(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ベントナイト混合土の管理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/24 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G01N33/24 B
G01N33/24 Z
(21)【出願番号】P 2020007460
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 志照
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】諸冨 鉄之助
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-004619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0241696(US,A1)
【文献】特開2011-252850(JP,A)
【文献】特開2004-309196(JP,A)
【文献】特開2006-234695(JP,A)
【文献】特開平03-237339(JP,A)
【文献】木村志照,最終処分場における遮水の維持管理 メチレンブルー吸着量を用いたベントナイト混合土添加率管理手法の開発,月刊防水ジャーナル,2023年05月05日,Vol.54 No.5,Page.84-89
【文献】木村志照,メチレンブルー吸着量を用いた土質遮水のベントナイト添加率管理手法の開発,大林組技術研究所報,2021年,No.85,Page.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/24
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイト混合土を、メチレンブルー吸着量試験の結果に基づいて推定するベントナイト混合率を用いて管理するための、ベントナイト混合土の管理方法であって、
前記ベントナイト混合土のふるい分けを行って、礫分を取り除くことにより作成した細粒分混じり土から試料土を分取し、
該試料土を用いてメチレンブルー吸着量試験を行
って、細粒分混じり土のメチレンブルー吸着量を取得する工程と、
前記細粒分混じり土のメチレンブルー吸着量に基づいて、前記ベントナイト混合土のメチレンブルー吸着量を取得する工程と、
前記ベントナイト混合土のメチレンブルー吸着量に基づいて、前記ベントナイト混合土の前記ベントナイト混合率を取得する工程と、を含むことを特徴とするベントナイト混合土の管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のベントナイト混合土の管理方法において、
前記細粒分混じり土の粒径が、略2mm以下であることを特徴とするベントナイト混合土の管理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のベントナイト混合土の管理方法において、
前記細粒分混じり土のメチレンブルー吸着量を、前記礫分と前記細粒分混じり土の質量に基づいて補正し、前記ベントナイト混合土のメチレンブルー吸着量を算出することを特徴とするベントナイト混合土の管理方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のベントナイト混合土の管理方法において、
前記ベントナイト混合土を乾燥させたのち、ふるい分けを行うことを特徴とするベントナイト混合土の管理方法。
【請求項5】
請求項1に記載のベントナイト混合土の管理方法において、
前記ベントナイト混合率は、ベントナイト混合率が既知のベントナイト混合土からメチレンブルー吸着量を取得して求めた、ベントナイト混合率とメチレンブルー吸着量の関係式に基づいて算出することを特徴とするベントナイト混合土の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントナイト混合土をベントナイト混合率を用いて管理するための、ベントナイト混合土の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土砂に所定の配合でベントナイトを混合して製造されるベントナイト混合土は、転圧・締固めを行うことにより高い遮水性能が得られることから、例えば廃棄物処分場や汚染土等の封じ込め工事や構造物の基礎地盤工事等、一般に広く使用されている。これらベントナイト混合土を工事現場で使用する際には、現地発生土もしくは購入砂を母材とし、この母材に室内試験等の結果に基づいて設計した配合量のベントナイトを混合して加水調整することにより、所望の遮水性能が確保されたベントナイト混合土を製造する。
