(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】制御装置、内視鏡の配置状態判定方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/12 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
A61B1/12 510
(21)【出願番号】P 2022501440
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2020006308
(87)【国際公開番号】W WO2021166074
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 仁
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 啓吾
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-066291(JP,A)
【文献】特開平10-296194(JP,A)
【文献】特開2002-272684(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188044(WO,A1)
【文献】実開平01-009603(JP,U)
【文献】特開2018-153872(JP,A)
【文献】特開2014-226153(JP,A)
【文献】特開2011-193982(JP,A)
【文献】特開2013-106790(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087599(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを有し、
前記プロセッサは、
内視鏡リプロセッサに配置された内視鏡の配置状態の撮像角度が異なる観察画像を複数取得し、
各角度から撮像した観察画像を比較してその中から不良画像を判定対象から除外し、
前記判定対象から除外した以外の前記観察画像において、前記内視鏡リプロセッサ内の所定の部位を含む所定範囲内に、前記内視鏡の所定部位が含まれるか否かを指標として配置状態が適正か、不適正かを判定する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記内視鏡リプロセッサ内の所定の部位を含む所定範囲内に、前記内視鏡の所定部位が含まれる場合は前記配置状態が適正であると判定し、
前記内視鏡リプロセッサ内の所定の部位を含む所定範囲内に、前記内視鏡の所定部位が含まれない場合は前記配置状態が不適正であると判定し、
その結果を報知する信号を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
複数の前記観察画像の中から前記内視鏡が前記観察画像に虚像として写り込んだ画像、又は前記観察画像にハレーションが写り込んで一部が欠けた画像を不良画像として除去する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記内視鏡リプロセッサ内の所定の部位は、内視鏡リプロセッサ内に配置された保持網のピンであり、
前記内視鏡の所定部位は、目盛線である
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
複数の前記観察画像は、一端が開閉可能となるよう前記内視鏡リプロセッサに他端が固定されて設けられたカバーの開閉に合わせて異なる角度から撮像された画像である
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
観察画像を取得する前に内視鏡情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
内視鏡リプロセッサに配置された内視鏡の配置状態の撮像角度が異なる観察画像を複数取得し、
各角度から撮像した観察画像を比較してその中から不良画像を判定対象から除外し、
前記判定対象から除外した以外の前記観察画像において、内視鏡リプロセッサ内の所定の部位を含む所定の範囲内に、内視鏡の所定の部位が含まれるかを判定する
ことを特徴とする内視鏡の配置状態判定方法。
【請求項8】
一端が回転可能となるよう前記内視鏡リプロセッサに他端が固定されて設けられたカバーの回転に合わせて異なる角度から撮像することで複数の前記観察画像を取得する
ことを特徴とする請求項7に記載の内視鏡の配置状態判定方法。
【請求項9】
最後の前記観察画像はカバーが閉じられた状態で撮像された画像である
ことを特徴とする請求項8に記載の内視鏡の配置状態判定方法。
【請求項10】
内視鏡リプロセッサの処理槽に配置された内視鏡の配置状態の観察画像を観察部が取得する観察ステップと、
前記観察画像を基に、判定部が前記処理槽内の所定の部位によって定義される所定範囲内に、内視鏡の所定部位が含まれるか否かを判定基準として、前記配置状態が適正か不適正かを判定する第1判定方法を少なくとも含む判定ステップと、
少なくとも前記配置状態が不適正であると判定された場合に報知部が判定結果を報知する報知ステップと、
前記観察ステップは、少なくとも二種の観察方法を含み、
前記観察ステップは、第1波長の光を照射しつつ
前記観察部が前記内視鏡の配置状態を観察する第3の観察方法と、
前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射しつつ前記観察部が前記内視鏡の配置状態を観察する第4観察方法と、を含む
ことを特徴とする内視鏡の配置状態判定方法。
【請求項11】
内視鏡リプロセッサの処理槽に配置された内視鏡の配置状態の観察画像を観察部が取得する観察ステップと、
前記観察画像を基に、判定部が前記処理槽内の所定の部位によって定義される所定範囲内に、内視鏡の所定部位が含まれるか否かを判定基準として、前記配置状態が適正か不適正かを判定する第1判定方法を少なくとも含む判定ステップと、
少なくとも前記配置状態が不適正であると判定された場合に報知部が判定結果を報知する報知ステップと、
