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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】ガラクトマンナン分解物
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20240122BHJP
   A61K 31/736 20060101ALI20240122BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240122BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240122BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20240122BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240122BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240122BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240122BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20240122BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20240122BHJP
   C12P 19/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C08B37/00
A61K31/736
A23L5/00 N
A23L2/52
A23L33/125
A61K8/73
A61Q19/00
A23L2/00 U
A21D2/18
A23C9/13
A61P1/14
C12P19/04 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022504341
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2021007633
(87)【国際公開番号】W WO2021177208
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020035288
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】冨永 悦子
(72)【発明者】
【氏名】清水 一雄
(72)【発明者】
【氏名】松宮 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】島村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】余川 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】米村 博貴
(72)【発明者】
【氏名】中原 陽子
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/122803(WO,A1)
【文献】特開2008-111052(JP,A)
【文献】特開2010-126457(JP,A)
【文献】特開平06-225734(JP,A)
【文献】特開平10-036403(JP,A)
【文献】特開平02-248401(JP,A)
【文献】国際公開第2000/027219(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
A61K
A61P
A61Q
A23L
A21D
A23C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量の分布が以下の要件を満たす、ガラクトマンナン分解物。
分子量12,000以上が、1~32%
分子量300~3,000が、25~60%
高速液体クロマトグラフィーの分子量パターンにおけるピーク強度の最大値が分子量4,000~14,000の範囲内に存在する
【請求項2】
前記分子量の分布における分子量300未満の成分量が15%以下である、請求項1に記載のガラクトマンナン分解物。
【請求項3】
粘度が10mPa・s以下である、請求項1又は2に記載のガラクトマンナン分解物。
【請求項4】
高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)で測定した場合の食物繊維含量が50%以上である、請求項1~3いずれかに記載のガラクトマンナン分解物。
【請求項5】
請求項1~4いずれかに記載のガラクトマンナン分解物を含む、飲食品。
【請求項6】
パン又は乳化型の飲食品である、請求項5に記載の飲食品。
【請求項7】
請求項1~4いずれかに記載のガラクトマンナン分解物を含む、化粧料。
【請求項8】
請求項1~4いずれかに記載のガラクトマンナン分解物を用いて化粧料又は飲食品の泡質を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラクトマンナン分解物及びこれを含む飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラクトマンナンは、マンノースから成る主鎖にα-ガラクトシル基が結合した櫛状の分岐構造を有する物質であって、飲食品、食品添加物、飼料、飼料添加物、医薬品、工業用資材等の素材として、従来からよく利用されている。また、加水分解処理により低分子化されたガラクトマンナン(即ちガラクトマンナン分解物)は、高分子状態のガラクトマンナンにはない種々の生理作用を有するため、近年特に注目を浴びている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
特許文献1には、ガラクトマンナン分解物を有効成分とする腸内環境改善剤に関する技術が開示されている。特許文献2には、ガラクトマンナン分解物を粉末飲料向け腸内有用菌増殖用組成物の製造に用いる技術が開示されている。特許文献3には、ガラクトマンナン分解物を有効成分とする鉄吸収促進剤に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3008138号公報
【文献】特許第3441756号公報
【文献】特開平6-247860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3のガラクトマンナン分解物は、人体に有用な生理作用を示すものの、添加する飲食品によっては、その物性や食感を大きく変えてしまう場合や、安定性が悪くなってしまう場合があった。例えば、パン生地に使用した場合には、焼成時の膨らみが悪くなり製パン性が低下し、焼成後においても食感が低下する場合があった。また、流動食やヨーグルト飲料などの乳化型の飲食品に使用した場合には、保存中に乳化破壊を引き起こし、分離や沈殿が生じる場合があった。従って、これらの飲食品に適用するためには、更なる改善が求められる。
【0006】
