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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240123BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240123BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240123BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20240123BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20240123BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K7/116
H02K9/19 B
F16C19/06
F16C19/54
F16C33/66 Z
F16D1/02 210
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019232021
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021100356
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】水谷 竜彦
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071686(JP,A)
【文献】特開2017-053367(JP,A)
【文献】登録実用新案第3023385(JP,U)
【文献】実開昭56-027423(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00- 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転するモータシャフトおよび前記モータシャフトに固定されるロータ本体を有するロータと、前記ロータを囲むステータと、を有するモータと、
前記モータシャフトに接続されるギア部と、
前記モータシャフトを回転可能に支持する複数のベアリングと、
内部に前記モータと前記ギア部とを収容するハウジングと、
を有し、
前記モータシャフトは、
前記ロータ本体に固定される第1シャフトと、
一方側が前記第1シャフトに接続され、他方側が前記ギア部に接続される第2シャフトと、
を有し、
前記第1シャフトと前記第2シャフトとの一方のシャフトは、外周面に複数の外歯部を有するスプラインシャフト部を有し、
前記第1シャフトと前記第2シャフトとの他方のシャフトは、前記スプラインシャフト部が嵌め合わされるスプライン穴部を有し、
前記スプライン穴部は、内周面に前記複数の外歯部と互いに噛み合う複数の内歯部を有し、
前記ギア部は、前記第2シャフトの外周面に接続されるヘリカルギア部を有し、
前記外歯部と前記内歯部との隙間には、オイルを有し、
前記第1シャフトと前記第2シャフトとは、内部が互いに繋がる中空のシャフトであり、かつ、内部にオイル通路部を有し、
前記スプラインシャフト部の外周面と前記スプライン穴部の内周面との隙間は、前記他方のシャフトの内部に開口し、
前記他方のシャフトは、内径が大きくなる拡径部を有し、
前記ハウジングは、前記一方のシャフトの周りにおいてオイルが貯留される貯留部を有し、
前記拡径部の内部と前記貯留部の内部とは、前記外歯部と前記内歯部との隙間を介して繋がる、駆動装置。
【請求項2】
前記スプラインシャフト部は、
軸方向に延びる中空部と、
前記中空部の内周面から外周面までを貫通する供給孔と、
を有し、
前記供給孔は、前記外歯部と前記内歯部との隙間に繋がる、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記供給孔は、前記スプラインシャフト部の周方向に沿って複数設けられる、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記スプラインシャフト部は、外周面の全周に亘って設けられた環状の供給路を有し、
前記供給路は、前記供給孔と繋がる、請求項2または3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記供給路は、環状の溝である、請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記中空部内には、オイルが通り、
前記供給孔および前記供給路は、前記中空部のうち、前記中空部内のオイルの流れ方向における上流側寄りの部分に設けられる、請求項4または5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記内歯部の歯数は、前記外歯部の歯数よりも少ない、請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記ハウジングは、
内部に前記モータが収容されるモータ収容部と、
内部に前記ギア部が収容されるギア収容部と、
前記モータ収容部の内部と前記ギア収容部の内部とを仕切る仕切壁部と、
を有し、
前記ベアリングは、
前記第1シャフトを回転可能に支持する第1ベアリングと、
前記第2シャフトを回転可能に支持する第2ベアリングと、
を含み、
前記仕切壁部は、
前記貯留部と、
内部に前記第1ベアリングを保持する第1保持部と、
内部に前記第2ベアリングを保持する第2保持部と、
を有し、
前記第1保持部の内部と前記第2保持部の内部とは、前記貯留部の内部を介して繋がる、請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記他方のシャフトは、前記拡径部の内周面から外周面までを貫通する貫通孔を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記一方のシャフトは、前記第2シャフトであり、
前記他方のシャフトは、前記第1シャフトである、請求項1からのいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記複数のベアリングは、
前記第1シャフトの軸方向両端部を回転可能に支持するベアリングと、
前記第2シャフトの軸方向両端部を回転可能に支持するベアリングと、
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータのロータ軸とロータ軸によって動力が伝達される駆動軸とがスプライン結合により互いに連結された駆動装置が知られている。例えば、特許文献1には、ロータ軸の両端部と駆動軸の両端部とがそれぞれベアリングで支持された駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-214646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータ軸と駆動軸とがスプライン結合により連結された駆動装置において、駆動軸にヘリカルギア部が接続されている場合、駆動軸にはヘリカルギア部から軸方向の力が加えられる。そのため、駆動装置のモードが切り替えられる等によりヘリカルギア部に加えられるトルクの向きが反転すると、駆動軸が軸方向に移動する。ここで、スプライン結合では、基本的にロータ軸と駆動軸との軸方向の相対的な移動が許容されるため、駆動軸が軸方向に移動してもロータ軸には軸方向の力が伝わりにくい。しかし、スプライン結合の外歯部と内歯部とが強く噛み合った状態では、例えば外歯部の軸方向端部がスプライン穴部の内周面に食い込む等により、駆動軸に加えられた軸方向の力がロータ軸に伝えられる場合がある。そのため、駆動軸の軸方向の移動に伴ってロータ軸が軸方向に移動する場合がある。