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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】流体試験システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240122BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20240122BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20240122BHJP
   G01N 21/78 20060101ALN20240122BHJP
【FI】
G01N35/00 Z
G01N35/02 A
G01N21/03 Z
G01N21/78 Z
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023016727
(22)【出願日】2023-02-07
(65)【公開番号】P2023157840
(43)【公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】17/722,049
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506391864
【氏名又は名称】インストゥルメンテーション ラボラトリー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ションブラン,イーサン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ファーレン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】マコーマック,ポール シー.
(72)【発明者】
【氏名】アンドルッツィ,ルイーザ
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-091185(JP,A)
【文献】特開2007-139767(JP,A)
【文献】特開2012-242231(JP,A)
【文献】特開2016-217921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 35/02
G01N 21/03
G01N 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料の1つ又は複数の特徴を判断するためのシステムであって、
前記生体試料を含む流体を収容するように構成された容器であって、収容される前記流体の容積が120μL未満である、容器
前記容器内の前記流体を通る光路を横断するように構成された光ビームを提供する光源であって、前記流体を通る前記光路の長さが6mm未満であり、前記光ビームの中心が前記容器の底部内面から1.6mm未満の高さにあるように前記容器に対して配置される、
光源と、
前記光ビームが前記光路を横断した後に光学的情報を受信するように構成された光検出器であって、前記光検出器の出力が、前記生体試料の前記1つ又は複数の特徴を表す少なくとも1つのパラメータに関連する、光検出器と、
処理ユニットであって、
前記容器内の前記流体の組成を示す情報を受信すること、及び
前記流体の前記生体試料又は試薬成分の少なくとも一方を分注するための、前記流体の表面の上の対応するプローブの分注高さを、前記流体の前記組成を示す前記情報に基づいて判断することであって、前記対応するプローブの前記分注高さが、前記流体と前記容器の壁との間の表面張力相互作用を考慮することによって判断される、判断すること
を行うように構成された処理ユニットと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記容器内の前記流体の一部を吸引することであって、吸引後に前記容器内に残る前記流体の容積が、前記吸引前の前記容器内の前記流体の前記容積の35%未満又は40%未満である、吸引すること、及び
前記流体の前記吸引された一部を前記容器内に分注して戻すこと
を行うようにそれぞれ構成された1つ又は複数のプローブを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記吸引後に前記容器内に残る前記流体の前記容積が、ユーザ入力インターフェースを通して調整可能である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
収容される前記流体の前記容積が、100μL未満、75μL未満又は50μL未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記流体を通る前記光路の前記長さが4mmである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記流体を収容するように構成された前記容器の一部の長さ及び幅が、それぞれ3.3mmから5.5mm及び3.3mmから5.5mmである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
光吸収率を含む前記少なくとも1つのパラメータの値を生成するために前記光学的情報を受信及び/又は処理する処理ユニットであって、前記少なくとも1つのパラメータ及びユーザ入力インターフェースを通して調整可能な1つ又は複数の値を使用して、前記生体試料の前記1つ又は複数の特徴に関係する評価をさらに行う処理ユニットを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記分注高さが、前記容器内の前記流体の平均液位から2mmから4mmである、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記容器
(i)互いにほぼ平行である表面の第1の対であって、前記表面の第1の対間の間隔は、3.3mmから6mmの範囲である、表面の第1の対と、(ii)互いにほぼ平行であり、及び前記表面の第1の対にほぼ垂直である表面の第2の対であって、前記表面の第2の対間の間隔が6mm未満である、表面の第2の対とによって囲まれた下側部分、及び
前記下側部分に接続された上側部分であって、少なくとも互いに対して発散する表面の第3の対によって囲まれた上側部分
を含み、
前記下側部分が、前記生体試料を含む流体を収容するように構成され、前記下側部分の高さが、前記下側部分が120μL未満の前記流体の容積を保持するように構成されている、
請求項1に記載のシステム
【請求項10】
