(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】包餡麺帯食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20240123BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20240123BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L7/109 B
(21)【出願番号】P 2019158636
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-06-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(72)【発明者】
【氏名】▲瀧▼田 香織
(72)【発明者】
【氏名】平本 仁奈
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-154541(JP,A)
【文献】特開平06-245740(JP,A)
【文献】遊離アミノ酸データーベース, [online],2019年01月25日,[Retrieved on 24-05-2023], Retrieved from the internet:<URL: https://www.mgu.ac.jp/main/educations/library/publication/seikatsu/no51/yuri_aminosan_db.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離又は塩形態のアルギニンを含有する組成物が加熱されて形成される焼き面を有する
冷凍包餡麺帯食品であって、
前記組成物における遊離又は塩形態のアルギニンの含有量が、0.03~2.5重量%である、
冷凍包餡麺帯食品。
【請求項2】
前記組成物が、水、デンプン類、穀物粉及び油からなる群より選択される少なくとも一つを更に含有する、請求項
1記載の
冷凍包餡麺帯食品。
【請求項3】
包餡麺帯食品が、餃子である、請求項1
又は2記載の
冷凍包餡麺帯食品。
【請求項4】
遊離又は塩形態のアルギニンを含有する組成物を表面に付着させて加熱すること
及び加熱後に焼き面を有する包餡麺帯食品を凍結することを含む、
冷凍包餡麺帯食品の製造方法であって、
前記組成物における遊離又は塩形態のアルギニンの含有量が、0.03~2.5重量%である、製造方法。
【請求項5】
前記組成物が、水、デンプン類、穀物粉及び油からなる群より選択される少なくとも一つを更に含有する、請求項
4記載の製造方法。
【請求項6】
包餡麺帯食品が、餃子である、請求項
4又は5記載の製造方法。
【請求項7】
遊離又は塩形態のアルギニンを含有する、
焼き面形成後に凍結される包餡麺帯食品の焼き面形成用組成物であって、
遊離又は塩形態のアルギニンの含有量が、0.03~2.5重量%である、組成物。
【請求項8】
水、デンプン類、穀物粉及び油からなる群より選択される少なくとも一つを更に含有する、請求項
7記載の組成物。
【請求項9】
包餡麺帯食品が、餃子である、請求項
7又は
8記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包餡麺帯食品及びその製造方法に関する。また本発明は、包餡麺帯食品の焼き面形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
餃子や小籠包等の包餡麺帯食品は、従来より、消費者に人気の高い食品の一つである。包餡麺帯食品の調理方法は、その種類等に応じて種々選択され得るが、例えば、餃子は、フライパン等の焼き器を用いて加熱(蒸し焼き等)して焼き餃子とするのが一般的である。焼き餃子は、キメが細かく、程良い焼き色がついた焼き面を有するものが一般に好まれる傾向にあり、そのような好ましい外観の焼き面を有する餃子を製造するための方法として、従来、所定のバッター液等を予め餃子底面等に付着させておき、当該餃子を加熱することにより、焼き餃子に好ましい外観の焼き面を形成すること等が提案されている。
【0003】
例えば、水、油脂、乳化剤を必須とし、これに穀物粉、タンパク質、調味料のいずれか一種類以上を添加して乳化させたエマルジョンを、餃子底面のみにつけて焼くことによって、いったん冷凍品にしてこれを蒸し解凍しても、焼きたてに近い食感と風味があり、焼き面の色が美しく、ふやけが抑えられる焼き餃子の製造法(特許文献1)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の製造方法よって得られる焼き餃子は優れた製品であるものの、従来の技術には、包餡麺帯食品(例、餃子等)の焼き面の外観の向上について、改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、焼き面の外観が向上した包餡麺帯食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決するべく鋭意検討した結果、アルギニンを含有する組成物(例、バッター液等)を包餡麺帯食品の表面に付着させて加熱することよって、包餡麺帯食品の焼き面が、キメが細かく、程良い焼き色がついた好ましい外観となり得ることを見出した。また、本発明者らは、アルギニンを含有する組成物を包餡麺帯食品の表面に付着させて加熱することよって、包餡麺帯食品の焼き面が、クリスピー感を有する好ましい食感となり得ることも見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づき、更に研究を重ねることによって、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1]遊離又は塩形態のアルギニンを含有する組成物が加熱されて形成される焼き面を有する包餡麺帯食品。
[2]冷凍品である、[1]記載の包餡麺帯食品。
[3]前記組成物における前記アルギニンの含有量が、0.01~2.5重量%である、[1]又は[2]記載の包餡麺帯食品。
[4]前記組成物が、水、デンプン類、穀物粉及び油からなる群より選択される少なくとも一つを更に含有する、[1]~[3]のいずれか一つに記載の包餡麺帯食品。
[5]前記組成物が、水を更に含有し、前記組成物における水の含有量が、20~80重量%である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の包餡麺帯食品。
[6]前記組成物が、デンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つを更に含有し、前記組成物におけるデンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つの含有量が、3~40重量%である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の包餡麺帯食品。
