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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】スパイラル型濾過装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/10 20060101AFI20240122BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B01D63/10
B01D63/00 510
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022155390
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2021533314の分割
【原出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2022173434
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】62/779,860
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/779,867
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/780,634
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/780,689
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・ランドリー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ストライファー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ナターレ
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-103516(JP,A)
【文献】米国特許第04842736(US,A)
【文献】特開2003-320223(JP,A)
【文献】国際公開第00/047311(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0076790(US,A1)
【文献】特開2018-176040(JP,A)
【文献】国際公開第2012/091871(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタモジュールを形成する方法であって、
少なくとも1つの膜シート、少なくとも1つの供給スクリーン及び少なくとも1つの透過シートを提供すること、
前記少なくとも1枚の膜シートをその長さに沿って折り畳み、2つの半分が一体的に形成された葉を形成すること、
前記少なくとも1つの供給スクリーンを前記2つの半分の間に配置して、膜パケット折り目を有する膜パケットを形成すること、
前記膜パケット折り目の位置に不透過性支持体を配置して、前記膜パケットの先端を形成すること、及び
前記膜パケット及び前記少なくとも1つの透過シートをコアの周りにスパイラル状に巻くことであって、前記不透過性支持体の位置は、前記膜パケットの前記先端の前の空隙領域の形成を回避する、巻くこと
を含む、方法。
【請求項2】
前記不透過性支持体は、くさび形である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モジュールは、断面が円筒形であり、硬化した接着剤の外面を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
それぞれが先端及びそれぞれの先端に結合された流体不透過性支持体を有する複数の膜パケットを提供することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの膜シートは第1膜シートと第2膜シートとを含み、前記少なくとも1つの供給スクリーンは第1供給スクリーンと第2供給スクリーンとを含み、前記少なくとも1つの透過シートは第1透過シートと第2透過シートとを含み、前記第1膜シートと前記第1透過シートとの間に第1透過液路が定義され、前記第2膜シートと前記第2透過シートとの間に第2透過液路が定義され、
前記フィルタモジュールをモールドキャビティとシール関係に配置することにより、前記フィルタモジュールをポッティングすること、
前記モールドキャビティに接着剤を導入すること、
前記モールドキャビティに真空を適用することにより、前記真空が前記接着剤を前記第1及び第2透過液路に押し込むこと、及び