以上のようにして各軸が軸方向に移動すると、各軸を回転可能に支持するベアリングに軸方向の負荷が加えられる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ベアリングにかかる軸方向の負荷を抑制できる構造を有する駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、回転軸を中心に回転するモータシャフトおよび前記モータシャフトに固定されるロータ本体を有するロータと、前記ロータを囲むステータと、を有するモータと、前記モータシャフトに接続されるギア部と、前記モータシャフトを回転可能に支持する複数のベアリングと、を有する。前記モータシャフトは、前記ロータ本体に固定される第1シャフトと、一方側が前記第1シャフトに接続され、他方側が前記ギア部に接続される第2シャフトと、を有する。前記第1シャフトと前記第2シャフトとの一方のシャフトは、外周面に複数の外歯部を有するスプラインシャフト部を有する。前記第1シャフトと前記第2シャフトとの他方のシャフトは、前記スプラインシャフト部が嵌め合わされるスプライン穴部を有する。前記スプライン穴部は、内周面に前記複数の外歯部と互いに噛み合う複数の内歯部を有する。前記ギア部は、前記第2シャフトの外周面に接続されるヘリカルギア部を有する。前記駆動装置は、前記外歯部と前記内歯部との隙間にオイルを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置において、ベアリングにかかる軸方向の負荷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の駆動装置を模式的に示す概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態のモータシャフトの一部を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態の第1シャフトの一部を示す斜視図である。
図4図4は、第1実施形態の第2シャフトの一部およびギア部の一部を示す斜視図である。
図5図5は、第1実施形態の外歯部と内歯部との噛み合いを示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態の変形例における第2シャフトの一部およびギア部の一部を示す斜視図である。
図7図7は、第2実施形態のモータシャフトの一部を示す断面図である。
図8図8は、第2実施形態の外歯部と内歯部との噛み合いを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、各図に示す本実施形態の駆動装置1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置1が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0010】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。
【0011】
各図に適宜示す回転軸J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、回転軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、回転軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、回転軸J1を中心とする周方向、すなわち、回転軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。駆動装置1は、モータ2と、減速装置4および差動装置5を含むギア部3と、ハウジング6と、オイルポンプ96と、クーラー97と、パイプ10と、複数のベアリング27と、を有する。本実施形態において複数のベアリング27は、第1ベアリング27aと、第2ベアリング27bと、第3ベアリング27cと、第4ベアリング27dと、を含む。なお、本実施形態において、駆動装置1はインバータユニットを含まない。言い換えると、駆動装置1はインバータユニットと別体構造となっている。
【0013】
ハウジング6は、内部にモータ2とギア部3とを収容する。ハウジング6は、モータ収容部61と、ギア収容部62と、仕切壁部63と、を有する。モータ収容部61の内部には、モータ2が収容される。ギア収容部62の内部には、ギア部3が収容される。ギア収容部62は、モータ収容部61の左側に位置する。モータ収容部61の底部61fは、ギア収容部62の底部62cより上側に位置する。仕切壁部63は、モータ収容部61の内部とギア収容部62の内部とを軸方向に仕切る。仕切壁部63には、仕切壁部63を軸方向に貫通する接続孔68が設けられる。接続孔68は、モータ収容部61の内部とギア収容部62の内部とを繋ぐ。仕切壁部63は、ステータ30の左側に位置する。
【0014】
図2に示すように、仕切壁部63は、仕切壁部63を軸方向に貫通する孔部66を有する。孔部66には、後述するモータシャフト21が通される。孔部66は、例えば、回転軸J1を中心とする円形状の孔である。孔部66は、第1保持部66aと、第2保持部66bと、貯留部66cと、を有する。すなわち、仕切壁部63は、第1保持部66aと、第2保持部66bと、貯留部66cと、を有する。また、ハウジング6は、第1保持部66aと、第2保持部66bと、貯留部66cと、を有する。
【0015】
第1保持部66aは、内部に第1ベアリング27aを保持する部分である。第1保持部66aは、右側に開口する。第1保持部66aは、モータ収容部61の内部に開口する。第2保持部66bは、内部に第2ベアリング27bを保持する部分である。第2保持部66bは、第1保持部66aの左側に位置する。第2保持部66bは、左側に開口する。第2保持部66bは、ギア収容部62の内部に開口する。第2保持部66bの内径は、例えば、第1保持部66aの内径よりも大きい。
【0016】
貯留部66cは、後述する第2シャフト21bの周りにおいてオイルOが貯留される部分である。貯留部66cは、第1保持部66aと第2保持部66bとの軸方向の間に位置する。貯留部66cの内部は、軸方向の両側に開口する。貯留部66cの内部は、第1保持部66aの内部および第2保持部66bの内部に繋がる。すなわち、第1保持部66aの内部と第2保持部66bの内部とは、貯留部66cの内部を介して繋がる。これにより、貯留部66cの内部のオイルOを、第1保持部66aに保持される第1ベアリング27aと第2保持部66bに保持される第2ベアリング27bとに供給できる。貯留部66cの内径は、第1保持部66aの内径よりも小さい。
【0017】
図1に示すように、ハウジング6は、内部に冷媒としてのオイルOを収容する。本実施形態では、モータ収容部61の内部およびギア収容部62の内部に、オイルOが収容される。ギア収容部62の内部における下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPのオイルOは、後述する油路90によってモータ収容部61の内部に送られる。モータ収容部61の内部に送られたオイルOは、モータ収容部61の内部における下部領域に溜まる。モータ収容部61の内部に溜まったオイルOの少なくとも一部は、接続孔68を介してギア収容部62に移動し、オイル溜りPに戻る。
【0018】
なお、本明細書において「ある部分の内部にオイルが収容される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、ある部分の内部にオイルが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態においてモータ収容部61の内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータ収容部61の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータ収容部61の内部のオイルOがすべて接続孔68を通ってギア収容部62に移動してしまっていてもよい。なお、後述する油路90によってモータ収容部61の内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータ収容部61の内部に残っていてもよい。
【0019】
