(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240122BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20240122BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240122BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240122BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20240122BHJP
H01L 25/00 20060101ALI20240122BHJP
H01L 25/04 20230101ALI20240122BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240122BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240122BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20240122BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240122BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
H01L27/04 L
H01L27/04 H
H01L27/04 U
H01L21/88 S
H01L25/00 B
H01L25/04 Z
H01F17/00 B
H01F27/32 130
H01F27/28 104
H01F30/10 D
(21)【出願番号】P 2022148939
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2020218502の分割
【原出願日】2014-10-28
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2013235190
(32)【優先日】2013-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013235191
(32)【優先日】2013-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014145041
(32)【優先日】2014-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 光生
(72)【発明者】
【氏名】三冨士 道彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 勇
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 聡
(72)【発明者】
【氏名】加川 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】笠原 信行
(72)【発明者】
【氏名】柳島 大輝
(72)【発明者】
【氏名】石川 俊行
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-257421(JP,A)
【文献】特開2013-149940(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055611(WO,A1)
【文献】特開2001-250722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0278372(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 21/822
H01L 21/3205
H01L 25/00
H01L 25/04
H01F 17/00
H01F 27/32
H01F 27/28
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リードフレームと、
前記第1リードフレームに接合された第1半導体チップと、
第2リードフレームと、
前記第2リードフレームに接合された第2半導体チップと、
前記第2リードフレームに接合され、平面視において前記第1半導体チップと前記第2半導体チップとの間に配置されたインダクタチップとを含み、
前記インダクタチップは、
下側インダクタ配線と、
断面視において前記下側インダクタ配線に対向するように前記下側インダクタ配線の上方に形成され、互いに隣り合う配線を有する上側インダクタ配線と、
平面視において前記下側インダクタ配線および前記上側インダクタ配線を取り囲み、接地電位とは異なる電位である周辺配線とを含み、
前記上側インダクタ配線を形成する配線において互いに隣り合う配線間の距離は、前記周辺配線と前記上側インダクタ配線を形成する配線のうち最も外側の配線との距離よりも小さく、
前記周辺配線と前記上側インダクタ配線を形成する配線のうち最も外側の配線との距離は、前記上側インダクタ配線が有する曲線部分の全体にわたって一定であ
り、
前記周辺配線は、前記下側インダクタ配線および前記上側インダクタ配線から電気的に分離されている、半導体装置。
【請求項2】
平面視において、前記周辺配線のさらに外側に形成され、前記周辺配線とは異なる電位に接続された第2周辺配線をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2周辺配線は、接地電位に接続されている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記下側インダクタ配線と前記上側インダクタ配線との間には、絶縁体が介在している、請求項
3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記上側インダクタ配線の上方にはコイル保護層が形成されている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記コイル保護層は、前記上側インダクタ配線の厚さよりも大きな厚さを有している、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記上側インダクタ配線を形成する配線は、互いに等しい間隔を空けて形成されている、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記下側インダクタ配線は、互いに隣り合う配線を有しており、
前記下側インダクタ配線を形成する配線は、互いに等しい間隔を空けて形成されている、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記下側インダクタ配線に接続され、かつ前記インダクタチップの表面に形成されたパッドに接続された配線パターンを含む、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記上側インダクタ配線は、Cuを含む材料で形成されている、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記下側インダクタ配線は、Cuを含む材料で形成されている、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2半導体チップから前記第1半導体チップへは、前記インダクタチップを介して制御信号が印加される、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1半導体チップ、前記第2半導体チップおよび前記インダクタチップは、SOP(Small Outline Package)パッケージとして封止されている、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記パッドは、平面視において四角形状に形成されている、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記コイル保護層は、ポリイミドを含む材料で形成されている、請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第1半導体チップと前記インダクタチップとを接続する金属配線を含む、請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1半導体チップに形成された高出力トランジスタと、
前記第2半導体チップに形成された低出力トランジスタとを含み、
前記高出力トランジスタは、前記低出力トランジスタの定格出力電圧よりも高い定格出力電圧を有している、請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
平面視において、前記インダクタチップは、前記第2半導体チップよりも小さなサイズを有している、請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
平面視において、前記インダクタチップは、前記第1半導体チップよりも小さなサイズを有している、請求項18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記上側インダクタ配線は、丸みを帯びた形状に形成されている、請求項19に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばパワーエレクトロニクスの分野において、互いに対向配置された一対のコイルを有するトランスの開発が進められている。
