IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】舌擦掃用組成物及び舌の清掃方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240123BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240123BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61B 17/24 20060101ALI20240123BHJP
   A46B 15/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/42
A61K8/49
A61K8/37
A61K8/86
A61K8/60
A61Q11/00
A61B17/24
A46B15/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019155226
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021031465
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 貴広
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕之
(72)【発明者】
【氏名】栗原 奈保
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-156288(JP,A)
【文献】登録実用新案第3146526(JP,U)
【文献】登録実用新案第3147869(JP,U)
【文献】特開2008-239563(JP,A)
【文献】特開昭64-056612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61B13/00-18/18
A46B 1/00-17/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記の(A-1)両性界面活性剤及び(A-2)ノニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上、
(A-1)炭素数10~18の炭化水素基を有する脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルベタイン、脂肪酸イミダゾリウムベタイン
(A-2)エチレンオキサイドの平均付加モル数が60~100であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10~50であるポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10~40であるポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル
(B)炭素数8~22の高級アルコール
(C)糖アルコール及びグリセリンから選ばれる1種又は2種以上
並びに
(D)粘結剤
を含有する、ブラシ状擦掃用具を用いて舌を擦掃するためのジェル状又はペースト状の舌擦掃用組成物。
【請求項2】
(A-1)両性界面活性剤が、炭素数10~18の炭化水素基を有する脂肪酸アミドプロピルベタインであり、(A-2)ノニオン性界面活性剤が、エチレンオキサイドの平均付加モル数が60~100であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が10~50であり、アルキル基の炭素数が12~18であるポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれるものである請求項1記載の舌擦掃用組成物。
【請求項3】
(A)成分が、(A-1)両性界面活性剤である請求項1又は2記載の舌擦掃用組成物。
【請求項4】
(B)成分が、炭素数14~18の直鎖又は分岐鎖脂肪族アルコールである請求項1~3のいずれか1項記載の舌擦掃用組成物。
【請求項5】
(A)成分を0.5~5質量%、(B)成分を2~15質量%、(C)成分を20~55質量%含有する請求項1~4のいずれか1項記載の舌擦掃用組成物。
【請求項6】
(A)/(B)が質量比として0.06~0.8である請求項1~5のいずれか1項記載の舌擦掃用組成物。
【請求項7】
(A)/(C)が質量比として0.01~0.15である請求項1~6のいずれか1項記載の舌擦掃用組成物。
【請求項8】
D)成分を0.5~5質量%含有する請求項1~7のいずれか1項記載の舌擦掃用組成物。
【請求項9】
塗布剤である請求項1~8のいずれか1項記載の舌擦掃用組成物。
【請求項10】
ブラシ状擦掃用具が、歯ブラシ、又は舌に適用して刷掃するためのブラシ部と共に、更にスクレーパー部を有する舌ブラシである請求項1~9のいずれか1項記載の舌擦掃用組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項記載の舌擦掃用組成物を、ブラシ状擦掃用具を用いて舌に適用し、舌を擦掃する舌の清掃方法。
【請求項12】
ブラシ状擦掃用具が、歯ブラシ、又は舌に適用して刷掃するためのブラシ部と共に、更にスクレーパー部を有する舌ブラシである請求項11記載の舌の清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理的口臭の主発生原因でもある舌表面に付着した舌苔等の汚れを化学的に除去し、高い汚れ除去実感を与え、かつ清掃後の舌表面にしっとりとしたコーティング感を与える、使用感に優れた舌擦掃用組成物及びこれを用いた舌の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口臭に対する意識が徐々に高まっている。起床時や空腹時に発生する生理的口臭は、主に舌表面に付着した舌苔から発生すると言われている。そのため、舌苔を除去することは、口臭を防ぐための有効な手段であり、舌清掃の重要性に対する認知度は高まりつつある。