前記容器の前記下側部分における前記流体の前記容積が、100μL未満、75μL未満又は50μL未満である、請求項に記載のシステム
【請求項11】
前記容器における前記表面の第1の対間の前記間隔が3.3mmから5.5mmであり、及び前記容器における前記表面の第2の対間の前記間隔が3.3mmから5.5mmである、請求項に記載のシステム
【請求項12】
生体試料の1つ又は複数の特徴を判断する方法であって、
容器内の前記生体試料を含む流体を通る光路を横断するように構成された光ビームを光源によって提供することであって、前記流体を通る前記光路の長さが3.3mmから5.5mmであり、前記光ビームの中心が、前記容器の底部内面から1.6mm未満の高さにあり、前記流体の容積が120μL未満である、提供すること
前記光ビームが前記光路を横断した後に光学的情報を光検出器によって受信することであって、前記光検出器の出力が、前記生体試料の前記1つ又は複数の特徴を表す少なくとも1つのパラメータに関連する、受信することと、
前記容器内の前記流体の組成を示す情報を処理ユニットによって受信することと、
前記流体の前記生体試料又は試薬成分の少なくとも一方を分注するための、前記流体の表面の上の対応するプローブの分注高さを、前記流体の前記組成を示す前記情報に基づいて前記処理ユニットによって判断することであって、前記流体と前記容器の壁との間の表面張力相互作用を考慮する、判断することと、
を含む方法。
【請求項13】
前記容器内の前記流体の一部をプローブによって吸引することであって、吸引後に前記容器内に残る前記流体の容積が、前記吸引前の前記容器内の前記流体の前記容積の35%未満又は40%未満である、吸引すること、及び
前記流体の前記吸引された一部を前記プローブによって前記容器内に分注して戻すこと
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
収容される前記流体の前記容積が、100μL未満、75μL未満又は50μL未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記流体を通る前記光路の前記長さが4mmである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記流体を収容するように構成された前記容器の一部の長さ及び幅が、それぞれ3.3mmから5.5mm及び3.3mmから5.5mmである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記光学的情報を処理ユニットによって受信すること、
光吸収率を含む前記少なくとも1つのパラメータの値を生成するために前記光学的情報を前記処理ユニットによって処理すること、及び
前記少なくとも1つのパラメータ及びユーザ入力インターフェースを通して調整可能な1つ又は複数の値を使用して、前記生体試料の前記1つ又は複数の特徴に関係する評価を前記処理ユニットによって行うこと
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記分注高さは、前記容器内の前記流体の平均液位から2mmから4mmである、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
[0001] 本明細書は、概して、流体試験デバイス及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 流体試験デバイス又はシステムは、血液又は別の体液などの生体試料の特性の解析を行う。流体試験の一例は、様々な止血障害の診断で使用される止血試験である。いくつかの流体試験システムでは、生体試料は、容器(例えば、キュベット)内に分注され、1つ又は複数の試薬と混合される。このシステムは、容器内の流体を通る光路を横断し、その後、光ビームの特性の1つを測定するように構成された光ビームを生成する光学的調査システムを含み得る。容器内の流体の様々な特性は、光ビームの測定された特性から導出される情報に基づいて判断/識別され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
[0003] 一態様では、本明細書は、生体試料の1つ又は複数の特徴を判断するためのシステムを説明する。本システムは、生体試料を含む流体を収容するように構成された容器であって、収容される流体の容積は、120μL未満である、容器、容器内の流体を通る光路を横断するように構成された光ビームを提供する光源であって、流体を通る光路の長さは6mm未満であり、光源は、光ビームの中心が容器の底部内面から1.6mm未満の高さにあるように容器に対して配置される、光源、及び光ビームが光路を横断した後に光学的情報を受信するように構成された光検出器であって、光検出器の出力は、生体試料の1つ又は複数の特徴を表す少なくとも1つのパラメータに関連する、光検出器を含む。
【0004】
[0004] 別の態様では、本明細書は、容器であって、(i)互いにほぼ平行である表面の第1の対であって、表面の第1の対間の間隔は3.3mmから6mmの範囲である、表面の第1の対と、(ii)互いにほぼ平行であり、及び表面の第1の対にほぼ垂直である表面の第2の対であって、表面の第2の対間の間隔は6mm未満である、表面の第2の対とによって囲まれた下側部分、及び下側部分に接続された上側部分であって、少なくとも互いに対して発散する表面の第3の対によって囲まれた上側部分を含む容器を説明し、下側部分は、生体試料を含む流体を収容するように構成され、下側部分の高さは、下側部分が120μL以下の流体の容積を保持するように構成されるようなものである。
【0005】
[0005] 別の態様では、本明細書は、生体試料の1つ又は複数の特徴を判断する方法を説明する。本方法は、容器内の生体試料を含む流体を通る光路を横断するように構成された光ビームを光源によって提供することであって、流体を通る光路の長さは3.3mmから5.5mmであり、光ビームの中心は、容器の底部内面から1.6mm未満の高さにあり、流体の容積は120μL未満である、提供すること、及び光ビームが光路を横断した後に光学的情報を光検出器によって受信することであって、光検出器の出力は、生体試料の1つ又は複数の特徴を表す少なくとも1つのパラメータに関連する、受信することを含む。
【0006】
