(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/50 20060101AFI20240123BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240123BHJP
G04G 17/06 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01Q1/50
H01Q1/24 Z
G04G17/06
(21)【出願番号】P 2019162876
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴司
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-062866(JP,A)
【文献】特開2007-073441(JP,A)
【文献】特開平11-087004(JP,A)
【文献】特開2000-214272(JP,A)
【文献】特開2004-347498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/50
H01Q 1/24
G04G 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
回路基板と、
前記アンテナと前記回路基板との間を電気的に接続する接続部材と、
を備え、
前記接続部材は、伸縮可能な第1コイルばねを含む第1部分と、前記第1部分の両側に対してそれぞれ直列につながれた
円柱状の第2コイルばねを含む第2部分と、を有し、
前記第1コイルばねのコイル径は、前記第2コイルばねのコイル径よりも小さく、前記第1コイルばねの中央において最も小さ
く、
前記第2コイルばねは、前記第1コイルばねよりも弾性係数が小さく、前記アンテナと前記回路基板との間に位置した状態では、螺旋状に周回する導電線が密着して中空の円柱状となっている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1部分は、前記第1コイルばねの前記第2部分との接続位置におけるコイル径が前記第2部分の前記第2コイルばねのコイル径と等しい
ことを特徴とする請求項
1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第2コイルばね及び前記第1コイルばねは、単一の導電線により連続している
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
アンテナと、
回路基板と、
前記アンテナと前記回路基板との間を電気的に接続する接続部材と、
を備え、
前記接続部材は、伸縮可能な第1コイルばねを含む第1部分と、前記第1部分の両側に対してそれぞれ直列につながれた柱状の第2コイルばねを含む第2部分と、を有し、
前記第1コイルばねのコイル径は、前記第2コイルばねのコイル径よりも小さく、前記第1コイルばねの中央において最も小さく、
前記第2部分は、円柱部材を有し、
当該円柱部材は、前記第2コイルばねの内部に当該第2コイルばねの延在方向に沿って位置している
ことを特徴とす
る電子機器。
【請求項5】
アンテナと、
回路基板と、
前記アンテナと前記回路基板との間を電気的に接続する接続部材と、
を備え、
前記接続部材は、伸縮可能な第1コイルばねを含む第1部分と、前記第1部分の両側に対してそれぞれ直列につながれた柱状の第2コイルばねを含む第2部分と、を有し、
前記第1コイルばねのコイル径は、前記第2コイルばねのコイル径よりも小さく、前記第1コイルばねの中央において最も小さく、
前記接続部材は、少なくとも一方の先端から延びる線状部分を有する
ことを特徴とす
る電子機器。
【請求項6】
アンテナと、
回路基板と、
前記アンテナと前記回路基板との間を電気的に接続する接続部材と、
を備え、
前記接続部材は、伸縮可能な第1コイルばねを含む第1部分と、前記第1部分の両側に対してそれぞれ直列につながれた柱状の第2コイルばねを含む第2部分と、を有し、
前記第1コイルばねのコイル径は、前記第2コイルばねのコイル径よりも小さく、前記第1コイルばねの中央において最も小さく、
前記第1コイルばねの導電線の径は、前記第2コイルばねの導電線の径よりも大きい
ことを特徴とす
る電子機器。
【請求項7】
アンテナと、
回路基板と、
前記アンテナと前記回路基板との間を電気的に接続する接続部材と、
を備え、
前記接続部材は、伸縮可能な第1コイルばねを含む第1部分と、前記第1部分に対して直列につながれた柱状の第2コイルばねを含む第2部分と、を有し、