オイルOは、後述する油路90内を循環する。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOとしては、潤滑油および冷却油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0020】
本実施形態においてモータ2は、インナーロータ型のモータである。モータ2は、駆動装置1の動力源としての機能と、発電装置としての機能と、を兼ね備える。以下の説明において、モータ2が動力源となり車両を駆動する状態を駆動モードと呼び、モータ2が発電装置として発電する状態を回生モードと呼ぶ。モータ2は、ロータ20と、ステータ30と、を有する。
【0021】
ロータ20は、水平方向に延びる回転軸J1を中心として回転可能である。ロータ20は、モータシャフト21と、ロータ本体24と、を有する。ロータ本体24は、モータシャフト21に固定される。図示は省略するが、ロータ本体24は、モータシャフト21の外周面に固定されるロータコアと、ロータコアに固定されるロータマグネットと、を有する。ロータ20のトルクは、ギア部3に伝達される。
【0022】
モータシャフト21は、回転軸J1を中心として軸方向に沿って延びる。モータシャフト21は、回転軸J1を中心に回転する。モータシャフト21は、モータ収容部61の内部とギア収容部62の内部とに跨って延びる。モータシャフト21の左側部分は、ギア収容部62の内部に突出する。モータシャフト21は、第1シャフト21aと、第2シャフト21bと、を有する。
【0023】
本実施形態においてモータシャフト21は、第1シャフト21aと第2シャフト21bとが軸方向に連結されて構成される。本実施形態において第1シャフト21aと第2シャフト21bとは、内部が互いに繋がる中空のシャフトである。第1シャフト21aの内部および第2シャフト21bの内部には、オイルOが通る。すなわち、第1シャフト21aは、内部にオイル通路部21cを有する。第2シャフト21bは、内部にオイル通路部21dを有する。
【0024】
第1シャフト21aは、ロータ本体24に固定されるシャフトである。より詳細には、第1シャフト21aの外周面にロータ本体24が固定される。第1シャフト21aは、モータ収容部61の内部に収容される。第1シャフト21aの軸方向両端部は、第1ベアリング27aと第3ベアリング27cとによって回転可能に支持される。すなわち、本実施形態においてベアリング27は、第1シャフト21aの軸方向両端部を回転可能に支持するベアリングとして、第1ベアリング27aと第3ベアリング27cとを含む。図2に示すように、第1シャフト21aの左側の端部は、第1保持部66aの内部に位置する。第1シャフト21aの左側の端面は、貯留部66cの内部と軸方向に対向する。
【0025】
図3に示すように、第1シャフト21aは、スプライン穴部28を有する。本実施形態においてスプライン穴部28は、第1シャフト21aの左側の端部から右側に窪む。スプライン穴部28は、例えば、回転軸J1を中心とする円形の穴である。スプライン穴部28の内部は、第1シャフト21aの左側の端部における内部である。スプライン穴部28は、軸方向に延びる。スプライン穴部28は、軸方向両側に開口する。
【0026】
スプライン穴部28は、内周面に複数の内歯部28aを有する。複数の内歯部28aは、径方向内側に突出する。複数の内歯部28aは、軸方向に延びる。複数の内歯部28aは、周方向に沿って間隔を空けて配置される。複数の内歯部28aは、例えば、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。内歯部28aの左側の端部は、スプライン穴部28の内周面における左側の端部よりも右側に離れた位置に位置する。
【0027】
図2に示すように、第1シャフト21aは、内径が大きくなる拡径部22を有する。拡径部22の内径は、第1シャフト21aのうち拡径部22の軸方向両側に位置する部分の内径よりも大きい。拡径部22は、スプライン穴部28の右側に位置する。拡径部22の内部は、スプライン穴部28の内部に繋がる。拡径部22の内周面22aは、テーパ面22bと、円筒面22cと、を有する。
【0028】
テーパ面22bは、内周面22aの左側部分である。テーパ面22bの左側の端部は、スプライン穴部28の内周面のうち右側の端部に繋がる。テーパ面22bは、回転軸J1を中心とする。テーパ面22bの内径は、左側から右側に向かうに従って大きくなる。円筒面22cは、テーパ面22bの右側に繋がる。円筒面22cは、内周面22aの右側部分である。円筒面22cは、回転軸J1を中心とする。
【0029】
図1に示すように、第1シャフト21aは、第1シャフト21aの内周面から外周面までを貫通する貫通孔23を有する。貫通孔23は、径方向に延びて第1シャフト21aの内部と第1シャフト21aの外部とを繋ぐ。図2に示すように、貫通孔23は、拡径部22の内周面から外周面までを貫通する貫通孔23aを含む。貫通孔23aは、周方向に沿って複数設けられる。貫通孔23aは、例えば、2つ設けられる。
【0030】
第1シャフト21aのオイル通路部21cを通るオイルOの一部は、貫通孔23aから第1シャフト21aの外部に流出する。貫通孔23aから流出したオイルOは、例えば、ロータ本体24の内部を通って、ロータ20の径方向外側に噴出され、ステータ30に供給される。すなわち、本実施形態において貫通孔23aは、ステータ30にオイルOを供給する孔である。これにより、ステータ30をオイルOによって冷却できる。
【0031】
図1に示すように、第2シャフト21bは、第1シャフト21aの左側に位置する。第2シャフト21bは、一方側が第1シャフト21aに接続され、他方側がギア部3に接続されるシャフトである。なお、本明細書において「第2シャフトは、一方側が第1シャフトに接続され、他方側がギア部に接続される」とは、第2シャフトのうちギア部に接続される部分が、第2シャフトのうち第1シャフトに接続される部分よりも、第1シャフトから軸方向に離れた位置に位置すればよい。すなわち、本実施形態において「第2シャフト21bは、一方側が第1シャフト21aに接続され、他方側がギア部3に接続される」とは、第2シャフト21bのうちギア部3に接続される部分が、第2シャフト21bのうち第1シャフト21aに接続される部分よりも左側に位置すればよい。本実施形態において第2シャフト21bの右側の端部は、第1シャフト21aの左側の端部に接続される。第2シャフト21bの軸方向の中央部分は、ギア部3に接続される。
【0032】
第2シャフト21bは、ギア収容部62の内部に収容される。第2シャフト21bの軸方向両端部は、第2ベアリング27bと第4ベアリング27dとによって回転可能に支持される。すなわち、本実施形態においてベアリング27は、第2シャフト21bの軸方向両端部を回転可能に支持するベアリングとして、第2ベアリング27bと第4ベアリング27dとを含む。図2に示すように、第2シャフト21bの右側の端部は、孔部66を介して、モータ収容部61の内部に突出する。
【0033】
図4に示すように、第2シャフト21bは、スプラインシャフト部26を有する。本実施形態においてスプラインシャフト部26は、第2シャフト21bの右側の端部である。スプラインシャフト部26は、軸方向に延びる。図2に示すように、本実施形態では第2シャフト21bが中空シャフトであるため、スプラインシャフト部26は、軸方向の全体に亘って中空である。すなわち、スプラインシャフト部26は、軸方向に延びる中空部26dを有する。本実施形態において中空部26dは、スプラインシャフト部26の軸方向の全体を構成する。中空部26dの内部は、オイル通路部21dの一部を構成する。スプラインシャフト部26は、スプライン穴部28に嵌め合わされる。スプラインシャフト部26の外周面とスプライン穴部28の内周面との隙間29は、第1シャフト21aの内部に開口する。スプラインシャフト部26の外周面とスプライン穴部28の内周面との隙間29は、貯留部66cの内部に開口する。
【0034】
図4に示すように、スプラインシャフト部26は、外周面に複数の外歯部26aを有する。複数の外歯部26aは、径方向外側に突出する。複数の外歯部26aは、軸方向に延びる。複数の外歯部26aは、周方向に沿って間隔を空けて配置される。複数の外歯部26aは、例えば、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。本実施形態において外歯部26aの歯数は、内歯部28aの歯数と同じである。
