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  • 特許-積層フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240122BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240122BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B9/00 A
B65D65/40 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022537950
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2021026453
(87)【国際公開番号】W WO2022019192
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-08-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020124590
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 敦史
(72)【発明者】
【氏名】中野 麻洋
(72)【発明者】
【氏名】杉森 康一
(72)【発明者】
【氏名】柏 充裕
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】西堀 宏之
【審判官】西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-168040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00, B65D65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(A)の一方の表面にポリプロピレン系樹脂組成物からなる表面層(B)、基材層(A)のその他の表面にポリプロピレン系樹脂組成物からなる表面層(C)を有し、さらに前記表面層(B)の上に無機薄膜層(D)が積層された積層フィルムであって、前記積層フィルムはMD方向の引張弾性率が1.8GPa以上2.6GPa以下でヘイズが5%以下かつ、前記積層フィルムの無機薄膜層(D)側表面が以下の(I)~(IV)の要件を満たすことを特徴とする積層フィルム。
(I)走査型プローブ顕微鏡により2μm角の範囲で測定した算術平均粗さ(Ra)が4.5nm以上、9.0nm以下
(II) マルテンス硬さが310N/mm以下
(III) 水接触角が10°以上、75°以下
(IV)3次元粗さ計により測定した中心面平均粗さ(SRa)が0.010μm以上、0.040μm以下
【請求項2】
前記積層フィルムの23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60cc/m・d・atm以下、かつ40℃×90%RH環境下における水蒸気透過度が4g/m・d以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記積層フィルムを23℃×65%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(A)とし、23℃×80%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(B)としたときに、下記式で表される高温高湿条件下でのバリア値悪化率が130%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層フィルム。

高温高湿条件でのバリア値悪化率(%)= (B/A)×100 式(1)
【請求項4】
前記積層フィルムの表面層(C)側表面における3次元粗さ計により測定した中心面平均粗さ(SRa)が0.020μm以上であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記積層フィルムの表面層(C)側の表面におけるマルテンス硬さが270N/mm以上であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
積層フィルム厚みが9μm~200μmである請求項1~のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の積層フィルムの片面にオレフィン系シーラント層を積層してなる包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。更に詳しくは、製造上、及び、廃棄時の環境負荷が少なく、かつ、優れたガスバリア性能と包装用材料として十分な各層間の接着強度の両方を兼ね備えるガスバリア性積層フィルムに関する。
【0002】
近年、欧州はじめ世界各国において、使い捨てプラスチック使用削減に向けた規制が強化されている。その背景には、資源循環への国際的な意識の高まりや新興国におけるごみ問題の深刻化がある。そのため、食品、医薬品等に求められるプラスチック製包装材料についても、3R(recycle, reuse, reduce)の観点から環境対応型の製品が求められている。
【0003】
前述の環境に優しい包装材料に求められる性能として、(1)リサイクルしやすい材料から成ること、(2)各種ガスを遮断し賞味期限を延長できるガスバリア性能を有すること、(3)環境負荷が少ないラミネート構成にすること(例えば有機溶剤を使用しないことや材料の使用量自体が少ないこと、モノマテリアル化によるリサイクルが可能であること)等が挙げられる。
【0004】
近年、前記(2)、(3)を可能とするために、ポリプロピレンフィルムの使用に注目が集まっている。ポリプロピレンフィルムは、食品や様々な商品の包装用、電気絶縁用、表面保護用フィルムなど広範囲な用途で汎用的に用いられる。ポリプロピレンフィルムはその分子構造から高い水蒸気バリア性を発現することが可能である。さらに、表基材フィルムと貼り合わせるシーラントとしては、ポリプロピレン系やポリエチレン系のヒートシール樹脂が一般的であることから、例えば表基材にポリプロピレンフィルム、シーラントに未延伸ポリプロピレンシートを用いることで、ガスバリア性を有しつつ包材全体としてのモノマテリアル化が達成でき、リサイクルしやすい等、環境にやさしい包材設計が可能となる。
【0005】
しかし、前記(2)のガスバリア性に関し、ポリプロピレンフィルムは水蒸気バリア性を有するものの、例えば一般的に水蒸気バリア性が優れるとされる透明無機蒸着ポリエステルフィルムに比べると十分な値ではなく、また酸素バリア性に関しては非常に悪いという問題点があった。これに対し、ポリプロピレンフィルムにポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリルなど一般に酸素バリア性が比較的高いと言われる高分子樹脂組成物を積層させたフィルムが使用されてきた(例えば、特許文献1~3参照)。
【0006】
しかしながら、上記のポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性コートフィルムは湿度依存性が大きいため、高湿下においてガスバリア性が低下し、水蒸気バリア性や耐水接着性も十分とはいえなかった。またポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリルは、湿度依存性が低いが、水蒸気バリア性が十分でないこと、また廃棄・焼却の際に有害物質が発生する危険性が高いという問題があった。
【0007】
さらに、前述のバリアコート層はいずれも、十分なバリア性能を発現させるため、1μm以上の膜厚を積層する必要があった。バリアコート層の膜厚が厚いと、リサイクルする際の不純物の要因になるおそれがあり、リサイクル自体が困難になる可能性があった。また単一素材によるモノマテリアル化の観点からもふさわしくなかった。さらに、印刷等の加工工程においても、コートムラや凹凸による印刷不良の課題があった。
【0008】
これらの問題に対し、ポリエステルフィルム等のプラスチック基材フィルムの表面に、アルミニウム等からなる金属薄膜、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物からなる無機薄膜を形成したガスバリア性積層体が一般的に用いられている。中でも、酸化ケイ素や酸化アルミニウム、これらの混合物等の無機酸化物の薄膜を形成したものは、アルミ箔を用いる必要がないこと、透明であり内容物の確認が可能であること、さらには形成膜も非常に薄くリサイクル性を阻害しないことから、広く使用されている。
【0009】
ポリプロピレンフィルムにおいても、無機薄膜を積層してガスバリア性を付与できる方法が開示されている(例えば特許文献4)。しかし、ポリプロピレンフィルムは分子が無極性であることから表面エネルギーが小さく、そのために無機薄膜加工において密着性が十分ではないことが指摘されている。
【0010】
また、無機薄膜層の形成においては密着力だけでなく、表面凹凸による突起部分で薄膜形成が出来ず、バリア性などが不良となる問題もある。一方で二軸配向ポリプロピレン系フィルムはその優れた柔軟性と平面性により滑り性が乏しく、フィルム同士で貼りつくブロッキングが発生するため、一般的にアンチブロッキング剤を添加し、表面凹凸を形成させる。そのため、形成した表面凹凸で蒸着やコーティングによる薄膜形成が不十分となり、バリア性などの不良につながる問題がある。
【0011】
このような問題点に対する対策として、ポリプロピレンフィルムの改良による様々な方法が提案されており、例えば、プロピレン樹脂に分岐鎖状ポリプロピレンを混ぜ、ポリプロピレンのβ晶をα晶に結晶変態させることでフィルム表面に凹凸を形成させ、実質的に無機物や有機物によるアンチブロッキング剤を用いずに滑り性を良好とする方法(例えば、特許文献5等参照)が開示されている。しかしながら、立体規則性の高いホモポリプロピレンのみを用いていることから、表面は硬く、蒸着やコーティング、ラミネートなどの加工に用いる場合の密着性は考慮されていない。
【0012】
