(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】内視鏡システム、管腔構造算出装置、管腔構造算出装置の作動方法及び管腔構造情報作成プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240122BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A61B1/00 552
A61B1/045 618
A61B1/00 551
A61B1/045 610
(21)【出願番号】P 2022501464
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006444
(87)【国際公開番号】W WO2021166103
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽根 潤
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/212725(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230098(WO,A1)
【文献】特開2006-288752(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069395(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/059636(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体となる管腔に挿入される挿入部に設けられた撮像部によって取得された前記被写体の同一部位が含まれる複数の時点の撮像画像と、前記撮像部の位置及び向きの少なくとも一部の情報を含む3次元配置とを取得する入力部と、
前記複数の時点の前記撮像画像と前記3次元配置に基づいて、前記同一部位の位置を算出することで、前記管腔の3次元構造を算出する管腔構造算出部と、
を具備することを特徴とする管腔構造算出装置。
【請求項2】
前記同一部位は、特徴点であり、
前記管腔構造算出部は、
各撮像画像中の複数の前記特徴点を抽出する特徴点抽出部と、
前記複数の特徴点の前記撮像画像上の位置と、前記挿入部の前記3次元配置とから、各特徴点の3次元空間内の位置を算出する3次元位置算出部と、
を有し、
前記管腔構造算出部は、前記3次元空間内の算出された前記各特徴点の位置から前記管腔の前記3次元構造を算出することを特徴とする請求項1に記載の管腔構造算出装置。
【請求項3】
前記特徴点抽出部は、前記複数の時点の前記撮像画像に共通して映されている前記特徴点を抽出し、
前記入力部は、前記複数の時点の前記挿入部の3次元配置情報を取得し、
前記3次元位置算出部は、前記複数の時点の前記挿入部の前記3次元配置情報と、前記複数の時点の前記撮像画像に共通して映されている前記特徴点の前記撮像画像上の位置とに基づき、前記特徴点の前記3次元空間内の位置を算出することを特徴とする請求項2に記載の管腔構造算出装置。
【請求項4】
前記管腔構造算出部は、前記3次元構造の一部である部分3次元構造を複数算出し、各々の前記部分3次元構造を作成しているときの前記3次元配置に基づき、複数の前記部分3次元構造の配置を決定することで前記3次元構造を算出することを特徴とする請求項1に記載の管腔構造算出装置。
【請求項5】
前記管腔は、外部から固定された固定部と、外部から固定されていない可動部とを有し、
前記管腔構造算出部は、前記可動部に対応する前記部分3次元構造と前記固定部との距離を算出し、前記部分3次元構造と前記固定部との距離に基づいて、前記部分3次元構造の前記配置を補正することを特徴とする請求項4に記載の管腔構造算出装置。
【請求項6】
前記管腔構造算出部は、各撮像画像中の複数の特徴点を抽出する特徴点抽出部を有し、前記各特徴点の位置の情報を含んだ複数の前記部分3次元構造を算出し、複数の前記部分3次元構造に共通する前記特徴点の位置に基づき、前記部分3次元構造の前記配置を補正することを特徴とする請求項4に記載の管腔構造算出装置。
【請求項7】
前記管腔は、外部から固定された固定部と、外部から固定されていない可動部とを有し、
前記管腔構造算出部は、複数の前記部分3次元構造の間で類似する前記特徴点が抽出されたときに、前記類似する特徴点から前記固定部までの距離の違いを所定の基準値と比較することで、類似する前記特徴点が複数の前記部分3次元構造に共通する前記特徴点であるか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載の管腔構造算出装置。
【請求項8】
前記入力部は、時間経過に伴う前記3次元配置の変化の情報である3次元配置時間変化情報を取得し、
前記管腔構造算出部は、前記3次元配置時間変化情報に基づき、前記挿入部の方向転換場所と滞留場所との少なくとも一方を判定することで、前記固定部と前記可動部の位置を推定することを特徴とする請求項5に記載の管腔構造算出装置。
【請求項9】
前記3次元位置算出部は、誤差調整により前記各特徴点の前記3次元空間内の位置を決定することを特徴とする請求項2に記載の管腔構造算出装置。
【請求項10】
前記3次元位置算出部は、前記入力部により検出された前記配置を既知として、バンドル調整による前記誤差調整により前記各特徴点の前記3次元空間内の位置を決定することを特徴とする請求項9に記載の管腔構造算出装置。
【請求項11】
前記3次元位置算出部は、前記複数の時点の前記挿入部の前記3次元配置情報と、複数の時点の前記撮像画像に共通して映されている前記特徴点の前記撮像画像上の位置とから、三角測量に基づき前記特徴点の前記3次元空間内の位置を算出することを特徴とする請求項3に記載の管腔構造算出装置。
【請求項12】
前記管腔構造算出部は、先端部に設けられた複数の照明部における出射させる前記照明部を切り替えることで得られた前記被写体の同一部位が含まれる前記複数の時点の前記撮像画像中の影領域の画像から照度差ステレオに基づき、前記管腔の3次元構造を決定することを特徴とする請求項1に記載の管腔構造算出装置。
【請求項13】
前記3次元位置算出部は、前記管腔の領域毎に設定された各特徴点の所定の伸縮率上限値を用いて、複数の前記撮像画像に映っている共通の特徴点が同一であるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の管腔構造算出装置。
【請求項14】
前記3次元位置算出部は、検出した特徴点の位置の変化量が前記所定の伸縮率上限値以下であるときに、各々の前記撮像画像に映っている各特徴点が同一であると判定することを特徴とする請求項13に記載の管腔構造算出装置。
【請求項15】
前記撮像画像中の隣り合う2つの画素又は2つの画素領域間の輝度値の差が、所定値以上であるとき、所定の告知を行う告知部を有することを特徴とする請求項1に記載の管腔構造算出装置。
【請求項16】
被写体となる管腔に挿入される挿入部と、
前記挿入部に設けられ、前記被写体の同一部位が含まれる複数の時点の前記被写体の撮像画像を取得する撮像部と、
前記撮像部の位置及び向きの少なくとも一部の情報を含む3次元配置を検出するための検出装置と、
前記複数の時点の前記撮像画像と前記3次元配置に基づいて、前記同一部位の位置を算出することで、前記管腔の3次元構造を算出する管腔構造算出部と、
を具備することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項17】
被写体となる管腔に挿入される挿入部に設けられて前記被写体を撮像する撮像部と、前記撮像部の位置及び向きの少なくとも一部の情報を含む3次元配置を検出する検出装置と、前記管腔の3次元構造を算出する管腔構造算出部とを備える管腔構造
算出装置の作動方法であって、
前記撮像部が、前記被写体の同一部位が含まれる複数の時点の前記被写体の撮像画像を取得する
ステップと、
前記検出装置が、前記撮像部の位置及び向きの少なくとも一
部の情報を含む3次元配置を
検出するステップと、
前記管腔構造算出部が、前記複数の時点の前記撮像画像と前記3次元配置に基づいて、前記同一部位の位置を算出することで、前記管腔の3次元構造を算出する