【0035】
図5に示すように、複数の内歯部28aと複数の外歯部26aとは、互いに噛み合う。これにより、駆動モードにおいて、複数の内歯部28aと複数の外歯部26aとを介して、第1シャフト21aの回転軸J1回りの回転が第2シャフト21bに伝達される。また、回生モードにおいて、複数の内歯部28aと複数の外歯部26aとを介して、第2シャフト21bの回転軸J1回りの回転が第1シャフト21aに伝達される。
【0036】
周方向に隣り合う外歯部26a同士の間隔は、内歯部28aの周方向の寸法よりも大きい。周方向に隣り合う内歯部28a同士の間隔は、外歯部26aの周方向の寸法よりも大きい。そのため、外歯部26aと内歯部28aとの間には、隙間70が設けられる。隙間70は、周方向に沿って間隔を空けて複数設けられる。図2に示すように、外歯部26aと内歯部28aとの周方向の隙間70は、軸方向に延びる。隙間70は、スプラインシャフト部26の外周面とスプライン穴部28の内周面との隙間29の一部である。隙間70は、軸方向両側に開口する。隙間70は、第1シャフト21aの内部に開口する開口部70aを有する。開口部70aは、隙間70の右側の端部である。本実施形態において開口部70aは、拡径部22の内部に開口する。
【0037】
隙間70は、スプライン穴部28の内部に開口する開口部70bを有する。開口部70bは、隙間70の左側の端部である。開口部70bは、スプライン穴部28のうち内歯部28aよりも左側に位置する部分の内部に開口する。開口部70bは、スプライン穴部28の内部を介して、貯留部66cの内部に繋がる。これにより、拡径部22の内部と貯留部66cの内部とは、隙間70を介して繋がる。
【0038】
スプラインシャフト部26は、中空部26dの内周面から外周面までを貫通する供給孔26bを有する。本実施形態において供給孔26bは、スプラインシャフト部26の周方向に沿って複数設けられる。供給孔26bは、例えば、2つ設けられる。2つの供給孔26bは、回転軸J1を径方向に挟んで配置される。図4に示すように、供給孔26bは、例えば、円形状の孔である。本実施形態において供給孔26bは、スプラインシャフト部26における軸方向の中央部分に位置する。供給孔26bの径方向外側の端部は、例えば、外歯部26aの一部を切り欠いて設けられる。図2に示すように、供給孔26bの径方向外側の端部は、スプラインシャフト部26の外周面とスプライン穴部28の内周面との隙間29に開口する。すなわち、供給孔26bは、隙間29に繋がる。本実施形態では、供給孔26bは、隙間29のうち、外歯部26aと内歯部28aとの隙間70に繋がる。
【0039】
なお、供給孔26bの径方向外側の端部は、スプラインシャフト部26の外周面のうち外歯部26aが設けられていない部分に設けられてもよい。スプラインシャフト部26の外周面のうち外歯部26aが設けられていない部分とは、例えば、スプラインシャフト部26の外周面のうち周方向に隣り合う外歯部26a同士の間に位置する部分である。この場合、外歯部26aは、供給孔26bによっては切り欠かれない。
【0040】
図4に示すように、スプラインシャフト部26は、環状の供給路26cを有する。供給路26cは、スプラインシャフト部26の外周面の全周に亘って設けられる。供給路26cは、例えば、回転軸J1を中心とする円環状である。本実施形態において供給路26cは、径方向外側に開口する環状の溝である。供給路26cは、スプラインシャフト部26のうち周方向に隣り合う外歯部26a同士の間の外周面よりも径方向内側に窪む。供給路26cは、スプラインシャフト部26の外周面のうち軸方向の中央部分に位置する。
【0041】
供給路26cは、複数の外歯部26aの全てを周方向に貫通する。供給路26cによって全ての外歯部26aは、軸方向に分断される。周方向に隣り合う外歯部26a同士の間は、供給路26cを介して繋がる。供給路26cの途中には、供給孔26bの径方向外側の端部が設けられる。これにより、供給路26cは、供給孔26bと繋がる。本実施形態において供給路26cの軸方向の幅は、供給孔26bの内径よりも小さい。
【0042】
図1に示すように、ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。より詳細には、ステータ30は、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータ30は、ロータ20を囲む。ステータ30は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。ステータコア32は、モータ収容部61の内周面に固定される。図示は省略するが、ステータコア32は、軸方向に延びる円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。複数のティースは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。
【0043】
コイルアセンブリ33は、周方向に沿ってステータコア32に取り付けられる複数のコイル31を有する。複数のコイル31は、図示しないインシュレータを介してステータコア32の各ティースにそれぞれ装着される。複数のコイル31は、周方向に沿って配置される。より詳細には、複数のコイル31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。図示は省略するが、コイルアセンブリ33は、各コイル31を結束する結束部材等を有してもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。
【0044】
コイルアセンブリ33は、ステータコア32から軸方向に突出するコイルエンド33a,33bを有する。コイルエンド33aは、ステータコア32から右側に突出する部分である。コイルエンド33bは、ステータコア32から左側に突出する部分である。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも右側に突出する部分を含む。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも左側に突出する部分を含む。コイルエンド33a,33bは、例えば、回転軸J1を中心とする円環状である。図示は省略するが、コイルエンド33a,33bは、各コイル31を結束する結束部材等を含んでもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を含んでもよい。
【0045】
複数のベアリング27は、モータシャフト21を回転可能に支持する。第1ベアリング27aおよび第3ベアリング27cは、第1シャフト21aを回転可能に支持するベアリングである。第2ベアリング27bおよび第4ベアリング27dは、第2シャフト21bを回転可能に支持するベアリングである。第1ベアリング27aおよび第2ベアリング27bは、仕切壁部63に保持される。第3ベアリング27cは、モータ収容部61のうちロータ20およびステータ30の右側を覆う蓋部材61bに保持される。第4ベアリング27dは、ギア収容部62のうち左側に位置する壁部に保持される。
【0046】
第1ベアリング27a、第2ベアリング27b、第3ベアリング27c、および第4ベアリング27dは、例えば、ボールベアリングである。すなわち、各ベアリング27は、内輪と、内輪の径方向外側に位置する外輪と、内輪と外輪との径方向の間に位置する複数のボールと、を有する。各ベアリング27の内輪は、モータシャフト21の外周面に嵌め合わされて固定される。
【0047】
ここで、定位置予圧方式で組付けられるボールベアリングは、予め測定した寸法に応じて内輪に対し外輪を軸方向にずらした状態で固定される。これにより、内輪に対する外輪のがたつきを抑制し、回転支持の精度を高めることができる。この場合、ボールに対する内輪および外輪の隙間をゼロとすると、使用時の発熱に起因した膨張により、ボールに加わる荷重が大きくなり、ボールベアリングの著しい寿命低下を招く虞がある。このため、ボールベアリングに定位置予圧を付与する場合、内輪、ボール、および外輪の関係に、若干の隙間を設けた状態で、内輪および外輪を組み付けることがなされる。組付けられたボールベアリングは、この隙間分だけ、外輪が内輪に対し軸方向に移動可能である。本明細書において、この隙間を残存隙間と呼ぶ。言い換えると、外輪は、内輪に対し残存隙間分だけ移動が許容される。
