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特許7423879グラフェン及びボロン窒化物ヘテロ構造デバイスの統合
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】グラフェン及びボロン窒化物ヘテロ構造デバイスの統合
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20240123BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 616S
H01L29/78 616V
H01L29/78 627F
H01L29/78 618A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020568950
(86)(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 US2019020553
(87)【国際公開番号】W WO2019169390
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】15/910,817
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】アーチャナ ヴェヌゴパル
(72)【発明者】
【氏名】ルイジ コロンボ
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/113518(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/010151(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0291607(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0056301(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106803517(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103258849(CN,A)
【文献】特表2014-515181(JP,A)
【文献】特表2017-519351(JP,A)
【文献】特表2019-522348(JP,A)
【文献】特表2014-522321(JP,A)
【文献】国際公開第2013/121954(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電子デバイスであって、
第1の導電型の半導体材料と前記半導体材料の上の誘電性材料とを有する基板であって、前記半導体材料が反対の第2の導電型の第1のコンタクトフィールド領域と前記第2の導電型の第2のコンタクトフィールド領域とを含む、前記基板と、
ゲートグラフェン構成要素であって、
前記誘電性材料の上のグラファイト層であって、グラフェンの少なくとも1つの層を含み、前記第1の導電型の前記半導体材料の上のチャネル領域と、前記チャネル領域に隣接して前記第1のコンタクトフィールド領域の上の第1のコンタクト領域と、前記チャネル領域に隣接して前記第2のコンタクトフィールド領域の上の第2のコンタクト領域とを有する、前記グラファイト層と、
前記チャネル領域の上の前記グラファイト層上のパターン化された六方晶ボロン窒化物(hBN)層と、
前記パターン化されたhBN層の上であり前記チャネル領域の上のゲートと、
を含む、前記ゲートグラフェン構成要素と、
前記ゲートグラフェン構成要素上の第1の接続であって、前記第1のコンタクト領域において前記グラファイト層に接し、前記パターン化されたhBN層が前記第1の接続の下に完全には延在しない、前記第1の接続と、
前記ゲートグラフェン構成要素上の第2の接続であって、前記第2のコンタクト領域において前記グラファイト層に接し、前記パターン化されたhBN層が前記第2の接続の下に完全には延在しない、前記第2の接続と、
を含む、マイクロ電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロ電子デバイスであって、
前記パターン化されたhBN層とは反対の、前記グラファイト層の下の下側hBN層を更に含み、前記グラファイト層が前記下側hBN層上にある、マイクロ電子デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロ電子デバイスであって、
前記ゲートグラフェン構成要素が、前記チャネル領域の上の前記パターン化されたhBN層上にゲート誘電体層を更に含み、前記ゲートが前記ゲート誘電体層の上に位置する、マイクロ電子デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のマイクロ電子デバイスであって、
前記ゲートグラフェン構成要素が、前記第1の接続と前記第2の接続との横方向表面に隣接する誘電性材料のコンタクトスペーサを更に含み、
前記ゲートが前記コンタクトスペーサによって前記第1の接続と前記第2の接続とから横方向に分離される、マイクロ電子デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のマイクロ電子デバイスであって、
前記コンタクトスペーサが、前記第1の接続と前記第2の接続との横方向表面に直接隣接している、マイクロ電子デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載のマイクロ電子デバイスであって、
前記第1の接続と前記第2の接続との上の障壁キャップであって、窒素とボロンとの拡散を抑制する材料を含む、前記障壁キャップを更に含む、マイクロ電子デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載のマイクロ電子デバイスであって、
前記窒素とボロンとの拡散を抑制する材料が、チタン窒化物と窒化タンタルとからなる群から選択される、マイクロ電子デバイス。
【請求項8】
マイクロ電子デバイスであって、
第1の導電型の半導体材料と前記半導体材料の上の誘電性材料とを有する基板であって、前記半導体材料が反対の第2の導電型の第1のコンタクトフィールド領域と前記第2の導電型の第2のコンタクトフィールド領域とを含む、前記基板と、
ゲートグラフェン構成要素であって、
前記誘電性材料の上のグラファイト層であって、少なくとも1つのグラフェンの層を含み、前記第1の導電型の前記半導体材料の上のチャネル領域と、前記チャネル領域に隣接して前記第1のコンタクトフィールド領域の上の第1のコンタクト領域と、前記チャネル領域に隣接して前記第2のコンタクトフィールド領域の上の第2のコンタクト領域とを有する、前記グラファイト層と、
前記チャネル領域の上の前記グラファイト層上のパターン化された六方晶ボロン窒化物(hBN)層と、