前記第1コイルばねの導電線の径は、前記第2コイルばねの導電線の径よりも大きい
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
主に携帯用途で用いられる小型の電子機器、特にウェアラブル機器において、外部から電波を受信して情報を取得したり外部機器と通信を行ったりするものがある。電波の送受信には、アンテナが必要であるが、このような電子機器では、部品の電磁ノイズの影響を避けつつ受信感度を向上可能にアンテナ及び受信回路を有する基板が各々配置される。
【0003】
小型の電子機器では、アンテナと基板との間を信号配線などで固定的に接続するのが難しい。従来、このような腕時計型の電子機器において、板ばねを用いることで、裏蓋により内部が封止される際に当該板ばねが圧縮されてアンテナと基板との間が安定的に接続される構成が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、板ばねは、アンテナと基板の離隔方向に対して垂直な方向に場所をとるので、電子機器の狭い内部スペースに比して効率が悪いという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より場所を取らずに適切にアンテナと基板とを接続することが可能な電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
アンテナと、
回路基板と、
前記アンテナと前記回路基板との間を電気的に接続する接続部材と、
を備え、
前記接続部材は、伸縮可能な第1コイルばねを含む第1部分と、前記第1部分の両側に対してそれぞれ直列につながれた円柱状の第2コイルばねを含む第2部分と、を有し、
前記第1コイルばねのコイル径は、前記第2コイルばねのコイル径よりも小さく、前記第1コイルばねの中央において最も小さく、
前記第2コイルばねは、前記第1コイルばねよりも弾性係数が小さく、前記アンテナと前記回路基板との間に位置した状態では、螺旋状に周回する導電線が密着して中空の円柱状となっている
ことを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、電子機器においてより場所を取らずに適切にアンテナと基板とを接続することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電子機器の実施形態である電子時計1の断面図である。
【0011】
この電子時計1は、腕時計型のものであり、ケーシング2と、裏蓋3と、風防ガラス4とにより囲まれた内部空間に、表示部11と、回路基板12と、バッテリ13などが位置している。これらの内部構成の位置関係は、支持部材21(ハウジング)により規定されている。ケーシング2の外側には、ベゼル6が位置している。
【0012】
裏蓋3は、防水リング31を介してケーシング2にねじ止めされている。裏蓋3は、ここでは、金属部材(導電性部材)であり、電子時計1の動作に係る電子回路に対して接地面(筐体接地)をなしてよい。風防ガラス4は、透明部材であり、内部の表示部11の表示画面への表示が透過して外部に露出される。風防ガラス4は、パッキン41を介してケーシング2にはめ込まれている。円筒状のケーシング2のうち一箇所には、アンテナ7の挿入部分があり、アンテナ7がケーシング2と風防ガラス4の間に挿入されている。アンテナ7とケーシング2の間は、防水部材51(パッキン)を介して接している。アンテナ7と回路基板12との間は、接続部材8により電気的に接続されている。
【0013】
表示部11は、表示画面を有し、デジタル表示を行う。表示画面としては、特には限られないが、例えば液晶ディスプレイ(LCD)である。表示画面は、上述のように風防ガラス4を介して外部から視認可能に露出されている。
【0014】
回路基板12は、電子時計1の動作を制御するマイコン、メモリ及び発振器などの電子部品14が取り付けられて各種動作を行う。
【0015】
バッテリ13は、回路基板12などに供給する電力を蓄え、出力する。バッテリ13は、例えば、充電池であり、図示略の端子などを介して外部から供給する電力により充電が可能であってよい。また、バッテリ13は、表示部11の表示画面の周囲などに設けられたソーラパネルにより発電された電力を充電可能であってもよい。
【0016】
ベゼル6は、表示画面及び風防ガラス4の周囲を環状に覆う部材であり、回転可能であってもよい。ここでは、ベゼル6は、例えば、樹脂などの誘電体材料である。
【0017】
