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特許7423790導電性シリコーンエラストマー物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】導電性シリコーンエラストマー物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20240122BHJP
   C08K 3/11 20180101ALI20240122BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240122BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240122BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240122BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240122BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240122BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240122BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240122BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240122BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240122BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20240122BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240122BHJP
   B29K 85/00 20060101ALN20240122BHJP
【FI】
B29C64/112
C08K3/11
C08K3/36
C08K3/04
C08L83/05
C08L83/07
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
B33Y40/20
B29C64/314
B29C64/336
B32B27/00 101
B29K85:00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022540605
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 CN2019130390
(87)【国際公開番号】W WO2021134433
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】516190747
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・シャンハイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES SHANGHAI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユアンチー・ユエ
(72)【発明者】
【氏名】リヤ・ジャ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516283(JP,A)
【文献】特開2003-059341(JP,A)
【文献】特開2002-329995(JP,A)
【文献】特開昭59-199756(JP,A)
【文献】特表2019-519626(JP,A)
【文献】特表2019-504918(JP,A)
【文献】国際公開第2018/234643(WO,A1)
【文献】特表2019-504919(JP,A)
【文献】国際公開第2018/206689(WO,A1)
【文献】特表2018-500192(JP,A)
【文献】国際公開第2019/232778(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110128833(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0100626(US,A1)
【文献】登録実用新案第3225297(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリント装置を使用して物体を積層造形する方法であって、前記方法は、
1)押出し3Dプリンターまたは材料噴射3Dプリンターから選択される3Dプリンターを用いて積層造形材料を基板上に塗布して、第1層を形成する工程、
2)任意に、積層造形材料の1つ以上の後続の層を前記第1層上に塗布する工程であって、前記第1層および後続の層の前記材料の組成物は、同じに保たれまたは互いに異なる、工程、および
3)前記第1層および任意の後続の層を、任意に加熱によって、架橋させて、エラストマー物品を得る工程、
を含み、
少なくとも1つの層または少なくとも1つの層の一部が、付加架橋型導電性シリコーン組成物によって形成され、前記付加架橋型導電性シリコーン組成物は、
(A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6のアルケニルラジカルを含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物A、
(B)1分子あたり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つの水素原子を含む、少なくとも1つのオルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B、
(C)白金族からの少なくとも1つの金属またはその化合物を含む少なくとも1つの触媒C、
(D)少なくとも1つの強化シリカ充填剤D、
(E)エポキシ基、(ポリ)エーテル基、および/または(ポリ)エステル基を有する化合物、アリール基を有するオルガノポリシロキサン、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1つのチキソトロピー剤;
(F)ニッケル被覆炭素、グラフェンまたはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの導電性充填剤F;
(G)任意の少なくとも1つの架橋抑制剤G、
を含み、
前記組成物中の導電性充填剤Fに対する強化シリカ充填剤Dの重量比は、0.05~3であり、
全組成物中のケイ素結合ビニル基の合計に対するケイ素結合水素原子のモル比が、0.8~5mol/molであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記強化シリカ充填剤Dが、付加架橋型導電性シリコーン組成物の総重量に基づいて、0.5~40重量%の含有量を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
付加架橋型導電性シリコーン組成物において、前記組成物の総重量に基づいて、
(A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6のアルケニルラジカルを含む少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物Aの含有量が5~95重量%であるか
(C)触媒Cの含有量が0.1~500ppmであるか、または
(E)チキソトロピー剤の含有量が0.01~30重量%であるか、
の少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記導電性充填剤Fが、ニッケル被覆炭素粒子、ニッケル被覆炭素フレーク、またはニッケル被覆炭素繊維であるが、それらの混合物ではない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記導電性充填剤Fがニッケル被覆炭素であり、この場合、前記付加架橋型導電性シリコーン組成物中の導電性充填剤Fに対する強化シリカ充填剤Dの重量比は、0.05~0.6である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記付加架橋型導電性シリコーン組成物のチキソトロピー指数が10より高い、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性充填剤Fが、平均長さが200μm未満のニッケル被覆炭素フレークである、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性充填剤Fがグラフェンであり、この場合、付加架橋型導電性シリコーン組成物中の導電性充填剤Fに対する強化シリカ充填剤Dの重量比は、0.35~1.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記付加架橋型導電性シリコーン組成物のチキソトロピー指数が3より高い、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
全組成物中のケイ素結合ビニル基の合計に対するケイ素結合水素原子のモル比が、1~3mol/molである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記強化シリカ充填剤Dが疎水性表面処理にかけられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記付加架橋型導電性シリコーン組成物が、前記シリコーン組成物の100重量%あたり、
- 少なくとも1つの前記オルガノポリシロキサン化合物Aを20~95重量%;
- 少なくとも1つの前記オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物Bを0.1~20重量%;
- 少なくとも1つの前記強化シリカ充填剤Dを3~15重量%;
- 少なくとも1つの前記チキソトロピー剤を1~7重量%;
- 前記触媒を0.1~500ppm;および
- 少なくとも1つの前記架橋抑制剤を0.01~2重量%;
- 前記導電性充填剤F、
を含み、
前記組成物中の導電性充填剤Fに対する強化充填剤Dの重量比が0.05~3である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記3Dプリンターが押出し3Dプリンターまたは材料噴射3Dプリンターである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記積層造形材料がシリコーン組成物である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
