(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】結露抑制包装容器、青果物入り包装体および青果物の鮮度劣化抑制方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240123BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20240123BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240123BHJP
A23B 7/00 20060101ALI20240123BHJP
A23B 7/148 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D85/50 120
B32B27/00 H
A23B7/00 101
A23B7/148
(21)【出願番号】P 2019083143
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大槻 彰良
(72)【発明者】
【氏名】大槻 みどり
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037312(JP,A)
【文献】特開2018-076081(JP,A)
【文献】特開2008-221776(JP,A)
【文献】特開2000-351883(JP,A)
【文献】特開2016-190404(JP,A)
【文献】特開2019-147615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 85/50
B32B 27/00
A23B 7/00
A23B 7/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムで構成された結露抑制包装容器であって、
当該樹脂フィルムは、基材層および当該基材層の片面に設けられたヒートシール層を備え、
当該樹脂フィルムの、引張速度2mm/分での引張試験で測定される引張弾性率は300~1200MPaであり、
当該樹脂フィルムの、40℃、90%RHにおける透湿度は50~350g/(m
2・24h)であり、
前記ヒートシール層の融点は、前記基材層の融点よりも15℃以上低く、
前記樹脂フィルムの前記ヒートシール層同士の動摩擦係数は1.0以下であり、
前記基材層の厚みは5~100μmであり、
前記ヒートシール層の厚みは0.5~
2.5μmである、結露抑制包装容器。
【請求項2】
樹脂フィルムで構成された結露抑制包装容器であって、
当該樹脂フィルムは、基材層および当該基材層の片面に設けられたヒートシール層を備え、
当該樹脂フィルムの、引張速度2mm/分での引張試験で測定される引張弾性率は300~1200MPaであり、
当該樹脂フィルムの、40℃、90%RHにおける透湿度は50~350g/(m
2・24h)であり、
前記ヒートシール層の融点は、前記基材層の融点よりも15℃以上低く、
前記基材層は、ポリアミド系樹脂を含み、
前記基材層の厚みは5~100μmであり、
前記ヒートシール層の厚みは0.5~
2.5μmである、結露抑制包装容器。
【請求項3】
樹脂フィルムで構成された結露抑制包装容器であって、
当該樹脂フィルムは、基材層および当該基材層の片面に設けられたヒートシール層を備え、
当該樹脂フィルムの、引張速度2mm/分での引張試験で測定される引張弾性率は300~1200MPaであり、
当該樹脂フィルムの、40℃、90%RHにおける透湿度は50~350g/(m
2・24h)であり、
前記ヒートシール層の融点は、前記基材層の融点よりも15℃以上低く、
前記ヒートシール層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含み、
前記基材層の厚みは5~100μmであり、
前記ヒートシール層の厚みは0.5~
2.5μmである、結露抑制包装容器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の結露抑制包装容器であって、
前記ヒートシール層の融点は200℃以下である、結露抑制包装容器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の結露抑制包装容器であって、
前記ヒートシール層は前記樹脂フィルムの最表面に存在し、
前記ヒートシール層に対する水の接触角は90°以下である、結露抑制包装容器。
【請求項6】
請求項2または3に記載の結露抑制包装容器であって、
前記樹脂フィルムの前記ヒートシール層同士の動摩擦係数は1.0以下である、結露抑制包装容器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の結露抑制包装容器であって、
前記樹脂フィルムの、引張速度200mm/分での引張試験で測定される引張伸びは200%以上である、結露抑制包装容器。
【請求項8】
請求項1または3に記載の結露抑制包装容器であって、
前記基材層は、ポリアミド系樹脂を含む、結露抑制包装容器。
【請求項9】
請求項1または2に記載の結露抑制包装容器であって、
前記ヒートシール層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む、結露抑制包装容器。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の結露抑制包装容器であって、
袋状であり、前記ヒートシール層が最内層となっている、結露抑制包装容器。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の結露抑制包装容器を用いて青果物を包装した、青果物入り包装体。
【請求項12】
請求項
11に記載の青果物入り包装体であって、
前記青果物は、花菜類、果菜類、茎菜類、根菜類および葉菜類からなる群より選ばれる少なくともいずれかである、青果物入り包装体。
【請求項13】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の結露抑制包装容器を用いて青果物を包装する、青果物の鮮度劣化抑制方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の青果物の鮮度劣化抑制方法であって、
前記青果物は、花菜類、果菜類、茎菜類、根菜類および葉菜類からなる群より選ばれる少なくともいずれかである、青果物の鮮度劣化抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結露抑制包装容器、青果物入り包装体および青果物の鮮度劣化抑制方法に関する。より具体的には、青果物などの水を含む物品または水が付着した物品を包装したときの結露を抑制可能な包装容器、その包装容器で青果物を包装した包装体、結露を抑制可能な包装容器により青果物を包装することで青果物の鮮度劣化を抑制する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
青果物を樹脂フィルム製の包装材で包装する際、青果物の呼吸や蒸散などの作用により、樹脂フィルムに結露が発生することがある。
結露の発生により、青果物が陳列される際の内容物の視認性が悪くなるという問題がある。また、容器内に発生して容器内に溜まった結露は、雑菌やカビの増殖の原因となり、青果物の鮮度保持の観点で好ましくない。よって、包装容器においては結露の発生抑制が望まれる。
青果物以外でも、水を含む物品または水が付着した物品を樹脂フィルム製の包装材で包装する際には、結露発生の抑制が望まれる。
【0003】
