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特許7423842座標変換装置、座標変換方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】座標変換装置、座標変換方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20240122BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240122BHJP
   G01C 7/06 20060101ALI20240122BHJP
   G06T 3/073 20240101ALI20240122BHJP
【FI】
E21D11/04 Z
G01B11/00 A
G01C7/06
G06T3/00 730
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023073269
(22)【出願日】2023-04-27
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】593122310
【氏名又は名称】中央復建コンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】栗山 廣志
(72)【発明者】
【氏名】竹林 正晴
(72)【発明者】
【氏名】宮城 大助
(72)【発明者】
【氏名】竹越 祥継
(72)【発明者】
【氏名】橘 直毅
(72)【発明者】
【氏名】大家 真里子
(72)【発明者】
【氏名】田村 綾乃
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-164519(JP,A)
【文献】特開2019-020348(JP,A)
【文献】特開2004-037419(JP,A)
【文献】特開2005-003377(JP,A)
【文献】特開2011-058875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
G01B 11/00-11/30
G01C 7/06
G06T 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元で与えられ、かつトンネルの中心線形を規定する第1座標を導出する設定部と、
二次元で与えられ、かつ前記トンネルの内周面における対象位置を特定する第2座標を取得する取得部と、
前記第1座標を基準として前記第2座標を二次元から三次元に変換する変換部と、を備え、
前記変換部では、前記内周面を規定する第1要素と、前記内周面の法線方向を面内方向とする前記トンネルの内空断面における前記中心線形から前記対象位置までの離隔を規定する第2要素と、に基づき前記第2座標を二次元から三次元に変換する、座標変換装置。
【請求項2】
前記第1要素は、前記第1座標を中心とする前記トンネルの内空半径を含み、
前記第2要素は、前記内周面に位置する基点から前記対象位置までに至る前記内周面に沿った距離であり、
前記基点は、前記内空断面において前記第1座標を前記内周面に投影することにより設定される、請求項1に記載の座標変換装置。
【請求項3】
前記内空半径は、第1中心を中心とする第1半径と、第2中心を中心とする第2半径と、を含み、
前記第1中心の位置と前記第2中心の位置とは、互いに異なっており、
前記変換部は、前記第1座標を前記第1中心および前記第2中心の各々の座標に置換する置換部を含む、請求項2に記載の座標変換装置。
【請求項4】
コンピュータにより実行される座標変換方法であって、
三次元で与えられ、かつトンネルの中心線形を規定する第1座標を導出する第1ステップと、
二次元で与えられ、かつ前記トンネルの内周面における対象位置を特定する第2座標を取得する第2ステップと、
前記第1座標を基準として前記第2座標を二次元から三次元に変換する第3ステップと、を備え、
