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特許7423862エレベーター制御システムおよび制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】エレベーター制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20240122BHJP
   B66B 1/16 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B66B3/00 L
B66B1/16 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023532925
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2021025491
(87)【国際公開番号】W WO2023281631
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久瀬 健太
(72)【発明者】
【氏名】田畠 広泰
(72)【発明者】
【氏名】文屋 太陽
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-066600(JP,A)
【文献】特開2004-269217(JP,A)
【文献】特開2013-035633(JP,A)
【文献】特開2018-043803(JP,A)
【文献】特開2006-056677(JP,A)
【文献】特開2020-196548(JP,A)
【文献】特開2006-1727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/331723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターを制御する制御装置と、
前記エレベーターのかご内に設置されているカメラと、
前記制御装置および前記カメラと通信する映像処理装置と、
前記映像処理装置と通信するサーバ装置と、
前記サーバ装置と通信する端末装置とを備え、
前記端末装置は、表示を行う表示部を有し、
前記映像処理装置は、
前記カメラが撮影した画像に基づき、前記かご内の乗客の混雑情報を算出し、
算出された前記混雑情報が閾値以下であるときは、前記エレベーターの運転モードを第1運転モードに設定する指令を前記制御装置に送信し、
算出された前記混雑情報が前記閾値を超えたときは、前記運転モードを第2運転モードに設定する指令を前記制御装置に送信し、
ユーザからの要求がありかつ前記運転モードの切り替えが発生する場合に、前記画像に前記混雑情報および前記運転モードを含めて合成した合成画像を生成し、
前記合成画像を前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置は、前記端末装置からの要求に基づき、前記合成画像を前記端末装置に送信し、
前記表示部は、前記合成画像を表示する、エレベーター制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記かごが停止可能な複数の階床の各々の乗場での乗場呼びを受け付け、当該乗場呼びに対して前記かごを応答させることが可能であり、
前記第1運転モードは、前記複数の階床のいずれの階床からの乗場呼びに対しても前記かごを応答可能にするモードであり、
前記第2運転モードは、前記複数の階床のいずれの階床の乗場呼びに対しても前記かごを応答させないモードである、請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記端末装置からの要求に基づき、前記エレベーターの設定を変更する、請求項に記載のエレベーター制御システム。
【請求項4】
前記表示部は、前記合成画像とともに、前記エレベーターの設定が変更可能である旨を表示する、請求項に記載のエレベーター制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、第1権限を有するユーザからの要求に基づき前記エレベーターの設定を変更可能である一方で、第2権限を有するユーザからの要求に基づき前記エレベーターの設定を変更しない、請求項または請求項に記載のエレベーター制御システム。
【請求項6】
エレベーター制御システムを制御する制御方法であって、
前記エレベーター制御システムは、
エレベーターを制御する制御装置と、
前記エレベーターのかご内に設置されているカメラと、
前記制御装置および前記カメラと通信する映像処理装置と、
前記映像処理装置と通信するサーバ装置と、
前記サーバ装置と通信する端末装置とを備え、
前記端末装置は、表示を行う表示部を有し、
前記制御方法は、
前記カメラが撮影した画像に基づき、前記かご内の乗客の混雑情報を算出するステップと、
算出された前記混雑情報が閾値以下であるときは、前記エレベーターの運転モードを第1運転モードに設定する指令を前記制御装置に送信するステップと、
算出された前記混雑情報が前記閾値を超えたときは、前記運転モードを第2運転モードに設定する指令を前記制御装置に送信するステップと、

ユーザからの要求がありかつ前記運転モードの切り替えが発生する場合に、前記画像に前記混雑情報および前記運転モードを含めて合成した合成画像を生成するステップと、
前記合成画像を前記サーバ装置に送信するステップと、
前記端末装置からの要求に基づき、前記合成画像を前記サーバ装置が前記端末装置に送信するステップと、
前記合成画像を前記表示部に表示させるステップとを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーター制御システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベーター制御システムには、エレベーターのかご内にカメラを設置し、当該カメラが撮影した画像に基づいてかご内の乗客の混雑情報を算出するものがある。このようなシステムにおいて、算出した混雑情報に基づき、エレベーターの運転モードを変更する等、エレベーターの設定を変更することで、エレベーターの運行を最適化している。
【0003】