前記接着剤が硬化することを許容すること
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
端面を有するスパイラル状に巻かれた膜モジュールを通して製品を濾過する方法であって、前記膜モジュールは、
軸方向に延びる内部ボアを有する孔あきコアと、
第1外面、第1内面、第2外面及び第2内面を定義する折り畳まれた膜シートを含む少なくとも1つの膜パケットであって、前記折り畳まれた膜シートの折り目が前記膜パケットの先端である、少なくとも1つの膜パケットと、
前記折り畳まれた膜シートによって挟まれるように、前記第1内面と前記第2内面との間に配置された供給スクリーンと、
第1透過液路を定義する、前記膜シートの前記第1外面に隣接する第1透過シートと、
第2透過液路を定義する、前記膜シートの前記第2外面に隣接する第2透過シートと、
前記膜パケットの前記先端に結合され、前記先端と前記第1及び第2透過シートとの間の空隙を占拠する流体不透過性支持体と
を備え、
前記方法は、
圧力下で前記端面に前記製品を導入し、前記製品を、前記供給スクリーンを通って軸方向に流れさせ、次に前記膜シートを接線方向に横切って流れさせ、その一部が、前記膜シートを通って流れ、前記膜シートの前記第1外面前記第1透過シートとの間に定義された前記第1透過液路に到達する、
ことを含む、
方法。
【請求項7】
前記孔あきコアに流れる透過液を前記モジュールから除去することをさらに含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記不透過性支持体は、くさび形である、
請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/779,860号、2018年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/779,867号、2018年12月17日に出願された米国仮特許出願第62/780,634号、及び2018年12月17日に出願された米国仮特許出願第62/780,689号の優先権を主張し、上記出願の開示全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、一般に、スパイラル状に巻かれた膜フィルタ要素又はモジュール、及びそれらを製造するための方法に関する。
より具体的には、スパイラル型フィルタモジュール(スパイラル状に巻かれたフィルタモジュール)であって、接着剤の移動制御を提供し、供給液路形状が変化することを防ぎ、空隙を最小化又は排除し、それによって、スパイラル状に巻かれたフィルタのより一貫した製造プロセス及び一貫した再現性をもたらすための1つ又は複数の特徴をモジュールが含む、スパイラル型フィルタモジュール(スパイラル状に巻かれたフィルタモジュール)が開示される。
膜及びスクリーンがまず透過排水コアの周りに巻かれてパイラルを形成し、その次に接着剤が適用されて透過エンベロープを形成し、スパイラルをコアに固定し、周囲をシールし、環をハウジングに充填するか又は圧力保持周囲シェル(pressure-containing circumferential shell)を提供する、新規の組み立てプロセスに基づく製造方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
スパイラル状に巻かれたフィルタモジュールは、限外濾過及び逆浸透を含む濾過に一般的に使用される。典型的には、そのようなモジュールは、孔あき中空コア又はマンドレルの周りに複数の膜シート、スペーサー材料及び透過シートをスパイラル状に巻くことによって製造され、これらは、次に、ハウジング又はカートリッジの中央に配置され得る。
【0004】
より具体的には、スパイラル状に巻かれた濾過モジュールは、多孔質布であり得る1つ又は複数の透過スペーサー、1つ又は複数の膜シート、及び1つ又は複数の供給スクリーン又はスペーサーを含み得る多層デバイスである。モジュールは、透過液を収集するために中央ボアと連通するスロット又は穴等の複数の開口部を有する透過コア、チューブ又はマンドレルの周りに、1つ又は複数の膜、供給スペーサー及び透過スクリーンをスパイラル状に巻くことによって構築され得る。得られたアセンブリをマンドレルの周りの所定の位置に固定するために、接着剤を使用することができる。得られたモジュールは、典型的な動作圧力に耐えることができるハウジング内に配置することができる。
【0005】
