(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】UZM-54及びそれを使用したトランスアルキル化プロセス
(51)【国際特許分類】
B01J 29/80 20060101AFI20240122BHJP
C07C 6/12 20060101ALI20240122BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20240122BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240122BHJP
【FI】
B01J29/80 M
C07C6/12
C07C15/08
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022540878
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(86)【国際出願番号】 US2021012133
(87)【国際公開番号】W WO2021141870
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ジェロロ、エセオゲネ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、デンヤン
(72)【発明者】
【氏名】コックス、ペリン
(72)【発明者】
【氏名】モスコーソ、ジャイメ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】エイブラムス、マルタ リー
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525920(JP,A)
【文献】特表2011-525888(JP,A)
【文献】特表2014-534947(JP,A)
【文献】特表2019-506457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0170831(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0257632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 29/80
C07C 6/12
C07C 15/08
C07B 61/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族炭化水素の変換のための触媒であって、
UZM-54ゼオライトと、
モルデナイトゼオライトと、
アルミナ、シリカ、又はこれらの組み合わせを含む結合剤と、
周期表の第VIB(6)族、第VIIB(7)族、第VIII(8~10)族、及び第IVA(14)族のうちの1つ以上から選択される金属と、を含む、触媒。
【請求項2】
前記触媒が、20~60重量%の前記UZM-54ゼオライトと、20~60重量%の前記モルデナイトゼオライトと、10~40重量%の前記結合剤と、0.1~10重量%の前記金属と、を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
C
7、C
9、C
10、及びC
11+芳香族のうちの1つ以上を含む供給流をトランスアルキル化して、前記供給流の濃度に対して増加した濃度のC
8芳香族を有する生成物流を取得するためのプロセスであって、前記供給流をトランスアルキル化条件で、
UZM-54ゼオライトと、
モルデナイトゼオライトと、
アルミナ、シリカ、又はこれらの組み合わせを含む結合剤と、
周期表の第VIB(6)族、第VIIB(7)族、第VIII(8~10)族、及び第IVA(14)族のうちの1つ以上から選択される金属と、を含む、触媒と接触させることを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
優先権の記載
本出願は、その全体が本明細書に組み込まれる、2020年1月6日に出願された、米国特許出願第16/734,469号からの優先権を主張する。
【0002】
キシレン異性体は、様々な重要な工業用化学物質の供給原料として石油から大量に生産される。キシレン異性体のうち最も重要なものは、ポリエステルの主要供給原料であるパラキシレンであり、多くの基本的需要によって高い成長率を享受し続けている。オルトキシレンは、大規模ではあるが成熟した市場を有する無水フタル酸を生成するために使用される。メタキシレンは、可塑剤、アゾ染料、及び木材保存剤などの製品において使用され、より小規模であるが量が増大している。エチルベンゼンは、典型的には、キシレン混合物中に存在し、スチレン生成のために回収されることもあるが、通常は、C8芳香族のあまり望まれない成分であると考えられる。
