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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】リサイクル樹脂組成物及びブロー容器
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20240123BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L23/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019225506
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021095442
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】日野 利朋
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056360(JP,A)
【文献】特表2017-538003(JP,A)
【文献】特開2014-208817(JP,A)
【文献】特開2017-179304(JP,A)
【文献】特開2017-179256(JP,A)
【文献】特開平10-156830(JP,A)
【文献】特開2010-254733(JP,A)
【文献】特開2001-253426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルポリオレフィン樹脂及びメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物を混合してリサイクル樹脂組成物を製造する方法であって、
前記リサイクル樹脂組成物が下記の特性(1-1)~(1-4)を満足する前記リサイクルポリオレフィン樹脂1~95質量%及び下記の特性(2-1)~(2-4)を満足する前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物99~5質量%からなり、下記の特性(i)~(iii)を満足し、前記リサイクルポリオレフィン樹脂が含有する無水マレイン酸含有化合物に起因するカルボニル基の含有量に応じて下記の特性(iv)を満足するように制御するリサイクル樹脂組成物の製造方法
特性(1-1):前記リサイクルポリオレフィン樹脂は、密度が0.940~0.970g/cmである。
特性(1-2):前記リサイクルポリオレフィン樹脂は、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~10g/10分であり、温度190℃、荷重21.6Kgで測定されるメルトフローレート(HLMFR)が10~100g/10分である。
特性(1-3):前記リサイクルポリオレフィン樹脂は、MFRに対するHLMFRの割合(HLMFR/MFR)が40~140である。
特性(1-4):前記リサイクルポリオレフィン樹脂は、耐環境応力亀裂性(ボトルESCR)が100時間未満である。
特性(2-1):前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、密度が0.940~0.970g/cmである。
特性(2-2):前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、MFRが0.1~10g/10分であり、HLMFRが10~100g/10分である。
特性(2-3):前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、HLMFR/MFRが40~140である。
特性(2-4):前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、引張衝撃強度が300kJ/m以上である。
特性(i):密度が0.940~0.970g/cmである。
特性(ii):MFRが0.1~10g/10分であり、HLMFRが10~100g/10分である。
特性(iii):HLMFR/MFRが40~140である。
特性(iv):無水マレイン酸含有化合物に起因するカルボニル基の含有量が2.5質量%未満である。
【請求項2】
前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分を10質量%以上40質量%以下、クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分を5質量%以上50質量%以下、及びチーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分を40質量%以上85質量%以下含有する請求項1に記載のリサイクル樹脂組成物の製造方法
【請求項3】
前記メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分は、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が0.2g/10分以上、5g/10分未満であり、密度が0.915g/cm以上、0.945g/cm以下であるポリエチレンである請求項2に記載のリサイクル樹脂組成物の製造方法
【請求項4】
前記クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分は、HLMFRが2g/10分以上、20g/10分未満であり、密度が0.945g/cm超過、0.965g/cm以下であるポリエチレンである請求項2又は3に記載のリサイクル樹脂組成物の製造方法
【請求項5】
前記チーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分は、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が10g/10分以上、200g/10分以下であり、密度が0.960g/cm以上、0.980g/cm以下であるポリエチレンである請求項2~4のいずれか一項に記載のリサイクル樹脂組成物の製造方法
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法により得られるリサイクル樹脂組成物を含むブロー容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー容器用のリサイクル樹脂組成物及びブロー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー容器の分野において、各種の熱可塑性樹脂が使用されているが、中でもポリエチレンが優れた機械特性、熱特性及び耐薬品性等を示すことから種々検討され、用いられている。
【0003】
近年、プラスチックごみ(廃プラ)が国際的に問題となるなか、プラスチック使用量の削減や新素材導入が検討されている。企業の中には、原料そのものを見直して、新たなリサイクル体制を築こうとする動きが見られる。このような状況下、合成樹脂を使用したブロー容器の分野においても、リサイクルされた材料を製品に適用する検討が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1に示されるように、ポリオレフィン系再生樹脂及びメタロセン系触媒を用いて製造された特定性状を備えたエチレン・炭素数3~18のα-オレフィン共重合体からなることを特徴とするポリオレフィン系再生樹脂組成物が開示されている。しかしながら、当該ポリオレフィン系再生樹脂組成物は、メタロセン系触媒を用いて製造されたエチレン・炭素数3~18のα-オレフィン共重合体の密度が低いため、十分な剛性を発揮することが難しく、ブロー容器としての適性が不十分である。
【0005】
また、特許文献2に示されるように、[A](1)炭素数3乃至6のα-オレフィンから導かれる単位を10モル%未満の量で含有していてもよく、(2)密度が0.92乃至0.98g/cmであり、(3)極限粘度[η]が0.4乃至10dl/gであり、(4)特定の構造式で示されるメタロセン化合物を含む触媒を用いて製造されるエチレン系重合体からなることを特徴とする高密度ポリエチレン用改質材及び[B]当該[A]以外のブロー成形用高密度ポリエチレンからなるブロー成形用樹脂組成物が開示されている。しかしながら、当該改質材は物性範囲が広範であるため、リサイクルされた材料を改質することによってボトルESCR(耐久性)に優れたブロー容器を提供するには十分とは言えない。
【0006】
一方、ポリエチレン樹脂に関しては、例えば、特許文献3に示されるように、特定のポリエチレン成分(A)を10~40質量%、特定のポリエチレン成分(B)を5~50質量%、特定のポリエチレン成分(C)を40~85質量%含有し、特性(1):MFRが0.1~1g/10分である、特性(2):HLMFRが10~50g/10分である、特性(3):HLMFR/MFRが50~140である、特性(4):密度が0.940~0.965g/cmである、特性(5):温度170℃、伸長歪速度0.1(単位:1/秒)で測定される伸長粘度η(t)(単位:Pa・秒)と伸長時間t(単位:秒)の両対数プロットにおいて、歪硬化に起因する伸長粘度の変曲点が観測される、といった特性を満足するポリエチレン樹脂組成物が開示され、中空成形、射出成形、インフレーション成形、押出成形等の各種成形法により成形体を製造できることが開示されているが、リサイクル材分野への適用について何ら示唆されていない。