一例として、特許文献1には、(a)40~60重量%の少なくとも1種のポリマー、30~50重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)、および少なくとも1種の水分調整剤を含む第一層と、(b)40~60重量%の少なくとも1種のポリマー、第一層および第三層よりも高含量のLDPE、並びに少なくとも1種の水分調整剤を含む第二層と、(c)40~60重量%の少なくとも1種のポリマーおよび30~50重量%のLDPEを含む第三層と、を含む青果物用の包装材が記載されている。
特許文献1によれば、この包装材で青果物を包装することで、包装材内の蓄水や結露を少なくすることができると記載されている。
【0004】
別の例として、特許文献2には、吸放湿層(A)と透湿層(B)を含んでなる積層体が記載されている。吸放湿層(A)は、(a)ポリビニルアルコール系樹脂、または、(b)ポリビニルアルコール系樹脂(X)と、アクリル酸重合体およびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(Y)との樹脂組成物を含む。透湿層(B)は、ポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂を含む。
特許文献2によれば、この積層体は結露を防止し得るとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-522239号公報
【文献】特開2006-321208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
結露抑制包装容器の実用にあたっては、結露抑制性能以外に様々な性能が求められる場合がある。具体的には、ヒートシール性が良好であること、外力により破壊されにくいこと(例えば、ヒートシールまたは溶断された部分が破壊されにくいこと)、等が求められる場合がある。
本発明者が知る限り、結露抑制包装容器の分野において、ヒートシール性や破壊されにくさについては、なお改善の余地があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明は、ヒートシール性が良好であり、かつ、外力により破壊されにくい結露抑制包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0009】
本発明によれば、
樹脂フィルムで構成された結露抑制包装容器であって、
当該樹脂フィルムは、基材層および当該基材層の片面に設けられたヒートシール層を備え、
当該樹脂フィルムの、引張速度2mm/分での引張試験で測定される引張弾性率は300~1200MPaであり、
当該樹脂フィルムの、40℃、90%RHにおける透湿度は50~350g/(m2・24h)であり、
前記ヒートシール層の融点は、前記基材層の融点よりも15℃以上低い、結露抑制包装容器
が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
上記の結露抑制包装容器を用いて青果物を包装した、青果物入り包装体
が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、
上記の結露抑制包装容器を用いて青果物を包装する、青果物の鮮度劣化抑制方法
が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒートシール性が良好であり、かつ、外力により破壊されにくい結露抑制包装容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】結露抑制包装容器を構成する樹脂フィルムの構成の一例を示した図(樹脂フィルムの断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
【0015】
本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差や組立て上のばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0016】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書中の、測定により求められる数値の測定条件については、特に明記の無い限り、25℃での測定である。ただし、明記がある場合はこの限りではない。
【0017】
本明細書には、樹脂フィルムを引張試験にかけることで得られる特性(引張弾性率および引張伸び)が登場する。樹脂フィルムに異方性がある場合、引張弾性率および引張伸びの値としては、MD方向(流れ方向、長さ方向)の値を採用する。
【0018】
<結露抑制包装容器>
図1は、結露抑制包装容器を構成する樹脂フィルムの構成の一例を示した図(樹脂フィルムの断面図)である。
樹脂フィルムは、少なくとも、基材層1、および、基材層1の片面に設けられたヒートシール層2を備える。
樹脂フィルムの、引張速度2mm/分での引張試験で測定される引張弾性率は300~1200MPaである。
樹脂フィルムの、40℃、90%RHにおける透湿度は、50~350g/(m
2・24h)である。
ヒートシール層2の融点は、基材層1の融点よりも15℃以上低い。
【0019】
本発明者は、ヒートシール性を高めるため、上述のように、結露抑制包装容器を構成する樹脂フィルムとして、少なくとも基材層1とヒートシール層2の2層を備えるものを採用した。そして特に、「基材層1の融点-ヒートシール層2の融点」が15℃以上となるようにした。これにより、ヒートシール装置を用いてヒートシールを行ったときに、ヒートシール層2のみが融解し、一方では基材層1は実質的に融解しないようにして、ヒートシール性を高めた。
ヒートシール性が高いということには、容器の開口部を閉じやすいということだけでなく、いわゆる「ピロー袋」を製造しやすいという側面もある。
【0020】
また、本発明者は、樹脂フィルムが「硬すぎる」(柔軟性や変形性が乏しい)と、容器の端部や熱シール部等に外力が集中しやすく、その結果、容器が破壊されやすくなるのではないか、と考えた。そこで、外力により容器が破壊されにくくするための樹脂フィルムの設計として、容器を構成する樹脂フィルムを「適度に伸びる」ものにした。つまり、樹脂フィルムの、引張速度2mm/分での引張試験で測定される引張弾性率を300~1200MPaに設計することで、「容器全体」で外力を吸収できるようにして、外力により破壊されにくいようにした。
【0021】
さらに、本発明者は、樹脂フィルムの、40℃、90%RHにおける透湿度を50~350g/(m2・24h)に設計することで、包装容器内の水分が適度に容器外に放出されるようにして、容器内の結露が抑制されるようにした。
【0022】
樹脂フィルムの、引張弾性率の値、透湿度、基材層1とヒートシール層2との融点差などを適切な値とするためには、例えば、基材層1およびヒートシール層2を構成する素材、樹脂フィルムの製膜方法、基材層1の厚み、ヒートシール層2の厚み、基材層1とヒートシール層2の厚み比率、などを注意深く選択・最適化することが重要である。
素材の観点では、一例として、基材層1にはポリアミド系樹脂を用いること、ヒートシール層2にエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いることなどにより、引張弾性率、透湿度、融点差などを適切な値に設計しやすい。また、樹脂フィルムの製膜方法として共押出インフレーション成形を適用することでも、引張弾性率の値などを適切な値に設計しやすい。これらについては追って詳しく説明する。
【0023】