[7]前記組成物が、油を更に含有し、前記組成物における油の含有量が、5~65重量%である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の包餡麺帯食品。
[8]包餡麺帯食品が、餃子である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の包餡麺帯食品。
[9]遊離又は塩形態のアルギニンを含有する組成物を表面に付着させて加熱することを含む、包餡麺帯食品の製造方法。
[10]包餡麺帯食品を加熱後に凍結することを含む、[9]記載の製造方法。
[11]前記組成物における前記アルギニンの含有量が、0.01~2.5重量%である、[9]又は[10]記載の製造方法。
[12]前記組成物が、水、デンプン類、穀物粉及び油からなる群より選択される少なくとも一つを更に含有する、[9]~[11]のいずれか一つに記載の製造方法。
[13]前記組成物が、水を更に含有し、前記組成物における水の含有量が、20~80重量%である、[9]~[12]のいずれか一つに記載の製造方法。
[14]前記組成物が、デンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つを更に含有し、前記組成物におけるデンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つの含有量が、3~40重量%である、[9]~[13]のいずれか一つに記載の製造方法。
[15]前記組成物が、油を更に含有し、前記組成物における油の含有量が、5~65重量%である、[9]~[14]のいずれか一つに記載の製造方法。
[16]前記組成物の包餡麺帯食品への付着量が、包餡麺帯食品100重量部に対して、2.5~32重量部である、[9]~[15]のいずれか一つに記載の製造方法。
[17]包餡麺帯食品が、焼き面を有する、[9]~[16]のいずれか一つに記載の製造方法。
[18]包餡麺帯食品が、餃子である、[9]~[17]のいずれか一つに記載の製造方法。
[19]遊離又は塩形態のアルギニンを含有する、包餡麺帯食品の焼き面形成用組成物。
[20]前記アルギニンの含有量が、0.01~2.5重量%である、[19]記載の組成物。
[21]水、デンプン類、穀物粉及び油からなる群より選択される少なくとも一つを更に含有する、[19]又は[20]記載の組成物。
[22]水を更に含有し、水の含有量が、20~80重量%である、[19]~[21]のいずれか一つに記載の組成物。
[23]デンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つを更に含有し、デンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つの含有量が、3~40重量%である、[19]~[22]のいずれか一つに記載の組成物。
[24]油を更に含有し、油の含有量が、5~65重量%である、[19]~[23]のいずれか一つに記載の組成物。
[25]包餡麺帯食品への付着量が、包餡麺帯食品100重量部に対して、2.5~32重量部となるように、包餡麺帯食品に付着させるためのものである、[19]~[24]のいずれか一つに記載の組成物。
[26]包餡麺帯食品が、餃子である、[19]~[25]のいずれか一つに記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、焼き面のキメが細かく、焼き面に程良い焼き色がついた、焼き面の外観が向上した包餡麺帯食品(例、餃子等)及びその製造方法を提供できる。また、本発明によれば、焼き面が好ましいクリスピー感を有する、焼き面の食感が向上した包餡麺帯食品(例、餃子等)及びその製造方法を提供できる。
本発明によれば、焼き面のキメが細かく、焼き面に程良い焼き色がついた、外観が向上した焼き面を、包餡麺帯食品(例、餃子等)に形成するために好適に用いられ得る、包餡麺帯食品の焼き面形成用組成物を提供できる。また、本発明によれば、焼き面が好ましいクリスピー感を有する、食感が向上した焼き面を、包餡麺帯食品(例、餃子等)に形成するために好適に用いられ得る、包餡麺帯食品の焼き面形成用組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の包餡麺帯食品は、その製造に、アルギニンを含有する組成物(本明細書において「本発明の組成物」と称する場合がある)を用いることを、特徴の一つとする。
【0011】
本発明において「包餡麺帯食品」とは、麺帯からなる外皮で中具(餡)が包まれている食品をいう。包餡麺帯食品の形態は、外皮(麺帯)で中具が包まれていれば特に制限されず、当該外皮は、中具を完全に包むものであっても、又は部分的に包むものであってもよい。包餡麺帯食品の具体例としては、餃子、小籠包、焼売、雲呑、春巻き、ラビオリ等が挙げられる。
【0012】
本発明において用いられる包餡麺帯食品の原料、製造方法等は特に制限されず、通常の食品原料を用いて、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で調製すればよい。例えば、本発明において用いられる包餡麺帯食品の中具は、挽肉、野菜等に、所望により調味料等を加え、混合すること等によって調製でき、外皮を構成する麺帯は、小麦粉等に水を加え捏ねた後、適当な厚さに延ばすこと等によって調製できるが、いずれもこれらの方法に制限されない。中具を外皮(麺帯)で包む方法も特に制限されず、包餡麺帯食品の種類等に応じて自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行えばよい。本発明における「包餡麺帯食品」は、中具を外皮(麺帯)で包んだのみで加熱していないものであってよく、又は、加熱処理(例、蒸し加熱、焼き加熱、茹で加熱等)に供したものであってもよく、これらの両方を包含する概念であるが、本発明において、中具を外皮(麺帯)で包んだのみで加熱していない包餡麺帯食品を、便宜上「生包餡麺帯食品」と称し、加熱処理(加熱調理)に供した喫食に適した状態の包餡麺帯食品を、便宜上「加熱済み包餡麺帯食品」と称する場合がある。また本発明における「包餡麺帯食品」には、冷蔵状態の包餡麺帯食品も包含される。
【0013】
本発明において「冷凍包餡麺帯食品」とは、凍結状態の包餡麺帯食品、あるいは、凍結状態の包餡麺帯食品を少なくとも含む冷凍食品をいう。
【0014】
包餡麺帯食品は、好ましくは、餃子、小籠包であり、より好ましくは、餃子である。
【0015】
本発明における「餃子」は、その形状、製造方法等に制限されることなく、一般に餃子と称されるものを広く包含し得るが、典型的には、中具(挽肉、野菜、調味料等の混合物)と、当該中具を包む外皮(小麦粉等に水を加えて捏ね、薄く延ばした生地)とを少なくとも有する食品をいう。本発明における「餃子」は、中具を外皮で包んだのみで加熱していないものであってよく、又は、加熱処理(例、蒸し加熱、焼き加熱、茹で加熱等)に供したものであってもよく、これらの両方を包含する概念であるが、本発明において、中具を外皮で包んだのみで加熱していない餃子を、便宜上「生餃子」と称し、加熱処理(加熱調理)に供した喫食に適した状態の餃子を、便宜上「加熱済み餃子」と称する場合がある。また本発明における「餃子」には、冷蔵状態の餃子(チルド餃子)も包含される。餃子1個当たりの重量は特に制限されないが、通常10~45g程度である。
