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特許7423749フィルタ、喫煙物品、及び、香味吸引物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】フィルタ、喫煙物品、及び、香味吸引物品
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/04 20060101AFI20240122BHJP
   A24D 1/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A24D3/04
A24D1/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022504785
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008714
(87)【国際公開番号】W WO2021176527
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】本溜 哲也
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-196082(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118042(WO,A1)
【文献】特開平01-243979(JP,A)
【文献】特開2016-002064(JP,A)
【文献】特公昭44-003727(JP,B1)
【文献】特開平11-069965(JP,A)
【文献】特開2001-120249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/04
A24D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸口側の第1端面及び前記吸口側とは反対側の第2端面を有し、紙製のシート又は不織布製のシートで形成される第1フィルタ本体と、
前記第1フィルタ本体の前記第2端面の側にあり、前記第2端面に対向する第3端面を有し、紙製のシート又は不織布製のシートで形成される第2フィルタ本体と、
前記第2端面と前記第1端面との間を通気するチャネル部と
を有し、
前記チャネル部の通気抵抗は、前記第1フィルタ本体の通気抵抗に比べて低
前記第1フィルタ本体の紙製のシートは、前記第2フィルタ本体の紙製のシートよりも大きいクリンプ深さにクリンプ処理されている、
フィルタ。
【請求項2】
吸口側の第1端面及び前記吸口側とは反対側の第2端面を有し、紙製のシート又は不織布製のシートで形成される第1フィルタ本体と、
前記第1フィルタ本体の前記第2端面の側にあり、前記第2端面に対向する第3端面を有し、紙製のシート又は不織布製のシートで形成される第2フィルタ本体と、
前記第2端面と前記第1端面との間を通気するチャネル部と
を有し、
前記チャネル部の通気抵抗は、前記第1フィルタ本体の通気抵抗に比べて低く、
前記第1フィルタ本体の通気抵抗は、前記第2フィルタ本体の通気抵抗よりも高い、
フィルタ。
【請求項3】
前記第1フィルタ本体の前記第1端面を見たとき、前記第1フィルタ本体の空隙量は、前記チャネル部の空隙量よりも小さい、請求項1又は請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記第1フィルタ本体の外周を巻く第1巻取紙を有し、
前記チャネル部は、前記第1フィルタ本体の外周面と前記第1巻取紙の内周面との間にある、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記チャネル部は、紙製の管状体又は不織布製の管状体を有する、請求項4に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記チャネル部は、前記第1フィルタ本体の前記第2端面と前記第1端面との間を貫通する筒状である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記チャネル部は、紙製の管状体又は不織布製の管状体を有する、請求項6に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記第1端面は外側に露出している、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記第1フィルタ本体、及び、前記第2フィルタ本体は、それぞれ複数の不織布製のシートが重ねられてフォールディング処理されている、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項10】
前記第1フィルタ本体及び前記第2フィルタ本体の前記シートの通気度は、1000CU(コレスタユニット)~30000CUである、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項11】
前記第1フィルタ本体及び前記第2フィルタ本体の通気抵抗は、0mmHO/mm~12mmHO/mmである、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1に記載のフィルタを有する、喫煙物品。
【請求項13】
請求項1ないし請求項11のいずれか1に記載のフィルタを有する、香味吸引物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルタ、喫煙物品、及び、香味吸引物品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば日本国特表2014-515933号公報には、生分解性基材物質(紙)の表面にコーティングされたペーパフィルタについて開示されている。
【0003】
例えば紙製のシートを例えばクリンプ処理した後、フォールディング処理したフィルタ(ペーパフィルタ)を用いる場合、ユーザは、通常、吸口側端面に多数の孔を視認できる。例えば、紙製のフィルタを用いたシガレットの喫煙後には、タール等の物質がフィルタの吸口側端面に付着しやすい。このため、喫煙後等の使用後であっても、フィルタの吸口側端面の美観性を向上させることが求められる。フィルタには、例えばタール値やニコチン値等の濾過の程度をコントロールすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開平7-166号公報
【文献】日本国特開平7-8254号公報
【文献】日本国特表2014-515933号公報
【発明の概要】
【0005】
この発明は、紙製のシート又は不織布製のシートで形成され、美観性を高め、且つ、適宜の濾過特性を有する、フィルタ、フィルタを含む喫煙物品、及び、フィルタを含む香味吸引物品を提供することを目的とする。
【0006】
一実施形態に係るフィルタは、吸口側の第1端面及び前記吸口側とは反対側の第2端面を有し、紙製のシート又は不織布製のシートで形成される第1フィルタ本体と、前記第1フィルタ本体の前記第2端面の側にあり、前記第2端面に対向する第3端面を有し、紙製のシート又は不織布製のシートで形成される第2フィルタ本体と、前記第2端面と前記第1端面との間を通気するチャネル部とを有する。前記チャネル部の通気抵抗は、前記第1フィルタ本体の通気抵抗に比べて低い。また、前記第1フィルタ本体の紙製のシートは、前記第2フィルタ本体の紙製のシートよりも大きいクリンプ深さにクリンプ処理されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、第1実施形態に係る、フィルタを含む燃焼型香味吸引物品を示す概略的な断面図である。
図1B図1Bは、図1A中の矢印1Bに示す方向からフィルタを見たときの吸口側端面を示す概略図である。
図1C図1Cは、図1B中の符号1Cで示す位置の概略的な拡大図である。
図1D図1Dは、図1A中の矢印1Bに示す方向からフィルタを見たときの吸口側端面の変形例を示す概略図である。
図1E図1Eは、図1D中の符号1Eで示す位置の概略的な拡大図である。
図2A図2Aは、第1実施形態の比較例に係る、フィルタを含む燃焼型香味吸引物品を示す概略的な断面図である。
図2B図2Bは、図2A中の矢印2Bに示す方向からフィルタを見たときの端面を示す概略図である。
図3A図3Aは、第1フィルタ本体及び第2フィルタ本体となる紙製のシートが適宜のクリンプ深さとなるように、クリンプツールを通っている状態を示す概略図である。
図3B図3Bは、第1フィルタ本体及び第2フィルタ本体となる紙製のシートが図3Aに示す例よりも大きい、適宜のクリンプ深さとなるように、クリンプツールを通っている状態を示す概略図である。
図4A図4Aは、第1フィルタ本体及び第2フィルタ本体となる紙製のシートのクリンプ処理後のクリンプ深さと、クリンプ処理し第1フィルタ本体及び第2フィルタ本体となるフィルタ本体の長さ1mmあたりの通気抵抗(mmHO/mm)をとったグラフである。
図4B図4Bは、第1フィルタ本体及び第2フィルタ本体となる紙製のシートのクリンプ処理後の通気度(CU)と、クリンプ処理し第1フィルタ本体及び第2フィルタ本体となるフィルタ本体の1mmあたりの通気抵抗(mmHO/mm)をとったグラフである。
図5図5は、タール値を6mgに設定した、燃焼型香味吸引物品の第1ロットから第3ロットのフィルタ構造、フィルタ本体長、タール値、ニコチン値、一酸化炭素値、吸煙回数を示す概略図である。
