(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】駐車支援装置、駐車支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20240123BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20240123BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20240123BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240123BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B60W30/06
B60R99/00 322
B60R99/00 330
B60R99/00 340
B60W30/09
G08G1/16 C
B60T7/12 B
(21)【出願番号】P 2019188397
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立花 裕之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 博紀
(72)【発明者】
【氏名】水谷 友一
(72)【発明者】
【氏名】清川 裕介
(72)【発明者】
【氏名】友澤 元克
(72)【発明者】
【氏名】小▲瀬▼垣 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】大村 明寛
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 和磨
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069430(WO,A1)
【文献】特開2018-150012(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60T 7/12- 8/1769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺の情報である周辺情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記周辺情報に基づいて、前記車両の駐車領域と障害物とを検出する検出部と、
前記車両の駐車領域に含まれる前記車両の駐車目標位置と前記駐車目標位置に前記車両を移動させるための移動経路とを算出し、前記移動経路にしたがって前記車両を前記駐車目標位置に移動させる駐車支援部と、
を備え、
前記駐車支援部は、
前記車両と前記障害物との衝突の回避のために前記車両を停止させる場合には、第1の減速度で前記車両を減速させ、
前記移動経路の変更に伴って前記車両に切り返しをさせる切り返し位置を設定した場合に、第1の減速度よりも小さい第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させても前記車両が前記障害物に衝突しないと判定したときには、前記第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速さ
せ、
前記移動経路の変更に伴って前記切り返し位置を設定した場合に、前記第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させると前記車両が前記障害物に衝突すると判定したときには、前記第2の減速度よりも大きくかつ前記第1の減速度以下であって前記車両と前記障害物との間の距離が大きいほど小さい減速度で前記車両を減速させる、
駐車支援装置。
【請求項2】
前記駐車支援部は、前記車両の速度と、前記車両と前記障害物との間の距離と、に基づいて、前記第2の減速度よりも大きくかつ前記第1の減速度以下の前記減速度を算出する、請求項
1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
取得部が、車両の周辺の情報である周辺情報を取得するステップと、
検出部が、前記取得部によって取得された前記周辺情報に基づいて、前記車両の駐車領域と障害物とを検出するステップと、
駐車支援部が、前記車両の駐車領域に含まれる前記車両の駐車目標位置と前記駐車目標位置に前記車両を移動させるための移動経路とを算出し、前記移動経路にしたがって前記車両を前記駐車目標位置に移動させるステップと、
を含み、
前記駐車支援部は、
前記車両と前記障害物との衝突の回避のために前記車両を停止させる場合には、第1の減速度で前記車両を減速させ、
前記移動経路の変更に伴って前記車両に切り返しをさせる切り返し位置を設定した場合に、第1の減速度よりも小さい第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させても前記車両が前記障害物に衝突しないと判定したときには、前記第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速さ
せ、
前記移動経路の変更に伴って前記切り返し位置を設定した場合に、前記第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させると前記車両が前記障害物に衝突すると判定したときには、前記第2の減速度よりも大きくかつ前記第1の減速度以下であって前記車両と前記障害物との間の距離が大きいほど小さい減速度で前記車両を減速させる、
駐車支援方法。
【請求項4】
コンピュータを、
車両の周辺の情報である周辺情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記周辺情報に基づいて、前記車両の駐車領域と障害物とを検出する検出部と、
前記車両の駐車領域に含まれる前記車両の駐車目標位置と前記駐車目標位置に前記車両を移動させるための移動経路とを算出し、前記移動経路にしたがって前記車両を前記駐車目標位置に移動させる駐車支援部と、
として機能させ、
前記駐車支援部は、
前記車両と前記障害物との衝突の回避のために前記車両を停止させる場合には、第1の減速度で前記車両を減速させ、
前記移動経路の変更に伴って前記車両に切り返しをさせる切り返し位置を設定した場合に、第1の減速度よりも小さい第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させても前記車両が前記障害物に衝突しないと判定したときには、前記第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速さ
せ、
