(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】光源ユニット、及び照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240123BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240123BHJP
F21V 7/06 20060101ALI20240123BHJP
F21V 9/35 20180101ALI20240123BHJP
F21V 15/01 20060101ALI20240123BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20240123BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20240123BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240123BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240123BHJP
【FI】
F21S2/00 311
F21S2/00 320
F21S2/00 340
F21V5/00 510
F21V7/06 100
F21V9/35
F21V15/01 360
F21V15/01 510
F21V17/00 200
F21V19/00 170
F21V19/00 211
F21V23/00 160
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2019134692
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】723014807
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】門馬 友香
(72)【発明者】
【氏名】安藤 香代子
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/017864(WO,A1)
【文献】特開2017-098169(JP,A)
【文献】実開昭60-087404(JP,U)
【文献】特開2017-168233(JP,A)
【文献】特開2012-256860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 5/00
F21V 7/06
F21V 9/35
F21V 15/01
F21V 17/00
F21V 19/00
F21V 23/00
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を放射する複数のレーザー半導体と、
前記レーザー半導体の各々が取り付けられる金属製の金属ベースと、を備え、
前記金属ベースは、前記レーザー半導体の各々を位置決めし、前記レーザー光の照射方向に応じた姿勢で保持する取付孔部が形成され
る光源ユニットであって、
前記レーザー半導体から延びるリード部材が、前記取付孔部の中を前記金属ベースに非接触の状態で延び、前記レーザー半導体を点灯するための直流電力の高電圧側ライン、及び低電圧側ラインにつながるリード線にそれぞれ結線され、
当該光源ユニットが組み込まれ
る装置の点灯回路に高電圧を印加する絶縁耐圧試験において前記レーザー半導体の損傷を防止可能に、組み込まれる
前記装置の筐体と前記金属ベースとの間を電気的に絶縁する絶縁板を備えると共に、前記金属ベースは、前記直流電力の高電圧側、又は低電圧側の電位に維持される、
ことを特徴とする光源ユニット。
【請求項2】
前記レーザー半導体は、
金属製の板状のベース部を有し、
当該ベース部が前記取付孔部に接触状態で取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記複数のレーザー半導体の各々にはレーザー光を制御するレンズが設けられ、
前記レンズの裏面が前記取付孔部を塞ぎ、前記取付孔部の周囲に面接触することを特徴とする請求項2に記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記金属ベースは、
前記装置に組み込まれる他の光源ユニットの金属ベースと等電位に維持される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項5】
