(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】接着剤および積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20240122BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240122BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240122BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/08
C09J11/04
B32B27/00 D
(21)【出願番号】P 2022531731
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2021022045
(87)【国際公開番号】W WO2021256360
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020102960
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣田 義人
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-261847(JP,A)
【文献】特開2018-062660(JP,A)
【文献】特開2019-171807(JP,A)
【文献】特開2019-011085(JP,A)
【文献】特開2015-058947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 201/00
C09J 11/08
C09J 11/04
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂バインダー(A)、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)及び有機溶媒を含
み、乾燥塗膜の水接触角が110°以上である、接着剤。
【請求項2】
熱可塑性樹脂バインダー(A)、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)及び有機溶媒を含み、前記変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)のD50に対する体積基準の累積90%粒子径(D90)の比率(D90/D50)が1.1~4.0である、接着剤。
【請求項3】
前記変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の体積基準の累積50%粒子径(D50)が1~1000μmである、請求項1または2に記載の接着剤。
【請求項4】
熱可塑性バインダー(A)が、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、フッ素系樹脂、シリコン樹脂及びポリエステル系樹脂並びにこれらの変性樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項5】
前記熱可塑性バインダー(A)と変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)との固形分質量比率((A)/(B))が80/20~5/95である請求項1~
4のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項6】
さらに疎水性無機粒子を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項7】
基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に積層される接着剤層とを備え、前記基材が樹脂または金属であり、前記接着剤層が、請求項1~
6のいずれか一項に記載の接着剤から得られる層である、積層体。
【請求項8】
前記接着剤層の水接触角が110°以上である、請求項
7に記載の積層体。
【請求項9】
前記接着剤層がヒートシール層である、請求項
7または
8に記載の積層体。
【請求項10】
請求項
7~
9のいずれか一項に記載の積層体を含む包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤および積層体に関し、詳しくは、撥水性が高く、金属や樹脂等に対して高い接着性を有する接着剤および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料として多種多様の材料が知られており、その内容物も、例えば、ゼリー菓子、プリン、ヨーグルト、液体洗剤、練り歯磨き、カレールー、シロップ、ワセリン、洗顔クリーム、洗顔ムース等のように、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等多岐にわたっている。内容物の性状も、例えば固体、半固体、液体、粘性体、ゲル状等、多様である。
【0003】
これらの内容物を包装するための包装材料においては、密封性が要求されるほかに、内容物、包装形態、用途等に応じて熱接着性、遮光性、耐熱性、耐久性等が要求される。ところが、これらの特性を満たしている包装材料であっても、次のような問題がある。すなわち、内容物が包装材料に付着するという問題である。内容物が包装材料に付着すれば、内容物をすべて使い切ることが困難になり、それだけ無駄が生じることになる。また、内容物をすべて使い切るためには包装材料に付着した内容物を別途に回収しなければならず、手間がかかる。このため、包装材料では、上記のような密封性等のほか、内容物が包装材料に付着しにくい性質、すなわち非付着性を備えていることが必要である。
【0004】
さらに、食品用、医薬品用、化粧品用等の容器の蓋材においては、アルミ箔等の金属、ポリプロピレン等の樹脂、紙などの材料との高い接着性が要求される。
特許文献1には、熱可塑性樹脂を含有する層の表面の少なくとも一部に一次粒子平均径3~100nmの疎水性酸化物微粒子が付着している積層体であって、有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子が前記熱可塑性樹脂を含有する層に含まれている積層体が記載されている。
【0005】
特許文献2には、基材、ヒートシール層、内容物の付着を防止する付着防止層をこの順に備え、前記ヒートシール層がヒートシール性樹脂に天然ゴム又は合成ゴムが配合された樹脂組成物によって構成されており、かつ、このヒートシール層中の天然ゴム又は合成ゴムが10~50質量%であり、前記付着防止層が粒子径1.0μm以下の疎水性微粒子を含有する蓋材が記載されている。
【0006】
特許文献3には、少なくとも基材層と熱封緘層とを有し、前記熱封緘層の外面に付着防止層を有し、該付着防止層は、疎水性無機微粒子と、変性ポリオレフィン樹脂を主成分とするバインダーとの混合組成物からなる内容物付着防止蓋材が記載されている。
【0007】
特許文献4には、基材フィルム及びその基材フィルムの少なくとも一方の面に積層されているヒートシール層を含む包装シートであって、前記ヒートシール層は、ヒートシール剤及びポリオレフィン系粒子を含み、かつ、基材フィルムと反対側の表面における表面粗さRaが1.00~7.00μmであり、前記ポリオレフィン系粒子は、平均粒径D50が10~50μmであり、融点が100~180℃である包装シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5674221号公報
【文献】特開2019-14493号公報
【文献】特許第5848058号公報
【文献】WO2018/003978号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~3に記載の積層体ないし蓋材は、表面層に疎水性無機粒子を有することにより、非付着性ないし撥水性を発現する。しかし、この疎水性無機粒子は、かさ高く、舞いやすいので、積層体ないし蓋材の製造時に配合するのが困難であるという実情がある。また、疎水性無機粒子は微粒子であるので、疎水性無機粒子を含む配合液の安定性が低いという問題もある。
【0010】
特許文献4に記載の包装シートは、表面層にポリオレフィン系粒子を含有させ、表面層に凹凸を形成することによって、非付着性を発現させているが、この包装シートでは、十分な非付着性、接着強度を得ることはできない。
【0011】
また、特許文献1~3に記載の発明では、アルミ箔等の金属、ポリプロピレン等の樹脂などの材料との高い接着性を実現するのは困難である。
本発明は、撥水性が高く、金属や樹脂等に対して高い接着性を有する接着剤、および該接着剤を用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成する本発明は、例えば以下の[1]~[11]に関する。
[1] 熱可塑性樹脂バインダー(A)、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)及び有機溶媒を含む接着剤。
[2] 前記接着剤の乾燥塗膜の水接触角が110°以上である、[1]に記載の接着剤。
[3] 前記変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の体積基準の累積50%粒子径(D50)が1~1000μmである、[1]または[2]に記載の接着剤。
[4] 前記変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)のD50に対する体積基準の累積90%粒子径(D90)の比率(D90/D50)が1.1~4.0である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の接着剤。
