(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】医用画像表示装置、領域表示方法及び領域表示プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2019209656
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-09-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 一也
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-000364(JP,A)
【文献】特開2018-046922(JP,A)
【文献】国際公開第2006/051831(WO,A1)
【文献】特開2011-092264(JP,A)
【文献】特開2006-020800(JP,A)
【文献】特開2017-070751(JP,A)
【文献】特開2015-061591(JP,A)
【文献】特開2016-127874(JP,A)
【文献】特開2011-104194(JP,A)
【文献】特開2012-210507(JP,A)
【文献】特開2016-042960(JP,A)
【文献】特開平04-241849(JP,A)
【文献】特開2017-109074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内部の生体組織に関する医用画像上において、前記医用画像を構成する画素の輝度値に基づいて、相対的に低い輝度を有し、相対的に高い輝度を有する複数の高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定する特定部と、
前記医用画像上において、特定された前記低輝度領域を当該低輝度領域以外の領域とは異なる表示態様で表示する表示部と、
を備え、
前記特定部は、前記医用画像上の第1の方向に高輝度の画素が存在しかつ前記第1の方向と異なる第2の方向に高輝度の画素が存在する所定の画素を特定することで、前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定
し、
前記表示部は、前記医用画像における低輝度領域の中から、前記特定部によって特定された前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を、前記第1の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域もしくは前記第2の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域と識別可能に表示する、
医用画像表示装置。
【請求項2】
前記第1の方向は上方向であり、前記第2の方向は下方向である、
請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記医用画像における低輝度領域の中から、前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域のみを特定する、
請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記医用画像における低輝度領域の中から、前記低輝度領域として、複数の高輝度領域に挟まれた低輝度領域である閉領域のみを特定する、
請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記画素を挟んで相対する少なくとも2方向において当該画素より高輝度の画素が存在する場合、当該画素を前記低輝度領域として特定する、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の医用画像表示装置。
【請求項6】
前記低輝度領域は、前記医用画像上の前記被検体の深さ方向において、前記複数の高輝度領域に挟まれている、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の医用画像表示装置。
【請求項7】
前記低輝度領域は、前記医用画像上の前記被検体の表面に沿う方向において、前記複数の高輝度領域に挟まれている、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の医用画像表示装置。
【請求項8】
前記表示態様は、表示色である、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の医用画像表示装置。
【請求項9】
前記特定部は、前記低輝度領域において輝度値の時間変化が生じた変化領域を更に特定し、
前記表示部は、特定された前記変化領域を当該変化領域以外の前記低輝度領域とは異なる表示態様で表示する、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の医用画像表示装置。
【請求項10】
前記表示部は、特定された前記変化領域を当該変化領域以外の前記低輝度領域とは異なる表示色で表示する、
請求項
9に記載の医用画像表示装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記変化領域における前記輝度値の時間変化に応じて、前記変化領域の前記表示色の異ならせ方を変更する、
請求項
10に記載の医用画像表示装置。
【請求項12】
前記表示部は、前記変化領域における前記輝度値の時間変化が無くなった場合、時間経過に伴って前記変化領域の前記表示色の異ならせ方を小さくする、
請求項
11に記載の医用画像表示装置。
【請求項13】
ユーザーの指定に基づいて前記表示態様を変更する第1表示態様変更部を備える、
請求項1から
12のいずれか一項に記載の医用画像表示装置。
【請求項14】
前記表示態様は、表示色であり、
ユーザーの指定に基づいて、特定された前記低輝度領域内の画素の輝度値に対する前記表示色の異ならせ方の感度を変更する第2表示態様変更部を備える、
請求項1から
13のいずれか一項に記載の医用画像表示装置。
【請求項15】
前記特定部は、前記医用画像の中心付近の前記低輝度領域を特定する、