アンテナ7は、アンテナ線71と、基部72とを有する。アンテナ線71は、基部72から両側に風防ガラス4の上面縁に沿って円弧状に位置している。アンテナ線71の長さは、受信電波の波長などに応じて適宜定められてもよい。アンテナ7は、回路基板12上に位置している電波受信回路、例えば、測位衛星からの電波及び/又はブルートゥース(登録商標)といった短距離無線に係る通信電波など、特に高周波数帯域(GHz帯域など)の電波を受信する。
【0018】
ケーシング2の上部に位置するアンテナ7の基部72と回路基板12とは、接続部材8により接続されている。アンテナ7は、従来周知の導体部材である。なお、基部72は、ケーシング2との接触部分及び防水部材51との接続部分で樹脂などの誘電体材料により包囲されていてもよい。
【0019】
接続部材8は、回路基板12に対して垂直に延在し、当該回路基板12と基部72とを電気的に接続する導電性部材である。導電性部材の表面には、金又は銀などでめっきがなされていてもよい。接続部材8の位置は、支持部材21に設けられた貫通孔(位置決め穴)又は切り欠き部などにより規定されていてもよい。
【0020】
図2は、接続部材8の例を示す図である。
図2(a)に示すように、接続部材8は、一続きの導電線が螺旋状に延びるコイルばねであり、基礎部81(第2部分)と、伸縮部82(第1部分)とに区分される。基礎部81は、コイル径が一定であり、伸縮部82は、基礎部81との境界部分から先端に向けて(境界部分から離れるほど)コイル径が基礎部81のコイル径から徐々に小さくなっている。すなわち、ここでは、単一の導電線が一定のコイル径部分から連続して徐々にコイル径が小さくなる領域につながっている。
【0021】
コイルばねの弾性係数は、コイル径が小さいほど大きくなるので、基礎部81の弾性係数は、伸縮部82の弾性係数よりも小さい。すなわち、接続部材8を圧縮するように力が加えられると、伸縮部82よりも基礎部81が先に収縮することになる。
【0022】
電子時計1内に組み込まれた状態(アンテナ7と回路基板12との間に位置した状態)では、
図2(b)に示すように、基礎部81では、コイルばね部分(第2コイルばね)の螺旋状に周回する導電線が、当該導電線の延びる方向と垂直(接続部材8の延在方向)に前後の周回と接触するように完全に圧縮されて(密着して)いる。これにより、基礎部81は、中空の円柱状(略円筒状。以下では「円柱」を、中空か否か、及び外周面(外側面)に凹凸があるか否かにかかわらず用いる。一方で、コイルばねの導電線間が密着していない場合の螺旋形状は、円柱に含まれない)となり、導電線方向だけでなく接続部材8の延在方向に電気的にひとつながりとなる。したがって、電流は、周回せずに基礎部81の外面に沿って流れることが可能になるので、導電線に沿って螺旋状に電流が流れるのは伸縮部82だけとなる。
【0023】
伸縮部82のコイルばね部分(第1コイルばね)は、コイル径が小さいので、基礎部81よりも弾性係数が大きく、電子時計1内に組み込まれて基礎部81が円柱状となった状態でも、螺旋状の導電線が完全に収縮しておらず(一部が接続部材8の延在方向に隣り合った周回の同士で接していてもよい)、伸縮可能であるので、接続部材8の延在方向に沿った長さがアンテナ7の基部72と回路基板12との間の距離に応じて微調整可能となる。また、コイル径が小さい分、インダクタンスも小さくなるので、アンテナ7による受信電波に対するインダクタンスの影響を抑制することができる。
【0024】
ここでは、伸縮部82(一端)の細くなった先端が基部72の側に位置してアンテナ7に接触し、円柱状の基礎部81の先端が回路基板12の側に位置する。導電性部材、特に、金属部材である基部72は、配線の薄膜及び回路基板12の樹脂基板などよりも強度が高いので、この向きで配置することでパターン配線及び回路基板12が削られるのを抑制することができる。また、基部72の表面が伸縮部82の先端と接してこすれることで、接触面に不動態膜が生じにくくなり、導電性が低下するのを抑制することができる。
【0025】
図3は、接続部材8の変形例1、2を示す図である。
図3(a)に示す変形例1の接続部材8aの外側は、各周回の導電線が初めから上下に接触している密着コイルばね(引っ張りばね)の凹凸(凹部)を埋め込むように基礎部81aの表面が導体部材(導電層)で覆われて、円柱形となっている。導体部材は、特に限られないが、例えば、各種半田などが用いられてもよい。高周波数帯域の信号は、導体表面に沿って流れるので、表面全体を平面(周回方向に曲面)状とすることで、折れ曲がり地点などでの損失を抑制することができる。また、初めから導電線間が接触した状態で固定されるので、基礎部81aに電流のボトルネックが生じにくく、安定して低損失で電流が流れる。なお、基礎部81aは、密着コイルばねではなく、その他の円柱状の部材であってもよい。