[5] 熱可塑性バインダー成分(A)が、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、フッ素系樹脂、シリコン樹脂及びポリエステル系樹脂並びにこれらの変性樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の接着剤。
[6] 前記熱可塑性バインダー(A)と変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)との固形分質重量比率(A/B)が80/20~5/95である[1]~[5]のいずれかに記載の接着剤。
[7] さらに疎水性無機粒子を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の接着剤。
[8] 基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に積層される接着剤層とを備え、前記基材が樹脂または金属であり、前記接着剤層が、[1]~[7]のいずれかに記載の接着剤から得られる層である、積層体。
[9] 前記接着剤層の水接触角が110°以上である、[8]に記載の積層体。
[10] 前記接着剤層がヒートシール層である、[8]または[9]に記載の積層体。
[11] [8]~[10]のいずれか一項に記載の積層体を含む包装材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接着剤は、撥水性が高く、金属や樹脂等に対して高い接着性を有する。
本発明の接着剤は、必須成分として疎水性無機粒子を含まないので、積層体ないし包装材料の製造時の配合が容易であり、配合液の安定性が高い。
【0014】
本発明の接着剤からなる接着剤層は、単層で撥水性および接着性等の機能を発現するので、包装材料の製造時の工程数を少なくすることができる。
本発明の接着剤においては、接着剤に含まれるバインダー成分をすべて接着性樹脂にすることができるので、高い接着力を実現することができる。接着剤に含まれる変性ポリオレフィン樹脂粒子は、撥水性と接着性との二元効果を有するので、複合的に他の成分を配合しなくても、撥水性および接着性を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[接着剤]
本発明の接着剤は、熱可塑性樹脂バインダー(A)、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)及び有機溶媒を含む。
【0016】
熱可塑性樹脂バインダー(A)は、本発明の接着剤に接着性を付与する成分である。
熱可塑性樹脂バインダー(A)としては、例えば、オレフィン系樹脂(a-1)、スチレン系樹脂(a-2)などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂バインダー(A)として、オレフィン系樹脂(a-1)とスチレン系樹脂(a-2)とを任意の比率で混合した混合物も使用できる。
【0017】
また、熱可塑性樹脂バインダー(A)は、その一部または全部が極性基含有単量体でグラフト変性された変性熱可塑性樹脂であることが好ましい一形態である。
さらに、以下その測定条件は詳述するが、熱可塑性樹脂バインダー(A)の融解熱量は0J/g以上40J/g以下であることが好ましい一形態である。
【0018】
熱可塑性樹脂バインダー(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
熱可塑性樹脂バインダー(A)として、オレフィン系樹脂(a-1)およびスチレン系樹脂(a-2)を用いることが好ましい。また、極性基含有単量体でグラフト変性された変性オレフィン系樹脂および極性基含有単量体でグラフト変性された変性スチレン系樹脂を用いることも好ましい。
【0019】
〈オレフィン系樹脂(a-1)〉
オレフィン系樹脂(a-1)としては、例えば、炭素数2~20のα-オレフィン由来の重合体(a-1a)が挙げられ、未変性の炭素数2~20のα-オレフィン由来の重合体が極性基含有単量体でグラフト変性された変性重合体(a-1b)であることが好ましい。
【0020】
〔炭素数2~20のα-オレフィン由来の重合体(a-1a)〕
重合体(a-1a)は、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含めば特に制限されず、炭素数4~20のα-オレフィンからなる重合体であってもよく、炭素数4~20のα-オレフィンと炭素数2~3のα-オレフィンとを用いて得られる共重合体であってもよく、必要により、α-オレフィン以外の不飽和単量体(以下「他の不飽和単量体(3)」ともいう。)に由来する構成単位を含む重合体であってもよい。
【0021】
重合体(a-1a)の原料として用いられるα-オレフィンは、1種単独でもよく、2種以上でもよい。つまり、前記重合体(a-1a)は、炭素数2~20のα-オレフィンの単独重合体であってもよく、該α-オレフィンを用いて得られる共重合体であってもよく、1種以上の炭素数4~20のα-オレフィンと1種以上の炭素数2~3のα-オレフィンとを用いて得られる共重合体(a-1a1)であってもよい。
【0022】
共重合体(a-1a1)としては、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体が挙げられるが、ランダム共重合体が好ましい。
前記炭素数4~20のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられる。
【0023】
前記炭素数4~20のα-オレフィンとしては、有機溶媒への溶解性および強度に優れる重合体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは炭素数4~10の直鎖状のオレフィンであり、より好ましくは炭素数4~6の直鎖状のオレフィンであり、前記効果に特に優れる重合体が得られる等の点から、1-ブテンを含むことがさらに好ましく、1-ブテンが特に好ましい。
【0024】
前記炭素数2~3のα-オレフィンとしては、エチレンおよびプロピレンが挙げられ、有機溶媒への溶解性および強度に優れる重合体を容易に得ることができる等の点から、プロピレンを含むことが好ましく、プロピレンが特に好ましい。
【0025】
他の不飽和単量体(3)としては、後述のエチレン/α-オレフィン共重合体(b1-1)の構成単位となり得る他の不飽和単量体(1)と同様の共役ジエン類、非共役ポリエン類が挙げられる。
【0026】
重合体(a-1a)としては、溶剤への溶解性および強度に優れる重合体を容易に得ることができる等の点から、共重合体(a-1a1)が好ましく、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体がより好ましく、特に、プロピレンに由来する構成単位を除く構成単位が、すべて前記炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位である共重合体がより好ましく、前記炭素数4~20のα-オレフィンが1-ブテンを含むことがさらに好ましく、1-ブテンとプロピレンとの共重合体が特に好ましい。
【0027】
重合体(a-1a)において、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合は、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、好ましくは重合体(a-1a)を構成する全構成単位100モル%に対して、例えば5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、また、例えば100モル%以下、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下である。
【0028】
炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が、前記上限の規定を満たすと、より強度に優れる重合体を得ることができ、前記下限の規定を満たすと、より有機溶媒への溶解性に優れる重合体を得ることができる。
【0029】
重合体(a-1a)において、炭素数2~3のα-オレフィン(好ましくはプロピレン)に由来する構成単位の含有割合は、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、好ましくは重合体(a-1a)を構成する全構成単位100モル%に対して、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、特に好ましくは65モル%以上であり、また、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。
【0030】
炭素数2~3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が、前記上限の規定を満たすと、得られる重合体の融点(Tm)および融解熱(ΔH)を低下させることができ、前記下限の規定を満たすと、より強度に優れる重合体を得ることができる。
【0031】
前記重合体(a-1a)の融解熱量(ΔH)は、好ましくは0J/g以上、より好ましくは3J/g以上、特に好ましくは、5J/g以上であり、ま、好ましくは40J/g以下、より好ましくは35J/g以下である。また、ΔHが0J/gであること、すなわちΔHが観測されないことも好ましい一形態である。
【0032】
前記ΔHを有する重合体(a-1a)は、例えば、該重合体(a-1a)中の炭素数2~3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合を適宜調整することで得ることができる。
【0033】