エレクトロニクス、自動車、航空宇宙、高速鉄道、通信、電力、医療、ウェアラブルインテリジェントデバイスにおける導電性要素またはその一部を製造するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の付加架橋型導電性シリコーン組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加架橋型導電性シリコーン組成物を含む積層造形材料を用いて三次元導電性エラストマー物品を積層造形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング(AM))手法は3Dプリントとも呼ばれ、さまざまな分野、特にヘルスケア、自動車、ロボット、航空宇宙などの分野で使用されている。3Dモデルはコンピューター支援設計(CAD)によって取得され、3Dプリンティングプロセスによって物理的な物体に変換される。プリンティングプロセスは、カスタマイズされた要件を満たし、より高い効率性を有する。現在、金属、ポリマー、セラミックなどのさまざまな材料をさまざまな手法でプリントできる。ただし、溶融堆積モデリング(FDM)に基づくポリマーのほとんどは、ガラス転移温度が室温を超える熱可塑性材料である。これらの材料は、押出しまたは噴射のために高温で加熱すると流動性のある液体にすることができ、その後室温で固体になる。または、一部のポリマーはUV硬化法で硬化させることができる。これらのポリマーは、ステレオリソグラフィーアピアランス(SLA)またはデジタルライ卜プロセッシング(DLP)技術によって製造できる。ただし、ポリシロキサンやポリシロキサン系材料など、ガラス転移温度が室温未満のポリマーは、室温での流動性のためにFDMでプリントすることができない。シリコーンおよびシリコーン系材料に適した3Dプリント方法は、以前の研究で見ることができる。
【0003】
国際公開第2017/114440号は、炭素繊維含有有機ケイ素組成物を硬化させることによって得られる導電性ゴムに関し、および、特にエレクトロニクス、自動車、航空宇宙、高速鉄道、通信、電力、医療およびウェアラブルインテリジェントデバイスの分野における、導電性および電磁シールド機能による導電性要素としての導電性ゴムの使用に関する。
【0004】
携帯電話、ハンドヘルド電子機器(Personal Digital Assistant、PDA)、PC(Personal Computer、PC)カードなどの小型化に伴い、従来の導電性ゴムは、実際の生産工程や製造コストの制約から、小型で複雑な要求のシールドケース構造に対応することができず、この要求に応えるべく、導電性ゴムの分散技術を形成する。
【0005】
導電性シリコンゴムと3Dプリント技術を組み合わせることで、より多くの機能を実現し、より幅広い用途を供給するだろう。
【0006】
一般的な解決策が提案されている。国際公開第2017/089496号、国際公開第2017/081028号、国際公開第2017/121733号は、印刷される材料のチキソトロピー特性に適合するプリントヘッドの技術的パラメーターにより、満足なプリント結果を得ることが可能であることを教示している。そして、いずれもエポキシ基官能化合物、(ポリ)エーテル基官能化合物、(ポリ)エステル基官能化合物から選ばれる1種以上の化合物をチキソトロピー剤として用い、チキソトロピー特性を調整および向上させている。これには、抑制剤、熱安定剤、溶剤、可塑剤、着色顔料、増感剤、光開始剤、接着促進剤、充填剤、導電性添加剤なども含まれる。国際公開第2017/144461号には、プリント層ごとに加熱して部分的に硬化した層を介してシリコーン組成物の形状を維持することができるプロセスが開示されている。導電性を有するシリコーン組成物の場合、金属充填剤の導入により、3Dプリント中に良好な形状を維持するために、より複雑な状況が発生する。導電性充填剤の例としては、金属粒子、金属酸化物粒子、金属被覆金属粒子(銀めっきニッケルなど)、金属被覆非金属コア粒子(銀被覆のタルク、雲母または石英など)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。金属粒子は、粉末、フレークまたはフィラメント、およびそれらの混合物または誘導体の形態であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの文献はすべて、積層造形材料、特にシリコーン組成物を含む材料のチキソトロピー特性に対する導電性充填剤および特定の強化充填剤の影響を明らかにしていない。プリント中のくずれまたは変形を回避し、プリント物品に必要な導電性と良好な機械的性能を与えるために重要である積層造形材料のチキソトロピー特性を改善する新しい方法を開発する必要性が依然として存在する。
【0008】
本発明の目的は、導電性三次元エラストマー物品の時間効率のよい製造を可能にする方法、特に3Dプリントまたは積層造形法を提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、硬化が完了する前における室温での層のくずれまたは変形の傾向が低減された、またはまったくない、導電性エラストマー物品の積層造形方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の目的は、電子機器、自動車、航空宇宙、高速鉄道、通信、電力、医療、ウェアラブルインテリジェントデバイスにおける導電性要素またはその一部を時間効率よく製造するための特別な付加架橋型導電性シリコーン組成物の使用を提供することである。このような特定の付加架橋型導電性シリコーン組成物を積層造形プロセスに用いることにより得られる利点としては、良好な加工性、調節可能な機械的特性、良好な安定性などが含まれる。
【0011】
また、本発明の目的は、優れた製造精度と改善された導電率を有する3Dエラストマー部品を得ることであり、3Dエラストマー部品はより広い範囲(例えば、0.001から1×1010Ω・cmの範囲の体積抵抗率)の導電率に関して調節することができる。
【0012】
また、本発明の目的は、より良好な機械的特性と、要求に応じて調整可能な導電率を備えた3Dエラストマー部品を得ることである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一態様において、本発明は、3Dプリント装置を使用して物体を積層造形する方法に関し、前記方法は、
1)押出し3Dプリンターまたは材料噴射3Dプリンターから選択される3Dプリンターを用いて積層造形材料を基板上に塗布して、第1層を形成する工程、
2)任意に、前記積層造形材料の1つ以上の後続の層を前記第1層上に塗布する工程であって、前記第1層および後続の層の前記材料の組成物は、同じに保たれまたは互いに異なる、工程、および
3)前記第1層および任意の後続の層を、任意に加熱によって、架橋させて、エラストマー物品を得る工程、
を含み、
少なくとも1つの層または少なくとも1つの層の一部が、付加架橋型導電性シリコーン組成物によって形成され、前記付加架橋型導電性シリコーン組成物は、
(A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6のアルケニルラジカルを含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物A、
(B)1分子あたり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つの水素原子を含む、少なくとも1つのオルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B、
(C)白金族からの少なくとも1つの金属またはその化合物を含む少なくとも1つの触媒C、
(D)少なくとも1つの強化シリカ充填剤D、
(E)エポキシ基、(ポリ)エーテル基、および/または(ポリ)エステル基を有する化合物、アリール基を有するオルガノポリシロキサン、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1つのチキソトロピー剤;
(F)ニッケル被覆炭素、好ましくはニッケル被覆グラファイト、グラフェンまたはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの導電性充填剤F;
(G)任意の少なくとも1つの架橋抑制剤G、
を含むことを特徴とする、方法。
【0014】
別の態様では、本発明は、本発明の方法によって製造されたエラストマー物品に関する。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、エレクトロニクス、自動車、航空宇宙、高速鉄道、通信、電子機器、電力、医療、ウェアラブルインテリジェントデバイスにおける導電性要素またはその一部を製造するための、以下に開示する付加架橋型導電性シリコーン組成物の使用に関する。
【0016】
本発明の付加反応により架橋可能な付加架橋型導電性シリコーン組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出したのは、本発明者らの名誉である。このような導電性シリコーン組成物は、3Dプリンター、特にシリコーン組成物をプリント材料として含む積層造形材料を使用する積層造形プロセスに適した十分なチキソトロピー特性を有する。また、このような導電性シリコーン組成物は、完全に硬化する前に室温で物品のくずれまたは変形を低減または回避するのに有益であり、硬化後に必要に応じて調整可能な電気伝導率を有する。
【0017】
導電性充填剤は特定のチキソトロピー特性をもたらし、さまざまな導電性充填剤は、積層造形材料、特にシリコーン組成物を含むまたはシリコーン組成物からなる積層造形材料のチキソトロピーにさまざまなレベルの影響を与える。さらに、強化シリカ充填剤は、通常、3Dプリントの導電性とチキソトロピーの良好なバランスを得るためにも必要であり、硬化後の良好な機械的特性のために重要である。全組成物の0.5重量%から40重量%、好ましくは2重量%から20重量%、より好ましくは3重量%から15重量%の範囲の量で強化シリカを使用することが特に好ましいことが判明した。チキソトロピー剤とシリカの組み合わせは、通常、3Dプリンティングプロセス用の材料のチキソトロピー状態を達成するためにも必要である。異なるシステムでは、導電性充填剤の異なる構造と表面特性により、チキソトロピー剤とシリカとのネットワークが異なり、異なるチキソトロピー性能を示す。
【0018】
驚くべきことに、付加架橋型シリコーン組成物に対して、強化シリカ充填剤と、ニッケル被覆炭素およびグラフェンから選択される導電性充填剤とを含む特定の組み合わせを添加することによって、より良い結果が得られることがわかった。チキソトロピーおよび調節可能な導電率のさらなる改善は、本発明の特定の範囲内、すなわち、0.0001から100、好ましくは0.001から50、より好ましくは0.01~10、最も好ましくは0.05~3である導電性充填剤に対する強化シリカ充填剤の重量比を調整することによって達成され得ることも見出された。
【0019】
