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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】シールドフラットケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20240123BHJP
   H01B 11/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B11/00 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019155423
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021034283
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 千明
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-165561(JP,A)
【文献】特開2009-037959(JP,A)
【文献】特開2004-087312(JP,A)
【文献】特許第6382420(JP,B1)
【文献】特開2007-299704(JP,A)
【文献】実開昭63-165719(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配列された複数のグランド線と、
前記グランド線に平行に配列された複数の信号線と、
前記グランド線および前記信号線を覆う絶縁層と、
前記絶縁層の外面側に設けたシールド層を有するシールドフラットケーブルであって、
前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、
前記グランド線の配列方向と垂直な方向であって前記グランド線の中心から一方の方向を第一方向、前記グランド線の中心から他方の方向を第二方向としたときに
前記グランド線の中心位置における前記絶縁層の前記第一方向の厚みをDG1、
前記グランド線の中心位置における前記絶縁層の前記第二方向の厚みをDG2、
前記信号線の中心位置における前記絶縁層の前記第一方向の厚みをDS1、
前記信号線の中心位置における前記絶縁層の前記第二方向の厚みをDS2、
とした場合に、DG1<DS1かつDG2<DS2であり、
前記絶縁層の表面が、波状に変化または凹みを有し、
隣接する2本の前記信号線が、2本の前記グランド線の間に配列される、シールドフラットケーブル。
【請求項2】
前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記グランド線の配列方向に垂直な方向における前記グランド線の厚みが、前記信号線の配列方向に垂直な方向における前記信号線の厚みよりも大きい、請求項1に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項3】
前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記グランド線の配列方向における前記グランド線の幅が、前記信号線の配列方向における前記信号線の幅よりも大きい、請求項1または請求項2に記載のシールドフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールドフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルフラットケーブル(FFC)は、CDやDVDプレーヤ等のAV機器、コピー機やプリンタ等のOA機器、その他電子・情報機器の内部配線等の多くの分野で、省スペース化と簡便な接続を目的として用いられている。また、機器の使用周波数が高くなるとノイズの影響が大きくなることから、シールドされたシールドフラットケーブルが用いられる。
【0003】
シールドフラットケーブルのシールドは、例えば、FFCの外側にシールド層を設けることにより行われる。このシールド層は、例えば、特許文献1に開示されているように、シールドフラットケーブルのグランド線の片面に設けた開口部を通して、グランド線と電気的に接続され、グランド線を通して基板側のグランド電位に維持されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-283053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シールド層で囲まれた各導体は、ケーブル外部からのノイズの影響が受けにくく、また、ケーブル外部に対してノイズを発生するなどの悪影響を及ぼさないために、高速信号伝送が可能である。しかし、シールド層で囲まれた各導体間にはクロストークが発生する。また、特許文献1に記載のシールドフラットケーブルは、グランド線を連続的または部分的に露出させる必要があった。
【0006】
本開示は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で外部ノイズやクロストークの影響を受けにくいシールドフラットケーブルを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るシールドフラットケーブルは、平行に配列された1つまたは複数のグランド線と、前記グランド線に平行に配列された1つまたは複数の信号線と、前記グランド線および前記信号線を覆う絶縁層と、前記絶縁層の外面側に設けたシールド層を有するシールドフラットケーブルであって、前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記グランド線の配列方向中心位置における前記絶縁層の厚みが、前記信号線の配列方向中心位置における前記絶縁層の厚みより小さい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、外部ノイズやクロストークの影響を受けにくいシールドフラットケーブルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
図2】本開示に係るシールドフラットケーブルの製造過程の一例を説明するための図である。
図3】シールドフラットケーブルのNEXT(近端漏話減衰量)の特性を示す図である。
図4】シールドフラットケーブルのFEXT(遠端漏話減衰量)の特性を示す図である。
