(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】異なる材料から結晶材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20240122BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20240122BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240122BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20240122BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240122BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240122BHJP
【FI】
C23C14/34 C
C23C14/08 K
C23C26/00 C
H01M4/1391
H01M10/052
H01M10/0562
(21)【出願番号】P 2022528189
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 GB2020052844
(87)【国際公開番号】W WO2021094727
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-06-30
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エドワード レンダル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート イアン ジョセフ グルアー
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186581(JP,A)
【文献】国際公開第2011/131921(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0048157(US,A1)
【文献】特開2007-005219(JP,A)
【文献】特開昭49-101273(JP,A)
【文献】特開2002-235171(JP,A)
【文献】特開2015-193863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
C23C 14/08
C23C 26/00
H01M 4/1391
H01M 10/052
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に材料の結晶層を製造する方法であって、該結晶層は、リチウム、少なくとも一種の遷移金属及び少なくとも一種の対イオンを含み、該方法が、
遠隔プラズマ発生器を使用して、プラズマを発生させるステップと、
リチウムを含む第一のターゲットから基板の表面上又は基板により支持される表面上に、材料をプラズマスパッタするステップであって、前記第一のターゲットから前記表面上への粒子の軌跡に対応する少なくとも第一のプルームが存在するステップと、
少なくとも一種の遷移金属を含む第二のターゲットから前記表面上に、材料をプラズマスパッタするステップであって、前記第二のターゲットから前記表面上への粒子の軌跡に対応する少なくとも第二のプルームが存在するステップと
、
ターゲットにバイアスをかけることと、を含み、
前記第一のターゲットが、前記第二のターゲットと非平行に配置され、
前記第一のプルームと前記第二のプルームが、前記基板の表面又は前記基板により支持される表面に近接する領域で集中し、
前記結晶層が、前記領域で、前記表面上に形成さ
れ、
プラズマを発生させるために使用される電力の、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力に対する比率が、1:1以上7:2以下である、表面上に材料の結晶層を製造する方法。
【請求項2】
前記第二のターゲットよりも前記第一のターゲットで、より多くのプラズマエネルギーが受け取られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一のターゲットが、第一の方向で前記基板に向かって面しており、前記第二のターゲットが、第二の方向で前記基板に向かって面しており、前記第一の方向と前記第二の方向が、前記基板に向かって集中する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
断面において、前記第一のターゲットの前記表面の中心から延び、前記第一の方向に平行な概念線が、前記第二のターゲットの前記表面の中心から延び、前記第二の方向に平行な概念線と、前記複数のターゲットの一方よりも前記基板により近い位置で交差する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
交差の位置が、前記複数のターゲットの一方から前記基板までの最短距離の半分よりも前記基板に近い、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
結晶層が、前記表面上に形成されているときに、前記基板、前記第一のターゲット及び前記第二のターゲットのうち少なくとも一つが移動している、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第一のプルームと前記第二のプルームが集中する領域で、前記基板が、曲率半径を有し、前記ターゲットが、曲率半径の中心周りで周辺に配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基板の少なくとも一部が、回転ドラムによって運ばれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第一のターゲットと前記基板の間の作動距離が、システムの理論的な平均自由行程の+/-50%以内である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一のターゲットと前記基板の間の作動距離が、1cmから50cmである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第一のターゲット及び前記第二のターゲットの前記基板に面する前記表面が、平面である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
プラズマが、前記基板の幅に沿う方向及び前記基板の長さに沿う方向に延びるプラズマのシートを形成するように形作られる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第二のターゲットが、Fe、Co、Mn、Ni、Ti、Nb、Al及びVから成る群より選択される少なくとも一種の遷移金属を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記基板が、0.1μmから10μmの厚さを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記表面上に形成された前記結晶層が、0.001μmから10μmの厚さを有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記材料を堆積させる前記表面とは反対の前記表面上で測定して、1秒間の平均を取った、面積が1cm
2の基板材料の任意の所与の正方形で到達する最高温度が、どの時点でも、摂氏500度以下であるように、前記表面上に材料をスパッタするステップが実行される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
異なる材料の多層シートを形成すること、該多層のシート又はその一部を電子製品に組み込むことを含み、前記シートの複数の層のうち少なくとも一つが、請求項1から16のいずれかの方法を実行することによって作製された導電材料の結晶層又は半導体材料の結晶層である、電子部品を製造する方法。
【請求項18】
前記基板が、電子部品の一部として保持される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電子部品が、電池、電池の機能層、エネルギー貯蔵デバイス又は電池のセルである、請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、表面上に結晶材料の層を製造する方法に関する。より具体的には、限定されないが、この発明は、プラズマ堆積プロセスを使用して、リチウム、少なくとも一種の異なる金属及び少なくとも一種の対イオンを含む結晶層を作製することに関する。
【0002】
プラズマ堆積システムは、電子デバイスの製造から耐摩耗性被覆膜の生産まで、幅広い産業分野で使用される。電子デバイスの分野では、数多くの定着したプラズマ堆積技術が存在する。
【0003】
プラズマ堆積プロセスを使用して、リチウム、少なくとも一種の異なる金属及び少なくとも一種の対イオンを含む材料の結晶層を形成するには、通常、アニールステップが必要である。
【0004】
従来のマグネトロンスパッタリング技術は、通常、非効率的で、不均一なターゲット利用に悩まされている。JP2008045213は、比較的小さいターゲット領域にわたって均一なプラズマ密度を達成しようとするパルスDCマグネトロンスパッタリングの使用を提案している例である。この方法は、基板を200℃に予熱すること、及びその後に、LiCoO2を含む単一のスパッタターゲットにパルスDC電力を印加することを含む。所望の結晶構造を有するLiCoO2の結晶層を形成するために、材料の層が基板上に形成され、短時間の急速熱アニールプロセスが実行される。
【0005】
PCT公報WO2011/131921A1は、遠隔生成プラズマを使用し、ターゲット材料の均一なスパッタリングとなるように、ターゲットに前記プラズマを閉じ込める方法を開示している。
【0006】
しかしながら、WO2011/131921A1は、結晶性薄膜の堆積又は作製に関するものではない。遠隔生成プラズマを使用する薄膜堆積システムの特定のパラメーターの操作を通じて、原位置で結晶膜を堆積させる方法を論じておらず、また先行開示もしていない。加えて、WO2011/131921A1は、ターゲット材料と前記材料のスパッタ堆積を通じて形成される材料との間の所望のストイキオメトリを達成できる装置又は方法を論じていない。
【0007】
現在の技術水準から成る技術は、高品質材料の薄膜を製造できるが、高速で、所望のストイキオメトリで、効率的にターゲット材料を使用して、層状酸化物材料などの非常に規則正しい材料の結晶膜を製造できることに対し、長年の切実な要求がある。
【0008】
本発明は、上述の問題の一以上を軽減しようとするものである。代わりに又は加えて、本発明は、基板の表面上又は基板上に結晶層を形成する方法を向上させようとするものである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第一の態様によると、基板の表面上又は基板により支持される表面上に結晶層を形成する方法が提供され、該結晶層は、リチウム、少なくとも一種の異なる金属及び対イオンを含む。この方法は、プラズマを使用して、様々なターゲットから基板上に材料をスパッタすることを含む。第一のターゲットアセンブリは、それぞれリチウムを含む一以上のターゲットで構成されている。第二のターゲットアセンブリは、一以上のターゲットで構成されており、それぞれがリチウムと異なる金属、例えば遷移金属を含む。プラズマは、遠隔プラズマ発生器を使用して発生させる。好ましくは、プラズマを、第一のターゲットアセンブリから離れて且つ第二のターゲットアセンブリから離れて発生させる。本方法は、プラズマを使用して、第一のターゲットアセンブリ及び第二のターゲットアセンブリの両方から基板の表面上に又は基板により支持される表面上に、材料をスパッタすることを含む。第一のターゲットアセンブリから表面への粒子の軌跡に対応する第一のプルーム、及び第二のターゲットアセンブリから表面への粒子の軌跡に対応する第二のプルームが存在する。第一のターゲットアセンブリは、第二のターゲットアセンブリと非平行に配置される。例えば、第一のターゲットのプラズマ対向表面が平面で且つ第二のターゲットのプラズマ対向表面が平面であってもよく、第一のターゲット及び第二のターゲットのそのような平らな面の平面の垂直軸が、平行でなくてもよい。例えばそのような垂直軸は、基板の表面又は基板により支持される表面に向かう方向で、互いに向かって集中してもよい。少なくとも第一のターゲットアセンブリ、第二のターゲットアセンブリ及び基板の部分を含む断面に対して、第一のターゲットアセンブリが、第二のターゲットアセンブリと非平行に配置される場合であり得る。参照する断面は、例えば基板の長さに沿う平面と交差してもよいし、及び/又はターゲットの一以上のプラズマ対向表面に垂直であってもよい。少なくとも上述した断面で見ると、第一のプルームと第二のプルームは、基板の表面又は基板により支持される表面に近接する領域で集中している。結晶層は、前記領域で表面上に形成される。結晶材料の対イオンは、気体状態で供給してもよい。対イオンは、例えば酸素を含んでもよい。
【0010】