いくつかのスパイラル状に巻かれた濾過モジュールは、2枚の膜シートの間に挟まれた多孔質布材料であり得る透過シート又はスクリーンの層をそれぞれ有する複数の葉(leaves)を含み得る。膜シートは、膜パケットを形成するために2つの半分の間に配置された供給スクリーンで半分に折りたたまれ得る。膜パケット及び透過シートは、透過液を収集するための開口部を有するマンドレル又はコアの周りに巻かれる。1つ及び4つの葉を有するモジュールが一般的であるが、任意の数の葉で構成され得る。例えば、0.1m2のモジュールは単一の葉を有し、0.5m2のモジュールは4つの葉を有し、膜面積が1m2を超える(例えば2.0m2等)より大きなスパイラル装置は最大16の葉を有している場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、膜パケットのスパイラル状の巻き付けは、パケットの先端の前にくさび形の空隙をもたらす(図1参照)。さらに、膜は供給スクリーンから離れ戻る可能性があり、また、供給スクリーン(図1)の前にギャップ又は空隙をもたらし、これにより、スクリーンの周りにバイパス流が発生する。このバイパス流はパフォーマンスを低下させる。
【0007】
さらに、接着剤が手作業でアセンブリに導入されて、層が互いに結合されるとともに孔あきコアに結合される。このプロセスにより、接着剤の縁部が不規則になることが多くあり、完全性の失敗により引き起こされる人為的ミスの高いリスクや膜面積の変動が引き起こされる可能性がある。
【0008】
従って、これらの問題を軽減又は排除し、スパイラル状に巻かれた濾過モジュールの性能を改善することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術の問題は、スパイラル状に巻かれた濾過モジュール及びその製造方法に関連する、本明細書に開示される実施形態によって克服された。
特定の実施形態では、濾過モジュールは、くさび形の支持体等の支持体を含む。支持体は、組み立て中の巻き付け操作の結果として支持体が無ければ形成される1つ又は複数の空隙を排除するように機能するとともに、膜が供給スクリーンから離れるときの1つ又は複数の空隙を排除するように機能する。
特定の実施形態では、支持体は、そのような空隙が通常形成されるであろう領域の一部又はすべてを占拠するように配置され、コアから半径方向に外向きに巻かれる膜及びスクリーンを支持する。
これは、上のすべての層の供給液路の形状が高圧で変わることを防ぐ。この追加の利点により、装置全体で供給液路の形状が一定に保たれ、パフォーマンスを向上させ、圧力損失の変動を減少させる。
さらに、膜パケットの先端の折り目、亀裂及び折り畳みの失敗は、スパイラルの保持の喪失のよく知られた形態であり、膜パケットの先端に結合された支持体は、操作中に先端の失敗の可能性を減らすことができる。
【0010】
支持体のさらなる利点は、ポッティングプロセス中に接着剤が装置に引き込まれるか又は押し込まれるときに実現される。支持体は、特に複葉スパイラル型モジュールが含まれる場合に、くさび形ギャップを通じての装置へのポッティング接着剤の有害な移動を防ぐ。支持体の存在はまた必要な接着剤の量を減らす。
【0011】
特定の実施形態では、材料の複数の層をコアの周りにスパイラル状に巻いて、2つの対向するスパイラル端面を有する凡そ円筒形構造を形成することによって形成されるフィルタモジュールが開示される。
縦方向端部及び横方向端部に沿って層が接着されているため、使用時に、1つのスパイラル端面からユニットに供給された濾過されていない流体は、反対側のスパイラル端面を通ってユニットから出る前に、1つ又は複数の膜層を通過するか又は接線方向に横切る必要がある。巻かれたフィルタの各スパイラル面にシーリングアレンジメントが設けられており、入ってくる流体がユニットを出る前に膜表面を通過することが保証される。
特定の実施形態では、多層材料は、1つ又は複数の膜シート、1つ又は複数の供給スクリーン、及び1つ又は複数の透過シート若しくはスクリーンを含む。1つ又は複数の膜シートは、その長さに沿って1回折り畳まれて、2つの半分が一体的に結合された葉を形成し、供給スクリーンが2つの半分の間に配置されるか又は挟まれて、膜パケットを形成し得る。アセンブリは、スパイラル状に巻かれた透過流体液路及び濃縮流体液路の流路を形成する。支持体は、膜パケットの先端である膜パケット折り目の位置に巻き取り中に配置され、コアの周りにパケット及び透過シートを巻く際に支持体が無ければ形成される空隙領域を排除する。
【0012】
製品を濾過するために、製品は、圧力下でスパイラル状に巻かれた膜モジュール(スパイラル型膜モジュール)の一端面に導入され、供給スクリーンを通って軸方向に流れる。製品は、次に膜を接線方向に横切って流れ、その一部は膜を通って流れる。製品は、各膜と隣接する透過シートとの間に定義された透過液路に到達する。その後、透過液は孔あきコアに流れ、最終的にモジュールから除去される。
【0013】