ステップと、
を
備えることを特徴とする管腔構造
算出装置の作動方法。
【請求項18】
被写体となる管腔に挿入される挿入部に設けられた撮像部によって取得された前記被写体の同一部位が含まれる複数の時点の前記被写体の撮像画像を取得する処理と、
前記挿入部の位置及び向きの少なくとも一つの情報を含む3次元配置を検出する処理と、
前記複数の時点の前記撮像画像と前記3次元配置に基づいて、前記同一部位の位置を算出することで、前記管腔の3次元構造を算出する処理と、
を、コンピュータに実行させることを特徴とする管腔構造情報作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システム、管腔構造算出装置、管腔構造算出装置の作動方法及び管腔構造情報作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡が医療分野及び工業分野で広く利用されている。例えば、医療分野では、医者は、内視鏡の挿入部を被検体内に挿入し、表示装置に表示される内視鏡画像を見て被検体内を観察することにより、内視鏡検査などを行うことができる。
【0003】
内視鏡検査のとき、未観察箇所があると確実な内視鏡検査が保証されない。そこで、大腸内視鏡の未観察箇所の把握などを目的として、例えば、モハンマド・アリ・アルミン(Mohammad Ali Armin)、他5名著、「大腸内視鏡映像からの大腸内表面の自動化可視マップ(Automated visibility map of the internal colon surface from colonoscopy video)」、(International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery、Vol.11、No.9、P.1599-1610、4 Aug,2016(インターナショナル・ジャーナル・オブ・コンピュータ・アシステド・ラジオロジ・アンド・サージェリ、11巻、9号、1599-1610、2016年8月4日)には、内視鏡により撮像して得られた画像に基づいて腸管の3次元モデル構造を演算による推定で構築する技術が提案されている。
【0004】
その提案では、3次元モデル構造は、内視鏡画像のみから算出される。3次元モデル構造を算出するためには、内視鏡画像における腸管の内壁上の複数の特徴点の座標を求め、複数の特徴点を繋ぐように3次元モデル構造が作成される。
【0005】
しかし、大腸などの臓器は可動性を有するため、3次元モデル構造を作成中に、臓器の動きなどによる画像不良が生じると、特徴点の位置が不明になり、複数点を繋ぐ3次元モデル構造は算出できない。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであて、臓器の動きなどによる画像不良が生じても各特徴点の位置から管腔の3次元モデル構造を算出可能な内視鏡システム、管腔構造算出装置、管腔構造算出装置の作動方法及び管腔構造情報作成プログラムを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の管腔構造算出装置は、被写体となる管腔に挿入される挿入部に設けられた撮像部によって取得された前記被写体の同一部位が含まれる複数の時点の撮像画像と、前記撮像部の位置及び向きの少なくとも一部の情報を含む3次元配置とを取得する入力部と、前記複数の時点の前記撮像画像と前記3次元配置に基づいて、前記同一部位の位置を算出することで、前記管腔の3次元構造を算出する管腔構造算出部と、を具備する。
【0008】
本発明の一態様の内視鏡システムは、被写体となる管腔に挿入される挿入部と、前記挿入部に設けられ、前記被写体の同一部位が含まれる複数の時点の前記被写体の撮像画像を取得する撮像部と、前記撮像部の位置及び向きの少なくとも一部の情報を含む3次元配置を検出するための検出装置と、前記複数の時点の前記撮像画像と前記3次元配置に基づいて、前記同一部位の位置を算出することで、前記管腔の3次元構造を算出する管腔構造算出部と、を具備する。
【0009】
本発明の一態様の管腔構造算出装置の作動方法は、被写体となる管腔に挿入される挿入部に設けられて前記被写体を撮像する撮像部と、前記撮像部の位置及び向きの少なくとも一部の情報を含む3次元配置を検出する検出装置と、前記管腔の3次元構造を算出する管腔構造算出部とを備える管腔構造算出装置の作動方法であって、前記撮像部が、前記被写体の同一部位が含まれる複数の時点の前記被写体の撮像画像を取得するステップと、前記検出装置が、前記撮像部の位置及び向きの少なくとも一部の情報を含む3次元配置を検出するステップと、前記管腔構造算出部が、前記複数の時点の前記撮像画像と前記3次元配置に基づいて、前記同一部位の位置を算出することで、前記管腔の3次元構造を算出するステップと、を備える。
【0010】
本発明の一態様の管腔構造情報作成プログラムは、被写体となる管腔に挿入される挿入部に設けられた撮像部によって取得された前記被写体の同一部位が含まれる複数の時点の前記被写体の撮像画像を取得する処理と、前記挿入部の位置及び向きの少なくとも一つの情報を含む3次元配置を検出する処理と、前記複数の時点の前記撮像画像と前記3次元配置に基づいて、前記同一部位の位置を算出することで、前記管腔の3次元構造を算出する処理と、をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係わる内視鏡システムの構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係わる内視鏡の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係わる内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係わる、管腔構造算出プログラムの管腔構造の算出処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係わる、挿入部の先端部の初期値を設定するときの患者の状態を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施形態に係わる、大腸内の模式的な部分モデルの例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係わる、大腸内の模式的な部分モデルの例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係わる、2つの部分モデルの位置ずれを補正する方法を説明するための図である。
【
図9】本発明の実施形態に係わる、モニタに表示される画像の例を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係わる、構造情報表示領域に表示される構造情報の画像の例を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に係わる、モニタに表示される先端部の軌跡を示した画像の例を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係わる、二人の医師についての挿入部の先端部の軌跡をモニタの表示画面上に表示させたときの表示例を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係わる、各特徴点の3次元空間内の位置算出をバンドル調整により行う方法のフローチャートである。
【
図14】本発明の実施形態に係わる、連続して取得された複数の内視鏡画像上の特徴点と、先端部の位置と姿勢の関係を説明するための模式図である。
【
図15】本発明の実施形態に係わる、複数の内視鏡画像上の特徴点と、先端部の位置と姿勢の関係を説明するための模式図である。
【
図16】本発明の実施形態に係わる、ステレオカメラを有する挿入部の先端部の先端部分の斜視図である。
【
図17】本発明の実施形態に係わる、複数の照明窓を有する挿入部の先端部の先端面の平面図である。
【
図18】本発明の実施形態に係わる、距離センサを有する挿入部の先端部の先端部分の斜視図である。
