(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】医療情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20240122BHJP
【FI】
G16H10/60
(21)【出願番号】P 2022134906
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2018127390の分割
【原出願日】2018-07-04
【審査請求日】2022-09-09
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】竹田 徳泰
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-223586(JP,A)
【文献】特開2013-109577(JP,A)
【文献】特表2017-521113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療行為により得られた臨床データを処理するシステムであって、
前記臨床データが取得された医療機関が存在する地域を検出する地域検出部と、
前記地域検出部により検出された前記地域に基づいて
、前記臨床データに含まれる項目のうち、少なくとも患者本人に関するデータを秘匿する秘匿項目を設定する秘匿項目設定部と
を含む、システム。
【請求項2】
前記秘匿項目設定部により設定された前記秘匿項目に該当するデータである秘匿データを匿名化する匿名化プロセッサを更に含む、
請求項1のシステム。
【請求項3】
前記秘匿項目設定部は、2以上の地域のそれぞれに対応する秘匿項目群を予め保持しており、前記地域検出部により検出された前記地域と前記秘匿項目群とに基づいて秘匿項目を設定する、
請求項1のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、医療情報を処理するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関においては多種多様な情報が扱われている。その典型的な例として、検査のオーダ内容を示す検査オーダ情報、実施された検査の内容や結果を示す検査データ、診断の内容や結果を示す診断データ、手術の内容や結果を示す手術データ、投与薬剤の種別や量を示す投薬データ、診療報酬の内容や点数や金額を示す診療報酬情報などがある。このような医療情報を管理するためのシステムとして、電子カルテシステム、画像管理システム、オーダリングシステム、医事会計システムなどがある。このようなシステムは病院情報システム(HIS)と呼ばれている。
【0003】
検査データ、診断データ、手術データ、投薬データのように臨床的に得られるデータを臨床データと呼ぶ。従来、臨床データはそれが得られた施設内においてのみ扱われるのが一般的であった。しかし、近年では、複数の施設間で臨床データを共有しようとの動向もある(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
施設間で情報を共有するためのシステムにおいては、患者個人の特定や個人情報の漏洩を防止するために、情報セキュリティ対策が極めて重要である。医療情報のセキュリティについては、各国で法制化されている。
【0005】
一方、人工知能や統計計算などのコンピューティング技術の医療分野への応用が進められている。そのためには、臨床データの大規模なデータベースを構築すること(例えば、ビッグデータ化すること)が要求される。
【0006】
しかし、現状においてはデータの収集や匿名化を実質的に手作業で行っているため、手間や労力の増大、人為的ミスの発生、時間や費用のロス、質の低下などが問題となっている。そのため、複数の施設から有効的に利用可能な臨床データのデータベースは未だ実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、医療機関が存在する地域に応じた秘匿項目を設定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示的な実施形態は、医療情報を処理するシステムであって、臨床データが取得された医療機関が存在する地域を検出する地域検出部と、前記地域検出部により検出された前記地域に基づいて秘匿項目を設定する秘匿項目設定部とを含む。
【発明の効果】
【0010】
例示的な実施形態によれば、医療機関が存在する地域を自動で検出し、その結果にしたがって自動で秘匿項目を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例示的な実施形態に係る医療情報処理システムの構成の一例を表す概略図である。
【
図2】例示的な実施形態に係る医療情報処理システムの使用形態の一例を表すフローチャートである。
【
図3】例示的な実施形態に係る医療情報処理システムの構成の一例を表す概略図である。
【
図4】例示的な実施形態に係る医療情報処理システムの構成の一例を表す概略図である。
【
図5A】例示的な実施形態に係る医療情報処理システムの構成の一例を表す概略図である。
【
図5B】例示的な実施形態に係る医療情報処理システムの構成の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システム及び医療情報処理方法の例について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書にて引用された文献の記載内容及び他の任意の公知技術を、例示的な実施形態に援用することが可能である。
【0013】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムは、複数の施設にて取得された医療情報を処理する。1つの施設は単一の医療機関であってよいし、或いは、2以上の施設が単一の医療機関であってもよい。換言すると、医療情報処理システムを適用可能な複数の施設は、単一の施設のみからなる医療機関と、2以上の施設からなる医療機関とのいずれか一方又は双方を含む。
【0014】
医療情報処理システムは、複数の施設のそれぞれに設置された1以上の情報処理システムと、複数の施設のいずれとも異なる施設に設置された1以上の情報システムとを含む。
【0015】
施設内に設置された情報システムの例として病院情報システム(HIS)がある。施設外に設置された病院情報システムの例として、クラウドコンピューティング技術を利用して病院情報システムの少なくとも一部の機能を提供するネットワークシステムがある。病院情報システムは、2以上の施設にわたり構築された情報システムの少なくとも一部を含んでもよいし、施設内の情報システムと施設外の情報システムとの連係が可能な情報システムの少なくとも一部を含んでもよい。
【0016】
病院情報システムは、一般に、医療機関(施設)内で扱われる情報を処理するための情報システムである。病院情報システムに含まれる情報システムは公知のものであってよい。典型的な病院情報システムは、オーダリングシステム、電子カルテシステム、画像管理システム、医事会計システムなどを含む。病院情報システムに含まれる2以上の情報システムは、互いに連係して動作するよう構成されている。
【0017】
オーダリングシステムは、検査・処方・投薬等の各種オーダ情報を伝達するためのシステムである。たとえば、オーダリングシステムは、オーダ情報を情報端末から受け、施設内の関連部門(検査部門、放射線科、薬剤部等)にこのオーダ情報をネットワーク経由で送信する。検査としては、検体検査、生理検査、放射線撮影等がある。これら検査は、一般に、オーダを発した医師が属する診療科と異なる部門において実施される。一方、診療科内において検査が実施される場合がある。たとえば眼科においては、患者眼の観察や撮影や測定を診療科内にて行うのが一般的である。オーダリングシステムは、たとえば、オーダ情報等の処理を行うためのプロセッサ(コンピュータ、サーバ等)と、オーダ情報等を格納するための記憶装置(データベース)と、通信規格に準拠した通信装置とを含む。
【0018】
電子カルテシステムは、患者毎に作成された電子カルテを保存・管理するための情報システム(ファイリングシステム)である。電子カルテは、診療録の情報を電子化して記録したデータである。各患者の電子カルテは、当該施設内において使用される患者ID(内部識別情報)によって識別され、管理される。電子カルテシステムは、医師端末等のコンピュータにより作成された電子カルテを受け、これを格納する。電子カルテシステムは、医師端末等のコンピュータからの要求を受け、電子カルテに記録されている情報をネットワーク経由で当該コンピュータに提供する。電子カルテシステムは、医師端末等のコンピュータにより編集された電子カルテを受け、当該患者の電子カルテの内容を更新する。電子カルテシステムは、単一の施設内において利用されるシステムの少なくとも一部を含んでよく、また、複数の施設において相互利用されるシステムの少なくとも一部を含んでよい。電子カルテシステムは、たとえば、電子カルテ情報等の処理を行うためのプロセッサ(コンピュータ、サーバ等)と、電子カルテ情報等を格納するための記憶装置(データベース)と、通信規格に準拠した通信装置とを含む。