一方で、帯電防止剤を極力なくし、フィルム表面層にポリプロピレン樹脂とプロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体の異なるMFRの差により、樹脂自体の表面凹凸を形成させ、インキや他部材フィルムとのラミネートでの密着性を上げる方法(例えば、特許文献6等参照)が開示されている。しかしながら、表面層の算術平均粗さ(SRa)が高く、蒸着やコーティングによる薄膜形成で不十分となり、バリア性などが悪化する場合がある。また、フィルムの一方の表面にはアンチブロッキング剤がなく、ロール状態においてシワやブロッキングが発生する場合がある。
【0013】
また、基材改良以外の別の方法として、基材の表面に接着性やバリア性に寄与する有機溶剤系コーティング層を別途設けることで接着性の改善は可能であるが、その接着力に関しては十分ではなかった。また、塗工による加工工程が増えてしまうことや、有機溶剤を使用することから環境負荷低減の観点においては望ましくなく、コーティングによる接着層無しで接着力が出せることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2000-52501号公報
【文献】特開平4-359033号公報
【文献】特開2003-231221号公報
【文献】国際公開第2017/221781号
【文献】国際公開第2007/094072号
【文献】国際公開第2018/142983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記特許文献1~4では、バリア性能や接着性が不十分であった。特許文献5,6では無機薄膜層に対するバリア性や接着性の改善について検討されていなかった。また、いずれの文献においても、前記の環境に優しい包装材料に求められる性能を満足する材料について設計はされていなかった。
【0016】
本発明は、かかる従来技術の問題点を背景になされたものである。
すなわち、本発明の課題はポリプロピレンフィルムを主体とした環境負荷が少ないほぼ単一の樹脂種から構成されたラミネート構成を形成することができるフィルムであるとともに、包装材料に求められるガスバリア性や接着性、さらには加工適性等の必要性能を有する積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、要求される性能に合わせた所定のポリプロピレンフィルム基材層を設計し、その上に無機薄膜層を積層することでガスバリア性能や接着性を大きく向上させ、さらには環境負荷の少ないフィルムを提供できることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(A)の一方の表面に表面層(B)、基材層(A)のその他の表面に表面層(C)を有し、さらに前記表面層(B)の上に無機薄膜層(D)が積層された積層フィルムであって、前記積層フィルムのヘイズが5%以下かつ、前記積層フィルムの無機薄膜層(D)側表面が以下の(I)~(IV)の要件を満たすことを特徴とする積層フィルム。
(I)走査型プローブ顕微鏡により測定した算術平均粗さ(Ra)が4.5nm以上、9.0nm以下
(II) マルテンス硬さが310N/mm以下
(III) 水接触角が75°以下
(IV)3次元粗さ計により測定した中心面平均粗さ(SRa)が0.010μm以上、0.040μm以下
2.前記積層フィルムの23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60cc/m・d・atm以下、かつ40℃×90%RH環境下における水蒸気透過度が4g/m・d以下であることを特徴とする、1.に記載の積層フィルム。
3.前記積層フィルムを23℃×65%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(A)とし、23℃×80%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(B)としたときに、下記式で表される高温高湿条件下でのバリア値悪化率が130%以下であることを特徴とする、1.または2.に記載の積層フィルム。
高温高湿条件でのバリア値悪化率(%)= (B/A)×100 式(1)
4.前記積層フィルムの表面層(C)側表面における3次元粗さ計により測定した中心面平均粗さ(SRa)が0.020μm以上であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の積層フィルム。
5.前記積層フィルムの表面層(C)側の表面におけるマルテンス硬さが270N/mm以上であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の積層フィルム。
6.積層フィルム厚みが9μm~200μmである請求項1.~5.のいずれかに記載の積層フィルム。
7.前記1.~6.のいずれかに記載の積層フィルムの片面にオレフィン系シーラント層を積層してなる包装材料。
【発明の効果】
【0019】
本発明者らは、かかる技術によって、環境に配慮しつつ、包装材料に求められるバリア性や接着性等の必要性能を有する積層フィルムを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の空気抜け時間の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(A)の一方の表面に表面層(B)、基材層(A)のその他の表面に表面層(C)を有し、さらに前記表面層(B)の上に無機薄膜層(D)が積層された積層フィルムであって、前記積層フィルムのヘイズが5%以下かつ、前記積層フィルムの無機薄膜層(D)側表面が以下の(I)~(IV)の要件を満たすことを特徴とする積層フィルムである。
(I)走査型プローブ顕微鏡により測定した算術平均粗さ(Ra)が4.5nm以上、~9.0nm以下である。
(II) マルテンス硬さが310N/mm以下である。
(III) 水接触角が75°以下である。
(IV)3次元粗さ計により測定した中心面平均粗さ(SRa)が0.010μm以上、0.040μm以下である。
以下、積層フィルムの各層に関して説明する。
【0022】
[基材フィルム層]
(1)基材層(A)
本発明の積層フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(A)は二軸配向フィルムであることが好ましく、該層に用いるポリプロピレンは、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを0.5モル%以下で共重合したポリプロピレンも用いることができる。このような共重合ポリプロピレンも本発明のポリプロピレン(以下、ポリプロピレン)に含まれるものとする。共重合成分は0.3モル%以下が好ましく、0.1モル%以下がより好ましく、共重合成分を含まない完全ホモポリプロピレンが最も好ましい。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンは、0.5モル%を超えて共重合すると、結晶性や剛性が低下し過ぎて、高温での熱収縮率が大きくなることがある。この様な樹脂をブレンドして用いても良い。
【0023】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレンの立体規則性の指標である13C-NMRで測定されるメソペンタッド分率([mmmm]%)は、98~99.5%であることが好ましい。より好ましくは、98.1%以上であり、さらに好ましくは98.2%以上である。ポリプロピレンのメソペンタッド率が小さいと、弾性率が低くなり、耐熱性が不充分となるおそれがある。99.5%が現実的な上限である。
【0024】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレンの質量平均分子量(Mw)は、180,000~500,000が好ましい。
180,000より小さいと、溶融粘度が低いため、キャスト時に安定せず、製膜性が悪くなることがある。Mwが500,000を超えると、分子量10万以下の成分の量が35質量%となり、高温での熱収縮率が悪化する。
より好ましいMwの下限は190,000、さらに好ましくは200,000であり、より好ましいMwの上限は320,000、さらに好ましくは300,000、特に好ましくは250,000である。
【0025】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレンの数平均分子量(Mn)は、20,000~200,000が好ましい。
20,000より小さいと、溶融粘度が低いため、キャスト時に安定せず、製膜性が悪くなることがある。200,000を超えると、高温での熱収縮率が悪化する。
より好ましいMnの下限は30,000、さらに好ましくは40,000、特に好ましくは50,000であり、より好ましいMnの上限は80,000、さらに好ましくは70,000、特に好ましくは60,000である。
【0026】
また、分子量分布の指標であるMw/Mnは、基材層(A)を構成するポリプロピレンでは2.8~10が好ましい。より好ましくは2.8~8、さらに好ましくは2.8~6であり、特に好ましくは2.8~5.4である。また、下限は3以上が好ましく、3.3以上がより好ましい。
なお、ポリプロピレンの分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混錬機でブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。
【0027】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレンは、Mw/Mnが2.8~5.4の範囲の場合は、メルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)が2g/10分~20g/10分であることが好ましい。
基材層(A)のポリプロピレンのMFRの下限は、3g/10分であることがより好ましく、4g/10分であることがさらに好ましく、5g/10分であることが特に好ましい。基材層(A)を構成するポリプロピレンのMFRの上限は、15g/10分であることがより好ましく、12g/10分であることがさらに好ましい。
基材層(A)を構成するポリプロピレンのMw/Mn及びMFRが、この範囲であると、高温での熱収縮率も小さく保つことができる、また、冷却ロールへの密着性も良好で製膜性に優れる。
【0028】
(2)表面層(B)
