(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】膜電極接合体を製造するための生産設備および方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1004 20160101AFI20240122BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20240122BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/0273
(21)【出願番号】P 2022556256
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2021054169
(87)【国際公開番号】W WO2021190838
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】102020203675.6
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522100316
【氏名又は名称】セルセントリック・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー・ホリネク
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ドイチュ
(72)【発明者】
【氏名】ファービアン・エバスペヒャー
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-084457(JP,A)
【文献】特開平08-085032(JP,A)
【文献】特開2018-190535(JP,A)
【文献】特開2011-028915(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141215(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/10
H01M 8/02
C25B 9/00
B23P 19/00
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する製造工程が進行する複数のワークステーション(10、11、12、13、20)を備えた、膜電極接合体またはフレーム付き膜電極接合体(2)を製造するための生産設備(1)であって、
主ライン(H)と少なくとも1つの副ライン(N1、N2)とが設けられており、
前記少なくとも1つの副ライン(N1、N2)が、中央ワークステーション(20)を経た後に前記主ライン(H)から分岐し、各前記副ライン(N1、N2)におけるそれぞれ少なくとも1つの分散ワークステーション(11、12)を経た後に、前記中央ワークステーション(20)に至る前に再び前記主ライン(H)に合流し、
前記中央ワークステーション(20)が、接着剤を塗布するための少なくとも1つの作業セクション(21)を含み、
前記分散ワークステーション(
11、12)のうちの少なくともいくつかが、さらなる材料および/または層(3、5、6、7)を少なくとも接合および/または位置決めするために形成されていることを特徴とする、前記生産設備(1)。
【請求項2】
前記接着剤を塗布するための作業セクション(21)が、前記接着剤(4)を印刷するための装置を含むことを特徴とする、請求項1に記載の生産設備(1)。
【請求項3】
前記接着剤(4)を印刷するための装置が、デジタル印刷機として形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の生産設備(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの副ライン(N1、N2)の合流前または分岐後の前記主ライン(H)に少なくとも1つのさらなる分散ワークステーション(10、13)が設けられていることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の生産設備(1)。
【請求項5】
前記
少なくとも1つのさらなる分散ワークステーション(
10、13)のうちの少なくとも1つが、材料および/または製造済み半製品もしくは製造済み膜電極接合体もしくはフレーム付き膜電極接合体(2)を裁断するための作業セクションを含むことを特徴とする、請求項
4に記載の生産設備(1)。
【請求項6】
前記中央ワークステーション(20)が、前記接着剤(4)を活性化/硬化させるためのさらなる作業セクション(22)を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の生産設備(1)。
【請求項7】
前記中央ワークステーション(20)が、少なくとも塗布された前記接着剤(4)を測定するためのさらなる作業セクション(23)を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の生産設備(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の生産設備(1)を用いて膜電極接合体またはフレーム付き膜電極接合体を製造するための方法であって、