特定の実施形態では、スパイラル状に巻かれた膜モジュールが開示される。スパイラル状に巻かれた膜モジュールは、軸方向に延びる内部ボアを有する孔あきコアと、第1外面、第1内面、第2外面及び第2内面を定義する折り畳まれた膜シートを含む少なくとも1つの膜パケットであって、折り畳まれた膜シートの折り目が膜パケットの先端である、少なくとも1つの膜パケットと、折り畳まれた膜シートによって挟まれるように、第1内面と第2内面との間に配置された供給シートと、第1透過液路を定義する、膜シートの第1外面に隣接する第1透過スクリーンと、第2透過液路を定義する、膜シートの第2外面に隣接する第2透過スクリーンと、膜パケットの先端に結合された流体不透過性支持体とを備える。
【0014】
いくつかの態様では、複数の膜パケットがあり、それぞれが先端及びそれぞれの先端に結合された流体不透過性支持体を有する。
【0015】
いくつかの態様では、不透性支持体はくさび形である。
【0016】
いくつかの態様では、不透性支持体は、不均一な空隙を埋めるように不均一に変形可能である。
【0017】
いくつかの態様では、モジュールは、断面が円筒形であり、硬化した接着剤の外面を有する。
【0018】
特定の実施形態では、スパイラル状に巻かれた膜をポッティングする方法が開示される。この方法は、スパイラル状に巻かれた膜をモールドキャビティと密封関係に配置すること、モールドキャビティに接着剤を導入すること、透過コア、チューブ、又はマンドレルに真空を適用することにより、透過液路及びコアの外周の周りに真空が接着剤を押し込むこと、及び接着剤が硬化することを許容することを含む。
透過スクリーンのラップがコアの周りに配置されている場合、接着剤もその透過スクリーンに押し込まれ、スパイラルをコアに固定する。
この方法のスパイラルは、ポッティングプロセス中に接着剤が供給液路に侵入するのを防ぐように設計された、縁取りされた供給スクリーンのみを備えている。それらは、透過エンベロープの3つの側部に対応するすべての側部に不透過性の縁部を含む。
側部縁部は、透過エンベロープの側部シームよりも狭くされている。従って、スパイラル状接着剤が硬化した後にそれらが除去される(例えば切断される)と、透過エンベロープは密封されたままでありながら、供給液路は接線方向の流れに対し開かれている。
供給スクリーンはまた、4つの縁部を有していてよい。第4縁部は、供給スクリーンの先端(膜パケットの折り目近く)にあり、供給スクリーンからの先端膜の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、従来技術によるスパイラル型濾過装置の膜と供給スクリーンとの間に形成されたくさび形の空隙を示す写真である。
図2図2は、特定の実施形態によるスパイラル型濾過装置の膜と透過スクリーンとの間及び膜と供給スクリーンとの間に形成された空隙に挿入された支持体を示す写真である。
図3図3は、特定の実施形態による支持体の断面図である。
図4図4は、巻き付け操作中の支持体及び膜パケットの概略図である。
図5図5は、特定の実施形態によるポッティングモールドの断面図である。
図6図6は、特定の実施形態によるスパイラル状に巻かれた膜モジュールの上面図の写真である。
図7図7は、特定の実施形態による縁部を有する供給スクリーンを備えたモジュールの写真である。
図8図8は、特定の実施形態による4つの縁部を有する供給スクリーンの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示される構成要素、プロセス及び装置のより完全な理解は、添付の図面を参照することによって得ることができる。これらの図は、本開示の説明することの容易さ及び利便性に基づく単なる概略図であり、従って、例示的な実施形態の範囲を定義又は限定することを意図するものではない。
【0021】
以下の説明では、明確さのために特定の用語を使用しているが、これらの用語は、図面で説明のために選択された実施形態の特定の構造のみを指すことを意図しており、開示の範囲を定義又は制限することを意図していない。以下の図面及び説明において、同様の数値指定は、同様の機能の構成要素を指すことを理解されたい。
【0022】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に他のことを示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0023】
明細書で使用されているように、様々な装置及び部品は、他の構成要素を「備える(comprising)」と説明される場合がある。ここで使用される「備える(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含む(contain(s))」という用語及びそれらの変形は、追加の構成要素の可能性を排除しない非限定型移行句、用語又は単語であることが意図されている。