【0048】
したがって、本実施形態の各ベアリング27に支持されるモータシャフト21は、各ベアリング27の残存隙間の分だけ軸方向に移動可能となっている。より具体的には、第1シャフト21aは、第1ベアリング27aおよび第3ベアリング27cの残存隙間の分だけ軸方向に移動可能となっている。第2シャフト21bは、第2ベアリング27bおよび第4ベアリング27dの残存隙間の分だけ軸方向に移動可能となっている。
【0049】
ギア部3は、ハウジング6のギア収容部62に収容される。ギア部3は、モータシャフト21に接続される。より詳細には、ギア部3は、モータシャフト21の左側の端部に接続される。ギア部3は、減速装置4と、差動装置5と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
【0050】
減速装置4は、モータ2に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1ヘリカルギア部41と、第2ヘリカルギア部42と、第3ヘリカルギア部43と、中間シャフト45と、を有する。すなわち、ギア部3は、第1ヘリカルギア部41と、第2ヘリカルギア部42と、第3ヘリカルギア部43と、中間シャフト45と、を有する。
【0051】
第1ヘリカルギア部41は、第2シャフト21bの外周面に接続される。図4に示すように、第1ヘリカルギア部41は、例えば、第2シャフト21bと一体に成形される。なお、第1ヘリカルギア部41は、第2シャフト21bと別体として成形され、第2シャフト21bの外周面に固定されてもよい。第1ヘリカルギア部41は、モータシャフト21とともに、回転軸J1を中心に回転する。
【0052】
図1に示すように、中間シャフト45は、回転軸J1と平行な中間軸J2に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸J2を中心として回転する。第2ヘリカルギア部42および第3ヘリカルギア部43は、中間シャフト45の外周面に固定される。第2ヘリカルギア部42と第3ヘリカルギア部43は、中間シャフト45を介して接続される。第2ヘリカルギア部42および第3ヘリカルギア部43は、中間軸J2を中心として回転する。第2ヘリカルギア部42は、第1ヘリカルギア部41に噛み合う。第3ヘリカルギア部43は、差動装置5の後述するリングギア51と噛み合う。
【0053】
モータ2から出力されるトルクは、モータシャフト21、第1ヘリカルギア部41、第2ヘリカルギア部42、中間シャフト45、および第3ヘリカルギア部43をこの順に介して差動装置5のリングギア51へ伝達される。各ギアのギア比およびギアの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギアの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0054】
差動装置5は、減速装置4を介しモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。このように、本実施形態においてギア部3は、減速装置4および差動装置5を介して、車両の車軸55にモータ2のトルクを伝達する。これにより、駆動装置1は、車両の車軸55を回転させる。
【0055】
差動装置5は、リングギア51と、図示しないギアハウジングと、図示しない一対のピニオンギアと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギアと、を有する。リングギア51は、回転軸J1と平行な差動軸J3を中心として回転する。リングギア51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。
【0056】
モータ2には、ハウジング6の内部においてオイルOが循環する油路90が設けられる。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給し、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータ収容部61の内部とギア収容部62の内部とに跨って設けられる。
【0057】
なお、本明細書において「油路」とは、オイルの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルの流動を作る「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。オイルを一時的に滞留させる経路とは、例えば、オイルを貯留するリザーバ等を含む。
【0058】
油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギア収容部62内に設けられる。
【0059】
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギア51の回転によってオイル溜りPからオイルOをかき上げて、第1のリザーバ93でオイルOを受ける経路である。第1のリザーバ93は、上側に開口する。第1のリザーバ93は、リングギア51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの液面Sが高い場合等には、第1のリザーバ93は、リングギア51に加えて第2ヘリカルギア部42および第3ヘリカルギア部43によってかき上げられたオイルOも受ける。
【0060】
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93から第2シャフト21bのオイル通路部21dにオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、モータシャフト21の内部をオイルOが通過する経路である。シャフト内経路91cは、オイル通路部21dとオイル通路部21cとによって構成される。モータシャフト21内においてオイルOは、左側から右側に流れる。すなわち、モータシャフト21内を流れるオイルOは、第2シャフト21bの内部から第1シャフト21aの内部へと流れる。ロータ内経路91dは、モータシャフト21の貫通孔23からロータ本体24の内部を通過して、ステータ30に飛散する経路である。
【0061】
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
【0062】
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部61内の下部領域に溜る。モータ収容部61内の下部領域に溜ったオイルOは、仕切壁部63に設けられた接続孔68を介してギア収容部62に移動する。以上のようにして、第1の油路91は、オイルOをロータ20およびステータ30に供給する。
【0063】
図2に示すように、シャフト内経路91cを通るオイルOの一部は、供給孔26bを介して、外歯部26aと内歯部28aとの隙間70に供給される。これにより、図5に示すように、駆動装置1は、外歯部26aと内歯部28aとの隙間70に、オイルOを有する。隙間70に供給されたオイルOの一部は、例えば、貯留部66cに流出する。これにより、貯留部66cにオイルOが貯留される。
【0064】
なお、本明細書において「駆動装置が外歯部と内歯部との隙間にオイルを有する」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、外歯部と内歯部との隙間にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、外歯部と内歯部との隙間にオイルが位置していなくてもよい。また、本明細書において「駆動装置が外歯部と内歯部との隙間にオイルを有する」とは、外歯部と内歯部との隙間の少なくとも1つにオイルがあればよい。すなわち、本実施形態において複数の隙間70のうちの一部の隙間70には、オイルOが無くてもよい。
