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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/08 20060101AFI20240123BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
F04D29/08 D
F04D29/28 J
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019177235
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021055570
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 和彦
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 健人
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-180818(JP,A)
【文献】特開2007-270631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0010681(US,A1)
【文献】特開2002-005093(JP,A)
【文献】特開2011-163187(JP,A)
【文献】特開2006-207519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0110649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータを有する固定子と、
上下に延びる中心軸を中心として回転し、前記ステータと径方向に対向する回転子と、を有するモータを備え、
前記固定子は、径方向に延びるベースを有し、
前記ベースは、前記ベースの上面から軸方向上方に延びるベース壁部を有し、
前記回転子は、
インペラと、
前記インペラが径方向外側に固定されるハブと、
を有し、
前記インペラは、前記インペラの下面から軸方向下方に延びるインペラ壁部を有し、
前記インペラ壁部は、径方向外側に前記インペラの下面から軸方向下方へ延びるインペラ壁面を有し、
前記ハブは、
前記インペラの内周面と径方向に対向する外周面を有する筒状部と、
前記インペラ壁部の軸方向下方において前記インペラ壁面よりも径方向外側に前記外周面から突出する突出部と、
を有し、
前記回転子は、前記ベースよりも軸方向上方で前記ベースと隙間を空けて回転し、
前記隙間は、第1の隙間と、第2の隙間と、を有し、
前記第1の隙間および前記第2の隙間は、前記回転子と前記ベースとが軸方向に対向して形成され、
前記第2の隙間は、前記第1の隙間の径方向外側に前記第1の隙間と連続し、
前記第2の隙間は、径方向の最も外側に位置し、
前記第1の隙間の軸方向長さは、前記第2の隙間の軸方向長さよりも狭く、
前記第1の隙間は、前記突出部の下面と前記ベース壁部の上面とが軸方向に対向して形成される、送風装置。
【請求項2】
前記第2の隙間は、前記回転子の軸方向下方の面である回転子下面と、前記ベースの軸方向上方の面であるベース上面と、が対向して形成され、
前記回転子下面および前記ベース上面は、径方向に延びる、請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
前記回転子下面と前記ベース上面とは、平行である、請求項2に記載の送風装置。
【請求項4】
前記第1の隙間の軸方向中心位置は、前記第2の隙間の軸方向中心位置と一致する、請
求項1から請求項3のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項5】
ステータを有する固定子と、
上下に延びる中心軸を中心として回転し、前記ステータと径方向に対向する回転子と、を有するモータを備え、
前記固定子は、径方向に延びるベースを有し、
前記ベースは、前記ベースの上面から軸方向上方に延びるベース壁部を有し、
前記回転子は、
インペラと、
前記インペラが径方向外側に固定されるハブと、
を有し、
前記インペラは、前記インペラの下面から軸方向下方に延びるインペラ壁部を有し、
前記インペラ壁部は、径方向外側に前記インペラの下面から軸方向下方へ延びるインペラ壁面を有し、
前記ハブは、