本発明のこの第一の態様による方法の実施形態は、原位置で表面上に多元素結晶材料を製造するために使用できる。結晶材料は、優れたリチウムイオン移動度をもたらす構造を有してもよく、それゆえ、例えばリチウムイオン電池におけるエネルギーセルのカソード材料を形成するのに適している。(本明細書の言及は電池に関するが、本発明は、リチウム原子/イオンを含む結晶材料の使用又は含有することによる利益があり得る他の製品又はデバイスへの応用性を有することを理解されたい。)本発明の方法は、遠隔プラズマの使用、最終的な結晶材料に必要とされる異なる元素用の異なるターゲットの使用、及びシステムの形状の組み合わせによって、そのような結果を可能にする。好ましくは、プラズマが、アルゴンイオンを含む。遠隔生成プラズマは、ターゲットと独立してプラズマエネルギーの制御を可能にする。ターゲットでプラズマを発生させるために、完全にターゲットバイアスに依存する先行技術とは対照的に、いずれのターゲットとも相互作用せずに、高エネルギープラズマを発生させること、閉じ込めること、及び制御することができる。負の加速電圧(本明細書では代わりに「バイアス電力」と称する)をターゲットに印加し、該負の加速電圧がプラズマイオンをターゲットに向かって及びターゲット中に加速し、ターゲットからスパッタする励起されたイオンを発生させることにより、スパッタリングを達成することができる。スパッタ閾値(スパッタリングが始まるプラズマエネルギー)は、ターゲット材料に依存する。一般的に、印加されるバイアス電力は、プラズマ内のイオンの加速場に影響し、それゆえ、それらの衝撃エネルギーに影響し、したがってスパッタされる材料の量に影響する。リチウム元素材料は、通常、所与のエネルギーで、表面に到達したイオン当たりの生成した原子として測定されるスパッタ収率が、コバルトなどの遷移金属よりも低い。
【0011】
それゆえ、遠隔生成プラズマの使用は、プラズマ生成プロセスを、スパッタリングプロセスと区別し、スパッタされた材料の運動エネルギーを、例えばターゲットのバイアスごとに細かく制御することを可能にする。
【0012】
ターゲットのサイズ及び形状、複数のターゲットの互いに対する配置、並びに付近の磁場及び電場は、プルームの形状及び帯電したイオンの濃度に影響を及ぼす。
【0013】
プルームの形状、並びにそれらがどのように混ざるか及び集中するかは、表面に堆積させた材料のストイキオメトリに影響を及ぼす。互いに対して及び基板に対してターゲットの角度を変えることは、プルームの形状の制御に役立ち、それゆえ、堆積させた材料のストイキオメトリの制御に役立つ。
【0014】
リチウムイオンの割合に対する対イオンの割合は、例えばガスをイオン化するプラズマによって対イオンを発生させるときに、そのようなガスのプラズマへの流入を制御することにより、独立して制御できる。
【0015】
さらに、そのような分離したプロセスのパラメーターを、互いに独立して制御及び/又は設定できるシステム/方法を提供することで、所望のストイキオメトリの結晶材料の堆積及び所望の結晶相を有する結晶材料の堆積を促進する。
【0016】
本発明の実施形態においては、材料を堆積させるときに、結晶材料を、原位置で形成できるように、材料の表面又は材料により支持される表面に、材料を直接堆積させる。それゆえ、結晶材料を、実質的にアニールステップを必要とせずに直接形成し得る。
【0017】
堆積させた材料の少なくとも一部、任意で堆積させた材料の全部は、六方晶構造を有してもよい。堆積させた材料の少なくとも一部及び任意で全体は、結晶性「層状酸化物」構造を有してもよい。そのような「層状酸化物」構造は、例えばリチウムイオン電池などの固体電池を製造するときに重要である。層状酸化物構造は、リチウムイオンがより簡単に結晶構造からデインターカレートすることを可能にし、より速い充電、より高い容量の固体電池をもたらす。また、リチウムイオンが移動したときに、安定した結晶構造を維持しやすくし得る。
【0018】
インターカレーションは、材料がそれ自体の相(化学構造及び結晶構造)を変化させずに、材料に及び材料からイオンが容易に移動することができる材料の性質をいうと理解されたい。例えば固体状態のインターカレーション膜は、エネルギー貯蔵デバイスの放電及び充電中に固体状態のままである。
【0019】
本発明によると、表面上に形成した結晶材料は、リチウム、少なくとも一種の異なる金属及び少なくとも一種の対イオンを含む。結晶材料は、式LiBO2により定義される層状酸化物構造の形態(又はフレームワーク)であってもよく、ここで、Bは異なる金属であり、酸化物は、前記少なくとも一種の対イオンから形成される。異なる金属(「B」)は、一以上の酸化還元活性遷移金属、一以上の遷移金属又はそれらの混合物であってもよい。アルミニウムなどのいわゆる「ポスト遷移金属」グループの金属元素を、層状酸化物フレームワークに組み込むこともできる。異なる金属は、Fe、Co、Mn、Ni、Ti、Nb、Al及びVのうちの一以上を含んでもよい。コバルトは、好ましい選択であり、例えば結晶性のLiCoO2を形成する。
【0020】
堆積させる材料がLiCoO
2である場合に、材料が、任意で六方晶格子構造及び/又は菱面体晶格子構造で堆積されてもよく、任意で
(「R3(-)2/m」空間群又は空間群166とも称される)の形状を有してもよい。この構造は、Fd3m空間群の構造(面心立方格子構造)を有するLiCoO
2の低エネルギー構造と比べて、高い使用可能容量及び高い充放電速度であるなどの多くの利点がある。
は、リチウムのインターカレーション及びデインターカレーションにおける高い可逆性及びより少ない構造変化により、典型的な電池アプリケーションにおいて、より良い性能を有すると考えられている。それゆえ、
の結晶性LiCoO
2は、固体電池アプリケーションに都合がよい。
【0021】
本方法の実行中、結晶材料は、基板上の表面又は基板により支持される表面から実質的にエピタキシャルに成長してもよい。エピタキシャル成長は、リチウムイオンがより容易にインターカレーション及びデインターカレーションすることを可能にするため、都合がよい。材料がLiCoO2である場合に、結晶は、任意で実質的に基板に平行な(101)及び(110)面で配列する。これは、薄膜のイオンチャネルが基板に垂直に配向し、電池からのイオンのインターカレーション及びデインターカレーションをより容易にすることを意味するため、有益である。これは、電池の作動容量及び充電速度を向上させる。
【0022】
本発明の実施形態を、一般式LiaM1bM2cO2の結晶材料を堆積させるために使用してもよく、リチウムの量「a」は0.5から1.5(任意で1)、M1は一種以上の遷移金属(任意でコバルト、鉄、ニッケル、ニオブ、マンガン、チタン及びバナジウムのうち一種以上)、bは遷移金属の総量、M2は例えばアルミニウム、cはM2の総量(任意で0)である。任意で、aが1、bが1、cが0である。任意でM1は、コバルト、ニッケル、バナジウム、ニオブ及びマンガンのうちの一種である。
【0023】
任意でaは1より大きく、そのような材料は、時には「リチウムリッチ」材料として知られている。そのようなリチウムリッチ材料は、
【化1】
であってもよく、例えばx=0、0.06、0.12、0.2、0.3及び0.4である。
【0024】
他のそのような材料は、
【化2】
であり、式中、yは0.12より大きく、0.4以下の値である。
【0025】
他のそのような材料は、
【化3】
であり、式中、xは0.175以上0.325以下、yは0.05以上0.35以下の値である。
【0026】
【化4】
は、他のそのような材料であり、式中、xは0以上0.4以下、yは0.1以上0.4以下、zは0.02以上0.3以下である。
【0027】
全てのリチウムターゲットは、第一のターゲットアセンブリに属すると考えてもよい。同一の異なる金属を含む全てのターゲット(又は代わりに任意のリチウムでない金属ターゲット)は、第二のターゲットアセンブリに属すると考えてもよい。任意で、一以上のターゲットから構成される第三のターゲットアセンブリが存在してもよく、該一以上のターゲットのそれぞれが、第一のターゲットアセンブリ及び第二のターゲットアセンブリのターゲットの金属と異なる金属を含む。
【0028】
上述のとおり、リチウム元素材料は、通常、所与のエネルギーで表面に到達するイオン当たりの生成する原子として測定されるスパッタ収率が、他の金属に比べて比較的低い。例えば、所与の面積、例えばターゲットと同程度の大きさの面積について、第二のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットよりも第一のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットで、より多くのプラズマエネルギーを受け取る場合であり得る。第一のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットで、第二のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットよりも、ターゲット当たり多くのプラズマエネルギーを受け取ってもよい。上述した同一の断面で見た場合、全てのターゲットで受け取るプラズマエネルギーの合計は、ターゲットの1mmのストリップと断面の両側0.5mmについて、第二のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットよりも第一のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットのほうが大きい。
【0029】
ターゲットを、対で配置してもよく、対のうちの一方のターゲットは、第一のターゲットアセンブリに属し、対のうちの他方のターゲットは、第二のターゲットアセンブリに属する。
【0030】
例えば異なるバイアスをかけた結果として、第一のターゲットアセンブリのターゲット(リチウムを含むターゲット)で受け取るプラズマエネルギーが、第二のターゲットアセンブリのターゲット(少なくとも一種の遷移金属を含むターゲット)で受け取るプラズマエネルギーより大きくなってもよい。代わりに又は加えて、例えば第一のターゲットアセンブリが、第二のターゲットアセンブリよりも多くプラズマに曝されることによる結果であってもよい。第一のターゲットアセンブリは、平均して、第二のターゲットアセンブリよりも、最も高いエネルギーのプラズマの領域に近くてもよい。最も高いエネルギーのプラズマの領域に最も近い第一のターゲットアセンブリのターゲットが、最も高いエネルギーの領域に最も近い第二のターゲットアセンブリのターゲットよりその領域に近くてもよい。
【0031】
第二のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットが、第一のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットと比較して、プラズマの幅の大部分にわたって取られる任意の所与の断面に対して、水平に対して異なって曲げられてもよい。
【0032】
第一のターゲットアセンブリの一以上のターゲットは、リチウム元素の別個の領域を含んでもよい。第二のターゲットアセンブリの一以上のターゲットが、元素材料の別個の領域を含んでもよく、例えばコバルト元素の別個の領域を含んでもよい。「別個の領域」は、そのターゲット自体又はターゲットの領域を意味し得る。異なる材料の複数の別個の領域を含む複合ターゲット体があってもよい。それゆえ、そのような複合ターゲット体は、第一のターゲットアセンブリ及び第二のターゲットアセンブリの両方を含むことができる。
【0033】
第一のターゲットアセンブリのターゲットが、第一の方向で基板に向かって面してもよい。方向は、使用中に基板に面するターゲットの表面の中心における表面の法線と考えてよい。第二のターゲットアセンブリの隣接するターゲットが、第二の方向で基板に向かって面してもよい。プルームの集中の制御の助けとなり得るように、第一の方向と第二の方向が基板に向かって集中することが好ましい。断面(第一のターゲットアセンブリ、第二のターゲットアセンブリ及び基板の部分を含む上述した断面)において、第一の方向に平行な、第一のターゲットアセンブリのターゲット表面の中心から延びる第一の概念線が、存在してもよい。同一の断面において、第二の方向に平行な、第二のターゲットアセンブリのターゲット表面の中心から延びる第二の概念線が存在してもよい。第一の概念線が、ターゲットの一方よりも基板に近い位置で、第二の概念線と交差することが好ましい。本発明のある実施形態において、(断面で見た場合に)ターゲットが面する方向は、基板/表面に向かって集中し、一方のターゲットよりも基板/表面に近い位置で互いに交わる。交差する位置は、基板よりもターゲットからさらに離れてもよい。例えば、(そのようなターゲットの全てが基板の同じ側にある場合)交差する位置は、(一つ又は複数の)ターゲットから見て基板の反対側の位置であってもよい。そのような場合において、交差する位置は、ターゲットの一方から基板までの最短距離の半分より基板に近くてもよい。
【0034】
第一のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットの基板に面する表面は、平面であってもよい。いくつかの実施形態では、第一のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットの基板に面する表面が、湾曲していてもよく、例えば凸面又は凹面のどちらかであってもよい。第二のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットの基板に面する表面が、平面であってもよい。いくつかの実施形態では、第二のターゲットアセンブリの(一つ又は複数の)ターゲットの基板に面する表面が、湾曲していてもよく、例えば凸面又は凹面のどちらかであってもよい。
【0035】