本発明は、飲食品の味への影響が少なく、パン生地に使用した場合において製パン性に優れ且つ食感を大きく変えることがなく、乳化型の飲食品に使用した場合における安定性に優れるガラクトマンナン分解物を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記[1]~[2]に関する。
[1]分子量の分布が以下の要件を満たす、ガラクトマンナン分解物。
分子量12,000以上が、1~32%
分子量300~3,000が、25~60%
高速液体クロマトグラフィーの分子量パターンにおけるピーク強度の最大値が分子量4,000~14,000の範囲内に存在する
[2][1]記載のガラクトマンナン分解物を含む、飲食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飲食品の味への影響が少なく、パン生地に使用した場合において製パン性に優れ且つ食感を大きく変えることがなく、乳化型の飲食品に使用した場合における安定性に優れるガラクトマンナン分解物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】高速液体クロマトグラフィーにおける検量線を示した図
図2】実施例4及び比較例1のガラクトマンナン分解物の分子量パターンを示した図
図3】コントロール群及び試験群の糞中乳酸含量を示した図
図4】コントロール群及び試験群の糞中酢酸含量を示した図
図5】コントロール群及び試験群の糞中プロピオン酸含量を示した図
図6】コントロール群及び試験群の糞中酪酸含量を示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らが上記課題について検討したところ、特定の分子量の分布を有するガラクトマンナン分解物を用いることで、上記課題を解決できることを新たに見出した。
【0011】
本発明のガラクトマンナン分解物は以下の要件を満たす。
分子量12,000以上が、1~32%
分子量300~3,000が、25~60%
高速液体クロマトグラフィーの分子量パターンにおけるピーク強度の最大値が分子量4,000~14,000の範囲内に存在する
【0012】
なお、本明細書において、ガラクトマンナン分解物の分子量は次の方法で分析する。高速液体クロマトグラフ法(カラム;TSKgel SuperAW (東ソー))、およびRI(示差屈折率計)検出器)を用いて、分子量分布を測定する方法を用いることにより求める。詳細は後述する実施例に示す。また、本明細書において、ガラクトマンナン分解物の成分量は、上記分子量分布におけるピーク面積全体を100%とした場合の%である。
【0013】
ガラクトマンナンは多糖類の一群で、マンノースからなる直線状主鎖(β-(1-4)-D-マンノピラノース)にガラクトース(α-D-ガラクトピラノース)がα-(1-6)-結合したものをいう。ヒトの持つ消化酵素では消化されず、いわゆる食物繊維と呼称されるもののひとつである。本発明のガラクトマンナン分解物はこのガラクトマンナンを低分子化したものであるが、特にその起源を限定するものではなく、ガラクトマンナンを主成分とするグァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム、フェヌグリークガム、セスバニアガム等の天然粘質物が例示できる。中でもグァーガム、ローカストビーンガムが好適に利用でき、さらにグァーガムがより好適である。
【0014】
本発明のガラクトマンナン分解物における分子量12,000以上の成分量は、生理作用の観点から、1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上であり、また、パン生地に使用した場合における製パン性及び食感、並びに乳化型の飲食品に使用した場合における安定性の観点から、32%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは28%以下、さらに好ましくは26%以下であり、これらいずれの組み合せの範囲としてもよい。
【0015】
本発明のガラクトマンナン分解物における分子量300~3,000の成分量は、生理作用の観点から、25%以上、好ましくは27%以上であり、また、飲食品の味へ影響を少なくする観点から、60%以下であり、好ましくは50%以下であり、これらいずれの組み合せの範囲としてもよい。
【0016】
本発明のガラクトマンナン分解物における分子量12,000以上の成分及び分子量300~3,000の成分の合計量としては、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上であり、上限値としては、例えば、80%以下、70%以下とすることができ、これらいずれの組み合せの範囲としてもよい。
【0017】
本発明のガラクトマンナン分解物における分子量300未満の成分量は、飲食品の味へ影響を少なくする観点から、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。下限値としては、1%以上、3%以上、5%以上などとすることができ、これらいずれの組み合せの範囲としてもよい。また、分子量3,000超12,000未満の成分量は、20~50%とすることができる。
【0018】
本発明のガラクトマンナン分解物は、高速液体クロマトグラフィーの分子量パターンにおけるピーク強度の最大値が、パン生地に使用した場合における製パン性及び食感、並びに乳化型の飲食品に使用した場合における安定性の観点から、分子量4,000~14,000の範囲内に存在するものであり、分子量5,000~10,000の範囲内に存在するものが好ましい。
【0019】
本ガラクトマンナン分解物を飲食品に添加した場合、粘度の発現はなるべく低い方が望ましい。従って、本ガラクトマンナン分解物の粘度は、好ましくは10mPa・s以下、より好ましくは9mPa・s以下である。下限値は特に限定されないが、例えば、6mPa・s以上などとすることができ、これらいずれの組み合せの範囲としてもよい。本明細書において、ガラクトマンナン分解物の粘度は下記の条件で測定する。
測定機器:B型粘度計
ローターNo.: BLアダプタ
回転数:30rpm
測定時間:60秒
溶液量:トールビーカー200ml中200ml
温度:20℃
試料:15%水溶液
【0020】
本発明のガラクトマンナン分解物は食物繊維としての機能が期待されるものである。食物繊維含量は、プロスキー法(酵素-重量法)、高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)、プロスキー変法、Southgate法及びEnglyst法といった方法で測定できる。中でも高速液体クロマトグラフ法は、低分子水溶性食物繊維まで分析できるため、本発明のガラクトマンナン分解物の分析に好適である。本発明のガラクトマンナン分解物を高速液体クロマトグラフ法で測定したときの食物繊維含量は50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
【0021】
本発明のガラクトマンナン分解物を得るためには、単に糖鎖を分解するだけでは不適切であり、所定の分子量分布に揃える必要がある。その方法は特に制限するものではなく、例えば、水中で酸や高温高圧下での加水分解や酵素を利用して分解した後、クロマト的手法により特定の分子量分布の画分を得る方法や、あるいはオゾンを用いた酸化分解によりある一定以上の分子量を有する画分を分解することで製造することができる。あるいは酵素反応で反応条件を精密にコントロールすることで得る方法、酵素の反応を受けやすいマンノース主鎖に対しガラクトース側鎖が粗なガラクトマンナンを基質に選択する方法等が例示でき、総じて酵素による生成法が分子量を揃える目的で好ましい。