【0026】
図3(b)に示す変形例2の接続部材8bでは、基礎部81bは、コイルばね811の内部に接続部材8bの延在方向に沿って円柱形(ここでは、中空)の導電性部材812(円柱部材)が挿入されたものである。これにより、電流は、導電性部材812の面に沿って低損失低インダクタンスで安定して流れることが可能になる。ここでは導電性部材812の上端がコイルばね811の上端より上にはみ出しているが、コイルばね811が完全に圧縮された状態で当該コイルばね811の内部に収まっていてもよい。また、コイルばね811と導電性部材812とは、上端又は下端が接合されていてもよい。
【0027】
図4は、接続部材8の変形例3、4を示す図である。
図4(a)に示す変形例3の接続部材8cは、基礎部81cのコイルばね811と伸縮部82cのコイルばねとが異なる。ここでは、基礎部81cには、伸縮部82cとの接続側端部に接続用の環状又は円状の中間部材813が接合されている。
【0028】
ここでは、伸縮部82cのコイルばねは、コイルばね811よりも導電線の太さ(径)が大きい。弾性係数は、導電線が太いほど大きくなるので、上記実施形態の伸縮部82よりも更に弾性係数が更に大きくなる。また、導電線の線抵抗が小さくなるので、アンテナ7の特性インピーダンスなどに応じて適宜設定されてもよい。
【0029】
図4(b)に示す変形例4の接続部材8dは、上記変形例3の接続部材8cにおける伸縮部82cと同様に伸縮部82dの導電線が基礎部81cの導電線よりも太く、一方でコイル径が等しい。上述のように、導電線の太さ(径)で弾性係数の差が生じているので、コイル径を変更して弾性係数を変化させなくてもよい。
【0030】
図5は、接続部材の変形例5、6を示す図である。
図5(a)に示す変形例5の接続部材8eは、上下端が基礎部814、815であり、中央に伸縮部82eを有する。基礎部814、815は、上記と同様円柱状の形状を有する。伸縮部82eは、コイル径が基礎部814、815よりも小さく、中央で最も小さくなっている。
【0031】
このような形状では、両端で上記などよりも広い範囲でアンテナ7の基部72及び回路基板12に接するので、安定した信号伝送が可能である。また、中央で伸縮するので、当該中央部分で接続部材8を曲折させることができる。これにより、基部72の接続位置と回路基板12の接続位置とが完全に対向していない場合や、間に支柱、又はりゅうず若しくは押しボタンスイッチなどの軸といった障害物が入っている場合にも、迂回して信号伝送を行うことが可能となる。
【0032】
図5(b)に示す変形例6の接続部材8fでは、伸縮部82fの両側に円柱状の基礎部814f、815fがそれぞれ位置している。基礎部814f、815fが伸縮しない場合には、伸縮部82fの弾性係数を変化させる必要がないので、伸縮部82fは、基礎部814f、815fと同一のコイル径のコイルばねであってもよい。
【0033】
図6は、接続部材8の変形例7を示す図である。
この変形例7の接続部材8gは、基礎部81及び伸縮部82のそれぞれ先端から導電線83、84(線状部分)が横向き(接続部材8gの延在方向に垂直な方向)に延びている。上述の変形例5、6と同様に、基部72の接続位置と回路基板12の接続位置とが完全に対応していない場合、及び他の回路、部品などの影響で、基部72及び回路基板12の間を直線で接続部材8によりつなぐのが困難な場合に、両先端の導電線83、84がそれぞれ基部72及び回路基板12に対して電気的に接続されてよい。この場合、接続部材8の両端は、基部72及び回路基板12の絶縁部分に対して接触維持可能な位置に設けられることで、配置の自由度が向上する。
【0034】
以上のように、本実施形態の電子時計1は、アンテナ7と、回路基板12と、アンテナ7と回路基板12との間を電気的に接続する接続部材8と、を備える。接続部材8は、電子時計1内でアンテナ7と回路基板12との間に位置した状態で伸縮可能なコイルばねを含む伸縮部82と、伸縮部82に対して直列につながれた柱状の基礎部81と、を有する。
このように、電子機器(特に小型のもの)内で直接半田などでアンテナ線を固定するのが難しいアンテナ7及び回路基板12の間の電気的な接続において、部分的に伸縮可能なコイルばねとして、他の部分では電流が螺旋状に流れない柱状構造を有する接続部材を用いることで、インダクタンスを低減しつつ横幅を取らずにアンテナ7の送受信信号を回路基板12との間でやり取りすることができる。
【0035】
また、基礎部81は、円柱形状部分を含む。伸縮部82のコイルばねに合わせて円柱形状の基礎部81をつなげることで、基礎部81と伸縮部82の接続における損失を低減することができる。