特許文献1は、一対のインダクタを有するトランスを開示している。一方のインダクタは、中心軸を回転軸として180°回転して他方のインダクタに対向配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、トランスの耐圧対策箇所は、一対のコイル間の絶縁膜である。当該絶縁膜にはトランスのコイル間の大きな電圧が加わるので、薄い絶縁膜では、その電圧に耐えることができないためである。
一方、トランスから絶縁膜の面内方向(横方向)に離れた領域に、低電圧領域(たとえば、低電圧コイル用の配線が形成された領域等)が設けられることがある。通常、低電圧領域-トランス間の距離は、トランスのコイル間の距離に比べて数十倍以上に設定される。そのため、低電圧領域-トランス間の領域で絶縁破壊が起こることについて、現在までほとんど検討されてこなかった。
【0005】
しかしながら、この出願の発明者らが鋭意検討した結果、トランスのコイル間にサージ破壊試験を行ったときに、コイル間の破壊がなくても、絶縁膜が横方向に沿って破壊する場合があることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、第1リードフレームと、前記第1リードフレームに接合された第1半導体チップと、第2リードフレームと、前記第2リードフレームに接合された第2半導体チップと、前記第2リードフレームに接合され、平面視において前記第1半導体チップと前記第2半導体チップとの間に配置されたインダクタチップとを含み、前記インダクタチップは、下側インダクタ配線と、断面視において前記下側インダクタ配線に対向するように前記下側インダクタ配線の上方に形成され、互いに隣り合う配線を有する上側インダクタ配線と、平面視において前記下側インダクタ配線および前記上側インダクタ配線を取り囲み、接地電位とは異なる電位である周辺配線とを含み、前記上側インダクタ配線を形成する配線において互いに隣り合う配線間の距離は、前記周辺配線と前記上側インダクタ配線を形成する配線のうち最も外側の配線との距離よりも小さく、前記周辺配線と前記上側インダクタ配線を形成する配線のうち最も外側の配線との距離は、前記上側インダクタ配線が有する曲線部分の全体にわたって一定である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態を示す半導体モジュールの模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、前記半導体モジュールの接続形態および各部の電位を示す図である。
【
図3】
図3は、トランスチップの平面構造を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、前記トランスチップの下コイルの平面構造を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、前記トランスチップの上コイルの平面構造を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、前記トランスチップの断面図(
図3のVI-VI線断面図)である。
【
図8】
図8は、トランスを備える半導体チップにおける層間膜の厚さと破壊電圧との関係を示す図である。
【
図9】
図9は、前記トランスチップ内のキャパシタのパターンに関する変形例を示す。
【
図10】
図10は、前記トランスチップ内のキャパシタのパターンに関する変形例を示す。
【
図11】
図11は、前記トランスチップ内のキャパシタのパターンに関する変形例を示す。
【
図12】
図12は、前記トランスチップ内のキャパシタのパターンに関する変形例を示す。
【
図13】
図13は、前記トランスチップ内のキャパシタのパターンに関する変形例を示す。
【
図14】
図14は、前記キャパシタに代わる電界シールド部の一例としての電極板の構造を説明するための図である。
【
図15】
図15は、前記電極板のパターンに関する変形例を示す。
【
図16】
図16は、前記電極板のパターンに関する変形例を示す。
【
図17】
図17は、前記トランスチップの基板の接続状態に関する変形例を示す。
【
図18】
図18は、前記トランスチップの基板の接続状態に関する変形例を示す。
【
図19】
図19は、前記トランスチップの基板の接続状態に関する変形例を示す。
【
図20】
図20は、本発明の他の実施形態1に係るトランスチップの模式的な平面図である。
【
図21】
図21は、本発明の他の実施形態1に係る下コイルが配置された層の模式的な平面図である。
【
図22】
図22は、本発明の他の実施形態1に係る上コイルが配置された層の模式的な平面図である。
【
図23】
図23は、
図20の切断線XXIII-XXIIIでトランスチップを切断したときに現れる断面図である。
【
図25】
図25は、本発明の他の実施形態2に係るトランスチップの模式的な平面図である。
【
図26】
図26は、本発明の他の実施形態2に係る下コイルが配置された層の模式的な平面図である。
【
図27】
図27は、本発明の他の実施形態2に係る上コイルが配置された層の模式的な平面図である。
【
図28】
図28は、
図25の切断線XXVIII-XXVIIIでトランスチップを切断したときに現れる断面図である。
【
図30A】
図30Aは、同種界面構造の形成に関連する工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、この発明の実施の形態および参考例を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す半導体モジュール1の模式的な平面図である。
図1では、半導体モジュール1の内部構造の明瞭化のためモジュール1の中央部を透視して示している。
【0009】
半導体モジュール1は、複数のチップが1パッケージ化されたモジュールであって、樹脂パッケージ2と、複数のリード3と、複数のチップ類4とを含む。
樹脂パッケージ2は、たとえばエポキシ樹脂を用いて四角(正方形)板状に形成されている。
複数のリード3は、この実施形態では、樹脂パッケージ2の互いに対向する一対の端面を介して、樹脂パッケージ2の内外に跨って設けられている。これにより、半導体モジュール1のパッケージタイプは、SOP(Small Outline Package)となっている。なお、半導体モジュール1には、SOPに限らず、たとえば、QFP(Quad Flat Package)、SOJ(Small Outline J-lead Package)等、色々なタイプのパッケージを採用することができる。
【0010】
複数のチップ類4は、この発明の低電圧素子の一例としてのコントローラチップ5(コントローラIC)と、この発明の半導体装置の一例としてのトランスチップ6と、この発明の高電圧素子の一例としてのドライバチップ7(ドライバIC)とを含む。
トランスチップ6が樹脂パッケージ2のほぼ中央部に配置され、コントローラチップ5およびドライバチップ7は、それぞれ、トランスチップ6に対して一方のリード3側およびその反対のリード3側に配置されている。すなわち、コントローラチップ5およびドライバチップ7は、それらの間にトランスチップ6を挟むように配置され、それぞれ、複数のリード3に隣り合っている。
【0011】
各チップ5~7は、四角(長方形)板状に形成されており、この実施形態では、互いにほぼ同じ大きさのコントローラチップ5およびドライバチップ7に対して、トランスチップ6が小さく形成されている。また、コントローラチップ5およびトランスチップ6は共通の第1ダイパッド8上に配置され、ドライバチップ7は、第1ダイパッド8から間隔を置いて設けられた第2ダイパッド9上に配置されている。
【0012】
コントローラチップ5の表面には、複数のパッド10およびパッド11が形成されている。複数のパッド10は、コントローラチップ5のリード3に近い側の長辺に沿って配列され、ボンディングワイヤ12によってリード3に接続されている。複数のパッド11は、コントローラチップ5のリード3の反対側(トランスチップ6に近い側)の長辺に沿って配列されている。
【0013】
トランスチップ6の表面には、複数の低電圧パッド13および高電圧パッド14が形成されている。複数の低電圧パッド13は、トランスチップ6のコントローラチップ5に近い側の長辺に沿って配列され、ボンディングワイヤ15によってコントローラチップ5のパッド11に接続されている。すなわち、この実施形態では、コントローラチップ5のパッド11がトランスチップ6の一次側に接続されている。複数の高電圧パッド14は、トランスチップ6の幅方向中央部においてトランスチップ6の長辺に沿って配列されている。
【0014】
ドライバチップ7の表面には、複数のパッド16およびパッド17が形成されている。複数のパッド16は、ドライバチップ7のトランスチップ6に近い側の長辺に沿って配列され、ボンディングワイヤ18によってトランスチップ6の高電圧パッド14に接続されている。すなわち、この実施形態では、ドライバチップ7のパッド16がトランスチップ6の二次側に接続されている。複数のパッド17は、ドライバチップ7のトランスチップ6の反対側(リード3に近い側)の長辺に沿って配列され、ボンディングワイヤ19によってリード3に接続されている。
【0015】
なお、
図1で示した各チップ5~7のパッド類の配置形態は一例に過ぎず、パッケージタイプやチップ類4の配置形態に応じて適宜変更することができる。
図2は、
図1の半導体モジュール1の接続形態および各部の電位を示す図である。
