(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】複合金属回転式ホーン
(51)【国際特許分類】
B06B 1/02 20060101AFI20240122BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B06B1/02 K
B23K20/10
(21)【出願番号】P 2023118404
(22)【出願日】2023-07-20
【審査請求日】2023-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511243783
【氏名又は名称】斉藤 祐記
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 祐記
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-010243(JP,A)
【文献】特開2004-228862(JP,A)
【文献】特表2002-526250(JP,A)
【文献】特開平07-024414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/02
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波溶着機や切断
機で使用する回転式ホーンであって、
円盤状に成形されワークに直接接触して機能する円盤部と、
当該円盤部を支持する軸部と、を備え、
前記円盤部と前記軸部とを別部材で構成すると共に、前記円盤部を構成する金属材料を、前記軸部を構成する金属材料よりも比重が軽く且つ熱伝導率が高い金属材料で構成し、
更に、前記円盤部の中心に貫通孔を設け、当該貫通孔に前記軸部の先端を焼きばめにより結合した
ことを特徴とする複合金属回転式ホーン。
【請求項2】
請求項1において、
更に、前記円盤部を構成する金属材料は、前記軸部を構成する金属材料よりも熱膨張率が大きい
ことを特徴とする複合金属回転式ホーン。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記円盤部の内部に、前記貫通孔の内周面から連続する冷媒を流す為の冷却溝を形成し、
前記軸部の内部に、前記内周面と嵌合する部分に開放する冷媒通路を形成し、
前記冷媒によって、前記円盤部を冷却する
ことを特徴とする複合金属回転式ホーン。
【請求項4】
請求項3において、
前記円盤部の冷却溝は、前記貫通孔の内周面から当該円盤部の半径方向に向かって放射状に複数設けられ、
前記冷媒は前記軸部から前記円盤部へと一方向に流される
ことを特徴とする複合金属回転式ホーン。
【請求項5】
請求項3において、
前記円盤部の冷却溝は、前記貫通孔の内周面から当該円盤部内に略ドーナツ形状に形成され、
前記冷媒は前記軸部から前記冷却溝内を介して、再度前記軸部側へと戻されて循環する
ことを特徴とする複合金属回転式ホーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波溶着機や超音波切断機で使用する回転式ホーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波溶着機などにおいて、連続的な溶着(シール)や切断を実現する目的で回転式ホーンが広く利用されていた(特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1を含め、従来から利用されている回転式ホーンの一例を
図5に示している。回転式ホーン10は、振動発生部(図示していない)からの振動を回転しながらワークに伝えるため、円盤部20と軸部30との芯ズレ(軸心のズレ)をシビアに管理する必要がある。そのため回転式ホーン10全体が削り出しによって一体成形されて構成される。
【0004】
また、回転式ホーンは、振動子で発生した振動が常に加わった状態で動作するため、金属疲労に強い材料が相応しい。また、振幅に必要なエネルギを少なくできるという観点から、軽い材料が望ましい。更に、特に回転式ホーンは振動方向の変換(軸部30の縦方向の振幅が、円盤部20の円周方向の振幅に変換)されるため、円盤部の中心付近で発熱する。よって、放熱性に優れた材料が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、回転式ホーンには他方面からの様々な性能が要求されるが、従来のように、特定の材料から全体を削り出して作製した場合にはこれら全ての性能に応えることは非常に難しい。また、これら要求を高い次元で満たす材料(例えばチタンなど)を使用すると、非常に高コストになってしまう(特に削り出し一体成形の場合は回転しホーンの形状から切削量が多くまた加工工程も多くなり、材料費のみならず加工費用も必然的に高くなる。)。
【0007】
本発明は、こういった問題点を解決するべくなされたものであって、回転式ホーンに求められる性能を他方面で高いレベルで実現しつつ、低コストで繰り返し利用可能な回転式ホーンを提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく、本願発明は、超音波溶着機や切断機などで使用する回転式ホーンであって、円盤状に成形されワークに直接接触して機能する円盤部と、当該円盤部を支持する軸部と、を備え、前記円盤部と前記軸部とを別部材で構成すると共に、前記円盤部を構成する金属材料を、前記軸部を構成する金属材料よりも比重が軽く且つ熱伝導率が高い金属材料で構成し、更に、前記円盤部の中心に貫通孔を設け、当該貫通孔に前記軸部の先端を焼きばめにより結合したことを特徴とする。
