(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置及びエアバッグモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/201 20110101AFI20240122BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B60R21/201
B60R21/207
(21)【出願番号】P 2022503159
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2021002172
(87)【国際公開番号】W WO2021171847
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2020030291
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】田村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】田口 博之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-130364(JP,A)
【文献】米国特許第05498023(US,A)
【文献】特開2007-030616(JP,A)
【文献】特開2014-184939(JP,A)
【文献】特開2002-067853(JP,A)
【文献】特開2001-158320(JP,A)
【文献】特開2001-151064(JP,A)
【文献】国際公開第2018/228831(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0068443(US,A1)
【文献】特開2008-168673(JP,A)
【文献】特開平11-321509(JP,A)
【文献】特開2009-286339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/201
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突時に乗員の移動を抑制して当該乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、
車両用シートのフレームに取り付けられ、クッションにインフレータを収納したエアバッグモジュールと、
前記エアバッグモジュールの外周に巻き付けられるソフトカバーと、を備え、
当該ソフトカバーは、
前記クッションの前記インフレータの収納部から、折り畳まれた前記クッションの前記フレーム側の側面に沿って車両の前方に延びる第1側部と、
当該第1側部の前端から連続して延び、前記クッションの車両前端部に巻き付く前端部と、
当該前端部から連続して延び、前記クッションの前記フレームとは反対側の側面に沿って車両後方に延びる第2側部と、
当該第2側部から連続して延び、前記クッションの車両後端部に巻き付く後端部と、
当該後端部から連続して延び、前記第1側部の一部と重なり、前記インフレータのスタッドボルトに係止される係止部とを有
し、
前記クッションの、前記インフレータに近接する前記ソフトカバーの前記第1側部側の折り畳み部と、前記インフレータの収納部との間に、空間を有する、サイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記第1側部は、前記インフレータのスタッドボルトの挿入孔を有する、請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第1側部は、前記クッションにおける前記インフレータの収納部の近傍で、前記クッションに縫い付けられている縫製部を有する、請求項
2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記縫製部は、前記スタッドボルトの前記挿入孔の車両前後方向にそれぞれ少なくとも1か所ずつ設けられる、請求項3に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
先ず、前記クッションにおける前記インフレータの収納部のスタッドボルトの突出孔と、前記ソフトカバーの第1側部に設けたスタッドボルトの挿入部を一致させて、当該ソフトカバーをクッションに取り付け、その後、当該クッションに前記インフレータを収納した後、前記クッションを折り畳み、
次に、前記ソフトカバーの前記第1側部で前記クッションの前記フレーム側の側面を、前記前端部で前記クッションの車両前端部を、前記第2側部で前記クッションの前記フレームとは反対側の側面を、前記後端部で前記クッションの車両後端部を覆うように巻き付けた後、前記係止部を前記第1側部と一部が重なるように、前記インフレータのスタッドボルトに係止する、請求項1~4の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置を構成するエアバッグモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両が側面から衝突された時(以下、側面衝突時という。)に、乗員を保護するため、車室内の車両用シートに設置されるサイドエアバッグ装置、及びサイドエアバッグ装置を構成するエアバッグモジュールの製造方法に関するものである。特に、外周にソフトカバーを巻き付けたエアバッグモジュールを備えたサイドエアバッグ装置、及び当該エアバグモジュールの製造方法に関するものである。