前記判定ステップは、少なくとも前記第1判定方法とは異なる第2判定方法を含み、前記第2の判定方法は、
前記観察画像から少なくとも一部の特定の色の割合を算出し、
前記特定の色の割合を閾値と比較する方法である
ことを特徴とする内視鏡の配置状態判定方法。
【請求項12】
内視鏡情報読み取り部が内視鏡情報を取得する内視鏡情報取得ステップを含み、
前記判定部は、前記閾値を前記内視鏡情報に基づいて変更する
ことを特徴とする請求項11に記載の内視鏡の配置状態判定方法。
【請求項13】
コンピュータに、
内視鏡リプロセッサに配置された内視鏡の配置状態の撮像角度が異なる観察画像を複数取得し、
各角度から撮像した観察画像を比較してその中から不良画像を判定対象から除外し、
前記判定対象から除外した以外の前記観察画像において、内視鏡リプロセッサ内の所定の部位を含む所定の範囲内に、内視鏡の所定の部位が含まれるかを判定する処理を実行させる
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡リプロセッサの処理槽に対して内視鏡が適切に配置されているか否かを判定するための制御装置、内視鏡の配置状態判定方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体に使用された内視鏡に、洗浄消毒等の再生処理を行う内視鏡リプロセッサがある。この種の内視鏡リプロセッサを用いて再生処理を行う場合、内視鏡は、巻回した状態にて処理槽の内部に配置される。この場合において、取扱い説明書等によって指示されている内視鏡のセッティング状態(挿入部の巻き回し状態等)を守れば、内視鏡の表面に薬液を行き渡らせることができ、適切な再生処理が保証される。従って、内視鏡リプロセッサは、正しく再生処理が行われるように、適切な内視鏡の配置状態によって使用されているか否かを判定する技術が求められている。
【0003】
内視鏡のセッティング状態を判定するための技術として、例えば、日本国特開2006-230492号公報には、内視鏡が所定位置に収納配置されたことを検知する内視鏡内視鏡センサを、槽本体の側面の所定位置に設けた内視鏡洗浄装置が開示されている。日本国特開2006-230492号公報の技術において、内視鏡検知センサは、光を発する発光部と、この発光部からの光を受光する受光部とを備えた一対の光学センサによって構成されている。
【0004】
しかしながら、上述の日本国特開2006-230492号公報の技術は、判定精度が低い。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、内視鏡リプロセッサの処理槽に対し、内視鏡が適切な配置状態によって配置されているか否かの判定を的確に行うことができる制御装置、内視鏡の配置状態判定方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による制御装置は、プロセッサを有し、前記プロセッサは、内視鏡リプロセッサに配置された内視鏡の配置状態の撮像角度が異なる観察画像を複数取得し、各角度から撮像した観察画像を比較してその中から不良画像を判定対象から除外し、前記判定対象から除外した以外の前記観察画像において、前記内視鏡リプロセッサ内の所定の部位を含む所定範囲内に、前記内視鏡の所定部位が含まれるか否かを指標として配置状態が適正か、不適正かを判定する。
本発明の一態様による内視鏡の配置状態判定方法は、内視鏡リプロセッサに配置された内視鏡の配置状態の撮像角度が異なる観察画像を複数取得し、各角度から撮像した観察画像を比較してその中から不良画像を判定対象から除外し、前記判定対象から除外した以外の前記観察画像において、内視鏡リプロセッサ内の所定の部位を含む所定の範囲内に、内視鏡の所定の部位が含まれるかを判定する。
本発明の他の態様による内視鏡の配置状態判定方法は、内視鏡リプロセッサの処理槽に配置された内視鏡の配置状態の観察画像を観察部が取得する観察ステップと、前記観察画像を基に、判定部が前記処理槽内の所定の部位によって定義される所定範囲内に、内視鏡の所定部位が含まれるか否かを判定基準として、前記配置状態が適正か不適正かを判定する第1判定方法を少なくとも含む判定ステップと、少なくとも前記配置状態が不適正であると判定された場合に報知部が判定結果を報知する報知ステップと、前記観察ステップは、少なくとも二種の観察方法を含み、前記観察ステップは、第1波長の光を照射しつつ前記観察部が前記内視鏡の配置状態を観察する第3の観察方法と、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射しつつ前記観察部が前記内視鏡の配置状態を観察する第4観察方法と、を含む。
本発明の他の態様による配置状態判定方法は、内視鏡リプロセッサの処理槽に配置された内視鏡の配置状態の観察画像を観察部が取得する観察ステップと、前記観察画像を基に、判定部が前記処理槽内の所定の部位によって定義される所定範囲内に、内視鏡の所定部位が含まれるか否かを判定基準として、前記配置状態が適正か不適正かを判定する第1判定方法を少なくとも含む判定ステップと、少なくとも前記配置状態が不適正であると判定された場合に報知部が判定結果を報知する報知ステップと、前記判定ステップは、少なくとも前記第1判定方法とは異なる第2判定方法を含み、前記第2の判定方法は、前記観察画像から少なくとも一部の特定の色の割合を算出し、前記特定の色の割合を閾値と比較する方法である。
本発明の一実施の形態によるプログラムは、コンピュータに、内視鏡リプロセッサに配置された内視鏡の配置状態の撮像角度が異なる観察画像を複数取得し、各角度から撮像した観察画像を比較してその中から不良画像を判定対象から除外し、前記判定対象から除外した以外の前記観察画像において、内視鏡リプロセッサ内の所定の部位を含む所定の範囲内に、内視鏡の所定の部位が含まれるかを判定する処理を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】内視鏡リプロセッサの処理槽に内視鏡を配置した状態を示す説明図
【
図4】内視鏡リプロセッサの端末保持部の配置を説明するための説明図