【0009】
このように構成したことによって、回転式ホーンに求められる性能を他方面で高いレベルで実現できるようになった。即ち、振幅幅が最も大きくなる円盤部を軽量な金属材料で構成することによって、エネルギー効率のよい回転ホーンを実現できる。また、放熱性に優れているので、円盤部中心付近の発熱を効率的に伝搬して放熱することができる。更に、軸部と円盤部とを別々に削り出しすることができるため、切削量が少なくて済み、金属材料の無駄をなくして低コスト化を実現できる。加えて、焼きばめというシンプルな機構で両者を結合するため、軸部と円盤部との芯ズレが生じ難い。
【0010】
更に、前記円盤部を構成する金属材料は、前記軸部を構成する金属材料よりも熱膨張率が大きいことを特徴とする。
【0011】
このように構成したことによって、繰り返し利用可能な回転式ホーンを提供することが可能となった。即ち、焼きばめ結合部を再度加熱して円盤部を取り外すことができるため、摩耗・損傷した円盤部のみ交換することで低コストで持続的に利用可能な回転式ホーンを実現している。
【0012】
また、前記円盤部の内部に、前記貫通孔の内周面から連続する冷媒を流す為の冷却溝を形成し、前記軸部の内部に、前記内周面と嵌合する部分に開放する冷媒通路を形成し、前記冷媒によって、前記円盤部を冷却するように構成してもよい。
【0013】
このように構成したことによって、より円盤部の効率的な冷却が可能となり、ワークの加工精度が向上し、発熱に伴う材料の劣化も防止できる。
【0014】
また、前記円盤部の冷却溝は、前記貫通孔の内周面から当該円盤部の半径方向に向かって放射状に複数設けられ、前記冷媒は前記軸部から前記円盤部へと一方向に流されるように構成してもよい。
【0015】
このように構成したことによって、軸部から円盤部を通して外部に冷媒(例えば空気など)を吹き出すことによって冷却を実現できるので、冷却機構を簡易な構成で実現できる。
【0016】
前記円盤部の冷却溝は、前記貫通孔の内周面から当該円盤部内に略ドーナツ形状に形成され、前記冷媒は前記軸部から前記冷却溝内を介して、再度前記軸部側へと戻されて循環するように構成してもよい。
【0017】
このように構成したことによって、熱効率の高い液体の冷媒を利用できるので、冷却効率が飛躍的に向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明を適用することで、回転式ホーンに求められる性能を他方面で高いレベルで実現しつつ、低コストで繰り返し利用可能な回転式ホーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の一例である複合金属回転式ホーンの分解斜視図である。
【
図2】複合金属回転式ホーンの第1実施例を示した図であって、(a)が円盤部の横断面図、(b)が円盤部の縦断面図、(c)が軸部の縦断面図である。
【
図3】複合金属回転式ホーンの第2実施例を示した図であって、(a)が円盤部の横断面図、(b)が円盤部の縦断面図、(c)が軸部の縦断面図である。
【
図4】複合金属回転式ホーンの第3実施例を示した図であって、(a)が円盤部の横断面図、(b)が円盤部の縦断面図、(c)が軸部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例である複合金属回転式ホーン100について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0021】
〈複合金属回転式ホーンの構成(第1実施例)〉
図1及び
図2に示している通り、本発明の第1実施例として示す複合金属回転式ホーン100は、円盤状に成形されワークに直接接触して機能する円盤部120と、当該円盤部120を支持する軸部130とが別部材で構成される。また、円盤部を構成する金属材料は、軸部を構成する金属材料よりも比重が軽く且つ熱伝導率が高い金属材料とされている。例えば、軸部130が鋼材やチタンで構成されている場合に、円盤部120がアルミ合金で構成される。もちろん選択する材料はこのパターンに限られない。更に、円盤部120の中心に貫通孔122を設け、当該貫通孔122に軸部130の先端を焼きばめにより結合される。なお、符号132は、複合金属回転ホーン100を回転させる時に利用する回転支持部である。また、符号50は、軸部130の基端側に接続され、振動を発生させる為の振動子である。
【0022】
〈複合金属回転式ホーンの構成(第2実施例)〉
図3に示している通り、第2実施例としての複合金属回転式ホーンは、冷媒によって円盤部220を強制的に冷却できる構造となっている。なお、第1実施例と同一又は類似する部分については数字下2桁が共通する符号を付するに止め、重複説明は省略する。
【0023】
第2実施例としての複合金属回転式ホーンの円盤部220には、貫通孔222の内周面から、半径方向外側に向かって放射状に4本の冷却溝224が形成されている。この冷却溝224は、円盤部220の外周面に開放している。また、軸部230にも冷媒を通すための冷媒通路236が軸方向に形成される。この冷媒通路236は、下方で外部からの冷媒(例えば空気)が供給される冷媒供給部238と接続される。冷媒通路236の上方は、軸部230外周面に一周に渡って形成された溝234の部位に繋がっている。なお、この溝234は、軸部230における「円盤部220の貫通孔222の内周面」に嵌合する部分に形成され、更に、嵌合した際に円盤部220に形成された冷却溝224と連通する位置に形成されている。