「チキソトロピー特性」という用語は、非ニュートン体の低速せん断速度での粘度と高速せん断速度での粘度との比として一般に使用され、開示されている粘度指数の事実だけを指すわけではない。それはせん断速度を下げたときの粘度の上昇速度にも関係する。
【0020】
したがって、パラメーター「チキソトロピー指数」は、チキソトロピー特性を評価するためにここで導入され、非ニュートン体の低せん断速度での粘度と高せん断速度での粘度との比として表される。このパラメーターの測定については、本出願の実験部分で後述する。
【0021】
第1の態様では、本発明は、エラストマー物品を積層造形する方法である。本開示では、積層造形材料に特別な制限は原則的になく、それは主に、ポリマー材料、特に硬化性シリコーン組成物からなり得る。3Dプリントの技術分野の当業者は、積層造形材料としてどの材料を使用できるかをよく知っている。好ましくは、本発明において、積層造形プロセスは、特に、シリコーン組成物を積層造形材料として使用する方法を指す。積層造形プロセスに適したシリコーン組成物は、それ自体周知であり、原則として、シロキサン単位ベースの主鎖を有し、既に広く使用されている液体シリコーンゴム(LSR)などのシリコーンエラストマー物品の製造に使用できる任意の硬化性シリコーン組成物であり得る。
【0022】
適当なシリコーン組成物は、縮合または付加架橋反応によって化学的に硬化することができる。例示的な一実施形態では、そのような硬化性シリコーン組成物は、通常、
(A)式(S-1)および任意の式(S-2)で表されるシロキサン単位を含有するポリオルガノシロキサンポリマー、
S a’S b’SiO[4-(a’+b’)]/2 (S-1)
ここで、
Sは、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルケニル基、およびアルキニル基のような反応性基であり、
各ZSは、同じであっても異なっていてもよく、好ましくはアルキル基およびアリール基から選択される、例えば1~30個の炭素原子を有する一価の非反応性炭化水素ラジカルを表し、
a’は1、2、または3、b’は0、1、または2で、a’+b’の合計は1、2、または3であり;
S1 c’SiO(4-c’)/2 (S-2)
ここで:
- c’=0、1、2または3、
- 各ZS1は、同一であっても異なっていてもよく、好ましくはアルキル基およびアリール基から選択される、例えば1~30個の炭素原子を有する一価の非反応性炭化水素ラジカルを表し、
(B)少なくとも2つのケイ素結合反応性基を有する架橋型有機ケイ素化合物;
(C)成分(A)と成分(B)との反応を促進することができる触媒、
を備える。
【0023】
第1工程では、積層造形材料、好ましくはシリコーン組成物の第1層が塗布され、すなわち、層が基板上に形成されるように基板上にプリントされる。基板は限定されず、任意の基板であってもよい。基板は、製造プロセス中に3D物品を支持することができ、例えば3Dプリンターの基板プレートである。基板は剛性または柔軟性があり得、また、連続的または不連続的であり得る。基板自体は、基板が剛性を有する必要がないように、例えば基板テーブルまたはプレートによって支持されてもよい。また、それは3D物品から除去することもできる。あるいは、基板は、物理的または化学的に3D物品に結合することができる。一実施形態では、基板はシリコーンであってもよい。
【0024】
任意の第2工程では、押出し3Dプリンターまたは材料3D噴射プリンターを用いて積層造形材料、好ましくはシリコーン組成物を第1層上に塗布することによって、1つ以上の後続の層が形成される。押出し3Dプリンターおよび材料3D噴射プリンターは、工程1)で利用される押出し3Dプリンターまたは材料3D噴射プリンターと同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
第1層および1つ以上の後続の層を形成する積層造形材料の組成物は、互いに同じに保ってもよく、または互いに異なっていてもよい。
【0026】
積層造形によって形成される層は、任意の形状および任意の寸法を有することができる。各層は、連続または不連続にすることができる。
【0027】
基板上に第1層および任意の1つ以上の後続の層を塗布する際、本発明において、以下で説明するように、少なくとも1つの層または少なくとも1つの層の一部が付加架橋型導電性シリコーン組成物によって形成されることが重要である。本発明の一実施形態では、全ての層が付加架橋型導電性シリコーン組成物により形成される。また、用途によっては、本発明の付加架橋型導電性シリコーン組成物により形成される層が1層で十分な場合もある。
【0028】
第3工程では、これらの層を、任意に加熱することによって、完全に架橋させることにより、エラストマー物品が得られる。架橋は周囲温度で完了できる。通常、周囲温度は20~25℃の温度を指す。
【0029】
層の架橋または硬化を促進するために、加熱を使用することができる。プリント後の熱硬化は、完全な硬化または架橋をより速く達成するために、50~200℃、好ましくは60~100℃の温度で行うことができる。
【0030】
本明細書において、「層」という用語は、方法の任意の段階における層、すなわち、第1層または前の層または後続の層に関し得る。各層は、厚さや幅を含めさまざまな寸法にすることができる。各層の厚さは、均一であっても異なっていてもよい。平均厚さは、プリント直後の層の厚さに関する。
【0031】
一実施形態では、各層は独立して、0.1~5000μm、好ましくは1~2000μm、より好ましくは10~1000μm、最も好ましくは50~800μmの厚さを有することができる。
【0032】
特定の実施形態では、少なくとも10層、好ましくは20層のプリントの前の、工程1)から2)の間または工程1)と2)の間に、熱または放射などのエネルギー源は適用されない。
【0033】
3Dプリントの開示
3Dプリントは、一般に、コンピューターで生成された、例えばコンピューター支援設計(CAD)のデータソースから物理物体を製造するために使用される多くの関連技術に関連付けられている。
【0034】
この開示には、一般に、ASTM名称F2792-12a、「このASTM規格の下での積層造形技術の標準用語(Standard Terminology for Additive Manufacturing Technologies Under this ASTM standard)」が取り込まれる。
「3Dプリンター」は「3Dプリントに使用される機械」と定義され、「3Dプリント」は「プリントヘッド、ノズル、または別のプリンター技術を使用した材料の堆積による物体の製造」と定義される。
【0035】
「積層造形技術(アディティブ・マニュファクチャリング(AM))」は、「サブトラクティブマニュファクチャリング方法論とは対照的に、材料を結合して3Dモデルデータから物体を作製するプロセスであり、通常は層を重ねて製造するプロセス。3Dプリントに関連し、含まれる同義語には、アディティブファブリケーション(additive fabrication)、アディティブプロセス(additive process)、アディティブテクニック(additive technique)、アディティブレイヤーマニュファクチャリング(additive layer manufacturing)、レイヤーマニュファクチャリング(layer manufacturing)、フリーフォームファブリケーション(freeform fabrication)を含む。」と定義される。積層造形(AM)は、ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping(RP))とも呼ばれる。本明細書で使用される「3Dプリント(プリンティング)」は、一般に「積層造形」と交換可能であり、その逆も同様である。
【0036】
「プリント(プリンティング)」は、プリントヘッド、ノズル、または別のプリンター技術を使用して、材料、ここではシリコーン組成物を堆積することとして定義される。
【0037】
本開示において、「3Dまたは3次元の物品、物体または部品」は、上で開示した積層造形または3Dプリントによって得られる物品、物体または部品を意味する。
【0038】
一般に、すべての3Dプリンティングプロセスには共通の開始点がある。開始点とは、物体を記述するコンピューター生成データソースまたはプログラムである。コンピューター生成データソースまたはプログラムは、実際の物体または仮想の物体に基づくことができる。たとえば、3Dスキャナを使用して実際の物体をスキャンし、スキャンデータを使用して、コンピューター生成データソースまたはプログラムを作製することができる。あるいは、コンピューター生成データソースまたはプログラムをゼロから設計することもできる。
【0039】
コンピューター生成データソースまたはプログラムは、通常、標準テッセレーション言語(standard tessellation language(STL))ファイル形式に変換される。ただし、他のファイル形式も、または追加で使用できる。通常、ファイルは3Dプリンティングソフトウェアに読み込まれ、3Dプリンティングソフトウェアは、ファイルと任意のユーザー入力を取得して、それを数百、数千、さらには数百万の「スライス」に分割する。3Dプリンティングソフトウェアは通常、機械命令を出力する。これは、Gコードの形式である場合があり、3Dプリンターによって読み取られて、各スライスが作製される。機械命令は3Dプリンターに転送され、3Dプリンターは、機械命令の形式のこのスライス情報に基づいて、1層ずつ物体を構築する。これらのスライスの厚さは異なり得る。
【0040】
押出し3Dプリンターは、積層造形プロセス中にノズル、シリンジ、またはオリフィスから材料が押し出される3Dプリンターである。材料の押出しは、一般に、ノズル、シリンジ、またはオリフィスを通して材料を押出し、物体の1つの断面をプリントすることによって機能する。これは、後続の各層に対して繰り返してもよい。押し出された材料は、材料の硬化中にその下の層に結合する。
【0041】
好ましい一実施形態では、三次元エラストマー物品を積層造形する方法は、押出し3Dプリンターを使用する。シリコーン組成物のような積層造形材料はノズルを通して押し出される。ノズルは、シリコーン組成物の分配を促進するために加熱されてもよい。
【0042】
ノズルの平均直径が層の厚さを定義する。一実施形態では、層の直径は、5から5000μm、好ましくは10から2000μm、最も好ましくは50から1000μmである。
【0043】
ノズルと基板の間の距離は、良好な形状を確保するための重要なパラメーターである。好ましくは、それはノズル平均直径の60から150%、より好ましくは80から120%である。
【0044】
ノズルを通して分配されるシリコーン組成物は、カートリッジ状のシステムから供給されてもよい。カートリッジは、関連付けられた流体リザーバまたは複数の流体リザーバを有するノズルまたは複数のノズルを含むことができる。スタティックミキサーと1つだけのノズルを有する同軸2カートリッジシステムを使用することもできる。圧力は、分配される流体、関連するノズルの平均直径、およびプリント速度に適応する。