本明細書で使われる基板という用語は、例えばエネルギー貯蔵デバイスを形成するための、膜又は層を堆積させる露出した表面を有する任意の構造を含む。基板という用語は、半導体ウエハー、プラスチック膜、金属箔、薄いガラス、雲母又はポリイミド材料、及びこの開示で提供される説明によりエネルギー貯蔵デバイスが製造され得る他の構造を含むと理解される。また、基板という用語は、基板上に製造された他の層を含む処理中の構造を指すためにも使用される。基板は、ドープされた半導体及びドープされていない半導体、ベース半導体により支持されるエピタキシャル半導体層、又は絶縁体、並びに、当業者に周知の他の半導体構造を含んでもよい。基板は、この開示で説明するような製造方法で使用できる任意の出発材料を表すものとしても本明細書で使用される。
【0036】
材料を、基板の反対側に、同時に又は連続して堆積させてもよい。
【0037】
基板は、柔軟であってもよい。基板が、ポリマー材料を含んでもよく、例えばポリマー基板膜は、0.5μmから10μmの厚さを有する。基板は、ポリマー支持体を備えてもよい。支持体は、通常、かかる任意の構成要素が存在する場合、基板の他の構成要素を機械的に支持するように機能し、引張応力及びせん断応力に耐えるのに役立つ。基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)を含んでもよい。PEN及びPETはかなり柔軟であり、半結晶性の構造であるため比較的高い引張強度である。
【0038】
本方法は、スパッタさせた材料を、基板の第一の部分上に堆積させ、それによって基板の第一の部分上に結晶材料を形成することを含んでもよい。また、本方法は、続いて基板を移動させること、及びスパッタさせた材料を基板の第二の部分上に堆積させ、それによって基板の第二の部分上に結晶材料を形成することを含んでもよい。材料を基板上に堆積させる間の一部の時間においては、基板を固定してもよい。
【0039】
基板、第一のターゲットアセンブリ及び第二のターゲットアセンブリのうち少なくとも一つは、結晶層が表面上に形成されているときに移動していてもよい。例えば、材料を基板上に堆積させている間、基板を連続して移動させていてもよい。結晶層が基板上に形成されているときに、基板をターゲットアセンブリに対して移動させていてもよい。加えて、ターゲットが移動してもよい。基板がターゲットに対しても移動できるように、ターゲットが基板より遅く移動してもよい。粒子のプルームが、基板上の表面又は基板により支持される表面の上を掃いてもよい。
【0040】
基板は、シート、任意で細長いシートを含んでもよく、或いはシート状、任意で細長いシート状であってもよい。そのようなシートを、ロール形式で準備してもよい。これは、単純な基板の貯蔵及び操作を促進する。基板は、シート、任意で細長いシートを含んでもよく、或いはシート状、任意で細長いシート状であってもよい。そのようなシートを、ロール形式で準備してもよい。これは、単純な基板の貯蔵及び操作を促進する。代わりに、比較的平たいシートで操作及び貯蔵される個別のシートで、基板を供給してもよい。基板は、その上に材料を堆積させるため、平面形状であってもよい。これは、基板が、個別のシート状で準備され、ロールに運ばれたり、ロールから運ばれたりしない場合であり得る。シートは、より大きい構造剛性を有するキャリヤ上でそれぞれ取り付けられてもよい。これは、ローラー上に基板フィルムが保持される場合よりも、より薄い基板を使用することを可能にし得る。
【0041】
基板を、(任意でシート状の)基板の移動を促進するために、移動可能なように取り付けてもよい。基板を、ロールツーロール配置で取り付けてもよい。プラズマ堆積プロセスの上流で、基板はローラー又はドラムで保持されてもよい。プラズマ堆積プロセスの下流で、基板はローラー又はドラムで保持されてもよい。これは、単純かつ迅速に基板の柔軟なシートを操作することを促進する。シャッターを設けて、基板の一部を遠隔生成プラズマに曝すことを可能にしてもよい。
【0042】
基板の少なくとも一部が、回転ドラムにより運ばれてもよい。この方法は、材料のロールから基板を解くステップ、及びスパッタ堆積技術を実行する位置に、基板を運搬するステップを含んでもよい。
【0043】
基板は、その上に材料を堆積させるように、湾曲形状であってもよい。これは、基板が材料のロール状であり、ローラーにより運搬されるか、又はそうでなければローラーへ運搬したり、ローラーから運搬したりする場合である。前で述べたものと同一の断面において、基板は、第一のプルームと第二のプルームが集中する領域で、曲率半径を有してもよい。ターゲットが、基板の周りで周辺に配置されてもよく、好ましくは、かかる基板の曲率半径の中心の周りで周辺に配置されてもよい。
【0044】
基板は、長さが幅よりも長い、幅及び長さを有してもよい。前述の断面は、基板の幅に垂直であってもよいし、及び/又は基板の長さに平行であってもよい。所定の経路に沿って基板を運搬するステップが存在してもよく、該経路は、基板の幅と非平行である。経路が、少なくとも部分的に湾曲していてもよい。基板は、材料のシート状であってもよく、例えば、一以上のローラーによる所定の経路に沿って、少なくとも部分的に運搬される。結晶層が基板上に形成されるときに、基板をドラムにより支持してもよい。
【0045】
材料をターゲットから基板上にスパッタする間に、所定の経路に沿って、基板の運搬を行ってもよい。所定の経路は、断面の平面内に含まれる線により画定することができてもよい。
【0046】
基板は、基板の移動を促進するために、移動可能なように取り付けてもよい。基板を、ロールツーロール配置で取り付けてもよい。プラズマ堆積プロセスの上流で、基板はローラー又はドラムで保持されてもよい。プラズマ堆積プロセスの下流で、基板はローラー又はドラムで保持されてもよい。これは、単純かつ迅速に基板の柔軟なシートを操作することを促進する。シャッターを設けて、基板の一部を遠隔生成プラズマに曝すことを可能にしてもよい。
【0047】
ロールツーロール配置を使用することは、多くの潜在的な利点がある。これは、基板の第一の部分、続いて基板の第二の部分などで一連の堆積が行われても、高い材料スループットを促進し、一つの大きい基板上に大きいカソード領域を堆積させることを可能にする。ロールツーロール処理の主な利点の一つは、真空を破壊せずに多くの堆積を起こせることである。これは、新しい基板を装填するために、堆積後にチャンバーを真空から大気圧に戻す必要があるシステムに比べて、時間とエネルギーの両方を節約する。
【0048】
プラズマ堆積プロセスは、任意でチャンバー内で行われる。基板を運ぶための上流のドラム又はローラーは、チャンバーの内側に位置してもよいし、又はチャンバーの外側に位置してもよい。基板を運ぶための下流のドラム又はローラーは、チャンバーの内側に位置してもよいし、又はチャンバーの外側に位置してもよい。
【0049】
上流のローラー又はドラムと下流のローラー又はドラムの間を通るとき、基板は、任意で、どの点においても温度補正された降伏強度を超えないかもしれない。基板が、様々なロールやローラー、ドラムを通って供給されるときに、ロールツーロール処理装置は基板に張力をかける必要があるため、これは重要である。ポリマーが温まると、降伏強度が低下し始め得る。ポリマーの温度が過度に上昇すると、ロールツーロール装置を通過するときに、ポリマーが変形し始め得る。これは、ゆがみ、詰まり及び一様でない基板上への堆積につながる可能性がある。
【0050】
基板の温度は、スパッタ堆積プロセス中、どの時点でも摂氏500度を超え得ず、任意で、摂氏200度を超え得ない。
【0051】
材料を堆積させる前記表面とは反対の表面上で測定して、1秒間の平均を取った、面積が1cm2の基板材料の任意の所与の正方形で到達する最高温度が、どの時点でも、500℃以下であってもよく、任意で300℃以下であってもよく、任意で200℃以下であってもよく、任意で150℃以下であってもよく、任意で120℃以下であってもよく、及び任意で100℃以下であってもよいような温度で、基板上に材料を堆積させるスパッタ堆積技術を使用するステップを実行してもよい。
【0052】
また、本方法は、任意で、反応性ガスとして酸素を使用する、反応性スパッタリング形式下での材料のスパッタリングを含んでもよい。
【0053】
反応性スパッタリングの方法において、反応性ガスを、不活性スパッタガスと共にプロセスに導入する。不活性スパッタガスは、アルゴンであってもよい。これは、元素ターゲットの使用を可能にし、プラズマスパッタリングプロセスの一部として酸化物を形成させることを可能にする。一般的に、生成した酸化物の構造及び形状を、より高い流量で又はより低い流量で反応性酸素ガスを供給することによって調整してもよい。
【0054】
プラズマを発生させるために使用される電力の、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力に対する比率は、1:1以上であってもよいし、任意で7:2以下であってもよく、任意で3:2以下である。出願人は、そのような電力比率が、堆積させる材料をアニールせずに、結晶材料を堆積させるのに有益であり得ることを見いだした。
【0055】
プラズマ内の実際の電力は、プラズマを発生させるために使用される電力より低くてもよい。これに関連して、プラズマの発生効率([プラズマ内の実際の電力/プラズマを発生させるために使用される電力]×100)は、通常、50%から85%であり得、通常は約50%であるかもしれない。
【0056】
遠隔生成プラズマは、高エネルギーであってもよい。
【0057】
遠隔生成プラズマは、高密度であってもよい。これに関連して、プラズマが少なくとも1011cm-3のイオン密度を有してもよい。
【0058】
ターゲットの電圧バイアスに関係する電力密度は、任意で1Wcm-2より大きく、任意で最大100Wcm2である。
【0059】
材料を堆積させる表面は、XS又はこれより小さい表面粗さを有してもよく、ここでXS=100nmであって、堆積させる材料は、0.01μmから10μmの厚さ及びX1以下の表面粗さを有してもよく、ここでX1はFとXSの積と等しく、Fは1から2の範囲の係数である。
【0060】
XSは、基板の厚さの10%以下であってもよい。基板の厚さとXSの積は、105nm2以下であってもよい。
【0061】
基板、任意でポリマー基板には、埋設粒子が設けられていてもよく、すべての埋設粒子はポリマー材料内又はポリマー材料上にあり、基板の表面粗さに寄与するそれらの大部分は、XSの10%から125%のメジアン径を有する。
【0062】
代わりに、基板、任意でポリマー基板には、埋設粒子が設けられていてもよく、全ての埋設粒子はポリマー材料内又はポリマー材料上にあり、基板の表面粗さに寄与するそれらの大部分は、XSの150%以下のメジアン径を有する。
【0063】
この方法は、スパッタ堆積を使用して基板に材料を堆積させ、0.01μmから10μmの厚さ及びXSの150%以下の表面粗さを有するさらなる層を形成するステップを含んでもよく、任意で結晶層の材料の組成は、さらなる層の材料の組成と異なる。
【0064】
プラズマの電子密度分布が、体積にわたって取られる異なる断面に対して、比較的均一であってもよい。プラズマを、磁石及び/又は静電気を使用して、厚さよりはるかに大きい幅及び/又は長さを有する特定の全体形状を有するように束縛してもよいし、又は閉じ込めてもよい。プラズマ雲の幅及び長さは、それぞれ厚さより少なくとも五倍大きくてもよい。プラズマが、基板の幅に合わせた幅を有してもよい。プラズマの両側で距離L(プラズマの縦方向)離れ、各アンテナの長さがW(プラズマの横方向)である一組のアンテナが存在してもよい。プラズマの厚さは、可視スペクトルにおけるグローの最大の広がり又はプラズマ内の自由電子の90%を覆うL及びWの両方に実質的に垂直な方向で測定される最大距離のいずれかにより定義されてもよい。
【0065】
プラズマの発生を、基板の幅に平行な方向に延びる少なくとも一つのアンテナにより実行してもよい。そのようなアンテナの対が存在することが好ましい。複数のアンテナ又は各アンテナが、基板の幅の大部分にわたって、場合によっては少なくとも実質的に基板の幅全体にわたって延在することが好ましい。
【0066】
プラズマを、例えばターゲットに接近するように、及びターゲットと基板の実質的に共通の平面内で延在し、伝搬するように、磁場及び/又は電場を使用して、閉じ込めてもよい。
【0067】
磁場及び/又は電場は、基板の幅を横断する方向にプラズマを伝搬することにより、プラズマを閉じ込め得る。
【0068】
本方法は、好ましくは、プラズマの電子密度分布が、ブランケット及び/又はシート(例えば、必ずしも平面状ではないが、プラズマ雲の幅及び長さのうち少なくとも一つに沿って大きく変化しない厚さを有するように閉じ込められるプラズマ雲)を形成するように、電場及び/又は磁場を使用して、プラズマを閉じ込めることを含む。プラズマを、基板の幅に沿う方向及び基板の長さに沿う方向に延びるシート及び/又はブランケットを形成するように閉じ込めてもよい。
【0069】
第一のターゲットアセンブリの少なくとも一つのターゲットと基板の間の作動距離は、システムの理論的な平均自由行程の+/-50%以内であってもよい。
【0070】
理論に拘束されることを望むものではないが、作動距離は、基板に堆積させるときのスパッタされた材料の「吸着原子」エネルギーに影響を与えると考えられている。作動距離がシステムの平均自由行程よりも長い場合、基板に到達する前にスパッタフラックス中のイオンが衝突する可能性が高くなり、比較的低い吸着原子エネルギーになると考えられる。反対に、作動距離がシステムの平均自由行程よりも短い場合、吸着原子エネルギーは、比較的高くなる。基板からの、第一のターゲットアセンブリ及び第二のターゲットアセンブリのそれぞれのターゲットの距離間隔の違いを、堆積させる材料のストイキオメトリのさらなる制御として使用してもよい。
【0071】
平均自由行程の定義は、プラズマ中のイオンの衝突から衝突までの平均距離である。平均自由行程は、(作動距離により変化する)相互作用体積と(作動圧力により変化する)単位体積当たりの分子の数に基づいて計算される。
【0072】