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの表面層(B)側の表面の走査型プローブ顕微鏡(AFM)による算術平均粗さ(Ra)は、3.0nm以上、5.5nm以下であることが好適である。該算術平均粗さ(Ra)とは、走査型プローブ顕微鏡(AFM)を使用し、ダイナミックモードにてX、Y方向の測定長さが共に2μmの範囲で測定し、得られた画像を補正(傾き、ラインフィット、ノイズライン除去)後、JIS-B0601(1994)に記載の算術平均粗さの定義に準じて求めたものである。
【0029】
AFMによる2μm角範囲の算術平均粗さRaは、アンチブロッキング剤や滑剤により形成された比較的大きな山や谷の部分以外の樹脂自体の凹凸を表す指標であり、無機薄膜層との密着性に関係する。算術平均粗さ(Ra)が3.0nm未満であると、表面層(B)の表面積が小さく密着力が低下する問題が生じる。算術平均粗さ(Ra)が5.5nmを超える場合、表面凹凸が大きく、無機薄膜形成時に抜けが発生し、バリア性などが不良となる。表面層(B)側表面の算術平均粗さ(Ra)は3.2nm以上がより好ましく、3.3nm以上がさらに好ましく、3.5nm以上が特に好ましく、4.0nm以上が最も好ましい。
表面層(B)側表面の算術平均粗さ(Ra)が3.0nm以上、5.5nm以下とするためには、表面層(B)を形成するポリプロピレン系樹脂組成物として、メルトフローレート(MFR)が異なる2種以上のポリプロピレン系樹脂の混合物を使用することが好ましい。この場合、のMFRの差は3g/10分以上であることが好ましく、3.5g/10分以上であることがより好ましい。
上記のように、ポリプロピレン系樹脂の混合物中の2種以上のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)の差が異なると、それぞれのポリプリピレンの結晶化速度や結晶化度が異なるため、表面に凹凸が生成しやすいものと推測している。但し、ポリプロピレンの結晶化度が高い場合や、フィルムの製造時に未延伸シートの冷却速度が遅い場合は、球晶による表面凹凸が大きくなることや、縦延伸あるいは横延伸時に延伸温度が高すぎて白化して表面凹凸が大きくなると算術平均粗さ(Ra)が5.5を超えることがあるため、注意が必要である。
【0030】
MFRが小さい方のポリプロピレン系樹脂としては、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを共重合したポリプロピレンも用いることができる。炭素数4以上のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテンなどが挙げられる。また、その他の共重合成分として極性を有するマレイン酸等を使用しても良い。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィン、その他の共重合成分は合計で8.0モル%以下であることが好ましい。8.0モル%を超えて共重合すると、フィルムが白化して外観不良となったり、粘着性が生じて製膜が困難となったりする場合がある。
また、これらの樹脂は2種以上をブレンドして用いても良い。ブレンドする場合、個々の樹脂は8.0モル%を超えて共重合されたものであっても良いが、ブレンド物はモノマー単位でプロピレン以外のモノマーは8.0モル%以下であることが好ましい。
また、MFRが大きい方のポリプロピレン系樹脂としては、上記共重合ポリプロピレンを用いることも出来るし、ホモポリプロピレン樹脂を使用することも出来る。
【0031】
また、本発明のポリプロピレン系積層フィルムの表面層(B)を構成するポリプロピレン樹脂組成物は、MFRが1.0g/10分~10.0g/10分であることが好ましい。表面層(B)を構成するポリプロピレン樹脂組成物のMFRの下限は、2.0g/10分であることがより好ましく、3.0g/10分であることがさらに好ましく、4.0g/10分であることが特に好ましい。表面層(B)を構成するポリプロピレン樹脂組成物のMFRの上限は、9.0g/10分であることがより好ましく、8.0g/10分であることがさらに好ましく、5.5g/10分であることが特に好ましい。この範囲であると製膜性も良好で、外観にも優れる。表面層(B)を構成するポリプロピレン樹脂組成物のMFRが1.0g/10分より小さいと、基材層(A)を構成するポリプロピレンのMFRが大きい場合に基材層(A)と表面層(B)の粘度差が大きくなるので、製膜の際にムラ(原反ムラ)が発生しやすくなる。表面層(B)を構成するポリプロピレン樹脂組成物のMFRが10g/10分を超えると、冷却ロールへの密着性が悪くなって、空気を巻き込み、平滑性が悪く、それが起点となる欠点が多くなるおそれがある。
【0032】
また、ポリプロピレン系積層フィルムの表面層(B)の表面の3次元粗さ計による中心面平均粗さ(SRa)が無機薄膜(D)の有無に依らず、0.010μm以上、0.040μm以下であることが好ましい。中心面平均粗さSRaとは、3次元粗さ計を使用し、触針圧20mgにて、X方向の測定長さ1mm、Y方向の送りピッチ2μmで収録ライン数99本、高さ方向倍率20000倍、カットオフ80μmの測定を行い、JIS-B0601(1994)に記載の算術平均粗さの定義に準じて求めたものである。表面層(B)の表面の中心面平均粗さ(SRa)は0.012μm以上、0.038μm以下がより好ましく、0.015μm以上、0.036μm以下がさらに好ましく、0.020μm以上、0.034μm以下が特に好ましい。表面層(B)の表面は無機薄膜(D)の有無に依らず、中心面平均粗さ(SRa)が0.010μm未満では、表面凹凸が小さく、フィルムの滑り性やフィルム同士での空気抜け時間、耐ブロッキング性が悪くなる。表面層(B)の表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.040μmを超える場合、無機薄膜層(D)を積層する際にアンチブロッキング剤による薄膜層の貫通や、凸部分側面に薄膜が形成されないことがあり、バリア性低下や密着不良となる。表面層(B)の表面の中心面平均粗さ(SRa)を規定の範囲内とする方法はいくつかあるが、アンチブロッキング剤の平均粒径や添加量で調整することが可能である。
【0033】
アンチブロッキング剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、ゼオライト等の無機系の粒子やアクリル系、ポリメタクリル系、ポリスチレン系等の有機系の粒子の中から、適宜選択して使用することができる。これらの中でも、シリカやポリメタクリル系の粒子を用いるのが特に好ましい。アンチブロッキング剤の好ましい平均粒子径は1.0~3.0μmであり、より好ましくは1.0~2.7μmである。ここでいう平均粒径の測定法は、走査電子顕微鏡で写真撮影し、イメージアナライザー装置を用いて水平方向のフェレ径を測定し、その平均値で表示したものである。
アンチブロッキング剤の添加量は、ヘイズ、動摩擦係数、中心面平均粗さ(SRa)、空気抜け時間が既定の範囲内になるように、表面層(B)、表面層(C)への添加量を調整すれば、特に制限はない。
【0034】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの表面層(B)の表面の濡れ張力が38mN/m以上であることが好ましい。濡れ張力は、フィルム表面をぬらすと判定された混合液試薬の表面張力(mN/m)の数値を表わし、印刷インキや接着剤の濡れやすさと関係するものである。濡れ張力は38mN/m以上であると、蒸着膜やコーティング膜、他部材フィルムとのラミネートに使用する接着剤との密着性が向上する。濡れ張力を38mN/m以上とするには、帯電防止剤や界面活性剤などの添加剤を使用することが通常行われているが、これらの方法では、表面抵抗値を下げる効果があるため、コロナ処理、火炎処理などの物理化学的な表面処理を行うことが好ましい。
例えば、コロナ処理では、予熱ロール、処理ロールを用い、空中で放電を行うことが好ましい。
【0035】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの表面層(B)のマルテンス硬さは無機薄膜(D)の有無に依らず、310N/mm以下であることが好ましい。マルテンス硬さは、ダイナミック超微小硬度計を使用し、曲率半径0.1μm以下の針先で表面0.1μm程押し込んだ時の樹脂の硬さを示すものである。好ましくは、305N/mm以下、さらに好ましくは300N/mm以下である。
マルテンス硬さが310N/mmを超える場合、表面が硬く、加工において樹脂表面の追従性が悪くなり、密着力が低下する。マルテンス硬さを310N/mm以下にするためには、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィン、その他の共重合成分を添加することで可能である。また、フィルムの延伸倍率を低くし、分子鎖の配向を下げることでもマルテンス硬さを下げることが可能である。なお、無機薄膜層形成時の輻射熱によりフィルムが脆化して硬くなったり、基材由来の成分がブリードして硬くなることもあるので、注意が必要である。
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの表面層(B)のマルテンス硬さは200N/mm以上であることが好ましく、より好ましくは210N/mm以上である。
【0036】
(3)表面層(C)
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの表面層(C)の表面の3次元粗さ計による中心面平均粗さ(SRa)が0.020μm以上であることが好ましい。表面層(C)の表面の中心面平均粗さ(SRa)は0.022μm以上がより好ましく、0.025μm以上がさらに好ましく、0.028μm以上が特に好ましい。表面層(C)の表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.020μm未満では、表面凹凸が小さく、フィルムの滑り性やフィルム同士での空気抜け時間、耐ブロッキング性が悪くなる。表面層(C)の表面の中心面平均粗さ(SRa)を規定の範囲内とする方法はいくつかあるが、アンチブロッキング剤の平均粒径や添加量で調整することが可能である。
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの表面層(C)の表面の3次元粗さ計による中心面平均粗さ(SRa)がは0.040μm以下であることが好ましい。
