(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240123BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2019223518
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】大西 泰造
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-137569(JP,A)
【文献】特開2008-185682(JP,A)
【文献】特開2008-020907(JP,A)
【文献】特開2011-107310(JP,A)
【文献】特開2005-266716(JP,A)
【文献】特開2011-175223(JP,A)
【文献】特開2013-174909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/14
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する定着ベルトと、
前記定着ベルトの外側から圧接して定着ニップを形成する加圧ローラと、
定着ベルト内面に接触し、該定着ベルトと摺動するように配置された摺動シートと、
前記摺動シートを挟んで定着ベルトに押圧され、前記加圧ローラに対向して圧接される定着パッドと、
前記定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて、前記摺動シートを
前記定着ベルトの回転軸方向に移動させる可変機構と、
を備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
回転する定着ベルトと、
前記定着ベルトの外側から圧接して定着ニップを形成する加圧ローラと、
定着ベルト内面に接触し、該定着ベルトと摺動するように配置された摺動シートと、
前記摺動シートを挟んで定着ベルトに押圧され、前記加圧ローラに対向して圧接される定着パッドと、
前記定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて、前記摺動シートを移動させる可変機構と、
を備え、
前記可変機構は、前記定着ニップの上流側に配置され、前記定着ベルトの回転軸方向の移動に連動して移動する軸方向移動部材を備え、
前記摺動シートは前記軸方向移動部材の移動と連動して移動することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
回転する定着ベルトと、
前記定着ベルトの外側から圧接して定着ニップを形成する加圧ローラと、
定着ベルト内面に接触し、該定着ベルトと摺動するように配置された摺動シートと、
前記摺動シートを挟んで定着ベルトに押圧され、前記加圧ローラに対向して圧接される定着パッドと、
前記定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて、前記摺動シートを移動させる可変機構と、
を備え、
前記可変機構は、
前記定着ベルトの回転軸方向の移動量を検知する検知手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記定着ベルトとの接触状態を変更して定着ベルトを回転軸方向に移動させるステアリング手段と、
を備え、
前記摺動シートは前記ステアリング手段による前記定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて移動することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
前記可変機構は、前記定着ニップの上流側に配置され、前記定着ベルトの回転軸方向の移動に連動して移動する軸方向移動部材を備え、
前記摺動シートは前記軸方向移動部材の移動と連動して移動する請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記軸方向移動部材は、周面が前記定着ベルトの内周面に圧接され、定着ベルトとの摩擦力により前記定着ベルトに連動して前記回転軸方向に移動するよう構成されるローラ状部材であり、
前記摺動シートの端部を前記定着ニップの上流側で保持する摺動シート保持部材を備え、
前記摺動シート保持部材は、前記ローラ状部材の両端を保持する保持部材に連結されている請求項2
または4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記可変機構は、
前記定着ベルトの回転軸方向の移動量を検知する検知手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記定着ベルトとの接触状態を変更して定着ベルトを回転軸方向に移動させるステアリング手段と、