【
図19】本発明の実施形態に係わる、距離センサを用いた管腔の内壁の3次元位置の算出を行う方法のフローチャートである。
【
図20】本発明の実施形態に係わる、部分的に算出された管腔構造の例を説明するための図である。
【
図21】本発明の実施形態に係わる、形状センサを有する内視鏡と、挿入量及び捩り量を検出するセンサを用いた先端部の位置と姿勢を検出する方法を説明するための図である。
【
図22】本発明の実施形態に係わる、複数の磁気センサが挿入部内に配設された内視鏡の斜視図である。
【
図23】本発明の実施形態に係わる、隠れ部分があるときのモニタの表示例を示す図である。
【
図24】本発明の実施形態に係わる、画像の輝度値による未観察領域の告知処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図25】本発明の実施形態に係わる、距離センサの距離画像による未観察領域の告知処理の流れの例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(構成)
図1は、本実施形態に係わる内視鏡システムの構成図である。
図2は、内視鏡の斜視図である。
図3は、内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。内視鏡システム1は、内視鏡2と、画像処理装置3と、光源装置4と、管腔構造検出装置5と、表示装置であるモニタ6と、磁場発生装置7とを含んで構成されている。内視鏡システム1は、白色の照明光を用いた通常光観察が可能である。医者は、内視鏡システム1を用いて、ベッド8上に仰向けで横になっている患者Paの大腸内の内視鏡検査を行うことができる。また、管腔構造検出装置5は、患者Paの大腸の管腔構造を算出する管腔構造算出装置である。
【0014】
なお、ここでは、磁場発生装置7は、独立した装置であるが、管腔構造検出装置5に含まれていてもよい。
【0015】
内視鏡2は、操作部2aと、可撓性を有する挿入部2bと、信号線などを含むユニバーサルケーブル2cとを有する。内視鏡2は、管状の挿入部2bを体腔内に挿入する管状挿入装置である。ユニバーサルケーブル2cの先端にはコネクタが設けられ、内視鏡2は、そのコネクタにより光源装置4と画像処理装置3に着脱可能に接続される。ここでは、内視鏡2は、大腸内へ挿入可能な内視鏡である。さらに、図示しないが、ユニバーサルケーブル2c内には、ライトガイドが挿通されており、内視鏡2は、光源装置4からの照明光を、ライトガイドを通して挿入部2bの先端から出射するように構成されている。
【0016】
図2に示すように、挿入部2bは、挿入部2bの先端から基端に向かって、先端部11と、湾曲可能な湾曲部12と、可撓管部13とを有している。挿入部2bは、被写体となる患者Paの管腔に挿入される。先端部11の基端部は湾曲部12の先端に接続され、湾曲部12の基端部は可撓管部13の先端に接続されている。先端部11は、挿入部2bの先端部すなわち内視鏡2の先端部であり、硬い先端硬質部である。
【0017】
湾曲部12は、操作部2aに設けられた湾曲操作部材14(左右湾曲操作ノブ14a及び上下湾曲操作ノブ14b)に対する操作に応じて、所望の方向に湾曲可能である。湾曲部12を湾曲させ、先端部11の位置と向きを変え、被検体内の観察部位を観察視野内に捉えると、照明光は観察部位に照射される。湾曲部12は、挿入部2bの長手軸方向に沿って連結された複数の湾曲駒(図示せず)を有している。よって、医者は、挿入部2bを大腸内に押し込みながら、あるいは大腸内から引き抜きながら、湾曲部12を様々な方向に湾曲させることによって、患者Paの大腸内をくまなく観察することができる。
【0018】
左右湾曲操作ノブ14a及び上下湾曲操作ノブ14bは、湾曲部12を湾曲するために、挿入部2b内に挿通され操作ワイヤを牽引及び弛緩させる。湾曲操作部材14は、さらに、湾曲した湾曲部12の位置を固定する固定ノブ14cを有している。なお、操作部2aには、湾曲操作部材14の他にも、レリーズボタン、送気送水ボタン等の各種操作ボタンも設けられている。
【0019】
可撓管部13は、可撓性を有しており、外力に応じて曲がる。可撓管部13は、操作部2aから延出されている管状部材である。
【0020】
また、
図3に示すように、挿入部2bの先端部11には、撮像装置である撮像素子15が設けられており、光源装置4の照明光により照明された大腸内の観察部位は、撮像素子15により撮像される。すなわち、撮像素子15は、挿入部2bの先端部11に設けられ、複数の時点において被検体内を撮像して複数の時点の撮像画像を取得する撮像部を構成する。撮像素子15により得られた撮像信号は、ユニバーサルケーブル2c内の信号線を経由して画像処理装置3に供給される。
【0021】
画像処理装置3は、受信した撮像視号に対して所定の画像処理を行い、内視鏡画像を生成するビデオプロセッサである。生成された内視鏡画像の映像信号は、画像処理装置3からモニタ6へ出力され、ライブの内視鏡画像が、モニタ6上に表示される。検査を行う医者は、挿入部2bの先端部11を患者Paの肛門から挿入し、患者Paの大腸内を観察することができる。
【0022】
さらに、挿入部2bの先端部11には、磁気センサ16が配置されている。具体的には、磁気センサ16は、先端部11の撮像素子15の近傍に配置され、撮像素子15の視点の位置と姿勢を検出するための検出装置である。磁気センサ16は、2つのコイル16a、16bを有する。例えば、円筒状の2つのコイル16a、16bの2つの中心軸は、互いに直交している。よって、磁気センサ16は、6軸のセンサであり、先端部11の位置座標と向き(すなわちオイラー角)を検出する。磁気センサ16の信号線2eが、内視鏡2から延出し、管腔構造検出装置5に接続されている。
【0023】
すなわち、撮像素子15の視点の位置と姿勢を検出するための検出装置として、磁気センサ16は、挿入部2bの先端部11の内部に配置可能であり、挿入部2を有する内視鏡2のサイズ、性能には影響を与えない。
【0024】
磁場発生装置7が所定の磁場を発生し、磁気センサ16は、磁場発生装置7が発生する磁場を検出する。磁場発生装置7は、信号線2eにより管腔構造検出装置5と接続されている。磁場の検出信号は、信号線2eを経由して内視鏡2から管腔構造検出装置5へ供給される。なお、磁気センサ16に代えて先端部11に磁場発生素子を設け、磁場発生装置7に代えて、患者Paの外部に磁気センサを設けるようにして、先端部11の位置及び姿勢を検出するようにしてもよい。ここでは、磁気センサ16により、先端部11の位置及び姿勢、言い換えれば撮像素子15により取得される内視鏡画像の視点の位置及び向きがリアルタイムで検出される。
【0025】
医者が、操作部2aに設けられたレリーズボタンを押すと、レリーズボタン操作信号が画像処理装置3へ入力され、レリーズボタンが押されたときの内視鏡画像は、図示しないレコーダに記録される。
【0026】
図3に示すように、管腔構造検出装置5は、プロセッサ21と、記憶装置22と、表示インターフュース(以下、表示I/Fと略す)23と、画像取込部24と、位置姿勢検出部25と、駆動回路26と、入力インターフュース(以下、入力I/Fと略す)27を含んでいる。プロセッサ21と、記憶装置22と、表示I/F23と、画像取込部24と、位置姿勢検出部25と、駆動回路26と、入力I/F27は、バス28により互いに接続されている。
【0027】
プロセッサ21は、中央処理装置(以下、CPUという)21aとメモリ21bを有し、管腔構造検出装置5内の各部の処理を制御する制御部である。メモリ21bは、ROM、RAMなどを含む記憶部である。ROMには、CPU21aにより実行される各種処理プログラム及び各種データが記憶されている。CPU21aは、ROM及び記憶装置22に格納された各種プログラムを読み出して実行することができる。
【0028】
記憶装置22には、後述する管腔構造算出プログラムLSPが格納されている。管腔構造算出プログラムLSPは、先端部11の位置及び姿勢の情報と、内視鏡画像とから管腔構造を算出するソフトウエアプログラムである。CPU21aが管腔構造算出プログラムLSPを読み出して実行することにより、プロセッサ21は、撮像素子15により得られた撮像画像と磁気センサ16に検出された撮像部の3次元配置(すなわち位置と姿勢)とに基づいて、管腔の3次元構造を算出する管腔構造算出部を構成する。