【0045】
ノズル押出し中に発生する高せん断速度のために、シリコーン組成物の粘度は大幅に低下され、それにより細かい層のプリントが可能になる。
【0046】
カートリッジ圧力は、1から20バール、好ましくは2から10バール、最も好ましくは2.5から8バールまで変化し得る。そのような圧力に耐えるために、アルミニウムカートリッジを使用する適合した機器が使用されるだろう。
【0047】
ノズルおよび/またはビルドプラットフォームは、X-Y(水平面)内を移動して物体の断面を完成させ、1つの層が完成するとZ軸(垂直)平面内を移動する。ノズルのXYZ移動精度は10~300μmと高い。各層がX、Y作業面でプリントされた後、ノズルは、次の層がX、Y作業面で塗布できるように十分な距離だけZ方向に移される。このようにして、3D物体を、底から上方に向かって一度に1層ずつ構築する。
【0048】
前に開示したように、ノズルと先の層との間の距離は、良好な形状を確保するための重要なパラメーターである。好ましくは、ノズル平均直径の60から150%、好ましくは80から120%である。
【0049】
有利には、プリント速度は、良好な精度と製造速度との間の最良の妥協点を得るために、0.1~100mm/秒、好ましくは1~50mm/秒である。
【0050】
「材料噴射(Material jetting)」は、「ビルド材料の液滴が選択的に堆積される積層造形プロセス」と定義される。その材料は、プリンティングヘッドを使用して、個々の液滴の形で不連続に、作業面の目的の位置に塗布される(噴射)。プリンティングヘッド配列を有する3D構造の段階的製造のための3D装置および方法は、少なくとも1つ、好ましくは2~200個のプリンティングヘッドノズルを備え、複数の材料の適切な部位選択的塗布を可能にする。インクジェットプリンティングによる材料の塗布は、材料の粘度に特定の要件を課す。
【0051】
材料3D噴射プリンターでは、1つ以上のリザーバーが圧力を受け、計量ラインを介して計量ノズルに接続される。リザーバーの上流または下流に、多成分付加架橋型シリコーン組成物を均一に混合し、および/または多成分付加架橋型シリコーン組成物が溶解ガスを排出することを可能にする装置があってもよい。異なる付加架橋型シリコーン組成物からエラストマー物品を構築するために、またはより複雑な構造の場合には、複合部品をシリコーンエラストマーおよび他のプラスチックから製造することを可能にするために、互いに独立して動作する1つ以上の噴射装置が存在してもよい。
【0052】
噴射計量手順中に計量バルブで発生する高せん断速度のために、そのようなシリコーン組成物の粘度は大幅に低くされ、したがって、非常に細かい微小滴の噴射計量が可能になる。微小滴が基板に堆積した後、せん断速度が急激に低下するため、粘度が再び上昇する。このため、堆積した液滴は再び急速に高粘度になり、3次元構造の正確な形状の構築を可能にする。
【0053】
個々の計量ノズルをx、y、およびz方向に正確に配置して、基板上に、または、その後の成形物品の形成の過程で、既に配置されて任意に既に架橋されているシリコーンゴム組成物上に、シリコーンゴムの滴を正確に標的化して堆積させることが可能である。
【0054】
他の積層造形法とは対照的に、各層がプリントされた後の硬化を、構造のくずれを避けるために開始するため、照射環境または加熱環境で本発明の方法を実行する必要はない。したがって、照射および加熱操作は任意であり得る。
【0055】
通常、3Dプリンターはディスペンサー、例えば、特定の硬化性シリコーン組成物をプリントするためのノズルまたはプリントヘッドを利用する。任意に、ディスペンサーは、シリコーン組成物を分配する前、分配中、および分配後に加熱することができる。各ディスペンサーが独立して選択された特性を有する1つ以上のディスペンサーを利用することができる。
【0056】
一実施形態では、この方法はサポート材料を使用して物体を構築することができる。物体がサポート材料またはラフトを使用してプリントされている場合、プリントプロセスが完了した後、それらは通常、完成した物体を残して取り除かれる。
【0057】
後処理オプション
任意に、結果として得られる物品は、異なる後処理体制を施してもよい。一実施形態では、この方法は、三次元シリコーン物品を加熱する工程をさらに含む。加熱することで硬化を早めることができる。別の実施形態では、この方法は、三次元シリコーン物品をさらに照射する工程をさらに含む。硬化を促進するために、さらなる照射を使用することができる。別の実施形態では、この方法は、三次元シリコーン物品を加熱する工程と照射する工程の両方をさらに含む。
【0058】
任意に後処理工程により、プリント物品の表面品質を大幅に向上させることができる。やすりがけ工程は、モデルの目に見えて異なる層を削減または除去する一般的な方法である。エラストマー物品の表面に熱またはUV硬化性RTVまたはLSRシリコーン組成物をスプレーまたはコーティングして、適切な滑らかな表面外観を得ることができる。
【0059】
レーザーによる表面処理も可能である。
【0060】
医療用途の場合、最終エラストマー物品の滅菌は、対象物を>100℃でまたはUVオーブンで加熱することによって得ることができる。
【0061】
付加架橋型導電性シリコーン組成物
個々の層の付加架橋型導電性シリコーン組成物は、互いに同一であっても異なっていてもよい。本発明方法において、少なくとも1つの層またはその一部を形成する付加架橋型導電性シリコーン組成物は、上記の(A)~(G)成分を含む本発明のシリコーン組成物である。一実施形態では、塗布されたすべての層は、本発明の付加架橋型導電性シリコーン組成物によって形成される。
【0062】
オルガノポリシロキサン化合物A
オルガノポリシロキサン化合物Aは、1分子当たり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6のアルケニル基を含み、アルケニル基はポリシロキサンの主鎖の任意の位置、例えば分子鎖の末端若しくは中間に、または両方に存在する。
好ましくは、オルガノポリシロキサン化合物Aは、
(I)式(I-1)の少なくとも2つのシロキシ単位
1 abSiO[4-(a+b)]/2 (I-1)
ここで、
各R1は同一でも異なっていてもよく、直鎖または分岐C2-12、好ましくはC2-6アルケニル基、最も好ましくはビニルまたはアリルを表し、
各Zは、同一または異なっていてもよく、1~30個、好ましくは1~12個の炭素原子を有する一価のヒドロカルビル基を表し、好ましくは、任意に少なくとも1個のハロゲン原子で置換されていているアルキル基を含むC1-8のアルキル基から選択され、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルによって形成される群から選択され、
aは1または2であり、bは0、1または2であり、aとbの合計総重量は1、2または3であり、
および、任意で、(II)式(I-2)の他のシロキシ単位
【化1】
ここで
Zは上記の意味を有し、cは0、1、2または3である、
を含む。
【0063】
好ましい実施形態では、Zは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、フェニル、キシリルおよびトリルなどから選択することができる。好ましくは、Z基の少なくとも60モル%(または数で表される)がメチルである。
【0064】
好ましい実施形態では、式(I.1)において、a=1およびa+b=2または3であり、式(I.2)において、c=2または3である。
【0065】
これらのオルガノポリシロキサン化合物Aは、直鎖、分岐または環状の構造を有していてもよい。
【0066】
それらが直鎖ポリマーである場合、それらは本質的に、シロキシル単位”D”およびシロキシル単位”M”から形成され、シロキシル単位”D”は、シロキシル単位R2SiO2/2、RZSiO2/2およびZ2SiO2/2によって形成される群から選択され、およびシロキシル単位”M”は、シロキシル単位R3SiO1/2、RZ2SiO1/2、R2ZSiO1/2およびZ3SiO1/2によって形成される群から選択される。記号RおよびZは、上記の通りである。
【0067】
末端単位”M”の例として、トリメチルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基またはジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
【0068】
単位”D”の例として、ジメチルシロキシ基、メチルビニルシロキシ基、メチルブテニルシロキシ基、メチルヘキセニルシロキシ基、メチルデセニルシロキシ基またはメチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0069】
本発明の目的を損なわない範囲で分子鎖中にさらに分岐シロキシ単位を含んでいてもよいが、その割合はオルガノポリシロキサン化合物A中10%を超えないことが好ましく、5%を超えないことがより好ましい。
【0070】
オルガノポリシロキサン化合物Aは、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。一実施形態において、それらは、好ましくは、25℃で約1から10000000mPa・s、一般に25℃で約200から1000000mPa・sの動的粘度を有する。また、粘度の高いガムにすることもできる。本出願において、すべての粘度は動的粘度値に関連し、例えば、ブルックフィールド粘度計を20℃で使用して既知の方法で測定することができる。粘度が高すぎてブルックフィールド機器で測定できない場合は、ウベローデ粘度計で測定できる。
【0071】
オルガノポリシロキサン化合物Aは、オルガノポリシロキサン化合物Aの総重量に基づいて、0.0001~40重量%、好ましくは0.001~35重量%、より好ましくは0.01~30重量%のアルケニル含有量を有することができる。
【0072】
それらが環状オルガノポリシロキサンである場合、それらは、ジアルキルシロキシ、アルキルビニルシロキシまたはアルキルシロキシタイプであり得る、次の式:R2SiO2/2、Z2SiO2/2またはRZSiO2/2を有するシロキシル単位”D”から形成される。そのようなシロキシル単位の例は、既に上で言及されている。前記環状オルガノポリシロキサン化合物Aは、限定されないが、モノマー、オリゴマーまたはポリマーである。一実施形態では、それらが25℃で約1~500000mPa・sの粘度を有することが好ましい。
【0073】
オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B
好ましい実施形態によれば、オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、1分子当たり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含有するオルガノポリシロキサンであり、オルガノポリシロキサン化合物Aと架橋反応する。
【0074】