前記インペラの内周面と径方向に対向する外周面を有する筒状部と、
前記インペラ壁部の軸方向下方において前記インペラ壁面よりも径方向外側に前記外周面から突出する突出部と、
を有し、
前記回転子は、前記ベースよりも軸方向上方で前記ベースと隙間を空けて回転し、
前記隙間は、第1の隙間と、第2の隙間と、を有し、
前記第1の隙間および前記第2の隙間は、前記回転子と前記ベースとが軸方向に対向して形成され、
前記第2の隙間は、前記第1の隙間の径方向外側に前記第1の隙間と連続し、
前記第2の隙間は、径方向の最も外側に位置し、
前記第1の隙間の軸方向長さは、前記第2の隙間の軸方向長さよりも狭く、
前記第1の隙間は、前記回転子と前記ベース壁部の上面とが対向して形成され、
前記突出部の外周面は、前記ベース壁部の内周面と径方向に対向する、送風装置。
【請求項6】
前記第2の隙間は、前記回転子の軸方向下方の面である回転子下面と、前記ベースの軸方向上方の面であるベース上面と、が対向して形成され、
前記回転子下面および前記ベース上面は、径方向に延びる、請求項5に記載の送風装置。
【請求項7】
前記回転子下面と前記ベース上面とは、平行である、請求項6に記載の送風装置。
【請求項8】
前記回転子は、前記回転子の下面から軸方向下方に延びる回転子壁部を有し、
前記第1の隙間は、前記回転子壁部の下面と前記ベースとが対向して形成される、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項9】
前記回転子は、前記回転子の下面から軸方向下方に延びる回転子壁部を有し、
前記第1の隙間は、前記ベース壁部の上面と前記回転子壁部の下面とが対向して形成される、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項10】
前記ベース壁部は、径方向外側に前記ベースの上面から軸方向上方に延びるベース外壁面を有し、
前記回転子壁部は、径方向外側に前記回転子の下面から軸方向下方に延びる回転子外壁面を有し、
前記ベース外壁面の軸方向上端と前記回転子外壁面の軸方向下端との径方向位置は同じである、請求項9に記載の送風装置。
【請求項11】
前記ベース壁部は、径方向外側に前記ベースの上面から軸方向上方に延びるベース外壁面を有し、
前記回転子壁部は、径方向外側に前記回転子の下面から軸方向下方に延びる回転子外壁面を有し、
前記ベース外壁面と前記回転子外壁面との少なくとも一方の延びる方向は、軸方向に平行である、請求項9または請求項10に記載の送風装置。
【請求項12】
前記ベース外壁面の延びる方向が軸方向に平行であり、前記ベース外壁面と前記ベースの上面とがなす角度は、90度以下である、請求項11に記載の送風装置。
【請求項13】
前記回転子外壁面の延びる方向が軸方向に平行であり、前記回転子外壁面と前記回転子の下面とがなす角度は、90度以下である、請求項11または請求項12に記載の送風装置。
【請求項14】
前記ベースは、前記ベース壁部の壁面に接続されて前記ベース壁部の軸方向下方且つ径方向外側に位置し、前記ベースの上面から軸方向上方へ延びる下方壁部を有する、請求項から請求項13のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項15】
前記回転子は、前記回転子壁部の壁面に接続されて前記回転子壁部の軸方向上方且つ径方向外側に位置し、前記回転子の下面から軸方向下方へ延びる上方壁部を有する、請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項16】
前記第1の隙間の軸方向中心位置は、前記第2の隙間の軸方向中心位置と一致する、請求項から請求項15のいずれか1項に記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送風装置は、回転子と固定子とを有するモータを備える。回転子は、インペラを有する。固定子は、ステータとベースとを有する。このような送風装置として、インペラはベースとの間に隙間を空けて回転可能であり、当該隙間によっていわゆるラビリンス構造を形成する送風装置が知られている。これにより、気流により外部からラビリンス構造へ入り込んだ塵が、回転子とベースとの間に挟まれた空間における内部側に入り込むことを抑制する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-47387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状、上記ラビリンス構造を用いた防塵機能のさらなる改善が望まれている。