【0029】
記憶装置22には、算出された管腔構造の情報なども記憶される。記憶装置22に記憶された管腔構造情報は、表示I/F23を経由して出力され、モニタ6の画面上に表示される。ここでは、管腔は、大腸であり、大腸の管腔構造画像がモニタ6に表示される。
【0030】
モニタ6は、PinP(Picture In Picture)機能を有し、CPU21により生成された大腸の管腔構造画像と共に、内視鏡2の撮像素子15により撮像して得られたライブの内視鏡画像を表示することができる。
【0031】
画像取込部24は、画像処理装置3において得られた内視鏡画像を、一定の周期で取り込む処理部である。例えば、内視鏡2から、フレームレートと同じ、1秒間に30枚の内視鏡画像を、画像処理装置3から取得する。なお、ここでは、画像取込部24は、1秒間に30枚の内視鏡画像を取り込んでいるが、フレームレートとは異なる、例えば1秒間に3枚等のより長い周期で内視鏡画像を取得するようにしてもよい。
【0032】
位置姿勢検出部25は、磁場発生装置7を駆動する駆動回路26を制御して、磁場発生装置7に所定の磁場を発生させる。位置姿勢検出部25は、その磁場を磁気センサ16により検出し、その検出された磁場の検出信号から、撮像素子15の位置座標(x、y、z)と向き(すなわちオイラー角(ψ、θ、φ))のデータ、すなわち位置と姿勢の情報、をリアルタイムで生成する。すなわち、位置姿勢検出部25は、磁気センサ16からの検出信号に基づいて、撮像素子15の位置と向きの少なくとも一部の情報を含む3次元配置を検出する検出装置である。より具体的には、位置姿勢検出部25は、時間経過に伴う3次元配置の変化の情報である3次元配置時間変化情報を検出する。よって、位置姿勢検出部25は、複数の時点の挿入部2bの3次元配置情報を取得する。
【0033】
管腔構造検出装置5には、マウス、キーボードなどの入力装置27aが接続されている。入力装置27aに対する操作に応じた操作信号は、入力I/F27を経由してプロセッサ21に入力される。
【0034】
また、光源装置4は、通常光観察モード用の通常光を出射可能な光源装置である。なお、内視鏡システム1が通常光観察モードの他に特殊光観察モードも有している場合は、光源装置4は、通常光観察モード用の通常光と、特殊光観察モード用の特殊光とを選択的に出射する。光源装置4は、画像処理装置3に設けられた観察モードを切り換えるための切換スイッチ(図示せず)の状態に応じて、通常光と特殊光のいずれかを照明光として出射する。
(管腔構造の算出)
図4は、管腔構造算出プログラムLSPの管腔構造の算出処理の流れの例を示すフローチャートである。医者が入力装置27aの所定の操作ボタンを押下すると、管腔構造算出プログラムLSPが実行される。
【0035】
はじめに、医者は、挿入部2bの先端部11を肛門の位置を配置した状態で、入力装置27aに対して所定の操作を行うと、プロセッサ21は、位置姿勢検出部25からの位置(座標)と姿勢のデータを、管腔構造を算出するときの先端部11の基準位置と基準姿勢として設定する(ステップ(以下、Sと略す)1)。
図5は、先端部11の初期値を設定するときの患者Paの状態を説明するための図である。
図5に示すように、医者は、先端部11を肛門に当てた状態で、3次元空間内の肛門の位置APにおける先端部11の基準位置と基準姿勢を初期値とする設定を行う。
【0036】
以下の処理で算出される管腔構造は、ここで設定された基準位置と基準姿勢に基づいて算出される。
【0037】
なお、基準位置と基準姿勢の設定後、医者は、先端部11を大腸の最奥部まで挿入する。挿入部2bの先端部11が大腸の最奥部にある状態から、空気を送気して大腸内を拡張しながら、医者は、挿入部2bを引きながら肛門に向かって移動させ、途中で挿入部2bの引き抜きを停止させたりしながら、湾曲部12を種々の方向に湾曲させて大腸の内壁を観察する。医者が大腸の内壁を観察しているときに、大腸の管腔構造が算出される。
【0038】
上述したように、画像取込部24は、画像処理装置3から30分の1秒毎に供給される内視鏡画像から所定の周期Δt毎の内視鏡画像を取得する(S2)。周期Δtは、例えば0.5秒である。CPU21は、内視鏡画像を取得したときの位置姿勢検出部25の出力する先端部11の位置と姿勢の情報を取得する(S3)。
【0039】
S2で取得した1枚の内視鏡画像とその前に取得済の1枚以上の内視鏡画像とにおける複数の特徴点等の3次元空間内の位置情報を算出する(S4)。算出された複数の特徴点等の位置情報の集合が、管腔構造の情報となる。後述するように、各特徴点の位置情報は、画像情報からSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、SfM(Structure from Motion)などの手法を用いて算出してもよいし、三角測量の原理を用いて算出してもよい。各特徴点の位置の算出方法については後述する。
【0040】
なお、最初の1枚の内視鏡画像が取得されたときは、その前の取得済の内視鏡画像はないので、所定枚数の内視鏡画像が取得されるまでは、S4の処理は実行されない。
【0041】
一群すなわち1セットの特徴点と撮像部の位置と姿勢から、各特徴点の3次元空間内の位置が算出され、1セットの特徴点等から管腔構造の一部が構築されるが、大腸は、伸び縮みするため、1)算出された2セットの特徴点同士が対応するか、2)算出された特徴点が、既に位置が算出された特徴点に対応する点であるか、等が判定される。例えば、1)の判定の場合、算出された1セットの特徴点の、他の1セットの特徴点に対する相対的な可動範囲は、x、y、zの各軸の方向における大腸腸管の伸縮率によって規定される。そのために、位置が算出された2セットの特徴点同士が所定の伸縮率により決定された所定の範囲内にないときは、算出された2セットの特徴点同士は、同じとは判定しない。即ち、算出された1つのセットの特徴点は既に位置が算出された他の1セットの特徴点とは同じとは判定されない。このことは、算出された2セットの一方の特徴点の一部は、既に位置が算出された2セットの他方の特徴点に含まれないということになる。
【0042】
また、算出された特徴点の空間的な可動範囲は、大腸腸管の固定部からの距離と大腸腸管の伸縮率によって規定される。ここで言う大腸腸管の固定部とは、肛門近辺部分、大腸の上行結腸及び下行結腸の部分のような、腸間膜が無く、後腹壁に固定され、移動性が少ない部分を指す。既に位置が算出された特徴点について、大腸腸管の固定部(上行結腸の上端部と下行結腸の上端部の少なくとも一方からの距離が分かれば、算出された特徴点が固定部からその距離に腸管の所定の伸縮率を掛けた距離の範囲内にないときは、算出された特徴点が、既に位置が算出された特徴点と同じとは判定しない。このことは、算出された2セットの一方の特徴点等が含まれる管腔の領域は、既に位置が算出された2セットの他方の特徴点等が含まれる管腔の領域とは異なる別の部分ということになる。
【0043】
なお、S状結腸の中間部分等は、腸管の両側の固定部からの距離を考慮して存在範囲の確認をすることができる。S状直腸を除く直腸と下行結腸が固定部であり、S状結腸の中間部分では、上部直腸とS状直腸の接続部からの距離とS状結腸と下行結腸の接続部であるSDジャンクションからの距離を、2つの拘束条件とすることができる。
【0044】
図6は、大腸内の模式的な部分モデルの例を示す図である。上述した1)の判定によれば、1セットの特徴点群により1つの3次元部分モデル(部分管腔構造)が生成されるので、
図6に示すように、大腸腸管Cの上行結腸において、隣り合う2つの3次元部分モデルPM1,PM2,PM3間に位置ずれがあるが、複数の3次元部分モデルPM1,PM2,PM3を含む大腸の3次元モデルが、生成される。すなわち、管腔構造算出部としてのプロセッサ21は、3次元構造の一部である部分3次元構造を複数算出し、各々の部分3次元構造を作成しているときの3次元配置に基づき、複数の部分3次元構造の配置を決定することで、大腸腸管Cの3次元構造を算出する。