前記第3ステップでは、前記内周面を規定する第1要素と、前記内周面の法線方向を面内方向とする前記トンネルの内空断面における前記中心線形から前記対象位置までの離隔を規定する第2要素と、に基づき前記第2座標を二次元から三次元に変換する、座標変換方法。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1ないし3のいずれかに記載の座標変換装置として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内周面における対象位置の座標を変換するための座標変換装置、座標変換方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トンネルの覆工展開図を作成するための手法が開示されている。覆工展開図には、ひび割れなどの変状が記録される。覆工展開図の作成にあたっては、三次元レーザスキャナを用いてトンネル覆工の内周面の形状と、当該内周面に発生した変状とのデータを三次元点群データとして取得する。取得された三次元点群データを適宜処理することにより、変状が記録された覆工展開図をより精度よく、かつ効率よく作成することが可能である。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されている手法によりトンネルの覆工展開図を作成した場合であっても、変状の位置を特定する座標は二次元のままである。ここで、近年では、機械設計の分野のみならず、土木設計の分野においても三次元モデルに基づくより精度の高い設計が広まりつつある。したがって、トンネルの覆工展開図に記録された変状の位置情報においても、二次元座標ではなく三次元座標で管理することがトンネルの効率的・効果的な維持管理を図る上で期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-20348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より簡便な方法に基づき、トンネルの内周面における対象位置の座標を二次元から三次元に変換することが可能な座標変換装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供される座標変換装置は、設定部、取得部および変換部を備える。前記設定部では、三次元で与えられ、かつトンネルの中心線形を規定する第1座標を導出する。前記取得部では、二次元で与えられ、かつ前記トンネルの内周面における対象位置を特定する第2座標を取得する。前記変換部では、前記第1座標を基準として前記第2座標を二次元から三次元に変換する。前記変換部では、前記内周面を規定する第1要素と、前記内周面の法線方向を面内方向とする前記トンネルの内空断面における前記中心線形から前記対象位置までの離隔を規定する第2要素とに基づき前記第2座標を二次元から三次元に変換する。
【0007】
本発明の実施において好ましくは、前記第1要素は、前記第1座標を中心とする前記トンネルの内空半径を含む。前記第2要素は、前記内周面に位置する基点から前記対象位置までに至る前記内周面に沿った距離である。前記基点は、前記内空断面において前記第1座標を前記内周面に投影することにより設定される。
【0008】
本発明に実施において好ましくは、前記内空半径は、第1中心を中心とする第1半径と、第2中心を中心とする第2半径とを含む。第1中心の位置と第2中心の位置とは、互いに異なっている。前記変換部は、前記第1座標を前記第1中心および前記第2中心の各々の座標に置換する置換部を含む。
【0009】
本発明の第2の側面によって提供される座標変換方法は、コンピュータにより実行される座標変換方法であり、第1ステップ、第2ステップおよび第3ステップを備える。前記第1ステップでは、三次元で与えられ、かつトンネルの中心線形を規定する第1座標を導出する。前記第2ステップでは、二次元で与えられ、かつ前記トンネルの内周面における対象位置を特定する第2座標を取得する。前記第3ステップでは、前記第1座標を基準として前記第2座標を二次元から三次元に変換する。前記第3ステップでは、前記内周面を規定する第1要素と、前記内周面の法線方向を面内方向とする前記トンネルの内空断面における前記中心線形から前記対象位置までの離隔を規定する第2要素と、に基づき前記第2座標を二次元から三次元に変換する。
【0010】
本発明の第3の側面によって提供されるプログラムは、コンピュータを、本発明の第1の側面によって提供される座標変換装置として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる座標変換装置が具備する構成によれば、より簡便な方法に基づき、トンネルの内周面における対象位置の座標を二次元から三次元に変換することが可能となる。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態にかかる座標変換装置を具備する座標変換システムの構成を示す機能ブロック図である。