図2に示すように、半導体モジュール1ではトランスチップ6において、この発明の低電圧コイルの一例としての一次側(低圧側)の下コイル20と、この発明の高電圧コイルの一例としての二次側(高圧側)の上コイル21とが上下方向に間隔を置いて対向している。下コイル20および上コイル21は、それぞれ、渦巻き状に形成されている。
【0016】
下コイル20の内側コイルエンド22(渦巻きの内側末端)および外側コイルエンド92(渦巻きの外側末端)には、それぞれ、低電圧配線24および低電圧配線93が接続されている。低電圧配線24,93の末端は、低電圧パッド13として露出している。
上コイル21の内側コイルエンド23および外側コイルエンド94には、それぞれ、高電圧配線25(内側コイルエンド配線)および高電圧配線95(外側コイルエンド配線)が接続されている。高電圧配線25,95の末端は、高電圧パッド14として露出している。
【0017】
コントローラチップ5には、或るパッド10と或るパッド11とを接続する配線90の途中に、トランジスタTr1が設けられている。また、他のパッド10と他のパッド11とを接続する配線91の途中に、トランジスタTr2が設けられている。トランジスタTr1,Tr2は、それぞれ、配線90,91の導通・遮断を行うスイッチング素子である。配線90側のパッド10,11は、それぞれ、ボンディングワイヤ12,15を通じて入力電圧および外側コイルエンド92側の低電圧パッド13に接続されている。配線91側のパッド10,11は、それぞれ、ボンディングワイヤ12,15を通じて接地電圧および内側コイルエンド22側の低電圧パッド13に接続されている。
【0018】
第1印加状態(Tr1:ON、Tr2:OFF)と第2印加状態(Tr1:OFF、Tr2:ON)が交互に繰り返されるようにコントローラチップ5を制御することによって、トランスチップ6の下コイル20に周期的なパルス電圧が発生する。たとえば、
図2では、基準電圧=0V(接地電圧)に対して5Vのパルス電圧が下コイル20で発生する。
トランスチップ6では、直流信号が下コイル20と上コイル21との間で遮断されつつ、電磁誘導によって、下コイル20で発生したパルス電圧に基づく交流信号のみが選択的に高圧側(上コイル21)に伝達される。伝達される交流信号は、下コイル20と上コイル21との間の変圧比に応じて昇圧され、ボンディングワイヤ18を通じて、ドライバチップ7に取り出される。たとえば、
図2では、5Vのパルス電圧が、基準電圧=1200Vに対して15Vのパルス電圧としてドライバチップ7に取り出される。ドライバチップ7は、入力された15Vのパルス電圧をSiCパワーMOSFET(たとえば、ソース-ドレイン間電圧=1200V)のゲート電極(図示せず)に印加することによって、当該MOSFETのスイッチング動作を行う。
【0019】
なお、
図2で示した具体的な電圧値は、半導体モジュール1の動作を説明するために用いた一例に過ぎない。ドライバチップ7(HV領域)の基準電圧は1200Vを超える値(たとえば、3750V等)であってもよい。
図3は、
図1のトランスチップ6の平面構造を説明するための模式図である。
図4は、トランスチップ6の下コイル20が配置された層の平面構造を説明するための模式図である。
図5は、トランスチップ6の上コイル21が配置された層の平面構造を説明するための模式図である。
図6は、トランスチップ6の断面図(
図3のVI-VI線断面図)である。
図7は、
図6における上コイル21およびその周辺の拡大図である。
図6では、明瞭化のために、金属部分のみをハッチングで示している。
【0020】
次に、トランスチップ6の内部構造を、より具体的に説明する。
トランスチップ6は、
図6に示すように、半導体基板26と、半導体基板26上に形成された絶縁層積層構造27とを含む。半導体基板26としては、Si(シリコン)基板、SiC(炭化珪素)基板等を適用することができる。
絶縁層積層構造27は、半導体基板26の表面から順に積層された複数(
図6では12層)の絶縁層28からなる。複数の絶縁層28は、半導体基板26の表面に接する最下層の絶縁層28を除いて、それぞれ、下層のエッチングストッパ膜29と、上層の層間絶縁膜30との積層構造からなる。最下層の絶縁層28は、層間絶縁膜30のみからなる。エッチングストッパ膜29としては、たとえば、SiN膜、SiC膜、SiCN膜等を使用することができ、層間絶縁膜30としては、たとえば、SiO
2膜を使用することができる。
【0021】
下コイル20および上コイル21は、絶縁層積層構造27において互いに異なる絶縁層28に形成され、一層以上の絶縁層28を挟んで互いに対向している。この実施形態では、下コイル20が半導体基板26から4層目の絶縁層28に形成され、上コイル21は、下コイル20との間に6層の絶縁層28を挟んで、11層目の絶縁層28に形成されている。
【0022】
図3~
図5に示すように、下コイル20および上コイル21は、それぞれ、中央に平面視楕円形の内方領域31,32が区画されるように、その内方領域31,32の周囲を取り囲む楕円環状の領域に形成されている。
各内方領域31,32を取り囲む領域における下コイル20および上コイル21の構造は、
図7に示された上コイル21を参照して説明できる。すなわち、
図7に示すように、内方領域32を取り囲む領域において、絶縁層28には、楕円渦巻き状のコイル溝33が形成されている。コイル溝33は、層間絶縁膜30およびその下方のエッチングストッパ膜29を貫通して形成されている。これにより、コイル溝33の上端および下端は、それぞれ、上方の絶縁層28のエッチングストッパ膜29および下方の絶縁層28の層間絶縁膜30に開放した面となっている。
【0023】
コイル溝33の内面(側面および底面)には、バリアメタル34が形成されている。バリアメタル34は、コイル溝33に上方が開放した空間が形成されるように、当該側面および底面に倣って膜状に形成されている。この実施形態では、バリアメタル34は、コイル溝33の内面に近い側からTa(タンタル)膜、TaN(窒化タンタル)膜およびTa膜をこの順に積層することによって形成されている。そして、コイル溝33においてバリアメタル34の内側にCu(銅)配線材料35を埋め込むことによって、バリアメタル34およびCu配線材料35からなる埋め込みコイルの一例としての上コイル21が形成されている。
【0024】
上コイル21は、その上面が絶縁層28の上面と面一になるように形成されている。これにより、上コイル21は、側面、上面および下面において、互いに異なる絶縁層28に接している。具体的には、上コイル21が埋め込まれた絶縁層28は、エッチングストッパ膜29および層間絶縁膜30が上コイル21の側面に接しており、この絶縁層28の上側に形成された絶縁層28は、下層のエッチングストッパ膜29のみが上コイル21の上面に接している。また、下側の絶縁層28は、上層の層間絶縁膜30のみが上コイル21の下面に接している。
【0025】
なお、ここでは説明を省略するが、下コイル20も上コイル21と同様に、コイル溝にバリアメタルおよびCu配線材料を埋め込むことによって形成されている。
図3,
図6および
図7に示すように、高電圧パッド14は、絶縁層積層構造27の表面(最上層の絶縁層28の層間絶縁膜30上)に形成されている。高電圧パッド14は、絶縁層積層構造27の積層方向に沿ってトランスチップ6を上方から見た平面視において、上コイル21が配置された中央の高電圧領域(HV領域)36に配置されている。
【0026】
ここで、高電圧領域36は、上コイル21が埋め込まれた絶縁層28における、上コイル21および上コイル21と同電位の配線が形成された領域、およびそれら形成領域の周辺部を含む。この実施形態では、
図5に示すように、上コイル21がトランスチップ6の長手方向に間隔を置いて2つずつペアで合計4つ形成されている。各ペアの上コイル21の内方領域32および隣り合う上コイル21間には、それぞれ、内側コイルエンド配線37および外側コイルエンド配線96が形成されている。これにより、各ペアでは、一方の上コイル21および他方の上コイル21が、その間の共通の外側コイルエンド配線96によって互いに電気的に接続されており、これら両方の上コイル21、その間の外側コイルエンド配線96および各上コイル21内の内側コイルエンド配線37は全て同電位となっている。したがって、当該絶縁層28では、各上コイル21の内方領域32および各ペアにおける上コイル21間の領域も、上コイル21、内側コイルエンド配線37もしくは外側コイルエンド配線96からの電界が及ぶ範囲内として、高電圧領域36に含まれている。なお、下コイル21(低電圧コイル)が配置された領域は、平面視では高電圧領域36に一致するが、高電圧コイル21から複数の絶縁層28によって隔離されており、上コイル21からの電界の影響がほとんど及ばないので、この実施形態で言う高電圧領域36に含まれるものではない。
【0027】
そして、高電圧パッド14は、より具体的には
図3に示すように、各上コイル21の内方領域32の上方および各ペアにおける上コイル21間の領域の上方に一つずつ、合計6個配置されている。
たとえば
図6および
図7に示すように、或る高電圧パッド14は、上コイル21と同一の絶縁層28に埋め込まれた内側コイルエンド配線37に、ビア38を介して接続されている。図示はしないが、他の高電圧パッド14は、同様の構造によって、上コイル21と同一の絶縁層28に埋め込まれた外側コイルエンド配線96にビアを介して接続されている。これにより、上コイル21に伝達された交流信号を、内側コイルエンド配線37およびビア38、ならびに外側コイルエンド配線96およびビア(図示せず)を介して、高電圧パッド14から出力することができる。すなわち、内側コイルエンド配線37およびそれに接続されたビア38、ならびに外側コイルエンド配線96およびそれに接続されたビアを合わせたものが、それぞれ、