【0007】
また、例えば、特許文献4に示されるように、特定性状の成分(A)及び成分(B)が、メタロセン触媒により重合されたエチレン・α-オレフィン共重合体であり、この順で多段重合してなり、特性(i)密度、(ii)HLMFR等の特定の性状を満足することを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物及び改質材が開示されている。しかしながら、特定のリサイクル材及びその用途分野への適用について何ら示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-127676号公報
【文献】特開平9-095571号公報
【文献】特開2017-179256号公報
【文献】特許第6281371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況において、リサイクルされた材料をブロー製品に適用し、プラスチック使用量の削減を図り、プラスチックごみ(廃プラ)の問題を解決することが望まれている。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点等に鑑み、ポリエチレン系のブロー容器の成形において、リサイクルされた材料をブロー製品に適用し、プラスチック使用量の削減を図り、プラスチックごみ(廃プラ)の問題を解決することにある。
とりわけ、ブロー容器としての適性が十分であり、リサイクルされた材料を改質することによってボトルESCR(耐久性)に優れたブロー容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ブロー容器において特定性状のリサイクルポリオレフィン樹脂及び特定性状のポリエチレン樹脂を用いることにより、リサイクルされた材料をブロー製品に適用し、プラスチック使用量の削減を図り、プラスチックごみ(廃プラ)の問題を解決できることを見出し、かつ、ブロー容器としての適性が十分であり、リサイクルされた材料を改質することによってボトルESCR(耐久性)に優れたブロー容器を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の第1の発明によれば、下記の特性(1-1)~(1-4)を満足するリサイクルポリオレフィン樹脂1~95質量%及び下記の特性(2-1)~(2-4)を満足するメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物99~5質量%からなり、下記の特性(i)~(iv)を満足するリサイクル樹脂組成物が提供される。
特性(1-1):前記リサイクルポリオレフィン樹脂は、密度が0.940~0.970g/cmである。
特性(1-2):前記リサイクルポリオレフィン樹脂は、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~10g/10分であり、温度190℃、荷重21.6Kgで測定されるメルトフローレート(HLMFR)が10~100g/10分である。
特性(1-3):前記リサイクルポリオレフィン樹脂は、MFRに対するHLMFRの割合(HLMFR/MFR)が40~140である。
特性(1-4):前記リサイクルポリオレフィン樹脂は、耐環境応力亀裂性(ボトルESCR)が100時間未満である。
特性(2-1):前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、密度が0.940~0.970g/cmである。
特性(2-2):前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、MFRが0.1~10g/10分であり、HLMFRが10~100g/10分である。
特性(2-3):前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、HLMFR/MFRが40~140である。
特性(2-4):前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、引張衝撃強度が300kJ/m以上である。
特性(i):密度が0.940~0.970g/cmである。
特性(ii):MFRが0.1~10g/10分であり、HLMFRが10~100g/10分である。
特性(iii):HLMFR/MFRが40~140である。
特性(iv):無水マレイン酸含有化合物に起因するカルボニル基の含有量が2.5質量%未満である。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、前記リサイクル樹脂組成物において、前記メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分を10質量%以上40質量%以下、クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分を5質量%以上50質量%以下、及びチーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分を40質量%以上85質量%以下含有してもよい。
【0014】
また、本発明の第3の発明によれば、前記リサイクル樹脂組成物において、前記メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分は、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が0.2g/10分以上、5g/10分未満であり、密度が0.915g/cm以上、0.945g/cm以下であるポリエチレンであってもよい。
【0015】
また、本発明の第4の発明によれば、前記リサイクル樹脂組成物において、前記クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分は、HLMFRが2g/10分以上、20g/10分未満であり、密度が0.945g/cm超過、0.965g/cm以下であるポリエチレンであってもよい。
【0016】
また、本発明の第5の発明によれば、前記リサイクル樹脂組成物において、前記チーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分は、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が10g/10分以上、200g/10分以下であり、密度が0.960g/cm以上、0.980g/cm以下であるポリエチレンであってもよい。
【0017】
また、本発明の第6の発明によれば、前記リサイクル樹脂組成物を含むブロー容器が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ポリエチレン系のブロー容器において、リサイクルされた材料をブロー製品に適用し、プラスチック使用量の削減を図り、プラスチックごみ(廃プラ)の問題を解決し、かつ、ブロー容器としての適性が十分であり、リサイクルされた材料を改質することによってボトルESCR(耐久性)及び外観に優れたブロー容器を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、項目毎に、詳細に説明する。
なお、本発明において、ポリエチレン樹脂とは、エチレン単独重合体及びエチレンと後述のオレフィンとの共重合体の総称をいい、エチレン系重合体とも言い換えられる。
また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0020】
1.リサイクルポリオレフィン樹脂
本発明において、リサイクルポリオレフィン樹脂(リサイクル材)とは、成形及び/又は使用の後に回収し再生したポリオレフィン系樹脂を意味する。具体的には、ポリオレフィン系樹脂の成形工程で生じたバリ、不良品、オフ品、副製品等や、製品として成形された後の未使用の又は使用された成形品等を回収し、再び使用できるようにした材料、及びプラスチック再生材料等が挙げられる。
また、本明細書において、プラスチック再生材料とは、JIS Q14021:2000に規定される「製造工程において回収[再生]材料から再加工され、更に最終製品、又は製品へ組み込まれる部品に使用される材料」を意味する。
本発明のリサイクルポリオレフィン樹脂は、エチレンの単独重合体及びエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体からなる群から選ばれる1種又は2種以上のエチレン系重合体を60質量%以上、好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好適には100質量%含まれるものである。
本発明において、リサイクルポリオレフィン樹脂は、通常の分析方法によってエチレンの単独重合体及びエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体が含まれることを確認することができ、例えばラマン散乱スペクトルを測定することによっても識別することができる。
