(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20240122BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20240122BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B66B1/18 N
B66B5/00 G
B66B3/00 P
(21)【出願番号】P 2022193434
(22)【出願日】2022-12-02
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 康伸
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-97155(JP,A)
【文献】特開2021-70578(JP,A)
【文献】特開2021-62954(JP,A)
【文献】国際公開第2020/179022(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/18
B66B 5/00
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のエレベータが設置された建物内を移動する移動体から、当該建物が有する第1の階床から第2の階床に当該移動体が移動することを示す移動情報を受信する受信手段と、
前記複数台のエレベータの各々に対して行われる保守作業の日時に基づいて、当該複数台のエレベータのうちの1台のエレベータを前記移動体に割り当てる割り当て手段と、
前記移動体に割り当てられたエレベータを示す割り当て情報を前記移動体に送信する送信手段と
を具備する管理システム。
【請求項2】
前記割り当て手段は、現在の日時との差分が予め定められた値以上である日時に保守作業が行われるエレベータを前記移動体に割り当てる請求項1記載の管理システム。
【請求項3】
前記保守作業は、保守員による前記エレベータの点検作業及び前記複数台のエレベータの各々の異常を遠隔から監視するための遠隔診断運転の実施のうちの少なくとも一方を含む請求項1記載の管理システム。
【請求項4】
前記移動情報が受信された場合に、前記複数台のエレベータの各々に対して行われる保守作業の日時を示す保守日時情報を管理する保守支援システムから、当該保守日時情報を取得する取得手段を更に具備し、
前記割り当て手段は、前記取得された保守日時情報によって示される日時に基づいて前記複数台のエレベータのうちの1台のエレベータを前記移動体に割り当てる
請求項1記載の管理システム。
【請求項5】
前記複数台のエレベータの各々に対して行われる保守作業の日時を示す保守日時情報を管理する保守支援システムから、当該保守日時情報を取得する取得手段と
前記取得された保守日時情報を格納する格納手段を更に具備し、
前記割り当て手段は、前記格納手段に格納された保守日時情報によって示される日時に基づいて、前記複数台のエレベータのうちの1台のエレベータを前記移動体に割り当て、
前記格納手段に格納された保守日時情報は、前記保守支援システムから定期的に取得される保守日時情報に更新される
請求項1記載の管理システム。
【請求項6】
前記複数台のエレベータの各々の利用状況に応じて前記格納手段に格納された保守日時情報を変更する変更手段を更に具備し、
前記変更された保守日時情報は、前記保守支援システムに通知される
請求項5記載の管理システム。
【請求項7】
前記割り当て手段は、現在の日時と前記移動体及び前記複数台のエレベータの各々の乗場の位置とに基づいて計算される前記乗場に前記移動体が到着する日時に基づいて、当該複数台のエレベータのうちの1台のエレベータを前記移動体に割り当てる請求項1記載の管理システム。
【請求項8】
前記割り当て手段は、前記複数台のエレベータのうちの1台のエレベータに対して行われている保守作業の終了日時が前記乗場に前記移動体が到着する日時よりも前である場合には、当該エレベータを前記移動体に割り当てる請求項7記載の管理システム。
【請求項9】
前記割り当て手段は、前記保守作業が前記複数台のエレベータの各々の異常を遠隔から監視するための遠隔診断運転の実施である場合、予め定められた項目を診断する運転が実施されるエレベータを前記移動体に割り当てる請求項8記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、建物内を自律走行型ロボットのような移動体(以下、サービスロボットと表記)が移動(走行)することによって、当該建物内において荷物を搬送(運搬)するサービス及び当該建物内を警備するサービスのような各種サービスを提供することが考えられている。
【0003】
なお、サービスロボットが移動する建物が例えば複数階建てのビルである場合、当該サービスロボットは、当該ビルに設けられているエレベータを利用することによって、当該ビル内の複数の階床(フロア)を移動することができる。
【0004】