本発明によれば、オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B中のSiH基は、ポリシロキサンの主鎖の任意の位置、例えば、分子鎖の末端若しくは中間またはその両方にあってもよい。
【0075】
有利には、オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、下記を含むオルガノポリシロキサンである:
(i)以下の式
d2 eSiO[4-(d+e)]/2 (II-1)
を有する少なくとも2つのシロキシル単位、好ましくは少なくとも3つのシロキシル単位:
ここで、
各R2は、同一または異なり、1~30個の炭素原子を含む一価の直鎖、分岐または環状アルキル基を表し、好ましくは、任意に少なくとも1個のハロゲン原子で置換されているアルキル基を含むC1~8アルキル基から、およびアリール基、特にC6-20のアリール基から選択され、並びに、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルにより形成される群より選択され、および、
(ii)任意に、以下の式
2 fSiO(4-f)/2 (II-2)
を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
ここで
2は上記の意味を有し、fは0、1、2または3である。
【0076】
より好ましい実施形態では、R2は、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、フェニル、キシリルおよびトリルから選択することができる。
【0077】
オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、式(II-1)のシロキシル単位のみから形成されてもよいし、式(II-2)の単位を含んでもよい。それは直鎖、分岐または環状の構造を有していてもよい。
【0078】
式(II-1)のシロキシル単位の例は、特に次の単位である:H(CH32SiO1/2、およびHCH3SiO2/2
【0079】
それらが直鎖ポリマーである場合、それらは本質的に次のものから形成される:
- 次の式R2 2SiO2/2またはR2HSiO2/2を有する単位から選択されるシロキシル単位”D”、および
- 次の式R2 3SiO1/2またはR2 2HSiO1/2を有する単位から選択されシロキシル単位”M”
【0080】
これらの直鎖オルガノポリシロキサンは、25℃で約1~1000000mPa・s、一般に25℃で約1~50000mPa・s、または、25℃で約5~10000もしくは5000mPa・sの動的粘度を有する油であり得る。
【0081】
オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物Bの例としては、直鎖状または環状の化合物、例えば、水素化ジメチルシロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシロキシ末端基を有する(ジメチル)(ハイドロジェンメチル)ポリシロキサン単位を有するコポリマー、水素化ジメチルシロキシ末端基を有する(ジメチル)(ハイドロジェンメチル)ポリシロキサン単位を有するコポリマー、トリメチルシロキシ末端基を有する水素化メチルポリシロキサン、および環状水素化メチルポリシロキサンが挙げられる。
【0082】
オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、少なくとも2つの異なる単位を含む三次元網目状のオルガノハイドロジェンシロキサン樹脂であってもよく、前記少なくとも2つの異なる単位は、
- 式R’3SiO1/2の単位M、
- 式R’2SiO2/2の単位D、
- 式R’SiO3/2の単位Tおよび
- 式SiO4/2の単位Q、
を含むまたはからなる群より選択され、ここでR’は水素原子または1~20個の炭素原子を有する一価のヒドロカルボニル基を表し、
ただし、これらのシロキサン単位の少なくとも1つはシロキサン単位TまたはQ、好ましくはQであり、シロキサン単位M、DおよびTの少なくとも1つは水素原子を含む。
【0083】
好ましい一実施形態では、前記オルガノハイドロジェンシロキサン樹脂中のQ単位に対するM単位のモル比は、0.5~8mol/mol、好ましくは0.5~6mol/mol、より好ましくは0.8~5mol/molである。
【0084】
別の例示的な実施形態では、SiHの質量含有量は、成分Bの総重量に基づいて、0.001重量%から70重量%の間、好ましくは0.5重量%から60重量%の間、より好ましくは1.0重量%から50重量%の間である。
【0085】
触媒C
触媒Cは白金族からの少なくとも1つの金属またはその化合物を含む。白金金属触媒は、有機ケイ素分野でよく知られており、市販されている。白金に加えて、白金族金属は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、およびイリジウムをさらに含むことができる。触媒は、以下の成分から構成され得る:白金族金属もしくはその化合物、またはそれらの組み合わせ。このような触媒の例としては、白金ブラック、塩化白金酸、二塩化白金、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、白金とロジウムの化合物が使用される。通常、好ましい触媒は白金である。
【0086】
白金のいくつかの適当な錯体および化合物は、例えば、米国特許第3159601号明細書、米国特許第3159602号明細書、米国特許第3220972号明細書、欧州特許出願公開第0057459号明細書、欧州特許出願公開第0188978号明細書および欧州特許出願公開第0190530号明細書に開示されており、特に、例えば、米国特許第3419593号明細書、米国特許第3715334号明細書、米国特許第3377432号明細書および米国特許第3814730号明細書に記載されるような、白金およびビニルオルガノシロキサンの錯体が使用できる。これらの文献はすべて、参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
【0087】
白金触媒は、好ましくは、室温で十分に迅速な架橋を可能にするために、触媒的に十分な量で使用されるべきである。典型的には、付加架橋型導電性シリコーン組成物の総重量に対して、Pt原子の量に基づいて、1~10000重量ppm、好ましくは1~100重量ppm、より好ましくは1~50重量ppmの触媒が使用される。
【0088】
強化シリカ充填剤D
十分に高い機械的強度を可能にするために、付加架橋型導電性シリコーン組成物に、好ましくは少なくとも部分的に表面処理された強化充填剤Dとしてシリカ微粒子を含めることが有利である。沈降シリカ、ヒュームドシリカおよびそれらの混合物を使用することが可能である。これらの活性補強充填剤の比表面積は、BET法によって測定して、少なくとも50m2/g、好ましくは100~400m2/gの範囲にあるべきである。この種の活性補強充填剤は、シリコーンゴムの分野で非常によく知られている材料である。上記のシリカ充填剤は、親水性を有していてもよいし、または既知のプロセスによって疎水化されていてもよい。有利には、シリカ強化充填剤は、全体的な表面処理を受ける。これは、シリカ強化充填剤の表面の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、または少なくとも90%、または特に好ましくは全体が、好ましくは疎水性処理されていることを意味する。
【0089】
好ましい実施形態では、シリカ強化充填剤は、BET法で測定して、少なくとも50m2/g、好ましくは100~400m2/gの範囲の比表面積を有するヒュームドシリカである。疎水性表面処理を施したフュームドシリカを使用してもよい。その際、疎水性表面処理を施したヒュームドシリカを使用する場合には、疎水性表面処理を予備的に行ったヒュームドシリカを使用してもよい。或いは、ヒュームドシリカをオルガノポリシロキサン化合物Aと混合する際に表面処理剤を添加してヒュームドシリカがその場で処理されるようにしてもよい。
【0090】
表面処理剤としては、アルキルアルコキシシラン類、アルキルクロロシラン類、アルキルシラザン類、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステル等の従来から使用されている処理剤の1つ以上から選択され得る。これらの表面処理剤は、同時に使用してもよいし、順次使用してもよい。
【0091】
付加架橋型導電性シリコーン組成物中のシリカ強化充填剤Dの含有量は、組成物全体の重量に対して、0.5重量%~40重量%、好ましくは2重量%~20重量%、より好ましくは3重量%~15重量%である。含有量が1重量%未満では、十分なチキソトロピーが得られず、くずれが著しく軽減されない場合があり、40重量%を超えると、実際のブレンド工程が困難になり得、導電性が低下する場合がある。上記のより好ましい量は、くずれ、変形、導電性および加工性に関してより著しい改善をもたらす。
【0092】
チキソトロピー剤
チキソトロピー剤は、シリコーン組成物のせん断減粘およびチキソトロピーエネルギーを調整するために使用される。せん断減粘性能は、本明細書では、せん断速度が増加し、粘度が低下することを指すと理解される。
【0093】
本発明において、本発明の付加架橋型導電性シリコーン組成物に好適なチキソトロピー剤は、エポキシ基、(ポリ)エーテル基及び/又は(ポリ)エステル基を有する化合物、および、アリール基を有するオルガノポリシロキサンから選ばれることが好ましい。
【0094】
エポキシ基を有する化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する有機化合物またはエポキシ基官能性化合物であり得る。有機エポキシ官能性化合物の例としては、1,2-エポキシプロパノール、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、ドデカノールグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが挙げられる。
エポキシ基官能性化合物は、エポキシ化菜種油、ヒマワリ油、亜麻仁油、大豆油、パーム油、クランベ油、ヒマシ油およびベルノニア油などのエポキシ化植物油もしくはエポキシ基を含む植物油、または、エポキシ化された、オレイン酸、ペトロセリン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、カレンジン酸、ベルノール酸、サンタルビン酸などのエポキシ化脂肪酸であり得る。
【0095】
好ましいエポキシ基官能性化合物E1は、式(III-1)の単位を含むまたはそれらからなるエポキシ官能性オルガノシリコン化合物であり、
g3 hSiO(4-g-h)/2 (III-1)、
ここで、各Rは同一でも異なっていてもよく、H、HO、または1~40個の炭素原子を含む任意に置換された所望のラジカルを示し、