図5】本開示の参考例となるシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
図6】本開示の第2の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
図7】本開示の第3の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
図8】本開示の第4の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
図9】本開示の第5の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係るシールドフラットケーブルは、平行に配列された1つまたは複数のグランド線と、前記グランド線に平行に配列された1つまたは複数の信号線と、前記グランド線および前記信号線を覆う絶縁層と、前記絶縁層の外面側に設けたシールド層を有するシールドフラットケーブルであって、前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記グランド線の配列方向中心位置における前記絶縁層の厚みが、前記信号線の配列方向中心位置における前記絶縁層の厚みより小さい。
【0011】
この構成により、信号線をグランド線とシールド層で取り囲むことができるため、信号線を確実にシールドでき、外部ノイズやクロストークの影響を受けにくくできる。
【0012】
(2)前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記グランド線の配列方向に垂直な方向における前記グランド線の厚みが、前記信号線の配列方向に垂直な方向における前記信号線の厚みよりも大きくてよい。
この構成により、シールドフラットケーブルの長手方向に垂直な断面において、絶縁層のグランド線の配列方向中心位置の厚みを、絶縁層の信号線の配列方向中心位置の厚みよりも小さくしやすくなる。
【0013】
(3)前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記グランド線の配列方向における前記グランド線の幅が、前記信号線の配列方向における前記信号線の幅よりも大きくてもよい。
この構成により、グランド線とシールド層との対向面積を大きくできるため、信号線を確実にシールドでき、外部ノイズやクロストークの影響を受けにくくできる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しながら、本開示のシールドフラットケーブルに係る好適な実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内および均等の範囲内におけるすべての変更を含む。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本発明は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本開示の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
本実施形態に係るシールドフラットケーブル1は、互いに平行に配列された複数の導体10と、これらの導体10を覆う第1の絶縁層21、第2の絶縁層22と、第1の絶縁層21、第2の絶縁層22の外面側をそれぞれ覆う第1のシールド層31、第2のシールド層32を備えている。そして、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22の表面は、波状に変化しており、同様に、第1のシールド層31、第2のシールド層32の表面も波状に変化している。なお、本開示では、図1に示すX軸、Y軸、Z軸について、X軸は導体10の長手方向を、Y軸は複数の導体10の配列方向を、Z軸はシールドフラットケーブル1の厚みまたは高さ方向を示すものとする。各軸は、他の実施形態についても同様である。
【0016】
導体10は、信号ラインをS、接地ラインをGとした場合、配列方向(Y軸方向)に、G-S-S-G-S-S-G-S-S-G・・・のように、1本のグランド線Gと2本の信号線Sとが繰り返されるように配列されている。本実施形態では、2本のグランド線G1,G2の間に、信号線S1,S2が配列され、2本のグランド線G2,G3の間に、2本の信号線S3,S4が配列されている。この場合、隣接する2本の信号線S1,S2および信号線S3,S4はそれぞれ差動伝送に用いられる。なお、上記の配列の他に、G1-G2-S1-S2-G3-G4-S3-S4-G5-G6-S5-S6-G7-G8のように、2本の信号線Sと2本のグランド線Gとが繰り返されるように配列してもよい。さらに、差動伝送を行わない場合は、1本の信号線Sがグランド線Gに挟まれるようにしてもよい。
【0017】
本実施形態では、導体10として、銅箔、錫メッキ軟銅箔等の導電性金属からなる細径電線が用いられるが、グランド線G1~G3の太さを、信号線S1~S4の太さよりも大きくしている。例えば、シールドフラットケーブル1では、グランド線G1~G3として、AWG(American Wire Gauge)32番(直径0.2019mm、断面積0.03203mm2)を用い、信号線S1~S4としてAWG34番(直径0.1601mm、断面積0.02014mm2)が用いることができる。グランド線G1~G3と信号線S1~S4の導体10ピッチは、0.4mmから2.0mm程度の適宜の長さで配列される。
【0018】
第1、第2の絶縁層21,22は、その内面(接合面)に接着層(図示省略)を有する樹脂フィルムを貼り合わせることによって構成される。第1、第2の絶縁層21,22自体は、柔軟性に優れた一般的な樹脂フィルムが使用され、例えば、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の汎用性のある樹脂フィルムを用いることができる。この樹脂フィルムの厚さとしては、9μm~100μmのものが用いられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0019】