本実施形態の樹脂フィルムにおいて、各層の「融点」は、例えば、昇温条件:5℃/分、測定温度範囲:25~250℃の示差走査熱量測定(DSC測定)で求められるチャートにおける、融解ピークのピークトップ温度とすることができる。基材層1とヒートシール層2で数℃以上の融点差があるならば、多層構成の樹脂フィルムをサンプルとしてDSC測定したとき、通常、各層の融解ピークは分離して観察される。
【0024】
以下、結露抑制包装容器や、これを構成する樹脂フィルム等についてより具体的に説明する。
【0025】
(基材層1)
基材層1は、包装される青果物を視認可能とする観点から、光透過性を有する樹脂フィルム層であることが好ましい。
【0026】
基材層1は、好ましくは、ポリアミド系樹脂を含む。ポリアミド系樹脂を用いて基材層1を構成することで、特に、樹脂フィルムの、40℃、90%RHにおける透湿度を50~350g/(m2・24h)にしやすい。また、ポリアミド系樹脂をインフレーション成形することで、樹脂フィルムの引張弾性率を300~1200MPaにしやすい。
【0027】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロンが好ましい。ナイロンは、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン6・T、ナイロン6・I、ナイロン9T、ナイロンM5T、ポリメタキシリレンアジパミド(MXDナイロン)、等を、単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12およびナイロン66の単独または二種以上の組み合わせが好ましく、ナイロン6およびナイロン66の単独または二種の組み合わせがさらに好ましい。
【0028】
基材層1中のポリアミド系樹脂の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。基材層1を構成する素材の全て(100質量%)がポリアミド系樹脂であってもよい。
【0029】
基材層1は、必要に応じて、ポリアミド系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。ポリアミド系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、リニヤー低密度ポリエチレン、中・高密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、共重合ポリエステル等)、ボリカーボネート等を挙げることができる。
基材層1がポリアミド系樹脂以外の樹脂を含有する場合、基材層は、その樹脂を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0030】
基材層1は、必要に応じて、アンチブロッキング剤、例えば無機系フィラーを含有してもよい。無機系フィラーとしては、特に限定されない。例えば、ゼオライト、セピオライト、珪藻土、シリカ、シリカゲル、アロブェン、イモゴライト、モンモリロナイト、アタパルジャイト、或いはゾノトライトのような鉱物(無機質結晶体)等を用いてもよい。
【0031】
基材層1は、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、防曇剤、耐衝撃改良剤、加工助剤、静電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐侯劣化防止剤、充填剤、顔料などの添加剤を樹脂フィルムの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0032】
基材層1の融点は、ヒートシール層2の融点より15℃以上高ければよい。基材層1の融点は、例えば170℃以上、好ましくは180℃以上である。現実的な設計として、基材層1それ自体の融点の上限は、250℃以下である。
前述のように、基材層1の融点は、ヒートシール層2の融点より15℃以上高い。より好ましくは、基材層1の融点は、ヒートシール層2の融点より25℃以上高い。現実的な設計として、基材層1の融点とヒートシール層2の融点の差は、40℃以下である。
【0033】
基材層1は、2層以上の多層構成であってもよい。例えば、
図1において、基材層1のヒートシール層2と接する部分近傍をアンチブロッキング剤不含有層とし、基材層1の残りの部分をアンチブロッキング剤含有層としてもよい。別の言い方として、樹脂フィルムを、アンチブロッキング剤含有層(基材層1)-アンチブロッキング剤不含有層(基材層1)-ヒートシール層2の順の積層構造としてもよい。こうすることで、基材層1とヒートシール層2との密着性を高めつつ、一方では、樹脂フィルム/包装容器外面のブロッキング抑制や滑り性向上を図ることができる。
【0034】
基材層1を2層以上の多層構成とする場合、各層が含む樹脂は同一であっても異なっていてもよい。例えば、樹脂としては同じポリアミド系樹脂を含み、アンチブロッキング剤の有無のみが異なる2層により基材層1が構成されてもよい。
【0035】
基材層1の厚みは、好ましくは5~100μm、より好ましくは5~95μm、さらに好ましくは5~90μmである。基材層1が2層以上の多層構成である場合には、合計厚みがこの範囲に収まることが好ましい。
基材層1の厚みを5μm以上とすることで、包装容器として十分な強度を得やすい。基材層1の厚みを100μm以下とすることで、容器全体をより柔軟としやすい。
【0036】
(ヒートシール層2)
ヒートシール層2は、その融点が基材層1の融点よりも15℃以上低い限り、特に限定されない。例えば、公知の熱可塑性樹脂の中から、融点が比較的低いものを素材として選択して、ヒートシール層2を構成することができる。熱可塑性樹脂としては、ビニルアルコール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、これらの2種以上の組合せ、等が挙げられる。
ヒートシール層2は、包装される青果物を視認可能とする観点から、光透過性を有する樹脂フィルム層であることが好ましい。
【0037】
ヒートシール層2を構成する樹脂としては、ビニルアルコール系樹脂が好ましい。ビニルアルコール系樹脂としては、脂肪酸ビニルエステル系重合体(単独又は共重合体)のケン化物、部分アセタール化ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール-エチレンスルホン酸共重合体、ビニルアルコール-マレイン酸共重合体などが挙げられる。これらのビニルアルコール系樹脂は、単独で用いられてもよいし、二種以上が併用されてもよい。
【0038】
ビニルアルコール系樹脂の中でも、特にエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、例えば、(i)融点やヒートシール時の強度の高さ、(ii)基材層1との密着性の高さ(特に基材層1がポリアミド系樹脂を含む場合)、(iii)ヒートシール層2に防曇剤などの添加剤を含める場合に白濁しにくい、などの理由から、ヒートシール層2の構成素材として好ましく選択される。
【0039】
エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂中のエチレンコンテントは、好ましくは20~48mol%、より好ましくは40~48mol%である。エチレンコンテントを調整することで、ヒートシール性を一層高めたり、透湿度を調整したりすることができる。
【0040】
ヒートシール層2は、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、それ以外の樹脂を含んでもよい。それ以外の樹脂としては、例えば上述の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0041】