請求項1から
14のいずれか一項に記載の医用画像表示装置。
【請求項16】
前記表示部は、前記低輝度領域が特定される前の前記医用画像と、前記低輝度領域が特定された後の前記低輝度領域を当該低輝度領域以外の領域と異なる表示態様とした前記医用画像とを同時に表示する、
請求項1から
15のいずれか一項に記載の医用画像表示装置。
【請求項17】
前記表示部は、前記低輝度領域の面積値を示す面積情報を表示する、
請求項1から
16のいずれか一項に記載の医用画像表示装置。
【請求項18】
前記面積情報は、前記低輝度領域の面積値を数値形式又はグラフ形式で示す、
請求項
17に記載の医用画像表示装置。
【請求項19】
前記表示部は、時間軸上において現在表示している前記医用画像の時間位置を示すシークバーを表示すると共に、前記面積値の大小に相関する濃淡を前記シークバー上に表示する、
請求項
17又は
18に記載の医用画像表示装置。
【請求項20】
被検体内部の生体組織に関する医用画像上において、前記医用画像を構成する画素の輝度値に基づいて、相対的に低い輝度を有し、相対的に高い輝度を有する複数の高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定する際、前記医用画像上の第1の方向に高輝度の画素が存在しかつ前記第1の方向と異なる第2の方向に高輝度の画素が存在する所定の画素を特定することで、前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定し、
前記医用画像上において、特定された前記低輝度領域を当該低輝度領域以外の領域とは異なる表示態様で表示する
際、
前記医用画像における低輝度領域の中から、特定された前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を、前記第1の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域もしくは前記第2の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域と識別可能に表示する、
領域表示方法。
【請求項21】
コンピューターに、
被検体内部の生体組織に関する医用画像上において、前記医用画像を構成する画素の輝度値に基づいて、相対的に低い輝度を有し、相対的に高い輝度を有する複数の高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定する際、前記医用画像上の第1の方向に高輝度の画素が存在しかつ前記第1の方向と異なる第2の方向に高輝度の画素が存在する所定の画素を特定することで、前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定する処理と、
前記医用画像上において、特定された前記低輝度領域を当該低輝度領域以外の領域とは異なる表示態様で表示する
際、前記医用画像における低輝度領域の中から、特定された前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を、前記第1の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域もしくは前記第2の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域と識別可能に表示する処理と、
を実行させる領域表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像表示装置、領域表示方法及び領域表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医用画像診断装置の一つとして、超音波を被検体に向けて送信し、その反射波を受信し、受信した反射波の信号に所定の信号処理を行うことにより、被検体内部の形状、性状又は動態を超音波画像として可視化する超音波診断装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1、2に開示された超音波診断装置では、超音波画像のフレーム間の差分により動きのある領域を検出し、当該領域の輝度値や色を変更する強調表示を行って、被検体内部を可視化している。このような超音波診断装置は、超音波探触子を体表に当てる又は体腔内に挿入するという簡単な操作で超音波画像を取得することができるので、安全であり、被検体にかかる負担も小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/138086号
【文献】特開2006-20800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、疼痛などの痛みの治療のために、薬液や生理食塩水を体内に注入する治療法(ハイドロリリースなど)が注目されている。ハイドロリリースなどの治療法は、超音波診断装置による超音波画像を参照しながら(エコーガイド)、薬液や生理食塩水を体内に注入することが多い。この際、薬液や生理食塩水を注入する領域の拡がりを視認しながら、薬液や生理食塩水を注入する。
【0006】
ところが、超音波画像に対する解剖学的知識が乏しい場合、薬液や生理食塩水を注入する領域の拡がりを超音波画像上で視認することは難しいという問題がある。特許文献1、2に開示された超音波診断装置は、薬液や生理食塩水の注入により拡がる領域を強調表示することは可能である。しかしながら、これらの超音波診断装置は、薬液や生理食塩水の注入により動いた他の領域も強調表示してしまい、ユーザーが関心を有する領域が他の領域に埋没してしまうため、当該関心を有する領域を特定することは難しい。
【0007】
本発明の目的は、ユーザーが関心を有する領域の視認性を向上させることが可能な医用画像表示装置、領域表示方法及び領域表示プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る医用画像表示装置は、
被検体内部の生体組織に関する医用画像上において、前記医用画像を構成する画素の輝度値に基づいて、相対的に低い輝度を有し、相対的に高い輝度を有する複数の高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定する特定部と、