前記パターン化されたhBN層の上であって前記チャネル領域の上のゲートと、
を含む、前記ゲートグラフェン構成要素と、
前記グラファイト層上の第1の接続であって、前記第1のコンタクト領域において前記グラファイト層に接し、前記パターン化されたhBN層が前記第1の接続の下に完全には延在しない、前記第1の接続と、
前記グラファイト層上の第2の接続であって、前記第2のコンタクト領域において前記グラファイト層に接し、前記パターン化されたhBN層が前記第2の接続の下に完全には延在しない、前記第2の接続と、
を含み、
前記第1のコンタクトフィールド領域から前記グラファイト層への直接の電気的接続と前記第2のコンタクトフィールド領域から前記グラファイト層への直接の電気的接続とがない、マイクロ電子デバイス。
【請求項9】
マイクロ電子デバイスを形成する方法であって、
第1の導電型の半導体材料と前記半導体材料の上の誘電性材料とを含む基板であって、前記半導体材料が反対の第2の導電型の第1のコンタクトフィールド領域と前記第2の導電型の第2のコンタクトフィールド領域とを含む、前記基板を提供することと、
前記基板の誘電体材料の上にグラフェンの少なくとも1つの層を含むグラファイト層を形成することであって、前記グラファイト層がチャネル領域と前記チャネル領域に隣接して前記第1のコンタクトフィールド領域の上の第1のコンタクト領域と前記チャネル領域に隣接して前記第2のコンタクトフィールド領域の上の第2のコンタクト領域とを有する、前記グラファイト層を形成することと、
前記第1のコンタクト領域において前記グラファイト層と接する第1の接続を形成することと、
前記第2のコンタクト領域において前記グラファイト層に接する第2の接続を形成することと、
前記グラファイト層上に第1の金属層を形成することと、
前記第1の金属層におけるボロンと窒素との拡散と、第1の金属層からの沈殿とによって、前記チャネル領域の上の前記グラファイト層上にパターン化された六方晶ボロン窒化物(hBN)層を形成することであって、前記パターン化されたhBN層が第1の接続の下で完全には延在せず、前記パターン化されたhBN層が第2の接続の下で完全には延在しないように、前記パターン化されたhBN層を形成することと、
前記チャネル領域の上の前記パターン化されたhBN層の上にゲートを形成することと、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記パターン化されたhBN層を形成する前に、前記第1の接続と記第2の接続との上に障壁キャップを形成することであって、前記障壁キャップが窒素とボロンとの拡散を抑制する材料を含む、前記障壁キャップを形成することとを更に含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、
前記第1の金属層が、コバルトとニッケルと銅とルテニウムとロジウムとパラジウムと銀とレニウムとイリジウムとプラチナと金とからなる群から選択される金属を含む、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、
前記第1の金属層からの前記パターン化されたhBN層の沈殿が、
前記第1の金属層を400°C~800°Cまで加熱することと、
前記第1の金属層が400°C~800°Cの温度にある間に、ボロン含有試薬を用いて前記第1の金属層にボロンを導入することと、
前記第1の金属層が400°C~800°Cの温度にある間に、窒素含有試薬を用いて前記第1の金属層に窒素を導入することと、
続いて前記第1の金属層を冷却することと、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であって、
前記第1の金属層からの前記パターン化されたhBN層の沈殿が、
第1のイオン注入プロセスを用いて前記第1の金属層へボロンを注入することと、
第2のイオン注入プロセスを用いて前記第1の金属層へ窒素を注入することと、
前記ボロンと前記窒素を注入した後、前記第1の金属層を400°C~800°Cまで加熱することと、
続いて前記第1の金属層を冷却することと、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法であって、
前記グラファイト層を形成する前に下側hBN層を形成することを更に含み、
前記グラファイト層が前記下側hBN層上に形成される、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記基板の誘電性材料の上に第2の金属層を形成することを更に含み、
前記下側hBN層が、第2の金属層におけるボロンと窒素との拡散と、前記第2の金属層からの沈殿とによって形成される、方法。
【請求項16】
請求項9に記載の方法であって、
前記基板の誘電性材料の上に第3の金属層を形成することを更に含み、
前記グラファイト層が、第3の金属層における炭素の拡散と、前記第3の金属層からの沈殿とによって形成される、方法。
【請求項17】
請求項9に記載の方法であって、
前記基板の誘電性材料上に第2の金属層を形成することと、
前記第2の金属層におけるボロンと窒素との拡散と前記第2の金属層から沈殿とによって、前記第2の金属層の上に下側hBN層を形成することと、
を更に含む、方法。
【請求項18】
請求項9に記載の方法であって、
前記ゲートを形成する前に、前記パターン化されたhBN層の上にゲート誘電体層を形成することを更に含み、
前記ゲートが前記ゲート誘電体層の上に形成される、方法。
【請求項19】
請求項9に記載の方法であって、
前記ゲートを形成する前に、前記第1の接続と前記第2の接続との横方向表面に隣接する前記誘電性材料のコンタクトスペーサを形成することであって、前記コンタクトスペーサが前記チャネル領域の上に延在せず、前記ゲートが前記コンタクトスペーサによって前記第1の接続と第2の接続とから横方向に分離される、前記コンタクトスペーサを形成することを更に含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記コンタクトスペーサが、前記第1の接続と前記第2の接続と前記チャネル領域との上にコンフォーマルスペーサ層を形成することと、その後、異方性エッチングプロセスにより前記チャネル領域の上の前記コンフォーマルスペーサ層を除去することとによって形成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は概して、マイクロ電子デバイスに関し、特にマイクロ電子デバイスにおけるグラフェンに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンはマイクロ電子デバイスの有望な材料である。ゲートグラフェン構成要素のための一般的に提案されているアーキテクチャは、基板上のグラフェンを含むグラファイト層であり、グラフェン上に金属コンタクトを有し、これらコンタクト間のグラフェン内にチャネル領域を有する。マイクロ電子デバイスを形成するためのプロセスの間のグラフェンの劣化のため、この構成要素をマイクロ電子デバイスに統合することは困難であった。
