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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】温度調整装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20240123BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20240123BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240123BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240123BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240123BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20240123BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20240123BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/617
H01M10/647
H01M10/613
H01M10/615
H01M50/20
H01M10/6557
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019228995
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021096997
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】左右木 高広
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓善
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 智秀
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534143(JP,A)
【文献】特開2011-096465(JP,A)
【文献】特開2015-103392(JP,A)
【文献】特表2016-526763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60 -10/667
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の温度調整対象物(11)と、
前記温度調整対象物とともに積層され、内部を流れる熱媒体と前記温度調整対象物とを熱交換する複数の熱交換部(20a)を有する熱交換器(20)と、
前記温度調整対象物および前記熱交換部を積層した状態で、前記温度調整対象物および前記熱交換部の積層方向の外側から拘束荷重をかけることにより固定する拘束部材(52~55)と、を備え、
隣り合う前記熱交換部の間には、1以上の前記温度調整対象物が配置されており、
前記熱交換器は、前記熱交換器の内部空間を前記熱媒体が流れる複数の熱媒体流路(20c)に区画する区画部(20d)を複数有しており、
前記区画部は、弾性変形可能に構成されており、
前記熱交換器は、
前記区画部が前記積層方向に2つに分割されている分割部(20h)と、
分割された前記区画部同士の間に所定間隔の隙間(20i)を形成する切り欠き部(20j)と、を有しており、
前記複数の熱媒体流路の配置方向を、熱交換器幅方向としたとき、
複数の前記区画部のうち、前記熱交換器幅方向の中央側に位置する前記区画部に形成される前記隙間の前記積層方向の長さは、前記熱交換器幅方向の外側に位置する前記区画部に形成される前記隙間の前記積層方向の長さよりも長い温度調整装置。
【請求項2】
前記区画部は、屈曲部(20e)を有している請求項1に記載の温度調整装置。
【請求項3】
積層された複数の温度調整対象物(11)と、
前記温度調整対象物とともに積層され、内部を流れる熱媒体と前記温度調整対象物とを熱交換する複数の熱交換部(20a)を有する熱交換器(20)と、
前記温度調整対象物および前記熱交換部を積層した状態で、前記温度調整対象物および前記熱交換部の積層方向の外側から拘束荷重をかけることにより固定する拘束部材(52~55)と、を備え、
隣り合う前記熱交換部の間には、1以上の前記温度調整対象物が配置されており、
前記熱交換部は、前記熱交換部における他の部位より剛性の低い低剛性部(271)を有しており、