第1の絶縁層21、第2の絶縁層22の接着層としては、樹脂材料からなるものが使用され、例えば、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂に難燃剤を添加した接着剤などが挙げられる。この接着層は、10μm~150μmの範囲の適宜の厚さで形成される。第1の絶縁層21、第2の絶縁層22は、導体10を挟んで接着層を向き合わせ、加熱ローラで熱を加えながら接合することにより貼り合わされ一体化される。なお、第1の絶縁層21、第2の絶縁層22は、接着層を用いずに、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、あるいはポリフェニレンサルファイド等の単層の樹脂等で形成してもよい。この場合、樹脂の厚さは例えば400μm程度にしてもよい。
【0020】
第1のシールド層31と第2のシールド層32は、それぞれの厚みが10~200μm程度で、金属層と接着層(図示省略)の2層構造からなるフィルムを用いて形成される。第1のシールド層31と第2のシールド層32の金属層としては、例えば金属箔、あるいは、絶縁フィルム上に形成した金属蒸着膜等を用いることができる。第1のシールド層31と第2のシールド層32の金属材料としては、比較的安価で導電性に優れる銅またはアルミニウムが好適である。また、第1のシールド層31と第2のシールド層32の厚さは、薄くしすぎるとシールド層の電気抵抗が大きくなるため、シールド効果は低下する。反対に、第1のシールド層31と第2のシールド層32を厚くすると、シールド効果は得られるものの、シールドフラットケーブル1の可撓性が損なわれる。そのため、第1のシールド層31と第2のシールド層32の厚さは、使用状況に応じて選択すればよい。第1のシールド層31と第2のシールド層32は、その接着層を内側にして、それぞれ第1の絶縁層21と第2の絶縁層22とに貼付される。
【0021】
本実施形態では、グランド線G1~G3の太さを、信号線S1~S4の太さよりも大きくしている。そして、図1に示すように、長手方向に垂直な断面において、第1の絶縁層21の厚みについて、グランド線G1~G3の配列方向(Y軸方向)中心位置の厚みDG1を、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS1より小さくなるようにしている。
また、第2の絶縁層22の厚みについて、グランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG2を、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS2より小さくなるようにしている。
また、グランド線G1~G3の太さを信号線S1~S4の太さよりも大きくしているため、グランド線G1~G3と第1,第2のシールド層31,32が対向する配列方向の幅WGが、信号線S1~S4と第1,第2のシールド層31,32が対向する配列方向の幅WSよりも大きくなっている。
【0022】
この構成によって、グランド線G1~G3と第1,第2のシールド層31,32との間の静電容量が小さくなり、高周波ノイズに対しての両者間のリアクタンスが小さくなる。したがって、例えば、1対の信号線S1,S2は、高周波ノイズに対して、グランド線G1、第1のシールド層31、グランド線G2,第2のシールド層32によって取り囲まれてシールドされる。このため、グランド線G1,G2は、信号線S1,S2の並列方向からのノイズを遮断するシールドとして機能する。
【0023】
(製造方法)
次に、本実施形態のシールドフラットケーブルの製造方法の一例について説明する。図2は、本開示に係るシールドフラットケーブルの製造過程の一例を説明するための図であり、シールドフラットケーブルの製造方法として、加熱ロールを用いた例を示している。なお、図2は、シールドフラットケーブルを構成する各部材の積層関係を分かり易く示すため、各部材の実際の厚みとは異なっている。
【0024】
本実施形態のシールドフラットケーブル1は、第1の絶縁層21、平行に配列させた複数の導体10、第2の絶縁層22を、加熱ローラによって押圧し、互いに貼り合わせることによって得ている。製造装置は、絶縁層形成用の一対の加熱ローラR11,R12と、この加熱ローラR11,R12の後段に、シールド層形成用の一対の加熱ローラR21,R22を有している。まず、一対の加熱ローラR11,R12との間に、平行に配列させた複数の導体10を供給するとともに、導体10の表面側(Z軸方向プラス側)に、図示しない支持フィルムに連結された第1の絶縁層21を供給し、さらに、導体10の裏面(Z軸方向マイナス側)側に、同じく図示しない支持テープに連結された第2の絶縁層22を供給する。
【0025】
ここで、複数の導体10は、先述したように、所定の配置と間隔でグランド線G1~G3と信号線S1~S4が平行に配列される。第1の絶縁層21と第2の絶縁層22が接着層を有する場合は、接着層同士が対向するように、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22を1段目の加熱ローラR11とR12との間に供給する。そして、貼付工程として、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22で導体10を挟み込んで、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22を貼り合わせ、長尺のフラットケーブルを作製する。
【0026】
次に、1段目の加熱ローラR11,R12から送られてきたフラットケーブルの表面側と裏面側を、それぞれ第1のシールド層31と第2のシールド層32で挟んで、2段目の加熱ローラR21,R22の間に供給する。この場合、第1のシールド層31と第2のシールド層32に設けた接着層が互いに対向する向きとなるように、第1のシールド層31と第2のシールド層32を配置する。そして、第1のシールド層31と第2のシールド層32を、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22のそれぞれの表面に貼り合わせて、シールドフラットケーブル1を得る。
【0027】
本実施形態では、1段目の加熱ローラR11,R12、および、2段目の加熱ローラR21,R22として、表面が円筒状のゴムローラを用いている。これにより、加熱ローラR11,R12,R21,R22は、表面が変形可能である。第1の絶縁層21と第2の絶縁層22で導体10を挟み込んで、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22を導体10に貼り合わせる際に、太いグランド線G1~G3に位置する第1の絶縁層21と第2の絶縁層22には、細い信号線S1~S4の位置にある第1の絶縁層21と第2の絶縁層22よりも大きな力がかかる。これにより、図1に示すように、第1の絶縁層21の厚みは、グランド線G1~G3の各配列方向中心位置の厚みDG1が、信号線S1~S4の各配列方向中心位置の厚みDS1より小さくなるとともに、第2の絶縁層22の厚みは、グランド線G1~G3の各配列方向中心位置の厚みDG2が、信号線S1~S4の各配列方向中心位置の厚みDS2より小さくなる。また、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22の表面は、導体10の位置に合わせて波状に変形する。