【発明の概要】
【0003】
例示のマイクロ電子デバイスはゲートグラフェン構成要素を含む。ゲートグラフェン構成要素は、グラフェンの一つ又はそれ以上の層を含むグラファイト層を含む。グラファイト層は、チャネル領域と、チャネル領域に隣接する第1のコンタクト領域と、チャネル領域に隣接する第2のコンタクト領域とを有する。ゲートグラフェン構成要素は、チャネル領域の上のグラファイト層上のパターン化された六方晶ボロン窒化物(hBN)層と、チャネル領域上方のパターン化されたhBN層の上のゲートとを含む。第1のコンタクト領域内のグラファイト層上に第1の接続が配置され、第2のコンタクト領域内のグラファイト層上に第2の接続が配置される。パターン化されたhBNの層は、第1の接続の下又は第2の接続の下に完全には延在しない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】ゲートグラフェン構成要素を含む例示のマイクロ電子デバイスの断面である。
【0005】
図2A】形成の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図2B】形成の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図2C】形成の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図2D】形成の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図2E】形成の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図2F】形成の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図2G】形成の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図2H】形成の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図2I】形成の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図2J】形成の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
【0006】
図3】ゲートグラフェン構成要素を含む別の例示のマイクロ電子デバイスの断面である。
【0007】
図4A】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4B】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4C】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4D】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4E】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4F】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4G】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4H】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4I】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4J】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4K】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4L】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4M】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
図4N】形成の別の例示の方法の或る段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素を含むマイクロ電子デバイスの断面である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面は一定の縮尺で描いてはいない。幾つかの行為又は事象が、異なる順で及び/又は他の行為又は事象と同時に起こり得るので、本記載は行為又は事象の例示される順によって限定されない。また、幾つかの例示される行為又は事象は、本記載に従った手法を実装するために任意選択である。
【0009】
マイクロ電子デバイスが、グラフェンの一つ又はそれ以上の層を含むグラファイト層を有するゲートグラフェン構成要素を含む。グラファイト層は、チャネル領域と、チャネル領域に隣接する第1のコンタクト領域と、チャネル領域に隣接する第2のコンタクト領域とを含む。グラフェンは、チャネル領域から第1のコンタクト領域及び第2のコンタクト領域内へ延在する。ゲートグラフェン構成要素は、チャネル領域の上のグラファイト層上のパターン化された六方晶ボロン窒化物(hBN)層と、チャネル領域上方のパターン化されたhBN層の上のゲートとを含む。第1のコンタクト領域内のグラファイト層上に第1の接続が配置され、第2のコンタクト領域内のグラファイト層上に第2の接続が配置される。パターン化されたhBN層は、第1の接続の下に完全には延在せず、又は第2の接続の下に完全には延在しない。マイクロ電子デバイス内にゲートグラフェン構成要素を形成する方法が開示される。
【0010】
本記載において、「横方向」という用語は、基板の頂部表面の平面に並行な方向を指す。本記載において、~の上、~の上方、~の下、~の下方などの用語が用いられ得る。これらの用語は、構造又は要素の位置又は向きを限定するものではなく、構造間又は要素間の空間的な関係を提供する。
【0011】
本記載において、或る要素が別の要素「上に」あると称される場合、それは他の要素の直接上にあってもよいし、又は、介在する要素が存在してもよい。同様に、或る要素が別の要素に「隣接する」と称される場合、それは他の要素に直接隣接していてもよいし、又は、介在する要素が存在していてもよい。
【0012】