ここで、エレベータにおいては定期的に保守作業を行う必要があることが知られているが、上記したサービスロボットがエレベータを利用する場合には、当該保守作業を円滑に行うことができない(つまり、保守作業の効率が低下する)可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、保守作業の効率が低下することを回避することが可能な管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る管理システムは、受信手段と、割り当て手段と、送信手段とを具備する。前記受信手段は、複数台のエレベータが設置された建物内を移動する移動体から、当該建物が有する第1の階床から第2の階床に当該移動体が移動することを示す移動情報を受信する。前記割り当て手段は、前記複数台のエレベータの各々に対して行われる保守作業の日時に基づいて、当該複数台のエレベータのうちの1台のエレベータを前記移動体に割り当てる。前記送信手段は、前記移動体に割り当てられたエレベータを示す割り当て情報を前記移動体に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る管理システムの概要について説明するための図。
【
図3】管理システムの処理手順の一例について説明するためのシーケンスチャート。
【
図4】保守日時データベースのデータ構造の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
本実施形態においては、各種サービスを提供するために、建物内を移動体が移動する場合を想定する。この移動体は、例えば建物内において荷物を搬送(運搬)するサービス及び当該建物内を警備するサービス等を提供する自律走行型ロボット(以下、サービスロボットと表記)を含む。
【0010】
ここで、サービスロボットが移動する建物が複数の階床(フロア)を有するビル等である場合、当該サービスロボットは、例えば当該ビルに設置されているエレベータを利用することによって複数の階床を移動することができる。
【0011】
本実施形態に係る管理システムは、サービスロボットが移動する建物に複数台のエレベータ(乗りかご)が設置されている場合において、当該サービスロボットに対して当該複数台のエレベータのうちの1台のエレベータを割り当てる機能を有する。
【0012】
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る管理システムの概要について説明する。
図1に示すように、管理システム10は、例えばインターネットのようなネットワーク(公衆回線網)20を介して、建物内を移動するサービスロボット30と通信可能に接続される。
【0013】
また、
図1に示す例においては、図示しない3つのエレベータ(A号機、B号機及びC号機)が建物に設置されている場合を想定しており、管理システム10は、ネットワーク20を介して、A号機のエレベータを制御するエレベータ制御装置40A、B号機のエレベータを制御するエレベータ制御装置40B及びC号機のエレベータを制御するエレベータ制御装置40Cの各々と接続されている。更に、エレベータ制御装置40A~40Cには、それぞれ群管理制御装置41A~41Cが設置されている。群管理制御装置41A~41Cは、例えば利用者がエレベータを利用する際に複数台のエレベータの中から最適なエレベータを選択する(当該利用者に割り当てる)ことによって、当該利用者の効率的な移動を実現する。
【0014】
本実施形態に係る管理システム10は、このようなエレベータ制御装置40A~40C及び群管理制御装置41A~41Cと連携して動作することによって、サービスロボット30の移動に応じた最適なエレベータを当該サービスロボット30に割り当てるように動作する。
【0015】
なお、
図1においては省略されているが、エレベータ制御装置40A~40Cは、例えば遠隔監視システム等とネットワーク20を介して更に接続されているものとする。遠隔監視システムは、遠隔診断運転の実施をエレベータ制御装置40A~40Cに指示し、当該遠隔診断運転の結果に基づいて複数台のエレベータの各々の異常を遠隔から監視する。
【0016】
また、
図1においては示されていないが、エレベータ制御装置40A~40Cの各々は、例えば外部通信部、基本機能制御部、オプション機能制御部及び遠隔監視部等から構成される。外部通信部は、管理システム10及び遠隔監視システムのような外部システム(外部装置)等との通信を実行するように構成された機能部である。基本機能制御部は、エレベータの基本機能(例えば、エレベータの上下方向の運転制御等)を実現するように構成された機能部である。オプション機能制御部は、エレベータの基本機能以外のオプション機能を実現するように構成された機能部である。なお、オプション機能には、例えば換気ファンをオン及びオフする機能やエレベータの効率的な運転を実現するための基準階を設定する機能等が含まれる。遠隔監視部は、上記した遠隔診断運転を実施するように構成された機能部である。また、遠隔監視部は、例えば基本機能制御部に保持されているエレベータの運転に関するログデータ(運転ログ)を取得し、外部通信部を介して当該ログデータを遠隔監視システムに送信するように構成されていてもよい。
【0017】