前記直流電力の高電位側、又は低電位側のいずれかのラインが前記金属ベースに接続されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項6】
前記金属ベースの裏面内に、
前記リード線が収められるリード線収容凹部が設けられており、
当該リード線収容凹部が前記絶縁板によって閉じられている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかのいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の光源ユニットと、
前記光源ユニットのレーザー光によって励起され、蛍光を発する蛍光体と、
前記蛍光を反射する反射面と、を備え、
前記反射面で反射した光によって照明する
ことを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源ユニット、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレーザー光を励起光として蛍光体に励起し、励起によって蛍光体から放射される蛍光を反射面で反射して照明に用いる照明装置が知られている。この種の照明装置では、レーザー光の光源に半導体レーザーが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザー光は指向性が高いため、照明装置の組立において各半導体レーザーが適切な位置に固定されていないと、レーザー光が蛍光体に入射せず、比較的目立つ漏れ光となり易い。
【0005】
本発明は、各半導体レーザーを適切な位置に簡単に位置決めできる光源ユニット、及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、レーザー光を放射する複数のレーザー半導体と、前記レーザー半導体の各々が取り付けられる金属製の金属ベースと、を備え、前記金属ベースは、前記レーザー半導体の各々を位置決めし、前記レーザー光の照射方向に応じた姿勢で保持する取付孔部が形成される光源ユニットであって、前記レーザー半導体から延びるリード部材が、前記取付孔部の中を前記金属ベースに非接触の状態で延び、前記レーザー半導体を点灯するための直流電力の高電圧側ライン、及び低電圧側ラインにつながるリード線にそれぞれ結線され、当該光源ユニットが組み込まれる装置の点灯回路に高電圧を印加する絶縁耐圧試験において前記レーザー半導体の損傷を防止可能に、組み込まれる前記装置の筐体と前記金属ベースとの間を電気的に絶縁する絶縁板を備えると共に、前記金属ベースは、前記直流電力の高電圧側、又は低電圧側の電位に維持される、ことを特徴とする光源ユニットを提供する。
【0007】
本発明は、上記光源ユニットにおいて、前記レーザー半導体は、金属製の板状のベース部を有し、当該ベース部が前記取付孔部に接触状態で取り付けられる、ことを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記光源ユニットにおいて、前記複数のレーザー半導体の各々にはレーザー光を制御するレンズが設けられ、前記レンズの裏面が前記取付孔部を塞ぎ、前記取付孔部の周囲に面接触することを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記光源ユニットにおいて、前記金属ベースは、前記装置に組み込まれる他の光源ユニットの金属ベースと等電位に維持される、ことを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記光源ユニットにおいて、前記直流電力の高電位側、又は低電位側のいずれかのラインが前記金属ベースに接続されることを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記光源ユニットにおいて、前記金属ベースの裏面内に、前記リード線が収められるリード線収容凹部が設けられており、当該リード線収容凹部が前記絶縁板によって閉じられている、ことを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記のいずれかの光源ユニットと、前記光源ユニットのレーザー光によって励起され、蛍光を発する蛍光体と、前記蛍光を反射する反射面と、を備え、前記反射面で反射した光によって照明することを特徴とする照明装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各半導体レーザーを適切な位置に簡単に位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る投光装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図4】