たとえば、特開2019-85253号公報(特許文献1)には、乗りかご内に設置されたカメラで撮影された画像に基づき、乗りかご内に占める乗客の占有面積を算出するエレベーター制御システムが記載されている。本エレベーター制御システムにおいては、乗りかごの床面積から専有面積を減算した残面積がしきい値未満である場合に、乗場からの呼び出しに応答しないように乗りかごの動作を制御している。
【0004】
このようなシステムにおいて、カメラが撮影した画像を解析して混雑情報を算出する場合、撮影状態によっては誤認識や誤判定により正しく混雑情報が算出されないときがある。加えて、エレベーターを利用するユーザやビルのオーナーによっては、どのような混雑状況下においてどのようにエレベーターの運行を変更するかについての好みや要望が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-85253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような問題を解決しようとした場合、現場でのエレベーターの利用状況やビルのオーナー等の好みや要望に応じてエレベーターの設定を変更する必要がある。また、誤認識や誤判定が発生しやすい状況が事前に想定されるような場合には、エレベーターシステムを一時的に停止させ、状況を確認した上でエレベーターの設定を変更する必要がある。
【0007】
これらの場面においてエレベーターの設定を変更しようとした場合、エレベーターの動作状況、カメラで撮影された画像および混雑情報などの各種情報の時間推移を確認した上で、総合的に判断する必要がある。このためには、画像が撮影された時刻に生成された各種データを探し出してこれらを解読しつつ比較検討する必要がある。しかしながら、このような作業には、専門知識が必要となる上に、専門知識を有した保守員であっても時間と労力を要していた。
【0008】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エレベーターの設定を調整するために必要なかご内の乗客の混雑状況を容易に把握可能なエレベーター制御システムおよび制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るエレベーター制御システムは、制御装置と、カメラと、映像処理装置と、表示部とを備える。制御装置は、エレベーターを制御する。カメラは、エレベーターのかご内に設置されている。映像処理装置は、制御装置およびカメラと通信する。映像処理装置は、カメラが撮影した画像に基づき、かご内の乗客の混雑情報を算出する。映像処理装置は、算出された混雑情報が閾値以下であるときは、エレベーターの運転モードを第1運転モードに設定する指令を制御装置に送信し、算出された混雑情報が閾値を超えたときは、運転モードを第2運転モードに設定する指令を制御装置に送信する。表示部は、画像とともに、混雑情報および運転モードを表示する。
【0010】
本開示に係る制御方法は、エレベーター制御システムを制御する方法である。エレベーター制御システムは、エレベーターを制御する制御装置と、エレベーターのかご内に設置されているカメラと、制御装置およびカメラと通信する映像処理装置と、表示を行う表示部とを備える、制御方法は、カメラが撮影した画像に基づき、かご内の乗客の混雑情報を算出するステップと、算出された混雑情報が閾値以下であるときは、エレベーターの運転モードを第1運転モードに設定する指令を制御装置に送信するステップと、算出された混雑情報が閾値を超えたときは、運転モードを第2運転モードに設定する指令を制御装置に送信するステップと、画像とともに、混雑情報および運転モードを表示部に表示させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、エレベーターの設定を調整するために必要なかご内の乗客の混雑状況を容易に把握可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】エレベーター制御システムの機能ブロック図の一例を示す図である。
図2】合成画像の表示例を示す図である。
図3】映像処理装置が実行するメイン処理のフローチャートである。
図4】かご室サイズと混雑度との関係を説明するための図である。
図5】かご室サイズと混雑度との関係を説明するための図である。
図6】混雑度が異常値を示す例を説明するための図である。
図7】ユーザ権限を説明するための図である。
図8】端末装置が実行する表示処理のフローチャートである。
図9】端末装置が実行する変更処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
まず、本実施の形態に係るエレベーター制御システム100について説明する。図1は、エレベーター制御システム100の機能ブロック図の一例を示す図である。
【0015】
エレベーター制御システム100は、かご1と、制御装置2と、かご内表示部3と、カメラ4と、乗場表示部5と、映像処理装置6と、端末装置8と、サーバ装置9とを備える。端末装置8は、表示部20を有する。かご内表示部3、乗場表示部5および表示部20は、たとえば、ディスプレイである。
【0016】
制御装置2は、エレベーターを制御する。制御装置2は、たとえば、ビルの機械室に設置されている。制御装置2は、かご1に設置されているかご内表示部3、かご1の乗場に設置された乗場表示部5、および映像処理装置6と通信する。映像処理装置6は、エレベーターのかご1内に設置されているカメラ4と通信する。映像処理装置6は、たとえば、かご1の上に設置されている。
【0017】
サーバ装置9は、映像処理装置6と通信する。端末装置8は、サーバ装置9と通信する。サーバ装置9と映像処理装置6と端末装置8とは、インターネット回線を用いて通信を行ってもよいし、電話回線を用いて通信を行ってもよい。端末装置8は、パースナルコンピュータであってもよく、スマートフォンやタブレット端末であってもよい。サーバ装置9および端末装置8は、エレベーターが設置されたビル内に設置してもよいし、当該ビルの外部の建物に設置してもよい。
【0018】
映像処理装置6は、外部通信部6aと、記憶部6bと、運転モード変更指示部6cと、映像出力部6dと、メモリ6eと、画像解析部6fと、合成処理部6gと、表示制御部6hとを有する。
【0019】
映像処理装置6は、映像処理装置6全体を総括的に制御するCPU(Central Processing Unit)を備える。CPUは、記憶部6bに格納されているプログラムを実行し、上記画像解析部6f、合成処理部6g等が行う処理を実現する。
【0020】