【0019】
画像管理システムは、各患者の医用画像を保存・管理するための情報システムである。各患者の医用画像は、当該施設内において使用される患者ID(内部識別情報)によって識別され、管理される。画像管理システムの典型的な例として、Picture Archiving and Communication System(PACS)がある。PACSは、X線撮影画像、X線CT画像、MRI画像等の医用画像をモダリティ装置から受信して保存・管理する。また、特定の診療科に特化した画像管理システムも広く利用されている。たとえば、眼科には、眼底カメラ、スリットランプ、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)装置、走査型レーザ検眼鏡(SLO)等のモダリティ装置が設置された検査室(撮影室)が設けられている。全ての診療科に関する医用画像は、Digital Imaging andCommunications in Medicine(DICOM)と呼ばれる標準規格によって統合・連係される。画像管理システムは、医師端末やビューワや解析装置等のコンピュータからの要求を受け、医用画像をネットワーク経由でこのコンピュータに提供する。医用画像を用いて診断や解析や読影が行われると、その結果が画像管理システムや電子カルテシステムに送られて保存・管理される。画像管理システムは、たとえば、医用画像等に関する処理を行うためのプロセッサ(コンピュータ、サーバ等)と、医用画像等を格納するための記憶装置(データベース)と、通信規格に準拠した通信装置とを含む。
【0020】
医事会計システムは、病院情報システムにより保存・管理されている情報に基づいて診療報酬明細書を作成する。更に、医事会計システムは、診療内容を入力するための機能、窓口会計(患者の支払額)を計算する機能、処方箋を発行する機能、投薬使用料を管理する機能、薬剤情報を発行する機能、領収書を発行する機能などを備えていてもよい。医事会計システムは、たとえば、会計関連情報等の処理を行うためのプロセッサ(コンピュータ、サーバ等)と、会計関連情報等を格納するための記憶装置(データベース)と、通信規格に準拠した通信装置とを含む。
【0021】
例示的な実施形態に係る病院情報システム(クラウドコンピューティングシステムを含んでもよい)は、上記した電子カルテ管理機能と画像管理機能とを少なくとも含む臨床データ管理機能を備える。また、例示的な実施形態に係る病院情報システムは、医療情報の処理に関わる他の機能を含んでいてよい。他の機能の例として、手術管理機能、リハビリ管理機能、入院管理機能、栄養管理機能、病棟総合管理機能、外来総合管理機能、医局総合管理機能、病理管理機能、検査管理機能、臨床検査管理機能、放射線科管理機能(RIS)、画像診断管理機能、透析管理機能、地域医療連携機能、患者情報管理機能、業務改善管理機能、物品管理機能、人事管理機能などがある。
【0022】
タブレット端末やスマートフォン等のポータブルコンピュータや、表示装置や印刷装置等の出力装置や、操作装置や読取装置等の入力装置が含まれていてもよい。
【0023】
施設内には、臨床データを取得するための各種の医療装置が設けられている。典型的には、検査データ(数値データ、特性マップ等)を取得するための検査装置(測定装置)や、画像データを取得するための撮影装置が、施設内に設置されている。
【0024】
例えば眼科においては、各種の眼科測定装置と各種の眼科撮影装置が使用される。眼科測定装置の例として、視力検査装置(視標呈示装置、フォロプタ等)、眼屈折検査装置(レフラクトメータ、ケラトメータ等)、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザ、視野計、マイクロペリメータなどがある。眼科測定装置は、測定データを解析するためのアプリケーションを備えていてもよい。眼科撮影装置の例として、スリットランプ顕微鏡、眼底カメラ、SLO、OCTなどがある。眼科撮影装置は、撮影画像を解析するためのアプリケーションを備えていてもよい。
【0025】
他の診療科においては、例えば、超音波診断装置、X線撮影装置、X線CT装置、MRI装置、内視鏡システム、自動分析装置(生体検査装置)、遺伝子解析装置などが使用される。
【0026】
例示的な実施形態において、「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路、2以上の回路の組み合わせ、又は、2以上の回路を含む装置若しくはシステムを意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムやデータを読み出し実行することで、本実施形態に係る機能を実現することができる。
【0027】
以下、複数の例示的な実施形態を説明するが、これらのうちのいずれか2以上を組み合わせることが可能である。また、複数の例示的な実施形態のいずれか1つ又はいずれか2以上の組み合わせに、任意の公知技術を組み合わせることが可能である。
【0028】
〈第1実施形態〉
例示的な第1実施形態に係る医療情報処理システムについて説明する。本実施形態に係る医療情報処理システムの構成の例を
図1に示す。
【0029】
図1に例示された医療情報処理システムは、第1~第N施設のそれぞれに設置された情報処理システムと、これらN個の施設のいずれとも異なる施設に設置された研究データ管理システム2000とを含む。第1~第N施設のそれぞれに設けられた情報処理システムは、通信路(通信回線)3000介して研究データ管理システム2000と通信可能である。
【0030】
第1~第N施設のそれぞれは医療拠点である。各施設(第n施設:n=1、2、・・・、N。ここで、Nは2以上の整数)には、同様の情報処理システムが設けられている。例えば、
図1に示すように、第1施設には、臨床データベース(臨床DB)1100と、識別情報変更プロセッサ1200と、匿名化プロセッサ1300と、匿名データベース(匿名DB)1400とが設けられている。なお、臨床データベース1100は、医療情報処理システムに含まれてもよいし、含まれなくてもよい。
【0031】
臨床データベース1100と、識別情報変更プロセッサ1200と、匿名化プロセッサ1300と、匿名データベース1400とは、第1施設内に構築された通信路(ローカルエリアネットワーク等の病院内ネットワーク)を介して互いに接続されている。
【0032】
図示は省略するが、各施設には、前述した各種の検査装置や測定装置や撮影装置が設けられている。
【0033】
〈臨床データベース1100〉
第1施設に設置された臨床データベース1100は、第1施設(又は、第1施設が属する医療機関)に対応付けられている。例えば、臨床データベース1100は、その少なくとも一部が第1施設内に設置され、及び/又は、その少なくとも一部が第1施設外に設置されている。少なくとも一部が第1施設外に設置された臨床データベース1100の例として、クラウドコンピューティングシステムを利用したデータベースがある。
【0034】
第1施設に設置された臨床データベース1100は、第1施設(更には、第1施設が属する医療機関)にて取得された臨床データを、患者毎に割り当てられた内部識別情報(患者ID)に関連付けて蓄積する。臨床データベース1100は、例えば、電子カルテシステムと画像管理システムとを含む。電子カルテの作成・管理、画像の取得・管理などは、従来と同じ要領で実行可能である。
【0035】
臨床データベース1100に保存される臨床データの項目の例として、内部識別情報(患者ID)、検査データ、測定データ、画像データ、氏名、年齢、性別、住所、電話番号、社会保障番号、健康保険番号、日付などがある。眼科における検査データや測定データの例として、他覚屈折力値(S、C、A)、自覚視力値(VA)、眼圧値(IOP)、眼軸長(AL)、角膜形状(TOPO)、視野(VF)、その他の電子カルテ(EMR)情報、OCT画像、撮影条件(撮影パラメータ)、眼底写真、赤外動画像、その他の画像などがある。
【0036】
〈識別情報変更プロセッサ1200〉
第1施設に設置された識別情報変更プロセッサ1200は、第1施設(又は、第1施設が属する医療機関)に対応付けられている。例えば、識別情報変更プロセッサ1200は、その少なくとも一部が第1施設内に設置され、及び/又は、その少なくとも一部が第1施設外に設置されている。少なくとも一部が第1施設外に設置された識別情報変更プロセッサ1200の例として、クラウドコンピューティングシステムを利用したプロセッサがある。
【0037】
第1施設に設置された識別情報変更プロセッサ1200は、第1施設(又は、第1施設が属する医療機関)に対応する臨床データベース1100に蓄積された臨床データに関連付けられた内部識別情報を外部識別情報に変換する。