を備え、
前記摺動シートは前記ステアリング手段による前記定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて移動する請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
前記定着ベルトの移動量は前記摺動シートの移動量よりも大きい請求項1~
6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記ステアリング手段は、
前記定着ベルトの内周面を支持して定着ベルトを張架するとともに、定着ベルトを加熱する加熱ローラを含んで構成されている請求項
3、6、請求項3または6を引用する請求項7のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
前記可変機構は、前記定着ベルトの移動とは独立して前記摺動シートを移動させる請求項1
、3、6、8のいずれかに記載の定着装置。
【請求項10】
画像形成手段と、
該画像形成手段により形成され用紙に転写された画像を定着する請求項1乃至
9のいずれかに記載の定着装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着装置として、
図9に示すように、定着ベルト101を挟んで定着ベルト101の内側に定着パッド102を、外側に加圧ローラ103を、圧接状態で配置することにより、用紙Pを通過させて用紙P上のトナー像を定着する定着ニップNを形成した定着装置が、従来より知られている。
【0003】
このような定着装置において、定着パッド102は固定であり、定着ベルト101の矢印R2方向の回転走行時には定着ベルト101と定着パッド102との間に大きな摩擦力が作用する。このため、摩擦力を軽減するために、定着ベルト101と定着パッド102との間に摺動シート104が介在されることがある。この摺動シート104は、一般的には、定着ニップNの上流側において、端部を摺動シート保持部材(図示せず)により固定状態に保持されている。また、定着ベルト101と摺動シート104との摩擦力をさらに低下させるために、定着ベルト101と摺動シート104の間に潤滑剤が介在されることもある。
【0004】
ところで、定着ベルト101の蛇行により定着ベルト101が回転軸方向(定着ベルトの幅方向)に移動することがある。この定着ベルト101の移動により摺動シート104との間に回転軸方向の摩擦力が生じ、この摩擦力によって、摺動シート104が用紙幅方向に凹凸状乃至波打ち状に変形することがある。摺動シート104にこのような変形が生じると、定着ニップNを通過する用紙Pに対する圧力分布が均一ではなくなって熱量ムラが発生し、また潤滑剤が用いられる場合は定着ニップNの入口付近に潤滑剤溜まりが発生して潤滑剤ムラを生じ、画像ノイズの原因となるという問題がある。
【0005】
特許文献1には、ニップ部入口で摺動シートの熱膨張によるしわを抑制するために、摺動シートの一方の固定端部と摺動面との間に、摺動シートに張力を付与する張力付与部材を有する定着装置が開示されている。
【0006】
特許文献2には、摺動シートが定着装置内で加熱されて伸びたとしても、摺動シートにおけるシワの発生を抑制するために、摺動シートの材質に応じて定着温度における弾性限界点以下で、かつ、定着温度における摺動シートの伸びによるシワが発生しない範囲で、ばね部材を設けた定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-145858号公報
【文献】特開2013-214039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1及び2はいずれも、摺動シートの熱膨張によるしわを抑制するための技術を開示したものであり、前述したような課題、つまり定着ベルト101が回転軸方向に移動した場合に、摺動シート104に変形が生じて画像ノイズの原因となるという課題に対して、解決策を提供しうるものではなかった。
【0009】
この発明はこのような技術的背景に鑑みてなされたものであって、定着ベルトが回転軸方向に移動した場合の摺動シートの変形を抑制して、画像ノイズの発生を抑制できる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)回転する定着ベルトと、前記定着ベルトの外側から圧接して定着ニップを形成する加圧ローラと、定着ベルト内面に接触し、該定着ベルトと摺動するように配置された摺動シートと、前記摺動シートを挟んで定着ベルトに押圧され、前記加圧ローラに対向して圧接される定着パッドと、前記定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて、前記摺動シートを前記定着ベルトの回転軸方向に移動させる可変機構と、を備えたことを特徴とする定着装置。