図3のIV-IV断面線における概略構成を示す図である。
【
図5】前面カバー、及びレーザー光遮光ユニットと、片方の反射鏡とを外した状態の投光装置の内部構成を示す斜視図である。
【
図6】
図4に示された光源ユニットの拡大図である。
【
図7】金属ベース、セラミックプレート、及び光学プレート板を分解して示す図である。
【
図12】レーザーダイオードの構成を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下では、照明装置の一態様として、景観照明に好適に用いられる投光装置を例示する。
【0018】
図1は本実施形態に係る投光装置1の全体構成を示す斜視図であり、
図2は投光装置1の背面側を視た斜視図である。また
図3は投光装置1の正面図である。
投光装置1は、
図1から
図3に示すように、照明光を出射する略箱型の装置本体2と、当該装置本体2を支持する取付アーム4と、を備える。取付アーム4は、装置本体2の両側面を挟んで支持するアーム部5と、このアーム部5に設けられた固定片6とを備え、この固定片6が投光装置1の設置箇所に固定される。アーム部5は装置本体2を回動可能(傾動自在)に支持し、これにより装置本体2の取付角度が変更自在に成されている。
【0019】
装置本体2は、正面(前面とも言う)が開口した略箱型の筐体8を有する。筐体8は、熱伝導率が高い材料である金属(例えばアルミニウム)を用いたダイキャスト成型によって形成されており、
図2に示すように、その背面には、多数の放熱フィン14が一体成型で形成されている。
【0020】
筐体8の正面開口の縁部にはフランジ10が形成され、
図1、及び
図3に示すように、このフランジ10に前面カバー12が固定されている。前面カバー12は、透明材料(例えばガラスや透明樹脂など)から形成された略矩形の板状を成し、その表面12Aには、照明光を出射する出射領域16を除いて、シルク印刷(シルクスクリーン印刷とも呼ばれる)により遮光性を得る塗装(本実施形態では黒色インクの塗装)が施されている。
【0021】
図3に示すように、出射領域16は正面視円形を成す透明な領域であり、この出射領域16を通して、光束断面が円形の略平行光であり白色の光が照明光として装置本体2から出射される。本実施形態の投光装置1では、2つの出射領域16が前面カバー12に横並びに設けられており、それぞれの出射領域16から略平行光の照明光が出射される。
【0022】
図4は、
図3のIV-IV断面線における概略構成を示す図である。
図5は、前面カバー12、及びレーザー光遮光ユニット160と、片方の反射鏡24と、を外した状態の投光装置1の内部構成を示す斜視図である。
図6は、
図4に示された光源ユニット20の拡大図である。
本実施形態の投光装置1は、蛍光体22を励起する青色のレーザー光と、当該レーザー光によって励起されて生じた黄色の蛍光との混合によって白色光を得る装置である。具体的には、装置本体2は、
図4に示すように、光源ユニット20と、蛍光体22と、反射鏡24と、レーザー光遮光ユニット160と、を備え、これらが出射領域16ごとに設けられている。
【0023】
光源ユニット20は、青色のレーザー光を蛍光体22に照射するユニットである。蛍光体22は、レーザー光の照射によって励起され黄色の蛍光を反射鏡24に向けて放射する部材である。本実施形態の蛍光体22には、LAG系の蛍光体粒子をスカンジウム等からなる無機バインダーに混合して生成された極薄い膜状体(LAG-Sc)が用いられている。かかる蛍光体22は印刷によって蛍光体保持部27の表面に形成されている。なお、蛍光体22としてはYAG-Ce単結晶などを用いることもできる。
反射鏡24は、焦点fからの光を光軸Kに平行な平行光に平行光化する放物反射面24Aを有する反射型の光学部材である。そして、この放物反射面24Aの焦点fに蛍光体22が放物反射面24Aと対向配置されている。具体的には、装置本体2は、
図4に示すように、蛍光体22を保持する蛍光体保持部27を有した棒状の蛍光体保持バー28を備えている。蛍光体保持部27の蛍光体22(より正確には、後述する平面反射面27A)が焦点fに位置し、かつ光軸Kの直交方向に延びる姿勢で筐体8に蛍光体保持バー28が固定されている。
【0024】
蛍光体保持部27は、