図6図6は、タール値を1mgに設定した、燃焼型香味吸引物品の第4ロットから第6ロットのフィルタ構造、フィルタ本体長、タール値、ニコチン値、一酸化炭素値、吸煙回数を示す概略図である。
図7A図7Aは、クリンプ深さが0.6mmのシートで形成した、図2Bに示すフィルタの第1フィルタ本体の吸口側端面を示す写真である。
図7B図7Bは、クリンプ深さが0.3mmのシートで形成した、図2Bに示すフィルタの第1フィルタ本体の吸口側端面を示す写真である。
図7C図7Cは、クリンプ深さが0.1mmのシートで形成した、図2Bに示すフィルタの第1フィルタ本体の吸口側端面を示す写真である。
図8A図8Aは、図5に示す第1ロットの8つのシガレットの喫煙後の吸口側端面を示す写真である。
図8B図8Bは、図5に示す第2ロットの8つのシガレットの喫煙後の吸口側端面を示す写真である。
図8C図8Cは、図5に示す第3ロットの8つのシガレットの喫煙後の吸口側端面を示す写真である。
図9図9は、第1ロットから第3ロットの各8つのシガレットの吸口側端面の白色度を数値化した表である。
図10図10は、図9中の表の第1ロットから第3ロットの各8つのシガレットの吸口側端面の白色度の平均値を示すグラフである。
図11図11は、第1ロットから第3ロットの各シガレットの吸口側端面の喫煙前に対する喫煙後の外観差の、14人の評価者による官能評価の平均点数を示すグラフである。
図12図12は、第1ロットから第3ロットの各シガレットの吸口側端面の喫煙前に対する喫煙後の汚さの、14人の評価者による官能評価の平均点数を示すグラフである。
図13A図13Aは、図6に示す第4ロットの8つのシガレットの喫煙後の吸口側端面を示す写真である。
図13B図13Bは、図6に示す第5ロットの8つのシガレットの喫煙後の吸口側端面を示す写真である。
図13C図13Cは、図6に示す第6ロットの8つのシガレットの喫煙後の吸口側端面を示す写真である。
図14図14は、第4ロットから第6ロットの各8つのシガレットの吸口側端面の白色度を数値化した表である。
図15図15は、図14中の表の第4ロットから第6ロットの各8つのシガレットの吸口側端面の白色度の平均値を示すグラフである。
図16図16は、第4ロットから第6ロットの各シガレットの吸口側端面の喫煙前に対する喫煙後の外観差の、14人の評価者による官能評価の平均点数を示すグラフである。
図17図17は、第4ロットから第6ロットの各シガレットの吸口側端面の喫煙前に対する喫煙後の汚さの、14人の評価者による官能評価の平均点数を示すグラフである。
図18A図18Aは、不織布の複数のシートの端部をずらして重ねた状態で、フィルタ本体成形機の複数のガイドを通して、パイプ内にフィルタ本体をフォールディング処理している状態を示す概略図である。
図18B図18Bは、図18A中の矢印18Bで示す方向から複数のシートの端部をずらして重ねた不織布を見た状態を示す概略図である。
図19A図19Aは、第1実施形態の変形例に係る、フィルタを含む香味吸引物品の概略的な断面図である。
図19B図19Bは、図19A中の矢印19Bに示す方向からフィルタを見たときの吸口側端面を示す概略図である。
図20図20は、第2実施形態に係る、フィルタを含む非燃焼加熱型香味吸引物品を示す概略的な断面図である。
図21図21は、第3実施形態に係る、フィルタを含む非燃焼加熱型香味吸引物品を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて、香味吸引物品に用いるフィルタ、及び、香味吸引物品について説明する。
【0009】
実施形態に係る香味吸引物品用部材は、ベース部材を含む。ベース部材は、例えば、たばこ材料と組み合わせて使用される香味吸引物品用部材である。ベース部材は、燃焼型香味吸引物品を構成する部材、非燃焼加熱型香味吸引物品を構成する部材及び非加熱型香味吸引物品を構成する部材のうちの少なくとも1種でありうる。
【0010】
たばこ材料は、例えばたばこ刻である。たばこ刻の材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。たばこ材料は、たばこ刻のほか、例えば顆粒状であってもよい。
【0011】
燃焼型香味吸引物品は、たばこ材料を燃焼させることによりたばこ香味を消費者に提供する喫煙物品である。
【0012】
非燃焼加熱型香味吸引物品は、たばこ材料を燃焼させることなく、加熱することによりたばこ香味を消費者に提供する物品である。非燃焼加熱型香味吸引物品の加熱温度は、適宜に設定可能であるが、例えば常温に近い温度から、たばこ材料が燃焼しない温度まで、広範囲となる。非燃焼加熱型香味吸引物品の加熱温度は、一例として、例えば30℃から350℃程度である。
【0013】
非加熱型香味吸引物品は、たばこ材料を燃焼も加熱もしないで、たばこ香味を消費者に提供する物品である。
【0014】
[第1実施形態]
第1実施形態では、たばこ材料を含む燃焼型香味吸引物品(喫煙物品)10の代表例であるシガレットについて説明する。第1実施形態では、シガレット10の一例を、図1Aから図17を参照しながら説明する。
【0015】
図1Aから図1Cには、本実施形態に係るシガレット10を示す。本実施形態に係るシガレット10の比較例として、図2A及び図2Bには、シガレット110を示す。シガレット10,110の同一構造部分には同一の符号を付す。シガレット110について、シガレット10と同一構造部分については適宜に説明を省略する。
【0016】
図1Aは、シガレット10の断面図である。シガレット10は、たばこロッド12と、フィルタ14と、チップペーパ16とを含む。シガレット10の全長は例えば65mmから100mm程度である。シガレット10の外径は、例えば5mmから10mm程度である。
【0017】
たばこロッド12は、たばこ材料(たばこ刻)22と、たばこ材料22の周囲を巻装する巻紙24とを含む。本実施形態に係るたばこロッド12は、例えば直径が7mm程度で、長さが83mm程度である。
【0018】
フィルタ14は、吸口側の第1フィルタプラグ32と、たばこロッド12側の第2フィルタプラグ34と、第1フィルタプラグ32及び第2フィルタプラグ34の外周を巻回する成形紙36とを有する。第1フィルタプラグ32の後述する長手軸Lに沿う長さをL1とし、第2フィルタプラグ34の長手軸Lに沿う長さをL2とする。
【0019】
第1フィルタプラグ32は、第1フィルタ本体(フィルタ要素、濾材)42と、第1フィルタ本体42の外周を巻く第1巻取紙(筒状部)44とを有する。第1フィルタプラグ32の長さL1は、第1フィルタ本体42の長さと同じである。第1フィルタ本体42の外周と第1巻取紙44との間には、チャネル部(通気部)43が形成されている。具体的には、チャネル部43は、第1フィルタ本体42の外周面と第1巻取紙(筒状部)44の内周面との間にある。
【0020】
第1フィルタ本体42は、吸口側の第1端面(吸口側端面)46及び吸口側とは反対側の第2端面(たばこロッド12側の端面)48を有する。第1端面46及び第2端面48の外形は、例えば略円形状である。第1フィルタ本体42には、第1端面46及び第2端面48に交差する長手軸(中心軸)Lが規定される。第1端面46は吸口側であり、第2端面48はたばこロッド12側である。第1端面46は外側に露出する。
【0021】
図1Aから図1Cに示すように、第1フィルタ本体42の外周面は、例えば平歯車のように形成されている。このため、第1フィルタ本体42は、多数の凸部42aを有する。各凸部42aは、第1端面46と第2端面48との間の全体にわたって長手軸Lに沿って連続的に形成されている。凸部42aは、第1巻取紙44の内周面に当接する。
【0022】
チャネル部43は、例えば第1フィルタ本体42の外周に長手軸Lに平行に形成された複数(多数)の凹部(チャネル)43aを有する。各凹部43aは、第1フィルタ本体42の凸部42a間に形成される。第1フィルタ本体42の凸部42a及びチャネル部43の凹部43aは、長手軸Lを中心として、第1フィルタ本体42の外周に周方向に隣接する。
【0023】
チャネル部43の各凹部43aは、第1端面46と第2端面48との間の全体にわたって長手軸Lに沿って連続的に形成されている。凹部43aは第1巻取紙44の内周面に離間する。このため、チャネル部43は、第1巻取紙(筒状部)44の内側にあり第2端面48と第1端面46との間を通気する。チャネル部43は、いわゆるAFTフィルタの外観のように形成されていることが好適である。
【0024】
第2フィルタプラグ34は、第2フィルタ本体(フィルタ要素、濾材)52と、第2フィルタ本体52の外周を巻く第2巻取紙(筒状部)54とを有する。第2フィルタプラグ34の長さL2は、第2フィルタ本体52の長さと同じである。第2フィルタ本体52は、第3端面56及び第4端面58を有する。第3端面56及び第4端面58の外形は、例えば略円形状である。第2フィルタ本体52には、第3端面56及び第4端面58に交差する長手軸(中心軸)Lが規定される。第3端面56は吸口側であり、第4端面58はたばこロッド12側である。第3端面56は、第2端面48に対向又は接触する。
【0025】
第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52には、例えば添加剤として、例えば、トリアセチン等の可塑剤、活性炭等の吸着剤、メンソール等の付香剤が付加され得る。
【0026】
成形紙36は、第1巻取紙44及び第2巻取紙54の外周に巻かれ、第1巻取紙44及び第2巻取紙54を連結する。
【0027】