前記移動経路の変更に伴って前記切り返し位置を設定した場合に、前記第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させると前記車両が前記障害物に衝突すると判定したときには、前記第2の減速度よりも大きくかつ前記第1の減速度以下であって前記車両と前記障害物との間の距離が大きいほど小さい減速度で前記車両を減速させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援装置、駐車支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車支援として、車両の周囲の情報に基づいて車両の駐車目標位置を算出し駐車目標位置に車両を移動させる、駐車支援装置が知られている。この種の駐車支援装置は、駐車支援中に車両と障害物とが衝突する可能性が有ると判定した場合には、駐車支援装置に設定された最大減速度で車両を減速させて当該車両を停止させるようにしている。一方、駐車支援装置は、駐車支援中に駐車目標位置に車両を停止させる場合には、上記の最大減速度よりも小さい減速度で車両を減速させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の駐車支援装置は、車両の周囲の変化等に応じて移動経路を変更した場合に、車両に切り返しをさせる切り返し位置を設定するときがある。このとき、従来の駐車支援装置は、駐車支援装置に設定された最大減速度で車両を切り返し位置に向けて減速させるため、車両の乗り心地が低下する。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、移動経路の変更に伴って車両の切り返し位置が設定された場合の車両の乗り心地を向上させることができる駐車支援装置、駐車支援方法、およびプログラムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の駐車支援装置は、例えば、車両の周辺の情報である周辺情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記周辺情報に基づいて、前記車両の駐車領域と障害物とを検出する検出部と、前記車両の駐車領域に含まれる前記車両の駐車目標位置と前記駐車目標位置に前記車両を移動させるための移動経路とを算出し、前記移動経路にしたがって前記車両を前記駐車目標位置に移動させる駐車支援部と、を備え、前記駐車支援部は、前記車両と前記障害物との衝突の回避のために前記車両を停止させる場合には、第1の減速度で前記車両を減速させ、前記移動経路の変更に伴って前記車両に切り返しをさせる切り返し位置を設定した場合に、第1の減速度よりも小さい第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させても前記車両が前記障害物に衝突しないと判定したときには、前記第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させる。
【0007】
このような駐車支援装置では、例えば、駐車支援部が、移動経路の変更に伴って車両に切り返しをさせる切り返し位置を設定した場合に、第1の減速度よりも小さい第2の減速度で車両を切り返し位置に向けて減速させても前記車両が前記障害物に衝突しないと判定したときには、第2の減速度で車両を切り返し位置に向けて減速させるので、車両の乗り心地が低下するのが抑制されやすい。
【0008】
また、前記駐車支援装置では、例えば、前記駐車支援部は、前記移動経路の変更に伴って前記切り返し位置を設定した場合に、前記第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させると前記車両が前記障害物に衝突すると判定したときには、前記第2の減速度よりも大きくかつ前記第1の減速度以下の減速度で前記車両を減速させる。
【0009】
このような駐車支援装置では、例えば、前記駐車支援部が前記移動経路の変更に伴って前記切り返し位置を設定した場合でも、車両と障害物との衝突を抑制することができる。
【0010】
また、前記駐車支援装置では、例えば、前記第2の減速度よりも大きくかつ前記第1の減速度以下の前記減速度は、前記第1の減速度と同じである。
【0011】
このような駐車支援装置では、例えば、前記駐車支援部が前記移動経路の変更に伴って前記切り返し位置を設定した場合でも、車両と障害物との衝突を抑制することができる。
【0012】
また、前記駐車支援装置では、例えば、前記駐車支援部は、前記車両の速度と、前記車両と前記障害物との間の距離と、に基づいて、前記第2の減速度よりも大きくかつ前記第1の減速度以下の前記減速度を算出する。
【0013】
このような駐車支援装置では、例えば、車両の速度と、車両と障害物との間の距離と、に応じた減速度で、車両を停止させることができる。
【0014】
実施形態の駐車支援方法は、例えば、取得部が、車両の周辺の情報である周辺情報を取得するステップと、検出部が、前記取得部によって取得された前記周辺情報に基づいて、前記車両の駐車領域と障害物とを検出するステップと、駐車支援部が、前記車両の駐車領域に含まれる前記車両の駐車目標位置と前記駐車目標位置に前記車両を移動させるための移動経路とを算出し、前記移動経路にしたがって前記車両を前記駐車目標位置に移動させるステップと、を含み、前記駐車支援部は、前記車両と前記障害物との衝突の回避のために前記車両を停止させる場合には、第1の減速度で前記車両を減速させ、前記移動経路の変更に伴って前記車両に切り返しをさせる切り返し位置を設定した場合に、第1の減速度よりも小さい第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させても前記車両が前記障害物に衝突しないと判定したときには、前記第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させる。
【0015】
このような駐車支援方法では、例えば、駐車支援部が、移動経路の変更に伴って車両に切り返しをさせる切り返し位置を設定した場合に、第1の減速度よりも小さい第2の減速度で車両を切り返し位置に向けて減速させても前記車両が前記障害物に衝突しないと判定したときには、第2の減速度で車両を切り返し位置に向けて減速させるので、移動経路の変更に伴って車両の切り返し位置が設定された場合の車両の乗り心地を向上させることができる。
【0016】
また、実施形態のプログラムは、例えば、コンピュータを、車両の周辺の情報である周辺情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記周辺情報に基づいて、前記車両の駐車領域と障害物とを検出する検出部と、前記車両の駐車領域に含まれる前記車両の駐車目標位置と前記駐車目標位置に前記車両を移動させるための移動経路とを算出し、前記移動経路にしたがって前記車両を前記駐車目標位置に移動させる駐車支援部と、として機能させ、前記駐車支援部は、前記車両と前記障害物との衝突の回避のために前記車両を停止させる場合には、第1の減速度で前記車両を減速させ、前記移動経路の変更に伴って前記車両に切り返しをさせる切り返し位置を設定した場合に、第1の減速度よりも小さい第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させても前記車両が前記障害物に衝突しないと判定したときには、前記第2の減速度で前記車両を前記切り返し位置に向けて減速させる。
【0017】