ヒートシール層2は、ヒートシール性の観点から、通常、樹脂フィルムの最表面に存在する。また、結露抑制包装容器において、ヒートシール層2は、通常、最内層である。
【0042】
ヒートシール層2に対する水の接触角は、好ましくは90°以下、より好ましくは88°以下、さらに好ましくは86°以下である。この値が90°以下であることで、ヒートシール層2に付着した水が水滴状になりにくい。そして、結露が一層抑制される。
水の接触角の測定については、例えば、協和界面科学社製、DROPMASTER-501等の市販の接触角計を使用し、測定対象表面に精製水2μLを着滴させて7秒後の水接触角を、液滴法にて測定することができる。
【0043】
ヒートシール層2の融点は、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃以下である。下限は、例えば100℃以上である。
【0044】
ヒートシール層2の動摩擦係数を適切に設計することにより、樹脂フィルム同士の滑りが良くなる。これにより、特に包装容器が袋状である場合、袋を開きやすくなる。袋を開きやすくなることにより、物品包装の作業性・効率性向上等のメリットがある。
具体的には、ヒートシール層2同士の動摩擦係数は、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下である。この動摩擦係数の下限は、現実的には0.05以上である。
動摩擦係数は、JIS K 7125の規定に準じて測定することができる。
【0045】
ヒートシール層2は、防曇剤を含んでもよい。これにより結露を一層抑制することができる。
防曇剤は、好ましくは非イオン系界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド等を挙げることができる。これらの中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0046】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えばその構成脂肪酸の70質量%以上が炭素数12~18、好ましくは炭素数12~16の飽和及び/又は不飽和脂肪酸、より好ましくは飽和脂肪酸である。また、重縮合度(重縮合度に分布がある場合は最も多い成分の重縮合度)が4~20、且つモノエステルが50mol%以上のものが好ましい。
具体的な構成脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギジン酸、オレイン酸、エライジン酸、リシノレイン酸、2-ブチルオクタン酸、2-ヒドロキンデカン酸等が挙げられる。さらに具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸の単独又は2種以上を全構成脂肪酸の70質量%以上含有するものが好ましく、残りはカプリン酸やカプリル酸等の炭素数10以下および/又はステアリン酸やアラキジン酸等の炭素数18以上の飽和脂肪酸を、或いはミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。
【0047】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノベヘネート、ジグリセリンセスキオレート、ジグリセリンセスキラウレート、ジグリセリンセスキステアレート、ジグリセリンセスキパルミテート、ジグリセリンセスキベヘネート、ジグリセリンジオレート、ジグリセリンジラウレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンジパルミテート、ジグリセリンジベヘネート、トリグリセリンオレート、トリグリセリンラウレート、テトラグリセリンオレート、テトラグリセリンステアレート、ヘキサグリセリンラウレート、ヘキサグリセリンオレート、デガグリセリンオレート、デカグリセリンラウレート等が挙げられる。これらのうち、デカグリセリンラウレートは、防曇性が高く樹脂との相溶性も高いので好ましい。
【0048】
非イオン性界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、それ以外の非イオン性界面活性剤との併用であってもよい。併用する非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオレイン酸エステル、ポリエチレングリコールラウリン酸エステル、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリルエーテル等が挙げられる。
【0049】
防曇剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
防曇剤を用いる場合、その使用量は、十分な防曇効果を得る観点から、ヒートシール層2中、1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましい。一方、良好な透明性やべたつき抑制の観点から、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.5質量%以下がさらに好ましい。
別観点として、ヒートシール層2中の樹脂の含率は、ヒートシール層2中、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。ヒートシール層2が十分な量の樹脂を含むことで、ヒートシール性をより高めることができる。また、ヒートシール層2と基材層1との密着性をより高めることもできる。
【0050】
ヒートシール層2は、ヒートシール性などを過度に損なわない範囲で、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、耐衝撃改良剤、加工助剤、静電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐侯劣化防止剤、無機粒子、充填剤、顔料等の添加剤を含んでもよい。
【0051】
また、ヒートシール層2は、ブロッキング防止や水の接触角調整などのために、ゼオライト、セピオライト、珪藻土、シリカ、シリカゲル、アロブェン、イモゴライト、モンモリロナイト、アタパルジャイト、或いはゾノトライトのような鉱物または無機粒子を、ヒートシール性などの性能を過度に損なわない範囲で含んでもよい。
【0052】
ヒートシール層2の厚みは、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは1~19.5μm、さらに好ましくは1.5~19μmである。
ヒートシール層2の厚みが0.5μm以上であることで、ヒートシール性を十二分に得やすく、容器の強度をより高めやすい。また、ヒートシール層2が防曇剤を含む場合には、その効果が十分に発現しやすい。
ヒートシール層2の厚みが20μm以下であることで、包装された青果物から放出された水蒸気が容器外に排出されやすくなり、結露防止や鮮度保持の点で好ましい。
【0053】
(その他の層)
結露抑制包装容器を構成する樹脂フィルムは、樹脂フィルムとしての引張弾性率や透湿度が前述の数値範囲に収まる限り、基材層1およびヒートシール層2に加え、その他の層を備えていてもよい。
【0054】
例えば、基材層1とヒートシール層2との間に、中間層があってもよい。中間層は、例えば、基材層1とヒートシール層2の接着性の向上や、フィルム/容器のクッション性の向上などのために設けられる。
基材層1とヒートシール層2の接着性向上の観点では、中間層は、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン、変性エチレン・酢酸ビニル共重合体、変性ポリエステル等のいわゆる接着性樹脂を含むことが好ましい。