チップペーパ16は、たばこロッド12とフィルタ14とを接続するように、たばこロッド12及びフィルタ14の外周を巻回する。
【0028】
第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52は、紙製のシート又は不織布製のシートで形成されている。本実施形態では、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52を形成するシート(原反)が紙製である例について説明する。紙製のシートとしては、いわゆる当業者がペーパフィルタとして用いることができるものをそのまま用いることができる。第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52のシート(原反)として、上記の他、例えば、グラシン紙を用いることができる。
【0029】
例えば紙製のシート72は、後述するクリンプツール70によりクリンプ処理される。クリンプ処理されたシート72は、フォールディング処理されて、例えば略120mmのロッド状に形成される。その後、適宜の長さに切断され、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52として形成される。第1フィルタ本体42は第1巻取紙44により形状が維持される。第2フィルタ本体52は第2巻取紙54により形状が維持される。第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52が例えば適宜の長さに切断されるとき、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52には、それぞれ、平面状の端面(吸口側端面46,56、及び、たばこ側端面48,58)を形成する。
【0030】
第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52のクリンプ処理は、図3A及び図3Bに示す適宜のクリンプツール70に紙製のシート72を図3A及び図3B中の紙面手前から紙面を貫通する方向に通すことにより実行される。図3A及び図3Bに示すクリンプツール70は、紙面を貫通する方向に適宜に長く形成されている。クリンプツール70の紙面を貫通する方向の長さは、シート72をクリンプ処理可能な適宜の長さである。クリンプツール70の幅は、シート72の幅よりも大きく形成されていることが好適である。
【0031】
クリンプツール70は、第1ベース82と、第2ベース84と、第1ベース82から第2ベース84に向かって突出する複数の第1凸部86と、第2ベース84から第1ベース82に向かって突出する複数の第2凸部88とを有する。第1ベース82及び第2ベース84は相対的に近接及び離隔可能である。第1ベース82に対する複数の第1凸部86の突出量は、略同一である。複数の第1凸部86は、幅方向に所定間隔に離間している。第2ベース84に対する複数の第2凸部88の突出量は、略同一である。複数の第2凸部88は、幅方向に所定間隔に離間している。第1ベース82と第2ベース84とを近接させたとき、第1凸部86と第2凸部88とはそれぞれ離間した位置にある。第1ベース82及び第2ベース84の近接及び離隔方向に沿って、第1凸部86の頂部86aと第2凸部88の頂部88aとの間の距離(図3A中の符号D1及び図3B中の符号D2)を噛み合い量とする。距離D1,D2は、例えば1mm程度、又は、それ以下とすることが好適である。クリンプツール70の噛み合い量を調整することで、紙製のシート72のクリンプ深さを調整することができる。クリンプ深さは、クリンプツール70のシート72の移動方向に直交する、隣接する凸部86,88の頂部86a,88a同士の距離に置き換えることができる。図3Aの距離D1と、図3Bの距離D2とを比較すると、距離D2の方が大きい。このとき、シート72のクリンプ深さは、図3Bに示す例の方が、図3Aに示す例よりも大きくなる。シート72をクリンプ処理中、クリンプツール70の第1ベース82、第2ベース84、第1凸部86、第2凸部88は、移動が停止され、位置関係が固定されている。
【0032】
第1フィルタ本体42のシートは、第2フィルタ本体52のシートよりも大きいクリンプ深さにクリンプ(クレープ)処理される。すなわち、第1フィルタ本体42のシートのクリンプ深さ(シートの折り目間距離)は、第2フィルタ本体52のシートのクリンプ深さ(シートの折り目間距離)よりも大きい。
【0033】
第1フィルタ本体42の紙製のシート(原反)の通気度は、クリンプ処理後、例えば1000CU(コレスタユニット)~30000CUである。第2フィルタ本体52の紙製のシート(原反)の通気度は、クリンプ処理後、例えば0CU~10000CUである。
【0034】
ここで、図4Aには、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52に用いる紙製のシートのクリンプ処理後のクリンプ深さを横軸にとり、縦軸にクリンプ処理し第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52となるフィルタ本体の1mmあたりの通気抵抗(mmHO/mm)をとったグラフを示す。クリンプ深さが大きくなるほど、単位長さ当たりの通気抵抗は、大きくなることが認識される。図4A中の破線は、例えば、
y=17.965x+6.6054x+0.1372 (R=0.9963)
と近似できる。
【0035】
図4Bには、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52に用いる紙製のシートのクリンプ処理後の通気度(CU)を横軸にとり、縦軸にクリンプ処理し第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52となるフィルタ本体の1mmあたりの通気抵抗(mmHO/mm)をとったグラフを示す。図4B中の左下のプロットは、クリンプ深さが0mmの場合の例である。図4B中の右上のプロットは、クリンプ深さが0.6mmである場合の例である。図4B中の残りのプロットは、クリンプ深さが0.3mmである場合の例である。クリンプ深さが大きくなるにつれて、通気抵抗だけでなく、通気度(CU)が大きくなることが認識される。図4B中の破線は、例えば、
y=-6*10-9+0.0006x+0.1687 (R=1)
と近似できる。
【0036】
第1フィルタ本体(ペーパフィルタ)42のクリンプ深さ(クリンプツール70の頂部86a,88a間距離)は、例えば0.6mmである。第2フィルタ本体(ペーパフィルタ)52のクリンプ深さは、例えば0.2mmである。
【0037】
第1フィルタ本体42の通気抵抗は、第2フィルタ本体52の通気抵抗よりも高いことが好適である。第1フィルタ本体42の通気抵抗は、例えば0mmHO/mm~12mmHO/mmであり、好ましくは、4mmHO/mm~12mmHO/mmである。第2フィルタ本体52の通気抵抗は、例えば0mmH2O/mm~12mmHO/mmであり、好ましくは、3mmH2O/mm~12mmHO/mmである。
【0038】
第1巻取紙44、第2巻取紙54、及び、成形紙36は、例えばパルプから形成されている。第1巻取紙44、第2巻取紙54、及び、成形紙36は、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52の形状を維持するのに用いる。第1巻取紙44、第2巻取紙54、及び、成形紙36の坪量は、例えば30g/m以上であることが好適である。
【0039】
図2A及び図2Bに示すように、比較例のシガレット110は、たばこロッド12と、フィルタ114と、チップペーパ16とを含む。シガレット110の全長及び外径はシガレット10と同じに設定されている。図2Aに示すシガレット110のたばこロッド12は、図1Aに示すシガレット10のたばこロッド12と同様に形成されている。
【0040】
フィルタ114は、吸口側の第1フィルタプラグ132と、たばこロッド12側の第2フィルタプラグ134と、第1フィルタプラグ132及び第2フィルタプラグ134の外周を巻回する成形紙36とを有する。
【0041】
第1フィルタプラグ132は、第1フィルタ本体(フィルタ要素、濾材)142と、第1フィルタ本体142の外周を巻く第1巻取紙144とを有する。
【0042】
第1フィルタ本体142は、吸口側の第1端面(吸口側端面)146及び吸口側とは反対側の第2端面(たばこロッド12側の端面)148を有する。第1端面146及び第2端面148の外形は、例えば略円形状である。第1フィルタ本体142には、第1端面146及び第2端面148に交差する長手軸(中心軸)Lが規定される。第1端面146は吸口側であり、第2端面148はたばこロッド12側である。第1端面146は外側に露出する。
【0043】
第2フィルタプラグ134は、第2フィルタ本体(フィルタ要素、濾材)152と、第2フィルタ本体152の外周を巻く第2巻取紙(筒状部)154とを有する。第2フィルタプラグ134の長さL2は、第2フィルタ本体152の長さと同じである。第2フィルタ本体152は、第3端面156及び第4端面158を有する。第3端面156及び第4端面158の外形は、例えば略円形状である。第2フィルタ本体152には、第3端面156及び第4端面158に交差する長手軸(中心軸)Lが規定される。第3端面156は吸口側であり、第4端面158はたばこロッド12側である。第3端面156は、第2端面148に対向又は接触する。
【0044】