【0003】
そして、製造したベントナイト混合土に対して、仕様書で定められた製造量ごとに品質管理を行う。品質管理は主に、ベントナイトの配合量が設計を満足していること、及び、ベントナイトが均質に混合されていることを確認する作業であり、ベントナイトの配合量が設計を満足していることを確認する方法としては一般に、メチレンブルー吸着量試験を指定される場合が多い。
【0004】
メチレンブルー吸着量試験では、ベントナイトを含む試料を分散させた溶液にメチレンブルー溶液を加えて撹拌したのち、試料中のベントナイトに吸着したメチレンブルー吸着量を求め、このメチレンブルー吸着量から、ベントナイト混合率もしくはベントナイト混合量を算出する。
【0005】
ところが、メチレンブルー吸着量試験は、測定者の目視判断に基づいてメチレンブルー吸着量を求めるなど測定者の熟練度に依存しやすく、試験結果にバラツキが生じやすい。このため、例えば特許文献1では、色差計や分光光度計等の分析器で試料に吸着されなかったメチレンブルー量を測定し、この測定値に基づいてメチレンブルー吸着量を算定することで、測定者に起因する試験結果のバラツキを解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
メチレンブルー吸着量試験による試験結果は、測定者の熟練度だけでなく、試料の状態や粒度分布によっても大きな影響を受けることが知られている。特に、管理対象となるベントナイト混合土に礫分が多く含まれている場合、ベントナイト混合土から採取した試料の採取量が同量であっても、試料中に含まれる礫分の量に応じてベントナイトの量も増減する。このため、採取した試料をそのまま試験に用いると、試料ごとでメチレンブルー吸着量にバラツキが生じやすく、これらメチレンブルー吸着量に基づいて現状を正確に反映したベントナイト混合率もしくはベントナイト混合量を推定することが困難となりやすい。
【0008】
これに対応するべく、試料の採取量を増量してメチレンブルー吸着量試験を行う方法も考えられるが、試料の増量に伴って測定に用いるメチレンブルー溶液も大量に必要となるため、経済性に課題を生じるとともに、試験時間も長期化しやすく工事現場で実施するには不利となる
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、管理対象のベントナイト混合土に礫分が多く含まれている場合にも、少量の試料で効率よくベントナイト混合率を推定し、ベントナイト混合土を管理することの可能な、ベントナイト混合土の管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明のベントナイト混合土の管理方法は、ベントナイト混合土を、メチレンブルー吸着量試験の結果に基づいて推定するベントナイト混合率を用いて管理するための、ベントナイト混合土の管理方法であって、前記ベントナイト混合土のふるい分けを行って、礫分を取り除くことにより作成した細粒分混じり土から試料土を分取し、該試料土を用いてメチレンブルー吸着量試験を行って、細粒分混じり土のメチレンブルー吸着量を取得する工程と、前記細粒分混じり土のメチレンブルー吸着量に基づいて、前記ベントナイト混合土のメチレンブルー吸着量を取得する工程と、前記ベントナイト混合土のメチレンブルー吸着量に基づいて、前記ベントナイト混合土の前記ベントナイト混合率を取得する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のベントナイト混合土の管理方法は、前記細粒分混じり土の粒径が、略2mm以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明のベントナイト混合土の管理方法によれば、メチレンブルー吸着量試験に用いる試料土を、ベントナイト混合土から礫分を取り除いて作成した細粒分混じり土から分取する。これにより、試料土の分取に起因してメチレンブルー吸着量試験の結果に生じやすいバラツキを抑制でき、少量の試料土で効率よく現状を正確に反映したベントナイト混合率を推定することが可能となる。
【0013】
したがって、試験に用いるメチレンブルー溶液の使用量を低減でき経済的に試験を行うことができるととともに、試験に要する時間も短縮化でき、ベントナイト混合土の品質管理全体の時間短縮及び低コスト化を図ることが可能となる。これに伴い、メチレンブルー吸着量試験を実施する頻度を従来より増大させることも容易であり、ベントナイト混合土を製造する際にベントナイトの使用量を適宜調整し、ベントナイトの添加不足に起因する不具合防止や過剰添加の抑制を図ることが可能となる。
【0014】
本発明のベントナイト混合土の管理方法は、前記細粒分混じり土のメチレンブルー吸着