【0003】
芳香族炭化水素の中で、キシレンの全体的な重要性は、工業用化学物質の供給原料としてのベンゼンの重要性に匹敵する。キシレン又はベンゼンのいずれも、ナフサの改質によっては需要を満たすのに十分な量で石油から生成されない。結果として、キシレン及びベンゼンの収率を増加させるために、他の炭化水素の変換が必要である。トルエンが、一般に、脱アルキル化されて、ベンゼンを生成するか、又は不均化されて、ベンゼン及びC8芳香族を生じさせ、これから個々のキシレン異性体が回収される。より最近では、トルエンとともにより重質の芳香族をトランスアルキル化して、芳香族コンビナート(複合施設)からのキシレンの収率を選択的に増加させるためのプロセスが商業化されている。
【0004】
当該技術は、芳香族炭化水素のトランスアルキル化のための様々な触媒を教示する。モルデナイトを含む広範囲のゼオライトが、有効なトランスアルキル化触媒として開示されている。成形触媒、複数のゼオライト、金属改質剤、及び蒸気か焼などの処理が、触媒の有効性を増加させるための経路として記載されている。より低い芳香環破壊及び重質材料の変換率の増加とともに改善された安定性を有するキシレン生産性を改善する必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】UZM-54ゼオライトで作製されたトランスアルキル化触媒のキシレン選択性をいくつかの市販のMFIゼオライトで作製された触媒と比較するグラフである。
【
図2】UZM-54ゼオライトで作製されたトランスアルキル化触媒の芳香環損失をいくつかの市販のMFIゼオライトで作製された触媒と比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、触媒がUZM-54ゼオライトと、モルデナイトゼオライトと、結合剤と、金属と、を含むため、特有である。UZM-54は、改善された質量輸送(小結晶)及び高酸密度(低Si/Al2比)の特性を組み合わせて、芳香族供給原料からのC2+アルキル基の増強された脱アルキル化反応性並びにトルエン及び重質芳香族のトランスアルキル化を伴うプロセスにおいて、キシレンに対する効率(選択性及び活性)を増加させる。キシレン生成をもたらす反応経路の増強の結果として、フェニル環の保持が更に増加する。
【0007】
触媒は、他の中細孔ゼオライト(MFI骨格)に対してトランスアルキル化において改善された性能、特に、0.1~1.1重量%のキシレン選択性の増加、及び50/50のトルエン/A9+の供給を用いた標準的なパイロットプラント試験によって測定される際、フェニル保持の増加又は0.2モル%の芳香環損失の減少を有する。
【0008】
UZM-54ゼオライトは、22~60の低Si/Al2比、XRDリートベルト精密化によって測定される際、30nm未満の結晶子サイズ、並びに80超及び300m2/g未満のメソ細孔表面積を有する小さい結晶ナノペンタシルゼオライトである。この材料及び調製方法の詳細は、米国特許第9,890,094号、同第10,010,878号、同第10,166,532号、及び同第10,167,201号に見出すことができ、その各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0009】
任意のモルデナイトゼオライトが、使用され得る。好適な市販のモルデナイトゼオライトとしては、限定されるものではないが、UOP製のUZM-14、Clariant製のCZM20、又はTosoh製の640HOAが挙げられる。
【0010】
結合剤は、アルミナ、シリカ、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、結合剤は、アルミナである。結合剤は、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナのうちの1つ以上を含む。アルミナは、特にアルキル芳香族炭化水素のトランスアルキル化に使用するための触媒複合体の製造に関して、本明細書で使用するための特に好ましい耐火性無機酸化物である。アルミナは、ガンマ-、タータ-、デルタ-、イータ-アルミナを含む転移相、又はアルファ-アルミナなどの高温相のものであり得、好ましくは、アルミナは、ガンマ-アルミナである。アルミナは、ベーマイト構造のアルファ-アルミナ一水和物、ジブサイト構造のアルファ-アルミナ三水和物、バイヤライト構造のベータ-アルミナ三水和物などの様々な含水アルミニウム酸化物又はアルミナゲルのいずれかを使用して、触媒に組み込まれてもよく、第1の言及されたアルファ-アルミナ一水和物が好ましい。
【0011】