【0005】
上記状況に鑑み、本発明は、防塵機能を向上させた送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な送風装置は、ステータを有する固定子と、上下に延びる中心軸を中心として回転し、前記ステータと径方向に対向する回転子と、を有するモータを備える。前記固定子は、径方向に延びるベースを有する。前記回転子は、インペラを有する。前記回転子は、前記ベースよりも軸方向上方で前記ベースと隙間を空けて回転する。前記隙間は、第1の隙間と、第2の隙間と、を有する。前記第1の隙間および前記第2の隙間は、前記回転子と前記ベースとが軸方向に対向して形成される。前記第2の隙間は、前記第1の隙間の径方向外側に前記第1の隙間と連続する。前記第2の隙間は、径方向の最も外側に位置する。前記第1の隙間の軸方向長さは、前記第2の隙間の軸方向長さよりも狭い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の例示的な送風装置によれば、防塵機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態に係る送風装置の斜視図である。
図2図2は、本発明の例示的な実施形態に係る送風装置の断面斜視図である。
図3図3は、送風装置に設けられるラビリンス構造の第1実施形態を示す一部を拡大した拡大断面図である。
図4図4は、ラビリンス構造の第2実施形態を示す一部を拡大した拡大断面図である。
図5図5は、ラビリンス構造の第3実施形態を示す一部を拡大した拡大断面図である。
図6図6は、ラビリンス構造の第4実施形態を示す一部を拡大した拡大断面図である。
図7図7は、ラビリンス構造の第5実施形態を示す一部を拡大した拡大断面図である。
図8図8は、ラビリンス構造の第6実施形態を示す一部を拡大した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書では、後述する中心軸C1の延びる方向を「上下方向」とする。但し、この「上下方向」は、実際の機器に組み込まれたときの上下方向を示すものではない。また、中心軸C1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸C1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0010】
<1.送風装置の全体構成>
図1は、本発明の例示的な実施形態に係る送風装置1の斜視図である。また、図2は、本発明の例示的な実施形態に係る送風装置1の断面斜視図である。なお、図2は、図1において、中心軸C1を含む切断面により上下方向に切断した状態を示す。
【0011】
送風装置1は、遠心ファンである。送風装置1は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)に搭載され、PCの筐体内部の機器の冷却に利用される。
【0012】
送風装置1は、モータMを有する。モータMは、固定子2と、回転子3と、を有する。固定子2は、下ハウジング部21と、ステータ22と、軸部材23と、キャップ24と、を有する。回転子3は、インペラ31と、ハブ32と、マグネット33と、を有する。回転子3は、中心軸C1を中心として回転可能である。
【0013】
下ハウジング部21は、ベース211と、軸受保持部212と、第1周壁部213と、第2周壁部214と、を有する。ベース211と、軸受保持部212と、第1周壁部213と、第2周壁部214と、は、樹脂等により単一の部材で形成される。
【0014】
ベース211は、径方向に拡がる板状部材である。すなわち、固定子2は、径方向に延びるベース211を有する。ベース211は、インペラ3の下方を覆う。第1周壁部213および第2周壁部214は、ベース211の周縁から上方に延び、周方向に間隔を空けて配置される。
【0015】
送風装置1は、不図示の上ハウジング部を有する。上ハウジング部は、下ハウジング部21の上方に配置される。上ハウジング部は、インペラ31の上方を覆う。上ハウジング部と下ハウジング部21とで囲まれる空間にインペラ31は収容される。
【0016】