【0016】
本発明において「冷凍餃子」とは、凍結状態の餃子、あるいは、凍結状態の餃子を少なくとも含む冷凍食品をいう。
【0017】
本発明において用いられ得るアルギニンは、食品上許容され得るものであれば特に制限されず、L-体、D-体、DL-体のいずれも使用可能であるが、好ましくは、L-体、DL-体であり、更に好ましくは、L-体である。
【0018】
本発明において用いられ得るアルギニンは、遊離又は塩形態であることが好ましい。
【0019】
本発明において「遊離形態」のアルギニンとは、他のアミノ酸と結合してタンパク質やペプチド等を形成せず、遊離の状態で存在しているアルギニンをいう。
【0020】
アルギニンの「塩形態」は、食品上許容され得るものであれば特に制限されないが、例えば、無機酸(例、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸等)との塩;有機酸(例、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸等)との塩;無機塩基(例、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニア等)との塩;有機塩基(例、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)との塩等の形態が挙げられる。またアルギニンの塩形態は、水和物(含水塩)の形態であってもよく、かかる水和物としては、例えば1~6水和物等が挙げられる。
【0021】
本発明において用いられ得るアルギニンは、天然に存在する動植物等から抽出し精製したもの、或いは、化学合成法、発酵法、酵素法又は遺伝子組換え法によって得られるもののいずれを使用してもよい。
【0022】
本発明においてアルギニンは単独で用いてよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の組成物における、遊離又は塩形態のアルギニンの含有量は、包餡麺帯食品の焼き面の外観、食感を効果的に向上し得ることから、本発明の組成物に対して、好ましくは、0.01重量%以上であり、より好ましくは0.02重量%以上であり、更に好ましくは0.06重量%以上であり、特に好ましくは0.08重量%以上である。また当該含有量は、本発明の組成物に対して、通常2.5重量%以下であり、食味の観点から、好ましくは2.2重量%以下であり、より好ましくは1.5重量%以下であり、特に好ましくは1.2重量%以下である。本発明において塩形態のアルギニンの量は、遊離形態に換算して算出される。
【0024】
本発明の組成物は、アルギニンに加え、水、デンプン類、穀物粉及び油からなる群より選択される少なくとも一つを更に含有してよい。本発明の組成物は、アルギニンに加え、水、デンプン類又は穀物粉、並びに、油を更に含有することが好ましい。
【0025】
本発明において用いられ得る水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の精製水、水道水等が挙げられるが、これらに制限されず、食品製造用水として適合するものを用い得る。
【0026】
本発明の組成物が水を含有する場合、本発明の組成物における水の含有量は、包餡麺帯食品の焼き面の外観、食感を効果的に向上し得ることから、本発明の組成物に対して、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは30重量%以上であり、特に好ましくは40重量%以上である。また当該含有量は、包餡麺帯食品の焼き面の外観、食感を効果的に向上し得ることから、本発明の組成物に対して、好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは75重量%以下であり、更に好ましくは60重量%以下であり、特に好ましくは55重量%未満であり、一層好ましくは50重量%以下であり、より一層好ましくは45重量%以下である。
【0027】
本発明の組成物は、デンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つを含有してよく、中でも、穀物粉は、損傷デンプン率がデンプンに比べて低いため、加熱によりデンプン粒子が膨潤し難く、焼き面のクリスピーな食感が維持されやすいことから、本発明は、穀物粉を用いることが好ましい。ここで、「穀物粉」とは、穀物を製粉、粉砕等して得られる、粉状乃至粒状の食品原料をいい、また、穀物粉の「損傷デンプン率」とは、製粉、粉砕時の負荷によりダメージを受けたデンプン粒子の割合をいう。
【0028】
本発明において用いられ得るデンプン類は、特に制限されないが、例えば、ウルチ米デンプン、モチ米デンプン、小麦デンプン、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカデンプン、サゴヤシデンプン、緑豆デンプン、馬鈴薯デンプン、サツマイモデンプン等のデンプンが挙げられ、好ましくはウルチ米デンプン、モチ米デンプンである。またデンプン類として、これらのデンプンの加工デンプンを用いてもよい。ここで「加工デンプン」とは、物理的処理、化学的処理及び酵素的処理からなる群より選択される少なくとも一つの加工処理を施されたデンプンをいう。化学的処理を施されたデンプンとしては、例えば、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン等が挙げられる。物理的処理(酸処理、アルカリ処理、漂白処理等の加水分解程度の簡単な化学的処理を含む)を施されたデンプンとしては、例えば、α化デンプン、湿熱処理デンプン、油脂加工デンプン、酸処理デンプン、アルカリ処理デンプン、漂白デンプン等が挙げられる。酵素的処理を施されたデンプンとしては、例えば、酵素処理デンプン等が挙げられる。本発明において用いられ得る加工デンプンの種類は、可食性であれば特に制限されないが、化学的処理を少なくとも施されたデンプンが好ましく、酢酸デンプン、リン酸架橋デンプンが特に好ましい。これらの加工デンプンは、物理的処理、化学的処理及び酵素的処理からなる群より選択される一つの加工処理を施されたものであってよく、また物理的処理、化学的処理及び酵素的処理からなる群より選択される二つ以上の加工処理を施されたものであってもよい。
【0029】
本発明において用いられ得る穀物粉は、特に制限されないが、例えば、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大麦粉、そば粉、馬鈴薯粉、大豆粉、小豆粉、ひえ粉、栗粉、キビ粉等が挙げられ、中でも、タンパク質含量が少なく、加熱後のクリスピーな食感を焼き面に付与し易いことから、米粉が好ましい。