前記医用画像上において、特定された前記低輝度領域を当該低輝度領域以外の領域とは異なる表示態様で表示する表示部と、
を備え、
前記特定部は、前記医用画像上の第1の方向に高輝度の画素が存在しかつ前記第1の方向と異なる第2の方向に高輝度の画素が存在する所定の画素を特定することで、前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定し、
前記表示部は、前記医用画像における低輝度領域の中から、前記特定部によって特定された前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を、前記第1の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域もしくは前記第2の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域と識別可能に表示する。
【0009】
本発明に係る領域表示方法は、
被検体内部の生体組織に関する医用画像上において、前記医用画像を構成する画素の輝度値に基づいて、相対的に低い輝度を有し、相対的に高い輝度を有する複数の高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定する際、前記医用画像上の第1の方向に高輝度の画素が存在しかつ前記第1の方向と異なる第2の方向に高輝度の画素が存在する所定の画素を特定することで、前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定し、
前記医用画像上において、特定された前記低輝度領域を当該低輝度領域以外の領域とは異なる表示態様で表示する際、前記医用画像における低輝度領域の中から、特定された前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を、前記第1の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域もしくは前記第2の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域と識別可能に表示する。
【0010】
本発明に係る領域表示プログラムは、
コンピューターに、
被検体内部の生体組織に関する医用画像上において、前記医用画像を構成する画素の輝度値に基づいて、相対的に低い輝度を有し、相対的に高い輝度を有する複数の高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定する際、前記医用画像上の第1の方向に高輝度の画素が存在しかつ前記第1の方向と異なる第2の方向に高輝度の画素が存在する所定の画素を特定することで、前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定する処理と、
前記医用画像上において、特定された前記低輝度領域を当該低輝度領域以外の領域とは異なる表示態様で表示する際、前記医用画像における低輝度領域の中から、特定された前記高輝度領域に挟まれた低輝度領域を、前記第1の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域もしくは前記第2の方向に高輝度の画素が存在しない低輝度領域と識別可能に表示する処理と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザーが関心を有する領域の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の外観を示す図である。
【
図2】
図1に示した超音波診断装置の主要部を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る領域表示方法を説明するフローチャートである。
【
図4】
図3に示した高輝度探索を説明するフローチャートである。
【
図5A】強調表示前の超音波画像を概略的に示す図である。
【
図5B】画像上方向の高輝度探索を行った超音波画像を概略的に示す図である。
【
図5C】画像下方向の高輝度探索を行った超音波画像を概略的に示す図である。
【
図5D】2方向の高輝度探索の結果に基づいて特定した低輝度領域を強調表示した超音波画像を概略的に示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る領域表示方法の変形例を説明するフローチャートである。
【
図7A】時間t2の直前の時間t1において、低輝度領域を強調表示した超音波画像を概略的に示す図である。
【
図7B】時間t2において、低輝度領域を強調表示した超音波画像を概略的に示す図である。
【
図7C】時間t1と時間t2の間において低輝度領域で輝度値が変化した変化領域を強調表示した超音波画像を概略的に示す図である。
【
図8】低輝度領域を強調表示した超音波画像と強調のゲイン及び色を変更する操作領域とを表示した表示部の画面を概略的に示す図である。
【
図9】強調表示前の超音波画像と低輝度領域を強調表示した超音波画像とを並べて表示した表示部の画面を概略的に示す図である。
【
図10】強調表示した低輝度領域の面積値を示す面積情報表示領域と現在表示している超音波画像に対するシークバーとを表示した表示部の画面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、医用画像表示装置の一例として、医用画像である超音波画像を表示する超音波診断装置を例示するが、被検体内部の生体組織に対応する信号に基づいて医用画像を生成する装置、例えば、X線撮影装置などにも、本発明は適用可能である。
【0014】
<超音波診断装置の構成>
図1は、本実施の形態に係る超音波診断装置10の外観を示す図である。また、
図2は、
図1に示した超音波診断装置10の主要部を示すブロック図である。なお、
図2中の符号E1~E5については、後述の
図5A~
図5D、
図7A~
図7Cにおいて説明する。
【0015】