【0045】
図7は、大腸内の模式的な部分モデルの例を示す図である。2つの3次元部分モデル(部分管腔構造)の各特徴点が大腸腸管Cの1つの固定部FPの上端部FPUから所定の伸縮率を掛けた距離の範囲内にあれば、既に位置が算出された特徴点と同じと判定される。
図7では、各部分モデルPM4、PM5の上端部FPUからの距離(
図7において矢印で示す距離)が、所定の伸縮率を掛けた距離の範囲内にある。
図7に示すように、2つの部分モデルPM4,PM5の各特徴点が大腸腸管の固定部FPから所定の伸縮率を掛けた距離の範囲内にあるため、別々のモデルとして生成され、かつ2つの部分モデルPM4,PM5は離れている。
【0046】
2つの部分モデルPM4,PM5が別々に生成されても、2つの部分モデルPM4,PM5の位置ずれを補正してもよい。
図8は、2つの部分モデルPM4,PM5の位置ずれを補正する方法を説明するための図である。
図7に示した、位置ずれのある2つの部分モデルPM4,PM5は、
図8に示すように、位置ずれが補正される。
【0047】
そのために、プロセッサ21は、複数の3次元構造の間で類似する特徴点が抽出されたときに、類似する特徴点から固定部までの距離の違いを所定の基準値と比較することで、類似する特徴点が複数の3次元構造に共通する特徴点であるか否かを判定する。
【0048】
そして、部分モデルPM4,PM5は、共通する特徴点に基づいて、固定部FPの上部FPUの横方向の位置が一致するように位置補正されて配置されている。部分モデルPM4とPM5の上端部FPUからの2つの距離(
図8において矢印で示す水平方向の距離)は、それぞれ、
図7における部分モデルPM4、PM5の横方向(水平方向)の2つの距離と一致する。
【0049】
以上のように、管腔である大腸腸管Cは、外部から固定された固定部と、外部から固定されていない可動部(横行結腸)とを有し、プロセッサ21は、可動部に対応する部分3次元構造と固定部との距離を算出し、部分3次元構造と固定部との距離に基づいて、部分3次元構造の配置を補正する。そして、プロセッサ21は、各特徴点の位置の情報を含んだ複数の部分3次元構造を算出し、複数の3次元構造に共通する特徴点の位置に基づき、部分3次元モデルの配置を補正する。
【0050】
従って、
図8のように、2つのセットの特徴点の一部が一致すれば、隣り合う2つの部分モデルが位置補正されることによって、2つの隣り合う部分モデルを接続して、2つの部分モデルを1つのモデルとして統合することができる。
【0051】
なお、プロセッサ21は、3次元配置時間変化情報に基づき、挿入部2bの方向転換場所と滞留場所との少なくとも一方を判定することで、固定部と可動部の位置を推定することができる。
【0052】
大腸全体に所定の1つの伸縮率を設定してもよいが、肛門近辺部分、大腸の上行結腸及び下行結腸の部分の伸縮率と、肛門近辺部分、大腸の上行結腸及び下行結腸の部分以外の他の部分の伸縮率上限値は異なるようにしてもよい。すなわち、管腔の領域毎に設定された各特徴点の3次元空間内における所定の伸縮率上限値(閾値)を、各特徴点の位置の算出に用いてもよい。そして、各特徴点の位置を決定する際には、検出した各特徴点の位置の変化量が伸縮率上限値(閾値)により決定される範囲内であることが求められる。検出した特徴点の位置の変化量が所定の伸縮率上限値以下であるときに、各撮像画像に映っている各特徴点が同一であると判定される。
【0053】
以上のように、各特徴点が含まれる管腔の領域毎の伸縮率上限値、あるいは大腸腸管の固定点からの距離とその伸縮率上限値に基づく、各特徴点の位置の変化量上限値(閾値)[0]を、各特徴点の位置の算出の際に考慮するようにしてもよい。そして、管腔の領域毎に設定された各特徴点の所定の伸縮率上限値を用いて、複数の撮像画像に映っている共通の特徴点が同一であるか否かが判定される。
【0054】
伸縮率により決定された範囲内にある、異なるタイミングで検出された特徴点等同士が、パターンマッチングにより一致するとされたとき、これらの特徴点等同士が同一であると判断する。特徴点等の構造情報とする位置の情報は、特徴点等同士の情報に基づいて決定する。例えば、単純な場合としては、いずれか一方の特徴点の情報が構造情報とする位置の情報として採用される。
【0055】
なお、伸縮率により決定された範囲とは、各特徴点が含まれる管腔の領域の大腸腸管の固定点からの距離と伸縮率上限値に基づく範囲である。
【0056】
算出された複数の特徴点等の位置情報は、構造情報データに追加されることにより、管腔の構造情報が作成される(S5)。S5で作成される構造情報は、内視鏡2により観察した領域における1以上の特徴点等の集合から構成される。
【0057】
作成された管腔の構造情報は、モニタ6に表示される(S6)。
図9は、モニタ6に表示される画像の例を示す図である。モニタ6の表示画面6aには、内視鏡画像表示領域31と、構造情報表示領域32を含む。
【0058】
構造情報表示領域32は、ライブビューである内視鏡画像を表示する内視鏡画像表示領域31の隣に配置されている。構造情報表示領域32は、S5で生成された構造情報SIを表示する。構造情報SIは、大腸の立体の管腔構造を1つの視点から見たときの画像であり、複数の特徴点等の位置情報から構成される。
図10は、構造情報表示領域32に表示される構造情報SIの画像の例を示す図である。構造情報SIは、大腸の管腔の斜視図として表示されている。構造情報SIは、3Dデータであるので、ユーザすなわち医師は、視点位置を変更する指示を与えることにより、360度の所望の方向見たからときの管腔の構造を確認することができる。
【0059】
図10に示すように、構造情報SIは、S4で算出された特徴点等の情報の集合である。よって、構造情報SIにより示されない部分は、未観察箇所UIAを意味する。
図10では、点線で示す領域付近が未観察箇所UIAである。よって、医者は、モニタ6に表示された大腸の管腔構造を見て、未観察箇所UIAを把握することができる。
【0060】
また、医師は、入力装置27aを操作して所定のコマンドを管腔構造検出装置5に供給し、S3で取得された先端部11の位置の情報から先端部11の時系列的な動きを表示させることもできる。
図11は、モニタ6に表示される先端部11の軌跡を示した画像の例を示す図である。
図11は、モニタ6の表示画面6a上に表示される1つのウインドウ33の画像を示す。
図11に示すウインドウ33には、Z軸方向からみた、先端部11のXY平面内の動きを示す画像が表示されている。
図11では、XY平面上の所定の点を0として、XY方向の移動距離がmm(ミリメートル)の単位で分かるように、先端部11の軌跡が表示されている。医師は、
図11の画像をモニタ6に表示させることにより、先端部11の軌跡を把握することができる。
【0061】
例えば、先端部11の位置情報に基づいて、二人の医師の先端部11の軌跡を比較することができる。例えば、同じ患者Paの大腸への挿入部2bの挿入操作を、二人の医師の先端部11の位置情報から生成した先端部11の軌跡から比較することができる。
【0062】
図12は、コロンモデルを対象に、二人の医師についての先端部11の軌跡をモニタ6の表示画面6a上に表示させたときの表示例を示す図である。表示画面6aには、2つのウインドウ33a、33bが表示されている。ウインドウ33aは、医師Aの先端部11の軌跡を示す画像を表示し、ウインドウ33bは、医師Bの先端部11の軌跡を示す画像を表示する。医師Aは、内視鏡のベテラン医師であり、医師Bは、内視鏡の中堅医師である。
【0063】
ウインドウ33bに表示される中堅医師Bの先端部11の軌跡は、ウインドウ33aに表示されるベテラン医師Aの先端部11の軌跡と比較すると、肛門(AA)近辺、下行結腸(DC)内及び上行結腸(AC)内において、動きが多く、挿入部2bのスムーズな挿入あるいは抜去ができていないことを示している。
【0064】
よって、先端部11の軌跡情報を用いて、挿入部2bの挿入あるいは抜去操作の比較などをすることができる。
(特徴点等の位置の算出)
S4の特徴点等の位置の算出は、種々の方法がある。以下に、いくつかの方法について説明する。