第1の層(3)が前記主ライン(H)を介して供給され、その後、前記中央ワークステーション(20)において第1の所定のパターンに従った前記第1の層(3)への接着剤の塗布が行われ、その後、前記接着剤(4)付きの前記第1の層(3)が、第1の副ライン(N1)を通過するものであり、そこで分散ワークステーション(11)において第2の層(5)が精密接合され、その後、貼り合わせられた前記層(3、5)が、前記主ライン(H)において前記中央ワークステーション(20)を再度通過するものであり、そこで第2の所定のパターンに従った前記第2の層(5)への接着剤の塗布が行われ、その後、全ての副ライン(N1、N2)が少なくとも1度通過されるまでこの過程が繰り返されることを特徴とする、前記方法。
【請求項9】
各前記層(3、5、6)に適合するパターンを用いた前記接着剤の塗布が、前記層(3、5、6)の処理状態に応じてその時に必要とされるパターンのデジタル印刷によって、特に前記層(3、5、6)が前記主ライン(H)に沿って移動している間に行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の層(3)の前記主ライン(H)への供給が、前記ライン(H、N1、N2)のそれぞれにおける少なくとも1つの中間製品が同時に異なる処理工程によって処理されるようにタイミングを調節して行われることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による膜電極接合体またはフレーム付き膜電極接合体を製造するための生産設備に関する。また、本発明は、この種の生産設備を用いてこのような膜電極接合体またはフレーム付き膜電極接合体を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜電極接合体を製造するための生産設備は、原則的に先行技術から知られている。したがって、例えば特許文献1には、燃料電池用の膜電極接合体を製造するための方法および装置が記載されている。この場合、複数の層およびその間に配置された接着剤からなる膜電極接合体をほぼ連続的な製造プロセスで製造するために、様々な処理ステーションが相前後して配置される。特許文献2もこの主題を扱っており、代替的な装置を提示しているが、この装置は基本的に同様に構成されており、つまり、それぞれ全く同じ作業工程が実施される相前後して配置されたワークステーションを含む。
【0003】
このような生産設備の構成は、構成内の様々なワークステーションが多重に必要になるため、相応に複雑で高価である。
【0004】
さらなる先行技術に関して、例えば特許文献3から知られている、いわゆるフレーム付き膜電極接合体も挙げることができる。フレーム付き膜電極接合体には、その製造に関して基本的に同じ生産技術基盤が有効である。
【0005】
さらなる先行技術に関して、さらに特許文献4および特許文献5を挙げることができる。これらの文献は、接着剤の印刷、特に膜電極接合体の製造用の接着剤のデジタル印刷を扱っている。この場合、接着剤は、膜電極接合体またはフレーム付き膜電極接合体に組み立てられる様々な層に、または先に積層された接着剤層自体にも塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】DE102015010440A1
【文献】DE102016000974A1
【文献】DE102015010419A1
【文献】DE102015010422A1
【文献】DE102016006225A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、膜電極接合体またはフレーム付き膜電極接合体を製造するための改良された生産設備、およびこのような生産設備を用いて膜電極接合体を製造するための方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、請求項1、ここでは特に請求項1の特徴部分に記載された特徴を備えた生産設備によって解決される。このような設備を用いた膜電極接合体またはフレーム付き膜電極接合体を製造するための方法は、請求項8から明らかになる。両方の場合において、好ましい形態および発展構成はこれら請求項のそれぞれに従属する従属請求項に示されている。
【0009】
膜電極接合体(MEA)またはフレーム付き膜電極接合体(MEFA:Membrane Electrode Frame Assembly)を製造するための生産設備は、冒頭で言及した先行技術に記載された生産設備と同様に、連続する製造工程が進行する複数のワークステーションを含む。さて、本発明による生産設備は、主ラインと少なくとも1つの副ラインとが設けられているように構成されており、副ラインは主ライン中の中央ワークステーションを経た後に主ラインから分岐し、各副ラインにおけるそれぞれ少なくとも1つの分散ワークステーションを経た後に、主ラインに、正確には中央ワークステーションに至る前に再び主ラインに合流する。この構成によって、主ラインを介して供給される半製品を中央ワークステーションにおいて処理し、次に副ラインのうちの1つに迂回させ、そこでそれまでの構造体をさらに処理し、この構造体を再び主ラインに送り返し、そこで再度処理することを可能とし、その際、中央ワークステーションにおける両方の処理工程を原則的に互いに異なるものとすることができる。この場合、本発明による生産設備は、中央ワークステーションとして、接着剤を塗布するための少なくとも1つの作業セクションを含むワークステーションを意図する。したがって、接着剤の塗布は生産設備において好適には常に中央ワークステーションにおいて行われ、一方、分散ワークステーションにおいてさらなる材料または層が接合および/または位置決めされることによって、その後、再度中央ワークステーションにおいてさらなる接着剤の層で被覆される。