作動距離は、任意で3.0cm以上、任意で4.0cm以上、及び任意で5.0cm以上である。作動距離は、任意で20cm以下、任意で15cm以下、及び任意で13cm以下である。作動距離は、4.0cmから13cmであってもよく、任意で6.0cmから10cm、及び任意で8.0cmから9.0cmであってもよい。第一のターゲットアセンブリの少なくとも一つのターゲットと基板の間の作動距離は、5cmから20cmであってもよい。
【0073】
作動圧力は、0.00065mBarから0.010mBarであってもよいし、任意で0.001mBarから0.007mBarであってもよい。この範囲内のより高い作動圧力であると、より高い堆積速度をもたらし得る。これは、より高い作動圧力が、ターゲット表面上で、より多くのプロセスイオン(通常Ar+)の衝突をもたらすためであり、それゆえ、材料がより高い割合でターゲットからスパッタされる。
【0074】
作動距離が8.0cmから9.0cmであるとき、例えば0.0010mBarから0.0065mBarの作動圧力を使用すると、得られる結晶サイズの範囲がより狭くなり得る。結晶サイズは、14nmから25nmになり得る。これは、これらのパラメーターの範囲内で、狭く、予測可能な薄膜範囲の膜を形成することが可能であることの証拠である。
【0075】
第二のターゲットアセンブリの少なくとも一つのターゲットと基板の間の作動距離は、システムの理論的な平均自由行程の+/-50%以内であってもよい。
【0076】
第一のターゲットアセンブリの少なくとも一つのターゲットと基板の間の作動距離は、第二のターゲットアセンブリの少なくとも一つのターゲットと基板の間の作動距離の+/-50%以内であってもよい。
【0077】
基板上に形成された結晶層の厚さは、0.001μmから10μmであってもよく、任意で0.5μmから10μmであってもよい。本方法の終了時の堆積させた材料の厚さは、任意で1.0ミクロン以下である。
【0078】
基板は、最大10μmの厚さを有してもよい。例えば基板は、0.1μmから10μmの厚さであってもよい。基板の厚さは、任意で1.6μm以下である。供給される基板の厚さは、任意で1.0ミクロン未満、0.9ミクロン未満である。
【0079】
(基板が、最終製品の一部を形成する場合)固体電池を設計するときに、基板をできるだけ薄くすることは有益である。これは、より高エネルギー密度の電池を製造することを可能にする。好ましくは、比較的高い温度補正された降伏強度及び/又は高い分解点のより好ましい必要条件を満たすより薄い基板を使用できる場合、本方法でそのような基板が使用されるだろう。
【0080】
基板が、最終用途の電子製品又は電子部品の一部として保持されてもよい。
【0081】
基板は、犠牲基板であってもよい。材料の(一つ又は複数の)層の前に、基板を取り除いてもよい。電子製品パッケージ、部品又は他の最終製品に結晶層又は結晶層の一部を組み込む前に、基板の一部又は全部を取り除いてもよい。例えば結晶材料の層が、基板から離脱してもよい。ベース基板と結晶材料の間に、他の介在材料の層が存在してもよい。この層は、結晶材料と共に離脱してもよく、又はベース基板から結晶材料を分離する助けとなってもよい。レーザーベースのリフトオフ技術を使用してもよい。基板は、レーザーアブレーションを使用するプロセスによって除去してもよい。
【0082】
同様の技術が、従来技術で説明されている。例えばKR20130029488では、電池層を収集するために犠牲基板及びレーザー光線を使用することを含む電池を作製する方法が説明されている。
【0083】
本発明のさらなる態様によると、異なる材料の多層のシートを形成すること、多層のシート又はその一部を電子製品に組み込むことを含む電子部品を製造する方法が提供される。シートの層の少なくとも一つは、本明細書で記載し又は特許請求しているように、本発明を実行することにより作製した導電材料又は半導体材料の結晶層であることが好ましい。電子部品は、電池、電池の機能層、エネルギー貯蔵デバイス又は電池のセルであってもよい。
【0084】
本発明の他のさらなる態様によると、本明細書で記載し又は特許請求しているように、本発明の方法を実行することによって形成される結晶材料の一以上の層を含む電池が提供される。そのような電池は、複数の積層されたカソード層、複数の積層された電解質層、及び複数の積層されたアノード層を備えてもよい。本明細書で記載し又は特許請求しているように、本発明の方法を実行することによって、複数の積層されたカソード層の少なくとも二つを作製してもよい。
【0085】
本発明のある態様に関して説明した特徴を、本発明の他の態様に組み込んでもよいことを当然のことながら理解されたい。例えば本発明の方法を、本発明の装置に関して説明したいずれかの特徴に組み込んでもよく、その逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
本発明の実施形態を、単なる例として、以下に簡潔に要約した添付の概略図を参照しつつ説明する。
【
図1a】第1の例に従って使用されるプラズマ堆積チャンバーの概略側面図である。
【
図1b】第1の例に従って電池カソードを製造する方法のステップを示す。
【
図1c】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図1d】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図1e】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図1f】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図1g】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図1h】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図2a】第2の例の方法に従って使用されるプラズマ堆積チャンバーの概略側面図である。
【
図2b】第2の例の方法に従って作製した電池カソードの第一のサンプルのX線回折(XRD)スペクトルである。
【
図2c】
図2bのXRDデータが得られた電池カソードのラマンスペクトルである。
【
図2d】第2の例の方法に従って作製した電池カソードの第二のサンプルのXRDスペクトルである。
【
図2e】
図2dのXRDデータが得られた電池カソードのラマンスペクトルである。
【
図3a】第3の例に従う方法で使用されるプラズマ堆積チャンバーの概略側面図である。
【
図3b】
図3aに示されるプラズマ堆積チャンバーの概略平面図である。
【
図3c】
図3a及び3bで示されるプラズマ堆積チャンバーのさらなる概略側面図である。
【
図3d】エネルギーの関数として、コバルト及びリチウムのスパッタ収率を比較するグラフである。
【
図3e】第4の例に従う方法で使用されるプラズマ堆積チャンバーの概略側面図である。
【
図4a】第2の例の方法に従って作製した第一のサンプルに関係する電池カソードの断面走査型電子顕微鏡写真である。
【
図4b】第2の例の方法に従って作製した第二のサンプルに関係する電池カソードの走査型電子顕微鏡写真の鳥瞰図である。
【
図5a】第5の例の方法を使用して作製した第一のサンプルに関連する電池カソードの概略横断面図である。
【
図5b】第5の例の方法を使用して作製した第二のサンプルに関連する電池カソードの概略横断面図である。
【
図5c】第5の例に従って電池カソードの半電池を製造する方法のステップを示す。
【
図6】第6の例に従って電池を作製する方法の例の概略図である。
【
図7a】第7の例に従って固体薄膜電池を製造する方法の例の概略図である。
【
図7b】第7の例の第一のサンプルに従う固体薄膜電池の概略横断面図である。
【
図7c】第7の例の第二のサンプルに従って作製した固体薄膜電池サンプルの概略横断面図である。
【
図8a】第8の例に従って層状酸化物材料を堆積させるように構成された遠隔プラズマ堆積システムの最適な作動距離を決定する方法の概略図である。
【
図8b】
図8aの方法の一部として収集した多数のX線回折スペクトルを示しており、ここで、特性評価技術はX線回折であり、特有の特徴は、層状酸化物構造に関係する特性X線回折ピークである。
【
図9a】発明の第1の例に従って形成された膜サンプルの顕微鏡写真である。
【
図9b】
図9aで示される膜から得られたX線回折スペクトルである。
【
図10a】第9の例に従って層状酸化物材料を堆積させるように構成された遠隔プラズマ堆積システムの最適な作動圧力を決定する方法の例の概略図である。
【
図10b】
図10aに関して説明した方法の一部として収集した二つのX線回折スペクトルを示しており、ここで、特性評価技術がX線回折であって、特有の特徴は、層状酸化物構造に関係する特性X線回折ピークである。
【
図11a】第10の例に従って層状酸化物材料の結晶サイズを決定する方法のステップの例である。
【
図11b】16cmの作動距離について、第10の例に従って異なる作動圧力における結晶サイズを決定する方法を示すグラフであり、第1の例に従って堆積させた複数の膜の結晶サイズを示している。
【
図11c】8.5cmの作動距離について、第10の例に従って異なる作動圧力における結晶サイズを決定する方法を示すグラフであり、第1の例に従って堆積させた複数の膜の結晶サイズを示している。
【
図12】本発明の第11の例に従って基板上に材料を堆積させる方法の概略図である。
【
図13】第12の例に従って電子デバイスの部品を製造する方法の例の概略図である。
【
図14】本発明の第13の例に従って電子デバイスの部品を製造する方法の例の概略図である。
【
図15】本発明の第14の例に従って発光ダイオード(LED)を製造する方法の例の概略図である。
【
図16】本発明の第15の例に従って永久磁石を製造する方法の例の概略図である。
【
図17】本発明の第16の例に従って酸化インジウムスズ(ITO)の層を備える電子デバイスを製造する方法の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
図1aは、第一の例に従って基板上に(結晶)材料を堆積させる方法で使用されるプラズマ堆積プロセス装置の概略側面図である。この方法は、通常、参照数字1001によって与えられ、
図1bで概略的に示されており、一以上のターゲットから離れたプラズマを発生させること1002と、ターゲット材料が一以上のターゲットからスパッタされるように、一つ又は複数のプラズマターゲットをプラズマに曝すこと1003と、スパッタされた材料が基板の第一の部分に堆積するように、基板の第一の部分をスパッタされた材料に曝すこと1004とを含み、それによって基板の第一の部分上に結晶材料を形成する。(結晶)材料を基板上に堆積させる方法は、電池カソードを製造する方法の一部として実行してもよい。
【0088】
この例の結晶材料は、ABO2の形をとる。本例において、ABO2材料は、層状酸化物構造をとる。本例では、ABO2材料はLiCoO2である。しかし、本例の方法は、幅広いABO2材料で効果を有することが示されている。他の例では、ABO2材料の構造は、(ここでは非特異的な化学量論で説明する)以下の化合物:LiCoO、LiCoAlO、LiNiCoAlO、LiMnO、LiNiMnO、LiNiMnCoO、LiNiO及びLiNiCoOのうち少なくとも一種を含む。これらの材料は、電池カソードを製造するための有力な候補である。当業者は、化学量論が異なってもよいことが分かるだろう。
【0089】
この例において、ABO2材料はLiCoO2であり、厚さおおよそ1ミクロンの層として堆積させる。他の例において、ABO2材料は、厚さおおよそ5ミクロンの層として堆積させる。他のさらなる例において、ABO2材料は、厚さおおよそ10ミクロンの層として堆積させる。
【0090】
図1aを参照すると、プラズマ堆積プロセス装置が、通常、参照数字100によって与えられ、該プラズマ堆積プロセス装置は、ターゲット104を備えるプラズマターゲットアセンブリ102、遠隔プラズマ発生器106、遠隔プラズマ発生器106によって発生させたプラズマを閉じ込めるための一連の電磁石108、ターゲット電力供給装置110、遠隔プラズマ源電力供給装置112、及びハウジング114を備える。遠隔プラズマ発生器106は、二組の無線周波数(RF)アンテナ116を備える。ハウジング114は、真空排気口120を備え、該真空排気口120は、ハウジング114により画定されるチャンバー122を排気できるようにチャンバーの外側に位置する一連の真空ポンプに接続される。また、ハウジング114には、一以上の気体をチャンバー122に導入するための気体供給装置(図示せず)につながれ得る気体注入口124が設けられている。他の例において、気体注入口124は、ターゲットアセンブリ102の表面より上に位置してもよい。
図1aから分かるように、プラズマは、ターゲット104から離れて発生させる。
【0091】
この例において、ターゲット104は、材料LiCoO2を含む。簡潔には、十分な低圧に達するまでチャンバー122が排気される。電力供給装置112によって供給される電力は、プラズマを発生させる遠隔プラズマ発生器106に電力を供給するために使用される。プラズマがターゲット104と相互作用するように、電力がターゲット104に印加され、ターゲットからLiCoO2がスパッタされて、基板128上に生じる。本例において、基板128がポリマーシートを含み、該ポリマーシートは、注入口130を経由してハウジング114に導入され、排出口132を経由してハウジング114の外に出る。電動ローラー134は、基板128の移動を助けるために使用される。LiCoO2は、結晶(アモルファスでない)材料として基板128上に堆積する。
【0092】