図2の高電圧配線25および高電圧配線95となる。
【0028】
なお、内側コイルエンド配線37およびビア38は、それぞれ上コイル21と同様に、
図7に示すように、配線溝39,40にバリアメタル41,42およびCu配線材料43,44を埋め込むことによって形成されている(外側コイルエンド配線96およびそれに接続されたビアについても同じ)。バリアメタル41,42には、前述のバリアメタル34と同じ材料を適用することができる。
【0029】
一方、絶縁層積層構造27には、高電圧領域36とは電気的に切り離された低電位の領域(LV領域)として、低電圧領域46(
図4および
図6)、外側低電圧領域47(
図3~
図7)および中間領域48(
図3~
図7)が設定されている。
低電圧領域46は、下コイル20が埋め込まれた絶縁層28における、下コイル20および下コイル20と同電位の配線が形成された領域、およびそれら形成領域の周辺部を含んでいる。低電圧領域46は、下コイル20と上コイル21との関係と同様に、一層以上の絶縁層28を挟んで高電圧領域36に対向している。下コイル20は、この実施形態では、
図4に示すように、上コイル21と対向する位置、すなわちトランスチップ6の長手方向に間隔を置いて2つずつペアで合計4つ形成されている。各ペアの下コイル20の内方領域31および隣り合う下コイル20間には、それぞれ、内側コイルエンド配線49および外側コイルエンド配線97が形成されている。これにより、各ペアでは、一方の下コイル20および他方の下コイル20が、その間の共通の外側コイルエンド配線97によって互いに電気的に接続されており、これら両方の下コイル20、その間の外側コイルエンド配線97および各下コイル20内の内側コイルエンド配線49は全て同電位となっている。したがって、当該絶縁層28では、各下コイル20の内方領域31および各ペアにおける下コイル20間の領域も、下コイル20、内側コイルエンド配線49もしくは外側コイルエンド配線97からの電界が及ぶ範囲内として、低電圧領域46に含まれている。なお、内側コイルエンド配線49は、
図5に示すように、平面視において高電圧側の内側コイルエンド配線37からずれた位置に配置されている。
【0030】
外側低電圧領域47は、
図3~
図5に示すように、高電圧領域36および低電圧領域46を取り囲むように設定され、中間領域48は、高電圧領域36および低電圧領域46と外側低電圧領域47との間に設定されている。
図3,
図6および
図7に示すように、低電圧パッド13は、外側低電圧領域47において絶縁層積層構造27の表面(最上層の絶縁層28の層間絶縁膜30上)に形成されている。低電圧パッド13は、この実施形態では、トランスチップ6の長手方向に互いに間隔を置いて6個設けられた高電圧パッド14のそれぞれの側方に一つずつ、合計6個配置されている。各低電圧パッド13は、絶縁層積層構造27内を引き回された低電圧配線24,93によって、下コイル20に接続されている。
【0031】
低電圧配線24は、貫通配線51と、引き出し配線52とを含む。
貫通配線51は、外側低電圧領域47において各低電圧パッド13から少なくとも下コイル20が形成された絶縁層28を貫通して、下コイル20よりも下方の絶縁層28に達する柱状に形成されている。より具体的には、貫通配線51は、それぞれ、上コイル21および下コイル20と同一の絶縁層28に埋め込まれた島状(四角形状)の低電圧層配線53,54と、それらの間を接続する複数のビア55と、上側の低電圧層配線53と低電圧パッド13とを接続するビア56と、下側の低電圧層配線54と引き出し配線52とを接続するビア57とを含む。
【0032】
引き出し配線52は、低電圧領域46から、下コイル20よりも下方の絶縁層28を介して外側低電圧領域47に引き出された線状に形成されている。より具体的には、引き出し配線52は、前述の内側コイルエンド配線49と、下コイル20よりも下方の絶縁層28に埋め込まれ、下コイル20を下方で横切る線状の引き出し層配線58と、引き出し層配線58と内側コイルエンド配線49とを接続するビア59とを含む。引き出し層配線58は、ビア86を介して半導体基板26に接続されている。これにより、低電圧配線24は、基板電圧(たとえば接地電圧)に固定される。
【0033】
なお、配線49,53,54,58およびビア55~57,59は、それぞれ上コイル21と同様に、配線溝にバリアメタルおよびCu配線材料を埋め込むことによって形成されている。一例として、
図7に示すように、低電圧層配線53およびビア55,56は、それぞれ、配線溝60~62にバリアメタル63~65およびCu配線材料66~68を埋め込むことによって形成されている。バリアメタル63~65には、前述のバリアメタル34と同じ材料を適用することができる。
【0034】
なお、詳細は省略するが、低電圧配線93も、低電圧配線24と同様に、貫通配線(図示せず)と、引き出し配線98(
図3~
図5)とを含む配線によって構成されている。
以上の構成により、或る低電圧パッド13は、
図3~
図6に示すように、貫通配線51および引き出し配線52を介して、下コイル20の内側コイルエンド配線49に接続されている。また、他の低電圧パッド13は、
図3~
図6に示すように、貫通配線および引き出し配線98を介して、下コイル20の外側コイルエンド配線96に接続されている。これにより、低電圧パッド13に入力された信号を、貫通配線51および引き出し配線52を介して下コイル21に伝達することができる。
【0035】
絶縁層積層構造27には、低電圧配線24よりもさらに外側にシールド層69が形成されている。このシールド層69は、外部からデバイス内に水分が入ったり、端面のクラックが内部に広がったりすることを防止する。
シールド層69は、
図3~
図6に示すように、トランスチップ6の端面に沿って壁状に形成されており、その底部において半導体基板26に接続されている。これにより、シールド層69は、基板電圧(たとえば接地電圧)に固定される。より具体的には、シールド層69は、
図6に示すように、それぞれ、上コイル21、下コイル20および引き出し層配線58と同一の絶縁層28に埋め込まれたシールド層配線70~72と、それらの間を接続する複数のビア73と、最下層のシールド層配線72と半導体基板26とを接続するビア74とを含む。シールド層配線70~72およびビア73,74は、それぞれ上コイル21と同様に、配線溝にバリアメタルおよびCu配線材料を埋め込むことによって形成されている。
【0036】
さらに、絶縁層積層構造27上には、保護膜75およびパッシベーション膜76が、絶縁層積層構造27の全面に順に積層されている。パッシベーション膜76の上には、上コイル21の直上の領域を選択的に覆う楕円環状のコイル保護膜77が形成されている。それらの膜75~77には、低電圧パッド13および高電圧パッド14をそれぞれ露出させるためのパッド開口78,79が形成されている。
【0037】
保護膜75は、たとえばSiO2からなり、150nm程度の厚さを有している。パッシベーション膜76は、たとえばSiNからなり、1000nm程度の厚さを有している。コイル保護膜77は、たとえばポリイミドからなり、4000nm程度の厚さを有している。
次に、トランスチップ6の各部の詳細について、以下に説明を加える。
【0038】
図2で説明したように、トランスチップ6の下コイル20と上コイル21との間には、大きな電位差(たとえば、1200V程度)が生じる。そのため、下コイル20と上コイル21と間に配置される絶縁層28は、その電位差による絶縁破壊を生じない耐圧を実現可能な厚さを有していなければならない。
そこで、この実施形態では、
図6に示すように、300nm程度のエッチングストッパ膜29および2100nm程度の層間絶縁膜30の積層構造からなる絶縁層28を、コイル間に複数層(たとえば6層)介在させて、絶縁層28のトータルの厚さL2を12.0μm~16.8μmにすることによって、下コイル20と上コイル21との間の縦方向のDC絶縁を実現している。
【0039】
しかしながら、この出願の発明者らが、トランスを備える半導体チップにおける層間膜の厚さとサージ破壊電圧との関係を実験したところ、
図8に示す結果が得られた。
図8において、層間膜とは、この実施形態における絶縁層28と同様の構造を有する膜である。
図8によると、コイル間の層間膜の層数を増やして膜厚を大きくすればするほど、縦方向のDC絶縁が良好に実現できているにも関わらず、たとえば、上コイル21と低電圧パッド13との間(コイル-パッド間)や、上コイル21とシールド層26との間(コイル-シールド間)といった横方向の破壊が支配的になっていることが分かる。
【0040】
通常は、下コイル20と上コイル21と間の絶縁層28のトータル厚さL2に比べて、上コイル21と外側低電圧領域47との距離L0(この実施形態では、中間領域48の幅)の方が大きい。たとえば、距離L0は100μm~450μmが一般的であり、前述の厚さL2との比(距離L0/厚さL2)で表せば、6/1~40/1となる。したがって、たとえば高電圧領域36と外側低電圧領域47との間に、下コイル20と上コイル21との間(高電圧領域36と低電圧領域46との間)の電位差と同等の電位差が生じても、それらの領域の距離だけを考えれば、理論上は距離L0>厚さL2であるから絶縁破壊は生じない。しかしながら、
図8で証明されるように、コイル間の層間膜が厚くなれば、横方向の破壊が支配的になってしまうのである。なお、