この舌苔の形成は、食物残渣や口腔内細菌、唾液等が舌表面にある多数の微小な小突起である舌乳頭間や舌表面に強固に付着し、堆積することで、進行する。
【0003】
従来、舌の清掃手段としては、歯磨きをしながら、歯磨剤が泡立った状態で舌をブラッシングする方法が主流であったが、使用する歯ブラシの種類や磨き方によっては舌への摩擦が強く、舌を傷つけたり、痛みや刺激を感じさせてしまうことがあり、このような物理的手段は、使用感の点に課題がある。
一方で、舌苔除去剤やこれを含有する口腔用組成物を用いて化学的に舌苔除去を行うことも公知であるが、化学的除去は、物理的除去に比べると清掃による除去効果、清掃実感の点で必ずしも十分とは言えない。
【0004】
舌苔を化学的に除去する舌苔除去剤や口腔用組成物は、特許文献1~4(特開2000-178154号公報、特開2008-156288号公報、特許第5845603号公報、特開2016-216429号公報)に提案されているが、効果実感の点では未だ改善の余地があるものであった。
特許文献1は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、エチルアルコール及びカチオン性殺菌剤を組み合わせることで、ノニオン性界面活性剤量が0.2重量%以下の系で、舌苔除去効果を与えている。特許文献2は、酸化エチレンの平均付加モル数40~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド及びカチオン性抗菌剤を組み合わせることによって、口腔用組成物において、舌苔除去効果又は舌苔付着抑制効果を与えているが、口腔用組成物で口を含嗽し、歯をブラッシングする際の粘膜刺激を低減しながら舌苔除去効果を付与している。また、特許文献3は、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグルタミン酸塩を特定割合で併用することで、液体等の口腔用組成物を口腔内への噴霧又は滴下、洗口する際の粘膜刺激を低減して舌苔付着抑制効果を付与している。特許文献4は、酵素のシステインプロテアーゼの活性の安定化、それによる舌苔除去効果の向上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-178154号公報
【文献】特開2008-156288号公報
【文献】特許第5845603号公報
【文献】特開2016-216429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生理的口臭の主発生原因である舌苔等の汚れを除去し、高い汚れ除去実感を与え、かつ舌表面にしっとりとしたコーティング感を与え、使用感に優れる舌擦掃用組成物及びこれを用いた舌の清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)後述の特定界面活性剤と、(B)炭素数8~22の高級アルコールと、(C)糖アルコール及び/又はグリセリンとを組み合わせて配合した組成物が、特にブラシ状擦掃用具を用いて舌表面に塗布して擦掃を行って舌を清掃すると、舌苔等の汚れを十分に除去できると共に、汚れ除去実感として高い舌苔除去実感を与え、しかも、清掃後の舌表面が保護されているようなしっとりとしたコーティング感を与え、優れた使用実感を付与することができ、また、舌表面への塗布性も良く、舌擦掃用として好適に使用し得ることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
本発明においては、(A)、(B)及び(C)成分の組み合わせによって、上記格別な作用効果を奏するものであり、いずれかの成分を欠くと舌苔除去実感又は舌のコーティング感が低く、本作用効果が劣った(後述の比較例参照)。また、(A)成分に代えて、アニオン性界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムを配合した場合は、(B)、(C)成分が配合されていても舌苔除去実感が低くかった(比較例4)。
なお、特許文献1は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、エチルアルコール及びカチオン性殺菌剤の組み合わせによる、ノニオン性界面活性剤量が0.2重量%以下の系での舌苔除去、特許文献2は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド及びカチオン性抗菌剤の組み合わせによる、口腔用組成物で口を含嗽し、歯をブラッシングする際における、粘膜刺激の低減及び舌苔除去であり、また、特許文献3は、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグルタミン酸塩の併用系による、液体等の口腔用組成物を口腔内に噴霧、あるいはそれで洗口した際の粘膜刺激の低減及び舌苔の付着抑制であり、これらは、舌苔除去の効果感改善を目的にしたものではなく、舌表面のしっとりとしたコーティング感について言及がないが、コーティング感は認められないものであった。
これに対して、本発明は、(A)、(B)及び(C)成分を組み合わせることで、優れた舌苔除去実感及び舌表面のコーティング感を与えるもので、これら効果感の増強であり、また、例えばブラシ状擦掃用具を用いた舌の擦掃での効果感の付与である。
【0009】
したがって、本発明は、下記の舌擦掃用組成物及び舌の清掃方法を提供する。
〔1〕