超音波診断装置10は、生体などの被検体内部の生体組織の形状、性状又は動態を超音波画像(医用画像)として可視化し、画像診断するために用いられる。
【0016】
超音波診断装置10は、
図1に示すように、装置本体11と、超音波探触子12、ケーブル13と、表示部14と、操作入力部15とを備える。装置本体11と超音波探触子12とは、ケーブル13を介して接続されている。なお、超音波探触子12は、装置本体11と無線通信を介して接続してもよい。
【0017】
超音波探触子12は、被検体に対して超音波を送信すると共に、被検体から反射された超音波エコーを受信し、電気信号(受信信号)に変換して装置本体11に送信する音響センサーとして機能する。
【0018】
超音波探触子12は、圧電素子からなる振動子を有し、振動子は、例えば、方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。超音波探触子12において、振動子の個数は、診断対象に応じて適宜に変更可能であり、また、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、超音波探触子12として電子スキャン方式のプローブを用いており、コンベックスプローブ、リニアプローブ、セクタプローブなどの任意のプローブを使用可能である。
【0019】
ユーザーは、このような超音波探触子12を用い、その超音波の送受信面を被検体の表面(表皮)に接触させる。なお、ここでは、超音波探触子12を被検体の表面に接触させているが、超音波探触子12としては、被検体の体腔内などに挿入して用いるものであってもよい。
【0020】
表示部14は、制御部30の画像生成部31(
図2を参照)で生成された超音波画像などを表示する。表示部14としては、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTディスプレイ、タッチパネルなどを使用可能である。
【0021】
操作入力部15は、ユーザーが入力操作を行うためのユーザーインターフェイスであり、ユーザーが行った入力操作を操作情報に変換し、制御部30に入力する。操作入力部15としては、例えば、複数の入力スイッチを有する操作パネル、キーボード及びマウスなどを有する。表示部14としてタッチパネルを使用する場合には、このタッチパネルも操作入力部15の一部として機能する。
【0022】
超音波診断装置10において、装置本体11は、
図2に示すように、送信部21と、受信部22と、制御部30とを備えている。制御部30は、表示部14、送信部21、受信部22の制御を行う。また、制御部30は、画像生成部31と、高輝度探索部32と、特定部33とを備えている。
【0023】
制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有する装置、例えば、コンピューターである。制御部30の各機能は、CPUがROMやRAMに格納された制御プログラムや各種データを参照し、制御プログラムを実行することによって実現される。なお、制御部30の機能の一部又は全部は、DSP(Digital Signal Processor)や専用のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0024】
送信部21は、制御部30に従って、電圧パルスを超音波探触子12に送出する送信器である。送信部21は、例えば、高周波パルス発振器、パルス調整部などを有する。高周波パルス発振器は、電圧パルスを生成する。パルス調整部は、制御部30からの駆動信号に基づいて、電圧パルスに対する電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングを調整する。従って、送信部21は、高周波パルス発振器で生成した電圧パルスを、制御部30からの駆動信号に基づく電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングとなるように、パルス調整部で調整して、超音波探触子12に送出することになる。この際、送信部21は、超音波を発生させる振動子が方位方向(操作方向)にずれるように、超音波探触子12の振動子に電圧パルスを送出することで、超音波による走査(スキャン)を行っている。
【0025】
受信部22は、制御部30に従って、超音波エコーを変換した受信信号を超音波探触子12から受信して、処理を行う受信器である。受信部22は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路などを有する。増幅器は、超音波探触子12から受信した受信信号を、予め設定された増幅率で振動子毎に増幅する。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ信号からデジタル信号に振動子毎に変換する。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成する。
【0026】
画像生成部31は、受信部22から送信された音線データに対する処理や調整を行って輝度信号に変換する。この輝度信号は、受信部22で生成した受信信号の信号強度に応じたものである。変換した輝度信号を直交座標系に対応するように座標変換などを行って、断層画像としてのB(Brightness)モードの超音波画像(Bモード画像)を生成する。つまり、画像生成部31は、被検体内部の生体組織に関する超音波画像を生成する。そして、画像生成部31は、生成した超音波画像を表示部14に出力する。
【0027】
以上の構成により、超音波診断装置10は、被検体に対して超音波を送信し、被検体内部で反射した超音波の反射波(超音波エコー)を受信し、受信した超音波エコーを受信信号に変換し、受信信号に基づいて超音波画像を生成し、表示する。
【0028】
ところで、超音波画像に対する解剖学的知識が乏しい場合、薬液や生理食塩水を注入する領域の拡がりを超音波画像上で視認することは難しいという問題がある。特許文献1、2に開示された超音波診断装置を用いた場合でも、その領域を特定することは難しい。そこで、本実施の形態では、制御部30が、高輝度探索部32と、特定部33とを備えている。
【0029】