図6では、距離L0よりも厚さL2の方が大きく表されているが、実際には距離L0>>厚さL2の関係にある。
【0041】
この点、この出願の発明者らは、高電圧領域36と外側低電圧領域47との間に、電気的にフローティングされた金属部材からなるシールドを設ければ、外側低電圧領域47の特定部位に対する電界集中を緩和して、横方向の破壊を防止できることを見出した。
そこで、この実施形態では、
図3および
図5に示すように、平面視で高電圧領域36を取り囲むキャパシタ80が、中間領域48に設けられている。
図3および
図5では、複数の高電圧領域36が共通のキャパシタ80によって取り囲まれているが、各高電圧領域36が個別に取り囲まれていてもよい。
【0042】
キャパシタ80の断面構造は、
図6および
図7に示される。すなわち、キャパシタ80は、上コイル21が埋め込まれた絶縁層28、下コイル20が埋め込まれた絶縁層28およびそれらの間の絶縁層28のそれぞれに埋め込まれており、全体として絶縁層28のコイル形成領域を取り囲む壁状に形成されている。
各キャパシタ80は、各絶縁層28に埋め込まれた複数の電極板87からなる。複数の電極板87は、等間隔で3つ以上(
図6および
図7では、5つ)設けられており、それぞれが電気的にフローティングされている。また、各絶縁層28に埋め込まれた電極板87は、上下に連なって配列されている。すなわち、絶縁層積層構造27を断面で見たときに、或るキャパシタ80を構成する電極板87が、その上下の電極板87と重なり合っている。これにより、互いに異なる絶縁層28に埋め込まれた複数の電極板87が、絶縁層積層構造27の積層方向に沿って隙間のないシールド板を構成している。
【0043】
各電極板87は、上コイル21と同様に、
図7に示すように、配線溝81にバリアメタル82およびCu配線材料83を埋め込むことによって形成されている。バリアメタル82には、前述のバリアメタル34と同じ材料を適用することができる。
また、上コイル21とキャパシタ80との横方向距離L1は、上コイル21と下コイル20との間の絶縁層28のトータル厚さL2よりも大きい。たとえば、距離L1は、25μm~400μmである。なお、
図6では、距離L1よりも厚さL2の方が大きく表されているが、実際には距離L1>>厚さL2の関係にある。
【0044】
このキャパシタ80によって、上コイル21-下コイル20間に高電圧を印加したときに、外側低電圧領域47に配置された低電位の導電部(たとえば、低電圧パッド13、低電圧層配線53、ビア55、低電圧層配線54、シールド層69等)へ電界が集中することを緩和することができる。特に、上コイル21(高電圧コイル)と同一層およびその近傍の層に配置された矩形状の低電圧パッド13や低電圧層配線53には、その角部に電界が集中してサージ破壊が起こり易い。しかし、キャパシタ80が配置されることで、そのようなサージ破壊を効果的に防止することができる。しかも、この実施形態では、キャパシタ80が高電圧領域36を取り囲んでいるので、上コイル21から放出される電界が、その向きに依らずに緩和される。その結果、高電圧領域36-外側低電圧領域37間の耐圧を向上させることができる。
【0045】
また、キャパシタ80を構成する電極板87が、シールド層69を構成する要素と同一の絶縁層28に埋め込まれているので、キャパシタ80とシールド層69とを同一の工程で形成することができる。
<変形例>
(1)キャパシタ80のパターンに関する変形例
図9~
図13は、キャパシタ80のパターンに関する変形例を示す。
【0046】
図9の構成では、各キャパシタ80を構成する複数の電極板87は、非等間隔で3つ以上設けられている。たとえば、高電圧領域36から離れるに従って間隔を広くなるように、複数の電極板87が配列されている。
図10の構成では、各絶縁層28に埋め込まれた電極板87が、絶縁層積層構造27の積層方向に沿って、断続的に配列されている。すなわち、絶縁層積層構造27を断面で見たときに、或るキャパシタ80を構成する電極板87が、その上下の電極板87と重なり合っていない。たとえば、
図10に示すように、或るキャパシタ80を構成する電極板87が、その上下のキャパシタ80を構成する複数の電極板87の隙間の領域に配置されていてもよい。
【0047】
図11の構成では、キャパシタ80は、選択的に、上コイル21用の絶縁層28および下コイル20用の絶縁層28に埋め込まれている。すなわち、キャパシタ80は、上コイル21用および下コイル20用の絶縁層28のみに埋め込まれ、それらの間の絶縁層28に埋め込まれていなくてもよい。
図12の構成では、キャパシタ80は、中間領域48において、高電圧領域36と低電圧パッド13が配置された領域(パッド領域)との間に選択的に形成され、パッド領域の反対側の領域には形成されていない。一方、
図13の構成はその逆で、キャパシタ80が、パッド領域の反対側の領域に選択的に形成され、パッド領域側には形成されていない。
(2)キャパシタ80に代わる構造を示す変形例
図14~
図16は、キャパシタ80に代わる構造を示す変形例である。具体的には、電極板87が、同一の絶縁層28内で横方向に重ならないように独立して設けられており、各絶縁層28にキャパシタ構造が設けられていない場合を示す。
【0048】
図14の構成では、各絶縁層28に埋め込まれた電極板87が、上下に連なって配列されている。一方、
図15の構成では、各絶縁層28に埋め込まれた電極板87が、絶縁層積層構造27の積層方向に沿って、断続的に配列されている。
なお、この項で示す変形例は、あくまでもキャパシタ構造が形成されていないことを示すものである。したがって、同一の絶縁層28に複数の電極板87が設けられていても、それらが横方向に重なっていなければよい。たとえば、
図16に示すように、高電圧領域36を取り囲む破線楕円84を形成する複数の電極板87が配列されており、破線楕円84の内方領域に、破線楕円84を構成する複数の電極板87の隙間の領域に対向するように電極板87が配置されていてもよい。
(3)半導体基板26の接続状態に関する変形例
図17~
図19は、半導体基板26の接続状態に関する変形例を示す。
【0049】
図17の構成では、
図6のビア86が省略され、低電圧配線24が基板電圧に固定されていない。
図18の構成では、
図6のビア74が省略され、シールド層69が基板電圧に固定されていない。
図19の構成では、
図6のビア86およびビア74のどちらもが省略され、低電圧配線24およびシールド層69が基板電圧に固定されていない。
【0050】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
たとえば、前述の実施形態では、高電圧コイルが上コイル21で低電圧コイルが下コイル20である場合を示したが、高電圧コイルが下コイル20で低電圧コイルが上コイル21であってもよい。
【0051】
また、前述の実施形態では、高電圧コイル(上コイル21)よりも低い電位に電気的に接続される導電体(低電位部)が、低電圧配線24やシールド層69のように、上コイル21が埋め込まれた絶縁層28と同一の絶縁層28に必ず形成されている場合のみ取り上げたが、導電体は、当該同一の絶縁層28に設けられていなくてもよい。たとえば、上コイル21が埋め込まれた絶縁層28の上方もしくは下方の数層に形成された導電体に対しても、この発明は、横方向のサージ破壊の低減効果を十分に発揮することができる。
【0052】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
なお、前述の実施形態の内容から、特許請求の範囲に記載した発明以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。
半導体装置は、絶縁層と、前記絶縁層中で上下に間隔を置いて配置された高電圧コイルおよび低電圧コイルと、平面視において、前記高電圧コイル用の高電圧領域の周囲に配置された低電圧領域に設けられ、前記高電圧コイルよりも低い電位に接続された低電位部と、前記高電圧コイルと前記低電圧領域との間に配置され、電気的にフローティングされた金属部材からなる電界シールド部とを含む。
【0053】
高電圧コイルと低電圧領域との間に電界シールド部が設けられているので、低電位部への電界集中を緩和することができる。これにより、高電圧コイル-低電圧領域間の耐圧を向上させることができる。
前記半導体装置では、前記電界シールド部は、横方向に間隔を置いて対向する複数の電極板からなるキャパシタを含む。この場合、前記電極板は、等間隔で3つ以上設けられていてもよいし、非等間隔で3つ以上設けられていてもよい。
【0054】
前記半導体装置では、前記低電位部は、前記低電圧コイルに接続された低電圧配線を含む。
前記半導体装置では、前記低電位部は、前記絶縁層の表面に露出し、前記低電圧配線に接続された低電圧パッドを含み、前記電界シールド部は、前記高電圧コイルと前記低電圧パッドとの間に配置されている。
【0055】
低電圧パッドが角部を有している場合、当該角部に電界が集中してサージ破壊が起こり易い。電界シールド部が高電圧コイル-低電圧パッド間に配置されることで、そのようなサージ破壊を効果的に防止することができる。
前記半導体装置では、前記絶縁層は、順に積層された複数の絶縁膜を含む絶縁膜積層構造からなり、前記高電圧コイルおよび前記低電圧コイルは、それぞれ、別々の前記絶縁膜に埋め込まれており、一層以上の前記絶縁膜が、前記高電圧コイルと前記低電圧コイルとの間に介在しており、前記電界シールド部は、少なくとも一層の前記絶縁膜に埋め込まれた電極板からなる。
【0056】