(A)下記の(A-1)両性界面活性剤及び(A-2)ノニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上、
(A-1)炭素数10~18の炭化水素基を有する脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルベタイン、脂肪酸イミダゾリウムベタイン
(A-2)エチレンオキサイドの平均付加モル数が60~100であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10~50であるポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10~40であるポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル
(B)炭素数8~22の高級アルコール
並びに
(C)糖アルコール及びグリセリンから選ばれる1種又は2種以上
を含有することを特徴とする舌擦掃用組成物。
〔2〕
(A-1)両性界面活性剤が、炭素数10~18の炭化水素基を有する脂肪酸アミドプロピルベタインであり、(A-2)ノニオン性界面活性剤が、エチレンオキサイドの平均付加モル数が60~100であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が10~50であり、アルキル基の炭素数が12~18であるポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる〔1〕に記載の舌擦掃用組成物。
〔3〕
(B)成分が、炭素数14~18の直鎖又は分岐鎖脂肪族アルコールである〔1〕又は〔2〕に記載の舌擦掃用組成物。
〔4〕
(A)成分を0.5~5質量%、(B)成分を2~15質量%、(C)成分を20~55質量%含有する〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の舌擦掃用組成物。
〔5〕
(A)/(B)が質量比として0.06~0.8である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の舌擦掃用組成物。
〔6〕
(A)/(C)が質量比として0.01~0.15である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の舌擦掃用組成物。
〔7〕
更に、(D)粘結剤を0.5~5質量%含有する〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の舌擦掃用組成物。
〔8〕
塗布剤である〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の舌擦掃用組成物。
〔9〕
ブラシ状擦掃用具を用いて舌を擦掃するためのジェル状組成物である〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の舌擦掃用組成物。
〔10〕
ブラシ状擦掃用具が、舌に適用して刷掃するためのブラシ部と共に、更にスクレーパー部を有する〔9〕に記載の舌擦掃用組成物。
〔11〕
〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の舌擦掃用組成物を、ブラシ状擦掃用具を用いて舌に適用し、舌を擦掃する舌の清掃方法。
〔12〕
ブラシ状擦掃用具が、舌に適用して刷掃するためのブラシ部と共に、更にスクレーパー部を有する〔11〕に記載の舌の清掃方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生理的口臭の主発生原因である舌苔等の汚れを除去できると共に、高い汚れ除去実感を与え、かつ舌表面にしっとりとしたコーティング感を与え、使用感に優れ、舌表面への塗布性も良い舌擦掃用組成物及びこれを用いた舌の清掃方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の「舌擦掃用組成物」とは、組成物をそのまま舌表面に適用して擦掃するための組成物を意味する。
本発明の舌擦掃用組成物は、(A)(A-1)両性界面活性剤及び(A-2)ノニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上、(B)炭素数8~22の高級アルコール並びに(C)糖アルコール及びグリセリンから選ばれる1種又は2種以上を含有する。
【0012】
(A)成分は、(A-1)両性界面活性剤及び/又は(A-2)ノニオン性界面活性剤であり、(A-1)成分、(A-2)成分、又は(A-1)成分及び(A-2)成分を使用し得る。特に(A-1)成分が、舌苔除去実感及び舌表面への塗布性の面で望ましい。
【0013】
(A-1)両性界面活性剤は、炭素数10~18の炭化水素基、特にアルキル基を有するものが好ましく、前記炭素数のアルキル基を有する、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルベタイン及び脂肪酸イミダゾリウムベタインから選ばれる。
例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(コカミドプロピルベタイン)等の脂肪酸アミドプロピルベタイン;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン;ヤシ油脂肪酸イミダゾリウムベタイン等の脂肪酸イミダゾリウムベタインが挙げられ、これらは、1種単独でも2種以上を併用してもよい。中でも、舌苔除去実感の点から、脂肪酸アミドプロピルベタイン、脂肪酸イミダゾリウムベタインが好ましく、特に脂肪酸アミドプロピルベタイン、とりわけヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが好ましい。
