(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】カルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法
(51)【国際特許分類】
C07D 233/64 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
C07D233/64 106
(21)【出願番号】P 2022549250
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 CN2020075490
(87)【国際公開番号】W WO2021163828
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】522323502
【氏名又は名称】シャンハイ ホイウェン バイオテック コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、フォン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ションピン
(72)【発明者】
【氏名】トン、ティンティン
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-046451(JP,A)
【文献】特開2007-314467(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1915980(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110343072(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)原料を処理して濾液を得、濾過残留物を使用のために準備する原料処理ステップ;
2)ステップ1)で得られた濾液をイオン交換樹脂で吸着させ、イオン交換樹脂と濾液の質量比を1:0.5~3とし;吸着完了後、樹脂を純水で洗浄し、廃液は廃棄し;水で洗浄完了後、質量分率0.5~5%の酢酸溶液を加えて洗浄し、酢酸溶液の消耗量は樹脂量の1~10倍であり;酢酸を加えた時点から時間を計り、酢酸溶出液を収集する精製ステップ;
3)ステップ2)で収集した液体を乾燥するまでスピン濃縮し、更に純水を加えて減圧蒸発して乾燥させ、数回繰り返す濃縮ステップ;
4)カルノシン化合物の含有量に対する最終生成物の要件に従ってステップ3)で得られた液体にデキストリンを加えて調製溶液に製造し、調製溶液を80~90℃に昇温させ、30~50分間保温して滅菌させる滅菌ステップ;
5)ステップ4)で得られた滅菌溶液を噴霧乾燥させ、カルノシンに富む試料を得る噴霧乾燥ステップ;
を含
み、ステップ2)において、イオン交換樹脂は、陰イオン交換樹脂であることを特徴とする、カルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
【請求項2】
ステップ1)において、原料は海産魚組織であり、処理ステップは、海産魚組織を取り、微細な固体に粉砕させ;予備粉砕された固体を抽出槽に入れ、純水を加え、純水と固形物の質量比は0.5~2:1であり、50℃~100℃に昇温させ、2~6時間加水分解させ、濾過して第1回目の抽出物を得;第1回目の抽出して得られた濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比は0.5~2:1であり、50℃~100℃に昇温させ、2~6時間加水分解し、濾過して第2回目の抽出溶液を得、第1回目の抽出溶液と第2回目の抽出溶液を合わせて濾液とすることを特徴とする、請求項1に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
【請求項3】
海産魚組織は、魚肉、魚骨、魚皮の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
【請求項4】
粉砕は粗粉砕機により粗粉砕し、更に粉砕して微粉砕することを特徴とする、請求項1に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
【請求項5】
ステップ2)において、酢酸溶液の消耗量は樹脂量の1~10倍であることを特徴とする、請求項1に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
【請求項6】
ステップ4)において、調製溶液を85℃に昇温させ、45分間保温して滅菌することを特徴とする、請求項1に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
【請求項7】