【0065】
図1に示すように、第2の油路92においてオイルOは、オイル溜りPから引き上げられてステータ30に供給される。第2の油路92には、オイルポンプ96と、クーラー97と、パイプ10と、が設けられる。第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、第4の流路94と、を有する。
【0066】
第1の流路92a、第2の流路92b、および第3の流路92cは、ハウジング6の壁部に設けられる。第1の流路92aは、オイル溜りPとオイルポンプ96とを繋ぐ。第2の流路92bは、オイルポンプ96とクーラー97とを繋ぐ。第3の流路92cは、クーラー97と第4の流路94とを繋ぐ。第4の流路94は、仕切壁部63に設けられる。第4の流路94は、第3の流路92cとパイプ10の内部とを繋ぐ。パイプ10は、軸方向に延びる。パイプ10は、ステータ30の径方向外側に位置する。パイプ10は、コイルエンド33a,33bにオイルを供給するオイル供給孔と、ステータコア32にオイルを供給するオイル供給孔と、を有する。図示は省略するが、パイプ10は、例えば、複数設けられる。
【0067】
オイルポンプ96は、冷媒としてのオイルOを送るポンプである。本実施形態においてオイルポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。オイルポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92c、第4の流路94、およびパイプ10を介して、オイルOをモータ2に供給する。パイプ10に流入したオイルOは、パイプ10内を右側に流れ、パイプ10に設けられたオイル供給口からステータ30に供給される。このようにして、パイプ10からステータ30にオイルOを供給でき、ステータ30を冷却できる。パイプ10からステータ30に供給されたオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部61内の下部領域に溜る。モータ収容部61内の下部領域に溜ったオイルOは、仕切壁部63に設けられた接続孔68を介してギア収容部62のオイル溜りPに移動する。以上のようにして、第2の油路92は、オイルOをステータ30に供給する。
【0068】
クーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。クーラー97には、第2の流路92bおよび第3の流路92cが接続される。第2の流路92bおよび第3の流路92cは、クーラー97の内部流路を介して繋がる。クーラー97には、図示しないラジエータで冷却された冷却水を通過させる冷却水用配管98が接続される。クーラー97の内部を通過するオイルOは、冷却水用配管98を通過する冷却水との間で熱交換されて冷却される。
【0069】
駆動装置1が駆動モードである場合、第1シャフト21aの回転が伝達され、第2シャフト21bが回転させられる。一方、駆動装置1が回生モードである場合、第2シャフト21bの回転が第1シャフト21aに伝達される。モータ2のモードが切り替えられると、外歯部26aと内歯部28aとが接触する周方向の面が切り替わる。
【0070】
具体的に、例えば図5に示すように、駆動装置1が駆動モードである場合に、内歯部28aの周方向一方側の面と外歯部26aの周方向他方側の面とが接触しているとする。ここで、周方向一方側は、矢印θが向く側である。周方向他方側は、矢印θが向く側と逆側である。この場合において、矢印θの向きは、モータシャフト21が回転する向きである。
【0071】
この場合、駆動装置1が駆動モードから回生モードに切り替えられると、外歯部26aが内歯部28aに対して図5の白抜きの矢印で示す周方向一方側向きに相対移動する。回生モードでは、外歯部26aの周方向一方側の面と内歯部28aの周方向他方側の面とが接触した状態で、第2シャフト21bの回転によって第1シャフト21aが回転させられる。これにより、モータ2が発電機として機能する。
【0072】
また、駆動装置1が回生モードから駆動モードに切り替わる際には、モータ2によって第1シャフト21aが回転させられるため、第1シャフト21aが第2シャフト21bに対して周方向一方側に相対回転する。これにより、内歯部28aが外歯部26aに対して周方向一方側向きに相対移動し、外歯部26aと内歯部28aとが図5に示す状態で接触する。したがって、第1シャフト21aの回転が第2シャフト21bに伝達される。
【0073】
駆動装置1が駆動モードであるとき、第2シャフト21bおよびギア部3には、第1シャフト21aが回転する向きと同じ向きのトルクが加わる。一方、駆動装置1が回生モードであるときには、モータ2が車輪の回転を減速させる回生ブレーキとして機能する。そのため、第2シャフト21bおよびギア部3には、第1シャフト21aが回転する向きと逆向きのトルクが加わる。これにより、駆動装置1のモードが駆動モードと回生モードとの間で切り替えられると、第2シャフト21bに加えられるトルクの向きが反転する。
【0074】
ここで、本実施形態では、ギア部3は第2シャフト21bの外周面に接続された第1ヘリカルギア部41を有する。そのため、第2シャフト21bには、トルクの加わる向きに応じて、軸方向一方側または軸方向他方側の応力が加わる。これにより、駆動装置1のモードが切り替わってトルクが加えられる向きが反転すると、第2シャフト21bが、第2ベアリング27bおよび第4ベアリング27dの残存隙間の分だけ軸方向に移動する。そのため、第2シャフト21bの軸方向の移動によって、第2シャフト21bを支持するベアリング27に軸方向の負荷が加えられる虞があった。
【0075】
一方、第1シャフト21aは、第2シャフト21bとスプライン結合により連結される。そのため、基本的に第1シャフト21aと第2シャフト21bとの軸方向の相対的な移動が許容される。これにより、第2シャフト21bが軸方向に移動しても第1シャフト21aには軸方向の力が伝わりにくい。しかし、モータシャフト21が回転することでスプライン結合の外歯部26aと内歯部28aとが強く噛み合った状態では、例えば外歯部26aの軸方向端部がスプライン穴部28の内周面に食い込む等により、第2シャフト21bに加えられた軸方向の力が第1シャフト21aに伝えられる場合がある。そのため、第2シャフト21bの軸方向の移動に伴って第1シャフト21aが軸方向に移動し、第1シャフト21aを回転可能に支持するベアリング27に軸方向の負荷が加えられる虞がある。
【0076】
なお、駆動装置1のモード切替時において第2シャフト21bが移動する軸方向の向きは、第1ヘリカルギア部41の歯のねじれる向きおよび第2ヘリカルギア部42の歯のねじれる向きによって異なる。第2シャフト21bは、例えば、駆動装置1が駆動モードから回生モードに切り替わった際に、第1シャフト21aに近づく向きに軸方向に移動する。一方、第2シャフト21bは、例えば、駆動装置1が回生モードから駆動モードに切り替わった際に、第1シャフト21aから離れる向きに軸方向に移動する。なお、駆動装置1が駆動モードから回生モードに切り替わった際に、第2シャフト21bが第1シャフト21aから離れる向きに軸方向に移動し、駆動装置1が回生モードから駆動モードに切り替わった際に、第2シャフト21bが第1シャフト21aに近づく向きに軸方向に移動する構成としてもよい。
【0077】
第2シャフト21bが第1シャフト21aに近づく向きに軸方向に移動する際に、外歯部26aの軸方向端部がスプライン穴部28の内周面に食い込みやすく、第2シャフト21bの軸方向の移動が第1シャフト21aに伝わりやすい。一方、第2シャフト21bが第1シャフト21aから離れる向きに移動する際には、外歯部26aの軸方向端部がスプライン穴部28の内周面に食い込みにくく、第2シャフト21bの軸方向の移動が第1シャフト21aに伝わりにくい。すなわち、第2シャフト21bが第1シャフト21aに近づく向きに軸方向に移動する際に、第1シャフト21aを支持するベアリング27に軸方向の負荷が加えられる虞が高くなりやすい。
【0078】