(2)回転する定着ベルトと、前記定着ベルトの外側から圧接して定着ニップを形成する加圧ローラと、定着ベルト内面に接触し、該定着ベルトと摺動するように配置された摺動シートと、前記摺動シートを挟んで定着ベルトに押圧され、前記加圧ローラに対向して圧接される定着パッドと、前記定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて、前記摺動シートを移動させる可変機構と、を備え、前記可変機構は、前記定着ニップの上流側に配置され、前記定着ベルトの回転軸方向の移動に連動して移動する軸方向移動部材を備え、前記摺動シートは前記軸方向移動部材の移動と連動して移動することを特徴とする定着装置。
(3)回転する定着ベルトと、前記定着ベルトの外側から圧接して定着ニップを形成する加圧ローラと、定着ベルト内面に接触し、該定着ベルトと摺動するように配置された摺動シートと、前記摺動シートを挟んで定着ベルトに押圧され、前記加圧ローラに対向して圧接される定着パッドと、前記定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて、前記摺動シートを移動させる可変機構と、を備え、前記可変機構は、前記定着ベルトの回転軸方向の移動量を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて、前記定着ベルトとの接触状態を変更して定着ベルトを回転軸方向に移動させるステアリング手段と、を備え、前記摺動シートは前記ステアリング手段による前記定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて移動することを特徴とする定着装置。
(4)前記可変機構は、前記定着ニップの上流側に配置され、前記定着ベルトの回転軸方向の移動に連動して移動する軸方向移動部材を備え、前記摺動シートは前記軸方向移動部材の移動と連動して移動する前項1に記載の定着装置。
(5)前記軸方向移動部材は、周面が前記定着ベルトの内周面に圧接され、定着ベルトとの摩擦力により前記定着ベルトに連動して前記回転軸方向に移動するよう構成されるローラ状部材であり、前記摺動シートの端部を前記定着ニップの上流側で保持する摺動シート保持部材を備え、前記摺動シート保持部材は、前記ローラ状部材の両端を保持する保持部材に連結されている前項2または4に記載の定着装置。
(6)前記可変機構は、前記定着ベルトの回転軸方向の移動量を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて、前記定着ベルトとの接触状態を変更して定着ベルトを回転軸方向に移動させるステアリング手段と、を備え、前記摺動シートは前記ステアリング手段による前記定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて移動する前項1に記載の定着装置。
(7)前記定着ベルトの移動量は前記摺動シートの移動量よりも大きい前項1~6のいずれかに記載の定着装置。
(8)前記ステアリング手段は、前記定着ベルトの内周面を支持して定着ベルトを張架するとともに、定着ベルトを加熱する加熱ローラを含んで構成されている前項3、6、前項3または6を引用する前項7のいずれかに記載の定着装置。
(9)前記可変機構は、前記定着ベルトの移動とは独立して前記摺動シートを移動させる前項1、3、6、8のいずれかに記載の定着装置。
(10)画像形成手段と、該画像形成手段により形成され用紙に転写された画像を定着する前項1乃至9のいずれかに記載の定着装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
前項(1)に記載の発明によれば、定着ベルトと定着パッドとの間に介在される摺動シートを、定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて可変機構により定着ベルトの回転軸方向に移動させるから、定着ベルトが回転軸方向に移動すると摺動シートも移動することになる。このため、定着ベルトが回転軸方向に移動しても、定着ベルトとの間に大きな摩擦力が発生しないように摺動シートも定着ベルトの回転軸方向に移動させることができるから、摺動シートが用紙幅方向に凹凸状乃至波打ち状に変形するのを抑制することができる。その結果、摺動シートの変形に起因して発生する画像ノイズを抑制した定着装置となる。
【0012】