【0037】
また、ポリプロピレン系積層フィルムの表面層(C)のマルテンス硬さは270N/mm以上であることが好ましい。好ましくは、275N/mm以上、さらに好ましくは280N/mm以上、特に好ましくは285N/mm以上である。
マルテンス硬さが270N/mm未満の場合、表面が柔らかく、添加したアンチブロッキング剤が樹脂内部に沈み込み、滑り性や耐ブロッキング性が悪くなる。マルテンス硬さを270N/mm以上とするためには、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを0.5モル%以下で共重合したポリプロピレンを用いることが好ましいが、0.1モル%以下がより好ましく、共重合成分を含まない完全ホモポリプロピレンが最も好ましい。また、構成するポリプロピレンのメソペンタッド分率([mmmm]%)が98%以上とし、結晶化度を高めることでもマルテンス硬さを上げることが可能である。
ポリプロピレン系積層フィルムの表面層(C)のマルテンス硬さは350N/mm以下であることが好ましい。
【0038】
本発明で用いるポリプロピレン樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等の公知の触媒を用いて、原料のプロピレンを重合させることにより得られる。中でも、異種結合をなくすためにはチーグラー・ナッタ触媒を用い、立体規則性の高い重合が可能な触媒を用いることが好ましい。
原料のプロピレンを重合する方法としては、公知の方法を採用すればよく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶剤中で重合する方法、液状のモノマー中で重合する方法、気体のモノマーに触媒を添加し、気相状態で重合する方法、または、これらを組み合わせて重合する方法等が挙げられる。
【0039】
本発明の本発明のポリプロピレン系積層フィルムの基材層(A)および/または表面層(B)および/または表面層(C)には、添加剤やその他の樹脂を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外のポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。これらは、多段の反応器を用いて逐次重合するか、ポリプロピレン樹脂とヘンシェルミキサーでブレンドするか、事前に溶融混錬機を用いて作製したマスターペレットを所定の濃度になるようにポリプロピレンで希釈するか、予め全量を溶融混練して使用してもよい。さらに、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。
【0040】
(3)ポリプロピレン系積層フィルム
本発明のポリプロピレン系積層フィルムは、二軸配向フィルムであることが好ましく、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の3層構造であるが、表面層(B)/基材層(A)の2層構成、表面層(B)/基材層(A)/中間層(D)/表面層(C)の4層構造、それ以上の多層構造であってもよい。
なお、基材層(A)や表面層(B)、表面層(C)が複数ある場合、それぞれの層がその特性を満たすものであれば、組成は異なっていてもよい。
【0041】
本発明のポリプロピレン系積層フィルム全体の厚みは9μm以上、200m以下が好ましく、10μm以上、150μm以下がより好ましく、12μm以上、100μm以下がさらに好ましく、15μm以上、80μm以下が特に好ましい。
【0042】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムにおける表面層(B)の厚みと基材層(A)の厚みの比率としては、全表面層(B)の厚み/全基材層(A)の厚みの比率が0.01以上、0.50以下であることが好ましく、0.02以上0.40以下であることがより好ましく、0.03~0.30であることがさらに好ましく、0.04以上、0.20以下であることが特に好ましい。全表面層(B)/全基材層(A)が0.50を超えると、熱収縮率が大きくなる傾向を示す。
【0043】
また、ポリプロピレン系積層フィルムにおける表面層(C)の厚みと基材層(A)の厚みの比率としては、全表面層(C)の厚み/全基材層(A)の厚みの比率が0.01以上、0.50以下であることが好ましく、0.02以上、0.40以下であることがより好ましく、0.03以上0.30以下であることがさらに好ましく、0.04以上、0.20以下であることが特に好ましい。全表面層(C)/全基材層(A)が0.50を超えると、アンチブロッキング剤の添加量によってはヘイズが高くなり、透明性が悪化する。
【0044】
また、フィルム全体の厚みに対する全基材層(A)の厚みは50%以上、99%以下であることが好ましく、さらに好ましくは60以上、97%以下、特に好ましくは70%以上、95%以下、最も好ましくは80%以上、92%以下である。
【0045】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムのヘイズは、無機薄膜(D)の有無に依らず5%以下が好ましく、0.2以上、5.0%以下がより好ましく、0.3以上、4.5%以下がさらに好ましく、0.4以上、4.0%以下が特に好ましい。上記範囲であると透明が要求される用途で使いやすくなることがある。ヘイズは例えば延伸温度、熱固定温度が高すぎる場合、冷却ロール温度が高く未延伸(原反)シートの冷却速度が遅い場合、低分子量成分が多すぎる場合に悪くなる傾向があり、これらを調節することで上記の範囲内とすることが出来る。ヘイズの測定方法は後述する。
【0046】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの縦方向(MD方向)の引張弾性率は、1.8GPa以上、4.0GPa以下であることが好ましく、2.0GPa以上、3.7GPa以下であることがより好ましく、2.1GPa以上、3.5GPa以下であることがさらに好ましく、2.2GPa以上、3.4GPa以下が特に好ましい。横方向(TD方向)の引張弾性率は、3.8GPa以上、8.0GPa以下であることが好ましく、4.0GPa以上、7.5GPa以下であることがより好ましく、4.1GPa以上、7.0GPa以下であることがさらに好ましく、4.2GPa以上、6.5GPa以下が特に好ましい。引張弾性率が上記範囲であれば、腰が強くなり、フィルム厚みが小さくても使用できるため、フィルムの使用量を減らすことが可能となる。引張弾性率の測定方法は後述する。
【0047】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムにおいては、150℃での縦方向の熱収縮率は0.2%以上、15.0%以下であることが好ましく、0.3%以上、13.0%以下がより好ましく、0.5%以上、11.0%以下であることがさらに好ましく、0.5%以上、9.0%以下であることが特に好ましい。熱収縮率が上記範囲内であれば、耐熱性に優れたフィルムということができ、高温にさらされる可能性のある用途でも使用できる。なお、150℃熱収縮率は1.5%程度までなら、例えば低分子量成分を多くする、延伸条件、熱固定条件を調整することで可能であるが、それ以下に下げるには、オフラインでアニール処理をすること等が好ましい。
本発明のポリプロピレン系積層フィルムにおいては、150℃での横方向の熱収縮率は0.5%以上、30.0%以下であることが好ましく、0.5%以上、25.0%以下がより好ましく、0.5%以上、20.0%以下であることがさらに好ましく、0.5%以上、18.0%以下であることが特に好ましい。熱収縮率が上記範囲であれば、耐熱性に優れたフィルムということができ、高温にさらされる可能性のある用途でも使用できる。なお、150℃熱収縮率は1.5%程度までなら、例えば低分子量成分を多くする、延伸条件、熱固定条件を調整することで可能であるが、それ以下に下げるには、オフラインでアニール処理をすること等が好ましい。
【0048】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの表面層(B)及び表面層(C)における動摩擦係数は、0.60以下であることが好ましく、0.55以下であるのがより好ましく、0.50以下が特にこのましい。動摩擦係数は、0.60以下であるとロールフィルムからのフィルムの巻き出しがスムーズに行え、印刷加工しやすい。
【0049】
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの表面層(B)と表面層(C)間の空気抜け時間は、好ましくは10秒以下であり、より好ましくは8秒以下であり、更に好ましくは5秒以下である。空気抜け時間が10秒を超える場合、フィルムをロール状にした際空気が抜けるのが遅く、シワが入りやすい。
【0050】
(4)製造方法
本発明のポリプロピレン系積層フィルムは、二軸配向フィルムであることが好ましく、基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物と表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物、表面層(C)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物を別々の押出機により溶融押し出しし、ダイスから共押出しして、冷却ロールで冷却して、未延伸シートを形成し、その未延伸シートを縦方向(MD)及び横方向(TD)に延伸した後、熱固定処理することによって得ることができる。尚、表面層(B)が冷却ロールに接触するように押し出すことが好ましい。表面層(B)が冷却ロールに接触する反対の面になると、ポリプロピレン樹脂が徐冷され、結晶化度が高くなり、球晶による表面凹凸で表面層(B)の表面の算術平均粗さ(Ra)が大きくすぎることがある。
溶融押出し温度は200~280℃程度が好ましく、この温度範囲内で層を乱さずに良好な外観の積層フィルムを得るには、基材層(A)用ポリプロピレン原料と表面層(B)用ポリプロピレン原料の粘度差(MFR差)が6.0g/10分以下となるようにすることが好ましい。粘度差が6g/10分より大きいと、層が乱れて外観不良となりやすい。粘度差はより好ましくは5.5g/10分以下、さらに好ましくは5.0g/10分以下である。
