(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】絶縁回路基板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/13 20060101AFI20240123BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240123BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240123BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L23/12 J
H01L23/36 C
H05K1/02 F
H01L23/12 Q
(21)【出願番号】P 2019225460
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 奎洲
(72)【発明者】
【氏名】北原 丈嗣
(72)【発明者】
【氏名】村中 亮
(72)【発明者】
【氏名】湯本 遼平
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/157584(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/149225(WO,A1)
【文献】特開2017-069275(JP,A)
【文献】特開2005-116843(JP,A)
【文献】特開2002-343911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/12 -23/15
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H05K 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方の面に回路層が形成されるとともに、前記セラミックス基板の他方の面に放熱層が形成されてなる絶縁回路基板であって、
前記回路層は、パターン分割溝により複数の回路パターンに分断されており、
前記放熱層は、
該放熱層を前記複数の回路パターンに対応する複数の領域に分断するように前記パターン分割溝
に沿って形成された放熱層貫通溝と、前記放熱層貫通溝の両側に位置する各領域を結合する結合部と、が形成され、
前記放熱層貫通溝の外側端部は、前記放熱層の外周端に開放されていることを特徴とする絶縁回路基板。
【請求項2】
前記放熱層貫通溝の幅は、前記パターン分割溝の幅の1.0倍以上2.0倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板。
【請求項3】
前記結合部の前記パターン分割溝に沿う方向の距離は、前記放熱層貫通溝の幅を超え、かつ、前記放熱層貫通溝の幅の4.0倍以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウムを始めとするセラミックス基板からなる絶縁層の一方の面に回路層が形成されるとともに、他方の面に放熱層が形成された絶縁回路基板として、特許文献1及び2に記載の絶縁回路基板が知られている。
この特許文献1に記載の絶縁回路基板は、回路層が複数のパターンに分断されている。この絶縁回路基板は、セラミックス基板上にパターン化された回路層が形成された形態の回路基板を1枚のセラミックス基板から複数個製造することにより製造される。具体的には、回路層のパターンが複数個配列された回路パターン部を有するとともに、回路パターン部における単一の回路基板に対応した箇所において2つ以上の電気的に独立した箇所が設けられ、独立した箇所間が結合部によって接続されて一体化されている金属パターン板を製造し、1枚のセラミックス基板上に金属パターン板を接合し、金属パターン板が接合されたセラミックス基板を分割し、セラミックス基板上に接合した金属パターン板の結合部を切断除去することにより製造される。この特許文献1に記載の製造方法により製造された絶縁回路基板は、回路層がパターン分割溝により複数のパターンに分割され、それぞれが電気的に独立しているため、半導体素子等をパターンごとに搭載することが可能となる。
【0003】
また、特許文献2に記載の絶縁回路基板は、セラミックス基板に回路層となる銅回路板及び放熱層となる銅回路板を活性な金属の接合層を介して一体的に接合することにより形成される。各銅回路板の接合層側の表面には、当該表面を外部に連通する凹状の溝が形成されており、各銅回路板とセラミックス基板とを活性金属法による加熱接合において脱脂する際に、銅回路板の接合層側の表面の凹状の溝を介してバインダのガスが抜けやすくなり、セラミックス基板と回路層及び放熱層との接合信頼性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5303980号公報
【文献】特開平5-136290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の絶縁回路基板では、回路層が複数のパターンに分断されており、放熱層は矩形板状でセラミックス基板側の面がいわゆるベタ面により構成されているため、回路層と放熱層との形状の違いに起因する熱伸縮差により、セラミックス基板の両面に作用する応力が異なるため、回路層側を上側とする凸状に反り易い。この反りを抑制するため、放熱層も回路層と同様に複数のパターンに分割することも考えられるが、この場合、放熱層を構成するピース数が増加するため位置ずれし易い。
この放熱層の位置ずれを抑制するため、特許文献2に記載の絶縁回路基板のように、放熱層における回路層のパターン分割溝に対応する位置に凹状の溝を形成することも考えられる。しかしながら、放熱層に凹状の溝を形成しても放熱層が1枚板であるため、絶縁回路基板全体の収縮による圧縮応力の影響を受けることから、回路層と放熱層との熱伸縮差によるセラミックス基板の反りの問題を解消できない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、回路層が複数のパターンに分割されている絶縁回路基板において、反り及び製造時の放熱層の位置ずれを抑制できる絶縁回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の絶縁回路基板は、セラミックス基板の一方の面に回路層が形成されるとともに、前記セラミックス基板の他方の面に放熱層が形成されてなる絶縁回路基板であって、前記回路層は、パターン分割溝により複数の回路パターンに分断されており、前記放熱層は、前記パターン分割溝に対応する位置に、前記パターン分割溝に沿う放熱層貫通溝と、前記放熱層貫通溝の両側に位置する各領域を結合する結合部と、が形成され、前記放熱層貫通溝の外側端部は、前記放熱層の外周端に開放されている。
【0008】
本発明では、放熱層における回路層のパターン分割溝に対応する位置に放熱層貫通溝が形成されているので、セラミックス基板と、回路層及び放熱層との接合時におけるセラミックス基板の両面に作用する応力を略同じとすることができるため、絶縁回路基板の反りを抑制できる。また、結合部が放熱層貫通溝の両側に位置する各領域を結合しているので、放熱層を1枚板の状態で維持できる。このため、放熱層が複数のピースに分断されている場合に比べて、製造時における放熱層の取り扱いを容易にでき、放熱層の位置ずれを抑制できる。また、セラミックス基板と、回路層及び放熱層との接合には、予めこれらを仮止めする仮止め材及びこれらを加圧する加圧板を使用する場合がある。この仮止め材としては、接合時の加熱によって分解して消失するものが使用される。この場合、セラミックス基板と回路層及び放熱層との接合時に回路層及び放熱層を加圧板で押圧しても、放熱層貫通溝の外側端部が放熱層の外周端に開放されていることから、加熱により分解された仮止め材が放熱層貫通溝から放熱層の外側に排出される。このため、仮止め材の残渣が放熱層貫通溝内に残ることを抑制できる。
