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特許7423916信号処理装置、信号処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】信号処理装置、信号処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H03G 5/02 20060101AFI20240123BHJP
   G10H 1/12 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H03G5/02 025
G10H1/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019113382
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2020205564
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】金 秀成
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-130944(JP,A)
【文献】特開2005-37759(JP,A)
【文献】特開平3-274914(JP,A)
【文献】特開平10-171454(JP,A)
【文献】特開2017-72623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H1/00-1/16
H03G5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音信号入力部と、
音信号に所定の音響効果を付加するエフェクタの設定周波数の設定を指示する指示部と、
前記指示部からの指示に基づいて、前記音信号入力部から入力された音信号であって、楽器を演奏した対象の音である音信号の周波数を特定し、特定した前記音信号の周波数を前記エフェクタの設定周波数に設定する設定処理部と
を備え
前記設定処理部は、
前記音信号入力部から入力された音信号に含まれる周波数を抽出し、抽出した周波数が単一周波数でなく、抽出した周波数が、前記音信号の基音及び当該基音の整数倍の倍音を含む倍音列を構成していない場合に、設定周波数を正常に特定できなかったと判定し、
前記音信号の周波数を特定できない場合に、前記設定周波数の設定を更新しない
号処理装置。
【請求項2】
前記設定処理部が設定した前記設定周波数に基づいて、前記所定の音響効果を付加する前記エフェクタと、
前記エフェクタによって前記所定の音響効果が付加された出力音信号を出力する音信号出力部と
を備える請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記エフェクタは、前記音信号入力部から入力された音信号に音響効果を付加する
請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記エフェクタには、少なくともパラメトリックイコライザ、ハイパスフィルタ、及びローパスフィルタのうちのいずれか一つが含まれる
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記設定処理部は、前記音信号の基音及び倍音を含む倍音列の周波数を特定し、特定した前記倍音列の周波数を前記エフェクタの設定周波数に設定する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
指示部が、音信号に所定の音響効果を付加するエフェクタの設定周波数の設定を指示し、
設定処理部が、前記指示部からの指示に基づいて、音信号入力部から入力された音信号であって、楽器を演奏した対象の音である音信号の周波数を特定し、特定した前記音信号の周波数を前記エフェクタの設定周波数に設定し、
前記設定処理部が、
前記音信号入力部から入力された音信号に含まれる周波数を抽出し、抽出した周波数が単一周波数でなく、抽出した周波数が、前記音信号の基音及び当該基音の整数倍の倍音を含む倍音列を構成していない場合に、設定周波数を正常に特定できなかったと判定し、
前記音信号の周波数を特定できない場合に、前記設定周波数の設定を更新しない
信号処理方法。
【請求項7】
音信号入力部と、音信号に所定の音響効果を付加するエフェクタの設定周波数の設定を指示する指示部とを備える信号処理装置のコンピュータに、
前記指示部からの指示に基づいて、前記音信号入力部から入力された音信号であって、楽器を演奏した対象の音である音信号の周波数を特定する周波数特定ステップと、
前記周波数特定ステップによって特定された前記音信号の周波数を前記エフェクタの設定周波数に設定する周波数設定ステップと
を実行させるためのプログラムであり、
前記周波数特定ステップにおいて、前記音信号入力部から入力された音信号に含まれる周波数を抽出し、抽出した周波数が単一周波数でなく、抽出した周波数が、前記音信号の基音及び当該基音の整数倍の倍音を含む倍音列を構成していない場合に、設定周波数を正常に特定できなかったと判定し、
