(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】クラスタベースの睡眠分析の方法、睡眠改善のためのモニタリングデバイスおよび睡眠改善システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20240122BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20240122BHJP
【FI】
A61B5/16 130
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2022515911
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2022014235
(87)【国際公開番号】W WO2022165125
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2022-10-07
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517230219
【氏名又は名称】フィットビット・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FITBIT LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ココシュカ,アリシア・ヨランダ
(72)【発明者】
【氏名】ステータン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】グレイチャウフ,カーラ・テリーサ
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110448779(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0069839(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0201269(US,A1)
【文献】国際公開第2019/133664(WO,A1)
【文献】特開2019-187681(JP,A)
【文献】特表2016-532481(JP,A)
【文献】特開2013-165828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
A61B 5/00
G16H 20/00-20/30
G16H 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実行される方法であって、
ユーザ集団についての睡眠関連データを収集することと、
前記睡眠関連データから初期の一組の睡眠特徴を求めることと、
前記初期の一組の睡眠特徴のクラスタリングを実行して、一組の睡眠者タイプに対応する一組のクラスタを生成することと、
複数の睡眠期間にわたって収集されたユーザについての睡眠関連データを取得することと、
前記睡眠関連データから、一組の睡眠指標のユーザ値を求めることと、
前記ユーザ値を、
前記一組の睡眠者タイプの各睡眠者タイプの睡眠指標値と比較して、前記ユーザの睡眠を最もよく表す睡眠者タイプを特定することと、
特定された前記ユーザの前記睡眠者タイプに関連する情報、および、前記ユーザ値と、特定された前記睡眠者タイプの平均的なユーザの前記睡眠指標値との比較に関連する情報を、前記ユーザに提示するために提供することと、
特定された前記ユーザの前記睡眠者タイプに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザに関連付けられた電子デバイスに少なくとも1つの調整を行わせることとを備える、方法。
【請求項2】
前記ユーザの睡眠の改善に役立つように前記ユーザに提示すべき少なくとも1つの提案を生成することをさらに備え、前記少なくとも1つの提案は、前記睡眠指標の前記ユーザ値と、特定された前記ユーザの前記睡眠者タイプとに少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項1に記載のコンピュータによって実行される方法。
【請求項3】
前記ユーザまたは前記ユーザの環境のうちの少なくとも一方の現在の状態を判定することをさらに備え、前記少なくとも1つの提案または前記少なくとも1つの調整は、前記現在の状態にさらに基づいて決定される、請求項2に記載のコンピュータによって実行される方法。
【請求項4】
前記ユーザが着用するウェアラブルモニタリングデバイス、前記ユーザに関連付けられたコンピューティングデバイス、または前記ユーザの周囲の環境に位置する感覚デバイスから、前記睡眠関連データの少なくともサブセットが取得される、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンピュータによって実行される方法。
【請求項5】
1つ以上の距離ヒューリスティックを用いて前記ユーザの前記睡眠者タイプを特定して、前記ユーザ値を前記一組のクラスタのそれぞれの睡眠指標値と比較することをさらに備える、請求項
4に記載のコンピュータによって実行される方法。
【請求項6】
特定された前記睡眠者タイプに関連する前記情報は、特定された前記睡眠者タイプを表すグラフィックオブジェクトを含み、前記グラフィックオブジェクトは、動画化されて前記情報のサブセットを前記ユーザに伝達することができる、請求項
1~5のいずれか1項に記載のコンピュータによって実行される方法。
【請求項7】
前記グラフィックオブジェクトは睡眠動物である、請求項
6に記載のコンピュータによって実行される方法。
【請求項8】
前記電子デバイスによって行われる前記少なくとも1つの調整は、表示、音量、明るさ、モード、動作状態、電力レベル、通信、構成、または動作、の変化のうちの少なくとも1つを含み、前記調整は、ユーザが所望の睡眠目標を達成するのを助けるように意図されている、請求項
1~7のいずれか1項に記載のコンピュータによって実行される方法。
【請求項9】
前記複数の睡眠期間は、前記ユーザが眠る機会があった複数日に対応する、請求項1~
8のいずれか1項に記載のコンピュータによって実行される方法。
【請求項10】
モニタリングデバイスであって、
ディスプレイデバイスと、
非侵襲的な測定システムと、
少なくとも1つのプロセッサと、
命令を含むメモリとを備え、前記命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記モニタリングデバイスに、
ユーザ集団についての睡眠関連データを収集させ、
前記睡眠関連データから初期の一組の睡眠特徴を求めさせ、
前記初期の一組の睡眠特徴のクラスタリングを実行して、一組の健康タイプに対応する一組のクラスタを生成させ、
前記非侵襲的な測定システムを用いて、複数のデータ収集期間にわたって収集されたユーザについての生理学的データを取得させ、
少なくとも前記生理学的データから、一組の健康指標のユーザ値を求めさせ、
前記ユーザ値を、
前記一組の健康タイプの各健康タイプの健康指標値と比較して、前記ユーザの健康状態を最もよく表す健康タイプを特定させ、
特定された前記ユーザの前記健康タイプに関連する情報を前記ディスプレイデバイスに表示させ、
特定された前記健康タイプと前記生理学的データとに少なくとも部分的に基づいて、少なくとも1つの自動化された変更をトリガさせる、モニタリングデバイス。
【請求項11】
前記自動化された変更は、前記モニタリングデバイスまたは外部電子デバイスのうちの少なくとも一方に対するものであり、前記自動化された変更は、前記ユーザの健康状態の改善に役立つように意図されている、請求項
10に記載のモニタリングデバイス。
【請求項12】
前記命令は、実行されると、前記モニタリングデバイスにさらに、
前記ユーザの健康状態を改善するための少なくとも1つの提案を前記ディスプレイデバイスに表示させ、前記提案は、特定された前記健康タイプに少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項
10または11に記載のモニタリングデバイス。
【請求項13】
前記一組の健康指標の前記ユーザ値は、1つ以上の外部データソースから取得された睡眠関連データにさらに基づいて求められる、請求項
10~12のいずれか1項に記載のモニタリングデバイス。
【請求項14】
特定された前記ユーザの前記健康タイプは、睡眠者タイプであり、特定された前記健康タイプに関連する前記情報は、前記睡眠者タイプを表すグラフィックオブジェクトを含み、前記グラフィックオブジェクトは、動画化されて前記情報のサブセットを前記ユーザに伝達することができる、請求項
10~13のいずれか1項に記載のモニタリングデバイス。
【請求項15】
睡眠改善システムであって、
1つ以上のプロセッサと、
命令を含むメモリとを備え、前記命令は、前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記睡眠改善システムに、
ユーザ集団についての睡眠関連データを収集させ、
前記睡眠関連データから初期の一組の睡眠特徴を求めさせ、
前記初期の一組の睡眠特徴のクラスタリングを実行して、一組の睡眠者タイプに対応する一組のクラスタを生成させ、
1つ以上の電子デバイスから、複数の睡眠期間にわたって収集されたユーザについての睡眠関連データを取得させ、
前記睡眠関連データから、一組の睡眠指標のユーザ値を求めさせ、
前記ユーザ値を、
前記一組の睡眠者タイプの各睡眠者タイプの睡眠指標値と比較して、前記ユーザの睡眠を最もよく表す睡眠者タイプを特定させ、
前記1つ以上の電子デバイスのうちの1つの電子デバイスに、特定された前記ユーザの前記睡眠者タイプに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの調整を行わせる、睡眠改善システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの調整は、特定された前記ユーザの前記睡眠者タイプに関連する情報、および、前記ユーザ値と、特定された前記睡眠者タイプの平均的なユーザの前記睡眠指標値との比較に関連する情報を、前記ユーザに提示するために提供することを含む、請求項
15に記載の睡眠改善システム。
【請求項17】
特定された前記睡眠者タイプに関連する前記情報は、前記睡眠者タイプを表すグラフィックオブジェクトを含み、前記グラフィックオブジェクトは、動画化されて前記情報のサブセットを前記ユーザに伝達することができる、請求項
16に記載の睡眠改善システム。
【請求項18】
前記1つ以上の電子デバイスは、前記睡眠関連データの少なくともサブセットを提供することができる、ウェアラブルモニタリングデバイス、感覚デバイス、ユーザコンピューティングデバイス、またはネットワーク接続されたスマートデバイス、のうちの少なくとも1つを含む、請求項
15~17のいずれか1項に記載の睡眠改善システム。
【請求項19】
前記命令は、実行されると、前記睡眠改善システムにさらに、
前記ユーザの睡眠の改善に役立つように前記ユーザに提示すべき少なくとも1つの提案を生成させ、前記少なくとも1つの提案は、前記睡眠指標の前記ユーザ値と、特定された前記ユーザの前記睡眠者タイプとに少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項
15~18のいずれか1項に記載の睡眠改善システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、「クラスタベースの睡眠分析(Cluster-Based Sleep Analysis)」と題され2021年1月29日に出願された米国特許出願第17/162,286号に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
睡眠検査および分析のためのさまざまな従来のアプローチでは、個人が睡眠クリニックを訪れ、その個人の睡眠が一晩かけてモニタリングされ得る。このような分析によって有益な情報を得ることができるが、この睡眠データが他の夜またはより長い期間にどの程度関連しているか、および個人が快適な環境の自分のベッドでどのように眠るかを判断することは困難である。フィットネストラッカーおよびスマートウォッチなどのウェアラブル技術の最近の進歩によって自宅で睡眠データを収集できるようになったが、これらのデバイスの着用者に表示される情報は一般化され過ぎていることが多く、特定の個人に関連した改善すべき点があるか否か、その改善を達成するためにできることがあるか否かなど、個人の睡眠の十分な理解をその個人に提供しない。
【0003】
本開示に従うさまざまな実施形態を図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】さまざまな実施形態に従って異なるデバイス上で生成され得る一例としてのインターフェイス状態を示す図である。
【
図2】さまざまな実施形態に従って生成され得る一例としての睡眠クラスタを示す図である。
【
図3】さまざまな実施形態に従う特定のユーザおよび生成され得る対応する睡眠者タイプの一例としての放射状グラフを示す図である。
【
図4】さまざまな実施形態に従って提供され得る一例としての比較睡眠データを示す図である。
【
図5A】さまざまな実施形態に従って利用され得る一例としてのディスプレイを示す図である。
【
図5B】さまざまな実施形態に従って利用され得る一例としてのセンサ構成を示す図である。
【
図6】さまざまな実施形態に従って利用され得る一例としてのデバイスインタラクションを示す図である。
【
図7】さまざまな実施形態に従って睡眠データを求め、提供し、利用するための一例としてのプロセスを示す図である。
【
図8】さまざまな実施形態に従って利用され得る一例としてのモニタリングデバイス光路を示す図である。
【
図9】さまざまな実施形態に従って利用され得る一例としてのネットワーク接続されたモニタリングデバイスのコンポーネントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な説明
以下の説明では、さまざまな説明のための実施形態について説明する。説明のために、具体的な構成および詳細は、実施形態の完全な理解を提供するために記載される。しかしながら、実施形態が具体的な詳細なしに実施されてもよいことも、当業者には明らかであろう。さらに、周知の特徴は、説明される実施形態を不明瞭にしないために省略または簡略化されてもよい。
【0006】
フィットネストラッカーなどのデジタル健康モニタリングデバイスが利用できるようになったこともあり、人々の健康意識はますます高まっている。このようなデバイスは、活動または動作データ、および安静時心拍数など、ユーザに関するさまざまなタイプの情報を取り込むことができ、これらの情報を用いて、それらのデバイスのうちの1つ以上を着用しているかそうでなければそれらのデバイスのうちの1つ以上に関連付けられている人に関する情報を推測することができる。これらのデバイスのうちの少なくともいくつか、またはこれらのデバイスと通信するシステムもしくはサービスは、このデータおよび他のデータを分析して、人の1つ以上の睡眠パターンを含み得る、その人の身体的健康に関する情報を提供することができる。これは、たとえば、その人の入眠および覚醒時間、ならびに、その睡眠中にユーザが深い睡眠、浅い睡眠、レム(急速眼球運動)睡眠、覚醒などの異なる睡眠ステージにあった可能性がある期間を含み得る。これらのデバイスのうちの少なくともいくつかは、特定の夜にまたは一連の夜にわたって得られた人の睡眠の質の尺度を提供する睡眠スコアを提供するなど、その人の睡眠の定量的評価も提供し得る。
【0007】
このデータはユーザにとって少なくともいくらかは有用であり得るが、これらのユーザは、データを完全には理解していない、またはデータをどのように解釈すればよいかが分かっていないことが多い。たとえば、ユーザは、ある夜に21分間レム睡眠をしていたことを示す情報を受け取っても、それが長すぎるのか、短すぎるのか、または妥当であるのかが分からないかもしれない。さらに、ユーザは、睡眠スコア89を受け取っても、それが何を表すのか、または目標値もしくは平均値が何であるべきかが分からないかもしれない。いくつかの例では、これらのデバイスは、この収集または推測された睡眠データに基づいて、もっと運動をするように、就寝前にアルコールやカフェインを摂取しないように、もっと早く寝るように、などの提案をし得る。残念ながら、このような情報は比較的一般的なものであり得、任意の個人にとっては特に役に立たない場合がある。さらに、カフェインやアルコールを摂取しない人は、この提案を的外れであると思うだけでなく、実際に不快に感じる可能性もあり、これによって情報の全体的価値および製品またはサービスの有用性が低下し得る。
【0008】
したがって、さまざまな実施形態に従うアプローチは、より詳細で特定の個人に関連した睡眠分析を提供することができる。さまざまなアプローチは、特定の個人に関連しているだけでなく、ほとんどの人にとって理解しやすく分かりやすいはずの提案、視覚化、および考察も提供することができる。さまざまなアプローチは、ユーザが着用しているデバイスに対して、または何らかの方法で個人の睡眠に影響を及ぼし得るその個人に関連付けられたデバイスに対して、この睡眠関連データの少なくとも一部に基づいて自動的に変更を行うか引き起こすことができる。
【0009】
図1は、少なくとも1つの実施形態に従って利用され得る一例としての表示アプローチ100を示す。この例では、ユーザは、フィットネストラッカーもしくはスマートウォッチなどのウェアラブルコンピュータ102またはモニタリングデバイスをそのユーザの手首または腕104に着用し得る。スマートリング、バンド、イヤホン、ストラップ、衣服、コンタクト、パッチ、および他の「スマート」デバイスまたはネットワーク接続されたデバイスを含み得る、他の場所にまたは他の方法で着用され得る他のウェアラブルコンピュータまたはモニタリングデバイスも利用可能である。多くの実施形態では、ウェアラブルコンピュータまたはデバイスは、本明細書に記載のように、着用しているユーザが自分の身体または精神状態に関連する情報を入力または受信することを可能にするタッチセンシティブディスプレイを含む。この例では、ウェアラブルデバイスは、ユーザに関連付けられた少なくとも1つの他のコンピューティングデバイス110と無線通信(たとえば、Bluetooth(登録商標)またはWi-Fi)することができる。これらのデバイス102,110の各々は、少なくともデバイスのユーザに情報を伝達するために使用可能な表示画面などの何らかのタイプの提示メカニズムを含み得る。このようなデバイスについて知られているように、フィットネストラッカーなどのウェアラブルデバイスは、スマートフォン、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、またはタブレットコンピュータなどの別のユーザデバイスと通信し得る。なぜなら、ウェアラブルコンピュータ上ではリソース、バッテリ寿命、および面積が制限され得るので、その他のこのような選択肢のうちでも特に、データを分析および提示のために別のデバイスに送信することが望ましい場合があるからである。