メモリ6eは、プログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。記憶部6bは、不揮発性の記憶装置である。たとえば、記憶部6bとして、ROM(Read Only Memory)およびHDD(Hard Disk Drive)を備えてもよい。
【0021】
以下、エレベーター制御システム100が行う処理の概要を説明する。具体的な処理内容については、図3のフローチャート等を用いて後述する。外部通信部6aは、カメラ4で撮影した画像を取得する。画像解析部6fは、取得した画像を解析し、かご1内の乗客の混雑度を算出する。運転モード変更指示部6cは、算出した混雑度に基づき、エレベーターの運転モードの変更を制御装置2に指令する。合成処理部6gは、画像に混雑度等の各種情報を合成して合成画像を生成する。
【0022】
映像出力部6dは、かご内表示部3および乗場表示部5に対して合成画像を出力する。表示制御部6hは、かご内表示部3および乗場表示部5の表示を制御する。なお、プライバシー保護のため、合成画像を生成する際に、人物が映っている箇所や顔などにモザイク処理を施すようにしてもよい。合成画像および混雑度等の各種情報の詳細については、図2を用いて後述する。
【0023】
外部通信部6aは、サーバ装置9に対して、合成画像を送信する。サーバ装置9は、受信した合成画像を記憶する。端末装置8は、サーバ装置9に対して要求を行うことで、合成画像を取得し、表示部20に合成画像を表示させることができる。また、端末装置8は、サーバ装置9に対してエレベーターの設定を変更する要求を行うことができる。サーバ装置9と端末装置8との通信およびエレベーター設定の変更の詳細については、図7図9を用いて後述する。
【0024】
図2は、合成画像の表示例を示す図である。図2に示すように、画面10aには、カメラ4が撮影したかご1内の画像が表示されている。画面10aは、かご内表示部3、乗場表示部5、または端末装置8の表示部20に表示される画面である。かご1内には、3人の乗客61が乗車している。また、かごの出入口51は扉が閉じた状態(戸閉状態)である。
【0025】
画面10aには、かご1内の画像とともに、各種情報が表示されている。画面10aの左側には、上から、混雑度と、混雑指数と、換気状態とが表示されている。また、画面10aの右側には、上から、運転モードと、解析感度とが表示されている。かご1内の画像に上記情報を合成した画像を、「合成画像」と呼ぶ。
【0026】
画面10aには、混雑度が「30%」であり、混雑指数が3段階中の「2段階目」であり、換気状態が「良」であり、運行モードが「通常運転」であり、解析感度が「高」であることが示されている。以下、それぞれの情報について説明する。
【0027】
「混雑度」は、かご1内の乗客の混雑度を示し、0~100%の数値で示される。本実施の形態における混雑度は、かご1の定員に対する、かご1の乗車人数の割合である。たとえば、かご1は15人乗り(定員が15人)であり、乗車人数が4人である場合、混雑度は27%(=4/15)である(図4図6参照)。
【0028】
たとえば、乗車人数は、カメラ4が撮影したかご1内の画像と基準画像(図6参照)との差分に基づいて算出される。基準画像は、かご1内に乗客が乗車していない状態の画像である。かご1内に乗客が存在する場合には、基準画像との差分を取ることで、人物が存在する領域を抽出することができる。人物が存在する領域に基づき、乗車人数が算出可能である。
【0029】
また、「混雑度」に代えて、「専有面積率」(0~100%)が表示されるようにしてもよい。本実施の形態における専有面積率は、かご1の床面積に対する、かご1内に存在する物体面積の割合である。かご1内に存在する物体は、乗客以外の物(荷物、台車、車椅子など)も含む。物体面積は、基準画像との差分を取ることで算出すればよい。このような混雑度または専有面積率は、公知の技術を用いて算出すればよい。
【0030】
「混雑指数」は、0段階~3段階の段階を用いて示される。各段階は黒い四角の数で示され、2段階目であれば黒い四角が2つ表示される。たとえば、0段階目=混雑度0%、3段階目=混雑度100%とし、1段階目、2段階目をその中間の範囲に設定して表示するようにしてもよい。また、混雑指数は、混雑度以外の指標(専有面積率など)を用いて、示すようにしてもよい。
【0031】
「換気」は、かご1内の換気状態を3段階で示す。たとえば、かご1内の空気の循環の度合いをセンサにより検知し、循環状態が良い順に、「良い(良)」、「通常」、「悪い(悪)」で示す。本表示により、保守員等は、かご1に設置されたファンを動作させて換気状態を良くするか否かの判断を行うことができる。
【0032】
「運転モード」は、エレベーターの運転モードを示す。本実施の形態において、運転モードは、「通常運転(「通常運転モード」とも称する)」と「満員通過運転(「満員通過運転モード」とも称する)」と「各階強制停止運転(「各階強制停止運転モード」とも称する)」とを含む。
【0033】
制御装置2は、かご1が停止可能な複数の階床の各々の乗場での乗場呼びを受け付け、当該乗場呼びに対してかご1を応答させることが可能である。通常運転は、上記複数の階床のいずれの階床からの乗場呼びに対してもかご1を応答可能にするモードである。満員通過運転は、上記複数の階床のいずれの階床の乗場呼びに対してもかご1を応答させないモードである。
【0034】
たとえば、かご1は、かご1内で5階へのかご呼び(行先階)が登録され、2階を上方向(「UP方向」とも称する)に走行中であったとする。このとき、4階の乗場において、UP方向の乗場呼びが登録されたとする。運転モードが通常運転であれば、かご1は、当該乗場呼びに応答して4階で停止することが可能である。一方で、運転モードが満員通過運転であれば、かご1は、かご1内が満員であると認識して、当該乗場呼びに応答することなく4階を通過する。
【0035】
本実施の形態においては、制御装置2は、かご1内の混雑度に基づき、運転モードを通常運転および満員通過運転のいずれかに切り替える。具体的には、制御装置2は、かご1内の混雑度>満員通過閾値(単に「閾値」とも称する)であるときに、運転モードを満員通過運転に切り替える(図3図5参照)。なお、上記切り替えは、専有面積率が所定の閾値を超えたときに行ってもよいし、かご1内に設置された秤により検出された重量が所定の閾値を超えたときに行ってもよい。
【0036】