【
図8】内視鏡の配置状態判定ルーチンを示すフローチャート
【
図9】内視鏡の配置状態判定ルーチンを示すフローチャート
【
図10】特定色の割合に基づく内視鏡の配置状態判定サブルーチンを示すフローチャート
【
図11】特定部位の配置に基づく内視鏡の配置状態判定サブルーチンを示すフローチャート
【
図12】トップカバーを閉じる途中の状態と観察画像との関係の一例を示す説明図
【
図13】トップカバーを閉じる途中の状態と観察画像との関係の一例を示す説明図
【
図14】トップカバーを全閉した状態と観察画像との関係の一例を示す説明図
【
図15】2つの指標ピンに基づいて設定される評価領域の一例を示す説明図
【
図16】評価領域内に存在する内視鏡の特定部位の一例を示す説明図
【
図17】第1の変形例に係り、内視鏡リプロセッサの斜視図
【
図18】第2の変形例に係り、ニューラルネットワークを含む判定システムの構成図
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係わる、内視鏡リプロセッサ1の斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係わる、内視鏡リプロセッサ1の上面図である。
図3は、本発明の実施形態に係わる、内視鏡リプロセッサ1の処理槽31に内視鏡Eを配置した状態を説明するための説明図である。
【0009】
内視鏡リプロセッサ1は、汚染された内視鏡E、及び、内視鏡Eの部品又は付属品等の再生処理を行う装置である。ここでいう再生処理とは、特に限定されるものではなく、水によるすすぎ、有機物等の汚れを落とす洗浄、所定の微生物を無効化する消毒、全ての微生物を排除、もしくは、死滅させる滅菌、又は、これらの組み合わせのいずれであってもよい。また、内視鏡リプロセッサ1を管状の医療機器であるダイレータ、または内視鏡シースなどの再生処理に用いることもできる。
【0010】
なお、以下の説明において、下方向が重力方向を示し、上方向が重力方向とは反対方向を示し、高低が重力方向に沿った高さ関係を示す。
【0011】
本実施形態では、内視鏡リプロセッサ1は、透過部であるカバーパネル13を有するカバーとしてのトップカバー11、リプロセッサ本体21及びトップカバー11に設けられた端末保持部111を有する。端末保持部111は、観察波を受信する観察端末Dを保持する。
【0012】
図1、2では、端末保持部111はトップカバー11の表面に配置されるように観察端末Dを保持しているが本発明はこれに限定されない。例えば、
図17に示すように、観察端末Dはがトップカバー11から露出するようにトップカバー11の端に取り付けることも可能である。この場合、観察端末Dを保持するための端末保持部111は、例えば、トップカバー11の他端の端面に所定の角度を有して設けられる。
【0013】
トップカバー11は、裏面がリプロセッサ本体21の処理槽31に対向するように配置される。トップカバー11は、ヒンジ11aを中心とした回動によって処理槽31の開閉可能を行う。すなわち、トップカバー11は、一端がヒンジ11aによりリプロセッサ本体21に接続され、他端が一端を中心に回動する。閉状態になると、トップカバー11は、処理槽31を覆う。トップカバー11は、カバー枠12、透過部であるカバーパネル13、ガスフィルタ14、及び、指掛け部15を有する。トップカバー11にはジャイロセンサが設けられており、観察端末Eに角速度情報を送信できるようになっていてもよい。
【0014】
カバー枠12はトップカバー11の周縁部に周回するように設けられる。カバー枠12の材質は特に限定されないが、例えば金属または樹脂が挙げられる。カバー枠12は、裏面に、処理槽31の上縁部に沿って周回するように設けられたパッキン12aを有する。トップカバー11が閉状態になると、パッキン12aは、処理槽31の上縁部に密着する。
【0015】
カバーパネル13は、透光性を有する。カバーパネル13を構成する透過材としては、例えば樹脂またはセラミクス等が挙げられる。樹脂としては、耐薬性および可視光透過性を有するポリカーボネートが挙げられる。カバーパネル13は、カバー枠12の内側に設けられる。カバーパネル13は、特に限定されないが、一端側のドーム状に膨出した部位にカバー排気口13aを有していてもよい。
【0016】
ガスフィルタ14は、濾材収容容器と、濾材収容容器に収容された濾材とによって構成され、カバー排気口13aに着脱自在に取り付けられる。ガスフィルタ14は、上部にフィルタ排気口14aを有する(
図2)。ガスフィルタ14は、カバー排気口13aから処理槽31内の気体を取り込み、脱臭等のフィルタリングが行われた気体を、フィルタ排気口14aから排出する。
【0017】
指掛け部15は、ユーザーが手指を掛けることができるように、カバー枠12の他端側に連設される。指掛け部15の内側には、留め具15aが設けられる。
【0018】
リプロセッサ本体21は、ロック部22、報知部としての表示部23、操作部24、給水ホース接続口25、通信部26、制御部27及び処理槽31を有する。
【0019】
ロック部22は、リプロセッサ本体21の上部の他端側に設けられる。ロック部22は、制御部27の制御の下、留め具15aを係止し、又は、留め具15aの係止を解除する。ロック部22が留め具15aを係止すると、トップカバー11は、閉状態でロックされる。ロック部22をフットパネル28に連結することで、フットパネルによって、留め具15aの係止を解除できるようにしてもよい。
【0020】
表示部23は、リプロセッサ本体21上部の他端側の隅部に設けられる。表示部23は、表示パネルを有し、制御部27の制御の下、ユーザーに各種の通知を行う。
【0021】
操作部24は、指示入力ボタンを有し、内視鏡リプロセッサ1に各種の指示入力が可能である。
【0022】
給水ホース接続口25は、給水チューブWを介して水道栓と接続される。
【0023】
通信部26は、制御部27と接続され、制御部27の制御の下、有線又は無線によって観察端末Dと通信できるように構成される。通信部26は、外部装置とネットワークを介して通信できるように構成してもよい。