図4に示すように、蛍光体22を保持する面が平らな平面反射面27Aに形成されており、蛍光体22に入射したレーザー光を、この平面反射面27Aが放物反射面24Aに向けて反射する。これにより、蛍光体22からは放物反射面24Aに向けて、蛍光、及びレーザー光との混合光である白色光が略ランバーシアン分布で放射される。そして、この白色光が放物反射面24Aに入射することで、放物反射面24Aの光軸Kに平行な光に平行光化され、前面カバー12の出射領域16を通って照明光として装置本体2から出射される。
【0025】
光源ユニット20は、光軸Kの周りから複数のレーザー光を蛍光体22に照射するものであり、
図5に示すように、複数(図示例では12個)のレーザー光源ユニット30と、金属ベース32と、セラミックプレート33と、を備えている。
レーザー光源ユニット30は、配光制御されたレーザー光を放射するユニットである。
金属ベース32は、レーザー光源ユニット30が組み付けられる部材であり、平面視矩形板状を成し、
図6に示すように、筐体8の底面8Aに固定された取付板としての光学プレート34に、セラミックプレート33を間に挟んで、その四隅が固定具37によって取り付け固定される。
【0026】
金属ベース32、及び光学プレート34はいずれも、例えばアルミニウム等の高熱伝導性材料から形成されている。レーザー光源ユニット30の発熱による熱量は、セラミックプレート33、及び光学プレート34を介して筐体8に伝わり、筐体8の背面の放熱フィン14からスムーズに放熱される。また光学プレート34の表面には、
図5に示すように、光源ユニット20を起点に放射状に延び、レーザー光源ユニット30の発熱による熱量を当該起点から遠方に輸送する多数本のヒートパイプ35が配設されている。これらヒートパイプ35によって筐体8の広範囲に熱量が伝えられるので、放熱効率が高められる。
【0027】
図7は、金属ベース32、セラミックプレート33、及び光学プレート34を分解して示す図である。
セラミックプレート33は、光源ユニット20の金属ベース32の裏面の全面を覆う大きさの矩形の板材であり、当該裏面に接着剤などで貼設されている。このセラミックプレート33は、金属ベース32と筐体8とを電気的に絶縁する絶縁材として機能する。さらに、このセラミックプレート33は、投光装置1に設定された所望の放熱性能を実現するために必要な熱量を金属ベース32から筐体8へ伝達可能な高熱伝導性を有した材料(例えばアルミナなど)で形成されている。なお、電気的絶縁性、及び高熱伝導性を有した適宜の絶縁材をセラミックプレート33の代わりに用いてもよい。
【0028】
レーザー光遮光ユニット160は、漏れ光成分を遮光するユニットである。漏れ光成分は、レーザー光源ユニット30から出射されたレーザー光のうち、蛍光体22から外れた成分であり、レーザー光源ユニット30のばらつきや、後述する貫通孔46における反射、回折等に起因して生じた非平行光である。
【0029】
レーザー光遮光ユニット160は、前掲
図3に示すように、ハニカム構造体161を備える。かかるハニカム構造体161は、
図4に示すように、光軸Kに平行に延びる多数の筒状体163(本実施形態では断面正六角形)を同一面上(本実施形態では、放物反射面24Aの開口端面29上)に隙間無く並べ、各筒状体163の側面に反射防止処理が施された構造体である。レーザー光遮光ユニット160を照明光が通過する際には、非平行光である漏れ光成分が各筒状体163の側面に入射することで遮光される。
【0030】
図8は光源ユニット20の構成を示す斜視図であり、
図9は光源ユニット20の平面図である。また
図10は光源ユニット20の側面図であり、
図11は
図9のXI-XI断面図である。
レーザー光源ユニット30は、
図11に示すように、レーザー光を出力するレーザー半導体であるレーザーダイオード36と、レーザー光を制御するレンズ38と、を備える。
レンズ38は、樹脂材、又はガラス材から形成され、凸レンズの一種であるバイコーニックレンズであり、
図8に示すように、レーザー光を放物反射面24Aの焦点fに所定のスポット形状で集光する。さらに当該レンズ38は、レーザーダイオード36から出射されたレーザー光の光束断面形状を蛍光体22に照射される際に、真円や正方形形状などの形状(当該蛍光体22の平面視形状に応じた形状)に近づくように整形する機能を有する。
【0031】
図12はレーザーダイオード36の構成を示す透視図であり、
図13はレーザーダイオード36の断面図である。