軸受保持部212は、ベース211の径方向中央位置に配置される。軸受保持部212は、第1筒状部212Aと、第2筒状部212Bと、第3筒状部212Cと、を有する。第1筒状部212A、第2筒状部212B、および第3筒状部212Cは、いずれも中心軸C1を中心とした筒状に形成される。
【0017】
第2筒状部212Bは、第1筒状部212Aの上方に配置される。第2筒状部212Bの内径は、第1筒状部212Aの内径よりも長い。第1段差面DS1は、第1筒状部212Aの軸方向に延びる内周面の上端から径方向外側に拡がって円環状に形成される。
【0018】
第2筒状部212Bの外径は、第1筒状部212Aの外径よりも短い。第2段差面DS2は、第1筒状部212Aの軸方向に延びる外周面の上端から径方向内側に拡がって円環状に形成される。第2段差面DS2は、第1段差面DS1より径方向外側に配置される。
【0019】
第3筒状部212Cは、第2筒状部212Bの上方に配置される。第3筒状部212Cの内径は、第2筒状部212Bの内径よりも長い。第3段差面DS3は、第2筒状部212Bの軸方向に延びる内周面の上端から径方向外側に拡がって円環状に形成される。第3筒状部212Cの外径は、第2筒状部212Bの外径と等しい。
【0020】
軸受としてのスリーブ4は、中心軸C1を中心とする円筒状である。スリーブ4は、第2筒状部212B内に挿入される。スリーブ4の外周面は、第2筒状部212Bの内周面と接触する。スリーブ4の下面が第1段差面D1に接触することにより、スリーブ4は軸受保持部212に保持される。
【0021】
軸部材23は、円板部23Aと、軸部23Bと、を有する。軸部23Bは、円板部23Aの径方向中央位置から上方へ突出する。円板部23Aは、スリーブ4の下面に設けられ、軸方向上方に凹む凹部4Aに収容される。軸部23Bは、スリーブ4の内周面の径方向内側に配置される。
【0022】
円板状のキャップ24は、スリーブ4の凹部4Aに固定され、円板部23Aの下方を覆う。
【0023】
ハブ32は、蓋部32Aと、外側壁部32Bと、内側壁部32Cと、軸受部32Dと、を有する。蓋部32Aは、円板状である。外側壁部32Bは、蓋部32Aの周縁から下方へ突出して円筒状に形成される。内側壁部32Cは、蓋部32Aの周縁より径方向内側から下方へ突出して円筒状に形成される。軸受部32Dは、蓋部32Aの径方向中央位置から下方へ突出して円柱状に形成される。
【0024】
軸受部32Dは、下端から上方へ向けて柱状に凹む柱状凹部32D1を有する。軸部材23の軸部23Bは、柱状凹部32D1に挿入される。内側壁部32Cは、第3筒状部212Cとスリーブ4とで挟まれる円筒状の空間に挿入される。
【0025】
ステータ22は、中心軸C1を中心とする環状を有し、軸受保持部212の外周面に固定される。ステータ22は、ステータコア221と、不図示のインシュレータと、コイル222と、を有する。ステータコア221は、薄板状の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される。インシュレータは、ステータコア221の表面を被覆する絶縁体である。コイル222は、インシュレータに対して導線が巻き付けられて形成される。
【0026】
マグネット33は、円筒状であり、ハブ32の外側壁部32Bの内周面に固定される。マグネット33は、ステータ22の径方向外側に配置され、ステータ22と径方向に対向する。
【0027】
すなわち、送風装置1は、ステータ22を有する固定子2と、上下に延びる中心軸C1を中心として回転し、ステータ22と径方向に対向する回転子3と、を有するモータMを備える。
【0028】
インペラ31は、インペラカップ311と、複数の羽根312と、を有する。インペラカップ311は、軸方向に貫通する貫通穴311Aを有する。外側壁部32Bは、貫通穴311Aに嵌る。インペラカップ311は、外側壁部32Bに対して圧入または接着などにより固定される。すなわち、回転子3は、インペラ31が径方向外側に固定されるハブ32を有する。インペラカップ311の外周面は、下方へ向かうにしたがって径が大きくなる。
【0029】
インペラ31は、モータMの駆動により、軸方向上方から視て中心軸C1を中心として時計回りに回転する。複数の羽根312は、インペラカップ311の外周端部に固定され、周方向に並んで配置される。羽根312の外周端は、羽根312の内周端よりも回転方向後方に配置される。これにより、羽根312は、径方向に対して傾斜している。
【0030】
