートフレームのフルリクライニング状態を示す
図7に対応した側面図である。
【
図10】第1実施形態の第2変形例に係る車両用シートを示す側面図であり、リクライニング機構の初段ロック状態を示す図である。
【
図11】
図10に示される車両用シートの一部を示す断面図である。
【
図12】第1実施形態の第2変形例に係る車両用シートを示す側面図であり、
図10に示される初段ロック状態よりもシートバックが若干後傾された状態を示す図である。
【
図13】
図12に示される車両用シートの一部を示す断面図である。
【
図14】第2実施形態に係る車両用シートの一部を示す側面であり、リクライニング機構の初段ロック状態を示す図である。
【
図15】第2実施形態に係る車両用シートの格納状態を示す
図14に対応した側面図である。
【
図16】第2実施形態に係る車両用シートのフルリクライニング状態を示す
図14に対応した側面図である。
【
図17】第3実施形態に係る車両用シートの一部を示す斜視図である。
【
図18】第4実施形態に係る車両用シートの一部を示す側面図であり、ロックが規制位置に位置する状態を示す図である。
【
図19】ロックが解除位置に位置する状態を示す
図18に対応した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、
図1~
図6を参照して本発明の第1実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH、RH及びUPは、車両用シート10の前方、左方、右方及び上方をそれぞれ示している。
【0023】
図1~
図5に示されるように、第1実施形態に係る車両用シート10は、車両の乗員が着座するシートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14とを備えている。この車両用シート10は、シートクッション12の骨格を構成するクッションフレーム22と、シートバック14の骨格を構成するバックフレーム32とを有する車両用シートフレーム20を備えている。この車両用シートフレーム20は、クッションフレーム22及びバックフレーム32の他、車体床部Fに取り付けられた床取付部40と、クッションフレーム22をチルトダウン可能に床取付部40に連結したクッション連結機構60と、バックフレーム32を前倒し及び後倒し可能に床取付部40に連結したリクライニング機構56と、クッションフレーム22とバックフレーム32とにそれぞれ回転可能に連結された左右一対のヒンジリンク78(右側のヒンジリンク78は図示省略)と、を含んで構成されている。
【0024】
図5に示されるように、クッションフレーム22は、左右一対のサイドフレーム24と、左右のサイドフレーム24の前端部を左右方向に繋いだフロントフレーム26と、左右のサイドフレーム24の後端部を左右方向に繋いだリヤフレーム28とを有している。左右のサイドフレーム24は、シートクッション12の左右の側部において前後方向に延在している。フロントフレーム26は、シートクッション12の前部において左右方向に延在している。リヤフレーム28は、シートクッション12の後部において左右方向に延在している。左右のサイドフレーム24及びフロントフレーム26は例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、リヤフレーム28は、例えば金属製のパイプ材によって構成されている。リヤフレーム28の左右方向中間部は、後方側へ略コ字状(略U字状)に曲げられている。
【0025】
バックフレーム32は、左右一対のサイドフレーム34と、左右のサイドフレーム34の上端部を左右方向に繋いだ図示しないアッパフレームと、左右のサイドフレーム34の下端部を左右方向に繋いだロアフレーム36と、を有している。左右のサイドフレーム34は、シートバック14の左右の側部において上下方向に延在している。アッパフレームは、シートバック14の上部において左右方向に延在しており、ロアフレーム36は、シートバック14の下部において左右方向に延在している。左右のサイドフレーム34及びロアフレーム36は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、アッパフレームは、例えば金属製のパイプ材によって構成されている。
【0026】
床取付部40は、左右一対のスライドレール42と、左右一対のフロントライザ48と、左右一対のリヤライザ50と、Bブラケット52と、連結パイプ54とによって構成されている。左右のスライドレール42は、クッションフレーム22の左右のサイドフレーム24の下方に配置されている。各スライドレール42はそれぞれ、車体床部Fに固定されたロアレール44と、ロアレール44に対して前後方向にスライド可能に支持されたアッパレール46とを備えている。ロアレール44及びアッパレール46は、前後方向を長手とする長尺状をなしている。
【0027】