【0002】
本願において、「上」「上方」とはシートの正規の位置に着座した乗員の頭部方向を、「下」「下方」とは同じく足元方向を意味する。また、「前」「前方」とはシートの正規の位置に着座した乗員の正面側の方向を、「後」「後方」とは同じく背面側の方向を意味する。また、「幅方向」とはシートの正規の位置に着座した乗員の右手と左手の方向を意味する。なお、上記説明中の「正規の位置」とは、シートを構成するシートクッションの幅方向の中心位置で、乗員の背中全体がシートの背もたれ部に接した状態で沿う位置をいう。また、上記説明中の「乗員」は、WorldSID(国際統一側面衝突ダミー:World Side Impact Dummy)のAM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)を想定したものである。
【背景技術】
【0003】
例えば側面衝突時、衝撃が加わった部位に向かう乗員の移動を抑制するサイドエアバッグ装置は、衝撃を検知したセンサーが発信する信号によりインフレータが作動してガスを発生し、シートに着座した乗員の側方にクッションを膨張展開させる構成である。
【0004】
前記サイドエアバッグ装置は、例えば
図5に示すように、インフレータ3を収納したクッション2を、車両の前後方向に蛇腹状に折り畳んだ状態で、シートSの背もたれ部(以下、シートバックSBという。)の側部内に収納される。なお、
図5中、1はクッション2にインフレータ3を収納したエアバッグモジュール、3aはインフレータ3の外周長手方向に例えば2個、突出状に設けられたスタッドボルト、4は当該スタッドボルト3aに取り付けるナットを示す。また、SFはシートバックSBの左右両側に内蔵されたサイドフレーム、SDはサイドドアを示す。
【0005】
前記サイドエアバッグ装置の組み立て、車両製造業者への輸送、車両への組み付けや、車両の標準的な使用中に、クッションの前記折り畳み状態を維持するため、
図6に示すように、エアバッグモジュール1の外周部にソフトカバー5が巻き付けられている。
【0006】
前記ソフトカバー5は、その一端側5aに設けた孔5cをインフレータ3のスタッドボルト3aに嵌合して係止する。その後、他端側5bをインフレータ3の収納側からクッション2の折り畳み側を取り巻くように巻き付け、他端側5bに設けた孔5dをインフレータ3のスタッドボルト3aに嵌合することで、エアバッグモジュール1にソフトカバー5を巻き付ける。
【0007】
しかしながら、ソフトカバー5の前記巻き付けの場合、エアバッグモジュール1を車両に組み付ける際、引張力(矢印A)により、インフレータ3に近接するシート側の折り畳み部2fがサイドフレームSFとクッション2のインフレータ収納部の間に噛み込まれる。この場合、クッション2の噛み込まれた部分にダメージが発生する。
【0008】
そこで、前記欠点を解決する技術が特許文献1で提案されている。この特許文献1で提案された技術は、
図7に示すように、インフレータ3に近接するクッション2のシート側の折り畳み部2fを含むエアバッグモジュール1のサイドフレームSF側に保護フラップ6を配置したものである。なお、当該保護フラップ6は、配置位置がずれないように、インフレータ3のスタッドボルト3aを挿入する孔6aが設けられるとともに、ソフトカバー5やクッション2に縫い付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2015/0123382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記特許文献1で提案された技術の場合、前記保護フラップによってクッションの前記噛み込みを効果的に防止することができるが、保護ラップが余分に必要で、エアバッグモジュールの製造工程が増加するという欠点がある。また、製造上のバラツキによって、まれにクッションの噛み込みが発生する懸念がある。
【0011】
本発明が解決しようとする問題点は、外周部にソフトカバーを巻き付けたエアバッグモジュールを車両に組み付ける際、サイドフレームとクッションのインフレータ収納部の間にクッションが噛み込むという点である。
【0012】
一方、特許文献1で提案されたサイドエアバッグ装置の場合、クッションの前記噛み込みを効果的に防止することができるが、保護ラップが余分に必要で、エアバッグモジュールの組み立て工程が増加するという点である。また、製造上のバラツキによって、まれにクッションの噛み込みが発生する懸念があるという点である。
【0013】
本発明は、ソフトカバー以外に余分な部品を必要とせず、エアバッグモジュールを車両に組み付ける際にもクッションの噛み込みを効果的に防止できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、クッションにインフレータを収納したエアバッグモジュールをシートのフレームに取り付け、車両の衝突時に乗員の移動を抑制して当該乗員を保護するサイドエアバッグ装置である。
【0015】
本発明のサイドエアバッグ装置では、前記エアバッグモジュールは、外周にソフトカバーが巻き付けられている。