各階強制停止運転は、かご呼びがあったか否かに関わらず、全ての階床に停止するモードである。かご1は、制御装置2からの指令に基づき各階強制停止運転を行う。保守員等は、制御装置2に対して各階強制停止運転を行うように指令可能である。
【0037】
「解析感度」は、上記混雑度や専有面積率の算出するための演算(算出するためのモデル)において、取得した画像と基準画像との差分に関する解析感度を示すものである。解析感度は、「高」、「中」、「低」の順に高い感度が設定されていることを示す。解析感度が高に設定されている場合には、画像の差分が高感度で検出されるようになる。詳しくは、図6を用いて後述するが、この場合、たとえば、壁面に張られた養生シート等を乗客として誤検出する可能性がある。このような場合、保守員等は、解析感度を下げる等の対応(設定変更)を行う必要がある。
【0038】
画面上には表示されないが、エレベーターは、エレベーターの機能として「満員通過機能」を有する。保守員等は、端末装置8を用いて、制御装置2に対して満員通過機能の設定を行うことができる。満員通過機能がONに設定されている場合、上述したように、混雑度が閾値を超えたときに、通常運転から満員通過運転に切り替える。一方で、満員通過機能がOFFに設定されている場合、混雑度が閾値を超えた場合であっても、常に通常運転を行う。このため、上述のような誤検知が起こった場合は、解析感度を下げる他に、満員通過機能をOFFにする対策を行うことができる。
【0039】
なお、ビルにはかごが複数台設置されていてもよい。この場合、かごごとにカメラが設置され、かごごとに運行モードを変更するか否かが判断される。また、かごごとに設置されたかご内表示部には、当該かごに対応する合成画像が表示される。乗場表示部5および端末装置8の表示部20には、全てのかごの合成画像が表示可能である。乗場呼びが発生した場合は、複数のかごのうちのいずれかが割当てられ、割当てられたかごが当該乗場呼びに応答する。乗場呼びは、通常運転を行っている複数のかごのうちの1台を選択して割当てられる。満員通過運転を行っているかごに対しては、乗場呼びが割当てられない。
【0040】
図3は、映像処理装置6が実行するメイン処理のフローチャートである。メイン処理は、上述した、映像処理装置6の外部通信部6a、画像解析部6f、運転モード変更指示部6c、合成処理部6gが実行する一連の処理である。
【0041】
映像処理装置6が実行するメイン処理は、たとえば、映像処理装置6の電源投入とともに実行を開始すればよい。以下、「ステップ」を単に「S」とも称する。
【0042】
図4に示すように、メイン処理が開始すると、外部通信部6aはカメラ4の画像を取得し、S1において、画像解析部6fは、画像解析条件が成立したか否かを判断する。画像解析部6fは、画像解析条件が成立したと判断した場合(S1でYES)、処理をS2に進める。一方、画像解析部6fは、画像解析条件が成立したと判断しなかった場合(S1でNO)、処理をS1に進める。つまり、画像解析条件の成立を待ってから、S2に進む。
【0043】
画像解析条件は、たとえば、かご1が戸開状態から戸閉状態に変化したタイミングで成立する。かごが戸開状態であるか戸閉状態であるかは、かご1の戸開閉状態を示す信号を制御装置2から受信し、当該信号に基づき判断する。
【0044】
S2以降においては、映像処理装置6は、カメラ4が撮影した画像に基づくかご1内の乗客の混雑度の算出し、算出した混雑度に基づいてエレベーターの運行モードの切り替えを行う。かご1内の乗客人数は、かご1の扉が閉じた段階(戸閉状態になったタイミング)で確定する。このため、本実施の形態においては、映像処理装置6は、当該タイミングにおいて混雑度を算出するとともに運行モードの切り替え判断を行うようにしている。なお、画像解析条件は、戸閉開始タイミングで成立してもよい。
【0045】
S2において、画像解析部6fは、カメラ4が撮影した画像に基づき、かご1内の乗客の混雑情報を算出し、処理をS3に進める。ここで、本実施の形態では、「混雑情報」は、上述の「混雑度」である。なお、「混雑情報」は、上述の「専有面積率」であってもよい。
【0046】
S3において、運転モード変更指示部6cは、算出された混雑度が閾値を超えているか否かを判断する。運転モード変更指示部6cは、算出された混雑度が閾値を超えていると判断した場合(S3でYES)、処理をS4に進める。一方、運転モード変更指示部6cは、算出された混雑度が閾値以下であると判断した場合(S3でNO)、処理をS5に進める。
【0047】
S4において、運転モード変更指示部6cは、エレベーターの運転モードを通常運転に設定する指令を制御装置2に送信し、処理をS6に進める。S5において、運転モード変更指示部6cは、エレベーターの運転モードを満員通過運転に設定する指令を制御装置2に送信し、処理をS6に進める。
【0048】
つまり、映像処理装置6の運転モード変更指示部6cは、算出された混雑情報が閾値以下であるときは、エレベーターの運転モードを通常運転に設定する指令を制御装置2に送信し、算出された混雑情報が閾値を超えたときは、運転モードを満員通過運転に設定する指令を制御装置2に送信する。なお、運転モード変更指示部6cは、運転モードに変化があった場合のみ、運転モードを変更する指令を制御装置2に送信してもよい。
【0049】
S7において、合成処理部6gは、収集モードであるか否かを判断する。合成処理部6gは、収集モードであると判断した場合(S7でYES)、処理をS8に進める。一方、合成処理部6gは、収集モードであると判断しなかった場合(S7でNO)、処理をS1に戻す。
【0050】
ここで、収集モードは、端末装置8からの要求により設定される。保守員またはビルのオーナー(ビルの管理人)が、端末装置8を操作して、収集モードの設定を行う。収集モードが設定されることで、合成画像の生成およびサーバ装置9に対する送信(S9)が可能となる。
【0051】
S8において、合成処理部6gは、運転モードの変更(通常運転から満員通過運転への変更、または、満員通過運転から通常運転への変更)があるか否かを判断する。合成処理部6gは、運転モードの変更があると判断した場合(S8でYES)、処理をS9に進める。一方、合成処理部6gは、運転モードの変更があると判断しなかった場合(S8でNO)、処理をS1に戻す。
【0052】
本実施の形態においては、運転モードの変更があった場合に、合成画像の生成およびサーバ装置9に対する送信(S9)が可能となる。このようにすることで、運転モードの変更があった場合の合成画像を確認することができる。また、混雑度が所定値以上である場合に、合成画像の生成およびサーバ装置9に対する送信(S9)を可能とする構成にしてもよい。