【0022】
酵素分解法に用いられる酵素は、マンノース直鎖を加水分解する酵素であれば市販のものでも天然由来のものでも特に限定されるものではないが、アスペルギルス属菌やリゾープス属菌等に由来するβ-マンナナーゼが好ましい。
【0023】
クロマト分離の方法については特に限定するものではないが、多孔性ゲルを担体として分子量の違いによって分別する方法が有望である。このとき、単筒式のカラムクロマトで分画してもよいが、産業的には連続製造ができる擬似移動床クロマトの利用が望ましい。
【0024】
本発明のガラクトマンナン分解物は、取り扱い、流通の面から粉末化しておくことが望ましい。先の方法で加水分解した後、そのまま乾燥機により乾燥・粉末化することができるが、より品質を高めるため、加水分解後に、ろ過、活性炭や吸着剤処理、イオン交換樹脂処理、殺菌処理等を施してから乾燥粉末化してもよい。粉末化に際してはデキストリンや糖類、他の食物繊維、例えばタマリンドシードガムやアラビアガム、カラヤガム、ペクチン、セルロース、グルコマンナン、大豆多糖類、カラギナン、寒天、アルギン酸、キサンタンガム、ジェランガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、カルボキシメチルセルロース、カチオン化グァーガムなどを配合してもよい。一方で利用目的に応じては溶液状態のほうが好ましい場合もあるため、乾燥・粉末化を実施することなく必要に応じて濃縮等の濃度調整の後、実用に供することも可能である。
【0025】
本発明のガラクトマンナン分解物は、より利便性を高めるため、例えば以下のような機能性素材と予め混合・製剤化して用いたり、最終的に添加される飲食品中に共存させたりしてもよい。そのような素材としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンといった乳化剤、アスコルビン酸、トコフェロール、フラボノイド類、ポリフェノール類といった抗酸化剤、香料、着色料、甘味料といったものが例示できる。
【0026】
また、本発明のガラクトマンナン分解物は、腸内細菌叢に資化されることにより発現する効果も期待され、また腸内有用菌を育成して健康の維持増進に役立つことが期待される。そのため、有用菌と一緒に摂取したり予め混合して菌製剤としたりすることも有用である。そのような菌種としては、乳酸菌やビフィズス菌、糖化菌、および酪酸菌などが例示できる。
【0027】
本発明のガラクトマンナン分解物は、パン生地に使用した場合における製パン性及び食感、並びに乳化型の飲食品に使用した場合における安定性に優れることから、パンや、流動食、ヨーグルト飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、ココア飲料、フルーツミルク飲料などの乳化型の飲食品に好適に使用することができるが、これらに限定されず様々な飲食品に配合することができる。例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそしる類、フリーズドライ食品等の即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜系飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類、パン、パスタ、生麺、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品、キャラメル、キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類等の調味料、加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品、冷凍食品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品等の水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品、粉末、錠剤、カプセル、ドリンク形状のサプリメント、高栄養食品、流動食、濃厚流動食、医療食等の栄養食品等がある。加えてウシ、ブタ、家禽といった家畜動物用の飼料、家庭用愛玩動物の餌類への適用も可能である。各種飲食物への添加方法は、特に限定されるものではなく、あらかじめ原材料に添加したり、その製造工程中で添加したり、調理中に添加したり、喫食時に添加するなどして利用できる。また、本発明のガラクトマンナン分解物は、各種飲食物へ添加することなく、そのまま粉末あるいは液体状態で摂取することもできる。
【0028】
本発明のガラクトマンナン分解物をパンに添加する態様としては、パン生地中のガラクトマンナン分解物の含有量が1~20質量%とする態様が好ましく例示される。
【0029】
本発明のガラクトマンナン分解物を乳化型の飲食品に添加する態様としては、乳化型の飲食品中のガラクトマンナン分解物の含有量が1~20質量%とする態様が好ましく例示される。
【0030】
また、本発明のガラクトマンナン分解物は、飲食品に用いる場合の上記課題を解決できる他、化粧料においても好適に使用することができる。化粧料にガラクトマンナン分解物を添加することで、保湿効果や泡持ち等の効果があることが知られている。しかしながら、ガラクトマンナン分解物を添加すると化粧料の粘度も上がるため、べたつきや、肌に馴染まないなど使用感に問題がある場合や、ポンプ式容器においてはガラクトマンナン分解物の皮膜性により目詰まりをおこす場合があった。例えば、化粧水に従来品のガラクトマンナン分解物を添加することで保湿効果が得られるが、一方でガラクトマンナン分解物の添加に起因する増粘により、べたつきが生じてしまう場合があった。また、W/O型の乳化化粧料では、従来品のガラクトマンナン分解物を添加することで油によるべたつきや肌馴染みが改善されるが、一方でガラクトマンナン分解物の添加に起因する増粘により、べたつきが生じてしまう場合があった。ところが、本発明のガラクトマンナン分解物を化粧料に添加した場合、意外にも、保湿効果や泡持ち等の効果を有しつつも、増粘が少なくさっぱりとした使用感の化粧料や、ポンプ式容器での目詰まりがおこり難い化粧料を調製できることを新たに見出した。かかるメカニズムは不明であるが、一定の分子量であるガラクトマンナン分解物のネットワーク構造によって、物質の粘度を上げることなく、保湿効果や泡の膜強度を上げるためと推定される。従って、本発明は、本発明のガラクトマンナン分解物を含む、化粧料についても提供するものである。なお、特開平4-346908においては、1%水溶液としたときに25℃で3~20cPの粘度を有するグァーガム部分分解物を化粧料に用いることが開示されているが、本発明のガラクトマンナン分解物の1%水溶液を調製した場合の、25℃における粘度は、好ましくは0.1~2mPa・s、より好ましくは0.1~1.5mPa・sであり、異なるものである。
【0031】