【0028】
そして、加熱ローラR11とR12の硬度が同じであれば、第1の絶縁層21におけるグランド線G1~G3の各配列方向中心位置の厚みDG1と第2の絶縁層22におけるグランド線G1~G3の各配列方向中心位置の厚みDG2とはほぼ等しくなり、かつ、第1の絶縁層21における信号線S1~S4の各配列方向中心位置の厚みDS1と第2の絶縁層22における信号線S1~S4の各配列方向中心位置の厚みDS2とはほぼ等しくなる。このため、本実施形態においては、長手方向に垂直な断面において、第1、第2の絶縁層21,22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みが、第1、第2の絶縁層21,22の信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みより小さくなる。
【0029】
(伝送特性)
次に、本開示に係るシールドフラットケーブルの伝送特性について説明する。図3は、シールドフラットケーブルのNEXT(近端漏話減衰量)の特性を示す図であり、図4は、シールドフラットケーブルのFEXT(遠端漏話減衰量)の特性を示す図である。また、図5は、本開示の参考例となるシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
【0030】
図3図4に示す特性1は、本実施形態のシールドフラットケーブル1の特性であり、特性2は、図5に示す参考例のシールドフラットケーブル2の特性である。本実施形態のシールドフラットケーブル1と参考例のシールドフラットケーブル2とは、本実施形態のシールドフラットケーブル1が、グランド線G1~G3としてAWG32番をまた信号線S1~S4としてAWG34番の線を用いているのに対して、参考例のシールドフラットケーブル2では、グランド線G1~G3および信号線S1~S4としてAWG34番の線を用いている点が異なる。このため、参考例のシールドフラットケーブル2では、図5に示すように、第1の絶縁層21のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG1と、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS1とが同じであり、また、第2の絶縁層22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG2と、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS2とが同じになっている。
【0031】
そして、近端クロストークについては、図3に示すように、0~10GHzの周波数帯域において、NEXTは、本実施形態のシールドフラットケーブル1の方が、参考例のシールドフラットケーブル2よりも大幅に小さくなっている。同様に、遠端クロストークについても、図4に示すように、0~10GHzの周波数帯域において、FEXTは、本実施形態のシールドフラットケーブル1の方が、参考例のシールドフラットケーブル2よりも大幅に小さくなっている。このように、本実施形態では、シールドフラットケーブルのクロストークを大幅に改善することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
図6は、本開示の第2の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。本実施形態に係るシールドフラットケーブル3は、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1と同様に、互いに平行に配列された複数の導体10と、これらの導体10を覆う第1の絶縁層21、第2の絶縁層22と、第1の絶縁層21、第2の絶縁層22の外面側をそれぞれ覆う第1のシールド層31、第2のシールド層32を備えている。そして、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22の表面、および、第1のシールド層31と第2のシールド層32の表面が平面状である点が、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1と異なっている。
【0033】
本実施形態のシールドフラットケーブル3では、グランド線G1~G3の太さを、信号線S1~S4の太さよりも大きくしている。そして、図6に示すように、長手方向に垂直な断面において、第1の絶縁層21のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG1が、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS1より小さくなるようにしている。また、第2の絶縁層22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG2が、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS2より小さくなるようにしている。これにより、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
本実施形態のシールドフラットケーブル2を製造に当たっては、図2で説明した加熱ローラを用いることができる。ただし、図2の1段目の加熱ローラR11とR12として、表面が円筒状の金属ローラを用いている。加熱ローラR11とR12としてゴムローラを用いた場合は、ゴムローラが変形するため、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22とは導体10の位置でゴムローラ側に変形することができ、表面は波状に形成される。しかし、加熱ローラR11とR12として金属ローラを用いた場合は、金属ローラの表面は硬度が高いため、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22とが加熱ローラR11とR12との間で押圧されても、加熱ローラR11とR12は変形することがない。このため、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22の表面は、図6で示すように互いに平坦な平行面に形成される。