【0053】
S9において、合成処理部6gは、合成データを生成する。そして、外部通信部6aは、生成した合成データをサーバ装置9に送信し、処理をS1に戻す。
【0054】
具体的には、合成処理部6gは、カメラ4の画像に、混雑情報として混雑度および運転モードを含む情報を重ねて合成画像(図2参照)を生成する。運転モードは、S4,S5において設定されるモードである。外部通信部6aは、生成した合成画像をサーバ装置9に対して送信する。なお、合成画像を生成せずに、画像、混雑度、運転モードの情報をそれぞれ送信してもよい。
【0055】
このように、映像処理装置6の合成処理部6gは、ユーザからの要求がありかつ運転モードの切り替えが発生する場合に、画像に混雑情報と運転モードを含めた合成画像を生成する。そして、外部通信部6aは、画像と混雑情報と運転モードとを含む表示情報として合成画像をサーバ装置9に送信する。
【0056】
なお、上記に限らず、合成画像は、無条件に生成させてもよいし、サーバ装置9または端末装置8からの要求があった場合のみに生成させてもよいし、混雑度が所定の値以上になった場合に生成させてもよい。また、生成した合成画像は、無条件に送信してもよいし、サーバ装置9または端末装置8からの要求があった場合のみに送信してもよいし、混雑度が所定の値以上になった場合に送信してもよい。
【0057】
図4図5は、かご室サイズと混雑度との関係を説明するための図である。本実施の形態においては、かご1は15人乗り(定員が15人)であるとする。図4には、乗車人数と混雑度の関係がかご1内の画像とともに示されている。
【0058】
図4に示すように、乗車人数が1人である場合、混雑度は7%である。かご1内の画像には、1人の乗客62が乗車しており、出入口52は扉が開いた状態(戸開状態)である。本実施の形態において、混雑度は、かご1内の乗車人数から算出する。混雑度=乗車人数/定員=1/15=7%である。
【0059】
乗車人数が4人である場合、混雑度は27%(=4/15)である。かご1内の画像には、4人の乗客62が乗車しており、出入口52は戸開状態である。乗車人数が7人である場合、混雑度は47%(=7/15)である。かご1内の画像には、7人の乗客62が乗車しており、出入口52は戸開状態である。乗車人数が12人である場合、混雑度は80%(=12/15)である。かご1内の画像には、12人の乗客62が乗車しており、出入口52は戸開状態である。
【0060】
本実施の形態において、満員通過閾値は、30%に設定されているとする。本例においては、混雑度が7%(乗車人数が1人)である場合、および、混雑度が27%(乗車人数が4人)である場合は、かご1は満員通過しない(通常運転が行われる)。一方、混雑度が47%(乗車人数が7人)である場合、および、混雑度が80%(乗車人数が12人)である場合は、かご1は満員通過する(満員通過運転が行われる)。
【0061】
満員通過閾値は、任意に設定変更可能である。たとえば、近年において、コロナウイルスの感染拡大を防止するため、できる限り、乗客同士が密にならないよう一定の距離を保ってエレベーターに乗車することが望まれている。図4のように、4人乗車した状態では、乗客間が密にならないが、5人以上で密になると利用者あるいはビルのオーナーが感じるならば、満員通過閾値を30%に設定するのが適切である。あるいは、ビルやマンションの用途によっては、極力乗客同士が乗り合わせたくないといった事情もあるため、ビルのオーナー等のニーズに沿う形で、画面を見ながら満員通過閾値を変更することができる。
【0062】
一方、かご1が9人乗り(定員が9人)である場合の例を図5に示す。図5には、乗車人数と混雑度の関係がかご1内の画像とともに示されている。図5に示すように、乗車人数が1人である場合、混雑度は11%(=1/9)である。かご1内の画像には、1人の乗客62が乗車しており、出入口52は戸開状態である。乗車人数が3人である場合、混雑度は33%(=3/9)である。かご1内の画像には、3人の乗客62が乗車しており、出入口52は戸開状態である。
【0063】
乗車人数が5人である場合、混雑度は56%(=5/9)である。かご1内の画像には、5人の乗客62が乗車しており、出入口52は戸開状態である。乗車人数が8人である場合、混雑度は89%(=8/9)である。かご1内の画像には、8人の乗客62が乗車しており、出入口52は戸開状態である。
【0064】
本例において、満員通過閾値は、95%に設定されているとする。混雑度が11%(乗車人数が1人)である場合、混雑度が33%(乗車人数が3人)である場合、混雑度が56%(乗車人数が5人)である場合、および、混雑度が89%(乗車人数が8人)である場合のいずれも、満員通過しない。乗車人数が9人になった場合に、混雑度は100%(=9/9)となり満員通過する。
【0065】
図4の例と比較して、図5の例においては定員が少ない。たとえば、図4の例のように満員通過閾値を低くして、満員通過する頻度を高くした場合、乗場での待ち時間が増加してしまう(輸送効率が低下する)。かごの台数が少ない、あるいは、定員が少ないために待ち時間が長くなってしまうような場合には、図5の例のように満員通過閾値を高く設定することで、輸送効率を向上させることができる。このように、エレベーターの設置状況、ビルオーナーの意向等、様々なニーズに応じて満員通過閾値を設定可能である。合成画像が表示された場合、かご1内の状況と混雑度とを比較しつつ、エレベーターの設定値である満員通過閾値を適切に変更することが可能である。
【0066】
図6は、混雑度が異常値を示す例を説明するための図である。図6に示すように、基準画像において、乗車人数は0人であり、出入口52は戸開状態である。この場合、混雑度は0%である。上述のように、混雑度は、カメラ4で撮影された画像と、基準画像との差分に基づき算出される。
【0067】
かご1内に乗客が乗車した場合、乗客がいる領域が基準画像との差分として検知される。これにより、図4図5で説明したように、混雑度が上昇する。そして、混雑度が満員通過閾値を超えた場合に、かご1は、満員通過する。
【0068】
一方、図6の例においては、かご1内に養生シート71が張られている。たとえば、引越し業者が引越し荷物を運ぶ際に、かご1内を傷つけないように養生シート71を張るようなケースが想定される。