【0024】
制御部27は、内視鏡リプロセッサ1内の各部を制御する。制御部27は、プロセッサ及びメモリを有し、メモリに記憶された各種プログラムを実行可能である。制御部27の機能は、メモリに記憶されたプログラムを読み込んで実行することによって実現される。
【0025】
制御部27は、通信部26を介して観察端末Dと接続する。観察端末Dから異常を示す判定結果が入力されたとき、制御部27は、ユーザーに異常を通知する。異常通知は、表示部23による警告表示であってもよいし、図示しないスピーカによる警告音の出力であってもよい。また、観察端末Dから異常を示す判定結果が入力されたとき、制御部27は、再生処理を停止するように制御してもよい。
【0026】
ここで、制御部27は、RFID(Radio Frequency IDentification)の読み取り装置27aに接続されている。読み取り装置27aは、例えば、リプロセッサ本体21上部の他端側において、処理槽31を挟んで表示部23の反対側の隅部に設けられている。
【0027】
この読み取り装置27aは、内視鏡EのスコープコネクタE4等に設けられたRFIDタグ(図示せず)との間で、電波や電磁波を用いて非接触で交信することが可能となっている。
【0028】
図3に示すように、処理槽31は、リプロセッサ本体21の上部に設けられる。
図3に示すように、トップカバー11を開状態にすると、処理槽31は外部に露出する。処理槽31は、再生処理を行う内視鏡Eを収容し、洗浄液、消毒液、濯ぎ液等の液体を貯留することができるように、凹形状を有する。
図2,3に示すように、処理槽31には、送気送水コネクタ32、保持網33、洗浄ケース34、水位計35、薬液ノズル36、給水循環ノズル37、循環口38、及び、排液口39を有する。
【0029】
処理槽31において、洗浄チューブTは、リプロセッサ本体21と内視鏡Eを接続する。洗浄チューブTは、内視鏡Eと接続される内視鏡側コネクタT1と、リプロセッサ本体21と接続されるプロセッサ側コネクタT2を有する。リプロセッサ側コネクタT2には、通液状態において液体が噴出する噴出口T3を有する。
【0030】
内視鏡Eは、例えば、内視鏡操作部E1と、内視鏡操作部E1から先端側に延出した細長形状を有する挿入部E2と、内視鏡操作部E1から延出するユニバーサルコードE3と、ユニバーサルコードE3の先端側に延設されたスコープコネクタE4を有する。内視鏡操作部E1及びスコープコネクタE4には、内視鏡側コネクタT1が接続される。
【0031】
送気送水コネクタ32は、処理槽31の壁に設けられる。送気送水コネクタ32には、リプロセッサ側コネクタT2が接続される。
図3では、送気送水コネクタ32は、8つ表されるが、8つに限定されない。送気送水コネクタ32は、管路を介して循環口38と接続される。制御部27が循環ポンプを駆動すると、送気送水コネクタ32は、循環口38から取り込んだ液体を内視鏡Eに送水する。また、制御部27がエアコンプレッサを駆動すると、送気送水コネクタ32は、大気から取り込んだ空気を内視鏡Eに送気する。
【0032】
保持網33は、処理槽31の底部に取り付けられる。保持網の材質は特に限定されないが、例えば例えば金属又は樹脂が挙げられる。保持網33は、消毒水位の高さを示すマークを有する指標ピン33aと、内視鏡操作部E1を配置するための操作部受け部33bと、スコープコネクタE4を配置するためのスコープコネクタ受け部33cと、挿入部E2及びユニバーサルコードE3を掛けるためのフック33dとを有する。ユーザーは、内視鏡操作部E1を操作部受け部33bに配置し、スコープコネクタE4をスコープコネクタ受け部33cに配置し、挿入部E2及びユニバーサルコードE3をフック33dの内側を通るように巻き回す。ユーザーは、消毒水位を超えないように、指標ピン33aのマークよりも下方になるように、内視鏡Eを保持網33に保持させる。
【0033】
このような内視鏡Eのセッティング状態は、内視鏡Eの取扱い説明書或いは内視鏡リプロセッサ1の取扱い説明書等において、内視鏡Eの機種毎に指示されている。すなわち、内視鏡Eの適切な再生処理を行うため、各種内視鏡Eには、保持網33等に巻き回された各部(特に、挿入部E2等)を互いに密着させないように配置するための適切な配置状態が予め定められている。
【0034】
洗浄ケース34は、保持網33の中央部に取り付けられる。洗浄ケース34には、内視鏡Eから取り外された、送気送水ボタン、吸引ボタン、又は、キャップ等の付属品が収容される。洗浄ケース34の下部は、リプロセッサ本体21の底部に設けられた底部コネクタと接続される。洗浄ケース34は、制御部27の制御の下、底部コネクタから送気又は送水される。付属品は、特に限定されず、例えば、使用時に内視鏡Eに装着されて再生処理時に内視鏡Eから取り外される吸引ボタン、送気送水ボタン、または内視鏡Eの先端部を覆う先端カバーなどが挙げられる。
【0035】
水位計35は、洗浄槽内の液体の水位を確認し、確認結果を制御部27に出力する。
【0036】
薬液ノズル36は、処理槽31内の周縁部において一段高い位置に設けられたテラス部に設けられる。薬液ノズル36は、リプロセッサ本体21内の薬液タンクと接続し、制御部27の薬液ポンプの駆動によって薬液タンク内の薬液を処理槽31に吐出する。
【0037】
給水循環ノズル37は、テラス部に設けられる。給水循環ノズル37は、管路を介して循環口38と接続される。制御部27が循環ポンプを駆動すると、給水循環ノズル37は、循環口38から取り込んだ液体を処理槽31に吐出する。また、給水循環ノズル37は、制御部27の制御の下、給水ホース接続口25を介し、給水チューブWから供給された水を処理槽31に吐出する。
【0038】
循環口38及び排液口39の各々は、処理槽31の底部に設けられ、メッシュフィルタが装着される(
図2)。循環口38は、処理槽31の液体を取り込む。排液口39は、外部排液手段と接続され、処理槽31の液体を外部に排出する。また、排液口39は、制御部27の制御の下、薬液タンクと接続可能である。排液口39を薬液タンクに接続すると、処理槽31において使用された薬液は、薬液タンクに回収される。