中間層を設ける場合、その厚みは、例えば1~30μm、好ましくは3~10μmである。中間層の厚みを適切にすることで、密着性などの効果を得つつ、十二分な水蒸気透過性を得やすい。
【0055】
(貫通孔)
樹脂フィルムには、貫通孔が設けられていてもよい。貫通孔があることにより、青果物を包装したときに、その呼吸(酸素の吸収/二酸化炭素の排出)が高度に制御されるなどして、青果物の鮮度をより良好に保持できる傾向がある。
【0056】
1つの結露抑制包装容器は、1個または2個以上の貫通孔を有することができる。貫通孔の数が2個以上であるほうが、温度による青果物の呼吸量変化に応じた、適切な量の外気の取り入れ/内気の排出が行われやすい。
貫通孔の数の上限は、1つの結露抑制包装容器あたり、好ましくは50個以下、より好ましくは40個以下である。貫通孔の数が多すぎないことで、透湿度を適当な数値にしやすいと考えられる。また、Modified Atmosphere(MA環境)と呼ばれる、青果物の鮮度保持に好ましい環境をより容易に得やすいと考えられる。
【0057】
樹脂フィルムに貫通孔を設ける場合、その直径は、好ましくは30~500μm、より好ましくは50~300μm、さらに好ましくは60~200μmである。貫通孔の「直径」とは、貫通孔の形状が略円状とはみなせない場合には、貫通孔の開孔面積と同じ面積を有する真円の直径(円相当径)のことを意味する。貫通孔は、好ましくは略円状または略楕円状であるが、スリット状などであってもよい。孔の直径を適切に設計することで、青果物の鮮度劣化を一層抑えることができると考えられる。
【0058】
樹脂フィルムが複数の孔を有する場合、全ての貫通孔の直径が、上記数値範囲に収まっていることが好ましい。これは、ひとつには製造のしやすさのためである。もちろん、貫通孔が複数存在する場合、一部の貫通孔の直径が30~500μmの範囲外である態様が排除されるわけではない。
【0059】
樹脂フィルムへの穿孔には、例えば、レーザを用いることができる。レーザを用いた穿孔方法については、例えば特許第5889854号公報の記載などを参照されたい。その他の穿孔方法として、熱針による穿孔なども可能である。
【0060】
(樹脂フィルムの引張弾性率)
前述のように、樹脂フィルムの、引張速度2mm/分での引張試験で測定される引張弾性率は、300~1200MPaである。この値は、好ましくは310~1190MPa、より好ましくは320~1180MPa、さらに好ましくは330~1170MPaである。引張弾性率が1200MPa以下であることで、樹脂フィルムが外力に対して「適度に伸びる」こととなり、容器の端部や熱シール部のみに力が集中せず、容器全体で外力を吸収しやすい。一方、引張弾性率が300MPa以上であることで、樹脂フィルムそれ自体の強度が担保される。
引張弾性率は、JIS K 7161(2014)に準拠して、ダンベル形の試験片を引っ張ることで求めることができる。
【0061】
(樹脂フィルムの引張伸び)
樹脂フィルムの、引張速度200mm/分での引張試験で測定される引張伸びは、好ましくは200%以上、より好ましくは205%以上である。この値の上限は、例えば800%以下である。引張伸びが200%以上となるように樹脂フィルムを設計することで、容器の破壊を一層抑制することができる。
引張伸びは、JIS K 7161(2014)に準拠して、ダンベル形の試験片を引っ張ることで求めることができる。
【0062】
(樹脂フィルムの透湿度)
前述のように、樹脂フィルムの、40℃、90%RHにおける透湿度は、50~350g/(m2・24h)である。この透湿度は、好ましくは52~345g/(m2・24h)、さらに好ましくは54~340g/(m2・24h)である。透湿度が適切であることにより、結露抑制能だけでなく、青果物を包装したときの青果物の呼吸が適切に調整され、青果物の鮮度保持効果が高められる。
本実施形態において、透湿度としては、貫通孔を有しない樹脂フィルムで測定される値を採用する。換言すると、樹脂フィルムが貫通孔を有する場合は、貫通孔が無い部分における透湿度が上記数値範囲内である。樹脂フィルムそのものの特性として透湿度が適切な数値範囲内にあることにより、良好な結露抑制能などが得られる。
ちなみに、本発明者らの知見として、貫通孔は、(孔径が極端に大きかったり、孔数が極端に多かったりしない限り)フィルム全体としての透湿度にはさほど大きな影響を与えない。
透湿度は、JIS Z 0208に準拠して、カップ法により求めることができる。
【0063】
(樹脂フィルムの製法)
結露抑制包装容器を構成する樹脂フィルムは、引張弾性率などを適切に調整する観点から、適切な製法により製造されることが好ましい。
【0064】
具体的には、樹脂フィルムは、共押出インフレーション法により製造されることが好ましい。
共押出インフレーション法は、典型的には以下(1)~(3)のような要領で行われる。共押出インフレーション法により、筒状の樹脂フィルムを製造することができる(巻き取り前または巻き取り後に筒状のフィルムを切り開けば、平らな樹脂フィルムを得ることができる)。
当然ながら、共押出インフレーション法を行うに当たっては、以下で明記していない公知技術を適宜適用することができる。
【0065】
(1)まず、リング状のダイス(複数の溶融樹脂を積層して押出可能なもの)を用いて、少なくとも基材層1の材料の溶融物とヒートシール層2の材料との溶融物との二層からなる、チューブ状の溶融樹脂を押し出す。
(2)次に、そのチューブ状の溶融樹脂内に空気を送り込んで「膨張」させる。空気は、例えばリング状のダイスの中央に設置された空気孔から吹き込むことができる。膨張した樹脂を、自然に、または意図的に風を当てるなどして冷却し、膨張の度合い、樹脂配向、樹脂の結晶化度などを調整してもよい。
(3)膨張したチューブ状の樹脂(筒状のフィルム)を、適当なガイド装置、ロール装置、巻き取り装置などを用いて、引っ張りつつ、巻き取る。
【0066】
上記のような共押出インフレーション法においては、ダイスの径、樹脂の溶融温度、溶融物の吐出量、ダイスの温度、製膜スピード、送り込む空気の量/圧力/温度などを調整することで、樹脂フィルムの幅、厚み、その他諸物性を調整することができる。
一例として、上記(1)において、樹脂の溶融温度および/またはダイスの温度を190~230℃程度とすること、また、上記(2)において、送り込む空気の温度を50℃以下にすること、製膜スピードを45~75m/分程度とすることなどにより、適度な弾性率や透湿度を有する樹脂フィルムを得ることができる。
【0067】
参考までに、本発明者の知見によれば、二軸延伸法などによる製膜では、引張弾性率が1200MPaを超えがちである。延伸により樹脂が「配向しすぎる」ためと推測される。
空気を吹き込むという方法で樹脂フィルムを製膜することで、樹脂が過度に配向することがなく(樹脂の配向が適度に乱雑になり)、特に引張弾性率を300~1200MPaとしやすいと考えられる。
【0068】
(包装容器の形状、袋状とする方法など)
前述のように、結露抑制包装容器において、ヒートシール層2は、通常、最内層である。
結露抑制包装容器の形状や大きさは、青果物を包装可能である限り特に限定されない。包装容器の形状は、典型的には袋状である。包装容器が袋状である場合、その形状は、二方シール袋、三方シール袋、四方シール袋、スタンディングパウチ等、任意の形状であることができる。
あくまで一例であるが、包装容器の大きさは、一般消費者向けの青果物の包装用途では、120mm×200mm~250mm×350mm程度の大きさとすることができる。
結露抑制包装容器の少なくとも一部は、上述の多層構成の樹脂フィルムにより構成される。結露抑制包装容器は、実質的に上述の多層構成の樹脂フィルムのみにより構成されてもよい。