左右のフロントライザ48、左右のリヤライザ50及びBブラケット52は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、連結パイプ54は、例えば金属製のパイプ材によって構成されている。なお、左右のフロントライザ48と左右のリヤライザ50とが一体に形成された構成にしてもよいし、左側のリヤライザ50とBブラケット52とが一体に形成された構成にしてもよい。左右のフロントライザ48は、左右のアッパレール46の前部の上面に固定されており、左右のリヤライザ50は、左右のアッパレール46の後部の上面に固定されている。左右のリヤライザ50は、左右のフロントライザ48よりも上方側へ延びている。左側のリヤライザ50の上部には、Bブラケット52が固定されている。
【0028】
Bブラケット52は、左右方向を板厚方向とする板状をなしている。Bブラケット52の下部は、左側のリヤライザ50の上部に対して左右方向外側から重ね合わされており、ボルト締結によって左側のリヤライザ50に固定されている。左右のリヤライザ50は、左右方向を軸方向として配置された連結パイプ54によって左右方向に繋がれている。Bブラケット52の上部は、バックフレーム32の左側のサイドフレーム34の下端部に対して左右方向外側から対向している。Bブラケット52と左側のサイドフレーム34との間には、リクライニング機構56の主要部を構成するリクライナ58が配置されている。このリクライナ58を介して左側のサイドフレーム34の下端部がBブラケット52に連結されている。右側のサイドフレーム34の下端部は、右側のリヤライザ50に対してリクライナ58と同軸の軸線回りに回転可能に連結されている。
【0029】
上記のリクライニング機構56は、リクライナ58のロックを解除するための図示しないロック解除レバーを有している。ロック解除レバーは、例えばシートクッション12の後部の側方やシートバック14の肩口等に設けられる。ロック解除レバーが操作されてリクライナ58のロックが解除されている状態では、シートバック14を床取付部40に対してリクライナ58の軸心回りに回転(傾倒)可能となるように構成されている。具体的には、シートバック14は、
図3に示される前倒し位置と
図4に示されるフルリクライニング位置との間で傾倒可能とされている。
図1に示される初段ロック位置と
図3に示される前倒し位置との間にシートバック14が位置する状態では、リクライナ58のロックがかからないように構成されている。
図1に示される初段ロック位置と
図4に示されるフルリクライニング位置との間にシートバック14が位置する状態では、シートバック14の傾斜角度をリクライナ58によって多段階に調整可能となる。
【0030】
クッション連結機構60は、クッションフレーム22の左右のサイドフレーム24の前部と左右のフロントライザ48とにそれぞれ回転可能に連結された左右一対のフロントリンク62と、左右のサイドフレーム24の後部と左右のリヤライザ50とにそれぞれ回転可能に連結された左右一対のリヤリンク64とを備えている。左右のリヤリンク64は、本発明における「リヤ連結部」に相当する。左右のフロントリンク62及び左右のリヤリンク64は、例えばプレス成形された金属製の板材によって長尺状に形成されている。
【0031】
左右のフロントリンク62の長手方向一端部はそれぞれ、左右のサイドフレーム24の前部に対して左右方向を軸線方向とする図示しない左右の連結軸回りに回転可能に連結されている。左右のフロントリンク62の長手方向他端部はそれぞれ、左右のフロントライザ48に対して左右方向を軸線方向とする左右の連結軸66回りに回転可能に連結されている。左右のリヤリンク64の長手方向一端部はそれぞれ、左右のサイドフレーム24の後部に対して左右方向を軸線方向とする左右の連結軸68回りに回転可能に連結されている。左右のリヤリンク64の長手方向他端部はそれぞれ、左右のリヤライザ50に対して左右方向を軸線方向とする左右の連結軸70回りに回転可能に連結されている。このクッション連結機構60は、シートクッション12を床取付部40に対して
図1及び
図4に示される通常使用位置から
図3に示される格納位置へとチルトダウン可能に連結している。
【0032】
シートクッション12が通常使用位置に位置する状態では、連結パイプ54に固定された左右一対の支持部72によってリヤフレーム28が下方から支持される。左右の支持部72は、溶接等の手段で連結パイプ54に固定された左右一対の支持ブラケット74と、左右の支持ブラケット74の上面に固定された左右一対のゴムダンパ76とによって構成されている。左右のゴムダンパ76は、ゴム等の弾性体によって構成されており、例えばビス止めによって左右の支持ブラケット74に固定されている。通常使用位置に位置するシートクッション12のリヤフレーム28は、左右のゴムダンパ76の上面に接触し、左右のゴムダンパ76によって弾性的に支持される。この状態では、左右のフロントリンク62及び左右のリヤリンク64が若干後傾した姿勢となる。なお、ゴムダンパ76の代わりに、金属製又は樹脂製のダンパを用いてもよい。また、左右の支持部72の代わりに、フロントリンク62又はリヤリンク64の回転を制限するストッパを設けることで、シートクッション12を通常使用位置に保持する構成にしてもよい。
【0033】