【0038】
ここで、内部識別情報は、前述したように、第1施設(又は、第1施設が属する医療機関)の内部における患者識別のために各患者に割り当てられた識別情報(臨床用患者ID)である。また、外部識別情報は、第1施設の外部での患者識別のために使用される識別情報であり、本実施形態では研究用に使用される識別情報(研究用患者ID)である。すなわち、識別情報変更プロセッサ1200は、第1施設内にて使用される臨床用患者ID(内部識別情報)を、第1施設外にて使用される研究用患者ID(外部識別情報)に変換するように構成される。
【0039】
識別情報変換プロセッサ1200は、内部識別情報と外部識別情報とを互いに関連付けて保持するように構成されていてよい。例えば、識別情報変換プロセッサ1200は、内部識別情報とこれを変換して得られた外部識別情報とを互いに紐付けて記録することができる。内部識別情報と外部識別情報との間の関連付けの例として、テーブル等の対応表がある。
【0040】
識別情報変換プロセッサ1200は、外部識別情報から内部識別情報を再現できないように、内部識別情報から外部識別情報への変換を行ってもよい。
【0041】
〈匿名化プロセッサ1300〉
第1施設に設置された匿名化プロセッサ1300は、第1施設(又は、第1施設が属する医療機関)に対応付けられている。例えば、匿名化プロセッサ1300は、その少なくとも一部が第1施設内に設置され、及び/又は、その少なくとも一部が第1施設外に設置されている。少なくとも一部が第1施設外に設置された匿名化プロセッサ1300の例として、クラウドコンピューティングシステムを利用したプロセッサがある。
【0042】
第1施設に設置された匿名化プロセッサ1300は、第1施設(又は、第1施設が属する医療機関)に対応する臨床データベース1100から臨床データを取得し、この臨床データに含まれる所定の秘匿データを匿名化する。
【0043】
匿名化は、任意のデータ加工手法を含んでいてよく、例えば、削除、付加、変更、置換、変換、一般化、暗号化、ランダム化、機械学習、仮名化、ノイズ付加、並べ替え、のうちのいずれかを含んでいてよい。また、具体的な匿名化手法としては、k-匿名化、Pk-匿名化などがある。
【0044】
秘匿データは、所定の秘匿項目についての患者等のデータである。秘匿データは、患者本人に関するデータには限定されず、世帯員に関するデータ、親族に関するデータ、雇用主に関するデータなどを含んでもよい。
【0045】
典型的には、秘匿項目は予め設定される。秘匿項目は、例えば、医療情報処理システムが使用される地域(国、地域連合など)に適用される法制に基づき設定することが可能である。秘匿項目の例として次の(A)~(R)がある。
【0046】
(A)氏名
【0047】
(B)住所、市区町村、郡、区域、郵便番号、及びそれに相当する地理コードを含む州より小さいすべての地理的区画。ただし、郵便番号の最初の3桁は例外である。国勢調査局:(1)全ての郵便番号と同じ3桁の初期桁を組み合わせた地理的単位には2万人以上が含まれる。更に、(2)2万人以下の地理的単位の郵便番号の最初の3桁は「000」に変更される。
【0048】
(C)生年月日、入学日、退院日、死亡日を含む、個人に直接関連する日の日付の全ての要素(年を除く)。年齢が90歳以上の単一のカテゴリーに集計されている場合を除き、89歳以上のすべての年齢及びその年齢を示す日付の全ての要素(年を含む)。
【0049】
(D)電話番号
【0050】
(E)ファックス番号
【0051】
(F)電子メールアドレス
【0052】
(G)社会保障番号
【0053】
(H)医療記録番号
【0054】
(I)保健プラン受益者番号
【0055】
(J)口座番号
【0056】
(K)証明書/ライセンス番号
【0057】
(L)ナンバープレート番号を含む車両識別子及び通し番号
【0058】
(M)デバイス識別子及びシリアル番号
【0059】
(N)Webユニバーサルリソースロケータ(URL)
【0060】
(O)インターネットプロトコル(IP)アドレス番号
【0061】
(P)指と声紋を含む生体認証識別子
【0062】
(Q)フルフェイスの写真画像及び同等の画像
【0063】
(R)上記の(C)で許可されている場合を除き、その他すべての一意の識別番号、特性、またはコード
【0064】
また、地域によっては、原則として、特定の利用目的にしたがって収集すること、利用目的に反した処理を行わないこと、本人を特定できる形で必要以上に長く保持してはならないこと、再識別が不可能な匿名化方法を適用すること、などが要求される。このような地域では、前述したように、識別情報変換プロセッサ1200は、外部識別情報から内部識別情報を再現できないように、内部識別情報から外部識別情報への変換を実行することが望ましい。
【0065】
〈匿名データベース1400〉
第1施設に設置された匿名データベース1400は、第1施設(又は、第1施設が属する医療機関)に対応付けられている。例えば、匿名データベース1400は、その少なくとも一部が第1施設内に設置され、及び/又は、その少なくとも一部が第1施設外に設置されている。少なくとも一部が第1施設外に設置された匿名データベース1400の例として、クラウドコンピューティングシステムを利用したデータベースがある。
【0066】
第1施設に設置された匿名データベース1400は、第1施設(又は、第1施設が属する医療機関)に対応する匿名化プロセッサ1300により匿名化された臨床データと識別情報変換プロセッサ1200によりこの臨床データに関連付けられた外部識別情報とを含む匿名データを蓄積する。
【0067】
例えば、臨床データが、内部識別情報(臨床用患者ID)、検査データ、測定データ、画像データ、氏名、年齢、性別、住所、電話番号、社会保障番号、及び日付を含むとする。
【0068】
この場合、識別情報変換プロセッサ1200は、内部識別情報(臨床用患者ID)を外部識別情報(研究用患者ID)に変換する。
【0069】
また、匿名化プロセッサ1300は、氏名、住所、電話番号、社会保障番号、及び日付を、臨床データから削除する。これにより、匿名化プロセッサ1300により匿名化された臨床データは、検査データ、測定データ、画像データ、年齢、及び性別のみを含む。
【0070】
このように、本例において匿名データベース1400に保存される匿名データは、外部識別情報(研究用患者ID)、検査データ、測定データ、画像データ、年齢、及び性別のみを含む。
【0071】
なお、検査データや測定データは、数値データを含んでいてよい。検査データに含まれる数値データの例として、所定の事項(例えば、所定の疾患にかかっている可能性)の程度を表す数値がある。また、測定データに含まれる数値データの例として、所定のパラメータの測定値がある。
【0072】
〈研究データ管理システム2000〉
研究データ管理システム2000は、第1~第N施設のいずれとも異なる施設に設置されており、第1~第N施設にて作成された匿名データの提供を受け、提供された匿名データを研究用のデータとして保存・管理する。研究データ管理システム2000は、研究データベース2100と、研究データ提供プロセッサ2200とを含む。
【0073】
〈研究データベース2100〉
研究データベース2100は、第1~第N施設に対応する複数の匿名データベース1400から提供された匿名データを、予め設定された研究プロジェクト毎に格納する。なお、研究に供される匿名データを研究データと呼ぶことがある。例えば、研究データベース2100に登録された匿名データを研究データと呼ぶことがある。
【0074】
匿名データベース1400から研究データベース2100への匿名データの提供は、任意の態様で行われる。例えば、予め設定されたスケジュールにしたがって、定期的に又は不定期的に、匿名データベース1400から研究データベース2100に匿名データを送信するように構成されていてよい。
【0075】
匿名データベース1400が設置されている施設内のユーザーからの指示又は要求にしたがって、匿名データベース1400から研究データベース2100に匿名データを送信するように構成されていてもよい。匿名データの送信指示は、例えば、匿名データベース1400と同じ施設内に設置されているコンピュータを使用して行われる。
【0076】
研究データ管理システム2000又は他のシステム(他の装置)からの指示又は要求にしたがって、匿名データベース1400から研究データベース2100に匿名データを送信するように構成されていてもよい。
【0077】
匿名データベース1400に格納されている匿名データのうちから研究データベース2100に送信される匿名データを選択できるように構成してもよい。匿名データの選択態様の例として以下のものがある:患者の選択(例えば、内部識別情報又は外部識別情報の選択);患者属性の選択(例えば、性別、年齢等の選択);疾患の選択;身体部位の選択;検査の選択;検査の結果に応じた選択(例えば、検査結果が疾患の可能性を示している患者を選択すること);モダリティの選択;画像解析の結果に応じた選択(例えば、解析結果が疾患の可能性を示している患者を選択すること)。匿名データの選択は、例えば、匿名データベース1400と同じ施設内に設置されているコンピュータを使用して行われる。