装置100は、基板128にスパッタされた材料が堆積するのを制限するために、シャッター136も備え、ドラムを冷却するために、インプット138も備える。シャッター136は、基板128の一部をスパッタされた材料に曝すことが可能である。
【0093】
上述のとおり、電動ローラー134は、基板128のプラズマ堆積装置100内への移動及び基板128のプラズマ堆積装置100外への移動を助けるために使用される。電動ローラー134は、ロールツーロール基板操作装置(図示せず)の一部であり、該ロールツーロール基板操作装置は、少なくとも上流でプラズマ堆積装置100の第一の貯蔵ローラー備え、下流でプラズマ堆積装置100の第二の貯蔵ローラーを備える。ロールツーロール基板操作装置は、この例で使用されるポリマー基板のような薄く、柔軟な基板の操作、貯蔵及び移動に便利な手段である。そのようなロールツーロールシステムは、他の多くの利点がある。これは、基板の第一の部分、続いて基板の第二の部分などにおける一連の堆積を通して、高い材料スループットを可能にし、一つの基板上に広いカソード領域を堆積させることを可能にする。さらに、そのようなロールツーロール処理は、真空を破壊せずに多くの堆積を起こすことができる。これは、新しい基板を装填するために、堆積後、チャンバーを真空から大気圧まで戻す必要があるシステムに比べて、時間及びエネルギーの両方を節約できる。他の例において、シートツーシート処理が、ロールツーロール処理の代わりに使用され、ここで、基板には支持部が設けられている。代わりに、比較的平たいシートで操作され、貯蔵される個別のシートで、基板を供給してもよい。材料を基板上に堆積させるため、基板は平面状であってもよい。これは、基板が個別のシート状で準備され、ロールに運ばれたり、ロールから運ばれたりしない場合であり得る。シートは、より高い構造剛性を有する運搬装置上にそれぞれ取り付けられていてもよい。これは、ローラー上に保持される基板フィルムの場合よりも、より薄い基板を使用できるようにし得る。基板は、犠牲基板であってもよい。材料の(一つ又は複数の)層の前に、基板を除去してもよい。電子製品パッケージ、部品又は他の最終製品に結晶層又は結晶層の一部を組み込む前に、基板の一部又は全部を除去してもよい。例えば、結晶材料の層が、基板から離脱してもよい。ベース基板と結晶材料の間に他の介在材料の層が存在してもよい。この層は、結晶材料と共に離脱してもよく、又はベース基板から結晶材料の分離の助けとなってもよい。レーザーベースのリフトオフ技術を使用してもよい。基板は、レーザーアブレーションを使用するプロセスによって除去してもよい。
【0094】
同様の技術が、従来技術で説明されている。例えばKR20130029488では、電池層を収集するために、犠牲基板及びレーザー光線を使用することを含む電池を作製する方法が説明されている。他の例においては、十分高い製品スループットが可能ならば、他の適切な処理体制が使用される。
【0095】
ポリマー基板128は、システムを通って移動するとき張力がかかっており、例えば処理の少なくとも一部の間、少なくとも0.001Nの張力に耐えている。ポリマーは、ロールツーロール装置を通って送られるとき、引張応力下でも変形しないほど頑丈である。この例において、ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)であり、基板128は、1ミクロン以下の厚さを有し、複数の例においては、厚さは0.9ミクロンである。基板128は、集電層でプレコートされ、該集電層は不活性金属から成る。この例において、集電層として使用される不活性金属は、白金である。PET膜の降伏強度は、ロールツーロール輸送装置の圧力下で基板がへこまないか又は塑性変形しないほど十分強い。他の例において使用される不活性金属は、代わりに金、イリジウム、銅、アルミニウム又はニッケルであってもよい。
【0096】
これはより高いエネルギー密度を持つ電池の製造を容易にするため、そのような薄いポリマー基板を使用することは有益である。他の例において、高い電池密度及び堆積後の操作が容易になるように、十分薄く、柔軟な様式で製造できるならば、重合体でない材料が使用される。
【0097】
しかしながら、プラズマ堆積プロセスとその後の製造プロセスは、そのような薄い層を用いる仕組みによって課される技術的な課題がある。
【0098】
基板128がプレコートされる前に、基板128は、(a)(例えば、保持されているポリマー膜をドラムからほどくのに必要な力を増大させる)静電気力に起因する望ましくない影響を低減するのに十分大きくなるように、また、(b)基板に材料を堆積させるとき、粗さにより問題が生じないほど十分小さくなるように、注意深く設計される表面粗さを有する。この例において、表面粗さは、約50nmに設計する。この例において、基板の厚さ(0.9ミクロン)と表面粗さの積が4.5×104nm2であり、それゆえ、105nm2未満及び5×104nm2未満であることに注意されたい。薄膜の取り扱いを容易にするために必要とされる粗さは、厚さの減少に伴って増加することが分かっている。一般的に、より薄い基板(すなわち、10ミクロン未満、特に1ミクロン未満)の取り扱い性を向上させるために必要とされる粗さは、基板の厚さが減少すると、増加することが分かっている。
【0099】
図1cは、約1ミクロンの厚さで、粗さをもたらす埋設粒子を有する典型的な薄膜ポリマーを示している(正確な縮尺ではない)。粒子によりもたらされる表面の特徴である粗さは、少なくとも90nm、場合によっては90nmより大きい。これは、予想される特定の例では粗すぎる(しかし、他の例では許容され得る)。
【0100】
図1dは、所望の粗さを達成できる一つの状態を示している(正確な縮尺ではない)。ポリスチレンの球状粒子は、基板の粗さに寄与する球状粒子の少なくとも90%が、粒子の半分以下の体積で特定の基板表面からはみ出るように、基板材料に埋め込まれる。粒子は、約90nmの直径を有する。それゆえ、基板の表面粗さに寄与する埋設粒子の大部分は、基板の表面粗さの約180%のメジアン径を有する。他の例において、球状埋設粒子は、酸化ケイ素などの異なる材料から作られる。
【0101】
図1eは、所望の粗さを達成することができる代わりの状態を示している(正確な縮尺ではない)。ポリスチレンの球状埋設粒子は、基板の粗さに寄与する球状埋設粒子の少なくとも90%が、粒子の体積の半分より多く特定の基板表面からはみ出るように、基板の材料の表面上に存在する。
図1eの例で使用される粒子は、
図1dの例で使用される粒子よりも小さい。
【0102】
図1d及び1eのような例は、製造環境において薄い基板上に結晶材料として良質の膜を堆積させることができる。埋設粒子が存在する利益を保ちつつ、そのような粒子の位置及びサイズ分布を注意深く制御することだけで、潜在的な不利益を回避又は減少させることができる。
図1fから1hは、基板表面上に結晶材料の層が形成された後の
図1cから1eで示した基板に対応する断面図を概略的に示している。金属集電体の中間層は、
図1fから1hから省略されている。
図1c及び1fで示される基板の粗さは、問題が生じるようなものである。ある埋設粒子152によって引き起こされる影響を及ぼすはみ出しは、シャドーイング及び競合する結晶成長を引き起こし、
図1fで対照的な影154を用いて概略的に示されている。相反する方向に配列している競合する結晶成長は、最終製品の性能に影響を与える層の不連続性を増加させる。また、堆積させる材料の層の、基板からの剥離の可能性に驚くほど深刻な影響がある。これは、局所的な凹凸のある範囲が小さい中央の平たい表面から遠く離れて突き出ているいくつかの埋設粒子に近い領域において(
図1fで空間156により概略的に示される)、堆積させる層と下地基板の間の接触不良の結果として生じ得る。その一方で、そのような問題が生じることは、
図1g及び1hでは見られない。基板上に堆積する材料の表面の粗さは、おおよそ50nmである。
【0103】
基板の粗さは、表面形状測定装置を用いて測定できる。この器具は、固定針を有する。測定される表面が針の下で移動し、針のふれで表面プロファイルを測定し、該表面プロファイルから様々な粗さのパラメーターを計算する。
【0104】
粗さは、「非接触」方法を使用して測定することもできる。粗さを測定するのに適した装置は、「Omniscan MicroXAM 5000B 3d」であり、該装置は、光位相シフト干渉を使用して表面プロファイルを測定する。
【0105】
【数1】
の公式を使用して、粗さRaが計算でき、滑らかな表面からの逸脱yは、n個のデータ点について測定される。
【0106】
【数2】
の公式を使用して、x方向及びy方向に延びる面積Aの表面粗さSaが計算でき、Zは数学的に完全に滑らかな表面からの逸脱である。
【0107】
本例において、平均表面粗さは、非接触方法で測定している。
【0108】
遠隔生成プラズマは、電力供給装置112によってアンテナ116に供給される電力により生み出される。それゆえ、プラズマを発生させる電力に関係する測定可能な電力が存在する。プラズマは、ターゲット104に電気的にバイアスをかけることによってターゲットに向かって加速され、結果的に関係する電流が流れる。それゆえ、ターゲット104におけるバイアスに関係する電力が存在する。この例において、プラズマを発生させるために使用される電力の、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力に対する比率は、1:1より大きく、任意で1.0:1.0より大きい。この例において、プラズマ発生源の電力効率が50%になるという仮定のもとに比率を計算することに注意されたい。ターゲットにおけるバイアスに関係する電力は、少なくとも1Wcm-2である。
【0109】
さらなる例において、プラズマを発生させるために使用される電力の、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力に対する比率は、1:1より大きく、7:2以下であり、任意で7.0:2.0以下である。他のさらなる例において、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力は、1:1より大きく、3:2以下であり、任意で3.0:2.0以下である。いくつかの例において、プラズマ発生源の電力効率は、80%とされる。いくつかの例では、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力は、10Wcm-2である。他のさらなる例において、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力は、100Wcm-2である。他のさらなる例では、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力は、800Wcm-2である。他の例においては、プラズマ発生源の効率が異なってもよく、電力比率も異なってもよい。
【0110】
LiCoO
2膜を基板に堆積させるとき、LiCoO
2の結晶膜を形成する。基板に生じる結晶構造は、
である。この構造は、層状酸化物構造である。この構造は、Fd3m空間群の構造を有するLiCoO
2の低エネルギー構造と比較して、利用可能な容量が大きく、充電及び放電が高速であるなどの多くの利益がある。
の結晶性のLiCoO
2は、しばしば固体電池アプリケーションのために好まれる。
【0111】
プラズマ堆積プロセスを通して、基板128の温度は、ポリマー基板128の分解点を超えない。さらに、基板の温度は、ポリマー基板がロールツーロール処理装置からかかる圧力下で変形しないように、温度調節されたポリマー基板の降伏強度を十分高いままに保つよう、堆積プロセスを通して十分低い。
【0112】
遠隔プラズマ発生器106から作り出される閉じ込められたプラズマの全体的な形状は、
図1aにおいて破線Bで示される。一連の電磁石108は、所望の形状/体積にプラズマを閉じ込めるために使用される。
【0113】
この第1の例において、基板128は、注入口130でチャンバーに供給され、排出口132でチャンバーから排出されるが、代わりの配置も可能であることに注意されたい。例えば上流のロール又はシャッター136の他の貯蔵場所が、プロセスチャンバー122の内側にあってもよい。下流のロール又はシャッター136の他の貯蔵場所が、プロセスチャンバー122の内側にあってもよいし、或いはプロセスチャンバー122の内側で格納できる。
【0114】
加えて、プラズマ源に電力を供給する手段112は、RF型、(直流)DC型又はパルスDC型であってもよい。
【0115】
この第一の例において、ターゲットアセンブリ102は、一つのターゲット104のみを備える。このターゲットはLiCoO2から作られている。例えばリチウム元素の別個の領域、コバルト元素の別個の領域、酸化リチウムの別個の領域、酸化コバルトの別個の領域、LiCo合金の別個の領域、LiCoO2の別個の領域又はそれらの任意の組み合わせを含む代わりの及び/又は複数のターゲットアセンブリを使用してもよいことを理解されたい。他の例において、ABO2材料はLiCoO2でなくてもよい。それらの例において、一つ又は複数のターゲットアセンブリは、Aの別個の領域、Bの別個の領域、A及び/又はBを含む化合物の別個の領域、並びに/或いはABO2を含む別個の領域を含む。
【0116】
誤解を避けるために、ターゲットアセンブリ103のターゲット104は、単独で材料の素として働き、RF電力供給装置、DC電力供給装置又はパルスDC電力供給装置から電力が印加されるときにカソードとして機能しない。
【0117】
この例において、システムの作動圧力は、0.0050mBarである。システムの理論的な平均自由行程は、おおよそ10cmである。理論的な平均自由行程は、プラズマ内におけるイオンの衝突から衝突までの平均距離である。ターゲット104と基板128の間の作動距離は、おおよそ8.5cmである。それゆえ、この作動距離は、システムの理論的な平均自由行程のおおよそ85%である。