【0009】
本発明の絶縁回路基板の好ましい態様としては、前記放熱層貫通溝の幅は、前記パターン分割溝の幅の1.0倍以上2.0倍以下であるとよい。
放熱層貫通溝の幅がパターン分割溝の幅の1.0倍未満であると、セラミックス基板に対する放熱層の接合面積が回路層の接合面積より大きくなることから、絶縁回路基板の回路層側を上側とする凸状の反りを抑制しにくく、2.0倍を超えると、上記放熱層の接合面積が回路層の接合面積より小さくなることから、絶縁回路基板が回路層側を上側とする凹状に反る可能性がある。
【0010】
本発明の絶縁回路基板の好ましい態様としては、前記結合部の前記パターン分割溝に沿う方向の距離は、前記放熱層貫通溝の幅を超え、かつ、前記放熱層貫通溝の幅の4.0倍以下であるとよい。
結合部は、パターン分割溝に沿って形成される。この結合部のパターン分割溝に沿う方向の距離が放熱層貫通溝の幅以下であると、加工時に放熱層が変形する可能性があり、放熱層貫通溝の幅の4.0倍を超えると、放熱層の接合面積が回路層の接合面積より大きくなることから、絶縁回路基板の回路層側を上側とする凸状の反りを抑制しにくくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路層が複数のパターンに分割されている絶縁回路基板の反り及び製造時の放熱層の位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るヒートシンク付絶縁回路基板を用いたパワーモジュールを示す断面図である。
【
図2】
図1に示すパワーモジュールの半導体素子側から見た上面図である。
【
図3】
図1に示す絶縁回路基板の放熱層をセラミックス基板との接合面側から見た平面図である。
【
図4】
図1に示すヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図であり、セラミックス基板に第1回路層及び第1放熱層を形成する工程を示す図である。
【
図5】
図1に示すヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図であり、セラミックス基板に第2回路層及び第2放熱層を形成する工程を示す図である。
【
図6】
図1に示すヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法におけるヒートシンク接合工程を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るヒートシンク付絶縁回路基板を用いたパワーモジュールを示す断面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る絶縁回路基板の回路層をセラミックス基板との接合面とは反対側から見た平面図である。
【
図9】上記第3実施形態の絶縁回路基板の放熱層をセラミックス基板との接合面側から見た平面図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る絶縁回路基板の回路層をセラミックス基板との接合面とは反対側から見た平面図である。
【
図11】上記第4実施形態の絶縁回路基板の放熱層をセラミックス基板との接合面側から見た平面図である。
【
図12】本発明の第5実施形態に係る絶縁回路基板の回路層をセラミックス基板との接合面とは反対側から見た平面図である。
【
図13】上記第5実施形態の絶縁回路基板の放熱層をセラミックス基板との接合面側から見た平面図である。
【
図14】本発明の第6実施形態に係る絶縁回路基板の放熱層をセラミックス基板との接合面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態では、絶縁回路基板にヒートシンクが設けられ、このヒートシンク付絶縁回路基板がパワーモジュール用基板として用いられる実施形態について説明する。
【0014】
[ヒートシンク付絶縁回路の概略構成]
第1実施形態に係るヒートシンク付絶縁回路基板1は、
図1に示すように、絶縁回路基板10にヒートシンク20が接合されたものである。
【0015】
[パワーモジュールの構成]
そして、このヒートシンク付絶縁回路基板1の表面に半導体素子30等が搭載されることにより、パワーモジュール100(電子部品)が製造される。
なお、ヒートシンク20を備えるパワーモジュール100は、例えば
図1に二点鎖線で示すような冷却器50に取り付けられた状態で使用される。この冷却器50には、ねじ止めによりパワーモジュール100が固定される。
【0016】
[絶縁回路基板の構成]
絶縁回路基板10は、セラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に積層された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に積層された放熱層13とを備える。
セラミックス基板11は、回路層12と放熱層13の間の電気的接続を防止する絶縁材であって、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)等により形成され、その板厚は0.2mm~1.2mmである。また、セラミックス基板11の平面サイズは、例えば、30mm~80mm×30mm~80mmに設定されている。
【0017】
[回路層の構成]
回路層12は、
図1に示すように、セラミックス基板11に接合される第1回路層14と、第1回路層14の上面(セラミックス基板11とは反対側の面)に接合される第2回路層15と、を備えている。これらのうち、第1回路層14は、純度99質量%以上の純アルミニウムが用いられ、JIS規格では1000番台の純アルミニウム、特に1N90(純度99.9質量%以上:いわゆる3Nアルミニウム)又は1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることができる。一方、第2回路層15は、無酸素銅等の銅又はジルコニウム添加銅合金等の銅合金により構成されている。例えば、第1回路層14の厚さは、0.4mm~1.0mmに設定され、第2回路層15の厚さは、0.5mm~3.0mmに設定されている。
【0018】
これら第1回路層14及び第2回路層15からなる回路層12は、
図2に示すように、パターン分割溝121a,121bにより、複数(3つ)の回路パターン122,123,124に分割されている。このパターン分割溝121a,121bは、
図2の縦方向に沿って延びる直線状であり、矩形板状の回路層12を3つの矩形状の回路パターン122,123,124に分割している。このパターン分割溝121a,121bの形状は、いずれも同じである。また、パターン分割溝121a,121bの両端は、いずれも回路層12の外周端に開放されている。つまり、回路層12は、パターン分割溝121a,121bにより、電気的に3つの領域に分断されている。
なお、パターン分割溝121a,121bの幅は、0.8mm~1.5mmに設定されている。
【0019】
[放熱層の構成]
放熱層13は、
図1に示すように、セラミックス基板11に接合される第1放熱層16と、第1放熱層16の下面(セラミックス基板11とは反対側の面)に接合される第2放熱層17と、を備えている。これらのうち、第1放熱層16は、純度99質量%以上の純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられ、JIS規格では1000番台のアルミニウム、特に1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることができる。一方、第2放熱層17は、無酸素銅等の純銅又はジルコニウム添加銅合金等の銅合金により構成されている。例えば、第1放熱層16の厚さは、0.4mm~1.0mmに設定され、第2放熱層17の厚さは、0.5mm以上3.0mm以下に設定されている。