ΔHが前記上限の規定を満たすと、本発明の接着剤は、熱圧着後の接着強度に優れる。 本発明において、ΔHは、JIS K 7122に従って、示差走査熱量測定(DSC測定)によって求められ、具体的には、10℃/分の昇温過程で得られるサーモグラムのピーク面積から算出される。より具体的には、測定前の熱履歴をキャンセルする目的で、測定前に10℃/分で200℃まで昇温し、その温度で3分保持し、次いで10℃/分で0℃まで降温し、その温度で3分間保持した後に、ΔHを測定する。
【0034】
重合体(a-1a)の融点(Tm)は、好ましくは120℃未満であり、より好ましくは100℃未満である。また、Tmが0℃以上で観測されないことも好ましい一形態である。前記Tmを有する重合体(a-1a)は、例えば、該重合体(a-1a)中の炭素数2~3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合を適宜調整することで得ることができる。
【0035】
Tmが前記条件を満たすと、本発明の接着剤から低温養生条件下で接着剤層を形成しても、接着強度に優れる接着剤層を得ることができる。
重合体(a-1a)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された、標準ポリスチレンで換算される重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1×104以上であり、また、好ましくは1×107以下であり、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1以上であり、また、好ましくは3以下である。
【0036】
MwやMw/Mnが前記下限の規定を満たすと、接着強度が十分に高い接着剤層を得ることができ、また、該接着剤層と被着体との接着強度が良好となり、前記上限の規定を満たすと、有機溶媒への溶解性が良好な重合体が得られ、固化および析出が起こりにくい接着剤を得ることができる。
【0037】
前記重合体(a-1a)は、α-オレフィンの重合体の製造に通常用いられる公知の固体状Ti触媒やメタロセン触媒などの存在下で、炭素数2~20のα-オレフィンを重合させることにより得ることができる。メタロセン触媒としては、例えば、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドなどのメタロセン化合物と、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物と、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物とを含む触媒が挙げられる。より具体的には、前記重合体(a-1a)は、例えば、国際公開第2004/87775号に記載されている方法で得ることができる。
【0038】
〔変性重合体(a-1b)〕
熱可塑性樹脂バインダー(A)として、前記未変性の重合体(a-1a)の一部または全部が、極性基含有単量体でグラフト変性された変性重合体(a-1b)を使用することも好ましい一形態である。前記変性重合体(a-1b)は、未変性の炭素数2~20のα-オレフィン由来の重合体が極性基含有単量体でグラフト変性された重合体であれば特に制限されないが、1種以上の極性基含有単量体を有する単量体と1種以上の未変性の前記重合体とを反応させた重合体であることが好ましい。
【0039】
変性重合体(a-1b)における極性基の具体例およびその形態、ならびに極性基含有単量体の具体例および好適形態の説明については、後述の変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)における極性基および極性基含有単量体に関する説明と同様である。
【0040】
変性重合体(a-1b)のΔHは、好ましくは0J/g以上、より好ましくは3J/g以上、特に好ましくは5J/g以上であり、また、好ましくは40J/g以下、より好ましくは35J/g以下、特に好ましくは30J/g以下である。また、ΔHが0J/gであること、すなわちΔHが観測されないことも好ましい一形態である。
【0041】
変性重合体(a-1b)のΔHが前記上限の規定を満たすと、本発明の接着剤からなる接着剤層は、熱圧着後の接着強度に優れる。
前記ΔHを有する変性重合体(a-1b)は、例えば、該変性重合体(a-1b)中の炭素数2~3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合を適宜調整することで得ることができる。
【0042】
変性重合体(a-1b)のTmは、好ましくは120℃未満、より好ましくは100℃未満、さらに好ましくは90℃以下、特に好ましくは87℃以下であり、また、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。また、Tmが0℃以上で観測されないことも好ましい一形態である。
【0043】
変性重合体(a-1b)のTmが前記上限の規定または融点が0℃以上で観測されない条件を満たすと、本発明の接着剤からなる接着剤層は、低温での熱圧着後の接着強度に優れる。
【0044】
前記Tmを有する変性重合体(a-1b)は、例えば、該変性重合体(a-1b)中の炭素数2~3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合を適宜調整することで得ることができる。
【0045】
変性重合体(a-1b)の50℃における半結晶化時間は、好ましくは100秒以上、より好ましくは150秒以上、さらに好ましくは200秒以上である。また、前記半結晶化時間には、実質的に結晶化が起こらない、または、半結晶化時間の値が大きすぎて求められない、すなわち半結晶化時間が無限大となるような場合も含まれる。
【0046】
変性重合体(a-1b)の半結晶化時間が前記下限の規定を満たすと、本発明の接着剤の変性重合体(a-1b)を含む成分が被着体の表面の凹凸に浸入し、アンカー効果によって、得られる接着剤層の接着強度をより一層向上させることができる。
【0047】
前記半結晶化時間は、示差走査熱量計による等温結晶化測定によって求めることができる。
変性重合体(a-1b)の、GPCによって測定され、標準ポリスチレンで換算されたMwは、好ましくは1×104以上、より好ましくは2×104以上、特に好ましくは3×104以上であり、また、好ましくは1×107以下、より好ましくは1×106以下、特に好ましくは5×105以下である。
【0048】
変性重合体(a-1b)のMwが、前記下限の規定を満たすと、本発明の接着剤から被着体との接着強度に優れる接着剤層を容易に得ることができ、前記上限の規定を満たすと、有機溶媒への溶解性が良好であり、固化および析出が起こりにくい変性重合体(a-1b)を得ることができる。特に、変性重合体(a-1b)のMwが5×105以下であると、被着体との接着強度により優れる接着剤層を得ることができる。
【0049】
変性重合体(a-1b)の、Mw/Mnは、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下である。
Mw/Mnが前記下限の規定を満たすと、有機溶媒への溶解性が良好であり、固化および析出が起こりにくい変性重合体(a-1b)を得ることができ、前記上限の規定を満たすと、本発明の接着剤から接着強度が十分高く、また、被着体との接着強度に優れる接着剤層を容易に得ることができる。
【0050】
変性重合体(a-1b)の40℃における動粘度は、500,000cStを超えることが好ましい。ここで、動粘度が500,000cStを超える場合には、流動性が低く動粘度が測定できないような場合が含まれる。
【0051】
本発明において、40℃における動粘度は、ASTM D 445に基づいて測定する。
変性重合体(a-1b)における、極性基含有単量体に由来する構成単位の含有割合(変性量)は、変性重合体(a-1b)の全構成単位100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0052】
変性量が前記範囲にあると、本発明の接着剤から得られる接着剤層の被着体に対する親和性を高めて、接着剤層と被着体との接着強度をより一層向上させることができる。
未変性の炭素数2~20のα-オレフィン由来の重合体に、極性基含有単量体をグラフト共重合させて、変性重合体(a-1b)を製造する方法としては、後述する変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)において、原料ポリオレフィン系樹脂に極性基含有単量体をグラフト共重合させる方法と同様の方法が挙げられる。また、変性重合体(a-1b)は、例えば、国際公開第2017/126520号に開示されているような、常法に従って合成してもよい。
【0053】
〈スチレン系樹脂(a-2)〉
スチレン系樹脂(a-2)の種類および製造方法に特に制限はなく、例えば、スチレン等のモノビニル芳香族炭化水素由来の構成単位を含む共重合体が挙げられる。
【0054】
前記スチレン系樹脂(a-2)としては、例えば、モノビニル置換芳香族炭化水素(スチレン系芳香族炭化水素)を共重合成分とした共重合体が挙げられ、具体例としては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレンゴム(SIR)、スチレン-エチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン-ポリ(α-メチルスチレン)(α-MeSBα-MeS)、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリイソプレン-ポリ(α-メチルスチレン)(α-MeSIα-MeS)が挙げられる。さらには、これらの共重合体を構成する共役ジエン部分、具体的にはブタジレンやイソプレン由来の構成単位が水添された共重合体が挙げられる。これらの中でも、SEBS、SEPSが好ましい。
【0055】
スチレン系樹脂(a-2)として、極性基含有単量体でグラフト変性された変性スチレン系樹脂を使用することは好ましい一形態である。該変性は、従来公知の方法で行うことができる。変性スチレン系樹脂における極性基の具体例およびその形態については、上述した変性重合体(a-1b)の極性基および極性基含有単量体に関する説明と同様である。