モータMの駆動によりインペラ31が回転すると、不図示の上記上ハウジング部に設けられる吸気口から隣り合う羽根312の間の内周側端部に空気が取り込まれる。取り込まれた空気は、隣り合う羽根312の間を通って径方向外側に向かって加速され、インペラ31の径方向外側に吹き出される。
【0031】
ここで、ベース211は、径方向に対して垂直な方向に直線状に延びる直線部2111Aを含む縁部2111を有する。縁部2111の一方側端部は、第1周壁部213の端部と接続される。縁部2111の他方側端部は、第2周壁部214の端部と接続される。上ハウジング部と下ハウジング部21とで、空気の通路が形成される。上ハウジング部と下ハウジング部21により、直線部2111Aの位置に吹出し口が形成される。インペラ31から上記のように吹き出された空気は、上ハウジング部と下ハウジング部21とにより囲まれた空気通路を通り、上記吹出し口から外部へ排出される。
【0032】
<2.ラビリンス構造の第1実施形態>
回転子3は、ベース211よりも軸方向上方でベース211と隙間SP(図2)を空けて回転する。インペラ31の回転により発生する気流によって塵が隙間SPにおける径方向内側へ入り込むことを抑制するために、送風装置1にはラビリンス構造が設けられている。特に、送風装置1が屋外で使用可能なPCに備えられる場合、砂または砂利の多い環境で送風装置1が使用されることが想定され、送風装置1における防塵機能が重要となる。
【0033】
図3は、送風装置1に設けられるラビリンス構造を示す一部拡大断面図である。図3は、図2に示す領域A付近を拡大した図である。
【0034】
図3に示すラビリンス構造は、第1隙間S1と、第2隙間S2と、第3隙間S3と、を有する。隙間SPは、第1隙間S1と、第2隙間S2と、第3隙間S3と、を有する。第2隙間S2は、インペラ31のインペラ下面31Aと、ベース211のベース上面211Aとが軸方向に対向して形成される。インペラ31は、インペラ下面31Aから軸方向下方へ立ち下がるインペラ壁部31Bを有する。ベース211は、ベース上面211Aから軸方向上方へ立ち上がるベース壁部211Bを有する。第1隙間S1は、インペラ壁部31Bの下面とベース壁部211Bの上面とが軸方向に対向して形成される。
【0035】
すなわち、第1の隙間S1および第2の隙間S2は、回転子3とベース211とが軸方向に対向して形成される。また、第2の隙間S2は、第1の隙間S1の径方向外側に第1の隙間S1と連続する。第2の隙間S2は、径方向の最も外側に位置する。第1の隙間S1の軸方向長さは、第2の隙間S2の軸方向長さよりも狭い。
【0036】
第3の隙間S3は、第1の隙間S1よりも径方向内側に配置されて第1の隙間S1と連通する。なお、連通とは、間接的に接続されることも含む。ここで、ハブ32は、外側壁部32Bの外周面から径方向外側に突出する突出部32Tを有する。第3の隙間S3は、突出部32Tとベース211により挟まれて形成される。第3の隙間S3の延びる方向は、径方向外側に向かうにつれて軸方向から径方向へ変化する。すなわち、第3の隙間S3は、湾曲する。
【0037】
径方向の最も外側に位置する第2の隙間S2は、外部空間OSとつながる。インペラ31の回転に位置するより発生した気流が外部空間OSから第2の隙間S2に入っても、第1の隙間S1の軸方向長さは第2の隙間S2の軸方向長さよりも狭いので、気流は第1の隙間S1には入らずに第2の隙間S2より再び外部空間OSへ戻りやすい。従って、気流に含まれた塵が隙間SPにおける径方向内側へ入り込むことを抑制できる。
【0038】
また、インペラ下面31Aは、回転子3の回転子下面3Aに相当する。すなわち、第2の隙間S2は、回転子3の軸方向下方の面である回転子下面3Aと、ベース211の軸方向上方の面であるベース上面211Aと、が対向して形成される。回転子下面3Aおよびベース上面211Aは、径方向に延びる。これにより、外部空間OSより第2の隙間S2に入り、回転子下面3Aとベース上面211Aの一方に沿って流れる空気は、他方に沿って流れて外部空間OSに戻りやすい。従って、気流に含まれた塵が隙間SPにおける径方向内側へ入り込むことを抑制できる。
【0039】
また、回転子下面3Aとベース上面211Aとは、平行である。これにより、第2の隙間S2の外部空間OSとつながる箇所の隙間を狭くし、第2の隙間S2に気流が入り込むのを抑制できる。
【0040】