なお、本発明で用いられるリサイクルポリオレフィン樹脂は、市販のものであれば市販する会社が品質管理し品質認定されているものが好ましい。また、プラスチック再生材料の品質管理については、例えば、JIS Q9091:2016に規定される規格に基づく指針を参考とすることができる。リサイクルポリオレフィン樹脂の具体例としては、例えば、三重化成社製HDPE「HA」等が挙げられるが、本発明の特性の要件を満足するものであるならば、特に制限はない。
リサイクルポリオレフィン樹脂は、バージン材に比べて物性が低下していることが多いため、本発明のブロー容器において、その物性低下を最小限に抑制し、バージン材と同程度以上の物性を発現させることができるものであることが重要である。
本発明のリサイクルポリオレフィン樹脂は、下記の特性(1-1)~(1-4)を満足することが重要である。
【0021】
リサイクルポリオレフィン樹脂の特性(1-1)
本発明において、リサイクルポリオレフィン樹脂は、密度が0.940~0.970g/cmであり、好ましくは0.945~0.960g/cmであり、更に好ましくは0.950~0.957g/cmであるものを選定することが重要である。リサイクルポリオレフィン樹脂の密度が0.940g/cm未満であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂の剛性が不足し、かつ結晶化速度が低下し、その結果、成形品の成形サイクルが低下するおそれがある。一方、密度が0.970g/cmを超えた場合には、成形品のボトルESCRが低下するおそれがある。また、密度が上記範囲内であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂と後述するメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物との混ざり性が良好となる。
密度は、JIS K6922-1,2:1997に準拠して測定することができる。
【0022】
リサイクルポリオレフィン樹脂の特性(1-2)
本発明において、リサイクルポリオレフィン樹脂は、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~10g/10分であり、好ましくは0.15~5g/10分であり、更に好ましくは0.2~2g/10分であるものを選定することが重要である。リサイクルポリオレフィン樹脂のMFRが0.1g/10分未満であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂の流動性が低下することにより、成形時における押出機モーター負荷やせん断による樹脂発熱量が増大するおそれや、シャークスキンやメルトフラクチャーなどの流動不安定現象が発生しやすくなるため成形品の外観を損なうおそれがある。一方、このMFRが10g/10分を超えると、成形品の耐衝撃性やボトルESCRが達成できず、成形品の落下衝撃耐性や長期耐久性が低下するおそれがある。また、MFRが上記範囲内であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂と後述するメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物との混ざり性が良好となる。
MFRは、JIS K6922-2:1997に準拠して測定することができる。
【0023】
また、本発明において、リサイクルポリオレフィン樹脂は、温度190℃、荷重21.6Kgで測定されるメルトフローレート(HLMFR)が10~100g/10分であり、好ましくは15~80g/10分であり、更に好ましくは20~50g/10分であるものを選定することが重要である。リサイクルポリオレフィン樹脂のHLMFRが10g/10分未満であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂の流動性が低下することにより、成形時における押出機モーター負荷やせん断による樹脂発熱量が増大するおそれや、シャークスキンやメルトフラクチャーなどの流動不安定現象が発生しやすくなるため成形品の外観を損なうおそれがある。一方、このHLMFRが100g/10分を超えると、成形品の耐衝撃性やボトルESCRが達成できず、成形品の落下衝撃耐性や長期耐久性が低下するおそれがある。また、HLMFRが上記範囲内であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂と後述するメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物との混ざり性が良好となる。
HLMFRは、JIS K6922-2:1997に準拠して測定することができる。
【0024】
リサイクルポリオレフィン樹脂の特性(1-3)
本発明において、リサイクルポリオレフィン樹脂は、MFRに対するHLMFRの割合(HLMFR/MFR)が40~140であり、好ましくは50~110であり、更に好ましくは60~90であるものを選定することが重要である。HLMFR/MFRは、分子量分布との相関が強く、HLMFR/MFRが大きな値をとる場合、分子量分布が広くなり、HLMFR/MFRが小さな値をとる場合、分子量分布が狭くなる。HLMFR/MFRが140を超えるとボトル成形品のピンチオフ強度が低下するおそれがあり、HLMFR/MFRが40未満ではボトル成形品の溶融張力が低下するおそれや樹脂押出時にメルトフラクチャーが発生しやすくなる。また、HLMFR/MFRが上記範囲内であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂と後述するメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物との混ざり性が良好となる。
【0025】
リサイクルポリオレフィン樹脂の特性(1-4)
本発明において、リサイクルポリオレフィン樹脂は、耐環境応力亀裂性(ボトルESCR)が100時間未満である。前記したように、リサイクルポリオレフィン樹脂は、通常、バージン材に比べて物性が低下しており、本発明のリサイクルポリオレフィン樹脂は、耐環境応力亀裂性(ボトルESCR)が下限値で1時間以上、好ましくは10時間以上であり、上限値で100時間未満であるものを対象としている。そして、本発明において、特定のメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物を組み合わせることにより、バージン材を用いて成形した容器と同等以上の耐環境応力亀裂性(ボトルESCR)を発揮することができるものである。
耐環境応力亀裂性(ボトルESCR)は、ブロー成形された内容積760mlの円筒形状容器(ボトル)に、非イオン性界面活性剤(Sigma-Aldrich社製:ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル、イゲパールCO-630)を33質量%に希釈した水溶液190mlを充填し、当該容器と同種の材料の溶融パリソンで当該容器を密栓し、当該密栓をした容器を温度65℃の恒温槽内に保管し、容器が破損するまでの時間を測定することにより求めることができる。この測定を同じ容器10本で行い、10本のうちの5本以上の容器が破損したときの時間をボトルESCR値とする。
【0026】
リサイクルポリオレフィン樹脂の特性(1-5)
本発明において、リサイクルポリオレフィン樹脂は、引張衝撃強度が通常300kJ/m未満であり、概ね130kJ/m以下であるものが多い。リサイクルポリオレフィン樹脂は、通常、バージン材に比べて物性が低下しており、本発明のリサイクルポリオレフィン樹脂は、引張衝撃強度が下限値で10kJ/m以上、好ましくは20kJ/m以上であり、上限値で300kJ/m未満、或いは150kJ/m未満であるものを対象としている。そして、本発明において、特定のメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物を組み合わせることにより、バージン材を用いて成形した容器と同等以上の耐衝撃性を発揮することができるものである。
引張衝撃強度は、JIS K6922-2に準拠して、1.5mmの圧縮成形シートを作成し、ASTM D1822に準拠して、S型ダンベルで打ち抜いた試験片を作成し、23℃、50%RHの条件で測定することができる。
【0027】
リサイクルポリオレフィン樹脂の特性(1-6)
本発明において、リサイクルポリオレフィン樹脂は、添加材の含有量が10質量%以下であることが好ましく、好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。本発明において、添加材とは、通常のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、架橋剤、発泡剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を含み、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を例示することができる。充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等を例示することができる。
本発明において、添加材の含有量が10質量%を超えると、ブロー容器の耐環境応力亀裂性(ボトルESCR)が低下する傾向がある。
本発明において、添加材の種類及び含有量は、通常の分析方法によって分析することができる。