図1は、ゲートグラフェン構成要素102を含む例示のマイクロ電子デバイス100の断面である。マイクロ電子デバイス100は基板104を含む。基板104は、半導体ウェハの一部、例えば、場合によってはエピタキシャル層を有する単結晶シリコンウェハ、又は、SOI(silicon on insulator)ウェハであってもよく、図1に示されるように、任意選択で半導体材料106を含んでもよい。基板104は、半導体材料を含まない、サファイアウェハ又はグラスウェハなどの誘電体ウェハの一部であってもよい。マイクロ電子デバイス100に適した他の基板もこの例の範囲内にある。基板104は、基板104の頂部表面110まで延在する誘電性材料108を含む。誘電性材料108は、図1に描かれているように、半導体材料106の上の誘電体層であり得る。誘電性材料108は、基板104を提供する誘電体ウェハの頂部であり得る。
【0013】
この例のゲートグラフェン構成要素102は、頂部表面110の上に任意選択の下側hBN層112を含む。ゲートグラフェン構成要素102は、存在する場合は下側hBN層112上の、頂部表面110の上にグラファイト層114を含む。グラファイト層114は、グラフェンの一つ又はそれ以上の層を含む。グラファイト層114は、チャネル領域116と、チャネル領域116に隣接する第1のコンタクト領域118と、チャネル領域116に隣接する第2のコンタクト領域120とを含む。グラフェンは、チャネル領域116から第1のコンタクト領域118内へ延在し、チャネル領域116から第2のコンタクト領域120内へ延在する。
【0014】
第1の接続122が、第1のコンタクト領域118におけるグラファイト層114上に配置される。第2の接続124が、第2のコンタクト領域120におけるグラファイト層114上に配置される。第1の接続122及び第2の接続124は、グラファイト層114におけるグラフェンに電気的接続を提供する。第1の接続122及び第2の接続124は、金属、グラフェン、カーボンナノチューブ、又は他の導電性材料を含み得る。第1の接続122及び第2の接続124の上に、障壁キャップ126が配置され得る。障壁キャップ126は、窒素及びボロンの拡散を抑制する、チタン窒化物又は窒化タンタルなどの材料を含み得る。
【0015】
ゲートグラフェン構成要素102は、チャネル領域116の上のグラファイト層114の上のパターン化されたhBN層128を含む。パターン化されたhBN層128は、第1の接続122の下に完全には延在せず、又は第2の接続124の下に完全には延在しない。パターン化されたhBN層128は、図1に示すように、任意で第1の接続122及び第2の接続124を越えて延在し得る。
【0016】
ゲートグラフェン構成要素102は、チャネル領域116の上方のパターン化hBN層128の上のゲート誘電体層130を含み得る。ゲート誘電体層130は、二酸化シリコン、シリコン窒化物、シリコンオキシナイトライド、ハフニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、タンタル酸化物などを含み得る。ゲート誘電体層130は、例えば、1ナノメートル~10ナノメートルの厚みであり得る。
【0017】
ゲートグラフェン構成要素102はさらに、第1の接続122及び第2の接続124の横方向表面に隣接するコンタクトスペーサ132を含み得る。コンタクトスペーサ132は、チャネル領域116の上に延在しない。コンタクトスペーサ132は、二酸化シリコン、シリコン窒化物、又は他の誘電性材料を含み得る。この例では、ゲート誘電体層130は、第1の接続122及び第2の接続124の横方向表面に沿って延在し、そのため、コンタクトスペーサ132は、ゲート誘電体層130によって第1の接続122及び第2の接続124から分離される。第1の接続122及び第2の接続124に対する、コンタクトスペーサ132及びゲート誘電体層130の他の構成もこの例の範囲内にある。
【0018】
ゲートグラフェン構成要素102は、チャネル領域116の上方のゲート誘電体層130の上のゲート134を含む。ゲート134は、所望の仕事関数を提供するために、アルミニウム、銅、チタン、チタン窒化物、タンタル、窒化タンタル、及びタングステンなどの一つ又はそれ以上の金属を含み得る。ゲート134は、コンタクトスペーサ132によって第1の接続122及び第2の接続124から横方向に分離されている。
【0019】
ゲートグラフェン構成要素102及び基板104の上に誘電体層136が配置され得る。誘電体層136は、誘電性材料の一つ又はそれ以上のサブ層を含むプレメタル誘電体(PMD)層136であり得、誘電性材料の一つ又はそれ以上のサブ層は、例えば、シリコン窒化物のPMDライナー、二酸化シリコンベースの材料の層、リン珪酸ガラス(PSG)又はボロンリン珪酸ガラス(BPSG)の層、並びに、シリコン窒化物、シリコンオキシナイトライド、シリコンカーバイド、又はシリコンカーバイド窒化物のキャップ層であり得る。誘電体層136のための他の構造及び組成もこの例の範囲内にある。ゲート134、第1の接続122、及び第2の接続124に電気的接続を提供するために、コンタクト138が、誘電体層136を介して配置され得る。コンタクト138は、任意選択で、図1に示すように、障壁キャップ126を介して第1の接続122及び第2の接続124への電気的接続を成すことができる。
【0020】
マイクロ電子デバイス100のオペレーションの間、第1の接続122からグラファイト層114内のグラフェンを介して第2の接続124に電流が流され得る。パターン化されたhBN層128は、マイクロ電子デバイス100の製造及び使用の間、グラファイト層114を劣化から保護することができ、チャネル領域116を介するグラフェンにおける充電キャリア移動度の所望の値を有利に提供する。存在する場合、下側hBN層112は、グラファイト層114をさらに有利に保護することができる。
【0021】
図2A図2Jは、形成の例示の方法の種々の段階で示される、ゲートグラフェン構成要素202を含むマイクロ電子デバイス200の断面である。図2Aを参照すると、マイクロ電子デバイス200は基板204を含む。基板204は、図2Aに示すように、シリコン、シリコンカーバイド、ガリウムヒ化物、ガリウム窒化物等の半導体材料206を有する、半導体ウェハ、SOIウェハ等であり得る。基板204は、半導体材料を含まないサファイアウェハ又はグラスウェハなどの誘電体ウェハであり得る。
【0022】
基板204は、基板204の頂部表面210まで延在する誘電性材料208を含む。誘電性材料208は、図2Aに描かれているように、半導体材料206の上に形成されるフィールド酸化物などの誘電体層の一部であり得る。誘電性材料208は、基板204を提供する誘電体ウェハの頂部であり得る。
【0023】