化粧料としては、例えば、乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、洗顔料などの基礎化粧料、口紅、ファンデーション、リキッドファンデーション、メイクアッププレスパウダーなどのメイクアップ化粧料、ヘアーシャンプー、ヘアーリンス、ヘアートリートメント、コンディショナー、染毛料、整髪料などの頭髪化粧料、洗顔料、ボディーシャンプー、石けんなどの洗浄用化粧料、さらには浴剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明のガラクトマンナン分解物を化粧料に添加する態様としては、化粧料中のガラクトマンナン分解物の含有量が0.5~20質量%とする態様が好ましく例示される。
【0033】
上記のとおり、本発明のガラクトマンナン分解物を用いると化粧料の泡持ちがよくなるが、更にきめ細やかな泡を得ることができることについても新たに見出した。また、これら泡質改善の効果については、化粧料のみならず、飲食品に添加した場合においても同様であることを新たに見出した。即ち、泡持ちを期待して飲食品にガラクトマンナン分解物を添加すると、増粘により喉越しや外観が悪くなるなどの問題があったが、本発明のガラクトマンナン分解物を添加することで、喉越しや外観に大きな影響を与えることなく、泡持ちがよく且つきめ細やかな泡を得ることができる。泡質の改善が求められる飲食品としては、例えば、ビール、発泡酒、新ジャンル、ノンアルコールビールテイスト飲料などのビールテイスト飲料、カフェラテ・抹茶ラテ・ほうじ茶ラテなどのラテ系飲料、ホイップクリーム、メレンゲ、スポンジケーキ、スフレ、ムース、シェイク等の発泡性の飲食品が挙げられる。従って、本発明は、本発明のガラクトマンナン分解物を用いて化粧料又は飲食品の泡質を改善する方法についても提供するものである。
【実施例
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例においてはグァーガム分解物又はローカストビーンガム分解物が得られたが、これらをまとめてガラクトマンナン分解物と称する場合がある。
【0035】
ガラクトマンナン分解物の調製
実施例1
水900gに0.1N塩酸を加えてpH3に調整し、これにアスペルギルス属細菌由来のβ-マンナナーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)0.15gとグァーガム粉末(太陽化学株式会社製)100gを添加、混合し、50~55℃で24時間に渡り、グァーガムの酵素分解を行った。反応後、90℃で15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去した後、このグァーガム分解物をサイズ排除クロマトグラフィー〔東ソー(株)製カラム:TSKgel SuperOligoPW-N及びTSKgel SuperMultiporePW-H〕により低分子画分(分子量約500以下)と高分子画分(分子量約47,000以上)を除去した。サイズ排除クロマトグラフィーにおいては、分子量マーカーとしてプルラン(分子量;47,300)およびマルトトリオース(分子量;504)を用いた。この溶液を減圧濃縮(Yamato製エバポレーター)した後、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、グァーガム分解物を粉末として54g得た。得られたグァーガム分解物について以下の方法により分子量パターンを確認したところ、表1に示す分布であった。また、得られたグァーガム分解物の15%水溶液を調製し、20℃における粘度をB型粘度計(東機産業社製)で測定した。また、以下の方法により食物繊維含量を確認した。結果を表1に示す。なお、得られたグァーガム分解物の1%水溶液を調製し、25℃における粘度をB型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、1.2mPa・sであった。
【0036】
<ガラクトマンナン分解物の分子量パターンの確認>
各実施例、比較例のガラクトマンナン分解物の分子量は、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。サンプル溶液としてガラクトマンナン分解物の水溶液(固形分濃度:1.0%(W/V))を調製し、サンプル溶液のフィルトレーションを行った後、以下の条件で高速液体クロマトグラフィーにて定量分析した。
HPLC(SHIMADZU)分析(HPLC条件;カラム:TSKgel SuperAW 4000(東ソー) 6mm*150mm + TSKgel SuperAW 2500(東ソー) 6mm*150mm 、検出器:RI(示差屈折率計)、溶離液 :水(100%)、流速:0.3mL/min、カラム温:80℃、分子量マーカー(プルラン(分子量;5,900、11,800、22,800、47,300、112,000、212,000、404,000、788,000)およびマンノース、マルトトリオース、マルトヘプタオース)を用いて、図1に示すように保持時間と分子量との関係を示す検量線を予め求めておいた。
【0037】
<食物繊維含量分析用試料溶液の調製>
被験試料として固形分0.1gの実施例1のグァーガム分解物を試験管にとり、0.08M リン酸緩衝液5mlを添加しpHを6.0に調整した。これに、食物繊維測定キット付属の熱安定α-アミラーゼ(バチルス・リケニホルミス由来耐熱性α-アミラーゼ、シグマ社製)溶液0.01mlを加え、アルミ箔で覆い、沸騰水浴中で5分毎に攪拌しつつ30分間反応させ、冷却した。得られた反応液に、0.275M 水酸化ナトリウム溶液を添加しpHを7.5に調整した後、キット付属のプロテアーゼ(バチルス・リケニホルミス由来、シグマ社製)溶液0.01mlを加え、アルミ箔で覆い、60℃の水浴中で振盪しつつ30分間反応させ、冷却した。得られたプロテアーゼ処理液に0.325M塩酸を添加し、pHを4.3に調整した後、キット付属のアミログルコシダーゼ(アスペルギルス・ニガー由来、シグマ社製)溶液0.01mlを加え、アルミ箔で覆い、60℃の水浴中で振盪しつつ30分間反応させ、冷却した。次いで、得られた反応液約7mlを、イオン交換樹脂(オルガノ株式会社販売のアンバーライトIRA-67(OH型)とアンバーライト200CT(H型)を1:1で混合)にSV1.0で通液することにより脱塩し、さらに約3倍量の脱イオン水にて溶出し、溶出液の総量を約28mlとした。得られた溶出液をエバポレーターにて濃縮し、孔径0.45μmのメンブランフィルターにて濾過した後、メスフラスコで25mlに定容したものを分析用試料溶液とした。
【0038】
<高速液体クロマトグラフィー条件>
上記で得られた食物繊維含量分析用試料溶液は、下記の条件による高速液体クロマトグラフィーに供した。
カラム: TGKgel G2500PWXL(内径7.8mm × 長さ300mm,株式会社東ソー製)2本を直列に連結したもの
溶離液: 脱イオン水
試料糖濃度: 0.8質量%
カラム温度: 80℃
流 速: 0.5ml/分
検 出: 示差屈折計
注入量: 20μl
分析時間: 50分
【0039】
<被験試料の食物繊維含量の算出>
上記で得られたクロマトグラムにおいて、酵素処理によっても分解されずに残存する未消化画分を食物繊維とした。この食物繊維と分解されて生成したグルコースのピーク面積をそれぞれ求め、別途、常法のグルコース・オキシダーゼ法にて定量した分析用試料溶液中のグルコース量を用いて、下記の式1により食物繊維量を求めた。さらに、下記の式2により被験試料の食物繊維含量を求めた。
式1.