【0024】
特定の実施形態では、濾過装置は、流体入口、流体入口から離間された流体出口、透過出口、複数の開口部及びその全長に沿って軸方向に延びるボアを有する中心コア、1つ又は複数の膜パケットを有する濾過モジュールである。
膜パケットのそれぞれには、ポリプロピレン等のポリオレフィンシートであり得る供給シート又はスクリーンと、使用中に遭遇する典型的な動作圧力に耐えるのに十分な強度を提供するためにエポキシ含浸され得る1つ又は複数のポリエステルスクリーン等の1つ又は複数の透過シートと、が挟まれている。
供給スクリーンは、それを挟む対向する膜の間に供給の流れのためのスペースを提供する。
透過シートは、孔あきコアへの透過流のための流体経路を提供する。
1つ又は複数の膜パケット及び1つ又は複数の透過シートは、コアの周りにスパイラル状の構成で巻かれている。
各膜パケット内の膜は、単層又は多層の膜であってよく、感染性生物やウイルス等の汚染物質、及びサイズ除外やそれらの組み合わせの化学的又は物理的吸着によって除去できる環境毒素や汚染物質等を含む不要な物質の濾過に使用できる。
膜は、限定はされないが、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、例えば、ナイロン、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、フルオロカーボン、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン-コパーフルオロ(アルキルビニルエーテル))、ポリカーボネート、ポリエチレン、ガラス繊維、ポリカーボネート、セラミック及び金属を含む任意の適切な材料から構成され得る。それは、精密濾過、限外濾過又は逆浸透膜であり得る。限外濾過膜が特に好ましい。
【0025】
適切なスパイラル状に巻かれた濾過装置(スパイラル型濾過装置)の1つは、MilliporeSigma社から市販されているPellicon(登録商標)カプセルである。Pellicon(登録商標)カプセルは、Ultracel(登録商標)複合材料の耐溶剤性膜を使用する単回使用のシングルパスタンジェンシャルフロー濾過装置であり、抗体薬物複合体及びモノクローナル抗体のバイオプロセシングに適している。当業者は、再利用可能な及び/又はマルチパスタンジェンシャルフロー装置を含む、他のスパイラル型装置も適切であることを理解するであろう。
【0026】
典型的には、スパイラル状に巻かれた装置は、折り畳まれた膜及び折り畳まれた膜によって挟まれた供給クリーンからなる1つ又は複数のパケット、及び1つ又は複数の透過シートを、孔あきコア又はマンドレルの周りの装置に巻くことによって製造される。
いくつかの実施形態では、透過シートの1つの完全な円周方向のラップがコアの周りに最初に巻かれて、コアの開口部に透過液が移動するために適切な流体経路が設けられてよい。
一般に膜パケットは他の材料よりも厚いので、膜パケットの巻き付け操作は、図1に見られるように、膜パケットがそれ自体に巻き付くときに、膜パケットの先端5の前にくさび形の空隙領域を作成する。
【0027】
より具体的には、図1は、折り畳まれた膜10によって挟まれた供給スクリーン12を備えた膜10の折り畳まれた先端5を示す。折り畳みの中に挟まれた供給スクリーンを備えた折り畳まれた膜10は、膜パケット14を含む。膜パケット14がそれ自体に巻き付けられると、膜パケット先端5のすぐ左側に見られるように、空隙領域15が形成される。典型的には、この空隙領域15は、一般的にくさび形である。
この空隙領域15を排除するために、従来は、空隙領域15をシールするように余分な接着剤を充填していた。これは面倒な手作業のプロセスであり、常に成功するとは限らない。例えば、その後の巻付張力の圧縮及びニップ力により、接着剤が空間から押し出され、再び空隙領域が作成され、その周囲の領域が変形する可能性がある。これにより、流体の流れのバイパス領域が作成され、製品の歩留まりと装置の全体的なパフォーマンスが低下する。
【0028】
特定の実施形態によれば、膜パケットの先端5に支持体20が結合され、その結果、パケットが巻かれると、図2及び図4に示されるように、支持体20が無ければ空隙領域15が形成されるであろう空間を支持体20が占拠する。
支持体20のサイズ及び形状は、所与のサイズのフィルタモジュールの典型的な巻き付け操作中に形成される空隙領域15のサイズ及び形状の以前の経験に基づいて決定され得る。
支持体20は、接着手段、超音波溶接手段、熱溶接手段、紫外線接着手段又は他の任意の適切な手段を使用して、先端5に結合され得る。
【0029】