【0010】
本明細書において後でより詳細に記載されるように、ユーザのデータは、ウェアラブルデバイス102、関連付けられたコンピューティングデバイス110、または他の電子デバイスもしくはメカニズムを用いて収集することができる。ウェアラブルデバイス102は、ユーザに関する情報を測定または検出するのに使用可能な、動作センサおよび温度センサなどのさまざまなセンサを含み得る。いくつかの説明のための実施形態におけるセンサは非侵襲的であり、着用しているユーザの体内には一切器具を挿入する必要がない。一実施形態では、ユーザインターフェイスは、ユーザが指定データを入力する能力を提供することができる。ウェアラブルデバイス102は、少なくとも1つの発光体と少なくとも1つの光検出器または受光器とを含む光学測定サブシステムをさらに含み得る。発光体は1つ以上の波長の光を発することができ、この光はユーザの皮膚表面から反射され、または表面下を移動した後に拡散反射され、受光器のうちの少なくとも1つによって検出され得る。このような光学アセンブリは、ユーザがモニタリングデバイス102を着用している間にモニタリングデバイスがさまざまなタイプの情報を測定することを可能にし得る。
【0011】
この収集データの少なくとも一部を分析して、ユーザが対応する「睡眠者」のタイプまたはカテゴリを決定しようと試みることができる。睡眠者のタイプ、すなわち睡眠者タイプを決定できることは、ユーザがそれによって自分の睡眠をその睡眠者タイプの他の睡眠者と比べてよりよく理解できるようになり得るため、ユーザにとって有益であり得る。さらに、睡眠者のタイプにさらに関連している、したがってそのタイプの特定のユーザに関連している可能性が高い提案を提供することができる。そしてさらに、このような分類は、そのユーザに比較的特有であるが、特に同様のユーザの睡眠に関して、ほとんどのユーザにとって比較的理解しやすいはずの方法で提供可能または視覚化可能な分析を提供するのに役立ち得る。
【0012】
少なくとも1つの実施形態では、ユーザについて収集された睡眠関連データを分析および使用して、そのユーザが属する睡眠者のカテゴリまたはタイプを決定することができる。少なくとも1つの実施形態では、複数のユーザのデータを分析および使用して、ユーザが分類され得る一組の睡眠者タイプまたはカテゴリを生成することができる。本明細書中の他の箇所でより詳細に記載されるように、これらのカテゴリまたは睡眠者タイプが決定されると、各タイプの関連した側面を決定して他のタイプの側面と対比させることにより、各睡眠者タイプの最も特徴的な習慣(またはパターンまたは特徴など)を決定することができる。少なくとも1つの実施形態では、次にこれらの習慣を分析して、ユーザにとって理解しやすいはずの、そのそれぞれの睡眠者タイプを表すカテゴリラベルを関連付けようと試みることができる。
【0013】
睡眠者タイプラベルの一例は、「睡眠動物」であり得る。各睡眠動物は、それぞれの睡眠者タイプを表すことができ、ユーザが理解できるようにその睡眠者タイプを少なくともいくらか示し得る。たとえば、「クマ」の睡眠動物は、クマが冬眠するように、人が長期間熟睡する傾向がある睡眠者タイプに関連付けられ得る。別の例は、ユーザが異なる睡眠状態を頻繁に「跳び越え」る「カンガルー」の睡眠動物、またはユーザが大部分のユーザよりもかなり眠りが浅い「ハチドリ」の睡眠動物であり得る。さまざまな他のラベル、タイプ、および特性も、さまざまな実施形態の範囲内で使用可能である。このようなアプローチは、ユーザが、少なくとも他の睡眠者と比べて、特に他の同様の睡眠者と比べて、自分の睡眠者タイプを理解するための比較的簡単で分かりやすい方法を提供することができる。さらに、ユーザの睡眠者タイプが経時的に切り替わった場合は、このアプローチは、ユーザがその変化を理解して経時的にその変化に従うための比較的簡単な方法を提供する。いくつかの実施形態では、睡眠動物は、異なる健康転帰、特に、体格指数(BMI)、安静時心拍数(RHR)、および心拍変動(HRV)の特定のプロフィールに関連付けられ得る。
【0014】
このようなラベリングのためのアプローチの利点は、さまざまなタイプのユーザが容易に理解して従い得る視覚化を提供できるということである。たとえば、睡眠動物108の比較的単純な動画バージョンを、他の関連情報106とともに、ウェアラブルコンピュータのディスプレイに提示することができる。これをさまざまな時間に提示してユーザにそのユーザの睡眠者タイプを思い出させることができ、これは、ユーザがその睡眠者タイプの特性に少なくとも部分的に基づいて活動に関する決定を下すのに役立ち得る。さらに、この睡眠動物は、ユーザが眠りにつくこと、くつろぐことなどを考えるべきときなど、ユーザを促すことまたは特定の情報を伝達することが望ましい特定の時間に提示することができる。少なくともいくつかの実施形態では、睡眠動物が明かりを消すかデバイスを切る、ベッドに入る、アラームを設定するなど、睡眠動物を動画化してこの情報または他のこのような情報を伝達することができる。少なくともいくつかの実施形態では、ウェアラブルコンピュータ上の睡眠動物の提示はさらに、より詳細な情報を提供し得る追加情報が、接続されたスマートフォンなどの関連デバイス上で利用可能であることを伝達してもよい。たとえば、ウェアラブルコンピュータ上に簡単なサマリが提供されてもよく、ユーザは接続されたユーザデバイス110にアクセスして追加の詳細またはコンテンツ114を得ることができる。ユーザはさらに、ユーザアカウントを通してアクセスできるデスクトップまたはラップトップコンピュータ上のブラウザを介するなどして、他のデバイス上の追加情報にもアクセス可能であり得る。
【0015】
一例では、特定された集団にわたって存在する6個の典型的な睡眠者タイプが定義されて開発された。この例では、利用可能な指標またはデータから選択または定義された11個の睡眠指標もあった。これらの睡眠指標を用いて、ユーザが、同じまたは同様の睡眠者タイプなどのユーザに似た他の人々と比較して、過去28日間の夜などの一定期間にわたってどのように眠ったかを判定することができる。しかしながら、異なる実施形態または実現例では、追加のタイプもしくは指標、より少ないタイプもしくは指標、または代替のタイプもしくは指標が存在する場合もあり、利用されるタイプの数は、クラスタリングのタイプおよび結果、モニタリングしている健康指標のタイプ、評価対象の集団、などの要因に依存し得ることを理解すべきである。次に、それぞれの睡眠者タイプおよびこれらの高度な睡眠指標の値に少なくとも部分的に基づいて、睡眠経歴などのユーザプロフィールを生成することができる。ユーザプロフィールは、ユーザの睡眠動物を用いてユーザの睡眠者タイプをユーザに教えること、およびそれらの高度な睡眠指標にわたってそのユーザがどのように評価されるかをユーザに教えることに役立ち得る。これらの経歴は、ユーザについて求められた情報または睡眠者タイプに基づいて静的であってもよいし、動的であり、新しい睡眠関連データ、提案、または他の情報が取得、受信、更新、または生成されるにつれて更新されてもよい。
【0016】
少なくとも1つの実施形態では、ユーザの過去の睡眠データを利用できるため、たとえば、睡眠動物の形態で、または分かりやすいがパーソナライズされたユーザの睡眠の判定を提供する他の特性化の形態で、ユーザの睡眠行動のパーソナライズされた特性化を選択することができる。特性化の他の例として、人、地理、天候、車両などのタイプを挙げることができ、それらの特性化の異なる側面を、さまざまなユーザの睡眠の異なる側面に関連付けることができる。さらに、本明細書に記載のように、このようなアプローチは睡眠に限定されるわけではなく、精神状態、身体的健康、フィットネス、性格タイプなどに関連し得る、他の身体的または精神的健康の側面にも使用可能である。経歴、またはコンテンツの他のインターフェイスもしくは提示を用いて、ユーザが高度な睡眠指標にわたって自分に似た他の人々と比較してどのように眠っているかをユーザに教える視覚化を提供することができる。ユーザの典型的な睡眠の特性化は、ユーザが自分の睡眠を改善できる機会を特定することができ、健康モニタリングシステム、サービス、またはデバイスがユーザを正しく理解しているとそのユーザに感じさせることができる。
【0017】
さまざまな実施形態では、睡眠経歴は、前夜からの睡眠の質を評価する睡眠スコアなどの他の睡眠関連情報を補足することができる。特に、所与の睡眠スコアは、昨夜の入眠および覚醒時間、深い睡眠およびレム(急速眼球運動)睡眠の時間、ならびに睡眠時心拍数および落ち着きのなさといった要因を評価し得るか、または当該要因から計算され得る。しかしながら、上述のように、このようなスコアだけでは、睡眠の一貫性、睡眠クロノタイプ、不眠または無呼吸に起因し得る睡眠の断片化、および多相睡眠パターンなど、長期的な睡眠パターンの分析が欠如している場合がある。睡眠経歴は、過去28日間の夜などのある期間のユーザの睡眠を特性化および視覚化するのに役立ち得、これは、たとえば前月のユーザの睡眠を判定する睡眠レポートカード、または他のこのようなコンテンツの提示を開発するための基礎として使用することができる。少なくとも1つの実施形態では、このような睡眠プロフィールは、「良い」もしくは「悪い」睡眠、または1つ以上の前の期間もしくは他のユーザと比べて「良い」または「悪い」睡眠などを定量化するのに役立ち得、この情報を用いて実行可能な睡眠レポートカードを作成することができ、この睡眠レポートカードは健康関連の実行可能なサマリスコアのより大きな範囲または提示もサポートし得る。数日間の夜またはいくつかの睡眠期間にわたってデータを収集することは、ユーザの睡眠の確率を求めるのにも役立ち得、これは、過去の睡眠だけでなく予想される睡眠にも基づいてユーザに対してよりよい提案をするのにも役立ち得る。
【0018】
ユーザの睡眠者タイプを決定するために、少なくともいくつかの実施形態では、まず可能性のある睡眠者タイプについての決定がなされる。これは、複数のユーザのデータを収集および分析し、次にその分析に少なくとも部分的に基づいて睡眠者タイプを決定することを含み得る。上述のように、これは、多数のソースのうちのいずれかによって収集、検出、またはそうでなければ提供され得る任意の潜在的に睡眠に関連するデータの分析を含み得る。たとえば、ウェアラブルコンピュータまたはセンサは、動作、活動レベル、呼吸パターン、心拍数、血液化学物質、皮膚温、周囲温度、および体位データなどの情報を提供可能であり得る。スマートフォンなどのカメラまたはマイクを有するデバイスは、音、画像、または映像データと、周囲光、地理的場所、圧力、室温、および活動データを含み得る、そのデバイスのセンサによって取り込まれ得るその他のデータとを提供可能であり得る。近くにある別のスマートデバイスまたは接続されたデバイスは、動作、活動、天候、湿度、デバイス状態、ユーザ状態、および他のこのような情報などの追加データを提供可能であり得る。ユーザも、性別、年齢、人種、病歴、服用中の薬、精神状態情報、身体活動レベルなどの情報を含み得る、さまざまなタイプの情報を1つ以上のインターフェイスを通して提供し得る。この情報の少なくとも一部は、ユーザアカウント、公開データベース、医療データベース、家系図データベース、またはサードパーティソースなど、1つ以上の他のソースからも取得可能であり得る。
【0019】
少なくともいくつかの実施形態では、このデータの一部またはすべてを分析のために集約することができる。さまざまなアプローチを用いてこのデータを分析して、分析に含めるべきデータを選択しようと試みることができる。次に、選択したデータをさらに分析して、データセットの次元を減少させようと試みることができる。たとえば、データを処理して、データセットの冗長性を排除しようと試みることができる。次に、データセットを、異なる睡眠者タイプを特に示す比較的少数の要因に減少させようと試みることができる。少なくとも1つの実施形態では、これは、異なるクラスタリングパラメータを用いて、k平均クラスタリングなどの、1つ以上のクラスタリングアルゴリズムを使用するクラスタリングを実行することを含み得る。このプロセスは、互いに十分に異なる比較的少数のクラスタが得られるまで、反復して継続され得る。
図2は、さまざまな実施形態に従って利用され得る一例としての睡眠者タイプの集合を示す一組の放射状プロット200を示す。この特定の例では、クラスタリングによって6つの別個の睡眠者タイプが得られた。これらのタイプは、睡眠者タイプまたは質を決定する上で最も重要であるか少なくとも影響が大きいと判断される10個の睡眠パラメータを用いて決定された。上述のように、他の数および選択の睡眠パラメータもこのような目的に使用可能である。少なくとも1つの実施形態では、追加のパラメータを用いて、クラスタまたはタイプが決定され得、次にそれらのタイプを区別するために用いられる最も重要な要因の数が決定され得る。
【0020】
図2のような視覚化をユーザに提供することにより、ユーザは、自分の睡眠動物または他の睡眠者タイプの値を、他の睡眠カテゴリの値と比較することができる。たとえば、この例では「カメ」タイプであるユーザは、これらの動物の中で入眠までの時間が最も長いが、入眠後は1時間当たりに目覚める回数は比較的少ない。これらの異なるタイプのプロットを視覚的に比較することができなければ、ユーザは、そのユーザの睡眠動物のデータのみをどのように解釈すればいいのか、またはそれを他の動物タイプのデータとどのように比較すればいいのか、分からないかもしれない。さらに、ユーザは、自分が異なる睡眠者タイプを有していると思うかもしれないが、なぜそれとは異なる睡眠者タイプがユーザにより正確に提供されている可能性があるのかを、これらの比較から理解するのを助けることができる。さらに、ユーザはほとんどの時間眠っており、一晩の睡眠全体のほんの一部しか自覚していないため、ユーザの認識は誤解を招く可能性があるという情報をユーザに提供することができる。
【0021】
このような視覚化は、ユーザの睡眠者タイプが他の睡眠者タイプと比較してどうであり得るかについての洞察をそのユーザに提供し得るが、視覚化は、ユーザが同じ睡眠者タイプの他の動物と比較してどうなのかについての十分な情報を提供しない場合がある。したがって、
図3に示されるような視覚化300をユーザに提供することができる。この例では、ユーザに、その個人ユーザの睡眠指標値を示すプロット(図中左側)と、その特定の睡眠者タイプ(ここではカンガルー)のユーザの平均値を示すプロット(右側)とが提供される。これらのプロットの全体の形は、ユーザがなぜその特定の睡眠者タイプを有するように分類されたかを理解できるように、ある程度似ていることがわかる。しかしながら、これらのプロットを一緒に表示すると、ユーザは、そのユーザの睡眠がその同じ睡眠者タイプの他のユーザと比較してどうなのかを理解することができる。たとえば、ユーザは、この睡眠者タイプのユーザには約30の回復値が典型的であると判断することができる。その同じユーザは、このユーザの深い睡眠分数は平均的なユーザよりも長く、第100パーセンタイルに近いが、深い睡眠時間も、第50パーセンタイル付近のこの睡眠者タイプの平均的なユーザよりもかなり長いと判断することができる。ユーザは、このユーザはこのタイプの平均的なユーザよりも就寝時間がかなり遅く、睡眠時間がかなり長い傾向があることも理解できる。このタイプの比較に基づいて、ユーザがもっと早く寝るか睡眠時間を短くすることによってこの睡眠者タイプのユーザにより典型的なパターンを有するようにとの提案がされてもよい。このユーザの回復度は平均よりも低いが、この睡眠者タイプのユーザには典型的であるため、回復度を高めようとする試みはこの睡眠者タイプのユーザにとってそれほど有益ではない場合がある。いくつかの実施形態では、ユーザは、そのユーザの睡眠指標のプロットと、
図2に示される他の人々などの異なる睡眠者タイプの睡眠指標との比較を見て、そのユーザが他の睡眠者タイプと比較してどうなのかを理解することも可能であり得る。ユーザがなりたいと思う睡眠者タイプがある場合は、ユーザは、そのユーザの睡眠指標が目標の睡眠者タイプの睡眠指標とどのように異なるかを見ることができ、それらの差に従って調整しようと試みることができる。
【0022】
このような提示は、少なくとも、全体的な睡眠パターンまたは状態が正常と見なされるべきか否かをユーザに伝達するのに役立ち得るという点で、従前のアプローチの欠点を克服するのに役立ち得る。これは、特定の睡眠指標が一般的な人々または同じ睡眠者タイプの他の人々と比べて正常であると見なされるべきか否かを視覚化するのにも役立ち得る。これは、ユーザが、これらの値のうちのいずれかに基づいて心配すべきか否か、および変更が可能であるか変更を行うべきか否かを判断するのに役立ち得る。少なくともいくつかの実施形態では、提案エンジンを用いて、そのユーザにはどの目標が短期的および中期的に達成可能であるかに関するコンテキストを提供することができる。この情報および他のこのような情報は、ユーザの睡眠経歴の一部として提供することができ、ユーザがうまく行っている物事、および改善できるかもしれない物事をユーザに知らせるのに役立ち得る。このようなアプローチは、他の人々がこのユーザと比較してどうなのか、およびそれらのユーザが改善できたかもしれないこと、および同じ睡眠者タイプの他のユーザに効果があったことについて、少なくともある程度のコンテキストを提供することもできる。
【0023】