【0118】
この例において、作動圧力は、層状酸化物構造の結晶材料が生じない下限より高いが、観測可能な損傷が基板に生じる上限より低い。作動距離は、層状酸化物構造の結晶材料が生じない上限より短いが、堆積のエネルギーが基板に観測可能な損傷を生じさせたり、好ましくない酸化状態を生じさせたりする下限より長い。
【0119】
この例における膜上に生じる結晶の平均結晶サイズは、約20nmである。他の例において、膜上に生じる結晶の平均結晶サイズは、約50nmである。
【0120】
代わりの例において、システムの作動圧力は、0.0020mBarである。システムの理論的な平均自由行程は、おおよそ12cmである。ターゲット104と基板128の間の作動距離は、おおよそ9cmである。それゆえ、この作動距離は、システムの理論的な平均自由行程のおおよそ75%である。
【0121】
代わりの例において、システムの作動圧力は、0.0065mBarである。システムの理論的な平均自由行程は、おおよそ15cmである。ターゲット104と基板128の間の作動距離は、おおよそ7.5cmである。それゆえ、この作動距離は、システムの理論的な平均自由行程のおおよそ50%である。
【0122】
第2の方法例は、
図2aで示される装置を使用する。
図1aの装置と
図2aの装置の主な違いを説明する。
図2aは、第一の例で存在した柔軟な基板128の代わりに、堅い平面のガラス基板228を使用することを示している。さらに、この例ではシャッターが存在しない。ガラス基板の厚さは、ミリメートルのオーダーである。この例では単一のターゲット204を使用する。温度標識ステッカーを、カソード材料を堆積させるスライドガラスの面とは反対の面に取り付けた。温度標識ステッカーは、プラズマ堆積プロセスの間、基板228が270℃以上の温度になるかどうかを示すように設定される。堆積後、ステッカーは、堆積プロセスの間、基板が270℃以上の温度にならなかったことを示した。プラズマの一般的な形状は、
図2aにおいて破線B’で囲まれた領域により示される。
【0123】
表1は、第2の例に従って製造し、得られた電池カソード例の性質を示す。
【表1】
表1―堆積パラメーターの機能としてのLiCoO
2カソード膜の性質
【0124】
上の表1において、膜の元素組成は、MAGCISイオン銃が付いたThemo Fisher K-alpha分光計を使用して、X線光電子分光法により決定した。引用した組成は、約10のレベルで、膜で測定した深さプロファイリングから得た。プラズマ源電力は、プラズマを発生させるために供給される電力である。スパッタリング電力は、ターゲット204に印加される電力である。プロセス圧力は、チャンバー内の圧力である。膜厚と膜粗さの測定値は、Omniscan MicroXAM 5000b 3d光学プロファイラーを使用して、堆積後に得た。マスクされた端でのステップ高と粗さの測定値を約400ミクロン×500ミクロンのサンプル領域から得たため、膜厚を堆積後に測定した。
【0125】
図2bは、サンプル1の電池カソードのX線回折(XRD)スペクトルを示している。膜の構造は、ニッケルでフィルタしたCuKα線(λ=1.5406Å)で回折装置(Rigaku-Smartlab)を使用して、X線回折により特徴付けた。回折パターンは、10°<2θ<80°の範囲で、<5°の固定した入射角を使用して室温で得た。データは、0.04°/stepの分解能及び0.5s/stepのカウント時間のステップスキャンを使用して収集した。おおよそ37°のピークは、基板表面に平行に実質的に配向した結晶の(101)面に関係する。おおよそ66°のピークは、(110)面が基板に平行であるように実質的に配向する結晶に関係する。おおよそ55°のピークは、ガラス基板に関係し、LiCoO
2の結晶構造を決定するために、無視する必要がある。
【0126】
Fd3m空間群に関係する余分な反射光がないことは、堆積させたLiCoO
2が
であるという初期標識となる。
【0127】
(003)面に関係するピークもとりわけ存在しない。これは、(003)面が基板表面に平行になるように、極めて少ない結晶が配向していることを示唆する。このように極めて少ない結晶が配向していることは有益である。詳細な説明は本願の範囲を超えるが、簡潔には、(003)面が基板に平行になるように配列するのとは対照的に、(101)面及び(110)面が基板に平行になるようにより高比率の結晶が配列すると、イオン移動の見かけの抵抗がより低くなるため、カソードの使用可能容量が増加する。結晶は、結晶の長手方向軸が基板の法線であるように生じている。言い換えると、結晶がエピタキシャル成長で生じている。
【0128】
出願人は、プラズマを発生させるために使用される電力の、ターゲットのバイアスに関係する電力に対する比率が1:1より大きいと、ほとんどの場合、結晶材料が堆積することを見いだした。サンプル1では、比率が1800:500(3.6:1)であり、サンプル2では、1800:800(9:4)である。この例において、プラズマ発生源の電力効率が50%であると仮定して比率を計算していることに注意されたい。
【0129】
比較例では、プラズマ源電力を1kW、ターゲットへのバイアスに関係する電力を1kWとして実験を繰り返した。堆積した材料は、実質的にアモルファスであった。比較例の膜のカソードとしての性能を、電解質(この場合ではLiPON)及びアノード金属をカソード層上に堆積させ、それによって固体電池を作製することにより調査した。電池の充放電特性を調査したところ、カソードの比容量は約10mAh/gで不十分であることが分かった。サンプル1及びサンプル2で生じたような結晶性LiCoO2を使用して類似の電池を作製した場合、通常のカソード比容量は約120mAh/gであり、充放電特性がはるかに優れていた。
【0130】
図2cは、サンプル1の電池カソードのラマンスペクトルを示している。膜の結合環境は、ラマン分光法によって特徴づけられている。532nm励起を使用したJY Horiba LabRAM ARAMISイメージング共焦点ラマン顕微鏡を使用して、ラマンスペクトルを収集した。600cm
-1における強く鋭いピークは、ピークの鋭さの非物質的な特質に起因する特異なピークであると考えてよい。487cm
-1で観測された強い特性ピークは、LiCoO
2の
の結晶構造に関係することが、当該技術分野で周知である。
【0131】
図2dは、サンプル2のカソードの(サンプル1と同じ方法で収集した)XRDスペクトルを示している。示されているスペクトルは、
図2bで示されるスペクトルと同様である。しかし、
図2dにおいて、おおよそ66°のピークの相対強度が、37°のピークの相対強度よりはるかに強くなっている。これは、サンプル2について、基板に平行な(110)面を有する結晶の数が、基板に平行な(101)面を有する結晶の数より多いことを示す。これは、薄膜のイオンチャネルが基板に垂直に配向し、カソードの結晶構造内から、格子間位置からのイオンのインターカレーション及びデインターカレーションが容易になることを意味するため、有益である。これは、カソードの使用可能容量及び充電速度を向上させる。
図2eは、サンプル2のカソードのラマンスペクトルであり、
図2cに適用した同一のコメントを
図2eに適用する。
【0132】
図3aから3cは、第3の例によるプラズマスパッタリングを使用して、表面に結晶材料の層を製造する方法の他の例を使用する代わりの装置例を示している。使用される装置及び製造の方法は、第1の例に関して説明した装置と同様である。ここでは、大きな相違のみ説明する。同一の部分は、同一の下二桁の参照数字で表示する。例えば、
図3aの回転ドラム334は、
図1aの回転ドラム134と同一である。
図3aの装置は、回転ドラム334を備え、該回転ドラム334上で、ポリマー基板328が、プロセスチャンバー322(明確にするために、チャンバーの壁は省略している)によって画定される領域内で支持される。ターゲットアセンブリ302は、複数のターゲットを備える。リチウム元素で構成される第一のターゲット304及びコバルト元素で構成される複数のターゲット303(ここでは、第二のターゲットと称する)が存在する。ターゲットは、基板328から約10cmの作動距離(作動距離は最も短いそれらの間の隔たりである)ですべて配置される。ドラム334に面する各ターゲット303、304の表面は、平らである(平面である)。ドラム334の半径は、作動距離よりもかなり大きい(説明の目的のため、図で示されているドラム334のサイズは、現実のものより比較的小さい)。ターゲット303、304は、ドラム334の円周の周りで周辺に配置される。装置は、スパッタされた材料が基板328上に堆積するのを制限するために、シャッター336も備える。
【0133】
アルゴンイオンと電子から成るプラズマは、二つの一定間隔で離れた電動アンテナ316を用いて発生させる。プラズマは、二組の電磁石308により制御される磁場によって閉じ込められ及び集められ、各組は、アンテナ316のうちの一つ及びシステムによって発生させた電場に近接して配置される。プラズマの全体の形状(
図3cでプラズマ雲Bにより非常に概略的な方法で示されている90%最高濃度)は、プラズマ雲の長さ及び幅が厚さよりもはるかに大きい点でブランケット状である。プラズマの幅は、アンテナ316の長さによって部分的に制御される。二組のアンテナ316は、プラズマの長さに相当する距離だけ離れている。プラズマの長さ及び幅は、それぞれ基板の長さ及び幅と同一の一般的な方向である。
【0134】
プラズマ源は、ターゲットから離れて配置され、それゆえ、遠隔生成プラズマと考えてよい。システムの理論的な平均自由行程(すなわち、プラズマ内のイオンの衝突から衝突までの平均距離)は約12cmであり、粒子の大部分が、プラズマ内の任意のアルゴンイオンと衝突せずにターゲットから基板まで移動することを意味する。
【0135】
図3aは、ドラム334上を移動する基板の一部を示す部分的な概略断面図であり、ターゲット303、304から基板に移動する粒子の軌跡を概略的に示している。それゆえ、第一のターゲット304から基板328の表面までの粒子の軌跡に対応する第一のプルーム、及び第二のターゲット303から基板328の表面までの粒子の軌跡に対応する第二のプルームが存在する。第一のプルームは、斑点領域で示され、各第二のプルームは、濃い灰色の領域で示されている。第一のプルームと第二のプルームが、基板に近接する領域で集中することが
図3aから分かるだろう。第一のターゲット304は、(この例において、ターゲット304の表面の中心から延びる概念的な線により画定される)第一の方向で基板に向かって面しており、
図3aで示されるように、左の隣接する第二のターゲット303は、(この例において、ターゲット303の表面の中心から延びる概念的な線により画定される)第二の方向で基板に向かって面している。第一の方向及び第二の方向は、基板に向かって集中しており、基板を少し過ぎた位置(位置は基板を約3cm過ぎた位置である)で交差する。酸素ガスを、制御された速度で、導入口325を通してプロセスチャンバー322に供給する。基板はドラムの回転とともに移動するが、ターゲットは固定されている。他の例において、不活性のスパッタリングガスが、気体注入口(ここでは図示していないが、
図1aで示されるものと実質的に同一の形状である)を通って導入される。
【0136】
チャンバーに導入する酸素の量は、酸化リチウム及び酸化コバルトの相異なる領域がターゲット304、303中にある場合、いくつかの他の例において減らしてもよく、そのようなターゲットの酸素含有量は、いくつかの例において、追加の酸素ガスをチャンバー322に導入する必要が全く必要ないほど高くてもよい。
【0137】
図3bは、ドラムからターゲットに向かって見た図である。
図3cは、第一のターゲット304、第二のターゲット303及びドラム334上の基板328の切断面を含む断面図である。
【0138】
図3c(断面図)において、第一のターゲット304が、各第二のターゲット303に対して曲げられていることが分かるだろう。
【0139】
この方法の実行において、発生させたプラズマは、第一のターゲット及び第二のターゲットから基板上に材料をスパッタするために使用される。
【0140】
図3dで示されるように、リチウム元素材料は、所与のエネルギーで表面に到達するイオン当たりの原子の収率として測定されるスパッタ収率が、コバルトよりも低い(10keVで半分より小さい)。これに伴い、第一のターゲットに印加される(負)電位は、第二のターゲットに印加される電位よりも大きいマグニチュードを有する。また、第一のターゲットのプラズマに曝される表面積は、第二のターゲットの面積の和よりもわずかに大きい。それによって、基板の各ユニットに到達するイオン化されたLi原子の数は、基板の各ユニットに到達するイオン化されたCo原子の数と実質的に同一である。プラズマからの電子と同様に、イオン化された酸素原子も存在する。遠隔プラズマによって可能になる高エネルギー粒子は、六方晶の結晶構造を有する結晶性LiCoO
2材料を、原位置で基板の表面上に形成することを可能にする。
【0141】
プラズマからのより多数の高エネルギー粒子が、(第二のターゲットの両方の表面積全体にわたる合計の)第二のターゲット303よりも(ターゲットの表面積全体にわたる)第一のターゲット304に到達する。
【0142】
図3eは、第4の例に従う装置のさらなる例の概略断面図を示しており、