【0014】
(A-2)ノニオン性界面活性剤は、エチレンオキサイドの平均付加モル数(以下、E.O.と略記)が60~100であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、E.O.が10~50であるポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、E.O.が10~40であるポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステルから選ばれる。前記高級アルコール、脂肪酸の炭化水素基の炭素数は12~18であることが好ましい。
例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;マルトース脂肪酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル;マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル;アルキロールアマイド;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ラウリル酸モノ又はジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステルが挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上を併用してもよい。中でも、舌苔除去実感の点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、舌苔除去実感の点から、E.O.が60~100である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、舌苔除去実感の点から、E.O.が10以上、特に10~50であり、アルキル基の炭素数12~18のものが好ましい。具体的には、上記E.O.のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等が挙げられる。
【0015】
(A)成分の配合量は、組成物全体の0.5~5%(質量%、以下同様)が好ましく、より好ましくは0.5~3%、更に好ましくは1.2~3%である。配合量が0.5%以上であると、舌苔除去効果と共に舌苔除去実感が十分に得られる。5%以下であると、舌苔除去実感を十分に保持でき、また、舌表面への塗布性が十分に良い。多く配合し過ぎると、刷掃中の泡立ちによって清掃中の舌苔除去実感が低下したり、舌表面への塗布性が損なわれる場合がある。
更に、(A)成分として(A-2)成分を配合する場合、その好ましい配合量は、特に刷掃中の泡立ちを抑制する点から、組成物全体の3%以下、特に2%以下である。
【0016】
本発明では、(B)炭素数8~22の高級アルコールと、(C)糖アルコール及びグリセリンから選ばれる1種又は2種以上とを併用することで、舌苔除去効果と共に清掃後の舌表面にしっとりとしたコーティング感を付与できるものであり、(B)又は(C)成分を欠くと、コーティング感の付与効果が劣る。
【0017】
(B)炭素数8~22の高級アルコールは、清掃後の舌表面にコーティング感を付与する作用を奏する。
高級アルコールの炭素数は8~22、好ましくは12~22、より好ましくは14~18である。炭素数が8未満又は22を超えると、十分なコーティング感を付与することができない。
【0018】
炭素数8~22の高級アルコールは、例えば、ラウリルアルコール、セタノール(セチルアルコール)、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エイコソニルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール等の直鎖脂肪族アルコール、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトステロール、ラノリンアルコール等の環状脂肪族アルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール等の分岐鎖脂肪族アルコールが挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。特に、舌表面へのコーティング感付与の点から、炭素数が上記範囲である直鎖脂肪族アルコール、分岐鎖脂肪族アルコールが好ましい。中でも、セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、とりわけセタノール及び/又はヘキシルデカノールが好ましい。これらの直鎖又は分岐鎖脂肪族アルコールを少なくとも1種以上含むと、より優れたコーティング感を付与できる。
【0019】
(B)成分の配合量は、組成物全体の2~15%が好ましく、より好ましくは5~10%である。配合量が2%以上であると、コーティング感が十分に得られる。15%以下であると、舌苔除去実感が十分に維持され、また、舌表面の清掃後のべたつき感を十分に防止し、良い使用感を保持できる。
【0020】
(C)成分は、糖アルコール及びグリセリンから選ばれる1種又は2種以上であり、糖アルコール及びグリセリンを用いることもできる。(C)成分は、清掃後の舌表面にコーティング感を付与する作用を奏する。また、湿潤剤としても作用する。
糖アルコールは、例えばソルビット、キシリット、エリスリトール等が挙げられ、特に舌表面へのコーティング感付与の点から、ソルビットが好ましい。
【0021】