【0056】
スチレン系樹脂をグラフト変性する極性基含有単量体としては、例えば、変性重合体(a-1b)に関して記載した極性基含有単量体が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物が好ましく、不飽和カルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸がさらに好ましい。
【0057】
変性スチレン系樹脂における、極性基含有単量体に由来する構成単位の含有割合(変性量)は、変性スチレン系樹脂の全構成単位100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0058】
変性スチレン系樹脂としては市販品を使用することもできる。該市販品の具体例としては、ダイナロン 8630P(JSR(例)製)、タフテック M1913(旭化成(株)製)が挙げられる。
【0059】
スチレン系樹脂(a-2)のΔHは、好ましくは0J/g以上、40J/g以下であるが、ΔHは0J/g(すなわちΔHが観測されない)であることが好ましい一形態である。
【0060】
スチレン系樹脂(a-2)のΔHが前記条件を満たすと、本発明の接着剤から低温養生条件下で接着剤層を形成しても、接着強度に優れる接着剤層を得ることができ、接着強度に優れる接着剤層を容易に得ることができる。
【0061】
スチレン系樹脂(a-2)のTmは、0℃以上で観測されないことが好ましい。
スチレン系樹脂(a-2)のTmが前記条件を満たすと、本発明の接着剤から低温養生条件下で接着剤層を形成しても、接着強度の低下を防止することができ、接着強度および耐久性に優れる接着剤層を得ることができる。
【0062】
スチレン系樹脂(a-2)の、GPCによって測定され、標準ポリスチレンで換算されたMwは、好ましくは1×104以上、より好ましくは2×104以上、特に好ましくは3×104以上であり、また、好ましくは1×107以下、より好ましくは1×106以下、特に好ましくは5×105以下である。
【0063】
スチレン系樹脂(a-2)のMwが、前記下限の規定を満たすと、本発明の接着剤から接着強度が十分高く、また、被着体との接着強度に優れる接着剤層を容易に得ることができ、前記上限の規定を満たすと、有機溶媒への溶解性が良好であり、固化および析出が起こりにくいスチレン系樹脂(a-2)を得ることができる。特に、スチレン系樹脂(a-2)のMwが5×105以下であると、被着体との接着強度により優れる接着剤層を得ることができる。
【0064】
スチレン系樹脂(a-2)の、Mw/Mnは、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下である。 Mw/Mnが前記下限の規定を満たすと、有機溶媒への溶解性が良好であり、固化および析出が起こりにくいスチレン系樹脂(a-2)を得ることができ、前記上限の規定を満たすと、本発明の接着剤から接着強度が十分高く、また、被着体との接着強度に優れる接着剤層を容易に得ることができる。
【0065】
変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)は、本発明の接着剤に撥水性および接着性を付与する成分である。変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)は、ポリオレフィン樹脂(b)を極性基含有単量体でグラフト変性されて得られる変性ポリオレフィン樹脂の粒子である。
【0066】
ポリオレフィン樹脂(b)としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン共重合体などが挙げられる。
これらの中でも、エチレン/α-オレフィン共重合体(b-1)、並びに、プロピレン単独重合体、プロピレン/エチレン共重合体およびプロピレン/α-オレフィン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体(b-2)からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
【0067】
前記エチレン/α-オレフィン共重合体(b-1)には、エチレン由来の構成単位と、α-オレフィン由来の構成単位が含まれる。該α-オレフィンとしては、炭素数3以上のα-オレフィンが好ましく、炭素数3~50のα-オレフィンがより好ましい。
【0068】
前記炭素数3~50のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ペンテン、3-エチル-4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘプテン、3,4-ジメチル-1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0069】
エチレン/α-オレフィン共重合体(b-1)に含まれるエチレン由来の構成単位は、50モル%以上97モル%以下であることが好ましく、60モル%以上95モル%以下であることがより好ましい。また、共重合体(b-1)に含まれるα-オレフィン由来の構成単位は、3モル%以上50モル%以下であることが好ましく、5モル%以上40モル%以下であることがより好ましい。
【0070】
エチレン/α-オレフィン共重合体(b-1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレンおよびα-オレフィン以外の不飽和単量体(以下「他の不飽和単量体(1)」という。)に由来する構成単位を含むこともできる。他の不飽和単量体(1)としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどの共役ポリエン類;1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、2,5-ノルボナジエンなどの非共役ポリエン類が挙げられる。
【0071】
エチレン/α-オレフィン共重合体(b-1)の中でも、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/1-オクテン共重合体が好ましい。
プロピレン系重合体(b-2)となり得るプロピレン/α-オレフィン共重合体には、プロピレン由来の構成単位と、α-オレフィン由来の構成単位が含まれる。該α-オレフィンとしては、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。炭素数4~50のα-オレフィンとしては、プロピレン以外の、エチレン/α-オレフィン共重合体(b-1)の構成単位となる炭素数3~50α-オレフィンとして例示したα-オレフィンと同様のα-オレフィンが挙げられる。
【0072】
プロピレン系重合体(b-2)に含まれるプロピレン由来の構成単位は、80モル%超100モル%以下であることが好ましく、90モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、95モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。また、プロピレン系重合体(b-2)に含まれ得るエチレンまたは炭素数4以上のα-オレフィン由来の構成単位は、0モル%以上20モル%未満であることが好ましく、0モル%以上10モル%以下であることがより好ましく、0モル%以上5モル%以下がさらに好ましい。
【0073】
プロピレン系重合体(b-2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、プロピレン、エチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィン以外の不飽和単量体(以下「他の不飽和単量体(2)」という。)に由来する構成単位を含むこともできる。
【0074】
他の不飽和単量体(2)としては、エチレン/α-オレフィン共重合体(b-1)の構成単位となり得る他の不飽和単量体(1)と同様の共役ジエン類、非共役ポリエン類が挙げられる。
【0075】
プロピレン系重合体(b-2)の中でも、プロピレン単独重合体、プロピレン/エチレン共重合体が好ましい。
ポリオレフィン樹脂(b)は、ポリオレフィン樹脂の製造に通常用いられる公知の固体状Ti触媒やメタロセン触媒などの存在下で、得られる重合体の構成単位に対応する単量体を重合させることにより得られる。メタロセン触媒としては、例えば、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドなどのメタロセン化合物と、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物と、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物とを含む触媒が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂(b)のより具体的な製造方法としては、国際公開第2004/87775号パンフレットに記載されている方法などが挙げられる。
【0076】
変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)は、前記ポリオレフィン樹脂(b)が極性基含有単量体でグラフト変性されて得られる変性ポリオレフィン樹脂の粒子である。本発明の接着剤が極性基含有単量体でグラフト変性されて得られる変性ポリオレフィン樹脂粒子を含むことにより、金属や樹脂からなる基材に対する密着力が向上する。
【0077】
前記極性基としては、活性水素を有する基が挙げられ、具体的には、水酸基、アミノ基カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、チオール基などが挙げられる。