【0078】
研究データ管理システム2000は、例えば、予め設定された研究プロジェクト毎に識別情報(研究プロジェクトID)を発行する。研究プロジェクトIDを研究データに割り当てることによって、研究プロジェクト毎に研究データを管理することができる。
【0079】
匿名データベース1400が設置されている施設内のユーザーが、匿名データに対応する研究プロジェクトを指定できるように構成してもよい。研究プロジェクトの指定は、例えば、研究プロジェクトIDの指定や入力によって行われる。
【0080】
〈研究データ提供プロセッサ2200〉
研究データ提供プロセッサ2200は、ユーザーからの要求を受けて、当該ユーザーが属する研究プロジェクトに関連付けられた研究データの少なくとも一部を研究データベース2100から読み出して当該ユーザーに提供する。
【0081】
研究データの提供を要求するユーザーは、例えば、第1~第N施設のいずれかに所属する研究者(医師等)、第1~第N施設のいずれか、又は、第1~第N施設のいずれかに設置された装置(コンピュータ等)である。ユーザーの識別及び認証は、研究者、施設、装置等のユーザーに対して予め割り当てられた識別情報(研究ユーザーID)及びパスワードによって行われる。
【0082】
研究データ提供プロセッサ2200は、ユーザーからの要求を受けて、このユーザーが属する研究プロジェクトに関連付けられた研究データの少なくとも一部を研究データベースから読み出し、読み出された研究データを当該ユーザー又は当該研究プロジェクトに予め関連付けられたフォーマットに変換して当該ユーザーに提供するように構成されていてよい。
【0083】
提供される研究データのフォーマットは、例えばユーザーによって事前に設定される。フォーマットは任意であってよく、典型的には、研究データの解析のためにユーザーが使用しているソフトウェアにしたがって設定される。提供される研究データのフォーマットの例として、CSV、XML、JSONなどがある。
【0084】
なお、提供されるフォーマットで作成された匿名データや、提供されるフォーマットに変換された匿名データを、匿名データベース1400に格納するようにしてもよい。
【0085】
〈使用形態〉
本実施形態に係る医療情報処理システムの使用形態を説明する。使用形態の一例を
図2に示す。
【0086】
(S1:臨床データを取得)
まず、検査、測定、撮影、問診などの医療行為を患者に適用して臨床データを取得する。
【0087】
(S2:臨床データを臨床DBに保存)
ステップS1で取得された臨床データが臨床データベース1100に保存される。検査装置又は測定装置により取得された検査データ又は測定データは、病院内ネットワークを介して電子カルテシステムなどに送られる。撮影装置により取得された画像データは、病院内ネットワークを介して画像管理システムなどに送られる。
【0088】
(S3:匿名データの作成を開始)
所定のトリガーに対応して匿名データの作成が開始される。トリガーの例として、予め設定されたスケジュールや、医師等による指示がある。
【0089】
ここで、医師等又は所定の装置(例えば、臨床データベース1100、識別情報変換プロセッサ1200、又は、匿名化プロセッサ1300)は、臨床データベース1100に蓄積された臨床データのうちから、匿名データの作成に供される臨床データを選択することができる。
【0090】
(S4:内部IDを外部IDに変換)
識別情報変更プロセッサ1200は、匿名データ作成の対象である臨床データに関連付けられた内部識別情報を外部識別情報に変換する。
【0091】
(S5:臨床データ中の秘匿データを匿名化)
匿名化プロセッサ1300は、匿名データ作成の対象である臨床データに含まれる所定の秘匿データを匿名化する。
【0092】
(S6:外部IDと匿名化された臨床データとを含む匿名データを匿名DBに保存)
ステップS4で得られた外部識別情報と、ステップS5で秘匿データが匿名化された臨床データとを含む匿名データが得られる。匿名データは、例えば、外部識別情報毎(つまり、患者毎)に作成される。匿名データは、匿名データベース1400に保存される。
【0093】
(S7:匿名データを匿名DBから研究データ管理システムに送信)
所定のトリガーに対応し、匿名データベース1400に蓄積された匿名データの少なくとも一部が、研究データ管理システム2000に送信される。
【0094】
(S8:匿名データに研究プロジェクトIDを割り当て、研究DBに保存)
研究データ管理システム2000は、ステップS7で匿名データベース1400から送信された匿名データを受信する。
【0095】
研究データ管理システム2000は、匿名データに研究プロジェクトIDを割り当てる。研究プロジェクトIDは、例えば、匿名データとともに匿名データベース1400から送信される。
【0096】
或いは、研究データ管理システム2000は、匿名データの送信元(例えば、施設、匿名データベース1400、医師など)を示す情報、及び、送信元と研究プロジェクトIDとの対応情報に基づいて、この匿名データに割り当てられる研究プロジェクトIDを選択するように構成されていてよい。
【0097】
研究データ管理システム2000は、研究プロジェクトIDと匿名データとを関連付けて研究データベース2100に保存する。研究データベース2100には、研究プロジェクトID毎に匿名データ群(つまり、研究に使用可能な研究データ群)が格納される。
【0098】
(S9:ユーザーが研究データを要求)
ユーザーは、研究用のデータの提供を研究データ管理システム2000に要求する。要求には研究ユーザーIDが含まれている。
【0099】
(S10:研究DBから研究データを選択)
ステップS9の要求を受けた研究データ管理システム2000は、この要求に含まれる研究ユーザーIDに対応する研究データ群を特定する。この処理は、研究データ提供プロセッサ2200により実行される。
【0100】
研究データ提供プロセッサ2200は、研究データ群(つまり、研究プロジェクトID)と研究ユーザーIDとが対応付けられた対応情報を保持している。研究データ提供プロセッサ2200は、この対応情報を参照することで、要求に含まれる研究ユーザーIDに対応する研究データ群を特定することができる。
【0101】
研究データ提供プロセッサ2200は、特定された研究データ群のうちから、提供される研究データを選択することができる。例えば、研究データ提供プロセッサ2200は、特定された研究データ群に含まれる全ての研究データを提供することができる。
【0102】
或いは、研究データ提供プロセッサ2200は、特定された研究データ群のうちから、当該ユーザーに対して未だ提供されていない研究データを選択することができる。この場合、研究データ提供プロセッサ2200は、例えば、ユーザー毎に(例えば、研究ユーザーID毎に)提供履歴を保持し、これを参照して研究データの選択を行うことができる。
【0103】
或いは、研究データ毎にレベルを設定し、且つ、提供可能な研究レベルのレベルをユーザー毎に(例えば、研究ユーザーID毎に)設定するようにしてもよい。
【0104】
(S11:フォーマットを変換)
研究データ提供プロセッサ2200は、ステップS10で選択された研究データのフォーマットを、ステップS9で要求を送信したユーザーに対応するフォーマットに変換する。
【0105】
研究データ提供プロセッサ2200は、例えば、研究ユーザーIDとフォーマットとが対応付けられた対応情報を保持しており、これを参照してフォーマットを特定することができる。或いは、ステップS9の要求がフォーマット情報を含んでいてもよい。或いは、ステップS9の要求が解析種別情報を含み、この解析種別に応じたフォーマットが選択されてもよい。
【0106】
(S12:ユーザーに研究データを提供)
研究データ提供プロセッサ2200は、ステップS11でフォーマットが変換された研究データを、ステップS9で要求を送信したユーザーに提供する。
【0107】
〈変形例〉
例示的な実施形態に適用可能な変形について説明する。
【0108】
例えば経過観察のように、同一の患者の臨床データを複数回にわたって取得することがある。例示的な実施形態に係る医療情報処理システムは、同一患者の時系列データを管理できるように構成されていてよい。
【0109】
例えば、識別情報変換プロセッサ1200は、同一の内部識別情報に対して同一の外部識別情報を割り当てるように構成される。これにより、同一の患者に対して同一の外部識別情報が割り当てられる。
【0110】
なお、同一の患者の臨床データが2以上の施設で取得されることがある。例えば、クリニックからの紹介を受けて大学病院を受診した患者の臨床データに、クリニックで取得されたデータと、大学病院で取得されたデータとが含まれることがある。
【0111】