【0028】
リサイクルポリオレフィン樹脂の特性(1-7)
本発明において、リサイクルポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸含有化合物に起因するカルボニル基の含有量が5.0質量%未満であることが好ましく、カルボニル基を含まないことがより好ましい。リサイクルポリオレフィン樹脂に含まれる当該カルボニル基の含有量は、赤外吸収スペクトル分析により測定することができ、1710cm-1及び1790cm-1に吸収ピークが観測されないことが好ましい。無水マレイン酸含有化合物に起因するカルボニル基が存在すると、成形品においてゲル等の発生につながる可能性があり、好ましくない。
リサイクルポリオレフィン樹脂が無水マレイン酸含有化合物に起因するカルボニル基を含まないようにするためには、リサイクルポリオレフィン樹脂がカルボニル基を含まないように品質管理、品質認定されていることが重要である。
【0029】
2.メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物
本発明のメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、2種以上のポリエチレンの混合物であってもよい。なお、本発明のメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、リサイクル材ではなく、通常のバージン材を意味する。即ち、本発明において、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、成形及び/又は使用の後に回収し再生した樹脂でないものを意味し、リサイクル材である場合はその旨を明示する。
本発明のメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、下記の特性(2-1)~(2-4)を満足することが重要である。
【0030】
メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の特性(2-1)
本発明において、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、密度が0.940~0.970g/cmであり、好ましくは0.952~0.960g/cmであり、更に好ましくは0.953~0.958g/cmであるものを選定することが重要である。メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の密度が0.940g/cm未満であれば、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の剛性が不足し、かつ結晶化速度が低下し、その結果、成形品の成形サイクルが低下するおそれがある。一方、密度が0.970g/cmを超えた場合には、成形品のボトルESCRが低下するおそれがある。また、密度が上記範囲内であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂とメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物との混ざり性が良好となる。
密度は、JIS K6922-1,2:1997に準拠して測定することができる。
密度は、ポリエチレン樹脂を構成する成分の重合時のα-オレフィンの量により調整することができ、また、ポリエチレン樹脂を構成する成分の配合割合により調整することができる。
【0031】
メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の特性(2-2)
本発明において、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、MFRが0.1~10g/10分であり、当該MFRの下限は、好ましくは、0.15g/10分以上、0.20g/10分以上、0.25g/10分以上、0.30g/10分以上であり、また、当該MFRの上限は、好ましくは、8g/10分以下、6g/10分以下、4g/10分以下、3g/10分以下であり、1g/10分以下である。
このMFRが0.1g/10分未満であれば、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の流動性が低下することにより、成形時における押出機モーター負荷やせん断による樹脂発熱量が増大するおそれや、シャークスキンやメルトフラクチャーなどの流動不安定現象が発生しやすくなるため成形品の外観を損なうおそれがある。一方、このMFRが10g/10分を超えると、成形品の耐衝撃性やボトルESCRが達成できず、成形品の落下衝撃耐性や長期耐久性が低下するおそれがある。また、MFRが上記範囲内であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂とメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物との混ざり性が良好となる。
MFRは、JIS K6922-2:1997に準拠して測定することができる。
ポリエチレン樹脂のMFRは、ポリエチレン樹脂を構成する成分の重合時のそれぞれの水素量及び温度、並びにポリエチレン樹脂を構成する成分の配合割合により調整することができる。
【0032】
また、本発明において、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、HLMFRが10~100g/10分であり、当該HLMFRの下限は、好ましくは、11g/10分以上、12g/10分以上、13g/10分以上、14g/10分以上であり、また、当該HLMFRの上限は、好ましくは、95g/10分以下、90g/10分以下、85g/10分以下、80g/10分以下である。
このHLMFRが10g/10分未満であれば、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の流動性が低下することにより、成形時における押出機モーター負荷やせん断による樹脂発熱量が増大するおそれや、シャークスキンやメルトフラクチャーなどの流動不安定現象が発生しやすくなるため成形品の外観を損なうおそれがある。一方、このHLMFRが100g/10分を超えると、成形品の耐衝撃性やボトルESCRが達成できず、成形品の落下衝撃耐性や長期耐久性が低下するおそれがある。また、HLMFRが上記範囲内であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂とメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物との混ざり性が良好となる。
HLMFRは、JIS K6922-2:1997に準拠して測定することができる。
ポリエチレン樹脂のHLMFRは、ポリエチレン樹脂を構成する成分の重合時のそれぞれの水素量及び温度、並びにポリエチレン樹脂を構成する成分の配合割合により調整することができる。
【0033】
メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の特性(2-3)
本発明において、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、HLMFR/MFRが40~140であり、当該HLMFR/MFRの下限は、好ましくは、40以上、45以上、50以上、55以上であり、また、当該HLMFR/MFRの上限は、成形品の耐衝撃性の点から、好ましくは、135以下、130以下、125以下である。
HLMFR/MFRは、分子量分布との相関が強く、HLMFR/MFRが大きな値をとる場合、分子量分布が広くなり、HLMFR/MFRが小さな値をとる場合、分子量分布が狭くなる。HLMFR/MFRが140を超えると成形品の耐衝撃性が低下するおそれがあり、HLMFR/MFRが39未満では成形品の溶融張力が低下するおそれや成形品のボトルESCRが低下するおそれがある。また、HLMFR/MFRが上記範囲内であれば、リサイクルポリオレフィン樹脂とメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物との混ざり性が良好となる。
HLMFR/MFRの制御方法は、主に分子量分布の制御方法に準じて行なうことができる。
【0034】
メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の特性(2-4)
本発明において、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、引張衝撃強度が300kJ/m以上、好ましくは305kJ/m以上、更に好ましくは310kJ/m以上である。また、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の引張衝撃強度の上限値は特に限定されないが、概ね800kJ/m以下が通常である。チーグラー系ポリエチレン樹脂単独やクロム系ポリエチレン樹脂単独では、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物のような高い引張衝撃強度を発揮することが難しい。引張衝撃強度が300kJ/m以上である樹脂を使用することにより、リサイクルポリオレフィン樹脂との組成物の引張衝撃強度を高くすることができる。