3は、2~20個の炭素原子を有する任意にハロ置換された一価の炭化水素ラジカルであり、当該一価の炭化水素ラジカルは、少なくとも1個のエポキシ基CH2(-O-)CH-または-CH(-O-)CH-を含み、任意にO、N、SまたはP原子を含み、ただし、
gは0、1、2、または3であり、
hは0、1、2、3、または4であり、
(g+h)は≦4である。
【0096】
その例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)-メチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランおよびトリス(グリシドキシプロピルジメチルシロキシ)フェニルシランなどのエポキシ官能性シランが挙げられる。
【0097】
オルガノシリコン化合物のさらなる例としては、ビス(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル)テトラメチルジシロキサン、1,5-ビス(グリシドキシプロピル)-3-フェニル-1,1,3,5,5-ペンタメチルトリシロキサン、(3-グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3-グリシドキシプロピル)ペンタメチルジシロキサン、1,3-ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、グリシドキシプロピル-テトラメチルシクロテトラシロキサン、グリシドキシプロピル-トリメトキシ-シリルエチル-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、グリシドキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、エポキシシクロヘキシルエチル末端ポリジメチルシロキサン、共重合ポリ(エポキシシクロヘキシルエチルメチル-ジメチル)シロキサンおよび共重合ポリ(エポキシシクロヘキシルエチルメチル-ジメチル-ポリアルキレンオキシプロピルメチル)-シロキサンなどのエポキシ官能性シロキサンが挙げられる。
【0098】
(ポリ)エーテル基を有する化合物は、ポリエーテル官能性の有機化合物若しくは有機ケイ素化合物、または複数のそのような化合物の混合物であり得る。一般式(III-2)のポリアルキレングリコールが好ましく、
4-(O-CH2-CHR5x-OR4 (III-2)
ここで、各R4ラジカルは同一でも異なっていてもよく、任意にハロ置換され、一価の飽和または不飽和のC1~C20の炭化水素ラジカルを表し、当該炭化水素ラジカルは、任意にO、S、NまたはP原子、水素原子、または一価の有機ケイ素ラジカルを含み、
各R5ラジカルは同一でも異なっていてもよく、水素原子またはC1~C4の炭化水素ラジカル、好ましくは水素原子またはメチルラジカルであり、
xは1~1000、好ましくは1~500、より好ましくは5~100の整数である。
【0099】
100℃未満、好ましくは50℃未満の融点を有するポリアルキレングリコールが好ましく、室温で液体であるポリアルキレングリコールが特に好ましい。好ましいポリアルキレングリコールの数平均分子量は、200~10,000g/molである。
【0100】
200g/mol(PEG200)、約400g/mol(PEG400)、約600g/mol(PEG600)、および約1000g/mol(PEG1000)の数平均分子量を有するポリエチレングリコールが好ましい。
【0101】
PEG-PPGおよびPEG-PPG-PEGタイプのポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)のブロックコポリマーが好ましく、例えばポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)であり、好ましくは>10重量%のPEG含有量を有するものであり、より好ましくは>30重量%のPEG含有量を有するものである。
【0102】
ポリアルキレングリコール官能性シランおよびシロキサンが好ましい。例としては、ビス((3-メチルジメトキシシリル)プロピル)ポリプロピレンオキシド、1,3-(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリエチレンオキシ)-2-メチレンプロパン、25-30EO単位を有するビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリエチレンオキシド、2-(メトキシ(ポリエチレンオキシ)6-9プロピル)ジメチルメトキシシラン、2-(メトキシ(ポリエチレンオキシ)6-9プロピル)トリメトキシシラン、メトキシトリエチレンオキシウンデシルトリメトキシシランおよびビス(3-(トリメトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロポキシ)ポリエチレンオキシドが挙げられる。ポリアルキレングリコール官能性シロキサンの例は、ジメチルシロキサン単位およびエチレングリコール単位からなるブロックおよびグラフトコポリマーであり得る。
【0103】
(ポリ)エステル基を有する化合物は、ポリエステル官能性化合物若しくはカルボン酸エステル官能性化合物またはそれぞれの化合物の混合物であり得、液体、非晶性または結晶性であり得る。化合物は直鎖であっても分岐していてもよい。
【0104】
100℃未満、好ましくは50℃未満の融点を有するポリエステル官能性またはカルボン酸エステル官能性化合物が好ましく、室温で液体であるポリエステル官能性またはカルボン酸エステル官能性化合物が特に好ましい。
【0105】
好ましいポリエステル官能性またはカルボン酸エステル官能性化合物の数平均分子量は、200~2500g/モルである。
【0106】
液体化合物が好ましい。
【0107】
適当なポリエステル官能性化合物は、例えば、2~12個の炭素原子、好ましくは4~6個の炭素原子を有するジカルボン酸と多価アルコールとから製造できるポリエステルポリオールである。ポリエステルポリオールは一般に当業者に知られており、市販されている。2個または3個の末端OH基を含むポリエステルポリオールが特に適している。
【0108】
ω-ヒドロキシカプロン酸などのω-ヒドロキシカルボン酸の縮合生成物、および好ましくはラクトンの重合生成物、例えば任意に置換されたω-カプロラクトンも使用することができる。
【0109】
上述の化合物のブロックコポリマーおよび上述の化合物の混合物も使用することができる。
【0110】
ポリエステルポリオールを調製するための多価アルコールの例としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコールおよびポリブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1、3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ヒドロキシメチルシクロヘキサン、1,2,4-ブタントリオール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコール、ならびにこれらの混合物など、2~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を有するグリコール;好ましくは1,4-ブタンジオールおよび/または1,6-ヘキサンジオールが挙げられる。
【0111】
ポリエステルポリオールを調製するためのジカルボン酸の例としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ならびにフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸は、個々にまたは混合物として、例えばコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の混合物の形態で使用することができる。
【0112】
したがって、好ましい一実施形態において、ポリエステルジオールの例には、エタンジオールポリアジペート、1,4-ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール-1,4-ブタンジオールポリアジペート、1,6-ヘキサンジオールネオペンチルグリコールポリアジペート、1,6-ヘキサンジオール-1,4-ブタンジオールポリアジペートおよびポリカプロラクトンが含まれる。
【0113】
好ましい実施形態において、アリール基を有するオルガノポリシロキサンは、式(III-3)
[R6 p7 qSiO(4-p-q)/2n (III-3)
のシロキシル単位を含有するオルガノポリシロキサンであり:
ここで、
6およびR7は、互いに独立して、水素および1~30個の炭素原子を含む非置換または置換炭化水素基から選択され;
ここで、
nは1以上の整数であり、
pおよびqは独立して0、1、2または3であり、および
p+q=1、2、または3;
ただし、1個のアリール基を有するオルガノポリシロキサンは、Si原子に直接結合するアリール基を少なくとも1つ含む。
【0114】
好ましい一実施形態では、1個のアリール基を有するオルガノポリシロキサンは、実質的に式(III-3)のシロキシ単位からなる。
【0115】
好ましい実施形態では、炭化水素基は、1~24個、好ましくは1~18個、より好ましくは1~12個、例えば2~8個の炭素原子を含む。炭化水素基は、直鎖、分岐または環状アルキル基またはアルケニル基などを含むことができ、非置換であるか、または1つ以上のハロゲンおよびアリール基で置換されていてもよく、アリール基は、非置換であるか、または1つ以上のハロゲンおよびC1~C6のアルキル基で置換され、6~12個の炭素原子を含む。
【0116】
アリール基を有するオルガノポリシロキサンは、直鎖、分岐または環状構造のものであり、好ましくは直鎖である。直鎖または分岐構造において、オルガノポリシロキサンE4の末端が-R基または-SiR3基であってもよく、各Rは互いに独立して、R6基およびR7基について与えられた意味を有する。当業者は、アリール基が、オルガノポリシロキサンの主鎖にぶら下がって存在し得るか、または鎖の末端にR末端基として存在し得るか、または-SiR3末端基に含まれ得ることを理解するであろう。
【0117】
好ましい実施形態では、アリール基は、置換されていないか、または1つ以上のハロゲンおよびC1~C6のアルキル基によって置換されていてもよく、6~12個の炭素原子を含有する。より好ましくは、それらは、キシリルラジカル、トリルラジカルおよびフェニルラジカルによって形成される群から選択され、最も好ましくはフェニルラジカルである。
【0118】
好ましい実施形態では、上記の式(III-3)において:
nは2以上の整数である。
【0119】
好ましい実施形態では、上記の式(III-3)において:
pとqは互いに独立して1または2である。
【0120】
好ましい実施形態では、上記の式(III-3)において:
6基およびR7基の少なくとも1つはアリール基であり、他の基は、1~8個の炭素原子を含むアルキル基、および2~6個の炭素原子を含むアルケニルラジカルによって形成される群から選択される。1~8個の炭素原子を含むアルキル基は、好ましくはメチル基またはエチル基であり、アルケニルラジカルは、好ましくはビニル基である。