前記温度調整対象物において、前記温度調整対象物および前記熱交換部を積層した状態で、前記熱交換部と対向する面を板面(11a)としたとき、
前記低剛性部は、前記熱交換部のうち、前記温度調整対象物の前記板面の中央部に対向する部位に設けられており、
前記熱交換器は、前記熱交換器の内部空間を前記熱媒体が流れる複数の熱媒体流路(20c)に区画する区画部(20d)を複数有しており、
前記熱交換部のうち、前記電池セルの板面の中央部に対向する部位において隣り合う前記区画部同士の距離は、他の部位において隣り合う前記区画部同士の距離よりも長い温度調整装置。
【請求項4】
積層された複数の温度調整対象物(11)と、
前記温度調整対象物とともに積層され、内部を流れる熱媒体と前記温度調整対象物とを熱交換する複数の熱交換部(20a)を有する熱交換器(20)と、
前記温度調整対象物および前記熱交換部を積層した状態で、前記温度調整対象物および前記熱交換部の積層方向の外側から拘束荷重をかけることにより固定する拘束部材(52~55)と、を備え、
隣り合う前記熱交換部の間には、1以上の前記温度調整対象物が配置されており、
前記熱交換部は、前記熱交換部における他の部位より剛性の低い低剛性部(271)を有しており、
前記温度調整対象物において、前記温度調整対象物および前記熱交換部を積層した状態で、前記熱交換部と対向する面を板面(11a)としたとき、
前記低剛性部は、前記熱交換部のうち、前記温度調整対象物の前記板面の中央部に対向する部位に設けられており、
前記熱交換器は、前記熱交換器の内部空間を前記熱媒体が流れる複数の熱媒体流路(20c)に区画する区画部(20d)を複数有しており、
前記複数の熱媒体流路の配置方向を、熱交換器幅方向とし、
前記区画部における前記熱交換器幅方向の長さを、幅長さとしたとき、
複数の前記区画部のうち、前記熱交換器幅方向の中央側に位置する前記区画部の前記幅長さ(L1)は、前記熱交換器幅方向の外側に位置する前記区画部の前記幅長さ(L2)より短い温度調整装置。
【請求項5】
前記温度調整対象物は、電池モジュール(10)の電池セル(11)である請求項1ないしのいずれか1つに記載の温度調整装置。
【請求項6】
前記熱交換器は、内部を前記熱媒体が流れるとともに、隣接する前記熱交換部を接続する接続部(20b)を有しており、
前記熱交換部と前記接続部は、積層された前記温度調整対象物の全体に渡って蛇行状に形成されている請求項1ないしのいずれか1つに記載の温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整対象物の温度を調整する温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層された複数の電池セルの温度を調整する電池温度調整装置が開示されている。この電池温度調整装置では、内部を熱媒体が流れる熱交換器が蛇行状に折り曲げられており、隣接する電池セルの間に熱交換器が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-526763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電池セルは温度やSOCの変化によって膨張することがあり、さらに使用に伴う劣化によっても膨張することがある。一般に、電池セルが膨張する場合、電池セルの板面の膨張量(すなわち、変形量)は、板面の各位置で不均一になる。
【0005】
このため、電池セルが膨張した際、電池セルの板面のうち、膨張量の大きい部分と熱交換器とは接触するが、膨張量の小さい部分が熱交換器と接触しなくなる。これにより、電池セルと熱交換器との密着性が低下してしまう。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、温度調整対象物と熱交換器との密着性を向上できる温度調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の温度調整装置は、積層された複数の温度調整対象物(11)と、
温度調整対象物とともに積層され、内部を流れる熱媒体と温度調整対象物とを熱交換する複数の熱交換部(20a)を有する熱交換器(20)と、
温度調整対象物および熱交換部を積層した状態で、温度調整対象物および熱交換部の積層方向の外側から拘束荷重をかけることにより固定する拘束部材(52~55)と、を備え、
隣り合う熱交換部の間には、1以上の温度調整対象物が配置されており、
熱交換器は、熱交換器の内部空間を熱媒体が流れる複数の熱媒体流路(20c)に区画する区画部(20d)を複数有しており、
区画部は、弾性変形可能に構成されており、
熱交換器は、
区画部が積層方向に2つに分割されている分割部(20h)と、
分割された区画部同士の間に所定間隔の隙間(20i)を形成する切り欠き部(20j)と、を有しており、