このようなプログラムでは、例えば、駐車支援部が、移動経路の変更に伴って車両に切り返しをさせる切り返し位置を設定した場合に、第1の減速度よりも小さい第2の減速度で車両を切り返し位置に向けて減速させても前記車両が前記障害物に衝突しないと判定したときには、第2の減速度で車両を切り返し位置に向けて減速させるので、移動経路の変更に伴って車両の切り返し位置が設定された場合の車両の乗り心地を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の駐車支援システムが搭載される車両の平面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態実施形態の駐車支援システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態実施形態の駐車支援装置の機能を説明する機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態実施形態の駐車支援中の車両の周辺の平面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態実施形態の駐車支援中の車両の周辺の平面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態実施形態の駐車支援装置が実行する駐車支援処理のフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の駐車支援装置が実行する駐車支援処理における切り返しに関する処理のフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施形態の駐車支援装置が実行する駐車支援処理における切り返しに関する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0020】
また、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0021】
<第1の実施形態>
図1は、実施形態の駐車支援システム20が搭載される車両10の平面図である。車両10は、例えば、内燃機関(エンジン、図示されず)を駆動源とする自動車(内燃機関自動車)であってもよいし、電動機(モータ、図示されず)を駆動源とする自動車(電気自動車、燃料電池自動車等)であってもよいし、それらの双方を駆動源とする自動車(ハイブリッド自動車)であってもよい。また、車両10は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置(システム、部品等)を搭載することができる。また、車両10における車輪13の駆動に関わる装置の方式、個数、および、レイアウト等は、種々に設定することができる。
【0022】
図1に示すように、車両10は、車体12と、4個の車輪13と、1または複数(本実施形態では4個)の撮像部14a、14b、14c、14dと、1または複数(本実施形態では8個)の測距部16a、16b、16c、16d、16e、16f、16g、16h、16i、16j、16k、16lと、を備える。撮像部14a、14b、14c、14dを区別する必要がない場合、撮像部14と記載する。測距部16a、16b、16c、16d、16e、16f、16g、16h、16i、16j、16k、16lを区別する必要がない場合、測距部16と記載する。
【0023】
車体12は、乗員が乗車する車室を構成する。車体12は、車輪13、撮像部14および測距部16等を収容または保持する。
【0024】
4個の車輪13は、車体12の前後左右に設けられている。例えば、前側の2個の車輪13は、転舵輪として機能して、後側の2個の車輪13は、駆動輪として機能する。
【0025】
撮像部14は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、または、CIS(CMOS Image Sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部14は、所定のフレームレートで生成される複数のフレーム画像を含む動画、または、静止画のデータを撮像画像のデータとして出力する。撮像部14は、それぞれ、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、例えば、水平方向の140°~190°の範囲を撮影することができる。撮像部14の光軸は、斜め下方に向けて設定されている。従って、撮像部14は、周辺の路面を含む車両10の周辺を撮像した撮像画像のデータを出力する。
【0026】
撮像部14は、車体12の外周部に設けられている。例えば、撮像部14aは、車体12の前端部の左右方向の中央部(例えば、フロントバンパー)に設けられている。撮像部14aは、車両10の前方の周辺を撮像した撮像画像を生成する。撮像部14bは、車体12の後端部の左右方向の中央部(例えば、リアバンパー)に設けられている。撮像部14bは、車両10の後方の周辺を撮像した撮像画像を生成する。撮像部14cは、車体12の左端部の前後方向の中央部(例えば、左側のサイドミラー12a)に設けられている。撮像部14cは、車両10の左方の周辺を撮像した撮像画像を生成する。撮像部14dは、車体12の右端部の前後方向の中央部(例えば、右側のサイドミラー12b)に設けられている。撮像部14dは、車両10の右方の周辺を撮像した撮像画像を生成する。
【0027】
測距部16は、例えば、車両10の外周部に設けられ、超音波を含む音波等を検出波として送信して、車両10の周辺に存在する他の車両等の対象物が反射した検出波を捉えるソナーである。なお、測距部16は、レーザ光等の検出波を出力するレーダーやミリ波レーダー等であってもよい。測距部16は、車両10の周辺の情報である検出情報を検出して駐車支援装置34に出力する。例えば、測距部16は、検出波を送信してから受信するまでの時間である応答時間を、対象物の位置を特定するための検出情報として検出する。なお、測距部16は、一度の検出波の送信に対して、対象物の複数の個所が反射した複数の検出波を受信した場合、最も早く受信した検出波の応答時間のみを検出情報に含めてもよい。駐車支援装置34は、測距部16の検出結果により、車両10の周辺の障害物等の物体の有無や当該物体までの距離を測定することができる。測距部16は、検出部とも称される。
【0028】
測距部16a、16b、16c、16dは、サイドソナーとも呼ばれ、車両10の左右の側部に設けられている。測距部16a、16b、16c、16dは、車両10の側方の対象物を検出して、検出情報を出力する。測距部16e、16fは、コーナーソナーとも呼ばれ、測距部16a、16b、16c、16dよりも車両10の後部(例えば、車両10のコーナー近傍)に設けられ、測距部16a、16b、16c、16dよりも後方(例えば、後方の外側)に向けられている。測距部16e、16fは、車両10の斜め後方の対象物を検出して、検出情報を出力する。測距部16g、16hは、コーナーソナーとも呼ばれ、測距部16a、16b、16c、16dよりも車両10の前部(例えば、車両10のコーナー近傍)に設けられ、測距部16a、16b、16c、16dよりも前方(例えば、前方の外側)に向けられている。測距部16g、16hは、車両10の斜め前方の対象物を検出して、検出情報を出力する。測距部16i、16jは、リアソナーとも呼ばれ、車両10の後端部に設けられている。測距部16i、16jは、車両10の後方の対象物を検出して、検出情報を出力する。測距部16k、16lは、フロントソナーとも呼ばれ、車両10の前端部に設けられている。測距部16k、16lは、車両10の前方の対象物を検出して、検出情報を出力する。
【0029】
具体的には、測距部16aは、車両10の左側面の前側の位置に設けられている。測距部16aは、左方向に向けられている。測距部16aは、車両10の前側の左側方の検出領域に存在する対象物に関する検出情報を出力する。