引張衝撃強度は、JIS K6922-2に準拠して、1.5mmの圧縮成形シートを作成し、ASTM D1822に準拠して、S型ダンベルで打ち抜いた試験片を作成し、23℃、50%RHの条件で測定することができる。
【0035】
メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の特性(2-5)
本発明に用いられるメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物は、前述の特性を満たせば、2種以上のポリエチレンの混合物であってもよく、具体的には、特開2017-179256号公報に記載されたものを用いることができる。当該樹脂組成物としては、メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分、クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分及びチーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分を含む樹脂組成物が好ましく、メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分を10質量%以上40質量%以下、クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分を5質量%以上50質量%以下、及びチーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分を40質量%以上85質量%以下含有する樹脂組成物が好ましく、更に好ましくは、メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分を15質量%以上、35質量%以下、クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分を10質量%以上、40質量%以下、チーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分を45質量%以上、75質量%以下含有する組成物である。更に好ましくは、メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分を20質量%以上、30質量%以下、クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分を10質量%以上、30質量%以下、チーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分を50質量%以上、70質量%以下含有する組成物であることが好ましい。上記のメタロセン系触媒、クロム系触媒及びチーグラー触媒は、通常知られている重合触媒を使用することができ、好ましくは、特開2017-179256号公報に記載された重合触媒が挙げられる。
【0036】
メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分の特性(2-5-1)
当該メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物において、メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分は、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が0.2g/10分以上、5g/10分未満、好ましくは0.3g/10分以上、1.0g/10分以下、更に好ましくは0.4g/10分以上、0.7g/10分以下であることが好ましい。このHLMFRが0.2g/10分未満であれば、最終の樹脂組成物において、HLMFRが規定の範囲内を達成できず、流動性が低下するおそれや、相溶性が低下するため、成形品の外観を損なうおそれがある。一方、このHLMFRが5g/10分以上であれば、最終樹脂組成物において、耐環境応力亀裂性が達成できず、成形品の長期耐久性が低下するおそれがある。HLMFRは、JIS K6922-2:1997に準拠して測定することができる。HLMFRは、主に当該ポリエチレン成分の重合時の水素量及び重合温度により調整することができる。
【0037】
当該メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物において、メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分は、HLMFR/MFRは、好ましくは、30以下、更に好ましくは、25以下、一方、好ましくは、15以上、更に好ましくは、20以上であることが好ましい。HLMFR/MFRは、分子量分布との相関が強く、HLMFR/MFRが大きな値をとる場合、分子量分布は広くなり、HLMFR/MFRが小さな値をとる場合、分子量分布は狭くなる。HLMFR/MFRが35を超えると、長鎖分岐構造による影響が強く表れることを示唆しており、HLMFR/MFRが35以下であれば、各成分の相溶性が良好になり易く、成形体の表面性状が平滑になり易く外観に優れ、成形品の耐衝撃性などの物性の低下を抑制しやすい。一方、下限は、特に限定されないが、好ましくは、耐衝撃性やESCRが求められる理由により、10以上が好ましい。HLMFR/MFRの制御方法は、分子量分布を制御できる触媒や適当な重合条件を採用することにより達成することができる。また、バイモーダル又はマルチモーダルの重合体の場合は、各成分の分子量を調整することにより制御することができる。
【0038】
当該メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物において、メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分は、密度が0.915g/cm以上、0.945g/cm以下、好ましくは0.920g/cm以上、0.935g/cm以下、更に好ましくは0.924g/cm以上、0.930g/cm以下であることが好ましい。密度が0.915g/cm未満であれば、最終の樹脂組成物における密度範囲を達成できず、剛性が不足し、かつ結晶化速度が低下し、その結果、成形サイクルが低下するおそれがある。一方、密度が0.945g/cmを超えた場合には、最終樹脂組成物において耐環境応力亀裂性能が低下するおそれがある。密度は、JIS K6922-1,2:1997に準拠して測定することができる。密度は、主に当該ポリエチレン成分の重合時のα-オレフィンの量により調整することができる。
【0039】
クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分の特性(2-5-2)
当該メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物において、クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分は、HLMFRが2g/10分以上、20g/10分未満、好ましくは3g/10分以上、15g/10分以下、更に好ましくは4g/10分以上、12g/10分以下、特に好ましくは4g/10分以上、10g/10分以下であることが好ましい。このHLMFRが2g/10分未満であれば、分子量が増大し、流動性及び成形性が確保できなくなるおそれがある。また、最終の樹脂組成物において、HLMFRが規定の範囲内を達成できず、流動性が低下するおそれや、ポリエチレン成分が低ひずみ速度域において最も粘度の高い成分となり、ポリエチレン成分が分散不良となり、成形品の外観を損なうおそれがある。一方、このHLMFRが20g/10分以上であれば、低分子量の成分量が増加する影響により、耐衝撃性が確保できなくなるおそれや、各成分の分散促進効果が低下するおそれがある。HLMFRは、前記と同様に測定することができる。HLMFRは、主に当該ポリエチレン成分の重合時の水素量及び重合温度により調整することができる。
【0040】
当該メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物において、クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分は、密度が0.945g/cm超過、0.965g/cm以下、好ましくは0.950g/cm以上、0.963g/cm以下、更に好ましくは0.955g/cm以上、0.961g/cm以下であることが好ましい。当該ポリエチレン成分の密度が0.945g/cm以下であると、最終の樹脂組成物における密度範囲を達成できず、剛性が不足し、かつ結晶化速度が低下し、その結果、成形サイクルが低下するおそれがある。また、容器の剛性が劣り高温時に変形しやすくなり、容器内圧等の影響により、容器が変形し漏れの原因となるおそれがある。一方、密度が0.965g/cmを超えた場合には、最終樹脂組成物において耐衝撃性能が低下するおそれがあり、容器の耐衝撃性が劣るおそれがある。密度は、前記と同様に測定することができる。密度は、主に当該ポリエチレン成分の重合時のα-オレフィンの量により調整することができる。
【0041】