同一患者について2以上の施設で臨床データが取得された場合において、これら施設が当該患者に割り当てた内部識別情報が同一であるとする。この場合、これら施設に設置された全ての識別情報変換プロセッサ1200が、この内部識別情報を同じ外部識別情報に変換するように構成されていてよい。或いは、研究データ管理システム2000において、これら施設にて変換された2以上の外部識別情報の相互の関連付けが可能に構成されていてもよい。例えば、これら施設にて変換された2以上の外部識別情報のそれぞれに、所定のコードを付帯させることができる。
【0112】
同一患者について2以上の施設で臨床データが取得された場合において、これら施設が当該患者に割り当てた内部識別情報が同一でないとする。この場合、これら施設にて変換された2以上の外部識別情報の相互の関連付けが可能に構成される。
【0113】
また、前述したように、臨床データの項目は日付を含んでいてよい。日付は、臨床データが取得された日を表す取得日情報であってよい。匿名化プロセッサ1300は、取得日情報を匿名化しない。つまり、本例では、取得日情報は秘匿データではない。それにより、匿名データは、対応する臨床データに係る取得日情報を含む。
【0114】
更に、研究データベース2100は、同一の外部識別情報に対応する2以上の匿名データに含まれる2以上の取得日情報に基づいて、当該2以上の匿名データを時系列にしたがって格納するように構成される。
【0115】
これにより、同一の外部識別情報が割り当てられた同一の患者(又は、相互に関連付けされた2以上の外部識別情報が割り当てられた同一の患者)について取得された複数の臨床データを、取得日情報にしたがって、時間的順序に配列することが可能である。
【0116】
同一患者について2以上の施設で臨床データが取得された場合において、これら施設が当該患者に割り当てた内部識別情報が同一でない場合の他の例を説明する。同一患者に割り当てられた2以上の内部識別情報が互いに関連付けられているとする。
【0117】
例えば、2以上の施設が運営的関係や資本的関係を持つ場合、これら施設間において病院情報システムを共有することや、病院情報システムを連係させることができ、それにより、同一患者に割り当てられた2以上の内部識別情報を互いに関連付けることが可能である。
【0118】
このような関連付けを参照することで、識別情報変換プロセッサ1200は、これら施設にて当該患者に付与された2以上の内部識別情報に対して同一の外部識別情報を割り当てることができる。
【0119】
本例においても、匿名データは、臨床データが取得された日を表す取得日情報を含む。同様に、研究データベース2100は、同一の外部識別情報に対応する2以上の匿名データに含まれる2以上の取得日情報に基づく時間的順序にしたがって当該2以上の匿名データを格納するように構成される。
【0120】
これにより、同一患者に対して異なる内部識別情報が付与された場合であっても、当該患者に同一の外部識別情報を割り当てることができ、この患者について取得された複数の臨床データを時間的順序にしたがって管理することが可能である。
【0121】
〈第2実施形態〉
患者や医療機関からの要求、法制の改正などにより、研究データベース2100に登録された研究データを削除する必要が生じることが想定される。このような要請に鑑み、
図3に示す例示的な実施形態に係る研究データ管理システム2000Aは、第1実施形態と同様の研究データベース2100及び研究データ提供プロセッサ2200に加え、研究データ削除プロセッサ2300を含む。なお、他の要素については第1実施形態と同様に構成されていてよい。
【0122】
研究データ削除プロセッサ2300は、第1~第N施設のいずれかからデータ削除要求を受ける。データ削除要求は、外部識別情報を含む。データ削除要求を行うユーザーは、例えば、第1~第N施設のいずれかに所属する研究者(医師等)、第1~第N施設のいずれか、又は、第1~第N施設のいずれかに設置された装置(コンピュータ等)である。ユーザーの識別及び認証は、研究者、施設、装置等のユーザーに対して予め割り当てられた識別情報(研究ユーザーID)及びパスワードによって行われる。
【0123】
研究データ削除プロセッサ2300は、データ削除要求に含まれる外部識別情報に対応する研究データを特定する。前述したように、研究データ(つまり、匿名データ)には外部識別情報が含まれるので、研究データ削除プロセッサ2300は、この外部識別情報を含む研究データを研究データベース2100から検索する。更に、研究データ削除プロセッサ2300は、検索された研究データを研究データベース2100から削除する。
【0124】
なお、研究データを検索するためのクエリは外部識別情報に限定されない。クエリの他の例として、患者属性、疾患、身体部位、検査種別、検査結果、モダリティ種別、画像解析結果、プロジェクト(研究プロジェクトID)などがある。
【0125】
本実施形態に係る機能を医療情報処理システムに設けることで、新たな患者の追加登録や、登録済み患者の削除や、登録事項の編集などを適宜に行うことが可能となる。患者の登録、削除、編集がなされると、所定の患者リストがアップデートされる。患者リストは、例えば、研究データ管理システム2000(研究データ提供プロセッサ2200等)によって管理される。患者リストがアップデートされたとき、研究データ提供プロセッサ2200は、関連ユーザーに通知を行うことができる。
【0126】
各施設において患者リストを管理することも可能である。この場合、内部識別情報によって患者が識別される。患者の登録、削除、編集がなされると、その内容が研究データ管理システム2000に送られる。研究データ管理システム2000に送られるデータにおいては、外部識別情報によって患者が識別される。特定の施設から患者リストの変更の通知を受けたとき、研究データ提供プロセッサ2200は、関連ユーザーにその旨の通知を行うことができる。また、研究データ提供プロセッサ2200は、自身が管理している患者リストをアップデートすることができる。
【0127】
〈第3実施形態〉
ユーザーは、研究データ管理システム2000から提供された研究データを使用して各種の解析を行うことができる。研究データ管理システム2000は、複数の施設で得られた解析データを統合的に管理できるように構成されていてよい。
【0128】
解析データの統合的管理を実現するために、
図4に示す例示的な実施形態に係る研究データ管理システム2000Bを適用することが可能である。研究データ管理システム2000Bは、第1実施形態と同様の研究データベース2100及び研究データ提供プロセッサ2200に加え、解析データベース2400を含む。なお、他の要素については第1実施形態と同様に構成されていてよい。
【0129】
解析データベース2400は、研究データ管理システム2000からユーザーに提供された研究データに基づく解析によりユーザーが生成した解析データを受けて、これを蓄積する。解析データベース2400は、例えば、解析の種別毎に解析データを管理する。解析の種別には、解析手法、身体部位、解析に供されたデータ、患者属性などがある。
【0130】
研究データ管理システム2000は、解析データベース2400に蓄積された解析データを第1~第N施設などに提供することが可能である。例えば、研究データの提供と同様に、研究データ提供プロセッサ2200がユーザーからの要求に応じて解析データを提供できるように構成されていてよい。
【0131】
研究データの解析に人工知能技術を適用してもよい。医療分野への人工知能技術の応用として、意思決定支援、データ分析、データマイニング、トランザクション、画像処理、画像解析、ロボット、遺伝子解析などがある。
【0132】
医療用人工知能システムは、例えば、医療機関、研究機関等に設置され、医師や研究者により利用される。他の典型的な医療用人工知能システムは、複数の医療機関や研究機関からアクセス可能なサーバやデータベースを含んでもよい。医療用人工知能システムは、グリッドコンピューティングやクラウドコンピューティングや並列コンピューティングや分散コンピューティング等の各種コンピューティング技術を利用して構築されてもよい。
【0133】
医療用人工知能システムは、専門書や論文等の周知情報、医療機関等にて収集された医療情報などが格納されたデータベースに基づいてデータマイニング、推論、統計処理、機械学習等を実行して知識を獲得し、獲得された知識をデータベースに格納する。データベースの更新と、データマイニング等の処理とを繰り返し実行することにより、医療用人工知能システムの処理の確度や精度が向上していく。
【0134】
なお、知識とは、例えば、認識及び明示的表現が可能な情報を含み、経験的知識(経験や学習により獲得した知識)及び理論的知識(専門的情報の理論的背景知識や体系)の少なくとも一方を含む。典型的な知識として、事実、ルール、法則、判断基準、常識、ノウハウ、辞書、コーパスなどがある。また、知識には、人工知能エンジンが実行する処理に関する情報が含まれてもよい。例えば、知識は、ニューラルネットワークにおける重みパラメータやバイアスパラメータを含んでいてよい。本実施形態では、医療的、医学的な知識(医療知識)が考慮される。