食物繊維量(mg)=食物繊維のピーク面積/グルコースのピーク面積×分析用試料溶液中のグルコース質量※(mg)
※:(分析用試料溶液中のグルコース濃度(mg/mL)×25mL)
式2.
食物繊維含量(質量%)=被験試料食物繊維量(mg)/被験試料固形分質量(mg)×100
【0040】
実施例2
水20kgに0.1N塩酸を加えてpH4に調整し、これにアスペルギルス属細菌由来のβ-マンナナーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)3gとローカストビーンガム粉末(太陽化学株式会社製)2kgを添加、混合し、75℃で24時間に渡り、ローカストビーンガムの酵素分解を行った。反応後、90℃で30分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去して得られた透明な溶液を減圧濃縮(Yamato製エバポレーター)した後(固形分量:20質量%)、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、ローカストビーンガム分解物を粉末として1.7kg得た。得られたローカストビーンガム分解物1kgを水20kgに溶解させた後、オゾンナノバブル水〔Foamest O〕を用いて供給オゾン量200mg/h、オゾン水発生量5L/minにて15分間処理した。次に得られた処理溶液を、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、ローカストビーンガム分解物を粉末として940g得た。実施例1に準じて分子量パターン、粘度、及び食物繊維含量を確認した。結果を表1に示す。
【0041】
実施例3
水180kgに0.1N塩酸を加えてpH4に調整し、これにアスペルギルス属細菌由来のβ-マンナナーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)30gとグァーガム粉末(太陽化学株式会社製)20kgを添加、混合し、75℃で24時間に渡り、グァーガムの酵素分解を行った。反応後、90℃で30分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去した後、このグァーガム分解物をサイズ排除クロマトグラフィー〔東ソー(株)製カラム:TSKgel SuperOligoPW及びTSKgel SuperMultiporePW-M〕により低分子画分(分子量約200以下)と高分子画分(分子量約20,000以上)を除去した。サイズ排除クロマトグラフィーにおいては、分子量マーカーとしてマンノース(分子量;180)およびプルラン(分子量;22,800)を用いた。この溶液を減圧濃縮(Yamato製エバポレーター)した後、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、グァーガム分解物を粉末として10kg得た。実施例1に準じて分子量パターン、粘度、及び食物繊維含量を確認した。結果を表1に示す。
【0042】
実施例4
水900gに0.1N塩酸を加えてpH4に調整し、これにアスペルギルス属細菌由来のβ-マンナナーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)0.15gとグァーガム粉末(太陽化学株式会社製)100gを添加、混合し、75℃で24時間に渡り、グァーガムの酵素分解を行った。反応後、90℃で15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去した後、このグァーガム分解物をサイズ排除クロマトグラフィー〔東ソー(株)製カラム:TSKgel SuperOligoPW及びTSKgel SuperMultiporePW-M〕により低分子画分(分子量約200以下)と高分子画分(分子量約20,000以上)を除去した。サイズ排除クロマトグラフィーにおいては、分子量マーカーとしてマンノース(分子量;180)およびプルラン(分子量;22,800)を用いた。この溶液を減圧濃縮(Yamato製エバポレーター)した後、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、グァーガム分解物を粉末として48g得た。実施例1に準じて分子量パターン、粘度、及び食物繊維含量を確認した。結果を表1及び図2に示す。
【0043】
実施例5
実施例3で分画したグァーガム分解物1kgを水20kgに溶解させた後、オゾンナノバブル水〔Foamest O〕を用いて供給オゾン量50mg/h、オゾン水発生量3L/minにて120分間処理した。次に得られた処理溶液を、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、グァーガム分解物を粉末として900g得た。実施例1に準じて分子量パターン、粘度、及び食物繊維含量を確認した。結果を表1に示す。
【0044】
比較例1
水900gに0.1N塩酸を加えてpH4に調整し、これにアスペルギルス属細菌由来のβ-マンナナーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)0.15gとグァーガム粉末(太陽化学株式会社製)100gを添加、混合し、75℃で24時間に渡り、グァーガムの酵素分解を行った。反応後、90℃で15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去して得られた透明な溶液を減圧濃縮(Yamato製エバポレーター)した後、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、グァーガム分解物を粉末として68g得た。実施例1に準じて分子量パターン、粘度、及び食物繊維含量を確認した。結果を表1及び図2に示す。
【0045】
比較例2