複数の熱媒体流路の配置方向を、熱交換器幅方向としたとき、
複数の区画部のうち、熱交換器幅方向の中央側に位置する区画部に形成される隙間の積層方向の長さは、熱交換器幅方向の外側に位置する区画部に形成される隙間の積層方向の長さよりも長い。
【0008】
これによれば、温度調整対象物(11)が膨張して変形した際に、熱交換器(20)の区画部(20d)が弾性変形することにより、温度調整対象物(11)の変形に熱交換部(20)を追従させることができる。このため、温度調整対象物(11)の変形時においても、温度調整対象物(11)と熱交換部(20ab)との接触面を広く確保することができる。その結果、温度調整対象物(11)と熱交換器(20)との密着性を向上できる。
【0009】
また、請求項に記載の温度調整装置は、積層された複数の温度調整対象物(11)と、
温度調整対象物とともに積層され、内部を流れる熱媒体と温度調整対象物とを熱交換する複数の熱交換部(20a)を有する熱交換器(20)と、
温度調整対象物および熱交換部を積層した状態で、温度調整対象物および熱交換部の積層方向の外側から拘束荷重をかけることにより固定する拘束部材(52~55)と、を備え、
隣り合う熱交換部の間には、1以上の温度調整対象物が配置されており、
熱交換部は、熱交換部における他の部位より剛性の低い低剛性部(271)を有しており、
温度調整対象物において、温度調整対象物および熱交換部を積層した状態で、熱交換部と対向する面を板面(11a)としたとき、
低剛性部は、熱交換部のうち、温度調整対象物の板面の中央部に対向する部位に設けられており、
熱交換器は、熱交換器の内部空間を熱媒体が流れる複数の熱媒体流路(20c)に区画する区画部(20d)を複数有しており、
熱交換部のうち、電池セルの板面の中央部に対向する部位において隣り合う区画部同士の距離は、他の部位において隣り合う区画部同士の距離よりも長い。
また、請求項4に記載の温度調整装置は、積層された複数の温度調整対象物(11)と、
温度調整対象物とともに積層され、内部を流れる熱媒体と温度調整対象物とを熱交換する複数の熱交換部(20a)を有する熱交換器(20)と、
温度調整対象物および熱交換部を積層した状態で、温度調整対象物および熱交換部の積層方向の外側から拘束荷重をかけることにより固定する拘束部材(52~55)と、を備え、
隣り合う熱交換部の間には、1以上の温度調整対象物が配置されており、
熱交換部は、熱交換部における他の部位より剛性の低い低剛性部(271)を有しており、
温度調整対象物において、温度調整対象物および熱交換部を積層した状態で、熱交換部と対向する面を板面(11a)としたとき、
低剛性部は、熱交換部のうち、温度調整対象物の板面の中央部に対向する部位に設けられており、
熱交換器は、熱交換器の内部空間を熱媒体が流れる複数の熱媒体流路(20c)に区画する区画部(20d)を複数有しており、
複数の熱媒体流路の配置方向を、熱交換器幅方向とし、
区画部における熱交換器幅方向の長さを、幅長さとしたとき、
複数の区画部のうち、熱交換器幅方向の中央側に位置する区画部の幅長さ(L1)は、熱交換器幅方向の外側に位置する区画部の幅長さ(L2)より短い。
【0010】
これによれば、温度調整対象物(11)が膨張して変形した際に、熱交換部(20a)のうち低剛性部(271)が変形することにより、温度調整対象物(11)の変形に熱交換部(20a)を追従させることができる。このため、温度調整対象物(11)の変形時においても、温度調整対象物(11)と熱交換部(20a)との接触面を広く確保することができる。その結果、温度調整対象物(11)と熱交換器(20)との密着性を向上できる。
【0011】
なお、上記各構成要素の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る温度調整装置の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る温度調整装置の平面図である。
図3】第1実施形態に係る温度調整装置の正面図である。
図4】第1実施形態に係る温度調整装置の一部を示す正面図である。
図5】第1実施形態に係る温度調整装置の部分的な断面図である。
図6】第1実施形態における熱交換器の斜視図である。
図7】第2実施形態に係る温度調整装置の部分的な断面図である。
図8】第2実施形態における熱交換器の斜視図である。
図9】第3実施形態に係る温度調整装置の部分的な断面図である。
図10】第3実施形態における熱交換器の斜視図である。
図11】第4実施形態における熱交換器の断面図である。
図12】第5実施形態における熱交換器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る温度調整装置1は、電池の温度を調整する電池温調装置として適用されている。