図3は、支持体20の好ましい実施形態を示している。そこには、くさび形の支持体20が示されている。膜パケット14が巻かれると、空隙領域15が通常形成されるであろう領域を支持体20が占拠し、膜10が供給スクリーン12と接触したままであるように強制されるので、流体バイパス領域が最小化又は回避される。
【0030】
また、以下に記載される特定の実施形態によれば、ポッティングプロセス中に、装置が接着剤に沈められ、透過流体液路上で真空が引かれる。空隙15が存在する場合、接着剤が透過流体液路に移動し、液路の閉塞を引き起こす。従って、支持体20はまた、そのような接着剤の移動を軽減又は排除するように機能し、その領域をシールするために必要な接着剤の量を減らす。これはまた、コア又はマンドレル12の近くのより均一な透過液路シーム、及び最終的には各スパイラル状に巻かれた濾過モジュール内のより均一な膜領域をもたらす。
【0031】
特定の実施形態では、支持体20は、適切な接着剤(例えばエポキシ又はポリウレタン)を用いて、シーム位置等で、膜パケット14の先端5に取り付けられている。複数の膜パケット14が単一のコアに巻かれている場合、例えば、複葉アセンブリでは、各膜パケット14は、その先端5に取り付けられた支持体20を有していてよい。例えば、図6は、4枚葉アセンブリを示しており、その結果、中央の孔あきコア12から半径方向外向きに見える4つの支持体20が存在する。
【0032】
いくつかの実施形態では、支持体20は、支持体20の非存在下で形成される予想される空隙に一致するようにくさび形である。
いくつかの実施形態では、支持体20は圧縮可能であり空隙の形状に適応するので、当業者はサイズが重要ではないことを理解するであろうが、支持体20のより厚い端部21は、0.031インチの厚さであり、0.003インチの厚さである支持体20の薄い端部22に向かって先細になる。
薄い端部22は、それが接触する材料を引き裂く可能性がある鋭い端部を排除するために、Rが設けられるか又は丸みを帯びた角を有し得る。支持体20のより厚い端部21は、適切な接着剤で膜パケットの先端5に固定されていてよい。
特定の実施形態では、支持体20は、図8において最もよく見られるように、引き伸ばされ、膜パケット14の全長に延びる。
他の実施形態では、個々の支持体20は、透過液路への接着剤の侵入を遮断するために膜パケット14の反対側の面のみに配置されていてよく、膜パケット14の全長に延びない。
特定の実施形態では、支持体20は、モジュールを用いて実施される濾過操作に有害ではなく、以下で詳細に説明するように、接着剤を導入するために使用されるモールド上で真空シールに適切なシールを提供することができる、固体の流体不浸透性材料でできている。適切な材料には、Pebax 5533 SA01 Med Pantone298C等の熱可塑性エラストマーが含まれる。好ましくは、材料は、コア12の形状に適応するのに十分な柔軟性を有する。
【0033】
支持体20が膜パケット15の先端5に固定されると、膜パケット15は、透過スクリーン16(図4)及び接着剤と共にコア12の周りに張力下でしっかりと巻かれ、スパイラル状に巻かれたアセンブリを形成し得る。
支持体20が巻き込まれると、それは、透過スクリーン14によって両側が挟まれるようになる。これは、支持体20を所定の位置に固定するために接着剤が適用されるまで、支持体20を所定の位置に保持する。
膜パケット14の先端5が支持体20によって支持されているので、膜10は供給スクリーン12と接触したままであり、領域から接着剤を除去し有害な流体バイパスにつながるニップローラーステップ中の崩壊を防ぐ。
【0034】
しかしながら、巻き付け中に接着剤でアセンブリを結合することは、多少可変的であり、装置の故障につながる可能性があるギャップが形成されやすい。
【0035】
従って、特定の実施形態によれば、一般に低粘度の接着剤を透過シート14に均一に分配して、手作りのシームで生じる変動のない堅牢で均一なシームを作成するために、真空又は何らかの圧力差等の駆動力を使用して、アセンブリが共に接着され得る。
ポッティングプロセス中にポッティング接着剤フォームが供給液路に入るのを防ぐために、図7に示すように、流体不透過性の供給スクリーン縁部が使用されてよい。供給スクリーン縁部は、その縁部の外側の膜に供給流が到達することも防ぐ。この作用により、有効な膜面積が定義され、膜面積の変動が大幅に減少する。
供給スクリーン縁部を先端及び後端に適用すると、これらの端部の内側のみに膜領域への流れが制限されるため、各膜パケットの有効な膜長さが定義され、供給液路形状及び透過液路形状も改善される。
特定の実施形態では、供給スクリーンの側部の少なくとも3つは、ポッティング中に供給液路に接着剤が入ることを防ぐために、流体不透過性の縁部を含む。