成形紙36は、第1巻取紙144及び第2巻取紙154の外周に巻かれ、第1巻取紙144及び第2巻取紙154を連結する。
【0045】
図5及び図6に示すように、ここでは、第1ロットから第6ロットを準備した。第1ロットは第3ロットの比較例(比較例1)である。第2ロットは第3ロットの比較例(比較例2)である。第4ロットは第6ロットの比較例(比較例3)である。第5ロットは第6ロットの比較例(比較例4)である。
【0046】
第1ロット(比較例1)は、図2A及び図2Bに示すフィルタ114の構造を有するシガレット110である。ここでは、第1フィルタ本体142にアセテートフィルタを用い、第2フィルタ本体152にチャコールフィルタを用いる。第1ロットとしては、ある喫煙物品(ここでは、日本国で販売されている日本たばこ産業株式会社製のWinston compact 6mg)を用いる。このため、第1ロットのシガレット110のタール値は、6mg近辺にコントロールされている。
【0047】
第2ロット(比較例2)は、図2A及び図2Bに示すフィルタ114の構造を有するシガレット110である。ここでは、第1フィルタ本体142に第1フィルタ本体42と同様の素材を加工して用い、第2フィルタ本体152に第2フィルタ本体52と同様の素材を加工して用いる。第1フィルタ本体142のクリンプ深さは、第2フィルタ本体152のクリンプ深さに比べて大きい。
【0048】
第3ロットは、図1Aから図1Cに示すフィルタ14の構造を有するシガレット10である。第1フィルタ本体42の外周には、チャネル部43が形成されている。なお、タール値の調整のため、第2ロットのシガレット110のフィルタ114の第1フィルタ本体142及び第2フィルタ本体152と、第3ロットのシガレット10のフィルタ14の第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52とは、長さL1,L2が異なる。第3ロットのシガレット10のフィルタ14はチャネル部43を有するのに対し、第2ロットのシガレット110のフィルタ114にはチャネル部43がない。
【0049】
第4ロット(比較例3)は、図2A及び図2Bに示すフィルタ114の構造を有するシガレット110である。ここでは、第1フィルタ本体142にアセテートフィルタを用い、第2フィルタ本体152にチャコールフィルタを用いる。第4ロットとしては、ある喫煙物品(ここでは、日本国で販売されている日本たばこ産業株式会社製のWinston compact 1mg)を用いる。このため、第4ロットのシガレット110のタール値は、1mg近辺にコントロールされている。
【0050】
第5ロット(比較例4)は、図2A及び図2Bに示すフィルタ114の構造を有するシガレット110である。ここでは、第1フィルタ本体142に第1フィルタ本体42と同様の素材を加工して用い、第2フィルタ本体152に第2フィルタ本体52と同様の素材を加工して用いる。第1フィルタ本体142のクリンプ深さは、第2フィルタ本体152のクリンプ深さに比べて大きい。
【0051】
第6ロットは、図1Aから図1Cに示すフィルタ14の構造を有するシガレット10である。第1フィルタ本体42の外周には、チャネル部43が形成されている。タール値の調整のため、第5ロットのシガレット110のフィルタ114の第1フィルタ本体142及び第2フィルタ本体152と、第6ロットのシガレット10のフィルタ14の第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52とは、長さL1,L2が異なる。第6ロットのシガレット10のフィルタ14はチャネル部43を有するのに対し、第5ロットのシガレット110のフィルタ114にはチャネル部43がない。第5ロットのフィルタ114の第1フィルタ本体142のクリンプ深さと、第6ロットのフィルタ14の第1フィルタ本体42のクリンプ深さとは同じである。第5ロットのフィルタ114の第2フィルタ本体152のクリンプ深さは、第6ロットのフィルタ14の第2フィルタ本体52のクリンプ深さよりも小さい。
【0052】
図7Aには、第2ロットの、クリンプ深さが0.6mmの例の第1フィルタ本体142の第1端面146の写真を示す。図7Bには、クリンプ深さが0.3mmの例の第1フィルタ本体142の第1端面146の写真を示す。図7Cには、クリンプ深さが0.1mmの例の第1フィルタ本体142の第1端面146の写真を示す。図7Aから図7Cに示すように、フィルタ本体42,52を形成するシートのクリンプ深さは大きければ大きいほど、空隙の面積を減らし、フィルタ114の美観性を高めることができる。これは、第3ロットのフィルタ14についても同様である。このため、フィルタ本体42,52を形成するシートのクリンプ深さは大きければ大きいほど、フィルタ14の美観性を高めることができる。第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙の面積は、全体で3mm以下であることが好適である。
【0053】
なお、図5及び図6に示すタール値及びニコチン値は、自動喫煙器を用いて測定する。ニコチン値は、自動喫煙器で決められた条件の下で主流煙の粒子部分を集め、集めた粒子を溶かして測定する。タール値は、主流煙の粒子の重さから、ニコチンと水分の重さを差し引いて測定する。
【0054】
まず、タール値を6mgにコントロールした第1ロットから第3ロットについて説明する。
【0055】
図8Aには、第1ロットの8つのシガレット110の喫煙後の第1端面146の写真を示す。図8Bには、第2ロットの8つのシガレット110の喫煙後の第1端面146の写真を示す。図8Cには、第3ロットの8つのシガレット10の喫煙後の第1端面46の写真を示す。
【0056】
第1ロットのシガレット110(図2A及び図2B参照)を喫煙し、たばこロッド12のたばこ材料22が燃焼すると、主流煙は、第2フィルタ本体152及び第1フィルタ本体142を通して喫煙者に到達する。同様に、第2ロットのシガレット110(図2A及び図2B参照)を喫煙し、たばこロッド12のたばこ材料22が燃焼すると、主流煙は、第2フィルタ本体152及び第1フィルタ本体142を通して喫煙者に到達する。このとき、主流煙は、第2フィルタ本体152及び第1フィルタ本体142の中心軸Lだけでなく、全体を通って喫煙者に到達する。このため、図8A及び図8Bに示すように、主流煙に含まれる粒子状物質等の一部が、第2フィルタ本体152及び第1フィルタ本体142に吸着する。
【0057】
第3ロットのシガレット10(図1Aから図1C参照)を喫煙し、たばこロッド12のたばこ材料22が燃焼すると、主流煙は、第2フィルタ本体52及び第1フィルタ本体42を通して喫煙者に到達する。このとき、主流煙は、第2フィルタ本体52の中心軸Lだけでなく、全体を通って、第1フィルタ本体42に到達する。第1フィルタプラグ32は、第1フィルタ本体42と第1巻取紙44との間にチャネル部43がある。チャネル部43は、第1フィルタ本体42に比べて通気抵抗が低く、かつ、外気を取り込むことができる。主流煙は、第1フィルタ本体42と第1巻取紙44との間のチャネル部43を通過する割合が高い。したがって、図8Cに示すように、主流煙に含まれる粒子状物質等の一部は、第2フィルタ本体52に吸着しやすいが、チャネル部43に対して第1フィルタ本体42には吸着し難い。主流煙に含まれる粒子状物質等の一部は、第1フィルタ本体42よりもチャネル部43に吸着され、又は、喫煙者に吸引されやすい。なお、タール値、ニコチン値等は、フィルタ14全体でコントロールする。
【0058】
図9及び図10に示すように、第1ロットから第3ロットの各シガレット110,10(図8Aから図8C参照)について、白色度計を用いて、シガレット110,10の喫煙後の第1端面146,46のタールによる汚れを数値化した。数値が高いほど、白色度が大きく、汚れが少ない、と判断される。第2ロットの数値が最も低く、白色度計により、汚れが大きい、と検知された。第1ロットよりも第3ロットの数値が高く、白色度計により、第3ロットの汚れが少ない、と検知された。
【0059】
第1ロットから第3ロットについて、図11に示すように、喫煙前後の第1端面146,46の外観差について、官能評価を行った。評価者は14名である。図11に示すグラフは平均値である。
【0060】
ここで、図11に示す外観差は、各ロットの喫煙前のシガレット110,10の第1端面146,46との比較である。外観差の評価は、
1点:かなり違いがある
2点:やや違いがある
3点:わずかに違いがある
4点:あまり違いがない
5点:全く違いがない
とした。すなわち、外観差は、平均値(AVERAGE)が5点に近づくほど、ユーザが、喫煙前のシガレット110,10の第1端面146,46との外観差が小さい、と判断していると評価できる。
【0061】
第2ロットの外観差の評価点数は、約1点であり、評価者により、かなり違いがある、と評価された。第1ロット及び第3ロットの外観差の評価点数は、約2点前後であり、評価者により、やや違いがある、と評価された。
【0062】
第1ロットから第3ロットについて、図12に示すように、喫煙前後の第1端面146,46の汚さについて、官能評価を行った。評価者は14名である。図12に示すグラフは平均値である。
【0063】
ここで、図12に示す汚さは、各ロットの喫煙前のシガレット110,10の第1端面146,46との比較である。汚さの評価は、
1点:かなり汚い
2点:やや汚い
3点:わずかに汚い
4点:あまり汚くない
5点:全く汚くない