下側金属層240が誘電性材料208の上に形成される。下側金属層240は、例えば、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、又はそれらの任意の組み合わせの、hBN層の後続の沈殿に適する一つ又はそれ以上の金属を含む。これらの金属は、網羅的な一覧ではなく、例として提供される。下側金属層(240)は、均質な合金、又は2つ又はそれ以上の異なる金属の混合物を含み得る。下側金属層(240)は、異なる金属を有する2つ又はそれ以上の層の層状構造、例えば銅/ニッケル/銅積層体を含み得る。下側金属層(240)は、例えば、スパッタプロセス、蒸着プロセス、化学気相成長(CVD)プロセス、有機金属化学気相成長(MOCVD)プロセス、又は原子層堆積(ALD)プロセスによって形成され得る。下側金属層240の厚みは、誘電性材料208上へのhBN層の沈殿に適しており、したがって、下側金属層240の組成に基づいて選択され得る。例えば、下側金属層240は、50ナノメートル~500ナノメートルの厚みを有し得る。下側金属層240は、ゲートグラフェン構成要素202のためのエリアにわたってのみ延在するようにパターン化されてもよい。あるいは、下側金属層240は、図2Aに示すように、基板204全体にわたって延在し得る。
【0024】
図2Aにおいて「ボロン」として示されるボロンは、例えば、400℃~800℃など、下側金属層240におけるボロン及び窒素の拡散、並びに、誘電性材料208上へのhBN層の沈殿に適した温度で、下側金属層240においてボロンの飽和状態を形成するのに充分な量で下側金属層240に導入される。図2Aにおいて「窒素」として示される窒素は、ボロン及び窒素の拡散、並びに、誘電性材料208上へのhBN層の沈殿に適した同じ温度で、下側金属層240において窒素の飽和状態を形成するのに充分な量で下側金属層240内へ導入される。下側金属層240は、図2Aに概略的に示されているように、第一の放射加熱プロセス242によって、又はファーネスプロセス又はホットプレートプロセスなどの別のプロセスによって加熱され得る。ボロン及び窒素は、例えばボロン含有気体試薬及び窒素含有気体試薬への曝露を含む、いくつかの方法の任意のものによって下側金属層240に導入され得る。
【0025】
図2Bを参照すると、続いて下側金属層240が冷却されて、下側金属層240の表面へのボロン及び窒素の拡散、並びに、誘電性材料208の頂部表面210上の下側hBN層212の沈殿をもたらす。下側hBN層212とは反対側の下側金属層240の頂部表面上に犠牲hBN層244が沈殿され得る。犠牲hBN層244は下側金属層240の大部分をそのまま残して、例えば、光スパッタエッチングによって除去することができる。
【0026】
図2Cを参照すると、図2Cにおいて「炭素」として示される炭素が、例えば、400℃~800℃など、下側金属層240における炭素の拡散、並びに、下側hBN下側金属層212上へのグラファイト層の沈殿に適した温度で、下側金属層240において炭素の飽和状態を形成するのに充分な量で層240内へ導入される。下側金属層240は、図2Cに概略的に示されるように第2の放射加熱プロセス246によって、又は別のプロセスによって加熱され得る。炭素は、例えば炭素含有気体試薬への曝露を含む、幾つかの方法の任意のものによって、下側金属層240に導入され得る。
【0027】
図2Dを参照すると、続いて下側金属層240が冷却され、下側金属層240の表面への炭素の拡散及び下側hBN層212上のグラファイト層214の沈殿をもたらす。グラファイト層214は、グラフェンを含み、ベルナル構成を有し得る。犠牲グラファイト層248も、グラファイト層214とは反対側の下側金属層240の頂部表面に沈殿され得る。犠牲グラファイト層248は、任意選択で除去され得る。下側hBN層212及びグラファイト層214の両方を形成するための下側金属層240の使用は、下側hBN層212の形成後に下側金属層240を除去してグラファイト層214の沈殿のための別個の金属層を形成する方法と比較して、下側hBN層212の層を有利に低減し得る。
【0028】
図2Eを参照すると、障壁材料の層(図示せず)が、下側金属層240の上に形成される。障壁材料は、窒素及びボロンの拡散を抑制する、チタン窒化物又は窒化タンタルなどの材料を含み得る。下側金属層240、及び上にある障壁材料の層は、下側金属層240から第1の接続222及び第2の接続224を形成し、障壁材料の層から障壁キャップ226を形成するために、同時にパターン化される。
【0029】
第1の接続222は、グラファイト層214の第1のコンタクト領域218においてグラファイト層214への接続を成す。第2の接続224は、グラファイト層214の第2のコンタクト領域220においてグラファイト層214への接続を成す。グラファイト層214は、第1のコンタクト領域218に隣接し第2のコンタクト領域220に隣接するチャネル領域216を有する。第1の接続222及び第2の接続224を提供するための下側金属層240の使用は、下側金属層240を除去し、第1の接続222及び第2の接続224を形成するために別個の金属層を用いる方法と比較して、グラファイト層214に低コンタクト抵抗を有利に提供し得る。
【0030】
図2Fを参照すると、上側金属層250が、チャネル領域216におけるグラファイト層214上に形成され、図2Fに示すように、任意選択で第1の接続222及び第2の接続224上に延在する。上側金属層250は、後続のhBN層の沈殿に適した一つ又はそれ以上の金属を含む。上側金属層250は、図2Aの下側金属層240について開示したものと同様の構造及び組成を有し得る。上側金属層250は、下側金属層240に関して開示したプロセスの任意のものによって形成され得る。図2Fにおいて「ボロン」として示されるボロン、及び図2Fにおいて「窒素」として示される窒素が、上側金属層250におけるボロン及び窒素の拡散、並びに、グラファイト層214上へのhBN層の沈殿に適した温度で上側金属層250内に導入される。ボロン及び窒素は、例えば、図2Aに関して開示したように、上側金属層250に導入され得る。上側金属層250は、図2Fに概略的に示されるように第3の放射加熱プロセス252によって、又は別のプロセスによって、所望の温度まで加熱され得る。障壁キャップ226は、第1の接続222及び第2の接続224の大部分からボロン及び窒素をブロックする。
【0031】
図2Gを参照すると、続いて上側金属層250が冷却され、上側金属層250の表面へのボロン及び窒素の拡散、並びに、下側hBN層212とは反対のグラファイト層214上のパターン化されたhBN層228の沈殿をもたらす。下側hBN層212とは反対側の上側金属層250の頂部表面上に犠牲hBN層254が沈殿され得る。図2Gに示すように、犠牲hBN層254の付加的な部分が障壁キャップ226上に沈殿され得る。場合によっては、犠牲hBN層254のさらなる部分が、上側金属層250と第1の接続222と第2の接続224との間のインタフェースの条件に応じて、第1の接続222及び第2の接続224の横方向表面上に沈殿され得る。
【0032】
続いて、上側金属層250及び犠牲hBN層254が除去され、パターン化されたhBN層228がそのまま残される。パターン化されたhBN層228は、図2Fのボロン及び窒素が障壁キャップ226によってブロックされた結果、第1の接続222の下に完全には延在しないか、又は第2の接続224の下に完全には延在しない。パターン化されたhBN層228は、障壁キャップ226によって覆われていない第1の接続222又は第2の接続224の横方向表面を介するボロン及び窒素の拡散の結果、第1の接続222の下の途中まで、又は第2の接続224の下の途中まで延在し得る。