【0039】
内視鏡リプロセッサ1で使用される薬液は、例えば、過酢酸溶液である。過酢酸溶液は、内視鏡リプロセッサ1内において、給水チューブWから供給された水によって原液を希釈し、所定濃度に調製される。薬液は、薬液タンクに貯留され、内視鏡Eを消毒する際に、薬液ノズル36から処理槽31に吐出される。内視鏡Eの消毒に使用された後、薬液は、次回の再生処理に使用できるように、薬液タンクに回収される。薬液は、使用された日数及び回数に応じ濃度が低下する。
【0040】
端末保持部111は、トップカバー11における裏面側とは反対の表面側に設けられる(
図2)。端末保持部の材質は特に限定されないが、例えば金属又は樹脂等が挙げられる。端末保持部111は、カバーパネル13を介して処理槽31内を観察可能な位置に観察端末Dを保持できるように構成される。すなわち、端末保持部111は、トップカバー11の外表面に配置される。
【0041】
図4は、本発明の第1実施形態に係わる、内視鏡リプロセッサ1の観察端末Dの前面図である。
図5は、本発明の第1実施形態に係わる、内視鏡リプロセッサ1の観察端末Dの後面図である。
【0042】
図4及び
図5に示すように、観察端末Dは、例えば、タブレット型の携帯情報端末である。観察端末Dは、観察部D1、制御部D3、および報知部D5を有する。好ましくは、観察端末Dは、観察部D2、通信部D4、外部接続コネクタD6またはジャイロセンサD7を有する。
【0043】
観察部D1は、観察端末Dの前面に設けられる。観察部D2は、観察端末Dの後面に設けられる。察部D1、D2として公知のカメラの構成を適用することができる。観察部D1、D2は、CMOS又はCCD等によって構成された撮像素子を有し、外部を撮像し、撮像画像を観察画像Pとして制御部D3に出力する。観察部D1、D2は、広角レンズを有してもよい。前記広角レンズは観察端末Dに固定されたものであってもよいし、観察端末Dに着脱可能なものであってもよい。
【0044】
すなわち、受信部である観察部D1は、処理槽31内で反射し、カバーパネル13を透過した光を受信する。ここでいう光は可視光に限定されず、遠赤外線、赤外線、または紫外線であってもよい。
【0045】
制御部D3は、プロセッサ及びメモリを有し、観察端末D内の各部の動作を制御する。
【0046】
制御部D3は、撮像画像または動画に基づいて内視鏡配置状態を判定してもよいし、観察端末Dは判定を行わず外部装置が判定をしてもよい。外部装置が判定を行う場合、後述の通信部D4または外部接続コネクタD6を通じて外部装置に撮像画像を出力する。ここでいう外部装置としては、スマートフォン、タブレット、パソコン、リプロセッサ、またはクラウドなどが挙げられる。
【0047】
また、制御部D3または外部装置による判定結果は、観察端末Dの表示部D3に出力してもよいし、外部装置に出力してもよい。判定結果の出力先の外部装置としては、スマートフォン、タブレット、パソコン、リプロセッサ、または警報装置が挙げられる。
【0048】
外部の装置に出力する例として、例えば、通信部D4は、通信部26と通信を行い、判定結果をリプロセッサ本体21の制御部27に出力する。制御部27は入力された判定結果の結果が「正しくない配置」であった場合、例えば、リプロセッサ本体21の表示部23に警告を表示する、または、操作部24をロックしてリプロセスを開始できないようにするなどのプログラムを実行することができる。
【0049】
表示部D5は、制御部D3の制御の下、表示パネルに各種情報を表示可能である。表示部D5は、判定結果を表示してもよい。表示部D5は、表示パネルにタッチパネルが重畳され、タッチ操作によって各種指示入力が可能である。
【0050】
外部接続コネクタD6は、観察端末Dを外部装置と電気的に接続する。外部接続コネクタD6としては例えばUSBコンセントが挙げられる。例えば、
図7に示すように、外部接続コネクタD6は、着脱式のRFID読み取り装置40を、外部装置として接続することが可能である。
【0051】
ジャイロセンサD7は、圧電素子やシリコン振動子等によって構成され、観察端末Dの姿勢の変化等に応じて生ずる角速度を検出する。そして、ジャイロセンサD7は、検出した角速度を制御部D3に出力する。
【0052】
次に、このような構成の内視鏡リプロセッサ1における、内視鏡Eの配置状態判定方法について説明する。この内視鏡Eの配置状態判定は、例えば、
図8に示す配置状態判定ルーチンのフローチャートに従って実行される。この配置状態判定ルーチンは、ユーザーによって処理槽31に内視鏡Eがセットされた後に、例えば、観察端末Dの制御部D3によって実行される。だたし、本発明はこれに限定されず、上述のとおり配置状態判定を外部の装置で実行してもよい。言い換えると本発明における判定部は、観察端末Dと一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0053】
(実施例1)
ルーチンがスタートすると、観察部は画像情報を取得する(S103、観察ステップ)。
【0054】
観察ステップの後に、制御部D3などの配置状態を判定する判定部は、
図16に例示するように、画像情報を基に処理槽内の所定の部位33aを含む所定範囲A内に、内視鏡の所定の部位E2aが含まれるか否かを指標として、配置状態が適正か不適かを判定する(S108、判定ステップ)。
【0055】
図16では、処理槽内の所定の部位として保持網のピン33aを例示したが、本発明はこれに限定されず処理槽31内で定位置にあるものであれば利用可能である。処理槽内の所定の部位として、例えば、保持網のピン33a、保持網のフック33d、洗浄ケース34、水位計35、薬液ノズル36、図示されていない温度計などを用いることができる。
【0056】
図16では、所定範囲Aを円形で例示したが本発明はこれに限定されず、楕円、多角形などの他の形状であってもよいし、
図15に例示するように二つの図形の重なり部分であってもよい。また所定範囲Aの大きさ、および形状は種類などの内視鏡情報に合わせて変更してもよい。内視鏡情報の取得方法については実施例1の変形例1に詳細を記す。所定範囲Aは1以上であればよく、