なお、第2シャフト21bの軸方向の移動に伴って、第1シャフト21aも軸方向に移動する虞があること、および特に第2シャフト21bが第1シャフト21aに近づく向きに軸方向に移動した際に第1シャフト21aも軸方向に移動する虞が高いことは、本発明者らによって新たに得られた知見である。
【0079】
以上の問題に対して、本実施形態によれば、駆動装置1は、外歯部26aと内歯部28aとの隙間70にオイルOを有する。そのため、オイルOがダンパとして機能し、モードが切り替えられた際における外歯部26aと内歯部28aとが互いに近づく相対速度を小さくできる。例えば、駆動モードから回生モードに切り替えられて、図5に白抜きの矢印で示すように外歯部26aの周方向一方側の面が内歯部28aの周方向他方側の面に近づく際に、隙間70にオイルOがあることで、外歯部26aと内歯部28aとはオイルOを隙間70から押し出しながら比較的ゆっくりと互いに近づく。
【0080】
これにより、モードが切り替えられた際に外歯部26aと内歯部28aとが逆向きに噛み合って接触するまでの時間を長くできる。したがって、外歯部26aと内歯部28aとが強く噛み合うまでの間に、第2シャフト21bを第1シャフト21aに対して軸方向に相対移動させることができる。したがって、モード切替時において、第1シャフト21aに第2シャフト21bから軸方向の力が加えられることを抑制でき、第1シャフト21aが軸方向に移動することを抑制できる。そのため、第1シャフト21aを支持する第1ベアリング27aおよび第3ベアリング27cにかかる軸方向の負荷を抑制できる。特に、急激な負荷が第1ベアリング27aおよび第3ベアリング27cに発生することを抑制できる。これにより、第1ベアリング27aおよび第3ベアリング27cとして、比較的小型で、かつ、比較的耐荷重が小さいベアリングを採用することができる。
【0081】
また、第2シャフト21bが軸方向に移動する際において、オイルOは潤滑油としても機能し、第2シャフト21bを軸方向に滑りやすくできる。また、オイルOの粘性により第2シャフト21bの軸方向の移動に対しても、オイルOがダンパとして機能する。そのため、第2シャフト21bが軸方向に移動する速度も小さくできる。これにより、第2シャフト21bが軸方向に移動した際に、第2シャフト21bを支持する第2ベアリング27bおよび第4ベアリング27dにかかる軸方向の負荷を抑制できる。特に、急激な負荷が第2ベアリング27bおよび第4ベアリング27dに発生することを抑制できる。したがって、第2ベアリング27bおよび第4ベアリング27dとして、比較的小型で、かつ、比較的耐荷重が小さいベアリングを採用することができる。
【0082】
このように、本実施形態によれば、複数のベアリング27にかかる軸方向の負荷を抑制できる。この効果は、本実施形態のように、複数のベアリング27が、第1シャフト21aの軸方向両端部を回転可能に支持するベアリング27と、第2シャフト21bの軸方向両端部を回転可能に支持するベアリングと、を含む構成において特に有用に得られる。
【0083】
なお、第2シャフト21bの軸方向の移動は、駆動装置1のモードが切り替えられた際に外歯部26aと内歯部28aとが逆向きに噛み合って接触するまでの間に全体が行われてもよいし、一部のみが行われてもよい。すなわち、モードが切り替えられた際に外歯部26aと内歯部28aとが逆向きに噛み合って接触する前に第2シャフト21bが残存隙間の一部に相当する分だけ軸方向に移動し、外歯部26aと内歯部28aとが接触した後に第2シャフト21bが残存隙間の残りの分だけ軸方向に移動してもよい。この場合であっても、オイルOのダンパ機能により、外歯部26aと内歯部28aとが比較的小さい速度で相対移動しつつ接触するため、外歯部26aがスプライン穴部28の内周面に食い込みにくい。これにより、外歯部26aと内歯部28aとが接触した後であっても、第2シャフト21bの軸方向の移動が第1シャフト21aに伝わりにくい。
【0084】
また、外歯部26aと内歯部28aとが接触した後に第2シャフト21bの軸方向の移動が第1シャフト21aに伝わった場合であっても、オイルOの粘性により第1シャフト21aの軸方向の移動に対しても、オイルOがダンパとして機能する。そのため、第1シャフト21aが軸方向に移動する速度も小さくできる。これにより、第1シャフト21aが軸方向に移動した際であっても、第1シャフト21aを支持する第1ベアリング27aおよび第3ベアリング27cにかかる軸方向の負荷を抑制できる。特に、急激な負荷が第1ベアリング27aおよび第3ベアリング27cに発生することを抑制できる。
【0085】
一方、駆動装置1のモードが切り替えられた際に外歯部26aと内歯部28aとが逆向きに噛み合って接触するまでの間に、第2シャフト21bの軸方向の移動の全体が行われる場合には、第1シャフト21aが軸方向に移動することをより好適に抑制することができる。したがって、第1シャフト21aを支持するベアリング27にかかる軸方向の負荷をより好適に抑制できる。特に、急激な負荷が第1シャフト21aを支持するベアリング27に発生することをより好適に抑制できる。
【0086】
なお、駆動装置1のモードが切り替えられた後、外歯部26aと内歯部28aとが逆向きに噛み合って接触する前には、外歯部26aと内歯部28aとは、直接的には接触していない。しかし、この場合であっても、隙間70のオイルOを介して、第1シャフト21aと第2シャフト21bとの間での回転の伝達が行われる。そのため、例えば、駆動装置1が回生モードから駆動モードに切り替わる際であっても、外歯部26aと内歯部28aとが逆向きに噛み合って接触する前に、第1シャフト21aの回転トルクが第2シャフト21bに伝達される。これにより、外歯部26aと内歯部28aとが逆向きに噛み合って接触する前に、第2シャフト21bに加えられるトルクが反転し、第2シャフト21bが軸方向に移動する。したがって、駆動装置1が回生モードから駆動モードに切り替わる際にも、第1シャフト21aを支持するベアリング27にかかる軸方向の負荷を抑制できる。特に、急激な負荷が第1シャフト21aを支持するベアリング27に発生することを抑制できる。
【0087】
また、本実施形態によれば、スプラインシャフト部26は、中空部26dと、中空部26dの内周面から外周面までを貫通する供給孔26bと、を有する。供給孔26bは、外歯部26aと内歯部28aとの隙間70に繋がる。そのため、中空部26dの内部にオイルOを流すことで、中空部26dを通るオイルOを、供給孔26bを介して隙間70に供給することができる。これにより、外歯部26aと内歯部28aとの隙間70にオイルOが介在した状態を維持しやすい。また、駆動装置1のモードが切り替えられて外歯部26aと内歯部28aとが逆向きに噛み合って接触することで新たに生じる隙間70にも、供給孔26bを介してオイルOを供給できる。そのため、駆動装置1のモードが駆動モードと回生モードとの間で複数回切り替えられても、各切り替え時において、各ベアリング27にかかる軸方向の負荷を抑制できる。新たに生じる隙間70は、例えば、図5に示す状態から外歯部26aが内歯部28aに対して周方向一方側に相対移動した際に、外歯部26aの周方向他方側の面と内歯部28aの周方向一方側の面との間に生じる隙間70である。
【0088】
また、本実施形態によれば、供給孔26bは、スプラインシャフト部26の周方向に沿って複数設けられる。そのため、供給孔26bを介して、外歯部26aと内歯部28aとの各隙間70にオイルOをより好適に供給しやすい。
【0089】
また、本実施形態によれば、スプラインシャフト部26は、外周面の全周に亘って設けられた環状の供給路26cを有する。供給路26cは、供給孔26bと繋がる。そのため、供給孔26bからスプラインシャフト部26の外周面に流出したオイルOを、供給路26cを介して、スプラインシャフト部26の全周に供給しやすい。これにより、複数の隙間70の全てにオイルOを供給しやすい。したがって、オイルOによるダンパ機能をより好適に得ることができる。そのため、各ベアリング27にかかる軸方向の負荷をより抑制できる。特に、急激な負荷が各ベアリング27に発生することをより抑制できる。
【0090】