とした。すなわち、汚さは、平均値(AVERAGE)が5点に近づくほど、ユーザが、喫煙前のシガレット110,10の第1端面146,46に対して汚れていない、と判断していると評価できる。
【0064】
第2ロットの汚さの評価点数は、約1点であり、評価者により、かなり汚い、と評価された。第1ロットの汚さの評価点数は2点を上回った程度であり、やや汚い、と評価された。第3ロットの汚さの評価点数は2.5点から3点の間であり、第1ロットに比べて、汚くない、と評価された。
【0065】
次に、タール値を1mgにコントロールした第4ロットから第6ロットについて説明する。
【0066】
図13Aには、第4ロットの8つのシガレット110の喫煙後の第1端面146の写真を示す。図13Bには、第5ロットの8つのシガレット110の喫煙後の第1端面146の写真を示す。図13Cには、第6ロットの8つのシガレット10の喫煙後の第1端面46の写真を示す。
【0067】
第4ロットのシガレット110(図2A及び図2B参照)を喫煙し、たばこロッド12のたばこ材料22が燃焼すると、第1ロットと同様に、主流煙は、第2フィルタ本体152及び第1フィルタ本体142を通して喫煙者に到達する。同様に、第5ロットのシガレット110(図2A及び図2B参照)を喫煙し、たばこロッド12のたばこ材料22が燃焼すると、第2ロットと同様に、主流煙は、第2フィルタ本体152及び第1フィルタ本体142を通して喫煙者に到達する。このとき、主流煙は、第2フィルタ本体152及び第1フィルタ本体142の中心軸Lだけでなく、全体を通って喫煙者に到達する。このため、図13A及び図13Bに示すように、主流煙に含まれる粒子状物質等の一部が、第2フィルタ本体152及び第1フィルタ本体142に吸着する。
【0068】
第6ロットのシガレット10(図1Aから図1C参照)を喫煙し、たばこロッド12のたばこ材料22が燃焼すると、第3ロットと同様に、主流煙は、第2フィルタ本体52及び第1フィルタ本体42を通して喫煙者に到達する。このとき、主流煙は、第2フィルタ本体52の中心軸Lだけでなく、全体を通って、第1フィルタ本体42に到達する。第1フィルタプラグ32は、第1フィルタ本体42と第1巻取紙44との間にチャネル部43がある。チャネル部43は、第1フィルタ本体42に比べて通気抵抗が低いため、主流煙は、第1フィルタ本体42と第1巻取紙44との間のチャネル部43を通過する割合が高い。したがって、図13Cに示すように、主流煙に含まれる粒子状物質等の一部は、第2フィルタ本体52に吸着しやすいが、チャネル部43により、第1フィルタ本体42には吸着し難い。主流煙に含まれる粒子状物質等の一部は、第1フィルタ本体42よりもチャネル部43に吸着されやすい。
【0069】
図14及び図15に示すように、第4ロットから第6ロットの各シガレット110,10(図13Aから図13C参照)について、白色度計を用いて、シガレット110,10の喫煙後の第1端面146,46のタールによる汚れを数値化した。第5ロットの数値が最も低く、白色度計により、汚れが大きい、と検知された。第4ロットよりも第6ロットの数値が僅かに高く、白色度計により、第6ロットの汚れが少ない、と検知された。第4ロットから第6ロットのシガレット110,10は、タール値を1mgに設定しているため、タール値を6mgに設定した第1ロットから第3ロットのシガレット110,10の白色度計に検知された数値(図9及び図10参照)に比べて大きくなった。
【0070】
第4ロットから第6ロットについて、図16に示すように、喫煙前後の第1端面146,46の外観差について、官能評価を行った。評価者は14名である。図16に示すグラフは平均値である。
【0071】
ここで、図16に示す外観差は、各ロットの喫煙前のシガレット110,10の第1端面146,46との比較である。外観差の評価点数は、図11に示す外観差の評価点数と同じである。すなわち、外観差は、平均値(AVERAGE)が5点に近づくほど、ユーザが、喫煙前のシガレット110,10の第1端面146,46との外観差が小さい、と判断していると評価できる。
【0072】
第5ロットの外観差の評価点数は、約1点であり、評価者により、かなり違いがある、と評価された。第4ロット及び第6ロットの外観差の評価点数は、約2点を超えた程度であり、評価者により、やや違いがある、と評価された。
【0073】
第4ロットから第6ロットについて、図17に示すように、喫煙前後の第1端面146,46の汚さについて、官能評価を行った。評価者は14名である。図17に示すグラフは平均値である。
【0074】
ここで、図17に示す汚さは、各ロットの喫煙前のシガレット110,10の第1端面146,46との比較である。汚さの評価点数は、図12に示す汚さの評価点数と同じである。すなわち、汚さは、平均値(AVERAGE)が5点に近づくほど、ユーザが、喫煙前のシガレット110,10の第1端面146,46に対して汚れていない、と判断していると評価できる。
【0075】
第5ロットの汚さの評価点数は、約1点であり、評価者により、かなり汚い、と評価された。第4ロット及び第6ロットの汚さの評価点数は2.5点程度であり、やや汚い、と評価された。なお、第4ロット及び第6ロットは、第5ロットに比べて、汚くない、と評価された。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下のことが言える。
【0077】
紙製のシートで形成したフィルタ14を含むシガレット10を提供することができる。このとき、紙製のシートで形成したフィルタ14は、紙製でありながら、フィルタ14の吸口側の第1フィルタプラグ32にチャネル部43を形成することで、喫煙後のフィルタ14の吸口側端面46の汚れを、アセテートフィルタ、及び、チャネル部がない紙製のフィルタ114に対して抑制することができる。すなわち、喫煙後に第1端面46を見たとき、チャネル部43に比べて、第1フィルタ本体42の領域に粒子状物質等の汚れが付着することが抑制されている。したがって、本実施形態に係るフィルタ14は、紙製でありながら、喫煙後の美観性を高めることができる。
【0078】
また、紙製のシートで形成したフィルタ14は、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52の材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、タール値等をコントロールすることができる。このため、喫煙の際に、たばこロッド12から吸口側端面46に向かう主流煙に対する濾過特性を適宜にコントロールしたフィルタ14が提供される。すなわち、適宜の濾過特性を有するフィルタ14を含むシガレット10が提供される。
【0079】
第1フィルタ本体42は、弾性変形により、中心軸Lに対して径方向外方に広がろうとする場合があり得る。第1フィルタ本体42の外形が維持できない場合に備え、図1D及び図1Eに示すように、凹部43aに管状体(チャネル)である紙管43bが配設されていてもよい。この場合、例えば紙製の第1フィルタ本体42の形状を維持しやすい。
【0080】
チャネル部43に紙管43bがある場合、主流煙に含まれる粒子状物質等の一部は、チャネル部43の凹部43a(凸部42a間に形成される曲面)よりも、紙管43b内に吸着され易い。このため、喫煙後に第1端面46を見たとき、チャネル部43の紙管43bの端面に比べて、第1フィルタ本体42の領域に粒子状物質等の汚れが付着することが抑制されている。
【0081】
本実施形態では、図1B及び図1Dに示すように、第1フィルタ本体42の第1端面46と第2端面48との間に多数(31個)のチャネル部43を配置する例について説明した。図1C及び図1Eに示すように、第1フィルタ本体42の、長手軸Lの周方向に隣接する凸部42a間と、チャネル部43の、長手軸Lの周方向に隣接する凹部43a間の距離は、略同じである。チャネル部43は、長手軸Lに対して30°おきに12個配置するなど、配置及び個数は適宜に設定可能である。このため、第1フィルタ本体42の、長手軸Lの周方向に隣接する凸部42a間と、チャネル部43の、長手軸Lの周方向に隣接する凹部43aの距離は、異なっていてもよい。
【0082】
本実施形態では、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52として、紙を用いる例について説明したが、材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、不織布を用いることも可能である。
【0083】
第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52として不織布を用いる場合、図3A及び図3Bに示すようなクリンプツール70を用いない。不織布を用いる場合、クリンプツール70の代わりに、複数のシート172a,172b,172c,172dを重ねてフォールディング処理するシートフォールディング機170(図18A参照)を用いる。シートフォールディング機170は、図18A及び図18Bに示すように、不織布の複数のシート172a,172b,172c,172dの端部をずらして重ねた状態で、例えば複数のガイド182,184,186を用いて略S字状又は略Z字状に折り曲げながらフォールディング処理する。ガイド182,184,186はシート172a,172b,172c,172dの移動方向に沿って離間している。ガイド182,184,186はそれぞれ例えば盤状であるが、複数のシート172a,172b,172c,172dに対するフォールディング処理を進めるための開口溝182a,184a,186aが形成されている。端部をずらして重ねた複数のシート172a,172b,172c,172dをガイド182,184,186を通した後、無端ベルト178によりガイド186の前方のパイプ176内に誘導する。ガイド182,184,186の開口溝182a,184a,186aに順次通すことで、次第に、複数のシート172a,172b,172c,172dは、略S字状又は略Z字状に近づき、パイプ176内でフォールディングされる。第1フィルタ本体42がフォールディング処理された後、第1巻取紙44により第1フィルタ本体42の形状が維持される。第2フィルタ本体52がフォールディング処理される場合、第2巻取紙54により第2フィルタ本体52の形状が維持される。このため、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52は、一旦、例えば略120mmのロッド状に形成され、その後、適宜の長さに切断される。