なお、ここではエレベータ制御装置40A~40Cの各々が外部通信部、基本機能制御部、オプション機能制御部及び遠隔監視部から構成されるものとして説明したが、当該外部通信部、基本機能制御部、オプション機能制御部及び遠隔監視部は、それぞれ独立した複数の装置(例えば、外部通信装置、基本機能制御装置、オプション機能制御装置及び遠隔監視装置)として実現されていてもよい。
【0018】
ここで、上記した複数台のエレベータ(例えば、A~C号機)の各々においては定期的に保守作業を行う必要があるが、当該保守作業が予定されているエレベータをサービスロボットに割り当ててしまうことにより、当該保守作業の効率が低下する場合がある。
【0019】
そこで、本実施形態に係る管理システム10は、保守作業の効率が低下することを回避する仕組みを提供する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る管理システム10の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、管理システム10は、移動情報受信部11、保守日時情報取得部12、割り当て処理部13及び割り当て情報送信部14を含む。
【0021】
なお、本実施形態における管理システム10は、例えばサーバ装置等として動作する情報処理装置(電子装置)によって実現されるものとする。また、管理システム10に含まれる各部11~14は、例えばCPUのようなプロセッサが所定のプログラムを実行すること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して頒布されてもよいし、ネットワークを介して管理システム10にダウンロードされてもよい。なお、管理システム10に含まれる各部11~14は、IC(Integrated Circuit)のようなハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組合せによって実現されてもよい。
【0022】
移動情報受信部11は、サービスロボット30の移動に関する情報(以下、移動情報と表記)を受信する。なお、移動情報は、例えばサービスロボット30が出発階に相当する階床(第1の階床)から行先階に相当する階床(第2の階床)に移動することを示す情報である。
【0023】
ここで、
図1においては省略されているが、本実施形態に係る管理システム10は、保守支援システム50と通信可能に接続されている。保守支援システム50は、例えば複数台のエレベータの各々に対して行われる保守作業を支援するように構成されている。具体的には、保守支援システム50は、例えば複数台のエレベータに対して行われる保守作業の日時を示す保守日時情報を格納(管理)する保守日時データベース(DB)51を含む。
【0024】
保守日時情報取得部12は、保守支援システム50に含まれる保守日時データベース51から保守日時情報を取得(受信)する。
【0025】
割り当て処理部13は、移動情報受信部11によって受信された移動情報に基づいて、複数台のエレベータのうちの1台のエレベータをサービスロボット30に割り当てる処理を実行する。この場合、割り当て処理部13は、現在の日時及び保守日時情報取得部12によって取得された保守日時情報によって示される日時(複数台のエレベータの各々に対して行われる保守作業の日時)を考慮して、サービスロボット30にエレベータを割り当てる。
【0026】
割り当て情報送信部14は、割り当て処理部13によってサービスロボット30に割り当てられたエレベータを示す情報をサービスロボット30に送信する。
【0027】
次に、
図3のシーケンスチャートを参照して、本実施形態に係る管理システム10の処理手順の一例について説明する。
【0028】
ここで、サービスロボット30は各種サービスを提供するために建物内を移動する必要があるが、当該サービスロボット30の内部には、当該サービスロボット30が移動する建物(各階床)の地図を示す地図情報が予め保持されているものとする。また、サービスロボット30は、当該サービスロボット30の現在位置を検知する機能(以下、位置検知機能と表記)を有しているものとする。なお、位置検知機能は、例えばビーコンやGPS(Global Positioning System)等を利用することによって実現され得るが、他の技術を適用することによって実現されてもよい。
【0029】
この場合、サービスロボット30は、当該サービスロボット30の内部に保持されている地図情報、位置検知機能によって検知されたサービスロボット30の現在位置及び上記したサービスを提供するために設定された目的地等に基づいて、サービスロボット30が現在位置から目的地に移動するためにエレベータを利用する際の出発階及び行先階を特定する(ステップS1)。例えば現在位置が第1の階床上の所定の位置であり、目的地が第2の階床上の所定の位置である場合には、出発階として第1の階床、行先階として第2の階床が特定される。なお、ステップS1の処理等は、サービスロボット30に搭載されているCPU等によって実行される。
【0030】
ステップS1の処理が実行されると、サービスロボット30は、当該ステップS1において特定された出発階及び行先階を含む移動情報(つまり、サービスロボット30が出発階から行先階に移動することを示す移動情報)を管理システム10に送信する(ステップS2)。