また、本実施形態によれば、供給路26cは、環状の溝である。そのため、供給孔26bからスプラインシャフト部26の外周面に流出したオイルOを供給路26c内に保持しつつ、全周に流すことができる。これにより、複数の隙間70の全てに均一にオイルOを供給しやすい。
【0091】
また、本実施形態によれば、拡径部22の内部と貯留部66cの内部とは、外歯部26aと内歯部28aとの隙間70を介して繋がる。そのため、隙間70の両側には、比較的オイルOが多く溜まりやすい拡径部22および貯留部66cが配置される。これにより、隙間70内にオイルOを保持しておきやすい。したがって、オイルOによるダンパ効果をより好適に得ることができる。そのため、各ベアリング27にかかる軸方向の負荷をより抑制できる。特に、急激な負荷が各ベアリング27に発生することをより抑制できる。
【0092】
また、本実施形態によれば、スプラインシャフト部26を有するシャフトは、第2シャフト21bであり、スプライン穴部28を有するシャフトは、第1シャフト21aである。そのため、第2シャフト21bの内部から第1シャフト21aの内部へとオイルOを流す際に、オイルOがスプラインシャフト部26の内部から第1シャフト21aの内部に流れる。これにより、スプライン穴部28を有するシャフトの内部からスプラインシャフト部26の内部にオイルが流れる場合に比べて、スプラインシャフト部26の外周面とスプライン穴部28の内周面との隙間29からモータシャフト21の外部にオイルOが漏れることを抑制できる。したがって、ギア収容部62内に貯留されたオイルOをモータシャフト21の内部に流す構成を採用した際に、第2シャフト21bの内部から第1シャフト21aの内部にオイルOを好適に流すことができる。
【0093】
(変形例)
図6に示すように、本変形例の第2シャフト121bにおいて、スプラインシャフト部126の軸方向の全体は、上述した実施形態と同様に中空部126dで構成される。中空部126d内には、上述した実施形態と同様にオイルOが通る。中空部126d内においてオイルOは、左側から右側に流れる。本変形例において供給孔126bおよび供給路126cは、中空部126dの左側寄りの部分に設けられる。すなわち、供給孔126bおよび供給路126cは、中空部126d内のオイルOの流れ方向における上流側寄りの部分に設けられる。そのため、供給孔126bおよび供給路126cを介して隙間70に供給されたオイルOを、隙間70内において、中空部126d内においてオイルOが流れる向きと同じ向きに流しやすく、隙間70の軸方向全体に亘ってオイルOを供給しやすい。これにより、隙間70全体に好適にオイルOを供給できる。
【0094】
なお、本明細書において「供給孔および供給路が、中空部のうち、中空部内のオイルの流れ方向における上流側寄りの部分に設けられる」とは、供給孔および供給路が、中空部内のオイルの流れ方向における中空部の中心よりも上流側に位置すればよい。本変形例では、供給孔126bおよび供給路126cは、中空部126dの軸方向の中心よりも左側に位置する。
【0095】
供給孔126bの内径は、供給路126cの軸方向の幅以下である。供給孔126bの内径は、例えば、供給路126cの軸方向の幅と同じである。供給孔126bは、溝である供給路126cの溝底面に開口する。第2シャフト121bのその他の構成は、上述した第2シャフト21bのその他の構成と同様である。
【0096】
<第2実施形態>
図7に示すように、本実施形態のモータシャフト221の第2シャフト221bにおいて、スプラインシャフト部226の軸方向の全体は、上述した実施形態と同様に中空部226dで構成される。本実施形態においてスプラインシャフト部226は、上述した第1実施形態と異なり、供給孔26bおよび供給路26cを有しない。スプラインシャフト部226の外周面とスプライン穴部228の内周面との隙間229は、第1シャフト221aの内部に開口する。本実施形態では、オイルOが、第1シャフト221aの内部から隙間229に流入する。これにより、オイルOが外歯部26aと内歯部28aとの隙間70に流入する。したがって、第2シャフト221bに供給孔26bおよび供給路26cを設ける必要がなく、第2シャフト221bの製造を容易にできる。
【0097】
図8に示すように、本実施形態においてスプライン穴部228の内歯部28aの歯数は、スプラインシャフト部226の外歯部26aの歯数よりも少ない。そのため、内歯部28aの数が少ない分だけ、スプライン穴部228の内周面とスプラインシャフト部226の外周面の隙間229が第1シャフト221a内に開口する面積を大きくできる。これにより、隙間229に、第1シャフト221a内からオイルOが流入しやすくできる。したがって、隙間229の一部である隙間70にオイルOを供給しやすくできる。
【0098】
本実施形態では、内歯部28aの歯数は、外歯部26aの歯数の半分である。そのため、周方向に隣り合う内歯部28a同士の間に、2つの外歯部26aが位置する。これにより、周方向に隣り合う外歯部26a同士の隙間の分、隙間229の開口面積を大きくできる。モータシャフト221のその他の構成は、第1実施形態のモータシャフト21のその他の構成と同様である。
【0099】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成を採用することもできる。外歯部と内歯部との隙間にオイルを供給する方法は、特に限定されない。スプラインシャフト部に設けられる供給孔の数は、特に限定されない。スプラインシャフト部に設けられる環状の供給路は、溝でなくてもよい。供給路は、スプラインシャフト部のうち周方向に隣り合う外歯部同士の間に位置する部分の外周面と、各外歯部を周方向に貫通する孔と、によって構成されてもよい。駆動装置は、外歯部と内歯部との隙間にオイルを有する構成であれば、外歯部と内歯部との隙間に積極的にオイルを供給する構造を有しなくてもよい。
【0100】
スプラインシャフト部は、軸方向の一部分のみが中空部であってもよい。スプラインシャフト部は、中空部を有しなくてもよい。この場合、スプラインシャフト部は、軸方向の全体が中実部である。第1シャフトがスプラインシャフト部を有し、第2シャフトがスプライン穴部を有してもよい。外歯部の歯数は、内歯部の歯数より少なくてもよい。第1シャフトと第2シャフトとは、中実のシャフトであってもよい。
【0101】
モータシャフトを回転可能に支持するベアリングは、第1シャフトを支持するベアリングと第2シャフトを支持するベアリングとのいずれか一方を含まなくてもよい。第1シャフトは、軸方向両端部がベアリングによって支持される構成でなくてもよい。第2シャフトは、軸方向両端部がベアリングによって支持される構成でなくてもよい。
【0102】
上述した実施形態では、駆動装置がインバータユニットを含まない場合について説明したが、これに限られない。駆動装置は、インバータユニットを含んでいてもよい。言い換えると、駆動装置がインバータユニットと一体構造となっていてもよい。駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、車両に搭載されなくてもよい。本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0103】
1…駆動装置、2…モータ、3…ギア部、6…ハウジング、20…ロータ、21,221…モータシャフト、21a,221a…第1シャフト、21b,121b,221b…第2シャフト、21c,21d…オイル通路部、22…拡径部、23a…貫通孔、24…ロータ本体、26,126,226…スプラインシャフト部、26a…外歯部、26b,126b…供給孔、26c,126c…供給路、26d,126d,226d…中空部、27…ベアリング、27a…第1ベアリング、27b…第2ベアリング、28,228…スプライン穴部、28a…内歯部、29,70,229…隙間、30…ステータ、41…第1ヘリカルギア部(ヘリカルギア部)、61…モータ収容部、62…ギア収容部、63…仕切壁部、66a…第1保持部、66b…第2保持部、66c…貯留部、J1…回転軸、O…オイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8