前記周波数設定ステップにおいて、前記音信号の周波数を特定できない場合に、前記設定周波数の設定を更新しない
プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、信号処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
パラメータを変更可能なパラメトリックイコライザ(PEQ:Parametric Equalizer)などのエフェクタを用いた信号処理装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2005/0190930号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の信号処理装置では、例えば、PEQなどのエフェクタによる音響効果を付加する周波数を設定する場合に、利用者は設定ツマミなどのコントローラを手動で操作して音を出しながら周波数を確認し、対象の周波数を決定する必要があった。そのため、従来の信号処理装置では、周波数の設定作業が煩雑だった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、信号処理における周波数の設定を容易に行うことができ、利便性を向上させることができる信号処理装置、信号処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、音信号入力部と、音信号に所定の音響効果を付加するエフェクタの設定周波数の設定を指示する指示部と、前記指示部からの指示に基づいて、前記音信号入力部から入力された音信号であって、楽器を演奏した対象の音である音信号の周波数を特定し、特定した前記音信号の周波数を前記エフェクタの設定周波数に設定する設定処理部とを備え、前記設定処理部は、前記音信号入力部から入力された音信号に含まれる周波数を抽出し、抽出した周波数が単一周波数でなく、抽出した周波数が、前記音信号の基音及び当該基音の整数倍の倍音を含む倍音列を構成していない場合に、設定周波数を正常に特定できなかったと判定し、前記音信号の周波数を特定できない場合に、前記設定周波数の設定を更新しない信号処理装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、指示部が、音信号に所定の音響効果を付加するエフェクタの設定周波数の設定を指示し、設定処理部が、前記指示部からの指示に基づいて、音信号入力部から入力された音信号であって、楽器を演奏した対象の音である音信号の周波数を特定し、特定した前記音信号の周波数を前記エフェクタの設定周波数に設定し、前記設定処理部が、前記音信号入力部から入力された音信号に含まれる周波数を抽出し、抽出した周波数が単一周波数でなく、抽出した周波数が、前記音信号の基音及び当該基音の整数倍の倍音を含む倍音列を構成していない場合に、設定周波数を正常に特定できなかったと判定し、前記音信号の周波数を特定できない場合に、前記設定周波数の設定を更新しない信号処理方法である。
【0008】
また、本発明の一態様は、音信号入力部と、音信号に所定の音響効果を付加するエフェクタの設定周波数の設定を指示する指示部とを備える信号処理装置のコンピュータに、前記指示部からの指示に基づいて、前記音信号入力部から入力された音信号の周波数を特定する周波数特定ステップと、前記周波数特定ステップによって特定された前記音信号であって、楽器を演奏した対象の音である音信号の周波数を前記エフェクタの設定周波数に設定する周波数設定ステップとを実行させるためのプログラムであり、前記周波数特定ステップにおいて、前記音信号入力部から入力された音信号に含まれる周波数を抽出し、抽出した周波数が単一周波数でなく、抽出した周波数が、前記音信号の基音及び当該基音の整数倍の倍音を含む倍音列を構成していない場合に、設定周波数を正常に特定できなかったと判定し、前記周波数設定ステップにおいて、前記音信号の周波数を特定できない場合に、前記設定周波数の設定を更新しないプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信号処理における周波数の設定を容易に行うことができ、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態による信号処理装置の一例を示すブロック図である。
図2】本実施形態におけるPEQの周波数設定処理の一例を示すフローチャートである。
図3】本実施形態におけるPEQのパラメータの調整処理の一例を示すフローチャートである。
図4】本実施形態における信号処理装置のPEQの設定処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態における信号処理装置のPEQの設定処理の一例を示す図である。