【0051】
冷却ロール表面温度は25~35℃が好ましく、27~33℃がより好ましい。冷却ロール温度が35℃を超えると、ポリプロピレン樹脂の結晶化度が高くなり、形成した球晶による表面凹凸で表面層(B)の表面の算術平均粗さ(Ra)が大きくなりすぎることがある。
【0052】
縦方向(MD)の延伸倍率の下限は、好ましくは3倍であり、より好ましくは3.5倍である。上記未満であると膜厚ムラとなることがある。MDの延伸倍率の上限は好ましくは8倍であり、より好ましくは7倍である。上記を超えると引き続き行うTD延伸がしにくくなることがある。MDの延伸温度の下限は好ましくは120℃であり、より好ましくは125℃であり、さらに好ましくは130℃である。上記未満であると機械的負荷が大きくなったり、厚みムラが大きくなったり、フィルムの表面荒れが起こることがある。MDの延伸温度の上限は好ましくは160℃であり、より好ましくは155℃であり、さらに好ましくは150℃である。温度が高い方が熱収縮率の低下には好ましいが、ロールに付着し延伸できなくなることや、表面荒れが起こることがある。
【0053】
幅方向(TD)の延伸倍率の下限は好ましくは4倍であり、より好ましくは5倍であり、さらに好ましくは6倍である。上記未満であると厚みムラとなることがある。TD延伸倍率の上限は好ましくは20倍であり、より好ましくは17倍であり、さらに好ましくは15倍であり、特に好ましくは12倍である。上記を超えると熱収縮率が高くなったり、延伸時に破断することがある。TD延伸での予熱温度は速やかに延伸温度付近にフィルム温度を上げるため、好ましくは延伸温度より5~15℃高く設定する。TDの延伸温度の下限は好ましくは150℃であり、より好ましくは155℃であり、さらに好ましくは158℃、特に好ましくは160℃である。上記未満であると充分に軟化せずに破断したり、熱収縮率が高くなることがある。TD延伸温度の上限は好ましくは170℃であり、より好ましくは168℃であり、さらに好ましくは165℃である。熱収縮率を低くするためには温度は高い方が好ましいが、上記を超えると低分子成分が融解、再結晶化して配向が低下するだけでなく、表面荒れやフィルムが白化することがある。
【0054】
延伸後のフィルムは熱固定される。熱固定温度の下限は好ましくは163℃であり、より好ましくは165℃である。上記未満であると熱収縮率が高くなることがある。また、熱収縮率を低くするために長時間の処理が必要になり、生産性が劣ることがある。熱固定温度の上限は好ましくは176℃であり、より好ましくは175℃である。上記を超えると低分子成分が融解、再結晶化して表面荒れやフィルムが白化することがある。
【0055】
熱固定時には緩和(リラックス)させることが好ましい。リラックス率の下限は好ましくは2%であり、より好ましくは3%である。上記未満であると熱収縮率が高くなることがある。リラックス率の上限は好ましくは10%であり、より好ましくは8%である。上記を超えると厚みムラが大きくなることがある。
【0056】
さらに、熱収縮率を低下させるために、上記の工程で製造されたフィルムを一旦ロール状に巻き取った後、オフラインでアニールさせることもできる。
【0057】
こうして得られた二軸配向ポリプロピレン系積層フィルムに、必要に応じて、コロナ放電、プラズマ処理、火炎処理等を施した後、ワインダーで巻き取ることにより本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムロールを得ることができる。
【0058】
[無機薄膜層]
本発明のガスバリア性積層フィルムは、前記基材フィルム層の表面に無機薄膜層を有する。無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20~70質量%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20質量%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70質量%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてガスバリア性が低下する虞がある。また、Al濃度が100質量%の場合、水蒸気バリア性能は良好となるが、単一材料であることから表面が平滑な傾向があり、滑り性が悪く加工上の不具合(シワ・ニキビ等)が生じやすくなる。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
【0059】
無機薄膜層の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0060】
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0061】
本発明の積層フィルムは、無機薄膜層(D)表面の水接触角が75°以下である必要がある。好ましくは10°以上、70°以下、より好ましくは、15°以上、65°以下、さらに好ましくは20°以上、60°以下である。水接触角は無機薄膜層の膜質を表す指標である。水接触角を上記範囲にすることにより、耐水接着性や良好なバリア性能を有することができる。水接触角が10°未満である場合、膜が親水化しているため水蒸気バリア性が悪化する恐れがある。さらに、親水表面によって基材との接着が悪くなるため、層間に水が入り込みやすくなり、耐水接着性が低下する傾向がある。一方、水接触角が75°より大きいと、無機膜が均一に造膜されているとはいえず、バリア性能が悪化する。
【0062】
無機薄膜層(D)表面の水接触角の値は、無機薄膜層に用いる材料に左右される。材料に関して、無機薄膜層(D)中のアルミニウムまたは酸化アルミニウム濃度が30質量%以上であることが好ましい。より好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。酸化アルミニウム濃度が30質量%未満であると、膜が親水化し、前述の水接触角が下限以下となる。
【0063】
無機薄膜層(D)表面の水接触角の値は、基材の表面抵抗値(帯電防止剤の表出度合い)にも左右されることを本発明者らは見出した。帯電防止剤は帯電防止効果を発現させるための親水性基等の親水性部位を有しており、帯電防止剤が表面層(B)に表出(ブリードアウト)した場合に無機薄膜層(D)表面の水接触角の値は、帯電防止剤を含有しない場合よりも小さくなるかと予測されたが、帯電防止剤の表出によって逆に無機薄膜層(D)表面の水接触角の値を増大させることが分かった。本発明における基材フィルムの表面層(B)の表面の表面抵抗値は14LogΩ以上であることが好ましい。表面抵抗値が14LogΩ以上であると、無機薄膜層(D)の積層を阻害する帯電防止剤の表出が少ないため、均一に積層することができ、バリア性が向上する。この際、無機薄膜層(D)の水接触角は所定の範囲となる。表面抵抗値は15LogΩ以上であるのがより好ましく、16LogΩ以上であることが特に好ましい。表面抵抗値が14LogΩ未満の場合、表面層(B)にブリードした帯電防止剤が無機薄膜層(D)の積層を阻害し、不均一な膜となる。その場合、水接触角は下地の基材表面の影響を受けた結果、上限以上となってしまうおそれがある。表面抵抗値を14LogΩ以上とするには、帯電防止剤、防曇剤などの添加剤を極力使用しないことが挙げられる。また、基材層(A)に含まれる添加剤が表面層(B)の表面にブリードしてくることもあるので、注意が必要である。
【0064】
さらに、無機薄膜層(D)表面の水接触角の値は、表面の微細凹凸にも影響を受ける。後述の積層フィルムの無機薄膜層(D)側の走査型プローブ顕微鏡(AFM)による算術平均粗さ(Ra)を、所定の範囲内で制御することで、接触角の値を微調整することができる。
【0065】
本発明の積層フィルムは、無機薄膜層層(D)側の表面の走査型プローブ顕微鏡(AFM)による算術平均粗さ(Ra)が、4.5nm以上、9.0nm以下であることが好適である。この算術平均粗さRaは、前述の基材フィルムの表面層(B)の粗さの傾向とほぼ同傾向となるが、無機薄膜層形成後には粗さがさらに変化することを本発明者らは見出した。この理由は明確ではないが、無機薄膜積層工程時に、フィルムに熱付加がかかることで、基材樹脂の凹凸に変化が起き、さらには基材から低分子成分や帯電防止剤等の添加物が表出してきた結果、凹凸状態に影響を与えると考えている。算術平均粗さ(Ra)が上記範囲であれば、無機薄膜層と基材との接着向上はもちろんのこと、より大きな表面凹凸を形成することにより、保護層、接着剤や印刷層などをさらに積層した際の接着性も保持できる。上記算術平均粗さ(Ra)が4.5nm未満であると、表面積が小さく密着力が低下する問題が生じる。算術平均粗さ(Ra)が9.0nmを超える場合、表面凹凸が大きく不均一な表面となり、接着性が低下するおそれがある。無機薄膜層(D)側表面の算術平均粗さ(Ra)は4.7nm以上がより好ましく、4.9nm以上がさらに好ましく、5.1nm以上が特に好ましく、5.3nm以上が最も好ましい。
無機薄膜層(D)側表面の算術平均粗さ(Ra)を.4.5nm以上、9.0nm以下とするためには、基材フィルムの表面層(B)の算術平均粗さ(Ra)を前述の好適な範囲にすることに加え、基材由来の添加材の有無、無機薄膜形成工程時のフィルム冷却条件、薄膜材料・組成・膜厚等を変更することで調整できる。
[保護層]
本発明においては、さらにガスバリア性能が必要な場合や印刷等の加工が必要な場合において、前記無機薄膜層(D)の上に保護層を有することもできる。無機薄膜層は完全に密な膜ではなく、微小な欠損部分が点在している。無機薄膜層上に後述する特定の保護層用樹脂組成物を塗工して保護層を形成することにより、無機薄膜層の欠損部分に保護層用樹脂組成物中の樹脂が浸透し、結果としてガスバリア性が安定するという効果が得られる。加えて、保護層そのものにもガスバリア性を持つ材料を使用することで、積層フィルムのガスバリア性能も大きく向上することになる。ただし、保護層を設けることで工程が増えることによるコストアップや使用材料によっては環境への負荷が生じることに留意する必要がある。また、保護層により表面粗さ等の物性値が変化することにも留意する必要がある。
【0066】