水900gに0.1N塩酸を加えてpH3に調整し、これにアスペルギルス属細菌由来のβ-マンナナーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)0.15gとグァーガム粉末(太陽化学株式会社製)100gを添加、混合し、50~55℃で24時間に渡り、グァーガムの酵素分解を行った。反応後、90℃で15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去した後、このグァーガム分解物をサイズ排除クロマトグラフィー〔東ソー(株)製カラム:TSKgel SuperOligoPW〕により低分子画分(分子量約200以下)を除去した。サイズ排除クロマトグラフィーにおいては、分子量マーカーとしてマンノース(分子量;180)を用いた。この溶液を減圧濃縮(Yamato製エバポレーター)した後、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、グァーガム分解物を粉末として54g得た。実施例1に準じて分子量パターン、粘度、及び食物繊維含量を確認した。結果を表1に示す。
【0046】
比較例3
水900gに0.1N塩酸を加えてpH4に調整し、これにアスペルギルス属細菌由来のβ-マンナナーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)0.15gとグァーガム粉末(太陽化学株式会社製)100gを添加、混合し、50~55℃で24時間に渡り、グァーガムの酵素分解を行った。反応後、90℃で15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去した後、このグァーガム分解物をサイズ排除クロマトグラフィー〔東ソー(株)製カラム:TSKgel SuperOligoPW-N及びTSKgel SuperMultiporePW-HおよびPW-M、PW-N〕により高分子画分(分子量約11,000以上)を除去した。サイズ排除クロマトグラフィーにおいては、分子量マーカーとしてプルラン(分子量;11,800)を用いた。この溶液を減圧濃縮(Yamato製エバポレーター)した後(固形分量:19質量%)、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、グァーガム分解物を粉末として58g得た。実施例1に準じて分子量パターン、粘度、及び食物繊維含量を確認した。結果を表1に示す。
【0047】
レモン飲料:ガラクトマンナン分解物添加による甘味の影響
実施例1~5および比較例1~3のガラクトマンナン分解物を3.0質量%含有するレモン飲料(pH3、クエン酸0.08質量%、レモンフレーバー(長谷川香料(株)製)0.1質量%、クエン酸三ナトリウムでpH調整)を調製した。
【0048】
<甘味の評価>
実施例1~5および比較例1~3のガラクトマンナン分解物を3.0質量%添加したレモン飲料(pH3、クエン酸0.08質量%、レモンフレーバー(長谷川香料(株)製)0.1質量%、クエン酸三ナトリウムでpH調整)の甘味に関しての官能評価を、7名の訓練されたパネラーにより下記の基準で5段階評価し、合計点の平均点を算出した。結果を表1に示す。ガラクトマンナン分解物よる甘味は、甘ったるさ及び後味の不快味(後味に残る甘味等)を総合的に官能評価し、無添加品を基準5として評価を行った。
(評価基準)
1:無添加品と比較し、強い甘味を感じる。
2:無添加品と比較し、甘味を感じる。
3:無添加品と比較し、少し甘味を感じる。
4:無添加品と比較し、僅かに甘味を感じる。
5:甘味は無く、無添加品と同様の呈味である。
【0049】
中種法による食パンの作製
強力粉70質量部、ドライイースト1.2質量部、イーストフード0.1質量部、水42質量部をミキサーボールに投入し、低速で4分間、中速で2分間混合し中種生地を得た。該生地を27℃で4時間発酵させた後、強力粉30質量部、砂糖8質量部、生クリーム10質量部、食塩2質量部、モルトシロップ0.3質量部、水23質量部を添加した後、低速で4分間、高速で3分間混合した。その後、バター4質量部、酵素入りショートニング2質量部を投入した。実施例1~5および比較例1、2のガラクトマンナン分解物を6.7質量部加えた後にさらに低速で1分間、高速で3分間混合し本捏生地を得た。該生地を27℃で30分間発酵させた後、1個当たり215gになるよう量りとって分割し、丸めを行い、さらに20分間生地を寝かせた。得られたパン用生地の製パン性を以下の基準で評価した。次に、該生地を成型した後、1斤用ケースに入れ、38℃、湿度85%の発酵槽で100分間最終発酵させた後、蓋をかぶせ上火190℃、下火210℃の釜で20分間焼成し、食パンを得た。得られた食パンの食感について、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
【0050】
<生地の製パン性評価>
上記で得られたパン用生地の状態を観察し、製パン性を評価した。その際の評価基準は以下の通りであり、ガラクトマンナン分解物が無添加の生地を評価5とした。
(評価基準)
5:べとつきがなく、張りと伸びがあり、生地の状態として非常に良く、生地の製パン性が非常に良好。
4:ややべとつきがあるが、張りと伸びがある状態で生地の状態として良く、生地の製パン性が良好。
3:べとつきが有り、張りがやや不足しているが伸びがあり、生地の状態として問題はなく、生地の製パン性に問題はない。
2:べとつきがやや強く、張りがやや乏しく腰がないために生地の状態としてやや悪く、生地の製パン性がやや悪い。
1:べとつきが強く、張り及び腰がなく丸めや成型も困難であるために生地の状態として悪く、生地の製パン性が悪い。
【0051】
<食感の評価>
上記で得られた食パンを訓練されたパネラー10名に食べてもらい官能評価を行い、それを平均して評価結果とした。その際の評価基準は以下の通りであり、ガラクトマンナン分解物が無添加の食パン(従来の食パン)の評価は4.8であった。
(評価基準)
5:柔らかさが従来の食パンと同等以上であり、ざらつきがなく、非常に好ましい。
4:柔らかさが従来の食パンと同等又は同等以上であり、ざらつきがほとんどなく、更に好ましい。