前項(4)に記載の発明によれば、可変機構は、定着ニップの上流側に配置され、定着ベルトの回転軸方向の移動に連動して移動する軸方向移動部材を備え、摺動シートは軸方向移動部材の移動と連動して移動するから、比較的簡易に構成で、定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて、摺動シートを定着ベルトと同一方向に確実に移動させることができる。
【0013】
前項(5)に記載の発明によれば、定着ベルトの回転軸方向の移動に連動しローラ状部材からなる軸方向移動部材が移動すると、ローラ状部材の両端を保持する保持部材に連結された摺動シート保持部材も同一移動方向に移動するから、定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて、摺動シートを移動させることができる。
【0014】
前項(6)に記載の発明によれば、定着ベルトの回転軸方向の移動量を検知する検知手段の検知結果に基づいて、定着ベルトとの接触状態を変更して定着ベルトを回転軸方向に移動させるステアリング手段を備えており、摺動シートはステアリング手段による定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて移動するから、定着ベルトの回転軸方向の移動に応じて、精度良く摺動シートを移動させることができる。
【0015】
前項(7)に記載の発明によれば、定着ベルトの移動量は摺動シートの移動量よりも大きいから、移動量の差により、定着ベルトと摺動シートの間に回転軸方向の適度な摩擦力が発生し、摺動シートの変形を効率的に解消することができる。
【0016】
前項(8)に記載の発明によれば、定着ベルトの内周面を支持して定着ベルトを張架するとともに、定着ベルトを加熱する加熱ローラによる定着ベルトとの接触状態の変更により、定着ベルトが回転軸方向に移動すると、これに応じて摺動シートを移動させることができる。
【0017】
前項(9)に記載の発明によれば、定着ベルトの移動とは独立して摺動シートの移動量を調整することができるから、調整自由度が増大する。
【0018】
前項(10)に記載の発明によれば、定着装置の定着ベルトが回転軸方向に移動しても、摺動シートが変形するのを抑制することができ、摺動シートの変形に起因して発生する画像ノイズを抑制した画像形成装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の一実施形態に係る画像形成装置における定着装置の構成を示す図で、定着ベルトの回転軸方向(定着ベルトの幅方向)の一方側から見た正面図である。
【
図3】軸方向移動部材の他の例を示す斜視図である。
【
図4】この発明の他の実施形態に係る画像形成装置における定着装置の構成を示す図で、
図1と同じ方向から見たときの正面図である。
【
図5】ステアリング手段を説明するための斜視図である。
【
図6】この発明のさらに他の実施形態に係る画像形成装置における定着装置の構成を示す図で、
図1と同じ方向から見たときの正面図である。
【
図7】この発明のさらに他の実施形態に係る画像形成装置における定着装置の構成を示す図で、
図1と同じ方向から見たときの正面図である。
【
図8】この発明のさらに他の実施形態に係る画像形成装置における定着装置の構成を示す図で、
図1と同じ方向から見たときの正面図である。
【
図9】従来技術の課題を説明するための図で、定着装置の要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1の実施形態]
図1は、この発明の一実施形態に係る画像形成装置における定着装置の構成を示すもので、定着ベルトの回転軸方向(定着ベルトの幅方向)の一方側から見た正面図である。
【0021】
画像形成装置1は定着装置2と画像形成部3を備え、画像形成部3で形成されたトナー像を転写した用紙を用紙搬送路4に沿って搬送するとともに、定着装置2を通過させて加熱加圧し、トナー像を用紙に定着させる構成となっている。
【0022】
定着装置2は、定着ベルト21と、定着パッド22と、加圧ローラ23と、軸方向移動部材24と、加熱ローラ25と、摺動シート26等を備えている。
【0023】
定着ベルト21は、相互に離間して配置された定着パッド22と加熱ローラ25との間に張架されている。定着ベルト21は、Ni(ニッケル)などの金属またはPI(ポリイミド樹脂)などの耐熱樹脂からなる基材の外周に、シリコンゴム層、フッ素樹脂製離型層が順次形成されてなる。定着パッド22は耐熱性樹脂または金属などから構成され、定着ベルト21の回転走行に対して移動不能に固定支持されている。
【0024】
加圧ローラ23は定着ベルト21を介して定着パッド22に圧接されて、加圧ローラ23と定着ベルト21との間に定着ニップNを構成する。
【0025】