図6】本実施形態におけるPEQの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による信号処理装置、及び信号処理方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による信号処理装置1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、信号処理装置1は、音信号入力部11と、PEQ12と、音信号出力部13と、周波数指定スイッチ14と、調整スイッチ15と、設定処理部16とを備える。
【0012】
音信号入力部11は、入力端子や入力コネクタなどであり、入力された音信号(入力音信号)を受け付け、入力音信号を、PEQ12及び設定処理部16に出力する。
【0013】
PEQ(Parametric Equalizer)12(エフェクタの一例)は、音信号入力部11が受け付けた入力音信号に所定の音響効果を付加する。PEQ12は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)を備え、DSPによるデジタル信号処理によりパラメトリックイコライザの機能を実現する。PEQ12は、例えば、設定された周波数(設定周波数)及びパラメータに基づいて、設定周波数を中心とした所定の範囲の信号レベルを増幅又は低減する音響処理を実行する。
【0014】
ここで、設定周波数は、例えば、PEQ12による音響効果を付加する処理を実行する中心周波数である。PEQ12は、入力音信号に所定の音響効果を付加した音信号を音信号出力部13に出力する。PEQ12のパラメータには、信号レベルを増幅又は低減するゲイン、及びゲイン設定する帯域幅を定めるQ値などが含まれる。
【0015】
音信号出力部13は、例えば、出力端子や出力コネクタなどのであり、PEQ12によって所定の音響効果が付加された音信号(出力音信号)を外部に出力する。なお、音信号出力部13は、例えば、DAC(Digital to Analog Converter)及び出力アンプなどを含んでもよい。
【0016】
周波数指定スイッチ14(指示部の一例)は、上述したPEQ12の設定周波数の設定を指示する。周波数指定スイッチ14は、例えば、ボタンスイッチやフットスイッチであり、利用者によって押下されることで、設定周波数の設定指示を設定処理部16に出力する。
【0017】
調整スイッチ15は、例えば、PEQ12の各種パラメータを調整する調整キー、調整ツマミ、調整ノブ、スライダーなどであり、利用者から各種パラメータを調整する調整情報を受け付け、設定処理部16に出力する。
【0018】
設定処理部16は、周波数指定スイッチ14からの指示に基づいて、音信号入力部11から入力された音信号(入力音信号)の周波数を特定し、特定した音信号の周波数をPEQ12の設定周波数に設定する。すなわち、設定処理部16は、入力音信号の周波数(例えば、基音の周波数)を、設定周波数としてPEQ12に出力し、PEQ12の設定周波数の設定変更を実行する。また、設定処理部16は、音信号の周波数を特定できない場合に、設定周波数の設定変更を実行しない。
【0019】
設定処理部16は、調整スイッチ15からの調整情報に基づいて、PEQ12のパラメータの設定変更を実行する。設定処理部16は、調整スイッチ15が調整されることにより、PEQ12のパラメータ(例えば、ゲイン及びQ値)の設定の調整を行う。
設定処理部16は、周波数抽出部161と、周波数設定部162と、パラメータ調整部163とを備えている。
【0020】
周波数抽出部161は、入力音信号に含まれる周波数を抽出する。周波数抽出部161は、周波数指定スイッチ14からの指示に応じて、音信号入力部11から入力音信号を取得し、取得した入力音信号を、例えば、FFT(Fast Fourier Transform)や既存のピッチ抽出技術などを利用して、入力音信号に含まれる周波数(例えば、基音の周波数)を抽出する。周波数抽出部161は、入力された音の周波数のピークを抽出し、基音にあたる最も低いピークの周波数を抽出する。
周波数抽出部161は、例えば、周波数指定スイッチ14が押下された指示後に最初に入力された入力音信号の周波数を抽出してもよいし、周波数指定スイッチ14が押下されている期間に入力された入力音信号の周波数を抽出してもよい。
【0021】
周波数設定部162は、周波数抽出部161が抽出した周波数に基づいて、設定周波数を特定する。周波数設定部162は、例えば、周波数抽出部161が抽出した基音の周波数を設定周波数として特定する。具体的に、周波数設定部162は、例えば、周波数抽出部161が抽出した周波数が倍音列(例えば、基音、2倍音、3倍音、等の周波数列)を構成している場合に、基音の周波数を設定周波数として特定する。また、周波数設定部162は、例えば、周波数抽出部161が抽出した周波数が単一周波数(正弦波)でなく、抽出した周波数が倍音列を構成していない場合に、設定周波数を正常に特定できなかったと判定する。
【0022】