図16に例示するように複数個所に設けてもよい。
【0057】
図16では、内視鏡の所定の部位E2aとして内視鏡の目盛線を例示したが、本発明はこれに限定されず、内視鏡先端などの内視鏡を構成するパーツであればいずれも用いることができる。
【0058】
判定ステップの後に、報知部が前記判定の結果を報知する(S111、報知ステップ)。報知部は、「適切な配置である」場合および「適切な配置でない」場合の両方を報知してもよいし、「適切な配置でない」場合のみ報知してもよい。後者の場合、判定の結果が「適切な配置である」場合はリプロセッサ1がリプロセスを許可する(S110)。ここでいう許可とは、リプロセッサが自動でリプロセスを開始することであってもよいし、リプロセッサの操作部24でリプロセススタートの操作ができるようになることであってもよい。
【0059】
報知部として判定機能と通信可能であり報知機能を有する装置であれば適宜用いることができる。例えば、リプロセッサ21に設けられた表示部23、または観察端末Dの表示部D5を用いることができる。
【0060】
報知部による報知は、視覚情報による報知であってもよいし、聴覚情報による報知であってもよいし、他の方法による報知であってもよい。
【0061】
(実施例1の変形例1)
制御部D3は、画像情報を取得する(S103、観察ステップ)前に、ステップS101において、内視鏡Eの内視鏡情報を取得してもよいし、さらに、内視鏡Eの内視鏡情報が取得されているか否かを調べてもよい。
【0062】
ここで、内視鏡情報は、例えば、内視鏡EのスコープコネクタE4等に設けられたRFIDタグを、リプロセッサ本体21に設けられた読み取り装置27aによって読み取らせることにより、取得可能である。すなわち、ユーザーが読み取り装置27aにスコープコネクタE4等を近づけると、制御部27は、読み取り装置27aを通じて、内視鏡Eに関する情報(内視鏡情報)を取得する。制御部27は、取得した内視鏡情報を、通信部26と通信部D4との無線通信を通じて、観察端末Dに伝送する。これにより、制御部D3は、内視鏡情報を取得する。
【0063】
図1、2では処理槽31の外に読み取り装置27aが配置されているが本発明はこれに限定されず、読み取り装置27aは処理槽31内に配置されていてもよい。
【0064】
或いは、外部接続コネクタD6に読み取り装置40が接続されている場合、ユーザーが読み取り装置40にスコープコネクタE4等を近づけることにより、内視鏡Eに関する情報を、制御部D3が直接的に取得することも可能である。なお、読み取り装置は、観察端末Dに予め内蔵させることも可能である。
【0065】
或いは、内視鏡Eの特定の部位を観察部D1或いは観察部D2により撮像し、画像認識等によって認識した形状や識別番号から内視鏡Eの機種等を特定することにより、制御部D3は、内視鏡情報を取得することも可能である。
【0066】
或いは、制御部D3は、ユーザーが内視鏡情報を手入力または音声入力することにより内視鏡情報を取得することも可能である。
【0067】
或いは、制御部D3は、内視鏡診断時に外部装置のカルテに入力された情報を入手することにより内視鏡情報を取得することも可能である。
【0068】
ステップS101において、内視鏡情報が取得されていないと判定した場合、制御部D3は、そのまま待機する。一方、ステップS101において、内視鏡情報が取得されていると判定した場合、制御部D3は次のステップに進む。
【0069】
(実施例1の変形例2)
ステップS101からステップS102に進んでもよい。ステップ102は、制御部D3は、内視鏡Eの配置状態の撮像を開始するためのトリガーが発生したか否かを調べる。ただし、S102を実施する代わりに常に撮像および判定を実施していてもよい。
【0070】
このトリガーとしては、例えば、ユーザーがトップカバー11を全開状態から閉方向に移動させた際に、ジャイロセンサD7からの角度等に基づいて算出される観察端末Dの姿勢を用いることが可能である。
【0071】
或いは、ユーザーが観察端末Dに対して音声入力を行った場合、制御部D3は、音声認識によって認識した所定のコマンドを、撮影開始のトリガーとすることも可能である。
【0072】
或いは、トップカバー11が所定角度回転する毎にオンとなるスイッチ(図示せず)をヒンジ11aに設け、このスイッチで発生するオン信号を撮影開始のトリガーとすることも可能である。この場合、制御部D3は、ヒンジ11aに設けたスイッチからの信号を、有線或いは無線によって受信することが可能である。
【0073】
或いは、制御部Dは、リプロセッサ本体21に設けられたユーザーがフットパネル28等の各種スイッチ類に所定の操作を行ったことをトリガーとすることも可能である。この場合、制御部D3は、ユーザーの操作によってリプロセッサ本体21側で発生した所定の信号を、通信部26と通信部D4との無線通信、または、有線通信によって受信することが可能である。
【0074】
或いは、制御部D3は、観察端末Dの表示部D5に表示された撮像ボタンをユーザーが押圧操作したことをトリガーとすることも可能である。
【0075】
ステップS102において、撮像開始のトリガーが発生していないと判定した場合、制御部D3は、そのまま待機する。一方、ステップS102において、撮像開始のトリガーが発生した判定した場合、制御部D3は、ステップS103に進み、処理槽31内に配置された内視鏡Eの配置状態を観察部D1または観察部D2によって撮像し、観察画像Pを取得する(観察ステップ)。
【0076】
(実施例1の変形例3)
実施例1において、観察画像は1種以上であればよく、観察端末Dは異なる種類の複数の観察画像を撮像してもよい。複数の観察画像Pの取得については、各種撮像方法を用いることが可能である。
【0077】
異なる種類の複数の観察画像を撮像する方法として例えば、互いに異なる所定の波長(第1,第2の波長)の光を用いた撮像を行っても良い。ここでいう波長とは上述のとおり可視光性に限定されず、遠赤外線、赤外線、または紫外線も含む。波長を異ならせることにより、被写体および被写体周辺からの反射量、反射の位置が異なるので、波長違いの観察画像を対比することでハレーションによる不良画像を判定の対象から外すことができる。