金属は、周期表の第VIB(6)族、第VIIB(7)族、第VIII(8~10)族、及び第IVA(14)族からの1つ以上の金属であり得る。いくつかの実施形態では、金属は、Mo、Ni、Re、Pt、若しくはPd、又はこれらの組み合わせである。
【0012】
一実施形態では、結合剤は、アルミナであり、金属は、Mo、Ni、Re、Pt、又はPdのうちの1つ以上である。
【0013】
触媒は、典型的には、20~60重量%のUZM-54と、20~60重量%のモルデナイトゼオライトと、10~40重量%の結合剤と、0.1~10重量%の金属と、を含む。いくつかの実施形態では、触媒は、20~30重量%のUZM-54と、45~55重量%のモルデナイトゼオライトと、20~30重量%の結合剤と、1~5重量%の金属と、を含む。
【0014】
触媒は、20~60重量%、又は20~50重量%、又は20~40重量%、又は20~30重量%、又は22~28重量%、又は25~60重量%、又は30~60重量%、又は40~60重量%、又は45~55重量%のUZM-54を含有し得る。触媒は、20~60重量%、又は20~50重量%、又は20~40重量%、又は20~30重量%、又は22~28重量%、又は25~60重量%、又は30~60重量%、又は40~60重量%、又は45~55重量%のモルデナイトゼオライトを含有し得る。触媒は、10~40重量%、又は10~35重量%、又は10~30重量%、又は15~40重量%、又は20~40重量%、又は25~40重量%、又は30~40重量%の結合剤を含有し得る。触媒は、0.1~10重量%、又は0.1~7重量%、又は0.1~5重量%、又は0.5~10重量%、又は0.5~7重量%、又は0.5~5重量%、又は1~10重量%、又は1~7重量%、又は1~5重量%の金属を含有し得る。
【0015】
UZM-54ゼオライトは、任意選択的に、限定されるものではないが、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどを含むアンモニウム塩と、70~80℃の温度で2~6時間接触させることによってイオン交換され得る。
【0016】
UZM-54ゼオライト(任意選択的に、イオン交換済み)は、触媒調製に使用することができる。これは、以下に説明されるように、モルデナイトゼオライト、結合剤、及び金属と組み合わせることができる。
【0017】
UZM-54ゼオライト、モルデナイトゼオライト、及び結合剤は、任意の従来の又は別の便利な様式で組み合わされて、球体、丸剤、ペレット、顆粒、押出物、又は他の好適な粒子形状を形成し得る。例えば、細かく分割されたゼオライト及び金属塩粒子は、アルミナゾル中に分散させることができ、次に、混合物が高温油浴中に液滴として分散され、それによって、ゲル化が球状ゲル粒子の形成とともに生じる。この方法は、米国特許第2,620,314号により詳細に記載されている。好ましい方法は、選択されたゼオライト、耐火性無機酸化物、及び金属塩を結合剤、及び/又は潤滑剤と共混合することと、混合物を均一なサイズ及び形状の丸剤又はペレットに圧縮することと、を含む。代替的に、更により好ましくは、ゼオライト、耐火性無機酸化物、及び金属塩は、混合-混錬機内の解膠剤と組み合わされ、かつ混合され、希硝酸が、好適な解膠剤の一例である。得られた生地は、所定のサイズのダイ又はオリフィスを通して加圧されて、乾燥及びか焼されそれ自体で利用され得る押出物粒子を形成することができる。円筒、クローバー型、ダンベル型、並びに対称及び非対称ポリオベート(polylobates)を含むが、これらに限定されない多数の異なる押出物形状が可能であり、三葉形態が好ましい。押出物はまた、スピニングディスク又はドラムによって球体に形成され、次いで、乾燥及びか焼され得る。
【0018】
金属は、押出又は含浸中のいずれかで共混錬することによって導入することができる。
【0019】
触媒は、元素基準で0.05~3重量%又は0.05~2重量%の硫黄を組み込むために、プレ硫化工程に供され得る。このプレ硫化工程は、触媒の製造中、又は触媒がプロセスユニットに充填された後のいずれかで行われ得る。
【0020】
完成した複合体は、好ましくは、425℃~750℃の温度、好ましくは、475℃~575℃の温度で、0.5~10時間の期間にわたって空気雰囲気中でか焼される。
【0021】
本プロセスへの供給流は、一般式C6H(6-n)Rnのアルキル芳香族炭化水素を含み、式中、nは0~5の整数であり、Rは、任意の組み合わせにおいて、CH3、C2H5、C3H7、又はC4H9である。好適なアルキル芳香族炭化水素としては、例えば、本発明をそのように限定するものではないが、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタ-キシレン、パラ-キシレン、エチルベンゼン、エチルトルエン、プロピルベンゼン、テトラメチルベンゼン、エチル-ジメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