保護層の付着量は0.10~1.00(g/m)とすることが好ましい。これにより、塗工において保護層を均一に制御することができるため、結果としてコートムラや欠陥の少ない膜となる。また保護層自体の凝集力が向上し、無機薄膜層-保護層間の密着性も強固になる。保護層の付着量は、好ましくは0.13(g/m)以上、より好ましくは0.16(g/m)以上、さらに好ましくは0.19(g/m)以上であり、好ましくは0.0.97(g/m)以下、より好ましくは0.94(g/m)以下、さらに好ましくは0.91(g/m)以下である。保護層の付着量が1.00(g/m)を超えると、ガスバリア性は向上するが、保護層内部の凝集力が不充分となり、また保護層の均一性も低下するため、コート外観にムラや欠陥が生じたり、ガスバリア性・接着性を充分に発現できない場合がある。一方、保護層の膜厚が0.10(g/m)未満であると、充分なガスバリア性および層間密着性が得られないおそれがある。
【0067】
本発明の積層フィルムの無機薄膜層(D)の表面に形成する保護層に用いる樹脂組成物としては、ビニルアルコール系、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。
【0068】
保護層用樹脂組成物の塗工方式は、フィルム表面に塗工して層を形成させる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常のコーティング方法を採用することができる。
【0069】
保護層を形成する際には、保護層用樹脂組成物を塗布した後、加熱乾燥することが好ましく、その際の乾燥温度は100~160℃が好ましく、より好ましくは105~155℃、さらに好ましくは110~150℃である。乾燥温度が100℃未満であると、保護層に乾燥不足が生じたり、保護層の造膜が進行せず凝集力および耐水接着性が低下し、結果としてバリア性や手切れ性が低下するおそれがある。一方、乾燥温度が160℃を超えると、フィルムに熱がかかりすぎてしまいフィルムが脆くなり突刺し強度が低下したり、収縮して加工性が悪くなったりする虞がある。特に、100℃以上好ましくは110℃以上で乾燥することにより、保護層の造膜が効果的に進行し、保護層の樹脂と無機薄膜層における接着面積がより大きくなるために耐水接着性を向上することができる。保護膜は塗布直後に90℃程度の比較的低温条件でまず溶媒を揮発させ、その後100℃以上で乾燥させると、均一な膜が得られるため、特に好ましい。また、乾燥とは別に、できるだけ低温領域で追加の熱処理を加えることも、保護層の造膜を進行させるうえで、さらに効果的である。
【0070】
[包装材料]
本発明の積層フィルムを包装材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成した積層体とすることが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、無機薄膜層上に設けられるが、基材フィルム層の外側(無機薄膜形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよいが、オレフィン系のHDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。この中でも耐久性、シール強度、価格、モノマテリアル化の観点から汎用性が高いLLDPEまたはポリプロピレン樹脂が特に好ましい。シーラント層の厚みは20~100μmが好ましく、さらに好ましくは30~90μm、より好ましくは40~80μmである。厚みが20μmより薄いと十分なシール強度が得られないことや、腰感がなく取り扱いづらい可能性がある。一方、厚みが100μmを超えると腰感が強く袋としての取り扱い性が低下する他、価格も高額になる恐れがある。
【0071】
[接着剤層]
本発明で用いられる接着剤層は、汎用的なラミネート用接着剤が使用できる。たとえば、ポリ(エステル)ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリエチレンイミン系、エチレン-(メタ)アクリル酸系、ポリ酢酸ビニル系、(変性)ポリオレフィン系、ポリブタジェン系、ワックス系、カゼイン系等を主成分とする(無)溶剤型、水性型、熱溶融型の接着剤を使用することができる。この中でも、耐熱性と、各基材の寸法変化に追随できる柔軟性を考慮すると、ウレタン系またはポリエステル系が好ましい。上記接着剤層の積層方法としては、たとえば、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、キスコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、フォンテンコート法、その他の方法で塗布することができ、十分な接着性を発現するため、乾燥後の塗工量は1~8g/m2が好ましい。より好ましくは2~7g/m、さらに好ましくは3~6g/mである。塗工量が1g/m未満であると、全面で貼り合せることが困難になり、接着力が低下する。また、8g/m以上を超えると、膜の完全な硬化に時間がかかり、未反応物が残りやすく、接着力が低下する。
【0072】
さらに、本発明の積層フィルムには、基材フィルム層とヒートシール性樹脂層との間またはその外側に、印刷層や他のプラスチック基材および/または紙基材を少なくとも1層以上積層してもよい。
【0073】
印刷層を形成する印刷インクとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥等公知の乾燥方法が使用できる。
【0074】
本発明の積層フィルムは、23℃×65%RH条件下における酸素透過度が60cc/m・d・atm以下となることが、良好なガスバリア性を発現する点で好ましい。さらに好ましくは50cc/m・d・atm以下、より好ましくは40cc/m・d・atm以下とすることができる。酸素透過度が60cc/m・d・atmを超えると、高いガスバリア性が要求される用途に対応することが難しくなる。他方、酸素透過度がいずれも0.1cc/m・d・atm未満であると、バリア性能には優れるが残留溶剤が袋の外側に透過しにくくなり、相対的に内容物への移行量が増えるおそれがあるので好ましくない。酸素透過度の好ましい下限は、0.1cc/m・d・atm以上である。
【0075】
本発明の積層体は、40℃×90%RH条件下における水蒸気透過度がいずれも4.0g/m・d以下であることが、良好なガスバリア性を発現する点で好ましい。さらに好ましくは3.5g/m・d以下、より好ましくは3.0g/m・d以下とすることができる。水蒸気透過度が4.0g/m・dを超えると、高いガスバリア性が要求される用途に対応することが難しくなる。他方、水蒸気透過度がいずれも0.1g/m未満であると、バリア性能には優れるが残留溶剤が袋の外側に透過しにくくなり、相対的に内容物への移行量が増えるおそれがあるので好ましくない。水蒸気透過度の好ましい下限は、0.1g/m・d以上である。
【0076】
本発明の積層フィルムを23℃×65%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(A)とし、23℃×80%RH条件下で測定した酸素透過度の値を(B)としたときに、下記式で表される高温高湿条件下でのバリア値悪化率が130%以下であることが好ましい。より好ましくは125%以下、さらに好ましくは120%以下である。悪化率が130%より大きいと、高湿下でバリア性能が悪化するおそれがあり、使用環境や用途が制限されるため好ましくない。

高温高湿条件でのバリア値悪化率(%)= (B/A)×100 (式1)
【0077】
本発明の積層体は、23℃×65%RH条件下におけるラミネート強度がいずれも1.5N/15mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.0N/15mm以上、さらに好ましくは2.5N/15mm以上である。ラミネート強度が1.5N/15mm未満であると、屈曲負荷やシール時の熱によって剥離が生じ、バリア性が劣化したり、内容物が漏れ出たりするおそれがある。さらに、手切れ性が悪化するおそれもある。
【実施例
【0078】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
【0079】
[基材フィルムの物性]
(1)メソペンタッド分率([mmmm]単位:%)
メソペンタッド分率の測定は、13C-NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、「Zambelliら、Macromolecules,第6巻,925頁(1973)」に記載の方法に従って算出した。13C-NMR測定は、BRUKER社製「AVANCE500」を用い、試料200mgをo-ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2(体積比)の混合液に135℃で溶解し、110℃で行った。
【0080】
(2)メルトフローレート([MFR]g/10分)
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
原料樹脂の場合はペレット(パウダー)をそのまま必要量を秤り取って用いた。
フィルムの場合は必要量切り出した後、約5mm角にカットしたサンプルを用いた。
【0081】
(3)分子量および分子量分布
原料樹脂及びフィルムの分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて単分散ポリスチレン基準により求めた。GPC測定での使用カラム、溶媒等の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMHHR-H(20)HT×3
流量:1.0ml/min
検出器:RI
測定温度:140℃
【0082】
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、それぞれ、分子量校正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量(Mi)の分子数(Ni)により次式で定義される。
数平均分子量:Mn=Σ(Ni・Mi)/ΣNi
質量平均分子量:Mw=Σ(Ni・Mi)/Σ(Ni・Mi)
分子量分布:Mw/Mn
ベースラインが明確でないときは、標準物質の溶出ピークに最も近い高分子量側の溶出ピークの高分子量側のすそ野の最も低い位置までの範囲でベースラインを設定することとした。
【0083】
(4)融解ピーク温度(℃)、融解ピーク面積(J/g)