量を、前記礫分と前記細粒分混じり土の質量に基づいて補正し、前記ベントナイト混合土
のメチレンブルー吸着量を算出することを特徴とする。また、前記ベントナイト混合率は、ベントナイト混合率が既知のベントナイト混合土からメチレンブルー吸着量を取得して求めた、ベントナイト混合率とメチレンブルー吸着量の関係式に基づいて算出することを特徴とする。
【0015】
本発明のベントナイト混合土の管理方法によれば、ベントナイト混合土中の礫分の含有量に応じて細粒分混じり土のメチレンブルー吸着量を適切に補正し、ベントナイト混合土のメチレンブルー吸着量を算定できるため、このメチレンブルー吸着量に基づいて信頼性の高いベントナイト混合土のベントナイト混合率を推定することが可能となる。
【0016】
本発明のベントナイト混合土の管理方法は、前記ベントナイト混合土を乾燥させたのち、ふるい分けを行うことを特徴とする。
【0017】
本発明のベントナイト混合土の管理方法によれば、ベントナイトが、礫分だけでなくふるいに吸着する現象を最小限に抑制できるため、ベントナイト混合土に含まれるベントナイトを、効率よく細粒分混じり土として仕分けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、メチレンブルー吸着量試験に用いる試料土を、ベントナイト混合土から礫分を取り除いて作成した細粒分混じり土から分取することで、試料土の採取に起因してメチレンブルー吸着量試験の結果に生じやすいバラツキを抑制するため、管理対象のベントナイト混合土に礫分が多く含まれている場合にも、少量の試料で効率よくベントナイト混合率を推定し、ベントナイト混合土を管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態におけるベントナイト混合土の管理方法の概略を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるベントナイト混合土の管理方法のフローを示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態におけるベントナイト混合土のメチレンブルー吸着量の算定結果を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態におけるメチレンブルー混合率とメチレンブルー吸着量の関係を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態におけるふるい分けを行わないベントナイト混合土のメチレンブルー吸着量の算定結果(比較例)を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態におけるメチレンブルー吸着量の算定結果から求めた分散の比較グラフを示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態におけるベントナイト混合率とメチレンブルー吸着量の関係を、ふるい分けを行う場合と行わない場合とで比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のベントナイト混合土の管理方法について、管理対象であるベントナイト混合土を、土構造物の中でも廃棄物処分場の遮水工事に用いる底盤及び、または法面構造に使用する場合を事例に挙げ、以下に
図1~
図7を参照しつつその詳細を説明する。
【0021】
図1で示すように、廃棄物処分場10には、ベントナイト混合土1を締め固めて構築した構造物11が構築され、その内方に廃棄物12が封じ込められている。このような遮水工事に使用されるベントナイト混合土1は、施工現場で現地発生土等の土砂2に、ベントナイト3を添加し混合することにより製造されている。
【0022】
ベントナイト3の配合量は、ベントナイト混合土1の使用対象である構造物11に求められる遮水性能を実現可能な量を、室内試験で確認したうえで設計されるものであり、ベントナイト混合土1を製造する際には、この設計値を超える配合量のベントナイト3を添加している。
【0023】
こうして製造されるベントナイト混合土1は、施工現場で使用される前にベントナイト混合率を把握することにより、ベントナイト3の配合量が設計値を超えていることを確認する管理を、仕様書等で定められた製造量ごとに行っている。そこで、ベントナイト混合土1の管理方法の詳細を、
図2のフロー図を参照しつつ以下に説明する。
【0024】
≪ベントナイト混合土の管理方法≫
<試料作成用材料4の採取:STEP1>
図1で示すように、現場で作製したベントナイト混合土1から一部を試料作成用材料4として採取する(例えば、500~1000g程度)。
【0025】
<試料の作成:STEP2>