トランスアルキル化プロセス又は不均化プロセスへの芳香族に富む供給流は、限定されるものではないが、触媒改質、軽質オレフィン及びより重質の芳香族に富む副生成物を生じさせるためのナフサ、留出物、又は他の炭化水素の熱分解、及び単環芳香族に富む流れを生じさせるための重質油の触媒又は熱分解を含む、様々な供給源から由来し得る。熱分解又は他のクラッキング操作からの生成物は、概して、生成物の品質に影響を及ぼし得る、硫黄、窒素、オレフィン、及び他の化合物を除去するために、コンビナートに投入される前に、業界において周知のプロセスに従って水素処理される。軽質サイクル油はまた、有益には、ハイドロクラッキングされて、より軽質の成分を生じさせ得、これは、触媒的に改質されて、芳香族に富む供給流を生じさせることができる。供給流が触媒改質物である場合、改質器は、好ましくは、生成物中の低濃度の非芳香族と高芳香族収率とについて高い重要度で動作する。改質物はまた、有利には、潜在的なプロセス混入物質及びトランスアルキル化プロセスにおいて重質非コンバーチブルに重合することができる材料を除去するためのオレフィン飽和に供される。かかる処理工程は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,740,788(B1)号に記載されている。
【0023】
トランスアルキル化プロセス又は不均化プロセスへの供給流は、6~15個の炭素原子の実質的に純粋なアルキル芳香族炭化水素、かかるアルキル芳香族炭化水素の混合物、又は上記のアルキル芳香族に富む炭化水素留分であり得る。供給流は、一般式C6H(6-n)Rnのアルキル芳香族炭化水素を含み、式中、nは1~5の整数であり、各Rは、任意の組み合わせで、CH3、C2H5、C3H7、C4H9、又はC5H11のうちの1つ以上である。供給流はまた、ベンゼン及び2~4個の環を有する芳香族を含み得る。それゆえ、供給流の好適な成分としては、概して、例えば、本発明をそのように限定するものではないが、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、メタ-キシレン、オルト-キシレン、パラ-キシレン、エチル-トルエン、トリメチルベンゼン、ジエチル-ベンゼン、トリエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、インダン、ナフタレン、テトラリン、デカリン、ビフェニル、ジフェニル、及びフルオレンが挙げられる。供給流はまた、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、及びより重質のナフテンとともに、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びより重質のパラフィンなどのより低い濃度の非芳香族を含有し得、ペンタン及び軽質パラフィンは、概して、芳香族コンビナート内で処理する前に除去されている。組み合わされたトランスアルキル化供給物は、好ましくは、10重量%以下の非芳香族を含有し、オレフィンは、好ましくは、1500以下、好ましくは、500以下の臭素指数に制限される。
【0024】
供給原料の好ましい成分は、C9芳香族を含む重質芳香族流であり、それによって、トルエン及びC9芳香族のトランスアルキル化をもたらして、追加のキシレンを生じさせる。ベンゼンはまた、トランスアルキル化されて、追加のトルエンを生じさせ得る。インダンは、重質芳香族流中に存在してもよいが、C8の芳香族生成物の高収率をもたらすための望ましい成分ではない。C10+芳香族はまた、好ましくは、供給物の30%以下の量で存在してもよい。重質芳香族流は、好ましくは、少なくとも90質量%芳香族を含み、ベンゼン及びトルエン供給原料として同じ若しくは異なる既知の製油及び石油化学プロセスに由来してもよく、並びに/又はトランスアルキル化からの生成物の分離からリサイクルされてもよい。
【0025】
供給原料は、典型的には、気相及び水素の存在下でトランスアルキル化される。液相でトランスアルキル化された場合、水素の存在は任意選択である。存在する場合、遊離水素は、アルキル芳香族1モル当たり0.1モル~アルキル芳香族1モル当たり最大10モルの量において供給原料及びリサイクル炭化水素と関連付けられる。この水素対アルキル芳香族の比はまた、水素対炭化水素比とも称される。トランスアルキル化反応は、好ましくは、増加したキシレン含有量を有する生成物を生じさせ、またベンゼンも構成する。