【0030】
本発明において用いられ得るデンプン類、穀物粉の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。例えば、穀物粉は、穀物を、製粉、粉砕等して粉状乃至粒状とすること等により製造し得る。デンプン類、穀物粉は、市販品を用いてもよく、簡便であることから好ましい。
【0031】
本発明の組成物が、デンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つを含有する場合、本発明の組成物におけるデンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つの含有量は、本発明の組成物に対して、通常3重量%以上であり、包餡麺帯食品の焼き面の外観、食感を効果的に向上し得ることから、好ましくは7重量%以上であり、より好ましくは8重量%以上であり、特に好ましくは9重量%以上である。また当該含有量は、調理性の観点から、本発明の組成物に対して、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは35重量%以下であり、特に好ましくは32重量%以下である。ここで、本発明の組成物における「デンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つの含有量」とは、本発明の組成物がデンプン類及び穀物粉のいずれか一方のみを含有する場合は、その一方の含有量を意味し、本発明の組成物が、デンプン類及び穀物粉の両方を含有する場合は、それらの含有量の合計を意味する。
【0032】
本発明において用いられ得る油は、食用であれば特に制限されない。常温で流動性を有しない油を、一般に「脂肪」と称する場合があるが、本発明における油は、脂肪も包含する概念である。本発明の組成物が含有し得る油の具体例としては、キャノーラ油、大豆油、サフラワー油(ハイリノールサフラワー油を含む)、コーン油、ナタネ油、ゴマ油、アマニ油、ヒマワリ油、落花生油、綿実油、オリーブ油、コメ油、パーム油、糠油、荏油、グレープシード油等の植物油;豚脂(ラード)、牛脂、鶏油、羊脂、馬脂、魚油、鯨油、バター等の動物油等が挙げられる。また、これらの油をエステル交換したエステル交換油や、これらの油に水素添加した硬化油等も用いることができる。本発明の組成物が含有し得る油は、精製されたもの(例、サラダ油等)であってよい。本発明の組成物が含有し得る油は、好ましくは植物油であり、より好ましくはキャノーラ油、大豆油、ナタネ油である。これらの油は一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明において用いられ得る油の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。油は、市販品を用いてもよく、簡便であることから好ましい。
【0034】
本発明の組成物が油を含有する場合、本発明の組成物における油の含有量は、焼き面の外観、食感を効果的に向上し得ることから、本発明の組成物に対して、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは8重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上である。また当該含有量は、調理器具への油残りを抑え得ることから、本発明の組成物に対して、好ましくは65重量%以下であり、より好ましくは55重量%以下であり、特に好ましくは45重量%以下である。
【0035】
本発明の組成物は、アルギニン等に加えて、乳化剤を含有してよい。本発明において用いられ得る乳化剤は、食用であれば特に制限されないが、例えば、レシチン、酵素分解レシチン、シュガーエステル、モノグリセロール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの乳化剤は一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明において用いられ得る乳化剤の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。乳化剤は、市販品を用いてもよく、簡便であることから好ましい。
【0037】
本発明の組成物が乳化剤を含有する場合、本発明の組成物における乳化剤の含有量は、乳化作用が得られれば特に制限されないが、本発明の組成物に対して、好ましくは0.1重量%以上であり、より好ましくは0.5重量%以上であり、特に好ましくは0.8重量%以上である。また当該含有量は、含有量に比例して所望の乳化作用が得られることから、本発明の組成物に対して、好ましくは2重量%以下であり、より好ましくは1.5重量%以下であり、特に好ましくは1.2重量%以下である。
【0038】
本発明の組成物は、アルギニンに加え、「水」、「デンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つ」並びに「油」を更に含有することが好ましく、その場合、本発明の組成物における「遊離又は塩形態のアルギニン」、「水」、「デンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つ」並びに「油」の含有量をそれぞれa~d重量部とし、かつ当該a~dの合計(=a+b+c+d)を100重量部としたとき、当該a~dの重量比(a:b:c:d)は、包餡麺帯食品の焼き面の外観、食感を効果的に向上し得ることから、好ましくは、a(遊離又は塩形態のアルギニン):b(水):c(デンプン類及び穀物粉から選択される少なくとも一つ):d(油)=0.01~2.5:20~80:7~40:7~65であり、より好ましくは、a:b:c:d=0.06~1.5:30~75:8~35:8~55であり、特に好ましくは、a:b:c:d=0.08~1.2:40~60:9~32:20~45である。
【0039】
本発明の組成物は、本発明の目的を損ない限り、アルギニンに加え、餃子のバッター液が通常含有し得る成分(例、調味料(醤油等)、塩類、糖類、アミノ酸類、ガム類、セルロース類、乳化補助剤等)を任意で含有してよい。
【0040】
本発明の組成物の調製方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で調製し得る。例えば、本発明の組成物が、アルギニン、水、デンプン類又は穀物粉、並びに、油を含有する場合、これらを市販の混合撹拌装置等を用いて撹拌すること等によって調製できる。
【0041】
本発明の組成物は、乳化していることが好ましく、すなわち本発明の組成物は、乳化組成物であることが好ましい。本発明の組成物は、乳化させることより、その性状が均一となり、包餡麺帯食品の焼き面の官能特性(外観、食感等)を、より効果的に向上させ得る。本発明の組成物の乳化方法は特に制限されず、市販の混合撹拌装置等を用いて、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。