【0030】
測距部16bは、車両10の左側面の後側の位置に設けられている。測距部16bは、左方向に向けられている。測距部16bは、車両10の後側の左側方の検出領域に存在する対象物に関する検出情報を出力する。
【0031】
測距部16cは、車両10の右側面の前側の位置に設けられている。測距部16cは、右方向に向けられている。測距部16cは、車両10の前側の右側方の検出領域に存在する対象物に関する検出情報を出力する。
【0032】
測距部16dは、車両10の右側面の後側の位置に設けられている。測距部16dは、右方向に向けられている。測距部16dは、車両10の後側の右側方の検出領域に存在する対象物に関する検出情報を出力する。
【0033】
測距部16eは、車両10の後端部の左側の位置に設けられている。測距部16eは、左後方に向けられている。測距部16eは、車両10の左後方の検出領域に存在する対象物に関する検出情報を出力する。
【0034】
測距部16fは、車両10の後端部の右側の位置に設けられている。測距部16fは、右後方に向けられている。測距部16fは、車両10の右後方の検出領域に存在する対象物に関する検出情報を出力する。
【0035】
測距部16gは、車両10の前端部の左側の位置に設けられている。測距部16gは、左前方に向けられている。測距部16gは、車両10の左前方の検出領域に存在する対象物に関する検出情報を出力する。
【0036】
測距部16hは、車両10の前端部の右側の位置に設けられている。測距部16hは、右前方に向けられている。測距部16hは、車両10の右前方の検出領域に存在する対象物に関する検出情報を出力する。
【0037】
測距部16i、16jは、車両10の後端部において測距部16e、16fの間で互いに左右方向に間隔を空けて設けられている。測距部16i、16jは、後方に向けられている。測距部16i、16jは、車両10の後方の検出領域に存在する対象物に関する検出情報を出力する。
【0038】
測距部16k、16lは、車両10の前端部において測距部16g、16hの間で互いに左右方向に間隔を空けて設けられている。測距部16k、16lは、前方に向けられている。測距部16k、16lは、車両10の前方の検出領域に存在する対象物に関する検出情報を出力する。
【0039】
図2は、実施形態の駐車支援システム20の全体構成を示すブロック図である。駐車支援システム20は、車両10に搭載されて、車両10の周辺の対象物に応じて、車両10の運転を自動運転(一部自動運転を含む)によって支援する。
【0040】
図2に示すように、駐車支援システム20は、撮像部14と、測距部16と、制動システム22と、加速システム24と、操舵システム26と、変速システム28と、車速センサ30と、モニタ装置32と、駐車支援装置34と、車内ネットワーク36とを備える。
【0041】
制動システム22は、車両10の減速を制御する。制動システム22は、制動部40と、制動制御部42と、制動部センサ44とを有する。
【0042】
制動部40は、例えば、ブレーキおよびブレーキペダル等を含み、車両10を減速させるための装置である。
【0043】
制動制御部42は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータ等のコンピュータである。制動制御部42は、駐車支援装置34からの指示に基づいて、制動部40を制御して、車両10の減速を制御する。
【0044】
制動部センサ44は、例えば、位置センサであって、制動部40がブレーキペダルの場合、制動部40の位置を検出する。制動部センサ44は、検出した制動部40の位置を車内ネットワーク36に出力する。
【0045】
加速システム24は、車両10の加速を制御する。加速システム24は、加速部46と、加速制御部48と、加速部センサ50とを有する。
【0046】
加速部46は、例えば、アクセルペダル等を含み、車両10を加速させるための装置である。
【0047】
加速制御部48は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータ等のコンピュータである。加速制御部48は、駐車支援装置34からの指示に基づいて、加速部46を制御して、車両10の加速を制御する。
【0048】
加速部センサ50は、例えば、位置センサであって、加速部46がアクセルペダルの場合、加速部46の位置を検出する。加速部センサ50は、検出した加速部46の位置を車内ネットワーク36に出力する。
【0049】
操舵システム26は、車両10の進行方向を制御する。操舵システム26は、操舵部52と、操舵制御部54と、操舵部センサ56とを有する。
【0050】
操舵部52は、例えば、ハンドルまたはステアリングホイール等を含み、車両10の転舵輪を転舵させて、車両10の進行方向を操舵する装置である。
【0051】
操舵制御部54は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータ等のコンピュータである。操舵制御部54は、駐車支援装置34からの指示に基づいて、操舵部52を制御して、車両10の進行方向を制御する。
【0052】
操舵部センサ56は、第3検出部の一例であって、例えば、ホール素子等を含む角度センサであって、操舵部52の回転角である操舵角を検出する。操舵部センサ56は、検出した操舵部52の操舵角を車内ネットワーク36に出力する。
【0053】
変速システム28は、車両10の変速比を制御する。変速システム28は、変速部58と、変速制御部60と、変速部センサ62とを有する。
【0054】
変速部58は、例えば、シフトレバー等を含み、車両10の変速比を変更させる装置である。
【0055】
変速制御部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータ等のコンピュータである。変速制御部60は、駐車支援装置34からの指示に基づいて、変速部58を制御して、車両10の変速比を制御する。
【0056】
変速部センサ62は、例えば、位置センサであって、変速部58がシフトレバーの場合、変速部58の位置を検出する。変速部センサ62は、検出した変速部58の位置を車内ネットワーク36に出力する。
【0057】
車速センサ30は、例えば、車両10の車輪13の近傍に設けられたホール素子を有し、車輪13の回転量または単位時間当たりの回転数を検出するセンサである。車速センサ30は、検出した回転量または回転数を示す車輪速パルス数を、車両10の速度(車速)を算出するためのセンサ値として、車内ネットワーク36へ出力する。駐車支援装置34は、車輪速センサ30から取得したセンサ値に基づいて車両10の速度(車速)や移動量等を算出することができる。
【0058】
モニタ装置32は、車両10の車室内のダッシュボード等に設けられている。モニタ装置32は、表示部64と、音声出力部66と、操作入力部68とを有する。
【0059】
表示部64は、駐車支援装置34が送信した画像データに基づいて、画像を表示する。表示部64は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、または、有機ELディプレイ(OELD:Organic Electroluminescent Display)等の表示装置である。表示部64は、例えば、自動運転と手動運転との切り替えを指示する操作指示を受け付ける画像を表示する。