【0020】
これら第1放熱層16及び第2放熱層17からなる放熱層13は、
図1及び
図2に示すように、パターン分割溝121a,121bに対応する位置に、パターン分割溝121a,121bに沿う放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dと、放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dのそれぞれの両側に位置する各領域を結合する結合部132a,132bとが形成されている。
【0021】
これら放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dは、
図2及び
図3の縦方向に沿って延びる直線状であり、矩形板状の放熱層13を3つの領域Ar1,Ar2,Ar3に分断するように設けられている。具体的には、放熱層貫通溝131a,131cは、パターン分割溝121aに対応する位置に形成され、放熱層貫通溝131aと放熱層貫通溝131cとの間に結合部132aが設けられている。また、放熱層貫通溝131b,131dは、パターン分割溝121bに対応する位置に形成され、放熱層貫通溝131bと放熱層貫通溝131dとの間に結合部132bが設けられている。
【0022】
これら放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dの形状は、いずれも同じであり、その幅w1は、例えば、0.8mm~2.0mmに設定されている。なお、放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dの幅w1は、回路層12のパターン分割溝121a,121bの幅の1.0倍~2.0倍であることが好ましい。この放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dの幅w1がパターン分割溝121a,121bの幅の1.0倍未満であると、放熱層13のセラミックス基板11への接合面積が回路層12のセラミックス基板11への接合面積に比べて大きくなることから、絶縁回路基板10の回路層12側を上側とする凸状の反りを抑制しにくく、2.0倍を超えると、上記回路層12の接合面積が上記放熱層13の接合面積より大きくなることから、絶縁回路基板10が回路層12側を上側とする凹状に反る可能性がある。
また、放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dの結合部132a,132bとは反対側の端部は、いずれも放熱層13の外周端に開放されている。
【0023】
結合部132a,132bは、放熱層貫通溝131a,131bのそれぞれの両側に位置する各領域を結合している。具体的には、結合部132aは、放熱層貫通溝131a,131cの
図3における左側に位置する領域Ar1と、
図3における右側に位置する領域Ar2とを結合している。また、結合部132bは、放熱層貫通溝131b,131dの
図3における左側に位置する領域Ar2と
図3における右側に位置する領域Ar3とを結合している。つまり、結合部132a,132bが設けられることにより、放熱層13は、1枚板状(1ピース)とされている。
【0024】
この結合部132aは、放熱層13の回路層12のパターン分割溝121aに対応する位置に設けられるとともに、放熱層貫通溝131aと放熱層貫通溝131cとの間に設けられている。また、結合部132bは、放熱層13の回路層12のパターン分割溝121bに対応する位置に設けられるとともに、放熱層貫通溝131bと放熱層貫通溝131dとの間に設けられている。これら結合部132a,132bのパターン分割溝121a,121bに沿う方向の距離L1は、例えば、0.8mm~8.0mmに設定されている。
【0025】
この結合部132a,132bの上記距離L1は、放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dの幅w1を超えて幅w1の4.0倍以下であることが好ましい。この結合部132a,132bの距離L1が放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dの幅w1以下であると、加工時に放熱層13が変形する可能性があり、幅w1の4.0倍を超えると、放熱層13のセラミックス基板11への接合面積が回路層12のセラミックス基板11への接合面積より大きくなることから、絶縁回路基板10の回路層12側を上側とする凸状の反りを抑制しにくくなる。
【0026】
また、パターン分割溝121a,121bを含む回路層12の平面サイズ及び放熱層分割溝131a,131b,131c,131dを含む放熱層13の平面サイズのそれぞれは、30mm~80mm×30mm~80mmに設定されている。つまり、これら回路層12の厚さ及び平面サイズと放熱層13の厚さ及び平面サイズとは、同一に設定されているとともに、回路層12及び放熱層13は、セラミックス基板11よりも若干小さく形成されている。
【0027】
[ヒートシンクの構成]
この絶縁回路基板10に接合されるヒートシンク20は、特に限定されないが、強度及び耐食性に優れたJIS6000番台のアルミニウム合金、例えば、A6063からなる板材により形成することができる。このヒートシンク20の厚さは、2.1mm以上6.8mm以下に設定され、その平面サイズは、例えば、40mm~220mm×30mm~170mmとされている。このようなヒートシンク20は、固相拡散接合により第2放熱層17に接合され、絶縁回路基板10と一体とされる。
また、ヒートシンク20の外周縁には、
図2に示すように、冷却器50等の各種機器への取り付けの際にねじ止めを行うための締結穴21が形成されている。
【0028】
パワーモジュール100を構成する半導体素子30は、回路層12の各回路パターン121~123の表面に、例えばSn-Sb系、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-In系、もしくはSn-Ag-Cu系のはんだ材(いわゆる鉛フリーはんだ材)を用いて接合される。
図1中の符号31が、そのはんだ接合層を示す。この
図2の例では、3つの半導体素子30は、パターン分割溝121a,122aにより分断された3つの領域のそれぞれの中央に配置されている。
また、半導体素子30と回路層12の端子部との間は、アルミニウムからなるボンディングワイヤ(不図示)により接続される。
【0029】
[ヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法]
次に、本実施形態のヒートシンク付絶縁回路基板1の製造方法について説明する。
その製造方法は、セラミックス基板11に第1回路層用金属板140及び第1放熱層用金属板160を接合して、セラミックス基板11に第1回路層14及び第1放熱層16を形成する第1接合工程と、第1回路層14上に第2回路層用金属板150を配置するとともに、第1放熱層16上に第2放熱層用金属板170を配置し、この第2放熱層用金属板170上にヒートシンク20を配置して、これらを固相拡散接合する第2接合工程とを備える。以下、この工程順に説明する。
【0030】
(第1接合工程)