これらの図に示すように、レーザーダイオード36は、略円板状のベース部50と、当該ベース部50の上面に設けられた台座部52と、当該台座部52を覆って密封するケース部54と、レーザー光を放射する素子であるLDチップ56(
図13)と、を備えている。LDチップ56は台座部52の側面に取り付けられており、当該台座部52がヒートシンクとして機能し、LDチップ56の発熱による熱量を吸収することでLDチップ56の温度上昇が抑えられる。
【0032】
図12に示すように、ベース部50には、底面側から内部に2本のリード部材58、59が貫通し、一方のリード部材58の先端58AがLDチップ56の対向位置に配置され、その先端58AとLDチップ56とが導電性のワイヤ53で電気的に接続されている。
少なくともベース部50、及び台座部52は導電性を有する材料(本実施形態では金属)で成型され、また他方のリード部材59は、これらベース部50、及び台座部52と電気的に接続されることで、これらが等電位に維持されるようになっている。そしてリード部材58、59の間の電位差がLDチップ56に与えられることで、当該LDチップ56がケース部54の上面54Aに向けてレーザー光を放射する。
【0033】
図12に示すように、ケース部54は略円筒状を成し、その内部には不活性ガス等の適宜の気体が充填されている。ケース部54の上面54Aの中央部には、所定の大きさの平面視円形の出射開口55が形成され、その出射開口55には透明なカバー部材57が嵌め込まれており、LDチップ56が放射するレーザー光が出射開口55から出射される。
そして、レーザーダイオード36のケース部54の上面54Aに上記レンズ38が固定され、出射開口55から出射されたレーザー光がレンズ38に直接入射し、当該レンズ38によって配光制御される。
【0034】
前掲
図8に示すように、金属ベース32は、その表面がカップ状に凹み、その凹みの周面に、
図11に示すように、レーザー光源ユニット30が嵌め込まれる複数の取付孔部40が光軸Kの周りに略等間隔に形成されている。それぞれの取付孔部40は、焦点fからみた場合に、各レーザー光源ユニット30を同じ入射角及び同じ距離に配置するように形成されている。本実施形態では、焦点fからみて各レーザー光源ユニット30は放物反射面24Aの裏側に配置されており、前掲
図6に示すように、この放物反射面24Aには、各レーザー光源ユニット30のレーザー光を通すための貫通孔46が設けられている。本実施形態では、各レーザー光は、蛍光体22に入射する際の光軸Kに対する入射角は、少なくともゼロ度よりも大きな所定の角度(本実施形態では30度)に設定されている。
【0035】
本実施形態では、取付孔部40にレーザー光源ユニット30のベース部50が嵌め込み固定され、これらのレーザー光源ユニット30が金属ベース32の表面の正確な位置に位置決めされ、かつ、レーザー光が焦点fを指向する姿勢で保持されるようになっている。具体的には、取付孔部40は、
図11に示すように、円筒状の嵌込部40Aと、嵌込部40Aよりも縮径した連通部40Bと、を有し、レーザーダイオード36のベース部50が嵌込部40Aに嵌め込まれる。またレンズ38の裏面が取付孔部40を塞ぎ、この取付孔部40の周りの金属ベース32の表面に面接触する。この面接触によりレーザー光源ユニット30の姿勢が適切に維持される。さらに当該レンズ38が押さえ板42によって金属ベース32に押さえ付けられることで、レーザー光源ユニット30が取付孔部40から脱落不能に成される。
かかる構成により、複数のレーザー光源ユニット30のそれぞれが適切な位置に、適切な姿勢で保持され、また投光装置1の運搬時や使用時の振動による位置ズレも抑えられる。
【0036】
また、レーザーダイオード36の固定状態においては、ベース部50の周面、及び底面が嵌込部40Aと接触し、レーザーダイオード36の発熱による熱量が金属ベース32に効率良く伝達される。
【0037】
また、
図11に示すように、それぞれの取付孔部40の連通部40Bは、金属ベース32の裏面に形成されたリード線収容凹部63に連通する。リード線収容凹部63は、レーザーダイオード36を配線するリード線64、65を収める凹みであり、その開放端が上記セラミックプレート33によって塞がれるとともに、
図8に示すように、金属ベース32の側面のリード線引出孔69に連通し、当該リード線引出孔69からリード線64が引き出される。
それぞれの取付孔部40では、
図11に示すように、レーザーダイオード36の各リード部材58、59が連通部40Bの中を金属ベース32に非接触の状態で延びてリード線収容凹部63まで入り込み、そこでリード線64、65に結線される。各レーザーダイオード36は、リード線64、65によって電気的に直列に接続されており、これらリード線64、65が、