この場合、同一の前記絶縁膜に複数の前記電極板が間隔を置いて対向しており、当該複数の電極板がキャパシタを構成していてもよい。そして、前記電極板は、等間隔で3つ以上設けられていてもよいし、非等間隔で3つ以上設けられていてもよい。
また、前記電極板は、同一の前記絶縁膜内で横方向に重ならないように独立して設けられていてもよい。
【0057】
前記半導体装置では、前記電極板は、前記高電圧コイル用の前記絶縁膜、前記低電圧コイル用の前記絶縁膜、およびそれらの間の前記絶縁膜に埋め込まれている。この場合、高電圧コイル用および低電圧コイル用の絶縁膜の間の絶縁膜は、複数の膜であってもよいし、単膜であってもよい。複数の膜の場合、電極板は、その全ての膜に埋め込まれていてもよいし、選択的に一部の膜のみに埋め込まれていてもよい。
【0058】
前記半導体装置では、各前記絶縁膜に埋め込まれた前記電極板は、上下に連なって配列されている。
前記半導体装置では、前記電極板は、選択的に、前記高電圧コイル用の前記絶縁膜および前記低電圧用の前記絶縁膜に埋め込まれている。すなわち、電極板は、高電圧コイル用および低電圧コイル用の絶縁膜のみに埋め込まれ、それらの間の絶縁膜に埋め込まれていなくてもよい。
【0059】
前記半導体装置では、前記低電位部は、前記高電圧領域を取り囲むように複数の前記絶縁膜に埋め込まれたシールド層を含み、前記電極板は、前記シールド層と同一の前記絶縁膜に埋め込まれている。この構成では、シールド層と電界シールド部(電極板)とを同一の工程で形成することができる。
前記半導体装置では、前記高電圧コイルが相対的に前記絶縁膜積層構造の表面に近い側に配置された上コイルであり、前記低電圧コイルが前記上コイルの下方に配置された下コイルであり、前記低電位部は、前記下コイルに接続され、前記絶縁膜積層構造を積層方向に貫通する低電圧配線を含む。
【0060】
前記半導体装置では、前記低電位部は、前記絶縁層積層構造の表面に露出し、前記低電圧配線に接続された低電圧パッドを含む。
低電圧パッドが角部を有している場合、当該角部に電界が集中してサージ破壊が起こり易い。電界シールド部が高電圧コイル-低電圧パッド間に配置されることで、そのようなサージ破壊を効果的に防止することができる。
【0061】
前記半導体装置では、前記高電圧コイルと前記電界シールド部との横方向距離L1が、前記高電圧コイルと前記低電圧コイルとの上下方向距離L2よりも大きい。
前記半導体装置では、前記電界シールド部は、前記高電圧コイルを取り囲んでいる。これにより、高電圧コイルから放出される電界が、その向きに依らずに緩和される。
前記半導体装置は、前記絶縁層を支持する基板を含み、前記低電圧コイルは、前記基板に接続されている。
【0062】
半導体モジュールは、前記半導体装置と、前記半導体装置の前記低電圧コイルに電気的に接続された低電圧素子と、前記半導体装置の前記高電圧コイルに電気的に接続された高電圧素子と、前記半導体装置、前記低電圧素子および前記高電圧素子を一括して封止する樹脂パッケージとを含む。
高電圧領域36と外側低電圧領域47との間に大きな電位差(例えば、数千ボルト)が生じた場合に横方向で破壊が生じるという課題(
図8参照)は、次の本発明の他の実施形態1および2で示す構成によって解決することもできる。
(1)本発明の他の実施形態1
本発明の他の実施形態1は、
図20~
図24に示すように、中間領域48にキャパシタ80が設けられていない点で、前述の実施形態と異なっている。
【0063】
そして、
図8で説明した課題に関して、この出願の発明者らは、横方向の破壊を引き起こすリーク電流の原因が、上コイル21に接する絶縁膜の構成材料に関係することを見出した。
そこで、本発明の他の実施形態1では、ほとんどの絶縁層28を、引張応力SiN膜(Tensile-SiN)からなるエッチングストッパ膜29と、内部応力として圧縮応力を有するSiO
2膜からなる層間絶縁膜30との重ね合わせで形成しているが、上コイル21が埋め込まれた絶縁層28およびその一層上の絶縁層28に関しては選択的に、エッチングストッパ膜29として内部応力として圧縮応力を有する圧縮応力膜を採用している。そのような圧縮応力膜は、たとえば、内部応力として400MPa~800MPaの圧縮応力を有していることが好ましい。具体的には、SiO
2に比べてSiの比率が大きいSiO
x(0<x<2)膜が好ましく、圧縮応力を有するSiN膜(Compressive-SiN)であってもよい。SiO
x膜は、原料ガスの流量を調整してSiの組成比を変更することを除いては、SiO
2膜と同じ製法で作製することができる。一方、圧縮応力SiN膜は、引張応力SiN膜の製造工程において、たとえばSiH
4流量、N
2流量等の条件を調整することによって作製することができる。
【0064】
これにより、絶縁層28の面方向(横方向)に沿って上コイル21から低電圧配線24やシールド層69へリーク電流が流れることを抑制することができる。その結果、上コイル21と、低電圧配線24およびシールド層69との間に大きな電位差が生じても、当該電位差による絶縁破壊を防止することができる。
しかも、エッチングストッパ膜29として圧縮応力膜が採用された絶縁層28を除く複数の絶縁層28に関しては、圧縮応力を有するSiO2からなる層間絶縁膜30と、引張応力SiN膜からなるエッチングストッパ膜29とを交互に配置できるので、絶縁層積層構造27の積層界面において応力をキャンセルしながら絶縁層28を積層させることができる。その結果、トランスチップ6の製造工程において、絶縁層積層構造27を支持する半導体基板26の母体となる半導体ウエハに大きな反り変形が生じることを防止することができる。
【0065】
なお、上コイル21が埋め込まれた絶縁層28を除く絶縁層28のエッチングストッパ膜29としては、たとえば、SiC膜、SiCN膜等を使用してもよい。
以上、本発明の他の実施形態1を説明したが、本発明の他の実施形態1では種々の設計変更を施すことが可能である。
なお、本発明の他の実施形態1の内容から、特許請求の範囲に記載した発明以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。
[項1]
順に積層された複数の絶縁層からなる絶縁層積層構造と、
前記絶縁層積層構造において互いに異なる前記絶縁層に形成され、一層以上の前記絶縁層を挟んで互いに対向する高電圧コイルおよび低電圧コイルと、
前記高電圧コイルが配置された高電圧領域の側方の外側領域に形成され、前記高電圧コイルよりも低い電位に電気的に接続される導電体とを含み、
前記高電圧コイルに接する前記絶縁層は、前記高電圧コイルとの接触部分に内部応力として圧縮応力を有する圧縮応力膜を含む、半導体装置。
【0066】
この構成によれば、絶縁層の高電圧コイルと接触する部分が圧縮応力膜で形成されているので、当該絶縁層の面方向(横方向)に沿って高電圧コイルから導電体へリーク電流が流れることを抑制することができる。これにより、高電圧コイルと導電体との間に大きな電位差が生じても、当該電位差による絶縁破壊を防止することができる。
[項2]
前記高電圧コイルは、一つの前記絶縁層の上面から下面まで貫通するコイル溝に埋め込まれた埋め込みコイルを含み、
前記高電圧コイルに接する前記絶縁層は、前記高電圧コイルが埋め込まれた絶縁層と、その上下に配置されていて、それぞれ、前記高電圧コイルの上面および下面に接する絶縁層とを含む、項1に記載の半導体装置。
[項3]
前記圧縮応力膜は、SiO2に比べてSiの比率が大きいSiOx(0<x<2)膜を含む、項1または2に記載の半導体装置。
【0067】
この構成によれば、圧縮応力膜がSiOx(0<x<2)膜であるので、良好なリーク電流低減効果を実現することができる。
[項4]
前記圧縮応力膜は、圧縮応力SiN膜を含む、項1または2に記載の半導体装置。
[項5]
前記圧縮応力膜は、内部応力として400MPa~800MPaの圧縮応力を有している、項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項6]
各前記絶縁層は、薄膜と、前記薄膜上に形成されたSiO2からなる層間絶縁膜との積層構造からなり、
前記高電圧コイルに接する前記絶縁層の前記薄膜が、選択的に前記圧縮応力膜で形成されており、
前記高電圧コイルに接する前記絶縁層を除く他の前記絶縁層の前記薄膜は、内部応力として引張応力を有する引張応力膜で形成されている、項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0068】
この構成によれば、高電圧コイルに接する絶縁層の薄膜を選択的に圧縮応力膜に変更するだけでよい。これにより、当該絶縁層を除く複数の絶縁層に関しては、圧縮応力を有するSiO2からなる層間絶縁膜と、引張応力膜からなる薄膜とを交互に配置できるので、積層界面において応力をキャンセルしながら絶縁層を積層させることができる。その結果、絶縁層積層構造が半導体基板(ウエハ)上に形成される場合において、半導体基板に大きな反り変形が生じることを防止することができる。
[項7]
前記導電体は、前記高電圧コイルと同一の前記絶縁層に形成された導体層を含む、項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項8]
前記高電圧領域において前記絶縁層積層構造の表面に形成された高電圧パッドと、
前記外側領域において前記絶縁層積層構造の表面に形成された低電圧パッドとをさらに含み、
前記高電圧コイルが相対的に前記絶縁層積層構造の表面に近い側に配置された上コイルであり、前記低電圧コイルが前記上コイルの下方に配置された下コイルであり、
前記導電体は、前記低電圧パッドから複数の前記絶縁層を厚さ方向下方に貫通し、前記下コイルに電気的に接続された低電圧配線を含む、項1~7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0069】