図4に示すように、3枚のアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1回路層用金属板140、セラミックス基板11、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる1枚の第1放熱層用金属板160を、それぞれAl-Si系ろう材箔18を介して積層する。この際、セラミックス基板11の両面にAl-Si系ろう材箔18を仮止めする仮止め材が塗布され、これによりセラミックス基板11の表面にAl-Si系ろう材箔18が固定される。また、各Al-Si系ろう材箔18のセラミックス基板11とは反対側の面にも上記仮止め材が塗布され、これに第1回路層用金属板140及び第1放熱層用金属板160が固定され、積層体となる。そして、この積層体を加圧板31,32(
図6参照)により挟持して、積層方向に加圧した状態で加熱した後、冷却することにより、セラミックス基板11の一方の面に第1回路層用金属板140が接合され、他方の面に放熱層用金属板160が接合される。これにより、セラミックス基板11の一方の面に第1回路層14が形成され、他方の面に第1放熱層16が形成される。
【0031】
このときの接合条件は、真空雰囲気下で、積層方向の加圧力が0.3MPa~1.5MPaで、630℃以上655℃以下の加熱温度に20分以上120分以下保持するのが好適である。
また、仮止め材としては、接合時の加熱によって分解して消失するものが用いられ、例えば、オクタンジオール、PEG、ステアリン酸などの飽和脂肪酸やアクリル系樹脂などを溶剤に溶解させた樹脂溶液等を用いることができる。
なお、本実施形態では、ろう材箔18を用いることとしたが、これに限らず、ろう材ペーストを用いてもよい。この場合、ろう材ペーストは、セラミックス基板11に塗布してもよいし、第1回路層用金属板140及び第1放熱層用金属板160に塗布してもよい。
【0032】
(第2接合工程)
次いで、
図5に示すように、セラミックス基板11に形成された第1回路層14上に3枚の銅又は銅合金からなる第2回路層用金属板150をそれぞれ積層するとともに、第1放熱層16とヒートシンク20との間に、銅又は銅合金からなる1枚の第2放熱層用金属板170を配置して積層体を形成する。この場合、第1回路層14と第2回路層用金属板150との間、第1放熱層16と第2放熱層用金属板170との間、第2放熱層用金属板170とヒートシンク20との間には、上記仮止め材が設けられ、積層体を構成する各構成が仮止めされる。そして、
図6に示すように、真空雰囲気下でこの積層体を積層方向に加圧板31,32により挟持して加圧した状態で加熱した後、冷却することにより、第1回路層14上に第2回路層15が形成されるとともに、第1放熱層16に第2放熱層17が形成され、この第2放熱層17とヒートシンク20とが接合される。
【0033】
すなわち、第1回路層14、第1放熱層16及びヒートシンク20がアルミニウム合金からなり、第2回路層用金属板150及び第2放熱層用金属板170が銅又は銅合金からなるため、これらは固相拡散接合する。このときの接合条件は、真空雰囲気下で、積層方向の加圧力が0.5MPa~2.0MPaで、500℃~540℃の加熱温度に30分~120分保持するのが好適である。
【0034】
本実施形態では、放熱層13の形状と回路層12の形状とが略同じとなることから、接合時及び冷却時の回路層12及び放熱層13からセラミックス基板11の両面に作用する応力を略同じとすることができるため、ヒートシンク付絶縁回路基板1の反りを抑制できる。
また、放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dの幅w1がパターン分割溝121a,121bの幅の1.0倍以上2.0倍未満に設定されているため、セラミックス基板11に対する回路層12の接合面積と、セラミックス基板11に対する放熱層13の接合面積とを略同じとすることができる。さらに、結合部132a,132bの放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dに沿う方向の距離L1が放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dの幅w1を超え、かつ、幅w1の4.0倍以下であるため、加工時に放熱層13が変形することを抑制できるとともに、セラミックス基板11に対する回路層12の接合面積と、セラミックス基板11に対する放熱層13の接合面積とを略同じとすることができる。
【0035】
このような製造方法により製造されたヒートシンク付絶縁回路基板1は、絶縁回路基板10の回路層12の上面の平面度を改善できる。このため、ヒートシンク付絶縁回路基板1に半導体素子30をはんだ付けする際におけるボイドの発生を抑制でき、これによりパワーモジュール100の信頼性を向上できる。
【0036】
また、第1放熱層用金属板160及び第2放熱層用金属板170は、1枚板の状態であるため、第1放熱層用金属板160及び第2放熱層用金属板170が複数のピースに分割されている場合に比べて、その取扱いが容易となる。このため、接合時における第1放熱層用金属板160及び第2放熱層用金属板170の位置ずれを抑制できる。
【0037】
ここで、第1放熱層用金属板160及び第2放熱層用金属板170のそれぞれには、放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dとなる溝が形成されている。このような放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dの結合部132a,132bとは反対側の端部が第1放熱層用金属板160及び第2放熱層用金属板170外周縁に開放されていない場合、加圧板31,32により加圧された状態でこれらが加熱されると、仮止め材は、この加熱により分解されるが、加圧板31,32により密閉された空間に閉じ込められるため、分解された仮止め材が排出されずに空間内に留まる可能性がある。この点、本実施形態では、第1接合工程及び第2接合工程が真空雰囲気下で実行されるとともに、第1放熱層用金属板160及び第2放熱層用金属板170の放熱層貫通溝131a,131b,131c,131dとなる溝の結合部132a,132bとなる部位とは反対側の端部がこれらの外周端に開放されていることから、加圧板31,32により押圧された状態で加熱された際に加熱の初期の段階で分解された仮止め材が上記溝から真空引きされて、第1放熱層用金属板160及び第2放熱層用金属板170の外側へと排出される。このため、仮止め材の残渣が放熱層貫通溝131a,131b内に残ることを抑制できる。
【0038】
また、第1回路層用金属板140及び第2放熱層用金属板150のそれぞれは、3つのピースに分断されている、つまり、パターン分割溝121a,121bとなる溝が形成されているので、回路層12においても上述したように、加圧板31,32により押圧された状態で加熱された際に加熱の初期段階で分解された仮止め材が第1回路層用金属板140及び第2回路層用金属板150のパターン分割溝121a,121bとなる溝から真空引きされて、第1回路層用金属板140及び第2回路層用金属板150の外側へと排出される。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るヒートシンク付絶縁回路基板を用いたパワーモジュールについて、
図7を用いて説明する。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同一又は略同一の構成については、同じ符号を付し、説明を省略又は簡略化させて説明する。
図7は、本実施形態のヒートシンク付絶縁回路基板1Aを用いたパワーモジュール100Aを示す断面図である。本実施形態では、絶縁回路基板10Aを構成する回路層12A及び放熱層13Aが一層により構成されている点で、上記第1実施形態と相違する。
【0040】