また、ベース211は、ベース211の上面から軸方向上方に延びるベース壁部211Bを有し、第1の隙間S1は、回転子3とベース壁部211Bの上面とが対向して形成される。これにより、図3において実線矢印で示す気流FL1のように、外部空間OSより第2の隙間S2に入りこんでベース211に沿って流れる空気は、ベース壁部211Bの壁面に沿って流れ、第1の隙間S1に入らずに回転子3側を流れて外部空間OSへ戻りやすい。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0041】
また、インペラ壁部31Bは、回転子3の回転子壁部3Bに相当する。すなわち、回転子3は、回転子3の下面から軸方向下方に延びる回転子壁部3Bを有し、第1の隙間S1は、回転子壁部3Bの下面とベース211とが対向して形成される。これにより、図3において破線矢印で示す気流FL2のように、外部空間OSより第2の隙間S2に入り込んで回転子3に沿って流れる空気は、回転子壁部3Bの壁面に沿って流れ、第1の隙間S1に入らずにベース211側を流れて外部空間OSへ戻りやすい。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0042】
特に、図3に示す実施形態では、ベース211は、ベース211の上面から軸方向上方に延びるベース壁部211Bを有し、回転子3は、回転子3の下面から軸方向下方へ延びる回転子壁部3Bを有する。第1の隙間S1は、ベース壁部211Bの上面と回転子壁部3Bの下面とが対向して形成される。これにより、図3において気流FL1,FL2で示すように、ベース211および回転子3のいずれに沿って流れる空気も第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0043】
また、ベース壁部211Bは、径方向外側にベース211の上面から軸方向上方に延びるベース外壁面211B1を有し、回転子壁部3Bは、径方向外側に回転子3の下面から軸方向下方に延びる回転子外壁面3B1を有する。そして、ベース外壁面211B1の軸方向上端と回転子外壁面3B1の軸方向下端との径方向位置は同じである。これにより、気流FL1のように、ベース外壁面211B1に沿って流れる空気は、回転子外壁面3B1に沿って流れやすくなり、気流FL2のように、回転子外壁面3B1に沿って流れる空気は、ベース外壁面211B1に沿って流れやすくなる。すなわち、気流が第1の隙間S1に入り込むのをより抑制できる。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0044】
なお、図3に示すように、ベース外壁面211B1とベース上面211Aとのなす角度を90度とする以外にも、90度より大きくし、ベース外壁面211B1を傾斜させてもよい。同様に、図3に示すように、回転子外壁面3B1と回転子上面3Aとのなす角度を90度とする以外にも、90度より大きくし、回転子外壁面3B1を傾斜させてもよい。このようにしても、ベース外壁面211Bの上端と回転子外壁面3B1の上端の径方向位置が一致していれば、上記効果を享受できる。さらに、このような傾斜した外壁面は、直線状に限らず、曲線状でもよい。
【0045】
また、図3に示すように、第1の隙間S1の軸方向中心位置P1は、第2の隙間S2の軸方向中心位置P2と一致する。これにより、ベース壁部211Bの壁面と回転子壁部3Bの壁面のそれぞれの長さを十分に確保し、それぞれの壁面に沿って流れる空気が第1の隙間S1に入り込むことをより抑制できる。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0046】
また、図3に示すように、ベース外壁面211B1と回転子外壁面3B1の両方の延びる方向は、軸方向に平行である。なお、ベース外壁面211B1と回転子外壁面3B1のいずれかの延びる方向が軸方向と非平行でもよい。すなわち、ベース外壁面211B1と回転子外壁面3B1との少なくとも一方の延びる方向は、軸方向に平行である。これにより、ベース外壁面211Bまたは回転子外壁面3B1に沿って流れる空気は、軸方向に平行に流れるので、第1の隙間S1に入り込みにくい。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0047】
ただし、図3に示すように、ベース外壁面211B1の一部は、アール部R1であり、軸方向に平行でなくてもよい。同様に、回転子外壁面3B1の一部は、アール部R2であり、軸方向に平行でなくてもよい。アール部R1,R2を設けることにより、径方向に流れる気流を軸方向の流れへ滑らかに変化させることができる。