SII製示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量10mg、昇温速度20℃/分で測定した。DSC曲線から融解吸熱ピーク温度と融解ピーク面積を求めた。
【0084】
(5)厚み(μm)
基材層(A)と表面層(B)各層の厚みは、二軸延伸積層ポリプロピレン系フィルムを変性ウレタン樹脂で固めたものの断面をミクロトームで切り出し、微分干渉顕微鏡で観察して、測定した。
【0085】
(6)引張弾性率(GPa)
JIS K 7127に準じて測定した。フィルムの長手方向および幅方向に幅10mm、長さ180mmの試料を、剃刀を用いて切り出して試料とした。23℃、65%RHの雰囲気下で12時間放置したあと、測定は23℃、65%RHの雰囲気下、チャック間距離100mm、引っ張り速度200mm/分の条件で行い、5回の測定結果の平均値を用いた。測定装置としては島津製作所社製オートグラフAG5000Aを用いた。
【0086】
(7)熱収縮率(%)
JIS Z1712に準拠して、以下の方法で測定した。フィルムを、MD方向とTD方向のそれぞれにおいて、幅20mm、長さ200mmにカットし、150℃の熱風オーブン中に吊して5分間加熱した。加熱前後の長さを測定し、加熱前の長さから加熱後の長さを引いた長さをの加熱前の長さに対する割合(%)を求め、熱収縮率を求めた。
【0087】
(8)濡れ張力(mN/m)
K 6768 : 1999に順じて、フィルムを23℃、相対湿度 50%で24時間エージング後、下記手順でフィルムのコロナ処理面を測定した。
手順1)
測定は,温度 23℃,相対湿度 50%の標準試験室雰囲気(JIS K 7100 参照)で行う。
手順2)
試験片をハンドコータ(4.1)の基板の上に置き,試験片の上に試験用混合液を数滴滴下して,直ちにワイヤバーを引いて広げる。
綿棒又はブラシを使用して試験用混合液を広げる場合は,液体は少なくとも 6cm2以上の面積に速やかに広げる。液体の量は,たまりを作らないで,薄層を形成する程度にする。
濡れ張力の判定は,試験用混合液の液膜を明るいところで観察し,3 秒後の液膜の状態で行う。液膜破れを生じないで,3秒以上,塗布されたときの状態を保っているのは,ぬれていることになる。濡れが3秒以上保つ場合は,さらに,次に表面張力の高い混合液に進み,また逆に、3秒以下で液膜が破れる場合は,次の表面張力の低い混合液に進む。
この操作を繰り返し,試験片の表面を正確に、3秒間で濡らすことができる混合液を選ぶ。
手順3)
各々の試験には,新しい綿棒を使用する。ブラシ又はワイヤバーは,残留する液体が蒸発によって組成及び表面張力を変化させるので,使用ごとにメタノールで洗浄し,乾燥させる。
手順4)
試験片の表面を3秒間でぬらすことができる混合液を選ぶ操作を少なくとも 3回行う。このようにして選ばれた混合液の表面張力をフィルムの濡れ張力として報告する。
【0088】
(9)表面抵抗値(LogΩ)
JIS K6911に準拠し、フィルムを23℃、24時間エージング後、フィルムの表面層(B)面の表面抵抗値を測定した。
【0089】
(10)空気抜け時間(秒)
図1に示すように、台盤1の上にフィルム4を載せる。次いで、フィルム押え2をフィルム4の上から載せ、固定することによって張力を与えながらフィルム4を固定する。次いで、フィルム押え2の上に、フィルム5として台盤1の上に載せたフィルム4の上面とは反対の面を下にして載せる。次いでフィルム5の上にフィルム押え8を載せ、更にネジ3を用いてフィルム押え8,2および台盤1を固定する。
次に、フィルム押え2に設けられた空洞2aと真空ポンプ6とを、フィルム押え2に設けられた細孔2cおよびパイプ7を介して接続する。そして、真空ポンプ6を駆動すると、フィルム5には、空洞2aに吸い付けられることによって張力が加わる。また、同時にフィルム4とフィルム5の重なり合った面もフィルム押え2に円周状に設けられた細孔2dを介して減圧され、フィルム4とフィルム5はその重なり合った面において、外周部から密着し始める。
密着する様子は、重なり合った面の上部から干渉縞を観察することによって容易に知ることができる。そして、フィルム4とフィルム5の重合面の外周部に干渉縞が生じてから重なり合った面の前面に干渉縞が拡がり、その動きが止まるまでの時間(秒)を測定し、この時間(秒)を空気抜け時間とする。なお、測定は2枚のフィルムを取り替えて5回繰り返し行い、その平均値を用いる。つまり時間(秒)が短いほどフィルムの巻き特性は良好となる。
【0090】
(11)ロールシワ評価
製膜した基材フィルムを幅500mm、巻長1000mで巻き取り、下記基準でロール表層にあるシワの評価を目視で行った。判定○、△を合格とした。
○:シワがない
△:弱いシワがあるが、引き出したフィルムに張力20N/m程度をかけるとシワが消える
×:強いシワがあり、引き出したフィルムに張力20N/m程度をかけてもシワが消えない
【0091】
[無機薄膜積層後の積層フィルムの物性]
(12)ヘイズ(%)
JIS K 7105に準じて23℃で測定した。ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0092】
(13)無機薄膜層の組成・膜厚
実施例、比較例で得られた積層フィルム(薄膜積層後)について、蛍光X線分析装置((株)リガク製「ZSX100e」)を用いて、予め作成した検量線により膜厚組成を測定した。なお、励起X線管の条件として50kV、70mAとした。
【0093】
(14)マルテンス硬さ(N/mm
得られた積層フィルムを約2cm角に切り取り、厚さが約1mmのガラス板上に、測定面の反対面を粘着剤にて固定した後、23℃、50%RHの雰囲気下で12時間放置して調湿した。この試料について、ダイナミック超微小硬度計(島津製作所製の「DUH-211」を用いて、ISO14577-1(2002)に準拠した方法により、下記測定条件で測定した。測定はフィルムの位置を変えて10回行い、最大と最小を除いた8点の平均値を求めた。
【0094】
<測定条件>
(設定)
・測定環境:温度23℃・相対湿度50%
・試験モード:負荷-除荷試験
・使用圧子:稜間角115度、三角錐圧子
・圧子弾性率:1.140×106N/mm 2
・ 圧 子 ポ ア ソ ン 比 : 0 . 0 7
・Cf-Ap,As補正:あり
(条件)
・試験力:0.10mN
・負荷速度:0.0050mN/sec
・負荷保持時間:5sec
・除荷保持時間:0sec
【0095】
(15)中心面平均粗さ([SRa]μm)
得られた積層フィルムの中心面平均粗さ(SRa)は、三次元粗さ計(小坂研究所社製、型番ET-30HK)を使用し、触針圧20mgにて、X方向の測定長さ1mm、送り速さ100μm/秒、Y方向の送りピッチ2μmで収録ライン数99本、高さ方向倍率20000倍、カットオフ80μmの測定を行い、JIS-B0601(1994)に記載の算術平均粗さの定義に準じて、計算した。
算術平均粗さ(SRa)はそれぞれ3回の試行を行い、その平均値で評価した。
【0096】
(16)算術平均粗さ([Ra]nm)
得られた積層フィルムの算術平均粗さ(Ra)は、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製「SPM-9700」)を用いて測定した。ダイナミックモードにてX、Y方向の測定長さが共に2μmの範囲で測定し、得られた画像を補正(傾き、ラインフィット、ノイズライン除去)後、JIS-B0601(1994)に記載の算術平均粗さの定義に準じて求めた。
【0097】
(17)無機薄膜層(D)の水接触角
実施例、比較例で得られた積層フィルム(無機薄膜積層後)について、接触角計(モデル:CAM200、販売会社:アルテックアルト株式会社、製造会社:フィランド国KSV Instruments社)で水を着滴し、その接触角を測定した。接触角は、水を着滴して5秒後の値を読み取った。解析ソフトは、FAMAS(協和界面科学株式会社)を使用した。測定の詳細条件は以下に示す。
温湿度:23℃、65%
測定方法:液適法(θ/2法)
液滴の大きさ:7.0μL
針の太さ:22G、内径0.4mm
【0098】
(18)酸素透過度の評価方法
各実施例および比較例において、基材フィルム上に無機薄膜層(D)を積層した段階で得られた各積層フィルムおよび、後述のラミネート積層体を試料とし、JIS-K7126
B法に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX-TRAN(登録商標)1/50」)を用い、温度23℃、湿度65%RHまたは80%RHの雰囲気下で酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、基材フィルム側から無機薄膜層側に酸素が透過する方向で行った。
【0099】
(19)水蒸気透過度の評価方法
各実施例および比較例において、基材フィルム上に無機薄膜層(D)を積層した段階で得られた各積層フィルムおよび後述のラミネート積層体を試料とし、JIS-K7129
B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W 3/33MG」)を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、基材フィルム側から無機薄膜層側に水蒸気が透過する方向で行った。
【0100】
[ラミネート積層体の作製]
実施例、比較例で得られた積層体の上に、ポリウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製TM569/catRT37)を80℃乾燥処理後の厚みが3μmになるよう塗布した後、未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡製P1128;厚み30μm;CPPとする)を60℃に加熱した金属ロール上でドライラミネートし、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネートガスバリア性積層体(以下「ラミネート積層体a」と称することもある)を得た。
【0101】
(20)ラミネート強度の評価方法
上記で作製したラミネート積層体を幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン社製「テンシロンUMT-II-500型」)を用いてラミネート強度を測定した。なお、ラミネート強度の測定は、引張速度を200mm/分とし、実施例および比較例で得られた各積層フィルムの積層フィルム層とヒートシール性樹脂層とを剥離角度90度で剥離させ、剥離部にスポイトで水を垂らした場合(水付け)および垂らさない場合(ドライ)の強度をそれぞれ測定した。