【0015】
図1図3に示すように、本実施形態の温度調整装置1は、電池モジュール10と、熱交換器20とを備えている。電池モジュール10は、積層された複数の電池セル11によって構成されている。
【0016】
電池セル11は、平坦な板面11aを有する扁平形状に形成されている。本実施形態の電池セル11は扁平な直方体形状であり、矩形状の板面11aを有している。
【0017】
複数の電池セル11は、それぞれの板面11aが平行となるように並列配置されている。電池セル11の板面11aは、電池セル11の積層方向と直交している。
【0018】
電池セル11は、任意の種類の電池を用いることができ、本実施形態ではリチウムイオン電池を用いている。リチウムイオン電池は充放電可能な二次電池である。電池セル11の表面は、例えばポリプロピレンからなる絶縁フィルムで覆われている。
【0019】
電池セル11としては、角型やラミネート型といった形状の電池を好適に用いることができる。このような形状の電池セル11は、温度、SOCの変化あるいは使用に伴う劣化によって、板面の11a中央付近が膨張するおそれがある。
【0020】
熱交換器20は、内部を熱媒体が流通しており、電池セル11と熱媒体との熱交換を行う。これにより、電池セル11が冷却または加熱され、電池セル11が温度調整される。したがって、電池セル11は、温度調整装置1の温度調整対象物である。
【0021】
熱交換器20は、例えばアルミニウムによって構成することができる。熱媒体としては、例えばエチレングリコール系の不凍液(LLC)を用いることができる。
【0022】
熱交換器20は、帯状部材であり、電池モジュール10における電池セル11の積層方向の全長に渡って形成されている。以下、電池セル11の積層方向を「セル積層方向」という。図1図3では紙面上下方向が熱交換器20の幅方向であり、図2図4では紙面垂直方向が熱交換器20の幅方向である。なお、図4では、拘束部材52、53、54、55の図示を省略している。
【0023】
熱交換器20は、熱交換部20aと接続部20bとを有している。熱交換器20において、熱交換部20aは、2つの電池セル11に挟まれた部位であり、電池セル11の板面11aに対応した形状となっている。接続部20bは、隣接する熱交換部20aを接続する部位である。熱交換部20aは電池セル11と接触しており、接続部20bは電池セル11と接触していない。
【0024】
熱交換部20aは平板状となっており、接続部20bは湾曲している。複数の熱交換部20aは、セル積層方向に所定間隔で並列配置されている。熱交換部20aは、板面がセル積層方向に直交するように配置されており、熱媒体流れ方向がセル積層方向に直交している。隣接する熱交換部20aは接続部20bによって接続され、蛇行状の熱交換器20を構成している。つまり、熱交換器20は、蛇行状に折り曲げられたサーペンタイン型となっている。
【0025】
電池セル11と、熱交換器20の熱交換部20aとが交互に積層して配置されている。隣接する熱交換部20aの間には、1以上の電池セル11が配置されている。本実施形態では、隣接する熱交換部20aの間に1つの電池セル11が配置されている。隣接する電池セル11の間には、熱交換器20の熱交換部20aが1つ配置されている。
【0026】
ここで、電池セル11の板面11aは、電池セル11および熱交換部20aを積層した状態で、熱交換部20aと対向している。すなわち、電池セル11の板面11aは、電池セル11および熱交換部20aを積層した状態で、熱交換部20aと対向する面である。
【0027】
積層された電池セル11の両端に、一組のエンドプレート50、51が配置されている。エンドプレート50、51は、両端に位置する電池セル11の外側に配置されている。エンドプレート50、51は、電池セル11に対応した形状となっており、電池セル11とともに積層されている。
【0028】
一組のエンドプレート50、51は、拘束部材52、53、54、55で接続されている。拘束部材52、53、54、55は、一組のエンドプレート50、51の対応する角部同士を接続するように設けられている。積層された電池セル11と熱交換器20は、エンドプレート50、51の外側から所定の拘束荷重をかけられた状態で、拘束部材52、53、54、55によって固定されている。
【0029】
図5図6に示すように、熱交換器20は、内部に熱媒体通路が形成された扁平多穴チューブである。熱交換器20は、例えば押出成形によって形成することができる。本実施形態の熱交換器20では、押出成形によって一つの扁平多穴チューブを成形した後、接続部20bに対応する部位を曲げ加工することで蛇行状にしている。このため、熱交換部20aと接続部20bは一体的に構成されている。