第2回目の抽出した濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比は0.5~2:1であり、40~70℃に昇温させ、質量分率0.05%~10%のアルカリ性プロテアーゼを加え、1~4時間加水分解し、濾過し、濾液を粘稠な状態に濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末の副産物を得ることを特徴とする、請求項2に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
【請求項8】
純水と濾過残留物の質量比は1~1.8:1であることを特徴とする、請求項
7に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
【請求項9】
ステップ1)において、原料は海産魚製品の加工過程で得られた魚汁であることを特徴とする、請求項1に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルノシン化合物の製造プロセスの技術分野に関し、特に、低レベルの砒素を含む高品質のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルノシン(L-Carnosine)は、学名はβ-アラニル-L-ヒスチジンであり、β-アラニン及びL-ヒスチジンの2種類のアミノ酸から構成されるジペプチドであり、結晶性固体である。カルノシン化合物はさまざまな形で存在し、カルノシン、アンセリン、セタセインなどを含み、その化学構造はすべてβ-アラニンとL-ヒスチジン単位を含むが、アンセリン及びセチルカルノシンのヒスチジン残基のイミダゾール環上の異なるN原子がメチル基により置換されている。動物の筋肉と脳の組織には、高濃度のカルノシン化合物がで含まれており、当該化合物は強力な抗酸化作用があり、人体に有益である。カルノシンは、酸化ストレス中に細胞膜の脂肪酸を過酸化することにより形成される活性酸素ラジカル(ROS)及びα、β不飽和アルデヒドを除去できることが示されている。最近は、カルノシン化合物を機能性物質とした食品が市販されており、主に老化防止、尿酸低下、スポーツドリンクなどに使用されている。
【0003】
現在、報告されたカルノシン化合物の抽出及び製造のプロセス方法には:有酸素分解、酵素分解、陽イオン交換樹脂カラムを使用した精製があり、これらのプロセスで製造された試料は、カルノシンの含有量が低く、通常は10%未満である。更に大きな問題は、砒素の含有量が基準を超えて150ppm以上に達して、食品原料の潜在的な安全リスクを引き起こすことである。カルノシンの含有量が少ないため、その効果が低く、作用効果も低い。カルノシン化合物は他にも合成があるが、有毒で有害な試薬を大量に使用しているため、環境を汚染し、且つ製造コストが高く、食品業界への使用には適していない。従って、食品産業に適したカルノシン化合物を製造するためのプロセス方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術に存在する上記問題を克服し、カルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的目的を実現し、上記技術的効果を達成するために、本発明は、下記の技術的解決手段を通じて実現する。
【0006】
カルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法は、以下のステップを含む:
1)原料を処理して濾液を得、濾過残留物を使用のために準備する原料処理ステップ;
2)ステップ1)で得られた濾液をイオン交換樹脂で吸着させ、イオン交換樹脂と濾液の質量比は1:0.5~3であり;吸着完了後、樹脂を純水で洗浄し、廃液は廃棄し;水で洗浄完了後、質量分率0.5~5%の酢酸溶液を加えて洗浄し、酢酸溶液の消耗量は樹脂量の1~10倍であり;酢酸を加えた時間を計り、酢酸溶出液を収集する精製ステップ;
3)ステップ2)で収集した液体を乾燥するまでスピン濃縮し、更に純水を加えて減圧蒸発して乾燥させ、数回繰り返す濃縮ステップ;
4)カルノシン化合物の含有量に対する最終生成物の要件に従ってステップ3)で得られた液体にデキストリンを加えて調製溶液に製造し、調製溶液を80~90℃に昇温させ、30~50分間保温して滅菌させる滅菌ステップ;
5)ステップ4)で得られた滅菌溶液を噴霧乾燥させ、カルノシンに富む試料を得る噴霧乾燥ステップ。
【0007】
本発明の好ましい解決手段において、ステップ1)における原料は海産魚組織であり、処理ステップは、海産魚組織を取り、微細な固体に粉砕し;予備粉砕された固体を抽出槽に入れ、純水を加え、純水と固形物の質量比は0.5~2:1とし、50℃~100℃に昇温させ、2~6時間加水分解し、濾過して第1回目の抽出溶液を得;第1回目の抽出後の濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比は0.5~2:1であり、50℃~100℃に昇温させ、2~6時間加水分解し、濾過して第2回目の抽出溶液を得、第1回目の抽出溶液と第2回目の抽出溶液を合わせて濾液とする。