高輝度探索部32は、画像生成部31で生成した超音波画像上において、当該超音波画像を構成する画素について、現在注目している画素(注目画素)の所定方向にある画素の中に、注目画素の輝度値より高輝度の画素を探索する。そして、注目画素の輝度値より高輝度の画素がある場合には、高輝度探索結果を1とし、ない場合には、高輝度探索結果を0とする。このような高輝度探索を、注目画素を挟んで相対する少なくとも2方向について行うと共に、全ての画素に対して行う。
【0030】
特定部33は、超音波画像を構成する画素の輝度値に基づいて、超音波画像上において、相対的に低い輝度を有し、相対的に高い輝度を有する複数の高輝度領域に挟まれた低輝度領域を特定する。具体的には、高輝度探索部32で探索した少なくとも2方向に対する高輝度探索結果に基づいて、少なくとも2方向において、注目画素より高輝度の画素が存在する場合、当該注目画素を低輝度領域として特定する。これにより、高輝度の画素に挟まれた低輝度値の画素の領域である低輝度領域を特定している。
【0031】
<領域表示方法及び領域表示プログラム>
次に、上述した構成を有する超音波診断装置10において、制御プログラム(領域表示プログラム)を実行することにより実施される領域表示方法について、
図3~
図5Dを参照して説明する。
【0032】
ここで、
図3は、本実施の形態に係る領域表示方法を説明するフローチャートである。
図4は、
図3に示した高輝度探索を説明するフローチャートである。
図5Aは、強調表示前の超音波画像を概略的に示す図である。
図5Bは、画像上方向の高輝度探索を行った超音波画像を概略的に示す図である。
図5Cは、画像下方向の高輝度探索を行った超音波画像を概略的に示す図である。
図5Dは、2方向の高輝度探索の結果に基づいて特定した低輝度領域を強調表示した超音波画像を概略的に示す図である。
【0033】
以下に説明する低輝度領域の特定及び強調表示の前に、超音波探触子12による測定及び画像生成部31による超音波画像の生成が行われる。例えば、一例として、
図5Aに示すように、画像下側に高輝度領域H1を有し、画像上側に高輝度領域H2を有し、高輝度領域H1、H2以外が低輝度領域Lとなる超音波画像E1が生成される。なお、超音波画像E1及び後述する超音波画像E2~E4(
図5B~
図5Dを参照)においては、画像下側が被検体の表面から深い位置であり、画像上側が被検体の表面から浅い位置である。
【0034】
(ステップS1)
高輝度探索部32により、画像生成部31で生成した超音波画像E1上において、超音波画像E1を構成する画素について、画像上方向の高輝度探索を行う。高輝度探索は、
図4に示す手順で行う。画像上方向の高輝度探索について、
図4及び
図5Bを参照して説明を行う。
【0035】
(ステップS11)
現在注目している現画素(x,y)について、所定方向となる画像上方向の線上にある画素の輝度値zを確認する。ここで、(x,y)は、超音波画像上での座標であり、画像の左上を原点(0,0)とする。また、画像上方向とは、現画素(x,y)から画像上側の方向、即ち、被検体の表面の深い位置から浅い位置への方向である。例えば、超音波画像E1の画素数をm×nとすると、最初に、現画素(0,n-1)について、画素(0,n-2)から画素(0,0)までの輝度値zを確認することになる。
【0036】
(ステップS12)
画像上方向にある画素において、現画素(x,y)の輝度値zより高輝度の画素が存在するかどうかを確認する。存在する場合(YES)、ステップS13へ進み、存在しない場合(NO)、ステップS14へ進む。
【0037】
(ステップS13)
画像上方向にある画素において、現画素(x,y)の輝度値zより高輝度の画素が存在する場合、現画素(x,y)に対する高輝度探索結果(x,y)を1とする。例えば、
図5B中に示した画素(i,j1)を現在注目している現画素とすると、現画素(i,j1)より画像上側に高輝度領域H2を構成する画素が存在するので、高輝度探索結果(i,j1)=1となる。
【0038】
(ステップS14)
画像上方向にある画素において、現画素(x,y)の輝度値zより高輝度の画素が存在しない場合、現画素(x,y)に対する高輝度探索結果(x,y)を0とする。例えば、
図5B中に示した画素(i,j2)を現在注目している現画素とすると、現画素(i,j2)より画像上側に高輝度の画素は存在しないので、高輝度探索結果(i,j2)=0となる。
【0039】
(ステップS15)
全画素について、上述したステップS11~S14に示した手順が終了したかどうかを確認する。全画素について終了していない場合(NO)、ステップS11へ戻り、終了した場合(YES)、ステップS11~S14の手順を終了し、ステップS2へ進む。
【0040】
ステップS15により、全画素について、画像上方向の高輝度探索結果を取得することになる。超音波画像E1の画素数をm×nとすると、最初に、画素(0,n-1)について、画素(0,n-2)から画素(0,0)までの輝度値zを確認し、高輝度探索結果(0,n-1)を取得する。次は、画素(0,n-2)について、画素(0,n-3)から画素(0,0)までの輝度値zを確認し、高輝度探索結果(0,n-2)を取得する。以降は、x=m-1、y=0となるまで、ステップS11~S14の手順を繰り返し、これにより、全画素について画像上方向の高輝度探索結果を取得する。
【0041】
ステップS1におけるステップS11~S15の手順により、
図5Bに示す超音波画像E2を取得することができる。この超音波画像E2では、超音波画像E1における低輝度領域Lの中から、上方に高輝度の画素が存在する低輝度領域LU1(
図5B中における右下斜線部分を参照)を求めて、上方に高輝度の画素が存在しない低輝度領域LU2との識別を可能にしている。
【0042】
(ステップS2)
高輝度探索部32により、画像生成部31で生成した超音波画像E1上において、超音波画像E1を構成する画素について、画像下方向の高輝度探索を行う。高輝度探索は、ステップS1と同様に、
図4に示す手順で行う。画像下方向の高輝度探索について、
図4及び
図5Cを参照して説明を行う。
【0043】
(ステップS11)