当該メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物において、クロム系触媒により重合されたポリエチレン成分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が10以上、50以下、好ましくは15以上、30以下であることがより好ましい。GPCにより測定される分子量分布(Mw/Mn)は、重合体の各種物性、成形性の改良に関わり、成形品の外観等の改良にも関係する。本発明に用いられるポリエチレン成分の分子量分布(Mw/Mn)が前記範囲内にあると、より優れた中空成形加工性を発揮することができる。また、前記分子量分布(Mw/Mn)が10以上であると、各成分の相溶性がより良好になって製品外観が優れる点から好ましい。一方、前記分子量分布(Mw/Mn)が50以下であると、成形品のピンチオフ形状が悪化することを抑制し易く、中空成形品としての衝撃強度を良好にしやすい。分子量分布を所定の範囲とするには、分子量分布を制御できる触媒や適当な重合条件を採用することにより達成することができる。また、バイモーダル又はマルチモーダルの重合体の場合は、各成分の分子量を調整することにより制御することができる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量及び分子量分布の測定は、特開2017-179256号公報に記載された条件により測定することができる。
【0042】
チーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分の特性(2-5-3)
当該メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物において、チーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分は、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が10g/10分以上、200g/10分以下、好ましくは11g/10分以上、198g/10分以下、更に好ましくは11g/10分以上195g/10分以下であることが好ましい。このMFRが10g/10分未満であれば、分子量が増大し、流動性及び成形性が確保できなくなるおそれがある。また、最終の樹脂組成物において、HLMFRが規定の範囲内を達成できず、流動性が低下することにより、シャークスキンやメルトフラクチャーなどの流動不安定現象が発生しやくすなるため、成形品の外観を損なうおそれがある。一方、このMFRが200g/10分を超えると、低分子量の成分量が増加する影響により、耐衝撃性が確保できなくなるおそれがある。また、最終樹脂組成物において、耐衝撃性が達成できず、成形品の落下衝撃耐性が低下するおそれがある。MFRは、前記と同様にして測定することができる。MFRは、主に当該ポリエチレン成分の重合時の水素量及び重合温度により調整することができる。
【0043】
当該メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物において、チーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分は、密度が0.960g/cm以上、0.980g/cm以下、好ましくは0.961g/cm以上、0.975g/cm以下、更に好ましくは0.963g/cm以上、0.970g/cm以下であることが好ましい。密度が0.960g/cm未満であれば、最終の樹脂組成物における密度範囲を達成できず、剛性が不足し、かつ結晶化速度が低下し、その結果、成形サイクルが低下するおそれがある。また、容器の剛性が劣り高温時に変形しやすくなり、容器内圧等の影響により、容器が変形し漏れの原因となるおそれがある。一方、密度が0.980g/cmを超えた場合には、最終樹脂組成物において耐衝撃性能が低下するおそれがあり、容器の落下衝撃耐性が劣るおそれがある。密度は、前記と同様にして測定することができる。密度は、主に当該ポリエチレン成分の重合時のα-オレフィンの量により調整することができる。
【0044】
なお、本発明のメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物に用いられるポリエチレン成分に使用されるエチレンは、通常の化石原料由来の原油から製造されるエチレンであってもよいし、植物由来のエチレンであってもよい。植物由来のエチレン及びポリエチレンとしては、例えば、特表2010-511634号公報に記載のエチレンやそのポリマーが挙げられる。植物由来のエチレンやそのポリマーは、カーボンニュートラル(化石原料を使わず大気中の二酸化炭素の増加につながらない)の性質を持ち、環境に配慮した製品の提供が可能である。
【0045】
3.リサイクル樹脂組成物
本発明のリサイクル樹脂組成物は、前記の特性(1-1)~(1-4)を満足するリサイクルポリオレフィン樹脂1~95質量%、好ましくは2~94質量%、更に好ましくは3~93質量%、及び前記の特性(2-1)~(2-4)を満足するメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物99~5質量%、好ましくは98~6質量%、更に好ましくは97~7質量%からなり、下記の特性(i)~(iv)を満足する。
特性(i):密度が0.940~0.970g/cmである。
特性(ii):MFRが0.1~10g/10分であり、HLMFRが10~100g/10分である。
特性(iii):HLMFR/MFRが40~140である。
特性(iv):無水マレイン酸含有化合物に起因するカルボニル基の含有量が2.5質量%未満である。
本発明のリサイクル樹脂組成物はリサイクルポリオレフィン樹脂を1質量%以上含むものであり、リサイクルポリオレフィン樹脂を1質量%以上含むことによりプラスチック使用量の削減を図ることができ、95質量%以下であれば、少なくとも5質量%以上のバージン材を含むこととなり、バージン材は、通常、ボトルESCRが100時間以上と高いため、バージン材のみを用いた場合と比較して成形品のボトルESCRを同程度以上とすることができると考えられる。
【0046】
リサイクル樹脂組成物の特性(i)
本発明において、リサイクル樹脂組成物は、密度が0.940~0.970g/cmであり、好ましくは0.952~0.960g/cmであり、更に好ましくは0.953~0.958g/cmであるものを選定することが重要である。リサイクル樹脂組成物の密度が0.940g/cm未満であれば、剛性が不足し、かつ結晶化速度が低下し、その結果、成形サイクルが低下するおそれがある。一方、密度が0.970g/cmを超えた場合には、ボトルESCRが低下するおそれがある。
密度は、JIS K6922-1,2:1997に準拠して測定することができる。
密度は、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物を構成する成分の重合時のα-オレフィンの量により調整することができ、また、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物を構成する成分の配合割合、及びメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物とリサイクルポリオレフィン樹脂の配合割合により調整することができる。
【0047】
リサイクル樹脂組成物の特性(ii)
本発明において、リサイクル樹脂組成物は、MFRが0.1~10g/10分であり、当該MFRの下限は、好ましくは、0.15g/10分以上、0.20g/10分以上、0.25g/10分以上、0.30g/10分以上であり、また、当該MFRの上限は、好ましくは、8g/10分以下、6g/10分以下、4g/10分以下、3g/10分以下であり、1g/10分以下である。
このMFRが0.1g/10分未満であれば、リサイクル樹脂組成物の流動性が低下することにより、成形時における押出機モーター負荷やせん断による樹脂発熱量が増大するおそれや、シャークスキンやメルトフラクチャーなどの流動不安定現象が発生しやすくなるため成形品の外観を損なうおそれがある。一方、このMFRが10g/10分を超えると、成形品の耐衝撃性やボトルESCRが達成できず、成形品の落下衝撃耐性や長期耐久性が低下するおそれがある。
MFRは、JIS K6922-2:1997に準拠して測定することができる。
リサイクル樹脂組成物のMFRは、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物を構成する成分の重合時のそれぞれの水素量及び温度、並びにメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物を構成する成分の配合割合、及びメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物とリサイクルポリオレフィン樹脂の配合割合により調整することができる。
【0048】
また、本発明において、リサイクル樹脂組成物は、HLMFRが10~100g/10分であり、当該HLMFRの下限は、好ましくは、11g/10分以上、12g/10分以上、13g/10分以上、14g/10分以上であり、また、当該HLMFRの上限は、好ましくは、95g/10分以下、90g/10分以下、85g/10分以下、80g/10分以下である。