[0006] 上記態様の実装形態は、1つ又は複数の以下の特徴を含み得る。本方法は、容器内の流体の一部をプローブによって吸引することであって、吸引後に容器内に残る流体の容積は、吸引前の容器内の流体の容積の35%未満である、吸引すること、及び流体の吸引された一部をプローブによって容器内に分注して戻すことをさらに含む。吸引後に容器内に残る流体の容積は、ユーザ入力インターフェースを通して調整可能である。収容される流体の容積は、100μL未満、75μL未満又は50μL未満である。流体を通る光路の長さは4mmである。流体を収容するように構成された容器の一部分の長さ及び幅は、それぞれ3.3mmから5.5mm及び3.3mmから5.5mmである。本方法は、光学的情報を処理ユニットによって受信すること、光吸収率を含む少なくとも1つのパラメータの値を生成するために光学的情報を処理ユニットによって処理すること、及び少なくとも1つのパラメータ及びユーザ入力インターフェースを通して調整可能な1つ又は複数の値を使用して、生体試料の1つ又は複数の特徴に関係する評価を処理ユニットによって行うことをさらに含み得る。本方法は、容器内の流体の組成を示す情報を処理ユニットによって受信すること、及び流体の生体試料又は試薬成分の少なくとも一方を分注するための、流体の表面の上の対応するプローブの分注高さを、流体の組成を示す情報に基づいて処理ユニットによって判断することであって、流体と容器の壁との間の表面張力相互作用を考慮する、判断することをさらに含み得る。分注高さは、容器内の流体の平均液位から2mmから4mmである。
【0007】
[0007] 本開示で説明される主題の特定の実装形態は、以下の利点の1つ又は複数を実現するために実装され得る。流体試験は、分析のための比較的少量(例えば、120μL未満)の流体を収容するように構成された容器を使用することによって行われ得る。そうでなければ測定の精度に影響を与え得る、このような小型容器内の流体を通る光路の低減は、小容積の容器内の試料と試薬との効率的な混合によって相殺され得、これにより分析における流体ノイズを低減する。低減された寸法の容器(例えば、適切な試験のための150μL以上の反応容積を必要とし得る既存の容器と比較して)は、より小さい容積の患者試料(例えば、全血又は血漿)及び/又は試薬の利用を容易にする。いくつかの場合、これは、より多くの試験が利用可能量の試薬によって行われることを可能にし得、これにより試薬梱包の廃棄要件を低減し得る。容器は、試験当たりより小さい試料容積又は反応容積を必要とするため、本開示の実装形態は、例えば、試料及び試薬を吸引し、容器内に分注するために必要とされる時間を低減することにより、流体試験過程の効率を改善し得る。
【0008】
[0008] より短い光路長の影響(例えば、低減された吸収率)は、流体ノイズを低減する改善された混合過程によって実質的に相殺され得、したがって、いくつかの既存の容器に関連する全信号対ノイズ比(SNR)と比較して、流体試験のSNRをほぼ不変の(又は改善された)ままにし得る。改善された混合過程は、例えば、低ブラインド容積(すなわち吸引後の容器内に残る流体の容積)を使用する吸引/分注混合過程を介して実現され得る。このような低ブラインド容積(例えば、65μL以下又は元の全容積の35%以下) - 容器の寸法の低減によって容易にされる - は、いくつかの場合、試料と試薬との混合有効性を改善することを促進し得る。これは、したがって、恐らく流体ノイズを低減し、流体試験結果の品質及び感度を改善し得る。流体試験システムのパラメータは、容器のサイズ(例えば、長さ)の低減によって適応され得、パラメータは、ユーザ入力インターフェースを通して調節され得る。
【0009】
[0009] いくつかの場合、本開示のいくつかの実装形態(例えば、3.3mmから5.5mm光路長を有する容器)は、測定可能濃度のより大きい動的範囲に起因して、より長い光路長(例えば、6mmから7mm)を有する容器に関連するものと比較してより高い干渉耐性(例えば、溶血、ビリルビン及び脂肪血症に対する)を有し得る。したがって、本開示の実装形態は、溶血、ビリルビン又は脂肪血症を判断することなど、事前分析課題に対する恐らくより高い耐性を有し得る。
【0010】
[0010] 本開示による方法及びシステムは、本明細書で説明される態様及び特徴の任意の組み合わせを含み得ることが理解される。すなわち、本開示による方法及びシステムは、本明細書で具体的に説明される態様及び特徴の組み合わせに限定されないが、提供される態様及び特徴の任意の組み合わせも含み得る。
【0011】
[0011] 本開示の1つ又は複数の実装形態の詳細が添付図面及び以下の本明細書で説明される。本開示の他の特徴及び利点は、本明細書及び添付図面並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な説明
図1】[0012]本明細書で説明される技術を実装するように構成された例示的システムの図である。
図2】[0013]本明細書で説明される技術に従って流体試験を行うための例示的プロセスのフローチャートである。
図3A】[0014]容器内の流体を横断する光ビームの概略図である。
図3B】[0015]容器内の吸引/分注混合過程の概略図を示す。
図4】[0016]本明細書で説明される技術による容器に関連する経路長感度を示すプロットの例を示す。
図5】[0017]容器内への分注機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0018] 様々な図面内の同様の参照数字及び符号は、同様の要素を示す。
【0014】
詳細な説明
[0019] 光学的調査に依存する典型的流体試験システムでは、光路長(光ビームが試験下の流体を横断する距離)は、通常、閾値距離を超えて維持される。これは、流体による光の閾値吸収率が、流体に関連するいくつかのパラメータ又は特徴の正確な判断のために必要とされ得るからである。吸収率Aは、ベール-ランベルトの法則下の経路長Lに比例し、すなわちA=εLcであり、ここで、εは、減衰種の分子減衰係数であり、及びcは、減衰種の濃度である。光学的調査中に流体を保持する容器の寸法は、このような閾値経路長を提供するように構成される。例えば、いくつかの既存の容器(例えば、Werfenによって開発された止血試験システムのACL Topファミリで現在使用されている容器 - 「ACL TOPキュベット」と本明細書で呼ばれる、Siemens-Sysmex CS-2500及びCS-5100などのSiemensによって開発されたシステム又はプラットホームで使用される容器並びRoche cobas t511などのRocheによって開発されたシステム又はプラットホームで使用される容器)は、少なくとも4.9mm、5mm、6mm以上の光路長を提供するように構成される。このような容器は、したがって、正確な測定のための閾値反応容積の流体(例えば、血漿の少なくとも50μL試料を含む150μL流体)を必要とする。
【0015】