1.SLAM,SfMなどの手法を利用して、連続する複数の画像上の特徴点の位置を算出する場合
被写体を撮像する撮像素子15の位置(ここでは先端部11の位置)及び姿勢の情報を用いて、各特徴点の3次元空間内の位置の算出するためのバンドル調整の最適化を行う方法について説明する。
【0065】
バンドル調整は、非線形最小二乗法を用いて、画像から、内部パラメータ、外部パラメータ及び世界座標点群を最適化する誤差調整の方法である。例えば、推定された各パラメータを用いて、抽出された複数の特徴点の世界座標点を画像座標点へ透視投影変換し、再投影誤差が最小になるように、各パラメータと各世界座標点群が求められる。
【0066】
先端部11についての外部パラメータは、5点及び8点アルゴリズムを解くことによって算出される。特徴点の位置は、先端部11の位置と三角測量法に従って算出される。画像平面上に投影された3D点の座標と、再投影誤差による特徴点との誤差Eは、次の式(1)により表される。
ここで、Lは、K個の画像上の特徴点の数であり、Psjは、画像平面上に三角測量と先端部11のパラメータにより推定された3D点Piの座標位置であり、Piは、画像上の対応する特徴点の座標位置である。先端部11の位置座標は、LM(Levenberg-Marquartdt)法を用いて、式(1)の誤差Eの関数を最小化するように算出される。
【0067】
上述したS4の特徴点の3次元空間内の位置は、画像上の抽出した特徴点の座標情報と、検出された先端部11の位置と姿勢の情報とに基づいて算出される。しかし、本実施形態では、先端部11の位置と姿勢の情報は、位置姿勢検出部25により検出され、略正確である。よって、先端部11の位置と姿勢の情報は、バンドル調整における外部パラメータの推定対象には含まれない。従って、バンドル調整による各特徴点の3次元空間内の位置の推定精度が高いだけでなく、抽出した複数の特徴点の位置の演算時間も短くなる。
【0068】
図13は、各特徴点の3次元空間内の位置算出をバンドル調整により行う方法のフローチャートである。
【0069】
プロセッサ21は、
図5に示す肛門の位置APが初期位置と設定されたときを、時刻tをt0とし、ソフトウエアカウンタのカウント値nを、0とする(S11)。プロセッサ21は、時刻t0における内視鏡画像(すなわち管腔画像)と、先端部11の位置と姿勢の情報を取得する(S12)。内視鏡画像は、画像処理装置3から取得される。先端部11の位置と姿勢の情報は、位置姿勢検出部25から取得される。
【0070】
プロセッサ21は、初期位置すなわち肛門の位置APにおける先端部11の位置と姿勢を決定する(S13)。例えば、肛門の位置A
P(x、y、z)が(0,0,0)に、姿勢(vx、vy、vz)が(0,1,0)に決定される。S11とS13が、
図4のS1に対応する。
【0071】
プロセッサ21は、時刻(t0+nΔt)における内視鏡画像と、先端部11の位置と姿勢の情報を取得する(S14)。S12とS14が、
図4のS2に対応する。
【0072】
なお、先端部11の位置と姿勢の情報は、修正してもよい。例えば、カルマンフィルタを用いて、先端部11が過去に通ったパスが修正され、その修正されたパスに基づいて、過去の先端部11の位置が修正される。
【0073】
プロセッサ21は、nがkになると、各内視鏡画像における複数の特徴点の抽出し、k個の時点における先端部11の位置と姿勢すなわち先端部11の3次元配置を既知として、得られた内視鏡画像に共通して含まれるm個の特徴点の位置を、上述したバンドル調整により算出する(S15)。よって、S15における各内視鏡画像における複数の特徴点の抽出処理が、各撮像画像中の複数の特徴点を抽出する特徴点抽出部を構成する。S15では、複数の時点の撮像画像に共通して映されている特徴点が抽出される。S15における各特徴点の3次元空間内の位置の算出処理が、抽出された複数の特徴点の撮像画像中の位置と、挿入部2bの3次元配置とから、特徴点の3次元空間内の位置を算出する3次元位置算出部を構成する。より具体的には、複数の時点の挿入部2bの3次元配置情報と、複数の時点の撮像画像に共通して映されている特徴点の撮像画像上の位置とに基づき、特徴点の3次元空間内の位置が算出される。そして、バンドル調整により各特徴点の3次元空間内の位置は決定される。
【0074】
図14は、連続して取得された複数の内視鏡画像上の特徴点と、先端部11の位置と姿勢の関係を説明するための模式図である。
図14において、白い三角形Pwは、先端部11の実際の位置と姿勢を示し、黒い三角形Pbは、先端部11の推定された位置と姿勢を示す。先端部11は、実線に沿って実際に移動したことを示している。推定された先端部11は、点線に沿って移動している。時間経過に伴って、先端部11の位置は移動し、先端部11の姿勢は変化している。
【0075】
また、
図14において、白い四角形pwは、特徴点の実際の位置を示し、黒い四角形pbは、特徴点の推定すなわち算出された位置を示す。特徴点は、例えば、内視鏡画像中において形状や色が特徴的で、判別あるいは追跡が容易な箇所である。
【0076】
大腸の3次元管腔構造を得るには、大腸の腸管の内壁上の複数の特定箇所(ここでは特徴点)の座標を求め、求めた複数の座標の集合により、あるいはそれらの座標を繋ぎ合わせることにより3次元モデルが生成される。すなわち、管腔の3次元構造は、3次元空間内の算出された各特徴点の位置から決定される。
【0077】
上述したように、内視鏡画像の情報のみを用いて、管腔の内壁上のある程度以上の数の特徴点の位置を算出することができる。内視鏡画像の情報のみを用いる場合、SLAM、SfM、などの技術を用いることができる。しかし、これらの技術を用いる場合、腸管の内壁上の複数の特徴点の座標が未知であるのに加え、 経過時間ごとの内視鏡2の先端位置と姿勢も未知であるため、腸管の内壁上の複数の特徴点の位置を推定するには膨大な演算が必要となり、推定精度も低い。
【0078】
図14において、各時点における撮像素子11の位置と姿勢の情報は、6軸分の情報を含むため、k個の時点における撮像素子11の位置と姿勢の情報は、6k個の情報を含む。各特徴点の位置は、3軸分の情報を含むため、m個の特徴点の位置の情報は、3m個の情報を含む。よって、(6k+3m)個のパラメータは、バンドル調整の最適化演算により算出される。
【0079】
多くのパラメータをバンドル調整により算出する場合、検出誤差が蓄積されるため、生成されていく3次元モデル構造がずれていくという問題が生じる。また、内視鏡2の挿入部2bの先端部が管腔の内壁に押し当てられるなどして連続した内視鏡画像が得られないため、3次元モデル構造が算出できなくなるという問題もある。
【0080】
これに対して、本実施形態では、磁気センサ16により時間経過に伴う先端部11の位置及び姿勢の情報を得て既知としているので、バンドル調整において算出されるパラメータ数を少なくして、最適化演算の処理量を軽減してかつ高速化できる。さらに、特徴点の位置を三角測量により算出することもできるので、連続した内視鏡画像が得られなくても、3次元モデル構造が算出できる。
【0081】
また、先端部11の位置及び姿勢と、各特徴点の3次元空間内の位置とをバンドル調整により算出するとき、算出した各特徴点の位置の誤差が蓄積され、管腔構造が徐々に実際の構造とはずれてしまうという問題があるが、本実施形態では、先端部11の位置と姿勢は、磁気センサ16により検出しているので、このような積算誤差が生じることはない。
【0082】
例えば、上述した
図14の場合、内視鏡画像のみから各特徴点の位置を算出するとき、従来は、(6k+3m)個のパラメータのための最適化演算が行われるが、先端部11の位置及び姿勢の情報は既知となるので、最適化演算は、3m個のパラメータを算出だけであるので、バンドル調整の最適化演算の処理量は軽減されかつ高速化できる。
【0083】
また、内視鏡2の挿入部2bの先端部11が管腔の内壁に押し当てられたり、汚れた洗浄水に浸ってしまったり、内視鏡画像がぶれるなどして適切な連続した内視鏡画像が得られないかった場合があっても、先端部11の位置と姿勢の情報は得られている。よって、先端部11が管腔の内壁に押し当てられるなどして連続した内視鏡画像が得られなかった場合が生じても、3m個のパラメータを算出できる可能性は高まる。結果として、管腔構造の算出のロバスト性が高まる。