回路層12Aは、第1実施形態の第1回路層14と同一の構成であり、放熱層13Aは、第1実施形態の第1放熱層16と同一の構成である。つまり、本実施形態では、第2回路層15及び第2放熱層17を有していない。この場合、放熱層13Aがアルミニウム又はアルミニウム合金からなるため、放熱層13Aとアルミニウム合金からなるヒートシンク20との接合は、上記仮止め材及びAl-Si系ろう材を用いればよい。
放熱層13Aは、第1実施形態の放熱層13と同様に、放熱層貫通溝131a,131b,131c,131d及び結合部132a,132bを有している。このため、本実施形態においても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、回路層12Aは、第1実施形態の第1回路層14と同一の構成であり、放熱層13Aは、第1実施形態の第1放熱層16と同一の構成であることとしたが、これに限らず、例えば、回路層12A及び放熱層13Aを銅又は銅合金により形成してもよい。この場合、セラミックス基板11の一方の面に銅又は銅合金からなる回路層12Aが形成され、他方の面に銅又は銅合金からなる放熱層13Aが形成されることとなる。この場合、セラミックス基板11と回路層12A及び放熱層13Aとの接合は、例えば、上記仮止め材及びろう材を用いればよい。ここでのろう材は、Ag-Ti系又はAg-Cu-Ti系のろう材を用いることができる。
【0042】
[第3~第6実施形態]
図8~
図14は、第3~第6実施形態における回路層及び放熱層を示している。以下の各実施形態では、
図8~
図14を用いて絶縁回路基板を構成する回路層及び放熱層についてのみ説明する。この実施形態の回路層及び放熱層は、第1実施形態のように回路層及び放熱層が2層のものにも適用可能であるとともに、第2実施形態のように回路層及び放熱層が1層のものにも適用可能である。
【0043】
第3実施形態の回路層12Bは、
図8に示すように、パターン分割溝121c,121dにより、4つの回路パターンに分割されている。このパターン分割溝121cは、回路層12Bの中心を通る
図8の縦方向に沿って延びる直線状であり,パターン分割溝121dは、回路層12Bの中心を通る
図8の横方向に沿って延びる直線状である。つまり、パターン分割溝121c,121dは回路層12Bの中心で重なる十字状であり、矩形板状の回路層12Bを4つの矩形状の回路パターンに分割している。このパターン分割溝121c,121dの形状は、その延びる方向が異なる以外は、いずれも同じであり、その幅は、例えば、0.8mm~2.0mmに設定されている。また、パターン分割溝121c,121dの両端は、いずれも回路層12の外周端に開放されている。つまり、回路層12Bは、パターン分割溝121c,121dにより、電気的に4つの領域に分断されている。
【0044】
第3実施形態の放熱層13Bのパターン分割溝121cに対応する位置には、
図9に示すように、パターン分割溝121cに沿う放熱層貫通溝131e,131fが形成され、パターン分割溝121dに対応する位置には、パターン分割溝121dに沿う放熱層貫通溝131g,131fが形成されている。また、これら放熱層貫通溝131e,131fのそれぞれの両側、及び放熱層貫通溝131g,131hのそれぞれの両側に位置する各領域を結合する1つの結合部132cが形成されている。
【0045】
これら放熱層貫通溝131e,131fは、
図9の縦方向に延びており、矩形板状の放熱層13Bを2つの領域に分断するように設けられ、その中央に結合部132cが設けられている。また、放熱層貫通溝131g,131hは、
図9の横方向に延びており、放熱層13Bを2つの領域に分断するように設けられ、その中央に結合部132cが設けられている。これら放熱層貫通溝131e,131f,131g,131hの形状は、その延びる方向が異なる以外は、いずれも同じであり、例えば、その幅w1が0.8mm~2.0mmに設定されている。
なお、本実施形態では、幅w1は、パターン分割溝121c,121dと同じに設定されている。また、放熱層貫通溝131e,131f,131g,131hの結合部132cとは反対側の端部は、いずれも放熱層13Bの外周端に開放されている。
【0046】
結合部132cは、放熱層貫通溝131e,131fのそれぞれの両側に位置する各領域、及び放熱層貫通溝131g,131hのそれぞれの両側に位置する各領域を結合している。具体的には、結合部132cは、放熱層13の中央に位置し、放熱層貫通溝131e,131fの
図9における左側に位置する領域と、
図9における右側に位置する領域とを結合するとともに、放熱層貫通溝131g,131hの
図9における上側に位置する領域と下側に位置する領域とを結合している。つまり、結合部132cが設けられることにより、放熱層13Bは、1枚板状(1ピース)とされている。
【0047】
この結合部132cのパターン分割溝121cに沿う方向の距離L2と、パターン分割溝121dに沿う方向の距離L3とは、同じであり、例えば、0.8mm~8.0mmに設定されている。
なお、結合部132cの距離L2,L3は、放熱層貫通溝131e,131f,131g,131hの幅w1を超え、かつ、幅w1の4.0倍以下であることが好ましい。
【0048】
本実施形態においても、放熱層13Bの回路層12Bのパターン分割溝121c,121dに対応する位置に放熱層貫通溝131e,131g,131g,131hが形成されているので、絶縁回路基板10の反りを抑制できる。また、結合部132cが放熱層貫通溝131e,131g,131g,131hの両側に位置する各領域を結合しているので、放熱層を1枚板の状態で維持でき、その取扱いを容易にできる。さらに、放熱層貫通溝131e,131g,131g,131hの結合部132cとは反対側の端部が放熱層13Bの外周端に開放されているので、仮止め材の残渣が放熱層貫通溝131e,131g,131g,131h内に残ることを抑制できる。
【0049】
第4実施形態の回路層12Cは、
図10に示すように、1本のパターン分割溝121eにより、複数(2つ)の回路パターンに分割されている。このパターン分割溝121eは、回路層12Cの
図10における右側の中央部分を抉るように延びる形状、いわゆるC字状に形成されている。つまり、パターン分割溝121eは、回路層12Cの
図10における右側端から左方向に延び、その先端部から
図10の下方に向けて延び、その先端部から
図10の右方向に延びる形状であり、その両端部は、回路層12Cの外周端に開放されている。つまり、回路層12Cは、パターン分割溝121eにより、電気的に2つの領域に分断されている。なお、パターン分割溝121eの幅は、例えば、0.8mm~2.0mmに設定されている。
【0050】
第4実施形態の放熱層13Cのパターン分割溝121eに対応する位置には、
図11に示すように、パターン分割溝121eに沿う放熱層貫通溝131i,131jと、放熱層貫通溝131i,131jのそれぞれの両側に位置する各領域を結合する結合部132eとが形成されている。
【0051】
この放熱層貫通溝131iは、
図11に示すように、放熱層13Cの
図11における右側端上方から左方向に延び、その先端部が
図11の下方に屈曲する形状である。また、放熱層貫通溝131jは、放熱層13Cの
図11における右側端下方から左方向に延び、その先端部が
図11の上方に屈曲する形状である。これら放熱層貫通溝131i,131jは、矩形板状の放熱層13Cの
図11における右側の中央部分を分断するように設けられ、それぞれの屈曲した先端が結合部132eに接続されている。また、放熱層貫通溝131c,131dの結合部132eとは反対側の端部は、いずれも放熱層13Cの外周端に開放されている。この放熱層貫通溝131iは、放熱層貫通溝131jを反転させた形状であり、これら放熱層貫通溝131i,131jの幅w1は、例えば、0.8mm~2.0mmに設定されている。