【0026】
トランスアルキル化反応ゾーンへの供給は、通常、まず最初に反応ゾーンの流出物に対する間接熱交換によって加熱され、次いで、より暖かい流れとの交換、蒸気、又は炉によって反応温度に加熱される。次いで、供給物は、1つ以上の個々の反応器を備え得る反応ゾーンを通過する。反応ゾーンを通る組み合わされた供給物の通過は、未変換の供給物及び炭化水素生成物を含む流出物流の生成をもたらす。この流出物は通常、反応ゾーンに入る流れに対する間接熱交換によって冷却され、次いで、空気又は冷却水の使用を通じて更に冷却される。流出物は、ストリッピング塔に通され得、そこで流出物中に存在する実質的にすべてのC5及び軽質炭化水素が、オーバーヘッド流に濃縮され、プロセスから除去される。芳香族に富む流れは、本明細書ではトランスアルキル化流出物と称される、正味のストリッピング器残渣として回収される。
【0027】
トランスアルキル化又は不均化反応は、任意の従来の、又は別の便利な様式で本発明の触媒複合体との接触をもたらすことができ、バッチ又は連続型の操作を含み得、連続操作が好ましい。触媒は、有用に、垂直管状反応器の反応ゾーン内に固定床として配設され、アルキル芳香族供給原料は、アップフロー又はダウンフロー様式で床に充填される。
【0028】
トランスアルキル化ゾーンにおいて用いられる条件は、通常、200℃~540℃、好ましくは、200℃~480℃の温度を含む。トランスアルキル化ゾーンは、100kPa~6MPaの絶対圧の広範な範囲の中程度の高圧で操作される。トランスアルキル化反応は、広範囲の空間速度、すなわち、1時間当たりの触媒の重量当たりの投入物の重量にわたってもたらされ得、重量時空間速度は、概して、0.1~20時間-1の範囲内である。
【0029】
トランスアルキル化流出物は、軽質リサイクル流、混合C8芳香族生成物、及び重質芳香族流に分離される。混合されたC8芳香族生成物は、パラ-キシレン及び他の貴重な異性体の回収のために送られ得る。軽質リサイクル流は、ベンゼン及びトルエン回収などの他の用途に転用され得るが、代替的には、部分的にトランスアルキル化ゾーンにリサイクルされる。重質リサイクル流は、実質的にすべてのC9及びより重質の芳香族を含有し、トランスアルキル化反応ゾーンに部分的又は完全にリサイクルされ得る。
【実施例】
【0030】
参考例1-UZM-54及び市販のゼオライトを含有する
UZM-54及び他の市販のゼオライトの特性は、表1に示される。BET表面積の結果は、0.01~0.04のP/P0で収集された取り込みデータ、及び3.5~5.0Åの厚さを使用したt-プロットを使用する修正ルークオール法で計算される。BET外部表面積は、BET総表面積とBETマイクロ細孔表面積との差である。シリカ対アルミナ比は、ICP分析によって決定され、結晶子サイズは、XRDリートベルト精密化による結果である。リートベルト精密化を、斜方晶系MFI構造モデル及びBruker TOPASv6ソフトウェアを使用して実施した。基本的なパラメータアプローチを使用して、器具関連の広がりを考慮した。報告される値は、LVol-FWHM結果であり、これはVoight-FWHMから計算された体積加重塔高さ(LVol)を意味する。使用された形状因子は0.89、すなわち球状結晶子を仮定した。他の市販のゼオライトと比較して、UZM-54は、XRDリートベルト精密化によるより小さい結晶子サイズ、及びより高いBET外部表面積を有する。これらの特性は、その骨格内の質量輸送を改善し、より高いキシレン選択性、より高いフェニル保持、及びトランスアルキル化反応におけるより低い副生成物形成をもたらす。
【0031】
【0032】
実施例2-UZM-54及び市販のゼオライトを含有するトランスアルキル化触媒の調製
UZM-54ゼオライトは、最初にイオン交換される。イオン交換工程は、以下に示される。
【0033】
2573.8gの水及び217.2gの硝酸アンモニウム粉末を、ステンレス鋼ビーカに添加した。200gのUZM-54ゼオライトを、ビーカに添加した。撹拌プレートを75℃に加熱し、スラリーを75℃で1時間保持した。ビーカを撹拌プレートから取り出し、フィルター紙タイプ52を使用して、スラリーをブフナー漏斗で濾過した。硝酸塩溶液を濾過してから、イオン交換された材料を、2500mLの水ですすいで、任意の過剰な硝酸塩を除去した。イオン交換を、更に2回繰り返した。各イオン交換について試料を再スラリー化した。水洗浄が完了した後、試料を100℃で一晩乾燥させた。
【0034】