周波数設定部162は、設定周波数として特定した入力音信号の周波数(例えば、基音の周波数)を、PEQ12に設定する。なお、周波数設定部162は、設定周波数を正常に特定できなかった場合(周波数抽出部161が抽出した周波数が単一周波数(正弦波)でなく、抽出した周波数が倍音列を構成していない場合)に、設定周波数の変更(設定)を実行しない。すなわち、周波数設定部162は、入力音信号に単音の音信号が入力された場合に、当該単音の周波数(基音の周波数)を設定周波数としてPEQ12に設定し、入力音信号に単音以外の音信号が入力された場合に、設定周波数の設定変更を実行しない。
【0023】
パラメータ調整部163は、調整スイッチ15から調整情報を取得し、当該調整情報に基づいて、PEQ12のパラメータを変更(調整)する。例えば、調整スイッチ15からゲイン及びQ値を調整する調整情報を取得した場合、パラメータ調整部163は、調整情報に応じたゲイン及びQ値を、PEQ12に設定する。なお、パラメータ調整部163は、調整スイッチ15から取得した調整情報に基づいて、周波数設定部162が設定した設定周波数を調整するようにしてもよい。
【0024】
図面を参照して、本実施形態による信号処理装置1の動作について説明する。
まず、図2を参照して、本実施形態におけるPEQ12の周波数設定処理について説明する。
図2は、本実施形態におけるPEQ12の周波数設定処理の一例を示すフローチャートである。
【0025】
図2に示すように、信号処理装置1の設定処理部16は、まず、周波数指定スイッチ14からの指示があるか否かを判定する(ステップS101)。設定処理部16は、例えば、周波数指定スイッチ14が押下されて、PEQ12の設定周波数の設定指示が周波数指定スイッチ14からあるか否かを判定する。設定処理部16は、周波数指定スイッチ14からの設定指示がある場合(ステップS101:YES)に、処理をステップS102に進める。また、設定処理部16は、周波数指定スイッチ14からの設定指示がない場合(ステップS101:NO)に、処理をステップS101に戻す。
【0026】
ステップS102において、設定処理部16の周波数抽出部161は、音信号から周波数を抽出する。すなわち、周波数抽出部161は、周波数指定スイッチ14からの設定指示に応じて、音信号入力部11から入力音信号を取得し、取得した入力音信号に含まれる周波数を抽出する。
【0027】
設定処理部16の周波数設定部162は、周波数の抽出結果に基づいて、設定周波数を特定する(ステップS103)。周波数設定部162は、例えば、周波数抽出部161が抽出した基音の周波数を設定周波数として特定する。
【0028】
周波数設定部162は、設定周波数を正常に特定できたか否かを判定する(ステップS104)。すなわち、周波数設定部162は、例えば、周波数抽出部161が抽出した周波数が単一周波数(正弦波)である、又は倍音列を構成しているか否かによって、設定周波数を正常に特定できたか否かを判定する。周波数設定部162は、設定周波数を正常に特定できた(例えば、基音の周波数が特定できた)場合(ステップS104:YES)に、処理をステップS105に進める。また、周波数設定部162は、設定周波数を正常に特定できなかった(例えば、基音の周波数が特定できながった)場合(ステップS104:NO)に、処理をステップS101に戻し、PEQ12の設定周波数の変更を実行しない。
【0029】
ステップS105において、周波数設定部162は、設定周波数をPEQ12に設定する。すなわち、周波数設定部162は、特定した設定周波数(例えば、基音の周波数)を、PEQ12に出力し、設定周波数を設定させる。周波数設定部162は、ステップS105の処理後に、処理をステップS101に戻して、ステップS101からステップS105の処理を繰り返す。
【0030】
このように、本実施形態における周波数設定処理では、設定処理部16が、周波数指定スイッチ14からの指示に基づいて、音信号入力部11から入力された入力音信号の周波数を特定し、特定した入力音信号の周波数(例えば、基音の周波数)をPEQ12の設定周波数に設定する。
【0031】
上述した図2に示す処理において、ステップS102及びステップS103の処理は、周波数指定スイッチ14からの指示に基づいて、音信号入力部11から入力された音信号の周波数を特定する周波数特定ステップに対応する。また、ステップS104及びステップS103の処理は、特定された音信号の周波数をPEQ12の設定周波数に設定する周波数設定ステップに対応する。
【0032】
図3を参照して、本実施形態におけるPEQ12のパラメータの調整処理について説明する。
図3は、本実施形態におけるPEQ12のパラメータの調整処理の一例を示すフローチャートである。
【0033】
図3に示すように、信号処理装置1の設定処理部16は、まず、調整スイッチ15から調整の指示があるか否かを判定する(ステップS201)。設定処理部16は、例えば、調整スイッチ15が調整されて、PEQ12のパラメータを調整する調整の指示が調整スイッチ15からあるか否かを判定する。設定処理部16は、調整スイッチ15からの調整の指示がある場合(ステップS201:YES)に、処理をステップS202に進める。また、設定処理部16は、調整スイッチ15からの調整の指示がない場合(ステップS201:NO)に、処理をステップS201に戻す。