(C)成分の配合量は、組成物全体の20~55%が好ましく、より好ましくは30~50%、特に好ましくは40~50%である。配合量が20%以上であると、コーティング感が十分に得られる。55%以下であると、舌苔除去実感が十分に維持され、また、舌表面の清掃後のべたつき感を十分に防止し、良い使用感及び塗布性を保持できる。
【0022】
本発明において、(A)、(B)、(C)成分の量比は、上記したそれぞれの配合量範囲から算出し、設定できるが、(A)成分と(B)成分との量比を示す(A)/(B)は、質量比として0.03~2.5が好ましく、0.06~0.8がより好ましく、更に好ましくは0.12~0.6である。また、(A)成分と(C)成分との量比を示す(A)/(C)は、質量比として0.009~0.25が好ましく、0.01~0.15がより好ましく、更に好ましくは0.03~0.10である。(A)/(B)の質量比、(A)/(C)の質量比がそれぞれ上記範囲内であると、本発明の効果がより優れ、更に好ましい。
【0023】
本発明の舌擦掃用組成物は、更に、(D)粘結剤を配合することが好ましく、(D)成分を配合すると、組成物を特にペースト状、ジェル状の形態に調製することがより容易になる。
(D)粘結剤(増粘剤)は、組成物をペースト状、ジェル状の形態に調製し易いものであれば、特に制限はなく、公知の有機粘結剤、無機粘結剤を使用できる。例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、カーボポール等の有機粘結剤、増粘性シリカ、ケイ酸アルミニウム、ビーガム等の無機粘結剤が挙げられる。中でも、有機粘結剤、特にポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウムが好ましい。これらは、1種又は2種以上で使用できる。
これら粘結剤の配合量は、組成物全体の0.5~5%が好ましく、特に0.5~3%が好ましい。
【0024】
本発明の舌擦掃用組成物には、上記成分に加えて、これら以外の成分を必要に応じて添加することができ、通常、口腔用組成物に使用されている公知成分を本発明の効果を損なわない範囲で任意に配合することができる。配合できる任意成分としては、湿潤剤、甘味剤、防腐剤、pH調整剤、香料、薬効成分等が挙げられる。
なお、本発明の舌擦掃用組成物では、任意の界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を配合することもできるが、アニオン性界面活性剤、特にラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩を配合すると、舌表面を擦掃中に泡立ち過ぎて舌苔除去実感が損なわれることがあり、配合しないほうが好ましい。したがって、アルキル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤を配合する場合は、舌苔除去実感の点から、その配合量が組成物全体の0.3%以下、特に0.1%以下が好ましく、配合量が0%であることが特に好ましい。
【0025】
任意の湿潤剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。ポリエチレングリコールは、平均分子量(医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量)190~3800、特に190~2150のものが適している。これら湿潤剤の配合量は、組成物全体の0.5~10%が好ましい。
【0026】
甘味剤は、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ペリラルチン、グリチルリチン、ソーマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル等が挙げられる。
防腐剤は、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
pH調整剤は、クエン酸、乳酸等の有機酸やその塩類;塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の無機化合物が挙げられる。
【0027】
香料は、公知の口腔用香料、例えばメントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、シトロネリルアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、桂葉油、シソ油、冬緑油、丁字油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0028】
薬効成分は、ビタミンE等の血行促進剤;アラニン、グリシン、プロリン等のアミノ酸が挙げられる。なお、薬効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0029】
更に、任意成分として、雲母チタン、酸化チタン、ベントナイト等の無機化合物;結晶性セルロース等のセルロース系の有機粉末;寒天、ゼラチン、デンプン、グルコマンナン等の天然高分子化合物;ポリ酢酸ビニル、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ナイロン末、ポリエチレン末等の合成高分子化合物又はそれらの共重合体;カルナバワックス、ロジン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、パラフィンワックス等のワックス類;ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、シリコーン、天然ゴムを配合することもできる。
また、任意成分として流動パラフィン等の炭化水素類を組成物全体の1~10%添加し、組成物をペースト状、ジェル状の形態にすることを更に容易にすることもできる。
【0030】