摺動シート26は、定着ベルト21と定着パッド22との間に介在配置されている。摺動シート26は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの耐熱性樹脂シートまたはガラス繊維からなる基材の少なくとも定着ベルト21との摺動部に、摺動抵抗を下げるためのフッ素樹脂層が形成されてなる。摺動シート26は定着ベルト21と定着バッド22の間に狭持され、定着ベルト21の回転に対して摺動するように、摺動シート26における定着ニップNの上流側の端部が、摺動シート保持部材27により固定支持されている。
【0026】
加熱ローラ25には、定着ベルト21を加熱するためのハロゲンランプ等からなる加熱源25aが内蔵されているが、定着ベルト21を加熱する方式は当該形態に制限されない。また、加熱ローラ25の軸方向の両端部には径大の蛇行規制部材(図示せず)が形成され、定着ベルト21の回転軸方向への過度の移動(蛇行)を規制するようになっている。
【0027】
加圧ローラ23は駆動モータ(図示せず)で駆動され、駆動モータによる加圧ローラ23の矢印R1方向の回転により、定着ベルト21は加圧ローラ23に対して矢印R2方向に従動回転するよう構成されている。なお、加圧ローラ23と定着ベルト21を離間した条件で定着ベルト1が回転するように、加熱ローラ25を回転駆動する駆動源を設けても良い。
【0028】
図2に示すように、軸方向移動部材24は、定着ニップNの上流側において、軸方向移動部材24の軸方向と定着ベルト21の回転軸軸方向とが平行となるように配置されるとともに、軸方向移動部材24の外面が定着ベルト21の内面に圧接する状態で配置されている。また、軸方向移動部材24は軸24a、24aを介して軸方向に揺動可能に支持されており、これにより、加熱ローラ25に設けられた蛇行規制部材の規制範囲内で、定着ベルト21が回転軸方向に蛇行して走行すると、定着ベルト21との回転軸方向の摩擦力が軸方向移動部材24に作用して、軸方向移動部材24も定着ベルト21の蛇行に連動して、
図2に矢印A-Bで示す軸方向に移動するようになっている。
【0029】
軸方向移動部材24は、
図2に示すように、定着ベルト21の内面に接触し、定着ベルト21の走行に対して回転することなく定着ベルト21と摺動する非回転部材で構成されていても良い。あるいは
図3に示すように、ローラ状部材で構成されて、定着ベルト21の走行によって回転するように構成されてもよい。
図3に示す軸方向移動部材24も、軸24a、24aを介して軸方向に揺動可能に支持されている。また、加熱ローラ25に設けられた蛇行規制部材の規制範囲内で、定着ベルト21が回転軸方向に蛇行して走行すると、定着ベルト21との摩擦力により、定着ベルト21の蛇行に連動して、軸方向移動部材24も
図3に矢印A-Bで示すように、軸方向に移動するようになっている。
【0030】
軸方向移動部材24には、軸方向移動部材24の軸方向に延びた摺動シート保持部材27が連結されており、定着ベルト21の回転軸方向の移動に連動して軸方向移動部材24が軸方向(A-B方向)に移動すると、摺動シート保持部材27も同一方向に一体で移動し、摺動シート保持部材27に一端部を保持された摺動シート26も同一方向に移動するようになっている。即ち、軸方向移動部材24と摺動シート保持部材27とで、摺動シート26を定着ベルト21と同一方向に移動させる可変機構が構成されている。
図1において、破線で示す符号Gは、軸方向移動部材24と摺動シート保持部材27が連動していることを示す。
【0031】
軸方向移動部材24が、
図2に示すような非回転部材で構成される場合は、摺動シート保持部材27との連結位置は軸方向移動部材24の軸方向端部のみならず、通紙範囲内(軸方向中央部)であっても連結することができる。この場合は、摺動シート保持部材27が軸方向に移動することに起因した摺動シート26の変形を抑制できる点で好適である。
図2の例では、摺動シート保持部材27との長さ方向の全域に亘って軸方向移動部材24に連結されている。
【0032】
一方、軸方向移動部材24を
図3で示すような回転可能なローラ状部材で構成すると、軸方向移動部材24と定着ベルト21とは回転方向の摺動がなく、定着ニップN以外で定着ベルト21の内周面と摺動する部分がない構成とすることができるから、駆動トルクの低減や定着ベルト21の摩耗防止を図ることができる点で好適である。しかし、軸方向移動部材24のローラ状周面に摺動シート保持部材27を連結できないことから、例えば、摺動シート保持部材27は、軸方向移動部材24の両端部を保持する回転不能な保持部材24b、24bに、連結されている。
【0033】
摺動シート保持部材27はその長さ方向において摺動シート26の一端部を固定し、定着ニップNにおいて定着ベルト21との間の摩擦力に抗して、摺動シート26を保持できるようになっている。摺動シート26の固定方法としては、ステー状の高強度部材に接着する方法、長さ方向に複数個所でねじ固定する方法などを挙げることができる。