【0016】
そして、本発明では、
前記ソフトカバーは、
前記クッションの前記インフレータの収納部から、折り畳まれた前記クッションの前記フレーム側の側面に沿って車両の前方に延びる第1側部と、
当該第1側部の前端から連続して延び、前記クッションの車両前端部に巻き付く前端部と、
当該前端部から連続して延び、前記クッションの前記フレームとは反対側の側面に沿って車両後方に延びる第2側部と、
当該第2側部から連続して延び、前記クッションの車両後端部に巻き付く後端部と、
当該後端部から連続して延び、前記第1側部の一部と重なり、前記インフレータのスタッドボルトに係止される係止部とを有することが主要な特徴である。
【0017】
前記本発明のサイドエアバッグ装置を構成するエアバッグモジュールは、
先ず、前記クッションにおける前記インフレータの収納部に設けられたスタッドボルトの突出孔と、前記ソフトカバーの第1側部に設けたスタッドボルトの挿入部を一致させて、当該ソフトカバーをクッションに取り付け、その後、当該クッションに前記インフレータを収納した後、前記クッションを折り畳み、
次に、前記ソフトカバーの前記第1側部で前記クッションの前記フレーム側の側面を、前記前端部で前記クッションの車両前端部を、前記第2側部で前記クッションの前記フレームとは反対側の側面を、前記後端部で前記クッションの車両後端部を覆うように巻き付けた後、前記係止部を前記第1側部の一部と重ならせた状態で、前記インフレータのスタッドボルトに係止する。これが本発明のエアバッグモジュールの製造方法である。
【0018】
前記本発明では、エアバッグモジュールをシートのフレームに取り付ける際、インフレータに近接するクッションのフレーム側の折り畳み部は、ソフトカバーに作用する引張力によって、前記フレームへのインフレータの取り付け部から離れる方向に引っ張られる。従って、クッションの前記折り畳み部がフレームとクッションに収納されたインフレータの間に噛み込まれることを効果的に防止することができる。
【0019】
本発明において、ソフトカバーの第1側部は、クッションにおけるインフレータの収納部の近傍で、クッションに縫い付けられた縫製部を有しているか、インフレータのスタッドボルトの挿入孔を有することが望ましい。このような構成の場合、エアバッグモジュールをフレームに取り付ける際、インフレータに近接するクッションのフレーム側の折り畳み部は、ソフトカバーの第1側部によってフレームへのインフレータの取り付け部から離れる方向に引っ張られるからである。
【0020】
また、本発明において、クッションの、インフレータに近接するフレーム側であるソフトカバーの第1側部側の折り畳み部と、インフレータの収納部との間に、空間を有することが望ましい。エアバッグモジュールのフレームへの取り付け時に、仮に折り畳んだクッションの一部がフレームとクッションのインフレータ収納部の間に噛み込まれようとしても、前記空間の存在により前記一部が移動して噛み込みを免れる場合があるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、エアバッグモジュールをシートのフレームに取り付ける時、インフレータに近接するクッションのフレーム側の折り畳み部は、フレームへのインフレータの取り付け部から離れる方向に引っ張られる。従って、前記折り畳み部がフレームとクッションのインフレータ収納部の間に噛み込まれることを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のサイドエアバッグ装置を構成するエアバッグモジュールのサイドフレームへの取り付け状態を示す断面図である。
【
図2】本発明のサイドエアバッグ装置のエアバッグモジュールを構成するソフトカバーの展開図である。
【
図3】本発明のサイドエアバッグ装置を構成するエアバッグモジュールのサイドフレームへの取り付け状態の他の例を示す断面図である。
【
図4】本発明のサイドエアバッグ装置のエアバッグモジュールを構成するソフトカバーの他の例の展開図である。
【
図5】従来のサイドエアバッグ装置を構成するエアバッグモジュールのサイドフレームへの取り付け状態を平面方向から見た一部断面図である。
【
図6】従来のサイドエアバッグ装置を構成するエアバッグモジュールのサイドフレームへの取り付け状態を示す断面図である。
【
図7】特許文献1で提案されたサイドエアバッグ装置を構成するエアバッグモジュールのサイドフレームへの取り付け状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的は、ソフトカバー以外に余分な部品を必要とせず、エアバッグモジュールを車両に組み付ける際のクッションの噛み込みを防止することである。
【0024】
本発明は、エアバッグモジュールに巻き付けるソフトカバーを、フレームとクッションのインフレータ収納部から、クッションのフレーム側の側方を経て車両前端部に至った後、クッションのフレームとは反対側の側方を経て車両後端部に巻くことで、前記目的を実現した。
【0025】
以下、本発明の実施形態 について添付図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、その用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0026】