【0060】
音声出力部66は、駐車支援装置34が送信した音声データに基づいて音声を出力する。音声出力部66は、例えば、スピーカである。音声出力部66は、例えば、自動運転と手動運転との切り替えを指示する操作指示に関する音声を出力する。
【0061】
操作入力部68は、乗員の入力を受け付ける。操作入力部68は、例えば、タッチパネルである。操作入力部68は、表示部64の表示画面に設けられている。操作入力部68は、表示部64が表示する画像を透過可能に構成されている。これにより、操作入力部68は、表示部64の表示画面に表示される画像を乗員に視認させることができる。操作入力部68は、表示部64の表示画面に表示される画像に対応した位置を乗員が触れることによって入力した指示を受け付けて、駐車支援装置34へ送信する。なお、操作入力部68は、タッチパネルに限らず、押しボタン式等のハードスイッチであってもよい。
【0062】
駐車支援装置34は、ECU(Electronic Control Unit)等のマイクロコンピュータを含むコンピュータであり、車両10の駐車支援を行なう。
【0063】
駐車支援装置34は、CPU(Central Processing Unit)34aと、ROM(Read Only Memory)34bと、RAM(Random Access Memory)34cと、表示制御部34dと、音声制御部34eと、SSD(Solid State Drive)34fと、を備える。CPU34a、ROM34bおよびRAM34cは、同一パッケージ内に集積されていてもよい。
【0064】
CPU34aは、ハードウェアプロセッサの一例であって、ROM34b等の不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して、当該プログラムにしたがって各種の演算処理および制御を実行する。CPU34aは、例えば、車両10の自動運転による駐車支援を実行する。
【0065】
ROM34bは、各プログラムおよびプログラムの実行に必要なパラメータ等を記憶する。RAM34cは、CPU34aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。表示制御部34dは、駐車支援装置34での演算処理のうち、主として、撮像部14で得られた画像の画像処理、表示部64に表示させる表示用の画像のデータ変換等を実行する。音声制御部34eは、駐車支援装置34での演算処理のうち、主として、音声出力部66に出力させる音声の処理を実行する。SSD34fは、書き換え可能な不揮発性の記憶装置であって、駐車支援装置34の電源がオフされた場合にあってもデータを維持する。
【0066】
車内ネットワーク36は、例えば、CAN(Controller Area Network)およびLIN(Local Interconnect Network)等を含む。車内ネットワーク36は、加速システム24と、制動システム22と、操舵システム26と、変速システム28と、測距部16と、車速センサ30と、モニタ装置32の操作入力部68と、駐車支援装置34とを互いに情報を送受信可能に接続する。
【0067】
図3は、駐車支援装置34の機能を説明する機能ブロック図である。
図3に示すように、駐車支援装置34は、取得部71と、検出部72と、操作受付部73と、駐車支援部74と、を有する。また、駐車支援部74は、目標位置算出部74aと、経路算出部75bと、移動制御部76cと、を含む。これらの取得部71、検出部72、操作受付部73、および駐車支援部74は、CPU34aがROM34b等の記憶装置に記憶されたプログラム(駐車プログラム)を読み出しそれを実行することにより、実現される。なお、取得部71、検出部72、操作受付部73、および駐車支援部74の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含む回路等のハードウェアによって構成されてもよい。
【0068】
取得部71は、車両10の周辺の情報である周辺情報を取得する。具体的には、取得部71は、周辺情報として、撮像部14から撮像画像を取得し撮像部14から検出情報を取得する。
【0069】
検出部72は、取得部71によって取得された周辺情報に基づいて、車両の周囲の障害物、駐車区画、および車両10の駐車領域PA(
図5)等を検出する。
【0070】
障害物は、例えば、他の車両や、壁、柱、柵、突起、段差、輪留め、物体等である。また、障害物は、例えば、駐車場内を歩く人等を含む。検出部72は、種々の手法により、障害物の有無や高さ、大きさ等を検出することができる。検出部72は、例えば、測距部16の検出結果に基づいて、障害物を検出することができる。また、測距部16は、そのビームの高さに対応した物体を検出でき、当該ビームの高さより低い物体を検出できない。よって、測距部16の検出結果と、それぞれのビームの高さとによって、検出部72は、障害物の高さを検出することができる。また、検出部72は、車速センサ30や不図示の加速度センサの検出結果と、測距部16の検出結果とに基づいて、障害物の有無あるいは高さを検出してもよい。また、検出部72は、例えば、撮像部14が撮像した画像に基づく画像処理によって、障害物の高さ等の形状を検出してもよい。
【0071】
また、駐車区画は、標示または物として設けられている。駐車区画とは、車両10をその場所に駐車するよう設定された目安あるいは基準となる区画である。また、駐車境界は、駐車区画の境界あるいは外縁であって、例えば、駐車区画線や、枠線、直線、帯、段差、それらのエッジ等である。すなわち、駐車境界は、標示や物体等である。検出部72は、例えば、撮像部14が撮像した画像に基づく画像処理によって、駐車区画および駐車境界を検出することができる。また、検出部72は、検出した駐車区画が車両10が駐車可能か否かを種々の方法によって判定することができる。例えば、検出部72は、駐車区画内に車両10の駐車に障害となる障害物を検出しない場合には、当該駐車区画は駐車可能であると判定する。すなわち、検出部72は、駐車可能な駐車区画を駐車領域として検出することができる。検出部72は、車両10の後方、車両10の左右の側方、および車両10の前方の駐車可能な駐車区画を検出することができる。すなわち、検出部72は、車両10の全周における車両10の周囲の駐車可能な駐車区画を検出することができる。ここで、車両10の後方は、換言すると、車両10の前後方向で車両10よりも後方に位置する領域である。また、車両10の全周は、車両10の上下方向に延びる車両10の中心線回りの車両10の周囲の領域である。
【0072】
操作受付部73は、操作入力部68に対する操作に応じた操作入力部68からの信号を取得(受信)する。
【0073】
駐車支援部74は、特定した対象物に応じて各システム22、24、26、28の全部または一部を制御することによる車両10の自動運転によって、車両10の駐車領域に含まれる車両10の駐車目標位置と駐車目標位置に車両10を移動させるための移動経路とを算出し、移動経路にしたがって車両10を駐車目標位置に移動させる。すなわち、駐車支援部74は、車両1の駐車を支援する。
【0074】