一例では、先月などのある期間にわたって人がどのように眠ったかを記述するのに役立ち得る、1000個を超える睡眠関連の特徴が分析された。このデータを、睡眠の専門家およびデータ分析を用いるなどして分析して、人の就寝時間およびその人が一晩の間に覚醒した回数など、睡眠判定に最も関連する値を選択しようと試みることができる。次に、この膨大な特徴の収集を、約50~75個の特徴値、または一具体例では64個の特徴値など、かなり少ない数にまで減らすことが可能であり得る。上述のように、これらの特徴は、データが重要であると示しているもの、および睡眠の専門家が重要であると考えているものに少なくとも部分的に基づいて選択され得る。このデータの選択は、それらの特徴に基づいて実行可能なクラスタリングの質に基づいて行うこともできる。上述のように、選択された特徴が特徴空間に射影されてユークリッド距離がクラスタリングに利用されるk平均クラスタリングアプローチを含み得る、さまざまなクラスタリングアルゴリズムが利用され得る。少なくともいくつかの実施形態では、クラスタリングは、解釈可能性、個々のクラスタのコンパクトさ、またはクラスタ間の分離などの側面について最適化されてもよい。さまざまな実施形態では、クラスタリングが高次元空間でうまく機能しない場合があるため、主成分分析(PCA)などのアプローチを用いて、選択された特徴を取り、次元を減少させることができる。一例では、PCAは次元を64個の主成分から約22個の主成分にまで減らすのに役立ち、次にそれらの主成分に対してクラスタリングを実行した。次に、一連のヒューリスティックまたはルールを適用して、これらのクラスタに基づいて睡眠者タイプを最終決定することができる。すべての関連特徴を示す代わりに、これらの特徴のサブセット(たとえば10個の特徴)を選択して、睡眠者タイプデータとともにユーザに表示することができる。これらの選択された重要な特徴は、睡眠を判定および/または理解するために最も重要であると判断された指標である、高度な睡眠指標に対応し得る。ユーザが2つの異なる睡眠者タイプと似ている可能性がある場合、またはユーザが支配的な睡眠者タイプとの関連付けを有していない場合は、少なくともいくつかのルールを適用して、ユーザに対して示される睡眠者タイプを選択または調整してもよい。
【0024】
さまざまな他のタイプの視覚化も提供することができる。たとえば、
図2および
図3に示すような多次元プロットの代わりに、ユーザは、ユーザの具体的な睡眠指標を平均的なユーザ、またはさらには所与の睡眠者タイプのユーザの値とより直接的に比較する視覚化またはレポートを得ることを望む場合がある。1つのこのような視覚化400が
図4のグラフに示されている。この例では、個々の睡眠指標ごとにユーザ値が平均値と直接比較される。このような視覚化は、ユーザが平均よりもかなり高いそれらの指標(たとえば、就寝時間、睡眠時間、深い睡眠分数、および覚醒回数)、ならびにユーザが平均よりもかなり低いそれらの指標(たとえば、%レム)を迅速に求めるためのより分かりやすい方法を少なくとも一部のユーザに提供し得る。さらに、このグラフは、各睡眠指標の平均値が何であるかを示す。ユーザは、異なるタイプを選択するか見ることが可能であり得、将来ユーザにこのような情報を提示するために使用可能な好みまたはお気に入りを提供することが可能であり得る。ユーザは、そのユーザが望まない形式を示す能力も有し得、ユーザ値、平均値、および同じグラフ上の所与の睡眠者タイプの平均値を比較するなど、これらの提示をカスタマイズする少なくとも何らかの能力を有し得る。
【0025】
上述のように、この情報は、パーソナライズされた睡眠分析、サマリ、または経歴の一部として提供することができる。睡眠指標値および睡眠動物視覚化を提供することに加えて、そのユーザがうまく行っている物事、および改善できるかもしれない物事をユーザに具体的に示し得る情報を提供することができる。この情報は、ユーザがうまく行っていないかもしれない物事、または差が大きいかもしれない物事について、そのユーザについて収集されたデータと、同じまたは同様の睡眠者タイプの他のユーザに効果があったこととに少なくとも部分的に基づいて、それらの物事を改善するのにどのアプローチが役立ち得るかも示し得る。さまざまな例においてパーセンテージが提供されているが、すべてのユーザにわたる、および所与の睡眠者タイプのユーザにわたる平均分数に対する、ユーザの各睡眠タイプの平均分数を示すなど、そのユーザにとって有用であり得る他のタイプのデータが提供されてもよい。また、これらの睡眠指標の各々がなぜ重要であるかに関する情報、および個人ユーザの目標値に関する情報も提供することができる。望ましくない傾向または予測値を回避するのに役立つように、傾向を特定し、予測を行い、提案を提供することもできる。いくつかの実施形態では、予測または異常値はインターフェイスをトリガして、潜在的な原因を絞り込むのに役立ち得る、またはより的を絞った提案を生成するのに役立ち得る情報をユーザに要求し得る。これは、ストレス、痛み、カフェインまたはアルコール摂取量、食事パターンなど、データのモニタリングによって判断することが困難であり得るものについて尋ねることを含み得る。
【0026】
本明細書に記載のように、このような情報は、ウェアラブルモニタリングデバイス502などのデバイスから少なくとも部分的に収集することができ、当該デバイスを用いて少なくとも部分的に提示することができる。これは、睡眠状態の有意義な分析を行うのに必要な種類のデータを得る際の障壁を減らすのに役立ち得る。なぜなら、ウェアラブルデバイスはより頻繁にデータ点を集め、このような分析を定期的に、場合によっては1日に何度も行うことができるので、カフェイン摂取時の睡眠状態、睡眠が活動および/または摂取した食物にどのように基づいているか、ならびにユーザがどれほどのストレスを感じているか、などの関係を判断することができるからである。このようなデバイスは、この睡眠データを数日、数週間、または数ヶ月などのある期間にわたって収集することも可能にする。より長い期間にわたって収集されたデータは、さまざまな睡眠指標のよりよい平均値または範囲を提供するのに役立ち得、睡眠の傾向またはパターンを特定するのにも役立ち得る。このようなデータ収集は、所与の夜についてのデータが所与のユーザにとって典型的であるか非典型的であるかを判断するのにも役立ち得、これは任意の収集データをコンテキストの中で解釈するのに役立ち得る。たとえば、一晩のデータしか取り込まない睡眠検査では、このような判断は一般に不可能であるため、その分析の精度が制限され得る。
【0027】
一実施形態では、ユーザは、光学測定サブシステム光電式指尖容積脈波(「PPG」)コンポーネント552および加速度計などのコンポーネントを含むモニタリングデバイス502を着用し得る。PPGは、
図5Bに示されるように、デバイスの着用者の手首に近い側に1つ以上の発光体および1つ以上の検出器を用いるなどして皮膚を照らし、光の吸収の経時的変化を測定することによって、容積測定値を得ることができる。これらの変化の周波数は、ユーザの心拍数または脈拍を表し得る。これらの測定値は動作の影響を受けやすい場合があるので、少なくともいくつかの実施形態ではユーザの安静時心拍数(RHR)を求めようと試みることが好ましい場合がある。これは、たとえばユーザが眠っている夜間に達成され得るが、他の低活動期間(またはさらには活動に依存しない期間)も、さまざまな実施形態の範囲内で使用可能である。モニタリングデバイス502は、たとえば光信号のピークを検出することによって心拍数を求めることができる。いくつかの場合において、過剰な動作などが原因で明確なピークが存在し得ないため、心拍数を確実に検出できないことがある。加速度計、慣性センサ、または他のこのようなセンサもしくはコンポーネントを含むモニタリングデバイス502の場合、過剰な動きの期間を求めて分析から除外することができる。説明のための他の実施形態では、これらの期間のデータはそのまま利用され得るが、分析では動作の影響が考慮される。加速度計などのセンサを用いて全体の睡眠期間(たとえば、午後11時から午前7時まで)を求めることもできる。次に、ユーザのRHRの推定値を計算することができる。一実施形態では、一晩の心拍数値のヒストグラムを生成することができる。次に、このヒストグラムの第10パーセンタイルなどの指定測定値をRHRの代表値として取ることができる。RHR値は、ユーザが少なくとも5分間などの少なくとも最短期間中はじっとしており、光信号が十分に高い信号対雑音比である時間セグメントを使用することのみなどによって、他の方法で求めることもできる。RHR値が求められると、RHR値を用いて、睡眠期間を含むその被験者の1日全体を特性化することができる。モニタリングデバイスは、本明細書に記載のように、皮膚温を測定するために使用可能な温度センサなどの他のセンサまたは検出器も含み得、当該デバイスは次に、健康関連データ506の1つ以上の追加表示を通してユーザに対して表示することができる。
【0028】
取り込まれる生理学的データは、任意の潜在的に関連するデータを含み得る。このデータは、心拍数(HR)、RHR、SpO2、ヘモグロビン濃度、保水、皮脂またはコラーゲン含有量、血液または間質組織中の脂質含有量、睡眠ロギング、睡眠の質、睡眠時間、睡眠ステージアーキテクチャ(睡眠開始からの時間、全就床時間、全覚醒時間を含むが、これらに限定されるわけではない)、日中および睡眠中のHRV指標、HRから導出される指標、異なるHRゾーンで過ごした時間、呼吸数、活動分数、運動ロギング、高度変化、歩数、食物ログ、水分ログ、体重測定値、体格指数、身体インピーダンス分析、気分ログ、症状ロギング、時間帯の変化、場所、基礎体温、口腔体温、耳内体温、尿または血液検査試料によって検出されるホルモンレベルなどを含むが、これらに限定されるわけではない。一例では、RHRおよびヘモグロビン濃度のデータは、本明細書に記載のように光センサの選択を用いて収集することができるが、他のアプローチも使用可能である。本明細書に記載のデータは一例に過ぎず、他の組み合わせまたはタイプの指標および情報も、さまざまな実施形態の範囲内で使用可能であることを理解すべきである。
【0029】
少なくともいくつかの実施形態では、ユーザについて求められた睡眠関連情報を、多数の異なるデバイスまたは通信チャネルを用いて多数の異なる方法でユーザまたは関連エンティティに提示または提供することができる。これは、その他のこのような選択肢のうちでも特に、分析のための生データ、またはこのような分析の結果を含み得る。少なくとも1つの実施形態では、睡眠関連データは、
図6のシステム概観600に示されるように、ユーザが着用するウェアラブルモニタリングデバイス602、またはユーザに関連付けられたコンピューティングデバイス606などのデバイスを用いて収集されるか求められてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、このようなデータはさらに、ユーザに関連付けられた1つ以上のスマートデバイス604によって収集されてもよい。このようなスマートデバイスは、睡眠分析または他のこのような健康もしくは状態分析に有用であり得るデータを収集するか求めることができるとともに、そのデータを有線または無線接続を介するなどして何らかの方法で別のコンピューティングデバイスに提供することができる任意のデバイスを含み得る。この接続は、直接的なものであってもよいし、少なくとも1つのネットワーク610を通じたものであってもよいし、1つ以上の他のデバイスまたはチャネルを介したものであってもよい。スマートデバイスは、たとえば、温度データを提供可能なスマートサーモスタット、状態データ(たとえば、オン/オフ状態、明るさ、音量、ブルーライト状態、または表示されているコンテンツのタイプ)を提供可能なスマートテレビ、設定データを提供可能なスマートアラーム、アクセスデータを提供可能なスマート冷蔵庫、および他のこのようなデバイスを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、このデータは、睡眠分析機能を有するアプリケーションを実行するタブレットまたはデスクトップコンピュータなどのユーザコンピューティングデバイス606による分析のために収集されてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、このデータの少なくとも一部を、健康モニタリングデバイス602または健康モニタリングソフトウェアに関連付けられたサービスプロバイダシステム608に提供することができる。いくつかの実施形態では、ユーザは、代わりに、このサービスプロバイダ608によって提供されるサービスに加入してもよく、その場合、サービスプロバイダ608はデータを受信して睡眠関連の分析または提案を提供することができる。いくつかの実施形態はさらに、このデータ収集もしくは分析の少なくとも一部について、または分析に有用な関連データを収集するために、サードパーティシステム612またはサービスを利用してもよい。たとえば、このサードパーティシステム612は、他の個人の睡眠データ、更新された睡眠分析などを提供してもよい。いくつかの実施形態では、サードパーティシステム612は、スマートデバイス604のうちの1つ以上に関連付けられてもよく、それらのデバイスによって収集されてサードパーティシステムに提供されるデータを提供することができる。たとえば、ドアおよび窓が開いたこと、動作、煙、および他のこのようなデータに関する情報を提供可能なスマートアラームシステムが、そのデータをサードパーティセキュリティシステム612に提供してもよく、次にサードパーティセキュリティシステムは、ユーザによって許可されている場合、現地のプライバシー法等に基づいて、このデータの少なくとも一部を分析のために睡眠関連のサービスプロバイダ608に提供してもよい。
【0030】
このようなアプローチは、複数のタイプのデバイス602,604,606を用いて個人の睡眠に関連し得るデータを収集することができるので、さまざまな利点がある。次に、このデータを、このデータを集約および分析してさまざまな睡眠関連指標および他のこのような情報を求めることができるデバイス、システム、またはプロバイダに、少なくとも1つのネットワーク610を介して送信することができる。このようなアプローチはさらに、データ分析および処理の大半がリモートシステム、サービス、またはデバイスによって実行可能であるため、このデータを収集および送信するために使用されるデバイスには実質的な処理能力またはメモリ容量が不要であるので、有益である。このようなアプローチはさらに、少なくとも、このサービスプロバイダが他のユーザまたは個人のデバイスからもデータを収集可能であるため、同様の期間にわたって他のデータとのより正確な比較を可能にし得るという点で、有益である。
【0031】
また、このような睡眠分析、または他の健康もしくは状態分析の結果も、これらのまたは他のこのようなシステム、デバイス、サービス、またはプロバイダのいずれかに戻されてもよい。たとえば、テレビの音量を下げる、または部屋の照明を落とすなど、状態を調整するようにまたはタスクを実行するようにとのデータまたは命令がスマートデバイス604に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、データまたは命令は、管理デバイスなどの中央システムまたはデバイスに提供されてもよく、当該システムまたはデバイスは次に、特定のタスクを実行するようにまたは特定の変更を行うようにとの個々の命令を関連のデバイスに送信してもよい。データまたは命令は、比較的瞬時に受信されるべきプロンプトまたは提案をユーザに提供するために、ユーザが着用しているモニタリングデバイス602に提供されてもよい。また、データまたは命令は、更新された睡眠動物または動物状態、睡眠指標の変化、睡眠を改善するための提案などを提供するなどのために、ユーザに提示されるようにユーザコンピューティングデバイス606に提供されてもよい。
【0032】
ユーザが、スマートホーム、または少なくとも、集中制御システムを有している場合もあれば有していない場合もあるスマート機能もしくはデバイスを有する家に住んでいる可能性が状況では、このスマートデータの少なくとも一部を睡眠分析のために取り込むことができる。さらに、睡眠分析または予測の結果に少なくとも部分的に基づいて、これらのスマートデバイスまたは機能の少なくとも一部に対して命令または提案を提供することができる。たとえば、家はスマートコントローラ(スタンドアロンデバイスであるか、家の内部または外部のコンピュータ上で実行されるソフトウェアであるかを問わない)を有し得る。このコントローラは、多数のスマートデバイス、または少なくともネットワーク接続されたデバイスとのインターフェイス接続が可能であり得る。このネットワークは、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、直接有線または無線接続、赤外線通信、近距離無線通信(NFC)などを含み得る、1つ以上のネットワーキングまたは通信プロトコルまたはチャネルを用いて提供されてもよい。これらのデバイスは、睡眠判断を行う際に有用であり得るデータを提供することができる、または睡眠関連データに応答して生成された1つ以上の命令に基づいてアクションを行うことができる、任意のデバイスを含み得る。このようなデバイスは、スマート家電、テレビ、スピーカ、セキュリティシステム、モニタ、センサなどを含み得るが、これらに限定されるわけではない。これらのデバイスは、温度、圧力、動作、光、音、色、動作状態、デバイス状態の変化などを含み得る、1つ以上のセンサまたは他のこのようなメカニズムを利用するなどして取り込まれ得るかそうでなければ求められ得るさまざまなタイプのデータを提供してもよい。これらのデバイスはさらに、睡眠モニタリングアプリケーションまたは中央モニタリングサービスから受信した命令に基づいて、現在のまたは将来の睡眠状態に関連する所望の変化に関連し得る変更を加えてもよい。これは、たとえば、動作状態を調整すること、構成を変更すること、電源を入れたり切ったりすることなどを含み得る。デバイスに少なくとも1つの調整を行わせることは、ソフトウェアおよび/またはハードウェアリソースを用いて、命令、要求、または呼び出しを提供または実行することを含み得る。これは、回路、機構、または電子機器を用いて、デバイス、システム、サービスまたはプロセスの機能、状態、または動作に影響を与えるタスクを実行することを含み得る。上述のように、これは、その他のこのような選択肢のうちでも特に、デバイスもしくはシステムの内部で命令を提供すること、別のデバイスもしくはシステムに命令を提供すること、またはネットワークを介して命令を提供することを含み得る。また、その他のこのような選択肢のうちでも特に、ディスプレイがそのディスプレイの起動もしくは明るさを変更すること、またはそのディスプレイを介して表示されるコンテンツを変更することなど、デバイスまたはコンポーネントに対してさまざまなタイプの調整が行われてもよい。
【0033】