【0008】
更に、海産魚組織は、魚肉、魚骨及び魚皮の少なくとも1つを含む。
【0009】
更に、粉砕は粗粉砕機により粗粉砕され、更に粉砕して微粉砕することである。
【0010】
更に、ステップ2)において、イオン交換樹脂は、陰イオン交換樹脂である。
【0011】
更に、ステップ2)において、酢酸溶液の消耗量は樹脂量の1~10倍である。
【0012】
更に、ステップ4)において、調製溶液を85℃に昇温させ、45分間保温して滅菌する。
【0013】
本発明は、カルノシン化合物を抽出する過程で加水分解タンパク質粉末副産物を得ることができ、具体的なステップは、第2回目の抽出後の濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比は0.5~2:1であり、40~70℃に昇温させ、質量分率0.05%~10%のアルカリ性プロテアーゼを加え、1~4時間加水分解し、濾過し、濾液を粘稠な状態に濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末副産物を得る。
【0014】
更に、純水と濾過残留物の質量比は1~1.8:1である。
【0015】
本発明の別の好ましい解決手段において、ステップ1)における原料は海産魚製品の加工過程で得られた魚汁である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有益な効果は:
1.本発明は、海産魚組織に対して予備粉砕、抽出、精製、濃縮、滅菌、噴霧乾燥などのステップを実行して、食品に使用される機能性物質を得、当該機能性物質は水溶性が高く、有意な抗酸化機能、老化防止機能、尿酸低下機能があり、食品業界では天然抗酸化物質と尿酸低下の食品療法物質、即ちカルノシン化合物として使用されている。
【0017】
2.本発明は、従来の化学合成による環境汚染及び複雑な合成ステップによる高コストを回避すると同時に、海水魚抽出物によく存在する過剰な砒素含有量の問題を解決して、製品がより安全になることができる。
【0018】
3.本発明は、同時に加水分解タンパク質粉末の副産物を得ることができ、資源利用率を向上させ、より高い経済的及び社会的価値を有する。
【0019】
当然のことながら、本発明の製品のいずれかは上記利点のすべてを同時に達成する必要はない。
【0020】
本発明の実施例の技術的解決策をより明確に説明するために、以下は、実施例の説明に使用される図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明におけるの図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば何らの創作努力をしなくても、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例1~4及び比較例1~4の液体クロマトグラムである。
【
図2】本発明のいくつかの実施例及び比較例の砒素スポットの検出結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決策を明確で完全に説明する。勿論、説明される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的労働を払わずに当業者によって得られた他の実施例は、全て本発明の保護範囲に含まれる。
【0023】
実施例1
マグロの組織を取り、微細な固体に粉砕し;500gの予備粉砕された固体を抽出槽に入れ、750mLの純水を加え、85℃に昇温させ、2時間加水分解し、濾過して第1目の回抽出溶液を得;第1回目の抽出後の濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比を0.75:1とし、85℃に昇温させ、2時間加水分解し、濾過して第2回目の抽出溶液を得、第1回目の抽出溶液と第2回目の抽出溶液を合わせて濾液とし、使用するための濾過残留物を準備し;濾液を717アニオン交換樹脂で吸着させ、イオン交換樹脂と濾液の質量比を1:2とし;吸着完了後、樹脂を純水で洗浄し、廃液を廃棄し;水で洗浄完了後、質量分率が2.5%の酢酸溶液2000mlを加えて洗浄し、酢酸を加えた時点から時間を計り、酢酸溶出液を収集し;収集した液体をスピン濃縮して乾燥させ、更に100mlの純水を加えて減圧蒸発して乾燥させ、1回繰り返し、更に100mlの純水を加えて減圧蒸発して乾燥させた;得られた液体は、カルノシン化合物の含有量に対する最終生成物の要件に従ってデキストリンを加えて調製溶液に製造し、調製溶液を85℃に昇温させ、45分間保温して滅菌し;得られた滅菌溶液を噴霧乾燥させて、カルノシンに富む試料を得、試料は白又は薄灰色であり、酢酸の臭はなかった。