【0024】
〈複合金属回転式ホーンの構成(第3実施例)〉
図4に示している通り、第3実施例としての複合金属回転式ホーンは、冷媒によって円盤部320を強制的に冷却できる構造となっている。なお、第1実施例と同一又は類似する部分については数字下2桁が共通する符号を付するに止め、重複説明は省略する。
【0025】
第3実施例としての複合金属回転式ホーンの円盤部320には、貫通孔322の内周面から、半径方向外側に向かって略ドーナツ形状の冷却溝324が形成されている。この冷却溝324は、円盤部320の外周面には開放していない。また、軸部330にも冷媒を通すための冷媒通路336が軸方向に2本形成される。この冷媒通路336は、下方で外部からの冷媒(例えば冷却水)が供給される冷媒供給部338a、及び冷媒が回収される冷媒回収部338bと接続される。冷媒通路336の上方は、軸部330外周面334に開放している。なおこの部分(軸部330外周面334が開放している部分)は、軸部330における「円盤部320の貫通孔322の内周面」に嵌合する部分に形成され、更に、嵌合した際に円盤部320に形成された冷却溝324と連通する位置に形成されている。
【0026】
上記説明した通り、本願発明は、超音波溶着機や切断機などで使用する回転式ホーンであって、円盤状に成形されワークに直接接触して機能する円盤部120と、当該円盤部を支持する軸部130と、を備え、前記円盤部120と前記軸部130とを別部材で構成すると共に、前記円盤部120を構成する金属材料を、前記軸部130を構成する金属材料よりも比重が軽く且つ熱伝導率が高い金属材料で構成し、更に、前記円盤部120の中心に貫通孔122を設け、当該貫通孔122に前記軸部130の先端を焼きばめにより結合したことを特徴とする。
【0027】
このように構成したことによって、回転式ホーンに求められる性能を他方面で高いレベルで実現できるようになった。即ち、振幅幅が最も大きくなる円盤部120を軽量な金属材料で構成することによって、エネルギー効率のよい回転ホーンを実現できる。また、放熱性に優れているので、円盤部120中心付近の発熱を効率的に伝搬して放熱することができる。更に、軸部130と円盤部120とを別々に削り出しすることができるため、切削量が少なくて済み、金属材料の無駄をなくして低コスト化を実現できる。加えて、焼きばめというシンプルな機構で両者を結合するため、軸部130と円盤部120との芯ズレが生じ難い。
【0028】
更に、前記円盤部120を構成する金属材料は、前記軸部130を構成する金属材料よりも熱膨張率が大きいことを特徴とする。
【0029】
このように構成したことによって、繰り返し利用可能な回転式ホーンを提供することが可能となった。即ち、焼きばめにより結合した部分を再度加熱して円盤部120を取り外すことができるため、摩耗・損傷した円盤部120のみ交換することで低コストで持続的に利用可能な回転式ホーンを実現している。
【0030】
また、円盤部220の内部に、貫通孔222の内周面から連続する冷媒を流す為の冷却溝224を形成し、軸部230の内部に、貫通孔222の内周面と嵌合する部分に開放する冷媒通路236を形成し、冷媒によって、円盤部220を冷却するように構成してもよい。
【0031】
このように構成したことによって、より円盤部220の効率的な冷却が可能となり、ワークの加工精度が向上し、発熱に伴う材料の劣化も防止できる。
【0032】
また、円盤部220の冷却溝224は、貫通孔222の内周面から当該円盤部220の半径方向に向かって放射状に複数設けられ、冷媒は軸部230から円盤部220へと一方向に流されるように構成してもよい。
【0033】
このように構成したことによって、軸部230から円盤部220を通して外部に冷媒(例えば空気など)を吹き出すことによって冷却を実現できるので、冷却機構を簡易な構成で実現できる。
【0034】
また、円盤部330の冷却溝334は、貫通孔322の内周面から当該円盤部320内に略ドーナツ形状に形成され、冷媒は軸部330から冷却溝334内を介して、再度前記軸部330側へと戻されて循環するように構成してもよい。
【0035】
このように構成したことによって、熱効率の高い液体の冷媒を利用できるので、冷却効率が飛躍的に向上する。
【符号の説明】
【0036】
50・・・振動子
100・・・複合金属回転式ホーン
120・・・円盤部
122・・・貫通孔
130・・・軸部
132・・・回転支持部
224・・・冷却溝
234・・・冷媒接続部
236・・・冷媒通路
238・・・冷媒供給部
【要約】
【課題】
回転式ホーンに求められる性能を他方面で高いレベルで実現しつつ、低コストで繰り返し利用可能な複合金属回転式ホーンを提供する。
【解決手段】
超音波溶着機や切断機などで使用する回転式ホーン10であって、円盤状に成形されワークに直接接触して機能する円盤部120と、当該円盤部を支持する軸部130と、を備え、前記円盤部120と前記軸部130とを別部材で構成すると共に、前記円盤部120を構成する金属材料を、前記軸部130を構成する金属材料よりも比重が軽く且つ熱伝導率が高い金属材料で構成し、更に、前記円盤部120の中心に貫通孔122を設け、当該貫通孔122に前記軸部130の先端を焼きばめにより結合した。
【選択図】
図2