【0048】
また、図3に示すように、ベース外壁面211B1とベース211の上面とがなす角度は90度であり、回転子外壁面3B1と回転子3の上面とがなす角度は90度である。これにより、ベース外壁面211B1に沿って流れる空気、および回転子外壁面3B1に沿って流れる空気は、第1の隙間S1側へ向かうことを抑制される。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0049】
<ラビリンス構造の第2実施形態>
以下、上述した図3に示すラビリンス構造の各種変形例について述べる。図4は、ラビリンス構造の第2実施形態を示す一部拡大断面図である。
【0050】
図4に示す構成では、インペラ下面31A、すなわち回転子下面3Aがベース壁部211Bの上方まで延びる。従って、第1の隙間S1は、回転子下面3Aとベース壁部211Bの上面とが軸方向に対向して形成される。すなわち、第1の隙間S1は、回転子3とベース壁部211Bの上面とが対向して形成される。これにより、図4に示す気流FL11のように、ベース211に沿って流れる空気は、ベース壁部211Bのベース外壁面211B1に沿って流れ、第1の隙間S1に入らずに回転子3に沿って流れて外部空間OSへ戻りやすい。
【0051】
<ラビリンス構造の第3実施形態>
図5は、ラビリンス構造の第3実施形態を示す一部拡大断面図である。
【0052】
図5に示す構成では、ベース上面211Aがインペラ壁部31B、すなわち回転子壁部3Bの下方まで延びる。従って、第1の隙間S1は、回転子壁部3Bの下面とベース上面211Aとが軸方向に対向して形成される。すなわち、第1の隙間S1は、回転子壁部3Bの下面とベース211とが対向して形成される。これにより、図5に示す気流FL12のように、回転子3に沿って流れる空気は、回転子壁部3Bの回転子外壁面3B1に沿って流れ、第1の隙間S1に入らずにベース211に沿って流れて外部空間OSへ戻りやすい。
【0053】
<ラビリンス構造の第4実施形態>
図6は、ラビリンス構造の第4実施形態を示す一部拡大断面図である。
【0054】
図6に示す構成では、インペラ31は、インペラ31の下面から下方へ立ち下がるインペラ壁部31Bを有する。ハブ32は、外側壁部32Bの外周面から径方向外側へ突出する突出部32Tを有する。突出部32Tは、インペラ壁部31Bの径方向外側の壁面の下方まで突出する。これにより、インペラ壁部31Bと突出部32Tとから回転子壁部3Bが構成される。第1の隙間S1は、突出部32Tの下面とベース壁部211Bの上面とが軸方向に対向して形成される。すなわち、第1の隙間S1は、ベース壁部211Bの上面と回転子壁部3Bの下面とが対向して形成される。
【0055】
これにより、図6に示す気流FL21のように、ベース211に沿って流れる空気は、ベース壁部211Bの壁面に沿って流れ、第1の隙間S1に入らずに回転子壁部3Bに沿って流れやすい。また、図6に示す気流FL22のように、第2の隙間S2内部から回転子3の下面に沿って流れる空気は、回転子壁部3Bに沿って流れ、第1の隙間S1に入らずにベース壁部211Bの壁面に沿って流れやすい。
【0056】
また、図6に示す構成では、回転子3は、インペラ壁部31Cを有する。インペラ壁部31Cは、インペラ壁部31Bの径方向外側に位置する壁面に接続されてインペラ壁部31Bの上方且つ径方向外側に位置する。インペラ壁部31Cは、上方壁部3Cに相当する。すなわち、回転子3は、回転子壁部3Bの壁面に接続されて回転子壁部3Bの軸方向上方且つ径方向外側に位置し、回転子3の上面から軸方向下方へ延びる上方壁部3Cを有する。これにより、図6に示す気流FL23のように、回転子3に沿って流れる空気は、より径方向外側に位置する上方壁部3Cの壁面に沿って流れるので、空気が第1の隙間S1に入り込みにくい。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0057】
なお、ベース211に下方壁部を設けてもよい。すなわち、ベース211は、ベース壁部211Bの壁面に接続されてベース壁部211Bの軸方向下方且つ径方向外側に位置し、ベース211の下面から軸方向下方へ延びる下方壁部を有する。これにより、ベース211に沿って流れる空気は、より径方向外側に位置する下方壁部の壁面に沿って流れるので、空気が第1の隙間S1に入り込みにくい。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0058】