【0010】
この場合、特定の設備部分の多重使用は決定的な利点であるので、接着剤が塗布される中央ワークステーションのこの多重使用は、これにより生産設備への必要な投資を大幅に低減する。このことは、これは思想の有利な発展構成に相当し得るが、特に、塗布状態を検査するための後続の測定ステーションが中央ワークステーションに備えられている場合、例えば比較的複雑で費用のかかる中央ワークステーションが必要となる印刷法によって行うことができる接着剤の塗布に特に有効である。
【0011】
したがって、本発明による生産設備では、中央ワークステーションにおいて常に少なくとも接着剤が塗布される。ただし、どのような処理状態で半製品が中央ワークステーションに到達するかに応じて、接着剤の塗布に対する要求が異なり得るので、例えば、接着剤を第1の層、第2の層、第3の層、またはその他に塗布しなければならないかに応じて様々な塗布パターンで接着剤が塗布される。
【0012】
分散ワークステーションでの接合は、特にそこまで既に生産された半製品へのさらなる層の積層を含み、半製品には、特にこの積層されたさらなる層を固定するために、予め中央ワークステーションにおいて接着剤が所望の箇所に付与された。その後、接合は、例えばロボットによって、好適には静止状態で、または場合によっては半製品用のワークピース搬送装置の移動中にも行われてもよい。半製品の静止状態では、直線軸を介した位置決めあるいは接合も可能であろう。移動中には、例えば真空シリンダーを介して、または互いに重なり合って走行する2台の工具搬送装置によって相当する接合過程が実現され得る。
【0013】
本発明による生産設備の非常に好都合な発展構成によれば、接着剤の塗布が印刷、特にここではデジタル印刷によって行われることが意図されていてもよい。この場合、様々な印刷法、例えばスクリーン印刷法を使用することができる。その場合、スクリーン印刷法は、半製品の静止状態において、必要に応じて要求される塗布のそれぞれのパターンに対応する様々なスクリーンを用いて実施される。スクリーンは一種のマガジンの前にあてがうことができる。代替的に、対応するスタンプを用いたレリーフ印刷法または凹版印刷法も考えられ、この方法は、スクリーン印刷法と同様に様々なスタンプのテンプレートを必要とするが、この場合、半製品の移動中に実施可能であるという利点を有する。しかし、特に好都合で効率的であるのは、同様に半製品の移動中に行うことができるデジタル印刷法である。これにより、保存された様々な印刷テンプレートを介して極めて容易に必要なパターンがそれぞれのプロセス工程について選定され、デジタル印刷によって容易かつ迅速に実現されることが可能となっている。仮にパターンを調節する際もここでは非常に容易かつ効率的に実施することができる。
【0014】
本発明による生産設備の特に有利な形態は、副ラインの合流前または分岐後の主ラインに少なくとも1つのさらなる分散ワークステーションが設けられていることをさらに意図する。したがって、少なくとも1つの分散ワークステーションが主ラインの始点および終点にも設けられるので、例えばそれぞれが分散ワークステーションを含む2つの副ラインを用いて4つまでの異なるワークステーションが実現され得る。そうすれば、これらのワークステーションにおいて、材料を相応に接合することができ、本発明による生産設備の非常に有利な発展構成によれば、分散ワークステーションのうちの少なくとも1つが材料および/または製造済み半製品もしくは製品を裁断するための作業セクションを含む。これらの分散ワークステーションは、特に最初および最後の分散ワークステーションであってもよく、これらの分散ワークステーションは、上述の生産設備の形態によれば、例えば副ラインの合流前および分岐後の主ラインに配置されていてもよい。その場合、裁断は、原則的に様々な手法で、例えばレーザーによって行われる。打ち抜き輪郭またはプロッター・カッターを用いた輪郭切断も原則的に考えられる。特に、途切れずに連続するワークステーションを用いた生産からも原則的に知られているように、最後のワークステーションにおいて、個々の要素に応じて、定置型の刃を用いた側面トリミング、および例えば宙に浮かんだ刃を用いた長さ切断を行うことも考えられる。
【0015】
本発明による生産設備の非常に好都合な発展構成によれば、中央ワークステーションは、特に接着剤を塗布するための作業セクションを補完するように、接着剤を活性化あるいは硬化させるための作業セクションを含むことができる。このような硬化あるいは活性化は、使用される接着剤の材質に応じて、例えば紫外線LEDまたは中圧紫外線ランプによって生成される紫外線を介して行うことができる。熱放射、電子線放射、またはこれらに類するものによる硬化/活性化も同様に好ましいと考えられる。
【0016】