【0034】
ステップS202において、設定処理部16のパラメータ調整部163は、調整の指示に基づいて、パラメータをPEQ12に設定する。すなわち、パラメータ調整部163は、調整スイッチ15からの調整の指示に含まれる調整情報に基づいて、パラメータをPEQ12に設定する。パラメータ調整部163は、例えば、PEQ12のゲイン及びQ値などを、パラメータとして、PEQ12に出力し、PEQ12のパラメータを変更する。パラメータ調整部163は、ステップS202の処理後に、処理をステップS201に戻す。
【0035】
このように、本実施形態におけるパラメータの調整処理では、パラメータ調整部163が、調整スイッチ15からの調整の指示に基づいて、PEQ12のパラメータを調整する。
【0036】
図4及び図5を参照して、本実施形態におけるPEQ12の設定処理の手順の一例について説明する。
図4は、本実施形態における信号処理装置1のPEQ12の設定処理の一例を示すフローチャートである。図5は、本実施形態における信号処理装置1のPEQ12の設定処理の一例を示す図である。図5に示すグラフにおいて、縦軸は信号レベル(又はゲイン)を示し、横軸は周波数を示している。
【0037】
図4に示すように、本実施形態における信号処理装置1において、PEQ12の設定処理を行う場合に、利用者は、まず、調整スイッチ15を調整してパラメータをPEQ12に設定する(ステップS301)。すなわち、信号処理装置1のパラメータ調整部163は、上述した図3に示すPEQ12のパラメータの調整処理によって、パラメータをPEQ12に設定する。
【0038】
これにより、PEQ12には、例えば、図5(a)のイコライザ特性Ec1に示すようなパラメータが設定される。
図5(a)に示すPEQ12のゲイン特性において、イコライザ特性Ec1は、上述のステップS301におけるパラメータの調整処理によって、設定変更前の設定周波数(以前に設定された周波数のまま)で、パラメータを調整した状態を示している。
【0039】
利用者は、周波数指定スイッチ14を押下して音信号を入力することで、設定周波数をPEQに設定する(ステップS302)。信号処理装置1の設定処理部16は、上述した図2に示すPEQ12の周波数設定処理によって、設定周波数をPEQ12に設定する。
【0040】
ここで、音信号は、単音の音信号であり、設定処理部16は、周波数指定スイッチ14からの指示に応じて、音信号入力部11を介して、単音の音信号(入力音信号)を取得する。また、設定処理部16の周波数抽出部161が、取得した入力音信号に含まれる周波数を抽出し、設定処理部16の周波数設定部162が、周波数抽出部161が抽出した周波数に基づいて、設定周波数を特定する。周波数設定部162は、特定した設定周波数をPEQ12に設定する。
【0041】
これにより、PEQ12には、図5(b)のイコライザ特性Ec2に示すような設定周波数及びパラメータが設定される。
図5(b)に示すPEQ12のゲイン特性において、イコライザ特性Ec2は、上述のステップS302における周波数設定処理によって、設定周波数が設定された状態を示している。また、周波数F1~周波数F3は、入力音信号から周波数抽出部161が抽出した周波数を示している。
【0042】
入力音信号は、単音であるため、周波数抽出部161は、例えば、基音の周波数F1と、2倍音の周波数F2と、3倍音の周波数F3とを抽出する。
周波数設定部162は、図5(b)に示すように、周波数F1~周波数F3のうちから、最も周波数が低い基音の周波数F1を設定周波数として特定し、設定周波数をPEQ12に設定する。これにより、イコライザ特性Ec2に示すように、PEQ12は、周波数F1が設定周波数として設定される。ステップS302の処理後に、設定処理部16は、PEQ12の設定処理を終了する。
【0043】
上述した図4に示す例では、パラメータをPEQ12に設定した後に、設定周波数をPEQ12に設定する例を説明したが、設定周波数をPEQ12に設定した後に、パラメータをPEQ12に設定するようにしてもよい。すなわち、信号処理装置1の設定処理部16は、上述した図4に示すステップS301の処理とステップS302の処理との順番を逆転させて、信号処理装置1の設定処理部16が、PEQ12の周波数設定処理を実行した後に、PEQ12のパラメータの調整処理を実行するようにしてもよい。
【0044】
図6を参照して、本実施形態におけるPEQ12の動作について説明する。
図6は、本実施形態におけるPEQ12の動作の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、PEQ12は、まず、入力音信号を取得する(ステップS401)。PEQ12は、音信号入力部11を介して、入力音信号を取得する。
【0045】
PEQ12は、設定された周波数及びパラメータによりPEQを動作させて取得した入力音信号に音響効果を付加する(ステップS402)。PEQ12は、例えば、設定処理部16が設定した設定周波数及びパラメータに基づいて、所定の音響効果を付加する。