【0042】
本出願の組成物の形態は特に制限されないが、常温(25℃)において非固形であることが好ましい。本発明において、常温(25℃)において「非固形である」とは、常温(25℃)において流動性を有することをいい、そのような形態としては、例えば、液状、スラリー状、ペースト状等が挙げられる。
【0043】
本発明の組成物は、包餡麺帯食品(例、餃子等)の焼き面形成用として好適に用いられ得る。本発明において「包餡麺帯食品の焼き面形成用」組成物とは、包餡麺帯食品(例、餃子等)の表面に付着させて加熱(例、蒸し、焼き等)することにより焼き面を形成し得る組成物をいう。本発明において包餡麺帯食品の「焼き面」とは、包餡麺帯食品(例、餃子等)の表面のうち、加熱により焼き色(焦げ目)がついた部分(例、底面等)と、当該包餡麺帯食品の表面からはみ出して形成される部分(本明細書において「羽根」と称する場合がある)とを、包含する概念である。本発明における「焼き面」について、包餡麺帯食品の一つである餃子を例に挙げてより詳細に説明すると、例えば、餃子の底面を、焼き器(例、フライパン、鉄板、ホットプレート等)、蒸し器等を用いて加熱(例、蒸し加熱、焼き加熱)し、焼き色を付けた場合、当該底面と、当該底面からはみ出して形成された羽根とを、まとめて「焼き面」という。尚、「羽根」は、薄膜状のパリパリとした食感を有する部分であり、一般に「バリ」等とも称される。また羽根は、包餡麺帯食品の種類やバッターの付着量、加熱方法等によっては形成されない場合もある。
【0044】
本発明の組成物は、バッター液として提供され得る。
【0045】
本発明の包餡麺帯食品は、本発明の組成物を用いて製造されたものであれば特に制限されないが、本発明の包餡麺帯食品は、一態様として、本発明の組成物が加熱されて形成される焼き面を有することが好ましい。
【0046】
本発明の組成物が加熱されて形成される焼き面を有する包餡麺帯食品(加熱済み包餡麺帯食品)は、例えば、本発明の組成物を表面に付着させた生包餡麺帯食品を加熱すること等により製造し得る。また、生包餡麺帯食品を本発明の組成物を表面に付着させずに加熱処理(加熱調理)に供して加熱済み包餡麺帯食品を作製した後、当該加熱済み包餡麺帯食品の表面に、本発明の組成物を付着させて加熱すること等によっても製造し得る。
【0047】
本発明の組成物を付着させ得る包餡麺帯食品(生包餡麺帯食品、加熱済み包餡麺帯食品)は特に制限されず、包餡麺帯食品の形状、サイズ、中具及び外皮(麺帯)の成分、構成、量等は、所望の包餡麺帯食品に応じて適宜決定してよく、また中具及び外皮の製造方法、中具の包み方等は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法により行ってよい。中具、外皮は市販品を用いてもよく、あるいは、市販の包餡麺帯食品(例、餃子等)を用いてもよい。
【0048】
本発明の組成物を付着させる包餡麺帯食品(例、餃子等)は、包餡麺帯食品に慣用の処理(例えば、中具の野菜等に含まれる酵素を失活させる処理等)を適宜施されていてよい。
【0049】
本発明の組成物は、焼き面を形成できれば、包餡麺帯食品(例、餃子等)に付着させる方法や付着の態様は特に制限されないが、包餡麺帯食品の表面の少なくとも一部に付着させることが好ましい。本発明の組成物は、包餡麺帯食品の表面の全部に付着するものであってよく、又は表面の一部に付着するものであってもよい。
【0050】
本発明の組成物の、包餡麺帯食品(例、餃子等)への付着量は、包餡麺帯食品100重量部に対して、通常2.5~32重量部であり、好ましい外観、食感を有する焼き面が形成され得ることから、好ましくは4~30重量部であり、より好ましくは5~28重量部であり、更に好ましくは7~26重量部であり、特に好ましくは10~24重量部である。
【0051】
本発明の組成物を付着させた包餡麺帯食品(例、餃子等)の加熱方法は、焼き面が形成され、包餡麺帯食品が喫食に適した状態になれば特に制限されず、包餡麺帯食品の加熱調理方法として慣用の方法を用いればよいが、例えば、焼き器(例、フライパン、鉄板、ホットプレート等)、蒸し器を用いて包餡麺帯食品を加熱(例、蒸し加熱、焼き加熱)する方法等が挙げられる。本発明の組成物を付着させた包餡麺帯食品を、焼き器を用いて加熱する場合、当該加熱の際に水、油を焼き器に加える必要はないが、適宜、水、油を加えてもよい。焼き器を用いて加熱する際に水を加えないことにより、凍結及び解凍後も、焼き面の好ましい官能特性(外観、食感等)が好適に維持され得る。
【0052】
本発明の組成物を付着させた包餡麺帯食品の加熱条件(例、加熱温度、加熱時間等)は特に制限されず、加熱方法等に応じて適宜設定すればよいが、加熱温度は通常80~300℃、好ましくは90~250℃であり、加熱時間は通常3~30分間、好ましくは5~15分間である。
【0053】
本発明の組成物が加熱されて形成される焼き面を有する包餡麺帯食品(加熱済み包餡麺帯食品)は、凍結処理を施して冷凍品(冷凍包餡麺帯食品)として提供され得る。すなわち、本発明の包餡麺帯食品は、冷凍品であってよい。本発明の包餡麺帯食品に凍結処理を施す場合、当該凍結処理は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって行えばよく特に制限されないが、凍結温度は通常-10℃以下であり、好ましくは-15℃以下である。
【0054】
包餡麺帯食品及びその冷凍品(冷凍包餡麺帯食品)は、それぞれ容器(例、トレイ等)に収容されて提供されるものであってよい。包餡麺帯食品及びその冷凍品を収容する容器は特に制限されず、慣用の容器を用いればよいが、例えば、国際公開第2014/007387号、国際公開第2016/19882号等に記載の容器、トレイを用い得る。包餡麺帯食品及びその冷凍品は、容器に収容せず、外装袋に収容されて提供されてもよい。
【0055】
冷凍包餡麺帯食品(例、冷凍餃子等)の解凍方法は特に制限されず、冷凍食品分野における公知の解凍方法(例えば、電子レンジ加熱、蒸し(スチーム)加熱、オーブン加熱、過熱水蒸気加熱、熱風加熱、遠赤外線加熱、直火加熱、自然解凍等)又はこれに準ずる方法を適宜用い得る。
【0056】
本発明の組成物が加熱されて形成される焼き面を有する包餡麺帯食品(加熱済み包餡麺帯食品)は、焼き面の官能特性(外観、食感等)が向上し得、当該加熱済み包餡麺帯食品は凍結及び解凍しても、その向上した焼き面の官能特性(外観、食感等)が維持され得る。すなわち本発明によれば、焼き面のキメが細かく、焼き面に程良い焼き色がついた、焼き面の外観が向上した包餡麺帯食品(例、餃子等)を得ることができる。
本発明において、包餡麺帯食品(例、餃子等)の焼き面の「キメが細かい」とは、包餡麺帯食品の焼き面に大きな穴等がなく、焼き面の表面の形状(凹凸)が整い、全体的になめらかであることをいう。包餡麺帯食品の焼き面のキメの細かさの程度は、例えば、専門パネルによる官能評価等によって評価し得る。