【0069】
一例として、前述の共押出インフレーション法により筒状の樹脂フィルムを製造した場合には、その樹脂フィルムを筒状のまま溶断するなどして、袋状の結露抑制包装容器を製造してもよい。または、平らな(筒状ではない)1枚の樹脂フィルムを、ヒートシール層2が内側になるように折り返し、その後溶断するなどして、袋状の結露抑制包装容器を製造してもよい。さらに、いわゆる「ピロー袋」タイプの結露抑制包装容器を製造してもよい。
(「溶断」とは、2枚の樹脂フィルムを重ね合わせ、それら樹脂フィルムを融点以上に加熱しながら切断することで、2枚の樹脂フィルムの熱融着と切断を同時に行うことである。)
溶断により袋体を製造する方法については、公知技術を適宜適用することができる。公知技術としては、例えば特開2016-37312号公報の段落0048~0050および
図2の記載などを挙げることができる。
【0070】
結露抑制包装容器には、何らかの印刷がなされていてもよい。例えば、内容物の種類や産地を示すための文字、各種の商標・ロゴマークなどが印刷されていてもよい。
【0071】
<青果物入り包装体、青果物の鮮度劣化抑制方法>
上述の結露抑制包装容器を用いて青果物を包装することで、青果物入り包装体を得ることができる。また、上述の結露抑制包装容器を用いて青果物を包装することで、青果物の鮮度劣化を抑制することができる。
青果物の包装は、具体的にはヒートシール法により行う。既に述べたように、上述の結露抑制包装容器のヒートシール性は良好である。ヒートシールは、適当なヒートシール装置を用いて行うことができる。
【0072】
上述の結露抑制包装容器を用いて青果物を包装することで、内部の青果物から放出された水蒸気による結露の発生が抑制される。結露が抑制されることにより、カビや雑菌の繁殖が抑制され、青果物の鮮度劣化抑制につながる。
また、上述の結露抑制包装容器を構成する樹脂フィルムの、40℃、90%RHにおける透湿度が50~350g/(m2・24h)であることにより、容器内の気体が適度に換気される。このことも青果物の鮮度劣化抑制につながる。
さらに、上述の結露抑制包装容器を用いて得られた青果物入り包装体は、丈夫であり、破壊されにくい。このことは、青果物の流通性などの点で好ましい。
【0073】
包装対象の青果物は特に限定されない。青果物は、例えば、花菜類、果菜類、茎菜類、根菜類および葉菜類からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることができる。
花菜類として具体的には、ブロッコリー、カリフラワー、食用菊、フキノトウ、ミョウガ、アブラナ(菜の花)などを挙げることができる。
果菜類として具体的には、ナス、トマト、ピーマン、パプリカ、トウガラシ、シシトウガラシ、カボチャ、ズッキーニ、キュウリ、ツノニガウリ(キワノ)、シロウリ、ツルレイシ(ゴーヤ、ニガウリ)、トウガン、ヘチマ、ユウガオ、オクラなどを挙げることができる。
茎菜類として具体的には、アスパラガス、ウド、コールラビ、ザーサイ、タケノコ、ヨウサイ(クウシンサイ)、ルバーブなどを挙げることができる。
根菜類として具体的には、カブ、ダイコン、ハツカダイコン、クワイ、ゴボウ、ヤーコン、チョロギ、ショウガ、パースニップ、セロリアック、ニンジン、レンコン、ビート、ユリ根、サツマイモ、サトイモ、ジャガイモ、ナガイモ(大和芋)、ヤマノイモなどを挙げることができる。
葉菜類として具体的には、アイスプラント
エンダイブ(キクヂシャ)、カラシナ、オランダガラシ(クレソン)、キャベツ、メキャベツ、ケール(ハゴロモカンラン)、コマツナ、コリアンダー(パクチー)、サイシン、シマツナソ(モロヘイヤ)、シュンギク、セリ、セロリ、タアサイ、タカナ、チンゲンサイ、ツルムラサキ、ノザワナ、ハクサイ、パセリ(オランダゼリ)、フダンソウ(スイスチャード)、ホウレンソウ、ミズナ、ミブナ、ミツバ、ルッコラ、レタス(チシャ)、アサツキ、エシャロット、タマネギ、チャイブ、ニラ、ニンニク、ネギ、ラッキョウ、リーキ、ワケギなどを挙げることができる。
【0074】
上述の結露抑制包装容器は、特に青果物の包装に適しているが、青果物以外の物品を包装しても問題ない。すなわち、包装対象物は、青果物のように自身の呼吸に伴って水分を放出する物品に限られず、水分を含有する物品や水分が付着した物品であればよい。このような物品を上述の結露抑制包装容器で包装することで、包装後の結露が抑制される。また、包装体の破壊が抑制される。
【0075】
青果物以外の包装対象物品としては、肉、魚、洋菓子、パン等の加工食品、干し柿等乾燥させたが完全には水分がなくなっていない食品、包装袋に入れた際に内容物が含有する水分によって結露が発生する食品、等が挙げられる。また、食品以外の物品、例えば木材、衣類、医薬品、工業用材料などであってもよい。
また、冷凍または冷蔵により冷やされているために表面に結露が発生した物品、洗浄や包装前の結露により表面が濡れた状態の物品なども、包装対象となりうる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
樹脂フィルムで構成された結露抑制包装容器であって、
当該樹脂フィルムは、基材層および当該基材層の片面に設けられたヒートシール層を備え、
当該樹脂フィルムの、引張速度2mm/分での引張試験で測定される引張弾性率は300~1200MPaであり、
当該樹脂フィルムの、40℃、90%RHにおける透湿度は50~350g/(m
2
・24h)であり、
前記ヒートシール層の融点は、前記基材層の融点よりも15℃以上低い、結露抑制包装容器。
2.
1.に記載の結露抑制包装容器であって、
前記ヒートシール層の融点は200℃以下である、結露抑制包装容器。
3.
1.または2.に記載の結露抑制包装容器であって、
前記ヒートシール層は前記樹脂フィルムの最表面に存在し、
前記ヒートシール層に対する水の接触角は90°以下である、結露抑制包装容器。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載の結露抑制包装容器であって、
前記樹脂フィルムの前記ヒートシール層同士の動摩擦係数は1.0以下である、結露抑制包装容器。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載の結露抑制包装容器であって、
前記樹脂フィルムの、引張速度200mm/分での引張試験で測定される引張伸びは200%以上である、結露抑制包装容器。
6.
1.~5.のいずれか1つに記載の結露抑制包装容器であって、
前記基材層は、ポリアミド系樹脂を含む、結露抑制包装容器。
7.
1.~6.のいずれか1つに記載の結露抑制包装容器であって、
前記ヒートシール層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む、結露抑制包装容器。
8.
1.~7.のいずれか1つに記載の結露抑制包装容器であって、
前記基材層の厚みは5~100μmである、結露抑制包装容器。
9.
1.~8.のいずれか1つに記載の結露抑制包装容器であって、
前記ヒートシール層の厚みは0.5~20μmである、結露抑制包装容器。
10.
1.~9.のいずれか1つに記載の結露抑制包装容器であって、
袋状であり、前記ヒートシール層が最内層となっている、結露抑制包装容器。
11.
1.~10.のいずれか1つに記載の結露抑制包装容器を用いて青果物を包装した、青果物入り包装体。
12.
11.に記載の青果物入り包装体であって、
前記青果物は、花菜類、果菜類、茎菜類、根菜類および葉菜類からなる群より選ばれる少なくともいずれかである、青果物入り包装体。
13.
1.~10.のいずれか1つに記載の結露抑制包装容器を用いて青果物を包装する、青果物の鮮度劣化抑制方法。
14.