この構成によれば、上記の耐圧構造(絶縁破壊防止構造)が形成されているので、下コイルへのコンタクト用の低電圧配線を、絶縁層積層構造を貫通させて形成することができる。これにより、高電圧パッドおよび低電圧パッドの両方を絶縁層積層構造の表面に形成でき、パッドに対するワイヤボンディングを簡単に行うことができる。
[項9]
前記低電圧配線は、前記下コイルの内側のコイルエンドから、前記下コイルよりも下方の前記絶縁層を介して前記外側領域に引き出された引き出し配線を含む、項8に記載の半導体装置。
[項10]
前記高電圧パッドは、前記上コイルの中央部の上方に配置されており、
前記上コイルの内側のコイルエンドから前記絶縁層を厚さ方向上方に貫通し、前記高電圧パッドに接続された高電圧配線をさらに含む、項8または9に記載の半導体装置。
[項11]
前記導電体は、前記低電圧配線よりもさらに外側において、前記高電圧領域を取り囲むように複数の前記絶縁層を厚さ方向下方に貫通して形成されたシールド層を含む、項8~10のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項12]
前記高電圧コイルと前記低電圧コイルとの間の前記絶縁層の厚さL2に比べて、前記高電圧コイルと前記導電体との間の距離L0の方が大きい、項1~11のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項13]
前記厚さL2と前記距離L0の比(距離L0/厚さL2)は、6/1~40/1である、項12に記載の半導体装置。
[項14]
前記厚さL2は12.0μm~16.8μmであり、前記距離L0は100μm~450μmである、項12または13に記載の半導体装置。
[項15]
項1~14のいずれか一項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置の前記低電圧コイルに電気的に接続された低電圧素子と、
前記半導体装置の前記高電圧コイルに電気的に接続された高電圧素子と、
前記半導体装置、前記低電圧素子および前記高電圧素子を一括して封止する樹脂パッケージとを含む、半導体モジュール。
【0070】
この構成によれば、項1~14のいずれか一項に記載の半導体装置が備えられているので、絶縁破壊が生じ難い信頼性の高いトランスモジュールを実現することができる。
(2)本発明の他の実施形態2
図8で説明した課題に関して、この出願の発明者らは、横方向の破壊を引き起こすリーク電流の原因が、(1)上コイル21の側方に互いに異なる絶縁材料の接触による異種界面の形成、および(2)絶縁層積層構造27の製造過程において、CVD等の製膜によってダメージを受けた加工界面の存在に関係することを見出した。
【0071】
そこで、本発明の他の実施形態2では、
図25,
図27,
図28および
図29に示すように、上コイル21が埋め込まれた絶縁層28およびその一層上の絶縁層28における中間領域48において、選択的にエッチングストッパ膜29が除去された除去領域110が形成されている。除去領域110は、
図25および
図27に示すように、各高電圧領域36を取り囲む一つの帯状(たとえば、50μm~100μm幅)に形成されている。特に、
図25および
図27に示すように、全体に丸みを帯びた角部がない形状(本発明の他の実施形態2では略楕円環状)であれば、電界が集中し難くて良い。
【0072】
除去領域110の形成によって、絶縁層積層構造27の積層界面のうち上コイル21が接する積層界面111には、中間領域48において、当該積層界面111に対して上側の層間絶縁膜30(SiO2)が、下側の層間絶縁膜30(SiO2)と接触して同種界面構造112が形成されている。
これにより、絶縁層28の面方向(横方向)に沿って上コイル21から低電圧配線24やシールド層69へリーク電流が流れても、当該同種界面構造112によって低減させることができる。つまり、少なくとも中間領域48において互いに異なる絶縁材料同士の接触(本発明の他の実施形態2ではSiO2とSiNとの接触)による異種界面をなくすことによって、リーク電流を低減することができる。その結果、上コイル21と、低電圧配線24およびシールド層69との間に大きな電位差が生じても、当該電位差による絶縁破壊を防止することができる。
【0073】
しかも、本発明の他の実施形態2では、さらに、当該積層界面111に対して下側の層間絶縁膜30に除去領域110と同一パターンのトレンチ113が層間絶縁膜30の厚さ方向途中まで形成されていて、上側の層間絶縁膜30が、除去領域110を介して当該トレンチ113に埋め込まれている。これにより、上コイル21から外側低電圧領域47までの積層界面111の距離を、トレンチ113の深さd分、延ばすことができる。その結果、リーク電流の経路を長くできるので、積層界面111に加工界面が存在していても、リーク電流を良好に低減することができる。
【0074】
図30A~
図30Hは、同種界面構造112の形成に関連する工程を説明するための断面図である。
図29に示した埋め込みタイプの同種界面構造112を形成するには、たとえば、
図30Aに示すように、上コイル21が埋め込まれる絶縁層28の下方の絶縁層28にビア55が形成される。
【0075】
次に、
図30Bに示すように、たとえばプラズマCVD法によって、SiNからなるエッチングストッパ膜29およびUSG膜114が順に形成される。
次に、
図30Cに示すように、USG膜114上にフォトレジスト(図示せず)が形成され、USG膜114、エッチングストッパ膜29および層間絶縁膜30が順にエッチングされる。これにより、除去領域110およびトレンチ113が同時に形成される。
【0076】
次に、
図30Dに示すように、高密度プラズマCVD(HDP)によってトレンチ113がSiO
2で埋め戻された後、続けて、プラズマCVDによってさらにSiO
2が堆積させられる。その後、CMPによってSiO
2の表面が平坦化される。これにより、トレンチ113に同種界面構造112を有する絶縁層28が形成される。
次に、
図30Eに示すように、下方の絶縁層28との間に同種界面構造112を有する絶縁層28に、上コイル21、低電圧層配線53および内側コイルエンド配線37が形成される。
【0077】
次に、
図30Fに示すように、たとえばプラズマCVD法によって、SiNからなるエッチングストッパ膜29およびUSG膜115が順に形成される。
次に、
図30Gに示すように、USG膜115上にフォトレジスト(図示せず)が形成され、USG膜115、エッチングストッパ膜29および層間絶縁膜30が順にエッチングされる。これにより、除去領域110およびトレンチ113が同時に形成される。
【0078】
次に、
図30Hに示すように、高密度プラズマCVD(HDP)によってトレンチ113がSiO
2で埋め戻された後、続けて、プラズマCVDによってさらにSiO
2が堆積させられる。その後、CMPによってSiO
2の表面が平坦化される。これにより、トレンチ113に同種界面構造112を有する絶縁層28が形成される。
以上、本発明の他の実施形態2を説明したが、本発明の他の実施形態2では種々の設計変更を施すことが可能である。
【0079】
たとえば、
図31に示すように、同種界面構造112は、上コイル21の下面に接する下側の積層界面111のみに選択的に形成されていてもよいし、
図32に示すように、上コイル21の上面に接する上側の積層界面111のみに選択的に形成されていてもよい。
また、
図33に示すように、除去領域110は、互いに間隔を空けてストライプ状に形成されていてもよい。このストライプ状の除去領域110に合わせて、トレンチ30もストライプ状に形成されていることが好ましい。この場合、ストライプ状の除去領域110のラインアンドスペース(L/S)は、1μm/1μm~10μm/10μmであることが好ましい。ストライプ状の除去領域110は、前述の
図30Cおよび
図30Gに示す工程において、エッチングのためのフォトレジストのパターンをストライプ状にすることによって形成することができる。
【0080】
また、
図34に示すように、上コイル21を、Cu配線材料35の埋め込みコイルではなく、Al(アルミニウム)膜のパターニングによって形成する場合には、エッチングストッパ29を省略し、絶縁層28をSiO
2からなる層間絶縁膜30のみで形成することができる。この構成では、絶縁層積層構造27の全ての積層界面に同種界面構造112が形成されるので、前述のトレンチ113を形成してリーク電流の経路を長くすることによって、リーク電流の低減効果をより効果的に得ることができる。
【0081】
なお、本発明の他の実施形態2の内容から、特許請求の範囲に記載した発明以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。
[項1]
順に積層された複数の絶縁層からなる絶縁層積層構造と、
前記絶縁層積層構造において互いに異なる前記絶縁層に形成され、一層以上の前記絶縁層を挟んで互いに対向する高電圧コイルおよび低電圧コイルと、
前記高電圧コイルが配置された高電圧領域の側方の外側領域に形成され、前記高電圧コイルよりも低い電位に電気的に接続される導電体とを含み、
前記絶縁層積層構造の複数の積層界面のうち前記高電圧コイルが接する積層界面には、前記高電圧領域と前記外側領域との間の中間領域において、当該積層界面を介して前記絶縁層が同じ絶縁材料で接触することによって同種界面構造が形成されている、半導体装置。
【0082】