アンモニウム又はプロトン形態であるイオン交換UZM-54又は市販のMFIゼオライトで構成された粉末配合物、アンモニウム又はプロトン形態であるモルデナイトゼオライト、及び結合剤を、混錬機に入れ、15分間混錬させた。続いて、18~20重量%の硝酸溶液を粉末配合物に添加し、15分間混錬した。ヘプタモリブデン酸アンモニウム(ammonium heptamolybdate、AHM)溶液を添加し、粉末配合物、硝酸溶液、及びAHM溶液を含有する混合物を15分間混錬させた。追加量の水を前述の混合物に添加して、押出可能な生地の稠度を達成するために、35~50重量%のLOI(灼熱減量)を得た。
【0035】
生地を、1/32~1/8インチの範囲内の直径を有するダイホールを備えるダイプレートを通して押出し、未加工の押出物を収集し、100℃で2~12時間乾燥させた。
【0036】
乾燥押出物ベースを10×12メッシュにサイズ決定し、次いで、ボックスオーブン内で、500~580℃の温度で4時間か焼した。
【0037】
実施例3-トルエン及び重質芳香族供給物を用いたトランスアルキル化触媒の試験結果
4つの触媒(A、B、C、D)を、実施例2において説明された手順に従って同じ組成で調製した。触媒AをUZM-54ゼオライトで作製し、一方で触媒B、C、及びDを市販のMFIゼオライト、Hejia Chemical製GNZ、Hejia Chemical製DNZ、及びZeolyst製CBV-2314から作製した。触媒を、1/16インチの円筒として押出し、組成物は、29.6重量%のUZM-54又はMFI、29.6重量%のUZM-14、39.4重量%のアルミナ、及び1.50重量%のMoO3であった。触媒を、50重量%のトルエン及び50重量%のA9+芳香族の供給物を使用して、トランスアルキル化反応で試験した。A9+芳香族供給物は、名目上50重量%のトリメチルベンゼンであり、残りの50重量%は、メチルエチルベンゼン及びジメチルエチルベンゼンなどのA9+成分の混合物からなっていた。トランスアルキル化反応条件は、異なる変換率の範囲を発生させるために、3.5時間-1のWHSV、水素対供給物が3のモル比、2.8MPa(g)(400psig)の圧力、及び310℃~360℃の温度であった。
【0038】
図1及び
図2は、トランスアルキル化反応の結果を示す。UZM-54ゼオライトを含有する触媒と比較して、市販のMFIゼオライト試料で構成された触媒は、任意の所与の変換率においてより低いキシレン選択性及びより高い芳香環損失を示す。モル%における芳香環損失は、[(生成物中の芳香環の供給モルで芳香環のモル/供給物中の芳香環のモル)
*100%]によって定義されることに留意されたい。これは、プロセス内で再循環される未変換供給物中で損失する芳香環の量を表す。UZM-54ゼオライトから作製された触媒について観察されたより高いキシレン選択性及びより低い芳香環損失は、市販のMFIゼオライト試料と比較して、UZMー54が、アルキル化供給物中の芳香族化合物を所望のキシレン生成物に変換することにより効率的であり、生成物で望まれないまでの芳香環の損失が少なくなることを示す。
【0039】
特定の実施形態
以下を特定の実施形態と併せて説明するが、本明細書は、前述の説明及び添付の特許請求の範囲の範囲を例解するものであり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0040】
本発明の第1の実施形態は、UZM-54ゼオライトと、モルデナイトゼオライトと、アルミナ、シリカ、又はこれらの組み合わせを含む結合剤と、周期表の第VIB(6)族、第VIIB(7)族、第VIII(8~10)族、及び第IVA(14)族のうちの1つ以上から選択される金属と、を含む芳香族炭化水素の変換に好適な組成物である。本発明の一実施形態は、本項の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、触媒は、20~60重量%のUZM-54ゼオライトと、20~60重量%のモルデナイトゼオライトと、10~40重量%の結合剤と、0.1~10重量%の金属と、を含む。本発明の一実施形態は、本項の第1の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、UZM-54ゼオライトは、500wppm未満のNaを有する。本発明の一実施形態は、本項の第1の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、結合剤は、アルミナを含む。本発明の一実施形態は、本項の第1の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、金属は、Mo、Ni、Re、Pt、又はPdのうちのひとつ以上を含む。本発明の一実施形態は、本項の第1の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、触媒は、20~60重量%のUZM-54ゼオライトと、20~60重量%のモルデナイトゼオライトと、10~40重量%の結合剤と、0.1~10重量%の金属と、を含み、金属は、Mo、Ni、Re、Pt、又はPdのうちの1つ以上を含む。本発明の一実施形態は、本項の第1の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、UZM-54ゼオライトは、500wppm未満のNaを有する。本発明の一実施形態は、本項の第1の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、結合剤は、アルミナを含む。