本発明において、包餡麺帯食品(例、餃子等)の焼き面の「焼き色」とは、包餡麺帯食品を加熱した際に、熱によって焼き面の表面につく色を意味し、通常、褐色である。また包餡麺帯食品の焼き面に「程良い焼き色がつく」とは、焼き面に、焼き色がついていない部分(白抜け)や、黒く焦げた部分等がなく、焼きムラが抑えられ、全体に同程度の褐色の焼き色がつくことをいう。包餡麺帯食品の焼き面の焼き色は、例えば、専門パネルによる官能評価等によって評価し得る。
【0057】
また、本発明によれば、焼き面が好ましいクリスピー感を有する、焼き面の食感が向上した包餡麺帯食品(例、餃子等)を得ることができる。
本発明において、包餡麺帯食品(例、餃子等)の焼き面の「クリスピー感」とは、歯切れの良いパリパリとした食感をいう。包餡麺帯食品の焼き面のクリスピー感の有無や程度は、例えば、専門パネルによる官能評価等によって評価し得る。
【0058】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
尚、以下の実施例において用いられた原料(例えば、アルギニン等)は、特にことわりのない限り、いずれも食品用として市販されているものである。
【実施例】
【0059】
<生餃子の作製>
下記の試験例1~8において用いた生餃子は、いずれも下記の通り作製した。
挽肉(豚挽肉及び鶏挽肉を合わせたもの)260g、野菜(キャベツ、たまねぎ、ニラ、ニンニクをそれぞれみじん切りにし、合わせたもの)550g、卵白25g、ごま油20g、酒10g、香辛料及び調味料32g(香辛料及び調味料の合計量)を混合し、中具を調製した。得られた中具12gを、市販の餃子の皮(1枚:5g)で包み、生餃子を作製した(生餃子1個の重量:17g)。
【0060】
<試験例1>
(コントロールのバッター液の調製)
下表1に示す原料のうち、穀物粉(米粉)及び水を、下表1に示す配合割合で混合し、市販のホモジナイザー(IKAジャパン株式会社製、「T50 digital ULTRA-TURRAX(登録商標)」)を用いて撹拌(撹拌条件:6000rpm、3分間)した後、油(キャノーラ油)及び乳化剤(レシチン)を、下表1に示す配合割合で加え、再度、市販のホモジナイザー(IKAジャパン株式会社製、「T50 digital ULTRA-TURRAX(登録商標)」)を用いて撹拌(撹拌条件:6000rpm、5分間)して乳化させ、コントロールのバッター液を調製した。
【0061】
【0062】
(実施例1のバッター液の調製)
下表2に示す原料のうち、アルギニン、穀物粉(米粉)及び水を、下表2に示す配合割合で混合し、市販のホモジナイザー(IKAジャパン株式会社製、「T50 digital ULTRA-TURRAX(登録商標)」)を用いて撹拌(撹拌条件:6000rpm、3分間)した後、油(キャノーラ油)及び乳化剤(レシチン)を、下表2に示す配合割合で加え、再度、市販のホモジナイザー(IKAジャパン株式会社製、「T50 digital ULTRA-TURRAX(登録商標)」)を用いて撹拌(撹拌条件:6000rpm、5分間)して乳化させ、実施例1のバッター液を調製した。
【0063】
【0064】
(比較例1~5のバッター液の調製)
アルギニン(配合割合:0.5重量%)に代えて、下表3に示す各原料を、それぞれ下表3に示す配合割合で使用したこと以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1~5の各バッター液を調製した。
【0065】
【0066】
(コントロール、実施例1及び比較例1~5の冷凍餃子の作製)
コントロール、実施例1及び比較例1~5のバッター液を用いて、各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子を作製した後、当該餃子を凍結し、冷凍餃子(コントロール、実施例1及び比較例1~5の冷凍餃子)を作製した。
具体的には、まず生餃子(生餃子1個の重量:17g)の底面に、コントロール、実施例1及び比較例1~5の各バッター液を1.3g付着させた後、テフロンシートに並べ、事前に沸騰させておいた蒸し器にテフロンシートごと移し、水(餃子1個当たり2.4g)を噴霧した後、4分30秒間蒸した。
次いで、当該餃子を、事前に230℃に温めたホットプレート(パナソニック株式会社製、「IHホットプレート KZ-HP1000」)に、テフロンシートごと移し、ホットプレートの蓋を開けたまま、4分間焼成した。
得られた加熱済み餃子を25℃で10分間放冷した後、冷凍庫(庫内温度:-30℃)にて急速凍結することにより、コントロール、実施例1及び比較例1~5の冷凍餃子をそれぞれ得た。
【0067】
(官能評価)
コントロール、実施例1及び比較例1~5の各冷凍餃子を、電子レンジにて解凍し(出力:500W、時間:1分50秒)、解凍後の餃子の焼き面の外観(「焼き面のキメの細かさ」、「焼き面の焼き色の濃さ」)及び食感(「焼き面のクリスピー感の強さ」)について、専門パネル5名で官能評価を行った。
官能評価は、専門パネル5名が、各評価項目について、コントロールを3点とする下記の評価基準に基づき、0.5点刻みで評点付けした後、専門パネル5名の評点の平均値を算出することにより行った。
尚、5名の専門パネルは、「焼き面のキメの細かさ」、「焼き面の焼き色の濃さ」、「焼き面のクリスピー感の強さ」の各評価基準について、評点が0.5点変動するには、焼き面のキメの細かさ、焼き面の焼き色の濃さ、焼き面のクリスピー感の強さがどの程度変動すればよいのか等をパネル間で共通となるよう予め訓練された。
【0068】
[焼き面のキメの細かさ(外観の評価項目1)]
1点:コントロールに比べ、とても弱い
2点:コントロールに比べ、弱い
3点:コントロールと変わらない
4点:コントロールに比べ、強い
5点:コントロールに比べ、とても強い
【0069】
[焼き面の焼き色の濃さ(外観の評価項目2)]
1点:コントロールに比べ、とても弱い
2点:コントロールに比べ、弱い
3点:コントロールと変わらない
4点:コントロールに比べ、強い
5点:コントロールに比べ、とても強い
【0070】
[焼き面のクリスピー感(食感の評価項目)]
1点:コントロールに比べ、とても弱い
2点:コントロールに比べ、弱い
3点:コントロールと変わらない
4点:コントロールに比べ、強い
5点:コントロールに比べ、とても強い
【0071】
結果を下表4に示す。
【0072】
【0073】
表4に示される結果から明らかなように、アルギニンを含有する実施例1のバッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子は、焼き面のキメの細かさ、焼き面の焼き色の濃さ、並びに、焼き面のクリスピー感の強さがいずれも向上し、凍結及び解凍後も、これらの優れた官能特性を維持していた。当該結果から、アルギニンを含有する組成物(例、バッター液等)を付着させて加熱することよって、包餡麺帯食品(例、餃子等)の焼き面の官能特性(外観、食感)を効果的に向上させ得ることが確認された。
【0074】
<試験例2>
(実施例2のバッター液の調製)