【0084】
図13に戻り、プロセッサ21は、作成済の管腔構造情報に、新たに算出された特徴点の位置情報を追加して、管腔構造情報を更新する(S16)。S16は、
図4のS5に対応する。
【0085】
プロセッサ21は、過去に算出した特徴点の位置情報を修正する(S17)。新たに算出して得られた3m個の特徴点のうち、過去に算出された特徴点の位置情報は、新たに算出された位置情報を用いて、例えば平均値演算により、過去に算出された位置情報を修正する。
【0086】
なお、S17の処理は、行わなくてもよく、新たに算出された特徴点の位置情報で、過去に算出された各特徴点の位置情報を更新するようにしてもよい。
【0087】
プロセッサ21は、更新された管腔構造情報に基づいて、管腔構造表示領域32に管腔構造の画像を表示するように、管腔構造の画像データをモニタ6に出力する(S18)。S18は、
図4のS6に対応する。
【0088】
S18の後、プロセッサ21は、nを1だけインクリメントし(S19)、検査終了のコマンドが入力されたかを判定する(S20)。検査終了のコマンドは、例えば、挿入部2bが大腸から抜去された後に、医者が入力装置27aに所定のコマンドを入力すると(S20:YES)、管腔構造算出プログラムLSPの実行が終了する。
【0089】
検査終了のコマンドが入力されないとき(S20:NO)、処理は、S14へ移行する。その結果、プロセッサ21は、内視鏡画像の最後の取得時刻から周期Δtだけ後の内視鏡画像を取得し(S14)、S14以降の処理を実行する。
【0090】
なお、上述した方法では、6軸の磁気センサ16により先端部11の位置と姿勢の情報を検出して、バンドル調整の最適化により各特徴点の3次元位置を算出しているが、6軸の全ての情報の一部を既知として、すなわち3次元位置(x、y、z)と3軸方向(vx、vy、vz)の少なくとも一つを既知として、バンドル調整の最適化により各特徴点の3次元位置を算出するようにしてもよい。
【0091】
よって、バンドル調整において先端部11の位置と姿勢の情報の少なくとも1つを既知として各特徴点の3次元位置を算出するので、各特徴点の3次元位置を算出精度も高まると共に、最適化演算の全体時間も短くなる。
2.2つの画像から三角測量画像を用いて特徴点(例えば、画像の中心点)の位置を算出する場合
各特徴点の位置を、視点の異なる2枚の画像から三角測量法を用いて算出する方法について説明する。
図15は、複数の内視鏡画像上の特徴点と、先端部11の位置と姿勢の関係を説明するための模式図である。
図15において、白い三角形Pは、先端部11の実際の位置と姿勢すなわち3次元配置を示す。先端部11は、実線に沿って実際に移動したことを示している。
図15において、白い四角形pは、特徴点の実際の位置を示す。各特徴点は、例えば、内視鏡画像中において形状や色が特徴的で、判別あるいは追跡が容易な箇所である。
【0092】
実線で示すように、時刻t1,t2において取得された先端部11の位置と姿勢の情報と、時刻t1で取得された画像上の特徴点p1、p2と時刻t2で取得された画像上の特徴点p1、p2のそれぞれの位置とから、三角測量により、特徴点p1、p2の位置が算出される。
【0093】
同様に、点線で示すように、時刻t2,t3において取得された先端部11の位置と姿勢の情報と、時刻t2で取得された画像上の特徴点p3、p4と時刻t4で取得された画像上の特徴点p3、p4のそれぞれの位置とから、三角測量により、特徴点p3、p4の位置が算出される。
【0094】
以上のように、各特徴点の位置を、先端部11の位置及び姿勢の情報と、2枚の内視鏡画像とから、三角測量を用いて算出する。すなわち、複数の時点の撮像素子15の位置及び姿勢の情報と、複数の時点の撮像素子15により取得された撮像画像に共通に映されている特徴点の撮像画像上の位置とから三角測量に基づき各特徴点の3次元空間内の位置を算出し、管腔の3次元構造が決定される。
【0095】
なお、以上説明した三角測量は、2つの時刻において得られた2枚の内視鏡画像に基づいて行われるが、同時刻に得られた2枚の内視鏡画像に基づいて行うようにしてもよい。
【0096】
図16は、ステレオカメラを有する挿入部の先端部の先端部分の斜視図である。先端部11の先端面には、2つの観察窓11a、11bと、2つの照明窓11cが配置されている。各観察窓11a、11bの後ろ側には、撮像光学系と撮像素子が配置されている。撮像光学系と撮像素子が撮像部11dを構成し、2つの撮像部11dがステレオカメラを構成する。
【0097】
先端部11に配置されたステレオカメラにより取得された2枚の内視鏡画像中のステレオマッチング領域の位置から三角測量により、大腸の内壁の各点の位置を算出することができる。
3.照度差ステレオ画像を用いて特徴点の位置を算出する場合
各特徴点の位置を、照度差ステレオ画像を用いて算出する方法について説明する。
図17は、複数の照明窓を有する挿入部の先端部の先端面の平面図である。
図17は、先端部11の先端面11a1を、挿入部2bの先端側から見た図である。
【0098】
図17に示すように、先端部11の先端面11a1には、観察窓41と、3つの照明窓42と、鉗子口43と、洗浄用ノズル44と、副送水口45が設けられている。観察窓41の後ろ側には、撮像部11dが設けられている。3つの照明窓42は、観察窓41の周囲に配設されている。各照明窓42の後ろ側には、図示しないライトガイドの先端面が配設されている。鉗子口43は、挿入部2bに設けられた処置具挿通チャネル内に通された処置具が突出する開口である。洗浄用ノズル44は、観察窓41の表面を洗浄するための水を吐出する。副送水口45は、副送水用の水が吐出する開口である。
【0099】
3つの照明窓42から出射される3つの照明光は、光源装置4に設けられた照明用の複数の発光ダイオードの駆動が制御されることにより、切り替えられて選択的に出射可能となっている。
【0100】
被写体の表面の画像中の影の部分は、照明光の切り替えにより状態が変化する。よって、その変化量に基づいて、被写体の表面上の影の部分までの距離を算出することができる。すなわち、選択的に動作させた複数の照明部により照明して得られた撮像画像中の影領域の画像から照度差ステレオに基づき、管腔の3次元構造を決定することができる。
4.距離センサを用いて管腔構造を算出する場合
管腔の内壁上の各点の位置を、先端部11に設けた距離センサを用いて算出する方法について説明する。
【0101】
図18は、距離センサを有する挿入部の先端部の先端部分の斜視図である。先端部11の先端面11a1には、観察窓41と、2つの照明窓42と、鉗子口43と、距離センサ51が配設されている。
【0102】
距離センサ51は、TOF(Time Of Flight)センサであり、ここでは、TOFにより距離画像を検出するセンサである。距離センサ51は、光の飛行時間を計ることにより距離を計測する。イメージセンサの各画素にTOF機能が埋め込まれている。よって、距離センサ51は、画素毎の距離情報を得る。すなわち、距離センサ51は、挿入部2bの先端部11に設けられ、先端部11から管腔の内壁までの距離を検出する。
【0103】
距離センサ51により検出された各画素についての距離と、先端部11の位置と姿勢すなわち配置とから、大腸の内壁の各点の位置情報すなわち管腔の3次元構造が算出可能である。なお、距離センサは、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)などの他の方式のセンサでもよい。
【0104】
図19は、距離センサを用いた管腔の内壁の3次元位置の算出を行う方法のフローチャートである。
図19において、
図13と同じ処理については、同じステップ番号を付して説明は省略し、異なる処理についてのみ説明する。
【0105】
距離センサ51を用いる場合、距離センサ51の1以上の所定の画素を特徴点とすることにより、各特徴点の位置は、距離センサ51の各画素の距離情報と、先端部11の位置と姿勢の情報とから、大腸の内壁の各点の3次元位置が算出可能である。管腔構造は、内壁の各点の3次元位置情報の集合により構成される。すなわち、