前記極性基含有単量体は、1種類の極性基を有していてもよく、2種以上の極性基を有していてもよい。また、極性基の個数も、1つでもよく、2つ以上でもよい。
【0078】
前記極性基含有単量体としては、本発明の接着剤から得られる接着剤層と基材(例えば、金属、樹脂)等の被着体に対する親和性を高めて、接着剤層と被着体との接着強度をより一層向上させることができる等の点から、酸無水物基またはカルボキシル基を有する単量体が好ましい。
【0079】
前記極性基含有単量体としては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、不飽和カルボン酸とその無水物、ビニルエステル化合物、塩化ビニル、チオール基含有エチレン性不飽和化合物、その他エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル類および、これらの誘導体が挙げられる。
【0080】
水酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシ-プロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-(6-ヒドロヘキサノイルオキシ)エチルアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;10-ウンデセン-1-オール、1-オクテン-3-オール、2-メタノールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、N-メチロールアクリルアミド、2-(メタ)アクロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2-ブテン-1,4-ジオール、グリセリンモノアルコールなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリルレートとは、アクリレートおよびメタクリレートのことを意味し、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのことを意味し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルおよびメタクリロイルのことを意味する。
【0081】
アミノ基含有エチレン性不飽和化合物としては、下式で表されるようなアミノ基または置換アミノ基を少なくとも1種類有するビニル系単量体を挙げることができる。
-NR1R2
上記式中、R1は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、R2は、水素原子、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~8のアルキル基、または炭素数8~12、好ましくは6~9のシクロアルキル基である。なお、前記R2としては、該アルキル基およびシクロアルキル基の一部を置換基で置換した基も挙げられる。
【0082】
このようなアミノ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノメチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系化合物;N-ビニルジエチルアミン、N-アセチルビニルアミン等のビニルアミン系化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等のアクリルアミド系化合物またはメタクリルアミド系化合物;p-アミノヘキシルコハク酸イミド、2-アミノエチルコハク酸イミド等のイミド系化合物が挙げられる。
【0083】
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、1分子中に重合可能な不飽和結合基及びエポキシ基を少なくとも1個以上有するモノマーが用いられる。
このようなエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸(登録商標))、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸(登録商標)))のモノグリシジルエステル(モノグリシジルエステルの場合のアルキル基の炭素数1~12)、p-スチレンカルボン酸のアルキルグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-エポキシ-1-ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドが挙げられる。
【0084】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸が挙げられる。
【0085】
不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0086】
ビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、パーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルが挙げられる。
【0087】
チオール基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アリルメルカプタン、2-ビニルベンジルメルカプタン、3-ビニルベンジルメルカプタン、4-ビニルベンジルメルカプタン、ビニルチオフェノール等のチオフェノール誘導体が挙げられる。
【0088】
その他エチレン性不飽和化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0089】
芳香族ビニル類としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレンが挙げられる。
前記化合物の誘導体としては、例えば、不飽和カルボン酸無水物以外の不飽和カルボン酸誘導体が挙げられる。不飽和カルボン酸誘導体としては、例えば、塩化マレニル、マレニルイミド、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチルが挙げられる。
【0090】
前記極性基含有単量体としては、金属や樹脂等の基材に対する接着強度をより一層向上させることができる等の点から、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物が好ましく、不飽和カルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸がさらに好ましい。
【0091】
これらの極性基含有単量体は単独あるいは複数で使用することができる。
変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)は、前記極性基含有単量体に由来する構成単位を、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の全構成単位100質量%に対して、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.2~10質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%の量で含む。
【0092】
これらの極性基含有単量体の含有率(変性量)は、例えば、原料となる未変性のポリオレフィン系樹脂と極性基含有単量体とをラジカル開始剤などの存在下に反応させる際の仕込み比で調整できる。
【0093】
また、前記変性量は、1H-NMR測定などの公知の手段で求めることができる。具体的なNMR測定条件としては、以下の様な条件を例示できる。
1H-NMR測定の場合、日本電子(株)製ECX400型核磁気共鳴装置を用い、溶媒は重水素化オルトジクロロベンゼンとし、試料濃度20mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核は1H(400MHz)、シーケンスはシングルパルス、パルス幅は5.12μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は7.0秒、積算回数は500回以上とする条件である。基準のケミカルシフトは、テトラメチルシランの水素を0ppmとするが、例えば、重水素化オルトジクロロベンゼンの残存水素由来のピークを7.10ppmとしてケミカルシフトの基準値とすることでも同様の結果を得ることができる。官能基含有化合物由来の1Hなどのピークは、常法によりアサインできる。
【0094】
また、上記極性基含有単量体として、上記不飽和カルボン酸およびその無水物など酸性官能基を有する単量体を用いた場合、変性オレフィン系重合体に導入された官能基の量の目安となる量として、例えば酸価を用いることも可能である。ここで、酸価の測定方法としては、以下のものが挙げられる。
【0095】
(酸価の測定)
基本操作はJIS K2501-2003に準ずる。
変性ポリオレフィン樹脂粒子(B) 約10gを正確に測り取り、200mLトールビーカーに投入する。そこに滴定溶剤として、キシレンとジメチルホルムアミドとを1:1(体積比)で混合してなる混合溶媒を150mL添加する。指示薬として1w/v%のフェノールフタレインエタノール溶液(和光純薬工業社製)を数滴加え、液温を80℃に加熱して、試料を溶解させる。液温が80℃で一定になった後、0.1mol/Lの水酸化カリウムの2-プロパノール溶液(和光純薬工業社製)を用いて滴定を行い、滴定量から酸価を求める。
【0096】
計算式は
酸価(mgKOH/g)=(EP1-BL1)×FA×C1/SIZE
である。
【0097】
ここで、上記計算式において、EP1は滴定量(mL)、BL1はブランク値(mL)、FAは滴定液のファクター(1.00)、C1は濃度換算値(5.611mg/mL:0.1mo1/L KOH 1mLの水酸化カリウム相当量)、SIZEは試料採取量(g)をそれぞれ表す。