このHLMFRが10g/10分未満であれば、リサイクル樹脂組成物の流動性が低下することにより、成形時における押出機モーター負荷やせん断による樹脂発熱量が増大するおそれや、シャークスキンやメルトフラクチャーなどの流動不安定現象が発生しやすくなるため成形品の外観を損なうおそれがある。一方、このHLMFRが100g/10分を超えると、成形品の耐衝撃性やボトルESCRが達成できず、成形品の落下衝撃耐性や長期耐久性が低下するおそれがある。
HLMFRは、JIS K6922-2:1997に準拠して測定することができる。
リサイクル樹脂組成物のHLMFRは、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物を構成する成分の重合時のそれぞれの水素量及び温度、並びにメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物を構成する成分の配合割合、及びメタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物とリサイクルポリオレフィン樹脂の配合割合により調整することができる。
【0049】
リサイクル樹脂組成物の特性(iii)
本発明において、リサイクル樹脂組成物は、HLMFR/MFRが40~140であり、当該HLMFR/MFRの下限は、好ましくは、40以上、45以上、50以上、55以上であり、また、当該HLMFR/MFRの上限は、成形品の耐衝撃性の点から、好ましくは、135以下、130以下、125以下である。
HLMFR/MFRは、分子量分布との相関が強く、HLMFR/MFRが大きな値をとる場合、分子量分布が広くなり、HLMFR/MFRが小さな値をとる場合、分子量分布が狭くなる。HLMFR/MFRが140を超えると成形品の耐衝撃性が低下するおそれがあり、HLMFR/MFRが40未満では成形品の溶融張力が低下するおそれや成形品のボトルESCRが低下するおそれがある。
HLMFR/MFRの制御方法は、主に分子量分布の制御方法に準じて行なうことができる。
【0050】
リサイクル樹脂組成物の特性(iv)
本発明のリサイクル樹脂組成物は、無水マレイン酸含有化合物に起因するカルボニル基の含有量が2.5質量%未満であることが好ましく、カルボニル基を含まないことがより好ましい。リサイクル樹脂組成物に含まれる当該カルボニル基の含有量は、赤外吸収スペクトル分析により測定することができ、1710cm-1及び1790cm-1に吸収ピークが観測されないことが好ましい。無水マレイン酸含有化合物に起因するカルボニル基が存在すると、ゲル等の発生につながる可能性があり、好ましくない。
リサイクル樹脂組成物が無水マレイン酸含有化合物に起因するカルボニル基を含まないようにするためには、リサイクルポリオレフィン樹脂等がカルボニル基を含まないように品質管理、品質認定されていることが重要である。
【0051】
リサイクル樹脂組成物の特性(v)
本発明において、リサイクル樹脂組成物は、引張衝撃強度が好ましくは135KJ/m以上、更に好ましくは140KJ/m以上である。引張衝撃強度が135KJ/m未満では、ブロー容器としての耐衝撃性が低下する傾向がある。引張衝撃強度は、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の組成割合を増加させると大きくすることができる。
引張衝撃強度は、JIS K6922-2に準拠して、1.5mmの圧縮成形シートを作成し、ASTM D1822に準拠して、S型ダンベルで打ち抜いた試験片を作成し、23℃、50%RHの条件で測定することができる。
【0052】
リサイクル樹脂組成物の特性(vi)
本発明において、リサイクル樹脂組成物は、曲げ弾性率が好ましくは1275MPa以上、更に好ましくは1280MPa以上である。曲げ弾性率が1275MPa未満では、ブロー容器としての剛性が低下する傾向がある。曲げ弾性率は、メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物の組成割合を減少させると大きくすることができる。
曲げ弾性率は、JIS K6922-2:1997に準拠して測定することができる。
【0053】
本発明のリサイクル樹脂組成物は、必要に応じて各種の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色含量、架橋剤、発泡剤、無機又は有機充填剤、難燃剤、等の通常の添加剤を添加することができる。
【0054】
4.ブロー容器の成形方法
本発明のブロー容器は、通常のブロー成形方法により成形することができる。中空成形の方法としては、押出式、アキュムレーター式、ホットパリソン式、コールドパリソン式、射出式等が挙げられる。例えば、本発明のブロー容器は、リサイクル樹脂組成物を押出機から押出して溶融パリソンを製造し、当該パリソンを中空成形機の所望の容器形状を有する金型内にセットした後、これに圧縮ガスを吹き込んで金型内面壁まで膨張させ、その後、冷却させることにより製造することができる。また、連続成形機構としては、シャトル型、ロータリー型、サテライト型などの方式が挙げられ、型締め方法としては、油圧式、電動式、トグル式などが挙げられる。
本発明のブロー容器の具体的な成形方法は、樹脂の押出温度は、180~240℃、好ましくは190~230℃、更に好ましくは200~220℃である。樹脂の押出圧力は、50MPa以下、好ましくは、40MPa以下、更に好ましくは、30MPa以下である。ブロー金型の温度は、5~30℃、好ましくは10~25℃、更に好ましくは15~20℃である。ブロー圧力は0.3~0.8MPa、好ましくは0.4~0.7MPa、更に好ましくは0.5~0.6MPaである。
【0055】
5.ブロー容器
本発明のブロー容器は、本発明のリサイクル樹脂組成物を含むブロー容器であれば、特に限定されず、本発明のリサイクル樹脂組成物からなるブロー容器であってもよい。また、本発明のブロー容器は、当該リサイクル樹脂組成物をブロー成形法によりブロー成形品としたものであってもよいし、必要に応じて当該リサイクル樹脂組成物を多層ブロー成形機により多層ブロー成形品としたものであってもよい。ブロー成形品の大きさは特に限定されないが10mlから2000ml程度が望ましい。また、容器の形状は、特に限定されないが、必要に応じて、本発明のブロー容器の外層の表面に、各種の印刷や層を設けても差し支えない。
本発明のブロー容器は、特に、把手のついた容器、蛇腹状構造を有する容器、くびれのある容器、異径部の組み合わせからなる容器などのように単純な円筒状でなく同一成形品内でパリソンのブロー比が大きく異なる部分を有する形状の中空容器であってもよい。
【0056】
通常、リサイクル材を少しでも用いると、耐久性、例えばボトルESCR等が著しく低下する。しかしながら、本発明のブロー容器は、リサイクルポリオレフィン樹脂を使用しているのもかかわらず、ボトルESCRを低下させることがなく、ボトルESCRが100時間以上、好ましくは250時間以上、好ましくは300時間以上、更に好ましくは500時間以上、更に好適には600時間以上である容器を提供することができる。
【0057】
本発明のブロー容器は、肉厚均一性がよく、表面均一性が優れ、耐薬品性、ボトルESCR等に優れており、このような特性を必要とする容器などの用途に適し、特に、外観が良好であることが求められる、化粧品容器、洗剤、シャンプー及びリンス用容器、或いは食用油等の食品用容器等の用途に好適に用いることができる。
更に、本発明のブロー容器の用途を例示すると、医療用容器、食品用容器、化粧品用容器等が挙げられ、食品用容器としては、各種飲料容器、濃縮飲料容器、調味料容器、惣菜容器、ドレッシング容器、マヨネーズ・ケチャップ容器、各種レトルト食品容器、哺乳瓶等が挙げられ、化粧品用容器としては、整髪料、毛髪料、香水、毛染剤、アイシャドー、マニキュア、ローション、クリーム、乳液、化粧水、パーマ液等の容器が挙げられる。
【実施例
【0058】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
【0059】
1.測定方法
実施例で用いた測定方法は以下の通りである。
(1)密度
JIS K6922-1,2:1997に準拠して測定した。
(2)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)
JIS K6922-2:1997に準拠して測定した。
(3)温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)
JIS K6922-2:1997に準拠して測定した。
【0060】
(4)引張衝撃強度
引張衝撃強度は、JIS K6922-2に準拠して、1.5mmの圧縮成形シートを作成し、ASTM D1822に準拠して、S型ダンベルで打ち抜いた試験片を作成し、23℃、50%RHの条件で測定を行った。
【0061】
(5)曲げ弾性率
JIS K6922-2:1997に準拠して測定した。
【0062】
(6)カルボニル基含有量
赤外吸収スペクトル分析により、1710cm-1及び1790cm-1の吸収ピークを測定した。
【0063】
(7)容器の落下強度試験
ブロー成形された内容積760mlの円筒形状容器(ボトル)に、水を600ml充填し、容器蓋にて密封し、落下試験雰囲気の温度5℃にて、落下高さ1.5mよりコンクリート製の床に向けて、当該容器の円形底面を下側にして落下させた後、当該容器の円柱状側面を下側にして落下させ、更に当該2種類の落下操作を5回繰り返し行い、全10回の落下で当該容器が破壊するか否かを確認した。