採取した試料作成用材料4から以下の工程を経て、後述するメチレンブルー吸着量試験に使用する試料土7を作成する。
【0026】
まず、試料作成用材料4を十分乾燥させる。乾燥方法はいずれでもよいが、土の含水比試験で用いられる電子レンジ法に倣って、電子レンジにより試料作製材料を加熱し(例えば、15分程度)、水分を蒸発させる方法が好適である。なお、含水状態は絶乾状態が好ましい。
【0027】
次に、乾燥させた試料作成用材料4をふるい分けする。ふるい分けは、ふるい分け試験で用いられる試験用ふるいを採用し、呼び寸法2.0mmのふるいが好適である。このふるい分けにより、ふるいを通過した粒径がおおよそ2mm以下のものを細粒分混じり土5、2mmを超えるものを礫分6とし、細粒分混じり土5の質量(S1)及び礫分6の質量(S2)を測定する。
【0028】
このように、試料作成用材料4から礫分6を取り除いた細粒分混じり土5を作成するにあたり、ふるい分けを行う前に試料作成用材料4を十分乾燥させておくことで、ベントナイト3が、礫分6だけでなくふるいに吸着する現象を最小限に抑制できる。したがって、試料作成用材料4に含まれるベントナイト3を、効率よく細粒分混じり土5として仕分けることができる。
【0029】
こののち、細粒分混じり土5から所定量の分取を行い(例えば、5g程度)、これをメチレンブルー吸着量試験の試料土7として使用する。
【0030】
<細粒分混じり土5のメチレンブルー吸着量(100gあたり)の取得:STEP3>
STEP2で作成された試料土7を用いて、メチレンブルー吸着量試験を実施し、試験結果を用いて細粒分混じり土5のメチレンブルー吸着量(100gあたり:以降、「MB吸着量(MBC(2))」と称する。)を算定する。算定方法は、「ベントナイトなどのメチレンブルー吸着量の測定方法(JIS Z 2451)」の比色法に準拠するが、試験方法の大まかな流れを以下に説明する。
【0031】
まず、試料土7を2%ピロリン酸ナトリウム溶液に分散させた分散液を作成し十分撹拌したのち(STEP31、STEP32)、予想されるMB吸着量(MBC(2))を超える量のメチレンブルー溶液を添加し、再度撹拌する(STEP33、STEP34)。本実施の形態では、試料土7に対するメチレンブルー溶液の液個比(L/S)を15程度に設定している。
【0032】
次に、試料土7の分散液とメチレンブルー溶液との混合液から上澄みを取ってこれをろ過し(STEP35)、このろ過した上澄み液を希釈して、ろ液の上澄み液希釈溶液を作成する(STEP361)。つまり、上澄み液希釈溶液には、試料土7中のベントナイト3に吸着しなかった未吸着のメチレンブルーが残存している状態となっている。
【0033】
その一方で、メチレンブルー濃度を求める際に用いる検量線を作成するためのメチレンブルー標準液を3種類(1μmol/L、3μmol/L、5μmol/L)と、ブランク(0μmol/L))とを作成・調整しておく(STEP362)。そして、メチレンブルー標準液及びブランクの各々について波長664nmの吸光度を測定し、これら測定結果に基づいてメチレンブルー濃度を(X)とし、吸光度を(Y)とする関係式を求めるための相関分析を行い、検量線(関係式)を作成する(STEP363、STEP364)。
【0034】
こののち、上澄み液希釈溶液(STEP361で作成)について波長664nmの吸光度を測定し(STEP365)、この上澄み液希釈溶液の吸光度と上記の検量線とに基づいて、上澄み液希釈溶液のメチレンブルー濃度を測定する(STEP37)。
【0035】
こうして測定された上澄み液希釈溶液のメチレンブルー濃度に基づいて、ろ液(STEP35で作成)のメチレンブルー濃度を求め、さらに、ろ液のメチレンブルー濃度に基づいて、試料土7に含まれるベントナイト3に吸着されなかった未吸着のメチレンブルー量を算出する。
【0036】
次に、これら未吸着のメチレンブルー量とSTEP33で添加した試料土7の分散液に添加したメチレンブルー量との差に基づいて、試料土7に含まれているベントナイト3に吸着したメチレンブルーの吸着量を、細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))に換算して算出する(STEP38)。
【0037】
<ベントナイト混合土のMB吸着量(100gあたり)の算出:STEP4>
STEP3で算定された細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))に基づいて、ベントナイト混合土1に含まれるベントナイト3に吸着するであろうメチレンブルーの吸着推定量を、ベントナイト混合土1のメチレンブルー吸着量(100gあたり:以降、「MB吸着量(MBC)」と称する。)に換算して算出する。
【0038】
ベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC)は、STEP2で測定した細粒分混じり土5の質量(S1)と、礫分6の質量(S2)と、STEP3で算出した細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))とに基づいて、(1)式により算出される。
【0039】
【0040】
このように、ベントナイト混合土1中の礫分6の含有量に対応させて細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))を適切に補正することにより、ベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC)を算定することができる。
【0041】
<ベントナイト混合土1におけるベントナイト混合率の推定:STEP5>
STEP4で算定したベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC)と、
図4で示すベントナイト混合率の関係式に基づいて、ベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC)に対応するベントナイト混合率を推定する。
【0042】
<MB吸着量(MBC)とベントナイト混合率の関係式の取得:STEP51>
ベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC)とベントナイト混合率の関係式は、別途実施する相関分析により求めるものである。具体的には、既知のベントナイト混合率が異なる複数のベントナイト混合土1に対して、上述したSTEP1~STEP4の工程を実施してMB吸着量(MBC)を算出する作業を行い、ベントナイト混合率を(X)とし、MB吸着量(MBC)を(Y)とした関係式を算定する。
【0043】
以下に、ベントナイト混合率の異なる6種類のベントナイト混合土1を用いた場合を事例に挙げ、ベントナイト混合率とMB吸着量(MBC)の関係式を求める際の手順を示す。
【0044】
まず、
図3で示すように、ベントナイト混合率が異なる6種類のベントナイト混合土1をそれぞれ準備し(本実施の形態では、460g程度)、これらを電子レンジ法により十分乾燥させたのち、ふるい分けを行って細粒分混じり土5と礫分6とを取得し、各々の質量(S1、S2)を測定した。次に、細粒分混じり土5から試料土7の分取を5回行って合計30種類の試料土7を準備した。
【0045】
こののち、これら30種類の試料土7について、細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))を測定した。これにより、ベントナイト混合率が異なる6種類のベントナイト混合土1ごとで5つの測定結果が得られるから、これらのうちの最上値と最下値を除外した3つの測定結果の平均を算出し、これを細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))として採用した。
【0046】
こうして算出した細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))と、細粒分混じり土5と礫分6の質量(S1、S2)とを上記の(1)式に代入し、ベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC)を算定した結果を
図3に、また、ベントナイト混合率とベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC)について相関関係を分析した結果を
図4に示す。
図4のグラフを見ると、決定係数R
2が0.9837と1に近接しており、あてはまりの良いことがわかる。
【0047】
こうして算出した
図4で示す関係式に、STEP4で算出したベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC)を代入することにより、管理対象であるベントナイト混合土1のベントナイト混合率を推定することが可能となる。
【0048】
上述するベントナイト混合土の管理方法によれば、メチレンブルー吸着量試験に用いる試料土7を、試料作成用材料4から礫分6を取り除いて作成した細粒分混じり土5から分取する。これにより得られる細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))は、試料土7の分取に起因するバラツキが生じにくく、大量の試料土7を準備して試験を行う手間を省略し、少量の試料土7で効率よく現状を正確に反映したベントナイト混合土1のベントナイト混合率を推定することが可能となる。
【0049】