【0033】
図2Hを参照すると、この例では、パターン化されたhBN層228の上にゲート誘電体層230が形成される。ゲート誘電体層230は、図2Hに描かれているように、第1の接続222及び第2の接続224の上に延在し得る。ゲート誘電体層230は、図1のゲート誘電体層130について開示したような組成及び構造を有し得る。ゲート誘電体層230は、例えば、ALDプロセス、プラズマエンハンスト化学気相成長(PECVD)プロセス、又はCVDプロセスによって形成され得る。
【0034】
この例では、ゲート誘電体層230の上にコンフォーマルスペーサ層256が形成される。コンフォーマルスペーサ層256は、例えば、二酸化シリコン、シリコン窒化物、又はシリコンオキシナイトライドを含み得る。コンフォーマルスペーサ層256は、PECVDプロセス、低圧化学気相成長(LPCVD)プロセス、又は、誘電性材料のコンフォーマル層を形成するためのその他のプロセスによって形成され得る。
【0035】
図2Iを参照すると、図2Hのコンフォーマルスペーサ層256は、コンタクトスペーサ232を提供するために、第1の接続222及び第2の接続224の横方向表面に隣接するコンフォーマルスペーサ層256を残して、グラファイト層214のチャネル領域216の上のコンフォーマルスペーサ層256を除去するように、異方性エッチングプロセスによってエッチングされる。異方性プロセスとしては、例えば、フッ素ラジカルを用いた反応性イオンエッチング(RIE)プロセスを挙げることができる。
【0036】
図2Jを参照すると、ゲート234が、チャネル領域216の上方のゲート誘電体層230の上に形成される。ゲート234は、コンタクトスペーサ232によって、第1の接続222及び第2の接続224から、横方向に分離され電気的に絶縁されている。コンタクトスペーサ232は、第1の接続222及び第2の接続224上の電位に対する所望の電位でのゲート234のオペレーションを可能にして、ゲート234から第1の接続222又は第2の接続224への漏れ電流なしに、チャネル領域216を介して所望の導電率を得る。ゲート234は、図1のゲート134について開示したような組成を有し得る。ゲート234は、マイクロ電子デバイス200の既存の頂部表面の上にゲート材料の層を形成し、ゲート234のためのエリアを覆うゲート材料の層の上にエッチマスクを形成し、エッチマスクによって露出されたゲート材料を除去することによって形成され得る。
【0037】
マイクロ電子デバイス200の形成は、コンタクト、相互接続、及び支持誘電体層の形成と共に継続し得る。図2Jのマイクロ電子デバイス200は、図1のマイクロ電子デバイス100に類似した構造を提供するようにさらに処理されてもよい。
【0038】
図3は、ゲートグラフェン構成要素302を含む別の例示のマイクロ電子デバイス300の断面である。マイクロ電子デバイス300は、基板304を含む。この例の基板304は、例えば、場合によってはエピタキシャル層を有する単結晶シリコンウェハ、又はSOIウェハなど、半導体ウェハの一部であり得、図3に示されるように、例えばp型である第1の導電型を有する半導体材料306を含む。基板304は、基板304の頂部表面310まで延在する誘電性材料308を含む。この例では、誘電性材料308は、厚さ30ナノメートル未満の誘電体層308であり、半導体材料306内のバイアスからゲートグラフェン構成要素302内の所望の電界をサポートする。誘電性材料308は、マイクロ電子デバイス300の、図示されていない金属酸化物半導体(MOS)トランジスタのゲート誘電体層に類似した組成及び構造を有し得る。
【0039】
この例のゲートグラフェン構成要素体302は、頂部表面310の上に下側hBN層312を、頂部表面310の上にグラファイト層314を含む。グラファイト層314は、グラフェンの一つ又はそれ以上の層を含む。グラファイト層314は、チャネル領域316と、チャネル領域316に隣接する第1のコンタクト領域318と、チャネル領域316に隣接する第2のコンタクト領域320とを含み、グラフェンは、チャネル領域316から第1のコンタクト領域318内に、チャネル領域316から第2のコンタクト領域320内へ延在する。
【0040】
この例の基板304は、半導体材料306とは反対の第2の導電型を有する半導体材料の第1のコンタクトフィールド領域358を含む。第1のコンタクトフィールド領域358は、誘電性材料308より下であり、グラファイト層314の第1のコンタクト領域318の下方に位置する。図3に示されるこの例の変形例では、第1のコンタクト領域358はn型である。この例の基板304は、第2の導電型を有する半導体材料の第2のコンタクトフィールド領域360も含む。第2のコンタクトフィールド領域360は、誘電性材料308より下であり、グラファイト層314の第2のコンタクト領域320の下方に位置する。第1のコンタクトフィールド領域358及び第2のコンタクトフィールド領域360は、第2の導電型に逆ドープされた半導体材料306の領域であり得る。
【0041】
第1のコンタクト領域318におけるグラファイト層314上に第1の接続322が配置され、第2のコンタクト領域320におけるグラファイト層314上に第2の接続324が配置される。第1の接続322及び第2の接続324は、グラファイト層314におけるグラフェンに電気的接続を提供する。第1の接続322及び第2の接続324は、図1の第1の接続122及び第2の接続124について開示されるような組成を有し得る。第1の接続322及び第2の接続324の上に障壁キャップ326が配置され得る。障壁キャップ326は、窒素及びボロンの拡散を抑制する材料を含み得る。第1の接続322は、第1のコンタクトフィールド領域358の上に配置され、第2の接続324は、第2のコンタクトフィールド領域360の上に配置される。
【0042】
ゲートグラフェン構成要素302は、チャネル領域316の上のグラファイト層314上のパターン化されたhBN層328を含む。パターン化されたhBN層328は、第1の接続322の下に完全には延在せず、又は第2の接続324の下に完全には延在しない。この例のゲートグラフェン構成要素302は、第1の接続322及び第2の接続324の横方向表面に直接的に隣接するコンタクトスペーサ332を含む。コンタクトスペーサ332は、チャネル領域316の上には延在しない。この例のゲートグラフェン構成要素302は、チャネル領域316の上のパターン化されたhBN層328の上にゲート誘電体層330を含む。この例では、ゲート誘電体層330は、コンタクトスペーサ332の横方向表面に沿って延在し、そのため、ゲート誘電体層330は、コンタクトスペーサ332によって第1の接続322及び第2の接続324から分離される。第1の接続322及び第2の接続324に対する、コンタクトスペーサ332及びゲート誘電体層330の他の構成もこの例の範囲内にある。