たとえば、ユーザが、就寝時間が遅すぎる、または寝つきが悪いと判断された場合、ユーザが入眠するのを助けようと試みるために、1つ以上のスマートデバイスに対して適切な時間に命令が送信されてもよい。これは、スマートウォッチもしくはフィットネストラッカーを振動させること、アラームを鳴らすこと、またはそうでなければ、関連する睡眠動物があくびをするまたは寝る準備をするように睡眠動物を動画化するなど、プロンプトもしくは通知を提供することを含み得る。ユーザが接続されたスマートテレビを見ている場合は、音量を下げ、明るさを下げ、ブルーライト含有量が少ない表示モードに移行するようにとの命令が送信されてもよい。調光可能なスマートライトまたはプラグが接続されている場合は、照明の明るさを落とすようにとの命令が送信されてもよい。他のタイプの命令も送信することができ、これらは、その他のこのような選択肢のうちでも特に、単一のインスタンスについて、または一定期間にわたって行うべきアクションについて送信することができる。代わりに、ユーザが睡眠時間を短くしようとしている、または早く起きようとしている場合は、コーヒーメーカーを起動するように、メディアプレーヤを起動するように、または照明をつけるようにとの命令を送信して、ユーザを目覚めさせようと試みることができる。
【0034】
少なくともいくつかの実施形態では、これらの命令は、睡眠者タイプまたは睡眠目標だけでなく、ユーザの現在の睡眠または健康状態にも基づいて決定することができる。たとえば、スマートアラームが一定の時間に鳴るようにセットされているが、ユーザが深い睡眠またはレム睡眠の状態にあり、ユーザがこのような状態から起こされたくない場合は、ユーザが起きているか浅い眠りにある時点まで(ユーザまたはスケジュールによって許可されているように)アラームを遅らせることができる。同様に、ユーザが入眠するのを助けるために一定の時間にアクションを行うことになっているが、ユーザがすでに眠っている場合は、それらのアクションのうちの少なくともいくつかはこの時間に行われなくてもよい。明かりを消すなどのいくつかのアクションはそのまま行われてもよいが、睡眠通知をトリガするなどの他のアクションは行われなくてもよい。いくつかのデバイスでは、ユーザがすでに眠っており、現時点では入眠するための助けが不要である場合に、スマートライトの明るさを下げるのではなくオフにするなど、睡眠状態に基づいて他のアクションが行われてもよい。ユーザが現在存在していない環境など、ユーザに関連付けられた環境における1つ以上のデバイスに対して、さまざまな他の変更を加えることができる。たとえば、ユーザが帰宅途中であり、帰宅後すぐに眠りにつかなければならない場合、スマートホーム内のデバイスは、動作状態を起動、停止、変更するか、またはその所望の目標に対応する少なくとも1つの設定を調整することができる。これは、たとえば、睡眠のために涼しい温度に調整すること、照明を比較的低い明るさに調整すること、気持ちが安らぐ音楽をかけること、人の気を散らす可能性があるものの電源を切ることなどを含み得る。ユーザがすぐに寝ようと試みるべきであるというプロンプトまたは通知を提供するなど、スマートウォッチまたはウェアラブルデバイスにも調整が自動的に行われてもよい。いくつかの実施形態では、これらの変更の少なくとも一部は自動的には起こり得ず、その所望の目標に基づくユーザへのプロンプトに応答して起こり得る。たとえば、ユーザが客と一緒に帰宅する場合、ユーザはスマートホームが睡眠モードに入ることを望まないかもしれない。システムがユーザのカレンダーまたはタスクリストにアクセスでき、対象となる活動またはイベントがあると判断できる場合、システムはこれを用いて、睡眠モードに入らず、代わりにデフォルトモード、お客モード、または他のこのようなモードに入ると判断することができる。音声または映像データを用いることなどによって客が帰ったと判断できる場合は、スマートホームはその時に睡眠モードに入ると判断してもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、ユーザが眠りにつくか目覚めるのに役立つような調整だけでなく、求められた睡眠関連データに基づいてユーザの睡眠を改善または調整しようと試みるような調整も行われてもよい。たとえば、ある夜のユーザの眠りが通常よりも浅い場合、またはユーザが何度も目覚める場合、システムは、そのユーザが眠りに戻るかより深い睡眠状態に入るのを助けるような調整を行ってもよい。これは、たとえば、温度を調整すること、サウンドマシンを起動すること、スマートベッドの設定(たとえば硬さ)を調整すること、夜用ライトの明るさを調整することなどを含み得る。上述のように、これらの調整のうちの少なくともいくつかは、その特定のユーザについて分かっている情報、または特定のカテゴリの睡眠者に関連すると判断されている情報にも少なくとも部分的に基づき得る。このような変更の影響または有効性を経時的にモニタリングすることにより、この個人ユーザにより適切な変更を行い、ユーザ全体にわたってまたは睡眠者タイプに基づいて情報を集約することもできる。
【0036】
上述のように、さまざまな実施形態では、この機能の一部は自動的に実行され得るが、この機能の他の一部は手動による命令または確認が必要であり得る。これは、ユーザがアクションを行うように、またはこのようなアクションを行うことを承認するようにとの提案を提供することを含み得る。次に、ユーザが行ったアクションと、その後の睡眠状態または他の健康状態に対する影響とを経時的にモニタリングして、よりよい提案をしようと試みることができる。これは、このユーザが行いそうなアクションだけでなく、一旦行われたそれらのアクションの影響にも基づき得る。いくつかの実施形態では、本明細書中の他の箇所に記載のように機械学習を用いて、このような情報に少なくとも部分的に基づいて行うべきアクションを推測しようと試みることができる。ユーザへのプロンプトは、音、音声、映像、画像データ、振動または触覚フィードバックなどを含み得る、さまざまな形態を取ることができる。これらのプロンプトは、プロンプトを受信してからまたはプロンプトの必要性を判断してから適切なプロンプト、通知、または提示を提供可能な、ウェアラブルコンピュータまたは任意の適切なデバイスによって提供されてもよい。上述のように、スマートフォンまたはタブレットコンピュータなどのコンピューティングデバイスは、ウェアラブルデバイスまたはモニタリングシステム、および1つ以上の他のスマートデバイスと通信していることが多く、この情報はそのコンピューティングデバイスを介して提供することもできる。可能であれば、ユーザがアクティブに使用しているデバイスを判断することは、たとえば、通知に利用されるそのデバイスまたはメカニズムを、ユーザが受け取る可能性が高いものとして、より的確な決定をするのに役立ち得る。提供される通知またはプロンプトのタイプは、プロンプトを提供するか確認を可能にするデバイスの能力にも少なくとも部分的に基づき得る。なぜなら、押下情報のみを提供するスマートボタンは、確認ありまたは確認なしなどのバイナリデータしか提供できないのに対し、タブレットコンピュータは、それよりもはるかに粒度の細かい入力を提供できるからである。ユーザがゲームをしている、映画を見ている、またはウェブを閲覧しているなどのユーザが行っている活動に関する情報をスマートデバイスが提供可能である場合、デバイスは、活動のタイプに少なくとも部分的に基づいて最も影響力のある方法で提案およびプロンプトを提示するように対応することができる。この活動に関する情報を用いて、音量を下げる、別のゲームまたは映画に変更するなど、行うべきアクションを決定することもできる。この活動情報を健康データと組み合わせることもでき、たとえばユーザがゲームをしていて心拍数が高い場合に、ユーザが近いうちに寝ようとしているならば、少なくともゲームを中断してよりリラックスするようにとの提案が行われてもよい。ユーザが音楽を聴いている場合は、メディアプレーヤは、より(もしくは多少)リラックス効果のある音楽、または異なるタイプの音楽を再生するようにプレイリストを自動的に調整してもよい。少なくともいくつかの実施形態では、心拍数または呼吸パターンなどの健康データを用いて、これらの変更の影響をモニタリングし、必要に応じてさらなる調整を行うことができる。スクリーンタイムまたは活動のタイプなど、その活動に関する統計を用いて、睡眠関連パターンまたは要因を特定しようと試みることもでき、これは、睡眠または他の健康関連の側面を改善するために行うべきアクションを決定または提案するのに役立ち得る。
【0037】
少なくともいくつかの実施形態では、これらの提案、プロンプト、または変更は、場所に少なくとも部分的に基づき得る。ユーザが自宅にいるか、職場にいるか、休暇中であるかなど、少なくとも特定の判断を行うことを可能にし得る地理的場所データなどのデータが利用可能であり得る。提案またはアクションは、この場所データに少なくとも部分的に基づいて異なり得る。これは、変更を行うためにアクセス可能である場合もあればそうでない場合もある、利用可能な異なるデバイスが存在する可能性が高いという事実に少なくとも部分的に基づき得る。このような例では、アクションの代わりに、ユーザへのプロンプトが作成されてもよい。ユーザが遅くまで起きている必要があり、ユーザの連絡先情報から判断でき得るように友人の家にいる場合、デバイスはユーザに提案して、音量もしくは明るさを上げるように依頼してもよく、またはゲームもしくは他の活動をするように勧めてもよい。しかしながら、ユーザが店内にいる場合は、このようなアクションを行うことができないかもしれないので、もっと速く歩くようになどの他の提案がなされてもよい。このような例では、これに代えて、行うべきアクションについての実際の提案をデバイスまたは通信が提供しない場合でも、ユーザが眠りにつくことまたは眠らずに起きていることについて考え始めて、適切なアクションを行いたくなるような通信がユーザに提供されてもよい。この場所データを用いて、ユーザが店内でまたは運転中に寝てはいけないというように、ユーザの起こり得る状態を判断することもできる。
【0038】
少なくともいくつかの実施形態では、デバイスまたはアプリケーションは異なる時間または場所で異なるシステムまたは環境に接続可能であり得、アクションまたは提案はそれに少なくとも部分的に基づいて行われるか調整されてもよい。たとえば、ユーザデバイスは、当該デバイスがユーザホームネットワークに接続可能であるとき、または地理データを用いて近さを判断できるときなど、ユーザがスマートホームにいるときまたはスマートホームに十分に近いときに、そのスマートホームに接続可能であり得る。これに代えて、そのユーザデバイスは、ユーザの車のネットワークに接続してもよく、その車のスマート機能にアクセス可能である。同様に、デバイスは職場のネットワークに接続可能であり得るか、または、インターネット接続されたデバイスもしくは機能を有する場所にデバイスがあると判断可能であり得る。これらの場所または環境のいずれにおいても、デバイスは、利用可能な機能と、利用可能または収集可能なデータのタイプとを決定することが可能であり得、所与の環境で利用可能な機能のタイプに少なくとも部分的に基づいて提案をするかアクションを行うことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ユーザは提案によって促されない場合があるが、その情報は代わりに、ユーザに都合のよい時間にユーザがアクセスできるように提供されてもよい。これは、たとえば、コンピューティングデバイスまたはネットワーク接続されたインターフェイスを通して利用可能な健康アプリケーションのインターフェイスを通して情報またはヒントを提供することを含み得る。たとえば、ユーザは、そのユーザの睡眠者タイプおよび関連データを提供する、そのユーザについて求められた睡眠経歴にアクセスしてもよい。この経歴は、十分な睡眠を取っている、深い睡眠分数が十分であるなど、ユーザがうまく行っている物事と、寝るのが遅すぎる、頻繁に目が覚めるなど、ユーザがうまく行っていない物事とについての分かりやすい情報を提供してもよい。改善できる部分については、そのユーザについて収集されたデータだけでなく、現時点でそのユーザについて決定されている睡眠者のタイプにも基づいて、そのユーザに適切であり得る提案を提供することができる。これは、たとえば、少なくとも所与のタイプの睡眠者について、睡眠のその側面を改善するのに一般的に有益な変更を環境に加えることを含み得る。いくつかの例では、追加情報から恩恵を得ることができる提案が存在し得る。しかしながら、上述のように、いくつかの提案は一部のユーザにとっては不快であり得るため、追加情報を要求することが望ましい場合がある。たとえば、飲酒しない人に就寝前にアルコールを控えるように提案するのではなく、インターフェイスは、ユーザが就寝前に摂取する可能性がある一連の飲み物(コーヒー、炭酸飲料、アルコール、水、または他のこのような飲料など、いくつかの選択肢を含み得る)のうちのどれかを選択するように、不快感を減らすような表現でユーザに促してもよく、この情報を用いて、具体的な提案の関連性を判断するのに役立てることができ、または、そのユーザの健康もしくは状態情報をよりよく判断するのに役立てることができる。また、なぜ特定の飲料または食物を摂取することが特定の睡眠者タイプに特に影響を及ぼし得るのかについての情報も提供されてもよい。スマート冷蔵庫などのデバイスが、バーコードをスキャンすることなどによって、ユーザが就寝前に典型的にビールを飲むと判断できる場合は、この情報を用いてこのような推測および提案をすることができる。ユーザに質問することは、ユーザが行ったかもしれないアクション(その情報は他の方法では入手不可能であり得る)およびそれらのアクションによって何らかの違いが生まれた否かについてのユーザの印象に関する情報を収集するなどのために、そしてそうだとしたらその違いに関する情報を提供するなどのために、他の理由でも有益であり得る。このような情報は、ユーザをよりよく理解し、所望の目標または結果の達成に役立ちそうなアクションだけでなく、所与の時間、場所、または状態でユーザが実際に行いそうなアクションも含む、よりよい提案をするのにも役立ち得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、動的な睡眠経歴などのユーザインターフェイスは、特定の時間にユーザに質問することなどによって、多数の異なる方法でユーザから情報を収集しようと試みることができる。これは、特定のデータが特定の判断、アクション、もしくは提案に役立つと判断された場合はそのデータを要求することを含み得るか、または、ユーザに質問もしくはアクションを与えすぎないようにしつつそのユーザを理解するのに役立ち得るデータを経時的に収集することを含み得る。いくつかの実施形態では、これらの質問は、小さなタッチスクリーンを有するスマートウォッチまたはフィットネストラッカーなどの限られたインターフェイスを有し得るデバイスを介して処理され得る、単純なはい/いいえ回答の質問であってもよい。他の実施形態では、これらの質問は、スマートフォンまたはタブレットコンピュータなどのより多くのリソースおよびインターフェイス能力を有するデバイス上の対応するアプリにユーザがアクセスしたときに提示されてもよい。一実施形態では、睡眠経歴などのコンテンツ提示における情報が、ユーザが自分の睡眠状態および睡眠の改善可能方法を理解する助けとなるか否かを判定するのに役立ち得る1つ以上のサーベイを設計することができる。これは、1つのサーベイまたは一連のより小さなサーベイにおいて、ユーザが高度な指標とは無関係に自分の睡眠動物を理解しているか否か、高度な指標が分かりにくいか否か、他のどの睡眠動物がユーザに関連し得るか、ユーザが自分は異なる睡眠動物を有するはずだと思っているか否か、特定のタイプのチャートまたは表示が有用で理解しやすいか否か、ユーザが自分の睡眠状態と他のユーザの睡眠状態との違いを明確に理解しているか否か、などについての質問をすることを含み得る。このようなサーベイは、集約されたフィードバックに少なくとも部分的に基づいてユーザ全体の経歴内容または提示を改善するのに役立ち得るだけでなく、ユーザにとって最も役立つ情報の選択をそのユーザに提示し、その情報を有用かつユーザに好感を持たれるように提示するように、特定のユーザについての経歴をカスタマイズするのにも役立ち得る。上述のように、睡眠経歴は、ユーザが自分の睡眠について新たなレベルで関わるのに役立ち得る。この情報の提示は、ユーザが自分の睡眠者タイプをよりよく理解するのに役立ち得るとともに、ユーザがよりよく眠るために何ができるかを理解するのに役立ち得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、短いサーベイまたはたった1つの質問が特定の時間に提示されて、特定の活動が特定されてもよい。たとえば、質問は、ユーザが短時間で眠りにつく能力に影響を及ぼし得る、食べること、飲むこと、または喫煙などの1つ以上の活動を行っているか否かをそのユーザに尋ねてもよい。利用可能であるとともにユーザによって許可されている場合は、このような活動を特定するのに役立ち得る任意の音声、カメラ、またはセンサデータも使用可能である。これは、たとえば、先ほどドアが開いたこともしくは食べ物が取り出されたことを示し得るスマート冷蔵庫、または少なくともある程度の煙を探知する煙探知機などを含み得る。ウェブの閲覧またはポッドキャストの視聴などのいくつかの活動は、アンケートを通して、またはその活動に使用されているデバイスと通信することによって、判断可能であり得る。また、ユーザの認識について問い合わせるために1つ以上の質問が提示されてもよい。これは、たとえば、ユーザが疲れているか、ストレスを感じているか、心配しているか、不安であるか、すっかり目覚めているか、落ち込んでいるか、などを含み得る。認識データは、最終的には完全に正確ではないかもしれないが、ユーザをよりよく理解し、認識と睡眠パターンとを相関付けるのに役立ち得る。これは、ユーザがじっとしているか、何らかの痛みを感じているか、怪我をしているか、糖尿病患者であるか、妊娠しているか、膀胱の制御に問題があるかなど、他の健康情報について尋ねることも含み得る。睡眠時無呼吸状態、痙攣、病状、または薬の摂取(もしくは処方)についての情報を収集しようと試みることができる。問い合わせは、ユーザはシフト労働者であるかそうでなければ特定の睡眠スケジュールを有しているか、ユーザは特定の時間帯に眠ることが困難な環境にいるか、ユーザは夜間を通して頻繁にまたは不規則に目を覚ます可能性のある小さな子供の親であるかなど、健康と直接関係ないが判定を下すのに役立ち得る他の問題に関連していてもよい。ユーザは、疲れている、落ち込んでいる、ストレスを感じているときなどは特定の活動または特定の行動を行いにくく(または行いやすく)なり得るため、この情報は、ユーザに対してよりよい提案をするのにも役立ち得る。ユーザは、現在の自分は別の睡眠動物の方が近いと思うか否かについての情報も提供可能であり得る。これは、ユーザ認識をよりよく理解するのに役立ち得、これを用いて、ユーザは特定の睡眠動物を選択することによってその他方の睡眠動物について支配的な1つ以上の睡眠指標の認識値を本質的に提供していると推測することによって、提案またはアクションを調整することができる。この情報のいずれかまたはすべてを用いて、決定における1つ以上の要因の重み付けを調整することもでき、これによってユーザを特定の睡眠動物とより密接に合致させる、またはより確実にもしくは確信を持ってその動物と合致させることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、睡眠経歴は、ユーザがなぜ特定の睡眠動物または健康タイプに関連付けられているかについての追加情報を提供することができる。たとえば、一例として第25パーセンタイル、第50パーセンタイル、および第75パーセンタイルにおける高度な睡眠指標の分布に基づいて各睡眠動物の定義指標を特定する情報を提示することができる。定義指標は、レーダーチャート上の「山」および「谷」であり得るため、それらは第25パーセンタイルまたは第75パーセンタイルについても典型的に高いまたは低い指標である。エッジケースであると判断されたユーザに対して追加情報を提供することもできる。それらのユーザは、睡眠動物の「中間」にある睡眠特性を有するか、または、1つの睡眠動物と明確に合致することなく2つの異なる睡眠動物に同様の特性を有する。たとえば、ユーザの「1時間当たりの覚醒回数」値および「入眠までの分数」値が両方とも高い場合、そのユーザはカンガルーまたはカメに分類され得る。ユーザに適切な睡眠動物または健康タイプを決定するのに役立つように、レーダーチャート、または他のこのような多次元睡眠空間における高度な睡眠指標に少なくとも部分的に基づいて異なる距離指標を計算する1つ以上のヒューリスティックに基づいて、クラスタリング後の判断を行うことができる。少なくとも1つの実施形態では、このような距離指標は、睡眠動物関連の高度な睡眠指標と比較して、ユーザが同様の「山」および「谷」の高度な睡眠指標を有するか否かを検討することができる。たとえば、カンガルーの山は「1時間当たりの覚醒回数」指標であり得るため、距離指標は「1時間当たりの覚醒回数」指標をより重視することにより、ユーザがカンガルーに関連付けられるには、同様の「1時間当たりの覚醒回数」指標を有しなければならないことを保証することができる。