図13において、プロセッサ21は、S21では、距離センサ51から出力される距離情報と、S14で得られた先端部11の位置と姿勢の情報とから、測距された点(特徴点)の3次元座標を算出する。
5.その他の方法による測距
なお、先端部11に所定のパターン光を出射する照明部を設け、パターン光投影により先端部11から内壁までの測距を行ってもよい。
【0106】
以上のように、上述した実施形態によれば、挿入部2bの先端部11の位置と姿勢(すなわち配置)の情報と、内視鏡画像の画像情報又は測距センサの距離情報とを用いて、大腸の内壁の構造情報を得ることができる。
【0107】
上述した実施形態では、先端部11の位置と姿勢の情報が得られるので、先端部が管壁に近づき過ぎたりして、内視鏡画像が得られない、あるいは距離センサ51の距離情報が得られない場合があっても、内視鏡画像等が得られない管腔部分の構造は算出できないが、内視鏡画像等が得られた管腔部分の構造は算出できる。
【0108】
図20は、部分的に算出された管腔構造の例を説明するための図である。
図20において、二点鎖線の楕円で示す部分は、内視鏡画像が得られたあるいは距離センサ51の距離情報が得られた大腸の一部の領域を示している。点線で示す部分については、内視鏡画像が得られなかったあるいは距離センサ51の距離情報が得られなかったが、実線で示す部分領域の構造情報が算出される。すなわち、各セットにおいて他のセットとの特徴点同士の重なりが無い若しくは判断できない場合は、繋がりの無い複数の管腔構造が、各管腔構造の位置情報に基づいて、それぞれの位置に配置される。
【0109】
よって、内視鏡画像が途中で得られなくても、複数の内視鏡画像から、各特徴点の位置が算出可能であるので、結果として、管腔の3次元モデル構造は、部分的に算出可能となる。
【0110】
なお、上述した実施形態では、挿入部2bの先端部11の位置と姿勢を検出するための位置センサとして磁気センサ16が用いられているが、先端部11の位置と姿勢は、別の手段により検出するようにしてもよい。
【0111】
図21は、形状センサを有する内視鏡と、挿入量及び捩り量を検出するセンサを用いた先端部11の位置と姿勢を検出する方法を説明するための図である。
【0112】
形状センサ61は、挿入部2bの内部に基端から先端に亘って配設されている。形状センサ61は、例えば、光ファイバを利用して、特定箇所の曲率から曲げ量を検出する曲げセンサであるファイバセンサである。
【0113】
挿入量・捩り量センサ62は、肛門の近くに配置され、挿入部2bが挿通可能な孔を有する円筒形状を有する。挿入量・捩り量センサ62の孔の内周面には、挿入部2bの軸方向の挿入量を検出するためのエンコーダと、挿入部2bの軸周りの回転量を検出するエンコーダとが配設されている。よって、形状センサ61と挿入量・捩り量センサ62を用いて、肛門の位置を基準として、挿入部2bの挿入量と、捩り量とに基づいて、先端部11の位置と姿勢を推定することができる。
【0114】
また、形状センサ61は、光ファイバを利用したものでなく、先端部11に1つの磁気センサ16を設けると共に、複数の磁気センサ16を所定の間隔で挿入部2b内に配置することによって、挿入部2bの形状を検出するようにしてもよい。
図22は、複数の磁気センサ16が挿入部2b内に配設された内視鏡の斜視図である。
図22に示すような複数の磁気センサ16の位置情報から、挿入部2bの形状を算出することができる。
【0115】
なお、
図2において点線で示すように、内視鏡2の挿入部2b内に、上述した形状センサ61を配設してもよい。形状センサ61を用いれば、挿入部2bの全体形状も把握できる。
【0116】
上述した実施形態では、医者が内視鏡画像を見ながら、管腔構造は算出されるが、例えば襞の裏側などの隠れ部分があるとその領域の管腔構造は算出されない。隠れ部分は、内視鏡画像に写っていない領域である。内視鏡画像に含まれない領域は、管腔構造が生成されないことになるので、そこで、内視鏡画像等から隠れ部分の存在を検出し、医者に告知するようにしてもよい。
【0117】
図23は、隠れ部分があるときのモニタ6の表示例を示す図である。モニタ6の表示画面6aの内視鏡画像表示領域31には、内壁の一部の奥側に影ができている大腸の内視鏡画像が表示されている。照明光が当たらずに暗い影の部分SAは、他の部分に比べて明るさが段階的に低くなる。そのため、隣り合う画素あるいは隣り合う画素領域間において輝度差が、所定の輝度値以上であるとき、隠れ部分があると判定することができる。
【0118】
そのような場合、
図23のポップアップウインドウ34のように、所定のメッセージをモニタ6に表示させることにより、ユーザに告知して、隠れ部分を観察させることができる。隠れ部分には、憩室等の凹みも含まれる。ユーザが、所定のメッセージを見て、隠れ部分の観察をすると、その観察した領域の管腔構造の情報が算出される。
【0119】
なお、上述した例では、隠れ部分は、照明光が当たらない影の領域の有無により検出しているが、上述した距離センサ51等の距離画像情報を用いて、同様の隠れ部分の有無を検出するようにしてもよい。隣り合う画素あるいは隣り合う画素領域間において距離差が、所定の距離値以上である、等の場合、隠れ部分があると判定することができる。
【0120】
図24は、画像の輝度値による未観察領域の告知処理の流れの例を示すフローチャートである。
図24の処理は、
図4のS2において新しい視点での内視鏡画像を取得されたときに、
図4の処理と並行して実行される。プロセッサ21は、S2において取得された新しい視点での内視鏡画像の明るさ情報を得る(S31)。すなわち画像中の各画素の輝度情報が取得される。
【0121】
プロセッサ21は、画像中の所定の画素領域内において、a)隣り合う2つの画素の輝度値の差が所定値以上である、又はb)暗い筋状部分がある、の有無を判定すなわち確認する(S32)。
【0122】
プロセッサ21は、a)及びb)のいずれかが成り立つかを判定する(S33)。a)及びb)のいずれかが成り立つとき(S33:YES)、プロセッサ21は、視野内に隠れ部分がある可能性があるとして、所定のメッセージをモニタ6に表示する(S34)。所定のメッセージは、例えば
図23のポップアップウインドウ33のようなメッセージである。a)及びb)のいずれかも成り立たないとき(S33:NO)、処理は、何もしない。S34の処理は、撮像画像中の隣り合う2つの画素又は2つの画素領域間の輝度値の差が、所定値以上であるとき、所定の告知を行う告知部を構成する。
【0123】
図25は、距離センサ51の距離画像による未観察領域の告知処理の流れの例を示すフローチャートである。
図25の処理は、
図4のS2において新しい視点での内視鏡画像を取得されたときに、
図4の処理と並行して実行される。プロセッサ21は、S2において取得された新しい視点での距離センサ51の距離画像情報を得る(S41)。すなわち画像中の各画素の距離情報が取得される。
【0124】
プロセッサ21は、画像中の所定の画素領域内において、c)隣り合う2つの画素の距離の差が所定値以上である、又はd)距離の変化が連続しない部分がある、の有無を判定すなわち確認する(S42)。
【0125】
プロセッサ21は、c)及びd)のいずれかが成り立つかを判定する(S43)。c)及びd)のいずれかが成り立つとき(S43:YES)、プロセッサ21は、視野内に隠れ部分がある可能性があるとして、所定のメッセージをモニタ6に表示する(44)。所定のメッセージは、例えば
図23のポップアップウインドウ34のようなメッセージである。c)及びd)のいずれかも成り立たないとき(S43:NO)、処理は、何もしない。S43の処理は、距離画像中の隣り合う2つの画素又は2つの画素領域間の距離値の差が、所定値以上であるとき、所定の告知を行う告知部を構成する。
【0126】
以上のように、上述した実施形態によれば、臓器の動きなどによる画像不良が生じても各特徴点の位置から管腔の3次元モデル構造を算出可能な内視鏡システム、管腔構造算出装置、管腔構造情報の作成方法及び管腔構造情報作成プログラムを提供することができる。
【0127】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。