【0046】
PEQ12は、音響効果を付加した音信号を音信号出力部13から出力させる(ステップS403)。すなわち、PEQ12は、音響効果を付加した音信号を音信号出力部13に出力し、音信号出力部13が当該音信号を外部に出力する。ステップS403の処理後に、PEQ12は、処理をステップS401に戻し、ステップS401からステップS403の処理を繰り返す。
【0047】
以上説明したように、本実施形態による信号処理装置1は、音信号入力部11と、周波数指定スイッチ14(指示部)と、設定処理部16とを備える。音信号入力部11は、入力された音信号(入力音信号)を受け付ける。周波数指定スイッチ14は、音信号に所定の音響効果を付加するPEQ12(エフェクタ)の設定周波数の設定を指示する。設定処理部16は、周波数指定スイッチ14からの指示に基づいて、音信号入力部11から入力された音信号の周波数を特定し、特定した音信号の周波数をPEQ12の設定周波数に設定する。
【0048】
これにより、本実施形態による信号処理装置1は、楽器音などの特定の音程を持つ単音を入力音信号として入力することで、音響効果を付加したい音域(設定周波数)を直感的、且つ容易に指定することができる。よって、本実施形態による信号処理装置1は、容易に周波数の設定を行うことができ、利便性を向上させることができる。
楽器の演奏者にとって、最も直感的に音程(周波数)を表現する手段は、楽器でその音程の音を出す(演奏)することである。本実施形態による信号処理装置1では、周波数指定スイッチ14を押下しながら、楽器で対象の音を演奏することで、利用者にとって直感的かつ容易に、PEQ12の設定を行うことができる。
【0049】
また、本実施形態による信号処理装置1は、音信号入力部11から入力された音信号を用いてPEQ12の設定周波数を設定するとともに、音信号入力部11から入力された音信号に、PEQ12により音響効果を付加する。すなわち、本実施形態による信号処理装置1では、1つの音信号入力部11に入力された音信号で、設定周波数の設定処理と、音響効果を付加処理とを行うことができる。そのため、本実施形態による信号処理装置1では、音信号のケーブル接続は従来のPEQと同じであり、追加の信号ケーブル接続や、専用楽器を必要としない。すなわち、本実施形態による信号処理装置1は、音信号の入出力インターフェースが従来のPEQを備える信号処理装置と同一であるため、従来の信号処理装置の代わりにそのまま置き換えることができる。
【0050】
また、本実施形態による信号処理装置1は、PEQ12と、音信号出力部13とを備える。PEQ12は、設定処理部16が設定した設定周波数に基づいて、音信号入力部11から入力された音信号に、所定の音響効果を付加する。音信号出力部13は、PEQ12によって所定の音響効果が付加された音信号(出力音信号)を出力する。
これにより、本実施形態による信号処理装置1は、音信号入力部11から入力された音信号を、周波数の設定の他に、PEQ12の入力として用い、PEQ12により音響効果を付加して出力することができる。
【0051】
また、本実施形態では、エフェクタには、少なくともパラメトリックイコライザ(PEQ12)、ハイパスフィルタ、及びローパスフィルタのうちのいずれか一つが含まれてもよい。
これにより、本実施形態による信号処理装置1は、パラメトリックイコライザ(PEQ12)の周波数設定において、直感的に、且つ、容易に、PEQ12の設定を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態では、設定処理部16は、入力された音の周波数のピークを抽出し、基音にあたる最も低いピークの周波数を特定する音信号の周波数の特定処理において、音信号の周波数を特定できない場合に、設定周波数の変更を実行しない。すなわち、設定処理部16は、音信号の周波数を特定できない場合に、設定周波数の設定を更新しない。
これにより、本実施形態による信号処理装置1は、例えば、明確に単音を入力した場合など、確実に利用者が意図する周波数に、PEQ12の設定周波数を設定することができる。
【0053】
また、本実施形態による信号処理方法では、周波数指定スイッチ14が、入力された音信号を受け付ける音信号入力部11が受け付けた音信号に所定の音響効果を付加するPEQ12の設定周波数の設定を指示し、設定処理部16が、周波数指定スイッチ14からの指示に基づいて、音信号入力部11から入力された音信号の周波数を特定し、特定した音信号の周波数をPEQ12の設定周波数に設定する。
これにより、本実施形態による信号処理方法は、上述した信号処理装置1と同様の効果を奏し、容易にPEQ12の周波数の設定を行うことができ、利便性を向上させることができる。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、エフェクタの一例として、パラメトリックイコライザ(PEQ12)である例を説明したが、これに限定されるものではなく、エフェクタとして、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、ノッチフィルタ、バンドパスフィルタなどの周波数の設定を必要とする他のエフェクタに適用してもよい。