【0069】
異常例1(床面変化)においては、かご1の床面に養生シート71が張られている。この場合、床面に張られた養生シート71の分が、基準画像との差分になり得る。この差分により、乗客が乗車していると誤検知される場合がある。この例では、乗客がいないにも関わらず、混雑度が50%という異常値が検知されている。
【0070】
異常例2(床・床面変化)においては、かご1の床面および壁面に養生シート71が張られている。この場合、床面および壁面に張られた養生シート71の分が、基準画像との差分となり得る。この例では、乗客がいないにも関わらず、混雑度が100%という異常値が検知されている。
【0071】
たとえば、図4の例のように、満員通過閾値が30%に設定されている場合は、かご1の床面に養生シート71が張られているだけでも、満員通過が発生してしまう。この場合、かご1内に誰も乗車していないにもかかわらず、乗場で乗場呼びが発生しても、かご1は全く応答しなくなってしまう。
【0072】
一方、養生シート71の色がかごの床や壁面の色に近いような場合は、養生シート71を乗客として誤検出しないケースもある。また、外光などの自然変化、ポスターの貼り付け、あるいはカメラ4のレンズの汚れなど、微少な画像の変化において、誤検出が起こる場合と起こらない場合とが発生する。
【0073】
なお、カメラ4のレンズや壁面の汚れ等、時間の推移とともに少しずつ変化するようなものについては、定期的に基準画像を更新することで、異常検出を防止することが可能となる。しかしながら、引越し時に養生シートを貼るといった突発的な変化に対しては、誤検出が発生する可能性が高くなる。また、突発的な変化としては、物がぶつかって、カメラ4の撮影方向がずれてしまい、混雑度が異常検出するようなケースも想定される。
【0074】
上述のように、解析感度は、混雑度を算出するモデルにおいて、取得した画像と基準画像との差分に関する感度を示している。たとえば、解析感度が「高」に設定されている場合には、基準画像との差分が過敏に反応してしまい、誤検出が発生することがある。
【0075】
一方で、解析感度を「中」あるいは「低」に変更すると、上記のような誤検出を防ぐことが可能になる。合成画像が表示された場合、かご1内の実際の状況と混雑度とを比較しつつ、現場の状況に合わせて、解析感度を適切に変更することが可能である。
【0076】
なお、本実施の形態においては、混雑度を算出するモデルおける変更可能なパラメータとして「解析感度」を例示している。しかし、これに限らず、本モデルにおいて変更可能なパラメータは、たとえば、人物の検出感度を高くするように調整可能なパラメータであってもよく、人物以外の物の検出感度を高くするように調整可能なパラメータであってもよく、これらのパラメータはユーザの好みに応じて調整可能である。また、現場の実際の検出状況に応じて、これらのパラメータを学習させるようにシステムを構成してもよい。
【0077】
次に、サーバ装置9において設定されるユーザ権限について説明する。図7は、ユーザ権限を説明するための図である。本例においては、図7に示すように、3台の端末装置8がサーバ装置9と接続されているとする。各端末装置8は、サーバ装置9にアクセス可能である。
【0078】
本実施の形態においては、サーバ装置9にアクセスするためには、ユーザ権限を持つユーザがサーバ装置9にログインする必要がある。サーバ装置9には、ユーザIDおよびパスワードが記憶されている。ユーザIDには、ユーザ権限が紐付けされている。ユーザ権限に応じて、サーバ装置9に対して行うことができる要求等が異なる。
【0079】
ユーザ権限は、ユーザ権限Aとユーザ権限Bとユーザ権限Cとを含む。ユーザ権限Aは、エレベーターの保守員が有することのできる権限である。ユーザ権限Bは、ビルのオーナー(あるいはビルの管理人)が有することのできる権限である。ユーザ権限Cは、一般ユーザが有することのできる権限である。一般ユーザは、保守員、ビルのオーナーおよび管理人以外のユーザを指し、たとえば、ビルの入居者等である。
【0080】
ユーザ権限AまたはBを有する者は、サーバ装置9に対してエレベーターの設定変更を要求することができる。具体的には、ユーザ権限AまたはBを有する者は、サーバ装置9に対して運転モードの切り替えを要求することができる。その一方、ユーザ権限Cを有する者は、サーバ装置9に対してエレベーターの設定変更を要求することができない。
【0081】
また、ユーザ権限AまたはBを有する者は、サーバ装置9に対して、エレベーターの設定として、解析感度の変更を要求することができる。なお、ユーザ権限Aを有する者は解析感度の変更を要求することができるが、ユーザ権限Bを有する者は解析感度の変更を要求することができないようにしてもよい。このように、ユーザ権限に応じて、サーバ装置9に対して行うことができる要求が異なる。
【0082】
サーバ装置9に対してエレベーターの設定変更を要求した場合、映像処理装置6を介して、制御装置2に当該要求を通知することが可能である。たとえば、満員通過機能の設定変更が要求された場合、制御装置2は、当該要求に基づき満員通過機能の設定を変更する。解析感度の変更が要求された場合、映像処理装置6は、当該要求に基づき解析感度の設定を変更する。
【0083】
上述の「エレベーターの設定」は、エレベーターを直接的に制御する設定に限らず、エレベーターを間接的に制御する設定も含む。たとえば、「解析感度」は、これを調整することで、エレベーターの運転モードが「満員通過運転」から「通常運転」に変更されることがあるため、エレベーターを間接的に制御する設定であると言える。
【0084】
その他、「エレベーターの設定」は、「満員通過閾値」、「満員通過機能」などが含まれる。また、かご1内の換気状態を変えるためにする、かご1内に設置されたファンの動作設定も含む。
【0085】
ユーザ権限A~Cを有する者が、サーバ装置9に対して画像の送信を要求した場合、サーバ装置9は、画像、混雑情報および運転モードを含む表示情報を端末装置8に対して送信する。
【0086】
本実施の形態においては、サーバ装置9は、表示情報として上述の合成画像を端末装置8に対して送信する。しかし、これに限らず、画像、混雑情報および運転モードを含む各種情報を端末装置8に対して送信するようにしてもよい。端末装置8は、各種情報に基づき合成画像を生成するようにしてもよい。
【0087】