【0098】
この測定を3回繰り返して平均値を酸価とする。
変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の酸価は、好ましくは0.1~100mgKOH/g、より好ましくは0.5~60mgKOH/g、さらに好ましくは0.5~30mgKOH/gである。
【0099】
また、上記極性基含有単量体として無水マレイン酸を用いる場合には、赤外分光光度計を用いて1790cm-1付近に検出される無水マレイン酸のカルボニル基の吸収に基づいてグラフト量を求めることもできる。
【0100】
ポリオレフィン樹脂に、極性基含有単量体をグラフト共重合させる方法として、種々の方法がある。かかる方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を有機溶媒に溶解し、極性基含有単量体およびラジカル重合開始剤を添加して加熱、攪拌してグラフト共重合反応させる方法;ポリオレフィン樹脂を加熱溶融して、得られる溶融物に極性基含有単量体およびラジカル重合開始剤を添加し、攪拌してグラフト共重合反応させる方法;ポリオレフィン樹脂、極性基含有単量体およびラジカル重合開始剤を予め混合し、得られる混合物を押出機に供給して加熱混練しながらグラフト共重合反応させる方法;ポリオレフィン樹脂に、極性基含有単量体およびラジカル重合開始剤を有機溶媒に溶解してなる溶液を含浸させた後、ポリオレフィン樹脂が溶解しない最高の温度まで加熱し、グラフト共重合反応させる方法などが挙げられる。
【0101】
反応温度は、50℃以上、特に80~200℃の範囲が好適であり、反応時間は1分~10時間程度である。
反応方式は、回分式、連続式のいずれでも良いが、グラフト共重合を均一に行うためには回分式が好ましい。
【0102】
使用するラジカル重合開始剤は、オレフィン重合体と極性基含有単量体との反応を促進するものであれば限定されないが、特に有機ペルオキシド、有機ペルエステルが好ましい。
【0103】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルベンゾエート、tert-ブチルペルフェニルアセテート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペル-sec-オクトエート、tert-ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびtert-ブチルペルジエチルアセテートなどの有機ペルオキシド;アゾビス-イソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチルニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。
【0104】
これらの中でも、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルペルオキシドが好ましい。
【0105】
ラジカル重合開始剤は、未変性の原料ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部程度の量で使用されることが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、1~1000μmであることが好ましく、3~100μmであることがより好ましく、5~30μmであることがさらに好ましい。変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)のD50が前記範囲にあると、本発明の接着剤に良好な接着性を付与することができる。
【0106】
また、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)のD50に対する、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の体積基準の累積90%粒子径(D90)の比率(D90/D50)は1.1~4.0であることが好ましく、1.1~3.5であることがより好ましく、1.1~3.0であることがさらに好ましい。前記比率(D90/D50)が前記範囲にあると、本発明の接着剤に良好な接着性を付与することができる。
【0107】
変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の比重は、特に制限されないが、通常0.70~1.00であり、好ましくは0.80~1.00、より好ましくは0.85~0.95である。
【0108】
変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の融点(Tm)は、好ましくは95~180℃、より好ましくは100~170℃、さらに好ましくは100~160℃である。融点が上記範囲にあることにより、高い接着強度を有する接着剤が得られる。
【0109】
本発明において、Tmは、JIS K7122に従って、示差走査熱量測定(DSC測定)によって求められ、具体的には、10℃/minで30℃から200℃まで昇温後、3分間その温度で保持し、次いで、10℃/minで0℃まで降温し、3分間その温度で保持し、次いで、再度10℃/minで200℃まで昇温する過程において、2度目の昇温時のサーモグラムより、JIS K7122に準じて求められる。
【0110】
変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され、標準ポリスチレンで換算される重量平均分子量(Mw)は、例えば10,000以上1,000,000以下であることが好ましく、分子量分布(分散度)は、例えば1以上3以下である。なお、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)である。本発明において、MwおよびMw/Mnは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0111】
変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の接着剤において、熱可塑性バインダー(A)と変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)との固形分質重量比率(A/B)は、80/20~5/95であることが好ましく、70/30~10/90であることがより好ましく、60/40~10/90であることがさらに好ましい。固形分質重量比率(A/B)が前記範囲内であると、本発明の接着剤の撥水性および接着性が特に良好になる。
【0112】
本発明の接着剤に含まれる前記有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタリン等の脂環式炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル類;トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤などが挙げられる。前記有機溶媒としては、特にコスト、撥水性の発現効果等の観点から、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸n-プロピルおよびトルエンから選ばれる2種以上の混合溶媒が好ましい。具体的には、酢酸n-プロピル/メチルシクロヘキサン混合溶液、メチルシクロヘキサン/酢酸エチル混合溶液、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン混合溶液、トルエン/メチルエチルケトン混合溶液、トルエン/酢酸エチル混合溶液等を挙げることができる。
【0113】
本発明の接着剤において、前記有機溶媒の含有量は、質量比で50%~95%であることが好ましく、60%~95%であることがより好ましく、70%~95%であることがさらに好ましい。
【0114】
本発明の接着剤は、さらに疎水性無機粒子を含むことができる。疎水性無機微粒子は、本発明の接着剤の非付着性をさらに高める機能を有する。疎水性無機微粒子は、20mN/m以上の表面エネルギーを有する疎水性物質であることが好ましく、その材料は特に限定されない。疎水性無機微粒子を具体的に例示すれば、疎水性のシリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等を挙げることができる。なかでも、疎水性能、コスト、超微粒子材料の市場からの入手のし易さ等の観点から、疎水性シリカやアルミナが好適である。疎水性シリカを用いる場合、乾式シリカおよび湿式シリカのいずれもよいが、付着防止性能の点で相対的には湿式シリカが有利である。
【0115】
疎水性無機微粒子の平均粒径は、1~5,000nmの範囲が好ましい。平均粒径1nmの未満の超微粒子は、市場からの入手が困難であり、またコストの面からも不利である。平均粒径5,000nmを超えるものでは、ヒートシール性を阻害するおそれがあると共に、付着防止効果が低下するおそれがある。特に好ましくは、平均粒径500~5000nmの疎水性湿式シリカ粒子である。
【0116】
本発明の接着剤が疎水性無機粒子を含む場合、熱可塑性バインダー樹脂(A)成分に対する疎水性無機粒子成分の含有量は、質量比率で10%~50%であることが好ましく、20~50%であることがより好ましく、20~40%であることがさらに好ましい。
【0117】
本発明の接着剤は、本発明の目的を達することができる範囲内において、通常の接着剤に含有される、上記以外の成分を含むこともできる。
本発明の接着剤においては、該接着剤から形成される乾燥塗膜における水接触角が110°以上であることが好ましく、より好ましくは120°以上である。本発明の接着剤は、前記水接触角が110°以上であることにより、撥水性に優れる。前記乾燥塗膜を形成するときの接着剤の塗布量は特に制限はないが、例えば4±0.5g/cm2とすることができる。水接触角の測定方法は後述の実施例において詳述する。