図2図1に示す座標変換システムが具備する座標変換装置の取得部が対象とするトンネルの覆工展開図の一例である。
図3図1に示す座標変換システムが具備する座標変換装置の変換部を説明するトンネルの内空断面図の一例である。
図4図3の部分拡大図である。
図5図1に示す座標変換システムが具備する表示部に示される画像の一例である。
図6図1に示す座標変換システムが具備する座標変換装置の処理手順を説明するフローチャートの一例である。
図7】本発明の第2実施形態にかかる座標変換装置を具備する座標変換システムの構成を示す機能ブロック図である。
図8図7に示す座標変換システムが具備する座標変換装置の変換部を説明するトンネルの内空断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1図5に基づき、本発明の第1実施形態にかかる座標変換システムA10について説明する。座標変換システムA10は、座標変換装置10、記憶部20、操作部30および表示部40を具備する。
【0016】
座標変換装置10の説明においては、便宜上、後述するトンネルの中心線形CLが延びる方向を「第1方向x」と呼ぶ。第1方向xに対して直交する方向を「第2方向y」と呼ぶ。第2方向yは、トンネルの幅員方向に相当する。第1方向xおよび第2方向yの双方に対して直交する方向を「第3方向z」と呼ぶ。第3方向zは、トンネルの高さ方向に相当する。
【0017】
座標変換装置10は、トンネルの内周面80における対象位置Bの第2座標82を二次元から三次元に変換する(図2参照)。ここで、トンネルは、道路トンネル、鉄道トンネルおよび水路トンネルを含む。トンネルの種別は、山岳トンネル、シールドトンネル、開削トンネル、ボックスカルバートおよびパイプカルバートなどを含む。座標変換システムA10において対象とするトンネル種別は、パイプカルバートである。内周面80は、たとえば道路トンネルであれば、トンネルの内方を向く覆工の表面を指す。対象位置Bは、たとえばコンクリートの覆工に発生した変状の位置である。変状は、ひび割れ、浮き、漏水および豆板(ジャンカ)などを含む。この他、対象位置Bは、覆工の各種部位の位置でもよい。
【0018】
座標変換装置10は、コンピュータに本発明にかかるプログラムをインストールしたものである。当該プログラムは、インターネット回線などのネットワーク回線を介してサーバからダウンロードされた後、記憶部20に記憶される。または、当該プログラムは、DVD-ROMなどの記録媒体からインストールされてもよい。この他、当該プログラムは、CADを構成するプログラムの一要素でもよい。さらに座標変換装置10は、ハードウェアとしてCPU、ROM、RAMおよび画像処理プロセッサなどを具備する。
【0019】
座標変換装置10は、図1に示すように、設定部11、取得部12、変換部13および出力部14を備える。
【0020】
図1に示すように、設定部11は、線形導出部111およびモデル構築部112を含む。線形導出部111では、図2および図3に示すトンネルの中心線形CLを規定する座標群を導出する。中心線形CLは、たとえば道路トンネルの場合、車線の路面上、かつ車線中央に設定される。当該座標群は、三次元で与えられる。当該座標群のいずれか一点を「第1座標81」と称する。第1座標81は、世界測地系に基づく。座標変換装置10の説明においては、第1座標81を(X0,Y0,Z0)と表記する。中心線形CLは、平面線形および縦断線形を含む。平面線形は、第1座標81の群の各々のx座標およびy座標を決定する要素である。縦断線形は、第1座標81の群の各々のx座標およびz座標を決定する要素である。平面線形は、対象となるトンネルの中心線座標計算データから設定することが好ましい。中心線座標計算データが存在しない場合は、トンネルの起点に位置する第1座標81を設定の上、トンネルの起点から終点に向けて平面線形要素の積み上げにより平面線形を設定してもよい。当該平面線形要素として、直線長、曲線長、緩和曲線長、曲線半径、接線方向角およびクロソイドパラメータが挙げられる。
【0021】
モデル構築部112では、対象となるトンネルの内空モデルM(図5参照)を構築する。内空モデルMは、線形導出部111で導出された第1座標81の群と、図3に示すトンネルの内周面80を規定する要素とを基に構築される。内周面80は、曲面である。内周面80の曲率半径は、図3に示すトンネルの内空半径Rに等しい。したがって、内空半径Rは、内周面80を規定する要素である。