図8に示すように、直流電力源の直流電力を伝送する点灯用電力ライン70の高電位側ライン71、及び低電位側ライン72のそれぞれに結線されている。
【0038】
ところで、レーザー光源ユニット30が金属ベース32に取り付けられると、レーザーダイオード36のベース部50の全周が金属ベース32の取付孔部40と接触した状態となる。上述の通り、レーザーダイオード36は、少なくともベース部50、及び台座部52が金属で成型され導通状態であるため、これらベース部50、及び台座部52は金属ベース32と略等電位に維持される。なお、本実施形態では、レーザーダイオード36のケース部54も金属によって形成されており、ベース部50などと等電位に維持されるようになっている。
【0039】
金属ベース32を筐体8に直接、固定した場合、放熱性には優れるが、この状態で、投光装置1の点灯回路に高電圧を印加する絶縁耐圧試験を行うと、LDチップ56が損傷を受け、レーザーダイオード36が破壊される。これは、LDチップ56に定格よりも過大な電流、電圧が印加されると損傷を受けるからであり、金属ベース32を通して台座部52は筐体8と等電位であるため、絶縁耐圧試験においてLDチップ56と台座部52(またはベース部50、ケース部54)との間で絶縁破壊を起こし、試験電圧がLDチップ56と台座部52の間に直接、印加されたからである。
そこで、絶縁耐圧試験に伴うレーザーダイオード36の破壊を防止する手法として、金属ベース32と筐体8の間を絶縁する構成が考えられる。
【0040】
金属ベース32の裏面は、上述の通り、絶縁材であるセラミックプレート33で覆われているため、金属ベース32と、筐体8(より正確には光学プレート34)との間は、セラミックプレート33によって電気的に絶縁された構成となっている。
しかしながら、発明者は、この構成において絶縁耐圧試験を行うと、金属ベース32を筐体8に直接、固定した場合と同様にレーザーダイオード36の損傷が発生する、との知見を得た。
すなわち、絶縁材であるセラミックプレート33には金属ベース32から光学プレート34への熱伝導を高めるために薄い(板厚1mm)のプレートが用いられており、金属ベース32と光学プレート34の間にセラミックプレート33による浮遊容量が生じる。本実施形態では、金属ベース32の底面積が約9000mm2であるため、約0.7μFの浮遊容量が発生している。
そして、この状態で絶縁耐圧試験が行われると、浮遊容量により金属ベース32と筐体8の間での絶縁性能が低下し、LDチップ56と台座部52の間に電圧が印加されるため、レーザーダイオード36の損傷が発生する。
【0041】
そこで、本実施形態では、光源ユニット20に接続される点灯用電力ライン70の高電位側ライン71、又は低電位側ライン72が、金属ベース32に電気的に予め接続されている。具体的には、
図8に示すように、金属ベース32の表面には、結線端止部80が設けられている。結線端止部80には、高電位側ライン71、又は低電位側ライン72(本実施形態では高電位側ライン71)と、各レーザーダイオード36を繋ぐリード線64又はリード線65(本実施形態ではリード線64)とが結線される。この結線端止部80は、高電位側ライン71、又は低電位側ライン72と、リード線64又はリード線65とを導通状態で結線する結線具81を有し、この結線具81が金属などの導電性を有する材料で形成され、金属ベース32に固定されることで、結線具81を介して金属ベース32が高電位側ライン71、又は低電位側ライン72に電気的に接続される。
【0042】
結線具81によって、金属ベース32が点灯用電力ライン70の高電位側ライン71、又は低電位側ライン72に電気的に接続されることで、LDチップ56と台座部52が等電位に保たれるため、絶縁耐圧試験においてLDチップ56と台座部52の間に電位差が生じることがないので、LDチップ56の損傷を防止できる。
【0043】
なお、セラミックプレート33が厚いほど絶縁性は高くなるものの、金属ベース32から光学プレート34への熱伝導が阻害されるため、セラミックプレート33の熱伝導率にもよるが、概ね2mm以下であることが好ましい。
【0044】
なお、本実施形態の投光装置1では、上述のように、複数(本実施形態では2つ)の光源ユニット20が筐体8に設けられている。この場合、各光源ユニット20が備える金属ベース32のそれぞれは等電位に維持されることが好ましい。複数の金属ベース32が等電位に維持されることで、レーザーダイオード36の駆動中に、2つ以上の金属ベース32をユーザが同時に触れた場合でも、それらの金属ベース32の電位差による感電を回避できる。