なお、本実施形態では、幅w1は、パターン分割溝121eと同じに設定されている。
【0052】
結合部132eは、放熱層貫通溝131i,131jのそれぞれの両側に位置する各領域を結合している。具体的には、結合部132eは、放熱層貫通溝131i,131jにより囲まれる領域とその外側に位置する領域とを結合している。つまり、結合部132eが設けられることにより、放熱層13Cは、1枚板状(1ピース)とされている。
この結合部132eのパターン分割溝121e沿う方向の距離L4は、例えば、0.8mm~8.0mmに設定されている。
なお、結合部132eの距離L4は、放熱層貫通溝131i,131jの幅w1を超え、かつ、幅w1の4.0倍以下であることが好ましい。
【0053】
本実施形態においても、放熱層13Cの回路層12Cのパターン分割溝121eに対応する位置に放熱層貫通溝131i,131jが形成されているので、絶縁回路基板10の反りを抑制できる。また、結合部132eが放熱層貫通溝131i,131jの両側に位置する各領域を結合しているので、放熱層を1枚板の状態で維持でき、その取扱いを容易にできる。さらに、放熱層貫通溝131i,131jの結合部132eとは反対側の端部が放熱層13Cの外周端に開放されているので、仮止め材の残渣が放熱層貫通溝131i,131j内に残ることを抑制できる。
【0054】
第5実施形態の回路層12Dは、
図12に示すように、1本のパターン分割溝121fにより、複数(2つ)の回路パターンに分割されている。このパターン分割溝121fは、回路層12Cの
図12における左側端から右方向に延び、その先端部から
図12の上方に向けて延び、その先端部から
図12の右方向に延びる形状であり、その両端部は、回路層12Dの外周端に開放されている。つまり、回路層12Dは、パターン分割溝121fにより、電気的に2つの領域に分断されている。なお、パターン分割溝121fの幅は、例えば、0.8mm~2.0mmに設定されている。
【0055】
第5実施形態の放熱層13Dのパターン分割溝121fに対応する位置には、
図13に示すように、パターン分割溝121fに沿う放熱層貫通溝131k,131mと、放熱層貫通溝131k,131mのそれぞれの両側に位置する各領域を結合する結合部132fとが形成されている。
【0056】
この放熱層貫通溝131kは、
図13に示すように、放熱層13Dの
図13における右側端上方から左方向に延び、その先端部が
図13の下方に屈曲する形状である。また、放熱層貫通溝131mは、放熱層13Dの
図13における左側端下方から右方向に延び、その先端部が
図13の上方に屈曲する形状である。これら放熱層貫通溝131k,131mは、矩形板状の放熱層13Dを上側領域及び下側領域に分断するように設けられ、それぞれの屈曲した先端が結合部132fに接続されている。また、放熱層貫通溝131k,131mの結合部132fとは反対側の端部は、いずれも放熱層13Dの外周端に開放されている。これら放熱層貫通溝131k,131mは、同形状であり、これら放熱層貫通溝131k,131mの幅w1は、例えば、0.8mm~2.0mmに設定されている。
なお、本実施形態では、幅w1は、パターン分割溝121fと同じに設定されている。
【0057】
結合部132fは、放熱層貫通溝131k,131mのそれぞれの両側に位置する各領域を結合している。具体的には、結合部132fは、放熱層貫通溝131k,131mの上側に位置する領域と下側に位置する領域とを結合している。つまり、結合部132fが設けられることにより、放熱層13Dは、1枚板状(1ピース)とされている。
この結合部132fのパターン分割溝121fに沿う方向の距離L5は、例えば、0.8mm~8.0mmに設定されている。
なお、結合部132fの距離L5は、放熱層貫通溝131k,131mの幅w1を超え、かつ、幅w1の4.0倍以下であることが好ましい。
【0058】
本実施形態においても、放熱層13Dの回路層12Dのパターン分割溝121fに対応する位置に放熱層貫通溝131k,131mが形成されるとともに、これらの端部が放熱層13Dの外周端に開放されているので、絶縁回路基板10の反りを抑制できるとともに、仮止め材の残渣が放熱層貫通溝131k,131m内に残ることを抑制できる。さらに、結合部132fが放熱層貫通溝131k,131mの両側に位置する各領域を結合しているので、放熱層を1枚板の状態で維持でき、その取扱いを容易にできる。
【0059】
第6実施形態の回路層は、第5実施形態の回路層12Dと同一である。また、第6実施形態の放熱層13Eのパターン分割溝121fに対応する位置には、
図14に示すように、パターン分割溝121fに沿う1つの放熱層貫通溝131nと、放熱層貫通溝131nの両側に位置する各領域を結合する結合部132gとが形成されている。
【0060】
この放熱層貫通溝131nは、
図14に示すように、放熱層13Eの
図14における左側端上方から右方向に延び、その先端部が
図14の下方に屈曲して下方に延び、その先端部が
図14の左方向に延びる形状である。つまり、放熱層貫通溝131nは、パターン分割溝121dの左側端部が閉塞された形状である。この放熱層貫通溝131nは、矩形板状の放熱層13Eを上側領域及び下側領域に分断するように設けられ、先端が結合部132gに接続されている。また、放熱層貫通溝131nの結合部132gとは反対側の端部は、放熱層13Eの外周端に開放されている。この放熱層貫通溝131nの幅w1は、例えば、0.8mm~2.0mmに設定されている。
なお、本実施形態では、幅w1は、パターン分割溝121fと同じに設定されている。
【0061】
結合部132gは、放熱層貫通溝131nの両側に位置する各領域を結合している。具体的には、結合部132gは、放熱層貫通溝131nの上側に位置する領域と下側に位置する領域とを結合している。つまり、結合部132gが設けられることにより、放熱層13Eは、1枚板状(1ピース)とされている。
この結合部132gの放熱層貫通溝131nに沿う方向の距離L6は、例えば、0.8mm~8.0mmに設定されている。
なお、結合部132gの距離L6は、放熱層貫通溝131nの幅w1を超え、かつ、幅w1の4.0倍以下であることが好ましい。
【0062】
本実施形態においても、放熱層13Eの回路層12Dのパターン分割溝121fに対応する位置に放熱層貫通溝131nが形成されているので、絶縁回路基板10の反りを抑制できる。また、結合部132gが放熱層貫通溝131nの両側に位置する各領域を結合しているので、放熱層を1枚板の状態で維持でき、その取扱いを容易にできる。さらに、放熱層貫通溝131nの結合部132gとは反対側の端部が放熱層13Eの外周端に開放されているので、仮止め材の残渣が放熱層貫通溝131n内に残ることを抑制できる。なお、本実施形態では、放熱層貫通溝131gの長さが大きくなるものの、真空雰囲気下においてセラミックス基板11と回路層12D及び放熱層13Eとが接合されるので、仮止め材の残渣が残ることはない。
【0063】
その他、細部構成は実施形態の構成のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、ヒートシンク20は、アルミニウム合金からなることとしたが、これに限らず、例えば、AlSiCからなる板材により形成されてもよい。このAlSiCは、強化材である炭化ケイ素(SiC)に、アルミニウム(Al)を高圧含浸させたものである。このAlSiCは、アルミニウムと炭化珪素との両方の特性を兼ね備えており、ヒートシンクとして良好な熱伝導性を有するとともに、熱膨張係数が低く、絶縁回路基板10に接合されることにより、熱伸縮が絶縁回路基板10のセラミックス基板11と均衡して反り等の発生を抑制することができる。また、ヒートシンク20は備えていなくてもよい。