[0020] 容器内の流体は、通常、試薬と試料との混合物である。本明細書に開示されるシステム/方法は、試薬又は試料のタイプによって限定されない。例えば、試薬は、任意の好適な化学組成の乾燥試薬又は液体試薬であり得る。試料は、人体液、動物体液又は非体液であり得る。
【0016】
[0021] 本明細書で説明される技術は、測定の品質/信頼性に影響を与えることなく、より短い光路(例えば、6mm以下)を有する容器の構成を容易にする。具体的には、低減された寸法の容器内の反応容積の付随する減少は、試料と試薬とのより効率的な混合を容易にし得、低減された流体ノイズ(いくつかの既存の容器で見られるものと比較して)が、低減された光路長に起因する感度のいかなる劣化も少なくとも相殺する分析を生じる。具体的には、吸収の量は、より短い光路長に起因して低減され得るが、流体試験に関連する全SNRは、より長い光路長tに関連するSNRと比較して不変のままであり得る(又はさらに改善し得る)。より短い光路長(例えば、6mm、5.5mm、5mm、4mm以下)を有する容器は、したがって、より高い光路長を有する容器のものと比較してより小さい試料容積、より小さい試薬容積又はその両方(例えば、30%~50%の低減)を必要とするより小さい流体量(例えば、120μL、110μL、90μL以下)を促進する。したがって、より多くの試験が所定量の試薬容積から行われ得、及び/又はより小さい試料が患者から引き出される必要があり得る。いくつかの実装形態では、低減された光路長(したがって低減された反応容積)を有する容器は、分注/混合時間を低減し、したがって試験過程全体の効率を改善することにより、試験の過程を恐らく加速させ得る。
【0017】
[0022] さらに、本明細書で説明される技術は、混合有効性を改善するために、低減されたブラインド容積(吸引時に容器内の残された試料の量)を使用する吸引/分注混合過程を提供する。例えば、分注器/吸引器ノズルが容器の床から一定の高さまで容器内に下げられ得る場合、吸引後に容器内に残される試料の量(すなわちブラインド容積)は、より小さい内部寸法を有する容器に関してより小さくなるでろう。したがって、容器の内部寸法が小さいほど、対応するブラインド容積が小さくなる。さらに、より小さいブラインド容積は、試薬と試料とのよりよい混合を容易にするために流体のより大きい割合が吸引され、容器内に分注されて戻され得ることを意味する。このような改善された混合は、したがって、流体ノイズを低減し、流体試験の品質及び感度を改善し得る。
【0018】
[0023] 図1は、本明細書で説明される技術を実装するように構成された例示的システム100の図である。システム100は、1つ又は複数の容器ウェル(例えば、容器ウェル102a及び容器ウェル102b:一般的には102)を含む容器、例えばキュベット101を含む。いくつかの構成では、キュベットは、いくつかの同一の容器ウェル(例えば、4、6又は8つの容器ウェル)のアレイ又は単一の容器ウェルを含み得る。各容器ウェル102は、システム100によって試験される流体106を保持するように構成される。流体は、反応混合物のアリコート、生体試料(例えば、血漿、全血、尿)のアリコート又はその試料の一部を含み得る。例えば、流体は、止血診断試験を行うために使用される血漿試料、試薬又は血液試料と試薬との混合物を含み得る。各容器ウェル内の流体は、他の容器ウェル内の他の流体とは独立に試験され得る。本明細書で説明される方法及びシステムは、容器が単一の容器ウェル又は複数の容器ウェルを有するか否かによって限定されないことから、簡単のために、本開示の説明は、容器と容器ウェルとを交換可能に使用する。
【0019】
[0024] 各容器ウェル102は、上側部分103及び下側部分104を含み、上側部分は、流体106(例えば、生体試料及び/又は試薬)を吸引又は分注するためにプローブ122の幅広開口を有する。下側部分104の長さ126及び幅128は、それぞれ6mm未満、例えば、3.3mmから5.5mmであるように構成され得る。いくつかの実装形態では、長さ126及び幅128は、下側部分104の内部寸法を表す。いくつかの実装形態では、下側部分104の長さ126及び幅128は、それぞれ4mm及び4.2mmである。いくつかの実装形態では、長さ126及び幅128は、互いにほぼ等しくなり得る(例えば、4mm、4.2mm又は5.34mm)。少なくとも6.67mmの長さを有し、及び150μLの反応容積を有する従来の容器又は容器ウェルと比較して、4mmの光路を有する容器は、30%~50%小さい反応容積(すなわち105μL~75μL)を有し得る。
【0020】
[0025] システム100は、光源108を含む。各容器ウェルについて、光源108は、容器ウェル内の流体を通る光路を横断するように構成された光ビームを提供し得る。例えば、光源108は、第1の絞り(例えば、スルーホール)110からの第1の光ビーム114(すなわち光ビーム)及び第2の絞り112からの第2の光ビーム111を提供し得る。各絞りのサイズ及び位置は、それぞれの容器ウェル102を通る光ビームのサイズ及び位置を決定し得る。光路は、容器ウェルの寸法によって境界を定められる光ビームの全経路の一部である。例えば、流体106中の光路の長さは、容器ウェル102の下側部分104の長さ126によって決定され得る。したがって、容器ウェル102の下側部分の長さ126が3.3mmから5.5mmである場合、流体を通る光路の長さは、3.3mmから5.5mmである。光ビームは、生体液の様々な特徴を測定するように構成され得る様々な色(例えば、赤色、緑色、青色)又は波長の光を含み得る。
【0021】
[0026] 光ビームの直径は、流体を通る光路を全ビームが横断するように、光ビームの直径/幅が容器ウェルの幅128より小さくなるように構成され得る。図3Aは、容器304内の流体を横断する光ビーム306の例を示す。いくつかの実装形態では、光ビーム306は、図1の光ビーム111又は114の一方とほぼ同一であり得る。いくつかの実装形態では、容器304は、図1の容器ウェル102とほぼ同一である。いくつかの実装形態では、容器304は、4mmの幅を有し得、ビームサイズ(例えば、直径又は幅)は、図3Aの例に示すように、2.5mmから3.5mmの範囲内であり得る。光ビームは、その頂部が流体表面308の十分に下にあるように構成/位置決めされ得る。いくつかの場合、これは、例えば、流体ノイズ(例えば、流体表面308におけるメニスカス効果、飛び跳ね、不均一吸収、不十分な混合又は気泡に起因する)が流体表面308の近くの領域内で優勢であるため、有益であり得る。このような流体ノイズを回避し、及び測定の精度を増加するために、光ビームの中心は、容器の底部内面(又は床)から所定距離(例えば、1.6mm)未満である高さにあるように構成され得る。図3Aの例では、光ビーム306の中心は、容器304の底部内面から1.4mmの高さ302にある。