図3aから3cで示される断面図と同様であるが、該断面図において、ターゲットが移動し、ドラム334の周囲で組になって配置される。各組のターゲット(すなわち各アセンブリ302)は、ドラム上の基板に非常に近い位置に向かって面するように、角度を付けて配置される。各組302は、リチウム元素の第一のターゲット304及びコバルト元素の第二のターゲット303を備える。ターゲットは、基板から約15cmの作動距離で全て配置され、作動距離は、それらの間の最小の隔たりである。システムの理論的な平均自由行程(つまり、プラズマ中のイオンの衝突から衝突までの平均距離)は約20cmである。各組のターゲット(302)対して、使用中に、第一のターゲット(304)からの粒子の第一のプルーム及び第二のターゲット(303)からの粒子の第二のプルームが存在し、該プルームは、基板に近接する領域で集中する。メインドラム334の回転中心は、ターゲットの回転中心でもある。ターゲットは、回転中心の周りで、ドラムよりも遅い角速度で移動する。回転の原理で、ターゲットがプラズマの外に移動したときに、ターゲットを取り換えてもよく、それゆえ、移動する基板上に絶え間なく材料を堆積させることを可能にする。
【0143】
第2の例に従って作製した電池カソードの例を、
図4a、4b及び5aを参照して説明する。基板428、528は、集電層429、529を含み、この場合において集電層はプラチナの層であって、該集電層上にLiCoO
2の層442、542を堆積させる。他の例において、別の不活性金属を集電層として使用し、例えば金、イリジウム、銅、アルミニウム又はニッケルを使用する。他のさらなる例においては、集電層は炭素ベースであってもよい。いくつかの例において、集電層は表面改質され、いくつかの例で、集電層は棒状構造を含む。
【0144】
図4a(膜を堆積させた第一のサンプルの断面図)及び
図4b(膜を堆積させた第二のサンプルの鳥瞰図)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真で示されるように、両サンプルのLiCoO
2膜層442、542は、実際は多結晶である。
図4a、4b及び5aの電池カソードは、第3の例の方法又は第4の例の方法に従って作製することもできる。
【0145】
第5の例に従ってカソード半電池を作製する方法を、
図5a(第一のサンプル)、
図5b(第二のサンプル)及び
図5cを参照して説明する。通常、参照数字3001で説明されるこの方法は、基板(この例において、集電層529を含む)に電池カソード材料542を堆積させること3002と、前記電池カソード材料542に電池電解質材料544を堆積させること3003とを含む。この例において、電解質544として堆積させる材料は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)である。他の例において、堆積させる材料は、別の適した電解質材料である。本発明の第5の例のいくつかのサンプル(第二のサンプルなど)において、半電池が電極材料544を含んでもよく、第5の例の他のサンプルにおいて、半電池が電極材料544を含まなくてもよい(第一のサンプルなど)。
【0146】
この例においては、遠隔生成プラズマを使用して、第1の例、第2の例、第3の例又は第4の例におけるABO2材料と実質的に同一の方法で、LiPONを堆積させる。しかしながら、この例において、使用するターゲット材料はLi3PO4であり、反応性窒素雰囲気で堆積が起こる。他の例において、ターゲットアセンブリが、リチウムの区別可能な領域及び/又はリン含有化合物、リチウム元素、又は酸化リチウムの区別可能な領域を有する多数のターゲットを含んでもよい。他の例において、堆積は、さらに反応性酸素雰囲気で起こる。
【0147】
第6の例に従って固体電池を作製する方法の例を、
図6を参照して説明する。この方法は、一般的に参照数字5001によって与えられ、該方法は、(例えば
図5b及び5cに関して上記で説明した)第5の例に従ってカソード半電池を作製すること5002、及び前記カソード半電池をアノードと接触させること5003を含む。この例においては、遠隔プラズマスパッタリング、マグネトロンスパッタリング、CVDなどの便利な方法で、アノードを堆積させる。他の例においては、熱蒸着、eビーム蒸着、パルスレーザー堆積又は簡単なDCスパッタリングによって、アノードを堆積させる。
【0148】
第7の例に従って固体電池を作製する方法の例を、
図7aを参照して説明する。この方法は、一般的に参照数字6001によって与えられ、該方法は、固体薄膜電池の複数のカソード半電池を作製すること6002と、固体薄膜電池の複数のアノード半電池を作製すること6003と、前記カソード半電池及びアノード半電池を互いに接触させること6004とを含み、それによって少なくとも一つの電池を形成する。本発明の第7の例の第一のサンプルによってこのように作製した電池を、
図7bで概略的に示している。
図7bを参照すると、628及び628’は基板材料であり、629及び629’は集電層であり、642はカソード材料であって、この場合において、カソード材料はLiCoO
2であり、644はLiPONであって、電解質及びアノードの両方として働く。
【0149】
代わりに、他の例において、集電体材料はアノード材料として働く。代わりに、本発明の第7の例の第二のサンプルにおいて、さらにアノード材料を堆積させてもよい。これは、
図7cにおいて概略的に示されている。
図7cを参照すると、628及び628’は基板材料であり、629及び629’は集電層であり、642はカソード材料であって、この場合において、LiCoO
2であり、644はLiPONであって、電解質として働き、646は適切なアノード材料である。
【0150】
第8の例に従って層状酸化物材料を堆積させるために構成される遠隔プラズマ堆積システムに最適な作動距離を決定する方法の例を、
図8aを参照して説明する。この方法は、通常、数字7001によって説明され、
・ 作動距離の範囲を選択すること7002であって、前記範囲内の作動距離が、システムの理論的な平均自由行程の+/-50%であることと、
・ 多数の試験試料について、選択した範囲内の異なる作動距離で、第1の例による材料を堆積させる方法を、各試料に対して実行すること7003と、
・ 堆積が起こった後、各試験試料上で層状酸化物構造の特有の特徴を決定できる特性評価技術を実行すること7004と、
・ 前記特有の性質が存在する試料を識別すること7005と、
・ それらの試料から(正規化された)前記特性ピークの強度が最も高い試料を選択すること7006、及び続いて、前記試験試料の堆積の間に使用した作動距離に対するシステムの作動距離を選択すること7007と、を含む。
【0151】
この第8の例において、使用する特性評価技術はX線回折であり、特有の性質は一つの回折ピーク又は一連の回折ピークである。
図8bには、異なる作動距離で堆積させた膜の記録された多数のX線回折パターンが示されている。一番上の回折パターンから一番下の回折パターンは、それぞれ作動距離が、5cm(731)、8cm(733)、12cm(735)及び15cm(737)である。図から分かるように、8cmの作動距離が、19度2θ(六方晶のLiCoO
2に必要なピーク位置739の一つであり、この特定のピークは立方晶構造のLiCoO
2又はスピネル構造のLiCoO
2では存在しない)で最も高い強度のピーク733を示している。それゆえ、この例においては、8cmを作動距離として選択する。他の例において、X線回折と異なる他の特性評価技術を使用してもよい。5cmの作動距離について測定した回折パターン731の強度は、8cmの作動距離の回折パターン733よりも19度2θにおける強度が低い。12cmの作動距離について収集した回折パターン735及び15cmの作動距離について収集した回折パターン737は、19度2θにおける六方晶の特性ピークを全く示していない。
【0152】
いくつかの例において、この方法の試験試料は、多数の試験試料についての平均値に置き換えられ、該試験試料は、多数の試験試料を含み、第1の例の方法が、同一の作動距離で多数回実行され、平均値が取られている。いくつかの例において、この方法は、システムを操作するために最適な作動距離を見いだせるように多数回実行してもよい。
【0153】
図9aは、第8の例の方法を実行する間に、第1の例に従って形成されたサンプルを示しており、また、
図9aは、作動距離が短すぎる場合の堆積によって生じる(望ましくない酸化物を有する)損傷した基板表面を示している。この例において、作動距離は5cmであり、堆積した材料はLiCoO
2であった。図から分かるように、結晶が基板表面全体にわたって生じておらず、基板が変形していることが分かる。加えて、Co(II)Oの領域、すなわち望ましくない酸化コバルトの相が、この作動距離で基板上に生じることがわかる。これは、
図9bで示されるスペクトルによって確認でき、
図9bは、六方晶のLCOの(2θの五つの値839で特定される)ピークに加えて、作動距離が5cmであるサンプルについて得られる回折パターン831で検出される(2θの二つの値843で特定される)Co(II)Oの相に関係するピークを示している。六方晶のLiCoO
2とCO(II)Oの相の両方を含む構造改良モデル831’は、831の収集した回折パターンから得た。回折パターン831と改良モデル831’の差は、差分線841によって示されている。それゆえ、第8の例の方法の間、過度に短い作動距離は、最適な作動距離として選択されない。
【0154】
第9の例に従って層状酸化物材料の堆積させるために構成される遠隔プラズマ堆積システムの作動圧力の最適な範囲を決定する方法の例を、
図10aを参照して説明する。この方法は、通常、数表示8001によって説明され、該方法は、
・ 0.00065mBarから0.01mBar(任意で、0.001mBarから0.007mBar)で、作動圧力の初期範囲を選択すること8002と、
・ 多数の試験試料について、選択した範囲内の異なる作動圧力で第1の例に従って材料を堆積させる方法を、各試料に対して実行すること8003と、
・ 堆積が起こった後、各試験試料上で、層状酸化物構造の特有の性質を決定できる特性評価技術を実行すること8004と、
・ 層状酸化物材料の特有の特徴を表す試験試料のグループから、最も低い作動圧力で堆積させた試験試料を選択すること8005、及びこの作動圧力を範囲の下限として設定すること8006と、
・ 観測可能な基板への損傷の兆候を示さない試験試料のグループから、最も高い作動圧力で堆積させた試験試料を選択すること8007、及びこの作動圧力を範囲の上限として設定すること8008と、を含む。
【0155】
この第9の例において、使用する特性評価技術はX線回折であり、特有の特徴は、層状酸化物材料の特性X線回折ピークを含む特徴である。
図10bは、ある作動圧力より低いと、この特有の特徴が存在しないことを示すX線スペクトル例を示している。この例において、0.0046mBarで堆積させたサンプルのパターン947中の19度2θにおけるピークの存在は、六方晶の結晶相の形成につながり、0.0012mBarで堆積させたサンプルのパターン945は、ピークが存在しないことによって示されるように、六方晶の結晶相の形成につながらない。他の例において、特性評価技術は、X線回折ではなく他のものを使用してもよい。
【0156】
さらなる例において、この方法の試験試料は、多数の試験試料についての平均値と置き換えられ、該試験試料は、第1の例の方法が、同一の作動圧力で多数回実行され、平均を取られている、多数の試験試料を含む。
【0157】
いくつかの例において、この方法は、所望の範囲内で、システムの最適な作動圧力を選択することも含む。この例において、最適な作動圧力は、最も速い堆積をもたらす範囲内の作動圧力である。
【0158】
第10の例に従って層状酸化物材料の堆積させるための結晶サイズを決定する方法の例を、
図11aを参照して説明する。この方法は、通常、数表示9001によって説明され、該方法は、
・ 0.00065mBarと0.01mBarから作動圧力の初期範囲を選択すること9002と、
・ 多数の試験試料について、選択した範囲内の異なる作動圧力で、第1の例による材料を堆積させる方法を、各試料に対して実行すること9003と、
・ 堆積が起こった後、各試験試料の各膜の結晶サイズを決定できる特性評価技術を実行すること9004と、を含む。
【0159】
作動圧力の選択される範囲は、例えば0.001mBarから0.007mBarであってもよい。
【0160】
図11bは、所与の範囲の作動圧力で第10の例の方法を実行した後、16cmの作動距離について、0.001mBarと0.0065mBarの間の異なる作動圧力で、第1の例に従って堆積させた多数の膜で生じる結晶サイズの範囲が、
図11cと比べると比較的広いことを示すグラフである。
【0161】
図11cは、所与の範囲の作動圧力で第10の例の方法を実行した後、8.5cmの作動距離について、0.001mBarと0.0065mBarの間の異なる作動圧力で、第1の例に従って堆積させた多数の膜で生じる結晶子のサイズの範囲が、
図11bと比べると比較的狭いことを示すグラフである。
【0162】
結晶サイズの分布が狭いことは、工業規模で堆積させる膜の結晶サイズを、予測可能かつ繰り返し可能にするため、有益である。
【0163】
第11の例に従って基板上に材料を堆積させる方法の例を、
図12を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1101によって説明され、該方法の例は、
・ プラズマスパッタリングに適した一つ又は複数のプラズマターゲットから離れたプラズマを発生させること1102と、
・ 一つ又は複数のプラズマターゲットをプラズマに曝すこと1103であって、それによって一つ又は複数のターゲットからスパッタされた材料を発生させることと、
・ 基板の第一の部分上にスパッタされた材料を堆積させること1104と、を含む。
【0164】
第11の例により説明するように、基板上に材料を堆積させる方法は、この例においては、ターゲット材料は任意の材料であってもよいが、第1の例の堆積のすべての特徴を含む。この例において、ターゲット材料は結晶構造であるが、他の例において、堆積させる材料が半結晶構造又はアモルファスであってもよい。