【0034】
このように、定着ベルト21が回転軸方向(定着ベルトの幅方向)に移動することに連動して軸方向移動部材24も軸方向に移動し、さらに軸方向移動部材24の軸方向移動に伴って摺動シート保持部材27も定着ベルト21と同様に回転軸方向に移動することとなる。
【0035】
その結果、定着ベルト21の回転軸方向の移動と摺動シート26の幅方向の移動が一致することとなり、定着ニップ噛みこみ時に摺動シート26の変形を抑制することができる。その結果、紙への熱量ムラの発生を防止することができそれに起因する画像ノイズの発生を防止することができる。
[第2の実施形態]
この発明の他の実施形態を
図4及び
図5を参照して説明する。この実施形態では、ステアリング手段により定着ベルト1を回転軸方向に移動させたときに、ステアリング手段に連動して摺動シート26を同一方向に移動させる構成となっている。なお、画像形成部3については図示を省略している。
【0036】
具体的には、
図5に示すように、ステアリング手段240は、軸方向移動部材24とステアリング駆動部241を含んで構成される。軸方向移動部材24は、その一端側が図示しない支持部材に支持されており、他端側がステアリング駆動部241に接続されている。ステアリング駆動部241により軸方向移動部材24の他端側を駆動することで、軸方向移動部材24は一端側を支点として他端側が
図5に矢印で示すC-D方向に移動し、軸方向移動部材24の配置角度を変更できるようになっている。そして、この軸方向移動部材24の角度変更により、定着ベルト21と軸方向移動部材24との摩擦状態を変更して、定着ベルト21を回転軸方向(定着ベルトの幅方向)に移動させ回転軸方向の位置を調整できるようになっている。
【0037】
この実施形態では、
図4に示すように、定着ベルト21の回転軸方向の移動量を検知するセンサ28が備えられており、ステアリング駆動部241はセンサ28の検知結果を基に軸方向移動部材24の角度を変更する。
【0038】
摺動シート保持部材27は第1の実施形態と同様にして、軸方向移動部材24と連結されている。即ち、軸方向移動部材24が非回転部材で構成される場合は軸方向全域において固定され、軸方向移動部材24が定着ベルト1の走行に合わせて回転可能なローラ状である場合は、
図5のように、軸方向移動部材4の両端の保持部材24b、24bに板金等の連結部材でねじ止めその他の方法で固定される。
【0039】
定着ベルト21、定着パッド22、加圧ローラ23、加熱ローラ25等の他の構成は第1の実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0040】
この実施形態では、ステアリング手段240と摺動シート保持部材27とで、摺動シート26を移動させる可変機構が構成されている。軸方向移動部材24の中心軸が一端側においてC-D方向に傾斜するよう制御されると、これに連動して摺動シート保持部材27の中心軸もC-D方向に傾斜するように移動される。つまり、軸方向移動部材24が移動されると同時に摺動シート保持部材27も同様に移動することとなり、定着ニップ入口直前の定着ベルト21の移動量と摺動シート26の移動量がほぼ同一になるため、定着ベルト21と摺動シート26との間の摩擦力により摺動シート26が変形するのを防止できる。
[第3の実施形態]
この発明のさらに他の実施形態を
図6を参照して説明する。この実施形態では、定着ベルト21の回転軸方向の移動量が摺動シート保持部材27の軸方向移動量よりも大きく設定されている。
【0041】
なお、定着ベルト21、定着パッド22、加圧ローラ23、軸方向移動部材24、加熱ローラ25、摺動シート26、摺動シート保持部材27等の構成は第1の実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0042】
また、軸方向移動部材24と摺動シート保持部材27とが連結されている点も第1の実施形態と同じであるが、この実施形態では軸方向移動部材24と摺動シート保持部材27の位置が第1の実施形態とは異なっている。
【0043】
具体的には、軸方向移動部材24の定着ベルト21に対する張架端の位置から定着ニップNの入口までの距離(LB)よりも、摺動シート保持部材27の位置から定着ニップNの入口までの距離(LS)が長く設定されている。このため、軸方向移動部材24と摺動シート保持部材27が同じ量だけ移動したとしても、定着ニップNの回転軸方向に対するLS範囲における摺動シート26の傾斜角のほうが、定着ニップNの回転軸方向に対するLB範囲における定着ベルト21の傾斜角よりも小さくなり、定着ベルト21の蛇行量(単位時間当たりの移動量)は摺動シート26の移動量より大きくなる。