【0084】
不織布の第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙量は、不織布又は紙製の第2フィルタ本体52の第3端面56を見たときの空隙量よりも小さい。不織布の第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙の面積は、紙製の第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙の面積と同様に、例えば3mm以下であることが好適である。不織布の第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙量は、吸口側でのアセテートフィルタの空隙量よりも大きいことが好適である。不織布の第1フィルタ本体42の通気抵抗は、不織布又は紙製の第2フィルタ本体52の通気抵抗よりも高いことが好適である。フィルタ14の第1フィルタ本体42が不織布製である場合も、紙製である場合と同様に、美観性を高めることができる。また、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52を不織布製にしても、紙製の第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52と略同様のフィルタ性能(濾過特性)を発揮させることができる。
【0085】
すなわち、本実施形態によれば、紙製のシート又は不織布製のシートで形成され、美観性を高め、且つ、適宜の濾過特性を有する、フィルタ14及び、フィルタ14を含むシガレット(喫煙物品)10が提供される。
【0086】
本実施形態に係る、フィルタ14を含むシガレット10は、紙材、たばこ材料など、全て、又は、ほとんどが、自然由来の成分で形成可能である。このため、例えばアセテートフィルタ(第1ロット、第5ロット)を用いる場合に比べて、自然に対する環境負荷を低減することができる。
【0087】
(変形例)
図19A及び図19Bを用いて、シガレット10のフィルタ14の変形例について説明する。
【0088】
図19A及び図19Bに示すように、第1フィルタプラグ32は、中心軸L上にチャネル部43を有する。チャネル部43は、筒状に形成されている。チャネル部43は、第1フィルタ本体42の第1端面46と第2端面48との間を貫通する。
【0089】
第1フィルタ本体42は、紙製であるため、弾性変形により、中心軸Lに向かって広がり、チャネル部43を小さくしようとする場合があり得る。チャネル部43を維持できない場合に備え、図19Bに示すように、チャネル部43に管状体(チャネル)である紙管43cが配設されていてもよい。この場合、例えば紙製の第1フィルタ本体42の形状を維持しやすい。
【0090】
このため、フィルタ14のチャネル部43は、図1Aから図1Cに示すように、第1フィルタ本体42の外周と第1巻取紙(筒状部)44の内周面との間に限られない。
【0091】
チャネル部43の紙管43cは、第1フィルタ本体42の第1端面46及び第2端面48の間を貫通するように、1つだけでなく、複数あってもよい。この場合、紙管43cの1つが、第1フィルタ本体42の中心軸L上にあってもよく、なくてもよい。
【0092】
シガレット10(図19A参照)を喫煙し、たばこロッド12のたばこ材料22が燃焼すると、主流煙は、第2フィルタ本体52及び第1フィルタ本体42を通して喫煙者に到達する。このとき、主流煙は、第2フィルタ本体52の中心軸Lだけでなく、全体を通って、第1フィルタ本体42に到達する。第1フィルタプラグ32は、第1フィルタ本体42の中心軸L上にチャネル部43がある。チャネル部43は、第1フィルタ本体42に比べて通気抵抗が低い。主流煙は、チャネル部43を通過する割合が高い。したがって、主流煙に含まれる粒子状物質等の一部は、第2フィルタ本体52に吸着しやすいが、チャネル部43に対して第1フィルタ本体42には吸着し難い。主流煙に含まれる粒子状物質等の一部は、第1フィルタ本体42よりもチャネル部43に吸着され、又は、喫煙者に吸引されやすい。なお、タール値、ニコチン値等は、フィルタ14全体でコントロールする。
【0093】
チャネル部43に紙管43cがある場合、主流煙に含まれる粒子状物質等の一部は、チャネル部43の内周面(第1フィルタ本体42自体が形成する通路)よりも、紙管43c内に吸着され易い。チャネル部43に紙管43cがない場合、主流煙に含まれる粒子状物質等の一部は、チャネル部43の内周面(第1フィルタ本体42自体が形成する通路)に吸着される。
【0094】
この場合も、喫煙後に第1端面46を見たとき、チャネル部43(紙管43cの端面)に比べて、チャネル部43と第1フィルタ本体42との間の領域に粒子状物質等の汚れが付着することが抑制されている。
【0095】
第1実施形態の変形例によれば、以下のことが言える。
【0096】
紙製のシートで形成したフィルタ14を含むシガレット10を提供することができる。このとき、紙製のシートで形成したフィルタ14は、紙製でありながら、フィルタ14の吸口側の第1フィルタプラグ32にチャネル部43を形成することで、喫煙後のフィルタ14の吸口側端面46の汚れを、アセテートフィルタ、及び、チャネル部がない紙製のフィルタ114に対して抑制することができる。したがって、第1実施形態の変形例に係るフィルタ14は、紙製でありながら、喫煙後の美観性を高めることができる。
【0097】
また、紙製のシートで形成したフィルタ14は、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52の材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、タール値等をコントロールすることができる。このため、喫煙の際に、たばこロッド12から吸口側端面46に向かう主流煙に対する濾過特性を適宜にコントロールしたフィルタ14が提供される。すなわち、適宜の濾過特性を有するフィルタ14を含むシガレット10が提供される。
【0098】
第1実施形態の変形例では、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52として、紙を用いる例について説明したが、材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、不織布を用いることも可能である。
【0099】
すなわち、第1実施形態の変形例によれば、紙製のシート又は不織布製のシートで形成され、美観性を高め、且つ、適宜の濾過特性を有する、フィルタ14及び、フィルタ14を含むシガレット(喫煙物品)10が提供される。
【0100】
第1実施形態の変形例に係る、フィルタ14を含むシガレット10は、紙材、たばこ材料など、全て、又は、ほとんどが、自然由来の成分で形成可能である。このため、例えばアセテートフィルタ(第1ロット、第5ロット)を用いる場合に比べて、自然に対する環境負荷を低減することができる。
【0101】
[第2実施形態]
第2実施形態について図20を用いて説明する。この実施形態は第1実施形態の変形例である。
【0102】
香味吸引物品210は、非燃焼加熱型香味吸引物品を構成する部材の1つである。
【0103】
図20に示す香味吸引物品210は、加熱器とともに用いられる交換可能なカートリッジである。香味吸引物品210は、一方向に沿って延びる柱状形状を有する。
【0104】
図20に示すように、香味吸引物品210は、その一方の端部を形成する基材部212と、基材部212とは反対側の端部を形成するフィルタ214と、基材部212とフィルタ214との間の紙管部216とを有する。基材部212、紙管部216及びフィルタ214は、巻紙218により連結されている。紙管部216は、紙を円筒形に巻いて形成された紙管であり、内側は空洞である。
【0105】
基材部212は、充填物222と、充填物222を巻装する第1巻紙224とを含む。
【0106】
充填物222は、例えば、たばこ材料と、エアロゾル源とを含む。
【0107】
エアロゾル源は、所定温度で加熱され、充填物222の香味源に由来する香味物質等の物質とともにエアロゾルを発生する。エアロゾル源として、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。充填物222中のエアロゾル源の含有量は、特に限定されず、十分な量のエアロゾルの発生と、良好な香味の付与の観点から、通常5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、また、通常50質量%以下であり、好ましくは25質量%以下である。