【0135】
医療用人工知能システムは、典型的には、1以上のコンピュータ(人工知能エンジンを含む)と、1以上の記憶装置(データベースの少なくとも一部を構成する)とを少なくとも含む。
【0136】
〈第4実施形態〉
前述したように、医療情報処理システムが使用される地域(国、地域連合など)によって、匿名化プロセッサ1300により匿名化される項目(秘匿項目)が異なる。本実施形態では、秘匿項目の設定について説明する。例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいては、
図5Aに示す要素が各施設に設けられており、
図5Bに示す研究データ管理システム2000Cが設けられている。
【0137】
図5Aに示すように、第1施設(及び、第2~第N施設のそれぞれ)には、第1実施形態と同様の臨床データベース1100、識別情報変換プロセッサ1200、及び匿名データベース1400が設けられ、且つ、第1実施形態の匿名化プロセッサ1300の代わりに匿名化プロセッサ1300Aが設けられている。匿名化プロセッサ1300Aは、秘匿項目設定部1310を含む。
【0138】
図5Bに示す研究データ管理システム2000Cは、第1実施形態と同様の研究データベース2100及び研究データ提供プロセッサ2200に加え、地域検出部2500を含む。なお、地域検出部は研究データ管理システムに設けられている必要はない。例えば、地域検出部は第1~第N施設のいずれかに設けられていてもよいし、これら以外の位置に設けられていてもよい。
【0139】
秘匿項目設定部1310は、1以上の秘匿項目を設定する。匿名化プロセッサ1300Aは、匿名データの作成に供される臨床データに含まれるデータのうち、秘匿項目設定部1310により設定された1以上の秘匿項目のそれぞれに該当するデータ(秘匿データ)を匿名化する。秘匿項目の設定は手動又は自動で行われる。
【0140】
秘匿項目設定部1310は、当該施設が存在する地域に応じて項目を設定することができる。例えば、秘匿項目設定部1310は、2以上の地域のそれぞれに対応する秘匿項目群(例えば、秘匿項目リスト)を予め保持している。秘匿項目群は、例えば、各地域において適用される法制に基づき設定される。一例として、秘匿項目設定部1310は、米国に対応する秘匿項目群、欧州連合(EU)に対応する秘匿項目群、日本に対応する秘匿項目群、中国に対応する秘匿項目群などを予め保持する。秘匿項目設定部1310は、当該施設が存在する地域を示す情報(地域情報)の入力を受ける。地域情報の入力は手動又は自動で行われる。
【0141】
本実施形態に係る医療情報処理システムは、当該施設が存在する地域を自動で検出するように構成されていてよい。自動検出は、地域検出部2500により実行される。
【0142】
例えば、地域検出部2500は、施設に対応するIPアドレスに基づいて、その施設が存在する地域を検出することができる。或いは、地域検出部2500は、施設の所在地、電話番号、ファックス番号、電子メールアドレスなどに基づいて、その施設が存在する地域を検出することができる。或いは、地域検出部が施設内に設けられている場合、地域検出部は、衛星測位システム、基地局測位システムなどの任意の測位システムを利用して、地域検出部自身が存在する位置(したがって、地域検出部が設置されている施設が存在する地域)を検出することができる。
【0143】
地域検出部2500(又は、他の地域検出部)による検出結果は、秘匿項目設定部1310に送られる。秘匿項目設定部1310は、地域検出部2500(又は、他の地域検出部)から入力された地域検出結果に基づいて、1以上の秘匿項目を設定することができる。
【0144】
〈作用〉
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムの作用について説明する。以下、特に言及しない限り第1実施形態を参照しつつ作用を説明する。他の実施形態やその変形例においても、その特有の作用とともに、第1実施形態の場合と同様の作用が実現される。
【0145】
診察や検査等の日々の臨床的な医療行為(臨床行為)により得られる臨床データは、臨床データベース1100に蓄積される。
【0146】
臨床データベース1100に蓄積された臨床データを複数施設の共同研究に用いるために、識別情報変換プロセッサ1200が、臨床用患者ID(内部識別情報)を研究用患者ID(外部識別情報)に変換する。この変換は、臨床用患者IDから研究用患者IDへのマッピングとして解釈することができる。マッピングは、可逆的及び不可逆的のいずれであってもよい。識別情報変換プロセッサ1200は、マッピングの結果(つまり、臨床用患者IDと研究用患者IDとの間の対応関係。IDマップと呼ぶことがある。)を記憶することができる。
【0147】
また、匿名化プロセッサ1300は、臨床データベース1100から臨床データを取得し、この臨床データ中の秘匿データを匿名化することで、この臨床データから個人情報を除去する。なお、匿名化は、臨床データベース1100(電子カルテシステム、画像管理システム等)に直接に処理を適用するものではなく、臨床データベース1100から抽出された臨床データを処理するものである。
【0148】
個人情報が除去された臨床データは複数施設での共有を可能とするために、情報セキュリティ対策が十分に講じられた研究データ管理システム2000(研究データベース2100)にアップロードされ、データ共有が可能な形式で保存・管理される。研究データ管理システム2000は、研究データ提供プロセッサ2200としての機能を提供する、クラウドサービス上のサーバ、研究グループの施設内サーバなどを含む。
【0149】
研究データベース2100は、複数施設からアップロードされた臨床データの集合であり、大きなデータベース(いわゆるビックデータ)を構築する。研究データベース2100には、研究プロジェクト毎にサブデータベースが作成される。サブデータベースは、研究プロジェクトIDによって識別される。
【0150】
研究者は、自身が属する研究プロジェクトに対応するサブデータベースから臨床データの提供を受けることができる。この際、研究データ提供プロセッサ2200は、当該研究者や当該研究プロジェクトに対応したフォーマットに臨床データを変換して提供することが可能である。例えば、研究者が使い慣れているデータ解析ツールに合わせたフォーマットに変換された臨床データを提供することが可能である。
【0151】
更に、研究者により得られた解析結果を解析データベース2400に蓄積することができる。例えば、解析データベース2400に蓄積されたデータを人工知能技術等によって処理することにより、新たな知識を取得することが可能である。また、取得された知識を臨床現場(医療機関、施設)にフィードバックすることができる。医師等は、提供された知識を日々の診察や検査において利用することができる。これにより、臨床にも研究にも有用な情報循環が確立される。また、取得された知識を研究にフィードバックすることも可能である。
【0152】
研究用患者ID及び研究プロジェクトIDで臨床データを管理するように構成されているので、特定の患者の臨床データを適宜に削除することが可能である。例えば、特定の患者が複数の研究プロジェクトの対象となっている場合において、これらのうちの1つの研究プロジェクトには臨床データを提供したくないとの申し出が当該患者から事後的にあった場合、当該研究プロジェクトに供された当該患者の臨床データを研究用患者ID及び研究プロジェクトIDにより特定して削除することが可能である。このように、患者毎の臨床データの削除と、研究プロジェクト毎の臨床データの削除と、これらの組み合わせとを、必要に応じて確実に行うことができる。
【0153】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムは、各種のグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を提供することができる。例えば、患者のデータを表示するツール、患者リストを表示するツール、患者を選択するためのツール、施設から研究データ管理システム2000にアップロードされるデータ項目を設定するツール、などがある。
【0154】
アップロードデータ項目設定ツールは、例えば、複数のデータ項目を表すデータ項目リストと、複数のデータ項目に対応する複数のチェックボックスとを含む。眼科応用の一例は、患者情報(Patient Information)、疾患情報(Disease Information)、治療情報(Treatment Information)、検査情報(Examination Information)を含み、それぞれが以下のような複数のデータ項目を含む。
【0155】
例示的な患者情報は、年齢(Age)、身長(Height)、体重(Weight)、性別(Gender)、喫煙(Smoker)、血圧(Blood Pressure)などを含む。