【0102】
(原料樹脂・基材フィルム)
下記実施例、比較例で使用したポリプロピレン系樹脂原料の詳細、基材フィルム製膜条件を表1~3に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
(実施例1、6、比較例2、3)
基材層(A)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を用いた。
また、表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を43.2重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-3を52.0重量%、表2に示すマスターバッチAを4.8重量%の割合で配合したものを使用した。このとき、表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(g/10分)は5.1であった。
表面層(C)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を93.6重量%、表2に示すマスターバッチAを6.4重量%の割合で配合したものを使用した。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、表面層(C)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、125℃縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、168℃で予熱後、155℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、165℃で熱固定した。このときの製膜条件を製膜条件aとした。
こうして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の構成の二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)の表面を、ソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。得られたフィルムの厚みは20μm(表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の厚みが1.3μm/17.7μm/1.0μm)であった。
【0107】
(実施例2)
基材層(A)の厚みを15.1μm、表面層(B)の厚みを3.9μmとなるように押出機からの樹脂の吐出量を調整した以外は実施例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
【0108】
(実施例3)
表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を45.0重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-3を52.0重量%、表2に示すマスターバッチAを3.0重量%の割合で配合したものを使用した以外は実施例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
【0109】
(実施例4)
表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を1.2重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-3を94.0重量%、表2に示すマスターバッチAを4.8重量%の割合で配合したものを使用した以外は実施例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
【0110】
(実施例5)
基材層(A)、表面層(C)で用いたポリプロピレン単独重合体PP-1を表1に示すPP-2に変更し、フィルム製膜条件を表3に示すbに変更した以外は実施例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
【0111】
(比較例1)
表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を95.2重量%、表2に示すマスターバッチAを4.8重量%の割合で配合した以外は、実施例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
【0112】
(比較例4)
表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を47.25重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-3を52.00重量%、表2に示すマスターバッチBを0.75重量%の割合で配合したものを使用し、表面層(C)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を98.4重量%、表2に示すマスターバッチBを1.60重量%の割合で配合したものを使用し、冷却ロールに表面層(C)が接触するように製膜した以外は実施例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
【0113】
(比較例5)
基材層(A)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を99.0重量%、帯電防止剤として、ステアリルジエタノールアミンステアレート(松本油脂(株)KYM-4K)を1.0重量%配合したものを使用した以外は、実施例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
【0114】
(比較例6)
フィルム製膜条件を表3のcに変更した以外は実施例1と同じ条件とし、20μmの二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
【0115】
上記実施例、比較例で使用したフィルムの原料・製造方法、物性を表4、表5に示す。
【0116】
(無機薄膜層)
以下に各実施例及び比較例で使用する無機薄膜層の作製方法を記す。なお、実施例1~6、及び比較例1、4~6で使用し、表3に示した。なお、比較例2には無機薄膜層を積層しなかった。
(無機薄膜層M-1の形成)
無機薄膜層M-1として、基材フィルム層上に酸化アルミニウムの蒸着を行った。基材フィルム層への酸化アルミニウムを蒸着する方法は、フィルムを連続式真空蒸着機の巻出し側にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させフィルムを巻き取る。この時、連続式真空蒸着機を10-4Torr以下に減圧し、冷却ドラムの下部よりアルミナ製るつぼに純度99.99%の金属アルミニウムを装填し、金属アルミニウムを加熱蒸発させ、その蒸気中に酸素を供給し酸化反応させながらフィルム上に付着堆積させ、厚さ10nmの酸化アルミニウム膜を形成した。
【0117】
(無機薄膜層M-2の形成)
無機薄膜層M-2として、基材フィルム層上に、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO(純度99.9%)とA1(純度99.9%)とを用いた。このようにして得られたフィルム(無機薄膜層/被覆層含有フィルム)における無機薄膜層(SiO/A1複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、SiO/A1(質量比)=60/40であった。
【0118】
(比較例3用のバリアコート層E)
以下に比較例3で使用したバリアコート層E用の塗工液の詳細を記す。
【0119】
[ポリビニルアルコール樹脂(A)]
精製水90質量部に、完全けん化ポリビニルアルコール樹脂(日本合成化学社製、商品名:GポリマーOKS8049Q、(けん化度99.0%以上、平均重合度450)、10質量部を加え、攪拌しながら80℃に加温し、その後約1時間攪拌させた。その後、常温になるまで冷却し、これにより固形分10%のほぼ透明なポリビニルアルコール溶液(PVA溶液)を得た。
【0120】
[バリアコート層Eに用いる塗工液]
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(バリアコート層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 35.00質量%
イソプロピルアルコール 15.00質量%
ポリビニルアルコール樹脂(A) 50.00質量%
【0121】
[フィルムへの塗工液のコート(バリアコート層Eの積層)]
上記調製した塗工液をグラビアロールコート法によって、基材フィルムのコロナ処理面上に塗布し、110℃で予備乾燥した後、140℃で本乾燥させ、バリアコート層Eを得た。乾燥後の塗布量は0.25g/m2(Dry)であった。その後、40℃2日間の後加熱処理を施した。
【0122】
以上のようにして、基材フィルムの上に無機薄膜層またはバリアコート層を備えた積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムについて、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0125】
本願発明によれば、ポリプロピレンフィルムを主体とした環境負荷が少ないほぼ単一の樹脂種から構成されたラミネート構成を形成することができるフィルムであるとともに、包装材料に求められるガスバリア性や接着性の必要性能を有する積層フィルムを提供することが可能となった。しかも、本発明の積層フィルムは加工工程が少なくかつ加工性に優れ容易に製造できるので、経済性と生産安定性の両方に優れており、均質な特性のガスバリア性フィルムを提供することができる。
【符号の説明】
【0126】
1・・台盤、2,8・・フィルム押さえ、2a・・溝孔、2c・・孔、2d・・細孔、3・・ネジ、4,5・・フィルム、6・・真空ポンプ、7・・パイプ、X・・フィルム重なり部。
図1