【0035】
そして、グランド線G1~G3の太さが信号線S1~S4の太さよりも大きいため、本実施形態のシールドフラットケーブル3は、長手方向に垂直な断面において、第1、第2の絶縁層21,22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みが、第1、第2の絶縁層21,22の信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みより小さくなる。
【0036】
(第3の実施形態)
図7は、本開示の第2の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。本実施形態に係るシールドフラットケーブル4は、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1と同様に、互いに平行に配列された複数の導体10と、これらの導体10を覆う第1の絶縁層21、第2の絶縁層22と、第1の絶縁層21、第2の絶縁層22の外面側をそれぞれ覆う第1のシールド層31、第2のシールド層32を備えている。そして、第1の絶縁層21と第1のシールド層31の表面が波状に形成され、第2のシールド層32と第2のシールド層32の表面が平面状に形成されている点が、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1と異なっている。
【0037】
本実施形態のシールドフラットケーブル4では、グランド線G1~G3の太さを、信号線S1~S4の太さよりも大きくしている。そして、図7に示すように、長手方向に垂直な断面において、第1の絶縁層21のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG1が、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS1より小さくなるようにしている。また、第2の絶縁層22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG2が、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS2より小さくなるようにしている。これにより、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1と同様の効果を得ることができる。
【0038】
本実施形態のシールドフラットケーブル4を製造に当たっては、図2で説明した加熱ローラを用いることができる。ただし、図2の1段目の加熱ローラR11とR12として、第1の絶縁層21側に配置した加熱ローラR11に表面が円筒状のゴムローラを用い、第2の絶縁層22側に配置した加熱ローラR12に表面が円筒状の金属ローラを用いる。これにより、シールドフラットケーブル4の第1の絶縁層21の形状は、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1の第1の絶縁層21の形状と同様の波状になり、シールドフラットケーブル4の第2の絶縁層22の形状は、第2の実施形態のシールドフラットケーブル3の第2の絶縁層22の形状と同様の形状になる。
【0039】
したがって、本実施形態のシールドフラットケーブル4は、長手方向に垂直な断面において、第1、第2の絶縁層21,22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みが、第1、第2の絶縁層21,22の信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みより小さくなる。
【0040】
(第4の実施形態)
図8は、本開示の第4の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。本実施形態に係るシールドフラットケーブル5は、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1と同様に、互いに平行に配列された複数の導体10と、これらの導体10を覆う第1の絶縁層21、第2の絶縁層22と、第1の絶縁層21、第2の絶縁層22の外面側をそれぞれ覆う第1のシールド層31、第2のシールド層32を備えている。そして、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1とは、導体10の断面形状が異なっている。
【0041】
本実施形態では、導体10として平形導体を用いている。信号線S1~S4は、例えば、銅箔、錫メッキ軟銅箔等の導電性金属からなり、例えば、厚さが10μm~100μmで、幅が0.2~0.8mm程度の平形導体が用いられる。また、グランド線G1~G3は信号線S1~S4よりも、長手方向の断面で配列方向に垂直な方向(Z軸方向)の高さが高い平形導体を用いている。また、グランド線G1~G2と信号線S1~S4の導体10のピッチは、0.4mmから2.0mm程度の適宜の長さで配列される。
【0042】
このように、本実施形態のシールドフラットケーブル5では、グランド線G1~G3の配列方向に垂直な方向の高さを、信号線S1~S4のそれよりも高くしている。そして、図8に示すように、長手方向に垂直な断面において、第1の絶縁層21のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG1が、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS1より小さくなるようにしている。また、第2の絶縁層22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG2が、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS2より小さくなるようにしている。これにより、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1と同様の効果を得ることができる。
【0043】