【0043】
クラスタリング後にさまざまな距離ヒューリスティックを使用することができる。これらは、たとえば、k平均クラスタリングアプローチで使用され得るような、セントロイド距離に基づく割り当てによるユークリッド距離などの指標の使用を含み得る。他の距離指標は、特に、マンハッタン距離、チェビシェフ距離、コサイン類似度、レーベンシュタインもしくはハミング距離、ケンドールタウ距離、または加重マンハッタン距離を含み得る。一実現例では、クラスタリング後に加重マンハッタン距離が利用され、極端なパーセンタイルに報酬が与えられる。この例では、最終的な睡眠動物は部分的に以下によって決定された。
【0044】
最終的な睡眠動物=K平均クラスタリングから導出された「典型的な」睡眠動物の高度な指標からの加重マンハッタン距離が最小の動物
就寝時間から最後の覚醒-光-覚醒サイクル(光エポックは1時間未満でなければならない)までの時間に関連する、睡眠開始に似たものを記述する追加の指標も生成されて検証された。このようなアプローチは、持続的睡眠への潜時と似ている場合があり、不眠症に悩む人々を特定するのに役立ち得る。
【0045】
図7は、さまざまな実施形態に従って利用され得る、ユーザの睡眠情報を求め、睡眠を改善するために1つ以上の変更を行うか提案するための一例としてのプロセス700を示す。本明細書に記載のこのプロセスおよび他のすべてのプロセスについて、特に明記しない限り、さまざまな実施形態の範囲内で、追加のステップ、代替のステップ、またはより少ないステップが、同様のもしくは代替の順序で、または並行して実行され得ることを理解すべきである。さらに、説明のために睡眠が一例として使用されているが、このようなアプローチは、さまざまな実施形態の範囲内で、1人以上のユーザの他の身体もしくは精神状態、状況、または活動にも使用可能であることを理解すべきである。この例では、数日間、数週間、または数ヶ月にわたってなど、複数の睡眠期間にわたってユーザについての睡眠関連データを収集する702。睡眠関連データは、ユーザの入眠時間およびユーザの覚醒時間など、ユーザの睡眠に直接関連するデータを含み得るが、ユーザが特定の睡眠状態にあったときまたは状態を移行したときの室温またはノイズ量など、睡眠の側面と少ししか関連していない可能性があるデータも含み得る。このデータは、直接入力による受信、またはデータを生成もしくは提供するためのセンサもしくはプロセッサを有するデバイスからの受信など、任意の適切な方法によって収集することができる。少なくともいくつかの実施形態では、ノイズの除去、冗長データの除去、関連データの選択、正規化の実行などのために、少なくともある程度のデータの前処理が行われてもよい。データは、手動入力、デバイス決定、センサ検出など、複数の場所の複数のソースから得ることもできる。
【0046】
この収集データの少なくとも一部を用いて、ユーザについての一組の睡眠指標の値を求めることができる704。これらは、特に、レム時間のパーセンテージ、平均睡眠時間、平均就寝時間、就寝時間のばらつき、平均回復長さ、入眠までの平均分数、1時間当たりの覚醒回数、長い覚醒状態の回数、1期間当たりの日中の昼寝回数、および深い睡眠の平均分数を含み得る、睡眠の分析に特に重要であると判断された睡眠指標を含み得る。次に、これらのユーザ睡眠指標値、および他の潜在的な指標を一組のクラスタの値と比較することができ706、それらのクラスタの各々は睡眠者タイプ(たとえば睡眠動物)に関連付けられている。各睡眠者タイプは、本明細書中の他の箇所で記載および示唆されているさまざまなアプローチを用いて判断され得るような、その睡眠者タイプのユーザを表すと判断された値を含み得る。1つ以上の距離ヒューリスティック、または別のこのようなアプローチを用いて、これらの睡眠者タイプのうちの1つを、決定したユーザ睡眠指標と最も密接に合致するものとして決定する708かそうでなければ選択することができる。ユーザ睡眠指標が経時的に変化すると、そのユーザについて決定された睡眠者タイプ(たとえば動物)も変化し得る。この例では、次に、選択したユーザ睡眠者タイプに関する視覚化および情報を、その睡眠者タイプのユーザの平均値または期待値からの個々の差異に関する情報および他のこのような情報とともに、ユーザに提示するために提供することができる710。選択した睡眠者タイプの指標を他の睡眠者タイプの指標と対比させる情報も提供することができる。
【0047】
ユーザの睡眠者タイプおよびユーザの個々の睡眠データに関する情報をそのユーザに提供することに加えて、そのユーザの睡眠を改善するかそうでなければ別の睡眠関連目標を達成するのに役立ち得る選択肢または提案をユーザに提供することが望ましい場合がある。この例では、たとえば、ユーザの状態、活動、状況、または認識に関連し得るが、他の方法で収集された睡眠関連データの一部として得ることが困難または不可能であり得る追加情報(この情報は睡眠判断または提案をするのに関連し得る)を、ユーザに任意に要求することができる712。上述のように、これは、ユーザが現在眠いまたは不安であるか否か、ユーザが1日のうちの1つ以上の時点で特定の活動を行ったか否か、などを含み得る。睡眠指標、睡眠者タイプ、および睡眠関連データまたは追加情報のいずれかまたはすべてを用いて、睡眠を改善するか別の睡眠関連目標を達成するのに役立ち得る1つ以上の変更を決定することができる714。変更は、ユーザアクションもしくは挙動の変更を含み得るか、または、ユーザの睡眠に影響を及ぼし得るデバイス、システム、もしくはサービスの動作もしくは状態の変更を含み得る。これらの変更の各々について、その変更が、デバイス、システム、またはサービスによって自動化され得る変更であるか、または自動的に実行され得る変更であるかについての判断を行うことができる716。そうでない場合、所与のアクションを行うように、挙動を修正するように、デバイスの動作状態を変更するように、またはそうでなければ決定された変更を行うようにとの提案を、ユーザに提示するために提供することができる718。変更を自動化することができる場合は、決定された変更を行うように、または決定された変更をもたらすか決定された変更に対応するタスクを実行するようにとの1つ以上の命令(または要求または呼び出しなど)を1つ以上の関連デバイス、システム、アプリケーション、モジュール、またはサービスに提供することができる720。提案を提供した後、または変更命令を送信した後、変更のステータスおよび/または影響をモニタリングすることにより、変更がなされたか否か、または変更がなされた程度、および挙動の変化もしくは予測された睡眠からの逸脱が生じたか否かなどを判断することができる。次に、この情報を収集された睡眠関連データとともに提供してユーザ睡眠データを更新することができ、この結果、本明細書に提示または示唆されるように、決定された睡眠者タイプ、プロフィール、経歴、提案、または他のこのような側面が変更され得る。
【0048】
さまざまな説明のための実施形態は、活動、睡眠、心拍数(「HR」)など、ウェアラブルモニタリングデバイスセンサを通して非侵襲的に取得されて記録された客観的な生理学的データを取り込んで検討する。これらの生理学的データ変数および指標はさらに、ほんの数例に過ぎないが、その他の選択肢のうちでも特に、ユーザの安静時心拍数(「RHR」)および/または他のHRから導出されるデータ、血中酸素濃度(SpO2)レベル、心拍変動(「HRV」)、睡眠時間および質、運動レベル、体重、ヘモグロビン、ならびに水分濃度、ならびに皮膚上の油分/脂質/コラーゲンの濃度など、比較可能なバイオマーカを含み得る。さまざまなシステムおよび方法は、これに加えてまたはこれに代えて、皮膚電気測定値、および胸バンドまたは心電図(「ECG」)パッチからなどの他のタイプのデバイスからの情報を利用してもよい。ユーザとユーザのウェアラブルモニタリングデバイス、スマートフォン、および/または他のデバイスとのインタラクションの詳細および条件、たとえばデバイスがチェックされる頻度やボタンの押し具合なども、取り込んで分析することができる。
【0049】
説明のための実施形態では、心拍数、睡眠、および身体活動のパターンは、システム構成、およびどのような生理学的な客観的データが収集および分析されるか、などの要因に応じて異なり得る1つ以上の予測モデルアルゴリズムによって分析される。特に、客観的な生理学的データ点の潜在的なカテゴリは、安静時心拍数、心拍変動、1日当たりの平均歩数、活動分数、ユーザの平均的な就寝時間および起床時間などの平均睡眠スケジュール、床についてから入眠までの時間の長さ、睡眠中断回数、および「深い」睡眠の量を含む睡眠ステージなど、最も予測しやすいものを含み得る。少なくともいくつかの実施形態では、ユーザは、睡眠関連データの少なくとも一部を取り込んで長さ、質、ステージなどを求めることができるスマートウォッチまたは何らかの他のモニタリングデバイスを着用し得る。
【0050】
データをクラウドまたは他のネットワークに送信するためにユーザが何らかのアクションを行わなくてもよいように、指標のカテゴリおよびタイプがカスタマイズされ、データがパッシブに収集されてもよい。健康関連指標のうちの1つ以上を経時的にモニタリングして、精神状態と相関付けられ得る指標の変動のパターンまたはサイクルを求めることができる。特に、さまざまなカテゴリの入力の中にどれほどの変動があるかについての分析は、本明細書に提示されているさまざまなタイプの分析を行う際に役立つであろう。次に、この情報を用いて、予測モデルを更新することができるとともに、ユーザについてのそれらの指標の現在値に少なくとも部分的に基づいて個々の提案を更新することができる。予測に関する情報、および予測の更新は、ユーザに対して表示することができるので、生活上の出来事に関する計画を立てるのを助けることができる。
【0051】
生理学的データまたは他の健康データの少なくとも一部は、複数のデバイスから得ることができる。たとえば、ユーザは、正確な心拍数情報を提供可能な「スマート」リング、皮膚温および周囲温度の両方を測定する手首温度センサ、口腔温度センサ、または正確な体温情報を提供するように構成されたイヤホンを着用し得る。この情報を受信した後、他の利用可能なデータとともに使用して、より正確な結果を生成しようと試みることができる。たとえば、イヤホンのみからの温度データを手元の追跡のために使用してもよいし、手首の温度測定値は周囲温度の変化などの影響をより受けやすい場合があるため、イヤホン、スマートリング、およびモニタリングデバイスからの温度データをすべて一緒に分析し、時間を同期させてから、外部要因に起因する温度変動を除去することもできる。結果を平均するかそうでなければ照合することができ、または3つの測定値のうちの2つが変動と一致するが3つ目は一致しない場合は、3つ目のデバイスからのデータを変動時間にわたって検討から除外することができる。他の外部デバイスからのデータも、さまざまな実施形態の範囲内で使用可能である。別の例として、血液検査機械、尿分析装置などからのデータが利用できる場合は、ホルモンレベルまたは体内化学物質に関する他の情報も用いてさまざまな状態および時点を予測することができる。温度などのデータは、スマート衣類、ベッドシーツ、ウェアラブル機器などを含み得る、多数の他のタイプのデバイスからも得ることができる。拡散反射分光法、光音響効果、光コヒーレンストモグラフィ、拡散光トモグラフィ、時間ゲート分光法、または空間周波数領域イメージングを通して皮膚中の化学物質などの身体特性を測定するための光学デバイスも、さまざまな実施形態の範囲内で使用可能である。人体のさまざまな側面にはさまざまなパターンがあり、これらを学習して利用可能なデータに適用することにより、可能な限り正確な予測を行うことができる。本明細書に記載のように、機械学習を用いて、パターン認識および分類の精度を経時的に改善しようと試みることができる。
【0052】
睡眠関連アプリケーションの選択、およびさらにはそのバージョンも、ユーザデバイスのタイプならびにその記憶空間およびコンピューティング制限に応じて異なり、カスタマイズされ得ることに留意すべきである。表示されるグラフィック要素の数は、たとえばデスクトップモニタと着用されるモニタリングデバイスとの間で異なり得、必要となるユーザの動きも異なり得る(すなわち、スマートウォッチ上の1回以上のスワイプとは対照的な、マウスの動きおよびクリック)。高解像度画面はより多くの情報を表示することができる。たとえばタブレットやスマートウォッチに対してそうすることで、タッチスクリーンの一部がユーザ入力領域として予め設定され、画素がタッチ操作に反応するようになる。当然、より大きな表示領域を必要とするインターフェイスの中には、一般的なスマートウォッチまたはさらには携帯電話に見られるような小型画面には単純に適さないものもある。
【0053】
一実施形態では、まず、ユーザの一晩の心拍数記録を、浅い睡眠、深い睡眠、および急速眼球運動(「レム」)睡眠を含み得る、さまざまな睡眠ステージに分けることができる。次に、所望の場合には、一晩中ではなく睡眠ステージのみについてHRVパラメータおよびHRを計算することができる。ノンレム睡眠区間(たとえば、浅い睡眠および深い睡眠)のみにわたって計算されたRHRのモデル(またはHRVから導出される指標)を、本明細書に記載の目的で予測モデルに関連して使用することができる。
【0054】
別の実施形態では、PPG信号から人の呼吸数を抽出することができる。呼吸数を測定すると、通常は1分間に12~20回となる。毎晩または一連の晩についての平均呼吸数を抽出することができる。被験者の活動レベルも追跡することができ、これを用いて、予測モデルに使用される安静時HRおよびHRVパラメータに影響を及ぼし得る激しい運動および他の激しい身体活動などの交絡因子を修正することができる。
【0055】
少なくともいくつかの実施形態における分析および予測と同時に、ユーザについてのRHRなどのHR情報をモニタリングすることができる。上述のように、これは、睡眠期間中に、かつ最短の非活動期間の後に、モニタリングデバイス102を用いて、本明細書に記載および示唆されるような1つ以上のアプローチを用いてユーザのRHRデータを得ることを含み得る。利用可能な安静時心拍数パターン情報がないと判断された場合は、プロセスはこのようなパターン情報を利用せずに継続することができる。
【0056】
繰り返しになるが、これらのHRデータおよび他の指標を用いて健康問題を予測することができ、いくつかの実施形態では、これらの指標とアプローチとの組み合わせを用いて予測の精度を改善しようと試みることができる。他の実施形態では、上述のようなユーザ入力に基づく予測を用いるか、測定または検出された身体および健康データのみに基づくかを問わず、2つ以上の測定値を組み合わせて予測を改善しようと試みることができる。たとえば、一実施形態では、ユーザのHR情報および血液または組織化学物質を用いて精神状態を調べることができる。たとえば、赤血球もしくは白血球の濃度もしくは数に、または、ヘモグロビン、フェリチン、血清鉄、末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)、水分、脂質、コラーゲン、皮脂、または人の血液もしくは皮膚組織もしくは皮膚表面に典型的に見られる他の成分の濃度もしくは量に、変動が見られる場合がある。温度センサを用いて体温の変動を求めることもできる。
【0057】
さまざまな説明のための実施形態に従うモニタリングデバイスは、本明細書に記載および示唆されるような発光体、センサ、および他のコンポーネントを用いて、ユーザの体内のヘモグロビンおよび水分含有量(たとえば、ヘモグロビンと水分との比率、または血液および組織内のヘモグロビンもしくは水分濃度のみの相対的変化)の非侵襲的なリアルタイム測定を行うことができる。人間の皮膚における光吸収量は、ヘモグロビンおよび水分濃度の差によって異なり得る。これは、赤外(「IR」)または近赤外スペクトルの波長を有する光で特に顕著であり得る。ヘモグロビン濃度が低下すると、ヘモグロビンによる光吸収の量は減少する。光吸収量はさらに、酸素飽和度の変化に基づいて異なる量だけ変化し、吸収差は、異なる波長でより著しい。したがって、いくつかの実施形態では、モニタリングデバイス102は、ヘモグロビンおよび水分濃度の変動を検出するのに適した第1の波長の第1の発光体と第2の波長の第2の発光体とを含み得るが、他の実施形態では、デバイス102は、SpO2の変動を検出するのに適した第2の波長の第3の発光体を含み得、いくつかのトラッキングデバイス102はその両方(または両方の目標波長帯域で選択的にまたは同時に発光可能な発光体アセンブリ)を含み得る。一実施形態では、モニタリングデバイス102は、SpO2およびヘモグロビン含有量の変化を検出するための約600~1000nmの範囲の2つの波長を有する2つの発光ダイオード(LED)と、水分含有量の変動を測定するための、かつ最初の2つのLEDのうちの一方と組み合わされてヘモグロビンと水分との比率を測定するための、1000~1500nmの範囲の波長を有する別のLEDとを含み得る。