【0078】
異なる種類の複数の観察画像Pを得る方法として例えば、異なる角度から処理槽31内を撮像しても良い。例えば、内視鏡Eを処理槽31にセットした後、トップカバー11を閉じる前から閉じた後までの間に2回以上観察画像を取得することで異なる角度から撮像した処理槽31内の画像を得ることができる。例えば、上述の観察端末Dまたはトップカバー11に配置されたジャイロセンサを利用し、制御部D3は、観察端末Dがトップカバー11の動きに応じて予め設定された所定角度に変化するタイミング毎に、撮像開始のトリガーを発生させることが可能である。この場合、トップカバーを閉じる速度が速くなりすぎないように観察端末Dまたは内視鏡リプロセッサ1でユーザーを音声誘導してもよいし、ヒンジ11aに早く閉じ過ぎない様にする公知の機構を搭載しておいてもよい。
【0079】
このように異なる種類の複数の観察画像Pを得るための処理は、例えば、
図9に示すフローチャートに基づいて実現することが可能である。なお、
図9において、
図8と同様の処理については、同一のステップ番号を付している。ステップS103からステップS104に進むと、制御部D3は、ステップS103において撮像した観察画像Pが最終画像であるか否かを調べる。この最終画像とは、トップカバー11が全閉した状態において撮像した画像である(
図14参照)。なお、本実施形態において、最終画像は、処理槽31を正対した状態にて撮像した画像である。
【0080】
そして、ステップS104において、今回撮像した観察画像Pが最終画像でないと判定した場合、制御部D3は、ステップS102に戻る。一方、ステップS104において、今回撮像した観察画像Pが最終画像であると判定した場合、制御部D3は、ステップS105に進む。なお、最終画像かどうかの判定はヒンジ11aの状態を内視鏡リプロセッサ1側で検知し、検知した信号を観察端末Dに送信することによっても判定することでも可能である。
【0081】
このようなステップS102からステップS104の処理が繰り返されることにより、制御部D3は、トップカバー11が閉じられる前から閉じられた後までの間に、異なる条件で撮像した観察画像Pを複数枚(少なくとも2以上)取得する。
【0082】
ステップS104からステップS105に進むと、制御部D3は、取得した複数の観察画像Pを比較することで、不良画像の除去を行うか、または判定用の画像を一つ選出する。すなわち、処理槽31がステンレス等の材料によって構成されている場合、観察画像Pを撮像した角度によっては、内視鏡Eの挿入部E2等が処理槽31の表面に映り込み、観察画像P上に虚像として現れる場合がある。また、室内灯の光などが処理槽で反射することより画像にハレーションが映り込み内視鏡像の一部が欠けることがある。そこで、制御部D3は、各角度から撮像した観察画像Pを比較することで、観察画像P上の不良画像を判定対象から外すことができる。
【0083】
(実施例1の変形例4)
実施例1のステップS108の処理は、具体的には、例えば
図11に示すサブルーチンに従って実行することが可能である。
【0084】
すなわち、制御部D3は、取得した複数の観察画像Pの中から、最後に取得した画像を抽出する(S301)。
【0085】
画像を抽出すると、制御部D3は抽出した画像上に、内視鏡Eの種類等に応じた1または2以上の所定範囲Aを評価領域として設定する(S302)。
次に、制御部D3は、上述の実施例において示したように、所定範囲A内の評価を行う(S303)。
【0086】
その結果、全ての所定範囲Aにおける評価値が適正である場合、制御部Dは、内視鏡Eが適正な配置状態にあると判定して(S307)、サブルーチンを抜ける。
【0087】
一方、少なくとも何れかの所定範囲Aにおける評価値が適正でない場合、制御部Dは、現在抽出されている画像よりも1つ前に取得した画像を抽出し(S306)、ステップS302の処理に戻る。
【0088】
但し、現在抽出されている画像が最初に取得した画像である場合(S305の判定において「YES」の場合)、制御部Dは、処理槽31に配置されている内視鏡Eは不適切な配置状態にあると判定して、サブルーチンを抜ける。
【0089】
(実施例2)
実施例1に例示する特定部位の配置に基づく判定(S108)に加えて、S108とは異なる判定方法を実施してもよい。
【0090】
例えば
図9に例示するように、ステップS105の後に、制御部D3は、観察画像における特定色の割合に基づいて、処理槽31内に内視鏡Eが適切に配置されているか否かの判定を行ってもよい(S106)。
【0091】
この特定色の割合に基づく内視鏡の配置状態判定は、例えば、
図10に示すサブルーチンに従って行われる。サブルーチンがスタートすると、制御部D3は、ステップS103の処理により取得した観察画像Pを抽出する。
【0092】
例えば、内視鏡Eの挿入部E2等が黒色であり、処理槽31などのその他の色が黒以外である場合、挿入部E2と処理槽31が映し出された評価領域A内の観察画像Pを2値化すれば(S202)、各評価領域A内において挿入部E2と処理槽31が占める割合は、画像中の二色の比を評価値として評価することによって大まかに把握することができる。従って、各種の内視鏡E(挿入部E2)が適切に配置されているときの二色の比を閾値としてそれぞれ求めておけば、制御部D3は、各閾値との各評価値との比較により、各評価領域A内において内視鏡Eが適切に配置されているか否かを評価することができる(S203)。画像上の内視鏡の色、および内視鏡以外の色については適宜選択することができ、例えば2値化処置により閾値以上は黒、閾値未満は白で表示するといった設定が可能である。
【0093】
二値化による判定は撮影した画像全体に対して実施してもよいし、画像のうち所定範囲に実施してもよい。所定範囲に実施する場合、2値化は、例えば画像の中心から外周に向けて所定の範囲に実施してもよいし、特定の指標から所定範囲の領域に対して実施してもよい。
【0094】
ステップS203からステップS204に進むと、制御部D3は、評価値が適正であったか否かを調べる。適正か否かの判定方法は内視鏡の種類、2値化の閾値などにより適宜設定することができる。例えば、内視鏡の色の割合が所定の割合以下であれば適正に配置されていると判定する。