【0022】
[0027] 図1に戻って参照すると、システム100は、光ビームが光路を横断した後に光学的情報133を受信するように構成された光検出器(例えば、検出器118、120)を含む。光学的情報133は、流体106に含まれる生体試料の1つ又は複数の特徴を示し得る。光検出器は、流体の1つ又は複数の特徴を表す光学的読み取り値を取得するために容器ウェル102の反対側に位置決めされる。いくつかの実装形態では、機械的取付けシステムは、光源108、検出器基板116(又は検出器118、120)及び1つ又は複数の容器ウェル102を含むキュベット101を保持し得る。例えば、システム100は、第1の光ビーム114が第1の容器ウェル102a内の流体106を横断した後に光学的情報を受信するように構成された第1の光検出器118を含む。システム100は、第2の光ビーム111が第2の容器ウェル102b内の流体を横断した後に光学的情報を受信するように構成された第2の光検出器120を含む。第1の光検出器118及び第2の光検出器120の両方は、一緒に移動し得るように同じ検出器基板116に取り付けられ得る。
【0023】
[0028] システム100は、1つ又は複数のプローブ(例えば、プローブ122)を含む。プローブは、流体、例えば試薬若しくは試料又は流体の成分を容器内に分注し得る。例えば、プローブ122は、生体試料(例えば、血漿試料)を容器ウェル102内に分注する試料プローブであり得る。別の例として、プローブ122は、試薬を容器ウェル102内に分注する試薬プローブであり得る。いくつかの実装形態では、同じプローブが生体試料及び試薬の両方を分注し得る。いくつかの実装形態では、プローブは、プローブ122が容器ウェル102内の流体106に接触しない非接触分注過程で動作し得る。いくつかの実装形態では、プローブ122は、プローブ122が容器ウェル102内の流体106と接触し得る接触分注過程で動作し得る。プローブは、追加的に、試料と試薬とを混合するために使用され得る。例えば、プローブ122は、流体の一部を吸引し(ブラインド容積の流体のみを容器内に残して)、吸引された一部を容器内に分注して戻すように構成され得る。
【0024】
[0029] 図3Bは、容器内の吸引/分注混合過程の例を示す。プローブ312は、容器内の流体の一部を吸引し、流体の吸引された一部を容器内に分注して戻すように構成され得る。いくつかの実装形態では、プローブが吸引すると、プローブは、流体表面が吸引に起因して下げられるために下げられ続ける。いくつかの実装形態では、流体のほぼすべてが吸引され、容器内に分注されて戻され得る。
【0025】
[0030] 吸引後に容器内に残る流体の容積は、ブラインド容積(BV)310と呼ばれ得る。いくつかの実装形態では、混合有効性を改善するために、吸引後に容器内に残る流体の容積(BV)は、吸引前の容器内の流体の容積の40%未満又は35%以下であり得る。通常、より多くの流体が吸引/分注混合中に吸引及び分注されるほど、流体ノイズがより低くなり、及び流体品質がよりよくなる。したがって、ブラインド容積を低減することで流体の混合有効性及び均一性を改善し得、これにより流体ノイズを低減し、この過程の流体試験品質及びSNRを改善する。例えば、図1を再度参照すると、吸引前の容器ウェル102内の流体の容積は、75μLであり得、BVは、25μL、20μL又は15μLであり得る。したがって、BVは、吸引前の容器内の流体の容積の33%、27%又は20%であり得、改善された混合有効性を生じる。いくつかの実装形態では、本システムは、流体の混合有効性及び均一性を改善するために吸引及び/又は分注速度を調節し得る。
【0026】
[0031] いくつかの実装形態では、吸引後に容器内に残る流体の容積は、表示デバイス(例えば、モニタ130)上に表示されるユーザ入力インターフェースを通して調整可能であり得る。例えば、ユーザ132は、BVの値を、キーボード134などの入力デバイスを介して、システム100に接続される処理ユニット124に提供し得る。いくつかの実装形態では、BVは、試験される流体のタイプに依存(例えば、分析依存)し得る。いくつかの実装形態では、本システムは、試験のタイプ及び/又は容器内の流体/分析のタイプに基づいてBVを自動的に判断し得、BVは、分析毎のカスタム化可能パラメータであり得る。いくつかの実装形態では、ユーザは、試験のタイプ及び/又は流体/分析のタイプに基づいて適切なBV値を判断し得、ユーザインターフェースを通してBVの値を提供し得る。
【0027】
[0032] システム100は、光学的情報133を受信及び/又は処理する処理ユニット124を含み得る。光路を横断した光ビームを受信した後、検出器は、光学的情報133を生成し、処理ユニット124に送信し得る。処理ユニット124は、光学的情報133を受信及び処理し得る。処理ユニット124は、1つ又は複数のコンピュータ又はコンピュータのサーバを含み得る。処理ユニット124は、光学的情報133を解析するように構成されたハードウェア及び/又はソフトウェアを含み得る。処理ユニット124は、生体試料の少なくとも1つのパラメータ(例えば、光吸光率)の値を生成するために光学的情報133を処理し得る。処理ユニット124は、少なくとも1つのパラメータを使用して、生体試料の1つ又は複数の特徴に関係する評価を行い得る。処理ユニット124は、少なくとも1つのパラメータ及び/又は評価結果をユーザ132のディスプレイ(例えば、モニタ130)上に表示し得る。いくつかの実装形態では、処理ユニット124は、少なくとも1つのパラメータ及び1つ又は複数の値(例えば、閾値)を使用して、生体試料の1つ又は複数の特徴に関係する評価を行い得る。1つ又は複数の値は、ハードコード化され得るか、又はユーザ入力インターフェースを通して調整可能であり得る。例えば、ユーザ132は、適切な閾値を判断し得、処理ユニット124に接続されたキーボード134を使用してこの値を入力し得る。処理ユニット124は、システム100の残りの部分と同じ場所に(例えば、キュベット101と同じ場所に)配置され得るか、又はシステム100の残りから離れていてもよい(例えば、クラウドコンピューティングシステム上にあり得る)。
【0028】
[0033] いくつかの実装形態では、処理ユニット124は、流体試験過程で使用される1つ又は複数のパラメータのユーザ入力を、ユーザ入力インターフェース(例えば、キーボード134及びモニタ130)を介して受信し得る。流体試験過程で使用される1つ又は複数のパラメータの例は、分析固有キュベットブラインド容積、プローブ分注高さ、分注速度、混合中の分注容積及び試験過程における他のパラメータを含む。したがって、ハードコード化されたパラメータを使用する代わりに、流体試験過程で使用される1つ又は複数のパラメータは、システム100のユーザによって柔軟に調節され得る。