本発明の舌擦掃用組成物は、公知の方法で調製でき、例えば、水溶性成分を溶解させた水溶液と粘結剤を分散させた油性成分とを混合した後、香料、分散剤等を混合して調製することができる。
【0031】
本発明の舌擦掃用組成物は、特に舌苔除去実感、舌のコーティング感の付与及び舌表面への塗布性の点から、ペースト状、ジェル状の形態であることが好ましく、ジェル状組成物であることがより好ましい。この場合、舌擦掃用組成物の粘度は、25℃においてBH型粘度計で測定した粘度が1,000~100,000mPa・s、特に5,000~70,000mPa・sが好ましい。
【0032】
本発明の舌擦掃用組成物は、舌表面清掃用の塗布剤として使用することができる。
この場合、舌擦掃用組成物を、舌擦掃用具を用いて舌の表面に塗布した後、舌表面を擦掃して使用することで清掃し、舌苔等の汚れを除去することが好ましい。好ましい使用方法は、舌擦掃用組成物を舌擦掃用具の舌への適用部に載せ、この適用部を舌表面に適用して塗布した後、舌擦掃用具を舌奥から舌先方向に向かって引き出して前記適用部によって舌表面を擦って擦掃する操作を繰り返し行い、舌の表面全体に組成物をまんべんなく塗布しながら舌表面の汚れを掻き出し、擦掃する。上記舌奥から舌先方向に引き出す擦掃操作は、好ましくは5~60秒間、より好ましくは10~30秒間程度行う。このようにして使用すると、化学的作用及び物理的手段によって、舌表面、更には舌乳頭間に強固に付着した舌苔等の汚れを除去する作用効果がより高まる。
舌擦掃用組成物の使用量は、適宜調整できるが、1回あたり0.2~1.0gが好ましい。
【0033】
上記舌擦掃用具としては、舌への適用部として、舌に適用可能なブラシ部を有するブラシ状擦掃用具が好ましく、例えば歯ブラシ、舌ブラシが挙げられる。これらは、公知のものを用いることができ、市販品を使用することもできる。
好ましい舌擦掃用具として、実用新案登録第3146526号に記載された舌クリーナーを使用することもできる。具体的には、ハンドル部、前記ハンドル部から延長されたネック部、前記ネック部の先端に設けられたヘッド部を備え、前記ヘッド部は刷毛の毛束(ブラシ部)を有し、毛束の少なくとも一部又は全てが前記ハンドル部側に向かって傾斜している舌クリーナーである。更に好ましくは、前記ヘッド部の刷毛よりも先端側に、刷毛の毛束によって除去された汚れを掻き取って回収するためのスクレーパー部が突出した状態で設けられている舌用ブラシである。上記舌クリーナーは、ハンドル部を手で持ち、ネック部先端のヘッド部の刷毛に舌擦掃用組成物を適量載せて舌に適用して上述のように擦掃操作を行うことができる。更に、スクレーパー部として、へら状等のスクレーパーを有するものは、擦掃操作時にブラシ部の刷毛で舌表面から除去した汚れをスクレーパーによって回収できるため、舌苔等の汚れの除去効果が高まり、汚れの除去実感が更に向上する。
このような舌擦掃用具の市販品としては、例えばライオン(株)製の舌クリーナー、商品名;「NONIO舌クリーナー」を用いることができる。
【実施例
【0034】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0035】
[実施例、比較例]
表1~3に示す組成の舌擦掃用組成物(ジェル状組成物)を常法によって調製し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。
なお、実施例の舌擦掃用組成物は、いずれも十分な舌苔の除去効果を有していた。また、製剤粘度(25℃でBH型粘度計で測定した粘度)は、いずれも1,000~100,000mPa・sの範囲であった。
【0036】
<評価方法>
「舌苔除去実感」、「清掃後の舌のコーティング感」、「塗布性」を、被験者4人によって下記方法で評価した。なお、被験者は、評価前日の夕食後以降、口腔清掃を停止し、翌日に下記方法で舌清掃を行い、各評価をした。
清掃方法:
舌ブラシに試験サンプルの舌擦掃用組成物0.3gを舌擦掃用具のブラシ上に載せ、舌の表面上に塗布して奥から手前に引き出して擦る操作を繰り返し、30秒間(約20回)行い、清掃した。舌擦掃用具としては、舌ブラシ(ライオン(株)製、商品名;「NONIO舌クリーナー」)を使用した。
【0037】
(1)舌苔除去実感
舌苔除去実感は、清掃後の舌表面の色の変化(白~茶色→ピンク)を、鏡を用いて目視で確認し、下記の評点基準で判定した。舌表面の色(白~茶色)がピンク色に変化しているものほど除去効果が感じられ、舌苔除去実感が高いと判断した。
評点基準
4:除去効果を強く感じる
3:除去効果を感じる
2:除去効果をあまり感じない
1:除去効果を感じない
【0038】
(2)清掃後の舌のコーティング感
清掃後の舌のコーティング感は、清掃後、水で口の中をすすいだ後の舌のしっとりとしたコーティング感(湿潤感)の有無について、下記の評点基準で判定した。
評点基準
4:しっとりとしたコーティング感を強く感じる
3:しっとりとしたコーティング感を感じる
2:しっとりとしたコーティング感をあまり感じない
1:しっとりとしたコーティング感を感じない
【0039】
(3)塗布性(舌表面への広げやすさ)
塗布性は、清掃時に試験サンプルの舌擦掃用組成物を載せた舌ブラシを舌の奥から手前に引いた時、試験サンプルの舌表面への広げやすさについて、下記の評点基準で判定した。
評点基準
4:舌表面に非常に広げやすい
3:舌表面に広げやすい
2:やや舌表面に広げにくい
1:舌表面に広げにくい
【0040】
これらの判定結果は、それぞれ4人の平均値を求めて下記に示す評価基準に基づいて評価した。
評価基準
◎:4人の平均点が3.0点以上4.0点以下
○:4人の平均点が2.5点以上3.0点未満
×:4人の平均点が2.5点未満
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】