13.に記載の青果物の鮮度劣化抑制方法であって、
前記青果物は、花菜類、果菜類、茎菜類、根菜類および葉菜類からなる群より選ばれる少なくともいずれかである、青果物の鮮度劣化抑制方法。
【実施例】
【0077】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0078】
<樹脂フィルムの製造>
[実施例1]
素材として以下を準備した。
・素材1:第一基材層の素材
宇部興産社製のポリアミド樹脂材料 5033FDX27(ナイロン6-66共重合体、シリカ粒子(アンチブロッキング剤)を10000ppm以下含有)
・素材2:第二基材層の素材
宇部興産社製のポリアミド樹脂材料 5033X80(ナイロン6-66共重合体)
・素材3:ヒートシール層の素材
クラレ社製のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH) E173B
【0079】
3層の共押出が可能な空冷式インフレーション用の装置の押出機部分(3箇所)に、それぞれ、上記3種の素材を投入して加熱溶融した(押出機温度:素材1および素材2は220℃、素材3は200℃)。これら溶融した素材を、220℃に加熱されたリング状のダイスに押し出した。そして、ダイスから、各素材の溶融物の3層からなるチューブ状の溶融樹脂(外側から、第一基材層、第二基材層、ヒートシール層の順)を押し出した。
押し出されたチューブ状の溶融樹脂内に、50℃以下の空気を送り込んで、溶融樹脂を膨張させつつ製膜し、60m/分の製膜速度で樹脂フィルムを得た。その他の各種条件については、最終的に得られるフィルムの全体厚みが25μm、各層の厚み比率が、第一基材層:第二基材層:ヒートシール層=15%、75%、10%となるように適宜調整した。
【0080】
[実施例2~5および比較例1~2]
各層の素材および厚みを表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂フィルムを得た。
【0081】
[比較例3]
ユニチカ社の延伸ナイロンフィルム(品番:ON)の片面に、日本曹達社のアンカーコート剤(品番:チタボンド(登録商標)T-180Eを塗布してアンカーコート層を形成した。そして、その上に更に三菱ケミカル社のエチレン-ビニルアルコール共重合体(品番:ソアノール(商標)16DX)を塗布してヒートシール層を形成した。以上により樹脂フィルムを得た。
【0082】
<各種物性の測定>
(引張弾性率)
JIS K 7161(2014)に準拠して、上記で得た樹脂フィルムをダンベル型に切り取ったものを試験片として、引張速度2mm/分で引張試験を行い、MD方向の引張弾性率を求めた。装置としては、エー・アンド・デイ社製「TENSILON RTG-1310」を用いた。
【0083】
(透湿度(40℃、90%RH))
JIS Z 0208に準拠して、カップ法により求めた。
【0084】
(融点の測定)
上記で得られた樹脂フィルムの一部を切り出して測定サンプルとした。
この測定サンプルを、SII社の示差走査熱量測定装置(品番:DSC6220)にセットし、昇温条件:5℃/分、25~250℃の条件で測定し、DSC曲線を得た。曲線のプロットやデータの解析は、装置に付属のSII社のソフトウェアにより行った。
DSC曲線における融解ピークのピークトップ温度を融点として採用した。
【0085】
念のため述べておくと、各実施例および比較例のDSC曲線において、融解ピークは2つ観察された。2つの融解ピークのうち温度が低いほうがヒートシール層の融点に、温度が高いほうが基材層の融点に相当する。
実施例1~5においては、異なる品番の素材により第一基材層と第二基材層が設けられているが、基材層の融点として観察された融解ピークは1つだった。これについては、第一基材層と第二基材層の違いはシリカ粒子の含有有無のみであり、ナイロン6-66共重合体自体は第一基材層と第二基材層で実質的に同じであったためと考えられる。
【0086】
(ヒートシール層の水の接触角)
水平なステージ上に、ヒートシール層を上面にして樹脂フィルムを静置した。そして、協和界面科学社製、DROPMASTER-501等の市販の接触角計を使用し、測定対象表面に精製水2μLを着滴させて7秒後の水接触角を、液滴法にて測定した。
【0087】
(ヒートシール層同士の動摩擦係数)
JIS K 7125に準拠して、ヒートシール層同士の動摩擦係数を測定した。
【0088】
(引張伸び)
上記「引張弾性率」の試験において、引張速度を200mm/分に変更した以外は同様にして引張試験を行い、MD方向の引張伸びを求めた。
【0089】
フィルムの層構成に関する情報や、上記の各種物性の測定結果をまとめて表1に示す。
表1中の「EVOH」は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を意味する。
【0090】
【0091】
<性能評価>
(ヒートシール性)
樹脂フィルムのヒートシール層同士を重ねて、ヒートシール層の樹脂が溶融する温度(実施例1~5および比較例3:170℃、比較例1および2:130℃)で2秒、2MPaの圧力でバーシールし、幅15mmのヒートシール部が形成された試験片を作成した。
次いで、引張試験機(エー・アンド・デイ社製「TENSILON RTG-1310」)を用いて、試験片を引きはがしたときの剥離力を測定した。
そして、以下の基準により、ヒートシール性を判定した。
・良好:剥離力が600g/15mm以上であり、かつ、バーシールの際に装置側に樹脂の付着が無かった
・不良:剥離力が600g/15mm未満であった、かつ/または、バーシールの際に装置側に樹脂の付着があった。
【0092】
(袋の丈夫さ)
溶断刃温度:430℃、溶断刃角度:90°の条件で、2枚の樹脂フィルムを溶断シールして包装袋を作製した。作製した包装袋から、溶断シール部分が試料長さ方向に垂直方向となるように、幅(TD方向)15mm、長さ(MD方向)100mmの試験片を切り出した。
この試験片を、エー・アンド・デイ社製「TENSILON RTG-1310」を用いて、200mm/分の速度で、チャック間の長さが200%伸びるまで、長さ方向に引っ張った。そして、以下基準により評価した。
・良:樹脂フィルムや溶断シール部分の破断が見られなかった。
・溶断シール部破壊:溶断シール部分が破断した。
・樹脂フィルム破断:樹脂フィルム部分が破断した。
【0093】