したがって、試験に用いるメチレンブルー溶液の使用量を低減でき経済的に試験を行うことができるととともに、試験に要する時間も短縮化でき、ベントナイト混合土1の品質管理全体の時間短縮及び低コスト化を図ることが可能となる。これに伴い、メチレンブルー吸着量試験を実施する頻度を従来より増大させることも容易であり、ベントナイト混合土1を製造する際に、ベントナイト3の使用量を適宜調整することが可能となる。
【0050】
このため、ベントナイト3が添加不足となっているベントナイト混合土1を使用して構造物11等の土構造物を構築することにより生じかねない遮水性能の不足といった不具合を回避することが可能となる。また、ベントナイト混合土1を製造する際、ベントナイト3の過剰添加を抑制でき、経済性を大幅に向上することが可能となる。
【0051】
≪効果把握のための比較実験≫
上記のベントナイト混合土1の管理方法について、その効果を把握するべく以下のような試験を行った。
【0052】
図4で示す関係式を算定する際に使用したものと同様の、ベントナイト混合率が異なる6種類のベントナイト混合土1について、比較例として、乾燥させたのちにふるい分けを行わずに、分取を5回行って合計30種類の試料を作成した。そして、この30種類の試料各々に対して、メチレンブルー吸着量試験を実施し、ふるい分けを行っていないベントナイト混合土1のメチレンブルー吸着量(100gあたり:以降、「MB吸着量(MBC(無))」と称する。)を算定した。また、ベントナイト混合率が異なる6種類のベントナイト混合土1ごとでMB吸着量(MBC(無))の分散を求め、
図5及び
図6にその結果を示す。
【0053】
なお、
図6のグラフには、STEP51で算定した、ベントナイト混合率が異なる6種類のベントナイト混合土1ごとでふるい分けを行って取得した細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))から、
図3で示すように分散を求め、その結果を併せて示している。
【0054】
図6を見ると、ふるい分けを行わない場合、ベントナイト混合率が増大するほど、分散が大きい様子がわかる。なかでもベントナイト混合率12%では、分散が2.81と大きく、この点について
図5で詳細を見ると、ベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC(無))の最小値が6.5で最大値が10.2とその差は2倍に近く、算定結果にバラツキがある様子がわかる。
【0055】
一方、ふるい分けを行った場合には、ベントナイト混合率が増大しても分散が大きく変動することはなく、最も大きい場合でもベントナイト混合率15%の場合に0.33程度と小さい様子が分かる。この点について
図3で詳細を見ると、細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))の最小値が12.1で最大値が13.6とその差は10%程度と、算定結果のバラツキが少ない様子がわかる。
【0056】
また、ふるい分けを行っていないベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC(無))とベントナイト混合率について相関関係を分析した結果を
図7に示す。
図7のグラフを見ると、決定係数R
2が0.9751と、細粒分混じり土5から試料土7を分取して試験を行う場合と比較して、相関関係が劣ることがわかる。
【0057】
したがって、ベントナイト混合率を推定する際には、細粒分混じり土5のMB吸着量(MBC(2))に対して上記の(1)式によりを質量補正を行って算定したベントナイト混合土1のMB吸着量(MBC)を用いると、ふるい分けを行わないMB吸着量(MBC(無))を用いる場合と比較して、より正確に現状を反映したベントナイト混合率を推定できることが分かる。
【0058】
本発明のベントナイト混合土の管理方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、本実施の形態では、ベントナイト混合土1から採取した試料作成用材料4を細粒分混じり土5と礫分6とにふるい分けするにあたり、2mmを閾値の目安としたが、必ずしもこれに限定されるものではない。細粒分混じり土5から分取する試料土7をメチレンブルー吸着量試験に適した粒径に作成できれば、閾値をいずれに設定してもよい。
【0060】
また、乾燥後の試料作成用材料4の含水状態は、ベントナイト3が礫分6やふるいに付着しにくい状態であれば、必ずしも絶乾状態でなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 ベントナイト混合土
2 土砂
3 ベントナイト
4 試料作成用材料
5 礫分
6 細粒分混じり土
7 試料土
10 廃棄物処分場
11 構造物
12 廃棄物