現在注目している現画素(x,y)について、所定方向となる画像下方向の線上にある画素の輝度値zを確認する。画像下方向とは、現画素(x,y)から画像下側の方向、即ち、被検体の表面の浅い位置から深い位置への方向である。超音波画像E1の画素数をm×nとすると、最初に、現画素(0,0)について、画素(0,1)から画素(0,n-1)までの輝度値zを確認することになる。
【0044】
(ステップS12)
画像下方向にある画素において、現画素(x,y)の輝度値zより高輝度の画素が存在するかどうかを確認する。存在する場合(YES)、ステップS13へ進み、存在しない場合(NO)、ステップS14へ進む。
【0045】
(ステップS13)
画像下方向にある画素において、現画素(x,y)の輝度値zより高輝度の画素が存在する場合、現画素(x,y)に対する高輝度探索結果(x,y)を1とする。例えば、
図5C中に示した画素(i,j3)を現在注目している現画素とすると、現画素(i,j3)より画像下側に高輝度領域H2を構成する画素が存在するので、高輝度探索結果(i,j3)=1となる。
【0046】
(ステップS14)
画像下方向にある画素において、現画素(x,y)の輝度値zより高輝度の画素が存在しない場合、現画素(x,y)に対する高輝度探索結果(x,y)を0とする。例えば、
図5C中に示した画素(i,j4)を現在注目している現画素とすると、現画素(i,j4)より画像下側に高輝度の画素は存在しないので、高輝度探索結果(i,j4)=0となる。
【0047】
(ステップS15)
全画素について、上述したステップS11~S14に示した手順が終了したかどうかを確認する。全画素について終了していない場合(NO)、ステップS11へ戻り、終了した場合(YES)、ステップS11~S14の手順を終了し、ステップS3へ進む。
【0048】
ステップS15により、全画素について、画像下方向の高輝度探索結果を取得することになる。超音波画像E1の画素数をm×nとすると、最初に、画素(0,0)について、画素(0,1)から画素(0,n-1)までの輝度値zを確認し、高輝度探索結果(0,0)を取得する。次は、画素(0,1)について、画素(0,2)から画素(0,n-1)までの輝度値zを確認し、高輝度探索結果(0,1)を取得する。以降は、x=m-1、y=n-1となるまで、ステップS11~S14の手順を繰り返し、これにより、全画素についての高輝度探索結果を取得する。
【0049】
ステップS2におけるステップS11~S15の手順により、
図5Cに示す超音波画像E3を取得することができる。この超音波画像E3では、超音波画像E1における低輝度領域Lの中から、下方に高輝度の画素が存在する低輝度領域LD1(
図5C中における左下斜線部分を参照)を求めて、下方に高輝度の画素が存在しない低輝度領域LD2との識別を可能にしている。
【0050】
(ステップS3)
特定部33により、2方向の高輝度探索結果に基づいて、高輝度領域に挟まれた低輝度領域である閉領域を特定する。具体的には、上記のステップS2で取得した画像上方向の高輝度探索結果と上記のステップS3で取得した画像下方向の高輝度探索結果との論理積(AND)を求めることにより、閉領域を求める。
【0051】
より具体的には、各画素について、画像上方向の高輝度探索結果(0又は1)と画像下方向の高輝度探索結果(0又は1)との積を求める。このとき、画像上方向及び画像下方向の両方の高輝度探索結果が1の画素は、1×1=1となり、画像上方向及び画像下方向のいずれか一方又は両方の高輝度探索結果が0の画素は、1×0=0、0×1=0、0×0=0となる。この結果、積が1となる画素が閉領域として求められることになる。
【0052】
ステップS3の手順により、
図5Dに示す超音波画像E4を取得することができる。この超音波画像E4では、超音波画像E1における低輝度領域Lの中から、画像の上下方向において、高輝度領域H1と高輝度領域H2とに挟まれた低輝度領域である閉領域Cを特定することができる。
【0053】
(ステップS4)
表示部14は、特定した閉領域Cをそれ以外の領域(高輝度領域H1、H1及び低輝度領域LE1)とは異なる表示態様で強調表示するように、超音波画像E4を表示する。低輝度領域LE1は、閉領域C以外の低輝度領域である。表示部14は、超音波画像E4上において、閉領域C以外の領域(高輝度領域H1、H1及び低輝度領域LE1)に対し、例えば、閉領域Cの表示色(表示態様)を異なるようにして、閉領域Cを強調表示する。以上により、一連の手順は終了する。
【0054】
本実施の形態では、以上の手順により、低輝度領域において、ユーザーが関心を有する領域となる閉領域Cを特定するので、その特定精度が向上し、また、特定した閉領域Cを強調表示するので、その視認性を向上させることができる。
【0055】
例えば、ハイドロリリースにおいては、複数の筋組織同士の間の生体組織に薬液や生理食塩水を注入するが、超音波画像に対する解剖学的知識が乏しい場合、超音波画像において、注入領域の拡がりを視認できない場合があった。これに対し、本実施の形態では、以上の手順により、筋組織同士の間の生体組織を閉領域Cとして特定し、強調表示するので、その視認性を向上させることができる。本実施の形態は、複数の筋組織同士の間の生体組織だけでなく、膀胱内の生体組織や腫瘍内の生体組織にも適用可能である。
【0056】
なお、上述したステップS1、S2において、高輝度探索部32は、超音波画像E4の上下方向である被検体の深さ方向において、複数の高輝度領域H1、H2に挟まれた低輝度領域である閉領域Cを特定しているが、上下方向に限らず、他の方向でもよい。例えば、超音波画像E4の左右方向である被検体の表面に沿う方向において、複数の高輝度領域に挟まれた低輝度領域である閉領域を特定してもよい。また、超音波画像E4の上下方向かつ左右方向において、複数の高輝度領域に囲まれた低輝度領域である閉領域を特定してもよい。また、上下左右に限らず、任意の方向でもよい。
【0057】
また、上述したステップS1、S2において、高輝度探索部32は、画像生成部31で生成した超音波画像E1に対し高輝度探索を行っているが、その処理前に、超音波画像E1に対するノイズ除去処理などの画像処理を行うようにしてもよい。例えば、平滑化処理やモルフォロジー処理などのノイズ除去処理などを行う。