アルギニン(配合割合:0.5重量%)に代えて、アルギニン塩酸塩を使用したこと以外は、実施例1と同様の手順で、実施例2のバッター液を調製した。
【0075】
(実施例3のバッター液の調製)
表2に示す原料に加えて、無水クエン酸(配合割合:0.2重量%)を更に使用したこと以外は、実施例1と同様の手順で、実施例3のバッター液を調製した。
【0076】
(実施例2、3の冷凍餃子の作製)
実施例2、3のバッター液を用いて、各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子を作製した後、当該餃子を凍結し、冷凍餃子(実施例2、3の冷凍餃子)を作製した。
実施例2、3の冷凍餃子の作製は、試験例1と同様に行った。
【0077】
(官能評価)
実施例2、3の各冷凍餃子を、電子レンジにて解凍し(出力:500W、時間:1分50秒)、解凍後の餃子の焼き面の外観(「焼き面のキメの細かさ」、「焼き面の焼き色の濃さ」)及び食感(「焼き面のクリスピー感の強さ」)について、専門パネル5名で官能評価を行った。
官能評価は、試験例1と同様の方法で行った。
結果を下表5に示す。尚、下表5には、試験例1の実施例1及びコントロールの結果も併記した。
【0078】
(バッター液のpHの測定)
コントロール、実施例1~3のバッター液のpHを、突き刺し型のpHメーター(HACH社製、ISFET電極pHメーター Hシリーズ「H160」)を用いて、それぞれ測定した。結果を下表5に示す。
【0079】
【0080】
表5に示される結果から明らかなように、アルギニン塩酸塩を含有する実施例2のバッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子は、焼き面のキメの細かさ、焼き面の焼き色の濃さ、並びに、焼き面のクリスピー感の強さがいずれも向上し、凍結及び解凍後も、これらの優れた官能特性を維持していた。当該結果から、塩形態のアルギニンも、遊離形態のアルギニンと同様に、これを含有する組成物(例、バッター液等)を付着させて加熱することよって、包餡麺帯食品(例、餃子等)の焼き面の官能特性(外観、食感)を効果的に向上させ得ることが確認された。
また実施例1からpHを変更した実施例3のバッター液を用いても、実施例1と同様の効果が確認されたことから、アルギニンを添加した組成物のpHにかかわらず、包餡麺帯食品(例、餃子等)の焼き面の官能特性(外観、食感)を効果的に向上させ得ることが確認された。
【0081】
<試験例3>
(実施例4~7のバッター液の調製)
穀物粉(米粉)に代えて、下表6に示す各原料(デンプン、加工デンプン)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手順で、実施例4~7の各バッター液を調製した。
【0082】
【0083】
(実施例4~7の冷凍餃子の作製)
実施例4~7のバッター液を用いて、各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子を作製した後、当該餃子を凍結し、冷凍餃子(実施例4~7の冷凍餃子)を作製した。
実施例4~7の冷凍餃子の作製は、試験例1と同様に行った。
【0084】
(官能評価)
実施例4~7の各冷凍餃子を、電子レンジにて解凍し(出力:500W、時間:1分50秒)、解凍後の餃子の焼き面の外観(「焼き面のキメの細かさ」、「焼き面の焼き色の濃さ」)及び食感(「焼き面のクリスピー感の強さ」)について、専門パネル5名で官能評価を行った。
官能評価は、試験例1と同様の方法で行った。
結果を下表7に示す。尚、下表7には、試験例1の実施例1及びコントロールの結果も併記した。
【0085】
【0086】
表7に示される結果から明らかなように、実施例1で用いられた穀物粉に代えて、デンプン、加工デンプンを用いた実施例4~7の各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子は、実施例1と同様に、いずれも焼き面のキメの細かさ、焼き面の焼き色の濃さ、並びに、焼き面のクリスピー感の強さが向上し、凍結及び解凍後も、これらの優れた官能特性を維持していた。
【0087】
<試験例4>
(実施例8のバッター液の調製)
乳化剤(レシチン)を使用しなかったこと、バッター液を乳化させる際の撹拌速度を6000rpmから9400rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様の手順で、実施例8のバッター液を調製した。
【0088】
(実施例8の冷凍餃子の作製)
実施例8のバッター液を用いて、バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子を作製した後、当該餃子を凍結し、冷凍餃子(実施例8の冷凍餃子)を作製した。
実施例8の冷凍餃子の作製は、試験例1と同様に行った。
【0089】
(官能評価)
実施例8の冷凍餃子を、電子レンジにて解凍し(出力:500W、時間:1分50秒)、解凍後の餃子の焼き面の外観(「焼き面のキメの細かさ」、「焼き面の焼き色の濃さ」)及び食感(「焼き面のクリスピー感の強さ」)について、専門パネル5名で官能評価を行った。
官能評価は、試験例1と同様の方法で行った。
結果を下表8に示す。尚、下表8には、試験例1の実施例1及びコントロールの結果も併記した。
【0090】
【0091】
表8に示される結果から明らかなように、乳化剤を含まない実施例8のバッター液を用いても、実施例1と同様の効果が確認されたことから、アルギニンを添加した組成物の乳化剤の有無にかかわらず、包餡麺帯食品(例、餃子等)の焼き面の官能特性(外観、食感)を効果的に向上させ得ることが確認された。
【0092】
<試験例5>
(実施例9~12のバッター液の調製)
アルギニンの配合割合「0.5重量%」を、下表9に示す割合(0.03~2重量%)に変更したこと以外は、試験例1の実施例1と同様の手順で、実施例9~12のバッター液を、それぞれ調製した。
【0093】
(実施例9~12の冷凍餃子の作製)
実施例9~12のバッター液を用いて、各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子を作製した後、当該餃子を凍結し、冷凍餃子(実施例9~12の冷凍餃子)を作製した。
実施例9~12の冷凍餃子の作製は、試験例1と同様に行った。
【0094】
(官能評価)
実施例9~12の各冷凍餃子を、電子レンジにて解凍し(出力:500W、時間:1分50秒)、解凍後の餃子の焼き面の外観(「焼き面のキメの細かさ」、「焼き面の焼き色の濃さ」)及び食感(「焼き面のクリスピー感の強さ」)について、専門パネル5名で官能評価を行った。
官能評価は、試験例1と同様の方法で行った。
結果を下表9に示す。尚、下表9には、試験例1の実施例1及びコントロールの結果も併記した。
【0095】
【0096】