【0030】
熱交換器20の一端側には、流入部21および流出部22が設けられている。図2図4において、熱交換器20の左端が熱交換器20の一端側である。流入部21は、熱交換器20の内部に熱媒体を流入させる。流出部22は、熱交換器20の内部から熱媒体を流出させる。
【0031】
熱交換器20の他端側には、流入部21から流入した熱媒体が流出部22に向かって折り返す折り返し部23が設けられている。図2図4において、熱交換器20の右端が熱交換器20の他端側である。折り返し部23は、エンドプレート51の内部に設けられている。流入部21から熱交換器20に流入した熱媒体は、折り返し部23で折り返して、流出部22から流出する。
【0032】
図5は、熱交換器20における熱媒体流れ方向に直交する断面を示している。図5は、2つの電池セル11と3つの熱交換部20aのみを示している。図5では、紙面垂直方向が熱媒体流れ方向となっている。
【0033】
図5図6に示すように、熱交換器20は、熱交換器20の内部空間を熱媒体が流れる複数の熱媒体流路20cに区画する区画部20dを有している。区画部20dは、熱交換器20の一端側から他端側にわたって設けられている。
【0034】
本実施形態では、熱交換器20は、複数の区画部20dを有している。また、複数の熱媒体流路20cは、熱交換器20の幅方向に並列に配置されている。区画部20dは、熱交換部20aと一体的に構成されている。
【0035】
区画部20dは、弾性変形可能に構成されている。具体的には、区画部20dは、屈曲部20eを有している。本実施形態では、屈曲部20eは、熱交換器20の幅方向の一端側(すなわち、図5の紙面下側)に向けて突出する山状に屈曲している。また、複数の区画部20dの各々において、区画部20dの全体が山状に屈曲している。
【0036】
このように、区画部20dは、屈曲部20eを有しているため、セル積層方向からの力に対して弾性変形可能に構成されている。すなわち、区画部20dは、外部応力が作用した際に弾性変形するように構成されている。
【0037】
図6に示すように、熱交換部20aは、熱交換部20aの幅方向に並ぶ3つの熱媒体流路群271、272を有している。3つの熱媒体流路群271、272の各々は、複数の熱媒体流路20cにより構成されている。
【0038】
以下、熱交換部20aにおいて、熱交換器20の幅方向における中央部に設けられた熱媒体流路群を、中央流路群271という。熱交換部20aにおいて、熱交換器20の幅方向における両端部に設けられた各熱媒体流路群を、側方流路群272という。熱交換部20aにおいて、熱媒体流れ方向から見て中央付近に中央流路群271が設けられており、熱媒体流れ方向から見て中央流路群271の側方に側方流路群272が設けられている。
【0039】
中央流路群271と側方流路群272では、熱媒体流路20cの熱媒体流れ方向が反対になっている。また、中央流路群271と側方流路群272では、それぞれの熱媒体流路20cの流路断面積の合計が等しくなっている。
【0040】
熱媒体流れ方向において、中央流路群271は折り返し部23の上流側に位置し、側方流路群272は折り返し部23の下流側に位置している。流入部21から熱交換器20の内部に流入した熱媒体は、中央流路群271の熱媒体流路20cを流れる。中央流路群271の熱媒体流路20cを流れた熱媒体は、折り返し部23で折り返した後、側方流路群272の熱媒体流路20cを流れ、流出部22から流出する。このため、中央流路群271と側方流路群272では、熱媒体が逆方向に流れる。
【0041】
このように、外部から流入した熱媒体は、中央流路群271を流れた後に側方流路群272を流れる。中央流路群271の熱媒体流路20cは上流側流路と位置付けられ、側方流路群272の熱媒体流路20cは下流側流路と位置付けられる。
【0042】
中央流路群271の熱媒体流路20cには、流入部21から流入した直後の比較的低温の熱媒体が流通する。側方流路群272の熱媒体流路20cには、電池セル11と熱交換して温度上昇した熱媒体が流通する。このため、中央流路群271では、側方流路群272よりも熱媒体が低温となっている。
【0043】
以上説明した本実施形態の熱交換器20では、区画部20dに屈曲部20eを設けることにより、区画部20dが弾性変形可能に構成されている。これによれば、電池セル11が膨張して変形した際に、区画部20dが弾性変形することにより、電池セル11の変形に熱交換部20aを追従させることができる。このため、電池セル11の膨張時においても、電池セル11と熱交換部20aとの接触面を広く確保することができる。その結果、電池セル11と熱交換器20との密着性を向上できる。
【0044】