【0036】
また、伸縮部82は、接続部材8の一端に位置し、基礎部81との接続位置から離れるほどコイル径が小さくなる。これにより、伸縮部82の弾性係数が大きくなるので、適度な弾性を有するようになり、電子時計1の組み立て時に適度な反発力が生じて、接続部材8を組み込みやすくなる。
【0037】
また、伸縮部82の先端は、アンテナ7に接触している。先端が細く、狭い範囲に力がかかる側を金属などの導体部材であるアンテナ7の側とすることで、接続部材8の圧力により回路基板12が削れない。また、金属表面を伸縮部82がこすることで、不動態膜が生じにくく、接続部分での抵抗損失を抑えることができる。
【0038】
また、変形例5、6では、接続部材8は、伸縮部82の両側に基礎部81がそれぞれ位置している。アンテナ7及び回路基板12との接続部分で接続部材8の幅(コイル径)が広いので、安定して接続される。また、中央が伸縮部82となることで、当該伸縮部82が多少曲折してもよく、アンテナ7の接続位置と回路基板12の接続位置との間に支柱又はりゅうずなどの軸部材が入ってもこれを迂回しながらアンテナ7による送受信信号をやり取りすることができる。
【0039】
また、基礎部81もコイルばねを有し、このコイルばねの部分は、伸縮部82のコイルばねの部分よりも弾性係数が小さく、アンテナ7と回路基板12との間に位置した状態では、螺旋状に周回する導電線が密着して中空の円柱状となっている。
すなわち、基礎部81も使用状態で円柱状になってさえいれば、コイルばねであってよい。このために基礎部81の弾性係数を伸縮部82の弾性係数より小さくしておくことで、電子時計1の組み立て時に伸縮部82よりも先に収縮して、密着状態とすることができる。
【0040】
また、伸縮部82の基礎部81との接続位置におけるコイル径が基礎部81のコイル径と等しいので、適切かつ安定して基礎部81と伸縮部82とを接続することができる。
【0041】
また、基礎部81及び伸縮部82は、単一の導電線により連続した単一のコイルばねである。わざわざ複数の部材を接合せずに単一のコイルばねの形状及びサイズを調整することで、使用時に所望の構造となる接続部材8を容易に得ることができる。
【0042】
また、変形例1、6などで説明したように、基礎部81は、円柱部材であってもよい。基礎部81のコイルばねが圧縮されて密着したときの長さは定まっているので、同一長さの円柱部材を初めから用意してもよい。ばね構造にする手間がかからず、また、ばねよりも安定して低損失で電流を流すことができる。
【0043】
あるいは、変形例2のように、基礎部81のコイルばね811の内部にコイルばね811の延在方向に沿って導電性部材812を挿入してもよい。これにより、組み立て時におけるコイルばねとしての伸縮を利用可能としつつ、導電性部材812の部分では、より安定して電流損失を抑えることができる。
【0044】
また、変形例1で説明したように、基礎部81は、密着コイルばねと、当該密着コイルばねの外周面に沿った凹部を埋め込む導電層と、を有していてもよい。すなわち、コイルばねとして形成してから、基礎部81となる密着コイルばねの部分の表面を導電性部材で平らにすることで、全体構造としては単一のねじでまとめて容易に形成し、その表面に必要に応じて処理を行って、信号のやりとりをより適切に行うことを可能とすることができる。
【0045】
また、接続部材8は、少なくとも一方の先端から延びる線状の導電線83、84を有する。これにより、アンテナ7の接続位置と回路基板12の接続位置とに多少のずれがあっても適切にそれぞれつなぐことように調整することが可能となる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、伸縮部82でコイル径がテーパー状に小さくなるものとして示したが、基礎部81のコイル径よりも小さければ、変形例5の伸縮部82eのような形状であってもよく、あるいは、先端付近でコイル径が一定になるなど、他の形状であってもよい。
【0047】
また、上記変形例1では、伸縮部82のコイル径が先端ほど小さくなるようにしたが、基礎部81が伸縮しない場合には、変形例4、6と同様に伸縮部82のコイル径が一定であってよい。
【0048】
また、上記変形例2では、コイルばね811の内側に導電性部材812を挿入したが、コイルばね811が中空の導電性部材812の内側に収められてもよいし、導電シートなどがコイルばね811の周囲に巻き付けられてもよい。
【0049】