表9に示される結果から明らかなように、アルギニンの配合割合が0.03~2重量%である実施例9~12の各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子は、実施例1と同様に、いずれも焼き面のキメの細かさ、焼き面の焼き色の濃さ、並びに、焼き面のクリスピー感の強さが向上し、凍結及び解凍後も、これらの優れた官能特性(外観、食感)を維持していた。アルギニンの配合割合は、0.1~1重量%が好ましかった。
【0097】
<試験例6>
(実施例13~16のバッター液の調製)
油(キャノーラ油)の配合割合「40重量%」を、下表10に示す割合(10~60重量%)に変更したこと以外は、試験例1の実施例1と同様の手順で、実施例24~27のバッター液を、それぞれ調製した。
【0098】
(実施例13~16の冷凍餃子の作製)
実施例13~16のバッター液を用いて、各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子を作製した後、当該餃子を凍結し、冷凍餃子(実施例13~16の冷凍餃子)を作製した。
実施例13~16の冷凍餃子の作製は、試験例1と同様に行った。
【0099】
(官能評価)
実施例13~16の各冷凍餃子を、電子レンジにて解凍し(出力:500W、時間:1分50秒)、解凍後の餃子の焼き面の外観(「焼き面のキメの細かさ」、「焼き面の焼き色の濃さ」)及び食感(「焼き面のクリスピー感の強さ」)について、専門パネル5名で官能評価を行った。
官能評価は、試験例1と同様の方法で行った。
結果を下表10に示す。尚、下表10には、試験例1の実施例1及びコントロールの結果も併記した。
【0100】
【0101】
表10に示される結果から明らかなように、油の配合割合が10~60重量%である実施例13~16の各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子は、実施例1と同様に、いずれも焼き面のキメの細かさ、焼き面の焼き色の濃さ、並びに、焼き面のクリスピー感の強さが向上し、凍結及び解凍後も、これらの優れた官能特性(外観、食感)を維持していた。
【0102】
<試験例7>
(実施例17~20のバッター液の調製)
穀物粉(米粉)の配合割合「15重量%」を、下表11に示す割合(5~30重量%)に変更したこと以外は、試験例1の実施例1と同様の手順で、実施例17~20のバッター液を、それぞれ調製した。
【0103】
(実施例17~20の冷凍餃子の作製)
実施例17~20のバッター液を用いて、各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子を作製した後、当該餃子を凍結し、冷凍餃子(実施例17~20の冷凍餃子)を作製した。
実施例17~20の冷凍餃子の作製は、試験例1と同様に行った。
【0104】
(官能評価)
実施例17~20の各冷凍餃子を、電子レンジにて解凍し(出力:500W、時間:1分50秒)、解凍後の餃子の焼き面の外観(「焼き面のキメの細かさ」、「焼き面の焼き色の濃さ」)及び食感(「焼き面のクリスピー感の強さ」)について、専門パネル5名で官能評価を行った。
官能評価は、試験例1と同様の方法で行った。
結果を下表11に示す。尚、下表11には、試験例1の実施例1及びコントロールの結果も併記した。
【0105】
【0106】
表11に示される結果から明らかなように、穀物粉(米粉)の配合割合が5~30重量%である実施例17~20の各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子は、いずれも焼き面のキメの細かさ、並びに、焼き面の焼き色の濃さが向上し、凍結及び解凍後も、優れた外観を維持していた。中でも、穀物粉(米粉)の配合割合が10~30重量%である実施例18~20の各バッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子は、実施例1と同様に、いずれも焼き面のキメの細かさ、並びに、焼き面の焼き色の濃さが向上し、凍結及び解凍後も、これらの優れた官能特性(外観、食感)を維持していた。
【0107】
<試験例8>
(実施例21~27の冷凍餃子の作製)
実施例1のバッター液を用いて、餃子1個当たり下表12に示す量(0.5~4g)で付着したバッター液が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子を作製した後、当該餃子を凍結し、冷凍餃子(実施例21~27の冷凍餃子)を作製した。
実施例21~27の冷凍餃子の作製は、実施例21~27において、生餃子(生餃子1個の重量:17g)の底面に付着させるバッター液の量を「1.3g」から下表12に示す量(0.5~4g)に変更したこと、また、実施例24~27において、ホットプレートによる焼成時間を、「4分間」から下表11に示す時間(4.5~6.5分間)に変更したこと以外は、試験例1と同様に行った。
【0108】
(官能評価)
実施例21~27の各冷凍餃子を、電子レンジにて解凍し(出力:500W、時間:1分50秒)、解凍後の餃子の焼き面の外観(「焼き面のキメの細かさ」、「焼き面の焼き色の濃さ」)及び食感(「焼き面のクリスピー感の強さ」)について、専門パネル5名で官能評価を行った。
官能評価は、試験例1と同様の方法で行った。
結果を下表12に示す。尚、下表12には、試験例1の実施例1及びコントロールの結果も併記した。
【0109】
【0110】
表12に示される結果から明らかなように、生餃子1個当たりの付着量が0.5~4g(生餃子100重量部に対して、2.9~23.5重量部)であるバッター液(実施例1のバッター液)が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子は、いずれも焼き面のキメの細かさ、並びに、焼き面の焼き色の濃さが向上し、凍結及び解凍後も、優れた外観を維持していた。中でも、生餃子1個当たりの付着量が1~4g(生餃子100重量部に対して、5.9~23.5重量部)であるバッター液(実施例1のバッター液)が加熱されて形成された焼き面を有する加熱済み餃子は、実施例1と同様に、いずれも焼き面のキメの細かさ、焼き面の焼き色の濃さ、並びに、焼き面のクリスピー感の強さが向上し、凍結及び解凍後も、これらの優れた官能特性(外観、食感)を維持していた。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明によれば、焼き面のキメが細かく、焼き面に程良い焼き色がついた、焼き面の外観が向上した包餡麺帯食品(例、餃子等)及びその製造方法を提供できる。また、本発明によれば、焼き面が好ましいクリスピー感を有する、焼き面の食感が向上した包餡麺帯食品(例、餃子等)及びその製造方法も提供でできる。
本発明によれば、焼き面のキメが細かく、焼き面に程良い焼き色がついた、外観が向上した焼き面を、包餡麺帯食品(例、餃子等)に形成するために好適に用いられ得る、包餡麺帯食品の焼き面形成用組成物を提供できる。また、本発明によれば、焼き面が好ましいクリスピー感を有する、食感が向上した焼き面を、包餡麺帯食品(例、餃子等)に形成するために好適に用いられ得る、包餡麺帯食品の焼き面形成用組成物も提供できる。