【実施例】
【0064】
[第1実施例]
本実施例では、上述した実施形態の通り、板厚0.32mm、平面サイズが40mm×60mmの窒化珪素(Si3N4)からなるセラミックス基板の一方の面に、板厚0.4mm、パターン分割溝の面積を含む平面サイズが39.5mm×55.5mm、表1に示す形状の4Nアルミニウム板を接合するとともに、他方の面に板厚0.4mm、放熱層分割溝の面積を含む平面サイズが39.5mm×55.5mm、表1に示す4つの形状のそれぞれの4Nアルミニウム板を接合した。そして、これらそれぞれの4Nアルミニウム板のセラミックス基板とは反対側の面に仮止め材(ポリメタクリル酸メチルをテルピネオールに濃度20wt%となるよう溶解させた液体)を介して銅板(厚さ2.0mm、形状はそれぞれのアルミニウムと同じ)を積層し、積層体を形成した。そして、この積層体を加圧板により挟持して、積層方向に加圧した状態で加熱し、4Nアルミニウム板と銅板とを固相拡散接合した。なお、このときの接合条件は、真空雰囲気下で、積層方向の加圧力が1.2MPaで、540℃の加熱温度に60分保持することとした。これにより、No.11~No.14の絶縁回路基板を製造した。
【0065】
また、各試料No.11~No.14における回路層の形状は、表1に示すように、表1の縦方向に延びる2本のパターン分割溝が形成されている形状(上記第2実施形態の回路層12Aと同形状)のものを用いた。この回路層におけるパターン分割溝の幅は、1.5mmとした。
試料No.11では、放熱層(放熱層用金属板)の形状は、矩形板状とした。また、試料No.12では、回路層と同形状の放熱層を用いた。さらに、試料No.13では、回路層のパターン分割溝に対応する位置に2本の放熱層貫通溝が形成され、その両端に結合部が形成された放熱層を用いた。この放熱層における放熱層貫通溝の幅は、2.0mm(パターン分割溝の幅の1.3倍)とした。また、放熱層用貫通溝のそれぞれの両端部に設けられた結合部のパターン分割溝に沿う方向の長さは、それぞれ2.0mmとした。つまり、試料No.13の放熱層として、放熱層貫通溝の両端部が放熱層の外周縁に開放されていないものを用いた。また、試料No.14における放熱層用金属板の形状は、回路層のパターン分割溝のそれぞれに対応する位置に2本(計4本)の放熱層貫通溝が形成され、2本の放熱層貫通溝の間に結合部が形成された放熱層を用いた。この放熱層における放熱層貫通溝の結合部とは反対側の端部は、放熱層の外周縁に開放された形状とし、その幅は、2.0mm(パターン分割溝の幅の1.3倍)とした。また、結合部のパターン分割溝に沿う方向の長さは、それぞれ2.0mmとした。すなわち、試料No.14における放熱層の形状は、上記第2実施形態の放熱層13Aと同形状とした。
このような各試料No.11~No.14について、反り、有機残渣の有無及び放熱層(放熱層用金属板)のピース数について評価した。結果は、表1に示すとおりである。
【0066】
(反りの評価)
各試料No.11~No.14の反りについては、絶縁回路基板の裏面側(放熱層側)の平面度を算出することにより評価した。具体的には、akrometrix社製PS200により、各試料No.11~No.14の絶縁回路基板の裏面側(放熱層側)から裏面全体の平面度(平行した2枚の板で測定平面を挟んだ時に、その板間の距離が最小となるときの板間距離)を測定した。この測定により、No.11の平面度を基準として、30%以上平面度が小さくなっていた場合を良好「A」、0%を超えて30%未満平面度が小さくなっていた場合を可「B」と評価した。
【0067】
(有機残渣の評価)
各試料No.11~No.14の有機残渣の評価については、目視にて判断した。具体的には、放熱層全体を観察し、有機残渣が残っていない場合は良好「A」と評価し、それ以外を、不可「B」と評価した。なお、有機残渣は、茶色もしくは黒色の染みとして観察される。
【0068】
(ピース数(取扱い性)の評価)
各試料No.11~No.14のピース数は、放熱層を構成するピースの数を示している。このピースの数が「1」である場合、放熱層(放熱層用金属板)が1枚板の状態であることを示しており、ピースの数が「2」以上である場合、放熱層が複数のピースに分断されていることを示している。例えば、ピース数が「3」である場合、放熱層(放熱層用金属板)が3つのピースに分断されていることを示している。
【0069】
【0070】
表1に示すように、試料No.14は、放熱層のパターン分割溝に対応する位置にパターン分割溝に沿う放熱層貫通溝と、放熱層貫通溝の両側に位置する各領域を結合する結合部と、が形成され、放熱層貫通溝の外側端部が放熱層の外周端に開放されていたので、反りの評価が可「B」、有機残渣の評価が良好「A」であり、放熱層のピース数も1であることからその取扱い性も良好であった。
一方、試料No.11の放熱層は、ピース数が1であることから取り扱い性は高いものの、放熱層貫通溝が設けられていないので、反りを解消できなかった。また、試料No.12の放熱層は、放熱層貫通溝がパターン分割溝と同形状であったため、反りの評価及び有機残差の評価が良好「A」であったものの、放熱層のピース数が3と多いことから、その取扱い性が低かった。さらに、試料No.13の放熱層は、反りの評価が可「B」であり、ピース数が1であることから取り扱い性に優れたものの、放熱層貫通溝の端部が放熱層の外周縁に開放されていないことから、接合時に仮止め材を適切に放熱層の外側に排出できず、有機残渣の評価が不可「B」であった。
【0071】
[第2実施例]
本実施例では、回路層と放熱層を表2の通りとした以外は、第1実施例と同様とした。
なお、各試料No.21~No.24における回路層の形状は、表2に示すように、表2の縦方向に延びる1本のパターン分割溝と表2の横方向に延びる1本のパターン分割溝とが形成されている形状(上記第3実施形態の回路層12Bと同形状)のものを用いた。この回路層におけるパターン分割溝の幅は、1.4mmとした。
試料No.21では、放熱層(放熱層用金属板)の形状は、矩形板状とした。また、試料No.22では、回路層と同形状の放熱層を用いた。さらに、試料No.23では、回路層のパターン分割溝に対応する位置に中心で交差する2本の放熱層貫通溝が形成され、その両端に結合部が形成された放熱層を用いた。この放熱層における放熱層貫通溝の幅は、2.0mm(パターン分割溝の幅の1.3倍)とした。また、放熱層用貫通溝のそれぞれの両端部に設けられた結合部のパターン分割溝に沿う方向の長さは、それぞれ2.0mmとした。つまり、試料No.23の放熱層として、放熱層貫通溝の両端部が放熱層の外周縁に開放されていないものを用いた。また、試料No.24における放熱層用金属板の形状は、回路層のパターン分割溝に対応する位置に4本放熱層貫通溝が形成され、2本の放熱層貫通溝の間に結合部が形成された放熱層を用いた。この放熱層における放熱層貫通溝の結合部とは反対側の端部は、放熱層の外周縁に開放された形状とし、その幅は、2.0mm(パターン分割溝の幅の1.3倍)とした。また、結合部のパターン分割溝に沿う方向の長さは、それぞれ2.0mmとした。すなわち、試料No.24における放熱層の形状は、上記第3実施形態の放熱層13Bと同形状とした。
このような各試料No.21~No.24について、上記第1実施例で示した方法と同様の方法で、反り、有機残渣の有無及び放熱層(放熱層用金属板)のピース数について評価した。結果は、表2に示すとおりである。
【0072】
【0073】
表2に示すように、試料No.24は、放熱層のパターン分割溝に対応する位置にパターン分割溝に沿う放熱層貫通溝と、放熱層貫通溝の両側に位置する各領域を結合する結合部と、が形成され、放熱層貫通溝の外側端部が放熱層の外周端に開放されているので、反りの評価が可「B」、有機残渣の評価が良好「A」であり、放熱層のピース数も1であることからその取扱い性も良好であった。