【0043】
ゲートグラフェン構成要素302は、チャネル領域316の上のゲート誘電体層330の上のゲート334を含む。ゲート334は、図1のゲート134について開示されるような構造及び組成を有し得る。ゲート334は、コンタクトスペーサ332によって、第1の接続322及び第2の接続324から横方向に分離されている。
【0044】
ゲートグラフェン構成要素302及び基板304の上に誘電体層336が配置され得る。コンタクト338が、図3に示されるように、誘電体層336を介して配置されて、ゲート334への、及び障壁キャップ326を介して第1の接続322、及び第2の接続324への電気的接続を提供し得る。
【0045】
マイクロ電子デバイス300のオペレーションの間、第1のコンタクトフィールド領域358及び第2のコンタクトフィールド領域360は、第1の接続322及び第2の接続324に対してバイアスされ得、第1のコンタクト領域318及び第2のコンタクト領域320に所望のキャリア濃度を提供し得る。電流は、第1の接続322からグラファイト層314のグラフェンを介して第2の接続324に流れることができる。第1のコンタクト領域318及び第2のコンタクト領域320における所望のキャリア濃度は、グラファイト層314の所望の抵抗を提供し得る。パターン化されたhBN層328及び下側hBN層312は、図1に関連して開示したように、グラファイト層314を有利に保護し得る。
【0046】
図4A図4Nは、形成の別の例示の方法の種々の段階で描かれた、ゲートグラフェン構成要素402を含むマイクロ電子デバイス400の断面である。図4Aを参照すると、マイクロ電子デバイス400は、第1の導電型を有するシリコン、シリコンカーバイドなどの半導体材料406を有する基板404を含む。この例は、図4Aに示されるように、第1の導電型がp型である変形例について説明される。第1の導電型がn型であるこの例の他のバージョンもこの例の範囲内にある。基板404は、基板404の頂部表面410まで延在する誘電性材料408を含む。この例では、誘電性材料408は厚さ30ナノメートル未満の誘電体層408であり、マイクロ電子デバイス400の、図示しないMOSトランジスタのゲート誘電体層と同時に形成されてもよい。
【0047】
誘電性材料408の上に第1の金属層440が形成される。第1の金属層440は、その後のhBN層の沈殿に適した一つ又はそれ以上の金属を含む。第1の金属層440は、図2Aの下側金属層240について開示されるような構造及び組成を有し得、下側金属層240について開示されるようなプロセスによって形成され得る。第1の金属層440は、図4Aに示すように、基板404の頂部表面410上に延在してもよく、又は、ゲートグラフェン構成要素402のためのエリア上にのみ延在するようにパターン化されてもよい。
【0048】
ボロン及び窒素が、例えば400℃~800℃など、第1の金属層440におけるボロン及び窒素の拡散、並びに、誘電性材料408上のhBN層の沈殿に適した温度で、第1の金属層440におけるボロンの飽和状態及び窒素の飽和状態の層を形成するのに充分な量で第1の金属層440内へ導入される。この例では、ボロンは、図4Aに概略的に示されるように、第1のドーズ量のボロンイオン462を第1の金属層440にイオン注入することよって導入され得、窒素は、第1のドーズ量の窒素イオン464を第1の金属層440にイオン注入することによって導入され得る。
【0049】
図4Bを参照すると、第1の金属層440は、図4Aに関連して説明したように、注入されたボロン及び窒素を溶解するために加熱される。第1の金属層440は、400℃~800℃の温度まで加熱され得る。第1の金属層440は、図4Bに概略的に示されているように第1の放射加熱プロセス442によって、或いは、ファーネスプロセス又はホットプレートプロセスなどの別のプロセスによって加熱され得る。
【0050】
図4Cを参照すると、第1の金属層440はその後冷却されて、第1の金属層440の表面へのボロン及び窒素の拡散、並びに、誘電性材料408の頂部表面410上への下側hBN層412の沈殿をもたらす。下側hBN層412とは反対側の第1の金属層440の頂部表面上に犠牲hBN層444が沈殿され得る。
【0051】
図4Dを参照すると、図4Cの第1の金属層440及び犠牲hBN層444が除去され、下側hBN層412の少なくとも一部が誘電性材料408の上の適所に残される。犠牲hBN層444は、例えば、スパッタエッチング、フッ素を用いたプラズマエッチング、又は硫酸及び過酸化水素を用いたウェットエッチングによって除去し得る。第1の金属層440は、エッチング選択性を提供し下側hBN層412の劣化を回避するために、ウェットエッチングプロセスによって除去され得る。ウェットエッチングプロセスの化学的性質は、第1の金属層440の組成に依存し得る。
【0052】
図4Eを参照すると、第2の金属層466が下側hBN層412上に形成される。第2の金属層466は、後続のグラファイト層の沈殿に適した一つ又はそれ以上の金属を含む。第2の金属層466は、図2Aの下側金属層240について開示したような構造及び組成を有し得、下側金属層240について開示されるようなプロセスによって形成され得る。
【0053】
炭素が、例えば400℃~800℃など、第2の金属層466における炭素の拡散、並びに、下側hBN金属層412上のグラファイト層の沈殿に適した温度で、第2の金属層466における炭素の飽和状態を形成するのに充分な量で第2の層466内へ導入される。この例では、炭素は、図4Eに概略的に示されるように、或るドーズ量の炭素イオン468をイオン注入することによって、第2の金属層466に導入され得る。
【0054】
図4Fを参照すると、第2の金属層466は、図4Eに関連して記載されるように注入された炭素を溶解するために加熱される。第2の金属層466は、図4Bに概略的に示されるように第2の放射加熱プロセス446によって、又は別の加熱プロセスによって、加熱され得る。
【0055】
図4Gを参照すると、第2の金属層466はその後冷却され、第2の金属層466の表面への炭素の拡散、及び下側hBN層412上のグラファイト層414の沈殿をもたらす。グラファイト層414はグラフェンを含み、ベルナル構成を有し得る。犠牲グラファイト層448も、グラファイト層414とは反対側の第2の金属層466の頂部表面に沈殿され得る。
【0056】
図4Hを参照すると、図4Gの第2の金属層466及び犠牲グラファイト層448が除去され、グラファイト層414の少なくとも一部が下側hBN層412上の適所に残される。犠牲グラファイト層448は、アッシャープロセスなどによって除去し得る。第2の金属層466は、エッチング選択性を提供しグラファイト層414の劣化を回避するために、ウェットエッチングプロセスによって除去され得る。ウェットエッチングプロセスの化学的性質は、第2の金属層466の組成に依存し得る。
【0057】