【0031】
ステップS2においてサービスロボット30から送信された移動情報は、管理システム10に含まれる移動情報受信部11によって受信される。
【0032】
移動情報受信部11によって移動情報が受信されると、管理システム10は、保守支援システム50に対して保守日時情報の取得を要求する(ステップS3)。
【0033】
保守支援システム50は、ステップS3における管理システム10からの要求に応じて、保守日時データベースから保守日時情報を取得し、当該保守日時情報を管理システム10に出力する(ステップS4)。ステップS4において保守支援システム50から出力(送信)された保守日時情報は、管理システム10に含まれる保守日時情報取得部12によって取得(受信)される。
【0034】
ここで、
図4は、保守日時データベース51のデータ構造の一例を示す。
図4に示すように、保守日時データベース51には複数の保守日時情報が格納されており、当該保守日時情報は、エレベータ番号、号機、開始日時及び終了日時を対応づけて含む。
【0035】
エレベータ番号は、例えば1つの建物(に設置されている複数台のエレベータ)に割り当てられた番号であり、当該複数台のエレベータを識別するための識別子として用いられる。号機は、対応づけられているエレベータ番号が割り当てられている複数台のエレベータのうちの1つのエレベータ(保守作業が行われるエレベータ)を識別するための識別子に相当する。すなわち、保守日時情報に含まれるエレベータ番号及び号機は、保守作業が行われるエレベータを特定するための情報であるといえる。開始日時は、対応づけられているエレベータ番号及び号機によって特定されるエレベータに対する保守作業を開始する日時である。終了日時は、対応づけられているエレベータ番号及び号機によって特定されるエレベータに対する保守作業を終了する日時である。すなわち、保守日時情報に含まれる開始日時及び終了日時は、エレベータに対して行われる保守作業の日時(当該保守作業が行われる期間)を示す情報であるといえる。
【0036】
図4に示す例では、保守日時データベース51には、保守日時情報511~513を含む複数の保守日時情報が格納されている。
【0037】
保守日時情報511は、エレベータ番号「001」、号機「A号機」、開始日時「開始日時1」及び終了日時「終了日時1」を対応づけて含む。このような保守日時情報511によれば、エレベータ番号「001」が割り当てられている複数台のエレベータ(例えば、xxxビルに設置されているA~C号機のエレベータ)のうちのA号機のエレベータに対する保守作業が開始日時1に開始され、終了日時1に終了される(予定である)ことが示されている。
【0038】
保守日時情報512は、エレベータ番号「001」、号機「B号機」、開始日時「開始日時2」及び終了日時「終了日時2」を対応づけて含む。このような保守日時情報512によれば、エレベータ番号「001」が割り当てられている複数台のエレベータ(例えば、xxxビルに設置されているA~C号機のエレベータ)のうちのB号機のエレベータに対する保守作業が開始日時2に開始され、終了日時2に終了される(予定である)ことが示されている。
【0039】
保守日時情報513は、エレベータ番号「001」、号機「C号機」、開始日時「開始日時3」及び終了日時「終了日時3」を対応づけて含む。このような保守日時情報513によれば、エレベータ番号「001」が割り当てられている複数台のエレベータ(例えば、xxxビルに設置されているA~C号機のエレベータ)のうちのC号機のエレベータに対する保守作業が開始日時3に開始され、終了日時3に終了される(予定である)ことが示されている。
【0040】
図4においては保守日時情報511~513についてのみ説明したが、保守日時データベース51には、保守作業が行われるエレベータ毎の保守日時情報が格納されている。
【0041】
また、
図4においては、保守日時情報にエレベータ番号、号機、開始日時及び終了日時が含まれるものとして説明したが、当該保守日時情報には、保守作業における作業項目等が更に含まれていてもよい。
【0042】
なお、保守作業が複数の建物に設置されているエレベータに対して行われる(つまり、異なるエレベータ番号を含む保守日時情報が保守日時データベース51に格納されている)場合には、上記した
図3に示すステップS3においてサービスロボット30が移動する建物に設置されている複数台のエレベータに割り当てられているエレベータ番号が管理システム10から保守支援システム50に出力され、ステップS4において当該エレベータ番号を含む保守日時情報が保守支援システム50から管理システム10に出力される。
【0043】
ところで、ここでは保守作業を支援するように構成されている保守支援システム50から保守日時情報が取得されるものとして説明したが、本実施形態における保守作業の一例には、保守員がエレベータを点検する作業(つまり、保守員による点検作業)が含まれる。この場合、保守支援システム50は点検作業管理システムに相当し、当該保守支援システム50(保守日時データベース51)において管理されている保守日時情報は保守員による点検作業の日時を示す点検日時情報に相当する。このような点検作業管理システムは、例えば点検日時情報(エレベータ番号、号機、開始日時及び終了日時)をエレベータの点検を行う保守員が所持する端末装置(例えば、スマートフォン等)に送信するように動作する。