【0058】
安静時心拍数データと同様に、ヘモグロビン、水分濃度、およびSpO2などの指標の値は周期的であり得る。これらの指標がユーザの体内で経時的にどのように変動するか、およびこれらの変動が精神状態にどのように対応するかをモニタリングすることによって、指標の測定値を用いて健康に関連するイベントおよびエピソードのタイミングを予測することができる。これらのパラメータの変化は、ユーザの体内の他の潜在的な問題も示し得るため、いくつかの実施形態ではこれらのパラメータの変化を用いて、病院に行くようにまたは他の行動を取るように提案することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、ソフトウェアアプリケーションが、検出されたユーザの身体の変化に応答してユーザに質問をしてもよい。たとえば、睡眠パターンの変化は場所またはストレスの変化に起因し得る。新しい薬または運動パターンなどの他の変化も、測定値の少なくともいくつかに影響を及ぼし得る。この情報を得ることによって、ソフトウェアは、特定の値または期間を除外すべきか否か、それらの値に異なる重み付けをすべきか否かなどを判断することができる。さまざまな実施形態の範囲内で、動作センサまたは他の活動追跡から利用可能な情報を用いてこれらの要因のうちのいくつかを特定しようと試みることもできる。
【0060】
ヘモグロビン濃度に関して、一実施形態では、ユーザの体内の濃度は近赤外(「NIR」)分光法などの光学技術を用いて測定される。NIRアプローチは、780nm~2500nmの範囲の波長を有し得る、NIRスペクトル内の放射を発する発光体を利用することができる。NIRには、他の光学技術よりも皮膚の奥深くまで透過できるという利点がある。吸収されない放射の部分は反射されて、少なくとも対応する波長帯域の放射を検出可能なセンサを有する1つ以上の検出器に戻され得る。検出器によって求められた吸収データを、その他のこのような選択肢のうちでも特に、主成分分析(「PCA」)またはニューラルネットワークなどの多変量アプローチを用いて分析して、被験者の体内の血液の組成に関する情報を求めることができる。1つ以上の光学分散素子を用いて、特定の波長を測定用に分離してもよい。一例では、皮膚表面のアーチファクトと、圧縮または他の外的影響に起因し得る皮膚の変動とを考慮しようと試みるために、2つの検出器が異なる位置で使用される。ヘモグロビンおよび水分濃度を測定するために使用される特定の波長(たとえば900~1500nm)は、具体的な実装および設計に部分的に依存し得る。なぜなら、いくつかのデバイスは感度の低い検出器を有し、いくつかのデバイスは皮膚に密着し、いくつかのデバイスはある程度離れている場合があるため、透過深度と濃度変動に対する感度との間にトレードオフがあり得るからである。その他のこのような選択肢のうちでも特に、シリコンおよびインジウムガリウム砒素からなる検出器を含み得る、異なる材料からなる、したがって異なる感度および精度を有する検出器も使用可能である。また、さまざまな実施形態に従うデバイスは、異なる発光波長を有する複数の発光体、または複数の波長を発する発光体などを利用してもよい。いくつかの実施形態では、精度は、皮膚に対するデバイスの向き、皮膚との近さ、または(トラッカーが皮膚にぴったりと着用されること、もしくは睡眠中に体の別の部分によって圧縮されることなどによる)デバイスによる皮膚の圧迫、に部分的に依存し得る。したがって、いくつかの実施形態では、圧力センサ、カメラ、または他のセンサを用いて、このような要因または変動を考慮しようと試みることができる。
【0061】
生理学的データを経時的に収集した後、フィルタリングすることにより、自然変異、ならびに運動、食事、ストレス、および睡眠の変化などの外的影響に起因し得るデータのノイズおよびランダムな変動を減らすことができる。本明細書に含まれる教示および示唆に鑑みて当業者にとって明らかであるように、他のタイプのデータ処理も使用可能である。上述のように、さまざまな実施形態では、一定期間にわたる位置の変化が比較的少ない安静期間中または睡眠期間中に測定を行うことができる。酸素またはヘモグロビン信号の変化は、動きまたは位置変化によって引き起こされ得るので、安静期間は、より正確なもしくは一貫した結果、または多くの外部要因とは無関係の身体の真の状態の表現を提供し得る。いくつかの実施形態では、モニタリングまたは他の関連デバイスが、加速度計、高度計、慣性センサ、または他のこのようなコンポーネントを利用して動きをモニタリングすることができ、デバイスは、被験者が少なくとも決められた不活動期間の間じっとしている(動きが許容しきい値量内である)まで待機してから測定を行ってもよい。これにより、レベルが平衡点に到達するための十分な時間が提供され得るので、少なくともいくつかの実施形態では精度をさらに改善することができる。
【0062】
経時的に収集されたフィルタリング済みデータを分析して、それぞれの指標について求められたパターンを決定または更新することができる。これは、生理学的データを1つ以上の予測モデルに入力して、生理学的データ(その中に見出された任意のパターンを含む)が、身体または精神状態に関連する1つ以上のバイオマーカと相関しているか否かを特定することを含み得る。生理学的データとの比較に使用されるバイオマーカには制約がなく、以下を含むがこれらに限定されるわけではない。
【0063】
・低い活動レベル(心拍数がカーディオゾーンまたはピークゾーンにある1日の平均総分数。このバイオマーカの値が低いほど、たとえばうつ病のリスクが高い)
・一定でない睡眠(一晩の睡眠分数の標準偏差、または就寝時間もしくは起床時間の標準偏差。このバイオマーカの値が高いほど、うつ病のリスクが高い)
・高い安静時心拍数(最大(または平均)安静時心拍数。このバイオマーカの値が高いほど、うつ病のリスクが高い)
・短い睡眠潜時(就寝時間から睡眠開始までの平均分数。このバイオマーカの値が高いほど、うつ病のリスクが低い)
・少ない1日の平均歩数(このバイオマーカの値が高いほど、うつ病のリスクが高い)
・睡眠期間中の長期間または長間隔の覚醒状態(すなわち、ひどく妨げられた睡眠。このバイオマーカの値が高いほど、うつ病のリスクが高い)
・低い心拍変動(このバイオマーカの値が高いほど、うつ病のリスクが高い)
・遅い就寝時間(このバイオマーカの値が高いほど、うつ病のリスクが高い)
・長いレム睡眠潜時(このバイオマーカの値が高いほど、うつ病のリスクが高い)
予測モデルは、追加データに基づいてパターン情報を更新して、より正確なパターン情報を得ることができる。いくつかの実施形態では、年齢およびホルモンレベルの変化などのユーザの健康状態の変化を考慮して、最近の生理学的データがパターン決定により大きな影響を与えるように、状態データが重み付けまたは減衰されてもよい。現在の情報は、スクリーニングまたは初期分析を形成するのに十分であり得るが、予測モデルは追加情報が受信され分析されるにつれてより正確になる。
【0064】
さまざまな実施形態の範囲内で、さまざまなアルゴリズムおよびアプローチを用いて生理学的データを分析して相関付けることができる。ユーザの身体に関する情報は、精神および身体状態ならびに健康情報と相関付けられ得るモニタリングデバイスまたは他のこのようなトラッキングデバイスによって得ることができる。これは、さまざまな個人について分かっている情報を基本パターンとして含み得るが、より正確な予測を提供するように特定の人物について更新または決定することもできる。分析、相関付け、および決定は、その他のこのような選択肢のうちでも特に、高度な信号処理方法、平均化、もしくはそうでなければ追加の期間に得られたデータの集約によって、および/または機械学習アルゴリズムにデータを提供することによって、行うことができる。生理学的データを用いて、決定された任意のパターンに基づいて予測を生成することができる。さらに、RHR情報の変化が経時的に求められるので、たとえば、RHRがうつ状態または不安状態の始まりを示すようになった場合などに、予測を更新することができる。
【0065】
データは、情報を用いて将来の精神または身体状態を予測可能な予測モデリングまたは機械学習プロセスへの入力として提供することができる。上述のように、心拍数、活動、睡眠、および本明細書に記載の他のものに関連し得る、さまざまな生理学的データ入力が存在し得る。利用可能なタイプのデータごとにパターンを決定して使用することにより、より正確な決定に至ろうと試みることができる。データ値は、その他のこのような要因のうちでも特に、予測の強さまたは精度に基づくなどして、異なる量だけ重み付けされてもよい。これらの重み付けは、機械学習またはユーザの身体もしくは状態の変化などに基づくなどして、経時的に更新または修正することができる。また、相対的な重み付けに影響を及ぼし得る、異なる信頼水準または他の要因も存在し得る。選択される重み値は、いくつかの信号の信号対雑音比にも依存し得る。
【0066】
一般的に、機械学習技術(拡張)によって、1つ以上のシステムが、特定のユーザまたは一般集団について、一連の指標、生理学的データおよび/またはその他で訓練され得る。次に、生理学的データおよび他の指標が特定のユーザから取り込まれ、訓練されたシステムによって分析されることにより、そのユーザの指標間の関係が求められ、次に精神状態ステータスおよび/またはガイダンスをユーザにプッシュすることができる。
【0067】
たとえば、畳み込みニューラルネットワーク(「CNN」)を用いる機械学習システムを、睡眠中にHR指標を抽出するように設計することができる。CNNは、たとえば異なる睡眠ステージ中などにデータセットで訓練することができ、最適な睡眠ステージを決定することができる。長短期記憶ニューラルネットワーク(「LSTM」)、隠れマルコフモデル、または他の時系列モデルを、以前の履歴に基づいて状態イベントを予測するように設計することができ、このモデルは本明細書に記載の適切な変数のうちのいずれかを考慮することもできる。複数のLSTMモデルを、さまざまな実施形態において精神的または身体的健康に関連する異なる要因を予測するように訓練することができる。さらに、フィードフォワード、リカレント、放射状基底関数、モジュラー、および/または自己組織化ニューラルネットワークを適用することは、確実に本開示の範囲内にある。
【0068】
記載したように、RHRおよび睡眠データの両方、または他のこのような指標の関数である1つのパターンが、いくつかの実施形態において生成され得る。いくつかの実施形態では、ディープニューラルネットワークまたは他の機械学習アプローチを用いて、その他のこのような情報のうちでも特に、得られた指標に基づいてパターンを「学習する」ことができる。本明細書に記載および示唆されるものを含む、さまざまな他の予測モデリングパターンおよびアプローチも使用可能である。予測モデリングを通して識別された相関性およびパターンを用いて、精神的健康に関連するイベント、および他の潜在的に関連するイベントが次に起こるタイミングを予測することもできる。パターンおよび相関性情報は、いくつかの実施形態では、追加情報が提供または取得されるたびに更新されてもよい。
【0069】
上述のように、予測モデリングは、異なる身体のデータ値に影響を及ぼし得るさまざまなタイプの情報を使用および適用することができる。たとえば、ある日またはある期間に人が経験した運動または身体活動の量に関する情報が得られてもよく、この情報は、本明細書に記載のように、検出された生理学的データ値の差を説明し得る。また、食事、ストレス、体重、体脂肪率、体格指数(「BMI」)、薬、または他のこのような要因に変動が見られる場合があり、この変動も説明することができる。少なくともいくつかの実施形態では、正確な予測のための条件を検証するために、これらのおよび他のこのような要因を1つ以上の予測モデリングスキーマに提供した後、回帰を適用することができる。1つ以上のバイオマーカとの相関性が見出された場合は、ユーザについて少なくとも潜在的な健康問題が特定され得る。このプロセスを継続および反復してユーザの状態ステータスを更新することができ、追加のタイプの情報が利用可能になると、この情報を検討のためにプロセスに追加することができる。少なくともいくつかの実施形態では、提案または重み付けは、身体または運動レベル、年齢などの変化のために、経時的に変化し得る。
【0070】
健康状態ステータスは、生成または更新されると、ユーザまたは別の適切なもしくは認可されたエンティティに出力または公開することができる。状態ステータス情報はさまざまな方法で表示することができる。その他の可能性のうちでも特に、ユーザがナビゲートできるさまざまなオプションがあってもよいし、提供される特定のインターフェイスまたはディスプレイがあってもよい。いくつかの実施形態では、さまざまなユーザの症状を判断することができ、アプリケーションは、それらのユーザがいつ健康関連の病気にかかるかを予測し、対応する通知をユーザに配信することができる。また、所与のアプリケーションは、ユーザの目標に応じて異なるビューを提供してもよい。いくつかの実施形態では、このアプリはさらに、モニタリングされた健康情報に少なくとも部分的に基づいて、健康状態を改善するためまたは目標を達成するための提案を提供してもよい。生理学的データおよび他のデータが潜在的な病状を示し得る場合は、病院に行くように提案することもできる。
【0071】
上述のように、さまざまな実施形態は、所与のユーザのための1つ以上のモニタリング/トラッキングデバイスを含むシステムとして実現することができる。他の実施形態では、ユーザが自分のデバイスに利用することができるサービスとして実施形態が提供されてもよい。また、他のフィットネストラッカーおよびヘルスケア提供者が顧客のためにこのようなサービスを契約または利用してもよい。いくつかの実施形態では、収集された生理学的データおよび他の情報がサービスによって受信されることを可能にするアプリケーションプログラミングインターフェイス(「API」)または他のこのようなインターフェイスが公開されてもよく、このサービスは、情報を処理し、その結果をユーザがアクセスできるようにモニタリングまたは関連のコンピューティングデバイスに送り返すことができる。いくつかの実施形態では、処理の少なくとも一部は、モニタリングまたはトラッキングデバイス自体の上で行われてもよいが、リモートシステムまたはサービスによる処理は、特に容量または処理能力が限られているトラッキングデバイスに対して、よりロバストな処理を可能にし得る。
【0072】
図8を用いて示されている説明のための実施形態800に見ることができるように、1つ以上の発光体802から発せられた光は、皮膚から反射されて検出器804に戻され得る。さまざまな実施形態におけるユーザは、スマートウォッチもしくはフィットネストラッカーなどのモニタリングデバイス、または手首の場所に近い別のPPGデバイスを着用し得るが、他の実施形態では、このようなデバイスは、(たとえばPPGデバイスの光源が人間の血管に隣接するように)耳、指先、足首、首、上腕、胴、脚および/または額などの場所に着用され得る。皮膚表面のアーチファクトと、圧縮または他の外的影響に起因し得る皮膚の変動とを考慮するために、この実施形態では2つの検出器804が異なる位置で使用される。
【0073】
光が発光体802から皮膚に進んで検出器804のうちの一方に戻る経路は、「光路」と呼ぶことができる。光路は、その通常の意味を有することに加えて、ある場所から別の場所への、典型的には光源(または発光体)から光センサ(または検出器)への光子の確率論的経路を指すことがある。発光体802によって放出された光子は、各検出器804への多数の異なる経路をたどることになる。簡単および明確にするために、可能性のあるすべての経路の光パワー加重平均から得られる経路を、いくつかの実施形態では単に光路と称する。いくつかの代替の実施形態では、「光路」は、光子の大部分がたどる経路を指す。さらに他の実施形態では、「光路」は、光源の中心を起点とし、検出器804の表面積のどこかで終端する近似ベクトルを指し、発光源802から検出器804までのおおよその光の経路を表す。
【0074】
光路は所与の発光体源802から所与の検出器804までのおおよその光の経路を指すため、たとえば複数の発光体802および複数の検出器804がある場合は、複数の光源の各々と複数の検出器の各々との間に別個の光路が存在する。本明細書に記載の実施形態と一致して、上述の光路のうちのいずれかに関連付けられたPPG信号は、HRおよび/または他の生理学的指標を推定するために選択的に取得および利用されてもよい。たとえば、複数の経路のうちのいずれかに対応するPPG信号は、信号対雑音比(「SNR」)などの品質/信頼度指標を用いて比較されてもよく、最高品質のPPG信号を、HRおよび/または他の生理学的データを推定するために使用するように選択することができる。
【0075】
図9は、さまざまな実施形態に従って利用され得る一例としてのコンピューティングデバイス900のコンポーネントを示す。この例では、モニタリングまたはトラッキングデバイスは、その他のこのような選択肢のうちでも特に、フラッシュメモリまたはDRAMを含み得るメモリデバイス904に格納され得る命令を実行するための、中央処理装置(「CPU」)またはグラフィック処理装置(「GPU」)などの少なくとも1つのプロセッサ902を含む。当業者にとって明らかであるように、デバイスは、プロセッサによって実行されるプログラム命令のためのデータストレージなど、多くのタイプのメモリ、データストレージ、またはコンピュータ読取可能媒体を含み得る。同じまたは別のストレージを画像またはデータに使用することができ、取り外し可能メモリが他のデバイスと情報を共有するように利用可能であり得、任意の数の通信アプローチが他のデバイスと共有するように利用可能であり得る。デバイスは、典型的には、タッチスクリーン、有機発光ダイオード(「OLED」)、または液晶ディスプレイ(「LCD」)などの何らかのタイプのディスプレイ906を含むが、デバイスは、音声スピーカまたはプロジェクタを通してなど他の手段によって情報を伝達してもよい。
【0076】