また、上記変形例3、4では、中間部材813を挟んで基礎部81のコイルばねと、異なる太さの伸縮部82のコイルばねとをつなげたが、直接つなげられていてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、細くなった先端がアンテナ7の側に位置するように配置される場合を示したが、反対向きでもよい。
【0051】
また、変形例5、6のように伸縮部82の両側に基礎部81が位置する場合、一方のみがコイルばねで他方が通常(剛体)の円柱部材であってもよい。
【0052】
また、基礎部81は、柱状であれば、円柱部材である必要はない。基礎部81は、角柱であってもよく、あるいは、円錐形や円錐台形であってもよい。すなわちここでは、柱状とは、接続部材の延在方向に垂直な断面の外形面積が一定のものに限られない。また、複数の柱状部材が伸縮部82の上側に所定角度間隔で取り付けられていてもよく、これら複数の柱状部材が支持部材により相互に固定されて枠状構造となっていてもよい。支持部材は環状であってもよいし四角い枠であってもよい。この場合の支持部材は導体に限られない。
【0053】
また、上記変形例7では、上下端の両方に導電線83、84が延びているものとして説明したが、いずれか一方だけであってもよい。
その他、上記実施の形態で示した構成及び構造の具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0055】
[付記]
<請求項1>
アンテナと、
回路基板と、
前記アンテナと前記回路基板との間を電気的に接続する接続部材と、
を備え、
前記接続部材は、伸縮可能な第1コイルばねを含む第1部分と、前記第1部分に対して直列につながれた柱状の第2部分と、を有する
ことを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記第2部分は、円柱形状部分を含むことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
<請求項3>
前記第1部分は、前記接続部材の一端に位置し、前記第1コイルばねは、前記第2部分との接続位置から離れるほどコイル径が小さいことを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
<請求項4>
前記第1コイルばねの先端は、前記アンテナに接触していることを特徴とする請求項3記載の電子機器。
<請求項5>
前記接続部材は、前記第1部分の両側に前記第2部分がそれぞれ位置していることを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
<請求項6>
前記第2部分は第2コイルばねを有し、
当該第2コイルばねは、前記第1コイルばねよりも弾性係数が小さく、前記アンテナと前記回路基板との間に位置した状態では、螺旋状に周回する導電線が密着して中空の円柱状となっている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項7>
前記第1部分は、前記第1コイルばねの前記第2部分との接続位置におけるコイル径が前記第2部分の前記第2コイルばねのコイル径と等しいことを特徴とする請求項6記載の電子機器。
<請求項8>
前記第2コイルばね及び前記第1コイルばねは、単一の導電線により連続していることを特徴とする請求項6又は7記載の電子機器。
<請求項9>
前記第2部分は、円柱部材を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項10>
前記第2部分は、円柱部材を有し、
当該円柱部材は、前記第2コイルばねの内部に当該第2コイルばねの延在方向に沿って位置している
ことを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項11>
前記第2部分は、密着コイルばねと、当該密着コイルばねの外周面に沿った凹部を埋め込む導電層と、を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項12>
前記接続部材は、少なくとも一方の先端から延びる線状部分を有することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0056】
1 電子時計
2 ケーシング
3 裏蓋
4 風防ガラス
6 ベゼル
7 アンテナ
8、8a~8g 接続部材
11 表示部
12 回路基板
13 バッテリ
14 電子部品
15 回路基板
21 支持部材
31 防水リング
41 パッキン
51 防水部材
71 アンテナ線
72 基部
81、81a~81c 基礎部
812 導電性部材
813 中間部材
814、814f、815、815f 基礎部
82、82a、82c~82f 伸縮部
83、84 導電線