【0118】
本発明の接着剤は、撥水性が高く、金属や樹脂等に対して高い接着性を有するという特徴を有する。特に、本発明の接着剤は、アルミ箔やポリプロピレン等に対して高い接着性を有する。
【0119】
本発明の接着剤は、 熱可塑性樹脂バインダー(A)、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)及び有機溶媒、さらに任意的に用いられる成分を混合することにより製造することができる。本発明の接着剤の製造にあたっては、熱可塑性樹脂バインダー(A)と前記有機溶媒とを混合して熱可塑性樹脂バインダー組成物を調製し、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)と前記有機溶媒とを混合して変性ポリオレフィン樹脂粒子組成物を調製し、前記熱可塑性樹脂バインダー組成物と前記変性ポリオレフィン樹脂粒子組成物とを混合することによって製造してもよい。
[積層体]
前記接着剤から積層体を得ることができる。前記積層体は、例えば、基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に積層される接着剤層とを備え、前記接着剤層が前記接着剤から得られる層である。
【0120】
前記基材としては、例えば樹脂、金属、金属蒸着膜を有するプラスチック基材金属箔、紙、不織布であり、これらの中でも樹脂または金属が望ましい。
前記樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、セロハン等を挙げることができ、前記金属としてはアルミニウム箔等を挙げることができる。
【0121】
基材の厚みは、特に制限はないが、通常25μm~300μmである。
前記接着剤層は、前記接着剤から得られる層である。接着剤層の形成方法としては、基材上に前記接着剤を塗布して塗膜を形成し、必要により塗膜に含まれる有機溶剤等の揮発分を除去する方法、および、前記接着剤に基材を浸漬し、基材を取り出し、必要により基材に付着した接着剤からなる塗膜から有機溶剤等の揮発分を除去する方法等を挙げることができる。
【0122】
前記塗布の方法としては、特に制限されず、例えば、ダイコート法、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、キスリバースコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、エアナイフコート法、コンマロールコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、印刷法などが挙げられる。
【0123】
前記基材上に設けられた塗膜から揮発分を除去する(塗膜を乾燥する)方法としては、例えば、塗膜を有する基材を常温(約20℃)常圧下で放置する方法、減圧下に塗膜を有する基材を置き、塗膜に含まれる揮発分を除去する方法、塗膜を有する基材を加熱する方法が挙げられる。この加熱は、一段階で行っても、二段階以上で行ってもよい。
【0124】
該加熱の条件としては、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の融点以下で行うことが好ましい。塗膜を変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の融点を超えた温度に加熱すると、変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の形状が崩れ、接触角が低下してしまうおそれがある。加熱温度は、例えば220℃以下、好ましくは200℃以下で、例えば40℃以上で、加熱時間は、例えば3秒間以上、好ましくは1分間以上、また、例えば1時間以下である。
【0125】
接着剤層の厚みは、所望の用途等に応じ適宜設定すればよく、例えば0.2μm以上、好ましくは1μm以上であり、また、例えば100μm以下、好ましくは20μm以下である。
【0126】
本発明の接着剤から得られる接着剤層は、熱により溶着可能なヒートシール接着剤層として好適に使用できる。
接着剤層は、前記基材の少なくとも一方の表面に積層される。すなわち、接着剤層は、基材の片面のみに形成されていてもよく、基材の両面にそれぞれ形成されていてもよい。具体的には、本発明の積層体は、接着剤層/樹脂からなる基材、接着剤層/金属からなる基材、接着剤層/樹脂からなる基材/接着剤層、および、接着剤層/金属からなる基材/接着剤層の構造を採り得る。また、接着剤層は、基材の全面に存在していてもよく、一部に存在していてもよい。
【0127】
本発明の接着剤は、前述のとおり、金属および樹脂等に対して高い接着性を有するので、本発明の積層体においては、接着剤層と基材との接着力は高い。また、本発明の接着剤は、前述のとおり、撥水性が高いので、本発明の積層体は、接着剤層において高い撥水性を有する。
[包装材料]
前記積層体から、前記積層体を含む包装材料を得ることができる。前記積層体は、前述のとおり、接着剤層と基材との接着力が高く、接着剤層において高い撥水性を有するので、前記包装材料は様々な用途に利用できる。具体的には、食品容器蓋材、医薬品容器、化粧料容器等に好適に利用でき、特に食品容器蓋材に好適に利用することができる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
1.樹脂の物性
下記製造例で製造した樹脂の物性は以下のようにして測定した。
【0129】
<モノマーに由来する構成単位の含有割合>
下記製造例で得られた樹脂中の各モノマーに由来する構成単位の含有割合を、13C-NMRを利用して求めた。
【0130】
<融点、融解熱量の測定>
示差走査熱量計(TA Instruments製;DSC-Q1000)を用いて、融点および融解熱量を求めた。10℃/minで30℃から200℃まで昇温後、200℃で3分間保持し、10℃/minで0℃まで降温し、再度10℃/minで200℃まで昇温する過程において、2度目の昇温時のサーモグラムより、JIS K 7122に准じて融点と融解熱量を求めた。
【0131】
<極性基含有単量体の変性量(極性基含有単量体に由来する構成単位の含有量)の測定>
変性量は、1H-NMRによる測定から求めた。具体的な方法は前述したとおりである。
【0132】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製;LC-10series)を用いて、以下の条件で重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0133】
・検出器:島津製作所社製;C-R4A
・カラム:TSKG 6000H-TSKG 4000H-TSKG 3000H-TSKG 2000H(東ソー社製)
・移動相:テトラヒドロフラン
・温度:40℃
・流量:0.8ml/min
単分散標準ポリスチレンより作成した検量線を用いて、Mwを算出した。
【0134】
2.樹脂の合成
製造例1-1: 熱可塑性樹脂(a)の合成
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを900ml、1-ブテンを90g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0. 30ミリモル、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子に換算して0. 001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm2Gに保ちながら30分間重合を行った。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。得られたプロピレン/1-ブテン共重合体(熱可塑性樹脂(a))の融点は78.3℃、融解熱量は29.2J/g、Mwは330,000、プロピレン含有量は67.2モル%であった。
【0135】
製造例2-1: 変性熱可塑性樹脂バインダー(a1)の合成
上記プロピレン/1-ブテン共重合体(熱可塑性樹脂(a))3kgを10Lのトルエンに加え、窒素雰囲気下で145℃に昇温し、該共重合体をトルエンに溶解させた。さらに、攪拌下で無水マレイン酸382g、ジ-tert-ブチルパーオキシド175gを4時間かけて系に供給し、続けて145℃で2時間攪拌を行った。冷却後、多量のアセトンを投入し変性された共重合体を沈殿させ、ろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥した。
【0136】
得られた無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(熱可塑性樹脂バインダー(a1))の融点は75.8℃、融解熱量は28.6J/g、Mwは110,000、無水マレイン酸の変性量(無水マレイン酸に由来する構成単位の含有量)は、1質量%であった。
【0137】
製造例2-2: 変性熱可塑性樹脂バインダー(a2)の合成
クレイトンG1652M(SEBS、Kraton Corporation製)3kgを10Lのトルエンに加え、窒素雰囲気下で145℃に昇温し、該共重合体をトルエンに溶解させた。さらに、攪拌下で無水マレイン酸382g、ジ -tert-ブチルペルオキシド175gを4時間かけて系に供給し、続けて145℃で2時間攪拌を行った。冷却後、多量のアセトンを投入し変性された共重合体を沈殿させ、ろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥した。
【0138】
得られた無水マレイン酸変性SEBS(変性熱可塑性樹脂バインダー(a2))の融点、融解熱量は観察されず、Mwは100,000であった。変性熱可塑性樹脂バインダー(a2)における無水マレイン酸の変性量(無水マレイン酸に由来する構成単位の含有量)は2質量%であった。
【0139】
製造例2-3: 変性ポリオレフィン樹脂(b1)の合成