左右のヒンジリンク78は、例えばプレス成形された金属製の板材によって長尺板状に形成されており、シートバック14の左右のサイドフレーム34の下端部に対して左右方向の外側に配置さている。左右のヒンジリンク78の長手方向一端部はそれぞれ、シートバック14の左右のサイドフレーム34の下端部に対して左右方向を軸線方向とする左右の連結軸80回りに回転可能に連結されている。左右のヒンジリンク78の長手方向他端部はそれぞれ、シートクッション12の左右のサイドフレーム24の後端部に対して左右方向を軸線方向とする左右の連結軸82回りに回転可能に連結されている。
【0034】
左右のサイドフレーム24のうちの一方(ここでは左側のサイドフレーム24)の後端部には、左右方向内側へ突出した係合部24Aが設けられている。この係合部24Aは、シートクッション12が通常使用位置に位置し且つシートバック14が初段ロック位置に位置する状態で、ヒンジリンク78の下部に対して前方側から接触又は近接して対向する。リクライナ58のロックが解除され、シートバック14が初段ロック位置から前倒し位置へと前倒しされる際には、ヒンジリンク78によって係合部24Aが前方側へ押されることにより、シートバック14が通常使用位置から格納位置側へと変位するように構成されている。これにより、左右のフロントリンク62及び左右のリヤリンク64がそれぞれ前傾した姿勢となる。この際、左右のヒンジリンク78を介してシートバック14に連結されたシートクッション12は、バックフレーム32の前倒しに連動して格納位置へと変位(チルトダウン)するように構成されている。
【0035】
図1に示されるように、シートクッション12が通常使用位置に位置する状態では、シートクッション12のリヤフレーム28が左右の支持部72に当接することにより、通常使用位置よりも後方側へのシートクッション12の変位が規制されている。この状態では、左右の連結軸82がリクライナ58と同軸上に配置されることにより、初段ロック位置よりフルリクライニング位置側へのシートバック14の後倒しが許容されるように構成されている(
図4参照)。つまり、シートバック14が初段ロック位置からフルリクライニング位置までの間に位置する状態では、左右の連結軸82がリクライナ58と同軸上に配置された状態が維持され、左右のヒンジリンク78がシートバック14と一緒に回転するように構成されている。
【0036】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
上記構成の車両用シート10では、床取付部40が車体床部Fに取り付けられている。シートクッション12の骨格を構成するクッションフレーム22は、クッション連結機構60によってチルトダウン可能に床取付部40に連結されている。シートバック14の骨格を構成するバックフレーム32は、リクライニング機構56によって前倒し及び後倒し可能に床取付部40に連結されている。クッションフレーム22とバックフレーム32とにそれぞれ回転可能に連結された左右のヒンジリンク78は、バックフレーム32(すなわちシートバック14)の前倒しに連動させてクッションフレーム22(すなわちシートクッション12)をチルトダウンさせる一方、クッションフレーム22が通常使用位置に位置する状態のままでのバックフレーム32の後倒しを許容する。よって、シートバック14の後倒し時におけるシートクッション12の変位を防止することができる。
【0038】
しかも、上記のクッション連結機構60は、クッションフレーム22の前部と床取付部40とにそれぞれ回転可能に連結された左右のフロントリンク62と、クッションフレーム22の後部と床取付部40とにそれぞれ回転可能に連結されたリヤリンク64とを有している。これにより、これらのリヤリンク64によってクッションフレーム22の後部と床取付部40とが繋がれているので、シートクッション12の後部の不用意な浮き上りを簡素な構成で防止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、シートクッション12が通常使用位置からフルリクライニング位置までの範囲に位置する状態では、クッションフレーム22のリヤフレーム28が、床取付部40の連結パイプ54に固定された左右の支持部72によって下方側から支持される。これにより、シートクッション12に着座した乗員がシートバック14のリクライニング角度を調整する際に、乗員の体重がシートクッション12を介してシートバック14に加わることが防止される。その結果、乗員がリクライナ58のロックを解除したときに、シートバック14が急激に後に倒れることを防止できる。また、フルリクライニング位置側へ後傾したシートバック14を乗員が初段ロック位置側へ引き起こす際にも、乗員の体重がシートクッション12を介してシートバック14に加わらないため、シートバック14の引き起こしが容易になる。
【0040】
このように、本実施形態に係る車両用シートフレーム20及び車両用シート10では、チルトダウン可能な構成において、シートバック14の後倒し時におけるシートクッション12の変位を防止することができ、且つシートクッション12の後部の不用意な浮き上りを防止することができる。
【0041】
なお、シートバック14が初段ロック位置からフルリクライニング位置までの間に位置する状態では、左右の連結軸82がリクライナ58と同軸上に配置される構成にしたが、これに限るものではない。例えば、