本発明による生産設備のさらなる非常に有利な形態によれば、中央ワークステーションが、例えば塗布された接着剤を測定するためのさらなる作業セクションを含むことがさらに意図されている。そうすれば、接着剤の塗布時に問題が生じた場合、測定のための作業セクションの後、場合によっては中央ワークステーションにおいて介入することによって、不良品の生産を最低限に抑えるために、半製品または膜電極接合体もしくはフレーム付き膜電極接合体のさらなる製造をその箇所で停止または修正することができる。測定ステーションでは必要に応じて、接着剤のさらなる値、または他の送られてきた材料、例えばその形状や姿勢等が測定されてもよい。
【0017】
本発明による上述の様々な実施例のうちの1つの生産設備を用いて膜電極接合体またはフレーム付き膜電極接合体を製造するための方法は、材料の第1の層、ここでは特にガス拡散層の第1の層が主ラインを介して供給され、その後、中央ワークステーションにおいて第1の所定のパターンに従った第1の層への接着剤の塗布が行われ、その後、接着剤付きの第1の層が、第1の副ラインを通過するものであり、そこで分散ワークステーションにおいて第2の層が精密接合され、その後、貼り合わせられた層、例えばフレームが貼り付けられたガス拡散層が、主ラインにおいて中央ワークステーションを再度通過するものであり、そこで第2の所定のパターンに従った第2の層への接着剤の塗布が行われ、その後、全ての副ラインが少なくとも1度通過されるまでこの過程が繰り返されることを意図する。したがって、接着剤を塗布するための中央ワークステーションを複数回通過し、それぞれの次の層を積層するための分散ワークステーションをそれぞれ通過することによって、様々な層、例えばガス拡散層、フレーム、触媒で覆われた膜、およびさらなるガス拡散層を、膜電極接合体、またはここで例示的に言及されるように、フレーム付き膜電極接合体を容易かつ効率的に製造するのに利用することができる。
【0018】
この場合、本発明による方法の非常に好都合な形態によれば、各層に適合するパターンを用いた接着剤の塗布は、層あるいは半製品の処理状態に応じてその時に必要とされるパターンのデジタル印刷によって行われ、しかも、特にそれまでに形成された層からなる半製品が主ラインを移動している間に行われる。この場合、デジタル印刷では、その時々に必要とされるパターンを非常に容易かつ効率的に選定することができる。この選定は、例えば生産設備におけるプロセスのタイミング調節に基づいて行うことができるが、例えば光学システムを介してその都度分散ワークステーションに進入する半製品を評価することによってどのパターンが塗布されなければならないかを認識することも可能である。
【0019】
この場合、本発明による方法の非常に好都合な発展構成は、第1の層の主ラインへの供給が、ライン、すなわち主ラインおよび副ラインのそれぞれにおける少なくとも1つの膜電極接合体またはフレーム付き膜電極接合体の中間製品が同時に異なる処理工程によって処理されるようにタイミングを調節して行われることを意図する。つまり、本発明による生産設備は、次の第1の層の供給が行われる前に、完成されるまでの間中、半製品が設備内を移動するようには利用してはいけない。むしろ、例えば、第1のパターンに従って接着剤を塗布すべき第1の層が主ラインを介して分散ワークステーションに入り、一方、利用可能な副ラインでは接合作業が進行するものであり、その結果、次のサイクルで、第1の層への接着剤の塗布後に分散ワークステーションに入るようにタイミング調節を行うことができる。その結果、生産設備の可能な限り全てのワークステーションが常時使用されることによって、膜電極接合体またはフレーム付き膜電極接合体を製造する際の製造過程所要時間を短縮することができる。
【0020】
本発明による生産設備およびこの生産設備を運用するための方法のさらなる有利な形態は、以下に図面を参照して詳細に説明される実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による生産設備の可能な一実施形態における概略的な構成を示す図である。
【
図2】製造されるフレーム付き膜電極接合体の半製品の様々な処理状態を示す図である。
【
図3】製造されるフレーム付き膜電極接合体の半製品の様々な処理状態を示す図である。
【
図4】製造されるフレーム付き膜電極接合体の半製品の様々な処理状態を示す図である。
【
図5】製造されるフレーム付き膜電極接合体の半製品の様々な処理状態を示す図である。
【
図6】製造されるフレーム付き膜電極接合体の半製品の様々な処理状態を示す図である。
【
図7】製造されるフレーム付き膜電極接合体の半製品の様々な処理状態を示す図である。
【
図8】製造されるフレーム付き膜電極接合体の半製品の様々な処理状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1の描写では、1が付された生産設備の全体を見ることができる。この生産設備を介して膜電極接合体、または、この場合は特にフレーム付き膜電極接合体2が製造されることになる。フレーム付き膜電極接合体2は、英語の略称に従ってMEFA2とも称される。このような完全に製造されたMEFA2は、
図8の描写において概略的に示されている。MEFA2は、下から上に見て、3が付された第1の層、いわゆるガス拡散層またはGDLからなる。次に、ハッチングで示された接着剤4を介して5が付されたフレームが貼り付けられている。次に、さらなる接着剤4を介してこのフレーム5上に、典型的にはいわゆるCCM(Catalyst Coated Membrane)あるいは触媒で覆われた膜6として形成されている燃料電池用の本来の膜6が貼り付けられている。次に、さらなる接着剤4を介して、同様にガス拡散層あるいはGDLとして形成されている、7が付された最後の層が積層されている。