【0024】
第2回目の抽出後の濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比は0.75:1とし、55℃に昇温させ、質量分率が0.5%のアルカリ性プロテアーゼを加え、2時間加水分解し、濾過し、濾液を粘稠な状態に濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末副産物を得た。
【0025】
実施例2
マグロの組織を取り、微細な固体に粉砕し;500gの予備粉砕された固体を抽出槽に入れ、250mLの純水を加え、50℃に昇温させ、6時間加水分解し、濾過して第1回目の抽出溶液を得;第1回目の抽出後の濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比を0.5:1とし、50℃に昇温させ、6時間加水分解し、濾過して第2回目の抽出溶液を得、第1回目の抽出溶液と第2回目の抽出溶液を合わせて濾液とし、使用するための濾過残留物を準備し;濾液を717アニオン交換樹脂で吸着させ、イオン交換樹脂と濾液の質量比を1:0.5とし;吸着完了後、樹脂を純水で洗浄し、廃液は廃棄し;水で洗浄完了後、質量分率が0.5%の酢酸溶液500mlを加えて洗浄し、酢酸を加えた時点から時間を計り、酢酸溶出液を収集し;収集した液体をスピン濃縮して乾燥させ、更に100mlの純水を加えて減圧蒸発して乾燥させ、1回繰り返し、更に100mlの純水を加えて減圧蒸発して乾燥させ;得られた液体は、カルノシン化合物の含有量に対する最終生成物の要件に従ってデキストリンを加えて調製溶液に製造し、調製溶液を80℃に昇温させ、50分間保温して滅菌し;得られた滅菌溶液を噴霧乾燥させて、カルノシンに富む試料を得、試料は白又は薄灰色であり、酢酸臭はなかった。
【0026】
第2回目の抽出後の濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比は0.5:1とし、40℃に昇温させ、質量分率が0.05%のアルカリ性プロテアーゼを加え、4時間加水分解し、濾過して濾液を粘稠な状態に濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末副産物を得た。
【0027】
実施例3
マグロの組織を取り、微細な固体に粉砕し;500gの予備粉砕された固体を抽出槽に入れ、1500mLの純水を加え、100℃に昇温させ、4時間加水分解し、濾過して第1回目の抽出溶液を得;第1回目の抽出後の濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比を2:1とし、100℃に昇温させ、4時間加水分解し、濾過して第2回目の抽出溶液を得、第1回目の抽出溶液と第2回目の抽出溶液を合わせて濾液とし、使用するための濾過残留物を準備した;濾液を717アニオン交換樹脂で吸着させ、イオン交換樹脂と濾液の質量比を1:3とし;吸着完了後、樹脂を純水で洗浄し、廃液は廃棄し;水で洗浄完了後、質量分率が5%の酢酸溶液1000mlを加えて洗浄し、酢酸を加えた時点から時間を計り、酢酸溶出液を収集し;収集した液体をスピン濃縮して乾燥させ、更に100mlの純水を加えて減圧蒸発して乾燥させ、1回繰り返し、更に100mlの純水を加えて減圧蒸発して乾燥させ;得られた液体は、カルノシン化合物の含有量に対する最終生成物の要件に従ってデキストリンを加えて調製溶液に製造し、調製溶液を90℃に昇温させ、30分間保温して滅菌し;得られた滅菌溶液を噴霧乾燥させて、カルノシンに富む試料を得、試料は白又は薄灰色であり、酢酸臭はなかった。
【0028】
第2回目の抽出後の濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比は0.75:1とし、55℃に昇温させ、質量分率が0.5%のアルカリ性プロテアーゼを加え、2時間加水分解し、濾過して濾液を粘稠な状態に濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末副産物を得た。
【0029】
実施例4
魚肉加工品の加工過程で得られた魚汁を原料として、本実施例で使用した500gの蒸しマグロの魚汁を濾紙で濾過し、魚汁の固体濾過残留物を除去して魚汁濾液を得た。濾液を717アニオン交換樹脂で吸着させ、イオン交換樹脂と濾液の質量比を1:2とし;吸着完了後、樹脂を純水で洗浄し、廃液は廃棄し;水で洗浄完了後、質量分率が2.5%の酢酸溶液2000mlを加えて洗浄し、酢酸を加えた時点から時間を計り、酢酸溶出液を収集し;収集した液体をスピン濃縮して乾燥させ、更に100mlの純水を加えて減圧蒸発して乾燥させ、1回繰り返し、更に100mlの純水を加えて減圧蒸発して乾燥させ;得られた液体は、カルノシン化合物の含有量に対する最終生成物の要件に従ってデキストリンを加えて調製溶液に製造し、調製溶液を85℃に昇温させ、45分間保温して滅菌し;得られた滅菌溶液を噴霧乾燥させて、カルノシンに富む試料を得、試料は白又は薄灰色であり、酢酸臭はなかった。