モニタリングデバイスまたは同様のトラッキングデバイスは、図示されるように少なくとも1つのI/O要素908を含み得る少なくとも1つの動作検出センサを含む。このタイプのセンサは、デバイスの向きおよび/または動きを判断および/または検出することができる。このような要素は、たとえば、デバイスの動き(たとえば、回転運動、角変位、傾き、位置、向き、もしくは非直線経路に沿った動作)を検出するように動作可能な加速度計、慣性センサ、高度計、またはジャイロスコープを含み得る。向き判断要素は、電子またはデジタルコンパスをさらに含み得、このコンパスは、デバイスが(たとえば、主軸または他のこのような側面に対して)向いていると判断される方向(たとえば、北または南)を示すことができる。デバイスは、デバイス(またはデバイスのユーザ)の場所を求めるためのI/O要素908をさらに含み得る。このような測位要素は、デバイスの位置の相対座標を求めるように動作可能なグローバルポジショニングシステム(「GPS」)または同様の場所判断要素を含み得るか備え得る。測位要素は、場所情報をブロードキャストし得る、または信号の三角測量によってデバイスの場所を求めることができ得る無線アクセスポイント、基地局などを含み得る。他の測位要素は、デバイスが場所情報を検出および受信することを可能にするQRコード(登録商標)、バーコード、RFIDタグ、NFCタグなど、または、デバイスが(たとえば識別子を対応する場所にマッピングすることによって)場所情報を得ることを可能にする識別子を含み得る。さまざまな実施形態は、1つ以上のこのような要素を任意の適切な組み合わせで含み得る。I/O要素908は、1つ以上のバイオメトリックセンサ、光センサ、気圧センサ(たとえば高度計)などをさらに含み得る。
【0077】
上述のように、いくつかの実施形態は、要素を用いてユーザの場所および/または動作を追跡する。デバイスの初期位置を(たとえばGPSを用いて)求めると、デバイスは、上記要素を用いることによって、またはいくつかの例では、上述のような向き判断要素もしくはそれらの組み合わせを用いることによって、デバイスの場所を追跡し得る。理解されるように、位置および/または向きを求めるために使用されるアルゴリズムまたはメカニズムは、デバイスが利用可能な要素の選択に少なくとも部分的に依存し得る。一例としてのデバイスは、特定の無線チャネルの通信範囲内で1つ以上の電子デバイスと通信するように動作可能な1つ以上の無線コンポーネント910をさらに含む。無線チャネルは、Bluetooth、セルラー、NFC、またはWi-Fiチャネルなど、デバイスが無線で通信できるようにするために使用される任意の適切なチャネルであり得る。デバイスは、当該技術で知られているような1つ以上の従来の有線通信接続を有し得ることを理解すべきである。デバイスは、従来のプラグインアプローチを通して、または電源マットもしくは他のこのようなデバイスと近接していることによる容量性充電など他のアプローチを通して再充電するように動作可能なバッテリを含み得る、1つ以上の電力コンポーネント912をさらに含む。いくつかの実施形態では、デバイスは、ユーザから従来の入力を受信可能な少なくとも1つの追加の入出力デバイス908を含み得る。この従来の入力は、たとえば、押しボタン、タッチパッド、タッチスクリーン、ホイール、ジョイスティック、キーボード、マウス、キーパッド、またはユーザがデバイスにコマンドを入力できるようにするためのその他のこのようなデバイスもしくは要素を含み得る。これらのI/Oデバイス908は、いくつかの実施形態では、無線赤外線またはBluetoothまたは他のリンクによって接続することもできる。いくつかのデバイスは、音声または他のオーディオコマンドを受け付けるマイクまたは他のオーディオキャプチャ要素をさらに含み得る。たとえば、デバイスは、ボタンをまったく含まない場合があるが、ビジュアルコマンドとオーディオコマンドとの組み合わせを通してのみ制御され得るので、ユーザはデバイスと接触することなくデバイスを制御することができる。
【0078】
上述のように、多くの実施形態は、トラッカーデバイスを着用している人などについて、人体の1つ以上の指標のデータを測定するための1つ以上の発光体914と1つ以上の検出器916との少なくとも何らかの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、これは、周囲の環境の画像を取り込むことができるとともに、デバイスの周辺のユーザ、人々、または物体を撮像することができる1つ以上のカメラなど、少なくとも1つの撮像要素を含み得る。画像取込要素は、ユーザがデバイスを操作しているときにユーザの画像を取り込むのに十分な解像度、焦点距離、および可視領域を有するCCD画像取込要素などの任意の適切な技術を含み得る。コンピューティングデバイスを有するカメラ要素を用いて画像を取り込む方法は当該技術でよく知られており、本明細書では詳細には説明しない。画像取り込みは、1つの画像、複数の画像、周期的な撮像、連続的な画像取り込み、画像ストリーミングなどを用いて実行され得ることを理解すべきである。さらに、デバイスは、ユーザ、アプリケーション、または他のデバイスからコマンドを受信するときなどに画像取り込みを開始および/または停止する能力を含み得る。
【0079】
本明細書における光学的指向の記載に即して、
図9のシステムにおける一例としてのデバイスは、光学的な光電式指尖容積脈波(「PPG」)測定値を得るために使用可能な発光体914および検出器916を含む。PPG技術の中には、単一の空間的場所で光を検出することに依存するものもあれば、2つ以上の空間的場所から取られた信号を加算することに依存するものもある。これらのアプローチでは両方とも、単一の空間的測定値が得られ、この空間的測定値からHR推定値(または他の生理学的データ)を求めることができる。いくつかの実施形態では、PPGデバイスは、単一の検出器916に結合された単一の光源914(すなわち、単一の光路)を使用する。これに代えて、PPGデバイスは、単一の検出器または複数の検出器916に結合された複数の光源914(すなわち、2つ以上の光路)を使用してもよい。他の実施形態では、PPGデバイスは、単一の光源または複数の光源914に結合された複数の検出器916(すなわち、2つ以上の光路)を使用する。いくつかの場合において、光源914は、緑色光、赤色光、および/または赤外光のうちの1つ以上を発するように構成されてもよい。たとえば、PPGデバイスは、単一の光源914と、特定の波長または波長範囲を検出するように各々が構成された2つ以上の光検出器916とを使用してもよい。いくつかの場合において、各検出器916は、互いに異なる波長または波長範囲を検出するように構成される。他の場合には、2つ以上の検出器916は、同じ波長または波長範囲を検出するように構成される。さらに別の場合には、1つ以上の検出器916は、1つ以上の他の検出器とは異なる特定の波長または波長範囲を検出するように構成される。複数の光路を使用する実施形態では、PPGデバイスは、複数の光路から得られた信号の平均を求めた後に、HR推定値または他の生理学的指標を求めてもよい。このようなPPGデバイスは、個々の光路を分解できない、または複数の光路から得られた個々の信号を別々に利用できない場合がある。
【0080】
いくつかの実施形態では、PPG機能を有するモニタリングデバイスを着用しているユーザは、動作を伴う活動を行う(または、たとえば手首着用型PPGデバイスの場合は、手首をねじることによって手首の中の血流のダイナミクスに影響を及ぼす)ことがある。このような例では、PPGデバイスによって提供されるHR推定値の精度が低下するか損なわれる場合がある。光検出器916によって受け取られた光強度は、所望の心臓信号よりも典型的に一桁以上大きいこれらの動きによって変調され得る。したがって、これらの動きの信号の影響が除去される前処理ステップを利用して、動作中のHR推定精度を改善することができる。動作の悪影響に加えて、PPGデバイスにおける信号品質低下の別の原因は、感知される局所領域の特性であり得る。たとえば、手首着用型PPGセンサを手首の上で数ミリメートル動かしただけで信号品質は大きく変化し得る。さらに、動作中、手首着用型PPGデバイスの特定の部分は、その場所、位置、および/または向きに応じてより大きい動作を受ける場合があるため、このような部分に配置されたPPGセンサは、動作に起因するPPG信号のより大きな劣化を引き起こし得る。
【0081】
さまざまな実施形態は、特に動作を伴う活動中にPPGデバイスの信号品質が改善するように、PPGデバイスが、独立してアドレス指定可能な2つ以上の光源-検出器の組み合わせに基づく信号を利用することを可能にする。いくつかの実施形態では、PPG信号は、異なる空間的場所に配置された1つ以上の光源と1つ以上の検出器とを含む複数の光路を介して得ることができる。次に、これら複数のPPG信号を処理して、(たとえば動作成分を除去することによって)PPG信号から心臓成分を分離することができる。たとえば、動作成分は、加速度計からの入力、教師なし学習および/または以前に行われた教師あり学習に基づいて除去され得る。これに加えて、またはこれに代えて、これら複数の光路に対応するPPG信号を品質指標を用いて比較することにより、最高品質のPPG信号を、HRまたは他の生理学的指標、および睡眠時間または他の潜在的な側面を推定するために選択することができる。
【0082】
2つ以上の光源-検出器ペアを利用して動作信号を除外するために、さまざまな実施形態に従うPPGデバイスは、コンピュータプログラムを用いて、所与の信号の動作成分を特定し、コンポジット信号から動作成分を除去することにより、心臓信号のみを残余として残すことができる。いくつかの実現例では、心臓波形の時間相は、異なる光路の間で一定であると仮定されるが、動作信号の位相は、動作を伴う活動中にPPGセンサが皮膚表面とどのように相互作用するか(たとえば、PPG/皮膚界面における圧力は、光路の光源および光検出器の空間的場所に応じて異なり得る)によって、光路の間で異なると予測される。この概念を用いて、PPGデバイスは、数学的モデルを空間的な光路信号に合わせて、心臓成分および動作成分を特定することができる。まず、各光源-検出器の組み合わせによってPPG信号を抽出する。たとえば、2つの光源914および2つの光検出器916によって4つの光源-検出器の組み合わせが得られる。次に、数学的モデルを異なる空間点に合わせることができ、そこからPPG信号の心臓成分および動作成分に関連する特徴的な信号を抽出する。PPGデバイスはさらに、独立成分分析(「ICA」)および他の形態のブラインドソース分離を含むがこれらに限定されない他の技術を実装してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態はHRまたはPPG信号の心臓成分を参照して説明されているが、本明細書に記載の技術は、生理学的データまたは指標を求めるためにPPG信号から抽出され得るSpO2または他のタイプの信号に関連し得る、本明細書に記載の他のタイプの生理学的データに拡張され得る。たとえば、いくつかの実施形態では、SpO2値を求める方法は、1つ以上のPPGセンサ916から第1組の1つ以上のPPG信号を受信することを含み、この第1組のPPG信号は、アナログ信号、またはアナログ成分からサンプリングされてコンピュータメモリに格納されるデジタルデータを含み得る。第1組のPPG信号は、ユーザがモニタリングデバイスを着用しているとき、放射光がユーザの皮膚と相互作用した後に1つ以上の発光体914によって以前に発せられた赤色光および/または赤外光に対応し得る。第1組のPPG信号はノイズ成分を含み得る。SpO2値を求める方法は、1つ以上のPPGセンサまたは検出器から第2組の1つ以上のPPG信号を受信することをさらに含み得、この第2組のPPG信号は、アナログ信号、またはアナログ成分からサンプリングされてコンピュータメモリに格納されるデジタルデータを含み得る。たとえば、第2組のPPG信号は、第1組のPPG信号とは異なる光源914から発せられる波長の範囲から得られてよい。第2組のPPG信号は、1つ以上の緑色光源914から得られてもよい。いくつかの場合において、第2組のPPG信号は、ユーザの心拍数を追跡するために使用されるデバイス内のシステムから得られる。他の場合には、第2組のPPG信号は、HR検出とは別のシステムから受信される。SpO2値を求める方法は、第2組のPPG信号の特徴に基づいて第1組のPPG信号をフィルタリングすることにより、フィルタリングされた一組のPPG信号を生成することをさらに含み得る。第2組のPPG信号の特徴に基づいて第1組のPPG信号からノイズまたは他の特徴を除去するためにさまざまなフィルタリング技術が使用され得る。ほんの一例として、HRは第2組のPPG信号の特徴であってもよい。HRの場合、デバイスは、HR信号の検出された周波数に少なくとも部分的に基づいてフィルタを作成してもよい。フィルタの例として、低域フィルタ、高域フィルタ、およびHR信号の周波数と一致しない周波数を除外する狭帯域フィルタが挙げられる。SpO2値を求める方法は、1つの波長範囲を用いて、第1組のPPG信号の波長が動作する基礎となる信号をよりよく測定することをさらに含み得る。この基礎となる信号(またはそこから導出される特徴)に基づいて、デバイスは、第1組のPPG信号からのノイズをフィルタリングすることに基づいて第1組のPPG信号を改善することができる。さらに、フィルタリングされた一組のPPG信号を用いてSpO2値を作成して格納することができる。一例として、フィルタリングされた一組のPPG信号は、ノイズ成分が減らされているか排除されている場合があるため、SpO2値を作成して格納するためのより正確な基礎となり得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、2つ以上の光路からのPPG信号に基づいて中間のHR推定を行うことができる。取得されたPPG信号の各々について、PPGデバイスは、HRの推定値を毎分心拍数(「BPM」)として求め、PPG信号に関連付けられた特定の光路の信号品質を示す、PPG信号に関連付けられた信頼度指標を計算してもよい。また、たとえばPPG信号の特性(たとえば統計値)またはPPG信号のフィルタリングされたバージョンを介して、中間のHR推定を行わずに信頼度指標を計算することも可能であり得る。いくつかの実施形態では、各信頼度指標は単一のPPG信号に対応する。他の場合には、各信頼度指標は複数のPPG信号に対応する。具体例として、信頼度指標は、PPG信号を組み合わせる各方法(たとえば、信号A+B、信号A+C、信号B+C、および信号A+B+C)について、ならびにPPG信号のさまざまな組み合わせ(たとえば、信号A、B、およびCのうちの少なくとも2つを選択)について、計算されてもよい。他の場合には、1つの信頼度指標が単一のPPG信号に対応し、別の信頼度指標が複数のPPG信号の組み合わせに対応する。PPGデバイスは、(たとえば、信頼度指標が最も高いPPG信号のHR推定値を選択することによって)複数の光路に対応する複数のHR推定値から1つのHR推定値を選択することができる。これに代えて、PPGデバイスは、個々のおよび/または複数のPPG信号に関連付けられた信頼度指標値に基づいて、複数のHR推定値に異なる重み値を割り当て、重み値に基づいて最終的なHR推定値を計算してもよい。本開示の他の側面と同様に、信頼値および/または重み値は機械学習を用いて更新または最適化されてもよい。PPGデバイスは、2つの光路に対応する信頼度指標値がしきい値内にある場合に、短い時間ウィンドウ内の光路間のジャンプを防止するヒステリシスロジックを実装してもよい。また、PPGデバイスは、ユーザデータ、活動データ、動きデータ、またはPPGデバイスがアクセス可能な他のデータに基づいてHR推定値の選択にバイアスをかけるように構成されたロジックを実装してもよい。PPGデバイスは、たとえば精度を改善してよりよいユーザ体験を提供するように、HR推定値に平滑化フィルタを適用してもよい。
【0085】
このようなアプローチの1つの利点は、光源914および/または光検出器916に関連付けられた空間情報をさまざまなアルゴリズムによって使用して、特にデバイスのユーザが運動しているか動作を伴う活動を行っているときに、PPGセンシングデバイスのHRまたは他の生理学的指標の推定精度を改善できることにある。既存の実現例は、典型的には、HRまたは他の生理学的指標の推定性能を改善するためのアルゴリズムに依存するが、複数の光路に基づいて生成される余分なセンサデータという利点を有していない。
【0086】
図9を参照して、一例としてのモニタリングデバイスは、その他のこのような選択肢のうちでも特に、メモリ904と、ディスプレイ906と、バスと、1つ以上の入出力(I/O)要素908と、無線ネットワーキングコンポーネント910とに結合された1つ以上のプロセッサ902を含み得る。ディスプレイ906および/またはI/Oデバイス908は特定の実施形態では省略されてもよい。含まれる場合は、ディスプレイ906は、ユーザのHR、血中酸素飽和度(SpO
2)レベル、および他の指標などのデータを表示するためのインターフェイスを提供してもよい。たとえば、プロセッサ902は、光の検出器916によって生成された1つ以上のPPG信号に基づいて、デバイスによってモニタリングされる生理学的指標の値を計算してもよい。一実施形態では、PPGデバイスはリストバンドであり、ディスプレイは、ユーザがPPGデバイスを着用するとディスプレイ906がユーザの手首の外側に来るように構成される。他の実施形態では、ディスプレイ906は省略されてもよく、PPGデバイスによって検出されたデータは、分析、表示、報告、または他のこのような使用のために、無線ネットワーキングインターフェイスを用いて、近距離無線通信(「NFC」)、Bluetooth、Wi-Fi、または他の好適な無線通信プロトコルを介して、少なくとも1つのネットワーク918を通じてホストコンピュータ920に送信されてもよい。
【0087】
メモリ904は、RAM、ROM、FLASH(登録商標)メモリ、または他の非一時的なデジタルデータストレージを備え得、一連の命令を備える制御プログラムを含み得る。この命令は、メモリからロードされてプロセッサ902を用いて実行されると、プロセッサ902に本明細書に記載の機能を実行させる。発光体914および検出器916は、直接的にまたはドライバ回路922を用いて間接的にバスに結合されてもよく、ドライバ回路922によってプロセッサ902は発光体914を駆動して光検出器916から信号を得てもよい。ホストコンピュータ920は、1つ以上のネットワーク918を介して無線ネットワーキングコンポーネント910と通信してもよく、ネットワーク918は、1つ以上のローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、および/または、地上波リンクもしくは衛星リンクのいずれかを用いるインターネットを含み得る。いくつかの実施形態では、ホストコンピュータ920は、本明細書に記載の機能のうちのいくつかを実行するように構成された制御プログラムおよび/またはアプリケーションプログラムを実行する。