【0108】
充填物222は、香味源としてたばこ材料を含む。たばこ材料は、例えば、たばこ刻である。香味吸引物品210における充填物222の含有量は、基材部212が周囲長22mm、長さ20mmの場合、例えば、200~400mgであり、250~320mgであることが好ましい。充填物222の水分含有量は、例えば、8~18質量%であり、10~16質量%であることが好ましい。このような水分含有量とすると、巻染みの発生を抑制し、基材部212の製造時の巻上適性を良好にすることができる。
【0109】
フィルタ214は、第1フィルタプラグ232と、第2フィルタプラグ234と、これらを覆うことにより連結している成形紙236とを有する。第1フィルタプラグ232の長手軸Lに沿う長さをL1とし、第2フィルタプラグ234の長手軸Lに沿う長さをL2とする。第2フィルタプラグ234は、紙管部216と第1フィルタプラグ232との間に配置されている。
【0110】
第1フィルタプラグ232は、第1フィルタ本体(フィルタ要素、濾材)242と、第1フィルタ本体242を巻装する第1プラグ巻取紙(筒状部)244とを有する。第1フィルタプラグ232の長さL1は、第1フィルタ本体242の長さと同じである。第1フィルタ本体242の外周と第1巻取紙244との間には、チャネル部43が形成されている。チャネル部43は、第1巻取紙(筒状部)244の内側にあり第2端面248と第1端面246との間を通気する。チャネル部43は、例えば図1Aから図1Cに示すのと同様に形成されている。チャネル部43は、管状体である紙管43b(図1D及び図1E参照)を含み得る。
【0111】
第1フィルタ本体242は、吸口側の第1端面(吸口側端面)246及び吸口側とは反対側の第2端面(基材部212側の端面)248を有する。第1端面246及び第2端面248の外形は、例えば略円形状である。第1フィルタ本体242には、第1端面246及び第2端面248に交差する長手軸(中心軸)Lが規定される。第1端面246は吸口側であり、第2端面248は基材部212側である。第1端面246は外側に露出する。
【0112】
第2フィルタプラグ234は、第2フィルタ本体(フィルタ要素、濾材)252と、第2フィルタ本体252の外周を巻く第2巻取紙(筒状部)254とを有する。第2フィルタプラグ234の長さL2は、第2フィルタ本体252の長さと同じである。第2フィルタ本体252は、第3端面256及び第4端面258を有する。第3端面256及び第4端面258の外形は、例えば略円形状である。第2フィルタ本体252には、第3端面256及び第4端面258に交差する長手軸(中心軸)Lが規定される。第3端面256は吸口側であり、第4端面258は基材部212側である。第3端面256は、第2端面248に対向又は接触する。
【0113】
成形紙236は、第1巻取紙244及び第2巻取紙254の外周に巻かれ、第1巻取紙244及び第2巻取紙254を連結する。
【0114】
巻紙218は、基材部212とフィルタ214とを紙管部216を介して接続するように、基材部212、紙管部216、及び、フィルタ214の外周を巻回する。
【0115】
第1フィルタ本体242及び第2フィルタ本体252は、紙製のシート又は不織布製のシートで形成されている。第1フィルタ本体242及び第2フィルタ本体252の関係は、第1実施形態で説明した第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52の関係と同じである。
【0116】
このため、第1フィルタ本体242のシートは、第2フィルタ本体252のシートよりも大きくクリンプ処理されていることが好適である。第1フィルタ本体242の通気抵抗は、第2フィルタ本体252の通気抵抗よりも高いことが好適である。第1フィルタ本体242の通気抵抗は、第2フィルタ本体252の通気抵抗よりも低くてもよい。第1フィルタ本体242の通気抵抗は、例えば0mmHO/mm~12mmHO/mmであり、第2フィルタ本体252の通気抵抗は、例えば0mmHO/mm~12mmHO/mmであることが好適である。
【0117】
第1フィルタ本体242のシートの通気度は、クリンプ処理の後、1000CU(コレスタユニット)~30000CUであり、第2フィルタ本体252のシートの通気度は、クリンプ処理の後、0CU~10000CUであることが好適である。
【0118】
第1フィルタ本体242の吸口側端面246を見たときの空隙量は、吸口でのアセテートフィルタの空隙量と同じか、それよりも大きい。第1フィルタ本体242の吸口側端面246を見たときの空隙の面積は、3mm以下であることが好適である。
【0119】
このように、フィルタ214は、第1実施形態で説明したフィルタ14と同様に、美観性を有するとともに、基材部212の充填物222から吸口側端面246に向かう、充填物222の香味源に由来する香味物質等の物質を含むエアロゾルに対し、適宜の濾過特性を有する状態に形成されている。
【0120】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下のことが言える。
【0121】
紙製のシートで形成したフィルタ214を含む香味吸引物品210を提供することができる。このとき、紙製のシートで形成したフィルタ214は、紙製でありながら、フィルタ214の吸口側の第1フィルタプラグ232にチャネル部43を形成することで、使用後のフィルタ214の吸口側端面246の汚れを、アセテートフィルタ、及び、チャネル部がない紙製のフィルタ114に対して抑制することができる。したがって、本実施形態に係るフィルタ214は、紙製でありながら、使用後の美観性を高めることができる。
【0122】
また、紙製のシートで形成したフィルタ214は、第1フィルタ本体242及び第2フィルタ本体252の材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、喫味(甘さ、煙量感、刺激、たばこ感(吸い応え)、等)をコントロールすることができる。このため、使用(吸引)の際に、たばこロッド12から吸口側端面246に向かう、香味源に由来する香味物質等の物質及びエアロゾルに対する濾過特性を適宜にコントロールしたフィルタ214が提供される。すなわち、適宜の濾過特性を有するフィルタ214を含む香味吸引物品210が提供される。
【0123】
本実施形態では、第1フィルタ本体242及び第2フィルタ本体252として、紙を用いる例について説明したが、材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、第1実施形態で説明した不織布のシート172a,172b,172c,172d(図18A参照)を用いることも可能である。すなわち、本実施形態によれば、紙製のシート又は不織布製のシートで形成され、美観性を高め、且つ、適宜の濾過特性を有する、フィルタ214及び、フィルタ214を含む香味吸引物品210が提供される。
【0124】
図示しないが、香味吸引物品210の通気抵抗を適宜調整するために、フィルタ214に、開孔部を設けて外部からの空気を取り込む態様であってもよい。この場合、紙管部216に開孔部を設けることが望ましい。
【0125】
香味吸引物品210の長手方向の寸法、すなわち長さは、40~90mmであることが好ましく、50~75mmであることがより好ましく、50~60mmであることがさらに好ましい。香味吸引物品210の周囲長は、15~25mmであることが好ましく、17~24mmであることがより好ましく、20~23mmであることがさらに好ましい。また、香味吸引物品210において、基材部212の長さは20mm、紙管部216の長さは20mm、第1フィルタプラグ232の長さは7mm、第2フィルタプラグ234の長さは8mmであってよいが、これら個々のセグメントの長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。
【0126】
充填物222において用いるたばこ刻の大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。さらに、上記のシート加工したものについて刻まずにギャザー加工したものをたばこ材料として用いてもよい。
【0127】
第1巻取紙244及び第2巻取紙254としては、それぞれ、第1実施形態で説明したシガレット10で使用される巻取紙44,54及びチップペーパ16と同じものを使用することができる。
【0128】
本実施形態に係る、フィルタ214を含む香味吸引物品210は、紙材、たばこ材料など、全て、又は、ほとんどが、自然由来の成分で形成可能である。このため、フィルタに例えばアセテートフィルタを用いる場合に比べて、自然に対する環境負荷を低減することができる。
【0129】
なお、第1実施形態の変形例(図19A及び図19B参照)で説明したように、第1フィルタ本体242を貫通するように、チャネル部43が形成されていてもよい。
【0130】
[第3実施形態]
第3実施形態について図21を用いて説明する。この実施形態は第1実施形態及び第2実施形態の変形例である。
【0131】
香味吸引物品310は、非燃焼加熱型香味吸引物品を構成する部材の1つである。
【0132】
図21に示す香味吸引物品(カプセル)310は、加熱器とともに用いられる交換可能なカートリッジである。香味吸引物品310は、一方向に沿って延びる柱状形状を有する。
【0133】