【0022】
取得部12では、図2および図3に示す対象位置Bを特定する座標群を取得する。当該座標群は、二次元で与えられる。当該座標群のいずれか一点を「第2座標82」と称する。第2座標82の群は、デジタルカメラなどから得られた現場の撮像データからの読み取り、または図2に示すトンネルの覆工展開図からの読み取りなどによって取得される。座標変換装置10の説明においては、二次元で与えられる第2座標82を(Xa,Ya)と表記する。
【0023】
変換部13では、設定部11の線形導出部111により導出された第1座標81の群を基に、取得部12により取得された第2座標82の群の各々を二次元から三次元に変換する。変換部13は、第1処理部131、第2処理部132および第3処理部133を含む。
【0024】
第1処理部131では、図3に示すトンネルの内空断面Sを設定する。内空断面Sは、内周面80の法線方向を面内方向とする断面であるとともに、中心線形CLが延びる方向に対して直交する断面である。すなわち、内空断面Sの面内方向は、第2方向yおよび第3方向zを含む。内空断面Sの設定にあたっては、まず、対象位置Bを特定する第2座標82のx座標(Xa)と、中心線形CLを規定する第1座標81のx座標(X0)とのマッチングを行う。次いで、マッチングされた第1座標81のx座標(X0)に基づき断面位置が特定された内空断面Sを、モデル構築部112で構築した内空モデルMから設定する。最後に、設定した内空断面Sにおいて、第1座標81および第2座標82をプロットする。ここで、座標変換システムA10においては、トンネル種別がパイプカルバートであるため、内空半径Rは、単一の半径として設定される。あわせて、内空半径Rの中心Cは、内空断面Sにおける中心線形CLに一致する。したがって、第1座標81は、中心Cに一致する。
【0025】
第2処理部132では、内空断面Sを基に図3に示す離隔L0を設定する。離隔L0は、内空断面Sにおける中心線形CLから対象位置Bまでに至る第2方向yの間隔と第3方向zの間隔との合成である。したがって、中心線形CLを規定する第1座標81に対して離隔L0の要素を加入することにより、第2座標82を二次元から三次元に変換できる。しかし、内周面80が曲面である場合は、第2座標82の群の各々のy座標(Ya)は、内周面80に設定された基準点から内周面80に沿った長さから得られたものとなる。したがって、内周面80が曲面である場合は、当該内周面80に沿った長さを考慮の上、離隔L0を規定する第2方向yおよび第3方向zの各々の間隔を導出することが必要である。そこで、第2処理部132では、図3に示す内周面80に位置する基点Pから対象位置Bに至る内周面80に沿った距離Lを離隔L0として扱う。距離Lは、曲率半径が内空半径Rに等しい曲線長である。基点Pは、内空断面Sにおいて第1座標81を内空半径Rの径方向に沿って内周面80に投影することにより設定された点である。座標変換システムA10が具備する座標変換装置10においては、基点Pは、第1座標81を第3方向zに沿って内周面80に投影することにより設定される。したがって、基点Pの座標は、(X0,Y0,Z0+R)と表記される。ここで、Rは、内空半径Rの大きさを表す。
【0026】
第3処理部133では、基点Pの座標、内空半径Rおよび距離Lに基づき、第2座標82を二次元から三次元に変換する。三次元に変換された第2座標82を(Xb,Yb,Zb)と表記する。(Xb,Yb,Zb)は、次の数式に基づき導出される(図4参照)。ここで、次の数式に示すDは、距離Lに対応する弦長である。δは、基点Pにおける距離Lの接線方向角である。
【0027】
【数1】
ここで、δ=(180L)/(πR)である。
【0028】
以上より、変換部13では、内周面80を規定する第1要素と、内空断面Sにおける中心線形CLから対象位置Bまでの離隔L0を規定する第2要素とに基づき第2座標82の群の各々を二次元から三次元に変換する。第1要素は、第1座標81を中心とする内空半径Rである。第2要素は、距離Lである。
【0029】
出力部14では、第1座標81の群のデータとしての中心線形CLの座標計算データ、三次元に変換された第2座標82の群のデータ、および内空モデルMのデータが出力される。これらのデータは、数値、図面および三次元モデルのうち選択的に出力することができる。
【0030】