【0088】
いくつかの実施形態では、各発光体914を個別に制御することができ、または複数の検出器916が使用される場合は各光検出器916を個別に読み出すことができ、このような実施形態では、いくつかの異なる光路に沿ったPPGセンサデータを収集することができる。制御プログラムは、収集データを利用して、より正確な推定値、またはHRおよび/もしくは他の生理学的指標を提供することができる。関連する側面において、プロセッサ902およびPPGモニタリングデバイスの他のコンポーネントはシステムオンチップ(「SoC」)として実現されてもよく、このシステムオンチップは、1つ以上の縮小命令セットコンピューティング(「RISC」)命令セットを用いる1つ以上のCPUコア、ならびに/またはモニタリングデバイスをサポートする他のソフトウェアおよびハードウェアを含み得る。
【0089】
さまざまな実施形態では、発光体(または光源)914は、LEDなどの電子半導体光源を含むか、または、フィラメント、蛍光体、もしくはレーザのうちのいずれかを用いて光を生成する。いくつかの実現例では、光源914の各々は、同じ中心波長を有する光または同じ波長範囲内の光を発する。他の場合には、少なくとも1つの光源914が、光源914のうちの別の1つとは異なる中心波長を有する光を発してもよい。光源914によって発せられる光の中心波長は、495nm~570nmの範囲であってもよい。たとえば、特定の緑色光源914は、528nmの中心波長を有する光を発してもよい。他の実施形態では、光源914のうちの1つ以上は、赤色光(たとえば、中心波長660nm)またはIR光(たとえば、中心波長940nm)を発してもよい。いくつかの実施形態では、光源914のうちの1つ以上は、典型的には650nm~940nmの範囲のピーク波長を有する光を発してもよい。より具体的には、赤色光源914は660nmのピーク波長を有する光を発してもよく、1つ以上の赤外光源914は750nm~1700nmの範囲のピーク波長を有する光を発してもよい。一例であって一切限定されないが、特定の赤外光源914は、730nm、760nm、850nm、870nm、または940nmのピーク波長を有する光を発してもよい。いくつかの場合において、LEDなどの市販の光源は、製造業者の指定波長から±10nmの中心波長公差で約20nm間隔で出力を提供し得るため、光源の有用なピーク波長の1つの可能性のある範囲は650nm~950nmである。緑色光源914は、495nm~570nmの範囲の波長を有する光を発するように構成されてもよい。たとえば、特定の緑色光源914は、528nmの波長を有する光を発してもよい。緑色光源914は、赤色光源および赤外光源914のペアと同様に、光検出器916から等間隔に配置されてもよい。たとえば、光検出器916と第1の赤色光源914の中心との間の距離が2mmである場合、光検出器916と緑色光源914との間の距離も2mm(たとえば等距離)であってもよい。いくつかの他の場合には、光検出器916と1つ以上の光源914との間の距離は等距離ではない。さらに、いくつかの実施形態では、光源914のうちの1つ以上は、複数の検出器916に対して同じまたは実質的に同じ(たとえば差が1mm未満の)場所で緑色、赤色および赤外波長などの複数の波長を発する単一のLEDパッケージを含み得る。このようなLEDは、単一のパッケージにおいて単一のダイを用いて同じ場所に配置された複数の半導体素子を含み得る。
【0090】
光源914の間隔は、光源914の側面または光源914の中心から測定されてもよい。たとえば、光源914は、各光源914の中心が、光検出器916のうちの最も近い光検出器916の端から第1の距離にあるように構成されてもよい。説明のための実施形態では、第1の距離は2mmであってもよい。いくつかの実現例では、各光源914は、光源914のうちの最も近い光源914から第2の距離に位置し、各光検出器916は、光検出器916のうちの最も近い光検出器916から第3の距離に位置する。いくつかの実施形態では、第2および第3の距離は、第1の距離と同一である。他の実施形態では、第2および第3の距離の各々は、第1の距離とは異なる。第2の距離は、第3の距離と同一であってもよいし異なっていてもよい。間隔の特定の大きさは多数の要因に依存し得るものであり、本開示は実施形態をいずれの特定の間隔にも限定するものではない。たとえば、1mm(またはそれ以下)~10mmの範囲の間隔が、さまざまな実施形態において実行可能であろう。
【0091】
いくつかの実施形態では、すべての光源914の独立した制御が提供される。他の実施形態では、いくつかの光源914は、ギャングまたはバンクとしてまとめて制御される。各光源914の独立した制御、または複数の検出器916の各々からの独立した読み出し(たとえば、複数の検出器の各々からの同じまたは異なる光波長に基づいて独立信号を得ること)の利点は、本明細書に記載のように、複数の光路アプローチを用いてHRおよび/または他の生理学的指標の推定を改善できることである。
【0092】
光検出器916は、光源914から発せられた光の波長を検出するように適合された1つ以上のセンサを含み得る。特定の光源914と特定の検出器との組み合わせは、PPGセンサなどのセンサを含み得る。第1のPPGセンサおよび第2のPPGセンサは、同じ光源914および/もしくは検出器916などのコンポーネントを共有し得るか、または異なるコンポーネントを有し得る。したがって、「PPGセンサ」という用語は、その通常の意味を有することに加えて、このような配置のうちのいずれかを指すことがあるが、実際の実施形態はPPGセンサを実装する際に複数のコンポーネントを使用し得る。「PPGデバイス」という用語は、その通常の意味を有することに加えて、PPGセンサを含む任意のデバイスを指すことがある。光検出器916は、一実施形態では、光源914によって使用される光の異なる波長の各々を検出するための1つ以上の検出器916を含み得る。たとえば、第1の検出器916は560nmの波長を有する光を検出するように構成されてもよく、第2の検出器916は940nmの波長を有する光を検出するように構成されてもよく、第3の検出器916は528nmの波長を有する光を検出するように構成されてもよい。例として、半導体材料で作られ、特定の波長または波長範囲の光のみを入射させる光学フィルタを有するフォトダイオードが挙げられる。光検出器916は、フォトダイオード、フォトトランジスタ、電荷結合素子(「CCD」)、サーモパイル検出器、マイクロボロメータ、または相補型金属酸化膜半導体(「CMOS」)センサ、のうちのいずれかを含み得る。光検出器916は、本明細書にさらに説明するように、複数の検出器要素を含み得る。検出器916のうちの1つ以上はバンドパスフィルタ回路を含み得る。
【0093】
他の実施形態では、検出器916は、複数の光波長を検出するように構成された1つ以上の検出器916を含み得る。たとえば、単一の検出器916は、検出器に結合された電気デジタルマイクロプロセッサから受信したデータに基づいて異なる周波数に同調するように構成されてもよい。別の方法では、単一の検出器916は複数の活性領域を含み得、各活性領域は所与の波長範囲に対する感度が高い。単一の検出器916は赤色およびIR周波数の波長を有する光を検出するように構成されてもよく、第2の検出器916は緑色周波数の波長を有する光を検出するように構成される。さらに、光源914の各々は、先に説明したように、1つ以上の異なる光波長のうちのいずれかを使用してもよい。
【0094】
一実施形態では、光検出器916は、光源914によって発せられる波長以外の光の波長をフィルタリングで除去するように構成された1つ以上のフィルタを有するハウジング内に装着されてもよい。たとえば、ハウジングの一部は、光源914によって発せられる波長の光以外の周囲光を除去するフィルタで覆われてもよい。光源914からの信号は、検出器916によって検出される波長とは異なる波長を有する周囲光を生成する周囲光源をフィルタリングで除去する周囲光フィルタを通して、光検出器916で受信されてもよい。光源914および光検出器916の例としてLEDおよびフォトダイオードがそれぞれ使用されているが、本明細書に記載の技術は、広帯域光を生成する端面発光レーザ、面発光レーザ、およびLED励起蛍光体などの他のタイプの光源に拡張され得る。そして本技術は、光源と検出器との他の組み合わせにも拡張され得る。たとえば、PPGデバイスは、(i)単一もしくは複数のLEDおよび多素子光検出器(たとえばカメラセンサ)、(ii)LEDアレイおよび単一もしくは複数のフォトダイオード、(iii)各検出器上に波長選択フィルタを有する広帯域LED励起蛍光体および検出器アレイ、(iv)空間光変調器(「SLM」)(たとえばデジタルマイクロミラーデバイス(「DMD」))、または、(v)液晶オンシリコン(「LCoS」)デバイスおよび単一もしくは複数のLED、それらの他の組み合わせ、または光源および検出器の他の構成を含み得る。
【0095】
一例としての実施形態によって実行され得るさまざまな方法を例示するために特定のフローの記載および図が本明細書に提示されているが、これらは、PPGデバイスのCPUまたはマイクロコントローラによって実行可能な機械コードを作成するために、任意の好適なプログラミング環境または言語を用いてプログラムされ得る一例としてのアルゴリズムを示しているに過ぎない。言い換えれば、フロー図は、本書中の書面の説明とともに、特許請求の範囲に記載されている主題の側面についてのアルゴリズムの開示であり、本開示の属する技術の当業者の間でこの主題の通信に通常使用されるのと同じレベルの詳細さで提示されている。さまざまな実施形態は、アセンブリ、C、オブジェクティブC、C++、Java(登録商標)、または他の人間が読める言語を用いてコード化されてから、機械コードにコンパイルされ、アセンブルされ、またはそうでなければ変換され得る。この機械コードは、CPUまたはマイクロコントローラに結合されるモニタリングデバイス装置のROM、EPROM、または他の記録可能メモリにロードされてから、CPUまたはマイクロコントローラによって実行され得る。
【0096】
一実施形態では、コンピュータアプリケーションまたはプログラムを用いて、複数の光路から得られたPPG信号を処理して、ユーザの動作に関連付けられた信号成分をフィルタリングまたは除外することにより、信号の動作成分を特定して、特定した動作成分をコンポジット信号から除去して、心臓成分を残余または最終信号として残してもよい。PPG信号は、歩行期間、運動期間、または睡眠期間に関連し得る、日中または夜間のさまざまな活動で収集されてもよい。加速度計、ジャイロスコープ、または高度計を含む他のオンデバイスセンサを用いて、適切なフィルタを開発する基礎として、活動、または人間の姿勢を分類または検出してもよい。これらのフィルタまたは信号処理方法を、複数の光路を有するPPGデータの変動の目標低減のために使用してもよい。限定ではなく一例として、加速度計データを用いて、PPGデータをフィルタリングするとともに他の体の向きを除去して特定の姿勢を調べる信号処理方法を開発することができる。これは、PPGデータのノイズを低減し、対応する光路の対応する生理学的変数のよりよい評価を得るのに役立ち得る。
【0097】
さまざまな実施形態では、本明細書に記載のアプローチは、モニタリングデバイス、またはモニタリングデバイスとペアリングされたモバイルデバイスなどの二次デバイス、サーバ、ホストコンピュータなどの上で動作するファームウェアのうちの1つ以上によって実行されてもよい。たとえば、モニタリングデバイスは、動作成分を除去するための、かつ、HR、SpO2、および/または他の生理学的データ指標の最終推定値を作成するための動作を行うサーバにアップロードされるかそうでなければ通信される信号を生成することに関連する動作を実行してもよい。これに代えて、モニタリングデバイスは、モニタリング信号を生成し、動作成分を除去して、モニタリングデバイスにローカルなHR、SpO2、および/または他の生理学的指標の最終推定値を作成することに関連する動作を実行してもよい。この場合、最終推定値は、その値を用いて他の動作を行うホストコンピュータなどのサーバにアップロードされるかそうでなければ通信されてもよい。
【0098】
図9に示されるコンポーネントを有するデバイスなど、一例としてのモニタリングまたはトラッカーデバイスは、1つ以上のセンサおよび/または外部デバイスから1つ以上のタイプの生理学的および/または環境データを収集し、このような情報を他のデバイス(たとえば、ホストコンピュータまたは別のサーバ)に通信または中継することによって、たとえばウェブブラウザまたはネットワークベースのアプリケーションを用いて収集データを見ることを可能にし得る。たとえば、モニタリングデバイスは、ユーザによって着用されている間、1つ以上のセンサを用いてユーザの歩数を計算して保存することによってバイオメトリック追跡を実行してもよい。モニタリングデバイスは、ユーザの歩数を表すデータをウェブサービス(たとえば、www.fitbit.com)、コンピュータ、携帯電話、および/または健康ステーション上のアカウントに送信してもよく、ここでデータがユーザによって保存、処理、および/または視覚化されてもよい。上述のように、モニタリングデバイスは、ユーザの歩数に加えて、またはユーザの歩数の代わりに、多くの他の生理学的データ指標を測定または計算してもよい。繰り返しになるが、このような生理学的データは、エネルギー消費量(たとえば燃焼カロリー)、上ったおよび/または下りた階数、HR、心拍波形、HR変動、HR回復、呼吸、SpO
2、血液量、血糖、皮膚水分、皮膚の色素沈着レベル、(たとえば、GPS、グローバルナビゲーションサテライトシステム(GLONASS)、もしくは同様のシステムによる)場所および/または方位、標高、歩行速度および/または移動距離、水泳のラップカウント、泳ぎ方および検出カウント、自転車距離および/または速度、皮膚伝導、皮膚温および/または体温、筋電図検査で測定した筋肉状態、脳波検査で測定した脳活動、体重、体脂肪、カロリー摂取量、食物からの栄養摂取量、薬の摂取量、睡眠期間(たとえば、時刻、睡眠相、睡眠の質、および/または持続時間)、pHレベル、水分補給レベル、呼吸数、および/または他の指標を含み得るが、これらに限定されるわけではない。
【0099】
モニタリングまたはトラッキングのための一例としてのデバイスは、たとえば、気圧、気象条件(たとえば、温度、湿度、花粉数、大気質、降雨/降雪状況、風速)、光への暴露(たとえば、周囲光、紫外線(UV)暴露、時間、および/もしくは暗闇で過ごした持続時間)、騒音暴露、放射線暴露、ならびに/または磁界など、ユーザの周囲の環境に関連する指標を(たとえば、1つ以上の環境センサを用いて)測定または計算してもよい。さらに、モニタリングデバイス(および/またはホストコンピュータおよび/または別のサーバ)は、デバイスの1つ以上のセンサからデータを収集してもよく、このようなデータから導出される指標を計算してもよい。たとえば、モニタリングデバイスは、HR変動、皮膚伝導、騒音公害、および/または睡眠の質の組み合わせに基づいて、ユーザのストレスまたはリラックスレベルを計算してもよい。さらに別の例では、モニタリングデバイスは、薬の摂取量、睡眠、および/または活動に関連するデータの組み合わせに基づくなどして、医療介入の有効性を判断してもよい。繰り返しになるが、本明細書における例は、例示のために提供されているにすぎず、限定的または網羅的であることを意図していない。
【0100】
一例としてのモニタリングデバイスは、コンピュータ読取可能記憶媒体リーダと、通信デバイス(たとえば、モデム、ネットワークカード(無線もしくは有線)、および/または赤外線通信デバイス)と、上述のようなワーキングメモリ904とをさらに含み得る。コンピュータ読取可能記憶媒体リーダは、リモートの、ローカルの、固定されたおよび/または取り外し可能な記憶装置を表すコンピュータ読取可能記憶媒体と、コンピュータ読取可能情報を一時的におよび/またはより永続的に含み、格納し、送信し、取り出すための記憶媒体とに接続されてもよいし、これらの記憶媒体を受けるように構成されてもよい。モニタリングシステムおよびさまざまなデバイスは、典型的には、クライアントアプリケーションまたはウェブブラウザなどのオペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを含む、少なくとも1つのワーキングメモリデバイス904内に位置する多数のソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービス、または他の要素をさらに含む。代替の実施形態は、上述の事項から多数の変形を有し得ることを認識すべきである。たとえば、カスタマイズされたハードウェアがさらに使用されてもよく、および/または、特定の要素がハードウェア、ソフトウェア(アプレットなどのポータブルソフトウェアを含む)で、またはその両方で実現されてもよい。さらに、ネットワーク入出力デバイスなどの他のコンピューティングデバイスへの接続が使用されてもよい。
【0101】
コードまたはコードの一部を格納するための記憶媒体および他の非一時的なコンピュータ読取可能媒体は、当該技術で知られているまたは使用されている任意の適切な媒体を含み得る。当該媒体は、コンピュータ読取可能命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術で実現される揮発性および不揮発性媒体、取外し可能および取外し不可能媒体を含むがこれらに限定されるわけではない。揮発性および不揮発性媒体、取外し可能および取外し不可能媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(「DVD」)もしくは他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、または、所望の情報を記憶するために使用することができ、システム装置によってアクセスすることができる任意の他の媒体を含む。
【0102】
本明細書に提供されている開示および教示に基づいて、当業者はさまざまな実施形態を実現するための他の手段および/または方法を認識するであろう。したがって、明細書および図面は、限定的なものではなく例示的なものと見なされるべきである。しかしながら、特許請求の範囲に記載されている本発明のより広い精神および範囲から逸脱することなく、さまざまに修正および変更がなされ得ることが明らかであろう。