【0044】
また、本実施形態における保守作業の他の例には、エレベータの異常を監視するために遠隔診断運転を実施することが含まれる。この場合、保守支援システム50は遠隔監視システムに相当し、当該保守支援システム50(保守日時データベース51)において管理されている保守日時情報は遠隔診断運転を実施する日時を示す診断日時情報に相当する。このような遠隔監視システムは、診断日時情報(エレベータ番号、号機、開始日時及び終了日時)に基づいて、エレベータ番号及び号機によって特定されるエレベータと接続されるエレベータ制御装置(つまり、当該エレベータを制御するエレベータ制御装置)に当該開始日時から終了日時までの期間に遠隔診断運転を実施するよう指示することができる。なお、遠隔診断項目(遠隔診断運転を実施することによって診断される項目)は例えば上記したエレベータ制御装置を構成する基本機能制御部の内部に保持されており、当該基本機能制御部は、当該遠隔診断項目に応じてエレベータを運転する。遠隔診断項目には、例えばエレベータに設置されている荷重センサ(によって計測される荷重)、エレベータ(乗りかご)が移動する速度及び各階床におけるドアの開閉が正常であるか否か等が含まれる。このような遠隔診断項目毎の遠隔診断運転結果は、外部通信部を介して遠隔監視システムに送信される。
【0045】
ここでは保守作業(保守支援システム50)の一例として点検作業(点検作業管理システム)及び遠隔診断運転の実施(遠隔監視システム)について説明したが、本実施形態においては、エレベータの保守を目的として保守員によって行われる作業や保守を目的としたエレベータの運転を実施すること等を包括的に保守作業として表現しているのであって、当該保守作業はここで説明したもの以外であってもよい。
【0046】
再び
図3に戻ると、割り当て処理部13は、上記した移動情報に含まれる出発階及び行先階をエレベータ制御装置40A~40Cに送信する(ステップS5)。なお、
図3においてはサービスロボット30から管理システム10に対して出発階及び行先階を含む移動情報が送信されるものとして説明したが、当該サービスロボット30から管理システム10に対して送信される移動情報は、例えばサービスロボット30の現在位置及び目的地を含む情報であってもよい。この場合には、移動情報に含まれるサービスロボット30の現在位置及び目的地に基づいて出発階及び行先階を特定し、当該特定された出発階及び行先階をエレベータ制御装置40A~40Cに送信するように割り当て処理部13が動作すればよい。
【0047】
次に、ステップS5において送信された出発階及び行先階に基づいて、サービスロボット30が移動する建物に設置されている複数台のエレベータ(A~C号機)の中からサービスロボット30に割り当てるエレベータの候補(以下、割り当て候補エレベータと表記)が決定される(ステップS6)。
【0048】
ここで、例えばエレベータ制御装置40Aに設置されている群管理制御装置41Aは、A号機のエレベータに対する利用者の現在の利用状況等を管理している。同様に、エレベータ制御装置40Bに設置されている群管理制御装置41BはB号機のエレベータに対する利用者の現在の利用状況等を管理し、エレベータ制御装置40Cに設置されている群管理制御装置41CはC号機のエレベータに対する利用者の現在の利用状況等を管理している。このため、上記したステップS6においては、このような群管理制御装置41A~41Cが互いに通信を実行する(連携して動作する)ことにより、A~C号機のエレベータに対する利用者の利用状況に基づいてサービスロボット30を出発階から行先階までも最も効率的に移動させることができるエレベータが割り当て候補エレベータとして決定される。
【0049】
ステップS6において決定された割り当て候補エレベータを示す情報(以下、割り当て情報と表記)は、例えば当該候補エレベータを制御するエレベータ制御装置40A~40Cのうちの1つから管理システム10に送信される(ステップS7)。
【0050】
ステップS7の処理が実行されると、割り当て処理部13は、当該ステップS7においてエレベータ制御装置40A~40Cのうちの1つから送信された割り当て情報を受信する。割り当て処理部13は、上記した保守日時情報によって示される日時(つまり、保守作業が行われる日時)に基づいて、割り当て情報によって示される割り当て候補エレベータをサービスロボット30に割り当てる(ステップS8)。
【0051】
以下、ステップS8の処理について説明する。エレベータ制御装置40A~40Cのうちの1つから割り当て情報が受信されると、割り当て処理部13は、上記した保守日時情報に基づいて、当該割り当て情報によって示される割り当て候補エレベータに対する保守作業が直後に行われるか否かを判定する。具体的には、割り当て処理部13は、割り当て候補エレベータを特定するためのエレベータ番号及び号機に対応づけて保守日時情報に含まれる開始日時を取得し、当該開始日時と現在の日時との差分が予め定められた値以上である場合、割り当て候補エレベータに対する保守作業が直後に行われないと判定する。なお、この判定処理において用いられる現在の日時とは、