【0055】
また、上記の実施形態において、PEQ12は、設定処理部16が設定周波数の設定に用いた音信号と同一の音信号入力部11から入力された音信号に、所定の音響効果を付加する例を説明したが、異なる音信号入力部から入力された音信号に所定の音響効果を付加するようにしてもよい。例えば、信号処理装置1は、複数の音信号入力部を備え、複数の音信号入力部のうちの1つに入力された音信号で設定周波数の設定を行い、他の音信号入力部から入力された音信号に所定の音響効果を付加するようにしてもよい。
【0056】
また、上記の実施形態において、信号処理装置1は、PEQ12と、音信号出力部13とを含む例を説明したが、これに限定されるものではなく、信号処理装置1の外部にPEQ12と、音信号出力部13とを備え、信号処理装置1は、設定装置として機能させるようにしてもよい。この場合、信号処理装置1は、外付けのPEQなどのエフェクタの設定に利用することができ、容易に設定を行うことができる音響効果の自由度を高めることができる。
【0057】
また、上記の実施形態において、設定処理部16は、基音の周波数など1つ周波数を設定周波数として、PEQ12に設定する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、基音及び倍音などの倍音列、複数の設定周波数をPEQ12に設定するようにしてもよい。この場合、倍音列は、低次倍音、偶数倍音、奇数倍音、任意のn倍音を含むものであってもよい。
【0058】
このように、設定処理部16は、入力音信号の基音及び倍音を含む倍音列の周波数を特定し、特定した倍音列の周波数をPEQ12の設定周波数に設定するようにしてもよい。これにより、信号処理装置1は、一度に複数の周波数を設定することができ、さらに利便性を向上させることができる。
また、上記の実施形態において、設定処理部16は、入力音信号に単音ではなく和音が入力された場合に、和音を構成するそれぞれの音程について同様に周波数を設定するようにしてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態において、設定処理部16が、PEQ12の周波数とパラメータとは、個別に設定する例を説明したが、これに限定されるものではなく、周波数に連動して、パラメータを変更するようにしてもよい。例えば、設定処理部16が、倍音列の複数の周波数を設定する場合に、倍音のゲインを連動して変更(設定)するようにしてもよい。この場合、設定処理部16は、例えば、連動により全て同じゲインにする、周波数が高いほどゲインを小さくする、などを行ってもよい。
【0060】
また、上記の実施形態において、設定処理部16は、設定した周波数を、調整スイッチ15によって、相対的に微調整をするようにしてもよい。また、設定処理部16は、入力音信号から設定周波数を設定する他に、例えば、入力音信号の信号レベルから、PEQ12のゲインなどのパラメータを設定するようにしてもよい。この場合、設定処理部16は、例えば、入力音信号の信号レベルが高い場合に、ゲインを大きくし、低い場合に、ゲインを小さく(例えば、負の値)にするようにしてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態において、設定処理部16が音信号の周波数を特定できない場合に、設定周波数の変更を実行しない例を説明したが、さらに、周波数の特定に失敗したことを示す警報(例えば、失敗を示す発光素子の点灯など)を通知するようにしてもよい。
【0062】
また、上記の実施形態において、信号処理装置1は、音響機器の他に、例えば、スマートフォンやタブレット端末装置、PC(パーソナルコンピュータ)などの電子機器であってもよい。
【0063】
なお、上述した信号処理装置1が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した信号処理装置1が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した信号処理装置1が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0064】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に信号処理装置1が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0065】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…信号処理装置、11…音信号入力部、12…PEQ、13…音信号出力部、14…周波数指定スイッチ、15…調整スイッチ、16…設定処理部、161…周波数抽出部、162…周波数設定部、163…パラメータ調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6