駐車支援部74の目標位置算出部74aは、例えば、検出部72による検出結果に基づいて、車両10を誘導する目安あるいは目標となる位置としての車両10の移動目標位置、言い換えれば、駐車目標位置を公知の手法等により算出(決定)する。駐車目標位置は、移動経路の終点であってもよいし、移動経路の途中であってもよい。目標位置は、例えば、点や、線、枠、領域等として設定されうる。目標位置は、表示位置と同じであってもよい。目標位置算出部74aは、目標位置決定部とも称される。
【0075】
駐車支援部74の経路算出部75bは、車両10の現在位置から駐車領域に含まれる駐車目標位置に車両10を移動させるための移動経路を算出する。経路算出部75bは、例えば、車両10すなわち自車の現在の位置や、決定された駐車目標位置、障害物の検出結果等に基づいて、公知の手法等により、移動経路を設定する。
【0076】
移動制御部76cは、車両10の各部を制御して車両10の移動を制御する。具体的には、移動制御部76cは、各システム22、24、26、28の全部または一部を制御することにより、車両10の移動を制御する。移動制御部76cは、移動経路にしたがって車両10を駐車目標位置PP(
図4)に移動させる。このとき、移動制御部76cは、車両10の基準点10a(
図1)を駐車目標位置PPに一致させるように車両10を移動させる。車両10の基準点10aは、例えば、車両10の後輪軸の中心である。
【0077】
駐車支援部74は、駐車支援中の車両10を減速(停止)させる場合には、複数の減速度のうちいずれいか一つの減速度を選択(設定)して、当該減速度で車両10が停止するように制動システム22を制御する。
【0078】
例えば、駐車支援部74は、駐車支援中に、車両10と障害物との衝突の回避のために車両10を停止させる場合には、予め設定された急ブレーキ用の減速度で車両10を減速させる。急ブレーキ用の減速度は、例えば、0.3G(Gは重力加速度)である。換言すると、急ブレーキ用の減速度は、-0.3Gの加速度である。なお、急ブレーキ用の減速度は、上記以外であってもよい。例えば、急ブレーキ用の減速度は、0.1G~0.6Gの範囲(規定の範囲)内の減速度であってもよい。急ブレーキ用の減速度は、第1の減速度の一例である。減速度は、負の加速度とも称される。
【0079】
また、駐車支援部74は、駐車目標位置PP(
図4)や切り返し位置RP(
図5)等の停止位置に車両10を停止させる場合には、急ブレーキ用の減速度よりも小さい緩ブレーキ用の減速度で車両10を停止位置に向けて減速させて、停止位置に車両10を停止させる。すなわち、駐車支援部74は、駐車目標位置PP(
図4)や切り返し位置RP(
図5)等の停止位置に車両10を停止させる場合には、急ブレーキ用の制動力よりも小さな制緩ブレーキ用の制動力で車両10を停止位置に向けて減速させて、停止位置に車両10を停止させる。緩ブレーキ用の減速度(制動力)で車両10を減速させて車両10を停止させた場合の制動距離は、急ブレーキ用の減速度(制動力)で車両10を減速させて車両10を停止させた場合の制動距離よりも長い。緩ブレーキ用の減速度は、例えば、0.02Gである。換言すると、緩ブレーキ用の減速度は、-0.02Gの加速度である。なお、緩ブレーキ用の減速度は、上記以外であってもよい。例えば、緩ブレーキ用の減速度は、0.01G~0.05Gの範囲(規定の範囲)内の減速度であってもよい。緩ブレーキ用の減速度は、第2の減速度の一例である。緩ブレーキ用の減速度は、制御ブレーキ用の減速度とも称される。また、切り返し位置RPは、後退終了位置や前進開始位置とも称される。
【0080】
上記の減速度の選択(設定)は、例えば、車両10の現在位置から目標駐車位置PPや切り返し位置RP等の停止位置までの距離を示す残距離に応じて行なわれうる。残距離は、駐車支援部74によって算出されて、例えばRAM34cの規定の領域(残距離記憶部)に記憶される。
【0081】
また、移動制御部76cは、モニタ装置32や音声出力部66を制御して、車両10の位置に応じた表示出力や音声出力によって、運転者に、移動経路に沿った車両10の移動を案内してもよい。
【0082】
次に、駐車支援装置34が行なう駐車支援処理の一つである並列駐車支援処理について説明する。並列駐車支援処理は、車両10の駐車形態として並列駐車を支援する処理であり、ここでは、車両10を駐車領域に向けて後退させて駐車領域に駐車させる例である。
【0083】
図4および
図5は、実施形態の駐車支援中の車両10の周辺の平面図である。詳細には、
図4は、最初に算出された移動経路での駐車支援を説明するための図であり、
図5は、変更された移動経路での駐車支援を説明するための図である。
図4および
図5において、矢印は車両10の移動経路における進行方向を示す。また、
図4には、最初に計算された移動経路にしたがって車両10を移動させる場合の車両10の動作の予想が示されている。
図5では再計算された移動経路にしたがって車両10を移動させる場合の車両10の動作の予想が示されている。
【0084】
図4に示すように、車両10が、車両10の周辺の障害物の一例である他車両201,202の前方を横切っている状態を想定する。他車両201と他車両202とは、車両10が駐車可能な間隔を空けて駐車しているとする。すなわち、他車両201と他車両202との間が駐車領域PAである。なお、他車両201と他車両202との間の全部が駐車領域PAとして検出(設定)されてもよいし、他車両201と他車両202との間の一部が駐車領域PAとして検出(設定)されてもよい。この状態において、他車両201,202の間に車両10が並列駐車する場合の車両10の動作は、以下の通りである。すなわち、車両10は、他車両201,202の前を通過した後に停止する。次に、車両10は、他車両201,202の間に後退で進入する。そして、車両10は、他車両201,202の間に停止する。
【0085】
図4および
図5には、検出部72による他車両201,202の検出結果201A,202Aが、一点鎖線で示されている。
図4および
図5から分かるように、検出部72による他車両201,202の検出結果201A,202Aの精度は、車両10が他車両201,202に近くなる程、高くなりやすい。このように、検出部72による他車両201,202の検出結果201A,202Aの変化した場合には、その変化に応じて、経路算出部40bが、駐車領域PA、目標位置PP、および移動経路を再計算する。すなわち、駐車領域PA、目標位置PP、および移動経路が変更(修正、更新)される。このとき、変更後の移動経路に、車両10に切り返しをさせる位置である切り返し位置RPが設定されることがある(
図5)。
【0086】
上記のような場合等に、駐車支援部74は、移動経路の変更に伴って車両10に切り返しをさせる切り返し位置RP(
図5)を新たに設定した場合に、緩ブレーキ用の減速度で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させても車両10が障害物(他車両201,202)に衝突しないかを判定する。そして、緩ブレーキ用の減速度で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させても車両10が障害物(他車両201,202)に衝突しないと判定したときには、緩ブレーキ用の減速度で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させる。
【0087】