3:柔らかさが問題のないレベルであり、ざらつきがほとんどなく、好ましい。
2:柔らかさ、ざらつきのうち少なくとも1つが従来の食パンよりやや劣り、満足のいくレベルではない。
1:柔らかさ、ざらつきのうち少なくとも1つが従来の食パンより明らかに劣り、問題のあるレベル。
【0052】
<流動食中での安定性評価>
市販の濃厚流動食(笑顔倶楽部、株式会社フードケア)へ実施例1~5および比較例1、2のガラクトマンナン分解物を5g/100mLの濃度になるように添加し、攪拌後に瓶詰めし、レトルト殺菌(121℃、10分)行った。冷却後に37℃保管し、ガラクトマンナン分解物無添加の濃厚流動食と比較して1週間後の安定性を以下の基準により評価した。評価方法は、リングの浮き出は毎日確認し、瓶底の沈殿の有無は2日間に1回目視で確認を行った。結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:非常に均一
○:均一
×:分離
【0053】
<ヨーグルト飲料中での安定性評価>
市販のヨーグルト飲料(ブルガリア飲むヨーグルト、株式会社明治)へ実施例1~5および比較例1、2のガラクトマンナン分解物を5g/100mLの濃度になるように添加し、攪拌後に瓶詰めし、レトルト殺菌(121℃、10分)行った。冷却後に4℃保管し、ガラクトマンナン分解物無添加の濃厚流動食と比較して1週間後の安定性を以下の基準により評価した。評価方法は、分離や離水は毎日確認し、瓶底の沈殿の有無は2日間に1回目視で確認を行った。結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:非常に均一
○:均一
×:分離
【0054】
【表1】
【0055】
表1より、実施例1~5のガラクトマンナン分解物は、比較例3のものよりも甘味が抑えられており、飲食品の味への影響についても少ないものであった。なお、比較例3は甘味が強く、食品への応用が不適であったため、甘味の評価以外の評価試験は行わなかった。実施例1~5のガラクトマンナン分解物を添加したパン生地は、比較例1、2のガラクトマンナン分解物を添加したものに比べて製パン性に優れ、食パンとした際の食感にも優れるものであった。また、実施例1~5のガラクトマンナン分解物は、流動食やヨーグルト飲料に添加しても、保存期間中分離することなく均一で安定であった。
【0056】
<生理作用(動物試験)>
実験方法:
試験動物と食餌
試験に用いたラットは、4週齢のSprague-Dawley(SD)系雄ラット30匹で日本エスエルシーから購入した。ラットは、ステンレスメッシュケージで、室温25±2℃、湿度40~60%、明暗サイクル12時間の条件下で飼育した。1週間の予備飼育後、ラットを体重による有意差が初めにできないように5つのグループに分けた。試験期間中、1週間に1回体重と摂食量を測定した。試験飼料投与前および投与後1週目、4週目の糞便を採取し糞中有機酸含量を測定した。コントロール群は、8%セルロースを含む低食物繊維食を与え、試験群はそこに各5%のグァーガム分解物(実施例4、比較例1、2)又は難消化デキストリン(松谷化学株式会社製、商品名パインファイバー)を添加した食餌を与えた。飼料と水は自由に摂取できるように与えられ、毎日体重と摂食量を測定した。試験動物の取り扱いについては、倫理委員会のガイドラインに従って行った。
【0057】
糞中有機酸含量の測定
糞中有機酸含量は、高速液体クロマトグラフィーにて測定した。すなわち、糞便0.8gに0.2w/v%レブリン酸溶液(内部標準液)1mlと蒸留水9mlを加え、2分間超音波処理を行った。懸濁液を100℃、5分間加熱後、遠心分離(3,000rpm、15分)し、上澄み液にエタノールを加え再び遠心分離(3,000rpm、15分)した。上澄み液は減圧濃縮し、10%メタノールを加え溶解した後、遠心分離(15,000rpm、5分)を行い、上澄みを0.45μmのメンブランフィルターで濾過をした。この濾液を高速液体クロマトグラフィーを用いて電気伝導度検出法により測定した。分析は、sim-pack SCR-102H(島津製作所,8.0mmI.D.×300mm)を2本直列にしたカラムを用いて分離し(移動相: 5mM p-トルエンスルホン酸溶液、流速:0.8ml/min、カラム温度: 45℃)、電気伝導度検出器(試液:5mM p-トルエンスルホン酸溶液および100μM EDTAを含む20mM Bis-Tris水溶液、流速: 0.8ml/min)で検出した。標準物質は乳酸および酢酸、プロピオン酸、酪酸を用いた。
【0058】
実験結果
試験期間中の体重変化ならびに飼料摂食量は、コントロール群および試験群の間に差はなかった。試験期間中の糞中有機酸含量を図3~6に示す。試験期間中、試験群は、コントロール群と比較して糞中の有機酸含量が増加していた。即ち、腸内環境がより酸性側に維持されていたということであり、試験群が腸内環境を整える生理作用を有することが分かる。特に実施例4のグァーガム分解物を摂取した群では乳酸、酢酸の生成量が比較例1、2で示したグァーガム分解物や難消化性デキストリンを摂取した群よりも増加していた。糞中のプロピオン酸および酪酸含量では、実施例4および比較例1、2のグァーガム分解物を摂取した群で同程度であったが、難消化性デキストリンを摂取した群よりも増加を確認した。
【0059】
試験例1(化粧水)
実施例1~5、及び比較例1~3で調製したガラクトマンナン分解物を用いて表2に記載した組成で化粧水1~8を調製した。また、ガラクトマンナン分解物を用いない以外は同様にして化粧水9を調製した。官能評価パネラーは10名により実施し、アンケートを実施した。パネラーは回答用紙に肌感触の官能評価判定を記載し6段階評価として、効果が最も弱く感じられた場合は数値を1とし、最も強い効果を感じた場合は数値を6とした。10名回答された数値を平均化した値を実施例及び比較例の添加効果とし、数値が4~6であれば効果があると認められ、4未満であれば効果が認められなかったとものして判定した。官能評価の項目は、「塗布後にさらっとする」、「塗布後にしっとりと潤う」、「塗布後の肌馴染みが良い」の3項目で実施した。結果を表3に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