記憶部20は、各種データおよびプログラムを記憶する。記憶部20は、たとえばハードディスク装置である。座標変換システムA10においては、記憶部20は、座標変換システムA10にかかるプログラムと、座標変換装置10により取得および生成されたデータとを記憶する。記憶部20は、座標変換装置10に組み込まれたハードディスク装置の他、座標変換装置10がインストールされたコンピュータがアクセスすることが可能なデータベースでもよい。
【0031】
操作部30には、作業者が座標変換装置10を実行するための命令が入力される。操作部30は、たとえば、キーボード、マウスおよびタッチパネルなどの操作手段を具備する。操作部30は、作業者が操作手段に対応した操作信号を座標変換装置10に入力する。その上で座標変換装置10は、入力された操作信号に基づき処理を行う。
【0032】
表示部40は、座標変換装置10が生成した画像を表示する。表示部40は、たとえば液晶ディスプレイなどの表示装置を具備する。図5は、表示部40に示される画像の一例である。当該画像では、二次元座標(Xa,Ya)として与えられる対象位置Bとしてのひび割れと、三次元座標(Xb,Yb,Zb)として与えられる対象位置Bとしてのひび割れとを示している。
【0033】
次に、図6に基づき、座標変換システムA10が具備する座標変換装置10の処理手順について説明する。
【0034】
第1ステップS11では、座標変換装置10の設定部11の線形導出部111において、三次元で与えられ、かつ中心線形CLを規定する第1座標81の群を導出する。
【0035】
第2ステップS12では、座標変換装置10の設定部11のモデル構築部112において、第1座標81の群と、内空半径Rとを基に内空モデルMを構築する。
【0036】
第3ステップS13では、座標変換装置10の取得部12において、二次元で与えられ、かつ内周面80における対象位置Bを特定する第2座標82の群を取得する。取得する対象となるデータは、現場の撮像データや、図2に示すトンネルの覆工展開図である。
【0037】
第4ステップS14では、第2ステップS12で構築された内空モデルMと、第1座標81の群の各々のx座標と第2座標82の群の各々のx座標との群とのマッチングとにより、対象位置Bを包含する内空断面Sを設定する。
【0038】
第5ステップS15では、第4ステップS14で設定された内空断面Sを基に離隔L0を設定する。処理の上では、内周面80に位置する基点Pから対象位置Bに至る内周面80に沿った距離Lを離隔L0として扱う。
【0039】
第6ステップS16では、基点Pの座標、内空半径Rおよび距離Lに基づき、第2座標82の群の各々を二次元から三次元に変換する。
【0040】
次に、座標変換システムA10が具備する座標変換装置10の作用効果について説明する。
【0041】
座標変換システムA10が具備する座標変換装置10は、設定部11、取得部12および変換部13を備える。設定部11では、トンネルの中心線形CLを規定する第1座標81を設定する。取得部12では、トンネルの内周面80における対象位置Bを特定する第2座標82を所得する。変換部13では、第1座標81を基準として第2座標82を二次元から三次元に変換する。変換部13では、変換部13では、内周面80を規定する第1要素と、内周面80の法線方向を面内方向とするトンネルの内空断面Sにおける中心線形CLから対象位置Bまでの離隔L0を規定する第2要素とに基づき、第2座標82を二次元から三次元に変換する。ここで、第1要素は、トンネルの設計資料や維持管理台帳等から得られる。第2要素は、取得部12で扱われる撮像データ、およびトンネルの覆工展開図のいずれかのデータからの読み取りにより得られる。したがって、本構成によれば、座標変換システムA10が具備する座標変換装置10においては、より簡便な方法に基づき、内周面80における対象位置Bの座標を二次元から三次元に変換することが可能となる。
【0042】
上記第1要素は、第1座標81を中心とするトンネルの内空半径Rを含む。上記第2要素は、内周面80に位置する基点Pから対象位置Bまでに至る内周面80に沿った距離Lである。基点Pは、内空断面Sにおいて第1座標81を内周面80に投影することにより設定される。本構成をとることにより、内周面80が曲面である場合においても、内周面80における対象位置Bの座標を精度よく二次元から三次元に変換することが可能となる。
【0043】