また、端末装置8は、直近の所定期間の合成画像を要求したり、混雑度が所定値以上である場合の合成画像のみを要求するなど、任意の期間やタイミング、任意の条件を指定して合成画像を要求することが可能である。
【0088】
端末装置8は、図2を用いて説明したように、表示部20に合成画像を表示する(画像とともに、混雑情報および運転モード等を表示する)。その際、ユーザ権限Aを有する保守員の端末装置8の表示部20には、画面10bが表示される。画面10bには、合成画像とともに、運転モードが変更可能である旨を示すメッセージ81が表示される。
【0089】
画面上には、メッセージ81として、「エレベーターの設定を変更できます。カメラ画像の混雑状況と混雑度を確認してください」が表示されている。また、ユーザ権限Bを有するオーナーの端末装置8の表示部20にも、画面10bが表示される。
【0090】
一方、ユーザ権限Cを有する一般ユーザの端末装置8の表示部20には、画面10cが表示される。画面10cには、合成画像が表示されるものの、メッセージ81は表示されない。
【0091】
なお、ユーザ権限Cを有する一般ユーザであっても、一部のエレベーターの設定を変更できるようにしてもよい。この場合、端末装置8の表示部20にもメッセージ81が表示される。また、ユーザ権限Cを有する一般ユーザが使用する端末装置8は、スマートフォンであってもよい。この場合、かご内表示部3や乗場表示部5を見なくても、スマートフォンにより合成画像を確認することができる。
【0092】
以下、フローチャートに基づき説明する。図8は、端末装置8が実行する表示処理のフローチャートである。表示処置は、たとえば、端末装置8がサーバ装置9にログインしたときに起動するようにしてもよい。
【0093】
表示処理が開始すると、端末装置8は、S11において、サーバ装置9に対して合成画像(表示情報)の要求を送信し、処理をS12に進める。サーバ装置9は、端末装置8からの要求に基づき、合成画像を端末装置8に送信する。S12において、端末装置8は、サーバ装置9から合成画像を取得して、処理をS13に進める。
【0094】
S13において、端末装置8は、権限Aまたは権限Bによりサーバ装置9にアクセスしているか否かを判断する。端末装置8は、権限Aまたは権限Bによりサーバ装置9にアクセスしていると判断した場合(S13でYES)、処理をS14に進める。一方、端末装置8は、権限Aまたは権限Bによりサーバ装置9にアクセスしていると判断しなかった場合(S13でNO)、処理をS15に進める。
【0095】
S14において、端末装置8の表示部20は、合成画像(表示情報)とともに、エレベーターの設定が変更可能である旨のメッセージ81を表示する。S15において、端末装置8の表示部20は、メッセージ81を表示することなく、合成画像を表示する。
【0096】
図9は、端末装置8が実行する変更処理のフローチャートである。たとえば、変更処理は、端末装置8に接続された入力装置からの入力があったときに起動するようにしてもよい。
【0097】
変更処理が開始すると、S21において、端末装置8は、権限Aまたは権限Bによりサーバ装置9にアクセスしているか否かを判断する。端末装置8は、権限Aまたは権限Bによりサーバ装置9にアクセスしていると判断した場合(S21でYES)、処理をS22に進める。一方、端末装置8は、権限Aまたは権限Bによりサーバ装置9にアクセスしていると判断しなかった場合(S21でNO)、変更処理を終了する。
【0098】
S22において、端末装置8は、解析感度変更要求があったか否かを判断する。端末装置8は、解析感度変更要求があったと判断した場合(S22でYES)、処理をS23に進める。一方、端末装置8は、解析感度変更要求があったと判断しなかった場合(S22でNO)、処理をS24に進める。
【0099】
権限Aまたは権限Bを有するユーザは、端末装置8に接続された入力装置から、解析感度の変更設定(解析感度の変更要求)を行うことができる。たとえば、図6で示したような、混雑度が異常値となる場合に、解析感度を下げて養生シート71が乗客であると判定されないようにする。
【0100】
S23において、端末装置8は、サーバ装置9に対して、設定された解析感度への変更を指令する。これにより、サーバ装置9は、映像処理装置6に対して、解析感度の変更を指令する。映像処理装置6は、解析感度を指令されたものに変更する。
【0101】
S24において、端末装置8は、満員通過機能の設定変更要求があったか否かを判断する。端末装置8は、満員通過機能の設定変更要求があったと判断した場合(S24でYES)、処理をS25に進める。一方、端末装置8は、満員通過機能の設定変更要求があったと判断しなかった場合(S24でNO)、変更処理を終了する。
【0102】
権限Aまたは権限Bを有するユーザは、端末装置8に接続された入力装置から、満員通過機能をONにするかOFFにするかを設定(満員通過機能の設定変更要求)することができる。たとえば、図6で示したような、混雑度が異常値となる場合に、満員通過機能をOFFにして、不正に満員通過が発生する不具合を防止する。
【0103】
S25において、端末装置8は、サーバ装置9に対して、満員通過機能の設定変更を指令する。サーバ装置9は、制御装置2に対して、満員通過機能の設定変更を指令する。制御装置2は、満員通過機能の設定を指令されたものに変更する。つまり、制御装置2は、ユーザの指令に基づき、満員通過機能をONまたはOFFに設定する。
【0104】
このように、映像処理装置6または制御装置2は、端末装置8からの要求に基づき、エレベーターの設定を変更する。映像処理装置6または制御装置2は、権限A,Bを有するユーザからの要求に基づきエレベーターの設定を変更可能である一方で、権限Cを有するユーザからの要求に基づきエレベーターの設定を変更しない。
【0105】
以上説明したように、本実施の形態においては、表示部20には、合成画像として、カメラ4が撮影した画像とともに、混雑情報および運転モードが表示されるため、エレベーターの設定を調整するために必要なかご4内の乗客の混雑状況を容易に把握可能である。これにより、端末装置8を操作する保守員等のユーザは、合成画面を見ながら、エレベーターの設定をどのように変更するかの検討を行うことができる。
【0106】
たとえば、図4図5を用いて説明したように、合成画面を見ながら、かご1内での乗客間の密を避けるため満員通過閾値を低く調整したり、エレベーターの定員など輸送能力を考慮しつつ満員通過閾値を高く調整することができる。あるいは、図6に示したように、引越し時、壁面に養生シート71が張られる等の突発的なかご1内の変化が起こった場合に、合成画面を見ながら、解析感度を低くしたり、満員通過機能をOFFに設定するといった対策を行うことができる。