【0029】
[0034] 図2は、本明細書で説明される技術に従って流体試験を行うための例示的プロセス200のフローチャートである。いくつかの実装形態では、プロセス200の少なくとも一部は、図1を参照して説明したシステム100に関連する1つ又は複数の部品によって実行され得る。いくつかの実装形態では、プロセス200の少なくとも一部は、1つ若しくは複数のサーバ(分散コンピューティングシステム内のサーバ若しくはコンピューティングデバイスなど)及び/又は図1を参照して説明したシステム100と通信する1つ若しくは複数のモバイルデバイス(スマートフォンなど)で実行され得る。
【0030】
[0035] プロセス200の動作は、生体試料及び/又は試薬を含む流体を容器内に分注すること(202)を含む。分注される流体の容積は120μL未満である。いくつかの実装形態では、分注される流体の容積は、100μL未満、75μL未満又は50μL未満であり得る。いくつかの実装形態では、流体を収容するように構成された容器の一部分の長さ及び幅は6mm未満、例えばそれぞれ3.3mmから5.5mm及び3.3mmから5.5mmであり得る。いくつかの実装形態では、流体を収容するように構成された容器の一部分の長さと幅との比は、1:1であり得、例えば、長さは、幅にほぼ等しくてもよい。例えば、流体を収容するように構成された容器の一部分の長さ及び幅は、それぞれ4mm及び4mmである。
【0031】
[0036] プロセス200の動作は、容器内の流体を通る光路を横断するように構成された光ビームを光源によって提供することも含み、流体を通る光路の長さは6mm未満、例えば3.3mmから5.5mm又は3.3mmから4.5mmであり、光ビームの中心は、容器の底部内面から1.6mm未満の高さにある(204)。光路は、容器の寸法によって境界を定められた光ビームの全経路の一部である。いくつかの実装形態では、流体を通る光路の長さは4mmである。
【0032】
[0037] 光ビームの位置は、ビームが流体表面の下少なくとも閾値距離にあるように調節され得る。例えば、光源の位置及び/又はサイズは、光源からの光ビームが、容器内に分注された流体を通過するように修正/調節され得る。例えば、図1を参照すると、本システムは、ビームサイズ(例えば、光ビームの直径)が低減される(例えば、ビームの直径は、2.5mmから3.5mmの範囲内の値に等しくなる)ように、窓110のサイズを低減し得る。本システムは、光ビーム114の中心が容器ウェル102の底部内面から1.6mm未満の高さにあるように窓の位置を下げ得る。すなわち、光ビームは、容器内の低減された流体充填高さに基づいて下げられ得る。
【0033】
[0038] いくつかの実装形態では、プロセス200の動作は、容器内の流体の一部をプローブ122によって吸引することと、流体の吸引された一部をプローブによって容器内に分注して戻すこととを含み得る。吸引後に容器内に残る流体の容積は、吸引前の容器内の流体の容積の40%未満であり得る。いくつかの実装形態では、吸引後に容器内に残る流体の容積は、ユーザインターフェースを通して(例えば、キーボード134及びコンピュータのモニタ130を通して)調整可能であり得る。
【0034】
[0039] 図2に戻って参照すると、プロセス200の動作は、光ビームが光路を横断した後に光学的情報を光検出器によって受信することも含み、光検出器の出力は、生体試料の1つ又は複数の特徴を表す少なくとも1つのパラメータに関連する(206)。いくつかの実装形態では、本システムは、本明細書で説明された容器に従って検出器の読み取りヘッドの位置を修正するように構成され得、収容される流体の容積は、120μL未満である。例えば、図1を参照すると、収容される流体の容積が120μLより大きい従来の容器と比較して、本システムは、光ビーム114が下げられているため、検出器119の読み取りヘッドの位置を下げ得る。いくつかの実装形態では、光ビームが収集される検出器119の読み取りヘッド(例えば、収集絞り)の面積が調節され得る。例えば、本システムは、収集絞りの直径を2.5mmから3.5mmの範囲内の値に設定し得る。
【0035】
[0040] いくつかの実装形態では、プロセス200の動作は、光学的情報を処理ユニットによって受信することと、光吸光率を含む少なくとも1つのパラメータの値を生成するために光学的情報を処理ユニットによって処理すること(208)と、少なくとも1つのパラメータ及びユーザ入力インターフェースを通して調整可能な1つ又は複数の値を使用して、生体試料の1つ又は複数の特徴に関係する評価を処理ユニットによって行うこと(210)とを含む。本システムは、少なくとも1つのパラメータを使用して生体試料の1つ又は複数の特徴を判断するように構成され得る。例えば、少なくとも1つのパラメータは、検出器によって測定される流体による光ビームの光吸光率であり得、止血診断試験中の血液試料の1つ又は複数の特徴は、凝固因子分析、D二量体及び他のフィブリノゲン崩壊産物、ヘパリン及び抗Xa分析、フィブリノゲン分析、部分トロンボプラスチン時間、プロトロンビン時間及び第XIII因子分析を含み得る。本システムは、少なくとも1つのパラメータ(例えば、光吸光率、減衰又は散乱)及び1つ又は複数の値(例えば、閾値)を使用して、生体試料の1つ又は複数の特徴に関係する評価を行い得る。例えば、本システムは、試験結果が有効である(例えば、流体内の気泡又は他の捕捉された液体又は塊に起因して無効ではない)ことを確実にするために、光吸光の1つ又は複数のパラメータが合理的範囲内にあることを判断するように構成され得る。
【0036】
[0041] 図4は、経路長感度を示すプロットの例を示す。本システムは、一定期間にわたる流体に対応する吸収率の変化を計算するように構成され得る。例えば、線402は、血液試料塊として時間に応じて(数秒で)検出器によって測定されたミリ吸収(mAbs)における光吸収を示す。単位mAbsは、(i)測定された強度対(ii)基準流体(例えば、水又は生理食塩)の吸収率を表す基準強度の比としての正規化光学的濃度を表す。光吸光率は、最初にほぼ平らであるが、40秒から60秒の期間中に急速に上昇し、次に60秒の時点後により遅い速度で上昇する。ここで、0秒から100秒の期間にわたる吸収率の変化は、約10mAbsである。吸収率のこの変化は、より長い光路長(例えば、6mmから7mm)を有する試験システムにおける吸収率の変化より小さいが、信号の忠実性は、より長い光路長を有する試験システムにおける信号と同様であるか又はそれよりも良好である。いくつかの実装形態では、システム構成(例えば、分注高さ、混合プロファイルなど)が最適化されて、より短い経路長に基づいて再構成され得る。したがって、本明細書で説明される容器(例えば、4mmの光路長を有する)を使用することによって行われる試験は、より長い光路長(例えば、6mmから7mm)を有する容器によって行われる試験と少なくとも同程度に流体ノイズに対して頑強であり得る。本システムは、一定期間にわたる吸収率の微分も計算し得る。例えば、線404は、線402の微分である。本システムは、微分のピークを判断するようにも構成され得る。例えば、線404から判断される微分のピークは、約P=6mAbsである。