座標変換装置10によれば、対象位置Bの位置情報が中心線形CLの座標に紐付けられるため、対象位置Bにかかる対象物を個別に管理できる。これにより、トンネルの維持管理を効率的・効果的に図ることが可能となる。さらに、図5に示すトンネルの内空モデルMに対象位置Bの情報を与えることにより、3次元で構築されたトンネルの覆工モデルに変状等をより正確に表現することができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
図7および図8に基づき、本発明の第2実施形態にかかる座標変換システムA20について説明する。本図において、先述した座標変換システムA10と同一、または類似の要素には同一の符号を伏して、重複する説明を省略する。
【0045】
座標変換システムA20においては、座標変換装置10の変換部13の構成が、座標変換システムA10の当該構成と異なる。座標変換システムA20において対象とするトンネル種別は、山岳トンネルである。
【0046】
図8に示すように、山岳トンネルの内空断面Sにおける内周面80を規定する内空半径Rは、第1半径R1、第2半径R2および第3半径R3を含む。図8が示す例においては、第2半径R2の大きさと第3半径R3の大きさが互いに等しく、かつ第1半径R1の大きさが第2半径R2の大きさよりも大きい。この他、第1半径R1、第2半径R2および第3半径R3の各々の大きさが互いに異なる場合でもよい。
【0047】
図8に示すように、第1半径R1の第1中心C1と、第2半径R2の第2中心C2と、第3半径R3の第3中心C3との位置が互いに異なる。第1中心C1、第2中心C2および第3中心C3の各々は、第1座標81から離れている。図8が示す例においては、第1中心C1、第2中心C2および第3中心C3の各々は、トンネルのスプリングラインSLの上に位置する。
【0048】
内空半径Rが第1半径R1、第2半径R2および第3半径R3を含むことにより、内周面80は、第1領域801、第2領域802および第3領域803を含む。第1領域801は、第1半径R1により規定される。第2領域802は、第2半径R2により規定される。第3領域803は、第3半径R3により規定される。図8が示す例においては、スプリングラインSLは、第1領域801と、第2領域802および第3領域803の各々との境界をなす。
【0049】
したがって、山岳トンネルの内空断面Sにおける内周面80は、互いに曲率半径が異なる領域に区分されることになる。このような場合であっても第2座標82の群の各々を二次元から三次元に変換することを可能とするために、図7に示すように、座標変換システムA20が具備する座標変換装置10においては、変換部13は、置換部134を含む。
【0050】
置換部134では、第1座標81を第1中心C1、第2中心C2および第3中心C3の各々の座標に置換する。本処理により、第2処理部132において、内周面80の第1領域801、第2領域802および第3領域803のいずれかに位置する対象位置Bと基点Pとの距離Lを設定することが可能となる。第1座標81の置換にあたっては、図8に示す鉛直オフセットOvおよび水平オフセットOhに基づき行われる。鉛直オフセットOvは、第1座標81と第1中心C1との第3方向zの間隔である。水平オフセットOhは、第1座標81と第2中心C2および第3中心C3の各々との第2方向yの間隔である。鉛直オフセットOvおよび水平オフセットOhに基づき、第1中心C1に置換された第1座標81は、(X0,Y0,Z0+Ov)と表記される。第2中心C2に置換された第1座標81は、(X0,Y0+Oh,Z0+Ov)と表記される。第3中心C3に置換された第1座標81は、(X0,Y0-Oh,Z0+Ov)と表記される。置換部134は、第1中心C1、第2中心C2および第3中心C3の各々の座標に置換した第1座標81を第2処理部132に入力する。
【0051】
第2処理部132では、第1中心C1、第2中心C2および第3中心C3の各々の座標に置換された第1座標81に基づき、内周面80の第1領域801、第2領域802および第3領域803の各々に対して基点Pを個別に設定する。図8に示すように、第1領域801に設定された基点Pを第1基点P1と呼ぶ。第1基点P1は、第1中心C1に置換された第1座標81を第3方向zに沿って第1領域801に投影することにより設定される。したがって、第1基点P1の座標は、(X0,Y0,Z0+Ov+R1)と表記される。第2領域802に設定された基点Pを第2基点P2と呼ぶ。第2基点P2は、第2中心C2に置換された第1座標81を第2方向yに沿って第2領域802に投影することにより設定される。したがって、第2基点P2の座標は、(X0,Y0-Oh+R2,Z0+Ov)と表記される。第3基点P3は、第3中心C3に置換された第1座標81を第2方向yに沿って第3領域803に投影することにより設定される。したがって、第3基点P3の座標は、(X0,Y0+Oh-R3,Z0+Ov)と表記される。