【0044】
このように、定着ベルト21の移動量を摺動シート26の移動量よりも大きく設定することにより、摺動シート26と定着ベルト21との回転軸方向の移動量の違いに基づいて回転軸方向に適度な摩擦力が発生し、摺動シート26の変形を効率的に解消することができる。
[第4の実施形態]
この発明のさらに他の実施形態を
図7を参照して説明する。この実施形態では、基本的には、ステアリング手段240を備えた
図4及び
図5に示した第2の実施形態と同じであるが、軸方向移動部材24と摺動シート保持部材27は連結されておらず、軸方向移動部材24の角度の制御と、摺動シート保持部材27の移動制御とは独立して行われる構成となっている。
【0045】
この構成では、軸方向移動部材24と摺動シート保持部材27とを連結する形態に比べて、摺動シート26の移動の調整自由度が増大し、より精密な摺動シート26の変形防止制御が可能となる。
【0046】
具体的には、軸方向移動部材24と摺動シート保持部材27の各中心軸の一端側を支点として他端側を、それぞれのステアリング駆動部241a、241bによりそれぞれ矢印C-D方向に移動させることにより、各々C-D方向に傾斜させるステアリング手段240a、240bを備え、定着ベルト21の蛇行量(回転軸方向の移動量)を検知するセンサ28の検知結果に基づいて、軸方向移動手段24と摺動シート保持部材27の角度(C-D方向の位置)を独立して制御する。従ってこの実施形態では、各ステアリング手段240a、240bによって摺動シート26を移動させる可変機構が構成されている。
【0047】
これにより、経時的に摺動シート26が変形(定着ニップ部における摩擦力による張力で薄くなる、伸び広がる、凹凸が発生する、等)した場合でも、耐久条件により摺動シート保持部材27の移動量を変化させる(一例として、定着ベルト1の蛇行速度との差を大きくする方向に変化させる)ことで、定着ベルト21の蛇行による摺動シート26の変形を安定して抑制することができる。
【0048】
例えば、初期に比べて長期使用後では、定着ベルト21の蛇行量または速度が大きくなる方向に軸方向移動部材24を制御しているときには、摺動シート26の移動量が小さくなる方向に摺動シート保持部材27を制御する一方、定着ベルト21の蛇行量または速度が小さくなる方向に軸方向移動部材24を制御しているときには、摺動シート26の移動量が大きくなる方向に摺動シート保持部材27を制御する。このような制御により、摺動シート26の変形を安定して抑制することができる。
[第5の実施形態]
この発明のさらに他の実施形態を
図8を参照して説明する。この実施形態では、定着ベルト21の内周に張架され、定着ベルト21を加熱する機能を有する加熱ローラ25を、軸方向移動部材として兼用している。
【0049】
即ち、加熱ローラ25をその中心軸の一端側を支点として他端側をステアリング駆動部241cにより矢印C-D方向に移動させることにより、定着ベルト21の蛇行を調整するステアリング手段240cを備えており、定着ベルト21の蛇行量(回転軸軸方向の位置)を検知するセンサ28の検知結果に基づいて加熱ローラ25の角度(C-D方向の位置)を制御している。
【0050】
一方で、摺動シート保持部材27もその中心軸の一端側を支点として他端側をステアリング駆動部241dにより矢印C-D方向に移動させることにより、摺動シート26の移動量を制御するステアリング手段240dを備えている。加熱ローラ25及び摺動シート保持部材27の角度を制御することで、定着ニップNの入口近傍における摺動シート26の変形を有効に抑制できることは、第4の実施形態で説明した通りである。
【0051】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。例えば、摺動シート26と定着ベルト21の接触面に潤滑剤(フッ素オイル、耐熱グリース)を介在させて、定着ベルト21と摺動シート26間の摩擦力を安定的に下げる構成としても良い。摺動シート26の変形が抑制されるから、潤滑剤溜まりに起因する潤滑剤ムラの発生を防止でき、画像ノイズを防止できる。潤滑剤を用いる場合、定着ベルト21の内面との摩擦力を確保して軸方向移動部材24の移動を容易にするために、軸方向移動部材24の表面にシリコンゴム等からなる高摩擦層を形成しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 画像形成装置
2 定着装置
3 画像形成部
4 搬送路
21 定着ベルト
22 定着パッド
23 加圧ローラ
24 軸方向移動部材
25 加熱ローラ
26 摺動シート
27 摺動シート保持部材
28 センサ
231 駆動モータ
240 ステアリング手段
N 定着ニップ