図7~
図9に示される第1変形例、又は
図10~
図13に示される第2変形例のように構成してもよい。
【0042】
図7~
図9に示される第1変形例では、左右のヒンジリンク78の長手方向一端部に形成された長穴84に左右の連結軸80が挿通されている。長穴84は、連結軸82側の部位が円形状に拡大された円形部84Aとされており、連結軸82とは反対側の部位が円形部84Aよりも狭幅な狭幅部84Bとされている。連結軸80は、長穴84に挿通された部分が左右方向視で所謂ダブルDカット形状をなしている。この第1変形例では、シートクッション12が通常使用位置に位置し且つシートバック14が初段ロック位置に位置する状態(
図7図示状態)において、左右の連結軸82がリクライナ58の軸線よりも前方側に配置される構成になっている。この状態では、長穴84の円形部84Aに連結軸80が位置している。
図7に示される初段ロック位置から
図8に示される格納位置へとシートバック14が前倒しされる際には、長穴84の円形部84A内で連結軸80が回転する。一方、シートバック14が
図7に示される初段ロック位置から
図9に示されるフルリクライニング位置へと後倒しされる際には、連結軸80が長穴84の円形部84A側から狭幅部84B側へスライドする。これにより、シートバック14の後倒しに伴う連結軸80、82の軸間距離の増加が吸収されるように構成されている。この第1変形例でも上記第1実施形態と基本的に同様の作用及び効果が得られる。
【0043】
図10~
図13に示される第2変形例では、第1変形例と同様に、シートクッション12が通常使用位置に位置し且つシートバック14が初段ロック位置に位置する状態(
図12図示状態)において、左右の連結軸82がリクライナ58の軸線よりも前方側に配置される構成になっている。この状態で乗員がシートクッション12に着座しても、シートクッション12は、通常使用位置に保持されるように構成されている。一方、
図12に示されるように、シートバック14が初段ロック位置よりも若干フルリクライニング位置側へ後倒しされると、左右の支持部72のゴムダンパ76が弾性変形することにより、シートクッション12が後方斜め下方へ変位する。これにより、左右の連結軸82がリクライナ58と同軸上に配置され、フルリクライニング位置へのシートバック14の後倒しが許容される。この第2変形例でも上記第1実施形態と基本的に同様の作用及び効果が得られる。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0045】
<第2の実施形態>
図14~
図16には、本発明の第2の実施形態に係る車両用シート10の一部の構成が側面図にて示されている。この実施形態は、第1実施形態における左右のリヤリンク64の代わりに、左右一対のガイド板86(右側のガイド板86は図示省略)及び左右一対のガイドピン90(右側のガイドピン90は図示省略)を有している。それ以外の構成は第1実施形態と同様とされている。左右のガイド板86は、例えば金属製の板材によって略扇形の板状に形成されている。各ガイド板86は、左右のリヤライザ50に対する左右方向の外側に、板厚方向が左右方向に沿う姿勢で配置されている。各ガイド板86は、例えばボルト締結、溶接等の手段でリヤライザ50又はBブラケット52に固定されており、床取付部40の一部を構成している。各ガイド板86にはそれぞれガイド溝88が形成されている。各ガイド溝88は、左右方向視で前方側かつ上方側へ向けて凸をなして曲がった形状をなしている。
【0046】
左右のガイドピン90は、クッションフレーム22の左右のサイドフレーム24の後端部に固定されている。左右のガイドピン90は、例えば金属製の丸棒によって円柱状に形成されており、軸線方向が左右方向に沿う姿勢で配置されている。左右のサイドフレーム24の後端部には、左右のガイドピン90が嵌合した貫通穴が形成されており、例えばカシメ、溶接等の手段で左右のガイドピン90が左右のサイドフレーム24に固定されている。左右のガイドピン90は、左右のサイドフレーム24から左右方向の内側へ突出しており、左右のガイド溝88に摺動可能に挿入されている。これにより、左右のサイドフレーム24の後端部が左右のガイドピン90及び左右のガイド板86を介してリヤライザ50又はBブラケット52に連結されている。左右のガイド溝88及び左右のガイドピン90は、本発明における「リヤ連結部」を構成している。なお、例えば左右のガイド溝88がリヤライザ50又はBブラケット52に形成され、左右のガイド板86が省略される構成にしてもよい。
【0047】
図14及び
図15に示されるように、シートバック14が初段ロック位置と前倒し位置との間で変位し且つシートクッション12が通常使用位置と格納位置との間で変位する際には、左右のガイドピン90が左右のガイド溝88内で摺動することにより、シートクッション12の後部の変位が案内されるように構成されている。一方、
図14及び
図16に示されるように、シートバック14が初段ロック位置とフルリクライニング位置との間で変位する際には、左右のガイドピン90が左右のガイド溝88内で摺動せず、シートクッション12が通常使用位置に保持されるように構成されている。