そして、電池セル11と熱交換器20との密着性が向上することにより、電池セル11および熱交換部20aの接触熱抵抗を低減することができる。これにより、複数の電池セル11間に温度バラツキが発生することを抑制できる。
【0045】
さらに、電池セル11と熱交換器20との密着性が向上することにより、温度調整装置1における電池セル11の冷却性能を向上させることができる。このため、電池セル11の劣化を抑制できる。また、温度調整装置1の小型化を図ることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、区画部20dの構成等が異なる。
【0047】
図7に示すように、本実施形態の温度調整装置1の熱交換器20は、複数の区画部20dの各々がセル積層方向に2つに分割されている分割部20hを有している。すなわち、複数の区画部20dの各々は、セル積層方向に2つに分割されている。
【0048】
具体的には、複数の区画部20dの各々は、セル積層方向に、第1区画部20fと第2区画部20gとに分割されている。熱交換部20aにおける熱媒体流れ方向に直交する断面において、第1区画部20fおよび第2区画部20gの各々は、セル積層方向に延びている。
【0049】
熱交換器20は、分断された区画部20d同士の間に所定間隔の隙間20iを形成する切り欠き部20jを有している。すなわち、第1区画部20fと第2区画部20gとの間には、所定間隔の隙間20iが形成されている。つまり、第1区画部20fおよび第2区画部20gは、所定間隔の隙間20iを介して対向している。また、隣り合う熱媒体流路20cは、隙間20iを介して連通している。
【0050】
本実施形態では、複数の区画部20dにおいて、隙間20iのセル積層方向の長さは互いに等しい。また、複数の区画部20dの各々において、切り欠き部20jは、区画部20dにおけるセル積層方向の中央部に設けられている。
【0051】
熱交換器20は、熱交換器20の内部空間を熱交換器20の幅方向に2つに仕切る仕切部20kを有している。仕切部20kは、熱交換器20の幅方向の中央部に配置されている。仕切部20kは、熱交換器20の幅方向の一端側(すなわち、図7の紙面上側)に向けて突出する山状に屈曲している。これにより、仕切部20kは、弾性変形可能に構成されている。
【0052】
図8に示すように、熱交換部20aは、熱交換器20の幅方向に並ぶ2つの熱媒体流路群281、282を有している。2つの熱媒体流路群281、282の各々は、複数の熱媒体流路20cにより構成されている。
【0053】
以下、熱交換部20aにおいて、熱交換器20の幅方向における一端側(図8の紙面上側)に設けられた熱媒体流路群を上流流路群281という。熱交換部20aにおいて、熱交換器20の幅方向における他端側(図8の紙面下側)に設けられた熱媒体流路群を下流流路群282という。
【0054】
上流流路群281と下流流路群282では、熱媒体流路20cの熱媒体の流れ方向が反対になっている。また、上流流路群281と下流流路群282では、それぞれの熱媒体流路20cの流路断面積の合計が等しくなっている。
【0055】
熱媒体流れ方向において、上流流路群281は折り返し部23の上流側に位置し、下流流路群282は折り返し部23の下流側に位置している。流入部21から熱交換器20の内部に流入した熱媒体は、上流流路群281の熱媒体流路20cを流れる。上流流路群281の熱媒体流路20cを流れた熱媒体は、折り返し部23で折り返した後、下流流路群282の熱媒体流路20cを流れ、流出部22から流出する。このため、上流流路群281と下流流路群282では、熱媒体が逆方向に流れる。
【0056】
このように、外部から流入した熱媒体は、上流流路群281を流れた後に下流流路群282を流れる。上流流路群281の熱媒体流路20cは上流側流路と位置付けられ、下流流路群282の熱媒体流路20cは下流側流路と位置付けられる。
【0057】
上流流路群281の熱媒体流路20cには、流入部21から流入した直後の比較的低温の熱媒体が流通する。下流流路群282の熱媒体流路20cには、電池セル11と熱交換して温度上昇した熱媒体が流通する。このため、上流流路群281では、下流流路群282よりも熱媒体が低温となっている。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の熱交換器20では、区画部20dがセル積層方向に第1区画部20fおよび第2区画部20gに分割されているとともに、第1区画部20fと第2区画部20gとの間に隙間20iが形成されている。これによれば、電池セル11が膨張して変形した際に、熱交換部20aが、第1区画部20fおよび第2区画部20gが互いに近づくように変形する。
【0059】