(袋の開きやすさ)
実施例1~5および比較例1~3のフィルムごとに、三方が溶断された、サイズ200mm×300mmの袋を作製した。溶断は、溶断刃温度:430℃、溶断刃角度:90°の条件での溶断により行った。
作製された袋の開口が開きにくくないかをパネラーが評価した。具体的には、開口部を拡げて袋内に物品を入れようとする際、フィルム同士の引っ掛かりや貼り付きが無いまたは許容レベルであり、ストレスなく開口部を拡げることができるかどうかを評価した。
評価は、10人のパネラーで行い、7人以上が「ストレスなく開口部を拡げることができる」と評価した場合を「良」、そうでない場合を「不良」とした。
【0094】
ヒートシール性、袋の丈夫さおよび袋の開きやすさの評価結果を、まとめて表2に示す。
【0095】
【0096】
(結露防止性および青果物の鮮度保持性:サツマイモ(根菜類))
まず、実施例1~5および比較例1~3のフィルムを用いて、三方が溶断された、サイズ200mm×300mmの袋を作製した。袋は、フィルムごとに20袋作製した。溶断は、溶断刃温度:430℃、溶断刃角度:90°の条件での溶断により行った。
作製した袋(20袋×8=160袋)にサツマイモを入れ、袋の開口をヒートシールで閉じて評価用サンプルを作成した。サツマイモの重量は500g/袋とした。
評価用サンプルを用いて、以下のようにして、結露防止性および青果物の鮮度保持性を評価した。
【0097】
・結露防止性
評価用サンプルを14℃の環境下に置いて24時間保管したときの、袋内面に付着した水滴の程度を、10人のパネラーが以下4段階で評価した。そして、各パネラーの点数の平均点を算出した。
4:水滴は全く付着していない。
3:水滴は若干付着しているが、袋内部の視認性に影響無し。
2:水滴が付着し、所々視認性が悪い箇所が存在する。
1:水滴により、袋全体として視認性が悪い。
【0098】
また、評価用サンプルを14℃の環境下で4週間保管した後のサツマイモの鮮度保持性、具体的には「カビ発生率」「萎れ」および「変色」を、以下の尺度で評価した。
【0099】
・カビ発生率
20袋中のカビが発生した袋の数で評価した。
・萎れ
20袋中、カビが発生しなかった袋の中のサツマイモの萎れ具合を、10人のパネラーが以下4段階で評価した。そして、各パネラーの点数の平均点を算出した。
4:新鮮
3:購買限界(パネラーが「購入してもよい」と考える最低限のレベル)
2:消費限界(パネラーが「食用できる」と考える最低限のレベル)
1:食用不可
・変色
20袋中、カビが発生しなかった袋の中のサツマイモの変色具合を、10人のパネラーが以下4段階で評価した。そして、各パネラーの点数の平均点を算出した。
4:新鮮
3:購買限界(パネラーが「購入してもよい」と考える最低限のレベル)
2:消費限界(パネラーが「食用できる」と考える最低限のレベル)
1:食用不可
【0100】
(結露防止性および青果物の鮮度保持性:その他青果物)
青果物として、トマト(果菜類)、タケノコ(茎菜類)、ニンニク(葉菜類)またはブロッコリー(花菜類)を用い、袋サイズ、袋に入れる青果物の重量、保管温度および保管期間を以下の表3に記載のようにしたこと、および、表3に記載の径・数の針孔を袋に設けたこと以外は、サツマイモの場合と同様にして、カビ発生率、萎れおよび変色を評価した。
【0101】
【0102】
結露防止性および青果物の鮮度保持性の評価結果を表4にまとめて示す。
【0103】
【0104】
以上の評価結果、特に、表2(ヒートシール性、袋の丈夫さおよび袋の開きやすさの評価結果)および表4(結露防止性および青果物の鮮度保持性)より、以下のことが読み取れる。
【0105】
実施例1~5において、ヒートシール性、袋の丈夫さおよび袋の開きやすさは全て良好であった。
良好なヒートシール性は、基材層に対するヒートシール層の融点が適切に設計されているためと考えられる。
袋の丈夫さは、樹脂フィルムが「硬すぎもせず、柔らかすぎもしない」こと、つまり、樹脂フィルムの引張弾性率が300~1200MPaに設計されているためと考えられる。
袋の開きやすさは、ヒートシール層同士の動摩擦係数が比較的小さいことに起因していると考えられる。
【0106】
一方、比較例1および2においては、袋の丈夫さの評価結果は「樹脂フィルム破断」であった。樹脂フィルムの引張弾性率自体が小さすぎた(300MPaよりも小さかった)ことが原因と考えられる。
比較例2においては、「袋の開きやすさ」の評価が「不良」であった。動摩擦係数の大きさがこの結果に関係していると考えられる。
比較例3においては、袋の丈夫さの評価結果が「溶断シール部破壊」であった。これは、樹脂フィルムの引張弾性率自体が大きすぎた(1200MPa超)、すなわち、樹脂フィルムが「硬すぎた」ために、溶断シール部に力が集中してしまったことが原因と考えられる。
【0107】
実施例1~5においては、全ての青果物で、結露防止性は3点以上、カビ発生率は比較的低く、萎れや変色は3点以上であった。つまり、実施離1~5の包装袋は「結露抑制包装容器」として有用であり、青果物の包装に好ましく使用できることが示された。良好な結露防止性および青果物の鮮度保持性は、樹脂フィルムの透湿度が適切に設計されているためと考えられる。
一方、比較例1および2においては、青果物の種類によっては結露防止性や変色が「2点台」であり、また、全ての青果物でカビ発生率が10(個)を超えてしまった。この結果は、樹脂フィルムの透湿度が小さすぎたためと考えられる。
比較例3においては、結露防止性や青果物の鮮度保持性は良好であった。しかし、前述のように、比較例3は、ヒートシール性や袋の丈夫さの点で実施例1~5に劣っていた。
ちなみに、比較例1および2の、トマト、タケノコ、ニンニクおよびブロッコリーの評価では、袋に針孔を設けたにもかかわらず、結露防止性が悪かったり、カビの発生率が高かったりした。これら結果より、「樹脂フィルム自体」の透湿度が結露防止性などの性能向上に重要であることが推察される。
【0108】
まとめると、実施例および比較例から、ヒートシール性が良好であり、かつ、外力により破壊されにくい「結露抑制包装容器」を得るには、(i)基材層に対するヒートシール層の融点が適切に設計されること、(ii)樹脂フィルムの引張弾性率が適度な大きさであること、および、(iii)樹脂フィルムの透湿度が適度な大きさであること、の3点が重要であることが理解できる。
【符号の説明】
【0109】
1 基材層
2 ヒートシール層