本実施形態のシールドフラットケーブル5の製造に当たっては、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1の製造方法と同様の方法を用いることができる。すなわち、1段目の加熱ローラR11,R12、および、2段目の加熱ローラR21,R22として、表面が円筒状のゴムローラを用いる。これにより、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22で導体10を挟み込んで、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22を導体10に貼り合わせる際に、高いグランド線G1~G3に位置する第1の絶縁層21と第2の絶縁層22には、低い信号線S1~S4の位置にある第1の絶縁層21と第2の絶縁層22よりも大きな力がかかるため、図1に示すように、第1の絶縁層21の厚みは、グランド線G1~G3の各配列方向中心位置の厚みDG1が、信号線S1~S4の各配列方向中心位置の厚みDS1より小さくなる。同様に、第2の絶縁層22の厚みは、グランド線G1~G3の各配列方向中心位置の厚みDG2が、信号線S1~S4の各配列方向中心位置の厚みDS2より小さくなる。また、ゴムローラが変形するため、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22とは導体10の位置でゴムローラ側に変形することができ、表面は平面状にはならない。
【0044】
したがって、本実施形態のシールドフラットケーブル5は、長手方向に垂直な断面において、第1、第2の絶縁層21,22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みが、第1、第2の絶縁層21,22の信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みより小さくなる。
【0045】
(第5の実施形態)
図9は、本開示の第5の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。本実施形態に係るシールドフラットケーブル6は、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1と同様に、互いに平行に配列された複数の導体10と、これらの導体10を覆う第1の絶縁層21、第2の絶縁層22と、第1の絶縁層21、第2の絶縁層22の外面側をそれぞれ覆う第1のシールド層31、第2のシールド層32を備えている。そして、本実施形態のシールドフラットケーブル6は、他の実施形態のシールドフラットケーブルとは、グランド線G1~G3および信号線S1~S4の導体10として、同じ断面形状の導体10を用いている点が異なっている。
【0046】
本実施形態では、グランド線G1~G3および信号線S1~S4の導体10として、断面が矩形状の平形導体を用いている。そして、図9に示すように、長手方向に垂直な断面において、第1の絶縁層21のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG1が、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS1より小さくなるようにしている。また、第2の絶縁層22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG2が、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS2より小さくなるようにしている。これにより、第1の実施形態のシールドフラットケーブル1と同様の効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態のシールドフラットケーブル6を製造に当たっては、図2で説明した加熱ローラを用いることができる。この場合、図2の1段目の加熱ローラR11とR12として、表面にリング状の凸部を設けた金属ローラを用いる。加熱ローラR11とR12のリング状の凸部は、加熱ローラR11とR12に供給されるグランド線G1~G3が位置する箇所に設けられる。このため、グランド線G1~G3が位置する箇所の第1の絶縁層21と第2の絶縁層22は、加熱ローラR11とR12との間で押圧されて凹むことになる。これにより、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22の表面は、図9で示すように、第1の絶縁層21のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG1が、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS1より小さくなり、かつ、第2の絶縁層22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みDG2が、信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みDS2より小さくなる。
【0048】
また、本実施形態のシールドフラットケーブル6を製造に当たっては、図2で説明した加熱ローラを用いる以外に、押出成形機を用いて製造することができる。この場合、押出成形機に備えられたクロスヘッド部に、複数本の導体10を案内して挿入し、導体10の外周に、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22となる溶融された絶縁樹脂を供給して、押出被覆する。
【0049】
このように、本実施形態のシールドフラットケーブル6は、長手方向に垂直な断面において、第1、第2の絶縁層21,22のグランド線G1~G3の配列方向中心位置の厚みが、第1、第2の絶縁層21,22の信号線S1~S4の配列方向中心位置の厚みより小さくなる。なお、本実施形態では、導体10として断面矩形状の平角導体を用いたが、断面円形の同じ断面積を有する丸線を用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1~6…のシールドフラットケーブル、10…導体、21…第1の絶縁層、22…第2の絶縁層、31…第1のシールド層、32…第2のシールド層、G1~G3…グランド線、R11~R22…加熱ローラ、S1~S4…信号線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9