その結果、電池セル11の変形に熱交換部20aを追従させることができるので、電池セル11の膨張時においても電池セル11と熱交換部20aとの接触面を広く確保することができる。したがって、電池セル11と熱交換器20との密着性を向上できる。
【0060】
ここで、熱交換部20aは、電池セル11の膨張変形により電池セル11側から押圧された場合でも、セル積層方向に隣り合う第1区画部20fおよび第2区画部20gが互いに接触すると、それ以上変形することはない。このため、熱交換部20aが変形しすぎることを抑制できる。したがって、エンドプレート50、51の外側からの拘束荷重によって熱交換部20aがつぶれることを抑制できる。
【0061】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図面に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態と比較して、熱交換器20の構成が異なる。
【0062】
図9図10に示すように、本実施形態の温度調整装置1の熱交換器20では、熱交換部20aにおける中央流路群271が、1つの熱媒体流路20cにより構成されている。すなわち、熱交換部20aのうち、中央流路群271に対応する部位には、区画部20dが設けられていない。
【0063】
これにより、熱交換部20aのうち、熱交換器20の幅方向の中央部において隣り合う区画部20d同士の距離が、熱交換器20の幅方向の端部側において隣り合う区画部20d同士の距離よりも長い。このため、熱交換部20aにおいて、中央流路群271の剛性が、側方流路群272の剛性よりも低い。つまり、熱交換部20aにおいて、熱交換器20の幅方向の中央部の剛性が、熱交換器20の幅方向の端部側の剛性より低い。
【0064】
換言すると、熱交換部20aのうち、電池セル11の板面11aの中央部に対向する部位において隣り合う区画部20d同士の距離が、他の部位において隣り合う区画部20d同士の距離よりも長い。このため、熱交換部20aのうち、電池セル11の板面11aの中央部に対向する部位の剛性は、他の部位の剛性より低い。
【0065】
ここで、上述したように、中央流路群271は、熱交換部20aにおける他の部位である側方流路群272より剛性が低い。したがって、本実施形態の中央流路群271は、低剛性部の一例に相当する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の熱交換器20では、熱交換部20aの中央流路群271の剛性を、側方流路群272の剛性より低くしている。これによれば、電池セル11が膨張して変形した際に、剛性の低い中央流路群271が変形することにより、電池セル11の変形に熱交換部20aを追従させることができる。このため、電池セル11の膨張時においても、電池セル11と熱交換部20aとの接触面を確保することができる。その結果、電池セル11と熱交換器20との密着性を向上できる。
【0067】
ここで、電池セル11が膨張すると、板面11aが熱交換器20に向かって膨らむ。電池セル11が膨張した場合には、板面11aの中央部の膨らみが最も大きくなる。
【0068】
これに対し、本実施形態の熱交換器20では、熱交換部20aのうち、電池セル11の板面11aの中央部に対向する部位の剛性を、他の部位の剛性より低くしている。これにより、電池セル11の膨張時に、電池セル11の変形に熱交換部20aを容易に追従させることができるので、電池セル11と熱交換器20との密着性をより確実に向上できる。
【0069】
そして、本実施形態の熱交換器20では、熱交換部20aのうち、側方流路群272の剛性を中央流路群271の剛性よりも高くしているので、側方流路群272の剛性は確保されている。このため、エンドプレート50、51の外側からの拘束荷重によって熱交換部20a全体がつぶれることを抑制できる。
【0070】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図面に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第3実施形態と比較して、区画部20dの構成が異なる。
【0071】
以下、区画部20dにおける熱交換器20の幅方向の長さを「幅長さ」という。また、複数の区画部20dのうち、中央流路群271に対応する部位に配置される区画部20dを「中央区画部20m」といい、側方流路群272に対応する部位に配置される区画部20dを「側方区画部20n」いう。
【0072】
図11に示すように、本実施形態の温度調整装置1では、熱交換部20aのうち、中央区画部20mの幅長さL1は、側方区画部20nの幅長さL2より短い。このため、熱交換部20aにおいて、中央流路群271の剛性が、側方流路群272の剛性よりも低い。
【0073】