【0095】
そして内視鏡の配置が適正であると判定した場合、
図10に例示するように制御部D3は、ステップS207に進み、内視鏡Eは処理槽31内において適切な配置がなされていると判断した後、サブルーチンを抜けるフローにしてもよい。ただし、本発明はこれに限定されず、S106で内視鏡の配置が適正であると判定した後にS108を実行し、S106とS108との結果を複合して最終判断を行うフローであってもよい。
【0096】
図8のメインルーチンにおいて、ステップS106からステップS107に進むと、制御部D3は、ステップS106において、処理槽31内に内視鏡Eが適切に配置されていると判定されたか否かを調べる。
【0097】
そして、制御部D3は、ステップS106の処理により適切な配置でないと判定されていた場合には、ステップS107からステップS111に進み、リプロセッサ本体21の表示部23或いは観察端末Dの表示部D5を通じて警告を行った後、ルーチンを抜ける。
【0098】
一方、制御部D3は、ステップS106の処理により適切な配置であると判定されていた場合には、ステップS107から実施例1に記載のステップS108に進む。
【0099】
(実施例3)
配置状態が不適の場合、実施例1または実施例2の後に、報知部は、配置状態を適正にするための情報を報知してもよい。
【0100】
配置状態を適正にするための情報は視覚情報による報知であってもよいし、聴覚情報による報知であってもよいし、他の方法による報知であってもよい。視覚情報による報知として例えば、報知部上に正しい配置形態を示す方法や、実際の誤配置の部位と正しい配置形態のサンプル画像とを並べて示す方法などが挙げられる。聴覚情報による報知としては、ユーザーに手の位置を誘導しながら正しい配置に導く方法が挙げられる。
【0101】
(実施例4)
内視鏡Eの配置状態の判定を、学習済みのニューラルネットワークを含む判定システム50を用いて行うことも可能である。ニューラルネットワークを用いた判定システムの例を
図18に示す。
【0102】
この判定システム50は、例えば、制御部D3に構築されるものである。判定システム50は、変数取得部51と、判定パラメータ取得部52と、判定部としての複数のニューラルネットワーク53と、を有して構成されている。
【0103】
変数取得部51は、例えば、内視鏡Eの種類、内視鏡リプロセッサ1の種類、観察端末Dの種類、観察端末Dを配置した際の観察部の位置、観察部の種類、または、処理槽31内に配置される内視鏡Eの本数等からなる変数群が入力される。なお、この変数群を構成する全ての変数が変数取得部51に入力される必要はなく、変数取得部51に入力される変数としては、変数群から選択される少なくとも1種が入力されるものであってもよい。
【0104】
判定パラメータ取得部52は、例えば、変数取得部51に入力された変数に紐づく判定パラメータを生成し、該当するニューラルネットワーク53に出力する。すなわち、判定パラメータ取得部52は、例えば、変数群に基づいて1または2以上の該当するニューラルネットワーク53を特定し、当該ニューラルネットワーク53に対し、判定パラメータを出力する。ここで、ニューラルネットワーク53に出力する判定パラメータとしては、例えば、変数群に基づいて観察画像P上に設定された検知範囲Aの画素データを用いることができる。
【0105】
各ニューラルネットワーク53は、判定パラメータ取得部52からの判定パラメータが入力される入力層53aと、入力層53aに入力された判定パラメータに対する演算を行う中間層53bと、中間層53bの演算結果を出力する出力層53cと、を有して構成されている。
【0106】
ここで、中間層53bは、複数の人工ニューロンの配列を有して構成されている。各人工ニューロンには、予め行われた機械学習等によって、入力から出力の間に行われる演算の規則、及び、当該演算に用いられる複数の重み付け係数等が設定されている。
【0107】
そして、入力層53aに判定パラメータが入力されると、中間層53bは、各人工ニューロンにおいて演算を行うことにより、例えば、検知範囲Aについて、一致の確率90%(すなわち、内視鏡Eの配置が適正である確率90%)、或いは、一致の確率10%(すなわち、内視鏡Eの配置が不適正である確率10%)を得る。そして、この演算結果は、出力層53cにより出力される。
【0108】
このような構成においても、内視鏡リプロセッサ1の処理槽31に対し、内視鏡Eが適切な配置状態によって配置されているか否かの判定を的確に行うことができる。
【0109】
なお、述の実施形態においては、観察端末Dの制御部D3において、第1,第2の判定等を行う構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、内視鏡リプロセッサ1に設けられた制御部27等によって行うことも可能である。
また、制御部は、1個又は複数のプロセッサ、論理回路、メモリ、入出力インタフェース及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体などからなるコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、各構成要素もしくは本体部全体の機能を実現するためのプログラムを記録媒体に記録しておき、記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。例えば、 プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、およびGPU(Graphics Processing Unit)の少なくとも1つである。例えば、論理回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)の少なくとも1つである。
【0110】
また、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であることは勿論である。