【0058】
また、上述したステップS1、S2において、高輝度探索部32は、高輝度探索結果を1又は0の2値としているが、この2値に限らず、現画素の輝度値と高輝度の画素の輝度値との差分のような多値でもよい。
【0059】
また、上述したステップS3において、特定部33は、2方向の高輝度探索結果の論理積を求めているが、論理積に限らず、方向毎に重み付けをし、重み付け後の結果を加算することにより、閉領域Cを特定してもよい。
【0060】
例えば、上下方向において、上方向の重み係数を1.5、下方向の重み係数を1.0とし、下方向より上方向を重い重み付けを行い、この重み付け後の結果を加算することにより、閉領域Cを特定する。また、上下左右方向において、上方向の重み係数を1.5、下方向の重み係数を1.0、左右方向の重み係数を0.5とし、左右方向より下方向を重く、下方向より上方向を重い重み付けを行い、この重み付け後の結果を加算することにより、閉領域Cを特定する。
【0061】
通常、超音波診断装置は、左右方向よりも上下方向での生体組織の検出精度が高く、また、下方向よりも上方向での生体組織の検出精度が高い。そのため、上下方向や上方向の重み係数を重くすることで、閉領域Cの特定精度を向上させることができる。
【0062】
また、もし、複数の閉領域Cが特定されるような場合には、超音波画像E4の中心付近で特定される閉領域Cを、ユーザーが関心を有する閉領域Cとして優先的に特定するようにしてもよい。これは、超音波診断の際に、ユーザーが関心を有する領域が超音波画像の中心付近となるように、超音波探触子12を被検体の表面に接触させるからである。これにより、ユーザーが関心を有する閉領域Cの特定精度を向上させることができる。
【0063】
[変形例1]
本実施の形態の変形例について、
図6~
図7Cを参照して説明する。
【0064】
ここで、
図6は、本実施の形態に係る領域表示方法の変形例を説明するフローチャートである。
図7Aは、時間t2の直前の時間t1において、低輝度領域を強調表示した超音波画像を概略的に示す図である。
図7Bは、時間t2において、低輝度領域を強調表示した超音波画像を概略的に示す図である。
図7Cは、時間t1と時間t2の間において低輝度領域で輝度値が変化した変化領域を強調表示した超音波画像を概略的に示す図である。
【0065】
本変形例において、超音波診断装置は、
図1及び
図2に示した超音波診断装置10の構成と同様の構成であればよい。また、領域表示方法についても、前半部分は、
図3~
図4で説明した手順と同じである。従って、ここでは、上述した説明と重複する説明は省略して、本変形例における領域表示方法を説明する。
【0066】
(ステップS1~S3)
ステップS1~S3は、上述した通りであり、これにより、
図7Aに示すように、現時間t2の直前の時間t1における超音波画像E4(t1)を取得し、また、
図7Bに示すように、現時間t2における超音波画像E4(t2)を取得する。
【0067】
ここで、超音波画像E4(t1)では、
図7Aに示すように、画像の上下方向において、高輝度領域H1(t1)と高輝度領域H2(t1)とに挟まれた低輝度領域である閉領域C(t1)を特定している。低輝度LE1(t1)は、閉領域C(t1)以外の低輝度領域である。また、超音波画像E4(t2)では、
図7Bに示すように、画像の上下方向において、高輝度領域H1(t2)と高輝度領域H2(t2)とに挟まれた低輝度領域である閉領域C(t2)を特定している。低輝度LE1(t2)は、閉領域C(t2)以外の低輝度領域である。
【0068】
(ステップS5)
特定部33は、時間t1における超音波画像E4(t1)を前フレーム、現時間t2における超音波画像E4(t2)を現フレームとし、前フレームの閉領域C(t1)と現フレームの閉領域C(t2)との間で輝度値の時間変化が生じた差分領域Dを特定する。具体的には、
図7Aに示す閉領域C(t1)と
図7Bに示す閉領域C(t2)との輝度値の差分を求めることにより、
図7Cに示す差分領域Dを特定する。
【0069】
(ステップS6)
表示部14は、特定した差分領域Dをそれ以外の領域(高輝度領域H1、H1及び低輝度領域LE2)とは異なる表示態様で強調表示するように、超音波画像E5を表示する。低輝度領域LE2は、差分領域D以外の低輝度領域である。表示部14は、超音波画像E5上において、差分領域D以外の領域(高輝度領域H1、H1及び低輝度領域LE2)に対し、例えば、差分領域Dの表示色(表示態様)を異なるようにして、差分領域Dを強調表示する。以上により、一連の手順は終了する。
【0070】
差分領域Dを強調表示する際には、差分領域Dにおける輝度値の時間変化に応じて、差分領域Dの表示色の異ならせ方(変更の度合い)を、つまり、表示色の強調の度合いを変更してもよい。例えば、輝度値の時間変化が大きい場合には、表示色の強調の度合いを大きくし、輝度値の時間変化が小さい場合には、表示色の強調の度合いを小さくする。
【0071】
また、輝度値の時間変化がなくなった場合には、時間経過に伴って表示色の強調の度合いを小さくしていくようにしてもよく、これにより、強調表示した差分領域Dに対する残像表示を行っている。同じ強調が続くと、ユーザーの視認性が低下する場合があるが、このような残像表示を行うことにより、その視認性を向上させることができる。
【0072】
本変形例では、以上の手順により、ユーザーが関心を有する低輝度領域において、その低輝度領域で輝度値の変化がある差分領域Dを特定して、強調表示を行うので、その視認性を向上させることができる。また、高輝度探索部32及び特定部33では、単純な演算処理により、閉領域C、差分領域Dを特定しているので、フレームレートを落とすことなく、処理可能であり、高フレームレートで差分領域Dを表示可能である。
【0073】
なお、上述したステップS5において、特定部33は、現時間t2の現フレームと現時間t2の直前の時間t1の前フレームとの差分から、輝度値の時間変化が生じた差分領域Dを特定しているが、前フレームは、現時間t2の直前の時間t1でなくてもよい。例えば、現時間t2の直前の時間t1より前の時間のフレーム、つまり、数フレーム前のフレームを前フレームとしてもよい。また、基準又は標準となるフレームから推定した超音波画像のフレームを前フレームとしてもよい。