いくつかの実施形態では、流体不透過性縁部の1つは供給面上にあり、1つは保持面(retentate face)上にあり、1つは(周囲の一部である)膜パケットの開放された末端上にある。供給流のスパイラルをアクティブにするために、供給縁部及び保持縁部が取り除かれる。供給末端縁部は残されてもよい。
いくつかの実施形態では、供給スクリーンの4つの側部すべてが、ポッティング中に流体不透過性縁部を含み(図8)、供給流のスパイラルをアクティブにするために供給縁部及び保持縁部がまた除去される。
供給液路内の接着剤は、例えば供給加圧を受けて膜が離れる等の理由により膜が剥離することによって、操作の完全性の損失、又は供給液路の流れの壊滅的な損失につながる可能性がある。
【0036】
ポッティング接着剤を塗布し硬化させると、供給液路を再び開くために、スパイラル状の入口面及び出口面上の縁部が例えば切り取る等により取り除かれ得る。
粘性のあるポリウレタン接着剤(又は熱可塑性、シリコーン、若しくは熱可塑性エラストマー)は、固体の不透過性供給スクリーン縁部を形成するのに適している。
特定の実施形態では、流体不透過性縁部を形成するために供給スクリーン上に縁部接着剤を分配する間、例えばポリエチレンフィルム等のフィルムが供給スクリーンの裏打ち層として使用されてよい。
いくつかの実施形態では、すべての接着剤が周囲に堆積された後に、供給スクリーンの上部に例えばポリエチレンフィルム等のフィルムの第2層も適用され、得られた供給スクリーンサンドイッチが、縁部の形状に接着剤を分散させるために圧縮される。
【0037】
図5は、接着剤を分配するための駆動力として真空を使用して、スパイラル状に巻かれたアセンブリをポッティングするための適切なモールド本体30を示している。
特定の実施形態では、ドライ巻きスパイラルアセンブリ25(dry wound spiral assembly 25)は、モールド本体30内に配置される。モールド本体30は、ドライ巻きスパイラルアセンブリ25が配置されている内部モールド本体キャビティ32と流体的に連通する接着剤注入ポート31を有する。
好ましくは、接着剤注入ポート31は、モールド本体30の底部又はその近くに配置され、その結果、駆動力の適用時に接着剤が上方に流れ、閉じ込められた空気が充填中に除去される。
いくつかの実施形態では、ドライ巻きスパイラルアセンブリ25の孔あきコア12は、モールド本体30の先細りの、又はOリングインターフェース33とシール関係に配置されている。
ドライ巻きスパイラルアセンブリ25がモールド本体30とシール関係にあることを確実にするために、モールド本体30の反対側の端部にOリングシール36等を設けてよく、その結果、真空の適用時に漏れが生じない。
【0038】
いくつかの実施形態では、例えばエポキシ又はポリウレタン等の適切なポッティング接着剤が注入ポート31に導入され、真空が真空入口40に適用されて、透過スクリーンに接着剤を押し込み、必要なすべての装置シームを作成し、スパイラルアセンブリ25の周りにアセンブリ25を完全に包む。
適切な真空レベルは、1~300秒で1~15水銀柱インチの範囲である。
接着剤が硬化すると、透過スクリーン35(図6)で補強された環状のハードシェルで装置が覆われる。これは、例えば100psigまでの圧力降下の状況下での膨張に抵抗する。このような膨張により、供給液路形状が開き、装置のパフォーマンスが低下する虞がある。
【0039】
いくつかの実施形態では、モールド本体30は、形成されたスパイラルアセンブリが単独のモジュール(すなわち、外部ハウジング又は圧力容器を有しないモジュール)として使用される場合にOリングを受け入れるための環状リングなどの特定の特徴が、硬化された接着剤の外面に形成されるように構成することができる。これらの特徴は機械加工することもできる。
【0040】
いくつかの実施形態では、モールドは、最終製品の一部を形成するハウジング、例えばその中にスパイラル状に巻かれたフィルタが配置されるプラスチックハウジングであり得る。
【0041】
この装置は、蒸気、エチレンオキシドガス、又はベータ線若しくはガンマ線などの放射線によって滅菌可能である。
【0042】
様々な態様及び実施形態が本明細書に開示されているが、当業者とっては、前述の詳細な説明を読んで理解すると、他の態様、実施形態、変更及び改変が明らかであろう。本明細書に開示される様々な態様及び実施形態は、例示を目的とするものであり、限定することを意図するものではない。本開示は、添付の特許請求の範囲又はその同等物の範囲内に入る限り、そのようなすべての態様、実施形態、変更及び改変を含むと解釈されることが意図される。
図1
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図8