【0107】
従来、エレベーターの設定変更を検討する場合、カメラ4で撮影された画像を単体でチェックする必要があった。そして、制御装置2や映像処理装置6に記憶された各種データを取得して、画像が撮影された時刻に生成された各種データを探し出してこれらを解読しつつ比較検討する必要がある。このような作業には、専門知識が必要となる上に、専門知識を有した保守員であっても時間と労力を要していた。
【0108】
これに対して、本実施の形態のように構成することで、解析に使用された画像に必要な情報が合成された合成画面を見ながら、エレベーターの設定変更を検討することができる。これにより、誤検出を見落とす可能性を低くすることができるとともに、作業時間を短縮できるため、ユーザからのニーズに直ちに応えることができる。このように、エレベーターの監視効率を向上させることがとともに、顧客に対するサービス品質を向上させることができる。
【0109】
また、専門知識を有していないビルのオーナーや一般ユーザ(乗客)も、システムの稼働状況をリアルタイムで確認することができ、好みに応じてエレベーターの設定を行うことができる。また、かご内表示部3および乗場表示部5に合成画像を表示することで、乗客は、端末装置8を介さずにシステムの稼働状況を確認することができる。
【0110】
[主な構成および効果]
以下、前述した実施の形態の主な構成および効果を説明する。
【0111】
(1) エレベーター制御システム100は、制御装置2と、カメラ4と、映像処理装置6と、表示部20とを備える。制御装置2は、エレベーターを制御する。カメラ4は、エレベーターのかご1内に設置されている。映像処理装置6は、制御装置2およびカメラ4と通信する。映像処理装置6は、カメラ4が撮影した画像に基づき、かご1内の乗客の混雑情報を算出する。映像処理装置6は、算出された混雑情報が閾値以下であるときは、エレベーターの運転モードを第1運転モード(通常運転)に設定する指令を制御装置2に送信し、算出された混雑情報が閾値を超えたときは、運転モードを第2運転モード(満員通過運転)に設定する指令を制御装置2に送信する。表示部20は、画像とともに、混雑情報および運転モードを表示する。これにより、エレベーターの設定を調整するために必要なかご4内の乗客の混雑状況を容易に把握可能である。
【0112】
(2) 制御装置2は、かご1が停止可能な複数の階床の各々の乗場での乗場呼びを受け付け、当該乗場呼びに対してかご1を応答させることが可能である。第1運転モード(通常運転)は、複数の階床のいずれの階床からの乗場呼びに対してもかご1を応答可能にするモードである。第2運転モード(満員通過運転)は、複数の階床のいずれの階床の乗場呼びに対してもかご1を応答させないモードである。これにより、かご4内の乗客の混雑状況を容易に把握し、混雑時には、いずれの乗場呼びに対してもかご1を応答させない満員通過運転に変更することができる。
【0113】
(3) エレベーター制御システム100は、サーバ装置9と端末装置8とをさらに備える。サーバ装置9は、映像処理装置6と通信する。端末装置8は、サーバ装置9と通信する。端末装置8は、表示部20を有する。映像処理装置6は、画像と混雑情報と運転モードとを含む表示情報をサーバ装置9に送信する。サーバ装置9は、端末装置8からの要求に基づき、表示情報を端末装置8に送信する。これにより、端末装置8において、エレベーターの設定を調整するために必要なかご4内の乗客の混雑状況を容易に把握可能である。
【0114】
(4) 映像処理装置6は、ユーザからの要求がありかつ運転モードの切り替えが発生する場合に、画像に混雑情報と運転モードを含めた合成画像を生成する。映像処理装置6は、合成画像を表示情報として、サーバ装置9に送信する。このように、必要時において合成画像を生成するため、映像処理装置6の処理負荷および記憶容量を低減させることができる。
【0115】
(5) 制御装置2は、端末装置8からの要求に基づき、エレベーターの設定を変更する。これにより、かご4内の乗客の混雑状況を容易に把握し、これに基づきエレベーターの設定を調整することができる。
【0116】
(6) 表示部20は、表示情報とともに、エレベーターの設定が変更可能である旨を表示する。これにより、エレベーターの設定変更を促すことができる。
【0117】
(7) 制御装置2は、第1権限を有するユーザからの要求に基づきエレベーターの設定を変更可能である一方で、第2権限を有するユーザからの要求に基づきエレベーターの設定を変更しない。これにより、設定変更に際して専門知識が必要になるような場合には、権限のあるユーザのみがエレベーターの設定を変更することができる。
【0118】
(8) 制御方法は、エレベーター制御システム100を制御する方法である。エレベーター制御システム100は、エレベーターを制御する制御装置2と、エレベーターのかご1内に設置されているカメラ4と、制御装置2およびカメラ4と通信する映像処理装置6と、表示を行う表示部20とを備える、制御方法は、カメラ4が撮影した画像に基づき、かご1内の乗客の混雑情報を算出するステップと、算出された混雑情報が閾値以下であるときは、エレベーターの運転モードを第1運転モードに設定する指令を制御装置2に送信するステップと、算出された混雑情報が閾値を超えたときは、運転モードを第2運転モードに設定する指令を制御装置2に送信するステップと、画像とともに、混雑情報および運転モードを表示部20に表示させるステップとを含む。これにより、エレベーターの設定を調整するために必要なかご4内の乗客の混雑状況を容易に把握可能である。
【0119】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
1 かご、2 制御装置、3 かご内表示部、4 カメラ、5 乗場表示部、6 映像処理装置、6a 外部通信部、6b 記憶部、6c 運行モード変更指示部、6d 映像出力部、6e メモリ、6f 画像解析部、6g 合成処理部、6h 表示制御部、8 端末装置、9 サーバ装置、10a~10c 画面、20 表示部、51,52 出入口、61,62 乗客、71 養生シート、81 メッセージ、100 エレベーター制御システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9