【0023】
膜6上に電極を積層する代わりに、GDL上に電極を積層することも考えられる。それによって、いわゆるガス拡散電極(GDE)が得られる。それに応じて構造体は、上述の層構造GDL7、フレーム5、CCM6およびフレーム5の代わりに、GDE、フレーム5、CCM6およびフレーム5からなってもよい。その場合、このような構造体にも以下の説明が同様に当てはまる。
【0024】
この構造体は、
図1に描かれた生産設備1において相応に製造される。10が付された分散ワークステーションでは、第1の層3、すなわちガス拡散層が、8が付されたワークピース搬送装置に積層される。これは
図2の描写においても対応して見受けられる。次に、ワークピース搬送装置8上に位置決めされた第1の層3は、生産設備1の主ラインHにおいて生産設備1の中央ワークステーション20に至る。この中央ワークステーション20は、ここで描写されている実施例では3つの作業セクションを含む。材料の流れ方向において、最初に21が付された作業セクションがあり、そこでは各層、すなわち
図3に描かれたプロセス工程では第1の層3への接着剤4の塗布を意図する。この場合、接着剤4の塗布は、第1の所定のパターンに従って、好適にはワークピース搬送装置8が中央ワークステーション20を移動する間に、デジタル印刷によって行われる。後続の作業セクション22では、接着剤4の硬化あるいは活性化が、例えば紫外線LEDによって照射される紫外線を用いて行われる。さらなる任意の作業セクション23は、第1の層3および特に塗布された接着剤4の測定を含む。
【0025】
Iが付された矢印によれば、接着剤4が塗布された第1の層3からなる、そこまで既に生産された製品あるいは半製品は、次に第1の副ラインN1を介して11が付されたさらなる分散ワークステーションへ行きつく。この分散ワークステーションでは、
図4の描写において示されているように、フレーム5が積層され、既に塗布された接着剤4によって第1の層3と貼り合わされる。IIが付された矢印で示されているように、そこまで完成した半製品は次に、再度中央ワークステーション20に至り、中央ワークステーション20では、
図5の描写において示されているように、さらなる接着剤4が、今回は既に存在している接着剤4およびフレーム5に塗布される。そこまで完成した半製品は次に、IIIが付された矢印に従って、生産設備1の第2の副ラインN2を介して、ここでは12が付されたさらなる分散ワークステーションへ行きつく。この分散ワークステーションでは、
図6の描写において示されているように、触媒で覆われた膜6が積層される。ここでも、触媒で覆われた膜6が積層された後、矢印IVに従って半製品が中央ワークステーション20へ送り返される。中央ワークステーション20では、
図7の描写から見られるように、再度接着剤4が、ここでは触媒で覆われた膜6および部分的に先に塗布された接着剤4に塗布される。次に、中央ワークステーション20を再度通過した後、半製品は矢印Vで示されているように主ラインHに沿ってさらなる分散ワークステーション13へ送られる。その領域では、最後のガス拡散層7が積層されることによって、フレーム付き膜電極接合体2の構造体が完成される。
【0026】
その他、この構造体は、例えば最後に言及した分散ワークステーション13の領域において、例えば打ち抜き、レーザー切断、プロッター・カッターによって、または側方に置かれた刃および片持ち刃によってその最終的な寸法に切り整えることができ、これらの刃は、そうして完成されたフレーム付き膜電極接合体2を正しい長さに切断する。すると最後には、
図8の概略的な印刷物に示された既述のフレーム付き膜電極接合体2の構造体がある。
【0027】
当然ながら、説明されたように生産設備においてただ1つの半製品だけが同時に通過できるわけではない。むしろ、中央ワークステーション20において第1の層に接着剤4が塗布されている間に、既にさらなる第1の層3がさらなるワークピース搬送装置8上に位置決めされ、例えば分散ワークステーション11においてフレーム5を、先に接着剤で覆われた別の半製品に積層されてもよい。同様に、分散ワークステーション12に膜6が積層された半製品がある可能性もある。全体として必要なことは、それぞれのワークステーション20、10、11、12、13の前方で半製品の衝突や渋滞が生じないようにタイミング調節を行うことだけである。しかし、適切にタイミングを調節すれば、分散ワークステーション10乃至13でも中央ワークステーション20でも全てのワークステーションにおいて、その時々に1つの半製品をワークピース搬送装置8上で処理することが可能である。その結果、設備投資の点で最適化された生産設備1にも関わらず、連続するワークステーションおよびそれに応じた3つの不連続の、中央ワークステーション20に対応する構成のワークステーションを用いた連続生産の場合と同様に生産が迅速に進行し得る。
【0028】
その際、本実施例のこの構造体は、その性質において純粋な例として理解される。可能な変形例を1つだけ挙げれば、順序は逆にすることもできる。同様に、個々の部分ラインの配置は、全てのモジュールへのアクセスが可能になるように等適応させることができる。