各光源ユニット20の金属ベース32を等電位に維持する構成としては次のような構成が挙げられる。すなわち、光源ユニット20ごとに点灯用電力ライン70を備える場合、全ての金属ベース32を高電位側ライン71、または低電位側ライン72に接続する構成、或いは、複数の光源ユニット20を並列に接続し高電位側ライン71、または低電位側ライン72に接続されたひとつの金属ベース32と他の金属ベースを32接続する構成などである。
【0045】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0046】
本実施形態の投光装置1では、光源ユニット20の金属ベース32に、複数のレーザー光源ユニット30の各々を位置決めし、レーザー光の照射方向に応じた姿勢で保持する取付孔部40が形成されている。
これにより、複数のレーザー光源ユニット30のそれぞれが適切な位置に、適切な姿勢で保持され、また投光装置1の運搬時や使用時の振動による位置ズレも抑えられる。
【0047】
本実施形態の投光装置1では、光源ユニット20が備えるレーザーダイオード36は、金属製の板状のベース部50を有し、当該ベース部50が取付孔部40に接触状態で取り付けられるので、レーザーダイオード36の発熱による熱量を効率良く金属ベース32に伝え放熱することができる。
【0048】
本実施形態の投光装置1では、レンズ38の裏面が取付孔部40を塞ぎ、当該取付孔部40の周囲に面接触する。この面接触状態により光源ユニット20の姿勢が適切に維持される。
【0049】
本実施形態の投光装置1では、組み込まれる装置の筐体8と金属ベース32との間を電気的に絶縁するセラミックプレート33を備え、金属ベース32は、レーザー光源ユニット30を点灯するための点灯用電力ライン70の高電圧側、又は低電圧側の電位に維持される。
これにより、筐体8と金属ベース32の間をセラミックプレート33によって絶縁しつつ、当該セラミックプレート33の浮遊容量によるレーザーダイオード36への電位の影響が抑えられる。したがって、各レーザーダイオード36にあっては、絶縁耐圧試験において点灯回路に加えられる電位の大きさにかかわらず、金属ベース32を通じてベース部50、及び台座部52の電位が点灯用電力ライン70の高電位側、又は低電位側の電位に維持されるので、台座部52とLDチップが等電位に保たれることからLDチップ56に過度な電圧が加えられることがなく、過度な電圧によって当該LDチップ56がダメージを受けることを確実に防止できる。
【0050】
本実施形態の投光装置1では、金属ベース32の裏面内に、複数のレーザー光源ユニット30を直列に接続するリード線64、65が収められるリード線収容凹部63が設けられており、当該リード線収容凹部63がセラミックプレート33によって閉じられている。
これにより、筐体8への光源ユニット20の取付時にリード線64、65が邪魔になることがない。
【0051】
本実施形態の投光装置1では、取付孔部40は、リード線収容凹部63に連通する連通部40Bを有し、レーザーダイオード36から延びるリード部材58、59が連通部40Bの中を金属ベース32に非接触状態で延び、リード線収容凹部63に収められたリード線64、65と結線される。
これにより、レーザーダイオード36のリード部材58、59が露出することなく、金属ベース32の中で保護できる。
【0052】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0053】
例えば本発明は、投光装置1に限らず、各種の照明装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 投光装置(照明装置)
2 装置本体
8 筐体
20 光源ユニット
22 蛍光体
24 反射鏡
30 レーザー光源ユニット
32 金属ベース
33 セラミックプレート(絶縁板)
34 光学プレート
36 レーザーダイオード(レーザー半導体)
38 レンズ
40 取付孔部
40A 嵌込部
40B 連通部
50 ベース部
52 台座部
53 ワイヤ
54 ケース部
56 LDチップ
57 カバー部材
58、59 リード部材
63 リード線収容凹部
64、65 リード線
69 リード線引出孔
70 点灯用電力ライン
71 高電位側ライン
72 低電位側ライン
80 結線端止部
81 結線具
K 光軸
f 焦点