図3の処理が実行されるタイミングに相当する日時であればよく、例えばサービスロボット30から移動情報が受信された日時やエレベータ制御装置40A~40Cのうちの1つから割り当て情報が受信された日時等であってもよい。
【0052】
上記したように割り当て候補エレベータに対する保守作業が直後に行われないと判定された場合、割り当て処理部13は、保守作業が行われるまでに十分な時間がある(つまり、保守作業に影響を与えることなくサービスロボット30を移動させることができる)として、当該割り当て候補エレベータをサービスロボット30に割り当てる。
【0053】
ステップS8の処理が実行されると、割り当て情報送信部14は、当該ステップS8においてサービスロボット30に割り当てられたエレベータを示す割り当て情報をサービスロボット30に送信する(ステップS9)。
【0054】
ステップS9において管理システム10(割り当て情報送信部14)から送信された割り当て情報は、サービスロボット30において受信される。サービスロボット30は、受信された割り当て情報に基づいて、移動を開始する(ステップS10)。
【0055】
この場合、サービスロボット30は、上記したようにサービスロボット30の内部に保持されている地図情報及び当該サービスロボット30の現在位置に基づいて、当該現在位置から割り当て情報によって示されるエレベータの乗場までの経路を決定(計算)し、当該決定された経路に沿って移動する。これによれば、サービスロボット30は、サービスロボット30に割り当てられたエレベータの乗場に到着した後に、当該エレベータを利用して行先階に移動することができる。この場合、サービスロボット30は、行先階における現在位置(つまり、降車位置)から目的地までの経路を決定し、当該決定された経路に沿って移動することにより、当該目的地に到着することができる。
【0056】
ここでは割り当て候補エレベータに対する保守作業が直後に行われないと判定された場合について説明したが、当該保守作業が直後に行われると判定された場合、割り当て処理部13は、サービスロボット30に割り当て候補エレベータを割り当てるべきではないことをエレベータ制御装置40A~40Cに通知する。この場合、割り当て候補エレベータ以外のエレベータの中から再度割り当て候補エレベータを決定するステップS6の処理が実行され、当該ステップS6において再度決定された割り当てエレベータを制御するエレベータ制御装置40A~40Cのうちの1つから当該割り当てエレベータを示す割り当て情報を管理システム10に送信するステップS7の処理が実行される。
【0057】
また、本実施形態においては割り当て候補エレベータ(ステップS6において決定されたエレベータ)に対する保守作業が直後に行われるか否かをステップS8の処理が実行されるタイミングで判定するものとして説明したが、例えばステップS4の処理が実行された後に、サービスロボット30が移動する建物に設置されている複数台のエレベータの各々に対して当該判定処理を実行し、保守作業が直後に行われないエレベータをステップS5においてエレベータ制御装置40A~40Cに通知する構成としてもよい。このような構成によれば、ステップS6において保守作業が直後に行われないエレベータの中から割り当て候補エレベータを決定することができ、割り当て処理部13はステップS8において当該割り当て候補エレベータをサービスロボット30に割り当てることができる。
【0058】
上記したように本実施形態においては、複数台のエレベータが設置された建物内を移動するサービスロボット30(移動体)から、当該建物が有する第1の階床から第2の階床に移動することを示す移動情報(例えば、出発階及び行先階)を受信し、当該複数台のエレベータの各々に対して行われる保守作業の日時に基づいて、当該複数台のエレベータのうちの1台のエレベータをサービスロボット30に割り当て、当該サービスロボット30に割り当てられたエレベータを示す割り当て情報を当該サービスロボット30に送信する。
【0059】
なお、本実施形態においては、現在の日時との差分が予め定められた値以上である日時に保守作業が行われるエレベータ(つまり、保守作業が直後に行われないエレベータ)がサービスロボット30に割り当てられる。
【0060】
本実施形態においては、このような構成により、例えば予定された保守作業が行われる日時にサービスロボット30にエレベータが割り当てられている(つまり、サービスロボット30によりエレベータが利用される)ことにより、当該保守作業を行うことができないような事態を回避することができる。換言すれば、本実施形態においては、建物内をサービスロボット30のような移動体が移動するような環境においてエレベータに対する保守作業の効率が低下することを回避することが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態における保守作業としては、保守員によるエレベータの点検作業が考えられる。一般に、保守員は予め定められたスケジュール(点検作業の日時)に従って複数台のエレベータに対する点検作業を順次行う必要があるところ、本実施形態においては、このようなスケジュールの変更の発生を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態における保守作業としては、複数台のエレベータの各々の異常を遠隔から監視するための遠隔診断運転の実施が考えられる。本実施形態においては、予定されていた遠隔診断運転を実施することができないことによってエレベータ制御装置40A~40C及び遠隔監視システム(保守支援システム50)の内部処理が滞るような状況を回避することができる。