サイドエアバッグ装置10は、先に
図5で説明したように、シートSの骨組みとして機能する、例えばシートバックSBの内部の左右両側に配置されたサイドフレームSFに取り付けられる。また、
図1に示す実施形態では、サイドエアバッグ装置10は、サイドフレームSFのサイドドアSDの側に取り付けられている。本実施形態では、以下の説明中の「シート側」は「フレーム側」と同じ方向を意味する。
【0027】
このサイドエアバッグ装置10は、例えばシリンダ型のインフレータ3を収納したクッション2を車両の前後方向に折り畳み、その外周にソフトカバー11を巻き付けることで、前記折り畳み状態を維持したエアバッグモジュール1を有している。
【0028】
前記クッション2は、側方から乗員の上半身をカバーできるように、前後方向よりも上下方向が長く形成され、左右方向に厚みを有するように、例えば、2枚の基布パネルの外周部を縫製して、袋状に形成されている。
【0029】
また、前記インフレータ3は、センサーからの信号を受信してその外側面に設けた噴出孔から前記クッション2の内部にガスを噴出する構成である。
【0030】
そして、前記エアバッグモジュール1は、前記インフレータ3の前記噴出孔の反対側の外側面に、その長手方向に適宜の間隔を存して突出状に設けられた2本のスタッドボルト3aを用いて、例えばサイドドアSD側の前記サイドフレームSFに取り付けられる。
【0031】
本発明のサイドエアバッグ装置10は、前記ソフトカバー11の形態、及びそのエアバッグモジュールの製造方法に、従来のソフトカバーを巻き付けたエアバッグモジュール1を有するサイドエアバッグ装置と、大きな相違を有している。
【0032】
すなわち、本発明に使用するソフトカバー11は、後述する係止部11eを除いて、サイドフレームSFに取り付ける、折り畳み状態のクッション2の車両の上下方向の長さに概ね対応する上下方向長さを有している。一方、エアバッグモジュール1をサイドフレームSFに取り付けた状態における車両の前後方向には、
図2に示すように、車両の後方から前方に向かって、第1側部11a、前端部11b、第2側部11c、後端部11d、及び係止部11eを連続して設けている。
【0033】
前記第1側部11aは、サイドフレームSFと、クッション2のインフレータ3の収納部の間から、折り畳まれたクッション2のフレーム側の(シート側の)側面2aに沿って車両の前方に延び、前記側面2aを覆う部分である。
図2に示した実施形態では、第1側部11aにインフレータ3のスタッドボルト3aの挿入孔11fを設けている。
【0034】
また、前記前端部11bは、前記第1側部11aの前端から連続して延び、サイドフレームSFに取り付けた状態におけるエアバッグモジュール1の、折り畳まれたクッション2の車両前端部2bを覆う部分である。
【0035】
また、前記第2側部11cは、前記前端部11bから連続して延び、前記取り付けた状態におけるエアバッグモジュール1の、折り畳まれたクッション2のフレームとは反対側の(シートSと反対側の)側面2cに沿って車両後方に延び、前記側面2cを覆う部分である。
【0036】
また、前記後端部11dは、前記第2側部11cから連続して延び、前記取り付けた状態におけるエアバッグモジュール1の、折り畳まれたクッション2の車両後端部2dを覆う部分である。
【0037】
また、前記係止部11eは、前記後端部11dから連続して延び、前記第1側部11aの一部とその外側で重なり、インフレータ2のスタッドボルト3aに係止される部分である。
図2に示した実施形態では、前記係止される部分にインフレータ3のスタッドボルト3aの挿入孔11gを設けている。
【0038】
なお、展開図を示した
図2から理解されるとおり、前端部11bは、第1側部11aと第2側部11cの間の領域全体を意味し、ソフトカバー11をエアバッグ装置10の外周に巻き付けた状態においてエアバッグモジュール1の前面に位置する。同様に、後端部11dは、第2側部11cと係止部11eの間の領域全体を意味し、ソフトカバー11をエアバッグ装置10の外周に巻き付けた状態においてはエアバッグモジュール1の後面に位置する。
【0039】
前記構成のソフトカバー11を有するエアバッグモジュール1は、以下の順序で組み立てて製造する。なお、本実施形態では、以下の説明中の「シート側」は「フレーム側」と同じ方向を意味する。
【0040】
先ず、クッション2のインフレータ3を収納する収納部に設けられたスタッドボルト3aの突出孔2eと、ソフトカバー11の第1側部11aに設けた挿入孔11fを一致させる。そして、前記一致させた状態で、前記挿入孔11fの前端部11b側と前端部11bの反対側で、ソフトカバー11をクッション2に縫い付ける。
図2中の12はソフトカバー11とクッション2の縫製部を示す。本実施形態では、縫製部12は、スタッドボルト3aの挿入孔11fの車両前後方向にそれぞれ少なくとも1か所ずつ設けることで、ソフトカバー11とクッション2の縫い付けの強度を高めている。
【0041】
前記収納部にソフトカバー11を縫い付けたクッション2にインフレータ3を収納した後、例えば
図1に示すように、クッション2の本体部を車両の前後方向に蛇腹状に折り畳み、その先端側をロール状に折り畳む。
【0042】