【0030】
第2回目の抽出後の濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比は0.75:1とし、55℃に昇温させ、質量分率が0.5%のアルカリ性プロテアーゼを加え、2時間加水分解し、濾液を濾過して粘稠な状態に濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末副産物を得た。
【0031】
比較例1
500gのマグロミンチを製造し、750mlの純水を加えて85℃に昇温させ、2回抽出し、2時間/回であり、濾過した。濾液を500gの活性化732カチオン交換樹脂で吸着させ、吸着後の流出液はpH<4であり、廃棄した。吸着完了後、1000mlの純水で樹脂を洗浄し、濾液を廃棄した。水で洗浄完了後、2000mlの2.5%アンモニア水を加えて洗浄し、アンモニア水を加えた時点から時間を計り、2000mlのアンモニア水溶出液を収集した。アンモニア水溶出液を乾燥するまで濃縮し、100mLの水を加えて粘稠になるまで減圧濃縮し、滅菌後噴霧乾燥して、カルノシン試料を得、試料は白色又は薄灰色であり、アンモニア臭はなかった。
【0032】
濾過残留物を抽出して750mLの水を加え、55℃に昇温させ、0.5%のアルカリプロテアーゼを加え、2時間加水分解し、濾過し、濾液を粘稠になるまで濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末を得た。
【0033】
比較例2
500gのマグロミンチを製造し、750mlの純水を加えて85℃に昇温させ、2回抽出し、2時間/回であり、濾過した。濾液を500gのAB-8樹脂で吸着させ、ロード後、純水ですすぎ、流出液の糖度が0になるまで洗浄し、試料流出液及び水で洗浄した部分を収集し、濃縮し、秤量し、固体含有量を測定し、濃縮溶液を噴霧乾燥させ、アンセリン製品を得、噴霧乾燥させ、カルノシン試料を得、試料は白色又は薄灰色であった。
【0034】
抽出した濾過残留物に750mLの水を加え、55℃に昇温させ、0.5%のアルカリプロテアーゼを加え、2時間加水分解し、濾過し、濾液を粘稠になるまで濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末を得た。
【0035】
比較例3
500gのマグロミンチを製造し、750mlの純水を加えて85℃に昇温させ、2回抽出し、2時間/回であり、濾過した。濾液を濃縮し、秤量し、固体含有量を測定し、濃縮溶液を噴霧乾燥させ、アンセリン製品を得、噴霧乾燥させ、カルノシン試料を得、試料は白色又は薄灰色であった。
【0036】
抽出した濾過残留物に750mLの水を加え、55℃に昇温させ、0.5%の酸性プロテアーゼを加え、2時間加水分解し、濾過し、濾液を粘稠になるまで濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末を得た。
【0037】
比較例4
500gのマグロミンチを製造し、750mlの純水を加えて50℃に昇温させ、2回抽出し、2時間/回であり、濾過した。濾液に500gの活性化717アニオン交換樹脂を吸着させ、吸着後の流出液をpH>10にし、高砒素廃液を廃棄した。吸着完了後、1000mlの純水で樹脂を洗浄し、濾液を廃棄した。水で洗浄完了後、2000mlの2.5%酢酸を加えて洗浄し、酢酸を加えた時点から時間を計り、2000mlの酢酸溶出液を収集した。酢酸溶出液を乾燥するまで濃縮し、100mLの水を加えて減圧蒸発して乾燥させ、当該方法で残留酢酸を除去し、1回繰り返し、更に100mlの水を加え、噴霧乾燥し、カルノシン試料を得、試料は白色又は薄灰色であり、酢酸の臭はなかった。
【0038】
抽出した濾過残留物に750mLの水を加え、55℃に昇温させ、0.5%のアルカリプロテアーゼを加え、2時間加水分解し、濾過し、濾液を粘稠になるまで濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末を得た。
【0039】
実施例1~4及び比較例1~4の検出結果の比較は下記の通りである。
【0040】
【0041】
本発明における液体クロマトグラフィーの検出条件は下記の通りである:
カラム:C18逆相カラム(4.6×150mm Shiseido Capcell Pak C18 ODS)
検出波長:220nm;
移動相:相A:リン酸二水素アンモニウム-ペンタンスルホン酸ナトリウム;相B:アセトニトリル。
【0042】
【0043】
また、実施例1、3及び比較例1~3に対して砒素スポット検出を行い、検出の結果は
図2に示される通りであり、色が濃いほど砒素の含有量が高いことを示す。
【0044】