【0063】
なお、本実施形態においては保守作業が保守員によるエレベータの点検作業及び複数台のエレベータの各々の異常を遠隔から監視するための遠隔診断運転の実施のうちの少なくとも一方を含む場合を想定しているが、当該保守作業(を支援する保守支援システム50)は、サービスロボット30が移動する建物に設置されている複数台のエレベータの保守に関する作業等(を支援するシステム)であればよい。
【0064】
ところで、本実施形態においては、サービスロボット30から移動情報が受信された場合に複数台のエレベータの各々に対して行われる保守作業の日時を示す保守日時情報を保守支援システム50から取得し、当該取得された保守日時情報によって示される日時に基づいて複数台のエレベータのうちの1台のエレベータを当該サービスロボット30に割り当てる(つまり、サービスロボット30がエレベータを利用する都度、保守日時情報を保守支援システム50から取得する)ものとして説明したが、当該保守日時情報を管理システム10内に予め取り込んでおく(管理システム10に含まれる格納部に当該保守日時情報を格納しておく)構成であってもよい。このような構成によれば、サービスロボット30がエレベータを利用する度に保守支援システム50にアクセスする必要がなく、当該サービスロボット30にエレベータを割り当てる際の処理量を軽減することが可能となる。なお、保守支援システム50(保守日時データベース51)において管理される保守日時情報は例えば当該保守支援システム50の管理者等によって変更される可能性があるため、上記したように管理システム10に含まれる格納部に保守日時情報を格納しておく構成の場合には、当該格納部に格納された保守日時情報は保守支援システム50から取得される最新の保守日時情報に定期的に更新されるものとする。
【0065】
また、一般的に、上記した保守作業の日時(保守日時情報によって示される日時)は例えばオフィスビル等における出勤時や退勤時等のエレベータの利用者が混雑する時間帯(高い頻度でエレベータの割り当てが発生する時間帯)を避けるように設定されているが、当該エレベータの利用状況は変化する可能性があり、例えば利用者が混雑する時間帯に保守作業を行うことは利用者の利便性の低下の要因となる。このため、本実施形態に係る管理システム10は、例えば過去のエレベータの利用状況(つまり、利用者及びサービスロボット30に対するエレベータの割り当ての履歴)を記録しておき、当該利用状況に応じて上記したように格納部に格納されている保守日時情報を変更するような構成であってもよい。具体的には、例えば過去のエレベータの利用状況に基づいて利用者が混雑する時間帯に変化が生じていると判定される場合には、保守日時情報によって示される日時を、当該時間帯を避けるような日時に変更することが考えられる。また、過去のエレベータの利用状況に基づいて予測される利用状況等に基づいて保守日時情報(によって示される日時)を変更するような構成であってもよい。なお、上記した過去のエレベータの利用状況は、例えば群管理制御装置41A~41C(エレベータ制御装置40A~40C)から取得されるものとする。
【0066】
このような構成によれば、自動的に保守作業が行われるスケジュール(予定)の見直しを行うことで、利用者が混雑する時間帯等に保守作業が行われることを回避し、利用者等の利便性の低下を抑制することができる。
【0067】
なお、保守日時情報が変更された場合、当該変更された保守日時情報(つまり、保守作業の日時)は、保守支援システム50に通知される。これにより、保守支援システム50は、変更された日時に保守作業が行われるものとして管理することができる。また、保守員によるエレベータの点検作業日時を管理システム10が変更したい場合、保守員は他の現場での点検作業時間とも調整が必要になってくる可能性があり、所定の建物(物件)だけの都合で変更することは困難な場合が想定される。この場合には、推奨される点検日時を保守支援システム50へ送信し、管理者や点検作業を実施する担当者などが提案内容を確認して点検作業日時を変更するような構成であってもよい。
【0068】