撹拌機が付設された内容積1.5Lのオートクレーブに、プロピレン単位99.25モル%およびエチレン単位0.75モル%のプロピレン/エチレン共重合体100質量部及びトルエン435質量部を入れ、撹拌下、140℃に昇温し、プロピレン/エチレン共重合体をトルエンに完全に溶解させた。この溶液を140℃に保ったまま、撹拌下、無水マレイン酸16質量部及びジクミルパーオキサイド1.5質量部を4時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、さらに140℃で1時間撹拌して、後反応を行い、変性ポリオレフィン系樹脂(b1)含有溶液を得た。次いで、この変性ポリオレフィン樹脂(b1)含有溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトンを加えることによって変性ポリオレフィン樹脂(b1)を析出させた。析出した変性ポリオレフィン樹脂(b1)を繰り返しアセトンで洗浄した後、乾燥を行って変性ポリオレフィン樹脂(b1)を回収した。変性ポリオレフィン樹脂(b1)の融点は157℃であり、無水マレイン酸の変性量(無水マレイン酸に由来する構成単位の含有量)は1.1質量%、Mwは90,000であった。
【0140】
製造例2-4: 変性ポリオレフィン系樹脂(b2)の合成
プロピレン単位99.25モル%およびエチレン単位0.75モル%のプロピレン/エチレン共重合体100質量部を、プロピレン単位96.5モル%およびエチレン単位3.5モル%のプロピレン/エチレン共重合体100質量部に変えたこと、ならびに、無水マレイン酸16質量部を30質量部に変えたこと以外は、製造例2-3と同様にして変性ポリオレフィン系樹脂(b2)を得た。変性ポリオレフィン系樹脂(b2)の融点は141℃であり、における無水マレイン酸の変性量(無水マレイン酸に由来する構成単位の含有量)は2.1質量%、Mwは95,000であった。
【0141】
製造例2-5: 変性ポリオレフィン系樹脂(b3)の合成
撹拌機が付設された内容積1.5Lのオートクレーブに、エチレン単位78モル%及び1-オクテン単位22モル%のエチレン/1-オクテン共重合体100質量部と、トルエン435質量部を入れ、撹拌下、140℃に昇温し、エチレン/1-オクテン共重合体をトルエンに完全に溶解させ、エチレン/1-オクテン共重合体のトルエン溶液を得た。この溶液を140℃に保ったまま、撹拌下、無水マレイン酸16質量部及びジクミルペルオキシド 1.5質量部を4時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、さらに140℃で1時間撹拌して、後反応を行い、変性ポリオレフィン系樹脂(b3)含有溶液を得た。次いで、この変性ポリオレフィン系樹脂(b3)含有溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトンを加えることによって変性ポリオレフィン系樹脂(b3)を析出させた。析出した変性ポリオレフィン系樹脂(b3)を繰り返しアセトンで洗浄した後、乾燥を行って変性ポリオレフィン系樹脂(b3)を回収した。変性ポリオレフィン系樹脂(b3)の融点は105℃であり、無水マレイン酸の変性量(無水マレイン酸に由来する構成単位の含有量)は0.9質量%、Mwは100,000であった。
【0142】
製造例3-1:熱可塑性バインダー樹脂組成物(A-1)の合成
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、クレイトンG1652M(SEBS)189gとメチルシクロヘキサン94.5g、酢酸n-プロピル378gを仕込み、窒素をパージしながら95℃に加熱昇温した。均一溶解後、メタクリル酸メチル94.7g、アクリル酸n-ブチル20.6g、スチレン66.2g、メタクリル酸7.6g、パーブチルO3.8g、酢酸n-プロピル302.4gを均一に混合したモノマー溶液を2時間にわたりフィードした。フィード終了60分後、パーブチルO3.0gを均等に分けて60分間隔で計4回添加した。4回のパーブチルO添加後、さらに3時間放置して反応させた後、酢酸n-プロピル340.2gを添加することで不揮発分25%まで希釈し、熱可塑性バインダー樹脂組成物(A-1)を得た。
【0143】
製造例3-2:熱可塑性バインダー樹脂組成物(A-2)の合成
変性熱可塑性バインダー樹脂(a1)100gをメチルシクロヘキサン/酢酸エチル=80/20の混合溶剤400gに加熱溶解し、熱可塑性バインダー樹脂組成物(A-2)を調製した。
【0144】
製造例3-3:熱可塑性バインダー樹脂組成物(A-3)の合成
変性熱可塑性バインダー樹脂(a2)100gをメチルシクロヘキサン/酢酸エチル=60/40の混合溶剤400gに加熱溶解し、熱可塑性バインダー樹脂組成物(A-3)を調製した。
【0145】
製造例3-4:変性ポリオレフィン粒子組成物(B-1)の合成
撹拌機付きオートクレーブに、製造例2-3で得た変性ポリオレフィン系樹脂(b1)5.5g、製造例2-4で得た変性ポリオレフィン系樹脂樹脂(b2)12.5g及びトルエン/メチルエチルケトン=78/22の混合溶剤82gを入れ、130℃に加熱して熱可塑性樹脂を完全に溶解させた。その後、撹拌しながら徐々に冷却し、不揮発分(固形分)18質量%の均一な乳白色である、変性ポリオレフィン系樹脂粒子が溶媒に分散した変性ポリオレフィン粒子組成物(B-1)を得た。得られた変性ポリオレフィン粒子組成物(B-1)は粒子径D50が10.1μm、粒子径D90が27.3μm、D90/D50が2.73であった。
【0146】
製造例3-5:変性ポリオレフィン粒子組成物(B-2)の合成
撹拌機付きオートクレーブに、製造例2-5で得られた変性ポリオレフィン系樹脂(b3)15g及びトルエン/酢酸エチル(質量比55/45)の混合溶媒85gを入れ、130℃に加熱して変性ポリオレフィン系樹脂(b3)15gを完全に溶解させた。その後、撹拌しながら徐々に冷却し、不揮発分(固形分)15質量%、均一な乳白色である、変性ポリオレフィン粒子組成物(E)を得た。得られた変性ポリオレフィン粒子組成物(B-2)は粒子径D50が17.7μm、粒子径D90が21.1μm、D90/D50が1.19であった。
3.接着剤の製造
[実施例1~21]
製造例3-1~製造例3-3で得た熱可塑性バインダー樹脂組成物(A-1)~(A-3)、及び製造例3-4、製造例3-5で得た変性ポリオレフィン粒子組成物(B-1)、(B-2)、酢酸n-プロピル(C)、メチルシクロヘキサン(D)を表2に示す重量比率で混合し、熱可塑性バインダー(A)と変性ポリオレフィン樹脂粒子(B)の固形分質量比率((A)/(B))が60/40~10/90である接着剤を調製した。
【0147】
[比較例1]
製造例3-1で得た熱可塑性バインダー樹脂組成物(A-1)と酢酸n-プロピル(C)を表2に示す重量比率で混合し、接着剤を調製した。
【0148】
[比較例2]
製造例3-3で得た熱可塑性バインダー樹脂組成物(A-3)とメチルシクロヘキサン(D)を表2に示す重量比率で混合し、接着剤を調製した。
【0149】
[比較例3]
製造例3-4で得た変性ポリオレフィン粒子組成物(B-1)と酢酸n-プロピル(C)を表2に示す重量比率で混合し、接着剤を調製した。
【0150】
熱可塑性バインダー樹脂組成物(A-1)~(A-3)および変性ポリオレフィン粒子組成物(B-1)、(B-2)に含まれる有機溶媒を表1に示す。
変性ポリオレフィン粒子組成物(B-1)および(B-2)に含まれる変性ポリオレフィン樹脂粒子の粒子径を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0151】
<粒子径の測定>
製造例3-4、製造例3-5で得た変性ポリオレフィン粒子組成物(B-1)、(B-2)の粒子径は、塗材を100μの濾紙で濾過後、濾過残渣を塩化ナトリウム0.9g、蒸留水100ml、イソプロパノール140mlの混合液中で2分間超音波分散させた後、ベックマン・コールター(株)社製、Multisizer4を用いて測定した。得られた体積統計値の50%値をD50とし、90%値をD90とした。また、得られたD50およびD90の値から比率(D90/D50)を求めた。
【0152】
【表1】
表1中の各記号は以下の略記である。カッコ内の比は質量比である。
nPAc:酢酸n-プロピル
MCH:メチルシクロヘキサン
EA:酢酸エチル
MEK:メチルエチルケトン
TOL:トルエン
上記実施例及び比較例で得られた接着剤の特性を以下の方法で求めた。結果を表2に示す。
【0153】
<AL/PP接着強度の測定>
アルミ箔(AL箔)に実施例1~21及び比較例1~3の接着剤をそれぞれ塗工し、80℃で30秒間乾燥させ(乾燥塗布量4±0.5g/m2)、塗膜を作製した。このアルミ箔を、塗膜面を圧着面として、ポリプロピレン(PP)シートに対して180℃、2kgf/cm2、1秒で熱圧着を行った。そして、幅15mmの大きさに切り出して試験片を作製した。この試験片について、万能引張測定装置を用いて、クロスヘッド速度100mm/分にて、180°剥離試験を実施して、AL/PPの剥離強度を測定した。
【0154】
<水接触角の測定>
AL箔に実施例1~21及び比較例1~3の接着剤をそれぞれ塗工し、80℃で30秒間乾燥させ(乾燥塗布量4±0.5g/m2)、塗膜を作製した。この塗膜面に対する水接触角を、協和界面科学社製の水接触角測定装置CA-V型を用いて、1サンプルについて3箇所測定し、それらの値の平均値をその接着剤の水接触角とした。
【0155】
<テープ密着性試験>
AL箔に実施例1~21及び比較例1~3の接着剤をそれぞれ塗工し、80℃で30秒間乾燥させ(乾燥塗布量4±0.5g/m2)、塗膜を作製した。得られた塗膜に対してセロテープ(ニチバン(株)品、登録商標)を貼り付けた後、速やかに90°方向に引っ張って剥離させ、目視で塗膜欠落を確認し、AL箔に対する接着剤の密着性を下記基準で評価した。
【0156】
A: 欠落無し
B: 僅かに欠落有り
C: 多くの欠落有り
【0157】