次に、ソフトカバー11の第1側部11a、前端部11b、第2側部11c、後端部11dで、折り畳んだクッション2のフレーム側の(シート側の)側面2a、車両前端部2b、フレームとは反対側の(シートSと反対側の)側面2c、車両後端部2dをそれぞれ覆うように巻き付ける。
【0043】
その後、前記係止部11eを前記第1側部11aの車両後方側の一部とその外側で重ならせた状態で、前記係止部11eに設けた挿入孔11gにインフレータ3のスタッドボルト3aを挿入して係止する。
【0044】
前記順序でエアバッグモジュール1を組み立てる際、
図1の実施形態では、クッション2の本体部の、インフレータ3に近接するフレーム側、すなわち、ソフトカバー11の第1側部11aの側の折り畳み部2fと、インフレータ3の収納部との間に、空間13を形成している。
【0045】
上記方法で組み立てられたエアバッグモジュール1をサイドフレームSFに組み付ける場合、インフレータ3に近接するクッション2のフレーム側の折り畳み部2fは、サイドフレームSFへのインフレータ3の取り付け部から離れる方向(矢印B)に引っ張られる。
【0046】
従って、クッション2の前記折り畳み部2fの一部がサイドフレームSFとクッション2に収納されたインフレータ3の間に噛み込まれることを効果的に防止できる。仮に前記折り畳み部2fがサイドフレームSFとクッション2のインフレータ3の収納部の間に噛み込まれようとしても、前記空間13の存在により前記一部が移動して噛み込まれ難くなる。
【0047】
[実施形態の変形例]
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0048】
すなわち、以上で述べたサイドエアバッグ装置及びエアバッグモジュールの製造方法は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も含まれる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0049】
例えば、上述の実施形態では、サイドエアバッグ装置10は、サイドフレームSFのサイドドアSDの側に取り付けられているが、
図3に示すように、サイドフレームSFに対し、車両の幅方向の中心側にサイドエアバッグ装置10を取り付けてもよい。このような上述の実施形態とは左右反転の関係にある
図3の変形例の場合であっても、フレーム側を第1側部11a、フレームとは反対側を第2側部11cとして、ソフトカバー11を
図3中の矢印Bの方向(上述の実施形態とは逆方向)に巻き付けることで、本発明を実施することができ、上述の効果と同じ効果が得られる。
【0050】
また、上述の実施形態では、本発明のサイドエアバッグ装置10(エアバッグモジュール1)をシートSのサイドドアSDに近い側(ニアサイド)に設けているが、シートSの車両幅方向中心側(ファーサイド)に設けてもよい。
【0051】
また、上述の実施形態では、ソフトカバー11の第1側部11aにスタッドボルト3aの挿入孔11fを設けているが、スタッドボルト3aが第1側部11aを通り抜けることができるのであれば、
図4に示すような、切り欠き11hを設けたものでもよい。
【0052】
また、上述の実施形態では、ソフトカバー11のクッション2への位置決めを、ソフトカバー11の第1側部11aに設けたスタッドボルト3aの挿入孔11fと縫製部12によって行っている。しかしながら、前記位置決めを確実に行えるのであれば、前記のどちらか一方のみを採用したものでもよい。また、ソフトカバー11とクッション2を接着することにより位置決めするものでもよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、ソフトカバー11の上下方向の長さは、サイドフレームSFに取り付ける、折り畳み状態のクッション2の車両の上下方向の長さに概ね対応する長さとしている。しかしながら、車両の標準的な使用中等にクッション2の折り畳み状態を維持できるのであれば、折り畳み状態のクッション2の車両の上下方向の長さよりも短くてもよい。
【0054】
また、上述の実施形態では、クッション2を車両の前後方向に蛇腹状及びロール状に折り畳んだものを示しているが、
図5に示したもののように車両の前後方向に蛇腹状に折り畳んだものでもよい。また、
図7に示したもののように車両の幅方向に蛇腹状に折り畳んだものでもよい。また、ロール状に折り畳んだものでもよい。
【0055】
また、本発明は、シートの向きが車両進行方向に固定されず、車両進行方向とは逆向きに180°度回転させるなど、シートの向きに関して自由度が高まる自動運転の車両にも適用できる。
【0056】
また、本発明のクッション2は、適数枚の基布パネルを縫製などによって接合したものの限らず、いわゆる「ワンピースウィービング(one-piece weaving)」技術を用いて形成したものでもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 エアバッグモジュール
2 クッション
2a フレーム側の側面
2b 車両前端部
2c フレームと反対側の側面
2d 車両後端部
2f 折り畳み部
3 インフレータ
10 サイドエアバッグ装置
11 ソフトカバー
11a 第1側部
11b 前端部
11c 第2側部
11d 後端部
11e 係止部
11f 挿入孔
12 縫製部
13 空間
S シート
SF サイドフレーム