【0037】
[0042] 本システムは、吸収率の変化(例えば、10mAbs)及び吸収率の微分(例えば、6mAbs)と対応閾値とを比較することにより、血液試料の評価を行うように構成され得る。容器サイズ及び寸法の変化に応じて、評価のために使用される閾値は、それに応じて変化する。いくつかの実装形態では、閾値は、事前計算及びプログラムされる。本システムは、使用のための1つ又は複数の予め固定された閾値を有し得るか、又は試験必要性に基づいて、事前計算された閾値から閾値を自動的に選択し得る。他の実装形態では、本システムは、測定の信頼性を改善する閾値入力をユーザが提供することを許容し得、例えば促し得る。いくつかの場合、吸収率の変化が閾値未満である場合、対応する測定は、恐らく信頼できないものと見なされ得る。したがって、いくつかの実装形態では、プロセス200は、吸収率及び/又はその微分がいくつかの閾値を満足するかどうかの照査を行うことを含み得る。例えば、本システムは、一定期間にわたる吸収率の変化が第1の閾値以上であるかどうか、及び/又は一定期間にわたる吸収率の微分の変化が第2の閾値以上であるかどうかを判断するように構成され得る。いくつかの場合、吸収率の変化が第1の閾値以上であり、及び/又は微分のピークが第2の閾値より大きいことを判断することに応じて、本システムは、本システムによって判断された1つ又は複数の特徴が有効な結果を表すことを判断するように構成される。逆に、吸収率の変化が第1の閾値より低いか、又は微分のピークが第2の閾値より低いことを判断することに応じて、本システムによって判断された1つ又は複数の特徴は、誤っている可能性が高いと判断され得る。本明細書で説明される技術は、結果の精度を損なうことなく、より低い閾値を許容し得る。例えば、図4を参照すると、0秒から100秒の期間にわたる吸収率の変化(曲線402によって表される)は、約10mAbsであり、微分曲線404のピークは、約6mAbsである。比較として、より長い光路長(例えば、6.67mmの光路長)の対応閾値は、同様の分析のためにそれぞれ18mAbs及び14mAbsであり得る。本明細書で説明される技術に関連して使用される下側閾値は、分析固有であり、及び実験的/経験的データに基づき得る。いくつかの実装形態では、プロセス200は、ユーザが特定の分析のための閾値を入力する選択肢を含み得る。
【0038】
[0043] いくつかの実装形態では、本システムは、より短い光路長の影響を考慮するために、吸収率の変化の第1の閾値を修正するように構成され得る。例えば、本システムは、短い光路長における対応する分析に対応する第1の閾値(例えば、8mAbs)を取得し得る - 恐らくユーザ入力を介して。本システムは、吸収率の変化(例えば、10mAbs)が第1の閾値(例えば、8mAbs)より大きいことを判断し、それに応じて測定の信頼性を判断し得る。本システムは、微分のピークが第2の閾値以上であるかどうかも判断し得る。例えば、本システムは、特定の分析及び短い光路長に対応する第2の閾値(例えば、5mAbs)を、恐らくユーザ入力を介して取得するように構成され得る。本システムは、微分のピーク(例えば、6mAbs)が第2の閾値(例えば、5mAbs)より大きいことを判断し、それに応じて測定の信頼性を判断し得る。例えば、図4を参照すると、吸収率の変化が8mAbsより大きく、及び微分のピークが5mAbsより大きいため、本システムは、基礎をなす止血診断試験の結果が、有効である可能性が高い結果を表すことを判断するように構成され得る。吸収率の変化が第1の閾値未満であり、及び/又は微分のピークが第2の閾値未満であるとシステムが判断すれば、本システムは、誤っている可能性が高い結果にフラグを立てるように構成され得る。
【0039】
[0044] いくつかの実装形態では、1つ又は複数の値(例えば、図4を参照して上に説明した第1の閾値及び/又は第2の閾値の値)は、調整可能であり得る。ハードコード化された値を有するのではなく、値は、例えば、ユーザ入力インターフェースを通してユーザによって調節され得る。例えば、ユーザは、ユーザインターフェースを通してキーボード及びマウスを使用して、第1の閾値及び第2の閾値の値を入力し得る。いくつかの実装形態では、1つ又は複数の値は、流体(例えば、生体試料及び試薬)のタイプに依存し得る。本システムは、流体/分析のタイプに基づいて1つ又は複数の値を自動的に判断し得るか、又はユーザは、流体のタイプに基づいて1つ又は複数の値を調節し得る。
【0040】
[0045] 同様に予めプログラムされ得るか又はユーザ制御され得る閾値の他の例は、2次的アルゴリズム、D二量体、HIT、vWFで使用される代替希釈及び他の乳液比濁免疫分析をトリガするために使用される線形閾値を含む。
【0041】
[0046] 図2に戻って参照すると、いくつかの場合、流体表面からのプローブ先端の距離(分注高さとも呼ばれる)は、試験の精度に影響を与え得る。例えば、液体表面からの閾値より大きい高さからの分注は、測定値に影響を与え得る気泡形成又は他のアーティファクトを引き起こし得る。より長い光路長(例えば、6mmから7mm)による流体試験と比較して、より短い光路長(例えば、3.5mmから5.5mm)の分注高さは、通常、異なる。いくつかの実装形態では、本システムは、容器の寸法に基づくルックアップテーブルから分注高さを取得するように構成され得る。ルックアップテーブルは、本システムに関連するメモリデバイス内に格納され得、本システムは、プローブの分注高さの最適化を自動的に行うように構成され得る。
【0042】