本発明により提供されるカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法において、主要製品のカルノシン含有量は40%以上であり、砒素含有量は2ppm未満であり、食品産業のニーズを満した。
【0045】
以上で開示された好ましい実施例は、本発明を説明するためのみに使用される。好ましい実施例は、すべての詳細を説明するものではなく、本発明を具体的な実施形態のみに限定するものでもない。明らかに、明細書の内容に照らして、多くの修正及び変形が可能である。本明細書で選択し具体的に説明したこれらの実施例は、本発明の原理及び実際の使用をよりよく説明し、当業者が本発明を十分に理解し、利用できるようにするためである。本発明は、請求の範囲及びその全範囲と同等物によってのみ制限される。
[付記]
本開示には以下の態様<1>~<10>が含まれる。
<1>
1)原料を処理して濾液を得、濾過残留物を使用のために準備する原料処理ステップ;
2)ステップ1)で得られた濾液をイオン交換樹脂で吸着させ、イオン交換樹脂と濾液の質量比を1:0.5~3とし;吸着完了後、樹脂を純水で洗浄し、廃液は廃棄し;水で洗浄完了後、質量分率0.5~5%の酢酸溶液を加えて洗浄し、酢酸溶液の消耗量は樹脂量の1~10倍であり;酢酸を加えた時点から時間を計り、酢酸溶出液を収集する精製ステップ;
3)ステップ2)で収集した液体を乾燥するまでスピン濃縮し、更に純水を加えて減圧蒸発して乾燥させ、数回繰り返す濃縮ステップ;
4)カルノシン化合物の含有量に対する最終生成物の要件に従ってステップ3)で得られた液体にデキストリンを加えて調製溶液に製造し、調製溶液を80~90℃に昇温させ、30~50分間保温して滅菌させる滅菌ステップ;
5)ステップ4)で得られた滅菌溶液を噴霧乾燥させ、カルノシンに富む試料を得る噴霧乾燥ステップ;
を含むことを特徴とする、カルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
<2>
ステップ1)において、原料は海産魚組織であり、処理ステップは、海産魚組織を取り、微細な固体に粉砕させ;予備粉砕された固体を抽出槽に入れ、純水を加え、純水と固形物の質量比は0.5~2:1であり、50℃~100℃に昇温させ、2~6時間加水分解させ、濾過して第1回目の抽出物を得;第1回目の抽出して得られた濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比は0.5~2:1であり、50℃~100℃に昇温させ、2~6時間加水分解し、濾過して第2回目の抽出溶液を得、第1回目の抽出溶液と第2回目の抽出溶液を合わせて濾液とすることを特徴とする、<1>に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
<3>
海産魚組織は、魚肉、魚骨、魚皮の少なくとも1つを含むことを特徴とする、<1>に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
<4>
粉砕は粗粉砕機により粗粉砕し、更に粉砕して微粉砕することを特徴とする、<1>に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
<5>
ステップ2)において、イオン交換樹脂は、陰イオン交換樹脂であることを特徴とする、<1>に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
<6>
ステップ2)において、酢酸溶液の消耗量は樹脂量の1~10倍であることを特徴とする、<1>に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
<7>
ステップ4)において、調製溶液を85℃に昇温させ、45分間保温して滅菌することを特徴とする、<1>に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
<8>
第2回目の抽出した濾過残留物に純水を加え、純水と濾過残留物の質量比は0.5~2:1であり、40~70℃に昇温させ、質量分率0.05%~10%のアルカリ性プロテアーゼを加え、1~4時間加水分解し、濾過し、濾液を粘稠な状態に濃縮し、噴霧乾燥させて加水分解タンパク質粉末の副産物を得ることを特徴とする、<2>に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
<9>
純水と濾過残留物の質量比は1~1.8:1であることを特徴とする、<8>に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。
<10>
ステップ1)において、原料は海産魚製品の加工過程で得られた魚汁であることを特徴とする、<1>に記載のカルノシンに富む化合物を効率的に製造するためのプロセス方法。