【0041】
本発明の第2の実施形態は、C7、C9、C10、及びC11+芳香族のうちの1つ以上を含む供給流をトランスアルキル化して、供給流の濃度に対して増加した濃度のC8芳香族を有する生成物流を取得するためのプロセスであって、供給流をトランスアルキル化条件で、UZM-54ゼオライトと、モルデナイトゼオライトと、アルミナ、シリカ、又はこれらの組み合わせを含む結合剤と、周期表の第VIB(6)族、第VIIB(7)族、第VIII(8~10)族、及び第IVA(14)族のうちの1つ以上から選択される金属と、を含む触媒と接触させることを含む。本発明の一実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、供給流は、ベンゼンを更に含む。本発明の一実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、供給流は、C8芳香族を更に含む。本発明の一実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、供給流は、2~4個の環を有する芳香族化合物を更に含む。本発明のある実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、供給流は、トランスアルキル化生成物流からのC8芳香族の分留からの残渣流を更に含む。本発明の一実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、トランスアルキル化条件は、200℃~540℃の温度、100kPa~6MPa絶対値の圧力、又は0.1~20時間-1の空間速度のうちの1つ以上を含む。本発明の一実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、触媒は、20~60重量%のUZM-54ゼオライトと、20~60重量%のモルデナイトゼオライトと、10~40重量%の結合剤と、0.1~10重量%の金属と、を含む。本発明の一実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、UZM-54ゼオライトは、500wppm未満のNaを有する。本発明の一実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、結合剤は、アルミナを含む。本発明の一実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、金属を含むその金属は、Mo、Ni、Re、Pt、又はPdのうちの1つ以上を含む。本発明の一実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、触媒は、20~60重量%のUZM-54ゼオライトと、20~60重量%のモルデナイトゼオライトと、10~40重量%の結合剤と、0.1~10重量%の金属と、を含み、金属は、Mo、Ni、Re、Pt、又はPdのうちの1つ以上を含む。本発明の一実施形態は、本項の第2の実施形態から本項の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてであり、結合剤は、アルミナを含む。
【0042】
更に詳述することなく、前述の説明を使用して、当業者が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明を最大限まで利用し、かつ本発明の本質的な特性を容易に確認することができ、本発明の様々な変更及び修正を行い、様々な使用及び条件に適合させることができると考えられる。したがって、先行する好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなるようにも本開示の残りを限定するものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を網羅することを意図するものである。
【0043】
上記では、すべての温度は摂氏度で記載され、すべての部及び百分率は、別途記載のないかぎり、重量基準である。