[0047] いくつかの実装形態では、プロセス200の動作は、1つ又は複数の容器の1つにおける流体の組成を示す情報を処理ユニットによって受信することと、流体の生体試料又は試薬成分の少なくとも一方を分注するための、流体の表面の上の対応するプローブの分注高さを、流体の組成を示す情報に基づいて処理ユニットによって判断することとを含み得る。いくつかの実装形態では、対応するプローブの分注高さの判断は、流体と容器の壁との表面張力相互作用を考慮し得る。例えば、図5は、分注機構の概略図を示す。この例は、本システムが容器502のメニスカス(すなわち容器502全体にわたって平らでない液体レベル)の異なる形状に起因して、プローブ504の分注高さの最適化を行うように構成され得ることを示す。メニスカス、すなわち曲線形状は、キュベット幾何学的形状に依存し得る。したがって、分注高さは、いくつかの分析の試験において液体に接触することを避けるために、メニスカスの異なる形状に基づいて調節される必要がある。例えば、プローブ504が効果的混合を増進するために液体レベルに十分に近いが、液体表面に接触するのに余りに近すぎないことが望ましい場合がある(例えば、非接触分注過程において)。流体と容器502の壁との相互作用に起因する表面張力は、毛管力が容器502の幅及び/又は長さに反比例し得るため、特に小型容器(例えば、3.5mmから5.5mm経路長容器)において、流体を容器502の壁よりさらに上に引き出し得る。したがって、容器502内の流体は、表面の平均液位(例えば、メニスカスのない期待平坦液体高さ)より若干高い最大液位を有し得る。したがって、より高い分注高さ(平均液位によって示され得るものより)は、より小さい寸法の容器におけるいくつかの分析に望ましい場合がある。
【0043】
[0048] いくつかの実装形態では、分注高さは、容器内の流体の平均液位から2mmから4mmにあり得る。例えば、本システムは、キュベット502内に分注される流体の量に基づいて平均液位を判断し得る。本システムは、試薬プローブ504の位置を、分注高さが平均液位から2mmから4mmとなるように構成され得る。
【0044】
[0049] 本明細書で説明されるシステム及び技術の様々な実装形態は、デジタル電子回路構成、集積回路構成、特別に設計された特定用途向け集積回路(ASIC)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア及び/又はそれらの組み合わせで実現され得る。これらの様々な実装形態は、データ及び指令を受信及び送信するように結合された特定の用途又は汎用であり得る少なくとも1つのプログラム可能プロセッサ、ストレージシステム、少なくとも1つの入力デバイス及び少なくとも1つの出力デバイスを含むプログラマブルシステム上で実行可能及び/又は解釈可能である1つ又は複数のコンピュータプログラム内の実装を含み得る。
【0045】
[0050] これらのコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション又はコードとしても知られる)は、プログラム可能プロセッサの機械語指令を含み、ハイレベル手順及び/又はオブジェクト指向、アセンブリ及び/又は機械言語で実装され得る。本明細書で使用されるように、用語「機械可読媒体」及び「コンピュータ可読媒体」は、機械指令及び/又はデータをプログラム可能プロセッサに提供するために使用される任意のコンピュータプログラム製品、装置及び/又はデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ又はプログラマブルロジックデバイス(PLD)など)を指し、機械可読信号として機械語指令を受信する機械可読媒体を含む。用語「機械可読信号」は、機械語指令及び/又はデータをプログラム可能プロセッサに提供するために使用される任意の信号を指す。
【0046】
[0051] ユーザとの相互作用を提供するために、本明細書に記載のシステム及び技術は、ユーザに対して情報を表示するための表示デバイス(例えば、陰極線管(CRT)又は液晶表示(LCD)モニタ)、キーボード及びユーザがコンピュータに入力を提供し得るポインティングデバイス(例えば、マウス又はトラックボール)を有するコンピュータ上で実装され得る。他の種類のデバイスがユーザとの相互作用を提供するために使用され得、例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の形式の感覚フィードバック(例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、触覚フィードバック)であり得、ユーザからの入力は、音響、音声又は触覚入力を含む任意の形式で受信され得る。
【0047】
[0052] 本明細書に記載のシステム及び技術は、(例えば、データサーバとして)バックエンド部品を含むか若しくはミドルウェア部品を含むコンピュータシステム(例えば、アプリケーションサーバ)内、又はフロントエンド部品(例えば、ユーザが本明細書に記載のシステム及び技術の実装形態と相互作用し得るGUI若しくはウエブブラウザーを有するクライアントコンピュータ)内、又はこのようなバックエンド、ミドルウェア若しくはフロントエンド部品の任意の組み合わせを含むコンピュータシステム内に実装され得る。本システムの部品は、図2のネットワーク210など、任意の形式又は媒体のデジタルデータ通信によって相互接続され得る。通信ネットワークの例は、LAN、WAN及びインターネットを含む。
【0048】
[0053] コンピューティングシステムは、クライアント及びサーバを含み得る。クライアント及びサーバは、通常、互いに離れており、通常、通信ネットワークを介して相互作用する。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行するコンピュータプログラムであって、互いにクライアント/サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって発生する。
【0049】
[0054] いくつかの実装形態が上に詳細に説明されたが、本明細書で説明される発明の概念の範囲から逸脱することなく、他の修正形態がなされ得、したがって、他の実装形態は、以下の特許請求の範囲に入る。
【符号の説明】
【0050】
100 システム
101 キュベット
102 容器ウェル
102a 第1の容器ウェル
102b 第2の容器ウェル
103 上側部分
104 下側部分
106 流体
108 光源
110 第1の絞り
111 第2の光ビーム
112 第2の絞り
114 第1の光ビーム
116 検出器基板
118 第1の光検出器
119 検出器
120 第2の光検出器
122 プローブ
124 処理ユニット
126 長さ
128 幅
130 モニタ
132 ユーザ
133 光学的情報
134 キーボード
200 プロセス
202 工程
204 工程
206 工程
208 工程
210 工程
302 高さ
304 容器
306 光ビーム
308 流体表面
310 ブラインド容積
312 プローブ
402 吸収率曲線
404 吸収率微分曲線
502 容器
504 プローブ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5