<ラビリンス構造の第5実施形態>
図7は、ラビリンス構造の第5実施形態を示す一部拡大断面図である。
【0059】
図7に示す構成では、インペラ31は、インペラ31の下面から軸方向下方に延びるインペラ壁部31Bを有する。インペラ壁部31Bは、径方向外側にインペラ31の下面から軸方向下方へ延びるインペラ壁面31B1を有する。ハブ32は、外側壁部32B、すなわち筒状部と、突出部32Tと、を有する。上記筒状部は、インペラ31の内周面と径方向に対向する外周面32B1を有する。突出部32Tは、インペラ壁部31Bの軸方向下方においてインペラ壁面31B1よりも径方向外側に外周面32B1から突出する。第1の隙間S1は、突出部32Tの下面とベース壁部211Bの上面とが軸方向に対向して形成される。
【0060】
これにより、図7に示す気流FL31のように、ベース211に沿って流れる空気は、ベース壁部211Bの壁面から突出部32Tの下面に沿って流れ、第2の隙間S2より外部空間へ戻りやすい。また、図7に示す気流FL32のように、インペラ31に沿って流れる空気は、インペラ壁部31Bの壁面から突出部32Tの上面に沿って流れ、第2の隙間S2より外部空間へ戻りやすい。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0061】
<ラビリンス構造の第6実施形態>
図8は、ラビリンス構造の第6実施形態を示す一部拡大断面図である。
【0062】
図8に示す構成では、第1の隙間S1は、ベース壁部211Bの上面と、インペラ壁部31B、すなわち回転子壁部3Bの下面とが軸方向に対向して形成される。そして、ベース壁部211Bのベース外壁面211B1が軸方向に平行であり、ベース外壁面211B1とベース211の上面とがなす角度θ1は、90度より小さい。また、回転子壁部3Bの回転子外壁面3B1が軸方向に平行であり、回転子外壁面3B1と回転子3の下面とがなす角度θ2は、90度より小さい。
【0063】
すなわち、図3に示した第1実施形態と同様に、ベース外壁面211B1の延びる方向が軸方向に平行であり、ベース外壁面211B1とベース211の上面とがなす角度は、90度以下であり、回転子外壁面3B1の延びる方向が軸方向に平行であり、回転子外壁面3B1と回転子3の上面とがなす角度は、90度以下である。これにより、ベース211に沿って流れる空気がベース外壁面211B1に沿って第1の隙間S1側へ向かうことを抑制できる。または、回転子3に沿って流れる空気が回転子外壁面3B1に沿って第1の隙間S1側へ向かうことを抑制できる。従って、気流に含まれた塵が第1の隙間S1に入り込むことを抑制できる。
【0064】
<その他>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、本発明は、遠心ファンに限らず、その他の送風装置、例えば軸流ファン等に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば、各種の送風装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1・・・送風装置、2・・・固定子、21・・・下ハウジング部、211・・・ベース、211A・・・ベース上面、211B・・・ベース壁部、211B1・・・ベース外壁面、212・・・軸受保持部、213・・・第1周壁部、214・・・第2周壁部、22・・・ステータ、221・・・ステータコア、222・・・コイル、23・・・軸部材、24・・・キャップ、3・・・回転子、3A・・・回転子下面、3B・・・回転子壁部、
3B1・・・回転子外壁面、3C・・・上方壁部、31・・・インペラ、31A・・・インペラ下面、31B・・・インペラ壁部、31C・・・インペラ壁部、311・・・インペラカップ、312・・・羽根、32・・・ハブ、32A・・・蓋部、32B・・・外側壁部、32C・・・内側壁部、32D・・・軸受部、32T・・・突出部、33・・・マグネット、M・・・モータ、S1・・・第1の隙間、S2・・・第2の隙間、S3・・・第3の隙間、SP・・・隙間、OS・・・外部空間、C1・・・中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8