また、一般的に、保守作業が行われているエレベータは、群管理制御装置41A~41Cによって割り当て候補エレベータとして決定されるエレベータ(つまり、サービスロボット30に割り当てられるエレベータ)から除外される。しかしながら、本実施形態においては、エレベータの保守作業が間もなく終了するような場合には、当該エレベータをサービスロボット30に割り当てるようにしてもよい。この場合、割り当て処理部13は、保守日時情報に含まれる終了日時及び保守作業が行われているエレベータの乗場にサービスロボット30が到着する日時に基づいて当該エレベータを割り当てる。具体的には、保守支援システム50から取得される保守日時情報に含まれる保守作業の終了日時が、当該保守作業が行われているエレベータの乗場にサービスロボット30が到着する日時よりも前である場合には、当該エレベータが当該サービスロボット30に割り当てられるものとする。このような構成によれば、保守作業が終了した直後のエレベータを利用してサービスロボット30が移動することができるため、他のエレベータをサービスロボット30に割り当てることによって当該エレベータを利用者が利用することができない(つまり、利用者の利便性が低下する)ことを抑制することができる。
【0069】
なお、保守作業が行われているエレベータの乗場にサービスロボット30が到着する日時は、例えば現在の日時に対して当該エレベータの乗場にサービスロボット30が移動するのに要する時間を加算することによって計算される。また、エレベータの乗場にサービスロボット30が移動するのに要する時間は、例えば地図情報に基づいて決定されるサービスロボット30の現在位置からエレベータの乗場までの経路及びサービスロボット30が移動する速度等に基づいて計算される。なお、サービスロボット30が移動する速度は、例えばサービスロボット30内において予め設定されているものとする。
【0070】
上記した保守作業が行われているエレベータの乗場にサービスロボット30が到着する日時及びエレベータの乗場にサービスロボット30が移動するのに要する時間等の計算処理は、管理システム10側で計算されてもよいし、サービスロボット30側で計算されてもよい。
【0071】
また、エレベータの保守作業中に異常が発生し、終了予定時間通りに保守作業が終了できないことが考えられるが、この場合には、図示されない保守員が所持している携帯端末などによって作業延長が保守支援システム50に登録される(つまり、
図4に示す保守日時データベース51に格納されている保守日情報に含まれる終了日時が更新される)ものとする。
【0072】
更に、本実施形態における遠隔診断運転が実施される場合、当該遠隔診断運転は、エレベータに設置されている荷重センサによって計測される荷重(乗りかごの積載荷重)や当該エレベータ(乗りかご)が上下方向に移動する速度が正常であるか異常であるかを診断するために実施される第1診断運転、及び各階床におけるドアの開閉動作が正常であるか異常であるかを診断するために実施される第2診断運転等を含む。この場合、第1診断運転は例えばエレベータ内に積載物がない状態で実施されるが、第2診断運転は乗りかご内に積載物がある状態で実施されても構わない。このため、上記したように遠隔診断運転が実施されているエレベータであっても、第2診断運転が実施されるタイミングであれば、当該エレベータをサービスロボット30に割り当てるようにしてもよい。換言すれば、本実施形態においては、遠隔診断運転として複数の項目を診断する運転が実施される場合において、上記したドアの開閉等の予め定められた項目を診断する運転が実施されるエレベータをサービスロボット30に割り当てる構成としても構わない。
【0073】
ここでは複数台のエレベータが設置されている建物内を移動するサービスロボット30に当該複数台のエレベータのうちの1台のエレベータを割り当てる管理システム10のいくつかの構成について説明したが、このような管理システム10によれば、当該サービスロボット30の移動効率(運行効率)を維持した状態で、エレベータに対する保守作業を時間通りに行う(つまり、保守効率の低下を回避する)ことができる。換言すれば、本実施形態においては、エレベータの保守作業が行われる時間を考慮したロボット連動を実現することができ、サービスロボット30によって提供されるサービスの品質と保守効率との両方を維持することが可能となる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
10…管理システム、11…移動情報受信部、12…保守日時情報取得部、13…割り当て処理部、14…割り当て情報送信部、20…ネットワーク、30…サービスロボット(移動体)、40A~40C…エレベータ制御装置、41A~41C…群管理制御装置、50…保守支援システム、51…保守日時データベース。
【要約】
【課題】保守作業の効率が低下することを回避することが可能な管理システムを提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る管理システムは、受信手段と、割り当て手段と、送信手段とを具備する。受信手段は、複数台のエレベータが設置された建物内を移動する移動体から、当該建物が有する第1の階床から第2の階床に当該移動体が移動することを示す移動情報を受信する。割り当て手段は、複数台のエレベータの各々に対して行われる保守作業の日時に基づいて、当該複数台のエレベータのうちの1台のエレベータを移動体に割り当てる。送信手段は、移動体に割り当てられたエレベータを示す割り当て情報を移動体に送信する。
【選択図】
図1