【0165】
第12の例も示されており、第12の例は、基板を備える電子デバイスの部品を製造する方法に関し、
図13を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1201によって説明され、第11の例で説明したような方法を使用して、基板上に材料を堆積させること1202を含む。この例における第11の例の方法は、多層膜を堆積させるために、複数回実行する1203。この例において、多層膜のうち少なくともいくつかが、半導体層であってもよい。この例では、それゆえ、この方法は、半導体デバイス及びその一部を製造する方法である。この例においては、電子デバイスを製造するために、隣接する層を、異なるパラメーター及び/又は各層の堆積に使用される異なるターゲット材料で堆積させる。他の例においては、複数の材料の層の多層膜を、実質的に同一のターゲット材料及びパラメーターで堆積させる。
【0166】
この例において、基板は一つの中間層を含み、該中間層は、任意で集電層として働いてもよい。他の例においては、より多くの中間層が存在し、堆積ステップ中の付着に役立つ。いくつかの他の例において、中間層は存在しない。基板上への中間層の堆積を、第11の例で説明した方法に従って実行する。他の例において、基板上への中間層の堆積を、スパッタリング、熱蒸着、電子ビーム蒸着、パルスレーザー堆積、又は他の薄膜堆積技術などの他の適切な堆積技術により実行する。
【0167】
この例において、本方法は、材料の第一の半導体層を堆積させることを含む。この例では、第一の半導体層を、材料の中間層の上に堆積させる。他の例においては、第一の半導体層を、基板上に直接堆積させる。この例では、第一の半導体層はケイ素を含む。他の例において、第一の半導体層はアルミニウムを含み、さらなるいくつかの例では、窒化ガリウムを含む。材料の半導体層が窒化ガリウムである例において、反応性窒素雰囲気下で堆積が起こる。この例では、材料の第一の半導体層は、n型にドープされる。これは、この例において、リン含有化合物を含むターゲットをスパッタすることによって得られる。他の例において、これは、ヒ素、アンチモン、ビスマス又はリチウムなどの異なるドーパントを使用することによって得られる。さらなるいくつかの例において、材料の半導体層は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム又はインジウムなどのドーパントによって、p型にドープされる。さらなる例では、材料の半導体層はドープされず、真性半導体である。それらの例のいくつかにおいて、ドーパント材料を、スパッタされ得る材料として導入せず、代わりに、ドーパントが半導体層の表面に拡散するように、堆積後に気体として導入する。
【0168】
この例において、本方法は、材料の第二の半導体層を、材料の第一の半導体層の上に堆積させることを含む。他の例においては、材料の第二の半導体層を、基板上又は(存在する場合)中間層上に直接堆積させる。この例において、材料の第二の半導体層は、真性半導体である。この例では、材料の第二の半導体層は窒化ガリウムである。さらなる例において、材料の第二の半導体層は、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス又はリチウムなどのドーパントでn型にドープされる。いくつかのさらなる例において、材料の第二の半導体層は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム又はインジウムなどのドーパントでp型にドープされる。それらの例のいくつかでは、ドーパント材料を、スパッタされ得るターゲットとして導入せず、代わりに、ドーパントが半導体層の表面で拡散するように、堆積後に気体として導入する。
【0169】
この例において、本方法は、材料の第三の半導体層を堆積させることを含む。この例では、第三の半導体層を、材料の第二の半導体層の上に堆積させる。他の例においては、第三の半導体層を、第一の半導体層、第二の半導体層、中間層又は基板上に直接堆積させる。この例では、第三の半導体層はケイ素を含む。他の例において、第三の半導体層はアルミニウムを含み、さらなるいくつかの例においては、窒化ガリウムを含む。半導体層の材料が窒化ガリウムであるいくつかの例において、反応性窒素雰囲気下で堆積が起こる。この例では、材料の第三の半導体層は、p型にドープされる。この例において、これは、ホウ素含有化合物を含むターゲットをスパッタすることによって得られる。他の例において、これは、アルミニウム、ガリウム又はインジウムなどの異なるドーパントを使用することによって得られる。いくつかのさらなる例において、材料の第三の半導体層は、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス又はリチウムなどのドーパントでn型にドープされる。さらなる例では、材料の第三の半導体層は、ドープされず、真性半導体である。それらの例のいくつかにおいて、ドーパント材料を、スパッタされ得るターゲットとして導入せず、代わりに、ドーパントが半導体層の表面で拡散するように、堆積後に気体として導入する。
【0170】
それゆえ、この例の方法を、p-n接合又はp-i-n接合を形成するために使用してもよい。
【0171】
この例において、さらなるドーパントを、今まで説明した半導体層のいくつかに導入しない。いくつかの例では、ゲルマニウムを、第一の層、第二の層及び/又は第三の層にドーパントとして導入する。ゲルマニウムは、電子デバイスのバンドギャップを変化させ、材料の各半導体層の力学的性質を向上させる。いくつかの例において、材料の第一の層、第二の層及び/又は第三の層に、ドーパントとして窒素を導入する。窒素は、形成される半導体層の力学的性質を向上させるために使用される。
【0172】
第13の例も示されており、該第13の例は、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)の結晶層を製造する方法に関係し、
図14を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1301により説明され、第11の例で説明した方法を使用すること1302を含み、YAGは、少なくとも一種のf-ブロック遷移金属でドープされる1303。
【0173】
この例において、ドーパント材料は、ランタノイドである。
【0174】
この例において、ドーパント材料は、ネオジムを含む。他の例において、ドーパント材料は、ネオジムに加えてクロム及びセリウムを含む。この例では、材料の結晶層は、1.0モル%のネオジムを含む。また、いくつかの例において、材料は、0.5モル%のセリウムを含む。
【0175】
他のさらなる例において、ドーパント材料はエルビウムを含む。この例において、ドーパント材料はターゲットとして準備され、第11の例で説明したようにスパッタされる。このさらなる例の材料の結晶層は、40モル%のエルビウムを含む。一例では、材料の結晶層は、55%のエルビウムを含む。
【0176】
他のさらなる例において、ドーパント材料はイッテルビウムを含む。それらの例のうち一つにおいて、材料の結晶層は15モル%のイッテルビウムを含む。
【0177】
他のさらなる例において、ドーパント材料はツリウムを含む。さらなる例では、ドーパント材料はジスプロシウムを含む。さらなる例では、ドーパント材料はサマリウムを含む。さらなる例では、ドーパント材料はテルビウムを含む。
【0178】
他のさらなる例において、ドーパント材料はセリウムを含む。ドーパント材料がセリウムを含むいくつかの例では、ドーパント材料はガドリニウムも含む。
【0179】
いくつかの例においては、一つ又は複数のターゲットの相異なる領域として供給するドーパント材料の代わりに、結晶材料の層の堆積後、ドーパント材料を気体として供給することによって、結晶材料の層に拡散するように、少なくとも部分的にドーパント材料を導入する。
【0180】
第14の例によると、発光ダイオードを製造する方法が示されており、該方法は、
図15を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1401によって説明され、第12の例による方法を実行すること1402と、その後又はそのときに、第13の例による方法を実行すること1403と、を含み、第13の例の方法の間に使用されるドーパントはセリウムを含む1404。この例において、セリウムドープYAGの層は、LEDでシンチレーターとして使用される。
【0181】
第12及び13の例による方法を、同一のプロセスチャンバー内で実行してもよい。
【0182】
第15の例によると、永久磁石を製造する方法が示されており、該方法を、
図16を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1501によって説明され、第11の例による方法を実行すること1502を含み、準備する一つ又は複数のターゲットの相異なる領域が、ネオジム、鉄、ホウ素及びジスプロシウムを含み1503、この方法は、材料の層が永久磁石になるように膜を処理すること1504を含む。
【0183】
この例において、材料の最終層は、6.0モル%のジスプロシウムを含む。さらなる例において、ジスプロシウムのモル%は、6.0モル%より小さい。
【0184】
本方法が提供する高いターゲット利用率は、ジスプロシウムなどの希少な元素から電子デバイスを作るときに有益である。ジスプロシウムを、限られた地球存在度の中で利用でき、高いターゲット利用率の堆積システムは、材料の損失をより少なくする。
【0185】
第16の例によると、酸化インジウムスズ(ITO)の層を製造する方法が示されており、
図17を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1601によって説明され、第11の例による方法を実行すること1602を含み、準備する複数のターゲットの相異なる領域が、インジウムとスズを含む1603。堆積1604で、材料の透明な結晶層を基板上に直接形成する方法で、ITOの層を堆積させる。他の例においては、複合ターゲットを使用し、該複合ターゲットは、インジウムとスズを両方含む。他のさらなる例において、複合ターゲットは、インジウムとスズの酸化物を含む。それゆえ、使用するターゲットの数は、さらなる例で異なってもよいし、単一のターゲットを使用してもよい。
【0186】
他のさらなる例において、複数のターゲットは、インジウム酸化物又はスズ酸化物を含んでもよい。基板上に酸化インジウムスズを形成するために、複数のターゲットからスパッタされた材料が酸素と反応するように、さらなる例における堆積プロセスは酸素を供給することを含む。
【0187】
第17の例によると、個別に示していないが、光電池を製造する方法が示されている。この例において、本方法は、第15の例で説明したようにITOの堆積をさらに含む。さらなる例では、ITOの層を堆積させない。この例において、半導体材料のn型ドープ層と半導体材料のp型ドープ層の間に、ペロブスカイト材料の層を堆積させることも含む。この場合においては、材料のペロブスカイト層を、説明した第11の例の方法によって堆積させる。さらなる例においては、物理気相成長又は湿式化学手法などの他の適した方法によって堆積させる。さらなる例では、材料のペロブスカイト層を堆積させない。
【0188】
代わりの例において、本方法は、第11の例に従って、セレン化銅インジウムガリウムの層を堆積させることを含む。銅、インジウム、ガリウム及びセレン化物は、一つ又は複数のターゲットの相異なる領域として準備する。この例において、銅を、元素ターゲットとして準備し、インジウム、ガリウム及びセレン化物を、酸化物ターゲットとして準備する。さらなる例では、酸化物、元素、化合物又は複合物の複数のターゲットの他の組み合わせを使用する。それゆえ、使用するターゲットの数は、さらなる例において異なってもよいし、単一のターゲットを使用してもよい。
【0189】
いくつかの例において、本方法は、第11の例に従って硫化カドミウムの層を堆積させることを含む。この例では、カドミウムと硫化物は、酸化物形態の複数のターゲットの相異なる領域として準備する。酸化物、元素、化合物又は複合物の複数のターゲットの他の組み合わせを、さらなる例で使用する。それゆえ、使用するターゲットの数は、さらなる例において異なってもよいし、単一のターゲットを使用してもよい。
【0190】
いくつかの例において、本方法は、第11の例に従ってテルル化カドミウムの層を堆積させることを含む。カドミウムとテルル化物は、この例において、複数の元素ターゲットの相異なる領域として準備する。他の例において、カドミウム及びテルル化物は、元素、酸化物、複合物又は任意のそれらの組み合わせの一つ又は複数のターゲットの相異なる領域として準備する。それゆえ、使用するターゲットの数は、さらなる例において異なってもよいし、単一のターゲットを使用してもよい。
【0191】
前述の説明では、特定の例に関して説明し、図示したが、当業者は、この発明が本明細書では具体的に示されていない多くの異なる変化に適していることを理解されたい。
【0192】
前述の説明において、既知の、自明な又は予測可能な均等物を有する整数又は要素が言及される場合、そのような均等物が、個別に示されるように本明細書で組み入れられる。例の正確な範囲を決定するために特許請求の範囲を参照すべきであり、特許請求の範囲は、任意のそのような均等物を含むように解釈されるべきである。また、好ましい、有利な、便利な又は類似のものとして説明されている発明の整数又は特徴は、任意であり、独立請求項の範囲を限定しないことを読者に理解されたい。さらに、そのような任意の整数又は特徴は、発明のいくつかの実施形態では見込まれる利益が望ましくないことがあり、それゆえ、他の実施形態ではなくてもよいことを理解されたい。