【0074】
[変形例2]
本実施の形態の他の変形例について、
図2及び
図8を参照して説明する。
図8は、低輝度領域を強調表示した超音波画像と強調のゲイン及び色を変更する操作領域とを表示した表示部の画面を概略的に示す図である。
【0075】
本変形例において、制御部30は、更に、ユーザーの指定に基づいて、閉領域Cの表示態様を変更する表示態様変更部34を備えている(
図2を参照)。
【0076】
表示態様変更部34は、特定部33で特定した閉領域Cの表示態様の変更を指示するものである。ユーザーが操作入力部15に入力した操作情報に基づいて、閉領域Cの表示態様、例えば、表示色や表示色の強調の度合いなどの指示情報を表示部14に指示する。この場合、表示部14は、
図8に示すように、超音波画像E4と共に、ゲイン操作領域141、色操作領域142を画面140に表示する。
【0077】
ゲイン操作領域141(第2表示態様変更部)は、閉領域C内の各画素の輝度値に対する強調の度合いを示すゲイン(感度)を設定する際に使用する領域である。例えば、ゲイン操作領域141をマウスでクリックすると、ゲインの入力領域が表示され、入力されたゲインに基づいて、強調の度合いを変更することになる。ゲインとしては、閾値のような数値でもよいし、また、弱め、標準、強めなどの複数のレベルを選択できるようにしてもよい。
【0078】
色操作領域142(第1表示態様変更部)は、閉領域Cを強調する表示色を設定する際に使用する領域である。例えば、色操作領域142をマウスでクリックすると、表示色の入力領域が表示され、入力された表示色に基づいて、強調する表示色を変更することになる。例えば、強調する表示色としては、超音波画像E1で使用している以外の色、例えば、超音波画像E1で使用している色が白黒である場合には、白黒以外の色を選択できればよい。この際、表示色の色相だけでなく、彩度や明度を選択可能としてもよい。
【0079】
表示部14では、表示態様変更部34から指示された指示情報に基づいて、特定部33で特定した閉領域Cの表示色などを閉領域C以外の領域(高輝度領域H1、H1及び低輝度領域LE1)と異なるようにして、特定した閉領域Cの強調表示を行うことになる。
【0080】
表示態様変更部34により、ユーザーは、強調の感度と効果色を選択することができる。
【0081】
[変形例3]
本実施の形態の他の変形例について、
図9を参照して説明する。
図9は、強調表示前の超音波画像と低輝度領域を強調表示した超音波画像とを並べて表示した表示部の画面を概略的に示す図である。
【0082】
本変形例において、表示部14は、超音波画像E4を画面140に表示することに加えて、これと同時に、超音波画像E1を画面140に表示している。例えば、
図9に示すように、2つの超音波画像E1と超音波画像E4とを横に並べて表示する。つまり、閉領域Cを特定する前の超音波画像E1と、閉領域Cを特定した後の超音波画像E4とを横に並べて表示する。
【0083】
このように、閉領域Cが特定される前の超音波画像E1と、閉領域Cが特定された後の閉領域Cをそれ以外の領域と異なる表示態様とした超音波画像E4とを同時に表示している。そのため、もし、閉領域Cを誤って特定した場合であっても、ユーザーは、閉領域Cを特定する前の超音波画像E1を確認できるので、視認に関するリスクを低減することができる。
【0084】
[変形例4]
本実施の形態の他の変形例について、
図10を参照して説明する。
図10は、強調表示した低輝度領域の面積値を示す面積情報表示領域と現在表示している超音波画像に対するシークバーとを表示した表示部の画面を概略的に示す図である。
【0085】
本変形例において、表示部14は、超音波画像E4を画面140に表示することに加えて、これと同時に、特定した閉領域Cの面積値を示す面積情報を有する面積情報表示領域143を画面140に表示している。例えば、
図10に示すように、面積情報表示領域143では、超音波画像E4の全面積値に対する閉領域Cの面積値を数値形式で表示している。なお、この数値形式に代えて、棒グラフや円グラフのようなグラフ形式を用いて、面積情報を表示するようにしてもよい。
【0086】
ユーザーは、面積情報表示領域143に表示された閉領域Cの面積値の数値やグラフに基づいて、閉領域Cの状態を半定量的に(定量的な数値に相関する数値として)確認することができる。例えば、閉領域Cが複数の筋組織間の生体組織であり、この生体組織に薬液を注入した場合には、その注入量を半定量的に確認することができる。また、閉領域Cが膀胱内の生体組織であり、膀胱から尿を排出した場合には、その排出量を半定量的に確認することができる。また、閉領域Cが腫瘍内の生体組織であり、腫瘍に対する治療効果を確認する場合には、その腫瘍が占める面積を半定量的に確認することができる。
【0087】
また、本変形例において、表示部14は、時間軸上において現在表示している超音波画像E4の時間位置をスライダー145で示すシークバー144(タイムバー)を画面140に表示している。また、表示部14は、各時間位置の超音波画像E4における閉領域Cの面積値の大小に相関する濃淡を示す濃淡領域146を、シークバー144上に表示している。濃淡領域146においては、閉領域Cの面積値が小さい場合は淡い濃度に、大きい場合は濃い濃度になるように、面積値の大きさに比例して、淡い濃度から濃い濃度へ濃度表示を変更する。
【0088】
ユーザーは、シークバー144上に表示された濃淡領域146の濃淡を参照して、スライダー145を時間軸上に沿って移動することで、所望の面積の閉領域Cを有する超音波画像E4を画面140に表示して、閉領域Cの確認を行うことができる。
【0089】
なお、上述した変形例2~4は、閉領域Cだけでなく、変形例1に示した差分領域Dに適用してもよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0091】
10 超音波診断装置
11 装置本体
12 超音波探触子
13 ケーブル
14 表示部
15 操作入力部
21 送信部
22 受信部
30 制御部
31 画像生成部
32 高輝度探索部
33 特定部
34 表示態様変更部