一方、駐車支援部74は、移動経路の変更に伴って切り返し位置RPを設定した場合に、緩ブレーキ用の減速度で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させると車両10が障害物(他車両201,202)に衝突すると判定したときには、緩ブレーキ用の減速度よりも大きくかつ急ブレーキ用の減速度以下の減速度で車両10を減速させる。具体的には、本実施形態では、駐車支援部74は、移動経路の変更に伴って切り返し位置RPを設定した場合に、緩ブレーキ用の減速度で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させると車両10が障害物(他車両201,202)に衝突すると判定したときには、急ブレーキ用の減速度で車両10を減速させる。
【0088】
なお、駐車支援部74は、最初に算出された移動経路において車両10の切り返し位置RPが設定されている場合には、緩ブレーキ用の減速度で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させて、切り返し位置PRに車両10を停止させる。
【0089】
次に、駐車支援処理の流れを
図6を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態の駐車支援装置34が実行する駐車支援処理(駐車支援方法)のフローチャートである。
【0090】
図6に示すように、取得部71は、撮像部14の撮像画像および測距部16の検出情報、すなわち車両10の周辺情報を取得する(S1)。なお、取得部71は、規定の周期で車両1の周辺情報を繰り返し取得する。
【0091】
次に、検出部72は、取得部71が取得した周辺情報(撮像部14の撮像画像、撮像部14の検出情報)に基づいて、障害物や駐車区画線等の物体を検出するとともに、駐車領域PA(
図5)を検出する(S2)。なお、この検出部72による検出は、規定の周期で繰り返し行なわれている。
【0092】
図6に戻って、操作受付部73が操作入力部68を介して駐車支援の指示等を乗員から受け付けると(S3)、目標位置算出部74aは、検出部72による検出結果に基づいて、駐車領域PAに含まれる駐車目標位置PPを算出する(S4)。
【0093】
次に、経路算出部75bは、車両10の現在位置から駐車領域に含まれる駐車目標位置に車両10を移動させるための移動経路を算出する(S5)。
【0094】
次に、移動制御部76cは、各システム22、24、26、28の全部または一部を制御することにより、移動経路にしたがって車両10を駐車目標位置PPに移動させる。すなちち、移動制御部76cは、自動運転を実行する。
【0095】
S6の処理において、移動経路の変更に伴って切り返し位置RPを設定した場合について、
図7を参照しながら詳細に説明する。
【0096】
図7は、実施形態の駐車支援装置34が実行する駐車支援処理における切り返しに関する処理のフローチャートである。
図7の処理は、車両10が駐車領域PAに後退で向かう際に開始される。また、このとき、前述のとおり、取得部71による周辺情報の取得と、検出部72による障害物や駐車区画線等の物体(基準物)の検出は、規定の周期で繰り返し行なわれている。
【0097】
図7に示すように、駐車支援部74は、最初に算出された移動経路に対して移動経路の駐車目標位置PAが変更されたかを判定する(S11)。
【0098】
駐車支援部74は、最初に算出された移動経路に対して移動経路の駐車目標位置PA(移動経路)が変更されたと判定した場合には(S11:Yes)、移動経路の再計算により切り返し条件が成立するかを判定する(S12)。ここで、切り返し条件は、例えば、最初に算出された移動経路上において、切り返し位置RPを障害物と重ならない位置に設定できることである。駐車支援部74は、移動経路の再計算により切り返し条件が成立すると判定した場合、すなわち移動経路を変更した場合には(S12:Yes)、S13に進む。
【0099】
S13にて、駐車支援部74は、車両10の現在の速度(車速)での、緩ブレーキ用の減速度による車両10の停止に必要な制動距離(残距離)、を算出する。
【0100】
次に、駐車支援部74は、S13で算出された制動距離で車両10が障害物(他車両201,202)と衝突しないかを判定する(S14)。詳細には、駐車支援部74は、最初に算出された移動経路を車両10が移動した場合に、S13で算出された制動距離で車両10が障害物(他車両201,202)と衝突しないかを判定する。
【0101】
駐車支援部74は、S13で算出された制動距離で車両10が障害物(他車両201,202)と衝突しないと判定した場合には(S14:Yes)、S13で算出された制動距離を残距離に設定(更新)する。具体的には、駐車支援部74は、当該制動距離で、RAM34cの残距離部に記憶された残距離を更新する。これにより、駐車支援部74の移動制御部40cが、緩ブレーキ用の減速度で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させる。この結果、車両10が切り返し位置RPに停止する。
【0102】
一方、駐車支援部74は、S13で算出された制動距離では車両10が障害物(例えば、他車両202)と衝突すると判定した場合には(S14:No)、残距離を「0」に設定(更新)する。これにより、駐車支援部74の移動制御部40cが、急ブレーキ用の減速度で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させる。この結果、車両10が切り返し位置RPの手前に停止する。
【0103】
また、S12にて、駐車支援部74は、移動経路の再計算により切り返し条件が成立しないと判定した場合には(S12:No)、S13~S16の処理を行なわない。この場合には、例えば、駐車支援部74は、駐車支援を終了または中断する。
【0104】
また、S11にて、駐車支援部74は、最初に算出された移動経路に対して駐車目標位置PA(移動経路)は変更されていないと判定した場合には(S11:No)、S12~S16の処理を行なわない。この場合には、駐車支援部74は、最初に算出された移動経路にしたがって車両10を移動させる。
【0105】
ここで、車両10には、駐車支援装置34とは別に、緊急ブレーキ制御装置(不図示)が搭載されている。緊急ブレーキ制御装置は、制動システム22を制御することにより、駐車支援装置34に設定されている急ブレーキ用の減速度(第1の減速度)よりも大きな緊急ブレーキ用の減速度で車両10を制動して当該車両10を停止させることができる。緊急ブレーキ用の減速度は、例えば、0.9Gである。すなわち、本実施形態では、緩ブレーキ用の減速度(制動力)<急ブレーキ用の減速度(制動力)<緊急ブレーキ用の減速度(制動力)、である。緊急ブレーキ制御装置の処理は、駐車支援装置34の処理よりも優先される。したがって、駐車支援部74が上記の処理を含む駐車支援処理を行なっている場合に、駐車支援装置が車両10と障害物とが衝突しないと判定した場合であっても、緊急ブレーキ装置が、車両10と障害物(他車両201,202等)とが衝突する可能性があると判定した場合には、緊急ブレーキ装置によって車両10が緊急停止される。なお、緊急ブレーキ用の減速度は、上記以外であってもよい。
【0106】