図4Iを参照すると、グラファイト層414上にコンタクト層470が形成される。コンタクト層470は、金属、グラファイト、カーボンナノチューブ、又はグラファイト層414への電気的接続を成すのに適した他の材料を含み得る。障壁層472は任意選択で、コンタクト層470の上に形成され得る。障壁層472は、窒素及びボロンの拡散を抑制する材料を含む。
【0058】
図4Jを参照すると、コンタクト層470及び障壁層472はパターン化されて、グラファイト層414上の第1の接続422、グラファイト層414上の第2の接続424、及び、第1の接続422及び第2の接続424上の障壁キャップ426を形成する。第1の接続422は、グラファイト層414の第1のコンタクト領域418においてグラファイト層414に接し、第2の領域424は、グラファイト層414の第2のコンタクト領域420において、グラファイト414と接する。第1のコンタクト領域418はグラファイト層414のチャネル領域416に隣接し、第2のコンタクト領域420はチャネル領域416に隣接する。コンタクト層470及び障壁層472は、例えば、第1のコンタクト領域418及び第2のコンタクト領域420のためのエリアを覆う障壁層472の上にエッチマスクを形成し、エッチマスクによって露出された障壁層472及びコンタクト層470を除去することによって、パターン化され得る。コンタクト層470はチャネル領域416における下側hBN層412上にグラファイト層414の少なくとも一部を残すように、チャネル領域416の上で除去される。
【0059】
図4Kを参照すると、第3の金属層450が、チャネル領域416におけるグラファイト層414上に形成される。第3の金属層450は、図4Kに示すように、第1の接続422及び第2の接続424の上に延在し得る。第3の金属層450は、グラファイト層414上へのhBN層の後続の沈殿に適した一つ又はそれ以上の金属を含む。第3の金属層450は、図2Aの下側金属層240について開示したものと同様の構造及び組成を有し得る。第3の金属層450は、下側金属層240に関して開示したプロセスの任意のものによって形成され得る。
【0060】
ボロン及び窒素が、ボロンと窒素の拡散、並びに、グラファイト層414上のhBN金属層の沈殿に適した温度で、第3の金属層450におけるボロンの飽和状態及び窒素の飽和状態を形成するのに充分な量で、第3の金属層450内へ導入される。この例では、ボロンは、図4Kに概略的に示されるように、第2のドーズ量のボロンイオン474をイオン注入することによって第3の金属層450に導入され得、窒素は、第2のドーズ量の窒素イオン476をイオン注入することによって第3の金属層の450に導入され得る。
【0061】
図4Lを参照すると、第3の金属層450は、図4Kに関連して記載されたように、注入されたボロン及び窒素を溶解するために加熱される。第3の金属層450は、図4Lに概略的に示されるように第3の放射加熱プロセス452によって、又は別の加熱プロセスによって、加熱され得る。障壁キャップ426は、第1の接続422及び第2の接続424の大部分からボロン及び窒素をブロックする。
【0062】
第3の金属層450はその後冷却され、第3の金属層450の表面へのボロン及び窒素の拡散、並びに、下側hBN層412とは反対のチャネル領域416上のグラファイト層414上のパターン化されたhBN層428の沈殿をもたらす。犠牲hBN層454が、パターン化されたhBN層428とは反対側の第3の金属層450の頂部表面上に沈殿され得る。図4Lに示すように、犠牲hBN層454の付加的な部分が障壁キャップ426上に沈殿され得る。場合によっては、犠牲hBN層454のさらなる部分が、上側金属層450と第1の接続422と第2の接続424との間のインタフェースの条件に応じて、第1の接続422と第2の接続424との横方向表面上に沈殿され得る。
【0063】
第3の金属層450及び犠牲hBN層454は除去され、パターン化されたhBN層428の少なくとも一部をチャネル領域416の上のグラファイト層414上の適所に残す。
【0064】
図4Mを参照すると、コンタクトスペーサ432が、第1の接続422及び第2の接続424の横方向表面に隣接して形成される。この例では、コンタクトスペーサ432は、第1の接続422及び第2の接続424に直に隣接して形成され得る。コンタクトスペーサ432は、チャネル領域416の上には延在しない。コンタクトスペーサ432は、図2Iのコンタクトスペーサ232を形成するために、図2H及び図2Iに関して開示した方法と同様に、コンフォーマルスペーサ層から形成され得る。
【0065】
図4Nを参照すると、チャネル領域416の上のパターン化されたhBN層428の上方にゲート誘電体層430が形成される。ゲート誘電体層430は、図4Nに示されるように、コンタクトスペーサ432、第1の接続422、及び第2の接続424の上に延在し得る。ゲート誘電体層430は、図1のゲート誘電体層130に関連して開示されるような組成を有し得、図2Hのゲート誘電体層230を形成することに関連して開示されるプロセスの任意のものによって形成され得る。コンタクトスペーサ432を形成した後にゲート誘電体層430を形成することは、コンタクトスペーサ432がゲート誘電体層430の後に形成される方法におけるコンフォーマルスペーサ層の除去によるゲート誘電体層430への劣化を有利に排除し得る。
【0066】
チャネル領域416の上方のゲート誘電体層430の上に、ゲート434が形成される。ゲート434は、図1のゲート134に関して開示したような構造及び組成を有し得る。ゲート434は、コンタクトスペーサ432によって、第1の接続422及び第2の接続424から横方向に分離される。
【0067】
本明細書に開示される例の様々な特徴は、例示の集積回路の他の顕在化において組み合わされてもよい。例えば、マイクロ電子デバイスが、図1のゲート誘電体層130及びコンタクトスペーサ132の構成と組み合わせて、図3のコンタクトフィールド領域358及び360を有していてもよい。同様に、マイクロ電子デバイスが、図3のゲート誘電体層330及びコンタクトスペーサ332の構成と組み合わせて、図1の基板104及び誘電性材料108の構成を有していてもよい。マイクロ電子デバイスを形成する方法が、図2A及び図2Bを参照して開示した下側hBN層212を形成する方法、又は、図4A図4Dを参照して開示した下側hBN層412を形成する方法の任意のものを、図2C及び図2Dを参照して開示したグラファイト層214を形成する方法、又は、図4E図4Hを参照して開示したグラファイト層414を形成する方法の任意のものと組み合わせてもよく、図2F及び図2Gを参照して開示したパターン化されたhBN層228を形成する方法、又は、図4K及び図4Lを参照して開示したパターン化されたhBN層428を形成する方法の任意のものと組み合わせてもよい。
【0068】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図4L
図4M
図4N