【0156】
例示的な疾患情報は、現在罹患している眼疾患(Current Ocular Disease)、眼合併症(Ocular Complication)、糖尿病(Diabetes)、高血圧(Hypertension)、過去の眼疾患歴(Past Ocular History)などを含む。治療情報は、治療タイプ(Type)などを含む。
【0157】
例示的な検査情報は、眼圧(IOP)、自覚視力(Subjective)、他覚屈折力(Objective)、角膜曲率(Kerato)、眼軸長(Axial Length)、黄斑厚(Macular Thickness)、中心角膜厚(Central Corneal Thickness)、視野(Visual Field)、OCT生画像(OCT raw images)、OCTパラメータ(OCT parameters)などを含む。
【0158】
ユーザーは、所望のデータ項目のチェックボックスにチェックを入力する。匿名化プロセッサ1300は、ユーザーが指定したデータ項目に該当する臨床データを含む匿名データを作成する。
【0159】
アップロードデータ項目設定ツールのデータ項目リストを、当該施設が存在する地域に応じて切り替えることが可能である。また、匿名化プロセッサ1300は、ユーザーが指定したデータ項目と、当該施設が存在する地域に対応する既定のデータ項目とを画することで、ユーザーが指定したデータ項目が当該地域の法制に照らして適法であるか判定することができる。
【0160】
〈効果〉
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムの効果について説明する。
【0161】
例示的な実施形態の医療情報処理システムは、複数の医療機関(第1~第N施設)に対応する複数の臨床データベース(1100)と、複数の医療機関(第1~第N施設)に対応する複数の識別情報変換プロセッサ(1200)と、複数の医療機関(第1~第N施設)に対応する複数の匿名化プロセッサ(1300)と、複数の医療機関(第1~第N施設)に対応する複数の匿名データベース(1400)と、複数の医療機関(第1~第N施設)のいずれとも異なる施設に設置された研究データ管理システム(2000)とを含む。
【0162】
臨床データベース(1100)は、対応する医療機関にて取得された臨床データを、患者毎に割り当てられた内部識別情報に関連付けて蓄積する。
【0163】
識別情報変換プロセッサ(1200)は、対応する医療機関の臨床データベース(1100)に蓄積された臨床データに関連付けられた内部識別情報を外部識別情報に変換する。
【0164】
匿名化プロセッサ(1300)は、対応する医療機関の臨床データベース(1100)から臨床データを取得し、この臨床データに含まれる所定の秘匿データを匿名化する。
【0165】
匿名データベース(1400)は、対応する医療機関において匿名化プロセッサ(1300)により匿名化された臨床データと識別情報変換プロセッサ(1200)によりこの臨床データに関連付けられた外部識別情報とを含む匿名データを蓄積する。
【0166】
研究データ管理システム(2000)は、研究データベース(2100)と、研究データ提供プロセッサ(2200)とを含む。
【0167】
研究データベース(2100)は、複数の医療機関に対応する複数の匿名データベース(1400)から提供された匿名データを、予め設定された研究プロジェクト毎に格納する。
【0168】
研究データ提供プロセッサ(2200)は、ユーザーからの要求を受けて、このユーザーが属する研究プロジェクトに関連付けられた匿名データの少なくとも一部を研究データベースから読み出して、このユーザーに提供する。
【0169】
このような例示的な実施形態によれば、医療機関内で使用される内部識別情報の代わりに外部識別情報によって各患者の臨床データを管理するように構成されているので、情報セキュリティを担保することができる。
【0170】
また、複数の医療機関で取得された臨床データを自動で匿名化し、これら医療機関のいずれとも異なる施設に設置された研究データ管理システムに自動で集積することができる。ここで、研究データ管理システムは、複数の医療機関からアップデートされた匿名データ(研究データ)を、研究プロジェクト毎に管理するように構成されている。更に、研究データ管理システムは、研究プロジェクト単位で研究データをユーザーに提供することが可能である。
【0171】
したがって、セキュリティを担保しつつ複数の施設から有効的に利用可能な臨床データのデータベースを実現することが可能である。
【0172】
他の例示的な実施形態の医療情報処理システムは、医療機関にて取得された臨床データを患者毎に割り当てられた内部識別情報に関連付けて蓄積する臨床データベース(1100)とデータ通信が可能である。この医療情報処理システムは、複数の医療機関(第1~第N施設)に対応する複数の識別情報変換プロセッサ(1200)と、複数の医療機関(第1~第N施設)に対応する複数の匿名化プロセッサ(1300)と、複数の医療機関(第1~第N施設)に対応する複数の匿名データベース(1400)と、複数の医療機関(第1~第N施設)のいずれとも異なる施設に設置された研究データ管理システム(2000)とを含む。
【0173】
本実施形態は、臨床データベース(1100)を含んでいない。それ以外の事項については、上記の例示的実施形態と同様である。したがって、本実施形態によっても、セキュリティを担保しつつ複数の施設から有効的に利用可能な臨床データのデータベースを実現することが可能である。
【0174】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、研究データ管理システム(2000)は、研究データ削除プロセッサ(2300)を更に含んでいてよい。研究データ削除プロセッサ(2300)は、複数の医療機関(第1~第N施設)のいずれかから外部識別情報を含むデータ削除要求を受けて、このデータ削除要求に含まれる外部識別情報を含む匿名データを、研究データベース(2100)から削除するように構成されている。
【0175】
このような構成によれば、研究データベース(2100)に登録された患者の臨床データを事後的に且つ必要に応じて適宜に削除することが可能である。
【0176】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、匿名データは、匿名化プロセッサ(1300)により匿名化された臨床データから抽出された数値データと、識別情報変換プロセッサ(1200)によりこの臨床データに関連付けられた外部識別情報とを含んでいてよい。
【0177】
このような構成によれば、検査データや測定データ等の数値データを臨床データから抽出して匿名データを作成することができる。
【0178】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、匿名データは、匿名化プロセッサ(1300)により匿名化された臨床データから抽出された画像データと、識別情報変換プロセッサ(1200)によりこの臨床データに関連付けられた外部識別情報とを含んでいてよい。
【0179】
このような構成によれば、各種医療モダリティによって取得された画像データを臨床データから抽出して匿名データを作成することができる。
【0180】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、複数の識別情報変換プロセッサ(1200)の少なくともいずれかは、同一の内部識別情報に対して同一の外部識別情報を割り当てるように構成されていてよい。
【0181】
更に、匿名データは、対応する臨床データが取得された日を表す取得日情報を含んでいてよい。
【0182】
加えて、研究データベース(2100)は、同一の外部識別情報に対応する2以上の匿名データに含まれる2以上の取得日情報に基づく時間的順序にしたがってこれら2以上の匿名データを格納するように構成されていてよい。
【0183】
このような構成によれば、外部識別情報を利用して同一患者の臨床データを時間的順序にしたがって管理することが可能である。それにより、研究データの提供を受けるユーザーは、同一患者の臨床データの時間変化を解析することができる。
【0184】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、同一の患者に対して異なる2以上の内部識別情報が割り当てられている場合であって、これら2以上の内部識別情報が互いに関連付けられている場合、識別情報変換プロセッサ(1200)は、これら2以上の内部識別情報に対して同一の外部識別情報を割り当てるように構成されていてよい。
【0185】
更に、匿名データは、対応する臨床データが取得された日を表す取得日情報を含んでいてよい。
【0186】