【0121】
さらに好ましい実施形態では、式(III-3)のような、アリール基を有するオルガノポリシロキサンは、少なくとも1つのアリール基、好ましくはフェニル基、および少なくとも1つのアルケニル基、好ましくはビニル基を含む。
【0122】
さらに好ましい実施形態では、式(III-3)のような、アリール基を有するオルガノポリシロキサンは、少なくとも1つのアリール基、好ましくはフェニル基、および少なくとも1つのSiH基を含む。
【0123】
別の好ましい実施形態では、式(III-3)のような、アリール基E4を有するオルガノポリシロキサンは、好ましくはフェニル基である少なくとも1つのアリール基と、好ましくはビニル基である少なくとも1つのアルケニル基と、少なくとも1つのSiH基とを含む。
【0124】
チキソトロピー性および相溶性の改善の観点から、特に、シリコーンエラストマー製品にとって非常に重要であり得るオイルブリードを回避し、透明性をさらに改善するために、アリール基を有するオルガノポリシロキサンが、アリール基に加えて、好ましくはビニル基である少なくとも1つのアルケニル基またはSiH基を含有することが有利である。あるいは、アリール基を有するオルガノポリシロキサンは、さらにアルケニル基とSi-H基との両方を含む。アリール基およびアルケニル基、ならびに任意に水素は、同じまたは異なるSi原子に直接結合することができ、すなわち、同じまたは異なるシロキシル単位に位置することができる。好ましくは、アルケニル基、より好ましくはビニル基は、オルガノポリシロキサン鎖の末端基である。
【0125】
1つの有利な実施形態において、アリール基を有するオルガノポリシロキサンは、その末端が-R基または-SiR3基であって、式(III-3)の上記シロキシル単位からなるオルガノポリシロキサンであり得る。
【0126】
アリール基を有するオルガノポリシロキサンの有用な例として、以下の式の化合物が挙げられる:
【化2】
【0127】
アリール基および好ましくはアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを調製する方法は、当技術分野で周知であり、例えば、中国特許出願公開第105778102号明細書、中国特許出願公開第108329475号明細書、中国特許出願公開第106977723号明細書、中国特許出願公開第105778102号明細書、中国特許出願公開第101885845号明細書、中国特許出願公開第104403105号明細書および中国特許出願公開第103012797号明細書である。
【0128】
本発明において、シリコーン組成物は、付加架橋型導電性シリコーン組成物の総重量に対して、アリール基を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンを0.3~30重量%、好ましくは0.8~20重量%、より好ましくは1.0~10.0重量%、最も好ましくは1.0~7.0重量%含む。
【0129】
さらに、有利には、アリール基を有するオルガノポリシロキサンは、3~10000000mPa・sの範囲、好ましくは10~200000mPa・sの範囲、例えば50~100000mPa・sおよび100~10000mPa・sの範囲の粘度を有する。アリール基を有するオルガノポリシロキサンは、屈折率が1.405超、好ましくは1.41~1.6、より好ましくは1.43~1.58である。
【0130】
したがって、アリール基の量は、アリール基を有するオルガノポリシロキサンの総重量に基づいて、2重量%から70重量%、好ましくは5重量%から62重量%、例えば10重量%から58重量%である。
【0131】
本発明の付加架橋型導電性シリコーン組成物中のチキソトロピー剤の含有量は、0.01重量%~30重量%、好ましくは0.05重量%~20重量%、より好ましくは0.20重量%~10重量%、最も好ましくは0.5重量%~7重量%である。
【0132】
導電性充填剤F
通常、電気絶縁性ポリマーは、炭素繊維、カーボンブラック、または金属繊維などの導電性充填剤を添加することによって導電性にすることができる。いずれの場合も、ポリマーが電流を流すことができる充填剤の臨界濃度に到達するために、パーコレーション閾値を克服するために十分な量の充填剤を添加する必要がある。この閾値を超えると、導電性充填剤の添加に伴い導電率が著しく増加する。パーコレーション閾値では、導電性粒子の途切れのない鎖が最初にシステムに現れると考えられている。さらに多量の導電性充填剤を添加すると、それに対応してより多くの中断されていない鎖が生成され、これによりさらに高いレベルの導電率が得られる。
【0133】
本発明者は、本発明の付加架橋型導電性シリコーン組成物のマトリックスに強化シリカ充填剤といくつかの選択された導電性充填剤を特定の重量比で添加すると、チキソトロピーと調節可能な導電率との良好なバランスが得られることを見出した。導電性充填剤に対する強化充填剤の重量比は、0.0001から100、好ましくは0.001から50、より好ましくは0.01から10、最も好ましくは0.05から3である。
【0134】
本発明によれば、ニッケル被覆炭素、グラフェンおよびそれらの混合物から選択される特定の導電性充填剤Fをシリコーン組成物に使用しなければならず、それにより添加材料のチキソトロピー特性および加工性を改善する。
【0135】
特定の2つの充填剤、すなわちニッケル被覆炭素およびグラフェンは、当技術分野でそれ自体周知であり、市場で入手可能である。ニッケル被覆炭素には、ニッケル被覆炭素繊維、カーボンナノチューブ、またはグラファイトなどが含まれる。本発明では、ニッケル被覆グラファイトが好ましいことが判明した。
【0136】
さらに、本発明者らは、ニッケル被覆炭素の場合、それを純粋な粒子、純粋なフレーク、または純粋な繊維の形態で使用することがより好ましいことを見出した。つまり、ニッケル被覆炭素粒子、ニッケル被覆炭素フレーク、またはニッケル被覆炭素繊維を使用することが好ましいが、それらの混合物は使用しないことが好ましい。
【0137】
好ましい一実施形態では、導電性充填剤Fがニッケル被覆炭素である場合、組成物中の導電性充填剤Fに対する強化シリカ充填剤Dの重量比は、0.0001~100、好ましくは0.01~10、より好ましくは0.05~0.6である。
【0138】
さらに、ニッケル被覆炭素フレークを使用する場合、より広い範囲の導電率(例えば、体積抵抗率の範囲0.001~1×1010Ω・cm)を得るために、導電性充填剤Fの平均長さは、好ましくは200μm未満であり、より好ましくは150μm未満である。
【0139】
導電性充填剤Fがニッケル被覆炭素である場合、前記積層造形用シリコーン組成物のチキソトロピー指数は、10より高く、好ましくは11より高く、より好ましくは12より高くすることができる。
【0140】
別の好ましい実施形態では、導電性充填剤Fとしてグラフェンを使用する場合、組成物中の導電性充填剤Fに対する強化充填剤Dの重量比は、0.001~100、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.35~1.5である。
【0141】
導電性充填剤Fがグラフェンである場合、前記積層造形用シリコーン組成物のチキソトロピー指数は、3より高く、好ましくは3.5より高く、より好ましくは4より高くすることができる。
【0142】
上述の導電性充填剤に加えて、本発明によるシリコーン組成物は、所望により組成物の全体的な特性を調整するために、任意に他の導電性充填剤を含むことができる。他の導電性充填剤は、アルミニウム粉末、鉄粉末、ニッケル粉末、銅粉末、銀粉末、金粉末、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、銀被覆ガラス、銅被覆ガラス、銀被覆ニッケルなどの群から選択することができる。
【0143】
架橋抑制剤G
架橋抑制剤は、任意の成分である。しかし、それらは一般に、周囲温度での組成物の硬化を遅らせるために、架橋型シリコーン組成物に加えて一般に使用される。架橋抑制剤Fは、以下の化合物から選択することができる:
- エチニルシクロヘキサノールなどのアセチレンアルコール
- 2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサンなどのテトラメチルビニルテトラシロキサン
- ピリジン、
- 有機ホスフィンおよびホスファイト、
- 不飽和アミド、および
- マレイン酸アルキル
【0144】
これらのアセチレンアルコールは、好ましいヒドロシリル化反応熱ブロッカーの1つであり、仏国特許発明第1528464号明細書および仏国特許出願公開第2372874号明細書などに記載されており、次の式を有する。
(R’’)(R’’’)(OH)C-C≡CH
ここで:
R’’は、直鎖または分岐アルキルラジカル、またはフェニルラジカルであり、R’’’は、Hまたは直鎖もしくは分岐アルキルラジカル、またはフェニルラジカルであり、ラジカルR’’およびR’’’ならびにα位の炭素原子が三重結合に対して環を形成し得る。
【0145】
R’’およびR’’’に含まれる炭素原子の総数は、少なくとも5個、好ましくは9~20個である。前記アセチレンアルコールについて、挙げることができる例には以下が含まれる:
- 1-エチニル-1-シクロヘキサノール;
- 3-メチル-1-ドデシン-3-オール;
- 3,7,11-トリメチル-1-ドデシン-3-オール;
- 1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール;
- 3-エチル-6-エチル-1-ノニン-3-オール;
- 2-メチル-3-ブチン-2-オール;
- 3-メチル-1-ペンタデシン-3-オール;および
- マレイン酸ジアリルまたはマレイン酸ジアリル誘導体。
【0146】
好ましい実施形態では、架橋抑制剤は1-エチニル-1-シクロヘキサノールである。
【0147】
より長い作用時間または「ポットライフ」を得るには、抑制剤の量を調整して、所望の「ポットライフ」に到達させる。本シリコーン組成物中の触媒抑制剤の濃度は、周囲温度で組成物の硬化を遅らせるのに十分である。この濃度は、使用する特定の抑制剤、ヒドロシリル化触媒の性質と濃度、およびオルガノヒドロジェンポリシロキサンの性質に応じて大きく変わる。場合によっては、白金族金属1モルあたり1モルの抑制剤濃度でも十分な貯蔵安定性と硬化速度が得られる。他の例では、白金族金属1モル当たり最大500モル以上の抑制剤濃度が必要とされる場合がある。所与のシリコーン組成物中の阻害剤の最適濃度は、日常的な実験によって容易に決定することができる。
【0148】
有利には、付加架橋型導電性シリコーン組成物中の架橋抑制剤Fの量は、シリコーン組成物の総重量に対して0.01重量%から2重量%、好ましくは0.03重量%から1重量%の範囲である。
【0149】
抑制剤の使用は、ノズルの先端でのシリコーン組成物の早期硬化およびその後のプリント層の変質を回避するのに効果的である。