この構成によれば、少なくとも中間領域に同種界面構造が形成されているので、高電圧コイルから導電体へ向かってリーク電流が流れても、当該同種界面構造によって低減させることができる。つまり、少なくとも中間領域において互いに異なる絶縁材料同士の接触による異種界面をなくすことによって、リーク電流を低減することができる。これにより、高電圧コイルと導電体との間に大きな電位差が生じても、当該電位差による絶縁破壊を防止することができる。
[項2]
前記高電圧コイルは、一つの前記絶縁層の上面から下面まで貫通するコイル溝に埋め込まれた埋め込みコイルを含み、
前記高電圧コイルに接する前記積層界面は、前記高電圧コイルが埋め込まれた絶縁層と、その上下に配置されていて、それぞれ、前記高電圧コイルの上面および下面に接する絶縁層とで形成された界面を含む、項1に記載の半導体装置。
[項3]
前記同種界面構造では、相対的に下側の絶縁層にトレンチが形成されていて、前記下側の絶縁層の上面に接する上側の絶縁層が前記トレンチに埋め込まれるように形成されている、項1または2に記載の半導体装置。
【0083】
この構成によれば、高電圧コイルから外側領域までの界面距離を、トレンチの深さ分、延ばすことができる。これにより、リーク電流の経路を長くできるので、リーク電流を一層低減することができる。
[項4]
前記絶縁層積層構造の各絶縁層は、第1絶縁材料からなる薄膜と、前記薄膜上に形成された第2絶縁材料からなる層間絶縁膜との積層構造からなり、
前記高電圧コイルが接する積層界面に対して上側の絶縁層が、前記中間領域において前記薄膜が選択的に除去された除去領域を有しており、
前記除去領域を介して、前記上側の絶縁層の層間絶縁膜が、前記積層界面に対して下側の絶縁層の層間絶縁膜と接触して前記同種界面構造を形成している、項1または2に記載の半導体装置。
[項5]
前記同種界面構造では、前記下側の絶縁層の前記層間絶縁膜に前記除去領域と同一パターンのトレンチが形成されていて、前記上側の絶縁層の前記層間絶縁膜が、前記除去領域を介して前記トレンチに埋め込まれるように形成されている、項4に記載の半導体装置。
【0084】
この構成によれば、高電圧コイルから外側領域までの界面距離を、トレンチの深さ分、延ばすことができる。これにより、リーク電流の経路を長くできるので、リーク電流を一層低減することができる。
[項6]
前記除去領域は、一つの帯状に形成されている、項4または5に記載の半導体装置。
[項7]
前記帯状の除去領域の幅は、50μm~100μmである、項6に記載の半導体装置。
[項8]
前記除去領域は、互いに間隔を空けてストライプ状に形成されている、項4または5に記載の半導体装置。
【0085】
特に、項8では、前記同種界面構造において、前記下側の絶縁層の前記層間絶縁膜に前記ストライプ状の除去領域と同一パターンのストライプトレンチが形成されていて、前記上側の絶縁層の前記層間絶縁膜が、前記除去領域を介して前記ストライプトレンチに埋め込まれるように形成されていることが好ましい。これにより、高電圧コイルから外側領域までの界面距離を一層延ばすことができるので、リーク電流をさらに低減することができる。
[項9]
前記ストライプ状の除去領域のラインアンドスペース(L/S)は、1μm/1μm~10μm/10μmである、項8に記載の半導体装置。
[項10]
前記薄膜がSiN膜からなり、前記層間絶縁膜がSiO2膜からなる、項4~9のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項11]
前記導電体は、前記高電圧コイルと同一の前記絶縁層に形成された導体層を含む、項1~10のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項12]
前記高電圧領域において前記絶縁層積層構造の表面に形成された高電圧パッドと、
前記外側領域において前記絶縁層積層構造の表面に形成された低電圧パッドとをさらに含み、
前記高電圧コイルが相対的に前記絶縁層積層構造の表面に近い側に配置された上コイルであり、前記低電圧コイルが前記上コイルの下方に配置された下コイルであり、
前記導電体は、前記低電圧パッドから複数の前記絶縁層を厚さ方向下方に貫通し、前記下コイルに電気的に接続された低電圧配線を含む、項1~11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0086】
この構成によれば、上記の耐圧構造(絶縁破壊防止構造)が形成されているので、下コイルへのコンタクト用の低電圧配線を、絶縁層積層構造を貫通させて形成することができる。これにより、高電圧パッドおよび低電圧パッドの両方を絶縁層積層構造の表面に形成でき、パッドに対するワイヤボンディングを簡単に行うことができる。
[項13]
前記低電圧配線は、前記下コイルの内側のコイルエンドから、前記下コイルよりも下方の前記絶縁層を介して前記外側領域に引き出された引出し配線をさらに含む、項12に記載の半導体装置。
[項14]
前記高電圧パッドは、前記上コイルの中央部の上方に配置されており、
前記上コイルの内側のコイルエンドから前記絶縁層を厚さ方向上方に貫通し、前記高電圧パッドに接続された高電圧配線をさらに含む、項12または13に記載の半導体装置。
[項15]
前記導電体は、前記低電圧配線よりもさらに外側において、前記高電圧領域を取り囲むように複数の前記絶縁層を厚さ方向下方に貫通して形成されたシールド層を含む、項12~14のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項16]
前記高電圧コイルと前記低電圧コイルとの間の前記絶縁層の厚さL2に比べて、前記高電圧コイルと前記導電体との間の距離L0の方が大きい、項1~15のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項17]
前記厚さL2と前記距離L0の比(距離L0/厚さL2)は、6/1~40/1である、項16に記載の半導体装置。
[項18]
前記厚さL2は12.0μm~16.8μmであり、前記距離L0は100μm~450μmである、項16または17に記載の半導体装置。
[項19]
項1~18のいずれか一項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置の前記低電圧コイルに電気的に接続された低電圧素子と、
前記半導体装置の前記高電圧コイルに電気的に接続された高電圧素子と、
前記半導体装置、前記低電圧素子および前記高電圧素子を一括して封止する樹脂パッケージとを含む、半導体モジュール。
【0087】
この構成によれば、項1~18のいずれか一項に記載の半導体装置が備えられているので、絶縁破壊が生じ難い信頼性の高いトランスモジュールを実現することができる。
以上のように、この発明の前述の一実施形態、他の実施形態1および2は、絶縁層の表面に沿う方向(横方向)に間隔を空けて配置された高電圧領域と低電圧領域との間における絶縁破壊を防止することを課題としている点で共通している。これらの形態は、それぞれ、高電圧領域と低電圧領域との間に破壊防止のための構造A~Cを設けることによって、当該課題を解決する。
【0088】
本発明の一実施形態は、構造A:電気的にフローティングされた金属部材からなる電界シールド部(好ましくは、電界シールド部は、横方向に間隔を置いて対向する複数の電極板からなるキャパシタである)の一例として、キャパシタ80を開示する。本発明の他の実施形態1は、構造B:高電圧領域に接するように設けられ、内部応力として圧縮応力を有する圧縮応力膜の一例として、SiO2に比べてSiの比率が大きいSiOx(0<x<2)膜、圧縮応力を有するSiN膜からなる絶縁層28を開示する。本発明の他の実施形態2は、構造C:同じ絶縁材料からなる絶縁層が接触することで形成された同種界面構造の一例として、SiO2/SiO2からなる同種界面構造112を開示する。
【0089】
これらの構造A~Cは、それぞれ単独で採用してもよいが、互いに組み合わせることによって、より一層の高耐圧化を図ることもできる。たとえば、高電圧領域と低電圧領域との間に構造A~C全てが設けられていてもよいし、構造A,Bの組み合わせ、構造A,Cの組み合わせ、構造A,Cの組み合わせが設けられていてもよい。構造A,Bの組み合わせの一例としては、
図6において、上コイル21が埋め込まれた絶縁層28およびその一層上の絶縁層28に関して選択的に、圧縮応力を有するエッチングストッパ膜29(圧縮応力膜)を採用すればよい。また、構造A,Cの組み合わせの一例としては、
図6において、キャパシタ80と高電圧領域36との間、または外側低電圧領域47とキャパシタ80との間に、同種界面構造112を設ければよい。
【0090】
また、前述の各図の開示から把握される構成要素は、異なる図との間でも互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 半導体モジュール
2 樹脂パッケージ
5 コントローラチップ
6 トランスチップ
7 ドライバチップ
13 低電圧パッド
14 高電圧パッド
20 下コイル
21 上コイル
22 内側コイルエンド
23 内側コイルエンド
24 低電圧配線
25 高電圧配線
26 半導体基板
27 絶縁層積層構造
28 絶縁層
29 エッチングストッパ膜
30 層間絶縁膜
31 内方領域
32 内方領域
33 コイル溝
35 Cu配線材料
36 高電圧領域
37 内側コイルエンド配線
46 低電圧領域
47 外側低電圧領域
48 中間領域
49 内側コイルエンド配線
51 貫通配線
52 引き出し配線
69 シールド層
80 キャパシタ
87 電極板
110 除去領域
111 積層界面
112 同種界面構造
113 トレンチ