図21に示すように、香味吸引物品310は、カプセル本体(筒状部)311と、カプセル本体311に封入されたたばこ材料312と、たばこ材料312が漏れ出すのを防止するフィルタ314と、カプセル本体311に対してフィルタ314を支持するリング状のキャップ(エンドピース)316とを有する。
【0134】
カプセル本体311は、一端(吸口側)に開口322を有し、他端(たばこ材料312側)に網部324を有する。カプセル本体311は、フィルタ314が載置される段差326を有する。カプセル本体311の網部324は、例えば空気及び適宜の蒸気を通すが、たばこ材料312が漏れ出すのを防止するように、網目の大きさが調整されている。
【0135】
カプセル本体311及びキャップ316は、紙材又は不織布など、適宜の素材が用いられる。カプセル本体311及びキャップ316は樹脂材で形成されてもよい。カプセル本体311及びキャップ316は樹脂材で形成されている場合、全部又は一部の素材がリサイクル可能であることが好適である。
【0136】
たばこ材料312は、たばこ刻のほか、顆粒状のものが用いられる。
【0137】
フィルタ314は、空気及び適宜の蒸気を通すことが可能で、略円柱状に形成されている。フィルタ314は、第1フィルタ本体342と、第2フィルタ本体352とを有する。第1フィルタ本体342の長手軸Lに沿う長さをL1とし、第2フィルタ本体352の長手軸Lに沿う長さをL2とする。第1フィルタ本体342の外周とカプセル本体(筒状部)311との間には、チャネル部43が形成されている。第1フィルタ本体342及び第2フィルタ本体352は、カプセル本体311に保持される。カプセル本体311に対してキャップ(エンドピース)316が配置されたとき、キャップ316は、第1フィルタ本体342及び第2フィルタ本体352を支持し、第1フィルタ本体342及び第2フィルタ本体352がカプセル本体311から抜けるのを防止する。
【0138】
第1フィルタ本体342は、第1実施形態で説明した第1フィルタ本体42、第2実施形態で説明した第1フィルタ本体242と同様に、適宜の紙材又は不織布で形成され、材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等が適宜に調整されている。第2フィルタ本体352は、第1実施形態で説明した第2フィルタ本体52、第2実施形態で説明した第2フィルタ本体252と同様に、適宜の紙材又は不織布で形成され、材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等が適宜に調整されている。
【0139】
第1フィルタ本体342は、吸口側の第1端面(吸口側端面)346と吸口側とは反対側の第2端面(たばこ材料312側の端面)348とを有する。第2フィルタ本体352は、第1端面356と第2端面358とを有する。第2端面348と第1端面356とは、対向又は接触する。第1端面346は外側に露出する。なお、チャネル部43は、カプセル本体(筒状部)311の内側にあり第2端面348と第1端面346との間を通気する。チャネル部43は、例えば図1Aから図1Cに示すのと同様に形成されている。チャネル部43は、管状体である紙管43b(図1D及び図1E参照)を含み得る。
【0140】
第1フィルタ本体342のシートは、第2フィルタ本体352のシートよりも大きくクリンプ処理されている。第1フィルタ本体342の通気抵抗は、第2フィルタ本体352の通気抵抗よりも高いことが好適である。第1フィルタ本体342の通気抵抗は、第2フィルタ本体352の通気抵抗よりも低くてもよい。第1フィルタ本体342の通気抵抗は、例えば0mmHO/mm~12mmHO/mmであることが好適である。第2フィルタ本体352の通気抵抗は、例えば0mmHO/mm~12mmHO/mmであることが好適である。
【0141】
第1フィルタ本体342のシートの通気度は、クリンプ処理の後、例えば1000CU(コレスタユニット)~30000CUであることが好適である。第2フィルタ本体352のシートの通気度は、クリンプ処理の後、例えば0CU~10000CUであることが好適である。
【0142】
第1フィルタ本体342の第1端面346を見たときの空隙量は、吸口でのアセテートフィルタの空隙量と同じか、それよりも大きい。第1フィルタ本体342の第1端面346を見たときの空隙の面積は、3mm以下であることが好適である。
【0143】
このように、フィルタ314は、第1実施形態で説明したフィルタ14、第2実施形態で説明したフィルタ214と同様に、美観性を有するとともに、たばこ材料312から吸口側端面46に向かう、香味源に由来する香味物質等の物質及びエアロゾルに対し、適宜の濾過特性を有する状態に形成されている。
【0144】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下のことが言える。
【0145】
紙製のシートで形成したフィルタ314を含む香味吸引物品310を提供することができる。このとき、紙製のシートで形成したフィルタ314は、紙製でありながら、フィルタ314の吸口側の第1フィルタ本体342にチャネル部43を形成することで、使用後のフィルタ314の吸口側端面346の汚れを、アセテートフィルタ、及び、チャネル部がない紙製のフィルタ114に対して抑制することができる。したがって、本実施形態に係るフィルタ314は、紙製でありながら、使用後の美観性を高めることができる。
【0146】
また、紙製のシートで形成したフィルタ314は、第1フィルタ本体342及び第2フィルタ本体352の材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、喫味(甘さ、煙量感、刺激、たばこ感(吸い応え)、等)をコントロールすることができる。このため、吸引の際に、たばこ材料312から吸口側端面346に向かう、香味源に由来する香味物質等の物質及びエアロゾルの濾過特性を適宜にコントロールしたフィルタ314が提供される。すなわち、適宜の濾過特性を有するフィルタ314を含む香味吸引物品310が提供される。
【0147】
本実施形態では、第1フィルタ本体342及び第2フィルタ本体352として、紙を用いる例について説明したが、シートの材質、坪量、通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、第1実施形態で説明した不織布製のシート172a,172b,172c,172d(図18A参照)を用いることも可能である。すなわち、本実施形態によれば、紙製のシート又は不織布製のシートで形成され、美観性を高め、且つ、適宜の濾過特性を有する、フィルタ314及び、フィルタ314を含む香味吸引物品310が提供される。
【0148】
なお、第1実施形態の変形例(図19A及び図19B参照)で説明したように、第1フィルタ本体342を貫通するように、チャネル部43が形成されていてもよい。
【0149】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
以下、出願時請求の範囲を付記する。
[1]
吸口側の第1端面及び前記吸口側とは反対側の第2端面を有し、紙製のシート又は不織布製のシートで形成される第1フィルタ本体と、
前記第1フィルタ本体の前記第2端面の側にあり、前記第2端面に対向する第3端面を有し、紙製のシート又は不織布製のシートで形成される第2フィルタ本体と、
前記第2端面と前記第1端面との間を通気するチャネル部と
を有し、
前記チャネル部の通気抵抗は、前記第1フィルタ本体の通気抵抗に比べて低い、フィルタ。
[2]
前記第1フィルタ本体の前記第1端面を見たとき、前記第1フィルタ本体の空隙量は、前記チャネル部の空隙量よりも小さい、付記[1]に記載のフィルタ。
[3]
前記第1フィルタ本体の外周を巻く第1巻取紙を有し、
前記チャネル部は、前記第1フィルタ本体の外周面と前記第1巻取紙の内周面との間にある、付記[1]又は付記[2]に記載のフィルタ。
[4]
前記チャネル部は、紙製の管状体又は不織布製の管状体を有する、付記[3]に記載のフィルタ。
[5]
前記チャネル部は、前記第1フィルタ本体の前記第2端面と前記第1端面との間を貫通する筒状である、付記[1]又は付記[2]に記載のフィルタ。
[6]
前記チャネル部は、紙製の管状体又は不織布製の管状体を有する、付記[5]に記載のフィルタ。
[7]
前記第1端面は外側に露出している、付記[1]乃至付記[6]のいずれか1に記載のフィルタ。
[8]
前記第1フィルタ本体の紙製のシートは、前記第2フィルタ本体の紙製のシートよりも大きいクリンプ深さにクリンプ処理されている、付記[1]乃至付記[7]のいずれか1に記載のフィルタ。
[9]
前記第1フィルタ本体、及び、前記第2フィルタ本体は、それぞれ複数の不織布製のシートが重ねられてフォールディング処理されている、付記[1]乃至付記[7]のいずれか1に記載のフィルタ。
[10]
前記第1フィルタ本体及び前記第2フィルタ本体の前記シートの通気度は、1000CU(コレスタユニット)~30000CUである、付記[1]乃至付記[9]のいずれか1に記載のフィルタ。
[11]
前記第1フィルタ本体及び前記第2フィルタ本体の通気抵抗は、0mmH O/mm~12mmH O/mmである、付記[1]乃至付記[10]のいずれか1に記載のフィルタ。
[12]
付記[1]ないし付記[11]のいずれか1に記載のフィルタを有する、喫煙物品。
[13]
付記[1]ないし付記[11]のいずれか1に記載のフィルタを有する、香味吸引物品。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21