加えて、研究データベース(2100)は、同一の外部識別情報に対応する2以上の匿名データに含まれる2以上の取得日情報に基づく時間的順序にしたがってこれら2以上の匿名データを格納するように構成されていてよい。
【0187】
このような構成によれば、同一患者に対して異なる2以上の内部識別情報が割り当てられている場合において、これら内部識別情報の間に関連付けがある場合には、これら内部識別情報に対して同じ外部識別情報を割り当てることができる。したがって、同一患者の臨床データを時間的順序にしたがって管理することが可能となり、研究データの提供を受けるユーザーは、同一患者の臨床データの時間変化を解析することが可能となる。
【0188】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、複数の医療機関の少なくともいずれか1つは、2以上の医療拠点(第1~第N施設のうちの2以上の施設)を含んでいてよい。例えば、2以上の医療拠点(クリニック、病院等、2以上の施設)を有する医療機関に対して、例示的な実施形態に係る医療情報処理システムを適用することができる。
【0189】
更に、2以上の内部識別情報は、それぞれ2以上の医療拠点に対応するものであってよい。
【0190】
このような構成によれば、同じ医療機関グループに属する2以上の医療拠点にて同一患者に対して異なる2以上の内部識別情報が割り当てられている場合において、これら内部識別情報に対して同じ外部識別情報を割り当てることができ、同一患者の臨床データを時間的順序にしたがって管理することが可能となり、研究データの提供を受けるユーザーは、同一患者の臨床データの時間変化を解析することが可能となる。
【0191】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、複数の医療機関の少なくともいずれか1つが2以上の医療拠点を含む場合、これら2以上の医療拠点において同一の患者に対して同一の内部識別情報が割り当てられるように構成されていてもよい。
【0192】
このような構成によれば、同じ医療機関グループに属する2以上の医療拠点において、同一の患者に対して同じ内部識別情報(したがって、同じ外部識別情報)を割り当てることが可能である。
【0193】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、研究データ提供プロセッサ(2200)は、ユーザーからの要求を受けて、このユーザーが属する研究プロジェクトに関連付けられた匿名データ(研究データ)の少なくとも一部を研究データベース(2100)から読み出す。更に、研究データ提供プロセッサ(2200)は、研究データベース(2100)から読み出された匿名データを、このユーザー又はこのユーザーが属する研究プロジェクトに予め関連付けられたフォーマットに変換する。加えて、研究データ提供プロセッサ(2200)は、フォーマットが変換された匿名データをユーザーに提供する。
【0194】
このような構成によれば、ユーザーや研究プロジェクトに応じたフォーマットに自動で変換された研究データを提供できるので、ユーザーは円滑且つ迅速に解析を行うことが可能である。
【0195】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、研究データ管理システム(2000)は、解析データベース(2400)を含んでいてよい。解析データベース(2400)は、提供された匿名データ(研究データ)に基づく解析によりユーザーが生成した解析データを受けて、これを蓄積するように構成されている。
【0196】
このような構成によれば、ユーザーが実施した解析の結果を集積してデータベースを構築することができる。更に、蓄積された解析結果を処理して新たな知識を取得することや、この知識を臨床現場(医療機関、施設)にフィードバックしたり、研究にフィードバックしたりすることができる。
【0197】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、複数の匿名化プロセッサ(1300)の少なくともいずれかは、秘匿項目設定部(1310)を含んでいてよい。秘匿項目設定部(1310)は、所定の秘匿データの項目(秘匿項目)を設定するように構成されている。
【0198】
このような構成によれば、任意に及び/又は適宜に秘匿項目を設定することが可能である。
【0199】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにおいて、秘匿項目設定部(1310)は、対応する医療機関が存在する地域に応じて秘匿項目を設定するように構成されていてよい。
【0200】
このような構成によれば、医療機関が存在する地域(例えば、国、地域連合)に応じて秘匿項目を設定することが可能である。より具体的には、その地域の法制や慣例に応じて秘匿項目を設定することができる。
【0201】
例示的な実施形態に係る医療情報処理システムは、地域検出部(2500)を更に含んでいてよい。地域検出部(2500)は、対応する医療機関が存在する地域を検出する。更に、秘匿項目設定部(1310)は、地域検出部(2500)からの出力に基づいて秘匿項目を設定するように構成されていてよい。
【0202】
このような構成によれば、医療機関が存在する地域を自動で検出し、その結果にしたがって自動で秘匿項目を設定することができる。
【0203】
例示的な実施形態に係る医療情報処理方法は、以下の複数の工程を含む。
【0204】
臨床データ保存工程において、複数の医療機関にそれぞれ対応付けられた複数の臨床データベースに、それぞれ対応する医療機関にて取得された臨床データを、患者毎に割り当てられた内部識別情報に関連付けて保存する。
【0205】
識別情報変換工程において、複数の医療機関にそれぞれ対応付けられた複数の識別情報変換プロセッサが、それぞれ対応する医療機関の臨床データベースに保存された臨床データに関連付けられた内部識別情報を外部識別情報に変換する。
【0206】
匿名化工程においえ、複数の医療機関にそれぞれ対応付けられた複数の匿名化プロセッサが、それぞれ対応する医療機関の臨床データベースから臨床データを取得し、この臨床データに含まれる所定の秘匿データを匿名化する。
【0207】
匿名データ保存工程において、複数の医療機関にそれぞれ対応付けられた複数の匿名データベースに、それぞれ対応する医療機関において匿名化プロセッサにより匿名化された臨床データと識別情報変換プロセッサによりこの臨床データに関連付けられた外部識別情報とを含む匿名データを保存する。
【0208】
研究データ格納工程において、複数の医療機関のいずれとも異なる施設に設置された研究データベースに、複数の匿名データベースから提供された匿名データを予め設定された研究プロジェクト毎に格納する。
【0209】
研究データ提供工程においえ、複数の医療機関のいずれとも異なる施設に設置された研究データ提供プロセッサが、ユーザーからの要求を受けて、このユーザーが属する研究プロジェクトに関連付けられた匿名データの少なくとも一部を研究データベースから読み出してこのユーザーに提供する。
【0210】
このような例示的な実施形態によれば、セキュリティを担保しつつ複数の施設から有効的に利用可能な臨床データのデータベースを実現することが可能である。なお、例示的な実施形態に係る医療情報処理システムにより実行可能な任意の工程を、例示的な実施形態に係る医療情報処理方法に組み合わせることが可能である。
【0211】
例示的な実施形態に係る医療情報処理方法をコンピュータ(群)に実行させるプログラムを構成することが可能である。このプログラムは、医療情報処理システム(これを構成する複数のプロセッサ及び複数のデータベース)に上記の複数の工程を実行させるように構成される。
【0212】
このようなプログラムによれば、セキュリティを担保しつつ複数の施設から有効的に利用可能な臨床データのデータベースを実現することが可能である。
【0213】
例示的な実施形態に係るプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。この非一時的記録媒体は任意の形態であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
【0214】
例示的な実施形態に係るプログラム及び/又は例示的な実施形態に係る記録媒体に対して、例示的な実施形態に係る医療情報処理システムとして説明された様々な処理のいずれかを適用することが可能である。
【0215】
以上に説明した実施形態は本発明の典型的な例示に過ぎない。よって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
【符号の説明】
【0216】
1100 臨床データベース
1200 識別情報変換プロセッサ
1300 匿名化プロセッサ
1400 匿名データベース
2000 研究データ管理システム
2100 研究データベース
2200 研究データ提供プロセッサ
2300 研究データ削除プロセッサ
2400 解析データベース
2500 地域検出部