表3の結果から明らかなように、化粧品に本発明品を使用した場合、塗布後の肌感触としてさらっとしており、かつ肌が潤おう感じも得られ、肌馴染みも良いことが分かる。
【0063】
試験例2(ボディソープ)
実施例4、5、及び比較例1、3で調製したガラクトマンナン分解物を用いて表4に記載した組成でボディソープ1~4を調製した。また、ガラクトマンナン分解物を用いない以外は同様にしてボディソープ5を調製した。調製したボディソープの25℃における粘度をB型粘度計(東機産業社製)で測定した。官能評価パネラーは10名により実施し、「ぬめりがなくさらっとしている」、「泡の細かさ」、「泡もち」についてアンケートを実施した。パネラーは回答用紙に肌感触の官能評価判定を記載し6段階評価として、効果が最も弱く感じられた場合は数値を1とし、最も強い効果を感じた場合は数値を6とした。10名回答された数値を平均化した値を実施例及び比較例の添加効果とし、数値が4~6であれば効果があると認められ、4未満であれば効果が認められなかったとものして判定した。また、調製したボディソープを水で2分の1に希釈し、ポンプフォーマー(ノズル部分を押すことにより、泡を吐出できる容器)に充填、吐出した後に50℃で1ヶ月間保存し、ポンプの詰まりを以下の評価基準に則り評価した。結果を表5に示す。
<評価基準>
×:吐出口が詰まり、吐出できず
△:吐出量が少なく、液状で吐出する
○:保存前と吐出量、泡の状態に変化がない
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
表5の結果から明らかなように、ボディソープに本発明品を使用した場合、ボディソープ自体の粘度が低いにも関わらず、泡のきめが細かく、泡もちがよく、使用感としてぬめりがなくかつ、洗浄後にしっとりとした感触が得られるということが分かる。また、ポンプの詰まりも見られなかった。
【0067】
試験例3(乳化型ファンデーション)
実施例2、4、及び比較例1、3で調製したガラクトマンナン分解物を用いて表6に記載した組成で乳化型ファンデーション1~3を調製した。また、ガラクトマンナン分解物を用いない以外は同様にして乳化型ファンデーション4を調製した。官能評価パネラーは10名により実施し、使用感についてアンケートを実施した。パネラーは回答用紙に肌感触の官能評価判定を記載し6段階評価として、効果が最も弱く感じられた場合は数値を1とし、最も強い効果を感じた場合は数値を6とした。10名回答された数値を平均化した値を実施例及び比較例の添加効果とし、数値が4~6であれば効果があると認められ、4未満であれば効果が認められなかったとものして判定した。官能評価の項目は、「べたつき」、「きしみ」、「馴染み感」の3項目で実施した。結果を表7に示す。
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
表7結果から明らかなように、乳化型ファンデーションに実施例3、4のガラクトマンナン分解物を使用した場合、乳化型ファンデーションのべたつきやきしみがなく、かつ肌への馴染みがよいといった感触が得られるということが分かる。
【0071】
<試験例4>ノンアルコールビール
実施例3及び比較例1で調製したガラクトマンナン分解物、比較例4(難消化性デキストリン、松谷化学工業社製)、比較例5(グァーガム、デュポン社製)を用いて表8に記載した組成でノンアルコールビール1~4を調製した。また、ガラクトマンナン分解物を用いない以外は同様にしてノンアルコールビール5を調製した。各サンプルについて、泡保持性、濁度、粘度及び喉越しに関する評価を行った。
【0072】
<泡保持性の評価>
各ノンアルコールビールを5℃に維持した後、一定の速度で300mlメスシリンダーに100ml注ぎいれ、0分(起泡しきった直後)及び2分経過後に泡の高さを測定した。ここでいう泡の高さとは、液と泡の界面から、泡の上端部までの高さを指す。本測定においては、2分経過後の泡の高さが高いものほど、泡保持性がよいと判断される。結果を表9に示す。
【0073】
<濁度の評価>
濁度の評価は分光光度計を用いて計測した。各ノンアルコールビールを石英セルに入れ、650mmの単色光で吸光度を測定し、その値を濁度とした。結果を表9に示す。
【0074】
<粘度の測定>
粘度の評価はB型粘度計(東機産業社製)を用いて計測した。各ノンアルコールビールを5℃、250rpmで計測した。結果を表9に示す。
【0075】
<喉越し>
官能評価パネラーは10名により実施し、喉越しについてアンケートを実施した。パネラーは回答用紙に飲用時の官能評価判定を記載し6段階評価として、喉越しが悪く感じられた場合は数値を1とし、最も喉越しが良いと感じた場合は数値を6とした。10名回答された数値を平均化した値を実施例及び比較例の添加効果とし、数値が4~6であれば効果があると認められ、4未満であれば効果が認められなかったとものして判定した。結果を表9に示す。
【0076】
【表8】
【0077】
【表9】
【0078】
表9結果から明らかなように、ノンアルコールビールに本発明のガラクトマンナン分解物を使用した場合、濁度、粘度、喉越しへの影響が少なく飲料としての価値を落とさずに泡保持性を向上できたことが分かる。すなわち、2分経過後の泡の高さについては、無添加のノンアルコールビール5に比べ、実施例3のガラクトマンナン分解物を用いたノンアルコールビール1の方が高いが、濁度、粘度、喉越しについては、同程度となっている。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のガラクトマンナン分解物は、様々な飲食品、化粧品などに使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6