【0052】
第2処理部132では、対象位置Bが内周面80の第1領域801、第2領域802および第3領域803のいずれかに位置するのかを判別した上で、第1基点P1、第2基点P2および第3基点P3のいずれかを選択して離隔L0としての距離Lを設定する。
【0053】
以上より、座標変換システムA20が具備する座標変換装置10においても、変換部13では、内周面80を規定する第1要素と、内空断面Sにおける中心線形CLから対象位置Bまでの離隔L0を規定する第2要素とに基づき第2座標82の群の各々を二次元から三次元に変換する。第1要素は、各々が置換部134により置換された第1座標81を中心とする第1半径R1、第2半径R2および第3半径R3である。第2要素は、距離Lである。
【0054】
次に、座標変換システムA20が具備する座標変換装置10の作用効果について説明する。
【0055】
座標変換システムA20が具備する座標変換装置10は、設定部11、取得部12および変換部13を備える。設定部11では、トンネルの中心線形CLを規定する第1座標81を設定する。取得部12では、トンネルの内周面80における対象位置Bを特定する第2座標82を所得する。変換部13では、第1座標81を基準として第2座標82を二次元から三次元に変換する。変換部13では、変換部13では、内周面80を規定する第1要素と、内周面80の法線方向を面内方向とするトンネルの内空断面Sにおける中心線形CLから対象位置Bまでの離隔L0を規定する第2要素とに基づき、第2座標82を二次元から三次元に変換する。したがって、本構成によれば、座標変換システムA20が具備する座標変換装置10においても、より簡便な方法に基づき、内周面80における対象位置Bの座標を二次元から三次元に変換することが可能となる。
【0056】
座標変換システムA20が対象とするトンネルにおいては、トンネルの内空半径Rは、第1中心C1を中心とする第1半径R1と、第2中心C2を中心とする第2半径R2とを含む。第1中心C1の位置と第2中心C2の位置とは、互いに異なる。変換部13は、第1座標81を第1中心C1および第2中心C2の各々の座標に置換する置換部134を含む。本構成をとることにより、内周面80が複数の曲面領域を含み、かつ当該複数の曲面領域の各々の曲率半径が互いに異なる場合であっても、内周面80における対象位置Bの座標を精度よく二次元から三次元に変換することが可能となる。
【0057】
本発明は、先述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0058】
A10,A20:座標変換システム
10:座標変換装置
11:設定部
111:線形導出部
112:モデル構築部
12:取得部
13:変換部
131:第1処理部
132:第2処理部
133:第3処理部
134:置換部
14:出力部
20:記憶部
30:操作部
40:表示部
80:内周面
801:第1領域
802:第2領域
803:第3領域
81:第1座標
82:第2座標
B:対象位置
CL:中心線形
M:内空モデル
S:内空断面
R:内空半径
1~R3:第1半径~第3半径
C:中心
1~C3:第1中心~第3中心
0:離隔
L:距離
P:基点
1~P3:第1基点~第3基点
v:鉛直オフセット
h:水平オフセット
【要約】
【課題】 より簡便な方法に基づき、トンネルの内周面における対象位置の座標を二次元から三次元に変換することが可能な座標変換装置を提供する。
【解決手段】 座標変換装置10は、設定部11、取得部12および変換部13を備える。設定部11では、三次元で与えられ、かつトンネルの中心線形を規定する第1座標を導出する。取得部12では、二次元で与えられ、かつ前記トンネルの内周面における対象位置を特定する第2座標を取得する。変換部13では、前記第1座標を基準として前記第2座標を二次元から三次元に変換する。変換部13では、前記内周面を規定する第1要素と、前記内周面の法線方向を面内方向とする前記トンネルの内空断面における前記中心線形から前記対象位置までの離隔を規定する第2要素とに基づき前記第2座標を二次元から三次元に変換する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8