以上のように、実施形態の駐車支援装置34は、例えば、車両10の周辺の情報である周辺情報を取得する取得部71と、取得部71によって取得された周辺情報に基づいて、車両10の駐車領域PAと障害物(他車両201,202等)とを検出する検出部72と、車両10の駐車領域PAに含まれる車両10の駐車目標位置PPと駐車目標位置PPに車両10を移動させるための移動経路とを算出し、移動経路にしたがって車両10を駐車目標位置PPに移動させる駐車支援部74と、を備える。駐車支援部74は、車両10と障害物との衝突の回避のために車両10を停止させる場合には、急ブレーキ用の減速度(第1の減速度)で車両10を減速させる。駐車支援部74は、移動経路の変更に伴って車両10に切り返しをさせる切り返し位置RPを設定した場合に、急ブレーキ用の減速度(第1の減速度)よりも小さい緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させても車両10が障害物に衝突しないと判定したときには、緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させる。
【0107】
このような駐車支援装置34では、例えば、駐車支援部74が、移動経路の変更に伴って車両10に切り返しをさせる切り返し位置RPを設定した場合に、急ブレーキ用の減速度(第1の減速度)よりも小さい緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させても車両10が障害物に衝突しないと判定したときには、緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させるので、移動経路の変更に伴って車両10の切り返し位置RPが設定された場合の車両10の乗り心地を向上させることができる。また、移動経路の変更時における不要な急制動が抑制される。
【0108】
ここで、車両10の切り返しの際に、車両10の近くに障害物が無いにもかかわらず、車両10が急ブレーキ用の減速度で減速すると、ドライバーに違和感が生じる場合がある。これに対して、本実施形態では、駐車支援部74が、移動経路の変更に伴って車両10に切り返しをさせる切り返し位置RPを設定した場合に、急ブレーキ用の減速度(第1の減速度)よりも小さい緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させても車両10が障害物(他車両201,202)に衝突しないと判定したときには、緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させるので、車両10の制動に起因する違和感がドライバーに生じるのを抑制することができる。
【0109】
また、実施形態の駐車支援装置34では、例えば、駐車支援部74は、移動経路の変更に伴って切り返し位置RPを設定した場合に、緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させると車両10が障害物に衝突すると判定したときには、緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)よりも大きくかつ急ブレーキ用の減速度(第1の減速度)以下の減速度で車両10を減速させる。
【0110】
このような駐車支援装置34では、例えば、駐車支援部74が移動経路の変更に伴って切り返し位置RPを設定した場合でも、車両10と障害物との衝突を抑制することができる。
【0111】
また、実施形態の駐車支援装置34では、例えば、上記の緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)よりも大きくかつ急ブレーキ用の減速度(第1の減速度)以下の上記の減速度は、急ブレーキ用の減速度(第1の減速度)と同じである。
【0112】
このような駐車支援装置34では、例えば、駐車支援部74が移動経路の変更に伴って切り返し位置RPを設定した場合でも、車両10と障害物との衝突を抑制することができる。
【0113】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態の駐車支援装置34が実行する駐車支援処理における切り返しに関する処理のフローチャートである。
【0114】
本実施形態は、駐車支援装置34が実行する駐車支援処理における切り返しに関する処理の一部が第1の実施形態と異なる。
【0115】
図8に示すように、本実施形態では、駐車支援部74は、S14にて、S13で算出された制動距離では車両10が障害物(
図4および
図5の例の場合、他車両202)と衝突すると判定した場合には(S14:No)、
図7のS15に替えてS21,22の処理を実行する。
【0116】
S21にて、駐車支援部74は、車両10と衝突の可能性がある障害物(他車両202)の手前で停止できる減速度を算出する。詳細には、駐車支援部74は、車両10と障害物(他車両202)との間の距離を求める。そして、駐車支援装置34は、車両10の現在の速度と、車両10と障害物(他車両202)との間の距離と、に基づいて、車両10が障害物(他車両202)と規定の距離を空けて停止できる減速度を算出する。したがって、車両10と障害物(他車両202)との間の距離が大きいほど減速度が小さくなる。上記の減速度は、緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)よりも大きくかつ急ブレーキ用の減速度(第1の減速度)以下の範囲内に限定される。
【0117】
次に、駐車支援部74は、残距離と減速度とを設定する。具体的には、残距離は、S21で算出した車両10と障害物(他車両202)との間の距離から上記の規定の距離を減算した距離である。また、減速度は、S21で算出された減速度である。この減速度は、例えばRAM34cの規定の領域(減速度記憶部)に上記の設定した残距離に関連付けされて記憶される。これにより、駐車支援部74の移動制御部40cが、減速度記憶部に記憶された減速度で車両10を切り返し位置RPに向けて減速させる。この結果、車両10が障害物(他車両202)と規定の距離を空けた状態で切り返し位置RPに停止する。
【0118】
以上のように、本実施形態では、駐車支援部74は、車両10の速度と、車両10と障害物(他車両202)との間の距離と、に基づいて、緩ブレーキ用の減速度(第2の減速度)よりも大きくかつ急ブレーキ用の減速度(第1の減速度)以下の減速度を算出する。
【0119】
このような駐車支援装置34では、例えば、車両10の速度と、車両10と障害物(他車両202)との間の距離と、に応じた減速度で、車両10を停止させることができる。
【0120】
なお、駐車支援装置34で実行される上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、駐車支援装置34で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、駐車支援装置34で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0121】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
10…車両、34…駐車支援装置、71…取得部、72…検出部、74…駐車支援部、201,202…他車両(障害物)、PA…駐車領域、PP…駐車目標位置、RP…切り返し位置。