つまり、本実施形態では、熱交換部20aにおいて、熱交換器20の幅方向の中央部の剛性が、熱交換器20の幅方向の端部側の剛性より低い。したがって、熱交換部20aのうち、電池セル11の板面11aの中央部に対向する部位は、他の部位よりも剛性が低い。
【0074】
本第4実施形態によれば、熱交換部20aのうち、電池セル11の板面11aの中央部に対向する部位の剛性を、他の部位の剛性より低くすることで、電池セル11の膨張時に、電池セル11の変形に熱交換部20aを容易に追従させることができる。これにより、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図面に基づいて説明する。本第5実施形態は、上記第4実施形態と比較して、区画部20dの構成が異なる。
【0076】
図12に示すように、本実施形態の温度調整装置1では、中央区画部20mの幅長さL1は、側方区画部20nの幅長さL2と同等である。また、熱交換部20aにおける熱媒体流れ方向に直交する断面において、側方区画部20nはセル積層方向に延びている。
【0077】
熱交換部20aにおける熱媒体流れ方向に直交する断面において、中央区画部20mは、セル積層方向に対して傾斜するように延びている。このため、熱交換部20aにおいて、中央流路群271は、側方流路群272に対して、セル積層方向に対する剛性が低い。
【0078】
つまり、本実施形態では、熱交換部20aにおいて、熱交換器20の幅方向の中央部の剛性が、熱交換器20の幅方向の端部側の剛性より低い。したがって、熱交換部20aのうち、電池セル11の板面11aの中央部に対向する部位は、他の部位よりも剛性が低い。
【0079】
本第5実施形態によれば、熱交換部20aのうち、電池セル11の板面11aの中央部に対向する部位の剛性を、他の部位の剛性より低くすることで、電池セル11の膨張時に、電池セル11の変形に熱交換部20aを容易に追従させることができる。これにより、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0081】
例えば、上記各実施形態では、熱交換器20の内部を熱媒体が折り返して流れるようにしたが、熱交換器20の内部を熱媒体が一方向に流れるようにしてもよい。
【0082】
また、上記各実施形態では、熱交換器20を蛇行状のサーペンタイン型としたが、熱交換器20をサーペンタイン型以外の構成としてもよい。
【0083】
また、上記第1実施形態では、区画部20dに山状に屈曲した屈曲部20eを設けることにより、区画部20dを弾性変形可能としたが、区画部20dの形状はこの態様に限定されない。例えば、区画部20dに、円弧状に湾曲した湾曲部を設けることにより、区画部20dを弾性変形可能としてもよい。
【0084】
また、上記第2実施形態では、複数の区画部20dの切り欠き部20jを、隙間20iのセル積層方向の長さが互いに等しくなるように構成したが、切り欠き部20jの構成はこの態様に限定されない。
【0085】
例えば、複数の区画部20dのうち、熱交換器20の幅方向の中央側に位置する区画部20dに形成される隙間20iのセル積層方向の長さを、熱交換器20の幅方向の外側に位置する区画部20dに形成される隙間20iのセル積層方向の長さよりも長くしてもよい。これにより、熱交換部20aのうち、電池セル11の膨張時において変形量が最も大きい板面11aの中央部に対応する部位が、他の部位より変形しやすくなるので、電池セル11の変形に熱交換部20aを容易に追従させることができる。
【0086】
また、上記第3、第4実施形態では、熱交換部20aにおける熱媒体流れ方向に直交する断面において、区画部20dをセル積層方向に延びるように構成したが、区画部20dの形状はこの態様に限定されない。例えば、熱交換部20aにおける熱媒体流れ方向に直交する断面において、区画部20dをセル積層方向に対して傾斜させてもよい。
【0087】
また、上記第5実施形態では、2つの中央区画部20mを、セル積層方向に対する傾斜方向が互いに逆向きとなるように設けたが、中央区画部20mの形状はこの態様に限定されない。例えば、2つの中央区画部20mを、セル積層方向に対する傾斜方向が互いに同一向きとなるように設けてもよい。
【0088】
また、上記第5実施形態では、中央区画部20mを2つ設けたが、中央区画部20mの数はこの態様に限定されない。例えば、中央区画部20mを1つまたは3つ以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0089】
11 電池セル(温度調整対象物)
20 熱交換器
20a 熱交換部
20c 熱媒体流路
20d 区画部
52~55 拘束部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12