【0048】
この実施形態では、クッションフレーム22の後部に設けられた左右のガイドピン90が、床取付部40に設けられたガイド溝88に摺動可能に挿入されることで、クッションフレーム22の後部と床取付部40とが繋がれている。これにより、簡素な構成でシートクッション12の後部の不用意な浮き上りを防止することができる。この実施形態においても、第1実施形態と基本的に同様の効果が得られる。
【0049】
<第3の実施形態>
図17には、本発明の第3実施形態に係る車両用シート10の一部が斜視図にて示されている。この実施形態は、クッションフレーム22を通用使用位置へ付勢する付勢部材であるスパイラルスプリング92を有している。スパイラルスプリング92は、左右のフロントリンク62のうちの一方(ここでは左側のフロントリンク62)に対する左右方向の内側において、連結軸66と同軸的に配置されている。スパイラルスプリング92の内端部は、連結軸66に係止されており、スパイラルスプリング92の外端部は、左側のフロントリンク62に係止されている。このスパイラルスプリング92によって、左側のフロントリンク62が後方側へ付勢されている。これにより、格納位置側へ変位したシートクッション12が通常使用位置側へ付勢されるように構成されている。
【0050】
この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。この実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。しかも、スパイラルスプリング92によってクッションフレーム22(すなわちシートクッション12)が通用使用位置へ付勢されるので、チルトダウン状態のシートクッション12を通常使用位置へ復帰させるのが容易になる。なお、スパイラルスプリング92の配置箇所は上記に限るものではない。フロントリンク62の上端部をサイドフレーム24に連結した連結軸の付近でもよいし、連結軸68、70、80、82の何れかの付近でもよい。また、付勢部材はスパイラルスプリング92に限らず、別の種類のばねでもよい。
【0051】
<第4の実施形態>
図18及び
図19には、本発明の第4実施形態に係る車両用シート10の一部が側面図にて示されている。この実施形態は、クッションフレーム22に対するヒンジリンク78の回転を規制する規制位置と、当該規制を解除する解除位置との間で回転可能にクッションフレームに取り付けられたロック94を有している。ロック94は、クッションフレーム22の左右のサイドフレーム24のうちの一方(ここでは左側のサイドフレーム24)に対する左右方向の内側に配置されている。このロック94は、例えば金属製の板材によって構成されており、板厚方向が左右方向に沿う姿勢で配置されている。左側のヒンジリンク78の下端部に対して前方斜め下方側に配置されている。ロック94の下部は、支軸を介して左側のサイドフレーム24に回転可能に連結されている。これにより、ロック94は、
図18に示される規制位置と、
図19に示される解除位置との間で回転可能とされている。
【0052】
ロック94の上部には、後方側から切り欠かれた切欠部94Aが形成されている。この切欠部94Aに対応して左側のヒンジリンク78の下端部には、前方側へ突出した突出部78Aが形成されている。ロック94が
図18に示される規制位置に位置する状態では、切欠部94Aに突出部78Aが嵌ることでクッションフレーム22に対する左側のヒンジリンク78の回転が規制されるようになっている。ロック94が
図19に示される解除位置に位置する状態では、突出部78Aが切欠部94Aから抜け出すことで上記の回転規制が解除される。
【0053】
左側のサイドフレーム24においてロック94のと対向する位置には、円弧状の長穴96が形成されている。ロック94において長穴96と対向する部位には、左右方向外側へ突出した摘み部94Bが設けられている。この摘み部94Bを乗員が操作することにより、ロック94を規制位置と解除位置との間で回転させることができるように構成されている。
【0054】
この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。この実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。しかも、上記のロック94によってクッションフレーム22に対するヒンジリンク78の回転を規制することができるので、ヒンジリンク78の不用意な回転を防止することができる。
【0055】
以上、幾つかの実施形態を挙げて本発明について説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
20 車両用シートフレーム
22 クッションフレーム
24A 係合部
32 バックフレーム
40 床取付部
56 リクライニング機構
60 クッション連結機構
62 フロントリンク
64 リヤリンク(リヤ連結部)
78 ヒンジリンク
88 ガイド溝(リヤ連結部)
90 ガイドピン(リヤ連結部)
92 スパイラルスプリング(付勢部材)
94 ロック