【0064】
(8)ボトルESCR
ブロー成形された内容積760mlの円筒形状容器(ボトル)に、非イオン性界面活性剤(Sigma-Aldrich社製:ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル、イゲパールCO-630)を33質量%に希釈した水溶液190mlを充填し、当該容器と同種の材料の溶融パリソンで当該容器を密栓し、当該密栓をした容器を温度65℃の恒温槽内に保管し、容器が破損するまでの時間を測定した。この測定を同じ容器10本で行い、10本のうちの5本以上の容器が破損したときの時間をボトルESCR値とした。
【0065】
(9)リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合
ブロー容器の全体の質量に対して使用されたリサイクルポリオレフィン樹脂の質量の割合をリサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合とした。
【0066】
(10)総合評価
ブロー成形された容器としての総合評価を行ない、落下強度試験において破壊せず、ボトルESCRが100時間以上であり、リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合が1質量%以上であり、かつゲルが発生しなかったものを「適合」、それ以外のものを「不適合」とした。
【0067】
2.原材料
(1)リサイクルポリオレフィン樹脂(A-1)
密度が0.954g/cm、MFRが0.26g/10分、HLMFRが36g/10分、HLMFR/MFRが138、引張衝撃強度が130kJ/m、ボトルESCRが100時間未満、添加材の含有量が10質量%以下、カルボニル基含有量が0質量%である三重化成社製の再生プラスチック「HDPE HA」を用いた。
(2)リサイクルポリオレフィン樹脂(A-2)
密度が0.954g/cm、MFRが0.26g/10分、HLMFRが36g/10分、HLMFR/MFRが138、引張衝撃強度が130kJ/m、ボトルESCRが100時間未満、添加材の含有量が10質量%以下、カルボニル基含有量が5質量%である再生プラスチックを用いた。
【0068】
(3)メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物(B)
特開2017-179256号の実施例2に記載の方法に準じて、メタロセン系触媒により重合されたポリエチレン成分(HLMFRが0.6g/10分、密度が0.920g/cm)を25質量%、クロム触媒により重合されたポリエチレン成分(HLMFRが5.0g/10分、密度が0.956g/cm)を15質量%、チーグラー触媒により重合されたポリエチレン成分(MFRが19g/10分、HLMFRが144g/10分、密度が0.964g/cm)を60質量%含む樹脂組成物(密度が0.953g/cm、MFRが0.39g/10分、HLMFRが27g/10分、HLMFR/MFRが69、引張衝撃強度が310kJ/m)[メタロセン系ポリエチレンを含む樹脂組成物(B)]を調製し用いた。
【0069】
3.実施例及び比較例
[実施例1]
以下に示す条件で、表1に示すブロー容器(細口部を有する円筒状のボトル)を成形し評価を行った。ブロー成形後の容器は、口部の外径が約25mm、口部の内径が約20mm、口部の高さが約25mm、胴部の外径が約73mm、胴部の高さが約160mm、容器全体の高さが約230mm、口部の平均肉厚が約2.5mm、胴部の平均肉厚が約0.36mm、満注時に内容積が約760mlであった。表1に示されるように、実施例1のブロー容器は、落下強度試験において破壊せず、ボトルESCRが100時間以上であり、リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合が1質量%以上であり、かつゲルが発生せず、リサイクル容器として「適合」するものであった。
ブロー成型機:ブレンズ社製単層成形機(タイプ;BEX70/BLS-5E/BK50)。
成形設定温度:押出機150~180℃、ヘッド・ダイ180℃。
金型温度:20℃、成形サイクル:13秒、ブロー圧力:0.5MPa。
【0070】
[実施例2]
表1に示す条件で、表1に示すブロー容器を実施例1と同様の方法で成形し評価を行った。表1に示されるように、実施例2のブロー容器は、落下強度試験において破壊せず、ボトルESCRが100時間以上であり、リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合が1質量%以上であり、かつゲルが発生せず、リサイクル容器として「適合」するものであった。
【0071】
[実施例3]
表1に示す条件で、表1に示すブロー容器を実施例1と同様の方法で成形し評価を行った。表1に示されるように、実施例3のブロー容器は、落下強度試験において破壊せず、ボトルESCRが100時間以上であり、リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合が1質量%以上であり、かつゲルが発生せず、リサイクル容器として「適合」するものであった。
【0072】
[実施例4]
表1に示す条件で、表1に示すブロー容器を実施例1と同様の方法で成形し評価を行った。表1に示されるように、実施例4のブロー容器は、落下強度試験において破壊せず、ボトルESCRが100時間以上であり、リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合が1質量%以上であり、かつゲルが発生せず、リサイクル容器として「適合」するものであった。
【0073】
[実施例5]
表1に示す条件で、表1に示すブロー容器を実施例1と同様の方法で成形し評価を行った。表1に示されるように、実施例5のブロー容器は、落下強度試験において破壊せず、ボトルESCRが100時間以上であり、リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合が1質量%以上であり、かつゲルが発生せず、リサイクル容器として「適合」するものであった。
【0074】
[実施例6]
表1に示す条件で、表1に示すブロー容器を実施例1と同様の方法で成形し評価を行った。表1に示されるように、実施例6のブロー容器は、落下強度試験において破壊せず、ボトルESCRが100時間以上であり、リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合が1質量%以上であり、かつゲルが発生せず、リサイクル容器として「適合」するものであった。
【0075】
[比較例1]
表2に示す条件で、表2に示すブロー容器を実施例1と同様の方法で成形し評価を行った。表2に示されるように、比較例1のブロー容器は、リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合が100質量%であり、落下強度試験において破壊し、ボトルESCRが100時間未満であり、リサイクル容器として「不適合」であった。
【0076】
[比較例2]
表2に示す条件で、表2に示すブロー容器を実施例1と同様の方法で成形し評価を行った。表2に示されるように、比較例2のブロー容器は、落下強度試験において破壊せず、ボトルESCRが100時間以上であり、リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合が1質量%以上であったが、リサイクル樹脂組成物のカルボニル基の含有量が2.5質量%であったため、ゲルが発生したため、リサイクル容器として「不適合」であった。
【0077】
[比較例3]
表2に示す条件で、表2に示すブロー容器を実施例1と同様の方法で成形し評価を行った。表2に示されるように、比較例3のブロー容器は、落下強度試験において破壊しなかったが、リサイクルポリオレフィン樹脂(リサイクル材)の使用割合が97質量%であったため、ボトルESCRが100時間未満であり、リサイクル容器として「不適合」であった。
【0078】
[比較例4]
表2に示す条件で、表2に示すブロー容器を実施例1と同様の方法で成形し評価を行った。表2に示されるように、比較例4のブロー容器は、落下強度試験において破壊せず、ボトルESCRが100時間以上であったが、リサイクルポリオレフィン樹脂の使用割合が1質量%未満であり、リサイクル容器として「不適合」であった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、ポリエチレン系のブロー容器において、特定性状のリサイクルポリオレフィン樹脂及び特定性状のポリエチレン樹脂を用いることにより、リサイクルされた材料をブロー製品に適用し、プラスチック使用量の削減を図り、プラスチックごみ(廃プラ)の問題を解決し、かつ、ブロー容器としての適性が十分であり、リサイクルされた材料を改質することによってボトルESCR(耐久性)に優れたブロー容器を提供できるため、産業上大いに有用である。
特に、本発明により、リサイクル材の効率的な利用を図ることができるので、資源の節約、地球環境問題の解決という観点から、循環型経済システムを構築することが可能となり、産業上大いに有用である。