【0150】
その他の成分H:
本発明によるシリコーン組成物はまた、標準的な半強化充填剤またはパッキング充填剤(packing filler)、ビニル基を有するシリコーン樹脂などの他の官能性シリコーン樹脂、非反応性メチルポリシロキサン、顔料、または接着促進剤などの他の添加剤を含んでもよい。
【0151】
半強化またはパッキング鉱物充填剤として含まれる非珪質鉱物は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、粉砕石英、珪藻土、酸化亜鉛、雲母、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、消石灰からなる群から選択することができる。
【0152】
付加架橋型導電性シリコーン組成物は、全組成中のケイ素に結合したビニル基(Si-ビニル基)の総和に対するケイ素に結合した水素原子(Si-H基)のモル比が、0.5~10mol/mol、好ましくは0.8~5mol/mol、より好ましくは1~3mol/molである。
【0153】
好ましい実施形態において、本発明の付加架橋型導電性シリコーン組成物は、シリコーン組成物100重量%あたり、
(A)前記オルガノポリシロキサン化合物Aを5~95重量%、
(B)少なくとも1つの前記オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B;
(C)前記触媒Cを0.1~500ppm、
(D)前記強化シリカ充填剤Dを1~30重量%、好ましくは3~15重量%、
(E)前記チキソトロピー剤を0.01重量%から30重量%、好ましくは0.20重量%から10重量%、最も好ましくは0.5重量%から7重量%;
(F)少なくとも1つの前記導電性充填剤F;
(G)任意に、少なくとも1つの前記架橋抑制剤G、
を含み、
ここで、組成物中の導電性充填剤Fに対する強化シリカ充填剤Dの重量比は、0.0001から100、好ましくは0.001から50、より好ましくは0.01から10、最も好ましくは0.05から3である。
【0154】
別の好ましい実施形態において、本発明の付加架橋型導電性シリコーン組成物は、シリコーン組成物100重量%あたり、
- 少なくとも1つの前記オルガノポリシロキサン化合物Aを20~95重量%、
- 少なくとも1つの前記オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物Bを0.1~20重量%;
- 少なくとも1つの前記強化シリカ充填剤Dを3~15重量%;
- 少なくとも1つの前記チキソトロピー剤を0.8~10重量%、好ましくは1~7重量%;
- 前記触媒、例えば白金を0.1~500ppm;
- 少なくとも1つの前記架橋抑制剤を0.01~2重量%;および
- 前記導電性充填剤F;
を含み、
ここで、組成物中の導電性充填剤Fに対する強化シリカ充填剤Dの重量比が0.05~3である。
【0155】
好ましい実施形態において、付加架橋型導電性シリコーン組成物は、100~50000000mPa・s、好ましくは1000~10000000mPa・s、より好ましくは5000~1000000mPa・sの動的粘度を有する。
【0156】
好ましくは、異なる導電性充填剤に応じて、3より大きい、例えば3.5より大きい、または4より大きいチキソトロピー指数を有する付加架橋型導電性シリコーン組成物を使用して、積層造形によって物品を製造する。
【0157】
シリコーン組成物の架橋は、たとえゆっくりであっても層がプリントされるとすぐに始まる。完全に硬化する前の室温での物体のくずれまたは変形を避けるために、チキソトロピー指数が上記の範囲内に収まるようにチキソトロピー特性を管理する必要がある。
【0158】
上記の2つの好ましい実施形態において、また本出願において上述した範囲において示される個々の量は、単なる例示であり、したがって、それらのそれぞれは、当業者にとってよく理解されるように、任意に組み合わせることができることに留意されたい。
【0159】
マルチパート組成物
組成物は、成分AからEを単一の部分に含むワンパート(one-part)組成物であってもよく、あるいは、成分B、およびCが同じ部分に存在しないことを条件として、これらの成分を2つ以上の部分に含むマルチパート(multi-part)組成物であってもよい。例えば、マルチパート組成物は、成分Aの一部および成分Cのすべてを含む第1部分と、成分Aの残りの部分および成分Bのすべてを含む第2部分とを含むことができる。特定の実施形態において、成分Aは、第1部分にあり、成分Bは第1部分から分離した第2部分にあり、成分Cは第1部分、第2部分、および/または第1および第2部分から分離した第3部分にある。成分D、EおよびFは、成分BまたはCの少なくとも1つと共にそれぞれの部分(または複数の部分)に存在し得、および/または別々の部分(または複数の部分)に存在し得る。
【0160】
ワンパート組成物は、典型的には、主成分および任意の成分を記載された比率で周囲温度で組み合わせることによって調製される。組成物をすぐに使用する場合、種々の成分の添加順序は重要ではないが、ヒドロシリル化触媒は典型的には組成物の早期硬化を防ぐために約30℃未満の温度で最後に添加する。
【0161】
また、マルチパート組成物は、各部分の成分を組み合わせることによって調製することができる。混合は、当技術分野で理解されている任意の技術、例えば特定の装置でのバッチプロセスまたは連続プロセスのいずれかで、ブレンドまたは攪拌によって達成することができる。特定の装置は、成分の粘度および最終組成物の粘度によって決定される。
【0162】
特定の実施形態では、シリコーン組成物がマルチパートシリコーン組成物である場合、マルチパートシリコーン組成物の別々の部分は、プリント前及び/又はプリント中に、ディスペンスプリンティングノズル、例えばデュアルディスペンスプリンティングノズルで混合されてもよい。あるいは、プリントの直前に別々の部分を組み合わせることもできる。
【実施例
【0163】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図しており、限定することを意図していない。
付加架橋型導電性シリコーン組成物は、本開示に従って、押出し3Dプリンターを使用して調製およびプリントされる。
【0164】
原料
【表1】
【0165】
実施例1~6および比較例1~5:
実施例1:6部のD-1および57部のF-1を、14部のα,ω-ビニルシロキサンオイルA-1、14.06部のα,ω-ビニルシロキサンオイルA-2および3.72部のポリジメチルシロキサンH-1の混合物に、十分に攪拌しながら、3回に分けて添加した。0.3部の抑制剤G-1を混合物に添加し、続いて2.2部のポリ(メチルヒドロジェノ)(ジメチル)シロキサンB-1および0.7部のポリ(メチルヒドロジェノ)(ジメチル)シロキサンB-2を添加した。次いで、2部のE-1を室温で攪拌しながら加えた。最後に、0.02部の触媒C-1を添加し、付加架橋型導電性シリコーン組成物を得た。
【0166】
実施例2~6および比較例1~5:表2-1および2-2に示されるように、異なる原材料の様々な量または比率を調整することを除いて、実施例1と同じ調製プロセスを実施する。
【0167】
硬化法による3Dプリントプロセス
プリントプロセスは、ULTIMAKER2+装置(Ultimaker社によって提供される)を使用して実行される。プリント工程は以下の通りである。
I.シリコーン材料を押出機に充填する;
II.プリントプラットフォームのレベル調整とプリントパラメータの設定;
III.a.プリントは、室温で層ごとに実行され、続いて室温で16時間の第1の硬化と、150℃のオーブンで1時間の第2の硬化を行う。
【0168】
特性評価
本発明による硬化性シリコーン組成物に関する特性評価を表2に列挙する。
【0169】
チキソトロピー試験
回転レオメーター(Haake Rehometer)を使用して、サンプルのチキソトロピー挙動を定義した。サンプルのせん断速度を一定に保つために、コーンプレート(35mm、1°、ギャップ=52μm)を使用して室温で2つの部分でチキソトロピー試験を実施した。第1の部分は、3Dプリント条件(5s-1で3秒)のように、材料の微細構造を破壊するために予備せん断試験を行った。第2の部分は、サンプルのチキソトロピー性能を定義するためのタイムスイープ試験である。ユーザーが3Dプリントで材料の性能を評価できるようにする「粘度比」を定義するために、等価せん断減粘試験を実施した。「比」は、低せん断速度および高せん断速度(それぞれ0.5および25s-1)での動的粘度を用いて計算した。「粘度比」の高い値は、材料が高品質の3D物体を製造できることを意味する。
【0170】
この方法では、付加架橋型導電性シリコーン組成物は、完全硬化前に室温で物体のくずれまたは変形を回避するのに必要な適切なチキソトロピー特性を示した。好ましくは、シリコーン組成物は、低せん断速度(0.5s-1)および高せん断速度(25s-1)における動的粘度の比として定義される「粘度比」で特徴付けられた。ニッケル被覆グラファイトフレークを導電性充填剤として使用した場合、積層造形による物品の製造には、10より高い比率が使用された。対照的に、グラフェン系では3よりも高い比率が適切であった。
【0171】
硬度:硬化性シリコーン組成物に基づく硬化サンプルの硬度は、ASTM D2240に従って25℃で測定した。測定条件の詳細を表2-1および2-2に示した。硬化サンプルは、25℃で12時間予備硬化し、その後150℃で1時間後硬化して得た。または、プリント中に直接加熱して硬化サンプルを得た。
【0172】
引張強度および破断伸び:硬化性シリコーン組成物に基づく硬化サンプルの引張強度および破断伸びをASTM D412に従って25℃で測定した。測定条件の詳細を表2-1および2-2に示した。硬化サンプルは、25℃で12時間予備硬化した後、加熱条件下で1時間後硬化して得た。または、プリント中に直接加熱して硬化サンプルを得た。
【0173】
引裂き強度:硬化したサンプルの引裂き強度は、ASTM D642に従って25℃で測定した。測定条件の詳細を表2-1および2-2に示した。硬化サンプルは、25℃で12時間予備硬化した後、加熱条件下で1時間後硬化して得た。または、プリント中に直接加熱して硬化サンプルを得た。
【0174】
体積抵抗率:ISO1853:1998に相当するGB/T 2439-2001に従って測定。試験片の長さは10cm、厚さは2~3mm、幅は1cmである。2つの電極は、試験片の両端に固定される。次に、試験を室温で実施する。以上の方法により電気抵抗率を求めることができる。最後に、体積抵抗率は式
【数1】
に基づいて得ることができる。
ρは体積抵抗率、Rは均一な試験片の電気抵抗率、Aは試験片の断面積、lは試験片の長さである。
【0175】
【表2】
【0176】
【表3】
【0177】
表2-1によれば、比較例1~3と比較して、本発明の実施例1~4は、より優れたチキソトロピー特性を示し、広い範囲の導電率を示している。同じ結果が、表2-2において、比較例4および5と比較した本発明の実施例5~6について得られた。