一方、試料No.21の放熱層は、ピース数が1であることから取り扱い性は高いものの、放熱層貫通溝が設けられていないので、反りを解消できなかった。また、試料No.22の放熱層は、放熱層貫通溝がパターン分割溝と同形状であったため、反りの評価及び有機残差の評価が良好「A」であったものの、放熱層のピース数が4と多いことから、その取扱い性が低かった。さらに、試料No.23の放熱層は、反りの評価が可「B」であり、ピース数が1であることから取り扱い性に優れたものの、放熱層貫通溝の端部が放熱層の外周縁に開放されていないことから、接合時に仮止め材を適切に放熱層の外側に排出できず、有機残渣の評価が不可「B」であった。
【0074】
[第3実施例]
本実施例では、回路層と放熱層を表3の通りとした以外は、第1実施例と同様とした。
なお、各試料No.31~No.34における回路層の形状は、表3に示すように、略C字状の1本のパターン分割溝が形成されている形状(上記第4実施形態の回路層12Cと同形状)のものを用いた。この回路層におけるパターン分割溝の幅は、1.5mmとした。
試料No.31では、放熱層(放熱層用金属板)の形状は、矩形板状とした。また、試料No.32では、回路層と同形状の放熱層を用いた。さらに、試料No.33では、回路層のパターン分割溝に対応する位置に略C字状の1本の放熱層貫通溝が形成され、その両端に結合部が形成された放熱層を用いた。この放熱層における放熱層貫通溝の幅は、2.0mm(パターン分割溝の幅の1.3倍)とした。また、放熱層用貫通溝のそれぞれの両端部に設けられた結合部のパターン分割溝に沿う方向の長さは、それぞれ2.0mmとした。つまり、試料No.33の放熱層として、放熱層貫通溝の両端部が放熱層の外周縁に開放されていないものを用いた。また、試料No.34における放熱層用金属板の形状は、回路層のパターン分割溝に対応する位置に2本の放熱層貫通溝が形成され、2本の放熱層貫通溝の間に結合部が形成された放熱層を用いた。この放熱層における放熱層貫通溝の結合部とは反対側の端部は、放熱層の外周縁に開放された形状とし、その幅は、2.0mm(パターン分割溝の幅の1.3倍)とした。また、結合部のパターン分割溝に沿う方向の長さは、それぞれ2.0mmとした。すなわち、試料No.34における放熱層の形状は、上記第4実施形態の放熱層13Cと同形状とした。
このような各試料No.31~No.34について、上記第1実施例で示した方法と同様の方法で、反り、有機残渣の有無及び放熱層(放熱層用金属板)のピース数について評価した。結果は、表3に示すとおりである。
【0075】
【0076】
表3に示すように、試料No.34は、放熱層のパターン分割溝に対応する位置にパターン分割溝に沿う放熱層貫通溝と、放熱層貫通溝の両側に位置する各領域を結合する結合部と、が形成され、放熱層貫通溝の外側端部が放熱層の外周端に開放されているので、反りの評価が可「B」、有機残渣の評価が可「A」であり、放熱層のピース数も1であることからその取扱い性も良好であった。
一方、試料No.31の放熱層は、ピース数が1であることから取り扱い性は高いものの、放熱層貫通溝が設けられていないので、反りを解消できなかった。また、試料No.32の放熱層は、放熱層貫通溝がパターン分割溝と同形状であったため、反りの評価及び有機残差の評価が良好「A」であったものの、放熱層のピース数が2と多いことから、その取扱い性が低かった。さらに、試料No.33の放熱層は、反りの評価が可「B」であり、ピース数が1であることから取り扱い性に優れたものの、放熱層貫通溝の端部が放熱層の外周縁に開放されていないことから、接合時に仮止め材を適切に放熱層の外側に排出できず、有機残渣の評価が不可「B」であった。
【0077】
[第4実施例]
本実施例では、回路層と放熱層を表4の通りとした以外は、第1実施例と同様とした。
なお、各試料No.41~No.44における回路層の形状は、表4に示すように、1本のパターン分割溝が形成されている形状(上記第5実施形態の回路層12Dと同形状)のものを用いた。この回路層におけるパターン分割溝の幅は、1.5mmとした。
試料No.41では、放熱層(放熱層用金属板)の形状は、矩形板状とした。また、試料No.42では、回路層と同形状の放熱層を用いた。さらに、試料No.43では、回路層のパターン分割溝に対応する位置に1本の放熱層貫通溝が形成され、その両端に結合部が形成された放熱層を用いた。この放熱層における放熱層貫通溝の幅は、2.0mm(パターン分割溝の幅の1.3倍)とした。また、放熱層用貫通溝のそれぞれの両端部に設けられた結合部のパターン分割溝に沿う方向の長さは、それぞれ2.0mmとした。つまり、試料No.43の放熱層として、放熱層貫通溝の両端部が放熱層の外周縁に開放されていないものを用いた。また、試料No.44における放熱層用金属板の形状は、回路層のパターン分割溝に対応する位置に2本の放熱層貫通溝が形成され、2本の放熱層貫通溝の間に結合部が形成された放熱層を用いた。この放熱層における放熱層貫通溝の結合部とは反対側の端部は、放熱層の外周縁に開放された形状とし、その幅は、2.0mm(パターン分割溝の幅の1.3倍)とした。また、結合部のパターン分割溝に沿う方向の長さは、それぞれ2.0mmとした。すなわち、試料No.44における放熱層の形状は、上記第5実施形態の放熱層13Dと同形状とした。
このような各試料No.41~No.44について、上記第1実施例で示した方法と同様の方法で、反り、有機残渣の有無及び放熱層(放熱層用金属板)のピース数について評価した。結果は、表4に示すとおりである。
【0078】
【0079】
表4に示すように、試料No.44は、放熱層のパターン分割溝に対応する位置にパターン分割溝に沿う放熱層貫通溝と、放熱層貫通溝の両側に位置する各領域を結合する結合部と、が形成され、放熱層貫通溝の外側端部が放熱層の外周端に開放されているので、反りの評価が可「B」、有機残渣の評価が良好「A」であり、放熱層のピース数も1であることからその取扱い性も良好であった。
一方、試料No.41の放熱層は、ピース数が1であることから取り扱い性は高いものの、放熱層貫通溝が設けられていないので、反りを解消できなかった。また、試料No.42の放熱層は、放熱層貫通溝がパターン分割溝と同形状であったため、反りの評価及び有機残差の評価が良好「A」であったものの、放熱層のピース数が2と多いことから、その取扱い性が低かった。さらに、試料No.43の放熱層は、反りの評価が可「B」であり、ピース数が1であることから取り扱い性に優れたものの、放熱層貫通溝の端部が放熱層の外周縁に開放されていないことから、接合時に仮止め材を適切に放熱層の外側に排出できず、有機残渣の評価が不可「B」であった。
【符号の説明】
【0080】
1,1A…ヒートシンク付絶縁回路基板
10,10A…絶縁回路基板
100,100A…パワーモジュール
11…セラミックス基板
12,12A,12B,12C,12D…回路層
121a,121b,121c,121d,121e,121f…パターン分割溝
122,123,124…回路パターン
13,13A,13B,13C,13D,13E…放熱層
131a,131b,131c,131d,131f,131g,131h,131i,131j,131k,131m,131n…放熱層貫通溝
132a,132b,132c,132e,132f,132g…結合部
14…第1回路層
140…第1回路層用金属板
15…第2回路層
150…第2回路層用金属板
16…第1放熱層
160…第1放熱層用金属板
17…第2放熱層
170…第2放熱層用金属板
18…ろう材箔
20…ヒートシンク
21…締結穴
30…半導体素子
31,32…加圧板
50…冷却器